説明

締結部材の状態を検出する検出装置、その検出装置を備えた蓄電機構

【課題】蓄電機構の端子ボルトの緩みを安価に精度よく検出する。
【解決手段】検出装置は、一方の先端側のコア部に複数の回折格子210が形成された光ファイバであるFBG200と、送受信器300と、ECU400とを含む。FGB200は、各端子ボルト140ごとに設けられ、回折格子210が設けられた側の先端は、エンドプレート130と端子ボルト140との間に、端子ボルト140と接続リング160との締結力によって生じた圧力により挟持される。FGB200の回折格子210が設けられた側と異なる側の先端は、送受信器300に接続される。送受信器300は、広い波長帯域をもつ光源と、ブラッグ波長を検出する波長センサとを、各FGB200ごとに備える。送受信器300は、各波長センサにより検出したブラッグ波長を表わす信号をECU400に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトなどの締結部材の緩みを検出する技術に関し、特に、蓄電機構の各端子と各端子間を接続する接続部材(バスバー)とを締結するボルトの緩みを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などにおいては、複数の蓄電池を並列あるいは直列に接続して組電池として用い、必要な電力を取り出すようにされている。このように複数の蓄電池を接続する構造として、ボルト等を用いて、導電性金属から形成されたバスバーを各蓄電池の端子に配列に応じて接触させる構造が一般に用いられている。ところが、車両走行時の振動や熱による膨張・収縮などによりボルト等が緩む場合がある。このようにボルト等が緩むと、端子とバスバーとの間の密着性が低下して接触抵抗が増大し、エネルギーの損失が大きくなったり、電池からの電力が出力されなくなったりする場合がある。このような問題を解決する技術が、たとえば特開平9−306468号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
この公報に開示された電池の端子接続構造は、電池の端子にバスバーをナットで締結することによりバスバーと端子とを導通させて接続する。この端子接続構造は、圧電体から形成され、ナットの締結力による圧力に応じた電圧を発生する圧力センサ(ロードワッシャなど)と、圧力センサをバスバーとともにナットで締結するための手段と、圧力センサからの信号(電圧値)を検出するための手段とを含む。
【0004】
この公報に開示された端子接続構造によると、バスバーとともに圧電式の圧力センサをナットで締結している。そして、圧力センサからの電圧値を検出して常時監視することにより、ナットの締結力による圧力が基準値より低下した場合には、ナットが緩んだことを検出することができる。したがってナットの再締め付けなどを速やかに行うことができ、エネルギーの損失を最小限に抑制するとともに、電池からの電力が出力されなくなる状態を抑制することができる。
【特許文献1】特開平9−306468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された装置のように、圧電式の圧力センサを用いてナットの緩みを検出するのでは、以下のような問題がある。すなわち、圧電式の圧力センサは、比較的高価なものであり、ナットの締結部が多数存在する場合には、圧力センサ自体にかかるコストが高価になり過ぎてしまう。また、車両駆動用モータを制御するインバータなどに起因して電磁ノイズが圧電式の圧力センサからの出力電圧値に重畳すると、ナットの緩みを正確に検出できないおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、締結部材の緩みを安価に精度よく検出することができる検出装置および蓄電機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る検出装置は、蓄電機構の端子と端子間を接続する接続部材とを接触させるように、接続部材を介在させて端子に締結される締結部材の状態を検出する。この検出装置は、端子と締結部材との間に締結部材により挟持され、締結部材の締結力による圧力に応じた波長の光を反射する複数の回折格子がコア部に備えられた光ファイバと、光ファイバに接続された光源と、光ファイバからの反射光に関する物理量を検出するための検出手段とを含む。
【0008】
第1の発明によると、端子と締結部材との間に光ファイバが挟持される。この光ファイバのコア部には、締結部材の締結力による圧力に応じた波長の光を反射する回折格子が備えられる。そのため、締結部材が緩んで締結部材の締結力による圧力が変化すると、回折格子による反射光の波長が変化する。すなわち、光ファイバからの反射光に関する物理量(反射光の波長や強度)を検出手段により検出することにより、締結部材の緩みを検出することができる。ここで、光ファイバは、圧電式の圧力センサなどと比べて安価である。さらに、光ファイバからの反射光は電磁ノイズの影響を受けない。そのため、蓄電機構における締結部材の緩みを安価に精度よく検出することができる。その結果、蓄電機構における締結部材の緩みを安価に精度よく検出することができる検出装置を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る検出装置においては、第1の発明の構成に加えて、締結部材は、複数設けられる。光ファイバは、複数の締結部材ごとに複数設けられる。
【0010】
第2の発明によると、複数の締結部材ごとに、圧電式の圧力センサより安価な光ファイバが複数設けられる。そのため、検出装置全体のコストを抑制することができるとともに、各光ファイバからの反射光に関する物理量検出することにより、いずれの締結部材が緩んだ状態であるかを検出することができる。
