説明

緩徐相抽出方法及び眼振データ解析システム

【課題】 回転刺激が与えられていない場合の眼振データからも高精度に緩徐相の自動抽出を行う、信頼性の高い緩徐相抽出方法。
【解決手段】 本発明の緩徐相抽出方法は、眼振データにおいてファジー理論を適用して緩徐相を抽出する方法であって、n(nは2以上の整数)個目の眼振データと(n−1)個目の眼振データとの差分データを算出するステップ、前記差分データの絶対値に基づいてメンバーシップ値を決定するステップ、及び前記メンバーシップ値を所定の閾値と比較することによって緩徐相を抽出するステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼振データにおける緩徐相抽出方法及びそれを用いた眼振データ解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医学的な眼球運動解析手法の1つに、前庭動眼反射を用いた解析手法がある。前庭動眼反射とは、頭部を回転した場合に、その回転とは反対方向に眼球が動く反射のことである。一定方向の加速度刺激が持続すると、眼球は逆方向に徐々に変位し、急速に元に戻るという運動が規則的に反復する。
【0003】
眼球運動において、徐々に変位するなめらかな成分は「緩徐相」、急速に元に戻る成分は「急速相」と呼ばれる。これら2つの相が交互に現れる現象は眼振として知られている。この眼振の様子を観測した画像系列から得られたデータを、以下「眼振データ」と言う。
前庭動眼反射解析のためには、小脳等の中枢の働きによって引き起こされる急速相成分を除去し、前庭動眼反射によって引き起こされる緩徐相成分のみを抽出する必要がある。
【0004】
従来、眼振データから急速相成分を除去し、緩徐相成分を抽出するための種々の手法が提案されてきた。例えば、非特許文献1に、眼振データにおいてファジー集合理論を適用して緩徐相を自動的に抽出する手法が開示されている。非特許文献1の手法等、従来の手法においては、被験者の頭部へ回転刺激(正弦波刺激)を与えた場合の眼振を観測した眼振データに対して、正弦波近似曲線に基づいてファジー集合理論を適用しメンバーシップ値を決定することによって緩徐相を抽出するものであった。
【0005】
【非特許文献1】Mohammad Arzi, Michel Magnin: "A Fuzzy Set Theoretical Approach to Automatic Analysis of Nystagmic Eye Movements" IEEE Trans. On Biomedical Engineering, vol.36, NO.9, pp.954-963
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、眼振は、被験者の頭部へ回転刺激(正弦波刺激)を与えた場合以外に、三半規管や脳の障害等の疾患等によっても引き起こされる。上記従来の手法は、被験者の頭部へ回転刺激が与えられている場合の眼振を観測した眼振データから緩徐相を抽出することはできるが、回転刺激が与えられていない場合の眼振を観測した眼振データからは精度良く緩徐相の抽出を行うことができない、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、回転刺激が与えられていない場合の眼振データからも高精度に緩徐相を抽出する、信頼性の高い緩徐相抽出方法及び眼振データ解析システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
本発明の1つの観点による緩徐相抽出方法は、眼振データにおいてファジー理論を適用して緩徐相を抽出する方法であって、n(nは2以上の整数)個目の眼振データと(n−1)個目の眼振データとの差分データを算出するステップ、前記差分データの絶対値に基づいてメンバーシップ値を決定するステップ、及び前記メンバーシップ値を所定の閾値と比較することによって緩徐相を抽出するステップ、を有する。
所定の閾値は、任意の閾値決定方法により決定され得るが、例えば、Kittlerの方法が高精度であるため好ましい。
この発明によれば、回転刺激が与えられている場合の眼振データのみならず、回転刺激が与えられていない場合の眼振データからも高精度に緩徐相を抽出する、信頼性の高い緩徐相抽出方法を実現できる。
【0009】
好ましくは、前記眼振データが、回転刺激が与えられている場合の眼振データであるか、回転刺激が与えられていない場合の眼振データであるかを選択するステップ、を更に有し、前記選択するステップにおいて回転刺激が与えられていない場合の眼振データが選択された場合に前記算出するステップ、前記決定するステップ、及び前記抽出するステップが実行される。
この発明によれば、回転刺激が与えられている場合の眼振データのみならず、回転刺激が与えられていない場合の眼振データからも高精度に緩徐相を抽出する、信頼性の高い緩徐相抽出方法を実現できる。
【0010】
