説明

繊維及びプロバイオティクスを含む栄養組成物

安定量のプロバイオティクスを有する繊維ブレンドを含む栄養組成物、及びこの栄養組成物の調製方法が提供される。一般的な実施形態において、本開示は、繊維微粒子凝集体及びプロバイオティクスを有する繊維ブレンドを含む栄養組成物を提供する。繊維ブレンドは、水分活性を約0.15未満とすることができる。栄養組成物は、医薬製剤、栄養製剤、栄養補助食品、機能性食品及び飲料製品などの投与可能な形態をとることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景】
【0001】
[0001]本開示は、一般に健康及び栄養に関する。より具体的には、本開示は、安定量のプロバイオティクスを有する繊維ブレンドを含む栄養組成物、及び該繊維ブレンドの調製方法に関する。
【0002】
[0002]プロバイオティクス微生物(以下「プロバイオティクス」)は、宿主の腸内微生物バランスを改善することによって宿主に利益をもたらす微生物である。一般に、こうした微生物は、腸管における病原性細菌の増殖及び/又は代謝を抑制するか、それに影響を及ぼすと考えられている。プロバイオティクスはまた、宿主の免疫機能を活性化し得る。このような理由により、プロバイオティクスを食品中に含ませる多くの様々な試みがなされてきた。
【0003】
[0003]しかしながら、プロバイオティクスの食品中への導入には多くの困難が伴う。困難の1つは、食品中に1日当たり十分な数のコロニー形成単位(「cfu」)の生存微生物を保持することである。食品中の生存プロバイオティクスの濃度が特定の閾値を超えなければ、プロバイオティクスの有益な効果は得られない。別の懸念は、胃腸の中でのプロバイオティクスの生存性である。プロバイオティクスが腸におけるコロニー形成を行うには、胃の中の酸性環境及び胆汁酸に対して十分な耐性がなければならない。さらに、プロバイオティクスを含む食品は、消費者にとって美味でなければならない。
【概要】
【0004】
[0004]安定量のプロバイオティクスを有する繊維ブレンドを含む栄養組成物、及び該繊維ブレンドの調製方法が提供される。一般的な実施形態において、本開示は、繊維微粒子凝集体と少なくとも1種のプロバイオティクスとの混合物を有する繊維ブレンドを含む栄養組成物が提供される。繊維ブレンドは、約0.2未満の水分活性(「Aw」)を有する。別の実施形態において、Awは約0.15未満である。さらなる実施形態において、Awは0.08〜0.2である。
【0005】
[0005]繊維微粒子凝集体は、約1.2mm〜約5mmの平均直径を有することができる。本開示の実施形態において、繊維ブレンドは、プロバイオティックな利益を供与するプロバイオティクスと同じパッケージ中での繊維の供給を可能にする。
【0006】
[0006]一実施形態において、繊維微粒子凝集体は、フラクトオリゴ糖、イヌリン、ガラクトオリゴ糖、部分加水分解グアーガム、ガラクトマンナン、アカシアゴム、ペクチン、アラビノガラクタン、β−グルカン、キサンタンガム又はこれらの組合せなどの繊維を含む。別の実施形態において、プロバイオティクスは、アエロコッカス属(Aerococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、バチルス属(Bacillus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、カンジダ属(Candida)、クロストリジウム属(Clostridium)、デバロマイセス属(Debaromyces)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、メリソコッカス属(Melissococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ムコール属(Mucor)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ペジオコッカス属(Pediococcus)、ペニシリウム属(Penicillium)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、ピチア属(Pichia)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、シュードカテヌラツム属(Pseudocatenulatum)、リゾプス属(Rhizopus)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トルロプシス属(Torulopsis)、ワイセラ属(Weissella)又はこれらの組合せなどに由来する。一実施形態において、繊維ブレンドは、発酵工程中にプロバイオティクスにより産生される代謝物質をさらに含む。
【0007】
[0007]栄養組成物は、医薬製剤、栄養製剤、栄養補助食品、機能性食品及び飲料製品などの投与可能な形態をとることができる。栄養組成物は、ビタミン、ミネラル、タンパク質、生理活性物質又はこれらの組合せなどの少なくとも1種の成分をさらに含むことができる。
【0008】
