説明

緩衝装置及びそれを使用する電子機器

【課題】衝撃や振動に敏感なデバイスの耐衝撃性及び耐振動性を改善する緩衝装置及びそれを使用する電子機器を提供する。
【解決手段】略矩形状のデバイス30の四隅部にゲル等の軟質の第1緩衝部材11と、デバイス30の長辺の側端部に第1緩衝部材11より硬質の細長い1対の第2緩衝部材12を配置する。また、第2緩衝部材12は、電子機器の状態に応じて離接手段13によりデバイス30の表面から離間又は接触するよう選択的に離接することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緩衝装置及びそれを使用する電子機器に関し、特にハードディクドライブ(HDD)等の衝撃振動に敏感なデバイスの緩衝装置及びそれを使用する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のPC(パーソナルコンピュータ)等の情報処理機器、携帯電話端末等の携帯端末及び携帯型オーディオ機器を含む電子機器や電子応用機器(以下、これらを総称して電子機器という)の多くはマイクロプロセッサ等のデータ処理機能及びデータ通信機能を備え、有線又は無線通信により種々のデータ(情報)を取得して処理する機能(インテリジェンス)を備えている。斯かる電子機器は、作成又は取得した情報を記憶する記憶手段としてHDD等を電子機器内に内蔵するのが一般的である。そして、斯かる電子機器の中には、屋内では卓上等に設置され、外出時にはユーザが携帯して持ち運ばれ、更に車両の運転時には車両に搭載して車載機器として使用可能である。
【0003】
HDD等は、表面に磁性材料の層(磁性被膜)がコーティングされたディスクを高速回転させ、そのトラックに沿ってヘッドを精密に案内して磁性被膜にデータを書き込み又は書き込まれたデータを読み出すように構成されている。HDDの如き精密可動機構を含むデバイスは、衝撃や振動に敏感であるので、耐衝撃性及び耐振動性を考慮した設計をする必要がある。耐衝撃性及び耐振動性を考慮した構造の必要性は、衝撃や振動に晒される可能性の高い携帯型電子機器や車載電子機器の場合に特に高くなる。
【0004】
斯かる電子機器の耐衝撃性及び耐振動性を高めるための種々の緩衝機構が、技術文献に開示されている。電子機器の内蔵デバイスを、その収容部の周囲に電子機器の筐体と一体的に形成された弾性衝撃吸収体及び塑性衝撃吸収体により保護する携帯型情報処理端末の耐衝撃装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、ケースに内包されるディスクドライブ本体の四隅に振動吸収手段及びケースとディスクドライブ間の間隙に衝撃吸収手段を設ける可搬型ディスクドライブ装置及び情報記録再生装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、HDDを内蔵する情報処理装置を、振動緩和部材及びそれよりも低い剛性を有する衝撃緩和部材よりなる支持部材にて装置設置面に設置する情報処理装置の耐振及び耐衝撃構造が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。また、HDD等の記録媒体駆動ユニットを内蔵した携帯用電子機器において、記録媒体駆動ユニットの四隅に緩衝部材を配置すると共に記録媒体の他の部分を、落下等の衝撃時にはロック解除可能にロック手段を介して筐体にリジッドに支持して電子機器の耐振動、耐衝撃性を付与する電子機器及び電子機器の衝撃緩和方法が開示されている(たとえば、特許文献4参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−358140号公報(第3ページ、第1図)
【特許文献2】特開2003−242764号公報(第13−14頁、第1図)
【特許文献3】特開2004−19695号公報(第10−11頁、第1図)
【特許文献4】特開2005−11474号公報(第4頁、第1図)
【0006】
図4は、上述した特許文献4に開示される従来の電子機器の側断面図である。この電子機器の本体100の筐体(ハウジング)137内にHDDユニット119が他の構成部品(図示せず)と共に内蔵されている。HDDユニット119のケーシング139は、例えば四隅においてゴム又はコイルスプリング等の緩衝部材138で筐体137内に保持されている。更に、HDDユニット119のケーシング139には、その隅部以外の複数箇所にL字状金具のロック片140が固定され、このロック片140に対応して筐体137に設けられたプランジャ126にて、ロック部材145の係合部144を何れかのロック片140の透孔142に挿入し、電子機器の落下等の衝撃発生時にHDDユニット119のケーシング139を電子機器の筐体137にリジッド状態に固定するように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の如く、衝撃や振動に敏感なデバイスである固定ディスクの衝撃や振動に対する保護対策として、固定ディスクを緩衝材で覆ってそれを使用する電子機器の筐体に内蔵し、固定ディスクへの衝撃や振動の伝達を緩和する技術が開示されている。しかし、耐衝撃性を確保するために緩衝材を柔らかくすると、振動時に固定ディスクの応答倍率が高くなり、緩衝材がない場合よりも、固定ディスクへの加速度が増加して固定ディスクの読み書きエラーを生じる場合がある。
