説明

縮合チオフェン、縮合チオフェンの製造方法およびその使用方法

縮合チオフェン化合物などの複素環式有機化合物を含む組成物、それらの製造方法およびその使用方法がここに開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複素環式有機化合物を含む組成物がここに記載されている。より詳しくは、縮合チオフェン、その製造方法およびその使用方法がここに記載されている。
【背景技術】
【0002】
高共役有機材料が、主にその興味深い電子的性質および光電子的性質のために、現在、多大な研究活動の焦点となっている。それらの材料は、導体材料として、二光子混合材料として、有機半導体として、および非線形光学(NLO)材料として、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜トランジスタ(TFT)、有機発光ダイオード(OLED)、電気光学(EO)用途を含む様々な用途における使用のために研究されている。
【0003】
高共役有機材料には、RFIDタグ、フラットパネルディスプレイにおけるエレクトロルミネセント素子、並びに光起電およびセンサ素子などの素子に用途が見出されるであろう。
【0004】
ペンタセン、ポリ(チオフェン)、ポリ(チオフェン−コ−ビニレン)、ポリ(p−フェニレン−コ−ビニレン)およびオリゴ(3−ヘキシルチオフェン)などの材料が、様々な電子および光電子用途に使用するために集中的に研究されてきた。ごく最近、縮合チオフェン化合物が都合よい性質を有することが分かった。例えば、ビスジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(1、j=2)が、固体状態において効率的にπ積層し、高い移動性(0.05cm2/V・sまで)を有し、高いオン/オフ比(108まで)を有することが分かった。オリゴ−またはポリ(チエノ[3,2−b]チオフェン)(2)およびオリゴ−またはポリ(ジチエノ[3,2−b:2’−3’−d]チオフェン)(1)
【化1】

【0005】
などの縮合チオフェンのオリゴマーおよびポリマーも、電子および光電子素子への使用に提案されており、許容される導電率および非線形光学的性質を有することが示された。未置換の縮合チオフェン系材料は、低溶解度、不十分な加工可能性および酸化不安定性を被る傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、許容される溶解度、加工可能性および酸化安定性を有する縮合チオフェン系材料が未だに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
縮合チオフェン化合物などの複素環式有機化合物を含む組成物、その製造方法およびその使用方法がここに記載されている。ここに記載された組成物および方法には、従来技術の組成物および方法よりも優れた数多くの利点がある。例えば、ここに記載された縮合チオフェン組成物は、類似の未置換のチオフェン組成物よりも、より可溶性であり、より加工に適するように製造できる。ここに記載された縮合チオフェン部分を含むポリマーおよびオリゴマーは、従来の回転塗布操作を用いて加工に適するように製造できる。さらに、ここに記載された組成物は、β−H部位を実質的に含まず、その組成物の酸化安定性を著しく改善するように製造できる。
【0008】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者にとって容易に明白であるか、または記載の説明およびその特許請求の範囲、並びに添付の図面に記載されたように本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0009】
先の一般的に説明および以下の詳細な説明の両方は、単なる例示であり、本発明の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することを意図したものであることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、この明細書に包含され、その一部を構成する。これらの図面は、必ずしも、一定の縮尺で示されておらず、様々な要素の寸法は、明瞭さのために歪められているかもしれない。例えば、明瞭さのために、図面には、光ファイバの全ての遠心端が示されているわけではない。図面は、本発明の1つ以上の実施の形態を図示しており、先の記載と共に、本発明の原理および操作を説明するように働く。
【図1】β”−R−置換縮合チオフェン部分を製造する方法を示す反応機構
【図2】α−(R−アシル)−β−カルボキシメチルチオチオフェン部分を製造する方法を示す反応機構
【図3】α’−ヒドロ−β”−R−置換縮合チオフェン部分を製造する方法を示す反応機構
【図4】チオフェン部分の両側に同時の環化が行われる反応機構
【図5】α,α’−ビス(R−アシル)−β,β”−ビス(カルボキシメチルチオ)チオフェン部分を製造する代わりの方法を示す反応機構
【図6】5環式縮合チオフェンを製造する方法を示す反応機構
【図7】多環式β−R−置換−β’−ブロモチオフェン部分を製造する方法を示す反応機構
【図8】β−R−置換−β’−ブロモチオフェン化合物を製造する方法を示す反応機構
【図9】一置換縮合チオフェン部分を製造する方法を示す反応機構
【図10】実施例1による3,6−ジヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェンおよび3,6−ジデシルチエノ[3,2−b]チオフェンの合成を示す反応機構
【図11】実施例2による3−ヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェンの合成を示す反応機構
【図12】実施例3による3,6−ジデシルチエノ[3,2−b]チオフェンおよび3,6−ジデシルチエノ[3,2−b]チオフェン−4,4−ジオキシドの合成を示す反応機構
【図13】実施例4による3,7−ジデシルチエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’;4,5]チエノ[2,3−d]チオフェンの合成を示す反応機構
【図14】実施例5に記載されたような従来の方法論によるβ−ヘキシル−置換チエノ[2,3−d]チオフェンの失敗した合成を示す反応機構
【図15A】実施例7による2−2および3−3ダイマー並びに5環式系の合成のための反応機構
【図15B】実施例7による2−2および3−3ダイマー並びに7環式系の合成のための反応機構
【図16】実施例8による7環式テトラアルキル置換チエノチオフェンの合成のための反応機構
【図17】実施例8による9環式テトラアルキル置換チエノチオフェンの合成のための反応機構
【図18】縮合チオフェンコポリマーを製造するための反応機構
【図19A】ここに記載された方法により製造される異なる縮合チオフェンコポリマーの構造を示す化学構造式
【図19B】ここに記載された方法により製造される異なる縮合チオフェンコポリマーの構造を示す化学構造式
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の材料、物品、および/または方法を開示し、記載する前に、以下の記載する態様は、特定の化合物、合成方法、または使用に制限されず、もちろん、それらは様々であってよいことが理解されよう。ここに用いた用語法は、特定の態様を説明することのみを目的としたものであり、制限を意図したものではないことも理解されよう。
【0012】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、以下の意味を有するものと定義されるいくつかの用語を参照する。
【0013】
本明細書全体に亘り、文脈がそうではないことを要求しない限り、「含む」という用語または「含んでいる」などの派生語は、述べられた整数まはた工程もしくは整数または工程の群を含有することを意味するものであり、任意の他の整数または工程もしくは整数または工程の群の排除を意味するものではないことが理解されよう。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲に用いられるように、単数形は、文脈に明らかにそうではないと述べられていない限り、複数も含むことに留意しなければならない。それゆえ、例えば、「薬剤キャリヤ」は、そのようなキャリヤなどの2種類以上の混合物を含む。
【0015】
「随意的な」または「必要に応じての」は、その後に記載された事象または環境が起こり得るまたは起こり得ないこと、およびその記載が、その事象または環境が生じた場合と、生じない場合を含むことを意味する。
【0016】
範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで、としてここに表される。そのような範囲が表現された場合、別の態様は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が、「約」という先行詞を使用して、近似として表されている場合、特定の値は別の態様を形成することが理解されよう。範囲の各々の端点は、他の端点に関してと、他の端点とは関係なくしての両方において有意であることもさらに理解されよう。
【0017】
ある成分の質量パーセントは、具体的にそうではないと別記されていない限り、その成分が含まれる配合物または組成物の総質量に基づく。
【0018】
ここに用いられる「アルキル基」という用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、またはテトラデシルなどの、1から40の炭素原子を持つ枝分れしたか、していない飽和炭化水素を称する。アルキル基は、置換されていてもされていなくても差し支えない。「未置換アルキル基」という用語は、ここでは、炭素と水素だけからなるアルキル基と定義される。「置換アルキル基」という用語は、ここでは、1つ以上の水素原子が、以下に限られないが、アリール基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、エステル、アルデヒド、ヒドロキシル基、アルコキシ基、チオール基、チオアルキル基、またはハロゲン化物、ハロゲン化アシル、アクリレート基、またはビニルエーテルを含む基により置換されているアルキル基として定義される。例えば、アルキル基は、アルキルヒドロキシ基であって差し支えなく、ここで、このアルキル基の任意の水素原子が、ヒドロキシル基により置換されている。
【0019】
ここに定義された「アルキル基」という用語は、シクロアルキル基も含む。ここに用いられる「シクロアルキル基」という用語は、少なくとも3つの炭素原子からなる非芳香族の炭素系の環である。シクロアルキル基の例としては、以下に限られないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。シクロアルキル基という用語は、環の炭素原子の少なくとも1つが、以下に限られないが、窒素、酸素、硫黄、またはリンなどのヘテロ原子により置換されている、ヘテロシクロアルキル基も含む。
【0020】
ここに用いられる「アリール基」という用語は、以下に限られないが、ベンゼン、ナフタレンなどを含む、任意の炭素系の芳香族基である。「アリール基」という用語は、芳香族基の環に少なくとも1つのヘテロ原子が含まれているアリール基として定義される「ヘテロアリール基」も含む。ヘテロ原子の例としては、以下に限られないが、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられる。アリール基は、置換されていても、未置換であっても差し支えない。アリール基は、以下に限られないが、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、またはアルコキシを含む1種類以上の基により置換されていても差し支えない。
【0021】
ここに用いられる「アラルキル」という用語は、先に定義したアルキル基が結合したアリール基である。アラルキル基の一例は、ベンジル基である。
【0022】
「アルケニル基」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む構造式を持つ、2から40の炭素原子の枝分れまたは枝分れしていない炭化水素基として定義される。
【0023】
「アルキニル基」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む構造式を持つ、2から40の炭素原子の枝分れまたは枝分れしていない炭化水素基として定義される。
【0024】
開示された方法の生成物および組成物のために用いられる、それと共に用いられる、その調製に用いられる、化合物、組成物、および成分が開示されている。これらと他の材料がここに開示されており、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合、これらの化合物の様々な個々のおよび集合的な組合せと順列の特定の参照は明白に開示されていなくてもよいが、各々は、具体的に考えられ、ここに記載されることが理解される。それゆえ、分子A,BおよびCの部類が開示され、同様に分子D,EおよびFの部類が開示され、分子の組合せの例A−Dが開示されている場合、各々が個々に挙げられていなくても、各々は、個々と集合的に考えられる。それゆえ、この例において、組合せA−E,A−F,B−D,B−E,B−F,C−D,C−E,およびC−Fの各々が、具体的に考えられ、A,BおよびC;D,EおよびFの開示から開示されたと考えるべきであり、その例が組合せA−Dである。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せも、具体的に考えられ、開示されている。それゆえ、例えば、A−E,B−FおよびC−Eの部分群が、具体的に考えられ、A,BおよびC;D,EおよびFの開示から開示されたと考えるべきであり、その例の組合せがA−Dである。この概念は、以下に限られないが、開示された組成物を製造し、使用する方法の工程を含む、この開示の全ての態様に適用される。それゆえ、実施できる様々な追加の工程がある場合、これらの追加の工程の各々は、開示された方法の任意の特定の実施の形態または実施の形態の組合せにより実施することができると理解され、そのような組合せの各々は、具体的に考えられ、開示されていると考えるべきであると理解される。
【0025】
ある態様において、化学式3または4からなる縮合チオフェン部分を少なくとも1つ含む組成物がここに記載される。
【化2】

【0026】
別の態様において、組成物は、化学式3’または4’
【化3】

【0027】
からなる少なくとも1つの部分を含み、ここで、nはゼロより大きい整数であり、mは1以上であり、oは1以上であり、xは1以上であり、R1およびR2は、独立して、水素またはアルキル基であり、R1およびR2の内の少なくとも一方はアルキル基であり、Arはアリール基であり、nは1ではない。
【0028】
ある態様において、構造3、3’、4および4’に関して、nはゼロより大きい整数であり、mは1以上であり、R1およびR2は、独立して、水素またはアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも一方はアルキル基であり、nは1ではない。ここに用いているように、縮合チオフェン部分の縮合チオフェン環系は、その部分の複素環コアであり、縮合チオフェン環系に結合したα置換基およびβ置換基(例えば、R1およびR2)は含まない。例えば、n=1の構造3および4の縮合チオフェン環系が、それぞれ、構造5および6として下に示されている。
【化4】