[0008]別の実施形態において、本開示は栄養組成物の調製方法を提供する。該方法は、繊維を用意するステップと、繊維を凝集させて水分活性0.15未満の繊維微粒子凝集体を得るステップと、プロバイオティクスを繊維微粒子凝集体と混合して繊維ブレンドを得るステップと、を含む。一実施形態において、繊維は、繊維微粒子凝集体と混合される前に粉末状繊維と予混合される。
【0009】
[0009]一実施形態において、上記方法は、窒素雰囲気下で繊維ブレンドを保存するステップをさらに含むことができる。繊維ブレンドは、医薬又は栄養製剤(例えば栄養補給剤)、栄養補助食品、機能性食品及び飲料製品中に容易に組み入れることができる。
【0010】
[0010]本開示の優位性は、プロバイオティクスを有する改良された繊維ブレンドを提供することにある。
【0011】
[0011]本開示の別の優位性は、安定量のプロバイオティクスを有する繊維ブレンドの調製方法を提供することにある。
【0012】
[0012]本開示のさらなる優位性は、繊維及び保存期間が延長されたプロバイオティクスを含む単一製品を提供することにある。
【0013】
[0013]本開示のさらなる優位性は、12か月以上生存可能なプロバイオティクスを有する繊維ブレンドを提供することにある。
【0014】
[0014]さらなる特徴及び優位性も本明細書に記載されており、以下の詳細な説明及び図面から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】繊維微粒子凝集体及びプロバイオティクスを含む繊維ブレンドを調製する方法の一実施形態の概略フローチャートである。
【図2】30℃でのプロバイオティクスの1回供与量当たりのコロニー形成単位を、2種の繊維ブレンドについて経時的に示したグラフである。
【詳細な説明】
【0016】
[0017]安定量のプロバイオティクスを有する繊維ブレンドを含む栄養組成物、及び該繊維ブレンドの調製方法が提供される。繊維ブレンドは、栄養組成物の一部であってもよく、それ自体が栄養組成物であってもよい。一般的な実施形態において、繊維ブレンドは、少なくとも1種の繊維及び少なくとも1種のプロバイオティクスを含む。この繊維ブレンドは、低減された水分活性を有することができる。本開示の実施形態において、繊維ブレンドは、長期間にわたり生存し続けるプロバイオティクスを有する一体化繊維ブレンドを供給することによって消費者の利便性を向上させる。
【0017】
[0018]本明細書において、「栄養組成物」という語は、完全栄養組成物、部分的又は不完全栄養組成物、及び疾患又は状態特異的な栄養組成物を包含する(これらに限定されない)。完全栄養組成物(すなわち主要及び微量の必須栄養素のすべてを含有するもの)は、患者の唯一の栄養源として使用できる。患者は、こうした完全栄養組成物から栄養所要量の100%を摂ることができる。部分的又は不完全栄養組成物は主要及び微量の必須栄養素のすべては含有せず、患者の唯一の栄養源としては使用できない。部分的又は不完全栄養組成物は栄養補助食品として使用できる。疾患又は状態特異的な栄養組成物は栄養素又は医薬を送達する組成物であって、完全又は部分的栄養組成物となり得る。
【0018】
[0019]一実施形態において、本開示は、繊維微粒子凝集体及び少なくとも1種のプロバイオティクスを有する繊維ブレンドを含む栄養組成物を提供する。繊維ブレンドは、約0.1重量%〜約2.0重量%の濃度でプロバイオティクスを含有でき、繊維ブレンドの残部は繊維微粒子凝集体である。別の実施形態において、繊維ブレンドは、粉末状繊維(例えば平均粒径約0.1mm未満)を、繊維微粒子凝集体との組合せで含むことができる。
【0019】
[0020]好ましい一実施形態において、繊維ブレンドは、約0.4重量%のプロバイオティクス及び約99.6重量%の繊維微粒子凝集体を含む。繊維ブレンド又は栄養組成物はまた、1回供与量当たり約1×10cfu〜約1×1011cfu(例えば、1回供与量当たり又は他の所定の食品若しくは投与単位当たり約1×10cfu及び1×1010cfu)のプロバイオティクスを含むことができる。
【0020】
[0021]一実施形態において、繊維微粒子凝集体は平均直径が約1.2mm超である。別の実施形態において、繊維微粒子凝集体の平均直径は約1.2mm〜約5mmである。
【0021】
[0022]一実施形態において、繊維ブレンドは、約0.15未満の水分活性を有する。繊維微粒子凝集体は、約0.15未満の任意の適当な水分活性、例えば約0.14未満、約0.13未満、約0.12未満、約0.10未満、約0.09未満、約0.08未満、約0.07未満、約0.06未満の水分活性を有し得る。
【0022】
[0023]本開示の実施形態において、繊維は、任意の適当なプレバイオティクスを含むことができる。使用可能な繊維としては、乾燥・凝集させるために繊維を溶解することが可能な低粘度の水溶性繊維が挙げられる(これに限定されない)。そのような繊維としては、フラクトオリゴ糖、イヌリン、ガラクトオリゴ糖、部分加水分解グアーガム、ガラクトマンナン、アカシアゴム、ペクチン、アラビノガラクタン、β−グルカン、及びより長鎖の水溶性繊維(例えばキサンタンガム)の加水分解物が挙げられる(これらに限定されない)。2種以上の繊維を任意の適当な比率で組み合わせてもよい。
【0023】
