説明

繊維懸濁液清浄化用の改良されたストレーナ

【課題】 繊維懸濁液中の重い汚染物質及び軽い汚染物質の事前除去が可能な繊維懸濁液清浄化用のストレーナを提供すること。
【解決手段】 ストレーナ(1)が,容器(2)と,濾過バスケット(3; 21,22)と,動力手段(7)に連結されたローター(4; 15,16)とを具備する。容器(2)の中に不合格懸濁液用のドレイン室(35)と,濾過された懸濁液用の送出し室(25,27)と,容器(2)の上方部分に捕集器本体(30)とを設ける。円錐台形状の半径方向に長い輪郭をもち,長い方の底(37a,38a)で互いに接続された下方捕集器(37)及び上方捕集器(38)を捕集器本体(30)が具備する。下方捕集器(37)は短い方の底(37b)を濾過バスケット(3; 21,22)の方に向けてもち,また上方捕集器(38)は短い方の底(38b)を上方に向けてもつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,改良されたストレーナ,特に繊維懸濁液を汚染する異物及び汚染物質を分離することによって繊維懸濁液を清浄化するのに適したストレーナに関するものである。本発明のストレーナは,とりわけ再生紙に由来する繊維の水性懸濁液を清浄化するために特に製紙産業部門で使用されるように構成されている。
【背景技術】
【0002】
製紙工業で使用される,繊維の水性懸濁液に存在する汚染物質を取り除くことが知られており,特に浸溶紙から得られる懸濁液においては特別なストレーナが使用され,そこでは,懸濁液は,濾過表面が設けられたバスケットを通過することによって濾過される。流れ出て完全に濾過された懸濁液は,通常は“合格”懸濁液と表される。
【0003】
清浄な懸濁液が濾過表面を通って流れる一方で,汚染物質は同じ濾過表面上に凝集する傾向があることが容易に理解できる。この傾向を弱めるために,汚染物質が濾過表面と接触する時間を最小限まで短縮して,従って汚染物質がそこに蓄積することを防げるように,適正な比率の懸濁液が排出され,その結果懸濁液が汚染物質をもって来る。
【0004】
かなりの量の繊維と混合された汚染物質を含む懸濁液は,いわゆる“不合格”懸濁液を構成し,また“カスケード”レイアウトにより配置されたストレーナと対応して処理され,前記ストレーナの各々は,“合格”懸濁液出口において繊維の部分を回収し,また汚染物質を“不合格”懸濁液配管に集中させる。
【0005】
これらのストレーナは,最後のものが“最終の”と呼ばれるまで,第一の,第二の,第三の,以下同様,と呼ばれ,それらのストレーナから汚染物質が,少量の繊維とともに限定的に取り除かれる。ストレーナの連鎖は,通常は三つのユニットで構成され,またそれらは生産量が多い場合には四つのユニットで構成されることもある。
【0006】
一方のストレーナから他方のストレーナへの移動を含む処理の間に懸濁液中に存在する,汚染物質と,最も求められていて最も回収が困難な次第に長くなる繊維とのますます高まる濃縮とに起因して,前記汚染物質及び前記繊維は,懸濁液の濃度と,懸濁液が濾過表面を通過する速度とに関する異なる特性で作用する。
【0007】
更に,汚染物質の濃縮に起因して,各ストレーナから来る“合格”懸濁液配管は,小さくなり且つ清浄性が低下して処理を続行すること及び一次ストレーナの主な“合格”懸濁液配管に加えられることができない。
【0008】
この理由から,懸濁液は,直前に置かれたストレーナの中で再処理されなければならず,この再処理がシステムの相当な複雑さを必要とし,前記直前に置かれたストレーナは中間容器,攪拌器,ポンプ,チューブ,様々なタイプの弁,中間の希釈のための付属物,制御機器,及び最後であるが重要な,多くのスペースとエネルギーを含まなければならない。
【0009】
これらのシステムの欠点は明らかであり,またそれら欠点は特に,数個のストレーナの購入及び据付及び保守のために製紙工場が遭遇する高コストに由来する。
【0010】
