説明

緩衝機能付包装容器及びその製造方法

【課題】衝撃に対する十分な保護性能を確保でき、しかも緩衝シートの素材に対する自由度が大きく、安価に生産可能で且つ安定した品質の緩衝機能付包装容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性合成樹脂を原料とする基材シート16aの一方の面にオレフィン系樹脂フィルムをラミネートして接着層16bを形成した材料シート16からなり、接着層16bが内側に配置されるように、収容物を収容するための収容部13を凹設した容器本体11と、通気性を有する不織布シート17からなり、容器本体11の収容部13の底面との間に空隙が形成されように、容器本体11の接着層16b側に重ね合わされて、容器本体11の収容部13の外縁において接着層16bに熱接着した緩衝シート12とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密電子部品や、桃やマンゴー、苺等の高級果実等のように、特別に衝撃対策を要する物品の搬送に供する緩衝機能付包装容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝機能を持った包装容器としては、容器開口部に膜状に伸縮性プラスチックフィルムを貼り付けた1対の分割容器をヒンジで繋いで対向させ、前記分割容器を組み合わせることによって伸縮性プラスチックフィルム間に物品を挟み込み、フィルムの弾性力で物品を保持する構造のものが知られている。
【0003】
また、桃などの当り傷みの出やすい果実の包装容器として、A‐PET等の熱可塑性合成樹脂製のシート材からなり、桃などの収容物を収容するための収容部をシート成形した容器本体と、熱可塑性合成樹脂製の短繊維ニードルパンチ不織布の片面に低融点のバインダー繊維の層を積層して接着層とした緩衝シートとからなり、前記容器本体の収容部の底面との間に空隙が形成されるように、前記接着層側を容器本体側にして前記緩衝シートを容器本体に重ね合わせ、緩衝シートを容器本体の収容部の外縁に熱接着して、桃などの果実を緩衝シートによりハンモックで吊したように支持することで、収容した果実が容器本体に衝突しないように構成した包装容器(例えば特許文献1参照。)や、苺用の包装容器として、前記ニードルパンチ不織布の毛羽立ちに種が引っかかって脱落しないように、緩衝シートの表層にもう1枚毛羽立ちの少ない長繊維スパンボンド不織布を重ねて接着した包装容器が上市されている。
【0004】
前記のように、容器開口部に伸縮性プラスチックフィルムを膜状に貼り付けた包装容器では、容器開口部にフィルムを伸張した状態で貼り付けるためフィルム面は平面の状態であり、内容物を開口部の略中央に載置して、ヒンジで繋がれたもう一方の面との間で挟み込んで固定するため、内容物に対し比較的余裕を持った開口間口を必要とする。またフィルム面では両面で内容物の厚み分を包み込むだけの伸びを必要とするため、内容物の周囲に少なくとも内容物の厚みの、半分以上の余裕を持った開口面積を必要とし、内容物の大きさに対し容器外寸を極めて大きく採らなければならないという問題があった。また、部品トレイとして使用する場合、複数の収容部を設けても、フィルムを貼った状態で収容部開口部がひとつの平面状となるため、各収容部に対応して正確に位置を決めて内容物を載置することが困難であり、多数の小部品を搬送する包装容器としてはハンドリング、コスト、効率の面からも多くの問題を抱えている。
【0005】
具体的には、図7〜図9に示すように、緩衝機能付包装容器110は、トレイ状に形成された容器本体111を並列に並べて対となし、その開口部を内面にして屈曲させたときに互いの開口面が向き合って接するようにそれぞれの対向する側のフランジ部分を屈曲可能なようにヒンジ112で繋ぎ、さらに1対の開口部それぞれに伸縮性プラスチックフィルム113をたるみの無いように貼り付けて構成されている。図9に示すように、この包装容器110に内容物114を収納する場合、一方の容器本体111の開口部に張った伸縮性プラスチックフィルム113の略中央に内容物を載置した状態で、ヒンジ112を介してもう一方の容器本体を内容物114の上に被せるように屈曲させ、双方の容器本体111の開口部が相対するように押し込んで容器本体に設けたストッパーもしくはゴムバンドなどの適当な繋止方法で固定する。内容物114は向き合った容器本体111の接合面に伸縮性プラスチックフィルム113の弾性力で容器本体の壁面との間に空隙を保ちながら保持されるようになっている。