[0024]繊維は、便秘及び下痢の双方を抑制する手段として便通の利益をもたらすことができる。この便通改善は、プロバイオティクスの有効性を改善することができる。プロバイオティクスは次の利益をもたらすことができる。胃腸(「GI」)の健康改善、他の細菌のGI内層への付着阻止及び胃腸管中でラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)の菌体により産生されるロイテリン(reuterin)の存在による感染症の抑制、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)及び胃潰瘍のリスク低減、並びに発熱及び感染症による病欠の低減。
【0024】
[0025]本明細書において、「プロバイオティクス」という語は、宿主に有益な効果をもたらす任意の微生物を包含する。それ故、酵母、カビ及び細菌が含まれ得る。参照により本明細書に組み込まれるEP0862863には、現在知られているプロバイオティクスの例が挙げられている。好ましいプロバイオティクスは、例えばラクトバチルス・ロイテリ・プロテクティス(Lactobacillus reuteri Protectis)である。プロバイオティクスは、例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥した形態など任意の適当な形態とすることができる。
【0025】
[0026]本開示の実施形態によれば、適当なプロバイオティクスとしては、サッカロミセス属、デバロマイセス属、カンジダ属、ピチア属、トルロプシス属などの酵母;アスペルギルス属、リゾプス属、ムコール属、ペニシリウム属、トルロプシス属などのカビ;ビフィドバクテリウム属、バクテロイデス属、クロストリジウム属、フソバクテリウム属、メリソコッカス属、プロピオニバクテリウム属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、スタフィロコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、バチルス属、ペジオコッカス属、ミクロコッカス属、ロイコノストック属、ワイセラ属、アエロコッカス属、オエノコッカス属、ラクトバチルス属などの細菌が挙げられる。
【0026】
[0027]適当なプロバイオティクスとしては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(ブラルディイ)(Saccharomyces cereviseae (boulardii))、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス・カゼイ・亜種カゼイ(Lactobacillus casei subsp. casei)、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ(Lactobacillus casei Shirota)、ラクトバチルス・クルバトゥス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブレッキイ・亜種ラクティス(Lactobacillus delbruckii subsp. lactis)、ラクトバチルス・ファルシミナス(Lactobacillus farciminus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス(ラクトバチルス GG)(Lactobacillus rhamnosus (Lactobacillus GG))、ラクトバチルス・サケ(Lactobacillus sake)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ミクロコッカス・ヴァリアンス(Micrococcus varians)、ペジオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペジオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペジオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペジオコッカス・ハロフィラス(Pediococcus halophilus)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、スタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylococcus carnosus)及びスタフィロコッカス・キシローサス(Staphylococcus xylosus)が挙げられる。
【0027】
[0028]繊維微粒子凝集体は、任意の適当な凝集法により調製することができる。例えば、粉末状繊維は、水ミストを用いて湿らせることができる。次いで、湿った粉末状繊維はより大きい繊維塊を形成し、これを熱風乾燥に曝すと、水分活性のより低い繊維微粒子凝集体が形成される。次いで、この凝集微粒子を篩にかけて所望の範囲の平均直径の凝集微粒子を分離することができる。
【0028】
[0029]図1に例示したとおり、一実施形態において、繊維ブレンドの調製方法は、品質管理試験(例えば、使用が安全かどうかを判定)にかける繊維原料(例えば粉末状)を用意するステップを含む。品質管理試験に合格すると、繊維原料粉末は凝集工程にかけられて、水分活性の低い微粒子凝集体を含む繊維ブレンドを含有する栄養組成物が得られる。