本発明の1つの観点による眼振データ解析システムは、眼振データにおいてファジー理論を適用して緩徐相を抽出する眼振データ解析システムであって、n(nは2以上の整数)個目の眼振データと(n−1)個目の眼振データとの差分データを算出し、前記差分データの絶対値に基づいてメンバーシップ値を決定し、前記メンバーシップ値を所定の閾値と比較することによって緩徐相を抽出するデータ処理部を有する。
所定の閾値は、任意の閾値決定方法により決定され得るが、例えば、Kittlerの方法が高精度であるため好ましい。
この発明によれば、回転刺激が与えられている場合の眼振データのみならず、回転刺激が与えられていない場合の眼振データからも高精度に緩徐相を抽出する、信頼性の高い眼振データ解析システムを実現できる。
【0011】
好ましくは、前記データ処理部は、前記眼振データが、回転刺激が与えられていない場合の眼振データである場合に、n(nは2以上の整数)個目の眼振データと(n−1)個目の眼振データとの差分データを算出し、前記差分データの絶対値に基づいてメンバーシップ値を決定し、前記メンバーシップ値を所定の閾値と比較することによって緩徐相を抽出するよう構成されている。
この発明によれば、回転刺激が与えられている場合の眼振データのみならず、回転刺激が与えられていない場合の眼振データからも高精度に緩徐相を抽出する、信頼性の高い眼振データ解析システムを実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転刺激が与えられている場合の眼振データのみならず、回転刺激が与えられていない場合の眼振データからも高精度に緩徐相を抽出する、信頼性の高い緩徐相抽出方法及び眼振データ解析システムを実現できる、という有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施をするための最良の形態を具体的に示した実施例について、図面とともに記載する。
【実施例】
【0014】
図1〜図19を参照して、本発明の実施例における緩徐相抽出方法を用いた眼振データ解析システムについて説明する。
まず、図1を参照して、本実施例における緩徐相抽出方法を用いた眼振データ解析システムで扱う眼振データについて説明する。
【0015】
図1は、眼振データにおける緩徐相及び急速相を説明するための図である。眼振データには、通常、図1に示すように、緩やかな変位である「緩徐相」(符号1で示す)、及び、緩徐相とは反対の方向に急激に元に戻る変位である「急速相」(符号2で示す)がある。
【0016】
本実施例において、被験者の頭部へ回転刺激(正弦波刺激)を与えた場合の眼振を観察した眼振データ、及び、回転刺激が与えられていない場合の眼振を観察した眼振データの2種類の眼振データを取り扱う。両者は、後述するそれぞれの条件の下で被験者の眼球運動をビデオカメラで撮影した動画像から秒間30フレームで画像系列を獲得し、そこから眼振データを算出することで得られる。(即ち、1秒間にそれぞれ30個の眼振眼位データが得られる。)
【0017】
本実施例における眼振データとして、画像系列の各画像における眼球の位置を示す眼振眼位データ(以下、単に「眼位データ」と記す)と、眼振時の眼球の変位の速度を示す眼振速度データ(以下、単に「速度データ」と記す)とを用いる。
【0018】
眼位データを算出する方法として、例えば、ある瞬間の画像から虹彩紋裡のパターンを抽出し、そのパターンと正面視時の画像のパターンとを比較することで眼位の差を求める方法を用いる。速度データを算出する方法として、例えば、画像系列において連続する2つの画像間での眼球の位置の変位を測定し、それを各データ間の時間(秒間30フレームの場合、(1/30)秒)で割ることによって求める方法を用いる。
【0019】
被験者の頭部へ回転刺激を与えた場合の眼振データについて説明する。
被験者の頭部を、60度後屈させ、かつ、右又は左の方向に45度回旋させた姿勢に保ち、時計回り又は反時計回りに被験者を回転させる。このようにして被験者の頭部へ回転刺激を与えることにより、半規管を刺激して眼振を誘発する。回転中に生じる眼球運動をビデオカメラで撮影する。
回転刺激の周波数は、例えば、0.1Hz(すなわち、10秒間に1回転)と0.5Hz(すなわち、2秒間に1回転)である。一般的に、このように被験者の頭部に回転刺激を与えた場合、得られる眼振データ中の緩徐相成分は、回転刺激の周波数に近い周波数の正弦波状になることが知られている。特に速度データに関して、この特徴が顕著に現れる。
【0020】
回転刺激が与えられていない場合の眼振データについて説明する。
半規管に疾患を有する良性発作性頭位めまい症(BPPV : Benign Paroxysmal Positional Vertigo)患者を対象に、後半規管の面で被験者の頭位を最初に1回だけ変化させて、眼振を誘発する。その後生じる眼球運動をビデオカメラで撮影する。
【0021】
図2及び図19を参照して、本実施例における緩徐相抽出方法を用いた眼振データ解析システムの構成について説明する。図19は、本実施例における緩徐相抽出方法を用いた眼振データ解析システムの構成を示すブロック図である。図2は、本実施例における緩徐相抽出方法を用いた眼振データ解析システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0022】
