説明

繊維強化複合材料の賦型方法

【課題】硬化後の繊維強化複合材料の表面に、空気等の流体の流れを制御できる形状を賦型できる離型シートを提供する。
【解決手段】前記流体移動制御形状賦型用離型シートのエンボス賦型層上に、インキ組成物を塗布して、塗布膜を設け、前記塗布膜が設けられた前記流体移動制御形状賦型用離型シートを、前記塗布膜と繊維強化複合材料とが対向するようにして、前記繊維強化複合材料の表面に貼りつけて、前記塗布膜と前記繊維強化複合材料とを接着し、前記繊維強化複合材料から、前記流体移動制御形状賦型用離型シートを剥離して、前記繊維強化複合材料の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有する塗布層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料の賦型方法に関し、さらに詳細には、流体移動制御形状賦型用離型シートを使用することにより、繊維強化複合材料の表面に、空気等の流体の流れを制御できる形状を賦型できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維と熱硬化性樹脂とからなる繊維強化複合材料は、軽量かつ機械的強度や弾性率等の機械特性に優れるため、宇宙・航空分野、自動車・船舶等の輸送機分野、建築等の一般産業資材分野、釣り竿やゴルフクラブのシャフト等のスポーツレジャー分野等、幅広く使用されている。繊維強化複合材料は、炭素繊維やガラス繊維などにエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた、未硬化または半硬化の状態のプリプレグを、1ないし複数枚重ね合わせて、加圧化で加熱することにより硬化させて、所望の形状に成形することにより製造されている。
【0003】
繊維強化複合材料を用いて、例えば航空機等の主翼や風力発電量の回転翼を製造する場合、シート状のプリプレグを、マンドレル上に1ないし複数枚重ね合わせて、必要に応じて他の材料と積層し、樹脂の硬化後にマンドレルを引き抜くことにより、繊維強化複合材料を所望の形状に成形することが行われている(例えば、特開平2−236014号公報:特許文献1)。
【0004】
ところで、風車の回転翼や航空機の翼は、空力の流れを考慮してその断面形状が設計されているのはもちろんのこと、翼表面形状を最適化することで空気抵抗を低減したり、またその逆に高空気抵抗となるような表面形状を翼の表面に賦型することが検討されている。例えば、特開2006−183598号公報(特許文献2)には、風力発電用の回転翼の風切り音を低減させるために、回転翼の表面に筋状のリブレットを形成することが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記したような繊維強化複合材料を用いて回転翼を作製した場合、繊維強化複合材料自体の機械的強度や弾性率等が非常に高いため、翼の表面を所望の形状となるように機械加工することが困難であった。また、航空機の主翼や風力発電用の回転翼は、その表面積が非常に大きく、翼の表面に、上記のようなミリオーダーのリブレットを均一に設けるには、時間とコストを必要とするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−236014号公報
【特許文献2】特開2006−183598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、先の出願において、プリプレグに、表面が所望の形状にエンボス加工された離型紙を適用し、プレプリグに離型紙を設けた状態で、加圧・加熱によりプレプリグを硬化させた後に離型紙を剥離することにより、繊維強化複合材料の表面に所望の形状に賦型できることを提案している(特願2010−71233号)。
【0008】
本発明者らは、今般、プレプレグを硬化させる際にエンボス柄を最適化した離型紙を適用して繊維強化複合材料の表面に特定の形状を付与する方法の他に、成形後(すなわち、硬化後)の繊維強化複合材料であっても、繊維強化複合材料の表面に、熱硬化性樹脂等を介して離型紙を適用することにより、繊維強化複合材料の表面に微細な凹凸を賦型できるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、成形後の繊維強化複合材料の表面に、離型シートを適用して、空気等の流体の流れを制御できる形状を賦型する方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の別の目的は、上記の方法によって得られた、表面に空気等の流体の流れを制御できる形状が賦型された繊維強化複合成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による方法は、少なくとも支持体である紙と、その紙上に設けられたエンボス賦型層とを備えた流体移動制御形状賦型用離型シートを用いて、プレプリグを硬化させた繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法であって、
前記流体移動制御形状賦型用離型シートのエンボス賦型層上に、インキ組成物を塗布して、塗布膜を設け、
前記塗布膜が設けられた前記流体移動制御形状賦型用離型シートを、前記塗布膜と繊維強化複合材料とが対向するようにして、前記繊維強化複合材料の表面に貼りつけて、前記塗布膜と前記繊維強化複合材料とを接着し、
前記繊維強化複合材料から、前記流体移動制御形状賦型用離型シートを剥離して、前記繊維強化複合材料の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有する塗布層を形成する、
ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の別の態様による方法は、少なくとも支持体である紙と、その紙上に設けられたエンボス賦型層とを備えた流体移動制御形状賦型用離型シートを用いて、プレプリグを硬化させた繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法であって、
前記流体移動制御形状賦型用離型シートのエンボス賦型層上に、押出しコーティングにより、ポリオレフィン樹脂層を形成し、
前記ポリオレフィン樹脂層が設けられた前記流体移動制御形状賦型用離型シートを、前記ポリオレフィン樹脂層と繊維強化複合材料とが対向するようにして、前記繊維強化複合材料の表面に貼りつけて、前記ポリオレフィン樹脂層と前記繊維強化複合材料とを接着し、
前記繊維強化複合材料から、前記流体移動制御形状賦型用離型シートを剥離して、前記繊維強化複合材料の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有するポリオレフィン樹脂層を形成する、
ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の別の態様による方法は、少なくとも支持体である紙と、その紙上に設けられたエンボス賦型層とを備えた流体移動制御形状賦型用離型シートを用いて、プレプリグを硬化させた繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法であって、
繊維強化複合材料の表面にインキ組成物を塗布して、塗布膜を設け、
前記塗布膜が設けられた繊維強化複合材料に、前記塗布膜と、流体移動制御形状賦型用離型シートのエンボス賦型層とが対向するようにして、前記流体移動制御形状賦型用離型シートを貼りつけて、前記塗布膜と前記エンボス賦型層とを貼り合わせ、
前記繊維強化複合材料から、前記流体移動制御形状賦型用離型シートを剥離して、前記繊維強化複合材料の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有する塗布層を形成する、
ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の別の態様による流体移動制御形状賦型用離型シートは、少なくとも支持体である紙と、その紙上に設けられたエンボス賦型層とを備え、前記エンボス賦型層の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様が賦型されているものである。
【0015】
