説明

繊維強化複合材料

【課題】 低毒性、不燃性、紡糸安定性、溶剤回収性に優れ、かつ安価な、工業的に湿式紡糸に適用できるポリケトン溶液、該ポリケトン溶液に湿式紡糸を適用したポリケトン繊維の製造方法、並びにポリケトン繊維を用いた繊維強化複合材料を提供する。
【解決手段】 繊維強化複合材料であって、下記(a)〜(d)を満足する、金属塩水溶液を溶剤とするポリケトン溶液から得られたポリケトン繊維が使用されていることを特徴とする繊維強化複合材料。
(a)95重量%以上が一酸化炭素とエチレンとの完全交互共重合体からなるポリケトンから構成されていること、(b)単糸繊度が1〜4dであること、(c)ポリケトン繊維中のパラジウム、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の含有量が合計で10ppm以下であること、(d)100Hzの動的粘弾性測定において、180℃の貯蔵粘弾性が80g/d以上であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリケトン溶液及びそれを用いた繊維とその製造方法に関する。更に、詳しくは、低毒性、不燃性、紡糸安定性及び溶剤回収性に優れ、かつ安価なポリケトン溶液と、該溶液を用いた湿式紡糸法及び該方法により得られた繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一酸化炭素とエチレン、プロピレンのようなオレフィンとをパラジウムやニッケルといった遷移金属錯体を触媒として用いて重合させることにより、一酸化炭素と該オレフィンとが実質的に交互共重合したポリケトンが得られるようになった(非特許文献1)。ポリケトンを産業資材用繊維として応用する検討が多くの研究者によってなされ、高強度、高弾性率、高温での寸法安定性、接着性、耐クリープ特性を活かした、タイヤコード、ベルト等の補強繊維、コンクリート補強用繊維といった複合材料用繊維への応用が期待されている。
【0003】
ポリケトンは溶融すると熱架橋しやすいので、繊維を作る場合、湿式紡糸を適用することが好ましい。特に、高度な力学物性を発現できる実質的に一酸化炭素とエチレンのみから得られてなるポリケトン(ポリ(1−オキソトリメチレン)、以下、ECOと略記する)は、熱架橋しやすいために溶融紡糸が、極めて困難であり、実質的に湿式紡糸でしかその繊維を得ることができない。
ポリケトンを湿式紡糸する場合、用いる溶媒としてはヘキサフルオロイソプロパノールや、m−クレゾール、レゾルシン/水といったフェノール系溶剤、レゾルシン/カーボネートといった有機溶剤が知られている。しかしながら、これらの溶剤は、工業的規模で実施するにはいずれも大きな問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、脂肪族ポリケトンの湿式紡糸法が開示されており、溶剤としてヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール及びこれらの混合物を用いることが開示されている。特に特許文献2には、これらの溶剤を包含する溶剤の特性として、双極子モーメントが3×10-30〜9×10-30クーロン・メートル、ヒルデブランド溶解度パラメーターが16〜27MPa-1/2である溶剤がポリケトンの溶媒になることを開示している。しかしながら、ヘキサイソフルオロプロパノールは極めて高価であり、回収でのわずかなロスを考慮しても工業的に全く採算が取れないこと、また毒性が高く、沸点が低いため紡糸設備を完全密閉型にする必要があることから工業的に使用することはできない。
また、m−クレゾールは、脂肪族ポリケトンの溶剤となり得るが、溶解力が乏しくヘキサフルオロイソプロパノールとの共用が必須となること、また毒性が高く、かつフェノール臭が強いので紡糸設備を完全密閉型にする必要がある。更にこれらの溶剤を用いて得られた繊維の力学物性が低く、またこれらの溶剤を用いた溶液からの脱溶媒速度が余りにも低いために、紡糸速度を高くすると繊維化が困難となる場合もあった。
【0005】
また、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5には、少なくとも一つは芳香族アルコールである溶剤を用いることが開示されており、具体的な例としてレゾルシン/水、フェノール/アセトン、ヒドロキノン/プロピレンカーボネート、レゾルシン/プロピレンカーボネートが示されている。しかしながら、これらの芳香族アルコールも毒性が高く、かつフェノール臭が強いので紡糸設備を完全密閉型にする必要があり、更に可燃性有機溶剤を共溶剤として用いる場合には防爆設備が必要となる。また、ECOのこれらの溶剤に対する溶解性は必ずしも十分ではなく、得られるドープのポリマー濃度が上げられず、高強度が得にくかった。また、レゾルシン/水では水凝固では脱溶媒速度が遅すぎるために、
メタノールを凝固浴に使用せざるを得ず、紡糸設備や溶媒回収設備がやはり高価で煩雑な設備を使用しなくてはならなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平2−112413号公報
【特許文献2】特表平4−505344号公報
【特許文献3】特開平4−228613号公報
【特許文献4】特表平7−508317号公報
【特許文献5】特表平8−507328号公報
【非特許文献1】工業材料、12月号、第5ページ、1997年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記で述べた公知のポリケトン溶剤では達成されていない、低毒性、不燃性、紡糸安定性、溶剤回収性に優れ、かつ安価な、工業的に湿式紡糸に適用できるポリケトン溶液、該ポリケトン溶液に湿式紡糸を適用したポリケトン繊維の製造方法、ならびにポリケトン繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、数多くの溶剤についてポリケトンの溶解性を詳細に検討した結果、ポリケトンが疎水性であるにもかかわらず、極めて限られた特定の塩を含む水溶液にポリケトンが溶解することを見いだし、更に検討の結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、一酸化炭素とオレフィンの共重合体であるポリケトンの溶液において、該共重合体の90重量%以上が一酸化炭素ユニットとオレフィンユニットであり、溶剤が亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、及び鉄塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の水溶液である上記ポリケトンの溶液及びそれを用いたポリケトン繊維の製造方法並びにポリケトン繊維に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いるポリケトンは、90重量%以上が一酸化炭素ユニットとオレフィンユニットからなる共重合体である。ここで、一酸化炭素ユニットは一酸化炭素が反応して生成するカルボニル基を指し、オレフィンユニットはオレフィンが反応して生成するアルキレン基である。従って、本発明に用いるポリケトンは、90重量%以上がカルボニル基とアルキレン基からなるポリマーである。このアルキレン基の水素は水酸基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、ハロゲン元素等で置換されていてもよい。10重量%未満であればケトン以外のユニットを有していてもよい。一酸化炭素ユニットとオレフィンユニットはランダムでも交互でもよいが、繊維としての強度、弾性率、接着性、寸法安定性、耐クリープ性、耐光性が優れるという点で、構造式(1)に示す一酸化炭素とオレフィンが交互共重合してなるポリケトンが特に好ましい。