【0029】
ここに記載された縮合チオフェン部分は、いくつの縮合環を有していても差し支えない。例えば、縮合チオフェン部分は、二環(3および3’,n=1)、三環(4および4’,n=1)、四環(3および3’,n=2)、五環(4および4’,n=2)、六環(3および3’,n=3)、または七環(4および4’,n=3)であって差し支えない。ここに記載された方法によって、任意の所望の数の環を持つ縮合チオフェン部分を形成することができる。ある態様において、nは1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,または15である。他の態様において、縮合チオフェン部分は、三環以上(すなわち、4または4’,n≧1;または3または3’,n≧2)であり得る。
【0030】
ここに記載された縮合チオフェン部分は、縮合チオフェン環系のβ位置の内の少なくとも1つがアルキル基で置換されている。ここに用いられるように、縮合チオフェン環系のα位置は、縮合チオフェンの硫黄に直接隣接した非縮合炭素中心であり、一方で、β位置は、α位置により縮合チオフェンの硫黄から隔てられた非縮合炭素中心である。構造3、3’、4および4’において、α位置は、組成の残りに結合されたものとして示されており、β位置はR1およびR2により置換されている。
【0031】
ある態様において、R1およびR2の少なくとも一方はアルキル基である。以前は、縮合チオフェン環系のβ位置にアルキル置換基を持つ構造3、3’、4および4’の縮合チオフェン部分を製造する方法はなかった。後の実施例により詳しく説明されているように、縮合チオフェン環系をアルキル化する試みにおいて使用される場合、単純な未縮合チオフェンをアルキル化するのに従来用いられる方法では失敗してしまう。ある態様において、縮合チオフェン環系のβ位置に大きなアルキル置換基を持つ縮合チオフェン部分を製造する方法がここに記載される。
【0032】
ある態様において、R1およびR2は、様々な置換または未置換のアルキル基であり得る。例えば、R1およびR2の少なくとも一方は未置換アルキル基である。この態様において、未置換アルキル基は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルまたはヘキサデシル)、枝分れアルキル基(例えば、sec−ブチル、neo−ペンチル、4−メチルペンチル)、または置換または未置換のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)であり得る。別の態様において、R1およびR2の少なくとも一方は、置換された、それ自体少なくとも4つの炭素のサイズのアルキル基である。さらに別の態様において、アルキル基の置換は、少なくとも2つの炭素だけ、縮合チオフェン環系から隔てられている。ある態様において、R1および/またはR2は、アリール基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、エステル、アルデヒド、ヒドロキシル基、アルコキシ基、チオール基、チオアルキル基、またはハロゲン化物、ハロゲン化アシル、アクリレート基、またはビニルエーテルにより置換されていて差し支えない。置換アルキル基の例としては、以下に限られないが、6−ヒドロキシヘキシルおよび3−フェニルブチルが挙げられる。R1およびR2の選択は、縮合チオフェン部分を含有する組成物の最終用途による。ここに記載された方法によって、多種多様のR1およびR2置換基を持つ縮合チオフェン部分を合成することができる。置換アルキル基の任意の官能基を、その後の反応工程に耐えるために、保護することができる。
【0033】
未置換縮合チオフェン環系(すなわち、α−またはβ位置で置換されていない)は、比較的不溶性である傾向にある。それゆえ、ある態様において、R1およびR2は、サイズが少なくとも6つの炭素を持つアルキル基であり得る。例えば、アルキル基は、化学式Ck2k-1を有し、ここで、kは6以上の整数である。
【0034】
ある態様において、縮合チオフェン環系は、両方のβ位置で置換されており、したがって、この環系にはβ水素がない。例えば、ある態様において、構造3、3’、4および4’におけるR1およびR2のどちらもHではない。そのような部分は、β水素を実質的に含有しないオリゴマーおよびポリマーに含ませることができ、酸化安定度が増す。例えば、β水素の縮合チオフェン環系に対するモル比は、約1/6、1/7、1/8、1/9または1/10未満であり得る。さらに別の態様において、R1およびR2の一方または両方がアルキル基であり得る。ある態様において、R1およびR2は同一のアルキル基である。R1およびR2が同一である場合、重合反応の位置選択性(regioselectivity)の問題(すなわち、頭−尾対頭−頭結合)が無くなるので、位置規則性ポリマーを容易に形成できる。他の態様において、R1およびR2は異なっていてもよい。例えば、R1は、サイズが少なくとも4つの炭素であって差し支えなく、R2は、サイズが4つ未満の炭素(例えば、メチル基)であり得る。あるいは、別の態様において、R1およびR2の両方とも、サイズが少なくとも4つの炭素であり得る。
【0035】
部分3’および4’に関して、縮合チオフェン部分のα位置にアリール基(Ar)が結合されている。ここに用いられる「アリール基」という用語は、任意の炭素系の芳香族基である。アリール基は、例えば、ナフタレン、アントラセンなどの縮合芳香族環を含み得る。「芳香族」という用語は「ヘテロアリール基」も含み、これは、芳香族基の環内に少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族基として定義される。ヘテロ原子の例としては、以下に限られないが、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられる。アリール基は、置換されていてもいなくても差し支えない。アリール基は、以下に限られないが、アルキル、アルキニル、アニケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、またはアルコキシを含む基、1つ以上により置換されていて差し支えない。
【0036】
ある態様において、Arは、1つ以上の未縮合チオフェン基、1つ以上の縮合チオフェン基、または未縮合と縮合のチオフェン基の組合せを含む。例えば、その部分は、化学式200または201
【化5】

【0037】
を有し、ここで、oは、1、2または3であり、R3およびR4は、独立して、水素またはアルキル基である。この態様において、Arは1つ以上の置換または未置換のチオフェン基である。ある態様において、nは、2、3または4であり、mは1である。別の態様において、nは、2、3または4であり、mは1であり、oは、1、2または3である。Arが縮合チオフェンである場合、その縮合チオフェンは、1つの縮合チオフェン基または2つ以上の縮合チオフェン基であって差し支えないと考えられる。Arが2つ以上の縮合チオフェン基である場合、それらの縮合チオフェン基は、同じであっても異なっていても差し支えない。例えば、Arは、トリス縮合チオフェンに共有結合したビス縮合チオフェンであり得る。他の態様において、Arは、置換または未置換の縮合チオフェン基に結合した1つ以上の置換または未置換のチオフェン基であり得る。
【0038】
構造3および4の縮合チオフェン部分は、単純なモノマー縮合チオフェンとして存在しても、またはより複雑な化合物、オリゴマーまたはポリマーに組み込まれていても差し支えない。例えば、ここに記載される縮合チオフェン部分は、化学式7および8
【化6】

【0039】
を有する単純な縮合チオフェンモノマーに組み込むことができ、ここで、nは0より大きい整数であり、R1およびR2は、独立して、水素またはアルキル基であり、Qは、独立して、水素、置換または未置換のアルキル基(例えば、アルキルヒドロキシ基)、カルボン酸、ハロゲン化アシル、エステル、アルデヒド、ケトン、ヒドロキシル基、チオール基またはアルキル置換チオール基、アルコキシ基、アクリレート基、アミノ基、ビニルエーテル、またはハロゲン化物である。ある態様において、構造7および8における各Qは臭化物である。ある態様において、構造7および8を持つモノマーを用いて、以下に説明するように、縮合チオフェンオリゴマーおよびポリマーを製造することができる。
【0040】
縮合チオフェンモノマー7および8は、縮合チオフェン部分3、3’、4および4’を持つポリマーを製造するために、縮合チオフェン部分の共役ホモオリゴマーまたはホモポリマーブロックを持つオリゴマーおよびポリマーに組み込むことができる。例えば、ある実施の形態によれば、オリゴマーまたはポリマーは、mが1より大きい、構造3、3’、4または4’の縮合チオフェンを含む。さらに別の実施の形態において、mは少なくとも約4である。別の態様において、ポリマーがホモポリマーである場合、mは少なくとも約10である。この態様において、モノマー7または8を重合させて、化学式3または4を持つ残基を含むホモポリマーを製造できることが考えられる。他の態様において、mは、1から10,000、1から9,000、1から8,000、1から7,000、1から6,000、1から5,000、1から4,000、1から3,000、1から2,000、1から1,000、1から500、1から250、1から100、1から50、1から25、または1から10である。
【0041】
他の態様において、ここに記載された縮合チオフェンモノマー(例えば、7および8)は、他の芳香族または不飽和部分を持つ共役コポリマーに組み込むことができる。例えば、縮合チオフェンモノマー7および8を他の置換または未置換縮合チオフェン部分と共重合させて、共役縮合チオフェンポリマーまたはオリゴマーを形成することができる。あるいは、縮合チオフェンモノマー7および8を置換または未置換チオフェンと共重合させて、チオフェン/縮合チオフェンポリマーまたはオリゴマーを形成できる。縮合チオフェンモノマー7および8を、ビニレン、フェニレン、または他のアリーレンまたはヘテロアリーレン部分などの、共役ポリマーに通常用いられる他の部分と共重合させても差し支えない。
【0042】
ここに記載される縮合チオフェン部分は、多種多様の他のタイプのポリマーに組み込むことができる。例えば、化学式7および8を有する縮合チオフェンは、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、またはポリケトンなどのポリマーの主鎖に;例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはポリ(ビニルエーテル)などのポリマーの側鎖に組み込むことができる。化学式7および8を有する縮合チオフェンを、モノマーのポリマーへの組込みを可能にする反応性基(例えば、塩化アシル、アルコール、アクリレート、アミン、ビニルエーテル)により修飾することができる。例えば、R1、R2、および/またはQをそのような反応性基で修飾しても差し支えない。
【0043】
ある態様において、部分3’または4’を含む化合物を、化学式210または220
【化7】

【0044】
を有する化合物であって、nが2以上の整数であり、mが1以上であり、R1およびR2が、独立して、水素またはアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも一方がアルキル基である化合物を、Arがアリール基を含み、R5がアルキル基である化学式(R53Sn−Ar−Sn(R53を有する化合物と反応させることによって、製造することができる。この態様において、ジブロモ縮合チオフェンがビススタンニルアリール基と結合される。この結合反応は、一般に、例えば、Pd(0)などの触媒の存在下で行われる。図18は、この方法の1つの態様を示しており、ジブロモ縮合チオフェン(化学式210、n=3、m=1)が、Pd(PPh34の存在下で2,5’−ジスタンニルトリメチル−ビチオフェンと結合されて、コポリマーが生成される。この方法論を使用すると、3’および4’におけるmおよびoの値が、コポリマーの所望の分子量に応じて様々であり得る、ブロックコポリマーなどのコポリマーを生成することができる。
【0045】
別の態様において、ここに記載された縮合チオフェンは、高分子電気光学材料に通常用いられるものなどの、供与体−受容体発色団に組み込むこともできる。例えば、構造3および4の縮合チオフェン部分は、構造9または10
【化8】