【0006】
この場合、対面する伸縮性プラスチックフィルム113はそれぞれ伸張し、双方で内容物の厚み分だけ容器本体111の中へ沈み込まなければならないため、内容物の周囲に少なくとも内容物の厚みの、略2分の1以上の余裕を持った開口面積を必要とし、内容物の大きさに対し容器外寸を極めて大きく採らなければならないという問題点を有している。
【0007】
また、部品搬送用の包装容器として複数の収容部を設けた場合、伸縮性プラスチックフィルムを伸張して収容部開口部に貼るため、複数の収容部開口部は連なって1つの平面となり、多数の内容物を各収容部に対応して載置した状態でもう一方の容器本体を被せて内容物を各収容部に正確に収納することは非常に困難で手間がかかる。
【0008】
一方、片面に低融点のバインダー繊維の層を積層して接着層とした短繊維ニードルパンチ不織布からなる緩衝シートを容器本体に熱接着した包装容器では、一般的に緩衝シートの素材布として、調達のしやすさや加工性の面からポリエステルを主成分とした短繊維ニードルパンチ不織布が用いられ、容器本体の成形材料もポリエステルを主成分とした不織布との接着性や調達のしやすさ、コスト、使用後のリサイクル性等の面からA‐PET樹脂が用いられている。ところで、前記短繊維ニードルパンチ不織布に用いられるポリエステル原料綿は延伸結晶化された繊維で200℃以上の耐熱性と250℃を越える融点を持ち、また容器本体を構成するA‐PET樹脂においては、融点は前記ポリエステル原料綿と同様250℃を越えるものの熱変形温度は60℃台前半と低く、概ね150℃台半ばを越えると分子の流動性が増して熱成形に適した状態になり、更に加熱を続けると再結晶化を起こして軟化温度が上昇すると共に白濁して透明性が失われ脆く割れやすくなるという性質を持っている。
【0009】
このため、前記容器本体とポリエステルを主成分とする短繊維ニードルパンチ不織布の接着加工において、不織布側の低融点のバインダー繊維が熔けて接着面で固まるだけでは接着力は弱く、十分な接着強度を得るためには容器本体側の接着面表面が半熔融に近い状態まで加熱され、熔融状態にあるバインダー繊維層と十分な力で圧接されることが必要である。また圧接中に接着面の温度がバインダー繊維と本体材料樹脂の融点より低下して接着面が固化した状態でシール型から開放させる必要がある。この時、シール型の熱板は圧接時、容器本体側の接着面表面を十分に加熱するため200℃以上に熱せられた状態から、容器本体を構成するA−PET樹脂の熱変形温度以下に冷却されたシール受け型によってバインダー繊維の融点を下回る温度まで冷やされて接着が完了する。一般に使用されるポリエステル系バインダー繊維は概ね110℃〜150℃の融点を持つため上記接着加工時のシール型熱板は少なくとも50℃〜90℃以上の幅で加熱冷却を繰り返さなければならず、そのため加工サイクルが長くかかり生産性を落とす大きな要因となっている。
【0010】
また、緩衝シートに積層されたバインダー繊維の層が、融点以上の高温に長時間曝されるため、バインダー繊維の表面が熔けて繊維同士が固着し弾力性が損なわれ、緩衝シートの緩衝性の低下を招きやすく、桃等の傷みやすい果実の輸送に用いた場合、不織布層の硬化に伴って内容物の形状に追随するフィット性も落ち、玉回りを起こしやすくなって荷傷みの原因となる。また、硬化を防ぐために接着温度を下げると不織布と容器本体の接着が弱くなる等、種々の生産上の問題を抱えている。また、苺用に上市されているトレイは種落ちを防止するため前記短繊維ニードルパンチ不織布を熱接着した包装容器に更にもう1枚、表層に毛羽立ちの少ない長繊維スパンボンド不織布を追加したものであり、生産上の問題に加えコスト面でも負担が大きい。
【0011】
また、生産性向上、コストダウンのために容器本体の熱成形と同時に成形型の中で不織布の接着をしようとする場合、材料シートを加熱する際にも緩衝シートのバインダー層の硬化が起こり、前述の接着時の硬化と併せてより緩衝性が損なわれるため、良好な緩衝性を持つ包装容器を低コストで得ることには多くの問題が存在している。
【0012】
具体的には、図10〜図12に示すように、この緩衝機能付き包装容器120は、あらかじめ熱成形された容器本体121に打ち込みを少なくしソフトに仕上げてクッション性を持たせた熱可塑性合成樹脂を原料とした短繊維ニードルパンチ不織布122aの片面に、低融点のバインダー繊維の層122bを積層して接着層とした素材布122を、前記容器本体121の収容部に、ハンモック状に凹部を形成するように押し込みながら、図12に示すシール受け型124とヒートシール型125で前記収容部の周縁部の接着面123に熱接着したものである。前記包装容器120について一般的に汎用性の高いA−PET樹脂を容器本体121に、主にポリエステル繊維を原料綿として短繊維ニードルパンチ不織布122に用いた場合について説明する。