【0010】
構造式(1)
【化1】

ここで、Aはアルキレン基を示す。
【0011】
すなわち、この好ましい構造式(1)のポリケトンは、一酸化炭素由来のカルボニル基
がオレフィン由来のアルキレン基と交互に配列されているポリマーである。このポリマー中には部分的にカルボニル基同士、アルキレン基同士が繋がっていてもよいが、95重量%以上が一酸化炭素とオレフィンの完全交互共重合体、すなわち、アルキレン基の次にはカルボニル基が結合し、カルボニル基の次にはアルキレン基が結合する共重合体からなるポリケトンであることが耐熱性、耐光性を向上させる観点から好ましい。もちろん、ポリマー中の一酸化炭素とオレフィンが完全交互共重合した部分の含有率は高ければ高いほどよく、好ましくは97重量%以上であり、最も好ましくは100重量%である。
【0012】
また、本発明に用いるポリケトンは、一酸化炭素と1種のオレフィンとのコポリマーであっても、2種以上のオレフィンとの共重合ポリマーであってもよい。用いるオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、スチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ウンデセン酸、ウンデセノール、6−クロロヘキセン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらのオレフィンを用いて得られるポリケトンとしては、実質的に一酸化炭素とエチレンのみの交互共重合単位から構成されるポリケトンが、高強度、高弾性率、高温での寸法安定性が優れるという観点から最も好ましい。また、本発明の溶剤への溶解性が特に優れているという観点から、ポリケトンを構成するオレフィンとして0.1〜10モル%、好ましくは4〜8モル%のプロピレンを含んだ、一酸化炭素とエチレンの交互共重合単位と一酸化炭素とプロピレンの交互共重合単位とが混在したポリケトンが好ましい。
【0013】
また、これらのポリケトンは、目的に応じて酸化防止剤、ゲル化抑制剤、艶消し剤、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、金属石鹸等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明に用いるポリケトンの製造方法については、公知の方法をそのまま、あるいは修正して用いることができる。例えば、一酸化炭素とエチレンやプロピレン等のオレフィンとを、パラジウム、ニッケル、コバルト等の第VIII族遷移金属化合物、構造式(2)で示されるリン系二座配位子及び、pKaが4以下の酸のアニオンからなる触媒の存在下で重合させて、本発明に用いるポリケトンを合成することができる。
構造式(2) R1R2P−R−PR3R4
(ここで、R1、R2、R3及びR4は異種又は同種の炭素数1〜30の有機基であり、Rは炭素数2〜5の有機基である。)
【0014】
第VIII族遷移金属化合物としては、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、白金等が挙げられるが、重合活性の観点からパラジウム、ニッケル、コバルトが好ましく、特に好ましくはパラジウムである。触媒はカルボン酸塩、特に酢酸塩として用いるのが好ましい。
また、構造式(2)のリン系二座配位子については、R1、R2、R3及びR4が未置換のフェニル基、あるいは、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つが、フェニル基に結合しているリン元素に対してオルトの位置にある1つ以上のアルコキシ基を含むフェニル基であることが好ましい。また、2つのリン原子を結ぶRは、トリメチレン基であることが好ましい。pKaが4以下の酸としては、トリフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0015】
本発明に用いるポリケトンの製造方法の具体例を以下に例示する。
重合は、メタノール、エタノールのような低級アルコール中に、パラジウム、ニッケル、コバルト等の第VIII族遷移金属化合物、構造式(2)で示されるリン系二座配位子、及びpKaが4以下の酸のアニオンからなる触媒を添加し、この溶液に一酸化炭素とオレフィンを導入させて行う。一酸化炭素とオレフィンのモル比は、5:1〜1:2が好ましい。触媒に用いる第VIII族遷移化合物は、重合に用いるオレフィン1モル当たり、10-8〜0.1モル量相当の金属元素量にすることが触媒活性の観点から好ましい。とり
わけ、得られるポリケトン中にパラジウム、ニッケル及びコバルトが総量としてポリケトン中に100ppm以下でしか含有されないように、仕込みの第VIII族遷移金属化合物の量を設定することが本発明の目的を達成するためには好ましい。
【0016】
また、構造式(2)で示されるリン系二座配位子は、第VIII族遷移金属化合物1モル当たり0.1〜20モル、好ましくは1〜3モル使用することが重合活性の観点から好ましい。また、pKaが4以下の酸は、第VIII遷移族金属化合物1グラム原子当たり0.01〜150当量が好ましく、特に好ましくは1〜50当量である。また、重合は、50〜150℃、圧力は4〜10MPaで、通常10分〜20日間行うことが好ましい。また、重合中の触媒活性を維持するために、また、得られたポリケトンの耐熱性を高くするために、1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン等のキノンを触媒金属元素のモル数に対して、0.1〜100倍添加してもよい。
得られたポリケトン含有組成物は、濾過した後、触媒、キノン等を洗い流すために洗浄を行った後、乾燥し単離する。
また、ポリケトンの製造は、上記で示した触媒を、ポリマー、無機粉体等に担持させ、いわゆる気相重合で行ってもよく、この方法はポリケトンに触媒が残りにくいのでむしろ好ましい方法である。
【0017】
こうして得られたポリケトンは元素分析等を行い、ポリケトン中に含まれるパラジウム、ニッケル及びコバルトの元素量を測定し、その総量が100ppm以下であればそのまま後述する紡糸工程へ供することができる。しかしながら、100ppmを超える場合、ポリケトン中に含まれるパラジウム、ニッケル及びコバルトの量を低減する操作を行うことが推奨される。これらの金属の量を低減する方法としては、特に制限はないが、例えば得られたポリケトンを、溶媒を用いて1〜20回、繰り返し洗浄し、パラジウム、ニッケル及びコバルトの量を100ppm以下にする方法、その他の方法として、溶媒中にポリケトンを分散させ一酸化炭素やリン系配位子を導入して、金属カルボニル錯体や金属リン錯体を生成させ、金属を溶出させる方法等が挙げられる。
【0018】