【0046】
を有する供与体−受容体発色団に組み込むことができ、ここで、Dは電子供与基であり、Aは電子受容基である。供与体−受容体発色団は、ここにその全てを引用する、米国特許第6584266号、同第6514434号、同第6448416号、同第6444830号、および同第6393190号の各明細書により詳しく記載されている。ある態様において、化学式7または8を有する縮合チオフェンは、電子供与基および電子受容基と反応させて、それぞれ、化学式9および10を有する化合物を生成できる。
【0047】
様々な態様において、ここに記載される組成物は、所望の電子または光電子特性をその組成物にもたらすのに、構造3または4の縮合チオフェン部分を十分に高濃度で有する。例えば、その組成物は、少なくとも1質量%の総濃度で、構造3または4の縮合チオフェン部分を少なくとも1つ有する。さらに別の態様において、ここに記載された組成物は、少なくとも3質量%の総濃度で、構造3または4の縮合チオフェン部分を少なくとも1つ有する。追加の態様において、組成物は、例えば、少なくとも10質量%または少なくとも50質量%のより高い総濃度で、構造3または4の縮合チオフェン部分を少なくとも1つ有する。縮合チオフェン環のβ位置にあるアルキル基の存在のために、その組成物は、縮合チオフェン部分を高濃度で有することができるが、それでもまだ可溶性であり加工可能である。
【0048】
ここに記載した組成物(モノマー、オリゴマー、ポリマー)を使用して、多種多様の素子を製造できる。例えば、その素子は、電子、光電子、または非線形光学素子おいて構成された縮合チオフェン部分を含有する組成物であり得る。ここに記載した組成物は、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜トランジスタ(TFT)、有機発光ダイオード(OLED)、PLED用途、電気光学(EO)用途において、導体材料として、二光子混合材料として、有機半導体として、非線形光学(NLO)材料として、RFIDタグとして、フラットパネルディスプレイにおけるエレクトロルミネセント素子として、光起電素子および化学または生化学センサとして、使用することもできる。
【0049】
ここに記載した縮合チオフェン部分(3、3’、4および4’)を含むポリマーは、向上した充填性および熱安定性を有する。これらのポリマーは、ある温度範囲に亘り液晶相も示す。液晶特性は、アルキル基R1およびR2の長さを変えることによって、容易に調節できる。このポリマーは、当該技術分野において公知の技法を用いて薄膜の注型を可能にする、例えば、THF、トルエン、クロロベンゼンなどの有機溶媒中において良好な可溶性を有する。
【0050】
縮合チオフェン化合物を製造する方法がここに記載されている。ある態様において、β”−R−置換縮合チオフェン部分を製造する方法は、
(i) α−ヒドロ−β−ブロモチオフェン部分を提供し、
(ii) 前記α−ヒドロ−β−ブロモチオフェン部分を、前記チオフェン部分をα位置で、Rが少なくとも4つの炭素を持つアルキル基であるR−アシル部分によりアシル化することによって、α−(R−アシル)−β−カルボキシメチルチオチオフェン部分に転化し、
(iii) β−ブロミドを2−メルカプトアセテートで置換し、
(iv) 前記α−(R−アシル)−β−カルボキシメチルチオチオフェン部分を環化して、α”−カルボキシ−β”−R−置換縮合チオフェン部分を形成し、
(v) 前記α”−カルボキシ−β”−R−置換縮合チオフェン部分からカルボキシル基を除去して、β”−R−置換縮合チオフェン部分を形成する、
各工程を有してなる。
【0051】
ある態様において、β”−R−置換縮合チオフェン化合物を製造する方法が、図1の反応機構に示されている。最初に、α−ヒドロ−β−ブロモチオフェン部分11を提供する。このα−ヒドロ−β−ブロモチオフェン部分11は、以下の構造12および13に示すような、単純な未縮合チオフェンであっても差し支えない。構造12は、未置換の未縮合のα-ヒドロ−β−ブロモチオフェンであり、これは、環縮合の際に、1つのβ置換基を持つチエノチオフェン14を生成する。構造13は、β’中心でR’置換されており(すなわち、α−ヒドロ−β−ブロモ−β’−R’−置換チオフェン)、環縮合の際に、二重β−置換チエノチオフェン15を生成する。
【化9】

【0052】
次いで、α−ヒドロ−β−ブロモチオフェン部分をα−(R−アシル)−β−カルボキシメチルチオチオフェン部分16に転化する。ここに用いているように、「R−アシル」という名称は、以下のラジカル構造17を示すことを意味し、「カルボキシメチルチオ」という名称は、以下のラジカル構造18を示すことを意味し、ここで、Zは、カルボキシレートの末端(例えば、H、置換アルキル、未置換アルキルであってよい)である。ある態様において、ZはH、メチル、エチルまたはプロピルである。図2に示され、実施例においてより詳しく説明されている反応機構を用いて、α−ヒドロ−β−ブロモチオフェン部分11のα−(R−アシル)−β−カルボキシメチルチオチオフェン部分16への転化を行うことができる。最初に、α−ヒドロ−β−ブロモチオフェン部分をα位置で、RCOClおよびAlCl3を用いて、Rが少なくとも4つの炭素を持つアルキル基であるR−アシルでアシル化する。アシル化された生成物を、2−メルカプトアセテートHSCH2COOZと反応させて、α−(R−アシル)−β−カルボキシメチルチオチオフェン部分16を生成する。図2の反応機構ではR−アシル化が最初に行われるが、ある場合には、反応は反対の順序で生じ得る。
【化10】

【0053】
次いで、α−(R−アシル)−β−カルボキシメチルチオチオフェン部分16を環化させて(例えば、塩基触媒作用の縮合により、しばしば2−メルカプトアセテートとの反応と同じ条件下で)、α”−カルボキシ−β”−R−置換縮合チオフェン部分19を生成する。これからカルボキシル基を除去して、β”−R−置換縮合チオフェン部分20を形成する。ここでは、Rは少なくとも4つの炭素を持つアルキル基である。
【0054】
図2の反応機構のα−ヒドロ−β−ブロモチオフェン部分11が、α’位置に水素を有する場合、アシル化工程は、α位置に特異的ではないかもしれない。例えば、図3の反応機構に示されているように、α,α’−ジヒドロ−βブロモチオフェン部分21がアシル化され、2−メルカプトアセテートと反応させられると、所望のα−(R−アシル)−α’−ヒドロ−β−カルボキシメチルチオチオフェン部分22、並びに望ましくない位置異性体であるα’−ヒドロ−α−(R−アシル)−β−カルボキシメチルチオチオフェン部分23を含む生成物の混合物が形成される。部分22および23は、互いから分離可能なようなので、混合物への環化工程を実施することができる。位置異性体22が環化すると、α’−ヒドロ−α”−カルボキシ−β”−R−置換縮合チオフェン部分24が形成されるが、位置異性体23は環化しない。ここで、縮合チオフェン部分は、環化されていない位置異性体23から分離でき、カルボキシル基が除去されて、α’−ヒドロ−β”−R−置換縮合チオフェン部分25が生成される。
【0055】
他の態様において、図2および3の反応機構に記載された方法は、様々な縮合チオフェン化合物を製造するのに使用できる。例えば、図2の反応機構のα−ヒドロ−β−ブロモチオフェン部分11がα−ヒドロ−β−ブロモ−β’−R’−置換チオフェン部分13である場合、最終生成物の縮合チオフェンは、β”−R−置換−β’−R’−置換縮合チオフェン部分15となる。R’は、例えば、少なくとも4つの炭素を持つアルキル基であって差し支えなく、Rと同じであっても異なっていても差し支えない。R’は、4未満の炭素を持つアルキル基を含む、任意の他の所望の置換基であっても差し支えない。
【0056】
図2の反応機構の一般的な環化方法を用いて、図4の反応機構に示すように、チオフェン部分の両側の環化を同時に行うことができる。出発材料として、α,α’−ジヒドロ−β,β’−ジブロモチオフェン部分26が用いられる。図4の反応機構において、単環式の単純なチオフェンとして、α,α’−ジヒドロ−β,β’−ジブロモチオフェン部分26が示されているが、当業者には、チオフェン部分26は、縮合チオフェン環系として縮合チオフェン(チエノ[3,2−b]チオフェンまたはビスジチエノ[3,2−b:2’−3’−d]チオフェン)を有していても差し支えないことが理解されよう。チオフェン部分26は、αおよびα’位置の両方でアシル化(例えば、フリーデル・クラフツ化学反応を用いて上述したように)し、βおよびβ’位置の両方で2−メルカプトアセテートと反応させて、α,α’−ビス(R−アシル)−β,β’−ビス(カルボキシメチルチオ)チオフェン部分27を形成する。これを環化し(28を形成する)、カルボキシル基を除去して、β”,β”’−ビス(R−置換)縮合チオフェン部分29を形成する。これは、出発材料のチオフェン部分26のものよりも二環大きい縮合チオフェン環系を有する。あるいは、α,α’−ジヒドロ−β,β’−ジブロモチオフェン部分26を、R−アシル化/2−メルカプトアセテートとの反応/環化/脱カルボキシル基化の第一群の反応に施し、次いで、アシル化工程における異なるR’基との反応の第二群の反応に施して、RおよびR’が互いに異なる、β”−(R−置換)−β”’−(R’−置換)縮合チオフェン部分を提供しても差し支えない。
【0057】
図5の反応機構は、α,α’−ビス(R−アシル)−β,β’−ビス(カルボキシメチルチオ)チオフェン部分27を製造するための別の方法を示している。α,α’,β,β’−テトラブロモチオフェン部分30をリチウム化(選択的にα−位置で)し、アルデヒドRCHOと反応させて、ジオール31を形成する。これを酸化して、α,α’−ビス(R−アシル)−β,β’−ジブロモチオフェン部分32を形成する。これを2−メルカプトアセテートと反応させて、α,α’−ビス(R−アシル)−β,β’−ビス(カルボキシメチルチオ)チオフェン部分27を形成する。
【0058】
比較的大きな縮合チオフェン環系を持つ縮合チオフェン部分は、上述した反応機構を用いて合成できる。図6の反応機構に示されたカップリングおよび閉環工程を用いて、大きな縮合チオフェン環系を構築することも可能である。この機構において、Rがアルキル基である、β−R−置換−β’−ブロモチオフェン部分33が出発材料として用いられる。33への合成経路が以下に記載されている。図6の反応機構において、チエノ[3,2−b]チオフェン環系を有するものとして、β−R−置換−β’−ブロモチオフェン部分33が示されているが、それは、単環式チオフェン、または上述したようにコアで大きな縮合チオフェン環系を有していてもよい。β−R−置換−β’−ブロモチオフェン部分33をリチウム化し、硫黄ビス(フェニルスルホネート)(または二塩化硫黄)と反応させて、カップリングされたチオエーテル34を形成する。これをリチウム化し、CuCl2を用いて酸化閉環に施して、β,β”二置換縮合チオフェン部分35を形成する。
【0059】
多環式β−R−置換−β’−ブロモチオフェン部分は、図7の反応機構に示されているように、β’−ブロモチオフェン部分に図2の反応機構を行うことによって製造できる。テトラブロモチオフェンを二リチウム化(選択的に、α−位置で)し、プロトン付加して、ジブロモチオフェン37を生成する。これをアシル化(38を生成する)し、2−メルカプトアセテートと反応させて、α−(R−アシル)−β−カルボキシメチルチオ−β’−ブロモチオフェン部分39を生成する。これを環化し、脱カルボキシル基化して、33を生成する。図7の反応機構における出発材料は単環式チオフェンであるが、多環式縮合チオフェン出発材料を同様に使用しても差し支えない。
【0060】
別の態様において、Rがここに定義したアルキル基である、β−R−置換−β’−ブロモチオフェン化合物がここに記載されている。例えば、ここに記載される化合物としては、以下の構造40を持つものが挙げられる。Rは、例えば、未置換のアルキル基であって差し支えない。
【化11】

