説明

練歯磨組成物及び練歯磨組成物の液分離抑制方法

【解決手段】塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物に、(A)カラギーナンと、(B)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はK、nは2又は3である。)
で示される直鎖状水溶性ポリリン酸塩と、(C)セラックとを配合し、(B)成分/(C)成分の質量比を0.5〜10としたことを特徴とする練歯磨組成物。
【効果】本発明の塩化セチルピリジニウム含有の練歯磨組成物は、口腔内での歯磨剤分散液の質感に優れ、清掃力が高く、かつ、経時による液分離が生じず保存安定性も良好であり、塩化セチルピリジニウム由来の殺菌効果を有することから、歯肉炎予防用などとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内で使用時の歯磨剤分散液の質感が良好で、清掃力が高く、経時での液分離が抑制され保存安定性に優れ、歯肉炎予防などに有効な塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物及び前記練歯磨組成物の液分離抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩化セチルピリジニウムは、強い殺菌、抗カビ作用を持つ界面活性剤であり、多くの練歯磨組成物等の口腔組成物に歯肉炎予防の有効成分などとして用いられている。
【0003】
一方、歯磨剤用粘結剤は、歯磨剤の固体成分と液体成分の分離を防ぐために配合されるもので、歯磨剤の安定性を保つ成分として重要であるばかりでなく、歯磨剤を口腔内で使用時の歯磨剤分散液の質感をはじめ、分散性、発泡性、水洗性などにも影響を及ぼすものである。粘結剤には、有機系、無機系のいずれもが存在するが、この中でも有機系の海藻由来のカラギーナンは、使用感、特にこれを配合した歯磨剤を口腔内で使用時の歯磨剤分散液の質感、即ち、軽くさらりとした触感が他の粘結剤を使用した場合に比べて良好で、このため、多くの練歯磨剤に利用されている。
【0004】
また、歯磨剤の基本機能の一つとして、以前、物理的な力による歯の汚れの除去が検討されていたが、物理的な力によらず、化学的に汚れを取り除く技術の開発が進み、美白用歯磨成分としてピロリン酸ナトリウム等の一般式Mn+2n3n+1(但し、MはNa又はK、nは2又は3を示す。)で示される直鎖状水溶性ポリリン酸塩が用いられるようになった(特許文献1〜3参照)。
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物に、カラギーナンを粘結剤として配合し、かつ直鎖状水溶性ポリリン酸塩を併用して配合すると、長期保存時に経時で液分離が生じ、保存安定性が低下するという問題が生じ、このため、かかる練歯磨組成物は製剤化が困難であった。従って、上記課題を解決して、口腔内での歯磨剤分散液の質感に優れ、かつ清掃力が高く、保存安定性も良好な塩化セチルピリジニウム含有の練歯磨組成物を得ることができる技術の開発が望まれる。
【0006】
【特許文献1】特開平9−175966号公報
【特許文献2】特開平10−182389号公報
【特許文献3】特開平9−175966号公報
【特許文献4】特開平11−221238号公報
【特許文献5】特開2001−302428号公報
【特許文献6】特開2007−91712号公報
【特許文献7】特開平8−310929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、口腔内での歯磨剤分散液の質感が良好で、清掃力が高く、経時による液分離が生じない保存安定性に優れた塩化セチルピリジニウム含有の練歯磨組成物及びこの練歯磨組成物の液分離抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物に、粘結剤としてカラギーナンを配合し、かつ下記一般式(1)で示される直鎖状水溶性ポリリン酸塩とセラックとを組み合わせて配合すると共に、直鎖状水溶性ポリリン酸塩とセラックとの配合比を特定割合とすることにより、カラギーナンに由来する特有の良質な歯磨剤分散液の質感(軽くさらりとした触感)と、直鎖状水溶性ポリリン酸塩による高い清掃力が発揮される上、経時による液分離が生じない保存安定性に優れた練歯磨組成物が得られることを知見した。
【0009】
上記したように、塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物に、カラギーナンを粘結剤として配合し、直鎖状水溶性ポリリン酸塩を配合した場合、経時で液分離が生じて保存安定性が低下してしまうという課題があったが、カラギーナン及び直鎖状水溶性ポリリン酸塩にセラックを併用して配合し、直鎖状水溶性ポリリン酸塩とセラックとの質量比を特定範囲にすることにより、上記課題を解決できて、歯磨剤分散液の良好な質感及び高い清掃力が発揮される上、練歯磨組成物の経時による液分離の発生が防止され、保存安定性も良好に保持することができる。なお、セラックは、ラックカイガラ虫が分泌する樹脂状物質を精製したもので、従来様々な口腔用製品に応用され、例えば良好な剥離性を有することから義歯安定剤への利用、歯に光沢を付与する目的で歯牙被覆用組成物や歯牙美白用セット、更には歯磨組成物への応用も提案されている(特許文献4〜7参照)が、本発明によれば、セラックの配合により、粘結剤であるカラギーナンの凝集が抑制され、高い保水力を維持することが可能になり、塩化セチルピリジニウム含有練歯磨組成物にカラギーナン、直鎖状水溶性ポリリン酸塩を配合した場合に生じる上記組成物の液分離を抑制でき、カラギーナン及び直鎖状水溶性ポリリン酸塩由来の効果も満足に発揮させることができるという新しい知見を見出したものである。
【0010】
従って、本発明は、