【0029】
[0030]一実施形態において、繊維原料粉末を凝集させる詳細なステップは以下のとおりである。
1.繊維原料粉末を適当な容器に詰めるステップ:
空気温度:80℃;空気流量:80%
目標達成温度:40℃
2.繊維原料粉末を予熱するステップ:
空気温度:90℃;空気流量:30%
目標達成温度:43℃
3.繊維原料粉末を適当な液体(例えば水)でスプレー/ミストして繊維微粒子凝集体を得るステップ:
空気温度:105℃;空気流量:25%
目標達成温度:49/50℃
スプレー時間:11分
4.繊維微粒子凝集体を加熱する(例えば乾燥させて水分活性を下げる)ステップ:
空気温度:105℃;空気流量:20%
目標達成温度:60℃
加熱時間(「乾燥時間」):10分
5.繊維微粒子凝集体を冷却するステップ:
室温;空気流量:20%
目標達成温度:50℃
時間:約2分(実際の室温による)
【0030】
[0031]繊維微粒子凝集体は、次いで、微粒子の平均粒径が所定の最小値及び最大値を有するように篩にかけることができる。繊維微粒子凝集体は、次いで、十分に低い水分活性(例えば約0.15未満)を有するように別の品質管理試験にかけることができる。
【0031】
[0032]使用するプロバイオティクスは、繊維微粒子凝集体と混合する前にまず繊維原料粉末(例えば粒径約0.1mm未満)の一部と予混合して分離することができる。これにより、プロバイオティクスが繊維微粒子凝集体全体に均等に分布することが可能になる。次いで、プロバイオティクスと繊維原料粉末との予混合物を繊維微粒子凝集体と混合して繊維ブレンドを得る。
【0032】
[0033]繊維原料粉末を前述の凝集ステップにかけることによって、繊維ブレンドは、繊維微粒子凝集体の調製に使用した元の繊維原料粉末より低い水分活性(例えば約0.05〜約0.10)のものとなることが判明した。温度約25℃では、水分活性を約0.3低減させることによって保存期間(例えばプロバイオティクスの生存期間)が25%増加し得ることが判明した。
【0033】
[0034]繊維ブレンドは、次いで、プロバイオティクスの生存及び繊維ブレンドの水分活性を維持する条件(例えば窒素雰囲気)下で包装・保存することができる。例えば、包装は、処置室内の気体からの酸素及び湿気を最小限に抑えるために窒素フラッシュにより行うことができる。高品質防湿材をパッケージ中に使用してもよい。このような包装の目的は、繊維ブレンドの保存期間中、好ましい水分活性値を維持することである。包装済み製品の保存期間(例えばプロバイオティクスの生存期間)は12か月以上になり得る。
【0034】
[0035]繊維ブレンドは、任意の適当な医薬及び栄養製剤(例えば栄養補給剤)、栄養補助食品、機能性食品及び飲料製品中に容易に組み入れることができる。例えば、ヒト用食品・飲料、及びペットフードは、繊維ブレンドにより栄養価を高めることができる。適当な飲料製品としては、水、水性飲料、乳性飲料、炭酸飲料、非炭酸飲料、ビール、ワイン、豆乳、及びオレンジジュースのような果実性飲料が挙げられる(これらに限定されない)。栄養フォーミュラは、いかなる目的のものでも繊維ブレンドを含有し得る。多様な栄養フォーミュラが存在し、例えば、スポーツをする人又は運動選手のためのもの、特定の天然食品構成要素にアレルギーをもつ人又は胃腸障害をもつ人など特別な栄養を必要とする人のためのものなどが存在する。
【0035】
[0036]焼き菓子、チョコレート又は他の甘味製品は繊維ブレンドを含有し得る。その上、すべての種類の、押し出し又は加熱済み又は他の方法による調理済みの食品は、繊維ブレンドを含有し得る。例えば、乾燥ペットフード、又は粉末、小麦粉、粉乳、シリアル粉末、シリアルフレークなどの他の乾燥食品を使用することもできる。繊維ブレンドは、あらゆる種類の朝食シリアル中に組み入れることができる。また、繊維ブレンドは、摂取用製品の個々の構成要素、材料又は出発材料に添加することができる。
【0036】
[0037]一実施形態において、繊維ブレンドは、発酵工程中にプロバイオティクスにより産生される代謝物質をさらに含む。例えば、こうした代謝物質は、発酵培地へ放出されることもあり、あるいは微生物内部に蓄えられることもある。そのような代謝物質は、特定のプロバイオティクスの有益な効果の一部又は多くを有し得る。栄養組成物は、ビタミン、ミネラル、タンパク質、生理活性物質又はこれらの組合せなどの少なくとも1種の成分をさらに含むことができる。
【0037】
[0038]ビタミンとしては、ビタミンA、B複合体(B−1、B−2、B−6及びB−12など)、C、D、E及びK、ナイアシン、酸性ビタミン(パントテン酸、葉酸など)、ビオチンが挙げられる(これらに限定されない)。ミネラルとしては、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、ヨウ素、銅、リン、マンガン、カリウム、クロム、モリブデン、セレン、ニッケル、スズ、ケイ素、バナジウム及びホウ素が挙げられる(これらに限定されない)。タンパク質としては、ペプチド、遊離アミノ酸、アミノ酸混合物又はこれらの組合せが挙げられる(これらに限定されない)。
【0038】