【0008】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、衝撃や振動に敏感なHDD等のデバイスの耐衝撃性を確保すると共に、例えば車載機器等として使用する場合の耐振動特性をも改善する緩衝装置及びそれを使用する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の緩衝装置は、電子機器に内蔵される略矩形平板状の形態移動可能なデバイスを衝撃及び振動から保護する装置であって、このデバイスの四隅に設けられた軟質の第1緩衝部材と、このデバイスの長辺の側端近傍且つ両端の第1緩衝部材間に配置され、第1緩衝部材よりも硬質の1対の第2緩衝部材とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の緩衝装置及びそれを使用する電子機器は、以下の如き実用上の特有の効果を奏する。即ち、デバイスを軟質の第1緩衝部材にて四隅近傍を保持すると共に長辺の側端部に沿って第1緩衝部材よりも硬質の第2緩衝部材により電子機器筐体の収容部に収容保持するので、確実な耐衝撃性及び耐振動性を有する緩衝装置が得られる。更に、第2緩衝部材を離接手段によりデバイス表面に離接することにより耐衝撃性及び耐振動性を改善することが可能である。従って、本発明の緩衝装置及びそれを使用する電子機器は、携帯型又は車載型として使用される電子機器に特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明による緩衝装置及びそれを使用する電子機器の好適な実施形態の構成及び動作を、添付図面、特に図1乃至図3を参照して詳細に説明する。
【0012】
先ず、図1は、本発明による緩衝装置の好適実施例の基本構成を示す斜視図である。この緩衝装置10は、衝撃や振動から保護される被保護機器である、例えばHDDやシリコンディスク等の衝撃や振動に敏感なデバイス(以下、固定ディスクという)30を衝撃や振動から保護する装置である。この緩衝装置10は、情報処理装置等の電子機器(図1中には省略)に内蔵されて使用されるのが一般的である。
【0013】
図1に示す緩衝装置10は、略矩形状の固定ディスク30の四隅部(即ち、四隅近傍)に配置された第1緩衝部材11及び固定ディスク30の、例えば長辺の両側端近傍に配置された第2緩衝部材12により構成されている。
【0014】
この好適実施例の緩衝装置10において、第1緩衝部材11は、十分な柔軟性を有する材料、例えばゲル材、発泡材、バネにより形成されている。そして、この第1緩衝部材11が装着された固定ディスク30は、電子機器の筐体(図示せず)の対応する寸法の収容部内に収容される。従って、この固定ディスク30は、外部から衝撃(又は加速度)が加えられると、電子機器の筐体内で全ての方向に、衝撃の大きさの対応して所定寸法だけ移動する自由度が与えられ、衝撃を吸収することが可能である。そのために、固定ディスク30の四隅に配置される各第1緩衝部材11は、固定ディスク30の上面、底面、側面及び端面の4面を覆うように構成するのが好ましい。
【0015】
他方、第2緩衝部材12は、第1緩衝部材11よりも硬質の材料、例えば板ばね等により形成されている。この第2緩衝部材12の長さは、固定ディスク30の長辺の側端部に沿って且つ両端の第1緩衝部材11の間隙の大部分を覆うように構成されている。
【0016】
この緩衝装置10によると、緩衝部材11は、上述の如く固定ディスク30を内蔵する電子機器を、例えば落下した場合の衝撃を吸収するため、軟質材料(柔らかいゲル等の緩衝材)で保護している。他方、緩衝部材12は、第1緩衝部材11よりも硬質の材料、例えば板ばね等の緩衝材にて固定ディスク30を保護して、その動作中における振動を吸収する機能を有する。従って、図1に示す緩衝装置10は、固定ディスク30を衝撃及び振動から保護して、安定的な動作を可能にする。
【0017】
次に、図2及び図3を参照して、図1の緩衝装置の基本原理を利用する本発明の他の実施例を説明する。図2及び図3は、本発明の他の実施例による緩衝装置20の構成を示す斜視図である。尚、説明の便宜上、図1の緩衝装置10と対応する構成要素には同様の参照符号を使用している。
【0018】
図2及び図3に示す緩衝装置20は、第1緩衝部材11、第2緩衝部材12及び第2緩衝部材12を固定ディスク30の表面から離接させる離接機構(離接手段)13を備えている。第1緩衝部材11は、例えばゲル材、発泡材、バネにより形成され、固定ディスク30の四隅部に配置されている。また、第2緩衝部材12は、例えば板ばねにより形成されている。
【0019】
図2は、本発明の緩衝装置20において、離接機構13により第2緩衝部材12が固定ディスクの表面から離間している状態を示す。他方、図3は、離接機構13により第2緩衝部材12が固定ディスク30の表面に接触し(押し付けられ)ている状態を示す。
【0020】
図2及び図3に示す如く、左右1対の第2緩衝部材12は、それぞれポスト13aを介してバー13b似て連結され、このバー13bには操作部、例えば押しボタン13cが取り付けられている。例えば、オペレータ(操作者)又はユーザ(使用者)がこの押しボタン部13cを上下させることにより、第2緩衝部材12を固定ディスク30の表面から離接させることが可能である。
【0021】
