説明

繊維および繊維製品の防水、防油および防塵仕上げ材

仕上げ被覆層中に組込むための粒子複合材料は、0.01〜10μmの様々な粒径を有し、被覆塊を含む少なくとも1つの層により覆われている粒子を含む。前記粒子は、化学的に固定可能であり、仕上げ層のホストマトリックス中での機能と実質的に同じ機能を表面上に有する。前記粒子複合材料を作製する方法であって、防油および防塵効果の増大をもたらすハイパー構造が、小型および大型粒子の組合せにより生成される方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の繊維および繊維製品の仕上げのための粒子複合材料、その作製方法、および請求項11から25までに記載の前記粒子複合材料の使用方法に関する。
【0002】
繊維製品に対する防水、防油および防塵仕上げは、すでに長年にわたり作製されており、その際、効果水準に対する要求は、ナノテクノロジーおよびロータス効果(Lotus Effect、W.Barthlott et al.、Der Lotus−Effektn Selbstreinigende Oberflaechen nach dem Vorbild Natur[「自然のモデルに従う自浄性表面(Self−Cleaning Surfaces According to the Model of Nature)」]、ITB International Textile Bulletin、第1巻、2001年、8−12頁;E.Gaertner、Nano−Finish ersetzt herkoemmliche Impraegnierung[「ナノ仕上げが従来の含浸法に取って代わる(Nano−Finish Replaces Conventional Impregnation)」]、Chemische Rundschau[Chemical Review]、第8巻(2001年)、4月12日)の概念の導入と共に急激に増加してきた。W.Barthlottにより最初に報告されたロータス効果は、花および葉において、花および葉の表面に見出されるワックス結晶より生成される微小粗さのために起こる自浄効果に対応している。
【0003】
このように、化学的に固定できない疎水化薬品の重要性は、無意味な水準にまで低下し、化学的に固定できる化学薬品、特にフルオロカーボン樹脂の重要性は、著しく増大した。市場から要求される効果の高さのため、こうした要求を満たすのはフルオロカーボン樹脂のみである。このようなものとしては、高い降雨試験評点(Bundesmann、DIN53888に従う降雨試験)、高いオイル評点、および非常に良い防塵性能が含まれるが、すべてのそうした基準自体は、何度も行われる洗濯サイクルまたは化学的クリーニング操作の後に達成すべきである。市場で現在見出されるすべての疎水化剤においては、それらが例外なく水性乳化物として販売されていることが共通しており、この水性乳化物は、繊維製品材料に適用後には、多かれ少なかれ目立った疎水性または防塵性の増加を付与する。化学的クリーニング耐性および防油性能はフルオロカーボン樹脂によってのみ達成される。
【0004】
繊維製品に対する仕上げ薬品としてフルオロカーボン樹脂を使用するのは、現在では従来技術に属する。このようにして規格に関して達成される効果は、非フッ素化疎水化薬品に比べれば非常に良好であるが、最近要求される効果水準は、フルオロカーボン樹脂のみの使用では到達できない。ロータス効果の知識を用いて(H.G.Edelmann et al.、「苔ラコカルプス プルプラセンス(Rhacocarpus purpurascens)の細胞壁の超微細構造とその化学:植物に見られる謎の構造(Ultrastructure and Chemistry of the Cell Wall of the Moss Rhacocarpus purpurascens:A Puzzling Architecture Among Plants)」、Planta 第206巻(1998年)、315−321頁;W.Barthlott、「物体の自浄性表面とその製法(Self−Cleaning Surfaces of Objects and Process for Producing Same)」(国際公開第1996/004123号パンフレット)、不安定ではあるが効果水準の増加をもたらす発展が導入された。これらは、蓮の葉構造の表面をもたらすナノテクノロジー的に提案された解決法であり、何にもまして第一に防油および防塵能が相当に増加する(W.Barthlott、C.Neinhuis、「粗いもののみがそれ自体清浄である(Only That Which is Rough is Clean by Itself)」、Technical Review、第10巻(1999年)、56−57頁)。