【0061】
この態様による未置換アルキル基は、直鎖アルキル基(例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルまたはヘキサデシル)、枝分れアルキル基(例えば、sec−ブチル、neo−ペンチル、4−メチルペンチル)、または置換または未置換のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)であって差し支えない。ある態様において、Rは、置換または未置換の、サイズが、それ自体、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10の炭素を持つアルキル基であって差し支えない。ある態様において、アルキル基の置換は、少なくとも2つの炭素だけ、縮合チオフェン環系から隔てられている。この態様による置換アルキル基の例としては、6−ヒドロキシヘキシルおよび3−フェニルブチルが挙げられる。R1およびR2部分の選択は、縮合チオフェン部分を含有する組成物の最終用途に依存する。その後の反応工程に耐えるために、置換アルキル基の任意の官能基を保護することができる。未置換のチオフェン系の組成物は、比較的不溶性である傾向にある。したがって、ある態様において、Rは、サイズが少なくとも6つの炭素を持つアルキル基であって差し支えない。例えば、溶解度を改善するためのアルキル基としては、kが6以上の整数である、Ck2k-1が挙げられる。
【0062】
ある態様において、上記の構造40を有する化合物は、図8に示した臭素化/脱臭素化反応により、β−R−置換チオフェン部分から合成できる。β−R−置換チオフェン41を臭素分子で完全に臭素化して、三臭素化化合物42を生成する。これを選択的にリチウム化し、α−位置でプロトン付加して、所望のβ−R−置換−β’−ブロモチオフェン40を生成する。図8の方法は、縮合チオフェン部分からβ−臭素化縮合チオフェン部分を製造するのに用いても差し支えない。単環式β−R−置換−β’−ブロモチオフェン40は、図6の反応機構にしたがって、三環式ビス(R−置換)縮合チオフェン部分を製造するのに使用できる。単環式β−R−置換−β’−ブロモチオフェン40は、図9に示された反応機構にしたがって、一置換縮合チオフェン部分を製造するのにも使用できる。例えば、単環式チオフェン40をリチウム化し、ホルミルピペリジンと反応させ、付加物を加水分解して、アルデヒド43を生成する。これを2−メルカプトアセテートと反応させ、環化し、脱カルボキシル基化して、β−R−置換縮合チオフェン14を生成する。
【0063】
ある態様において、ここに記載した縮合チオフェン化合物中に存在する硫黄原子のいずれを酸化して、SO2を生成しても差し支えない。別の態様において、ある組成物は、以下の酸化された縮合チオフェン部分の内の少なくとも一方を含む:
【化12】

【0064】
ある態様において、構造44および45に関して、nはゼロより大きい整数であり、mは1以上であり、R1およびR2は、独立して、水素またはアルキル基であり、ここで、各Tは、独立して、SまたはSO2であり、酸化された縮合チオフェン環系の最も中央に位置する環の少なくとも1つにおいてTはSO2であり、縮合チオフェン部分が化学式45を有する場合、nは1ではない。各Tは、独立して、SまたはSO2であり、酸化された縮合チオフェン環系の最も中央に位置する環の少なくとも1つにおいてTはSO2である。ここに用いているように、奇数2q+1の縮合環を持つ縮合チオフェン環系の最も中央に位置する環は、その環系の端部からq+1番目の環である。偶数2qの縮合環を持つ縮合チオフェン環系の最も中央に位置する環は、その環系の端部からq番目とq+1番目の環である。例えば、三環系の最も中央に位置する環は、二番目の環であり、四環系の最も中央に位置する環は、二番目と三番目の環であり、五環系の最も中央に位置する環は、三番目の環である。
【0065】
別の態様において、酸化された部分は、化学式44’または45’
【化13】

【0066】
を有し、ここで、酸化された縮合チオフェン環系の最も中央に位置する環の少なくとも1つにおいてTはSO2である。ある態様において、最も中央に位置する環の少なくとも1つにおいてTはSO2であり、残りのS原子は酸化されていない。
【0067】
ここに記載した酸化された縮合チオフェン化合物のいずれも、上述したように、ポリマー、オリゴマー、モノマー、発色団、および他の組成物に使用することができる。例えば、少なくとも1つの酸化された縮合チオフェン部分が、少なくとも1質量%の総濃度で、組成物に存在できる。nの値は、例えば、1,2,3,4,または5であって差し支えない。他の態様において、縮合チオフェン部分は、三環式以上(すなわち、45’では、n≧1;または44’では、n≧1)である。さらに別の態様において、R1およびR2の少なくとも一方は、酸化された縮合チオフェン部分の酸化された縮合チオフェン環系のコアに直接結合した、サイズが少なくとも6の炭素のアルキル基である。R1およびR2の両方とも、アルキル基であり得、互いに同じであっても異なっていても差し支えない。ある態様において、R1およびR2のいずれもHではない。他の態様において、前記組成物は、約1/10,1/9,1/8,1/7,または1/6未満の、酸化された縮合チオフェン環系に対するβ−水素の比を有する。ある態様において、酸化された縮合化合物は、構造
【化14】

【0068】
を有し、ここで、nはゼロより大きい整数であり、R1およびR2は、独立して、水素またはアルキル基であり、Qは、独立して、水素、置換または未置換のアルキル基、ハロゲン化アシル、エステル、アルデヒド、ケトン、ヒドロキシル基、チオール基またはアルキル置換チオール基、アルコキシ基、アクリレート基、アミノ基、ビニルエーテル、ヒドロキシアルキル基、カルボン酸基またはハロゲン化物である。
【0069】
ここに記載した酸化された縮合チオフェン化合物は、共役縮合チオフェンモノマーまたはm>1のオリゴマー中に組み込むことができる。あるいは、酸化された縮合チオフェン化合物は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリケトン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、またはポリ(ビニルエーテル)を含むポリマー中に組み込むことができる。ポリマーが部分44’または45’を1つ以上含む場合、nはゼロより大きくなり得ると考えられる。
【0070】
ここに記載された酸化された縮合チオフェン化合物および部分は、例えば、MCPBAにより、酸化によって調製できる。酸化は一般に、多環式縮合チオフェン環系の最も中央に位置する環に選択的であるが、縮合チオフェン中の硫黄原子のいずれも酸化できると考えられる。酸化縮合チオフェン部分の例が、構造46,47,48および49として以下に示されている。
【化15】