[0039]生理活性な化合物又は抽出物としては、健康上有益であることが知られているもの、特に哺乳類において血中コレステロールのレベルを下げるためのもの(スタチン、胆汁酸捕捉剤、ニコチン酸、フィブリン酸など)、及び/又は糖尿病を治療するためのもの(スルホニル尿素、ビグアニド、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニド、D−フェニルアミンなど)、並びに他の植物性栄養素及び抗酸素物質が挙げられる。
【0039】
[0040]本明細書において、植物性栄養素としては、フラボノイド類及び関連のフェノール・ポリフェノール化合物、テルペン類(カロテノイドなど)、アルカロイド類が挙げられ、クルクミン、リモニン、ケルセチン及びこれらの組合せが挙げられる(これらに限定されない)。
【0040】
[0041]本明細書において、「抗酸化物質」は、酸化を抑制し、あるいは活性酸素種(ROS)及び他のラジカル・非ラジカル種により促進される反応を抑制する様々な物質(ベータカロテン(ビタミンA前駆体)、ビタミンC、ビタミンE、セレンなど)の任意の少なくとも1種を含むものと理解されたい。また、抗酸化物質は、他の分子の酸化を遅らせるか予防することが可能な分子である。抗酸化物質としては、カロテノイド、コエンザイムQ10(「CoQ10」)、フラボノイド、グルタチオンゴジ(ウルフベリー)、ヘスペリジン、ラクトウルフベリー、リグナン、ルテイン、リコペン、ポリフェノール、セレン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びこれらの組合せが挙げられる(これらに限定されない)。
【0041】
[0042]本開示の栄養組成物は、乳化剤、安定剤、甘味料、香味剤、着色剤、保存料、キレート剤、浸透剤、緩衝剤又はpH調整剤、酸味料、増粘剤、調質剤などの従来の食品添加物を任意選択で含有し得る。
【0042】
[0043]事情や嗜好に応じて、繊維ブレンドを含む栄養組成物は、プロバイオティクスcfuの実質的な損失が考慮されないような方法で周囲温度又は昇温に曝してもよい。また、栄養組成物の性質又は最終食品の目的に応じて、栄養組成物を凍結することも可能である。あるいは、凍結しない冷蔵保存もある。もちろん、最終製品又は栄養組成物の目的に応じて、栄養組成物に対し他のさらなる処置又は処理を行うこともある。例えば、N又はN/COのような不活性ガス又はガス混合物を用いて最終栄養組成物を曝気することがある。
【0043】
[0044]本開示の栄養組成物は、医療専門家の監督下で投与してもよく、自己投与してもよい。本開示の栄養組成物は、毎日、週1回又は月1回投与しても、年1回又はそれより長い期間ごとに投与してもよい。適当な1日の投与計画には、1日につき1回又は複数回の投与が包含される。
【0044】
[0045]本開示の実施形態による繊維ブレンドを組み入れた医薬、食品又は飲料は安全に摂取することができる。本開示の実施形態において、繊維ブレンド及び栄養組成物は特に次のことに適当であろう。
炎症性腸疾患の抑制
過敏性腸症候群の抑制
化学療法誘発性下痢
放射線療法誘発性下痢
化学・放射線併用療法誘発性下痢
湿疹及び他のアトピー性疾患の抑制
IgEの調節
感染症抑制のためのSIgA維持
アレルギー及びアレルギー反応の抑制
ぜんそくの抑制
【実施例】
【0045】
[0046]以下の実施例は本開示の様々な実施形態を示す(例示であり、制限的なものではない)。
【0046】
実施例1:
[0047]粉末状繊維及びプロバイオティクス(ラクトバチルス・ロイテリ)を有する典型的な繊維ブレンド(例えば、Benefiber(登録商標)HP Gel、Fibruline(登録商標)XL)中のプロバイオティクスの生存率(表1参照)を、繊維微粒子凝集体及びプロバイオティクスを有する改良した繊維ブレンド中のプロバイオティクスの生存率(表2参照)と比較した。結果を図2に示す。図2及び表に見られるように、データは、改良した繊維ブレンドの水分活性がより低いレベルで維持され、これによりプロバイオティクス構成要素の生存率が経時的により良好に維持され得ることを示している。プロバイオティクスの量は1小袋当たり1×10CFUであり、これはラクトバチルス・ロイテリの規定の有効投与量である。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
[0048]本発明の一実施形態は、完全栄養製品を含むものである。本明細書において、「完全栄養」は、好ましくは、投与される動物の唯一の栄養源として十分な種類及びレベルの主要栄養素(タンパク質、脂肪、炭水化物)及び微量栄養素を含有する栄養製品である。患者は、こうした完全栄養組成物から栄養所要量の100%を摂ることができる。
【0050】
[0049]本発明の一実施形態は、不完全栄養製品を含むものである。本明細書において、「不完全栄養」は、好ましくは、投与される動物の唯一の栄養源として十分なレベルの主要栄養素(タンパク質、脂肪、炭水化物)又は微量栄養素を含有しない栄養製品である。部分的又は不完全栄養組成物は栄養補助食品として使用できる。
【0051】
[0050]本発明の一実施形態は、短期投与用のものである。本明細書において、「短期投与」は、好ましくは6週間未満の継続投与である。
【0052】
[0051]本発明の一実施形態は、長期投与用のものである。本明細書において、「長期投与」は、好ましくは6週間以上の継続投与である。
【0053】