前掲の欠点を克服するために,製造者は,数台の機械装置で実行されていた機能を単一の機械装置にまとめた改良されたストレーナを市場に提供し,その結果システム及び据付のサイズ,並びに管理及び保守コストを低減することを可能にした。
【0011】
これらのストレーナは,大きい機械装置であり,前述の利点に加えて,該ストレーナに備えられた濾過要素が同一の作動条件になく,それ故非常に容易に目詰まりを起こすという事実によって代表される欠点も有する。
【0012】
ストレーナの濾過表面の目詰まりによって引き起こされる問題を解決することを狙った様々な製品を記載した特許文献が知られている。
【0013】
特許文献1は,二つの重なり合う濾過バスケットを具備する濾過表面を有するストレーナの適用によって前掲の問題を部分的に解決するものであり,前記濾過バスケットは,上方バスケットが,上方に収束するテーパー部分を有する円錐台形状を有している。“不合格”懸濁液用の二本のドレイン管が設けられ,前記二本のドレイン管は,機械装置の底部に対して異なる軸方向距離で配置されるのに対して,“合格”懸濁液は,“不合格”懸濁液出口管の直ぐ上方に配置された送出し管を通って底部の近くで引き出される。
【0014】
特許文献2及び特許文献3の特許は,両方とも本特許出願の出願人と同一出願人で登録されていて,濾過要素の目詰まりに代表される問題を,特別な輪郭に従ってローターを成形すること,及び特に回転中に濾過表面に関して減圧状態を生成し,その結果不純物の分離を促進する翼状輪郭を持つ突出ブレードによって解決するものである。
【0015】
特許文献4の特許は,目詰まりによって代表される問題を解決し,また濾過されるべき懸濁液の全処理量を互いに独立した二つの環状チャンバの中に分けることにより濾過作用を向上させるものである。
【0016】
特許文献5の特許は,突出要素が設けられた外側表面を持つローターを使用することによって濾過作用を向上させるものであり,前記突出要素の輪郭は,ローターの底部に対するそれらの位置により変化し,また従って突出要素は底部の近くでますます粘稠になる繊維懸濁液に差別化された様態で作用する。
【0017】
特許文献6及び特許文献7は,懸濁液をストレーナの入り口で予備濾過することによって,濾過作用が向上されるストレーナを記載している。
【0018】
特許文献8は,直列に配置された二つの濾過バスケットを使用することによって,濾過作用が向上されるストレーナを記載している。
【0019】
最後に,特許文献9は,分離チャンバを使用することによって,濾過作用が向上されるストレーナを記載しており,前記分離チャンバは,例えば石又は他の肉眼で見える不純物のような大きなサイズの汚染物質を,それらがストレーナの濾過表面に接触する前に分離するものである。
【0020】
挙げられた特許に記載された全てのストレーナは,濾過要素の目詰まりを低減するという目的を達成しているが,従来のストレーナと同様に,それらは,処理ラインに“高/中濃度クリーナー”と呼称される機械装置の後に設置されなければならず,前記“高/中濃度クリーナー”は,重い汚染物質の大部分を除去する遠心分離式クリーナーを実質的に具備するもので,また前記重い汚染物質は本質的に研磨作用を有し,従って濾過表面の動作寿命を短縮するものである。
【0021】
しかしながら,遠心分離式クリーナーは,非常に小さなサイズの汚染物質に対しては何の効果も有さず,前記非常に小さな汚染物質は,高/中濃度の粘性流体によって引き付けられて,代わりに重くて大きなサイズの汚染物質の場合と同様に,遠心分離式クリーナーによって生み出された遠心作用に基づいて渦の周縁の方に移動しない。
【0022】
そのような軽くて小さいサイズの汚染物質は,それらがいずれにせよ損傷を与えるところの篩の濾過表面によって捕捉されないなら,懸濁液の濃度が例えば浮上領域のように十分に低いところで動作する遠心分離式クリーナーによって連続的に除去される。
【0023】