この離接機構13は、耐衝撃時(例えば、この固定ディスク30を内蔵する電子機器を携帯移動時)には、図2に示す如く、離接機構13により第2緩衝部材12を固定ディスク30の表面から離間させる。これにより、万一この電子機器を落下させて衝撃が発生した場合には、衝撃や振動に敏感な固定ディスク30は、十分な柔軟性を有する第1緩衝部材11のみにより電子機器の筐体内の収容部に保持収容されているので、固定ディスク30を破損等から安全に保護することが可能である。
【0022】
一方、この固定ディスク30を内蔵する電子機器が、例えば携帯端末、PC、携帯オーディオ機器、カーナビ装置等の車載電子機器であり、ユーザが車両に搭載して使用する場合には、図3に示す如く、離接機構13を操作して固定ディスク30を第1緩衝部材11及び第2緩衝部材12の両方により電子機器内に保持することにより、車両走行中の振動の影響を最小にして高信頼性で動作させることが可能である。
【0023】
以上、本発明の緩衝装置及びそれを使用する電子機器の構成及び動作を、好適実施例に基づき詳述した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨や精神を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。
【0024】
上述本発明は上記請求項1の構成を基本としつつ以下のような実施態様構成を有することができる。
(1)前記第2緩衝部材を前記デバイスに表面に選択的に離接させる離接手段を更に備える構成。
(2)前記離接手段は、前記1対の第2緩衝部材を連結して同時に離接可能に構成される構成。
(3)前記離接手段は、前記電子機器の耐衝撃時には前記第2緩衝部材を前記デバイスの表面から離間させ、耐振動時には前記デバイスの表面に接触させる構成。
(4)前記第1緩衝部材はゲル材、発泡材又はバネにより形成され、前記第2緩衝部材は板ばねにより形成される構成。
(5)上記緩衝装置を前記デバイスと共に電子機器筐体のデバイス収容部に収容保持する構成。
(6)前記デバイスは固定ディスクであり、携帯型又は車載型電子機器として使用される構成。
【0025】
上述の如き構成を有し且つ動作する本発明の緩衝装置は、衝撃や振動に敏感なHDDやLCD(液晶表示パネル)等のデバイスを内蔵し且つユーザが携帯して移動させ落下等の衝撃の虞があり且つ大きい振動環境下で使用される携帯且つ車載型又はそれに類似する電子機器に適用する場合に特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による緩衝装置の好適実施例の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明による緩衝装置の他の実施例における耐衝撃時の斜視図である。
【図3】本発明による緩衝装置の他の実施例における耐振動時の斜視図である。
【図4】従来の衝撃緩和型電子機器の側断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10、20 緩衝装置
11 第1緩衝部材
12 第2緩衝部材
13 離接手段
30 衝撃・振動に敏感なデバイス(固定ディスク)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に内蔵される略矩形平板状の携帯移動可能なデバイスを衝撃及び振動から保護する緩衝装置において、
前記デバイスの四隅に設けられた軟質の第1緩衝部材と、前記デバイスの長辺の側端近傍且つ両端の前記第1緩衝部材間に配置され、前記第1緩衝部材より硬質の1対の細長い第2緩衝部材とを備えることを特徴とする緩衝装置。
【請求項2】
前記第2緩衝部材を前記デバイスに表面に選択的に離接させる離接手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記離接手段は、前記1対の第2緩衝部材を連結して同時に離接可能に構成されることを特徴とする請求項2に記載の緩衝装置。
【請求項4】
前記離接手段は、前記電子機器の耐衝撃時には前記第2緩衝部材を前記デバイスの表面から離間させ、耐振動時には前記デバイスの表面に接触させることを特徴とする請求項2又は3に記載の緩衝装置。
【請求項5】
前記第1緩衝部材はゲル材、発泡材又はバネにより形成され、前記第2緩衝部材は板ばねにより形成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の緩衝装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の緩衝装置を前記デバイスと共に電子機器筐体のデバイス収容部に収容保持することを特徴とする緩衝装置を使用する電子機器。
【請求項7】
前記デバイスは固定ディスクであり、携帯型又は車載型電子機器として使用されることを特徴とする請求項6に記載の緩衝装置を使用する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−9645(P2009−9645A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169889(P2007−169889)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】