さらに、本発明の別の態様によれば、上記の方法により得られた繊維強化複合成形体も提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プレプレグから繊維強化複合材料を成形する以外に、成形後(すなわち、硬化後)の繊維強化複合材料であっても、繊維強化複合材料の表面に、熱硬化性樹脂等を介して離型シートを適用することにより、繊維強化複合材料の表面に、空気等の流体の流れを制御できる微細な凹凸形状を賦型できる。その結果、従来機械加工により形成していた空気等の流体の流れを制御できる微細な凹凸形状を、より安価かつ簡易に、繊維強化複合材料の表面に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による流体移動制御形状賦型用離型シートの一実施形態を示した概略断面図である。
【図2】本発明による流体移動制御形状賦型用離型シートの他の実施形態を示した概略断面図である。
【図3】図2のA部分の一実施形態の拡大断面図である。
【図4】図2のA部分の他の実施形態の拡大断面図である。
【図5】図2のA部分の他の実施形態の拡大断面図である。
【図6】図2のA部分の他の実施形態の拡大断面図である。
【図7】図2のA部分の他の実施形態の拡大断面図である。
【図8】ディンプル形状の拡大斜視図である。
【図9】第一の実施形態による繊維強化複合材料の賦型方法を示した工程概略図である。
【図10】第二の実施形態による繊維強化複合材料の賦型方法を示した工程概略図である。
【図11】第三の実施形態による繊維強化複合材料の賦型方法を示した工程概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
先ず、本発明の方法に用いられる流体移動制御形状賦型用離型シートについて説明する。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0019】
<流体移動制御形状賦型用離型シート>
本発明による流体移動制御形状賦型用離型シート1は、図1に示すように、少なくとも、支持体である紙2と、その紙2上に設けられたエンボス賦型層3とを備えるものである。また、本発明の好ましい実施形態においては、図2に示すように、支持体2およびエンボス賦型層3との間に中間層4である目止め層5および熱可塑性樹脂層6を備えている。
【0020】
また、エンボス賦型層の表面は、図3に示すように、シート長手方向に筋状の凹凸形状を有し、シート幅方向に複数の凸部を有する断面形状を有している。この凸部7の形状としては、図3に示すように略矩形断面であってもよく、図4に示すように、略三角形断面であってもよく、また、図5に示すように略台形断面であってもよい。さらに、凸部の形状は、図4および5に示す断面形状の他、凹部に平坦な部分が存在する、図6および図7に示すような断面形状であってもよい。
【0021】
エンボス賦型層表面の筋状の凹凸形状は、図3に示す略矩形断面を有する場合、一つの矩形断面の幅Wが、0.1μm〜200mmであることが好ましく、20μm〜5mmであることがより好ましい。また、凸部の高さHは、0.1μm〜100mmであることが好ましく、より好ましくは3μm〜500μmである。また、凹部の底の幅Wは、0.1μm〜500mmであることが好ましく、20μm〜5mmであることがより好ましい。
【0022】
エンボス賦型層表面の筋状の凹凸形状は、図4に示す略三角形断面を有する場合、三角形の底辺Tの長さは、0.1μm〜500mmであることが好ましく、20μm〜5mmであることがより好ましい。また、三角形の高さHは、0.1μm〜100mmであることが好ましく、より好ましくは3μm〜500μmである。
【0023】
エンボス賦型層表面の筋状の凹凸形状は、図5に示す略台形断面を有する場合、台形の上辺の長さTは、0.01μm〜100mmであることが好ましく、1μm〜5mmであることがより好ましい。また、台形の下辺の長さTは、0.1μm〜200mmであることが好ましく、20μm〜5mmであることがより好ましい。また、略台形の高さHは、0.1μm〜100mmであることが好ましく、より好ましくは3μm〜500μmである。
【0024】
エンボス賦型層表面の筋状の凹凸形状は、図6に示す略三角形断面を有する場合、三角形の底辺Tの長さは、0.01μm〜100mmであることが好ましく、1μm〜5mmであることがより好ましい。また、三角形の高さHは、0.1μm〜100mmであることが好ましく、より好ましくは3μm〜500μmである。また、凹部の底の幅Wは、0.1μm〜200mmであることが好ましく、20μm〜5mmであることがより好ましい。
【0025】
エンボス賦型層表面の筋状の凹凸形状は、図7に示す略台形断面を有する場合、台形の上辺の長さTは、0.01μm〜100mmであることが好ましく、1μm〜5mmであることがより好ましい。また、台形の下辺の長さTLは、0.1μm〜200mmであることが好ましく、20μm〜5mmであることがより好ましい。また、略台形の高さHは、0.1μm〜100mmであることが好ましく、より好ましくは3μm〜500mmである。また、凹部の底の幅Wは、0.01μm〜100mmであることが好ましく、1μm〜5mmであることがより好ましい。
【0026】
さらに、本発明においては、エンボス賦型層表面の筋状の凹凸形状は、図3〜7に示した凸部と凹部とが反転した形状であってもよい。また、図3〜7において、平坦な部分(例えば、凸部の上辺部分や凹部の下辺部分等)は、実質的に平坦である必要はなく、曲面になっていてもよく、また、図3〜7に示すような略矩形、略三角形、略台形断面において、その頂点(角の部分)はアール形状となっていてもよい。
【0027】
また、エンボス賦型層3の表面は、上記した筋状の凹凸形状の他にも、ディンプル形状7が賦型されていてもよい。ディンプル形状としては、図9に示すように半球凸形状とすることができる。半球凸形状のディンプルは、1×10−4〜1×10個/mmであることが好ましく、より好ましくは1×10−2〜1×10個/mmである。また、全表面に占めるディンプルの面積の割合は1〜100%の範囲である。半球凸形状のディンプルの高さ(エンボス賦型層3と半球凸形状のディンプル7の頂部との距離)は、50nm〜10mm程度であり、好ましくは50nm〜300μmである。
【0028】
半球凸形状のディンプルは、その大きさが全て同じでなくてもよく、大きさの異なる2種以上の半球凸形状のディンプルを組み合わせたものであってもよい。例えば、大小異なる大きさの2つの半球状ディンプルを交互に配列したような凹凸形状であってもよい。この場合、燐擦するディンプルの中心を結ぶ線と、他の隣接するディンプルの中心を結ぶ線との角度が、全て60°であるように、大きさの異なる2つの半球状ディンプルを交互に配列することが好ましい。
【0029】
また、本発明においては、凹凸形状は、上記した半球凸形状ディンプルの他にも半球凹形状ディンプルからなる凹凸形状としてもよく、この場合、ディンプル数やディンプルの大きさは半球凸形状ディンプルの場合と同様である。半球凹形状ディンプルの場合、ディンプルの深さ(エンボス賦型層3と半球凹形状のディンプル7の底部との距離)は、50nm〜10mm程度であり、好ましくは50nm〜300μmである。
【0030】
ディンプルは、半球凸形状(または半球凹形状)の他にも、円錐(逆円錐)、多角錘(逆多角錘)、円錐台(逆円錐台)、多角錘台(逆多角錘台)の形状であってもよい。ディンプルがこれらの形状である場合、ディンプル数やディンプルの大きさは半球凸形状ディンプルの場合と同様であってよい。円錐(逆円錐)、多角錘(逆多角錘)、円錐台(逆円錐台)、多角錘台(逆多角錘台)の形状である場合、その高さ(深さ)は、100nm〜100mm程度であり、好ましくは3μm〜500μmである。また、ディンプル模様以外にも、バイオミメティック模様などでもよい。
【0031】
支持体としては、製造工程に耐える強度を有し、エンボス賦型層を支持できる耐熱性、耐薬品性などの性質を有し、かつ表面にエンボス模様を賦型するエンボス工程に耐え、エンボス加工も容易であることが必要である。支持体としては、クラフト紙、上質紙、片艶クラフト紙、純白ロール紙、グラシン紙、カップ原紙などの非塗工紙の他、天然パルプを用いない合成紙なども用いることができる。加工適性のためには、耐久性、耐熱性に優れる点で天然パルプからなる紙を使用することが好ましい。また、一般的な、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙、樹脂コート紙、加工原紙、剥離原紙、両面コート剥離原紙などの予め後記する目止め層や樹脂層が形成された市販品を使用することもできる。
【0032】
支持体として使用する紙は、秤量15〜400g/m程度、好ましくは60〜250g/mである。この範囲であれば、エンボス加工が容易である。また、紙は、中性紙であることが好ましい。硫酸バンドなどを含む酸性紙は、製造工程で繰り返し使用されると熱劣化が発生し、このため早期に再使用が困難となる場合がある。中性紙であれば、このような熱劣化を防止することができる。