高/中濃度の遠心分離式クリーナーは,それらの磨耗作用に起因する損傷を通常は発生させない軽い汚染物質も,水及びセルロース繊維の比重量と通常は大きく違わない比重量をもつ糸状汚染物質も除去しない。それらは,繊維の細片,並びにプラスチックの細片,並びに撥水処理剤で化学的に処理されていて混練段階の間に十分にばらばらにされなかった紙の細片及びこぶである。
【0024】
そのような糸状汚染物質の存在に起因するストレーナの内側の損傷は,典型的にはローターの翼状表面の縁又は翼状表面をローターの本体に接続する接続要素の縁のような突出している表面ならどこへでも重なって蓄積する糸状汚染物質の性向によって代表される。
【0025】
これら糸状汚染物質の存在は,処理量と,精密に大きさを決められた開口部の近くに適正な微小乱流を保証するために通常は粗くされている濾過表面に対する磨耗に起因する分裂に由来する二次汚染物質の生成との両方に関して,ストレーナの性能レベルを低下させる。
【0026】
前掲のストレーナの肯定的な特徴,つまり:
繊維懸濁液の多量の処理量を濾過して,システムに据付けられる機械装置の数を減少させる能力;
“不合格”懸濁液の処理を単一最終ユニットに限定するように,“不合格”懸濁液の処理量を最小まで減少させる能力;
様々な濾過表面の目詰まりを制限し,可能なら防止する能力;に関することに加えて,
前掲のストレーナは,しかしながら,制限された,どんな場合も非選択性の様態にない場合は,それらが次に示す利点,つまり:
通常は重く小さなサイズでさえある磨耗汚染物質を,懸濁液が濾過表面に接触する前に捕捉し且つ分離する能力;
濾過表面を清浄に維持するためにストレーナのローターにより生み出される強力で活発な攪拌作用がいわゆる二次汚染物質を生成することが実際には良く知られているので,通常は軽く小さなサイズでさえある脆弱な汚染物質を,その分裂を防ぐために懸濁液が濾過表面に接触する前に捕捉し且つ分離する能力;
糸状汚染物質を捕捉し且つ分離して,ローターと濾過表面との間に含まれる領域にそれらが澱むことを防ぐ能力;を提供しないという欠点を有する。
【0027】
前掲の公知のストレーナの欠点は,それらのどれもが全てのリストアップされた特徴を共に提供しないという事実によって構成される。本発明は,前掲の全ての特徴を共に有するローターをもつ改良されたストレーナを実現することを目的としているのに対して,前掲の機械的ストレーナではこれらの特徴は単独でのみ見出すことが可能である。
【0028】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0069985号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第0931875号明細書
【特許文献3】国際公開第02/064884号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6360897号明細書
【特許文献5】米国特許第6311850号明細書
【特許文献6】米国特許第5318186号明細書
【特許文献7】欧州特許第1122358号明細書
【特許文献8】米国特許第0139723号明細書
【特許文献9】国際公開第94/16141号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
特に,清浄にされるべき懸濁液が濾過表面に接触して濾過表面をすり減らす前に,より重い汚染物質が捕捉されて除去されることを可能にする,繊維懸濁液を清浄化するための改良されたストレーナを実現することが本発明の第一の目的である。
【0030】
清浄にされるべき懸濁液が,より軽い汚染物質をさらに細分化するローターに接触する前に,通常は脆弱なより軽い汚染物質さえも補足して除去することを可能にするストレーナを実現することが本発明の更なる目的である。
【0031】
公知のストレーナでは“不合格”懸濁液として不純物及び汚染物質と共に分離されて除去されている利用可能な繊維の比率を低下させることをストレーナが可能にすることも本発明の更なる目的である。