【0013】
前記A−PET樹脂を材料シートとした容器本体121と、ポリエステルを主成分とする短繊維ニードルパンチ不織布122aにポリエステル芯鞘構造のバインダー繊維の層122bを積層して接着層とした素材布122の接着加工において、素材布122側の低融点のバインダー繊維層122bが熔けて接着面で固まるだけでは接着力は弱く、十分な接着強度を得るためには容器本体121側の接着面123の表面が半熔融に近い軟化状態まで加熱され、熔融状態にあるバインダー繊維層122bと十分な力で圧接されることが必要である。また圧接中に接着面123の温度がバインダー繊維122bと容器本体121の材料樹脂の融点より低い温度まで冷却されなければならない。
【0014】
前記A−PET樹脂を材料シートとした容器本体121と、ポリエステルを主成分とする短繊維ニードルパンチ不織布122aにポリエステル芯鞘構造のバインダー繊維の層122bを積層して接着層とした素材布122の成形、接着同時加工における材料シート、ヒートシール型125、接着面123の温度変化を図13に示す。
【0015】
一般的に汎用のA−PET樹脂は250℃以上の融点を持つが概ね150℃台半ばを超えると分子の流動性が増しそのまま加熱を続けると再結晶化を起こす。この再結晶化の過程でA‐PET樹脂は一旦半熔融と言える程に軟化し圧接により不織布の繊維が表面に埋没するぐらいとなり、その後急速に再結晶化を起こして表面の硬度を増してゆく。シール型の熱板125は圧接時、容器本体側の接着面表面を十分に素早く軟化させるため200℃以上に熱せられた状態から、容器本体の成形型としてA−PET樹脂の熱変形温度以下に冷却されたシール受け型124によってバインダー繊維の融点を下回る温度まで冷やされて接着が完了する。一般に使用されるポリエステル系バインダー繊維は概ね110℃〜150℃の融点を持つため上記接着時のシール型熱板125は少なくとも50℃〜90℃以上の幅で加熱冷却を繰り返さなければならず、そのため加工サイクルが長くかかり生産性を落とす大きな要因となっている。
【0016】
また、圧接時間が長く掛かるために前記素材布122に積層されたバインダー繊維の層122bは長時間熱板125の輻射熱を受け、バインダー繊維の表面が熔けて繊維同士が固着して伸縮性がなくなるため、素材布122のクッション性が阻害されて緩衝性の低下を招きやすい。また、硬化を防ぐために接着温度を下げると素材布122と容器本体121の接着が弱くなる等、種々の生産上の問題を抱えている。
【0017】
また、生産性向上、コストダウンのために成形と同時に成形型の中で不織布の接着をしようとする場合、材料シートを加熱する際にも不織布のバインダー層の硬化が起こり、前述の接着時の硬化と併せてより緩衝性が損なわれるため、良好な緩衝性を持つ包装容器を低コストで得ることには多くの問題が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2001−48263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
真空成形品等に代表されるシート成形による容器やトレイは、その生産性の高さやイニシャルコストの低さ、薄肉で大きい面積のものが製作できる等の特長が有り、農産物や加工食品をはじめとして医薬品、医療器具や様々な工業部品などの物流容器として広く使用されている。とりわけ、ハードディスク用ドライブモーターやポスシステム用のステッピングモーター等の精密部品は特に衝撃に弱いため、一部の製品は1個ずつポリ袋に収めた上で、エアキャップシートで個包装を行って出荷されているほどであるが、それらの搬送用容器としても、内容物の形状に合わせた緩衝目的のリブやホールド機能等を施したトレイが数多く提案されてきた。しかし、昨今、IT関連製品の技術革新スピードの速さには驚くべきものがあり、それに伴い商品寿命は格段に短くなっており、極めて汎用性の乏しい前記搬送容器においては、頻発する商品切り替えに対応するための開発や金型製作に要するコストが精密部品メーカー、搬送容器供給メーカー双方にとって大きな負担になっている。
【0020】
