説明

縮合複素環誘導体

【課題】本発明は、グルコキナーゼ活性化剤を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
[式中、Aは、−N(R)(CH−等(ここにおいて、mは0〜2の整数である。)であり、XおよびXは、各々独立して、同一または異なって、−C(R)(R)−等であり、Xは、−C(R)(R)−であり、Rは、水素原子、置換されてもよいヘテロアリール基等であり、Rは、水素原子、置換されてもよいアルキル基等であり、Rは、水素原子、置換されてもよいアルキル基等であり、R及びRは、各々独立して同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子等であり、nは、1または2である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用な縮合複素環誘導体に関する。より詳しくは、グルコキナーゼ活性化剤として有効な縮合複素環誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
グルコキナーゼ(本明細書中、GKと略称することがある) (ATP: D-hexose 6-phosphotransferase EC2.7.1.1)は、哺乳類の4種のヘキソキナーゼのうちの一つであり、別名ヘキソキナーゼIVとも呼ばれる。ヘキソキナーゼは、解糖系の最初のステップであるグルコースからグルコース-6-リン酸への反応を触媒する。グルコキナーゼは主に膵臓β細胞と肝臓に存在し、膵臓β細胞ではグルコース刺激によるインスリン分泌を規定するグルコースセンサーとして働き、肝臓ではグルコキナーゼの酵素反応が律速となってグリコーゲン合成および糖代謝が調節される。グルコキナーゼ以外の3種のヘキソキナーゼ(I, II, III)は、1mM以下のグルコース濃度で酵素活性が最大に達するのに対し、グルコキナーゼのグルコースに対する親和性は低く、そのKm値は8-15mMと生理的な血糖値に近い。従って、正常血糖(5mM)から食後血糖上昇(10-15mM)の血糖変化に対応して、グルコキナーゼを介した細胞内グルコース代謝亢進が起こる。
【0003】
グルコキナーゼ遺伝子改変マウスの結果から、グルコキナーゼがグルコース恒常性維持に重要な役割を果たしていることが証明されている。グルコキナーゼホモ欠損マウスでは生後間もなく重篤な糖尿病症状を示し死亡する。また、グルコキナーゼへテロ欠損マウスも高血糖を示す。一方、正常マウスでは肝臓特異的にグルコキナーゼを過剰発現させると耐糖能が向上する。また、糖尿病モデルマウスにグルコキナーゼを過剰発現させると耐糖能の改善と血糖値の低下が見られる。即ち、グルコキナーゼ活性の低下によりインスリン分泌不全と肝糖代謝の低下が起こり、耐糖能不全や糖尿病を発症し、逆にグルコキナーゼ活性の向上はインスリン分泌促進と肝糖代謝促進を引き起こし、耐糖能向上をもたらす。(非特許文献1)
【0004】
このようにグルコキナーゼ活性の変動は、肝臓および膵臓β細胞を介した哺乳類のグルコース恒常性維持において重要な役割を果たしている。MODY (maturity-onset diabetes of the young)と呼ばれる若年に糖尿病を発症する症例においてグルコキナーゼ遺伝子の突然変異が発見され、それによるグルコキナーゼ活性の低下が血糖上昇の原因であることが明らかとなっている。一方、グルコキナーゼ活性を上昇させる突然変異をもつ家系も見つかっており、このような家系では血漿インスリン濃度の上昇を伴う絶食時低血糖症状が見られる(非特許文献2および3)。
上記のように、グルコキナーゼはヒトでもグルコースセンサーとして機能しグルコース恒常性維持に重要な役割を果たしている。一方、多くの2型糖尿病患者でグルコキナーゼの活性調節による血糖調節は可能と考えられる。グルコキナーゼ活性化物質には膵臓β細胞におけるインスリン分泌促進作用と肝臓における糖取り込み促進作用および糖放出抑制作用が期待できるので2型糖尿病の予防・治療薬として有用と考えられる。
【0005】
近年、グルコキナーゼがラットの摂食中枢(Ventramedial Hypothalamus, VMH)にも限局して発現していることが明らかにされた。VMHに存在する一部の神経細胞はグルコース感受性を有しており、グルコースに対して興奮性のGE(Glucose Excited)-neuronとグルコースに対して抑制性のGI(Glucose Inhibited)-neuronに分類される。VHMのグルコース感知システムには膵臓β細胞のインスリン分泌と同様なグルコキナーゼを介したメカニズムが想定されており、グルコース濃度の変化に応じて神経の興奮あるいは抑制がおこり、その結果として食欲の亢進および抑制に関与するニューロペプチドが放出されるものと考えられている。実際、ラットの脳内へグルコースを投与すると摂食量が低下するのに対して、グルコキナーゼを競合的に阻害するグルコース類縁物質を脳内へ投与すると過食となる。したがって、グルコキナーゼ活性化物質はグルコキナーゼの中枢性の作用を介して摂食抑制作用ならびに体重増加抑制作用を示す可能性を有する。そのためグルコキナーゼ活性化物質には血糖是正効果のみならず、多くの2型糖尿病患者で問題となっている肥満をも是正できる可能性がある。
上記の記載からグルコキナーゼ活性化作用を有する化合物は、糖尿病の治療剤および/または予防剤として、あるいは、網膜症、腎症、神経症、虚血性心疾患、動脈硬化等の糖尿病慢性合併症の治療および/または予防剤として、さらには肥満の治療および/または予防剤として有用である。
【0006】
一方、テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン誘導体としては、下記式Aで表される化合物が知られている(特許文献1)。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、AおよびBは、各々独立してメチレン、COなどであり、Yは、メチレンなどであり、Wは、窒素原子などであり、Zは、OまたはNRであり、Lは単結合であり、RRは、炭素環または複素環であり、Rは水素原子などであり、Rは、炭素環または複素環であり、Rは、水素原子、アルキルなどである。)
【0009】
また、下記式Bで表される化合物が知られている(特許文献2)。
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Xは、OまたはNHであり、Lは、単結合などであり、Rは、炭素環または複素環であり、Rは水素原子、ハロゲン原子などであり、RおよびRは一緒になって炭素環または複素環と縮環してもよいなどである。)
【0012】
しかしながら、テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン誘導体の6位に硫黄原子が置換した化合物群に、優れたグルコキナーゼ活性化作用を有することは知られていない。また、該化合物群は前記特許文献1および2のいずれにも開示されていない。
【0013】
【非特許文献1】Cell、第83巻、1995年、69-78頁参照
【非特許文献2】Nature Genetics、第356巻、1992年、721-722頁
【非特許文献3】New England Journal Medicine、第338巻、1998年、226-230頁
【0014】
【特許文献1】国際公開 第06/119505号 パンフレット
【特許文献2】国際公開 第01/032632号 パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、優れたグルコキナーゼ活性化作用を有する新規な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、6位にスルホニル基等を有するテトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン骨格を有する下記化合物またはその薬学上許容される塩(以下必要に応じ本発明化合物と略称することがある。)が優れたグルコキナーゼ活性化作用を有することを見出し、本発明を完成するに到った。
【0017】
すなわち本発明は、以下の通りである。
項1:式(I)で表される化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0018】
【化3】

【0019】
[式中、Aは、−N(R)(CH−、−N(R)CO(CH−、または−N(R)SO(CH−であり(ここにおいて、mは0〜2の整数である。);
およびXは、各々独立して、同一または異なって、−CO−、−CS−、または−C(R)(R)−であり;
は、−C(R)(R)−であり;
は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいヘテロアリール基、または置換されてもよい飽和へテロ環基であり;
は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいアラルキル基、置換されてもよいヘテロアリール基、置換されてもよいヘテロアリールアルキル基、置換されてもよい飽和へテロ環基、または基:−N(R)(R)であり(ここにおいて、RおよびRは、一緒になって環を形成してもよい。);
は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、または置換されてもよいシクロアルキル基であり;
およびRは、各々独立して同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、または置換されてもよいアルキル基であり;
は、水素原子、または置換されてもよいアルキル基であり;
は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよい飽和へテロ環基、または置換されてもよいヘテロアリール基であり;
nは、1または2である。]
【0020】
項2:Rが、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC3−10シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基、または置換されてもよい5員もしくは6員の飽和へテロ環基であり;
が、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC2−6アルケニル基、置換されてもよいC3−10シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、置換されてもよいC7−14アラルキル基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリールアルキル基、置換されてもよい5員もしくは6員の飽和へテロ環基、または基:−N(R)(R)であり(ここにおいて、RおよびRは、一緒になって環を形成してもよい。)であり;
が、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、または置換されてもよいC3−10シクロアルキル基であり;
およびRが、各々独立して同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、または置換されてもよいC1―6アルキル基であり;
が、水素原子、または置換されてもよいC1―6アルキル基であり;
が、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC3−10シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、置換されてもよい5員もしくは6員の飽和へテロ環基、または置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基である項1に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0021】
項3:nが2である項1または項2に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0022】
項4:mが0である項1〜項3のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0023】
項5:X、XおよびXが、各々独立して、−C(R)(R)−であり;RおよびRが、水素原子である項1〜項4のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0024】
項6:式(I−1)で表される化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0025】
【化4】