上記方法に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、ペンタン、ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素等が挙げられる。洗浄温度は特に制限されないが、例えば0〜80℃である。洗浄時間も制限されないが、例えば一回当たり10秒〜1時間である。こうして洗浄操作を行って、再度パラジウム、ニッケル及びコバルトの量を測定し、その総量が100ppm以下であれば、紡糸工程へ供することができる。
【0019】
本発明のポリケトン溶液は、一酸化炭素とオレフィンの共重合体であるポリケトンの溶液において、該共重合体の90重量%以上が一酸化炭素ユニットとオレフィンユニットであり、溶剤が亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩及び、鉄塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の水溶液である溶液である。ここで、溶液とはポリケトンが溶解している、塩を含む水溶液であり、溶剤とはポリケトンを溶解するための、塩が溶解した水溶液である。なお、これらの水溶液のヒルデブランド溶解度パラメーターは47MPa-1/2以上となる。亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、及び鉄塩としては、水に対して30重量%以上、好ましくは50重量%以上溶解するものが好ましい。
【0020】
具体的には、亜鉛塩としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、亜塩素酸亜鉛等があり、カルシウム塩としては、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化カルシウム等があり、チオシアン酸塩としては、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸アルミニウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸バリウム等があ
り、鉄塩としては、臭化鉄、ヨウ化鉄、塩化鉄等がある。これらの塩のうち、ポリケトンの溶解性、溶媒のコスト、水溶液の安定性の点で塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウムがさらに好ましく、特に好ましくは塩化亜鉛である。
【0021】
また、本発明のポリケトン溶液には、溶解性向上、コストダウンやポリケトン溶液の安定性等を目的として、複数の塩を混合してもかまわないし、むしろ溶解性を高める観点から好ましい方法である。また、本発明の目的を阻害しない範囲で他の無機物、有機物を含んでいてもよい。例えば、ポリケトン以外のポリマー及び/又は有機物を含んでいてもよい。これらの含有量としては特に制限はないが、通常70重量%以下である。
溶液に用いる水については、工業的に用いることが可能なものであれば特に制限はなく、飲料水、河川水、イオン交換処理水等、任意のものが使用できる。更に、ポリケトンを溶解する能力を阻害しない範囲で、通常は水の50重量%以内で、メタノール、エタノール、エチレングリコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の有機溶剤を含有してもよい。
【0022】
本発明のポリケトン溶液に用いる溶剤中の亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、及び鉄塩の濃度については、十分な溶解性を得るためには、5〜85重量%、好ましくは30〜85重量%、より好ましくは45〜75重量%、更に好ましくは67〜75重量%である。なお、ここで言う各塩の濃度は、以下の式で定義される値である。溶剤の重量は、ポリケトンは含まず、塩を含んだ水溶液の重量を示す。
塩の濃度(重量%)=(塩の重量/溶剤の重量)×100
【0023】
本発明に用いる溶剤のうち、ハロゲン化亜鉛水溶液は溶解性の高さからポリケトンの最も優れた溶剤となるが、ハロゲン化亜鉛のみの塩を含む水溶液をポリケトンの溶剤として用いると、得られたポリマー溶液の粘度が高くなりすぎる傾向があるために、ポリマー濃度を高めると脱泡が困難になったり、高粘度溶液を調製するための高価で特殊な押出機や溶解装置が必要となってしまう場合がある。また、水系の凝固浴に通して凝固を行った場合、水分を含んだ状態の凝固糸の強度が低いために、糸切れが起こりやすい傾向にある。更に、ハロゲン化亜鉛水溶液にポリケトンを溶解させると、溶液が黄色味を帯び、時間と共にその着色の程度がひどくなり、このようなポリケトン溶液の着色は、繊維の着色に繋がるために、得られた繊維の品位を低下させる要因となる。
【0024】
このような問題は、ハロゲン化亜鉛水溶液に特定の水溶性の塩を添加することにより解決できる。すなわち、溶剤として少なくとも1種のハロゲン化亜鉛と、更に該ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する少なくとも1種の金属塩を含有する水溶液を用いることである。
ここで、ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する少なくとも1種の金属塩とは、ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する金属塩であれば特に制限はなく、典型金属元素又は遷移金属元素の、ハロゲン化塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等の無機塩、酢酸塩、ギ酸塩、スルホン酸塩等の有機金属塩のいずれでもよいが、ハロゲン化亜鉛と陰イオン元素を共通にすると回収しやすいという利点を有するので、ハロゲン化亜鉛以外のハロゲン化金属塩が好ましい。また、金属の種類としては、得られるポリマー溶液の溶液粘度低下の程度が大きいという観点から、ハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属が好ましい。
【0025】
この場合、回収をしやすくするという観点から、ハロゲン化亜鉛に用いたハロゲンと同じハロゲンを陰イオンに用いることが好ましく、特に塩化物が好ましい。好ましい具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化バリウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化リチウム、臭化バリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化バリウム等が挙げられ、ポリマー溶液の粘度低下の大きさ
、紡糸の安定性、得られる繊維の着色の少なさ、回収のしやすさ、金属塩の安定性、コストの観点から特に塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化バリウムが好ましく、特に塩化ナトリウム、塩化カルシウムが好ましい。また、少なくとも1種の金属塩と定義しているように、複数の種類の金属塩を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