【0011】
第3の発明に係る検出装置においては、第1の発明の構成に加えて、締結部材は、複数設けられる。光ファイバは、複数の締結部材に挟持された部分ごとに回折格子が備えられた1つの光ファイバである。
【0012】
第4の発明によると、光ファイバは、複数の締結部材に挟持された部分ごとに回折格子が備えられた1つの光ファイバである。これにより、光源および検出手段を複数設ける必要がないので、検出装置全体のコストを抑制することができる。
【0013】
第4の発明に係る検出装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、検出手段は、反射光の波長を検出するための手段を含む。
【0014】
第4の発明によると、締結部材の状態が緩んでいない状態から緩んだ状態に変化したことに応じて、反射光の波長が変化する。そのため、反射光の波長が変化したことを検出手段により検出することにより、締結部材の緩みを検出することができる。
【0015】
第5の発明に係る検出装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、検出手段は、予め定められた波長の反射光の強度を検出するための手段を含む。
【0016】
第5の発明によると、締結部材の状態が緩んでいない状態から緩んだ状態に変化したことに応じて、反射光の波長が変化する。すなわち、締結部材が緩んでいない状態における波長の反射光の強度は、締結部材が緩んだ状態に変化することにより低下する。そのため、予め定められた波長(たとえば、締結部材が緩んでいない状態における反射光の波長)の反射光の強度を検出することにより、締結部材の緩みを検出することができる。
【0017】
第6の発明に係る検出装置においては、第5の発明の構成に加えて、予め定められた波長は、締結部材が緩んでいない状態における反射光の波長である。
【0018】
第6の発明によると、締結部材が緩んでいない状態における波長の反射光の強度が低下したことを検出することにより、締結部材の緩みを検出することができる。
【0019】
第7の発明に係る蓄電機構は、第1〜6のいずれかの発明に係る検出装置を備える。そのため、第1〜6のいずれかの発明に係る検出装置を用いて、締結部材の緩みを安価に精度よく検出することができる蓄電機構を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る検出装置の検出対象となる端子ボルトを備えた二次電池について説明する。なお、本実施の形態においては、二次電池の端子ボルトの状態を検出する検出装置について説明するが、本実施の形態に係る検出装置の検出対象となる端子ボルトを備える蓄電機構は、二次電池に限定されず、たとえば、キャパシタであってもよい。また、本実施の形態に係る検出装置を備えた蓄電機構についても本発明の一態様である。
【0022】
二次電池100は、エンジンとモータとの駆動力により走行するハイブリッド車両や、モータの駆動力により走行する電気自動車に搭載される。二次電池100は、蓄電された電力をモータに放電したり、モータで発電された電力を充電したりする。なお、二次電池100は、必ずしも車両に搭載されることに限定されない。
【0023】
二次電池100は、筐体110およびエンドプレート120,130で覆われている。筐体110の内部には、低電圧のニッケル水素電池セルを直列に数個程度接続した電池モジュールが、エンドプレート120,130の水平方向に対して2列、鉛直方向に対して6列設けられる。なお、電池セルおよび電池モジュールの配列個数および配列方向は、これらに限定されない。また、二次電池100は、ニッケル水素電池であることに限定されない。
【0024】
水平方向に設けられた2列の電池モジュールの各端子は、端子ボルト140が締結されることにより、エンドプレート130内に設けられたバスバー132に接触する。バスバー132により直列に接続された2列の電池モジュールは、エンドプレート120内に設けられたバスバー(図示せず)により、鉛直方向に設けられた6列の電池モジュールと直列に接続される。
【0025】
図2を参照して、二次電池100の電池モジュールの端子とバスバー132との接続構造について説明する。なお、図2は、図1の水平方向の断面図を示す。
【0026】
二次電池100の内部は、壁面112により2つの空間に分けられ、各空間には、上述のように、2列の電池モジュール150A,150Bが設けられる。各電池モジュール150A,150Bのエンドプレート130側の端部には、接続リング160A,160Bが接続される。
【0027】
接続リング160A,160Bのエンドプレート130側には、端子ボルト140の雄ねじに対応する雌ねじが内面に切られたボルト穴部162A,162Bが設けられる。エンドプレート130に設けられた貫通部134A,134Bを経由して、端子ボルト140がボルト穴部162A,162Bに締結されることにより、接続リング160A,160B(以下、単に接続リング160とも記載する)と、バスバー132とが接触した状態で固定される。
【0028】
以上のような構成において、車両走行時の振動などにより端子ボルト140が緩む場合がある。端子ボルト140が緩むと、電池モジュールの各端子である接続リング160とバスバー132との間の密着性が低下して接触抵抗が増大し、エネルギーの損失が大きくなったり、二次電池100からの電力が出力されなくなったりする場合がある。このような問題を解決するため、本実施の形態においては、検出装置により端子ボルト140の緩みを検出する。
【0029】