また、桃やマンゴー、苺などの高級果実においても、緩衝ネットやスポンジシートなどの緩衝手段と併用する形でシート成形による容器やトレイが幅広く用いられているが、玉当りや荷傷みが起こりやすく、特に高級品市場ではわずかな傷でも商品価値が大きく損なわれてそれによるロスが大きな負担となっている。このため、前述のような緩衝シートを用いた包装容器が必要とされる背景になっているが、生産性の悪さとコストが普及を妨げている現状がある。特にオフシーズンに供給されるクリスマスケーキ用の苺については、色、形を含めて傷のない美しい外観を要求されるが、農産物のためその時々の作柄により玉サイズや形状が安定せず、前記緩衝シートを用いた包装容器でも表層に配した長繊維スパンボンド不織布の表面が滑りやすく伸縮性もないため、サイズや形状がわずかに合わなくても玉回りを起こして傷みが発生しやすい。
【0021】
本発明の目的は、衝撃からの保護が必要な精密部品、工芸品等の壊れ物、あるいは当り傷みの出やすい苺、桃、マンゴーなどの高級果実等を、荷傷みを起こさずに搬送でき、しかも緩衝シートの素材に対する自由度が大きく、安価に生産可能で且つ安定した品質の緩衝機能付包装容器及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る緩衝機能付包装容器は、熱可塑性合成樹脂シートの一方の面にオレフィン系樹脂フィルムをラミネートして接着層を形成した材料シートからなり、前記接着層が内側に配置されるように、収容物を収容するための収容部を凹設した容器本体と、通気性を有する不織布からなり、前記容器本体の収容部の底面との間に空隙が形成されるように、前記容器本体の接着層側に重ね合わされて、容器本体の収容部の外縁において接着層に熱接着した緩衝シートとを備えたものである。
【0023】
この包装容器では、容器本体を形成する材料シートに、熱可塑性合成樹脂シートの基材に低密度ポリエチレン等の比較的低融点のオレフィン系フィルムをラミネートしたものを用いているので、不織布シートの材質を選ばず、バインダー繊維の有無にかかわらず比較的低温で容易に双方を熱接着することが可能になる。
【0024】
ここで、前記緩衝シートとして、低融点のバインダー繊維を含まない熱可塑性合成樹脂からなる短繊維ニードルパンチ不織布を用いることが好ましい実施の形態である。このように構成すると、バインダー繊維を含まないため、圧空成形時の同時加工やヒートシール時の熱により不織布が硬化することが無いため、良好なクッション性を保った緩衝機能付包装容器が実現できる。
【0025】
また、前記緩衝シートとして、伸縮性を持った長繊維スパンボンド不織布を用いることもできる。このように構成すると、緩衝シートを構成する不織布に伸縮性があるため緩衝シートの収容部形状が収納物にフィットしやすく、収納物の大きさ、形状の違いに比較的広い範囲で対応が可能になる。また、長繊維スパンボンド不織布は極めて発塵性が低いため、短繊維ニードルパンチ不織布の発塵性のために今まで使用できなかった電子部品や精密部品の緩衝機能付き搬送容器としても使用することが出来る。また短繊維ニードルパンチ不織布のように表面に著しい毛羽立ちが無く、伸縮性があって多少のサイズ違いや形状にもフィットしやすいため、種落ちや玉傷みで今まで使用できなかった苺の搬送容器にも不織布層が1層のままで好適に使用できる。
【0026】
本発明に係る第1の緩衝機能付包装容器の製造方法は、熱可塑性合成樹脂シートの一方の面にオレフィン系樹脂フィルムをラミネートして接着層を形成した材料シートを用い、この材料シートの接着層側に通気性を有する不織布を重ね合せた状態で、前記材料シートにより凹状の収容部を有する容器本体をシート成形するとともに、該容器本体の収容部の外縁における接着層に不織布を熱接着させて、前記不織布により容器本体の収容部の底面との間に空隙を有する緩衝シートを容器本体に一体に設けたものである。
【0027】
本発明に係る第2の緩衝機能付包装容器の製造方法は、熱可塑性合成樹脂シートの一方の面にオレフィン系樹脂フィルムをラミネートして接着層を形成した材料シートを用い、この材料シートの接着層側に通気性を有する不織布を前記材料シートの接着層側に重ね合わせた状態で、前記材料シートが型当りになるように、材料シート及び不織布をシート成形機に供給し、前記材料シートにより凹状の収容部を有する容器本体を圧空成形すると同時に、前記不織布を、圧空チャンバー内に設けた補助プラグで容器本体の収容部内に設定量押し込みながら、前記容器本体の成形型をシール受け型として、同じく圧空チャンバー内に設けた熱板で収容部の外縁に加熱圧接する事により、前記不織布を前記収容部の外縁の接着層に熱融着せしめ、前記不織布により容器本体の収容部の底面との間に空隙を有する緩衝シートを容器本体に一体に設けたものである。