溶剤中に含まれる少なくとも1種のハロゲン化亜鉛の量としては、溶解性の良さから5〜75重量%が好ましく、更に好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは45〜70重量%である。又はハロゲン化亜鉛と、該ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する少なくとも1種の金属塩との比は、ポリマー溶液粘度の低下と着色の抑制の観点から、98/2〜20/80が好ましく、更に好ましくは90/10〜66/34である。この溶液中の少なくとも1種のハロゲン化亜鉛と、該ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する少なくとも1種の金属塩は、溶液中で反応していてもよい。例えば、塩化亜鉛と塩化ナトリウムを用いた場合、溶解条件によっては4塩化亜鉛錯体を形成するが、このような状態になってもよい。
【0027】
本発明のポリケトン溶液中のポリマー濃度は0.005〜70重量%であることが好ましい。ポリマー濃度が0.005重量%未満では濃度が低すぎて、凝固時に繊維になりにくい欠点を有するほか、繊維の製造コストが高くなりすぎる。また、70重量%を超えると、もはやポリマーが溶剤に溶解しなくなる。溶解性、紡糸のしやすさ、繊維の製造コストの観点から、好ましくは0.5〜40重量%、更に好ましくは1〜30重量%である。ここで言うポリマー濃度は、以下の式で定義される値である。
ポリマー濃度(重量%)=
(ポリマーの重量/(ポリマーの重量+溶剤の重量))×100
【0028】
本発明のポリケトン溶液は、90重量%以上が一酸化炭素ユニットとオレフィンユニットである共重合体であるポリケトンを、亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、及び鉄塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含む水溶液に、撹拌しながら一気に又は数回に分けて添加し、その後撹拌操作を続けて実質的に完全に溶解させて製造することができる。ポリケトンの形態としては、粉、チップ等、特に制限はないが、溶解速度、重合過程で生成した熱架橋物量が少ないという観点から粉末が好ましい。
【0029】
溶解する時の温度は特に制限はないが、溶解速度、溶剤の安定性の観点から通常は5〜200℃、好ましくは30〜150℃の範囲である。金属の種類、組み合わせによっては、添加した金属塩それ自体や、又は2種若しくはそれ以上の金属塩が互いに反応して生成する金属塩や錯体が、温度を下げると結晶化し析出する場合がある。そのような場合は、結晶が析出しない温度で溶解及び紡糸を行うことが重要である。また、溶解は得られたポリケトン溶液に気泡が入らないように、減圧下で行うことが好ましい。減圧の程度は特に制限はないが、700torr以下が好ましく、更に好ましくは100torr以下、最も好ましくは50torr以下である。
【0030】
溶解方法としては、例えば撹拌羽根による撹拌、1軸又は2軸押出機を用いた撹拌、超音波を用いた撹拌等、公知の方法が適用できる。
こうして得られたポリケトンの溶液は、ごみ、ゲル化物、少量の未溶解ポリマー、触媒残さ等を除去するために、必要に応じてフィルターを通し均質な溶液となる。
本発明のポリケトン溶液は湿式紡糸を行うことで、強度、弾性率に優れた繊維となる。すなわち、本発明のポリケトン溶液を紡口口金から押し出し、続いて得られた繊維状物から塩の一部又は全部を除去した後、0〜300℃の範囲で該繊維状物を延伸して高性能の繊維を製造することができる。
【0031】
該繊維状物から上記金属塩を除去する方法としては、例えば本発明に用いる溶剤よりも
ポリケトンに対して溶解性の低い溶剤に押し出す方法が好ましい。このような溶解性の低い溶剤としては、本発明に用いた溶剤より濃度の低い金属塩溶液が好ましく、特に水、酸性水溶液、アルカリ水溶液等を用いることが好ましい。該繊維状物を凝固溶剤に通す場合は、一定速度で引っ張りながら通すことが好ましい。この時の速度としては、特に制限はないが、通常0.001〜3000m/minである。
【0032】
こうして上記金属塩を除去した繊維は、水に代表される液体を除去するために乾燥工程を施すことが好ましい。乾燥を行う場合、水分を含んだ、上記金属塩を除去した繊維を、一旦巻き取ってから乾燥しても、巻き取らずに乾燥してからそのまま延伸工程に供してもよい。乾燥工程は、好ましくは10〜300℃の雰囲気で行い、足長乾燥のみならず、必要に応じて1.1〜10倍の延伸や弛緩を行ってもよい。乾燥工程を経た繊維は、延伸工程を受けて延伸糸となる。延伸倍率は1.1倍以上、好ましくは、3倍以上、更に好ましくは、6倍以上である。延伸は、延伸のしやすさから0〜300℃、好ましくは150〜300℃の温度で、1段又は多段で行うことができる。
【0033】
より好ましい湿式紡糸方法としては、以下のような方法が挙げられる。
本発明のポリケトン溶液は、ごみ、ゲル化物、少量の未溶解ポリマー、触媒残さ等を除去するために、必要に応じてフィルターを通した後、紡口口金から押し出し、凝固浴に通してポリケトンを繊維状物とする。凝固浴は、ポリケトン溶液から金属塩の一部又は全部を除去し、凝固浴に満たされた溶剤にポリケトンが溶解しない状態に変えて繊維形状を保持させる役割を持つ。凝固浴に用いる溶剤としては、50重量%以上が水で構成された溶剤が、脱塩速度が速いという点で好ましい。例えば、ハロゲン化亜鉛と該ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する少なくとも1種の金属塩を含む水溶液を溶剤に用いた場合、凝固浴に用いる溶剤は、水、ハロゲン化亜鉛及び/又は該ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する少なくとも1種の金属塩を50重量%未満含む水溶液である。
【0034】
もちろん、50重量%未滴の範囲でメタノール、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶剤、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等を含有してもよい。これらの溶剤は必要に応じて2種以上混合してもよい。特に好ましくは、溶剤に用いた塩を繊維状物からできる限り除去できるという観点から、実質的に100%の水、又は溶剤に用いた塩が1〜45重量%含む水溶液である。凝固浴の温度としては、特に制限はないが、繊維状物から溶剤に用いた塩の除去を速くできるという観点から、20℃以上が好ましく、特に好ましくは40℃以上、更に好ましくは50〜95℃である。凝固浴に用いる溶剤量は、1時間当たり吐出するポリケトン量の1倍以上が好ましく、更に好ましくは30倍以上である。
【0035】
こうして固化した繊維状物は、必要に応じて水又はpHが4以下の水溶液で少なくとも1回洗浄してもよい。こうした洗浄は、凝固浴で除去できなかった金属塩を溶解させるために好ましい方法である。特に、塩化亜鉛水溶液をポリケトン溶剤として用いる場合、塩化亜鉛を一度水に溶解させた後、水で希釈すると水に溶解しにくい亜鉛塩が生成する。この亜鉛塩を除くためには、大量の水で更に洗浄したり、好ましくはpHが4以下の水溶液、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等の水溶液で洗浄することが極めて有効である。また、水に溶解しにくい亜鉛塩の溶解性を高めるためには、これらの洗浄水の温度は40℃以上、好ましくは50〜95℃にする。
【0036】