繊維製品産業にとってのこの「基幹技術」は、欧州特許第1,268,919号明細書に記載されている方法を表わしているが、その方法は、それにより蓮の葉構造が乾燥段階中に作られる、メチル化またはフッ素化されたナノ粒子の自己組織化に基づいて、繊維製品に適用される層を構築する。この方法で作られる疎水化層は、フルオロカーボン樹脂のみからなり、接触角が40〜60°の層に比較して、ヘプタンを用いて測定された接触角が70〜90°を示す。接触角の測定は、蓮の葉構造を特徴づけるために開発された測定方法に従って実行される:O.Marte、M.Hochstrasser、「蓮の葉構造を有する繊維および布地表面のキャラクタリゼーション(Characterization of Lotus−Structured Fiber and Fabric Surfaces)」、Melliand Textile Reports、第10巻、2005年、746−750頁。
【0005】
フルオロカーボン樹脂のみを適用した布地の欠点は、蓮の葉構造を有する層に比較して、防油、防塵能が低いということにある。
【0006】
いまや蓮の葉構造を有する仕上げの欠点は、メチル化および/またはフッ素化粒子を組込むために適当な分散剤をかなりの量で必要とするその処方(欧州特許第1,268,919号明細書)にあり、その分散剤は、機能層の効果水準を例外なく低下させる。他の欠点は、ナノ粒子の自己組織化(特定の凝集)または所望の蓮の葉構造に至るようにプロセスの制御条件を維持する―単に実行するだけでなく―ことにもある(O.Marte、U.Meyer、Neue Testverfahren zur Bewertung hydrophober und superhydrophober Ausrustungen[「疎水性および超疎水性仕上げを評価するための新しいテスト方法(New Test Processes for Evaulating Hydrophobic and Superhydrophobic Finishes)」]、Melliand Textilberichte[Melliand Textile Reports]、第10巻、2006年、732−735頁)。このことはまた、今日まで疎水性多機能層が産業上利用されていない理由でもある。帯電防止および殺細菌性機能は特に述べておく価値がある。
【0007】
変性したナノ粒子に対応するコストが高いことおよびそれらを加工するときに必要となる安全対策は、もう1つの非常に重要な欠点であり、そのために、処方中でのナノ粒子の比率を最小にしなければならなくなる。
【0008】
別の目的は、異なる機能を有する種々の粒子複合材料を使用可能とする処方上の手法を利用できるようにすることにある。例えば、疎水性と殺細菌性があげられ、共に同一の仕上げ層中に組み合わせ得る。
【0009】
本発明の目的は、ナノテクノロジー的に提案されている解決法に比べて、少なくとも優れているかまたはより良い効果をもたらす、特に、疎水化および疎油化のための、並びに防塵性能のための、非ナノテクノロジー的な、蓮の葉構造の仕上げ層を示し、作製することである。
【0010】
本発明の別の目的は、繊維精練業者が微粒子複合材料を使用可能にすることであり、それにより、加工業者が、自ら自由に設計して、疎水化剤、特には、フルオロカーボン樹脂を、粒子複合材料と組み合わせること、並びに規格に対して、布地に対して処方を適用し、乾燥し、固定することができるようにすることである。乾燥および固定の条件に対しては、反応系によりあらかじめ設定される条件を、単独で例外なく維持することが提示される。この点は、ナノテクノロジー的原理に従って操作され、蓮の葉構造を生成するには特別の処方や工程条件を必要とする既存の方法と区別される。
【0011】
目的に対する解決は、類似(形と化学組成において)でも、および非類似(形と化学組成において)でもある、主として疎水的になるように含浸されたおよび/または被覆された微粒子と、必要ならば、粒径が様々のナノ粒子(0.01〜10μm)とを含む、粒子複合材料を作製することにより達成される。含浸されたおよび/または被覆された微粒子と、必要ならば、粒径が様々のナノ粒子とのこの組合せは、防油および防塵効果の改善に導くハイパー構造を与える。様々な粒径は、例えば、別々に制御される粉砕工程により生成され、一般に、粒子複合材料において、二峰性または多峰性粒径分布に至る混合となる。結果的に、繊維製品の表面に同様の構造の表現型を設計するための基礎があらかじめ確立される。別々に制御される分散工程および/または粉砕工程により、10の2乗にも及ぶ程度に区別されるような粒径が得られる。さらに、特定の様式に集合したのではなく、被覆された微粒子の存在により耐摩耗性の改善がなされ、その結果として、反発効果(拒絶効果)の洗濯耐性も向上する。