図19に示す、本実施例における緩徐相抽出方法を用いた眼振データ解析システムは、眼振データ抽出部2000、操作部2001、データ処理部2002、記憶部2003、画像処理部2004、及び表示部2005を有する。
【0023】
眼振データ抽出部2000は、撮影された画像データを入力して、眼振データを抽出する。
操作部2001は、操作者が、撮影された画像データの種別、即ち、回転刺激が与えられている場合のデータであるかどうか、あるいは、眼位データであるか速度データであるか等を入力するための操作入力部である。
【0024】
データ処理部2002は、操作部2001から入力した眼振データ種別を用いて、記憶部2003からそれぞれの種別に対応するフローチャート(処理手順)を読み出し、眼振データ抽出部2000から入力した眼振データに対して緩徐相を抽出するための処理を行う(詳細は後述)。
【0025】
画像処理部2004は、データ処理部2002が抽出した緩徐相を眼振データ抽出部2000が抽出した元の眼振データに重畳して、表示画像データを作成する。具体的には、眼振データをグラフ化した画像に、緩徐相の部分を強調した画像を重ね合わせる等により表示画像データを作成する。
表示部2005は、画像処理部2004が作成した表示画像データをディスプレイ等に出力する。操作者(例えば、医師等)は、表示部2005に表示された緩徐相抽出結果である画像データによって、BPPVを診断する。
【0026】
本実施例において、後半規管の面で被験者の頭位を最初に1回だけ変化させた場合の眼振データの緩徐相を抽出することによって、BPPVを診断しているが、これに限らず、他の疾患によって出現する眼振(注視眼振、自発眼振等)の特徴に基づいて別の方法によって眼振を誘発することによって、別の疾患を診断することもできる。
【0027】
図2を参照して、本実施例における緩徐相抽出方法を用いた眼振データ解析システムの処理の流れについて説明する。
ステップS201において、眼振データ抽出部2000は、眼球運動をビデオカメラで撮影して得られた画像系列から眼振データを抽出する。
ステップS202において、データ処理部2002は、操作部2001から入力された眼振データ種別に基づいて、抽出された眼振データが回転刺激を与えられた場合の眼振データであるか否かを調べる。眼振データが回転刺激を与えられた場合の眼振データである場合、ステップS203に進む。そうでない場合は、ステップS206に進む。
【0028】
ステップS203において、データ処理部2002は、操作部2001からの眼振データ種別に基づいて、抽出された眼振データが速度データであるか眼位データであるかを調べる。眼振データが速度データである場合は、ステップS204に進む。眼位データである場合は、ステップS205に進む。
【0029】
各ステップS204、S205、及びS206において、データ処理部2002は、眼振データ種別に基づいて記憶部2003から読み出したフローチャート(後に図3、図8、及び図9を用いて説明する。)を実行し、緩徐相を抽出する。ステップS204、S205、及びS206における緩徐相抽出方法についての詳細な説明は後述する。
【0030】
ステップS207において、画像処理部2004は、各ステップS204、S205、及びS206で抽出された緩徐相を眼振データ抽出部2000が抽出した元の眼振データに重畳して、表示画像を作成する。
【0031】
ステップS208において、表示部2005は、画像処理部2004が作成した表示画像データを出力する。
【0032】
図3〜図9を参照して、本実施例の緩徐相抽出方法について説明する。
まず、図3〜図7を参照して、ステップS204の回転刺激が与えられている場合の速度データの緩徐相抽出方法について、詳細に説明する。図3は、回転刺激が与えられている場合の速度データについての緩徐相抽出方法を示すフローチャートである。
【0033】
ステップS301において、速度データ中の急激なスパイクを除去する。
例えば、ローパスフィルタを用いる方法がある。元データyとローパスフィルタ通過後のデータy’との差を取り、ノイズ成分qとする。ノイズ成分qは、以下の式(1)で示される。
=y−y’ (i=2,3,・・・,N) ・・・・・・ (1)
【0034】
各ノイズ成分qの絶対値と閾値qrefとを比較し、次式(2)を満たすデータを急激なスパイクと見なして除去する。
|q|>qref ・・・・・・ (2)
【0035】
ステップS302において、ステップS301でスパイクの除去を行った後のデータを、複数の断片に周期分割する。
本実施例では、まず、周期分割のために次式(3)及び(4)で表される曲線f(x)を定義する。次式(3)において、A、B、及びCはフィッティングのためのパラメータである。ωは、1秒当たり30個のデータが得られる場合における、回転刺激の周波数Fに対する角周波数であり、次式(4)で表される。
(x)=A・sin(ω・x)+B・cos(ω・x)+C ・・・・・・ (3)