【0033】
また、サイズ剤として、中性ロジンやアルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸を使用してもよく、定着剤としてカチオン性のポリアクリルアミドやカチオン性デンプン等を使用してもよい。また、上記理由により硫酸バンドを使用しないことが最も好ましいが、硫酸バンドを使用してpH6〜9の中性領域で抄紙することも可能である。その他、必要に応じて上記のサイズ剤のほか、定着剤の他、製紙用各種填料、歩留向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、結合剤、分散剤、凝集剤、可塑剤、接着剤を適宜含有していてもよい。
【0034】
更に、例えば一般的な、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙、樹脂コート紙、加工原紙、剥離原紙、両面コート剥離原紙などの予め後記する目止め層や樹脂層が形成された市販品を使用することもできる。目止め層が形成された市販品を使用する場合には、目止め層13を省いてもよい。
【0035】
上記した支持体の上に設けられるエンボス賦型層は、その表面に、上記したようなリブレット構造がエンボス加工により形成されたものである。後記するように、繊維強化複合材料の表面に特定のリブレット構造を賦型する際、離型シートのエンボス賦型層を、インキ組成物や熱可塑性樹脂等を介して、繊維強化複合材料の表面に貼り合わせ、離型シートを剥離することにより、繊維強化複合材料の表面に、特定のリブレット構造を賦型する。そのため、貼り合わせ時に、エンボス賦型層表面のリブレット構造が維持される必要がある。そのため、エンボス賦型層は、耐溶媒性に優れ、ある程度の温度でも軟化せず、賦型性に優れ、原反の巻き取りが容易で、極めて操作性に優れ、しかもエンボス賦型層を形成する時にタックフリー(指乾状態ともいう)であるような材料からなるのが好ましい。
【0036】
上記の要求を満足する材料としては、無色または着色された透明または半透明な樹脂からなり、樹脂層を形成時にタックフリーで、リブレット構造を型押しで再現できる樹脂であればよい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、アミノアルキッドを含むアルキッド系樹脂や、アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂を使用できる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化方法としては、前記電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化方法は通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。これら紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等が適用でき、好ましくはウレタン変性アクリレート樹脂である。
【0037】
エンボス賦型層を形成するために使用される好ましい樹脂組成物としては、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体からなる樹脂組成物、または、(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部と、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部と、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部とからなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体からなる樹脂組成物を、紫外線などの電離放射線により硬化させたものが好ましく使用できる。
【0038】
(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体は、その重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000が好ましく、より好ましくは15,000〜100,000、特に好ましくは15,000〜70,000である。なお、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算で求めた値である。また、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(1)の分散比(Mw/Mn)は1.0〜5.0が好ましく、より好ましくは1.5〜4.0、特に好ましくは1.9〜3.5である。また、樹脂のガラス転移点温度(Tg)は40〜150℃が好ましく、より好ましくは65〜120℃、特に好ましくは65〜90℃である。
【0039】
このような(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体としては、例えば(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)とを含むエポキシ基含有共重合体(C)に、(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができる。(メタ)アクリレート系単量体単位(A)としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどが挙げられるが、好ましくは、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレートなどである。
【0040】
エポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)としては、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)との配合比は、単量体単位の合計質量中に上記エポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)を5〜95質量%となるように配合することである。5質量%を下回ると、十分な二重結合当量を確保することができず、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(1)の硬化後の耐溶剤性、耐擦過性が損なわれる場合がある。一方、95質量%を超えるとTgが低くなりすぎることによる未硬化膜のタック感が生じ、賦型性が損なわれる場合がある。反応は、上記単量体単位をラジカル開始剤の存在下で共重合して得られる。
【0042】
樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(2)であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルおよび他の(メタ)アクリル酸エステルは、上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)に該当し、グリシジル(メタ)アクリル酸エステルはエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に該当する。したがって、他の(メタ)アクリル酸エステルは、上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)の中から適宜選択することができる。
【0043】
エンボス賦型層を形成するために使用される好ましい樹脂組成物は、上記(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体のみからなるものであってもよい。組成物とは2種以上の物質が配合されたものであるが、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体の分散比から明らかなように、異なる分子量の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体が含まれているため、本明細書中では、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体のみからなる場合も樹脂組成物と称する。
【0044】
エンボス賦型層は、上記した樹脂からなる層を単層としてもよく、また、ピンホールが少なくなることから、2層以上の層としてもよい。
【0045】