【0032】
自己清浄性濾過表面をもつストレーナを実現することが本発明の更なる目的である。
【0033】
公知の同等のストレーナに比較して,より多い繊維懸濁液の清浄化及び濾過処理量が可能なストレーナを獲得することが本発明の他の目的である。
【0034】
本発明のストレーナ物体が,公知のストレーナに比較して,粗大な汚染物質のより多い含有量をもつ繊維懸濁液が処理されることを可能にすることが更なる目的である。
【0035】
糸状汚染物質によって目詰まりさせられる傾向が,公知のストレーナに比較して小さいストレーナを獲得することが,本発明の最後のしかし重要な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0036】
前述の目的は:
鉛直縦軸線を形成するほぼ円筒状の容器と;
前記容器の内部に同軸に配置された少なくとも一つのほぼ円筒状の濾過バスケットと;
前記濾過バスケットの内部に同軸に配置された少なくとも一つのローターであって,その外側面から突出する成形ブレードを備えた基本的に円筒状の本体を具備する少なくとも一つのローターと;
前記ローターを回転させるために前記円筒状本体に連結された動力手段と;
清浄にされるべき前記繊維懸濁液用の捕集器室を形成するために,前記容器の上方部分に配置された捕集器本体と;
清浄にされるべき前記懸濁液用の少なくとも一つの入口管及び前記繊維懸濁液から分離された汚染物質用の少なくとも一つの出口管であって,両方とも前記捕集器本体に接続された少なくとも一つの入口管及び少なくとも一つの出口管と;
不合格懸濁液用の少なくとも一つのドレイン室であって,前記容器の下方部分に配置されて少なくとも一つのドレイン管に接続されたドレイン室と;
濾過された懸濁液用の少なくとも一つの送出し室であって,前記濾過バスケットと前記容器との間に作られた空隙に含まれ,また少なくとも一つの送出し管に接続された少なくとも一つの送出し室と;を具備する繊維懸濁液用のストレーナであって,
ほぼ円形の横断面と円錐台形状をした半径方向に長い輪郭とを有して,長い方の底で一致して互いに接続された下方捕集器及び上方捕集器を前記捕集器本体が具備し,そして前記下方捕集器が濾過バスケットの方に向いた短い方の底を有しまた前記上方捕集器が上方に向いた短い方の底を有することを特徴とする,繊維懸濁液用のストレーナを実現することにより達成される。
【0037】
例えば遠心分離式クリーナーのような補助的な機器と組み合わせられた数個のストレーナによって通常は実施される複数の機能を本発明のストレーナ物体が実施するという事実のおかげで,本発明のストレーナ物体は,処理される懸濁液の同一処理量を保証しながらシステムのサイズを縮小することを可能にすることに利点がある。
【0038】
本発明のストレーナ物体は,公知のストレーナに比較して,不合格にされる繊維の比率を低下させることも可能にすることに利点がある。
【0039】
本発明のストレーナ物体は,特に糸状汚染物質を除去して,処理されるべき懸濁液のより高い清浄度を獲得することを可能にすることに更に利点がある。
【0040】
他の利点は,本発明のストレーナ物体が,公知のストレーナより磨耗を受け難いという事実によって代表されることである。
【0041】
前述の目的及び利点は,本発明の特定の実施例の以下の記載において,添付図面を参照して非常に詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明のストレーナ物体が図1及び2に縦断面で示され,そこではそれは全体として参照符号1により示される。
【0043】
ストレーナ物体は,垂直縦軸Xを形成するほぼ円筒状の容器2を具備しており,前記容器2の中に全体として参照符号3で示される濾過バスケットがあり,該濾過バスケットが全体として参照符号4で示されるローターを収容している。容器2及び濾過バスケット3及びローター4は互いに軸線Xに関して同軸である。