ω=2πF/30 ・・・・・・ (4)
【0036】
速度データ(x,y)に対して、次式(5)によって示された、定義した曲線f(x)と各データyとの二乗誤差の総和Sが最小となるように、パラメータA、B、及びCを決定する。Nは速度データの全データ数を示す。
【数1】

【0037】
例えば、図4に示される速度データに対して上記の処理を行い、上記式(3)のパラメータA、B、及びCを決定した場合の曲線を図5に示す。この曲線の周期に従って速度データを分割する。図5の曲線の周期に従って速度データを分割した様子を図6に示す。分割された断片毎に以降のファジー集合理論を用いた解析を行うことで、眼振データが図4のように正弦波形が上下に変位している場合でも、緩徐相の抽出精度を維持することが出来る。
【0038】
ステップS303において、ステップS302で周期分割された最初の断片を選択する。また、パラメータの初期値設定としてloop=1とする。
ステップS304において、選択された断片における速度データを近似する曲線f(x)を決定する。
まず、周波数F(単位はHz)の回転刺激に対して次式(6)で表される曲線(以下、「慣性曲線」と記す)f(x)を定義する。次式(6)において、P、Q、及びRはフィッティングパラメータである。ωは、1秒当たり30個のデータが得られる場合における、回転刺激の周波数Fに対する角周波数であり、上記式(4)で表される。
(x)=P・sin(ω・x)+Q・cos(ω・x)+R ・・・・・・ (6)
【0039】
選択された断片における速度データに対して、次式(7)によって示された、定義した慣性曲線f(x)と各データyとの二乗誤差の総和Sが最小となるように、慣性曲線f(x)のパラメータP、Q、及びRが決定される。次式(7)において、a及びbは周期分割された断片の始点及び終点、μはメンバーシップ値をそれぞれ示す。初期状態において、選択された断片における速度データの全ての点でμ=1である。
【数2】

【0040】
ステップS305において、パラメータが決定された上記の慣性曲線f(x)を用いてメンバーシップ値を決定する。
まず、速度データ(x,y)に対して、次式(8)を満たすnの値を決定する。Δyは、次式(9)で定義される解像度である。max(y)は、データyのうち、最大値であるデータを示す。min(y)は、データyのうち、最小値であるデータを示す。
Δyとして任意の値が設定されうるが、本実施例では、一例として、眼位データの最大値max(y)及び最小値min(y)の差を20で割った値とする。nは、速度データの各点における、慣性曲線f(x)に対する、Δyを単位とした速度データyの分離度を示す値である。
・Δy≦(y−f(x))<(n+1)・Δy ・・・・・・ (8)
Δy=(max(y)−min(y))/20 ・・・・・・ (9)
【0041】
図7を参照して、メンバーシップ値の求め方の一例を説明する。
まず、図7に示すように、所定の速度データ個数(図7では速度データ3個分)に相当する幅wを有し、互いの重なり幅が(w/3)である2つの窓W1及びW2を定義する。1つ目の窓W1の中にある速度データの各点(現在の注目点と以前の2つの点)の分離度の総和をm1(=ni−2+ni−1+n)、2つ目の窓W2の中にある眼振データの各点(現在の注目点と以後の2つの点)の分離度の総和をm2(=n+ni+1+ni+2)、1つ目の窓W1及び2つ目の窓W2の重なり部分の中にある眼振データの点(現在の注目点)の分離度の総和をm3(=n)とする。m1、m2、及びm3は、上記式(8)から算出される。
【0042】
算出されたm1、m2、及びm3を、次式(10)に示すように全て掛け合わせる。これにより、1つ目の窓W1及び2つ目の窓W2の重なり部分に属する点(現在の注目点)における、重み付けを行ったメンバーシップ値μ’が求められる。
μ’=m1・m2・m3 (i=a+2,a+3,・・・,b−3,b−2) ・・・(10)
【0043】
周期分割された断片において、2つの窓W1及びW2を順次ずらしていくことによって、速度データの各点におけるメンバーシップ値μ’が求められる。最終的に、求められたメンバーシップ値μ’に対して次式(11)に示すように正規化を行い、速度データの各点におけるメンバーシップ値μを算出する。max(μ’)は、選択された断片において、上記のようにして求めたメンバーシップ値μ’のうち、最大値であるメンバーシップ値を示す。メンバーシップ値μは、1に近いほど慣性曲線f(x)に近く、緩徐相である可能性が高いことを示す。
μ=1−(μ’/max(μ’)) ・・・・・・ (11)
【0044】
ステップS306において、パラメータloopが3であるか否かを調べ、loop=3であればステップS308に進む。そうでなければ、パラメータloopに1を足して(ステップS307)、ステップS304に戻り、メンバーシップ値μを求めるステップS304及びS305を繰り返す。ステップS304及びS305を複数回繰り返すことによって、最適なメンバーシップ値μが得られる。本実施例においては、ステップS304及びS305を3回繰り返しているが、繰り返す回数は、1回以上の任意の回数であって良い。