上記した樹脂組成物は、市販のものを使用してもよく、例えば、MHX405ニス(DICグラフィックス(株)製、樹脂商品名)、ユピマーLZ650(三菱化学(株)製、樹脂商品名)、ユピマーUV・V3031(三菱化学(株)製、樹脂商品名)などを好適に使用することができる。
【0046】
また、上記した樹脂組成物には、更に無機顔料、光重合開始剤、その他を配合してもよい。無機顔料の配合により、このような無機顔料として、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などが例示できる。無機顔料は、膜に0.5〜50質量%、より好ましくは1〜10質量%となるように配合することが好ましい。樹脂層が2層以上の多層で構成される場合には、各層における無機顔料の配合量が上記範囲となる。
【0047】
また、本発明においては、エンボス賦型層の離型性を向上させるために、上記した樹脂組成物に、シリコーン化合物を含有させてもよい。シリコーン化合物は、反応性であっても非反応性であってもよい。反応性シリコーン化合物としては、(メタ)アクリロイル変性、ビニル変性、アミノ変性、メルカプト変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、フェノール変性、アルコール変性のシリコーン化合物が挙げられる。例えば、(メタ)アクリロイル変性シリコーンとしては、X−22−164B、X−22−164C(信越化学工業社製)、FM−0711,FM−0721,FM0725(チッソ社製)、ビニル変性シリコーンとしては、XF40―A1987(東芝シリコーン社製)、アミノ変性シリコーンとしては、TSF4700、TSF4702、TSF4705(東芝シリコーン社製)、X−22−161AS、KF393,KF864(信越化学工業社製)、BY16−208、SF8417(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、メルカプト変性シリコーンとしては、X−22−167B、KF−2001(信越化学工業社製)、エポキシ変性シリコーンとしては、YF3965,TSF4730(東芝シリコーン社製)、KF105,X−22−169AS(信越化学工業社製)、SF8421、SF8413(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、カルボキシル変性シリコーンとしては、TSF4770、XF−A9248(東芝シリコーン社製)、X−22−162A、X−22−3701E(信越化学工業社製)、SF8418、BY16−750(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、フェノール変性シリコーンとしては、X−22−165B(信越化学工業社製)、BY16−752、BY16−150C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、アルコール変性シリコーンとしては、TSF4750、TSF4751(東芝シリコーン社製)、BY16−848、BY16−201(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、FM−4411,FM−4425、FM−0411,FM−0425,FM−DA21(チッソ社製)等が挙げられる。
【0048】
また、これらの反応性シリコーンを用いて合成したシリコーン化合物を用いても良い。合成したシリコーン化合物にはさらに反応性基を有していてもよいし、有していなくてもよい。反応性シリコーンを用いて合成するシリコーン化合物としては、(メタ)アクリロイル変性シリコーンを用いたシリコーン変性(メタ)アクリルポリマーおよびシリコーン変性(メタ)アクリレート、エポキシ変性シリコーンを用いたシリコーン変性エポキシアクリレート、アルコール変性シリコーンを用いたシリコーン変性ウレタンポリマーやシリコーン変性ウレタンアクリレート等が挙げられる。中でもシリコーン変性ウレタンアクリレートが特に好ましい。
【0049】
非反応性シリコーン化合物としては、上記の反応性基を有しないシリコーン化合物が挙げられる。具体的な化合物としては、ジメチルポリシロキサンとしてはTSF451、YF3800(東芝シリコーン社製)、KF96A(信越化学工業社製)、SH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、メチルフェニルポリシロキサンとしてはTSF433,TSF434(東芝シリコーン社製)、SH510、SH702(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、ポリエーテル変性シリコーンとしてはTSF4440、TSF4445(東芝シリコーン社製)、KF―351、KF−353(信越化学工業社製)、SH3746、SH3748(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、SS−2803、SS−2801(日本ユニカー社製)等が挙げられる。これらのシリコーン化合物は、単独で用いても二種類以上用いてもよく、反応性、非反応性のものを両方用いてもよい。
【0050】
エンボス賦型層は、上記した樹脂組成物を支持体上に塗工して、乾燥・硬化させることにより形成できる。塗工方式としては、ダイレクトグラビアコート、リバースグラビアコート、グラビアオフセットコート、マイクログラビアコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、カーテンコート、ナイフコート、エアナイフコート、バーコート、ダイコート、スプレーコートなどの公知の方法が用いられる。塗工後、温度90〜130℃で乾燥および加熱して、乾燥炉で溶剤を蒸発させて樹脂組成物を乾燥させる。この温度は、樹脂組成物の軟化点より高く、かつ樹脂組成物が溶融する温度より低い範囲である。
【0051】
エンボス賦型層の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは3〜20μmである。1μmより薄いと微細な賦型性の転写が悪くなり、一方、50μmを超えると樹脂の硬化性が悪くなる場合がある。前記したように、樹脂層が2層以上の多層で構成される場合には、全層の厚さを上記範囲とする。
【0052】
上記した樹脂組成物を乾燥させた後、特定のリブレット模様を型押しして賦型した後、樹脂組成物を硬化させることにより、エンボス賦型層が形成される。この賦型は、公知のエンボス機を用いて、所望の表面形態としたエンボスロールを加熱加圧しエンボスして、エンボスロールから剥離後、直ちに、又は後に、電離放射線を照射して硬化させることで、特定のリブレット模様が施されたエンボス賦型層を形成できる。エンボスは、離型シートを用いて得られる繊維強化複合材の用途によって種々の表面形態とすることができるが、繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を形成するためには、エンボス賦型層の表面に、図3〜8に示したような凹凸形状からなるリブレット模様またはディンプル模様や、バイオミメティック模様を形成する必要がある。このような特定の模様は、繊維強化複合材料の表面に賦型されると、繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できるようになり、例えば、空気や液体の表面抵抗を低減することができるようになる。
【0053】
電離放射線の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどが用いられる。なお、リブレット模様の賦形は、後記する熱硬化シリコーン層を電離放射線硬化樹脂層上に設けた後に、エンボス加工してもよい。
【0054】
エンボス賦型層は、その離型性を向上させる目的のために、上記した電離放射線硬化樹脂層上に熱硬化シリコーン層を備えていてもよい。熱硬化シリコーン層は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物を熱硬化して形成したものである。
【0055】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの一例としては下記の如き化合物が挙げられる。
【化1】

(上記式中、Rは主としてメチル基であるが、その他のアルキル基またはフェニル基等のアリール基あるいはそれらの組み合わせで有り、l+m+nは1以上の整数であり、各シロキサン単位はランダムに配置されていてもよい。X、YおよびZのうち少なくとも1個はビニル基、アリル(−CH−CH=CH)基または(メタ)アクリロイル基等に付加重合性基であり、R〜Rは単結合あるいはアルキレン基である。)