【0026】
[式中、R11は、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC3−6シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基、または置換されてもよい5員もしくは6員の飽和へテロ環基であり;
21は、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC2−6アルケニル基、置換されてもよいC3−6シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、置換されてもよいC7−14アラルキル基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリールアルキル基、置換されてもよい5員もしくは6員の飽和へテロ環基、または基:−N(R61)(R71)であり(ここにおいて、R61およびR71は、一緒になって環を形成してもよい。);
31は、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、または置換されてもよいC3−6シクロアルキル基であり;
61が、水素原子、または置換されてもよいC1―6アルキル基であり;
71が、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC3−6シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、5員もしくは6員の飽和へテロ環基、または置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基である。]
【0027】
項7:R11が、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基である項6に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0028】
項8:R11における5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基が、イミダゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジル、ピリダジル、ピラゾリル、ベンズチアゾリル、チアゾロ[5, 4-b]ピリジル、チアゾロ[4, 5-b]ピラジルおよびチアゾロ[5, 4-d]ピリミジルからなる群から選択される1個のヘテロアリール基である項7に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0029】
項9:R11における5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基が、チアゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジル、ベンズチアゾリルおよびチアゾロ[5, 4-b]ピリジルからなる群から選択される1個のヘテロアリール基である項8に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
項10:R11における5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基が、チアゾリルである項9に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0030】
項11:R21が、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC2−6アルケニル基、置換されてもよいC3−6シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、置換されてもよいC7−14アラルキル基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基である項6〜項10のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0031】
項12:R21が、置換されてもよいC1―6アルキル基である項11に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0032】
項13:R21が、C1―6アルキル基である項12に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0033】
項14:R31が、水素原子である項6〜項13のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【0034】
項15:項1〜項14のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩を有効成分とする医薬。
【0035】
項16:項1〜項14のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩を有効成分とするグルコキナーゼ活性剤。
【0036】
項17:項1〜項14のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩を有効成分とする糖尿病の治療及び/または予防剤。
【0037】
以下、式(I)で表される化合物、またはそれらの薬学上許容される塩を必要に応じ「本発明化合物」と総称する。
【発明の効果】
【0038】
本発明化合物は、優れたグルコキナーゼ活性を有し、糖尿病、肥満等の予防・治療剤等の医薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。本明細書において「置換基」の定義における炭素の数を、例えば、「C1−6」などと表記する場合もある。具体的には、「C1−6アルキル」なる表記は、炭素数1から6のアルキル基と同義である。
本明細書において「基」なる用語は、1価基を意味する。例えば、「アルキル基」は、1価の飽和炭化水素基を意味する。また、本明細書における置換基の説明において、「基」なる用語を省略する場合もある。
「置換されてもよい」もしくは「置換された」で定義される基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1または複数である。また、特に指示した場合を除き、各々の基の説明はその基が他の基の一部分または置換基である場合にも該当する。本明細書中、例えば、「置換されてもよいC1−6アルキル基」なる用語は、「C1−6アルキル基」に各種「置換基」が置換してもよいことを意味する。
【0040】
「ハロゲン原子」は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子等が挙げられる。
【0041】
「アルキル基」は、直鎖または分枝状の飽和炭化水素基を意味する。例えば、「C1−6アルキル基」等が挙げられ、好ましくは、「C1−4アルキル基」等が挙げられる。「アルキル基」の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等が挙げられる。
【0042】
「シクロアルキル基」は、環状の飽和炭化水素基を意味する。例えば、「C3−10シクロアルキル基」等が挙げられ、好ましくは、「C3−6シクロアルキル基」等が挙げられる。「シクロアルキル基」の具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチルまたはノルボルニル等が挙げられる。
【0043】
「アルケニル基」は、二重結合を1個含む直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素基を意味する。例えば「C2−6アルケニル基」等が挙げられる。具体的には、例えば、ビニル、プロペニル、メチルプロペニル、ブテニル、またはメチルブテニル等が挙げられる。
【0044】
「アリール基」は、芳香族炭化水素基を意味する。例えば、「C6−10アリール」等が挙げられ、好ましくは「Cアリール基」(フェニル)等が挙げられる。「アリール基」の具体例としては、例えば、フェニル、1−ナフチルまたは2−ナフチル等が挙げられる。
【0045】
「アラルキル基」とは、前記「アルキル基」に前記「アリール基」が置換した基を意味する。例えば、「C7−14アラルキル基」(C6−10アリールC1−4アルキル基)等が挙げられる。「アラルキル基」の具体例としては、例えば、ベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルプロピルまたは1−ナフチルメチル等が挙げられる。
【0046】
「ヘテロアリール基」としては、例えば、5員〜10員の単環式もしくは多環式の基等が挙げられ、該基は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子から選ばれるヘテロ原子を同種または異なって1個以上(例えば1〜4個)を含む。「ヘテロアリール基」の具体例としては、例えば、ピロリル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ベンズオキサゾリル、ベンズチアゾリル、フリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジル、ピリダジル、キノリル、イソキノリル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、インドリル、イソインドリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、ジベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、キノキサリル、シンノリル、キナゾリル、インダゾリル、ナフチリジル、ジヒドロキノリル、テトラヒドロキノリル、チアゾロ[5, 4-b]ピリジル、チアゾロ[4, 5-b]ピラジル、またはチアゾロ[5, 4-d]ピリミジル等が挙げられる。
【0047】
定義「R」および「R11」における「置換されてもよいヘテロアリール基」としては、前記「ヘテロアリール基」の例示から、イミダゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジル、ピリダジル、ピラゾリル、ベンズチアゾリル、トリアゾリル、チアゾロ[5, 4-b]ピリジル、チアゾロ[4, 5-b]ピラジル、またはチアゾロ[5, 4-d]ピリミジルなどが具体的に例示される。該基における結合手の位置は、結合できる可能な位置であればよい。例えば、「ピリジル」とは、1−ピリジル、2−ピリジルおよび3−ピリジルが包含される。
【0048】
「ヘテロアリールアルキル基」とは、前記「アルキル基」に前記「ヘテロアリール基」が置換した基を意味する。該ヘテロアリール部分としては、前記のへテロアリール基として例示した具体例と同じものが挙げられる。例えば、「ヘテロアリールC1−4アルキル」が挙げられる。具体的には、例えば、2−ピリジルメチルなどが挙げられる。
【0049】
「アルコキシ基」としては、例えば、「C1−6アルコキシ基」が挙げられ、好ましくは、「C1−4アルコキシ基」等が挙げられる。「アルコキシ基」の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。
【0050】
「アルコキシカルボニル基」としては、例えば、「C1−4アルコキシカルボニル基」等が挙げられる。「アルコキシカルボニル基」の具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキカルボニルシ、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル等が挙げられる。
【0051】