(i)塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物に、(A)カラギーナンと、(B)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はK、nは2又は3である。)
で示される直鎖状水溶性ポリリン酸塩と、(C)セラックとを配合し、(B)成分/(C)成分の質量比を0.5〜10としたことを特徴とする練歯磨組成物、
(ii)塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物にカラギーナンと直鎖状水溶性ポリリン酸塩とを配合することにより生じる該組成物の液分離を抑制する方法であって、塩化セチルピリジニウム含有練歯磨組成物に、(A)カラギーナンと、(B)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はK、nは2又は3である。)
で示される直鎖状水溶性ポリリン酸塩と、(C)セラックとを配合し、(B)成分/(C)成分の質量比を0.5〜10とすることを特徴とする、前記練歯磨組成物の液分離抑制方法
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塩化セチルピリジニウム含有の練歯磨組成物は、口腔内での歯磨剤分散液の質感に優れ、清掃力が高く、かつ、経時による液分離が生じず保存安定性も良好であり、塩化セチルピリジニウム由来の殺菌効果を有することから、歯肉炎予防用などとして有用である。本発明方法によれば、塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物にカラギーナンと直鎖状水溶性ポリリン酸塩とを配合することにより生じる該組成物の液分離を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の練歯磨組成物は、塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物であって、(A)カラギーナン、(B)直鎖状水溶性ポリリン酸塩、(C)セラックを必須成分として含有するものである。
【0013】
本発明組成物に使用される塩化セチルピリジニウムは、通常練歯磨組成物に配合される市販品を使用でき、和光純薬工業(株)製などが挙げられる。
(D)塩化セチルピリジニウムの配合量は、組成物全体の0.01〜1.0%(質量%、以下同様。)、特に0.03〜0.3%が好適であり、0.01%未満では殺菌力を保持できない場合があり、1.0%を超えると練歯磨剤の外観が損なわれる場合がある。
【0014】
(A)カラギーナンとしては、市販品、例えばCPケルコジャパン製のカラギーナンなどを使用できる。
カラギーナンの配合量は、組成物全体の0.5〜1.5%、特に0.8〜1.2%が好ましい。0.5%未満では、カラギーナン特有の良質な歯磨剤分散液の質感が得られなくなり、1.5%を超えると練歯磨剤の外観が損なわれる場合がある。
【0015】
(B)直鎖状水溶性ポリリン酸塩は、下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はK、nは2又は3である。)
で示されるものである。具体的には、重合度n=2のピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製、東北化学(株)製等)やピロリン酸カリウム(太平化学産業(株)製、東亜合成化学(株)製等)、n=3のトリポリリン酸ナトリウム(セントラル硝子(株)製、日本ビルダー(株)製等)やトリポリリン酸カリウム(太平化学産業(株)製等)などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できるが、特にピロリン酸ナトリウムが好ましい。
【0016】
上記直鎖状水溶性ポリリン酸塩の配合量は、組成物全体の0.5〜3.0%、特に1.0〜2.0%が好ましい。直鎖状水溶性ポリリン酸塩の配合量が0.5%未満では清掃力向上効果が得られず、3.0%を超えると良質な歯磨剤分散液の質感を損なう場合がある。
【0017】
(C)セラックは、ラックカイガラ虫が分泌する樹脂状物質を精製したものであり、各種食品や医薬品、口腔用製品などに利用されている安全性の高い天然素材である。本発明では、セラックの配合により上記練歯磨組成物の液分離を抑制することができる。
セラックとしては、クルードセラック、脱色セラック、日本薬局方セラック等のいずれの精製グレードのセラックを使用することもできる。具体的には、日本シェラック工業(株)製の乾燥透明白ラック、興洋化学(株)の白色セラックなどの市販品を使用できる。
【0018】
セラックの配合量は、組成物全体の0.2〜3%、特に1〜1.5%が好ましい。配合量が0.2%未満では液分離の発生を防ぐことができない場合があり、3%を超えると歯磨剤分散液の質感を損なうことがある。
【0019】
また、上記直鎖状水溶性ポリリン酸塩/セラックの割合((B)/(C))は、優れた歯磨剤分散液の質感の発揮と液分離の防止のために質量比で0.5〜10、好ましくは0.8〜3の範囲とする。質量比が0.5未満では歯磨剤分散液の質感が損なわれ、10を超えると液分離が生じてしまう場合がある。
【0020】
本発明の練歯磨組成物には、上記必須成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて他の任意成分を配合することができる。具体的には、界面活性剤、粘結剤、粘稠剤(保湿剤)、研磨剤、甘味剤、香料、防腐剤、各種有効成分等がある。
【0021】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が配合可能であり、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルザルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタメート、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム等のN−アシルタウレート等が挙げられる。