【0056】
上記のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの分子量は特に限定されないが、一般的には3,500〜20,000の範囲が好適である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
【0057】
本発明で使用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、上記一般式において−R−X、−R−Z、および−R−Yのうち少なくとも1個が水素原子であるものであり、他の置換基、シロキサン単位の配列、分子量等については前記一般式と同様である。これらのアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは市場から入手でき本発明で容易に使用することができる。
【0058】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの使用割合は、両者の有する反応性基のモル比で決まり、前者と後者の比が4:1〜1:4、特に1:1〜1:3の範囲が好ましく、この範囲を外れると離型性の低下、塗膜強度の低下、未反応の反応性基による保存性の劣化等の点で満足した性能が得られない。
【0059】
本発明では、さらに白金系硬化触媒を使用する。触媒は前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサン100質量部当たり約5〜200質量部程度が好ましい使用量である。
【0060】
上記のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物は、常温でも反応が進行し、塗工液中での反応の進行は離型性低下の原因となり、また、塗工液の保存性や取り扱い性に問題が生じる。本発明ではこの様な問題を解消する為に、常温では熱硬化性シリコーン組成物に対して反応抑制効果を有し、加熱処理時にはその抑制効果が解消する反応抑制剤を使用してもよい。具体的には、本発明で使用する反応抑制剤は、溶媒の溶液の状態では、上記の熱硬化性シリコーン組成物に対する硬化触媒の作用を抑制し、加熱された状態や溶剤が揮散した状態、即ち加熱または乾燥状態では上記硬化触媒の作用を抑制せず、むしろ促進する材料である。この様な硬化抑制剤としては、例えば、アセチレンアルコールのシリル化物等が挙げられる。これらの反応抑制剤は市場から入手して使用することができる。かかる反応抑制剤は前記熱硬化性シリコーン組成物100質量部当たり約5〜100質量部の割合で使用することが好ましい。
【0061】
このような熱硬化性シリコーン組成物としては、市販品を使用してもよく、例えば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物からなる付加重合型シリコーン材料の主剤(信越化学工業株式会社製、KS−3603)に白金系硬化触媒からなる硬化剤(信越化学工業株式会社製、CAT−PL−50T)を混合して調製することができる。
【0062】
上記熱硬化性シリコーン組成物は、常温では固体状態であるが、加工時には加熱により液体状態に変化する材料である。 熱硬化性シリコーン組成物は、表面光沢度が60°反射で60以上である賦型面を固定すると共に、強度等の充分な皮膜物性を得るために硬化性を必要とする。
【0063】
熱硬化性シリコーン層の形成方法自体は、前記熱硬化性シリコーン組成物の塗布、乾燥加熱、熟成等染料受容層の形成と同様でよく、形成される前記熱硬化シリコーン層の厚みは0.01〜20μmの範囲が好ましい。
【0064】
本発明による流体移動制御形状賦型用離型シートは、上記した支持体およびエンボス賦型層との間に中間層を備えていてもよい。中間層は、耐熱性、賦型性、剥離性、耐溶剤性、目止め効果を確保するために配設されるものであり、熱可塑性樹脂層または目止め層である。
【0065】
熱可塑性樹脂層は熱可塑性樹脂からなる層であり、使用する熱可塑性樹脂は、繊維強化複合材料の種類や製造条件に応じて適宜選択することができる。例えば、アクリル系樹脂の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、その他、シリコーン系樹脂、アミノアルキッドを含むアルキッド系樹脂などが例示される。この中でも、ポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。耐熱性に優れるからである。本発明で使用するポリプロピレン系樹脂は、工程剥離紙としての耐熱性を損なわない限り、プロピレン単独重合体に限らず、プロピレンを主体とし、このプロピレンと例えば、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−ポリメチルペンテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0066】
また、高温・高圧条件で繊維強化複合材料の表面にリブレット模様を賦型する場合には、ポリメチルペンテン系樹脂を使用することが好ましい。たとえば、このような高温に対する耐熱性が要求され、より融点の高いポリメチルペンテン系樹脂が好適に使用される。ポリメチルペンテン系樹脂としては、4−メチル−1−ペンテンを主成分とするTPXなどのポリマーであり、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体の他、4−メチル−1−ペンテンと他のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜20のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。例えば、4−メチル−1−ペンテンを97〜98質量%、α−オレフィンを2〜3質量%の範囲で含有する4−メチル−1−ペンテンを主体とした共重合体であって、示差走査型熱量計(DSC法)で測定した融点が236〜238℃、ASTM D1238に準じて荷重=2.16kg、温度=260℃の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が160〜200g/10分の範囲にある樹脂などを好適に使用することができる。
【0067】
熱可塑性樹脂層は、単層に限定されず2層またはそれ以上であってもよい。
【0068】
熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂または組成物樹脂を、ロールコート、グラビアコート、押出しコート、ナイフコート、ミヤバーコート、ディップコートなどで支持体上に積層することで形成することができる。
【0069】
熱可塑性樹脂の厚さは、1〜300μmであることが好ましく、より好ましくは5〜100μmである。1μmより薄いと剥離性が低下する場合がある。
【0070】
熱可塑性樹脂層が多層である場合、例えば、第一ポリオレフィン系樹脂層と第二ポリオレフィン系樹脂層などを含む場合は、共押出しなどに支持体に積層してもよい。
【0071】
熱可塑性樹脂層は表面処理されていてもよい。このような表面処理によって、上記したエンボス賦型層の電離放射線硬化樹脂との密着性を向上させることができる。このような表面処理としては、フレーム処理、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。また、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、接着剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理することもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0072】
支持体とエンボス賦型層の間に設けられる中間層として、目止め層を形成することができる。目止め層は、例えば造膜性を有する樹脂に対して無機顔料を0.5〜50質量%含有したものを使用することができる。
【0073】
造膜性を有する樹脂としては、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、合成ラテックス、天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン系重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン系重合体、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリレート系重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、酢ビ−エチレン系共重合体、アクリレート−スチレン系重合体、ポリエチレン、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、エポキシ含有樹脂などを好適に使用することができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