【0012】
「非ナノテクノロジー的」に作られた仕上げ層という用語は、それゆえ重要である。なぜなら、この層または層の構築に用いられた粒子複合材料は、トップダウン技術でありボトムアップの技術ではないからである(Der Brockhaus Naturwissenschaft und Technik[The Brockhaus Science and Technology]、第2巻、1376−1377頁、Spektrum Akademischer Verlag GmbH Heidelberg(2003年))。以下において、「疎水化剤(hydrophobizing agent)」という用語は、疎油化および防塵化薬品を表わす。
【0013】
本発明に従って提案される第2の解決法は、粒子の含浸、粒子の被覆、または粒子の被覆技法に存在する。含浸および/または被覆材料として反応性ポリマーを用いることにより、仕上げ層のホストマトリックス(例えば、1種で同じフルオロカーボン樹脂)に見られるのと同じ物理的化学的な特性を粒子表面に与えることが可能である。結果的に、仕上げ液中だけでなく繊維製品基体中においても相分離が予定よりも早く発生するのが回避される。この相分離が層に異方性が作られる理由であり、そのことは結果として効果の大きな喪失をもたらす(O.Marte、U.Meyer、Neue Testverfahren zur Bewertung hydrophober und superhydrophober Ausruestungen、Melliant Textilberichte、第10巻、2006年、732−735頁)。そのような粒子被膜は、好ましくは、異なる機能を有する異なるポリマーのいくつかの重なった層からなる。層の構築は、粒子孔を満たす層が内部の粒子表面に対して最大親和性を有し、粒子を被覆する最上層がホストマトリックスと最も類似する特性を示すように選び得る。最上層は、ホストマトリックスも仕上げ層中で示す疎水化ポリマーにより一般に生成される。含浸または被覆材料中に配置されるすべてのポリマーは、反応性の基を有し、仕上げ工程の過程で洗濯耐性を示すように架橋される化合物である。
【0014】
微粒子または仕上げ層の表面にハイパー構造を作製するために提案される別の解決法は、相変化および/または熱分解に続いてガス状生成物を生成する物質を保持することである:例えば、100℃より高い温度で沸騰する、主として非極性で非プロトン性の溶媒を、粒子被覆に使用することであり、これらは乾燥中に微粒子から放出される間にナノスケール構造を後に残す。窒素、二酸化炭素またはアンモニア(例えば、ラジカル発生剤、重炭酸塩、またはアンモニウム塩)放出性化合物の使用により、同様の作用が達成され、それらは溶媒の代わりに用いられる。
【0015】
本発明で提案される別の解決法は、化学的に未変性の経済的なポリケイ酸(1〜50μm)から自由に出発してこの乳化剤を被覆することである。このようにして、このポリケイ酸は、一方で、繊維製品仕上げ業者により容易に加工され得るし、他方で、疎水性のホストマトリックスと化学的に架橋され得る。この点に関しては、フルオロカーボン樹脂中に含まれているどのような界面活性剤も考慮されてはいない。
【0016】
本発明の特別な特徴は、これらの効果の改善のための本質的因子として、乳化剤を含まない粒子複合材料を作製することである。両親媒性物質として、分散剤および乳化剤が、疎水性になるべく生成されるはずの境界層中にとどまり、それにより、仕上げ概念からは外れて、原則的に反発されるはずの物質を、繊維製品材料中に吸着または移動させる。乳化剤を含まない処方の別の利点は、LAD効果(「洗濯/空気乾燥(laundry/air dry)」、M.Rasch,et al.、Melliand Textilberichte、第6巻、2005年、456−459頁)が低いことであり、それは、疎水化層による吸水の結果である。仕上げ層中に両親媒性物質が存在することにより、水が、その両極性および水素ブリッジの生成により物理的/化学的に結合される。結果として、再び水を除き、それより疎水化効果を再生するには、温度を上げることが必要となる。
【0017】
本発明に従えば、現在では公知の、単純な蓮の葉構造(ハイパー構造の作製、W.Barthlott et al.、Der Lotus Effekt:Selbstreinigende Oberflaechen nach dem Vorbild Natur、ITB International Textile Bulletin、第1巻、2001年、8〜12頁)に対して、表現型により似た構造が提供され、それにより、達成し得る公知の蓮の葉構造の被膜に比較して、防油および防塵性に関する効果の更なる増加が達成される。