【0045】
ステップS308において、現在選択されている断片が最後の断片であるか否かを調べる。最後の断片でなければ、次の断片を選択してパラメータloopを1に初期設定して(ステップS309)、ステップ304に戻り、次の断片に対して同様の処理を繰り返す。最後の断片であれば、ステップ310へ進む。
【0046】
ステップS310において、緩徐相を抽出するための閾値を決定する。本実施例において、閾値決定法としてKittlerの方法を用いる。Kittlerの方法は、ある閾値によってメンバーシップ値の分布を2つのクラスに分割した場合に、あるメンバーシップ値がどちらのクラスに属するのかを示すあいまい度を、最悪の分布(正規分布)に対して最小にする方法である。
【0047】
閾値k(0<k<1)に対して、閾値k以上のメンバーシップ値を持つクラスをC、閾値k未満のメンバーシップ値を持つクラスをCとする。以下の式(12)によって示される、2クラスのどちらに属するのかのあいまい度E(k)を最小にする値kを閾値として選定する。Nは全メンバーシップ値の数(即ち、全速度データの数)、NはクラスCに属するメンバーシップ値の数、NはクラスCに属するメンバーシップ値の数、σ(k)及びσ(k)はクラスC及びCにおけるそれぞれのメンバーシップ値の分散を示す。また、ω=N/N、ω=N/Nの各式が成り立つ。
E(k)=ωlog{σ/ω}+ωlog{σ/ω} ・・・・・・ (12)
【0048】
なお、Kittlerの方法に代えて、既知の大津の方法等、他の閾値決定方法を用いても良い。しかし、Kittlerの方法が、緩徐相抽出精度が高いため好ましい。
【0049】
ステップS311において、緩徐相の抽出が実行される。ステップS310で決定された閾値kと、各速度データの点におけるメンバーシップ値μとを比較し、メンバーシップ値μが閾値k以上である場合に、そのデータ点が緩徐相であると見なす。緩徐相として抽出されたデータ点は、元データのグラフ上に黒点として印される等によって元データ上に反映され、表示画像データが作成される。
以上ステップS301〜S311の処理が終了した後、図2のステップS207に進む。図2のステップS207については、既に説明した。
【0050】
次に、図8を参照して、ステップS205の回転刺激が与えられている場合の眼位データの緩徐相抽出方法について、詳細に説明する。図8は、回転刺激が与えられている場合の眼位データについての緩徐相抽出方法を示すフローチャートである。
【0051】
回転刺激が与えられている場合の眼位データは、速度データに比べて正弦波形が保たれていないため、図3に示したフローチャートのステップに、差分データを算出するステップ(ステップS801)を追加する。
【0052】
ステップS801において、眼位データの各点に対して、その眼位データと1つ前の眼位データとの差を取り、差分データを得る。回転刺激が与えられている場合の眼位データは、変位が激しいため、差分データを得ることで、眼位データをより正弦波状に近づけることができる。眼位データ(x,y)に対して、差分データdは以下の式(1)で定義される。Nは、全眼位データ数である。
=y−yi−1 (i=2,3,・・・,N) ・・・・・・ (13)
【0053】
ステップS802〜S812は、速度データに代えて上記のステップS801で得られた差分データに対して実行される点以外、上記した図3のステップS301〜S311と同様であるので、説明を省略する。以上ステップS801〜S812の処理が終了した後、図2のステップS207に進む。図2のステップS207については、既に説明した。ステップS801は、ステップS802の直前に実行されているが、ステップS802よりも後のタイミングで実行されても良い。
【0054】
なお、図3及び図8に示したフローチャートにおいて、抽出された緩徐相に対する最終フィッティング曲線を求めるステップを追加しても良い。最終フィッティング曲線の振幅と位相が医学的に有用だからである。その場合、抽出された緩徐相に対して次式(14)の曲線を定義し、この式のパラメータa、b、c、及びdを次式(15)のGを最小にするように決定することで最終フィッティング曲線を求める。なお、μは最終的に得られたメンバーシップ値、zは抽出された緩徐相成分である。
f(x)=a+b・x+c・sin(ω・x+d) ・・・・・・ (14)
【数3】

【0055】
次に、図9を参照して、ステップS206の回転刺激が与えられていない場合の眼振データの緩徐相抽出方法について、詳細に説明する。図9は、回転刺激が与えられていない場合の眼振データについての緩徐相抽出方法を示すフローチャートである。
【0056】
回転刺激が与えられていない場合の眼振データについては、正弦波形が得られないため、緩徐相の形状を予測することが困難で、回転刺激が与えられている場合のように慣性曲線を定義できない。そこで本実施例では、眼振データの各点に対して、その眼振データと1つ前の眼振データとの差の絶対値に着目し、慣性曲線の代わりに差分の絶対値を用いる。「差分の絶対値が小さい」ということは、すなわちその眼振データが緩徐相に属する度合いが高く、「差分の絶対値が大きい」ということは、すなわちその眼振データが急速相に属する度合いが高い。