【0071】
縮合チオフェンおよび酸化された縮合チオフェンオリゴマーとポリマーは、上述したオリゴ−およびポリ(チオフェン)を製造するのに用いたものと類似の方法論を用いて調製できる。例えば、α,α’−ジヒドロ縮合チオフェン部分は、鉄(III)化合物(例えば、FeCl3、Fe(acac)3)を用いて、酸化的にオリゴメリゼーションまたは重合させることができ、または臭素化し、有機マグネシウム媒介反応においてカップリングさせることができる。ここに記載した縮合チオフェン部分および酸化された縮合チオフェン部分は、当業者に馴染みのあるカップリング反応を用いて、例えば、フェニレン、ビニレン、およびアセチレンコポリマーなどの他の共役ポリマー中に組み込むことができる。ここに記載した縮合チオフェン部分および酸化された縮合チオフェン部分は、当該技術分野に公知の技法を用いて、他の主鎖および側鎖のポリマー中に組み込むことができる。縮合チオフェン化合物は、オリゴマーまたはポリマー中への組込みの前に、酸化させても差し支えないと考えられる。あるいは、縮合チオフェン化合物をオリゴマーまたはポリマー中に組み込んで、その後、酸化しても差し支えない。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、当業者に、上述し請求項に記載された材料、物品、および方法がどのように作製され評価されるかの完全な開示と説明を与えるために提起されたものであり、純粋に例示を意図したものであり、本発明の発明者等がその発明とみなす範囲を制限するものと意図されていない。数(例えば、量、温度など)に関する精度を確実にするために努力したが、ある程度の誤差および偏差は考慮すべきである。別記しない限り、部は質量部であり、温度は℃で表されるか、または周囲温度であり、圧力は大気圧またはそれに近い。反応条件には多数の変数および組合せ、例えば、記載したプロセスから得られる生成物の純度と収率を最適化するために使用できる、成分の濃度、所望の溶媒、溶媒の混合物、温度、圧力および他の反応範囲および条件がある。そのようなプロセス条件を最適化するのには、適当でありきたりの実験しか要求されない。
【0073】
実施例1 − ジ−β−置換チエノ[3,2−b]チオフェン
3,6−ジヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェン57を、図10の反応機構に示したように合成した。
【0074】
2,4,5−トリブロモ−3−ヘキシルチオフェン(51). 3−ヘキシルチオフェン(50)(100g、0.595モル)を200mlの酢酸と混合した。この混合物に、臭素(88ml、1.33モル)を滴下により加えた。臭素の添加後、得られた混合物を4時間に亘り室温で撹拌し、一晩60〜70℃で加熱し、次いで、800mlの氷水中に注ぎ入れ、6MのNaOH水溶液で中和した。その混合物を酢酸エチルで抽出した(100mlで3回)。混ざった有機層をブライン(100mlで2回)および水(100ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒の蒸発により、粗製生成物51(234g、97.1%の粗収率)を得た。この粗製生成物は、その後の反応に使用するのに十分に純粋であった。GC/MS:404g/モル(M-1)。1H NMR (CD2Cl2): d 2.64(t, 2H), 1.51(m, 2H), 1.32(m, 6H), 0.89(t, 3H). 13C NMR: 143.69, 117.86, 111.48, 110.18, 33.62, 32.86, 30.96, 30.52, 24.70, 16.00。
【0075】
3−ブロモ−4−ヘキシルチオフェン(52). 化合物51(70g、0.173モル)を乾燥THF(400ml)と混合した。この混合物に、アルゴン雰囲気で−78℃で滴下によりn−ブチルリチウム(138ml、ヘキセン中2.5M、0.345モル)を加えた。得られた混合物を10分間に亘り撹拌し、次いで、水(30ml)を加えて反応を抑えた。THFを蒸発させ、有機物を酢酸エチル(100mlで2回)で抽出した。混ざった有機層をブライン(100mlで2回)および水(70ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒の蒸発後、得られた粗製生成物を真空蒸留(0.17ミリバール(17Pa)で72〜74℃)により生成物52(35.3g、82.6%の収率)に精製した。GC/MS:246g/モル(M-1)。 1H NMR (CD2Cl2): d 7.22(s, 1H), 6.96(s, 1H), 2.57(t, 2H), 1.61(m, 2H), 1.32(m, 6H), 0.88(t, 3H). 13C NMR: 141.92, 122.87, 120.95, 112.89, 31.88, 30.07, 29.53, 29.20, 22.88, 14.14。
【0076】
1−(3−ブロモ−4−ヘキシル−2−チエニル)ヘプタノン(53). 乾燥CH2Cl2(100ml)中の化合物52(24.7g、0.1モル)およびAlCl3(26.8g、0.2モル)の混合物に、塩化ヘプタノイル(14.9g、0.1モル)を室温で滴下により加えた。この混合物を二時間に亘り撹拌し、その後のGC/MS分析は、目的の化合物53およびその位置異性体である1−(4−ブロモ−3−ヘキシル−2−チエニル)ヘプタノン(54)の3:1の混合物が形成されたことを示した。この反応混合物を200mlの6MのHCl中に注ぎ入れ、水(50mlで3回)で洗浄した。次いで、有機層をMgSO4上で乾燥させ、溶媒の蒸発により、34.7gの化合物53および54の粗製混合物が得られた。これは、分離やさらなる精製を行わずに次の反応に用いた。
【0077】
3,6−ジヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェン−2−カルボン酸(55).化合物53および54の混合物(66.5g、0.185モル)を、200mlのDMF中でK2CO3(53.6g、0.39モル)および触媒量の18−クラウン−6と混合した。この混合物に、エチル2−メルカプトアセテート(20.3ml、0.185モル)を60〜70℃で滴下により加えた。この反応混合物を一晩60〜70℃で撹拌し、次いで、水(800ml)中に注ぎ入れた。有機成分を酢酸エチル(100mlで3回)で抽出し、混ざった有機抽出物をブライン(100mlで2回)および水(100ml)で洗浄した。蒸発により溶媒を除去し、残留物をTHF(300ml)中に溶解させて溶液を調製し、これに、LiOH(84ml、10%の水溶液)、MeOH(50ml)および触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウムを加えた。この混合物を3時間に亘り還流下で加熱し、その後、蒸発により溶媒を除去し、残留物を濃HCl(50ml)で酸性化した。200mlの水で希釈した後、有機成分を酢酸エチル(100mlで3回)で抽出した。混ざった有機層をブライン(100mlで2回)および水(100ml)て洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒の蒸発後、カラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン中5%の酢酸エチル、ここで、化合物55を完全に溶出させるためには、ヘキサン中20%の酢酸エチル)を用いて、化合物55を未反応の化合物54から分離し、純粋な化合物55(30g、46.1%の収率)を得た。1H NMR (CD2Cl2): d 7.24 (s, 1H), 3.18(t, 2H), 2.73(t, 2H), 1.75(m, 4H), 1.34(m, 14H), 0.89(m, 6H). 13C NMR: 169.15, 146.25, 143.10, 141.49, 136.14, 126.67, 126.11, 31.99, 29.74 (6C), 22.99, 14.24。
【0078】
3,6−ジヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェン(57). 化合物55(30g、0.085モル)、銅粉(3.76g)およびキノリン(80ml)の混合物をウッズの金属浴中において264〜260℃で加熱した。二酸化炭素ガスの気泡が検出できなくなったときに(約2時間)、混合物を室温まで冷却し、ヘキサン(200ml)を加えた。この混合物をHCl(水中1〜2M)で繰り返し洗浄して、キノリンを除去した。残りの有機層をMgSO4上で乾燥させ、蒸発により濃縮し、残留物を残した。これをカラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン)により精製して、化合物57(18g、68.4%)を生成した。m.p. 57.5-59.1 oC , 1H NMR (CD2Cl2): d 6.97(s, 2H), 2.70(t, 4H), 1.73(m, 4H), 1.37(m, 12H), 0.88(t, 6H). 13C NMR: 136.56, 134.96, 109.80, 31.94, 29.31, 29.28, 28.47, 22.96, 14.22。
【0079】
同じ反応手順を用いて、3,6−ジデシルチエノ[3,2−b]チオフェン(58)を製造した。
【0080】
実施例2 − モノ−β−置換チエノ[3,2−b]チオフェン
3−ヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェン58を図11の反応機構に示したように合成した。
【0081】
1−(3−ブロモチエニル)ヘプタノン(59). 3−ブロモチオフェン(60)(16.3g、0.1モル)、AlCl3(26.8g、0.2モル)およびCH2Cl2(100ml)の混合物に、塩化ヘプタノイル(14.9g、0.1モル)を室温で滴下により加えた。得られた混合物を2時間に亘り撹拌し、その後、GS/MSは、化合物60の化合物59への完全な転化を示した。反応混合物を冷たいHCl(6M、200ml)中に注ぎ入れた。有機成分をヘキサン(100mlで3回)により抽出した。混ざった有機層をブライン(100mlで2回)および水(100ml)で洗浄した。MgSO4上で乾燥後、粗製の目的化合物をカラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン)により精製して、化合物59(25.1g、91.3%の収率)を得た。GC/MS:275g/モル(M) 1H NMR (CD2Cl2) d 7.53(d, 1H), 7.12(d, 1H), 3.01(t, 2H), 1.71(m, 2H), 1.38(m, 6H), 0.92(t, 3H)。
【0082】
エチル3−ヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェン−2−カルボキシレート(61). 化合物59(35.4g、0.13モル)およびK2CO3(27.6g、0.2モル)をN,N−ジメチルホルムアルデヒド(100ml)と混合した。触媒量(約25mg)の18−クラウン−6を加え、この混合物に、エチル2−メルカプトアセテート(14.0ml、0.13モル)を60℃で滴下により加えた。混合物を一晩撹拌し、水(500ml)中に注ぎ入れた。有機成分を酢酸エチル(80mlで3回)で抽出した。混ざった有機層をブライン(100mlで2回)および水(100ml)で洗浄した。次いで、有機層をMgSO4上で乾燥させた。溶媒の蒸発後、粗製化合物61を得て、カラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン中5%の酢酸エチル)により精製して、純粋な化合物61(32.1g、84.5%)を生成した。GC/MS:296g/モル(M)。1H NMR (CD2Cl2) d 7.56(d, 1H), 7.24(d, 1H), 4.34(q, 2H), 3.15(t, 2H), 1.71(m, 2H), 1.32(m, 6H), 0.88(m, 6H). 13C NMR: 163.24, 143.31, 141.85, 141.09, 131.13, 128.44, 120.35, 61.25, 31.99, 29.72 (overlap), 22.98, 14.52, 14.23。
【0083】
3−ヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェン−2−カルボン酸(62). 化合物61(32.1g、0.11モル)を、500mlのフラスコ中でLiOH(水中10%、50ml)、THF(100ml)、MeOH(30ml)および触媒量(約20mg)のヨウ化テトラブチルアンモニウムと混合した。この混合物を一晩還流下で加熱し、室温まで冷まし、濃HClで酸性化した。得られた黄色の固体を、濾過により収集し、水で完全に洗浄した。次いで、この固体をヘキサン(100ml)と共に加熱し、室温まで冷ました。濾過後、固体を収集し、真空で乾燥させて、薄黄色の粉末として化合物62(28.0g、96.7%)を生成した。Mp:110.7〜112.4℃。
【0084】
3−ヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェン(58). 化合物62(14.6g、0.054モル)、銅粉(2.00g)、およびキノリン(80ml)の混合物をウッズの金属浴において約260℃で加熱した。CO2の気泡からさらに検出されなくなったときに(約2時間)、混合物を室温まで冷まし、ヘキサン(200ml)を加えた。混合物をHCl(水中1〜2M)で繰り返し洗浄して、キノリンを除去した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、蒸発により濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン)により精製して、化合物58(25.1g、90.3%)を生成した。GC/MS:224g/モル(M)。1H NMR (CD2Cl2) d 7.36(m, 1H), 7.25(m, 1H), 7.01(m, 1H), 2.73(t, 2H), 1.69(m, 2H), 1.34(m, 6H), 0.89(t, 3H). 13C NMR: 140.39, 139.13, 135.39, 127.01, 122.19, 120.26, 32.01, 30.29, 29.43, 23.01, 14.24。
【0085】
実施例3 − ジ−β−置換ジチエノ[3,2−b:2’−3’−d]チオフェンおよびジ−β−置換ジチエノ[3,2−b:2’−3’−d]チオフェン−4,4−ジオキシド
3,6−ジデシルチエノ[3,2−b]チオフェン63および3,6−ジデシルチエノ[3,2−b]チオフェン−4,4−ジオキシド64を、図12の反応機構に示したように合成した。
【0086】
1,1’−(3,4−ブロモ−2,5−チエニル)ジウンデカノール(65). テトラブロモチオフェン36(80.0g、0.2モル)およびTHF(500ml)の溶液に、ブチルリチウム(160ml、0.4モル、ヘキサン中2.5M)を−78℃で滴下により加えた。ウンデシルアルデヒド(DecCHO)(69.7g、0.41モル)を加え、この反応混合物を2時間に亘り撹拌した。次いで、蒸発によりTHF溶媒を除去し、有機残留物をヘキサンで抽出した。混ざった有機層をブライン(100mlで2回)および水(100ml)により洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン中5%の酢酸エチル)により精製して、化合物65(84.1g、72.5%の収率)を生成した。1H NMR (CD2Cl2) d 5.02(broad, 2H), 1.79(m 4H), 1.28(m, 32H), 0.88(t, 6H). 13C NMR: 143.25, 109.67, 70.53, 38.31, 31.96, 29.75, 29.70, 29.61, 29.55, 29.21, 25.68, 22.84, 14.09。
【0087】
1,1’−(3,4−ブロモ−2,5−チエニル)ジウンデカノン(66). 100gの二クロム酸ナトリウム二水和物(0.34モル)を水(300ml)中に溶解させることによって、クロム酸溶液を調製し、次いで、136gの濃硫酸を加え、得られた溶液は500mlに希釈した。化合物65(80.0g、0.137モル)をアセトン(300ml)と混合した。この混合物に、クロム酸溶液(260ml)を室温で滴下により加えた。この混合物を一晩撹拌し、その後、多量の固体が反応混合物中に形成された。アセトンのほとんどをデカンテーションし、混合物の残りを酢酸エチル(100mlで2回)により抽出した。混ざった有機層をブライン(50mlで3回)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、残留物をエタノール(100ml)と混合し、白色の純粋な化合物66を固化させ、濾過により収集した(72.0g、90.5%の収率)。 1H NMR (CD2Cl2) d 3.07(t, 4H), 1.74(m, 4H), 1.28(m, 28H), 0.88(t, 6H). 13C NMR: 192.49, 141.99, 118.82, 42.03, 32.13, 29.79, 29.71, 29.62, 29.55, 29.29, 24.16, 22.92, 14.11。
【0088】
ジエチル3,5−ジデシルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−2,6−ジカルボキシレート(67). 化合物66(30.0g、0.052モル)をK2CO3(28.7g、0.21モル)およびN,N−ジメチルホルムアルデヒド(100ml)と混合した。この混合物に、エチル2−メルカプトアセテート(11.5ml、0.104モル)を60℃で滴下により加えた。反応混合物を窒素雰囲気において60℃で48時間に亘り撹拌し、次いで、水(500ml)中に注ぎ入れた。有機成分を酢酸エチル(100mlで3回)抽出した。混ざった有機層をブライン(100mlで2回)および水(50ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン中5%の酢酸エチル)により精製して、粘着質の低融点の固体として化合物67(19.1g、59.3%の収率)を得た。1H NMR (CD2Cl2) d 4.36(q. 4H), 3.15(t, 4H), 1.73(m, 4H), 1.39(m, 36H), 0.87(m, 6H). 13C NMR: 162.86, 145.47, 144.51, 133.05, 128.99, 61.63, 32.33, 29.99(overlap), 23.11, 14.53, 14.31。
【0089】
3,5−ジデカニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−2,6−ジカルボン酸(68). 化合物66(10.2g、0.017モル)を、LiOH(10mlの水中1.0g)、THF(100ml)、MeOH(20ml)および触媒量(約35mg)のヨウ化テトラブチルアンモニウムと混合した。この混合物を一晩還流下で加熱し、溶媒のほとんどを蒸発させた。その残留物を濃HCl(30ml)で酸性化し、固体を形成した。この固体を濾過により収集し、水で完全に洗浄し、真空乾燥して、化合物68(8.6g、98%の収率)を生成した。M.p. 280.1℃. 1H NMR (CD2Cl2) d 3.24(t, 4H), 1.72(m, 2H), 1.29(m, 30H), 0.88(t, 6H). 13C NMR: 168.46, 148.24, 146.58, 136.32, 35.91, 33.64, 28.91(m, overlap), 26.60, 17.49。