「飽和ヘテロ環基」としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される同種または異種の原子を1〜3個有する5員もしくは6員の飽和ヘテロ環基等が挙げられる。前記窒素原子、酸素原子および硫黄原子はいずれも環を構成する原子である。具体的には、ピラニル、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、オキソイミダゾリジニル、ジオキソイミダゾリジニル、オキソオキサゾリジニル、ジオキソオキサゾリジニル、ジオキソチアゾリジニル、またはテトラヒドロピリジニル等が挙げられる。窒素原子を含有する場合において、該基は、環を構成する窒素原子が、「基」の結合手となることはない。すなわち、該基には、例えば、ピロリジノ基などの概念は包含されない。
【0052】
前記「飽和へテロ環基」は、6員の芳香族炭化水素または6員の不飽和へテロ環と縮合環を形成してもよい。例えば、前掲の5員もしくは6員の「飽和ヘテロ環基」と6員の芳香族炭化水素または6員の不飽和へテロ環が縮合した二環式の「飽和ヘテロ環」が挙げられる。6員の芳香族炭化水素としては、ベンゼンなどが挙げられる。6員の不飽和へテロ環としては、ピリジン、ピリミジンまたはピリダジン等が挙げられる。具体的には、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロプリニル、ジヒドロチアゾロピリミジニル、ジヒドロベンゾジオキサニル、イソインドリニル、インダゾリル、ピロロリジニル、テトラヒドロキノリニル、デカヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、テトラヒドロナフチリジニルまたはテトラヒドロピリドアゼピニル等が挙げられる。
【0053】
「置換されてもよいアルキル基」における置換基としては、例えば、
(a)ハロゲン原子、
(b)シアノ基、
(c)C3−6シクロアルキル基、
(d)基:−OR80(R80は、水素原子、トリフルオロメチルまたはC1−4アルキルである。)、
(e)基:−COR80(R80は、前記と同じである。)、
(f)基:−OCOR80(R80は、前記と同じである。)、
(g)基:−COOR80(R80は、前記と同じである。)、
(h)基:−NR82COR81(R81は、C1−4アルキルまたはC3−6シクロアルキルであり、R82は、水素原子、C1−6アルキルまたはC3−6シクロアルキルである。)、
(i)基:−NR8283(R82は、前記と同じであり、R83は、水素原子、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキルまたはベンジルであるか、あるいはR82およびR83が一緒になって環を形成する。)、
(j)基:−CONR8283(R82およびR83は、前記と同じである。)、または
(k)基:−OCONR8283(R82およびR83は、前記と同じである。)が挙げられる。
【0054】
前記において、「R82およびR83が一緒になって環を形成する」とは、基:−NR8283、基:−CONR8283および基:−OCONR8283において、NR8283部分の窒素原子が、R82およびR83と一緒になってピロリジン環、ピペリジン環、またはモルホリン環(該環は、C1−4アルキルで置換されてもよい。)等の窒素原子であることを意味する。
【0055】
前掲の(d)〜(k)で表される定義において、例えば、
基:−OR80(ヒドロキシ、トリフルオロメトキシ、メトキシなど)、
基:−COR80(ホルミル、メチルカルボニルなど)、
基:−OCOR80(メチルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシなど)、
基:−COOR80(カルボキシ、メトキシカルボニルなど)、
基:−NR82COR81(メチルカルボニルアミノなど)、
基:−NR8283(アミノ、モノ−もしくはジメチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノなど)、
基:−CONR8283(アミノカルボニル、シクロプロピルアミノカルボニル、ベンジルアミノカルボニルなど)、
基:−OCONR8283(アミノカルボニルオキシなど)が具体的に例示される(R80、R81、R82、およびR83は、前記と同じ意味である。)。
【0056】
「置換されてもよいシクロアルキル基」における置換基としては、例えば、
(a2)シアノ基、
(b2)C1−4アルキル基、または
(c2)基:−CONR8283等が挙げられる(R82およびR83は、前掲と同じである。)。
【0057】
「置換アルケニル基」における置換基としては、例えば、
(a3)ハロゲン原子、
(b3)シアノ基、
(c3)C1−4アルキル基、または
(d3)フェニル基等が挙げられる。
【0058】
「置換アルケニル」の具体例としては、例えば、2−フェニルビニルなどが例示される。
【0059】
「置換されてもよいアリール基」および「置換されてもよいアラルキル基」における置換基としては、例えば、
(a4)ハロゲン原子、
(b4)シアノ基、
(c4)C1−4アルキル基(該基は、1〜3個のハロゲン原子で置換されてもよい。例えば、トリフルオロメチルなど。)、
(d4)基:−OR80
(f4)基:−COR80
(g4)基:−OCOR80
(h4)基:−COOR80
(i4)基:−NR82COR81
(j4)基:−NR8283
(k4)基:−CONR8283
(l4)基:−NR82SO83
(m4)基:−SO80、または
(n4)基:−SONR8283等が挙げられる(R80、R81、R82、R82およびR83は、前掲と同じである。)。
【0060】
前掲の(l4)〜(n4)で表される定義において、例えば、
基:−NR82SO83(メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、N−メチル−N−フェニルスルホニルアミノなど)、
基:−SO80(メチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、フェニルスルホニルなど)、
基:−SONR8283(メチルアミノスルホニルなど)が具体的に例示される(R80、R81、R82およびR83は、前記と同じ意味である。)。
【0061】
「置換されてもよいへテロアリール基」および「置換されてもよいヘテロアリールアルキル基」におけるヘテロアリール部分の置換基としては、
(a5)ハロゲン原子、
(b5)ニトロ基、
(c5)シアノ基、
(d5)C1−4アルキル基(該基は、
(d51)1〜3個のハロゲン原子、
(d52)水酸基、
(d53)基:−NR8283
(d54)基:−COOR83
(d55)基:−CONR8283、または
(d56)基:−OR81で置換されていてもよい。)
(e5)基:−OR84
(f5)基:−COR80
(g5)基:−OCOR80
(h5)基:−COOR80
(i5)基:−COCOOR80
(j5)基:−NR82COR81
(k5)基:−NR8284
(l5)基:−CONR8283
(m5)基:−NR82SO83
(n5)基:−SR84
(o5)基:−SO80、または
(p5)基:−SONR8283等が挙げられる(R84は、水素原子、あるいは水酸基,カルボキシル,C1−4アルコキシカルボニル,または基:−NR8283で置換されてもよいC1−4アルキルであり、R80、R81、R82およびR83は、前掲と同じである。)。
【0062】
における「置換されてもよいへテロアリール基」および「置換されてもよいヘテロアリールアルキル基」における置換基としては、(a5)、(d5)、(e5)、(h5)、(n5)および(p5)からなる群から選択される1〜3個の同種または異種の基が好ましい。
【0063】
における「置換されたヘテロアリール」の具体例としては、例えば、5−フルオロ−チアゾール−2−イル;5−ニトロ−チアゾール−2−イル;4−(ヒドロキシメチル)−チアゾール−2−イル、5−(ヒドロキシメチル)−チアゾール−2−イル、4−(エトキシカルボニルメチル)−チアゾール−2−イル、4−(カルボキシルメチル)−チアゾール−2−イル、4−(2−ヒドロキシエチル)−チアゾール−2−イル、5−メトキシメチル−チアゾール−2−イル、5−(1−メチル−ピペラジニル)メチル−チアゾール−2−イル;4−エトキシカルボニル−チアゾール−2−イル、4−カルボキシル−チアゾール−2−イル、5−エトキシカルボニル−チアゾール−2−イル、5−カルボキシル−チアゾール−2−イル;5−アミノ−チアゾール−2−イル、5−(4−メチルピペラジン−1−スルホニル)−チアゾール−2−イル、5−エトキシカルボニル−オキサジアゾール−2−イル、5−カルボキシル−オキサジアゾール−2−イル、5−カルボキシル−オキサジオアゾール−2−イル、5−ヒドロキシメチル−オキサジアゾール−2−イル、5−エトキシカルボニル−チアジアゾール−2−イル、5−カルボキシル−チアジアゾール−2−イル、5−ヒドロキシメチル−チアジアゾール−2−イル、5−エトキシカルボニルメチルチオ−チアジアゾール−2−イル、1−メチル−ピラゾール−3−イル、5−エトキシカルボニルメチルチオ−ピリジン−2−イル、5−カルボキシルメチルチオ−ピリジン−2−イル、5−エトキシカルボニル−ピリジン−2−イル、5−カルボキシル−ピリジン−2−イル、6−(2−ヒドロキシエトキシ)−N-[1,3]チアゾロ[5,4-b]ピリジン−2−イル等が挙げられる。
【0064】
「飽和へテロ環基」および「飽和ヘテロ環」の置換基としては、例えば、前記「置換されてもよいヘテロアリール基」において例示された置換基等が挙げられる。該基は、前記置換基において同種または異種の基を1〜3個有してもよい。
【0065】
定義「A」と「R」の結合位置に関して、例えば、「A」が「−N(R)(CH−」の場合には、「−N(R)(CH−R」を意味する。
【0066】
定義「R」における「基:−N(R)(R)」としては、例えば、アミノ、メチルアミノ、シクロプロピルアミノ、フェニルアミノ、ジメチルアミノ等が挙げられる。「RおよびRは、一緒になって環を形成してもよい」としては、例えば、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基などが例示される。
【0067】
「薬学上許容される塩」としては、例えば塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩または硝酸塩等の無機酸塩、または酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩またはアスコルビン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0068】
また、本発明には、式(I)で表される化合物もしくはそのプロドラッグ、またはそれらの薬学上許容される塩が含まれる。また、これらの水和物またはエタノール溶媒和物等の溶媒和物も含まれる。さらに、あらゆる態様の結晶形のものも包含している。
【0069】
本明細書における「式(I)の化合物のプロドラッグ」なる用語は、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により式(I)の化合物に変換する化合物、すなわち酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして式(I)の化合物に変化する化合物、胃酸等により加水分解を起こして化合物(I)の化合物に変化する化合物のことを意味する。
【0070】
式(I)の化合物は、互変異性体として存在する場合もあり得る。従って、本発明は、式(I)の化合物の互変異性体も包含する。
【0071】
本発明化合物は、少なくとも一つの不斉炭素原子を有する場合もあり得る。従って、本発明は、本発明化合物のラセミ体のみならず、これらの化合物の光学活性体も包含する。本発明の化合物が、2個以上の不斉炭素原子を有する場合、立体異性を生じる場合がある。従って、本発明は、これらの化合物の立体異性体およびその混合物も包含する。
【0072】
本発明化合物としては、下記の化合物が例示出来る。
【0073】
【化5】