【0074】
無機顔料としては、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛などがあり、前記造膜性を有する樹脂に対して、0.5〜70質量%を配合する。0.5質量%を下回ると目止め効果が低減する場合があり、一方、70質量%を超えると賦型性を阻害する場合がある。この目止め層は、好ましくは0.5〜20g/mで十分である。目止め材料の塗工は、上記した熱可塑性樹脂層と同様の方法で行うことができる。目止め材料のコーティングは、固形分100質量部に対して通常10〜1000質量部の溶剤で希釈して塗工される。溶剤の希釈により塗工に適正な粘度、例えば25℃において10〜3000mPa・秒の粘度を付与することができる。
【0075】
<繊維強化複合材料賦型方法>
本発明による繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法は、上記した離型シートを用いて実施されるものである。先ず、被賦型物である繊維強化複合材料について説明する。
【0076】
本発明で使用する繊維強化複合材料は、シート状のプレプリグを、マンドレル上に1ないし複数枚重ね合わせて、必要に応じて他の材料と積層し、樹脂の硬化後にマンドレルを引き抜くことにより、成型されるものである。プレプリグは、強化繊維へ未硬化又は半硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させたものである。
【0077】
強化繊維としては特に限定されるものではなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、スチール繊維などを使用することができる。なかでも炭素繊維は、成型後の機械的特性がよく、好適である。炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系の炭素繊維及びピッチ系の炭素繊維などがある。また、強化繊維の形態や配列なども特に限定されず、長繊維を一方向に引き揃えたシートや、クロス(織物)、トウ、マット、ニット、スリーブの形態がある。
【0078】
上記した強化繊維に含浸させる熱硬化性樹脂も特に限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジンなどがあるが、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば2官能樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂や、或いはこれらを組み合わせた樹脂などが好適に用いられる。さらに、3官能以上の多官能性エポキシ樹脂でもよく、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンやトリス(グリシジルオキシメタン)のようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、またはこれらの組み合わせが好適に用いられる。
【0079】
熱硬化性樹脂には性能に影響のない範囲で、硬化剤、樹脂粘度の制御やプリプレグ取扱い性の制御を目的として熱可塑性樹脂、ゴム粒子、可溶性のゴム、コアシェル構造のゴムなどの添加剤などを配合してもよい。硬化剤としては、ジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂、ポリメルカプタン、三フッ化硼素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などの硬化剤を添加することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリレート系樹脂等を好適に使用することができる。
【0080】
上記したプレプリグを、1または複数枚重ね合わせてオートクレーブバッグで包装し、オートバック包装内を真空に保ち、オートクレーブやオーブン等の加熱装置を用いて、プリプレグを熱硬化させることにより、繊維強化複合材料を成型することができる。
【0081】
<第一の実施形態による繊維強化複合材料の賦型方法>
本発明の第一の実施形態による繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法は、図9に示すように、上記した流体移動制御形状賦型用離型シート1のエンボス賦型層3上に、インキ組成物を塗布して、塗布膜8を設け(図9a)、前記塗布膜8が設けられた前記流体移動制御形状賦型用離型シート1を、前記塗布膜8と繊維強化複合材料9とが対向するようにして、前記繊維強化複合材料9の表面に貼りつけて、前記塗布膜8と前記繊維強化複合材料9とを接着し(図9b)、前記繊維強化複合材料9から、前記流体移動制御形状賦型用離型シート1を剥離して、前記繊維強化複合材料9の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有する塗布層8を形成する(図9c)工程を含むものである。すなわち、塗布膜に転写されたリブレット模様またはディンプル模様が、繊維強化複合材料の表面に転写されることにより、繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型することができる。
【0082】
塗布膜を形成するためのインキ組成物としては、賦型性に優れるとともに、繊維強化複合材料との接着性に優れ、繊維強化複合材料の表面に転写された後にも耐熱性および耐久性のあるような材料である必要がある。このようなインキ組成物としては、繊維強化複合材料のプレプリグを構成するマトリクス樹脂と同じ材料である、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含むインキ組成物や、熱可塑性マトリックス樹脂として使用されるポリエチレン、ポリプロピレン、2−ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド等のポリアリーレンスルフィド類からなるインキ組成物が挙げられる。また、模様等を形成することができる印刷インキとしてアクリル系、ビニル系、及びウレタン系等をビヒクルとして、顔料、染料、添加材等を添加して、機能性を付与したインキ組成物を用いることもできる。ビヒクルとしてはポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル酸系モノマーあるいはメタクリル酸系モノマーをコモノマーとする共重合体、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン等のスチレン系樹脂及びスチレン系共重合体、酢酸セルロース、塩化ビニル、酢酸ビニル、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂やアルコール不溶系樹脂が好ましく、これの中から1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0083】
インキ組成物の塗布方法としては、ナイフコート、ロールコート、グラビアコート等の従来公知の塗布方法を挙げることができる。また、インキ組成物の塗布量は、乾燥時におおいて、0.1〜2×10g/cm程度であり、塗布膜の厚みは0.1μm〜200mm程度が好ましく、3μm〜700μm程度がより好ましい。なお、インキ組成物として塗布することの他、上記したような樹脂組成物を、押出成形機などにより、流体移動制御形状賦型用離型シートのエンボス賦型層上に直接押出して、塗布膜を形成してもよい。
【0084】
塗布膜は、使用するインキ組成物の種類、濃度等によっては、完全に乾燥・固化すると、繊維強化複合材料の表面に貼りつけた際の、繊維強化複合材料との接着性が低下する場合がある。そのような場合には、離型シート1の塗布膜8上に、接着剤、粘着剤、接着シート、および粘着シートからなる群から選択される材料10を設けて、これら接着剤等を介して、塗布膜と繊維強化複合材料とを接着すればよい。
【0085】