【0057】
なお、この手法は、眼位データ及び速度データのいずれにも適用可能である。以下、眼位データに適用した場合についてのみ記載し、速度データについての説明は同様であるため省略する。
【0058】
ステップS901において、眼位データの各点に対して、その眼位データ及び1つ前の眼位データの差を算出し、差分データを得る。眼位データ(x,y)に対して、差分dは以下の式(16)で定義される。Nは全眼位データ数である。
=y−yi−1 (i=2,3,・・・,N) ・・・・・・ (16)
【0059】
ステップS902において、ステップS901で算出された差分データdの絶対値を用いて、メンバーシップ値を決定する。
まず、差分データの各点において、次式(17)のnの値を決定する。Δyは、次式(18)で定義される解像度である。max(d)は、上記のようにして求めた差分データdのうち、最大値である差分データを示す。min(d)は、上記のようにして求めた差分データdのうち、最小値である差分データを示す。
Δyは、任意の値を設定しうるが、本実施例では、一例として、差分データの最大値max(d)及び最小値min(d)の差を20で割った値とする。nは、Δyを単位とした差分データdの絶対値の分離度を示す値である。
・Δy≦|d|<(n+1)・Δy ・・・・・・ (17)
Δy=(max(d)−min(d))/20 ・・・・・・ (18)
【0060】
分離度nの分布の求め方の一例を説明する。
まず、所定の差分データ個数(例えば3個分)に相当する幅wを有し、互いの重なり幅が(w/3)である2つの窓W1及びW2を定義する。1つ目の窓W1の中にある差分データの絶対値の各点(現在の注目点と以前の2つの点)の分離度の総和をm1(=ni−2+ni−1+n)、2つ目の窓W2の中にある差分データの絶対値の各点(現在の注目点と以後の2つの点)の分離度の総和をm2(=n+ni+1+ni+2)、1つ目の窓W1及び2つ目の窓W2の重なり部分の中にある差分データの絶対値の点(現在の注目点)の分離度の総和をm3(=n)とする。m1、m2、及びm3は、上記式(17)から算出される。
【0061】
算出されたm1、m2、及びm3を、次式(19)に示すように全て掛け合わせる。これにより、1つ目の窓W1及び2つ目の窓W2の重なり部分に属する差分データの絶対値の点(現在の注目点)における、重み付けを行ったメンバーシップ値μ’が求められる。
μ’=m1・m2・m3 (i=3,4,・・・,N−1,N−2)・・・・・・(19)
【0062】
2つの窓W1及びW2を順次ずらしていくことによって、差分データの絶対値の各点におけるメンバーシップ値μ’が求められる。最終的に、求められたメンバーシップ値μ’に対して次式(20)に示されるように正規化を行い、差分データの絶対値の各点におけるメンバーシップ値μを算出さする。max(μ’)は、上記のようにして求めたメンバーシップ値μ’のうち、最大値であるメンバーシップ値を示す。メンバーシップ値μは、1に近いほど緩徐相である可能性が高いことを示す。
μ=1−(μ’/max(μ’)) ・・・・・・ (20)
【0063】
ステップS903及びS904は、上記した図3のステップS310及びS311、上記した図8のステップS811及びS812と同様であるので、説明を省略する。以上ステップS901〜S904の処理が終了した後、図2のステップS207に進む。図2のステップS207については、既に説明した。
【0064】
以上のように、本実施例における緩徐相抽出方法によれば、回転刺激が与えられていない場合の眼振データに対しても緩徐相を抽出することができる。なお、図9に示した回転刺激が与えられていない場合の眼振データについての緩徐相抽出方法は、回転刺激が与えられている場合の眼振データについても適用することができる。その場合、図9のフローチャートによる処理は、図3及び図8のフローチャートによる処理との比較からも明らかなように、処理時間が短くて済むという効果が得られる。
【0065】
図10〜図18を参照して、本実施例の緩徐相抽出方法の精度について評価する。
まず、図10を用いて、本実施例の緩徐相抽出方法をデータモデルに対して適用した場合の精度について述べる。図10は、4つのデータモデルを示す図である。
【0066】
図10(a)は、回転刺激が与えられている場合のデータモデルであって、緩徐相成分の振幅が一定かつ水平方向に変位がない速度データモデルを示す。図10(b)は、回転刺激が与えられている場合のデータモデルであって、緩徐相成分の振幅が一定であるが、斜めに傾いている速度データモデルを示す。図10(c)は、回転刺激が与えられている場合のデータモデルであって、緩徐相成分の振幅が一定ではない速度データモデルを示す。図10(d)は、眼振データの形状がのこぎり状である眼位データモデルを示す。
図10(a)、(b)、(c)、及び(d)に示したデータモデルを、それぞれ以下モデルA、B、C、及びDと記す。