【0074】
【表1】

【0075】
本発明化合物は、GK活性化作用を有することから、糖尿病、特に2型糖尿病の治療ならびに予防薬として有用である。また糖尿病の合併症である、腎症、網膜症、神経障害、末梢循環障害、脳血管障害、虚血性心疾患、動脈硬化症の治療ならびに予防薬として有用である。さらに過食を抑制することにより、肥満、メタボリックシンドロームの治療ならびに予防薬としても有用である。
【0076】
本願発明における「糖尿病」とは、空腹時血糖が126mg/dL以上あるいは75gブドウ糖負荷試験2時間後の血糖値において、200mg/dL以上の状態を意味する。耐糖能異常とは75g ブドウ糖負荷試験2時間後の血糖値おいて140〜200mg/dLであるものをいう。
【0077】
メタボリックシンドロ−ムとは耐糖能異常,高脂血症,高血圧を合併する動脈硬化易発症状態をいう。具体的には、現在の基準においては、男性および女性でそれぞれウエスト85cmおよび90cmであり、かつ以下の3項目のうち2項目以上に該当する必要がある。
1.中性脂肪値 150mg/dL以上、HDL(高密度リポ蛋白)コレステロール値 40mg/dL未満のどちらか(または両方)に該当する場合
2.最高血圧 130mmHg以上、最低血圧 85mmHg以上のどちらか(または両方)に該当する場合
3.空腹時血糖値110mg/dL以上
【0078】
これらの予防・治療剤の投与経路は経口、非経口のいずれでもよい。
本発明化合物を前記治療剤(医薬)として用いる場合、本発明化合物の含有量は、医薬全体の0.1〜100重量%である。
本発明化合物および本発明化合物を含有する医薬の投与量は、投与対象、投与ルート、疾患などにより異なるが、例えば、これらを糖尿病などの治療薬として成人(約60kg)に経口投与する場合、本発明化合物として、約0.1〜500mg、好ましくは約1〜100mg、さらに好ましくは5〜100mg投与することが好ましい。これらの量は1日1回〜数回に分けて投与することができる。
本発明化合物および本発明化合物を含有する医薬は、食前投与、食間投与または食後投与のいずれでもよい。
【0079】
本発明で用いられる製剤は、活性成分として本発明化合物以外の薬学上許容される成分を含有していてもよい。この成分としては、例えば、賦形剤、安定剤などが挙げられる。これらの成分は本発明の目的が達成される限り特に限定されず、適宜適当な配合割合で使用が可能である。剤形の具体例としては、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、カプセル剤(マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、細粒剤、散剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、吸入剤、軟膏、点眼剤などが用いられる。これらの製剤は常法(例えば日本薬局方記載の方法など)に従って調製される。
【0080】
具体的には、錠剤の製造法は、本発明の化合物をそのまま、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなど)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなど)、結合剤(例えば、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど)、崩壊剤(乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなど)もしくはそのほかの適当な添加剤を加えて均等に混和したものを、適当な方法で顆粒とした後、滑沢剤などを加え、圧縮成型するかまたは、本発明の化合物をそのまま、または賦形剤、結合剤、崩壊剤もしくはそのほかの適当な添加剤を加えて均等に混和したものを、直接圧縮成型して製するか、またはあらかじめ製した顆粒にそのまま、もしくは適当な添加剤を加えて均等に混合した後、圧縮成型しても製造することもできる。注射剤の製造法は、本発明化合物の一定量を、水性溶剤の場合は注射用水、生理食塩水、リンゲル液など、非水性溶剤の場合は通常植物油などに溶解、懸濁もしくは乳化して一定量とするか、または本発明化合物の一定量をとり注射用の容器に密封して製することができる。
【0081】
経口用製剤担体としては、例えば、デンプン、D−マンニトール、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの製剤分野において常用されている物質が用いられる。注射用担体としては、例えば、蒸留水、生理食塩水、グルコース溶液、輸液剤などが用いられる。その他、製剤一般に用いられる添加剤を適宜添加することもできる。
【0082】
本発明化合物は、その効果の増強を目的として、糖尿病治療剤、糖尿病性合併症治療剤、抗高脂血症剤、降圧剤、抗肥満剤、利尿剤などの薬剤(以下、併用薬剤と略記する)と組み合わせて用いることができる。本発明化合物および併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。また、本発明化合物と併用薬剤の合剤としても良い。併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明化合物と併用薬剤との配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば投与対象がヒトである場合、本発明化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01〜100重量部用いればよい。
【0083】
なお、糖尿病治療剤としては、インスリン製剤(例、ウシ、ブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;大腸菌、イーストを用い、遺伝子工学的に合成したヒトインスリン製剤など)、インスリン抵抗性改善剤(例、ピオグリタゾンまたはその塩酸塩、トログリタゾン、ロシグリタゾンまたはそのマレイン酸塩、GI−262570、JTT−501,MCC−555、YM−440、KRP−297,CS−011等)、α−グルコシダーゼ阻害剤(例、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール、エミグリテート等)、ビグアナイド剤(例、メトホルミン等)、インスリン分泌促進剤(例、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリド等のスルホニルウレア剤;レパグリニド、セナグリニド、ナテグリニド、ミチグリニド等)、GLP−1、GLP−1アナログ(エキセナタイド、リラグルタイド、SUN−E7001、AVE010、BIM−51077、CJC1131等)、プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤(例、バナジン酸等)、β3アゴニスト(例、GW−427353B、N−5984等)、DPPIV阻害剤(例、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、SYR−322等)が挙げられる。
【0084】
糖尿病性合併症治療剤としては、アルドース還元酵素阻害剤(例、トルレスタット、エパルレスタット、ゼナレスタット、ゾポレスタット、ミナレスタット、フィダレスタット、SK−860、CT−112等)、神経栄養因子(例、NGF、NT−3、BDNF等)、PKC阻害剤(例、LY−333531等)、AGE阻害剤(例、ALT946、ピマゲジン、ピラトキサチン、N−フェナシルチアゾリウム ブロマイド(ALT766)等)、活性酸素消去薬(例、チオクト酸等)、脳血管拡張剤(例、チアプリド、メキシレチン等)が挙げられる。抗高脂血剤としては、HMG−CoA還元酵素阻害剤(例、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、イタバスタチンまたはそれらのナトリウム塩等)、スクアレン合成酵素阻害剤、ACAT阻害剤等が挙げられる。降圧剤としては、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例、カプトプリル、エナラプリル、アラセプリル、デラプリル、リジノプリル、イミダプリル、ベナゼプリル、シラザプリル、テモカプリル、トランドラプリル等)、アンジオテンシンII拮抗剤(例、オルメサルタン、メドキソミル、カンデサルタン、シレキセチル、ロサルタン、エプロサルタン、バルサンタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン等)、カルシウム拮抗剤(例、塩酸ニカルジピン、塩酸マニジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニルバジピン、アムロジピン等)、ACE/NEP阻害剤(例、オマパトリラート、ファシドトリル等)、β遮断薬(例、アテノロール、ビソプロロール、ベタキソロール、メトプロロール等)、α遮断薬(例、ウラピジル、テラゾシン、ドキサゾシン、ブナゾシン等)、αβ遮断薬(例、アモスラロール、アロチノロール、ラベタロール、カルベジロール等)が挙げられる。
【0085】
抗肥満剤としては、例えば中枢性抗肥満薬(例、フェンテルミン、シブトラミン、アンフェプラモン、デキサンフェタミン、マジンドール、SR−141716A等)、膵リパーゼ阻害薬(例、オルリスタット等)、ペプチド性食欲抑制薬(例、レプチン、CNTF(毛様体神経栄養因子)等)、コレシストキニンアゴニスト(例、リンチトリプト、FPL−15849等)等が挙げられる。利尿剤としては、例えばキサンチン誘導体(例、サリチル酸ナトリウムテオブロミン、サリチル酸カルシウムテオブロミン等)、チアジド系製剤(例、エチアジド、シクロペンチアジド、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ペンフルチジド、ポリチアジド、メチクロチアジド等)、抗アルドステロン製剤(例、スピロノラクトン、トリアムテレン等)、炭酸脱水酵素阻害剤(例、アセタゾラミド等)、クロルベンゼンスルホンアミド系製剤(例、クロルタリドン、メフルシド、インダパミド等)、アゾセミド、イソソルビド、エタクリン酸、ピレタニド、ブメタニド、フロセミド等が挙げられる。
【0086】
併用薬剤は、好ましくはインスリン製剤、インスリン抵抗性改善剤、α−グルコシダーゼ阻害剤、ビグアナイド剤、インスリン分泌促進剤(好ましくはスルホニルウレア剤)等である。上記併用薬剤は、2種以上を適宜の割合で組み合せて用いてもよい。
【0087】
本発明化合物が、併用薬剤と組み合せて使用される場合には、これらの薬剤の使用量は、薬剤の副作用を考えて安全な範囲内で低減できる。したがって、これらの薬剤により引き起こされるであろう副作用は安全に防止できる。
【0088】
以下に、本発明における式(I)で表される化合物の製造法について、例を挙げて説明するが、本発明はもとよりこれに限定されるものではない。
【0089】
式(I)で表される化合物は公知化合物から公知の合成方法を組み合わせることにより合成することができる。例えば、次の方法により合成できる。尚、式(I)で表される化合物は、出発原料の種類に応じて、下記に示す方法を適宜選択して、組み合わせることにより合成することができる。
【0090】
製造法1
式(I)で表される化合物またはその塩は、例えば下記に示される方法によって製造される。
【0091】
【化6】