以上のような凝固及び洗浄において、得られた繊維状物に含まれる亜鉛、カルシウム、鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の量を、合計で乾燥繊維量中10000ppm以下にすることが好ましく、最終的に得られる繊維の強度や弾性率を高めるためには重要な条件である。10000ppmよりも溶剤に用いた金属元素の量が多いと次の工程である延伸において、高い強度や弾性率を発現するための高倍率延伸が困難になるからである。
【0037】
こうして塩を除去した繊維状物は、水を大量に含んでいるので50℃以上の温度で乾燥して水分の一部又は全部を除くことが好ましい。乾燥方法としては、延伸しながら、定長で、又は収縮させながら乾燥を行ってもよい。乾燥時の温度としては、目標とする乾燥の程度により、任意に設定できるが、通常50〜250℃であり、好ましくは、50〜150℃である。乾燥するための装置としては、トンネル型乾燥機、ロール加熱機、ネットプロセス型乾燥機等、公知の設備でよい。こうして乾燥を受けた繊維は、3倍以上、更には6倍以上延伸を行って延伸糸となる。延伸は、延伸のしやすさから50℃以上が好ましく、更に好ましくは150〜300℃の温度で、1段又は多段延伸する。なお、繊維と延伸機との摩擦、静電気の発生を抑制し延伸を円滑にするために、乾燥から延伸の任意の段階で仕上げ剤を付けることは好ましい。仕上げ剤としては、公知のものが使用できる。
【0038】
以上述べてきた本発明のポリケトン繊維の製造方法は、溶剤に用いた塩の回収工程を考慮した場合、極めて有効である。すなわち、溶剤に用いた塩は、凝固、洗浄工程を経て希釈されても、水分を除くことによりほとんどロスすることなく再度ポリケトンの溶剤として再使用できるからである。もちろん、部分的にロスする塩は、再使用する時に必要量分のみ添加することもできる。すなわち、繊維状物から抜けだした塩を少なくとも1ppm含む凝固浴、pHが4以下の水溶液、必要に応じて用いる水の一部又は全部を濃縮し、濃縮された水溶液に必要に応じてロス分を補うためにポリケトン溶剤に用いた塩を加えた水溶液を、再度ポリケトンの溶剤として循環使用することが可能となる。濃縮操作としては、公知の方法を用いることができ、例えば、加熱による水の蒸発による濃縮、限外濾過膜法やイオン交換法を用いた濃縮、中和等を施し一旦溶剤に不溶としてから、濾過して再度元の塩構造に戻す方法等、特に制限はない。
【0039】
こうして得られた本発明のポリケトン繊維は、90重量%以上、好ましく95重量%以上が一酸化炭素ユニットとオレフィンユニット、好ましくエチレンユニットとの完全交互共重合体からなるポリケトン繊維であり、該繊維中に含まれるパラジウム、ニッケル、及びコバルト元素の量が100ppm以下であることが好ましい。
これらの金属元素の量が100ppmを超えると、ポリケトンをハロゲン化亜鉛を含む水溶液に溶解させた場合、ポリケトンが熱架橋し溶液粘度が著しく増大して紡糸ができなくなったり、紡糸ができたとしても徐々に溶液粘度が高くなるので得られた繊維の特性が紡糸時間と共に変化してしまう場合がある。また、得られたポリケトン繊維は、加熱されると強度、伸度、弾性率、分子量の低下、着色といった問題が起こりやすくなる。このような問題を起こさないためには、これらの金属元素の量をできるだけ減らすことが好ましく、具体的には50ppm以下が好ましく、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
【0040】
更に、本発明のポリケトン繊維は、一酸化炭素とオレフィンの共重合体を含むポリケトン繊維において、該共重合体の90重量%以上が一酸化炭素ユニットとオレフィンユニットであり、該繊維中に含まれるパラジウム、ニッケル及びコバルト元素の量が100ppm以下であると同時に、亜鉛、カルシウム及び鉄からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の含有量が合計で10000ppm以下であることが好ましい。これらの金属元素は、溶剤として用いた金属塩水溶液からポリケトン繊維に除去されずに残るものである。これらの金属元素量が10000ppmを超えると、延伸しにくい繊維になり、延伸倍率を高めることが困難となって、強度や弾性率が低くなる欠点を有する。この理由は明らかでないが、金属元素がポリマー分子間、又はポリマー分子内で架橋するために延伸が困難になるものと推定している。金属元素量は少なければ少ないほどよいが、高度の延伸倍率を達成するには、3000ppm以下が好ましく、更に好ましくは2000ppm以下、一層好ましくは200ppm以下である。
【0041】
こうして得られる触媒残さや金属塩残さの少ない繊維は、とりわけ高温での優れた寸法安定性、弾性率保持性を示す。例えば、周波数110Hzの動的粘弾性測定において、180℃の貯蔵弾性率が80g/d以上である繊維となる。産業資材用繊維としてよく用いられるポリエチレンテレフタレート繊維やナイロン66繊維を同条件下で180℃の貯蔵弾性率を測定すると、50g/d以下となる。この貯蔵弾性率の差は、高温下で使用する場合には、極めて大きな差となる。より高温での物性が発現できるという観点から、180℃の貯蔵弾性率は、好ましくは100g/d以上であり、更に好ましくは、150g/d以上、最も好ましくは、200g/d以上である。
【0042】
また、本発明のポリケトン繊維の極限粘度は0.3以上であることが好ましい。これは、極限粘度が0.3未満では分子量が低すぎて強度を高くすることが困難となるからである。得られる繊維の強度と溶解性、紡糸性の兼ね合いから、好ましくは0.5〜15、最も好ましくは2〜13である。
また、本発明のポリケトン繊維の繊度は特に制限はないが、通常単糸繊度は0.01〜10d、総繊度は5〜5000dである。また、長繊維、短繊維、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれでもよい。
【0043】
本発明のポリケトン繊維は、高強度、高弾性率、高接着性、高温での寸法安定性、優れたクリープ特性、耐溶剤性、耐湿熱特性といった特徴を示すと同時に、ポリケトンの劣化を促進するパラジウム、コバルト、ニッケルといった触媒残さや溶剤に用いた金属塩残さが少ないために、タイヤ、ベルト等の繊維強化ゴム、建材に用いる繊維強化樹脂、建材、自動車、船舶、スポーツ用品等に用いる繊維強化樹脂等の繊維強化複合材料の補強繊維として用いることができる。すなわち、触媒残さや溶剤に用いた金属塩残さが多くなると、長期使用された場合、徐々に繊維が劣化し補強効果がなくなってくる。本発明の触媒残さや金属量を特定量以下にしたポリケトン繊維を用いると、耐久性を落とすことなく、ポリケトン繊維の優れた力学特性、熱特性を発揮した繊維強化複合材料の性能を長期間発揮することが可能となる。用いるポリケトン繊維の量は、該複合材料に用いた繊維重量の1重量%以上が性能発揮するために必要であり、好ましくは20%以上、更に好ましくは50%以上である。
【0044】