【0090】
3,5−ジデシルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(63). 化合物68(8.6g、0.016モル)、銅粉(0.7g)およびキノリン(50ml)を混ぜ合わせ、ウッズの金属浴において250〜260℃で加熱した。二酸化炭素ガスの気泡がさらに検出できなくなったとき(約2時間)、混合物を室温まで冷却し、ヘキサン(200ml)を加えた。この混合物をHCl(水中1〜2M)で繰り返し洗浄して、キノリンを除去した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、蒸発により濃縮し、その残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン)により精製して、化合物63(3.4g、47.4%)を生成した。 1H NMR (CD2Cl2) d 6.97(s, 2H), 2.73(t, 4H), 1.78(m, 4H), 1.27(m, 28H), 0.88(t, 6H). 13C NMR: 141.89, 136.75, 130.99, 120.57, 32.33, 30.02, 29.79(m, overlap), 29.74, 29.15, 23.10, 14.28。
【0091】
化合物64および69は、Sogiu等の硬質コア蛍光オリゴチオフェン−S,S−ジオキシドイソチオシアネートに記載された方法を用いて調製した。ここに、Synthetic, Optical Characterization, and Conjugation to Monoclonal Antibodies, J.Org.Chem. 2003, 68, 1512-1520を引用する。
【0092】
3,5−ジデシルチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−4,4−ジオキシド(64). 20mlのCH2Cl2中の3−クロロ過安息香酸(6.1g、0.035モル)を、20mlのジクロロメタン中の63(3.64g、8.18ミリモル)の溶液に滴下により加えた。この混合物を一晩室温で撹拌し、次いで、10%のKOH、10%のNaHCO3およびブラインで順次洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、溶媒を蒸発により除去した。粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン中5%の酢酸エチル)により精製して、黄色の固体として化合物64(1.4g、35.9%の収率)を得た。 M.p. 58.7-60.3 ℃. 1H NMR (CD2Cl2) d 6.94(s, 2H), 2.73(t, 4H), 1.72(m, 4H), 1.27(m, 28H), 0.88(t, 6H). 13C NMR: 142.99, 139.06, 136.36, 124.51, 32.27, 30.11, 29.95, 29.91, 29.68, 29.48, 29.51, 28.51, 23.04, 14.22。
【0093】
ジエチル−3,5−ジデシルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−4,4−ジオキシド−2,6−ジカルボキシレート(69). 20mlのCH2Cl2中の3−クロロ過安息香酸(1.2g、6.9ミリモル)を、20mlのジクロロメタン中の67(3.64g、8.18ミリモル)の溶液に滴下により加えた。この混合物を一晩室温で撹拌し、次いで、10%のKOH、10%のNaHCO3およびブラインで順次洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、溶媒を蒸発により除去した。粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2/ヘキサン中5%の酢酸エチル)により精製して、蝋質固体として化合物69(0.56g、53%の収率)を得た。 1H NMR (CD2Cl2) d 4.39(q, 4H), 3.13(t, 4H), 1.72(m, 4H), 1.27(m, 34H), 0.88(t, 6H). 13C NMR: 161.41, 145.52, 144.77, 137.56, 132.89, 62.03, 32.11, 30.59, 29.82, 29.78, 29.75, 29.53, 29.49, 27.88, 22.89, 14.21, 14.07。
【0094】
3,5−ジヘキシルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェンおよび3,5−ジヘキシルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−4,4−ジオキシドを製造するのにも、図12の反応機構を用いた。
【0095】
実施例4 − ジ−β−置換チエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン
3,7−ジデシルチエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン70を図13の反応機構に示したように合成した。
【0096】
2,4−ジ(1−ヒドロキシデシル)−3,6−ジブロモチエノ[3,2−b]チオフェン(72). 2,3,4,5−テトラブロモチエノ[3,2−b]チオフェン(71)を、ここに引用するFuller et al., J.Chem.Soc., Perkin Trans, 1, 1997, 3465にしたがって調製した。300mlの乾燥THF中の化合物71(40.0g、0.088モル)の混合物に、ブチルリチウム(70ml、0.175モル、ヘキサン2.5M)を−78℃で滴下により加えた。得られた混合物をさらに10から20分間に亘り撹拌し、ウンデシルアルデヒド(30.0g、0.176モル)を滴下により加えた。混合物を室温まで暖まらせ、一晩撹拌した。水(20ml)を加え、溶媒を蒸発により除去した。その残留物をヘキサン(300ml)と混合し、得られた固体を濾過により収集した。次いで、この固体を真空下で乾燥させ、その後の反応について十分に純粋な化合物71(47.0g、83.9%の収率)を生成した。M.p. 116.0-118.0℃. 1H NMR (CD2Cl2) d 5.15(m, 2H), 2.31(broad, 2H), 1.91(m, 4H), 1.31(m, 32H), 0.92(t, 6H). 13C NMR: 144.06, 109.05, 70.58, 38.77, 32.36, 30.06, 30.04, 29.99, 29.77, 29.65, 26.09, 23.12, 14.29。
【0097】
2,4−ジウンデカニル−3,6−ジブロモチエノ[3,2−b]チオフェン(73). 化合物72(30.0g、0.047モル)をアセトン(200ml)と混合した。この混合物にクロム酸溶液(130ml)を室温で滴下により加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、その後、反応混合物中に多量の固体が形成された。アセトンのほとんどをデカンテーションし、混合物の残りを酢酸エチル(100mlで2回)により抽出した。混ざった有機層をブライン(50mlで3回)により洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、その残留物をエタノール(100ml)と混合し、白色で純粋な化合物73が固化し、濾過により収集された(18.4g、61.7%の収率)。M.p. 120.3-121.5 ℃. 1H NMR (CD2Cl2) d 3.09(t, 4H), 1.78(m, 4H), 1.28(m, 28H), 0.88(t, 6H). 13C NMR: 193.15, 143.62, 143.40, 106.70, 41.74, 32.12, 29.79, 29.72, 29.65, 29.55, 29.35, 24.20, 22.91, 14.11。
【0098】
ジエチル−3,7−ジデシルチエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2,6−ジカルボキシレート(74). 化合物73をK2CO3(16.6g、0.12モル)およびN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)と混合した。この混合物に、エチル2−メルカプトアセテート(6.6ml、0.06モル)を60℃で滴下により加えた。反応混合物を窒素雰囲気において60℃で48時間に亘り撹拌し、次いで、水(500ml)中に注ぎ入れた。得られた固体を濾過により収集した。次いで、粗製生成物をエタノール(200ml)と共に沸騰させ、室温まで冷却した。濾過と乾燥により、化合物74(14.2g、72.4%の収率)を生成した。M.p. 130.5-132.2℃. 1H NMR (CD2Cl2) d 4.36(q. 4H), 3.15(t, 4H), 1.73(m, 4H), 1.27(m, 34H), 0.87(m, 6H). 13C NMR: 163.09, 144.79, 144.29, 135.29, 134.28, 128.54, 61.83, 32.57, 30.32, 30.26, 30.21, 30.07, 30.02, 29.98, 29.79, 23.33, 14.79, 14.49。
【0099】
3,7−ジデシルチエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2,6−ジカルボン酸(75). 化合物74(14.0g、0.021モル)を、LiOH(15mlの水中1.24g)、THF(100ml)、MeOH(20ml)および触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウムと混合した。この混合物を一晩還流下で加熱し、溶媒のほとんどを蒸発させた。その残留物を濃HCl(30ml)により酸性化させた。得られた固体を濾過により収集し、水により完全に洗浄し、真空乾燥して、化合物75(12.5g、97.4%の収率)を生成した。M.p.315.6〜318.5℃。
【0100】
3,7−ジデシルチエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン(70). 化合物75(13.5g、0.021モル)をキノリン(80ml)中の銅粉(0.9g)と混合し、その混合物をウッズの金属浴において250〜260℃まで加熱した。二酸化炭素ガスの気泡がさらに検出できなくなったとき(約2時間)、混合物を室温まで冷まし、熱いヘキサン(400ml)を加えた。次いで、この混合物をHCl(2N、50mlで4回)により繰り返し洗浄した。ヘキサンを蒸発によりある程度除去し、得られた固体を濾過により収集し、ヘキサンから再結晶化させて、化合物70(7.0g、60.6%の収率)を生成した。M.p. 111.0-113.3℃. 1H NMR (C6D6) d 6.53 (s, 2H), 2.51(t, 4H), 1.64(m, 4H), 1.27(m, 28H), 0.89(t, 6H). 13C NMR: 141.26, 136.42, 133.17, 132.04, 120.73, 32.31, 30.03, 29.96, 29.90, 29.79, 29.66, 29.04, 23.07, 14.28。
【0101】
実施例5 − 従来のカップリング反応を用いてβ−置換チエノ[2,3−d]チオフェンを合成するための失敗した試み
β−ヘキシル−置換チエノ[2,3−d]チオフェンを合成するための不成功の試みにおいては、図14の反応機構にしたがった。縮合環系の電子特性は、単純な単環式チオフェンのものとはかなり異なるので、単環式チオフェンに用いたカップリング反応は生じなかった。
【0102】
3,6−ジブロモチエノ[3,2−b]チオフェン(76、5.2g、0.0175モル)を乾燥したジエチルエーテル(100ml)中に溶解させ、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジ−クロロニッケル(II)(dppp)(0.47g、0.05当量)と混合した。この溶液に、臭化ヘキシルマグネシウム(ジエチルエーテル中2.0M溶液22.0ml、0.044モル)を滴下により加えた。得られた混合物を24時間に亘り還流下で加熱した。この反応は、GC/MSによりモニタした。24時間後、出発材料は消えたが、グリニャール付加物は形成されなかった。
【0103】
3−ブロモ−6−ヘキシルチエノ[3,2−b]チオフェン(77、6.2g、0.021モル)を乾燥ジエチルエーテル(100ml)中に溶解させ、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジ−クロロニッケル(II)(dppp)(0.51g、0.05当量)と混合した。この溶液に、臭化ヘキシルマグネシウム(ジエチルエーテル中2.0M溶液13.3ml、0.027モル)を滴下により加えた。
【0104】
得られた混合物を24時間に亘り還流下で加熱した。この反応は、GC/MSによりモニタした。6時間後、出発材料は消えたが、グリニャール付加物は形成されなかった。
【0105】
実施例6 − ポリ(β−置換縮合チオフェン)
以下に記載する一般的な手法を用いて、縮合チオフェンポリマーを製造した。この手法は、ここに引用する、Andersson et all, Macromolecules 1994, 27, 6506から適合した。
【0106】
モノマーのα,α’−ジヒドロβ,β’−ジアルキル縮合チオフェン化合物(10ミリモル)を30mlのクロロベンゼン中に溶解させた。20mlのクロロベンゼン中の塩化鉄(2.5ミリモル)の懸濁液を、30分間かけてモノマー溶液に加えた。この混合物を室温で数時間(例えば、6から24時間)に亘り撹拌した。縮合環系により多くの(例えば、4以上)の環を持つ縮合チオフェン化合物に関して、数時間に亘り80〜90℃で反応混合物を加熱することが望ましいであろう。次いで、反応混合物を500mlの95:5のメタノール:水から沈殿させた。その沈殿物を濾過により収集し、トルエン中に溶解させ、濃アンモニア(60mlで3回)と共に沸騰させ、エチレンジアミン四酢酸(水中0.05M、50mlで2回)と共に沸騰させた。有機層をメタノール(500ml)から沈殿させた。濾過と真空乾燥(70〜80℃)により、高分子材料を生成した。
【0107】
ポリ(3,6−ジヘキシルチエノ[2,3−d]チオフェン)(35%の収率)、ポリ(3,6−ジデシルチエノ[2,3−d]チオフェン)(90%の収率)、ポリ(3,7−ジデシルチエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン)(80%の収率)、およびポリ(3,5−ジデシルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン−4,4−ジオキシド)(43%の収率)を調製した。
【0108】
実施例7 − 2−2,3−3および4−4ダイマー並びに5および7環系の合成
2−2,3−3および4−4ダイマー並びに5および7環系の合成が図15に示されている。
【0109】
3,3’−ジブロモ−6,6’−ジデカニル−2,2’−ビスチエノチオフェン(82). 乾燥THF(30ml)中のジイソプロピルアミン(4.0g、0.039モル)を含むフラスコに、ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、15.6ml、0.039モル)を0℃で滴下により加えた。得られた混合物を15分間に亘り0℃に保持した。3−ブロモ−6−デカニルチエニルチオフェン(81)(14.0g、0.039モル)をTHF溶液(30ml)として滴下により加えた。この混合物を、塩化銅(II)(6.3g、0.047モル)を加える前に、1時間に亘り0℃で撹拌した。この濃褐色の溶液を室温でさらに12時間に亘り撹拌した。全ての溶媒の蒸発後、残留物をトルエン(200ml)と共に沸騰させ、固体を濾過した。有機溶液をブライン(50mlで2回)および水(50ml)により洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。トルエンを蒸発させた後、残留物をエタノール(700ml)と共に沸騰させ、冷却後に固体を収集した。目的の化合物は、黄色固体の結晶粉末として収集した。収量は9.35g(67%)であった。Mp. 90.0-91.0 oC. 1HNMR: solvent CD2Cl2. d: 7.15 (s, 2H), 2.74 (t, 4H), 1.89-1.27 (m, 32 H), 0.89 (t, 6H). 13CNMR: 140.78, 136.25, 133.02, 131.65, 131.23, 120.47, 31.92, 29.61(overlap), 29.36(overlap), 28.73, 22.69, 14.11。
【0110】
3,6−ジデカニル−ジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(83). 3,3’−ジブロモ−6,6’−ジデカニル−2,2’−ビスチエノチオフェン(82)(8.6g、0.012モル)をTHF(100ml)中に溶解させた。この溶液をアルゴン雰囲気で−78℃まで冷却した。この溶液に、ブチルリチウム(9.6ml、0.024モル)を滴下により加え、得られた混合物を−78℃で30分間に亘り撹拌し、ビス(フェニルスルホニル)スルフィド(3.8g、0.012モル)を加えた。この溶液を、THFを蒸発させる前に、室温で一晩撹拌した。その残留物をヘキサン(300ml)中に溶解させ、有機層をブライン(100mlで2回)、水(50ml)で洗浄した。次いで、その有機層をMgSO4上で乾燥させた。溶媒の蒸発後、粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(熱いヘキサン)により精製して、固体の化合物を得た。この黄色の化合物をヘキサンから再結晶化させ、3.2g(45.3%)を生成した。Mp. 107.7-108.5 oC. 1HNMR: Solvent CD2Cl2. d, 7.024 (s, 2H), 2.76 (t, 4H), 1.79-1.28 (m, 32H), 0.88 (t,6H). 13CNMR: 140.58, 138.96, 135.94, 129.80, 122.86, 105.64, 31.92, 29.77, 29.57, 29.33(overlap), 28.69, 22.69, 14.11。
【0111】
図15Aを参照すると、ブチルリチウムおよび塩化銅による87の環化によっても83を調製できる。
【0112】
3,3’−ジブロモ−5,5’−ジデカニル−2,2’−ビスジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(85). 乾燥THF(30ml)中のジイソプロピルアミン(1.13g、0.011モル)を含むフラスコに、ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、4.4ml、0.011モル)を0℃で滴下により加えた。得られた混合物を15分間に亘り0℃に保持した。3−ブロモ−5−デカニル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(84)(4.61g、0.011モル)をTHF(40ml)中に溶解させ、滴下により加えた。この混合物を、塩化銅(II)(1.77g、0.013モル)を加える前に、1時間に亘り0℃で撹拌した。この濃緑色溶液を室温でさらに12時間に亘り撹拌した。溶媒の全てを蒸発させた後、残留物をトルエン(100mlで2回)と共に沸騰させ、固体を濾過した。トルエンを全て蒸発させた後、残留物をトルエン(200ml)と共に沸騰させ、室温まで冷却した。冷却後、結晶質固体を収集した。収量は2.0g(43.8%)であった。Mp. 140.2-141.1 oC. 1HNMR: Solvent, CD2Cl2. 1HNMR: d 7.11 (s, 2H), 2.78 (t, 4H), 1.75-1.28 (m, 32H), 0.86(t, 6H)。