【0092】
(式中、RはC1−6アルキル基であり、Lは脱離基であり、R、R、A、n、X〜Xは項1と同じである。)
【0093】
で示される「脱離基」としては、例えば、ハロゲン原子;ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルスルホニルオキシ基(例えば、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基など);C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基およびニトロ基から選ばれる置換基を1〜3個有していてもよいC6−10アリールスルホニルオキシ基(例えば、p-トルエンスルホニルオキシ基など)等が挙げられるが、化合物(6)中のLとしては塩素原子が好ましい。
【0094】
(工程1)本工程は化合物(1)に種々の塩基存在下、適当な溶媒中、化合物(2)を反応させて、化合物(3)を得る工程である。本工程において使用される塩基は、後記に例示する塩基等から選択されるが、好ましくはジイソプロピルエチルアミンである。本工程において使用される溶媒は、後記に例示する溶媒等から選択されるが、好ましくはクロロホルムである。
化合物(2)の使用量は、化合物(1)1モルに対して、通常、1〜10モル、好ましくは1〜3モルである。塩基の使用量は、化合物(1)1モルに対して、通常、1〜10モル、好ましくは1〜3モルである。
反応時間は、通常、約0.1〜約48時間、好ましくは約0.5〜約24時間である。反応温度は、通常、約−20℃〜約120℃、好ましくは、約0〜約60℃である。
【0095】
(工程2)本工程は上記工程1で得られた化合物(3)に種々の塩基存在下、適当な溶媒中、化合物(4)を反応させて、化合物(5)を得る工程である。本工程において使用される塩基は、後記に例示する塩基等から選択されるが、好ましくはナトリウムエトキシドである。本工程において使用される溶媒は、後記に例示する溶媒等から選択されるが、好ましくはエタノールである。
化合物(4)の使用量は、化合物(3)1モルに対して、通常、1〜10モル、好ましくは1〜3モルである。塩基の使用量は、化合物(3)1モルに対して、通常、1〜10モル、好ましくは1〜3モルである。
反応時間は、通常、約0.1〜約48時間、好ましくは約0.5〜約24時間である。反応温度は、通常、約0℃〜約200℃、好ましくは、約50〜約120℃である。
【0096】
(工程3)本工程は上記工程2で得られた化合物(5)をハロゲン化剤(例えば、オキシ塩化リン、三臭化リン)と反応させることにより化合物(6)を得る工程である。
本反応は無溶媒下あるいは反応に不活性な溶媒中で行われる。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えば、N, N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
用いられるハロゲン化剤の量は、化合物(5)1モルに対して、通常、0.5〜20モル、好ましくは1〜5モルである。反応時間は、通常、約0.1〜約48時間、好ましくは約0.5〜約24時間である。反応温度は、通常、約0℃〜約200℃、好ましくは、約50〜約120℃である。
【0097】
(工程4)本工程は上記工程3で得られた化合物(6)に種々の塩基存在下、適当な溶媒中、化合物(7)を反応させた後、所望により、R-Rにおけるアミノ基、水酸基、カルボキシル基の保護基を脱保護し、一般式(I)で表される化合物を得る工程である。
本工程における反応は、例えば金属触媒存在下に行われる。用いられる金属触媒としては、さまざまな配位子を有する金属複合体が用いられ、例えばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等が挙げられる。本工程において使用される塩基は、後記に例示する塩基等から選択されるが、好ましくはカリウムt-ブトキシドである。本工程において使用される溶媒は、後記に例示する溶媒等から選択されるが、好ましくはトルエンである。
用いられる金属触媒の量は、化合物(6)1モルに対して、通常、0.005〜10モル、好ましくは0.01〜1モルである。反応時間は、通常、約0.1〜約48時間、好ましくは約0.5〜約24時間である。反応温度は、通常、約0℃〜約200℃、好ましくは、約50〜約120℃である。
【0098】
製造法2
また、本発明に係る化合物(I)またはその塩は、例えば下記に示される方法によっても製造することができる。
【0099】
【化7】