【0044】
ローター4は,突出したブレード6を備えるほぼ円筒状の本体5を具備し,全体として参照符号7で示される動力手段に接続され,前記動力手段は垂直縦軸線Xを中心にしてローター4を回転させる。
【0045】
前記動力手段7は,容器2に接続されたブラケット9によって支持された電動モータ8と,全体として参照符号10で示された運動学的ユニットとを具備しており,前記運動学的ユニットは,モータ8にキーで固定された第一プーリ11と,ローター4に同軸のスピンドル14にキーで固定された第二プーリ12と,プーリ11及び12の周りに閉鎖リングとして巻き付いた駆動ベルト13とを具備している。
【0046】
他の実施例で,駆動手段は異なる構成を有し,例えば図示されて説明された運動学的ユニット及びモータとは異なるものを備えることがある。
【0047】
ローター4に関して,本明細書で説明される本発明の実施例によると,ローター4が上方ローター15及び下方ローター16を具備し,前記上方ローター15及び下方ローター16は,軸線Xに関して互いに同軸であり且つ連続して配置され,またそれらの各々は,上方突出ブレード18をもつ上方円筒状本体17及び下方突出ブレード20を持つ下方円筒状本体19によりそれぞれ構成されていることが図1及び2において観察できる。
【0048】
上方円筒状本体17及び下方円筒状本体19は,シャフト17a及び19bによって接続されて,全体として円筒状本体5を形成する。シャフト17a及び19bは次に,スピンドル14に接続されており,前記スピンドル14は容器2の底によって支えられて前述されたように動力ユニット7に属するものである。
【0049】
全体として参照符号3で示される濾過バスケットも,二つの部分に分けられることが観察でき,前記二つの部分は,上方ローター15を収容する上方濾過バスケット21と,下方ローター16を収容する下方濾過バスケット22とを含んでなるものであり,前記上方濾過バスケット21及び下方濾過バスケット22は,希釈水入口管24と連通する希釈室23を形成するために互いに軸方向に離間されている。
【0050】
このような方法で,各濾過バスケット21,22に対応して,上方送出し管26を備えた上方送出し室25と,下方送出し管28を備えた下方送出し室27とがそれぞれ形成され,前記上方送出し室25及び下方送出し室27において,濾過バスケットによって濾過されて“合格”懸濁液と呼称される繊維懸濁液が捕集される。上方送出し室25及び下方送出し室27は,従って希釈室23を中心にして対向する側に配置されている。
【0051】
容器2の上方部分に,全体として参照符号30で示される捕集器本体があり,この捕集器本体は,清浄化されるべき繊維懸濁液の収容に適するようにされた捕集室31を形成し,前記捕集器本体30は,特に図3及び4で見られるように,清浄化されるべき繊維懸濁液のための入口管32と,参照符号33及び34で示される第一及び第二出口管とに接続され,前記第一出口管33及び第二出口管34の両方は,ストレーナの運転中に繊維懸濁液から分離された汚染物質を捕集室31から排出することに適している。
【0052】
容器2の下方部分には,“不合格”懸濁液が捕集されるドレイン室35が最後に形成されており,またそこにドレイン管36が接続されている。
【0053】
本発明によると,捕集器本体30は,下方捕集器37と上方捕集器38とを具備し,その両方は,円錐台形状にある半径方向に長い輪郭をもち,また長い方の底37a,38aで一致して互いに接続され,そこでは下方捕集器37は,濾過バスケット3の方に向いたその短い方の底37bを有し,また上方捕集器38は,上方に向いたその短い方の底38bを有する。このような方法で,捕集室31は,上方捕集器38に対応する上方捕集室31aと,下方捕集器37に対応する下方捕集室31bとに分けられる。
【0054】
本明細書に記載された本発明の好適な実施例によると,捕集器本体30は,単一品として作られるが,別の実施例では,それは,ストレーナの組立の際に公知のタイプの接続手段によって接続される互いに独立した下方捕集器37及び上方捕集器38であってもよい。