図3を参照して、本実施の形態に係る検出装置について説明する。本実施の形態に係る検出装置は、FBG(Fiber Bragg Grating)200と、送受信器300と、ECU(Electronic Control Unit)400とを含む。
【0030】
FGB200は、各端子ボルト140ごとに設けられ、一方の先端側のコア部に複数の回折格子210が形成された光ファイバである。FGB200の回折格子210が設けられた側の先端は、エンドプレート130と端子ボルト140との間に巻き付けられ、端子ボルト140と接続リング160との締結力によって生じる圧力により、エンドプレート130と端子ボルト140との間に挟持される。FGB200の回折格子210が設けられた側と異なる側の先端は、送受信器300に接続される。
【0031】
送受信器300は、ECU400にハーネスなどにより接続される。送受信器300は、SLD(Super Luminescent Diode)やLED(Light Emit Diode)など、広い波長帯域をもつ光源を備える。送受信器300は、ECU400からの信号に基づいて光源を制御して、各FGB200に多波長の光を入射する。さらに、送受信器300は、各FGB200への入射光に対する反射光の波長を検出する波長センサを各FGB200ごとに備える。送受信器300は、各波長センサによる検出結果を表わす信号をECU400に送信する。なお、図3において、送受信器300とECU400とを別々に構成しているが、たとえば、送受信器300とECU400とを1つに構成してもよい。
【0032】
図4および図5を参照して、本実施の形態に係るFGB200について説明する。送受信器300からFGB200に多波長の光が入射された場合、FGB200は、複数の回折格子210間の距離に応じた特定の波長の光を反射する特性を有する。以下、この反射光をブラッグ波とも記載し、この反射光の波長をブラッグ波長とも記載する。
【0033】
回折格子210間の距離が変化すると、ブラッグ波長が変化する。具体的には、回折格子210間の距離が短くなると、ブラッグ波長は短くなる。そのため、車両の走行による振動等の影響により端子ボルト140が緩んで端子ボルト140からFGB200に加えられる圧力が小さくなると、回折格子210間の距離が短くなり、図5に示すように、ブラッグ波長は、初期波長λ(1)から回折格子210間の距離に応じてΔλ(1)だけ短いλ(2)に変化する。
【0034】
本実施の形態においては、このようなFGB200の特性を利用して、端子ボルト140の緩みを検出する。
【0035】
図6を参照して、本実施の形態に係る検出装置の一部を構成するECU400が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、各FGB200ごとに行なわれる。また、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0036】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU400は、送受信器300に多波長の入射光を発生させる指令を出力する。S102にて、ECU400は、FGB200のブラッグ波長を検出する。
【0037】
S104にて、ECU400は、ブラッグ波長が初期波長λ(1)よりしきい値以上短いか否かを判断する。なお、初期波長λ(1)は、端子ボルト140が十分に締結された状態で検出されたブラッグ波長の値である。また、しきい値は、電池モジュールの各端子とバスバー132との間の密着性と端子ボルト140の緩みとの相関関係に基づいて予め定められる。初期波長λ(1)およびしきい値は、ECU400内のメモリに予め記憶される。ブラッグ波長が初期波長λ(1)よりしきい値以上短いと(S104にてYES)、処理はS108に移される。そうでないと(S104にてNO)、処理はS106に移される。
【0038】
S106にて、ECU400は、端子ボルト140が緩んでいると判断する。S108にて、ECU400は、端子ボルト140が緩んでいないと判断する。
【0039】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る検出装置の動作について説明する。
【0040】
エンドプレート130と各端子ボルト140との間には、FGB200が、端子ボルト140により挟持される。車両走行時の振動などの影響により、端子ボルト140が緩んで端子ボルト140からFGB200に加えられる圧力が小さくなると、回折格子210間の距離が短くなり、FGB200からのブラッグ波長は短くなる。そこで、ブラッグ波長が初期波長λ(1)よりしきい値以上短くなると(S104にてYES)、端子ボルト140が緩んでいると判断される(S106)。これにより、端子ボルト140の緩みを検出することができる。
【0041】
ここで、FGB200は、光ファイバで構成される。光ファイバは、圧電式の圧力センサなどと比べて安価である。そのため、圧電式の圧力センサを端子ボルトごとに設ける場合と比べて、検出装置のコストを抑制することができる。
【0042】
特に、本実施の形態においては、端子ボルト140ごとにFGB200が設けられ、各FGB200ごとのブラッグ波長が検出される。そのため、いずれの端子ボルト140が緩んでいるかを検出することができるとともに、圧電式の圧力センサを端子ボルトごとに複数設ける場合と比べて、検出装置のコストをより抑制することができる。
【0043】
さらに、ブラッグ波は光であることから、車両駆動用のモータを制御するインバータに備えられるスイッチング素子などによる電磁ノイズの影響を受けない。そのため、端子ボルト140の緩みを精度よく検出することができる。
【0044】