【0113】
3,7−ジデカニル−ビスジチエノ{[3,2−b:4,5−d][2’,3’−b:4’,5’−d]}チオフェン(86). 3,3’−ジブロモ−5,5’−ジデカニル−ビスジチエノチオフェン(85)(3g、3.62モル)を乾燥テトラヒドロフラン(80ml)中に溶解させ、−78℃まで冷却した。この混合物に、ブチルリチウム(7.23ミリモル、2.9ml)をアルゴン雰囲気で滴下により加えた。この得られた混合物を、ビス(フェニルスルホニル)スルフィド(1.15g、3.62ミリモル)を固体添加漏斗を通して加える前に、1時間に亘り−78℃で撹拌した。得られた混合物を撹拌し、一晩かけて室温までゆっくりと暖めた。THFの蒸発後、残留物を水(200ml)で還流し、濾過した。次いで、固体をメタノール(50mlで2回)により洗浄し、トルエン(200ml)で還流した。熱いトルエン溶液を濾過して、未溶解固体を除去した。トルエンの蒸発後、固体をトルエン(70ml)中に再度溶解させ、室温まで冷却し、目的化合物の茶黄色の針状体(1.68g、66.3%)を生成した。Mp. 140.2-141.1 oC. 1HNMR solvent CD2Cl2 d 7.11 (s, 2H), 2.78 (t, 4H), 1.79-1.28 (m, 32H), 0.88 (t, 6H)。
【0114】
図15Bを参照すると、ブチルリチウムおよび塩化銅による88の環化によっても、86を調製できる。
【0115】
実施例8 − テトラアルキル置換チエノチオフェンダイマーの合成
三環と四環のテトラアルキル置換チエノチオフェンダイマーの合成が、それぞれ、図16および17に示されている。
【0116】
三環ダイマー
2−ブロモ−3−デカニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(92). 3−デカニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(91)(9.03g、0.027モル)をDMF(100ml)中に溶解させた。この溶液に、DMF(50ml)中のN−ブロモスクシンイミド(NBS)(4.78g、0.027モル)をアルゴン雰囲気の暗所で滴下により加えた。得られた混合物を3時間に亘り0℃で撹拌した。GC/MSは、415で単独のピークを示した。この溶液を水(500ml)中に注ぎ入れた。有機溶液をヘキサン(100mlで3回)により抽出した。混ざった有機溶液をブライン(50mlで2回)および水(50ml)で洗浄した。MgSO4上での乾燥後、ヘキサンを蒸発させた。粗製生成物を、ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘキサンにより溶出して、目的の化合物(10.1g、90.2%)を生成した。1HNMR: solvent, CD2Cl2. d 7.39 (d, 1H), 7.29 (d, 1H), 2.74 (t, 2H), 1.74-1.33 (m, 16H), 0.89 (t, 3H). 13CNMR: 140.89, 140.63, 136.00, 131.55, 129.22, 126.58, 121.04, 108.89, 32.31, 29.94, 29.73 (overlap), 29.35, 28.49, 23.09, 14.27。
【0117】
3−デカニル−6−デカ−1−イニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(93). 2−ブロモ−3−デカニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(92)(4.16g、0.01モル)を、トリエチルアミン(80ml)中の1−デシン(3.6g、0.026モル)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.58g、0.5モル)およびヨウ化銅(I)(0.19g、1.0ミリモル)と混合した。この混合物を5分間に亘り窒素で泡立て、次いで、16時間に亘りアルゴン雰囲気で130℃まで加熱した。トリエチルアミンを蒸発させ、ヘキサン(150ml)を加えた。この混合物を濾過して、固体の塩を除去した。有機層を1Mの塩化水素酸(50ml)およびブライン(50ml)で洗浄し、次いで、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を真空で除去し、残留物を、ヘキサンで溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、目的の化合物(3.87g、93.0%)を生成した。1HNMR, 溶媒 CD2Cl2. d 7.36 (d, 1H), 7.30 (d, 1H), 2.82 (t, 2H), 2.49 (t, 2H), 1.63-1.27 (m, 28H), 0.88 (m, 6H)。
【0118】
2,3−ジデカニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(94). 3−デカニル−6−デカ−1−イニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(93)(36.0g、0.076モル)を酢酸エチル(60ml)中に溶解させた。この溶液に、5%のPt/C(9.0g)を加えた。この混合物を24時間に亘りH2雰囲気(90psi(約620kPa))において撹拌した。次いで、この溶液を濾過した。酢酸エチルの除去後、残留物を、ヘキサンで溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、目的の化合物(29.0g、79.9%)を生成した。1HNMR: 溶媒, CD2Cl2 d 7.29 (d, 1H), 7.27 (d, 1H), 2.80 (t, 2H), 2.67 (t, 2H), 1.68-1.27 (m, 32H), 0.88 (m, 6H). 13CNMR. 142.88, 140.75, 139.82, 131.69, 131.37, 126.69, 125.04, 120.94, 32.16, 29.85 (m,重複), 22.93, 14.11。
【0119】
5,6,5’,6’−テトラデカニル−2,2’−ビスジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(95). 2,3−ジデカニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(94)(5.16g、0.011モル)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(1.25g、0.011モル)のヘキサン溶液に、ブチルリチウム(4.5ml、0.011モル)を室温でアルゴン雰囲気において滴下により加えた。得られた混合物を、塩化銅(II)粉末を反応系に加える前に、1時間に亘り還流した。この混合物を一晩撹拌し、ヘキサンを真空で除去した。その残留物をトルエン(80ml)と共に沸騰させ、固体残留物を濾過により除去した。有機層をブライン(30mlで2回)および水(30ml)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。トルエンの除去後、黄色の固体をアセトン(400ml)と共に沸騰させ、室温まで冷却して、結晶質の目的の化合物(1.26g、24.5%)を生成した。1HNMR: 溶媒 CD2Cl2. d 7.43 (s, 2H), 2.89 (t, 4H), 2.73 (t, 4H), 1.76-1.34 (m, 64H), 0.93 (m, 12H). 13CNMR: 溶媒 C6D12. 143.28, 141.09, 140.94, 138.12, 131.66, 131.41, 127.91, 117.18, 32.74, 32.63, 30.44, 30.39, 30.32, 30.29, 30.13, 29.86, 28.58, 23.41, 14.25。
【0120】
図16を参照すると、ブチルリチウムおよびビス(フェニルスルホニル)スルフィドによる95の環化によっても、96を調製できる。
【0121】
四環ダイマー
2−ホルミル−3−ブロモ−5−デカニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(102). 乾燥THF(100ml)中のジイソプロピルアミン(2.76g、0.027モル)を含むフラスコに、ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、10.9ml、0.0273モル)を0℃で滴下により加えた。得られた混合物を15分間に亘り0℃に保持した。3−ブロモ−5−デカニル−ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(101)(11.33g、0.0273モル)をTHF(60ml)中に溶解させ、反応系に滴下により加えた。この混合物を、1−ホルミルピペリジンを加える前に、1時間に亘り0℃に保持した。得られた混合物を一晩撹拌し、THFを除去した。その残留物を10%の塩化水素酸(30ml)および水(100mlで3回)で洗浄した。固体の目的の化合物をエチルアルコール(100ml)からの再結晶化により精製した。収量8.80g(72.8%)。Mp.66.5〜67.2℃。
【0122】
2−カルボン酸エチルエステル−5−デカニルジチエノ[3,2−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(103). 2−ホルミル−3−ブロモ−5−デカニルジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン(102)(8.80g、0.02モル)をDMF(100ml)中に溶解させ、炭酸カリウム(9.66g、0.07モル)と混合した。触媒として18−クラウン−6エーテルを触媒量用いた。この溶液に、チオグリコール酸エチル(2.52g、0.021モル)を60〜70℃で滴下により加えた。この混合物を一晩この温度で撹拌した。GC/MSを調べた後、その混合物を水(500ml)中に注ぎ入れた。この水溶液から形成された固体を濾過により除去した。次いで、固体を水(200mlで2回)およびメタノール(200ml)により洗浄した。GC/MSは、465で単独のピークを示した。真空で乾燥後、目的の化合物は、さらに精製せずに用いた。(8.0g、86%)。Mp.59.4〜62.0℃。
【0123】
2−カルボン酸−5−デカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(104). 2−カルボン酸エチルエステル−3−ブロモ−5−デカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(103)(9.3g、0.02モル)をTHF(100ml)中に溶解させた。この溶液にメタノール(20ml)を加えた。LiOH(10%溶液、7ml)もこの溶液に加えた。触媒量のヨウ化テトラブチルアンモニウムを触媒として用いた。この混合物を一晩還流した。溶媒を2/3除去した後、残留物を濃HCl(100ml)中に注ぎ入れた。固体を濾過により収集し、中性になるまで水で洗浄した。乾燥後、6.06gの標的の化合物を得た(収率69.3%)。Mp.225〜227℃。
【0124】
5−デカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(105). 2−カルボン酸−5−デカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(104)(6.06g、0.014モル)をキノリン(80ml)中に溶解させた。銅粉末(0.62g、9.7ミリモル)もこの混合物に加えた。気泡が観察されなくなるまで(約1時間)、この混合物を240〜260℃に加熱した。混合物を室温まで冷却し、30%のHCl水溶液(300ml)中に注ぎ入れた。この有機溶液をヘキサン(150ml)で抽出し、キノリンが有機層から除去されるまで、10%のHClで数回洗浄した。次いで、この有機層をMgSO4上で乾燥させた。溶媒の除去後、残留物をエタノールから再結晶化させて、4.44gの標的の化合物(収率81.3%)を生成した。Mp. 88.3-89.6oC. 1HNMR. 溶媒 CD2Cl2. d 7.38 (d, 1H), 7.32 (d, 1H), 6.99 (m, 1H), 2.73 (t, 2H), 1.77 (m, 2H), 1.35-1.27 (m, 14H), 0.87 (t, 3H). 13CNMR: 141.29, 140.59, 136.72, 133.51, 132.32, 132.27, 131.51, 126.29, 121.15, 121.02, 32.32, 30.00, 29.96, 29.78(重複), 29.73, 29.11, 23.09, 14.28。
【0125】
2−ブロモ−3−デカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(106). 乾燥THF(50ml)中の5−デカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(105)(5.56g、0.0113モル)に、DMF(30ml)中のNBS(2.01g、0.0113モル)を0℃で暗所において滴下により加えた。得られた混合物を2時間に亘り撹拌し、水(500ml)中に注ぎ入れた。固体を濾過し、水で数回洗浄した。エタノール(200ml)を用いて、粗製生成物を再結晶化させて、5.06g(94.9%)を得た。Mp. 1HNMR: 溶媒 CD2Cl2. 7.43 (d, 1H), 7.34 (d, 1H), 2.77 (t, 2H), 1.74 (m, 2H), 1.36-1.27 (m, 16H), 0.87 (t, 3H). 13CNMR: 140.87, 139.54, 135.98, 133.31, 132.11, 131.70, 130.26, 126.77, 121.23, 109.03, 32.32, 29.99, 29.92, 29.75. 29.66, 29.36, 28.50, 23.09, 14.28。
【0126】
2−デカ−1−イニル−3−デカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(107). 2−ブロモ−3−デカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(2.16g、4.6ミリモル)(106)を、トリエチルアミン(50ml)中の1−デシン(1.27g、9.2ミリモル)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.27g、0.23ミリモル)およびヨウ化銅(I)(0.087g、0.46ミリモル)と混合した。この混合物を5分間に亘り窒素で泡立て、次いで、16時間に亘りアルゴン雰囲気において130℃まで加熱した。トリエチルアミンを蒸発させ、ヘキサン(150ml)を加えた。この混合物を濾過して、固体の塩を除去した。有機層を、1Mの塩化水素酸(50ml)およびブライン(50ml)により洗浄し、次いで、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を真空により除去し、その残留物を、ヘキサンで溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、目的の化合物(2.3g、90.2%)を生成した。1HNMR: 溶媒 CD2Cl2. d 7.41 (d, 1H), 7.33 (d, 1H), 2.84 (t, 2H), 2.23 (t, 2H), 1.73-1.27 (m, 28H), 0.89 (m,6H)。
【0127】
2,3−ジデカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(108). 2−デカ−1−イニル−3−デカニルジチエノ[2,3−d:2’,3’−d’]チエノ[3,2−b:4,5−b’]ジチオフェン(107)(2.2g、4.15ミリモル)を酢酸エチル(30ml)中に溶解させた。この溶液に、5%のPt/C(0.5g)を加えた。この混合物を24時間に亘りH2雰囲気(90psi(約620kPa))において撹拌した。次いで、溶液を濾過した。酢酸エチルの除去後、残留物を、ヘキサンで溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、目的の化合物(2.00g、90.5%)を生成した。Mp. 50.9-52.5oC. 1HNMR: 溶媒, CD2Cl2 d 7.41 (d, 1H), 7.33 (d, 1H), 2.83 (t, 2H), 2.50 (t, 2H), 1.73-1.26 (m, 32H), 0.87 (m, 6H). 13CNMR: 140.85,140.40,139.93, 133.38, 133.14, 132.22, 129.69, 121.17, 120.09, 98.92, 32.29, 32.25, 29.99, 29.94, 29.72, 29.63, 29.52, 29.33, 29.18, 29.06, 28.94, 23.05, 14.23。
【0128】
図17を参照すると、ブチルリチウムおよび塩化銅により108をカップリングすることによって、109を調製できる。110を生成するための109の環化は、109をブチルリチウムおよびビス(フェニルスルホニル)スルフィドと反応させることによって行うことができる。
【0129】
実施例9 − 縮合チオフェン部分を含有するポリマーの合成
ポリ−3,6−ジヘキシル−チエノ[3,2−b]チオフェン(PDC6FT2)およびポリ−3,6−ジデカニル−チエノ[3,2−b]チオフェン(PDC10FT2). モノマーの3,6−ジヘキシル−チエノ[3,2−b]チオフェン(3.08g、0.01モル)をクロロベンゼン中に溶解させた。クロロベンゼン中のFeCl3の懸濁液を30分以内でモノマー溶液に加えた。モノマーおよびFeCl3の最終濃度は、それぞれ、0.05Mおよび0.2Mであった。この混合物を室温で6〜24時間に亘り撹拌した。大きな環のサイズについては、混合物は数時間に亘り80〜90℃で加熱しても差し支えない。ポリマー溶液を5%のメタノール水溶液中に注ぎ入れたら、沈殿物が形成された。ポリマーを濾過により収集し、トルエン中に再度溶解させた。次いで、トルエン溶液を濃アンモニア(60mlで3回)と共に沸騰させ、次いで、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(水中0.05M)(50mlで2回)で2回沸騰させた。得られたトルエンをゆっくりメタノール(500ml)中に滴下して、ポリマーを沈殿させた。濾過後、ポリマーを一晩真空炉内で乾燥させた(70〜80℃)。PDC6FT2およびPDC10FT2の収率は、それぞれ、35%および90%であった。
【化16】