【0018】
粒子複合材料の作製は、共に、一段および多段の被覆工程として実行し得る。
【0019】
一段の被覆工程は、主として水性相からのポリマーまたは複数のポリマーの吸着を含む。この場合、ポリマーは、洗濯耐性を高めるために、粒子表面と化学結合を生成すべきである。このことの効果は、同じ加工ステップにおいて、粒子が、末端に水酸基またはアミノ基を有するシリル化合物で変性されることである。例えば、イソシアネートまたはα−アミノアルキル化製品のような架橋性の薬品を加え得るが、それは用いるポリマーの反応可能性に基づいている。
【0020】
二段の被覆工程の範囲内で、粒子は、アミノ基および/または水酸基を含み、好ましくは分岐の、水不溶性のポリマーの可溶化された形での溶液を用いて、第1のステップで、粒子表面上に含浸される。ポリマーは、一般には、極性でプロトン性の溶媒および/または非極性で非プロトン性の溶媒に溶解する。この被覆液には、例えば、特殊な溶媒および/またはN、COまたはNH放出性物質のような、ハイパー構造を生成する可能性のある成分をすべて含み得る。さらに、架橋系がこのポリマー溶液に加えられる。80℃を超える温度でのみ、これは、ポリマーの架橋、またはホストマトリックスを生成する疎水化剤と粒子表面の中または表面の上に吸着されたポリマーとの架橋をもたらす。
【0021】
第2のステップは、第2の被覆層を作製するのに用いられる。それは、水性乳化物から疎水化剤、好ましくはフルオロカーボン樹脂の吸着を含む。本発明に従えば、ハイパー構造を生成する任意の成分をここに加えることができる。
【0022】
3段階の被覆工程には、第1の段階で、末端にアミノ基および/または水酸基またはグリシジル基を有するシリル化合物による粒子の化学的変性ステップを含み、それらは、後で行われる第2の被覆層との架橋に用いられる。第2および第3の被覆層は、前述したのと同様の設計を行う。
【0023】
第1の被覆層の成分で粒子を湿らせることは凝集体の撹拌により有利に行うことができ、一方、追加のステップは、凝集体の粉砕工程で行われる。粒子を湿らせた(一段または多段)後に実行される粉砕操作において、微粒子が、最初の1〜50μmの粒径から所望の粒径へと縮小される。これは、0.01〜2μm、好ましくは0.3〜0.9μmの範囲であり、それにより、好ましくは二峰性粒径分布が、例えば、0.4および0.8μmに設定される。このようにして作製される粒子複合材料は、粒子の濃度が、5〜20%、好ましくは10〜12%であり、粒子被覆層のためおよび粘度が高いために沈降する傾向は全く見られない。このことは分散剤が存在しないにもかかわらず真実であり、したがって、そうでなければ疎水化効果を妨害する通常見られる影響を避けることができる。
【0024】
粒子複合材料の作製に用いる粒子は、好ましくは高分子ケイ酸であり、特別な加工ステップにおいて、例えば、順に行われる粉砕工程により、所望の粒径に縮小する。この場合、粉砕された生成物は、多峰性粒径分布を有し得る。高分子ケイ酸に加えて、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムまたは酸化物混合物などの金属酸化物も用いられる。殺細菌能または殺真菌能を達成するために、例えば、二酸化ケイ素粒子には、単体の銀または銅および/またはそれらの酸化物を付着させ得るし、または錯体形態で対応する金属イオンを含み得る。
【0025】
多峰性粒径分布を達成する別の可能性は、例えば、火炎法(クロロシランの高温加水分解)に従って作製される一次粒径が10〜30nmのナノ粒子を混合することである。これは、トップダウン法で、例えば、粉砕工程の手段により、500〜700nmの粒径に調節された粒子と組み合わせる。
【0026】
粒子の変性のためには、アミノ基、水酸基、チオール基またはグリシジル基を有するシリル化合物が用いられる。好ましく用いられる化合物としては、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン、ポリエーテルプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、および3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシランである。上記のシリル化合物の使用量は、粒子材料に対して、0.2〜10%、好ましくは0.8〜5%である。
【0027】