以上のように、本実施の形態に係る検出装置によれば、安価な光ファイバで構成されるFGBが、二次電池の端子ボルトによって挟持される。電磁ノイズの影響を受けないFGBからのブラッグ波長を検出することにより、端子ボルトの緩みが検出される。そのため、二次電池の端子ボルトの緩みを安価に精度よく検出することができる。
【0045】
なお、本実施の形態においては、ブラッグ波長を検出することにより端子ボルトの緩みを検出したが、端子ボルトの緩みを検出する方法は、これに限定されない。たとえば、ブラッグ波長の初期波長λ(1)の波長の光の強度を検出することにより端子ボルトの緩みを検出するようにしてもよい。すなわち、端子ボルト140の緩みでブラッグ波長が短くなりλ(1)の波長の光の強度が低下した場合に、端子ボルトが緩んでいると検出するようにしてもよい。
【0046】
<第2の実施の形態>
図7を参照して、本実施の形態に係る検出装置について説明する。なお、本実施の形態に係る二次電池は、上述の第1の実施の形態に係る二次電池と同じ構成である。同じ構成については同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0047】
本実施の形態に係る検出装置は、FBG1200と、送受信器1300と、ECU1400とを含む。
【0048】
FGB1200は、1本の光ファイバで構成される。FGB1200は、各端子ボルト140により各端子ボルト140とエンドプレート130との間に挟持される。FGB1200を構成する光ファイバのコア部分には、各端子ボルト140による挟持個所ごとに、複数の回折格子1210が形成される。FGB1200の一端は、送受信器1300に接続される。
【0049】
送受信器1300は、ECU1400にハーネスなどにより接続される。送受信器1300は、SLDやLEDなど、広い波長帯域をもつ光源を備える。送受信器1300は、ECU1400からの信号に基づいて光源を制御して、FGB1200に多波長の光を入射する。さらに、送受信器1300は、ブラッグ波の強度Tを検出する強度センサを備える。送受信器1300は、強度センサにより検出したブラッグ波の強度Tを表わす信号をECU400に送信する。
【0050】
図8を参照して、本実施の形態に係るFGB1200について説明する。送受信器1300からFGB1200に多波長の光が入射された場合、FGB1200は、複数の回折格子1210間の距離に応じたブラッグ波長の光を反射する特性を有する。回折格子1210は、1本の光ファイバで形成されたFGB1200の各端子ボルト140による挟持個所ごとに形成される。そのため、各回折格子1210のブラッグ波長が初期波長λ(3)で共通していた場合には、初期波長λ(3)の波長の光の強度は、各回折格子1210の数量が多いほど増大される。各端子ボルト140のうちのいずれかの端子ボルトが緩むと、図8に示すように、緩んだ端子ボルト140に挟持されていた回折格子1210からのブラッグ波長が、初期波長λ(3)よりΔλ(2)だけ短いλ(4)に変化する。そのため、初期波長λ(3)の波長のブラッグ波の強度Tは、図8に示すように、ブラッグ波長がλ(4)に変化したブラッグ波の強度T(1)だけ初期強度T(0)から減少する。
【0051】
本実施の形態においては、このようなFGB1200の特性を利用して、端子ボルト140の緩みを検出する。
【0052】
図9を参照して、本実施の形態に係る検出装置の一部を構成するECU1400が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、図9に示したフローチャートの中で、前述の図6に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについての処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0053】
S200にて、ECU1400は、初期波長λ(3)の波長のブラッグ波の強度Tを検出する。
【0054】
S202にて、ECU1400は、ブラッグ波の強度Tが初期強度T(0)よりしきい値以上減少したか否かを判断する。なお、初期強度T(0)は、各端子ボルト140が十分に締結された状態における初期波長λ(3)のブラッグ波の強度である。また、しきい値は、いずれか1つの回折格子1210からのブラッグ波の強度T(1)に基づいて予め定められる。初期強度T(0)およびしきい値は、ECU400内のメモリに予め記憶される。ブラッグ波の強度Tが初期強度T(0)よりしきい値以上減少すると(S202にてYES)、処理はS204に移される。そうでないと(S202にてNO)、処理はS206に移される。
【0055】
S204にて、ECU1400は、いずれかの端子ボルト140が緩んでいると判断する。S206にて、ECU1400は、いずれの端子ボルト140も緩んでいないと判断する。
【0056】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る検出装置の動作について説明する。
【0057】
エンドプレート130と各端子ボルト140との間には、1本の光ファイバにより形成されたFGB1200が挟持される。車両走行時の振動などの影響により、各端子ボルト140のいずれかが緩むと、緩んだ端子ボルト140に挟持されていた回折格子1210からのブラッグ波長が短くなる。そのため、初期波長λ(3)の波長のブラッグ波の強度Tが減少する。
【0058】