【0100】
(式中、Pはアミノ基の保護基であり、R、R、R、A、L、n、X〜Xは項1と同じである。)
【0101】
で示される「アミノ基の保護基」としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、p−トルエンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、メタンスルホニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、ピバロイルオキシメチル基、アセトキシメチル基、アセトキシメトキシカルボニル基、1−アセトキシエトキシカルボニル基及びアラニル基等が挙げられる。
【0102】
(工程5)本工程は化合物(1)のアミノ基に保護基Pを導入することにより、化合物(7)を得る工程である。本工程はProtective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年) に記載の方法等に準じて行うことができる。
【0103】
(工程6)本工程は上記工程5で得られた化合物(7)に種々の塩基存在下、適当な溶媒中、化合物(4)を反応させて、化合物(8)を得る工程である。本反応における化合物の当量数、反応温度、反応溶媒等の条件は、前記工程2と同様である。
【0104】
(工程7)本工程は上記工程6で得られた化合物(8)をハロゲン化剤(例えば、オキシ塩化リン、三臭化リン)と反応させることにより化合物(9)を得る工程である。
【0105】
(工程8)本工程は上記工程7で得られた化合物(9)と化合物(7)を反応させて、化合物(8)を得る工程である。本反応における化合物の当量数、反応温度、反応溶媒等の条件は、前記工程4と同様である。
【0106】
(工程9)本工程は上記工程8で得られた化合物(10)のアミノ基の保護基Pを、脱保護することにより、化合物(11)を得る工程である。本工程はProtective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年) に記載の方法等に準じて行うことができる。
【0107】
(工程10)本工程は上記工程9で得られた化合物(11)に、種々の塩基存在下、適当な溶媒中、化合物(2)を反応させた後、所望により、RおよびR2におけるアミノ基、水酸基、カルボキシル基の保護基を脱保護し、一般式[I]で表される化合物を得る工程である。本工程において使用される塩基は、後記に例示する塩基等から選択されるが、好ましくはジイソプロピルエチルアミンである。本工程において使用される溶媒は、後記に例示する溶媒等から選択されるが、好ましくはテトラヒドロフランである。
化合物(2)の使用量は、化合物(11)1モルに対して、通常、1〜10モル、好ましくは1〜3モルである。塩基の使用量は、化合物(11)1モルに対して、通常、1〜10モル、好ましくは1〜3モルである。
反応時間は、通常、約0.1〜約48時間、好ましくは約0.5〜約24時間である。反応温度は、通常、約−20℃〜約120℃、好ましくは、約0〜約60℃である
【0108】
原料化合物(1)、(2)、(4)、(7)は市販化合物を購入して用いるか、若しくは市販化合物から公知の方法により製造したものを用いることができる。
【0109】
上記の各工程において使用される化合物は、塩を形成していてもよく、このような塩としては、前述の本発明化合物の塩と同様の塩が挙げられる。
【0110】
上記の各工程において使用される塩基は、反応や原料化合物の種類等によって適時選択されるべきであり、例えば例えば重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムのような重炭酸アルカリ類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのような炭酸アルカリ類、水素化ナトリウム、水素化カリウムのような金属水素化類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムtert-ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシド類、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドのような有機金属塩基類、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)のような有機塩基類である。
【0111】
上記の各工程において使用される溶媒は、反応や原料化合物の種類等によって適時選択されるべきであり、反応に不活性な溶媒中で行うことが好ましい。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルケトンのようなケトン類、塩化メチレン、クロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジメトキシエタンのようなエーテル類、トルエン、ベンゼンのような芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタンのような脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸プロピルのようなエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドンのようなアミド類、ジメチルスルホキシド(DMSO)のようなスルホキシド類、アセトニトリルのようなニトリル類であり、これらの溶媒は単独あるいは2種類以上混合して用いられる。また反応の種類によっては、有機塩基類を溶媒として用いてもよい。
【0112】
上記の各工程における反応温度は、反応や原料化合物若しくは使用される溶媒の種類等によって適時選択されるべきであり、通常-100℃〜200℃であるが、好ましくは-70℃〜100℃である。
【0113】
上記の各工程における反応時間は、反応や原料化合物若しくは使用される溶媒の種類等によって適時選択されるべきであり、通常10分〜48時間であるが、好ましくは30分〜24時間である。
【0114】
上記の各工程において得られた化合物において、分子内の官能基は、公知の方法、例えばComprehensive Organic Transformations(Richard C. Larock著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年) に記載の方法等を組み合わせることにより、目的の官能基へと変換することができる。
【0115】
上記の各工程において得られる生成物は、抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶、再沈殿等のような常法に従って単離、精製を行うことができる。
【0116】
上記の各工程において、出発物質の構造中に反応に関与する可能性のある官能基、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、カルボニル基等を含む場合には、これらの基に一般的に用いられるような保護基を導入することによって保護しておいてもよく、また、その場合には適宜保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。
【0117】
上記の各工程において保護、脱保護が必要な場合、公知の方法、例えばProtective Groups in Organic Synthesis(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著、John Wiley & Sons, Inc.発行、1999年) に記載の方法等に準じて行うことができる。
【0118】
また、本発明の化合物は反応条件により塩、遊離酸又は遊離塩基の形で得られるが、これらの化合物は常法により所望の塩、遊離酸又は遊離塩基の形に変換することができる。
【0119】
本発明の化合物は結晶であってもよく、これらは公知の結晶化法等により得ることができる。
【0120】
本発明の化合物に、光学異性体、立体異性体、回転異性体、位置異性体が含まれる場合において、これらは光学活性な原料化合物からの合成、又は光学分割法、優先晶出法等の分離手法など公知の方法により得ることができる。
【実施例】
【0121】
以下に本発明を、参考例、実施例および試験例により、さらに具体的に説明するが、本発明はもとよりこれに限定されるものではない。尚、以下の参考例および実施例において示された化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。なお、記載の簡略化のために略号を使用することもあるが、これらの略号は前記記載と同義である。
【0122】
化合物の同定は水素核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)、高速液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)により行った。
【0123】
水素核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)は、BurkerもしくはJEOL製FT-NMR測定装置を用いて測定した。テトラメチルシランを標準物質としてケミカルシフト値をδ値(ppm)にて記載した。1H-NMRに用いられる略号としては、sは一重線、dは二重線、ddは二重の二重線、tは三重線、mは多重線、brは幅広い、およびJは結合定数を意味する。質量分析は、大気圧化学イオン化法(APCI)もしくはエレクトロスプレーイオン化法(ESI)で行った。
【0124】
参考例1:エチル 1-(イソプロピルスルホニル)-4-オキソピペリジン-3-カルボシキレートの製造:
【0125】
【化8】

【0126】
エチル 4-オキソピペリジン-3-カルボシキレート塩酸塩(20g)およびジイソプロピルエチルアミン(41ml)のクロロホルム(100ml)懸濁液に、氷冷攪拌下イソプロピルスルホニルクロリド(16.5g)をゆっくりと滴下した。氷冷下30分攪拌した後、室温で2時間攪拌した。反応液に水を加え、クロロホルムで抽出後、有機層を5%クエン酸水溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、表記化合物の粗精製物(27g)を得た。得られた粗精製物は、精製することなく次反応に用いた。
【0127】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.31(3H, t, J = 7.2 Hz), 1.36(6H, d, J = 6.8 Hz), 2.44-2.50(2H,m), 3.23(1H, septlet, J = 6.8 Hz), 3.54(2H, t, J = 5.9Hz), 4.01-4.04(2H, m), 4.24(2H, q, J = 7.2 Hz), 12.10(1H, s)
【0128】
参考例2:6-(イソプロピルスルホニル)-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-オールの製造:
【0129】
【化9】

【0130】
参考例1で得られた化合物(27g)のエタノール(300ml)溶液にホルムアミジン酢酸塩(12g)およびナトリウムエトキシド(14.4g)を加え、3時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮後、残渣に水を加え、10%クエン酸水溶液で酸性とした。クロロホルムで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加え、析出結晶を濾取し、表記化合物(21g)を得た。
【0131】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.41(6H, d, J = 6.8 Hz), 2.84-2.89(2H,m), 3.29(1H, septlet, J = 6.8 Hz), 3.66(2H, t, J = 5.8 Hz), 4.35(2H, s), 8.07(1H, s), 12.53(1H, br)
【0132】
参考例3:4-クロロ-6-(イソプロピルスルホニル)-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジンの製造:
【0133】
【化10】

【0134】
参考例2で得られた化合物(21g)をオキシ塩化りん(40ml)に加え、100℃で3時間過熱攪拌した。反応液を氷冷した後、クロロホルム(500ml)および5%水酸化ナトリウム水溶液(1200ml)の混合液にゆっくりと滴下した。有機層を5%炭酸カリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル:0/100から50/50)で精製した。得られた残渣にジイソプロピルエーテルを加え、析出結晶を濾取し、表記化合物(13.4g)を得た。
【0135】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.41(6H, d, J = 6.8 Hz), 3.10(2H, t, J = 5.9 Hz), 3.32(1H, septlet, J = 6.8 Hz), 3.73(2H, t, J = 5.9 Hz), 4.53(2H, s), 8.82(1H, s)
【0136】
参考例4:ジエチル 4-オキソピペリジン-1, 3-ジカルボシキレートの製造:
【0137】
【化11】