水酸基またはアミノ基を含むポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸誘導体、ポリエステルおよびポリウレタンが用いられ、その水への溶解度は、10%未満、好ましくは1%未満である。そのような製品は、今日まで繊維製品産業では用いられてこなかった。選択されたポリマーに対する使用量は、粒子材料に対して、1〜40%、好ましくは10〜30%である。
【0028】
疎水化薬品は、共に、C〜C24、好ましくはC16〜C20の脂肪族炭化水素鎖を有する脂肪変性のメラミン誘導体、ポリアクリル酸およびポリウレタン、並びにC〜C12、好ましくはC〜Cのパーフルオロ脂肪族炭化水素鎖を有するパーフルオロ脂肪族炭化水素樹脂、並びにシリコン樹脂である。粒子の周囲に被覆層を生成するためのこうした製品乳化物の使用量は、その乾燥物質含量に依存するが、10〜30%の範囲である。乾燥物質に対してそのような製品の使用量は、粒子材料に対して10〜100%、好ましくは20〜50%である。
【0029】
この目的に適した代表的な市販品は、Softgard M3(ソフトケミカルズ社、イタリア)、Oleophobol 7752(ハンツマン社、ドイツ)、Ruco−Gard AIRおよびRuco−Dry DHY(ルドルフ ヘミー社、ドイツ)である。
【0030】
化学的固定のための架橋剤としては、粒子被覆のために用いられるポリマー、主としてポリイソシアネートおよびα−アミノアルキル化製品が用いられる。カルボキシ基を有するポリマーの被覆の場合は、多官能のアジリジンが架橋剤として用いられる。
【0031】
イソシアネートの中では、使用されるのは主として多官能のイソシアネート(R−(N=C=O);n=2〜4)である。代表的架橋剤の例としては、1,6−ジイソシアネートヘキサン(バイエルマテリアルサイエンス社、ドイツ)、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(ヒルズ社、ドイツ)、または2,4−ジイソシアネートトルエンのウレトジオン(バイエルマテリアルサイエンス社、ドイツ)である。
【0032】
α−アミノアルキル化製品の使用は、現在では、主としてエチレン尿素およびメラミン誘導体に集中しており、その両者とも、メチロールとしておよびエーテル化された製品として市販されている。Knittex FELおよびLyofix CHN(ハンツマン社、ドイツ)がその例である。
【0033】
アジリジンは、脂肪族および芳香族に分けられるが、両者とも使用される。脂肪族プロピレンイミン誘導体の代表的なものは、1,1’−アゼラオイル−ビス(2−メチルアジリジン)およびN,N’,N’’,N’’’−テトラプロピレン−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸アミドである。芳香族プロピレンイミン誘導体の代表的なものは、トルエン−2,6−ジプロピレン尿素(TPH)またはジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジプロピレン尿素である。
【0034】
このようにして作製された粒子複合材料、または反発性を有する複合材料は、繊維精練業者の工場で、そこで用いられるホスト複合材料(例えば、そのほかの成分を含むフルオロカーボン樹脂)中へ分散され、その形で布地へ適用される。詳細に提示されている反応および工程の条件は、用いられる疎水化剤および架橋系により特定される。
【0035】
複合材料作製のタイプにより、およびこの目的のために使用される成分のために、粒子複合材料は、非常に多種のホストマトリックスと組み合わせることができ、それにより、反発機能と共に、付加的な機能、いわゆる「固有の機能層」がもたらされる。これらは、例えば、軍用および警察用の防護衣類に要求されるような、疎水化効果を少し減少させた非常に高度の防油能である。親水性が強いホストマトリックスと組み合わせての粒子複合材料の使用は、別の組合せを表わし、それによりそのような処方は汚れ除去仕上げに用いられる。同様な組合せは、帯電防止、殺細菌効果、耐摩耗性および防燃性仕上げのために処方でき、それにより、塵を反発する疎水性境界層が繊維製品材料上に常に生成される。
【0036】
乳化剤を含まない処方と、および粒子複合材料に多峰性粒径分布をもたらし、上述したハイパー構造を生成する種々の粒子集団の使用とに起因する、降雨試験評点5(Bundesmannテストによる)およびヘプタンとの接触角100°超が、フルオロカーボン樹脂を含む仕上げ層において得られる。このことは驚くべきことである、なぜなら、現在では公知の蓮の葉構造を有する仕上げでは、ヘプタンとの接触角が70〜90°であるからである。フルオロカーボン樹脂を含まない仕上げ層においては、100°を超える水との接触角が達成される。