【0067】
モデルA、B、及びCについては、緩徐相成分を正弦波とし、その正弦波信号に急速相成分に相当するランダムノイズを合成して作成した。モデルDについては、緩徐相としての傾きがゆるやかな曲線及び急速相としての傾きが急な曲線をつなぎあわせて作成した。
【0068】
上記の緩徐相抽出方法をモデルA、B、C、及びDへ適用して抽出された緩徐相データと、上記のモデル化した眼振データ中の既知の緩徐相データを比較照合することにより、緩徐相抽出精度を定量化する。緩徐相抽出精度pを次式(21)で定義する(pの単位は%である)。なお、抽出された緩徐相の数をU、全データ数をN、人為的に作り出した急速相の数をVとする。
p=(U/(N−V))×100 ・・・・・・ (21)
【0069】
図3のフローチャート及び図8のフローチャートを用いる緩徐相抽出方法をアルゴリズム1、図9のフローチャートを用いる緩徐相抽出方法をアルゴリズム2とする。
【0070】
アルゴリズム1をモデルA、B、及びCに対して適用して緩徐相抽出精度pを計算した結果、及び、アルゴリズム2をモデルA、B、C、及びDに対して適用して緩徐相抽出精度pを計算した結果を表1に示す。アルゴリズム1をモデルDに適用しない理由は、アルゴリズム1が緩徐相が正弦波状になるという仮定の下に解析を行うもので、モデルDに対しては適用不可能であるためである。
表1から明らかなように、いずれも85%以上の緩徐相抽出精度が得られた。モデルDに対しては、90%以上の緩徐相抽出精度が得られた。
【表1】

【0071】
次に、図11〜図18を参照して、本実施例の緩徐相抽出方法を実データに適用した場合の精度にについて述べる。
まず、図11及び図12を参照して、本実施例の緩徐相抽出方法を回転刺激が与えられている場合の眼振データへ適用した結果について説明する。図11及び図12は、0.1Hz及び0.5Hzの回転刺激が与えられている場合の実測眼位データ及びそれに対する緩徐相抽出結果をそれぞれ示す図である。図11及び図12において、(a)は元の眼位データ、(b)は本実施例の緩徐相抽出方法を用いて緩徐相を抽出した結果、(c)は(b)の一部拡大図をそれぞれ示している。
図11及び図12の(b)及び(c)に示されるように、0.1Hz及び0.5Hzの両方のデータにおいて、眼位データ中の緩やかな変位部分が抽出されており、良好な緩徐相抽出結果が得られた。
【0072】
図13及び図14を参照して、本実施例の緩徐相抽出方法を回転刺激が与えられている場合の速度データへ適用した結果について説明する。図13及び図14は、0.1Hz及び0.5Hzの回転刺激が与えられている場合の実測速度データ及びそれに対する緩徐相抽出結果をそれぞれ示す図である。図13及び図14において、(a)は元の速度データ、(b)は本実施例の緩徐相抽出方法を用いて緩徐相を抽出した結果、(c)は(b)の一部拡大図をそれぞれ示している。速度データに対しては、抽出された緩徐相に対して最終フィッティング曲線を求める処理を行った。
図13及び図14の(b)及び(c)に示されるように、0.1Hz及び0.5Hzの両方のデータにおいて、速度データ中の緩やかな変位部分が抽出されており、良好な緩徐相抽出結果が得られた。
【0073】
図15、図16、図17、及び図18を参照して、本実施例の緩徐相抽出方法を刺激が与えられていない場合の眼振データへ適用した結果について説明する。図15、図16、及び図17は、後半規管型良性発作性頭位めまい症の症例(症例kt)、後半規管型良性発作性頭位めまい症のうち特に回旋成分の強い症例(症例gt)、及び外側半規管型良性発作性頭位めまい症の症例(症例ried)の実測眼位データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図である。図18は、上記症例riedの実測速度データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図である。図15、図16、図17及び図18において、(a)は元データ、(b)は本実施例の緩徐相抽出方法を用いた緩徐相抽出の結果、(c)は(b)の一部拡大図をそれぞれ示している。
【0074】
図15、図16、図17、及び図18に示されるように、いずれの症例のデータにおいても、一部で急速相が取り除けていない、あるいは、緩徐相が抽出されていない部分はあるが、全体として良好な結果が得られた。特に、症例riedにおいては、緩徐相成分が指数的に減衰するという特徴が知られているが、このことと図18に示された緩徐相抽出結果が合致しており、良好な結果が示された。
【0075】
以上のように、本発明の緩徐相抽出方法は、刺激が与えられている場合の眼振データのみならず、刺激が与えられていない場合の眼振データからも高精度に緩徐相の自動抽出を行う、信頼性の高い緩徐相抽出方法及び眼振データ解析システムを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明にかかる緩徐相抽出方法及び眼振データ解析システムは、例えば、医療目的の眼振データ解析システム等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】眼振データにおける緩徐相及び急速相を説明するための図