接着剤および粘着剤としては、ゴム系、ポリ酢酸ビニル系、ポリエステル系、アクリル系等の溶液あるいはエマルジョンタイプ、熱、光、または硬化剤による化学反応を利用したフェノール系、尿素系、メラミン系、変性アクリル系、エポキシ系、第二世代アクリル系、シアノアクリレート系、ジメタクリレート系粘接着剤や、ホットメルトタイプのエチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性エラストマー系、感圧タイプのゴム系、アクリル系、シリコン系粘接着剤を好適に使用することができる。また、上記した粘接着剤を支持体上に塗布したシートや、織布や不織布に上記粘接着剤を含浸させたシートを用いてもよい。支持体としては、軟質PVC、ポリエステル、アラミド紙、PTFE、PPS、ポリイミドが挙げられ、また、粘接着剤含浸シートとしては、ガラス布、エポキシ含浸布等が挙げられる。
【0086】
<第二の実施形態による繊維強化複合材料の賦型方法>
本発明の第二の実施形態による繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法は、図10に示すように、上記した流体移動制御形状賦型用離型シート1のエンボス賦型層3上に、押出しコーティングにより、ポリオレフィン樹脂層11を形成し(図10a)、前記ポリオレフィン樹脂層11が設けられた前記流体移動制御形状賦型用離型シート1を、前記ポリオレフィン樹脂層11と繊維強化複合材料9とが対向するようにして、前記繊維強化複合材料9の表面に貼りつけて、前記ポリオレフィン樹脂層11と前記繊維強化複合材料9とを接着し(図10b)、前記繊維強化複合材料9から、前記流体移動制御形状賦型用離型シート1を剥離して、前記繊維強化複合材料9の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有するポリオレフィン樹脂層11を形成する(図10c)、工程を含むものである。すなわち、ポリオレフィン樹脂層に転写されたリブレット模様が、繊維強化複合材料の表面に転写されることにより、繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型することができる。
【0087】
流体移動制御形状賦型用離型シートのエンボス賦型層上に設けるポリオレフィン層としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂またはこれらの共重合体を好適に使用することができる。使用するポリエチレン系樹脂としては特に制限はなく、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれでもよい。ポリオレフィン層の形成は、例えば、押出機に、上記したような樹脂を投入し、Tダイを介してこれらを離型シートのエンボス賦型層上に共押出ししてバックアップロールと冷却ロールとで積層することにより形成することができる。
【0088】
ポリオレフィン層の厚みは3〜700μm程度が好ましい。
【0089】
ポリオレフィン樹脂層11と繊維強化複合材料9とを貼り合わす際に、両者の接着性が乏しい場合がある。そのため、離型シートのポリオレフィン層11上に、接着剤、粘着剤、接着シート、および粘着シートからなる群から選択される材料10を設けて、これら接着剤等を介して、塗布膜と繊維強化複合材料とを接着すればよい。これら接着剤等は、上記したものと同様のものを使用することができる。
【0090】
<第三の実施形態による繊維強化複合材料の賦型方法>
本発明の第三の実施形態による繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法は、繊維強化複合材料9の表面にインキ組成物を塗布して、塗布膜8を設け(図11a)、前記塗布膜8が設けられた繊維強化複合材料9に、前記塗布膜8と、流体移動制御形状賦型用離型シート1のエンボス賦型層3とが対向するようにして、前記流体移動制御形状賦型用離型シート1を貼りつけて、前記塗布膜8と前記エンボス賦型層3とを貼り合わせ(図11b)、前記繊維強化複合材料9から、前記流体移動制御形状賦型用離型シート1を剥離して、前記繊維強化複合材料9の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有する塗布層8を形成する(図11c)工程を含むものである。すなわち、繊維強化複合材料の表面に設けたインキ組成物からなる塗布膜の表面に、離型シートのリブレット模様が転写されることにより、繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型することができる。
【0091】
塗布膜を形成するためのインキ組成物としては、上記したものと同様のものを使用することができる。また、インキ組成物の塗布量は、乾燥時におおいて、0.1〜2×10g/cm程度であり、塗布膜の厚みは0.1μm〜200mm程度が好ましく、3μm〜700μm程度がより好ましい。なお、インキ組成物として塗布することの他、上記したような樹脂組成物を、押出成形機などにより、繊維強化複合材料上に直接押出して、塗布膜を形成してもよい。
【0092】
上記のようにして得られる流体移動制御形状が表面に賦型された繊維強化複合体の用途としては、風車の回転翼や航空機の翼のほかにも、例えば、混合パイプやパイプラインを繊維強化複合体で形成して、そのパイプ内壁がエンボス賦型された形態とすることができる。このような繊維強化複合体からなるパイプは、パイプの機械的強度が優れるだけでなく、パイプ内を流れる気体または液体とパイプ内壁面との抵抗を低減できるため、長距離間輸送用のパイプに特に好適である。また、船体、サーフボード、ルアー(疑似餌)、ジェット天秤、飛行機、ロケット、ミサイル、宇宙ステーション、自転車タイヤホイール、自転車筐体、ヘルメット、列車(パンタグラフや先頭部分)、ゴーグル、スキー板、スノーボード、リュージュ板、カヌー、カヌーオール、プロペラ、しゃもじ、ゴルフヘッド、シャフト、テニスラケット、ウエアー等のスポーツ関連用途、高層建築物、カメラ三脚、吹き矢等、種々のものに適用することができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0094】
<離型シートの作製>
基材となる紙には中性紙(坪量180g/m)を用い、押出しコーティングによりポリメチルペンテン樹脂層(70μm)を形成した後、易接着処理としてポリメチルペンテン樹脂層の表面をコロナ処理した。このポリメチルペンテン樹脂層の表面に、電離放射線硬化性樹脂(ユピマーUV・V3031、三菱化学(株)製)40質量部、樹脂100質量部につき光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア907)を3質量部、希釈溶剤としてメチルエチルケトンを固形分濃度が30質量部となるように添加した組成物をバーコーターで塗工を行い、塗膜厚さが乾燥後約5g/mとなるように塗工し、110℃で1分間加熱蒸発乾燥して熱硬化電離放射線硬化性組成物膜を得た。
【0095】
得られた熱硬化電離放射線硬化性組成物膜上に熱硬化シリコーン組成物をバーコーターで塗工を行い、塗膜厚さが乾燥後0.5g/mとなるように塗工し、120℃で1分間加熱、蒸発乾燥、熱硬化させて熱硬化シリコーン膜を形成した。
【0096】
次に、熱硬化シリコーン膜の表面にエンボス加工を行なった。エンボス加工は、表面にリブレット柄(高さ100μm、幅0.5mmの矩形断面の凸部が、横ピッチ1.5mmの間隔で一列に配列したもの)が形成されたエンボスロールを備えたエンボス機を用いて、熱硬化シリコーン膜の表面に、120℃に加熱したエンボスロールを押圧しながら、高圧水銀灯で700mJの積算光量の紫外線を照射することにより行った。このようにして、表面に、エンボス加工が施された離型シートを得た。
【0097】
<繊維強化複合材料の準備>
プリプレグ(東レ(株)製、P2302、炭素繊維目付190g/m、樹脂目付35g/m)を4枚重ね合わせて加圧し、130℃で加熱して硬化させることにより、繊維強化複合材料を得た。
【0098】
<繊維強化複合体>
上記で得られた離型シートのエンボス賦型面に、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)を押し出し、賦型面と反対面にアクリル系粘着シート(ダブルタックテープ、積水化学工業製)を貼り合せた。次いで、実施例1で用いたものと同様の繊維強化複合材料の表面に、離型シートのアクリル系粘着シート面を貼り合わせ、離型シートを剥離することにより、表面に流体異動制御模様が賦型された繊維強化複合体を得た。
【0099】
実施例2