【0130】
上述した方法を用いて、ポリマーのPDC10FT4(収率80%)およびPDC10FTS3(収率43%)を生成した。
【化17】

【0131】
実施例10 − ビチオフェンおよび縮合チオフェンコポリマーの合成
2,6−ジブロモ−3,5−ジデカニルジチエノ[3,2−b:2’3’−d]チオフェン(1.0g、1.57ミリモル)、2,5’−ジスタンニルトリメチル−ビチオフェン(0.772g、1.57ミリモル)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.095g、0.082ミリモル)をアルゴン雰囲気においてクロロベンゼン(30ml)中に溶解させた。得られた混合物を、メタノール(400ml)中で沈殿させる前に、14時間に亘りアルゴン雰囲気において150℃に加熱した。収集した固体ポリマーをアセトン(100ml)で洗浄し、ソックスリー抽出器中でアセトンを用いて抽出した。次いで、固体ポリマーをクロロベンゼン(100ml)中に溶解させ、ガラスフィルタを通して濾過した。クロロベンゼンのほとんどを蒸発させた後、以下に示されるポリマーを再度メタノール(300ml)から沈殿させた。赤色のポリマー粉末を真空下で乾燥させて、0.9グラム(収率、90.1%)を得た。
【化18】

【0132】
2,7−ジブロモ−3,6−ジデカニルペンタチエノアセン(0.89g、1.19ミリモル)、2,5’−ジスタンニルトリメチル−ビチオフェン(0.59g、1.57ミリモル)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.072g、0.062ミリモル)を上述したように反応させた。このポリマーをソックスリー抽出器中でヘキサンにより抽出した。以下に示される最終的なポリマーを真空下で乾燥させて、0.8グラム(収率、89%)を得た。
【化19】

【0133】
2,8−ジブロモ−3,7−ジデカニルチエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン(1.0g、1.45ミリモル)、1,4−時トリメチルスタンニルベンゼン(0.59g、1.45ミリモル)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.084g、0.073ミリモル)を上述したように反応させた。以下に示されるポリマーを真空下で乾燥させて、0.82グラム(収率、93.2%)を得た。
【化20】

【0134】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の様々な改変および変更を行えることが当業者には明らかである。それゆえ、本発明は、本発明の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物に含まれるという条件で、包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式3’または4’:
【化1】

を有する部分を少なくとも1つ含む組成物であって、
nは1より大きい整数であり、mは1以上であり、oは1以上であり、R1およびR2は、独立して、水素またはアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも一方はアルキル基であり、Arはアリール基である組成物。
【請求項2】
1およびR2の両方が、少なくとも4つの炭素原子を有するアルキル基であり、nが2から15であり、Arが、1つ以上の未縮合チオフェン基、1つ以上の縮合チオフェン基、または未縮合と縮合チオフェン基の組合せを含み、前記未縮合と縮合チオフェン基が置換または未置換であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
化学式3’または4’における1つ以上の硫黄原子が酸化されていることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記酸化された部分が、化学式44’または45’:
【化2】

を有し、
Tが、酸化された縮合チオフェン環系の最も中央に位置する環の少なくとも1つにおいてSO2であることを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記最も中央に位置する環におけるTがSO2であり、残りのS原子が酸化されていないことを特徴とする請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記部分が、化学式200または201:
【化3】

を有し、
oが、1、2または3であり、R3およびR4が、独立して、水素またはアルキル基であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
nが、2、3または4であり、mが1であり、oが、1、2または3であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項8】
化学式44’または45’:
【化4】

を有する部分を含むポリマーであって、
nは0より大きい整数であり、mは1以上であり、oは1以上であり、xは1以上であり、R1およびR2は、独立して、水素またはアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも一方はアルキル基であり、Arはアリール基であり、酸化された縮合チオフェン環系の最も中央に位置する環の少なくとも1つにおいて、TがSO2であることを特徴とするポリマー。
【請求項9】
電子素子、光電子素子、または非線形光学素子に形成された請求項1記載の組成物を含む素子。
【請求項10】
請求項1記載の1の部分を含む化合物を製造する方法であって、
化学式210または220:
【化5】

を有し、nが2以上の整数であり、mが1以上であり、R1およびR2は、独立して、水素またはアルキル基であり、R1およびR2の少なくとも一方はアルキル基である化合物を、
Arがアリール基であり、R5がアルキル基である化学式(R53Sn−Ar−Sn(R53を有する化合物と反応させる工程を有してなる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate


【公表番号】特表2010−520322(P2010−520322A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551673(P2009−551673)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/002033
【国際公開番号】WO2008/106019
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】