【0055】
図3及び4で観察できるように,清浄化されるべき繊維懸濁液中に存在する汚染物質のための出口管に関しては,第一出口管33は,重い汚染物質を排出することに役立ち,また下方捕集器37の長い方の底37aが上方捕集器38の長い方の底38aに結合されるところの環状領域39において、捕集器本体30にその接線に沿って接続されている。
【0056】
代わって第二出口管34に関しては,それは,軽い汚染物質を排出することに役立ち,またストレーナの軸線Xに同軸に且つ円錐台形状のフード40に対して中心に配置されており,前記フード40は,上方捕集器38の短い方の底38bに結合された長い方の底40aと,上述の第二出口管34に接続された短い方の底40bとを有する。
【0057】
清浄にされるべき懸濁液のための入口管32は,上方捕集器38にその接線に沿って接続され,またストレーナ1の垂直縦軸線X及び第二出口管34によって規定される方向に直交する水平の長さ方向Yを規定する。
【0058】
更に前記方向Yは,第一出口管33の水平の長さ方向軸線Zによって規定される方向に直交し且つ同一平面にもあり,また上方捕集器38の横断面の円形輪郭の接線として位置決めされるものである。
【0059】
入口管32は,参照符号42で示される円錐台形状のユニオンを介して供給管41に接続されており,前記ユニオン42は,矢印Iによって示される流れの方向に収束するその側面43を有する。
【0060】
上方ローター15及び下方ローター16に関しては,それらは,それらの一つの及びそれらの両方を表す不等角投影図の図5に詳細に示されている。
【0061】
各突出ブレード18,20が,全体として参照符号45で示される翼状表面と,該翼状表面45を円筒状本体17,19に接続する接続要素46とを具備している。動力ユニット7によって与えられる,軸線X周りのローターの回転方向が,矢印Wで示されている。
【0062】
突出ブレード18,20の各々に,各翼状表面45の前端47と,各接続要素46の前端48とが,ローターの回転方向Wとは反対方向に斜めにされおり,前記前端47及び前端48は接続端とも呼ばれ,ローターの回転中において繊維懸濁液に最初に接触する全ての点によって構成されている。すなわち,図5を参照すると,各前端47,48は,ローターの回転軸線Xを通る鉛直断面平面α,βと突出ブレード18,20との交差によって規定される方向H,Kで鋭角47a,48aを形成している。
【0063】
前端47,48は従って,ローターの回転方向Wの反対方向に後退しており,このことが,糸状汚染物質がローター回転中にブレードに行き詰まって蓄積することを防ぐ。特に,ブレードを形作る翼状表面の大部分が,容器の底の方に延在しているため,繊維懸濁液中に存在する糸状汚染物質は,ドレイン管36が設置されているドレイン室35の方に好適に滑る傾向を有する。
【0064】
工程が制御されることを可能にするために,円錐台形状ユニオン42及び送出し管26,28及びドレイン管36,又はそれぞれの送出し室25及び27及びドレイン室35が,公知の記憶手段を備えた制御ユニット50に接続された圧力センサー42a,26a,28a及び36aをそれぞれ備え,前記制御ユニット50にはストレーナの運転を制御するソフトウェアが搭載されている。
【0065】
動作上の観点から説明すると,清浄化されるべき懸濁液は,円錐台形状ユニオン42を介して供給管41に接続されている入口管32を通って方向Iでストレーナの捕集器本体30に入る。
【0066】
円錐台形状ユニオン42は,懸濁液を捕集器本体30の内側へ加速するので,懸濁液中に存在する重い汚染物体は,エネルギーを獲得して,遠心力の作用に起因して,下方捕集器37及び上方捕集器38の傾斜した壁の接線に沿って置かれる。捕集器本体30は実質的に遠心式クリーナとして働き,またより重い汚染物質の,捕集器本体30の周縁の接線に沿う循環を助力するように,懸濁液は高速度で捕集器本体30に入ることが重要である。