実施例1と同様にして離型シートを準備した。この離型シートのエンボス賦型面に、ETFE(Ethylene tetrafluoroethylene)を押し出し、賦型面と反対面にアクリル系粘着シート(ダブルタックテープ、積水化学工業製)を貼り合せた。次いで、上記の繊維強化複合材料の表面に、離型シートのアクリル系粘着シート面を貼り合わせ、離型シートを剥離することにより、表面に流体異動制御模様が賦型された繊維強化複合体を得た。
【0100】
実施例3
下記の成分を攪拌機により混合し、粘接着剤を調製した。
アクリル酸エステル(BA−EA−AN)共重合体樹脂 100質量部
(SG−P3、ナガセケムテック社製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 50質量部
(JER828、ジャパンエポキシレジン社製)
NBR変性エポキシ樹脂 50質量部
(EPR4030、ADEKA社製)
フェノキシ樹脂 100質量部
(YP−50EK35、新日鐵化学社製)
ジシアンジアミド(DICY7、ジャパンエポキシレジン社製) 7質量部
【0101】
実施例1と同様にして離型シートを準備した。この離型シートのエンボス賦型面に、上記の粘接着剤をコンマコーターにて、塗布量が100g/mとなるように塗布して、その粘接着層上に、セパフィルム(SP−PET 01BU、東セロ社製)を貼り合わせて、積層体を得た。得られた積層体のセパフィルムを剥離して粘接着層を露出させて、プリプレグと貼り合せた。次いで、130℃で2時間で加熱して粘接着剤を硬化させた。次いで、離型シートを剥離することにより、表面に流体異動制御模様が賦型された繊維強化複合体を得た。
【0102】
実施例4
実施例1と同様にして離型シートを準備した。この離型シートのエンボス賦型面に、主剤(APGインキ、十条ケミカル社製)100質量部、硬化剤(JA−950、十条ケミカル社製)10質量部、溶剤(テトロン溶剤、十条ケミカル社製)10質量部からなるインキをコンマコーターで、乾燥後、100g/mとなるよう塗布して、塗膜を形成し、その塗膜面上に、接着剤(SKダイン1700、総研化学製)を5g/m塗布し、その上に、繊維強化複合材料を貼り合わせ、離型シートを剥離することにより、表面に流体異動制御模様が賦型された繊維強化複合体を得た。
【0103】
実施例5
実施例1と同様にして離型シートを準備した。この離型シートのエンボス賦型面に、主剤(APGインキ、十条ケミカル社製)100質量部、硬化剤(JA−950、十条ケミカル社製)10質量部、溶剤(テトロン溶剤、十条ケミカル社製)10質量部からなるインキをコンマコーターで、乾燥後、100g/mとなるよう塗布して、塗膜を形成し、その塗膜面上に、アクリル系粘着シート(ダブルタックテープ、積水化学工業製)を貼り合せた。次いで、上記の繊維強化複合材料の表面に、離型シートのアクリル系粘着シート面を貼り合わせ、離型シートを剥離することにより、表面に流体異動制御模様が賦型された繊維強化複合体を得た。
【0104】
<繊維強化複合体の評価>
実施例1〜5において得られた各繊維強化複合体の断面を光学顕微鏡により観察することにより、繊維強化複合体表面に賦型された形状の観察を行った。その結果、いずれの繊維強化複合体にも、深さ約100μm、幅約0.5mmの矩形断面の凹部が、横ピッチ1.5mmの間隔で一列に配列したリブレット模様が、繊維強化複合体表面に賦型されていることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体である紙と、その紙上に設けられたエンボス賦型層とを備えた流体移動制御形状賦型用離型シートを用いて、プレプリグを硬化させた繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法であって、
前記流体移動制御形状賦型用離型シートのエンボス賦型層上に、インキ組成物を塗布して、塗布膜を設け、
前記塗布膜が設けられた前記流体移動制御形状賦型用離型シートを、前記塗布膜と繊維強化複合材料とが対向するようにして、前記繊維強化複合材料の表面に貼りつけて、前記塗布膜と前記繊維強化複合材料とを接着し、
前記繊維強化複合材料から、前記流体移動制御形状賦型用離型シートを剥離して、前記繊維強化複合材料の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有する塗布層を形成する、
ことを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記塗布膜を、接着剤、粘着剤、接着シート、および粘着シートからなる群から選択される材料を介して、前記繊維強化複合材料と貼り合わせる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも支持体である紙と、その紙上に設けられたエンボス賦型層とを備えた流体移動制御形状賦型用離型シートを用いて、プレプリグを硬化させた繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法であって、
前記流体移動制御形状賦型用離型シートのエンボス賦型層上に、押出しコーティングにより、ポリオレフィン樹脂層を形成し、
前記ポリオレフィン樹脂層が設けられた前記流体移動制御形状賦型用離型シートを、前記ポリオレフィン樹脂層と繊維強化複合材料とが対向するようにして、前記繊維強化複合材料の表面に貼りつけて、前記ポリオレフィン樹脂層と前記繊維強化複合材料とを接着し、
前記繊維強化複合材料から、前記流体移動制御形状賦型用離型シートを剥離して、前記繊維強化複合材料の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有するポリオレフィン樹脂層を形成する、
ことを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂層を、接着剤、粘着剤、接着シート、および粘着シートからなる群から選択される材料を介して、前記繊維強化複合材料と貼り合わせる、請求項7に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも支持体である紙と、その紙上に設けられたエンボス賦型層とを備えた流体移動制御形状賦型用離型シートを用いて、プレプリグを硬化させた繊維強化複合材料の表面に流体の流れを制御できる凹凸模様を賦型する方法であって、
繊維強化複合材料の表面にインキ組成物を塗布して、塗布膜を設け、
前記塗布膜が設けられた繊維強化複合材料に、前記塗布膜と、流体移動制御形状賦型用離型シートのエンボス賦型層とが対向するようにして、前記流体移動制御形状賦型用離型シートを貼りつけて、前記塗布膜と前記エンボス賦型層とを貼り合わせ、
前記繊維強化複合材料から、前記流体移動制御形状賦型用離型シートを剥離して、前記繊維強化複合材料の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様を有する塗布層を形成する、
ことを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法に使用される流体移動制御形状賦型用離型シートであって、
少なくとも支持体である紙と、その紙上に設けられたエンボス賦型層とを備え、
前記エンボス賦型層の表面に、流体の流れを制御できる凹凸模様が賦型されていることを特徴とする、流体移動制御形状賦型用離型シート。
【請求項7】
前記凹凸模様が、シート長手方向に筋状の凹凸形状を有し、シート幅方向に複数の凸部を有する断面形状を有する、請求項6に記載の流体移動制御形状賦型用離型シート。
【請求項8】
前記凹凸模様がディンプル模様である、請求項6に記載の流体移動制御形状賦型用離型シート。
【請求項9】
前記賦型層が、シリコーン化合物を含んでなる、請求項6〜8のいずれか一項に記載の流体移動制御形状賦型用離型シート。
【請求項10】
前記賦型層が、電離放射線硬化樹脂層と熱硬化シリコーン層とを含んでなり、前記熱硬化シリコーン層の表面に前記凹凸模様が賦型されている、請求項9に記載の流体移動制御形状賦型用離型シート。
【請求項11】
前記支持体と前記賦型層との間に、中間層が設けられている、請求項6〜10のいずれか一項に記載の流体移動制御形状賦型用離型シート。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法により得られた、繊維強化複合成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−61820(P2012−61820A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209858(P2010−209858)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】