[0052]本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形の“a”、“an”及び“the”は、文脈上明らかにそう解すべきでない限り複数を包含する。それ故、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」は2種以上のポリペプチドの混合物を包含する。
【0054】
[0053]本明細書において、「約」は、ある範囲内の数値を指すものと理解されたい。さらに、本明細書中のすべての数値範囲は、その範囲内のすべての整数又は分数を含むと理解されるべきである。
【0055】
[0054]本明細書に記載の好ましい実施形態に対して様々な変更及び修正がなし得ることは当業者には明らかであろう。こうした変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、また意図した利益を損なうことなく行うことができる。それ故、こうした変更及び修正は添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維微粒子凝集体及びプロバイオティクスを含む繊維ブレンドを含有する栄養組成物であって、
前記繊維ブレンドは約0.2未満の水分活性を有する、栄養組成物。
【請求項2】
前記繊維ブレンドの水分活性が約0.15未満である、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項3】
前記繊維微粒子凝集体は、フラクトオリゴ糖、イヌリン、ガラクトオリゴ糖、部分加水分解グアーガム、ガラクトマンナン、アカシアゴム、ペクチン、アラビノガラクタン、β−グルカン、キサンタンゴム及びこれらの組合せからなる群より選ばれる繊維を含む、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項4】
前記繊維微粒子凝集体は約1.2mm〜約5mmの平均直径を有する、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項5】
前記繊維ブレンドの水分活性が約0.12未満である、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項6】
前記プロバイオティクスは、アエロコッカス属(Aerococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、バチルス属(Bacillus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、カンジダ属(Candida)、クロストリジウム属(Clostridium)、デバロマイセス属(Debaromyces)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、メリソコッカス属(Melissococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、ムコール属(Mucor)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ペジオコッカス属(Pediococcus)、ペニシリウム属(Penicillium)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、ピチア属(Pichia)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、シュードカテヌラツム(属Pseudocatenulatum)、リゾプス属(Rhizopus)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トルロプシス属(Torulopsis)、ワイセラ属(Weissella)又はこれらの組合せからなる群より選ばれる、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項7】
前記プロバイオティクスは、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnoses)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)及びこれらの組合せからなる群より選ばれる、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項8】
前記プロバイオティクスがラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)である、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項9】
前記繊維ブレンドは、発酵工程中にプロバイオティクスにより産生される代謝物質をさらに含む、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項10】
ビタミン、ミネラル、タンパク質、生理活性物質、植物性栄養素、抗酸化物質及びこれらの組合せからなる群より選ばれる成分をさらに含む、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項11】