【0138】
エチル 4-オキソピペリジン-3-カルボシキレート塩酸塩(20g)およびトリエチルアミン(21.44g)のクロロホルム(100ml)懸濁液に、氷冷攪拌下クロロ炭酸エチル(10.97g)をゆっくりと滴下した。氷冷下1時間攪拌した後、室温で1時間攪拌した。反応液に水を加え、クロロホルムで抽出後、有機層を5%クエン酸水溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、表記化合物の粗精製物(26g)を得た。得られた粗精製物は、精製することなく次反応に用いた。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.25-1.35(6H, m), 2.36-2.41(2H, m), 3.59-3.64(2H, m), 4.08-4.28(6H, m), 12.07(1H, s)
【0139】
参考例5:エチル 4-ヒドロキシ- 7, 8-ジヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-6(5H)-カルボキシレートの製造:
【0140】
【化12】

【0141】
参考例4で得られた化合物を参考例2と同様に反応、処理し、表記化合物を得た。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.32(3H, t, J = 7.1 Hz), 2.17(1H, s), 2.97-3.03(2H, m), 3.80-3.85(2H, m), 4.23(2H, q, J = 7.1 Hz), 4.64(2H, s), 8.80(1H, br)
【0142】
参考例6:エチル 4-クロロ- 7, 8-ジヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-6(5H)-カルボキシレートの製造:
【0143】
【化13】

【0144】
参考例5で得られた化合物を参考例3と同様に反応、処理し、表記化合物を得た。
【0145】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.30(3H, t, J = 7.1 Hz), 2.17(1H, s), 2.76-2.82(2H, m), 3.73-3.78(2H, m), 4.20(2H, q, J = 7.1 Hz), 4.44(2H, s), 8.09(1H, br)
【0146】
参考例7:エチル 4-(1, 3-チアゾール-2-イルアミノ)- 7, 8-ジヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-6(5H)-カルボキシレートの製造:
【0147】
【化14】

【0148】
参考例6で得られた化合物(6g)のトルエン(90ml)懸濁液に窒素気流下、2−アミノチアゾール(3.23g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(1.14g)、4, 5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9, 9-ジメチルキサンテン(0.72g)、カリウム tert-ブトキシド(3.62g)を加え、100℃で4時間過熱攪拌した。反応混合物を氷冷後、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル:50/50から0/100)で精製し、表記化合物(4.4g)を得た。
【0149】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.31(3H, t, J = 7.1 Hz), 2.91-2.98(2H, m), 3.78-3.85(2H, m), 4.23(2H, q, J = 7.1 Hz), 4.53(2H, br), 7.00(1H, brs), 7.48(1H, d, J = 3.4 Hz), 8.47(1H, br), 8.75(1H, br)
【0150】
参考例8:N-1, 3-チアゾール-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミンの製造
【0151】
【化15】

【0152】
参考例7で得られた化合物(4.2g)を48%臭化水素酸(40ml)に加え、100℃で6時間過熱攪拌した。反応液を氷冷後、10%炭酸カリウム水溶液を加え、アルカリ性とした。析出結晶を濾取し、水洗後、アセトニトリルで洗浄し、表記化合物(3g)を得た。
【0153】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = :2.81(2H, t, J = 6.0 Hz), 3.22(2H, t, J = 6.0 Hz), 4.03(2H, s), 7.16(1H, d, J = 3.8 Hz), 7.47(1H, d, J = 3.8 Hz), 8.65(1H, s)
【0154】
実施例1:6-(イソプロピルスルホニル)-N-1, 3-チアゾール-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミンの製造
【0155】
【化16】

【0156】
参考例3で得られた化合物(0.4g)のトルエン(10ml)懸濁液に窒素気流下、2−アミノチアゾール(0.218g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0.133g)、4, 5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9, 9-ジメチルキサンテン(0.084g)、カリウム tert-ブトキシド(0.245g)を加え、100℃で4時間過熱攪拌した。反応混合物を減圧濃縮後、残渣に水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル:50/50から0/100)で精製し、表記化合物(0.328g)を得た。
【0157】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.37(6H, d, J = 6.8 Hz), 2.98-3.05(2H, m), 3.25(1H, septlet, J = 6.8 Hz), 3.71(2H, t, J = 5.8 Hz), 4.42(2H, s), 7.00(1H, br), 7.44-7.51(1H, m), 8.75(1H, br)
【0158】
以下、実施例1と同様に反応、処理し、実施例2〜7の化合物を得た。
【0159】
実施例2:6-(イソプロピルスルホニル)-N-[1, 3]チアゾロ[5, 4-b]ピリジン-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0160】
【化17】

【0161】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz): δ (ppm) = 1.41(6H, d, J = 6.8 Hz), 2.93-3.12(2H, m), 3.26-3.39(1H, m), 3.73(2H, t, J = 5.8 Hz), 4.51(2H, s), 7.28-7.42(1H, m), 7.89-7.97(1H, m), 8.38-8.52(1H, m), 8.84(1H, br)
【0162】
実施例3:6-(イソプロピルスルホニル)-N-ピリジン-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0163】
【化18】

【0164】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz): δ (ppm) = 1.41(6H, d, J = 6.8 Hz), 2.98-3.03(2H, m), 3.31(1H, septlet, J = 6.8 Hz), 3.71(2H, t, J = 5.8 Hz), 4.46(2H, s), 6.99-7.06(2H, m), 7.72-7.77(1H, m), 8.27-8.31(1H, m), 8.46-8.51(1H, m), 8.70(1H, s)
【0165】
実施例4:6-(イソプロピルスルホニル)-N-(5-メトキシカルボニルピリジン-2-イル)-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0166】
【化19】

【0167】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz): δ (ppm) = 1.41(6H, d, J = 6.8 Hz), 3.03(2H, t, J = 5.8 Hz), 3.32(1H, septlet, J = 6.8 Hz), 3.72(2H, t, J = 5.8 Hz), 3.95(3H, s), 4.48(2H, s), 7.21(1H, br), 8.32(1H, dd, J = 4.2, 8.8 Hz), 8.62(1H, d, J = 8.8 Hz), 8.73(1H, s), 8.91(1H, d, J = 4.2 Hz)
【0168】
実施例5:6-(イソプロピルスルホニル)-N-ピラジン-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0169】
【化20】

【0170】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.41(6H, d, J = 6.8 Hz), 3.04(2H, d, J = 5.8 Hz), 3.32(1H, septlet, J = 6.8 Hz), 3.73(2H, t, J = 5.8 Hz), 4.47(2H, s), 6.91(1H, br), 8.25-8.27(1H, m), 8.32-8.34(1H, m), 8.73(1H, s), 9.84(1H, s)
【0171】
実施例6:6-(イソプロピルスルホニル)-N-ピリミジン-4-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0172】
【化21】

【0173】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz): δ (ppm) =1.42(6H, d, J = 6.8 Hz), 3.05(2H, t, J = 5.8 Hz), 3.32(1H, septlet, J = 6.8 Hz), 3.72(2H, t, J = 5.8 Hz), 4.48(2H, s), 7.21(1H, br), 8.53(1H, dd, J = 1.3, 5.9 Hz), 8.64(1H, d, J = 5.9 Hz), 8.76(1H, s), 8.86(1H, d, J = 1.3 Hz)
【0174】
実施例7:N-1, 3-ベンゾチアゾール-2-イル-6-(イソプロピルスルホニル)-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0175】
【化22】

【0176】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz): δ (ppm) =1.39(6H, d, J = 6.8 Hz), 2.98-3.06(2H, m), 3.22-3.34(1H, m), 3.72(2H, t, J = 5.8 Hz), 4.50(2H, s), 7.26-7.43(2H, m), 7.63(1H, br), 7.75(1H, br), 8.79(1H, br)
【0177】
実施例8:6-(イソプロピルスルホニル)-N-(5-カルボキシピリジン-2-イル)-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0178】
【化23】

【0179】
実施例4で得られた化合物(0.125g)のエタノール(4ml)溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液(1ml)を加え、80℃で過熱撹拌した。反応混合物を減圧濃縮後、残渣に水を加え、5%クエン酸水溶液で酸性とした。析出結晶を濾取し、水洗後、アセトニトリルで洗浄し、表記化合物(0.113g)を得た。
【0180】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ (ppm) = 1.28(6H, d, J = 6.8 Hz), 2.87(2H, t, J = 5.8 Hz), 3.51(1H, septlet, J = 6.8 Hz), 3.65(2H, t, J = 5.8 Hz), 4.52(2H, s), 8.22-8.27(2H, m), 8.64(1H,s), 8.82-8.85(1H, m), 9.67(1H, br)
【0181】
実施例9:6-(プロピルスルホニル)-N-1, 3-チアゾール-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0182】
【化24】