【0037】
(例1)アウトドア領域用のポリエステル布地の疎水化
1平方メートルの重さ190gのポリエステル布地を、100%水酸化ナトリウム溶液、30g/lを用いて部分鹸化(鹸化度約0.1%)工程により親水化する。このようにして前処理した布地に、54%液体層が得られるように、疎水化液を含浸させる。
【0038】
液体層に関しては、布地の乾燥を110〜120℃で行い、続いて縮合加工を2分毎に150〜160℃で行う。疎水化液の成分は次の通り。
【0039】
一段階で作製される粒子複合材料の処方
100g/kg Sident 10(デグサ社、ドイツ)
15g/kg Desmophen 800(バイエルマテリアルサイエンス社、ドイツ)
70g/kg イソプロパノール
20g/kg Tubicoat Fixierer H24(ベゼマ社、スイス)
強く混合し、その後、
110g/kg Softgard M3(ソフトケミカル社、イタリア)
685g/kg 水
を加えたのち、ボールミル中で凝集体を30分粉砕する。
【0040】
粒子処方は、平均粒径分布が870nmの単峰性を示す。
【0041】
疎水化液
60g/l 一段被覆工程で作製された粒子複合材料
18g/l Lyofix CHN(ERBA社、スイス)
33g/l Softgard M3(ソフトケミカル社、イタリア)
7g/l 塩化マグネシウム六水塩
10g/l イソプロパノール
1g/l 酢酸
871g/l 水
【0042】
この仕上げ加工により達成された疎水化および防塵性を特徴づける測定値を表1にまとめてある。
表1 撥水および防塵仕上げの試験値
【表1】


(1)スプレー試験;AATCC規格 22−1996
(2)Bundesmann DIN規格 53888
(3)接触角、O.Marte et al.、Charakterisierung von“Lotus”−strukturierten Faserund Gewebeoberflachen[「蓮の葉構造の繊維および布地の表面のキャラクタリゼーション(Characterization of “Lotus”−Structured Fiber and Fabric Surfaces)」]
【0043】
(例2)軍用防護服用のポリエステル−綿布地の疎水化
片面がプリントされており、メンブランフィルムと接着されている、1平方メートルの重さ180gのポリマー綿布地(ラミネート)を、被覆加工の手段で疎水化する。被覆量は布地の乾燥重量に対し43%である。
【0044】
被覆後、布地の乾燥を110〜130℃で行い、続いて固定工程を150〜160℃で2分間、行う。
【0045】
「2層」工程に従って、または二段階被覆工程で作製された粒子複合材料処方:
1) 100g/kg Sipernat D10(デグサ社、ドイツ)
10g/kg Aerosil R972(デグサ社、ドイツ)
380g/kg イソプロパノール
24g/kg Desmophen NH 1521(バイエルマテリアルサイエンス社、ドイツ)
20g/kg Tubicoat Fixierer H24(ベゼマ社、スイス)
強く混合し、30分間粉砕。
2) (凝集体粉砕下で)以下を続いて添加
150g/kg Oleophobol 7752(ERBA社、スイス)
336g/kg 水
20分間粉砕する。
【0046】
粒子処方は、平均粒径が470および820nmの二峰性粒径分布を示す。
【0047】
疎水化液
80g/l 二段階被覆工程で作製された粒子複合材料
65g/l Oleophobol 7752(ERBA社、スイス)
20g/l Lyofix CHN(ERBA社、スイス)
5g/l 塩化マグネシウム六水塩
1.5g/l クエン酸
10g/l イソプロパノール
1g/l 酢酸
817.5g/l 水
【0048】
このようにして被覆された布地は、表2の値を有するように、優れた防水、防油性を示す。
表2 疎水性におよび疎油性になるように被覆された布地のテスト結果
【表2】


(1)スプレー試験;AATCC規格 22−1996
(2)Bundesmann DIN規格 53888
(3)接触角、O.Marte et al.、Charakterisierung von“Lotus”−strukturierten Faserund Gewebeoberflachen
【0049】
(例3) 綿布地の疎水性および殺細菌性仕上げ