【図2】本発明の実施例における、緩徐相抽出方法を示すフローチャート
【図3】本発明の実施例における、回転刺激が与えられている場合の速度データについての緩徐相抽出方法を示すフローチャート
【図4】正弦波形が上下に変位している状態の速度データを示す図
【図5】図4の速度データに対して処理を行い、パラメータを決定した場合の曲線を示す図
【図6】図5の曲線の周期に従って速度データを分割した様子を示す図
【図7】メンバーシップ値を求める方法を説明するための図
【図8】本発明の実施例における、回転刺激が与えられている場合の眼位データについての緩徐相抽出方法を示すフローチャート
【図9】本発明の実施例における、刺激が与えられていない場合の眼位データ及び速度データについての緩徐相抽出方法を示すフローチャート
【図10】本発明の実施例における、眼振データの4つのデータモデルを示す図
【図11】被験者に0.1Hzの回転刺激が与えられている場合の実測眼位データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図
【図12】被験者に0.5Hzの回転刺激が与えられている場合の実測眼位データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図
【図13】被験者に0.1Hzの回転刺激が与えられている場合の実測速度データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図
【図14】被験者に0.5Hzの回転刺激が与えられている場合の実測速度データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図
【図15】症例ktの実測眼位データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図
【図16】症例gtの実測眼位データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図
【図17】症例riedの実測眼位データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図
【図18】症例riedの実測速度データ及びそれに対する緩徐相抽出結果を示す図
【図19】本発明の実施例における緩徐相抽出方法を用いた眼振データ解析システムの構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0078】
1 緩徐相
2 急速相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼振データにおいてファジー理論を適用して緩徐相を抽出する方法であって、
n(nは2以上の整数)個目の眼振データと(n−1)個目の眼振データとの差分データを算出するステップ、
前記差分データの絶対値に基づいてメンバーシップ値を決定するステップ、及び
前記メンバーシップ値を所定の閾値と比較することによって緩徐相を抽出するステップ、
を有することを特徴とする緩徐相抽出方法。
【請求項2】
前記眼振データが、回転刺激が与えられている場合の眼振データであるか、回転刺激が与えられていない場合の眼振データであるかを選択するステップ、を更に有し、
前記選択するステップにおいて回転刺激が与えられていない場合の眼振データが選択された場合に、前記算出するステップ、前記決定するステップ、及び前記抽出するステップが実行される
ことを特徴とする請求項1に記載の緩徐相抽出方法。
【請求項3】
眼振データにおいてファジー理論を適用して緩徐相を抽出する眼振データ解析システムであって、
n(nは2以上の整数)個目の眼振データと(n−1)個目の眼振データとの差分データを算出し、前記差分データの絶対値に基づいてメンバーシップ値を決定し、前記メンバーシップ値を所定の閾値と比較することによって緩徐相を抽出するデータ処理部
を有することを特徴とする眼振データ解析システム。
【請求項4】
前記データ処理部は、前記眼振データが、回転刺激が与えられていない場合の眼振データである場合に、n(nは2以上の整数)個目の眼振データと(n−1)個目の眼振データとの差分データを算出し、前記差分データの絶対値に基づいてメンバーシップ値を決定し、前記メンバーシップ値を所定の閾値と比較することによって緩徐相を抽出する
よう構成されていることを特徴とする請求項3に記載の眼振データ解析システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−20802(P2007−20802A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205892(P2005−205892)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(500134056)
【Fターム(参考)】