【0028】
この第1及び第2の製造方法では、連続圧空真空成形機を用い材料シートを圧空真空成形すると同時に、成形型の圧空チャンバー内に設置したヒートシール型で、容器本体に不織布シートの接着を同時加工できる。また、容器本体を形成する材料シートに低密度ポリエチレン等の比較的低融点のオレフィン系合成樹脂フィルムをラミネートして接着層を形成しているので、緩衝シートにバインダー繊維からなる接着層を設ける場合と比較して、低温での接着が可能なため、より安定した条件での製造が可能になる。また緩衝シート側にバインダー繊維を配合する等の接着手段を講じる必要が無いため、バインダー繊維を含まない不織布で緩衝シートを構成することもでき、成形のプレヒート時及びヒートシール時の熱により不織布シートが硬化することなく、より緩衝性の高い高機能の包装容器を提供できる。
【0029】
また、バインダー繊維を配合する必要が無いことから、クリンプ繊維を用いた伸縮性長繊維スパンボンド不織布などの、機能上バインダー繊維を配合することが出来ない不織布も、緩衝シートの素材布として使用できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る緩衝機能付包装容器及びその製造方法によれば、熱可塑性合成樹脂シートを成形して得られた容器本体の収容部に、打ち込みを少なくしソフトに仕上げた短繊維ニードルパンチ不織布からなる緩衝シートをハンモック状に接着した緩衝機能付包装容器において、その容器本体を構成する材料シートに低密度ポリエチレン等の比較的低融点のオレフィン系合成樹脂フィルムをラミネートしたものを用いて緩衝シートとの接着層とすることで、緩衝シートにバインダー繊維の層を配して接着層とする従来の方法と比較してより低温で安定して双方を接着することが可能となった。そのため成形サイクルが短くなり生産歩留まりも改善出来ることでより、安価に且つ安定して包装容器を製造することが可能となる。
【0031】
また、緩衝シートの不織布に接着のためのバインダー繊維を配合する必要が無いため、成形加工時における加熱の影響でバインダー層が硬化して不織布層の弾力性が損なわれるという不具合が無く、より緩衝効果の高い緩衝機能付包装容器を製作できる。また、たとえバインダー繊維を配合してある不織布を用いた場合であっても、容器本体と緩衝シートとの接着は、容器本体を構成する熱可塑性合成樹脂シートに形成した接着層によりなされるので、接着加工の際の温度を低くできるとともに、短時間で接着加工を完了でき、バインダー繊維の層を配して接着層とした場合よりも、バインダー繊維の硬化による緩衝機能の低下を防ぐことが出来る。
【0032】
容器本体を構成する材料シートに低融点のオレフィン系合成樹脂からなる接着層を形成し、この接着層が熔けて緩衝シートを構成する不織布の繊維の間に入り込んで、容器本体に緩衝シートを接着するため、緩衝シートとして、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリロニトリル等の熱可塑性合成樹脂を原料にしたものや、再生繊維のレーヨンや、綿などの天然繊維を用いたもの、あるいはこれらを混合して原料としたものまで使用することが可能となり、製法についてもスパンボンド不織布やニードルパンチ不織布、スパンレース不織布など種類を選ばず使用することが可能になる。また、緩衝シートとして、伸縮包帯等に用いられるクリンプ繊維を用いた伸縮性長繊維スパンボンド不織布等、機能上バインダー繊維を配合することが出来ない不織布でも用いることが可能となり、短繊維ニードルパンチ不織布を使用したものよりも極めて発塵性が低く内容物の形状に対しよりフィット性の高い緩衝機能付包装容器を得ることが出来、従来短繊維ニードルパンチ不織布の発塵性のために利用できなかった電子部品や医療器具等の緩衝機能付搬送容器として好適に利用できる。
【0033】
また、前記緩衝シートの素材として、伸縮性長繊維スパンボンド不織布を用いると、収納物の大きさ、形状の違いに比較的広い範囲で対応できることと不織布表面の毛羽立ちも少ないことから、作柄によって形状やサイズが不安定な苺に対しても玉回りしにくく、種が繊維に引っかかって抜け落ちる種落ちの防止効果の高い搬送容器として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る緩衝機能付包装容器の斜視図