【0183】
参考例8で得られた化合物(0.06g)およびジイソプロピルエチルアミン(0.067ml)のテトラヒドロフラン(3ml)懸濁液に、プロピルスルホニルクロリド(0.054g)を氷冷攪拌下滴下し、氷冷下で1時間攪拌した後、室温で一晩攪拌した。反応混合液をクロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。 有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール:100/0から90/10)で精製し、表記化合物(0.025g)を得た。
【0184】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz): δ (ppm) = 1.08(3H, t, J = 7.5 Hz), 1.82-1.94(2H, m), 3.00-3.06(4H, m), 3.68(2H, t, J = 5.9 Hz), 4.39(2H, s), 6.93-7.02(1H, m), 7.42-7.48(1H, m), 8.74(1H, br)
【0185】
以下、実施例9と同様に反応、処理し、実施例10〜16の化合物を得た。
【0186】
実施例10:6-(シクロプロピルスルホニル)-N-1, 3-チアゾール-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0187】
【化25】

【0188】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 1.01-1.06(2H, m), 1.24-1.28(2H, m), 2.32-2.39(1H, m), 3.03-3.09(2H, m), 3.70(2H, t, J = 5.9 Hz), 4.42(2H, s), 6.98(1H, br), 7.43-7.48(1H, m), 8.75(1H, br)
【0189】
実施例11:6-(ブチルスルホニル)-N-1, 3-チアゾール-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0190】
【化26】

【0191】
MS-APCI:m/z:354([M+H]+)
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) =0.97(3H, t, J = 7.4 Hz), 1.43-1.52(2H, m), 1.78-1.86(2H, m), 3.00-3.06(4H, m), 3.68(2H, t, J = 5.9 Hz), 4.39(2H, s), 6.93-7.00(1H, m), 7.43-7.48(1H, m), 8.74(1H, br)
【0192】
実施例12:6-(イソブチルスルホニル)-N-1, 3-チアゾール-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0193】
【化27】

【0194】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) =1.14(6H, d, J = 6.8 Hz), 2.27-2.37(1H, m), 2.88(2H, d, J = 6.5 Hz), 3.01-3.07(2H, m), 3.65(2H, t, J = 5.8 Hz), 4.37(2H, s), 6.94-7.02(1H, m), 7.42-7.49(1H, m), 8.74(1H, br)
【0195】
実施例13:6-(ベンジルスルホニル)-N-1, 3-チアゾール-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0196】
【化28】

【0197】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 2.82-2.90(2H, m), 3.45-3.47(2H, m), 4.16(2H, br), 4.34(2H, s), 6.94-7.01(1H, m), 7.31-7.38(5H, m), 7.42-7.47(1H, m), 8.72(1H, br)
【0198】
実施例14:6-(ベンゼンスルホニル)-N-1, 3-チアゾール-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミン
【0199】
【化29】

【0200】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 3.03(2H, t, J = 5.9 Hz), 3.47(2H, t, J = 5.9 Hz), 4.14(2H, s), 6.97-7.04(1H, m), 7.44-7.47(1H, m), 7.51-7.65(3H, m), 7.77-7.82(2H, m), 8.72(1H, br)
【0201】
実施例15:6-[(2-フェニルビニル)スルホニル]-N-1, 3-チアゾール-2-イル-5, 6, 7, 8-テトラヒドロピリド[4, 3-d]ピリミジン-4-アミンの製造
【0202】
【化30】

【0203】
1H-NMR (CDCl3, 400MHz):δ (ppm) = 3.04-3.09(2H, m), 3.61-3.66(2H, m), 4.31(2H, s), 6.72(1H, d, J = 15.4 Hz), 6.97(1H, br), 7.39-7.53(6H, m), 7.59(1H, d, J = 15.4 Hz), 8.73(1H, br)
【0204】
薬理試験
GK活性化の測定
被検薬剤のGK活性化能の測定は、ホルマザン基質の4-[3-(4-Iodophenyl)-2-(2,4-dinitrophenyl)-2H-5-tetrazolio]-1,3-benzene disulfonate (WST-3) と発色試薬の phenazine methosulfate (PMS) を用いて、glucoseを基質としGKにより産生されるglucose-6-phosphateをglucose-6-phosphate dehydrogenaseにより脱水素する際にNADP(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)より転換されるNADPH量をその吸光度変化として測定した。
本アッセイで使用するrecombinant human liver GK (hGK) は、N末にHN-tagをつけて全長をE.coliに発現させ、キレートカラム(Ni-NTA)で精製したものを使用した。
【0205】
酵素反応は96穴の平底プレートを用い、30℃で測定を行った。反応混合液として、50 mM Tris-HCl pH7.4, 100 mM KCl, 5 mM MgCl2, 5 mM ATP, 0.5 mM NADP, 0.35 mM WST-3, 0.015 mM PMS, 0.1 mg/ml BSA, 0.2 U/ml glucose-6-phosphate dehydrogenase, 3 mM glucose (いずれも終濃度) を調製した。上記プレートに反応混合液80 mlを分取し、DMSOに溶解させた被検薬剤もしくはコントロールとしてDMSOの希釈液を10 ml (DMSOの終濃度は0.1%) 加えた。ついで酵素溶液としてhGK(終濃度 0.3 ug/ml) を10 ml加えて反応を開始させた。
【0206】
反応開始30分後に0.01% SDSを含むリン酸bufferで反応停止し、430 nmの波長で吸光度を測定した。化合物のGK活性化能は、hGKを添加しないときの吸光度をブランクとして差し引き、DMSOコントロールの活性値を100%として算出した。被検薬剤のGK活性化能の指標はGK活性化能(%)として下記の式から算出した。
【0207】
【数1】

【0208】
本発明化合物は前記薬理試験から、優れたGK活性化能を有する。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明のグルコキナーゼ活性化剤は、優れた活性を有し、糖尿病、肥満等の予防・治療剤等の医薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【化1】

[式中、Aは、−N(R)(CH−、−N(R)CO(CH−、または−N(R)SO(CH−であり(ここにおいて、mは0〜2の整数である。);
およびXは、各々独立して、同一または異なって、−CO−、−CS−、または−C(R)(R)−であり;
は、−C(R)(R)−であり;
は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいヘテロアリール基、または置換されてもよい飽和へテロ環基であり;
は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいアラルキル基、置換されてもよいヘテロアリール基、置換されてもよいヘテロアリールアルキル基、置換されてもよい飽和へテロ環基、または基:−N(R)(R)であり(ここにおいて、RおよびRは、一緒になって環を形成してもよい。);
は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、または置換されてもよいシクロアルキル基であり;
およびRは、各々独立して同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、または置換されてもよいアルキル基であり;
は、水素原子、または置換されてもよいアルキル基であり;
は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよい飽和へテロ環基、または置換されてもよいヘテロアリール基であり;
nは、1または2である。]
【請求項2】
が、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC3−10シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基、または置換されてもよい5員もしくは6員の飽和へテロ環基であり;
が、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC2−6アルケニル基、置換されてもよいC3−10シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、置換されてもよいC7−14アラルキル基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基、置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリールアルキル基、置換されてもよい5員もしくは6員の飽和へテロ環基、または基:−N(R)(R)であり(ここにおいて、RおよびRは、一緒になって環を形成してもよい。)であり;
が、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、または置換されてもよいC3−10シクロアルキル基であり;
およびRが、各々独立して同一または異なって水素原子、ハロゲン原子、または置換されてもよいC1―6アルキル基であり;
が、水素原子、または置換されてもよいC1―6アルキル基であり;
が、水素原子、置換されてもよいC1―6アルキル基、置換されてもよいC3−10シクロアルキル基、置換されてもよいC6−10アリール基、置換されてもよい5員もしくは6員の飽和へテロ環基、または置換されてもよい5員〜10員の単環式もしくは多環式ヘテロアリール基である項1に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【請求項3】
nが2である請求項1または請求項2に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【請求項4】
mが0である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。
【請求項5】
、XおよびXが、各々独立して、−C(R)(R)−であり;RおよびRが、水素原子である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の化合物、またはそれらの薬学上許容される塩。

【公開番号】特開2010−159210(P2010−159210A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117010(P2007−117010)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】