【0022】
また、非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、EO付加モル数が1〜30の範囲であるポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、EO付加モル数が1〜30の範囲であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ラウリル酸モノ又はジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プルロニック等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシン等のN−アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
これら界面活性剤の配合量は、通常、組成物全体の0.1〜10%である。
【0023】
粘結剤としては、カラギーナンに加えて、他の粘結剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、カーボポール、ビーガム、増粘性シリカ等を配合できる(配合量は、通常、組成物全体に対して0.1〜10%)。
【0024】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、平均分子量100〜10000の範囲であるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、マルチトール、ラクトール等がある(配合量は、通常、組成物全体に対して10〜70%)。
【0025】
研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム2水和物,第2リン酸カルシウム無水和物,第3リン酸カルシウム,第4リン酸カルシウム,第8リン酸カルシウム等の正リン酸のカルシウム塩、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケ−ト、ポリメチルメタアクリレ−ト、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム,重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる(配合量通常10〜60%)。
また、清掃助剤として、重曹、炭酸ナトリウム等のアルカリ剤、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸等の有機酸及びその塩も配合できる(配合量は、通常、組成物全体の0.1〜10%)。
【0026】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルヒドロカルコン、ペルラルチン、グリチルリチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等がある(配合量は、通常、組成物全体の0.01〜1.0%)。
【0027】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができ、実施例の香料に限定されない。また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を併用した賦香用香料としては、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0028】
防腐剤としては、塩化セチルピリジニウムに加えて、各種パラベンのほか安息香酸ナトリウム、トリクロサン等の非イオン性抗菌剤、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性抗菌剤、精油成分等が配合可能である(配合量は、通常、組成物全体の0.001〜1%)。
【0029】
有効成分としては、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテナーゼ、ムタナーゼ等の酵素、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、塩化ナトリウム、ビタミンC、E等の抗炎症剤、銅クロロフィル、グルコン酸銅、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌剤、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等のタバコヤニ除去剤、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム等の知覚過敏予防剤も配合できる。なお、有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0030】
練歯磨組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、練歯磨組成物に使用される容器を使用でき、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器、ラミネート(AL(アルミニウム)−プラスチック)容器、金属容器等が使用できる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記例において配合量はいずれも質量%である。
【0032】
〔実施例、比較例〕
表1に示す組成の練歯磨剤を下記方法で調製し、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0033】
練歯磨剤の調製法:
プロピレングリコールにセラック、粘結剤を加えて膨潤させ、プロピレングリコール分散溶液を得た。一方、精製水に直鎖状水溶性ポリリン酸塩、サッカリンナトリウム、フッ化ナトリウム、ソルビット液等の水溶性物質を溶解させた後、これに前記で得たプロピレングリコール分散溶液を加え、撹拌した。その後、香料、研磨剤、界面活性剤の順に加え、更に減圧下(4kPa)で撹拌し、練歯磨剤を得た。なお、製造には、ユニミキサー(FM−SR−25,POWEREX CORPORATION社)を用いた。
【0034】
歯磨時の歯磨剤分散液の質感評価:
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。練歯磨剤を調製後、室温で3日間静置した試験歯磨剤を歯ブラシ上に約1.5cm乗せ、通常の方法で歯を磨き、口中での歯磨剤分散液の質感(軽くさらりとした触感)について以下の基準で評価した。
【0035】
〈歯磨剤分散液の質感の評点〉
3点:歯磨剤分散液の質感が極めて良好。
2点:歯磨剤分散液の質感が良好。
1点:歯磨剤分散液の質感が不良。
10名の評価結果を平均し、以下の通り使用感を判断した。
〈歯磨剤分散液の質感の評価基準〉
◎:歯磨剤分散液の質感が2.5点以上〜3.0点以下
○:歯磨剤分散液の質感が2.0点以上〜2.5点未満
△:歯磨剤分散液の質感が1.5点以上〜2.0点未満
×:歯磨剤分散液の質感が1.0点以上〜1.5点未満
【0036】
清掃力の評価:
ハイドロキシアパタイト円板(HA板、以下同じ。旭光学社製、直径7mm×厚さ3mm)表面をサンドブラストで50ミクロンのアルミナ(JELENKO社製)を吹き付け処理した。その後、中性洗剤水溶液中、超音波洗浄機で洗浄、吐出唾液に浸漬(37℃、30分)した後、リゾチーム1%溶液、豚胃ムチン1%、溶液メイラード反応液(グルコース1%、リゾチーム1%を含む溶液を110℃で10分間処理した液)、牛血清アルブミン1%溶液、ラクトフェリン1%、溶液インスタント粉末紅茶1%溶液に9サイクル浸漬(50℃、10分)して、HA板上にモデル汚れを作製した。なお、この浸漬用溶液はKCl:0.37%、KH2PO4:0.014%、MgCl2・6H2O:0.01%、CaCl2・2H2O:0.075%の塩類を含み、pHを7.0に調整して使用した。
モデル汚れ付着HA板を、試験歯磨剤10gを水20gで分散した試験液に15分間浸漬し、往復ブラッシングを30回行った後、0.3%塩基性フクシン溶液にてモデル汚れを染色して色差(Lab表色系)を測定した(日本電色工業(株)製、SE−2000を使用)。除去処理後のHA板(n=3)の平均a値から、以下の基準に従い清掃力を評価した。
【0037】
〈清掃力の評価基準〉
◎:a値の平均が20未満
○:a値の平均が20以上30未満
△:a値の平均が30以上40未満
×:a値の平均が40以上
【0038】
歯磨剤の液分離の評価:
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。40℃の恒温槽に3ヶ月間保存した試験歯磨剤を室温で1日静置後、歯ブラシ上に約1.5cm乗せ、歯磨剤の表面で分離している液分量を基に、以下の基準で評価した。
〈液分離の評点〉
3点:液分離がない。
2点:やや液分離がある。
1点:液分離がある。
10名の評価結果を平均し、以下の通り液分離を判断した。
〈液分離の評価基準〉
◎:液分離が3.0点
○:液分離が2.5点以上〜3.0点未満
△:液分離が1.5点以上〜2.5点未満
×:液分離が1.0点以上〜1.5点未満
【0039】
なお、香料については、表2に示す香料A〜香料Dまでを作成し、配合した。
また、使用原料は下記の通りである。
カラギーナン:CPケルコジャパン製
ピロリン酸ナトリウム:太平化学産業(株)製
ピロリン酸カリウム:太平化学産業(株)製
トリポリリン酸ナトリウム:セントラル硝子(株)製
トリポリリン酸カリウム:太平化学産業(株)製
セラック:日本シェラック工業(株)製
塩化セチルピリジニウム:和光純薬工業(株)製
【0040】
表1の結果より、本発明の必須構成要件のいずれかを満たさない練歯磨組成物は、歯磨剤分散液の質感、清掃力、歯磨の液分離のいずれかの点で十分な効果が発揮されなかったのに対して、塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物にカラギーナン、直鎖状水溶性ポリリン酸塩、セラックを組み合わせて配合し、直鎖状水溶性ポリリン酸塩/セラックの質量比を特定割合にすることによって、歯磨剤分散液の質感に優れ、清掃力が高く、しかも、液分離が生じず保存安定性が良好となることが確認された。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物に、(A)カラギーナンと、(B)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はK、nは2又は3である。)
で示される直鎖状水溶性ポリリン酸塩と、(C)セラックとを配合し、(B)成分/(C)成分の質量比を0.5〜10としたことを特徴とする練歯磨組成物。
【請求項2】
塩化セチルピリジニウムを含有する練歯磨組成物にカラギーナンと直鎖状水溶性ポリリン酸塩とを配合することにより生じる該組成物の液分離を抑制する方法であって、塩化セチルピリジニウム含有練歯磨組成物に、(A)カラギーナンと、(B)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はK、nは2又は3である。)
で示される直鎖状水溶性ポリリン酸塩と、(C)セラックとを配合し、(B)成分/(C)成分の質量比を0.5〜10とすることを特徴とする、前記練歯磨組成物の液分離抑制方法。

【公開番号】特開2009−107989(P2009−107989A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283308(P2007−283308)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】