【図2】同緩衝機能付包装容器の縦断面図
【図3】同緩衝機能付包装容器の成形型の縦断面図
【図4】同緩衝機能付包装容器の成形方法の説明図
【図5】同緩衝機能付包装容器の成形サイクルの説明図
【図6】同緩衝機能付包装容器の製造装置の説明図
【図7】従来の緩衝機能付包装容器の斜視図
【図8】同緩衝機能付包装容器の縦断面図
【図9】同緩衝機能付包装容器に物品を収納したときの断面図
【図10】従来の他の構成の緩衝機能付包装容器の斜視図
【図11】同緩衝機能付包装容器の断面図
【図12】同緩衝機能付包装容器の成形型における接着加工箇所付近の容器本体、不織布、及びシール型の断面図
【図13】同緩衝機能付包装容器の成形サイクルの説明図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1、図2に示すように、本発明に係る緩衝機能付き包装容器10は、熱可塑性合成樹脂を原料とする基材シート16aの一方の面にオレフィン系樹脂フィルムをラミネートして接着層16bを形成した材料シート16からなり、接着層16bが内側に配置されるように、収容物を収容するための収容部13を凹設した容器本体11と、通気性を有する不織布シート17からなり、容器本体11の収容部13の底面との間に空隙が形成されように、容器本体11の接着層16b側に重ね合わされて、容器本体11の収容部13の外縁において接着層16bに熱接着した緩衝シート12とを備えている。
【0036】
緩衝機能付き包装容器10を製作する際には、図3〜図6に示すように、熱可塑性合成樹脂を原料とする基材シート16aに低密度ポリエチレン等の比較的低融点のオレフィン系合成樹脂フィルムをラミネートして接着層16bを形成した材料シート16を予め製作し、この材料シート16の接着層16b側に通気性を有する不織布シート17を重ね合わせ、材料シート16が冷却ボックス21の中に設置した成形型キャビティ23の側になるように連続圧空真空成形機30に供給して双方をプレヒートした後、不織布シート17側から空圧をかけて容器本体11を形成すると同時に、圧空チャンバー22の中に設置した補助プラグ24で容器本体11の収容部13に不織布シート17を設定量押し込んで凹状のポケット部15を形成しつつ、収容部13の底面との間に緩衝効果を発揮するための空隙を保ちながら、前記成形型キャビティ23と圧空チャンバー22の中に設置した熱板25とで加熱圧接する事により、不織布シート17からなる緩衝シート12を容器本体11の収容部周縁部の接着面14に接着したものである。
【0037】
前記容器本体11に用いる材料シート16を構成する基材シート16aはポリエチレンテレフタレート(A−PET)、ポリスチレン、ポリプロピレン等の汎用熱可塑性合成樹脂を好適に使用することが出来、接着層16bを構成するオレフィン系合成樹脂フィルムとして、前記基材シートにラミネート可能な低密度ポリエチレン等の低融点樹脂を使用する事により、2層共押し出しにより容易に材料シートを製造することができる。もちろん別々に生産した基材シート16aとオレフィン系合成樹脂フィルムを後工程でラミネート加工することも可能である。
【0038】
また、ヒートシールの際、低融点のオレフィン系樹脂フィルムからなる接着層16bが、加熱圧接により熔融し、緩衝シート12を構成する不織布の繊維の隙間に入り込んで接着されるため、緩衝シート12はポリエステル、ポリプロピレン、アクリロニトリル等の熱可塑性合成樹脂を原料にしたものや、再生繊維のレーヨンや、綿などの天然繊維を用いたもの、あるいはこれらを混合して原料としたものでも使用でき、製法についてもスパンボンド不織布やニードルパンチ不織布、スパンレース不織布など種類を選ばず使用することが可能になる。
【0039】
図4、図6において容器本体11を形成する材料シート16を構成する基材シート16aにA−PET樹脂を、接着層16bに低密度ポリエチレンを使用した場合の成形方法について説明する。また、このときの材料シート16、熱板25、接着面14の温度変化を図5に示す。
【0040】
材料シート16は容器本体11を形成するため、プレヒートで表面温度140℃〜160℃程度まで加熱されて成形型20に供給され、不織布シート17側からの空圧で成形型キャビティ23の中に容器本体11を形成する。それと同時に不織布シート17は補助プラグ24で容器本体11の収容部13に設定量押し込まれて凹状のポケット部15を形成しつつ、熱板25で成形型キャビティ23を受型として収容部13の周縁部の接着面14に加熱圧接され、収容部13の底面との間に緩衝効果を発揮するための空隙を保ちながら容器本体11に接着され、容器本体11の上側に不織布シート17からなる緩衝シート12を形成する。