1平方メートルの重さ130gの綿のニット布地に、布地の表面を疎水化する粒子複合材料と殺細菌性複合材料とを共に含む、含浸液を適用する。粒子を取り囲む層の構築は、二段の被覆加工(実施例2参照)により実行する。疎水化複合材料の場合には、これらは、架橋可能なポリマー(ポリウレタン、Dicrylan PGS、ERBA社、スイス)および脂肪変性のメラミン樹脂(C16〜C18、Phobotex FTC、ERBA社、スイス)で被覆されている純粋な二酸化ケイ素粒子であり、一方、殺細菌機能のための銀(単体または錯体結合した銀)を付着した二酸化ケイ素粒子を、層を構築するように同様な方法で被覆する。被覆された一次粒子複合材料を、異なる粉砕条件に付する。結果として、多峰性粒径分布となる。一次粒子の平均粒径は、7μm(粉砕工程にかける前の純粋な二酸化ケイ素粒子)および20μm(銀を付着した二酸化ケイ素粒子)である。連続的に運転しているボールミルにおいて粒子複合材料の通過速度が異なることにより、5および8分の滞留時間が達成され、このことと二つの異なる径(1mmおよび0.6mm)の粉砕ボールを組み合わせることにより、0.6〜2μmの間の粒径分布がもたらされる。
【0050】
疎水化液
80g/l 最初の二段被覆工程で作製された二酸化ケイ素粒子複合材料
75g/l Phobotex FTC(ERBA社、スイス)
20g/l 第2の二段階被覆工程で作製された銀/二酸化ケイ素粒子複合材料
15g/l Knittex FEL(ERBA社、スイス)
8g/l 塩化マグネシウム六水塩
2g/l 酒石酸
10g/l イソプロパノール
790g/l 水
【0051】
布地の含浸は、布地の乾燥重量に対して76%の液体濃度で行った。乾燥と縮合工程はテンター枠で、120〜160℃で実行した。
【0052】
表3 疎水化された殺細菌性の布地の試験結果
【表3】


(1)スプレー試験;AATCC規格 22−1996
(2)Bundesmann DIN規格 53888
(3)接触角、O.Marte et al.、Charakterisierung von“Lotus”−strukturierten Faserund Gewebeoberflachen
(4)日本工業規格 JIS 1902(肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、DSM789株)
【0053】
作製するのに経済的であり、優れた仕上げ効果を示す蓮の葉構造の仕上げ層が、非ナノテクノロジーに基づいて作製されることが本発明の本質である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上げ層の中へ組込むための粒子複合材料であって、前記粒子複合材料は、0.01〜10μmの異なる粒径を有する粒子を含むこと、前記粒子は、被覆材料を含有する少なくとも1つの層で囲まれていること、および前記粒子は、化学的に固定可能であり、表面上に存在するときに仕上げ層のホストマトリックス中に存在するときと実質的に同一の機能を有することを特徴とする、粒子複合材料。
【請求項2】
粒子が、高分子ケイ酸である、請求項1に記載の粒子複合材料。
【請求項3】
粒子が、単体の金属、好ましくは銀および銅、金属酸化物、およびそれらの混合物、好ましくはAlまたは酸化ジルコニウムおよび混合酸化物である、請求項1に記載の粒子複合材料。
【請求項4】
被覆材料が、その反応性基が洗濯耐性を有するように架橋できる反応性ポリマーである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の粒子複合材料。
【請求項5】
被覆材料が、粒子表面変性のためのシリル化合物を含み、好ましくは、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン、ポリエーテルプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランまたは3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の粒子複合材料。
【請求項6】
被覆材料が、埋め込まれた溶媒またはN、COおよびNH放出性の成分を有しており、被覆材料が乾燥の間にナノスケールの構造を形成する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の粒子複合材料。
【請求項7】
被覆材料が、高分子架橋性の化合物を含有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の粒子複合材料。
【請求項8】
粒子複合材料が、単峰性または多峰性粒径分布を有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の粒子複合材料。
【請求項9】