本発明のポリケトン繊維をタイヤコードとする場合は、公知の方法を用いることができる。タイヤコードとして用いる場合は、単糸繊度は1〜4dが好ましく、総繊度は500〜3000dが好ましい。必要に応じて他の繊維、例えば、レーヨン、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、スチール繊維等と混合使用してもよいが、好ましくはタイヤ中に含まれる全タイヤコードの20重量%、好ましくは50重量%以上使用されていることが性能発揮の面から好ましい。得られたポリケトン繊維は、合撚して100〜1000T/m、好ましくは、200〜500T/mの撚りを掛けた後、すだれ織りとした後、10〜30%のRFL(フェノール/ホルマリンラテックス)液を付着させ、少なくとも100℃で固着させる。RFL樹脂の付着量は、繊維重量に対して2〜7重量%が好ましい。こうして得られたタイヤコードは、特にラジアルタイヤ用カーカス材として有用である。得られたタイヤコードをタイヤへ加工する方法としては、公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0045】
本発明を以下の実施例等により更に詳しく説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法は、次の通りである。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求めた。
【数1】

定義式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。また、Cは上記100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0046】
(2)パラジウム、ニッケル、コバルト、亜鉛等の元素の量
高周波プラズマ発光分光分析により、公知の方法を用いて測定した。
(3)繊維の強力、強度、伸度、弾性率
繊維の強伸度は、JIS−L−1013に準じて測定した。
(4)180℃の貯蔵弾性率
繊維30mmの両端をたるみがないように結んだものを試料とし、動的粘弾性測定装置(RheoVibronDDV−01FP:ORIENTEC(株)社製)を用いて、以下の条件で測定した。周波数:110Hz、温度:20→260℃、昇温速度:5℃/分、測定インターバル:1回/℃、振幅:16μm、単一波形、プリロード加重:0.1g/d
【0047】
[実施例1]
下記の構造式で示される、極限粘度0.5のプロピレンを6モル%共重合したエチレン/プロピレン/一酸化炭素からなるオレフィンと一酸化炭素の交互ターポリマーを60℃で撹拌しながら、70重量%の塩化亜鉛水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、溶解時間30分以内でポリマー濃度10重量%のドープを得た。得られた溶液はわずかに黄色を示した。得られたドープを直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、塩化亜鉛を完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは原料ポリマーが塩化亜鉛水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
【0048】
【化2】

【0049】
[実施例2]
実施例1と同じポリマーを用いて、これを70℃で撹拌しながら、75重量%の塩化亜鉛水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、溶解時間30分以内でポリマー濃度20重量%のドープを得た。得られたドープはわずかに黄色を示した。得られた溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、塩化亜鉛を完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは原料ポリマーが塩化亜鉛水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
【0050】
[実施例3]
極限粘度2.0のエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(ECO)を70℃で撹拌し
ながら、75%の塩化亜鉛水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、溶解時間30分以内でポリマー濃度15重量%のドープを得た。得られた溶液はわずかに黄色を示した。得られた溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、塩化亜鉛を完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは原料ポリマーが塩化亜鉛水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
[実施例4]
実施例3で得た溶液を20μmのフィルターを通過させた後、紡口経0.5mmのプランジャー型押出機を通して、順に30%の塩化亜鉛水溶液、水の浴に5m/minの速度で通し、得られた未延伸糸を250℃のオーブン中で7倍の延伸倍率で延伸した。
得られた繊維は強度6g/d、伸度20%であった。
【0051】
[実施例5〜10]
極限粘度が0.4で、オレフィン中に含まれるプロピレン量が10モル%となるように共重合したエチレン/プロピレン/一酸化炭素の交互ターポリマーを用い、表1に示す溶剤組成、ポリマー濃度、温度条件で撹拌しながら溶解し、溶解時間30分以内でそれぞれの組成のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。また、極限粘度も表1に示すように、ほとんど変化がなかった。このことは原料ポリマーが分解することなく、実施例5〜10の水溶液は、ポリケトンの溶剤になり得ることを示すものである。
【0052】
【表1】

【0053】
[実施例11]
極限粘度4.0のエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(ECO)を90℃で撹拌しながら、75重量%の臭化カルシウム水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、
溶解時間30分以内でポリマー濃度10重量%のポリマー溶液を得た。得られた溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、臭化カルシウムを完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。また、極限粘度も4.0であり変化がなかった。このことは原料ポリマーが75重量%臭化カルシウム水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
【0054】
[実施例12]
実施例11で得たドープを20μmのフィルターを通過させた後、直径0.1mmの穴が50個ある紡口口金からプランジャー型押出機を用いて、直接10重量%臭化カルシウム水溶液の凝固浴に2m/minの速度で押し出した。次いで水洗浴を通して洗浄し、水を含んだ状態で管上に巻き取った。これを乾燥器に入れて、バッチで乾燥を行い、得られた乾燥糸を240℃のオーブン中で6倍の延伸倍率で延伸した。
得られた繊維は強度6g/d、伸度10%であった。
【0055】
[実施例13〜22]