【0041】
この時、低密度ポリエチレンの接着層16bは融点が120℃以下であるためプレヒートの段階で既に表面が半熔融の状態であり、熱板25は圧接の際接着層16bの融点よりわずかに高い温度に保つだけで緩衝シート12の不織布の繊維の隙間に熔融状態の接着層16bを侵入させて接着することが出来る。また、接着面14を冷却して固着させるときも前記接着層16bの融点よりもわずかに低い温度にするだけでよく、熱板25の加熱冷却の範囲も20℃以下で済むために短い加工サイクルで生産することが出来、製造コストを大幅に削減することが可能になる。
【0042】
また、比較的低温で短い加工時間で生産できるため、多少のバインダー繊維を含む不織布を使用した場合でも不織布層が硬化しにくく、更に、前記材料シート16を使用することでバインダー繊維の接着層を配合しなくても容器本体11と緩衝シート12の接着が可能となり、緩衝シート12の硬化を起こすことが無いため、よりクッション性の高い緩衝機能付包装容器10を得ることが出来る。
【0043】
また、伸縮包帯等に用いられるクリンプ繊維を用いた伸縮性長繊維スパンボンド不織布等、機能上バインダー繊維を配合することが出来ない不織布を用いることが出来、短繊維ニードルパンチ不織布を使用したものよりも極めて発塵性が低く内容物の形状に対し、よりフィット性の高い緩衝機能付包装容器10を得ることが出来る。緩衝シート12を構成する不織布自身に伸縮性があり、内容物の多少の大きさ、形状の違いに追随してポケット部15の形状が変形するため、収納物の大きさ、形状の違いに比較的広い範囲で対応が可能になる。このように内容物の形状に対してフィットしやすく、高い緩衝効果が得られることときわめて低い発塵性のため、従来、高度な異物対策が必要なため不織布を利用した緩衝機能付容器を利用できなかった医療器具や電子部品の搬送容器としても好適に利用できる。
【0044】
前記緩衝シート12に前記伸縮性長繊維スパンボンド不織布を用いると、収納物の大きさ、形状の違いに比較的広い範囲で対応できることと不織布表面の毛羽立ちも少ないことから、作柄によって形状やサイズが不安定な苺に対しても玉回りしにくく、種が繊維に引っかかって抜け落ちる種落ちの防止効果の高い搬送容器として好適に利用できる。
【0045】
図3〜図6に示すように、この緩衝機能付包装容器10に係る製造方法は、連続圧空真空成形機30に低密度ポリエチレン等のオレフィン系合成樹脂フィルムの接着層16bをラミネートした材料シート16を型当りにして、前記接着層16bが不織布シート17の側になるように重ねて供給し、前記材料シート16を圧空真空成形して容器本体11を形成すると同時に、成形型20の圧空チャンバー22の中に設置した補助プラグ24で前記不織布シート17を冷却ボックス21の中に設置した成形型キャビティ23に圧空成形により形成された容器本体11の収容部33に設定量押し込みながら、熱板25で成形型キャビティ23をシール受け型として、容器本体11に不織布シート17からなる緩衝シート12の加熱圧接による接着を同時加工できるようにしたものである。このように容器本体11の成形と緩衝シート12の接着を同時に行うことで、機能性の高い緩衝機能付包装容器10を安価に安定して供給することが可能になる。
【0046】
容器本体11を形成する材料シート16は不織布シート17と共に、供給装置31により連続圧空真空成形機30に供給される。前記材料シート16と不織布シート17はそれぞれ繰り出し装置32により余分なテンションがかからないように送り出され連続圧空真空成形機のシート供給部手前で幅方向の両端部をヒートシールバー33で仮接着されて順送チェーンに供給される。ヒーター部34に送られた材料シート16と不織布シート17は重なり合ったままで表面温度140℃〜160℃に加熱される。この時、材料シート16の不織布シート17側にラミネートされた低密度ポリエチレン等の低融点のオレフィン系合成樹脂フィルムからなる接着層16bは材料シート16の表面で半熔融の状態にあり、成形型20で容器本体11を成形すると同時に不織布シート17を接着する際、成形型20の圧空チャンバー22の中に設置した熱板25は前記接着層16bの融点よりわずかに高く設定するだけでよい。また、接着面14の冷却も接着層16bを構成するオレフィン系合成樹脂の融点よりもわずかに低い温度に下げるだけで接着の固定が出来るため熱板25の加熱冷却の温度幅も20℃以下ですみ、包装容器10のように不織布側にバインダー繊維を積層して接着層に用いた場合よりも低い温度での接着が出来るため、より安定した条件で短い加工サイクルでの製造が可能になる。