医薬製剤、栄養製剤、栄養補助食品、機能性食品及び飲料製品からなる群より選ばれる投与可能な形態をとる、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項12】
栄養組成物を調製する方法であって、
繊維を用意するステップと、
繊維を凝集させて水分活性0.2未満の繊維微粒子凝集体を得るステップと、
プロバイオティクスを繊維微粒子凝集体と混合して繊維ブレンドを得るステップと、
を含む方法。
【請求項13】
窒素雰囲気下で繊維ブレンドを保存するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維は、繊維微粒子凝集体と混合される前に粉末状繊維と予混合される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記繊維微粒子凝集体は、フラクトオリゴ糖、イヌリン、ガラクトオリゴ糖、部分加水分解グアーガム、ガラクトマンナン、アカシアゴム、ペクチン、アラビノガラクタン、β−グルカン、キサンタンガム及びこれらの組合せからなる群より選ばれる繊維を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記繊維微粒子凝集体は約1.2mm〜約5mmの平均直径を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記繊維ブレンドの水分活性が約0.15未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記繊維ブレンドの水分活性が約0.12未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記プロバイオティクスは、アエロコッカス属(Aerococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、バチルス属(Bacillus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、カンジダ属(Candida)、クロストリジウム属(Clostridium)、デバロマイセス属(Debaromyces)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、クトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、メリソコッカス属(Melissococcus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)ムコール属(Mucor)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ペジオコッカス属(Pediococcus)、ペニシリウム属(Penicillium)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostrepococcus)、ピチア属(Pichia)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、シュードカテヌラツム属(Pseudocatenulatum)、リゾプス属(Rhizopus)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トルロプシス属(Torulopsis)、ワイセラ属(Weissella)又はこれらの組合せからなる群より選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記プロバイオティクスは、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnoses)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)及びこれらの組合せからなる群より選ばれる、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記プロバイオティクスがラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)である、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記繊維ブレンドは、発酵工程中にプロバイオティクスにより産生される代謝物質をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
ビタミン、ミネラル、タンパク質、生理活性物質、植物性栄養素、抗酸化物質及びこれらの組合せからなる群より選ばれる成分をさらに含む、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−500340(P2013−500340A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522926(P2012−522926)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/043189
【国際公開番号】WO2011/017040
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】