そこで、ブラッグ波の強度Tが初期強度T(0)よりしきい値以上減少すると(S202にてYES)、いずれかの端子ボルト140が緩んでいると判断される(S204)。これにより、いずれかの端子ボルト140が緩んでいることを、第1の実施の形態と同様に、安価に精度よく検出することができる。さらに、FGB1200は1つの光ファイバであるため、送受信器1300における光源や強度センサを複数設ける必要がない。そのため、検出装置全体のコストをより抑制することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態に係る検出装置によれば、安価な光ファイバで形成されるFGBが、二次電池の端子ボルトによって挟持される。電磁ノイズの影響を受けないFGBからのブラッグ波の強度を検出することにより、端子ボルトの緩みが検出される。そのため、二次電池の端子ボルトの緩みを安価に精度よく検出することができる。さらに、複数の端子ボルトに対してFGBは1本であるため、光源や強度センサを複数設ける必要がない。そのため、検出装置全体のコストをより抑制することができる。
【0060】
なお、本実施の形態においては、ブラッグ波の強度を検出することにより端子ボルトの緩みを検出したが、端子ボルトの緩みを検出する方法は、これに限定されない。たとえば、ブラッグ波長を検出することにより端子ボルトの緩みを検出するようにしてもよい。すなわち、ブラッグ波長が初期波長λ(3)以外の波長(たとえば図8のλ(4))のブラッグ波長が検出された場合に、いずれかの端子ボルト140が緩んでいると検出するようにしてもよい。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る検出装置の検出対象となる端子ボルトを備えた二次電池の構造を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る検出装置の検出対象となる端子ボルトを備えた二次電池の電池モジュールの端子とバスバーとの接続構造を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る検出装置の外観図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る検出装置の一部を構成するFGBの構造および特性を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る検出装置の一部を構成するFGBの特性を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る検出装置の一部を構成するECUの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る検出装置の検出対象となる端子ボルトを備えた二次電池の構造を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る検出装置の一部を構成するFGBの特性を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る検出装置の一部を構成するECUの制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
100 二次電池、110 筐体、112 壁面、120,130 エンドプレート、132 バスバー、134A,134B 貫通部、140 端子ボルト、150A,150B 電池モジュール、160,160A,160B 接続リング、162A,162B ボルト穴部、200,1200 FGB、210,1210 回折格子、300,1300 送受信器、400,1400 ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電機構の端子と前記端子間を接続する接続部材とを接触させるように、前記接続部材を介在させて前記端子に締結される締結部材の状態を検出する検出装置であって、
前記端子と前記締結部材との間に前記締結部材により挟持され、前記締結部材の締結力による圧力に応じた波長の光を反射する複数の回折格子がコア部に備えられた光ファイバと、
前記光ファイバに接続された光源と、
前記光ファイバからの反射光に関する物理量を検出するための検出手段とを含む、検出装置。
【請求項2】
前記締結部材は、複数設けられ、
前記光ファイバは、前記複数の締結部材ごとに複数設けられる、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記締結部材は、複数設けられ、
前記光ファイバは、前記複数の締結部材に挟持された部分ごとに前記回折格子が備えられた1つの光ファイバである、請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記反射光の波長を検出するための手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の検出装置。
【請求項5】
前記検出手段は、予め定められた波長の前記反射光の強度を検出するための手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の検出装置。
【請求項6】
前記予め定められた波長は、前記締結部材が緩んでいない状態における前記反射光の波長である、請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の検出装置を備えた蓄電機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−241421(P2008−241421A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81435(P2007−81435)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】