【0047】
また不織布側にバインダー繊維を配合する等の接着手段を講じる必要が無いため、バインダー繊維を含まない不織布シートを採用することもでき、成形のプレヒート時及びヒートシール時の熱により不織布シートが硬化することなく、より緩衝性の高い高機能の包装容器10を提供できる。また、バインダー繊維を配合する必要が無いことから、クリンプ繊維を用いた伸縮性長繊維スパンボンド不織布などの、機能上バインダー繊維を配合することが出来ない不織布も緩衝シート12の素材布として使用でき、長繊維スパンボンド不織布の特長である低発塵性を生かして、短繊維不織布の発塵性のために使用が出来なかった電子部品や精密部品の緩衝機能付き搬送容器の製造方法としても有用である。
【符号の説明】
【0048】
10 包装容器 11 容器本体
12 緩衝シート 13 収容部
14 接着面 15 ポケット部
16 材料シート 16a 基材シート
16b 接着層 17 不織布シート
20 成形型 21 冷却ボックス
22 チャンバー 23 成形型キャビティ
24 補助プラグ 25 熱板
30 連続圧空真空成形機 31 供給装置
32 繰り出し装置 33 ヒートシールバー
34 ヒーター部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂シートの一方の面にオレフィン系樹脂フィルムをラミネートして接着層を形成した材料シートからなり、前記接着層が内側に配置されるように、収容物を収容するための収容部を凹設した容器本体と、
通気性を有する不織布からなり、前記容器本体の収容部の底面との間に空隙が形成されるように、前記容器本体の接着層側に重ね合わされて、容器本体の収容部の外縁において接着層に熱接着した緩衝シートと、
を備えたことを特徴とする緩衝機能付包装容器。
【請求項2】
前記緩衝シートとして、低融点のバインダー繊維を含まない熱可塑性合成樹脂からなる短繊維ニードルパンチ不織布を用いた請求項1記載の緩衝機能付包装容器。
【請求項3】
前記緩衝シートとして、伸縮性を持った長繊維スパンボンド不織布を用いた請求項1記載の緩衝機能付包装容器。
【請求項4】
熱可塑性合成樹脂シートの一方の面にオレフィン系樹脂フィルムをラミネートして接着層を形成した材料シートを用い、この材料シートの接着層側に通気性を有する不織布を重ね合せた状態で、前記材料シートにより凹状の収容部を有する容器本体をシート成形するとともに、該容器本体の収容部の外縁における接着層に不織布を熱接着させて、前記不織布により容器本体の収容部の底面との間に空隙を有する緩衝シートを容器本体に一体に設けたことを特徴とする緩衝機能付包装容器の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性合成樹脂シートの一方の面にオレフィン系樹脂フィルムをラミネートして接着層を形成した材料シートを用い、この材料シートの接着層側に通気性を有する不織布を前記材料シートの接着層側に重ね合わせた状態で、前記材料シートが型当りになるように、材料シート及び不織布をシート成形機に供給し、前記材料シートにより凹状の収容部を有する容器本体を圧空成形すると同時に、前記不織布を、圧空チャンバー内に設けた補助プラグで容器本体の収容部内に設定量押し込みながら、前記容器本体の成形型をシール受け型として、同じく圧空チャンバー内に設けた熱板で収容部の外縁に加熱圧接する事により、前記不織布を前記収容部の外縁の接着層に熱融着せしめ、前記不織布により容器本体の収容部の底面との間に空隙を有する緩衝シートを容器本体に一体に設けたことを特徴とした緩衝機能付包装容器の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−16572(P2011−16572A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163957(P2009−163957)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(591147498)株式会社柏木モールド (10)
【Fターム(参考)】