極限粘度7.0のエチレン/一酸化炭素の交互コポリマーを用い、ポリマー濃度7重量%で80℃を超えないように、表2に示す溶剤組成の塩化亜鉛を主成分とする水溶液に撹拌しながら溶解した。溶解はいずれの場合も30分以内に完了した。その後、得られた溶液の溶液粘度を測定した。塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化バリウムはいずれも50℃で水に1重量%以上溶解するが、これらを含有する水溶液を溶媒とすると(実施例14〜22)、これらを用いない場合(実施例13)と比較して溶液粘度(80℃で測定)が大きく低下していることがわかる。また、実施例14〜22の溶液を室温で放置していても大きく着色は進行しなかったが、実施例13では着色が進行し、数日後には褐色となった。なお、実施例13〜22のポリマー溶液を大量の水に落とし、十分洗浄して金属塩を完全に除去しポリマーを回収した。回収されたポリマーの極限粘度はほぼ7.0であり、また赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは実施例13〜22に示した水溶液は、ポリケトンの溶剤になり得ることを示すものである。
【0056】
[実施例23]
実施例13と14のポリケトンの溶液を用い、20個の紡口径0.16mmの孔から吐出線速6.2m/minで押し出し、エアギャップ長20mmを通過させ、そのまま水の凝固浴を通し、更に2%の硫酸洗浄浴を通した後、更に水洗し巻き取った。巻き取った繊維はいずれの場合もポリマー量の約400倍水を含んでいた。この凝固糸の力学物性を測定したところ、実施例13の場合は強力21g、伸度35%で、実施例14の場合は強力52g、伸度115%であった。このように、塩化亜鉛のみを含む水溶液を用いた場合、凝固糸のタフネスが低いので、紡糸の途中で糸切れが生じた。これに対し、実施例14のポリマー溶液を用いた場合には、糸切れもなく安定な紡糸が達成された。また、実施例14のポリマー溶液から得た凝固糸を100℃で乾燥後、215℃で10倍延伸したところ、強度10g/d、伸度4%、弾性率300g/dの高強度、高弾性率繊維が得られた。また、得られた繊維は若干黄色味を示す程度であった。ちなみに、実施例13のポリケトンの溶液から得られた繊維はかなり黄色かった。
【0057】
【表2】

【0058】
[参考例1]
20リットルのオートクレーブにメタノール1リットルを加え、更に酢酸パラジウム0.141ミリモル、ビス(2−メトキシフェニル)のホスフィノプロパン0.0821ミリモル、トリフルオロ酢酸1.333ミリモルを予めメタノール10ミリリットル中で撹拌し調製した触媒液を加えた。その後、一酸化炭素とエチレンを1:1モル含む混合ガスを充填し、5MPaの圧力を維持するように連続的に、この混合ガスを追加しながら、80℃で3.5時間反応を行った。
反応後、圧力を解放し、得られた白色ポリマーを繰り返しメタノールで洗浄後、単離した。収量は、73gであった。得られたポリケトンは、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル等の分析によりECOであった。また、その極限粘度は5.5、Pd含有量は、41ppmであった。
【0059】
同様に、触媒量を変えて、極限粘度5.6、Pd含有量105ppmのECO、極限粘度5.7ppm.Pd含有量5ppmのECOを得た。これらのポリケトンには、実質的にPd元素以外の第VIII族遷移金属元素は検出されなかった。
参考例1で得た3種のポリケトンを塩化亜鉛/塩化ナトリウム/水(重量比65/15/20)にポリマー濃度6重量%になるように溶解した。得られたポリマー溶液を80℃で保持し、30時間、溶液粘度の上昇を測定した。Pd含量が5ppm、41ppmのECOを用いたポリマー溶液の粘度上昇は、30時間経過後もほとんど認められなかった。しかしながら、Pd残量が105ppmのECOは、20時間保持後で約40%、30時間後には、約100%溶液粘度が上昇した。
【0060】
[実施例24及び25]
参考例1で作成した、極限粘度5.6、Pd含有量41ppmのECOを塩化亜鉛/塩化ナトリウム/水(重量比65/10/25)にポリマー濃度が12重量%になるように溶解し、80℃で紡口径0.16mm×20ホールから吐出し、10mmのエアギャップを通して、10℃の水を満たした1.2mの凝固浴を通し、次に2%の硫酸水溶液を含む2mの洗浄浴を通し、水を連続的に吹きかけるネルソンロールを通してから、定長で240℃の乾燥ラインを通した後、ホットプレートを2つのフィードロールの間に備えた延伸機を用いて、表3に記載した総延伸倍率になるように240℃で第一段延伸、更に260℃で第二段延伸を行った後、巻き取った。紡糸を20時間連続して行っても、特に紡糸性
、延伸性について変化はなく、良好であった。
得られたポリケトン繊維は、表3に示すように優れた力学物性を示した。
また、180℃の貯蔵弾性率は実施例24で96g/d、実施例25で150g/dであった。
【0061】
[比較例1]
参考例1で作成した、極限粘度5.6、Pd含有量105ppmのECOを用いて、実施例24で示した紡糸実験を行った。紡糸を開始後、5時間程度は安定に紡糸を行うことができたが、その後糸切れが増大した。おそらく、部分的に熱架橋物が蓄積し、ポリマー溶液の円滑な吐出を妨げたものと思われる。また、熱架橋物が延伸を妨げているためか、総延伸倍率を実施例24及び25と同様の倍率にまで高めることはできなかった。また、強度が実施例24に比べて低い割には、伸度も低い値を示した。また、180℃での貯蔵弾性率は46g/dであった。
【0062】
[実施例26]
参考例1で作成した、極限粘度5.7、Pd含有量5ppmのECOを用いて、実施例24で示した紡糸実験を行った。延伸性は良く、得られた繊維の物性は良好であった。
[実施例27]
2%の硫酸水溶液の代わりに、70℃の温水を通して、実施例24で示したポリマーを用い、実施例24で示した紡糸実験を行った。実施例24や25と比較して繊維に含まれる亜鉛量は増大したが、ほぼ同様の延伸性を示した。
【0063】
[比較例2]
洗浄浴に用いる液体を2%の硫酸水溶液の代わりに、15℃の冷水を用い、実施例24で示したポリマーを用い、実施例24で示した紡糸実験を行った。得られた繊維から亜鉛を十分に除去することができず、そのために延伸性が阻害されたため、総延伸倍率を5倍以上にしようとすると、糸切れが発生した。延伸できる限界で巻き取った繊維物性を表3に示すが、延伸倍率が低いために、強度、弾性率が低い繊維であった。また、180℃での貯蔵弾性率は75g/dであった。
【0064】
[実施例28]
凝固浴に用いる液体を10℃の水の代わりに、塩化亜鉛を32.5重量%、塩化ナトリウム5重量%を含む、10℃の水溶液を用い、凝固浴の長さを4mにして、実施例24で得たポリマーを用い、実施例24で示した紡糸方法を行った。得られた繊維物性は表3に示す。実施例24と同様に、強度、弾性率に優れた繊維を安定して得ることができた。
また、紡糸を5時間連続して行った後、凝固浴は、塩化亜鉛35重量%、塩化ナトリウム6重量%を含む水溶液であった。この凝固浴を120℃で加熱し、水を留去して煮詰め、濃度を合わせるために塩化亜鉛を加えて、塩化亜鉛/塩化ナトリウム/水(重量比65/15/20)の水溶液を得た。この水溶液に再度実施例24に用いたポリマーを溶解させ、実施例24や25の紡糸実験を繰り返したが、ほぼ同じ紡糸性、延伸性であり、得られた繊維物性も変化はなかった。このことは、本発明に用いる溶剤は、回収性に優れることを示すものである。
【0065】
[実施例29]