ハイパー構造が、多峰性粒径分布の存在下で表面に存在する、請求項8に記載の粒子複合材料。
【請求項10】
界面活性剤を含まない、請求項1から9までのいずれか一項に記載の粒子複合材料。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の粒子複合材料の作製方法であって、粒子および粒子変性成分が、同時に加えられて混合され、連続して行われる湿式粉砕工程により縮小され、それにより、ハイパー構造が、小型および大型粒子の組合せにより形成され、防油および防塵効果の増加をもたらす方法。
【請求項12】
ポリマー、好ましくは分岐の水不溶性ポリマーが、粒子変性成分として用いられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
架橋系が、粒子変性成分として加えられ、80℃を超える温度においてのみポリマー架橋を起こす、請求項11または12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
アミノ基および/もしくは水酸基含有溶解型ポリマーまたはシリル化合物が、粒子変性成分として加えられる、請求項11から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
疎水性のポリマー、好ましくはフルオロカーボン樹脂が、粒子変性成分として加えられる、請求項11から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
溶媒および/またはN、COもしくはNH放出性の成分が、ハイパー構造を形成する成分として用いられる、請求項11から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
粒子複合材料乳化剤の生成が、自由に行われる、請求項11から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ハイパー構造が、多峰性粒径分布の存在下で仕上げ層中に形成される、請求項11から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ハイパー構造が、仕上げ層中に、該仕上げ層の乾燥中に形成されるガス状生成物により形成される、請求項11から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
粒子複合材料が種々のホストマトリックスと組み合わされ、それにより反発能に加えて追加の機能、いわゆる「固有機能の層」が生成される、請求項11から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
反応性ポリマーを有する粒子が含浸されるかまたは被覆され、該含浸または被覆は一段または多段で行われる、請求項11から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
粒子複合材料の生成が、所望の粒径にまで縮小される粒子により、非ナノテクノロジー的に、トップダウンプロセスに従って行われる、請求項11から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
粒子複合材料が、ホスト複合材料中に分散され、この形で繊維および繊維製品に適用され、それにより疎水性で防塵性の界面層が繊維材料上に常に形成される、請求項1から22までのいずれか一項に記載の粒子複合材料の使用を伴う方法。
【請求項24】
粒子複合材料が、非常に多種のホストマトリックスと組み合わされ、それにより反発能に加えて追加の機能、いわゆる「層に固有の機能」が生成される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
フルオロカーボン樹脂を含む仕上げ層において、100°より大きいへプタンとの接触角が達成されるか、またはフルオロカーボン樹脂を含まない仕上げ層において、100°より大きい水との接触角が達成される、請求項23または24に記載の方法。

【公表番号】特表2010−525178(P2010−525178A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503329(P2010−503329)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000165
【国際公開番号】WO2008/124960
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509287957)ハイクー マテリアルズ アーゲー (1)
【Fターム(参考)】