実施例26と同様の方法で得た1500d/750fの繊維を下撚、上撚共に、390T/mで合撚し、生コードを得た。これに20%の樹脂量のRFLを付着させ、樹脂付着率が5重量%になるように130℃、225℃の乾燥機を通した。こうして得たタイヤコードを用いて、ラジアルタイヤを作成した。
こうして得たラジアルタイヤをアスファルト面に1tの乗用車が200km/hrで走行する場合と同じ接圧をかけながら、35℃のアスファルト面に接触させて200km/
hrの走行する場合と同じ回転をさせ、そのまま96時間の回転試験を行った。
96時間後、タイヤからタイヤコードを取り出し、強度保持率を測定した。実施例26のポリケトン繊維を用いた場合は、RFL処理後のタイヤコードと比較して強度低下は殆ど起こっていなかった。比較として、同様の実験を比較例1のポリケトン繊維を用いて同様実験を行ったが、実験後のタイヤコードの強度は約6%低下していた。
【0066】
[実施例30]
実施例26と同様の方法で得た1500d/750fの繊維を50mmの短繊維に切断した。この短繊維を2重量部、パルプ3重量部、ポルトランセメント57重量部、シリカ38重量部を混合した後、湿式抄造しオートクレーブ中120℃で成型してスレート板を作成した。こうして得られたスレート板は強度に優れ、断面を観察したところポリケトン繊維は均一に分散していた。スレート板から取り出したポリケトン繊維の溶液粘度を測定したところ、粘度の低下はみられなかった。しかしながら、比較として、同様の実験を比較例1のポリケトン繊維を用いて同様実験を行ったが、実験後のポリケトン繊維の粘度は約12%低下していた。オートクレーブ成型の段階で、粘度低下が起こったものと思われる。
【0067】
[実施例31]
実施例24のポリケトン繊維を下撚、上撚共に、390T/mで合撚し、生コードを得た。これにエポキシ樹脂を付着させ、樹脂付着率が5重量%になるように230℃の乾燥機を通した。こうして得た処理コードを定法に従って、上帆布、クロロプレンゴムからなる圧縮ゴム層及び下帆布の構成からなる長さ1016mmのB型コグ付きVベルトを作成した。このVベルトを2つのプーリー間に通し、2000rpmで24時間回転させた。実験後、ポリケトン繊維をVベルトから取り出し強度を測定したところ、エポキシ処理後の強度に対して殆ど強度低下は起こっていなかった。比較として、同様の実験を比較例1のポリケトン繊維を用いて同様実験を行ったが、実験後のポリケトン繊維の強度は約15%低下していた。
【0068】
【表3】

【0069】
[実施例32]
ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(0)を0.33ミリモル、2−メルカプト安息香酸を0.33ミリモル、トルエンを2モル、オートクレーブに加え、一酸化炭素とエチレンを1:1モル含む混合ガスを充填し、5MPaで80℃、15時間重合を行った。得られたポリケトンは徹底的にアセトンで洗浄し、極限粘度4.2、ニッケル含有量12ppm、パラジウム、コバルトは実質含まないエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(E
CO)を得た。
このポリケトンに実施例24と同様に湿式紡糸を施した。得られた繊維は、ニッケルを10ppm、亜鉛を300ppm含み、強度10.2g/d、伸度4%を示した。
【0070】
[実施例33]
酢酸パラジウムの代わりに、酢酸コバルトを用いて参考例1、実施例24を繰り返した。得られたポリケトンは、極限粘度3.0、コバルト含有量41ppm、パラジウム、ニッケルは実質含まないエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(ECO)を得た。このポリケトンに実施例24と同様に湿式紡糸を施した。得られた繊維は、コバルトを57ppm、亜鉛を512ppm含み、強度7.2g/d、伸度4%を示した。
【0071】
[実施例34]
極限粘度6.0のエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(ECO)を100℃で撹拌しながら、25%の塩化亜鉛と40%の塩化カルシウムを含む水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、ポリマー濃度3重量%の溶液を得た。得られた溶液は透明であった。得られた溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、塩化亜鉛及び塩化カルシウムを完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは原料ポリマーが上記水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、低毒性、不燃性、紡糸安定性、溶剤回収性に優れ、安価で、工業的に極めて有用なポリケトン溶液と、該溶液を用いた湿式紡糸法及び得られた繊維を提供するものである。本発明によって得られたポリケトン繊維は、強度、弾性率、耐久性、接着性に優れるので、タイヤコード、ベルト、ラジエターホース、スリングベルト、縫い糸、ロープ、セメント補強材等の産業資材として用いることができるほか、一般衣料、フィルム等にも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合材料であって、下記(a)〜(d)を満足する、金属塩水溶液を溶剤とするポリケトン溶液から得られた繊維が使用されていることを特徴とする繊維強化複合材料。
(a)95重量%以上が一酸化炭素とエチレンの完全交互共重合体からなるポリケトンから構成されていること (b)単糸繊度が1〜4dであること
(c)ポリケトン繊維中のパラジウム、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の含有量が合計で10ppm以下であること
(d)100Hzの動的粘弾性測定において、180℃の貯蔵粘弾性が80g/d以上であること
【請求項2】
繊維強化複合材料が、ポリケトン繊維を撚数100〜1000T/mで撚糸して得られたタイヤコードを含むタイヤであることを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合材料。
【請求項3】
タイヤコードが、フェノール/ホルマリンラテックス樹脂の付着量が繊維重量に対して2〜7重量%になるようにフェノール/ホルマリンラテックス処理されていることを特徴とする請求項2記載の繊維強化複合材料。
【請求項4】
繊維強化複合材料が、ポリケトン繊維を撚数100〜1000T/mで撚糸して得られたコードを含むベルトであることを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合材料。

【公開番号】特開2006−1285(P2006−1285A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206698(P2005−206698)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【分割の表示】特願2000−565050(P2000−565050)の分割
【原出願日】平成11年8月5日(1999.8.5)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】