【0067】
特に,図4を参照すると,重い汚染物質は,下方捕集器37の長い方の底37aと上方捕集器38の長い方の底38aとの間に形成された環状領域39内で接線に沿って循環して,第一出口管33から出るものであり,重い汚染物質は,捕集器本体30の回転角速度に由来する接線方向速度のために第一出口管33に入って,矢印V1で示される方向で第一出口管33を通り抜ける。
【0068】
より重い汚染物質の分離を促進するために,清浄化されるべき懸濁液が捕集器本体30に入るときの速度が,ローター4の突出ブレードの周速度にほぼ等しく,約10m/秒の速度であることが重要である。
【0069】
導入された繊維懸濁液が,少なくとも10回転接線に沿って捕集器本体30を回るのに十分な時間で捕集器本体の内側にそれ自身が残るように,入口管32の断面及び捕集器本体30の横断面の大きさを決めることが望ましく,また前記少なくとも10回転は公知のタイプのストレーナで達成されるものより良好な繊維懸濁液の汚染物質の分離を達成することに最適な値であると判断される。
【0070】
捕集器本体30内での繊維懸濁液の循環運動の間に,捕集器本体30に存在する小体積の軽い汚染物質は,接線に沿って加速させられずに浮き上がる傾向を有する。軽い汚染物質は従って捕集器本体30の中央部に位置付けられ,そこでそれらは第二出口管34によって獲得されて,矢印V2で示される方向に流れ出る。
【0071】
遠心分離されて予備清浄化された繊維懸濁液は,ローター4と濾過バスケット3との間に軸方向下方に流れ,そこでそれは更に遠心分離されて濾過バスケット3を通過する間に濾過される。このようにそれは,“合格”懸濁液として,送出し室25,27に入り,そこからそれは,送出し管26,28をそれぞれに通って方向U1,U2で送り出される。
【0072】
ストレーナの内側に残った繊維懸濁液は,ドレイン室35に達するまで,容器2の底の方へ下降しつづけ,そこでそれは所謂“不合格”懸濁液を構成して次にドレイン管36を通って方向U3で送り出される。
【0073】
不合格懸濁液中の繊維の存在をできるだけ制限するために,ローター4は,処理される繊維懸濁液が異なる濃度を有するところの二つの領域をストレーナ内に形成するように,上方ローター15及び下方ローター16に分けられる。特に下方領域の濃度は上方領域より高く,また上方ローター15と下方ローター16との間の希釈室23の存在は,希釈水を導入することによって前記の高い濃度が補正されることを可能にする。
【0074】
公知のタイプの相当するストレーナと比較して,このように繊維を合格懸濁液中により多く回収し,その結果不合格懸濁液中に存在する繊維量を減少させて,ストレーナの効率を高めることを可能にするのはこの構成である。
【0075】
圧力センサーの存在が,処理される懸濁液の濃度を濾過工程に関する最適値の範囲内で維持するように,圧力値を得て,その圧力値を基準圧力値と比較して,処理される懸濁液の希釈度又は捕集器本体30に入る懸濁液の処理量を制御ユニット50によって変更することを可能にする。特に,圧力値の制御は,濾過バスケットの目詰まりの程度の監視も可能にする。
【0076】
従って,例えば,制御ユニット50に存在するソフトウェアによって,ドレイン管36の詰まりは,その場所で位置を特定された圧力増大としてセンサー36aによって検出されて,このことが,捕集器本体30内に供給される繊維懸濁液の処理量を低減させる補正的基準を要求する。
【0077】
他方で,もしその場所で位置を特定された圧力増大を検知したのが下方送出し管28に対応して配置された圧力センサー28aであるなら,このことは,下方濾過バスケット22が目詰まりをして,処理される繊維懸濁液の希釈度を高める補正的基準を要求し,前記希釈度を高めることは希釈室23に導入される水処理量の増加によって得られる。
【0078】
上記の説明は,本発明のストレーナ物体が全ての目的セットを達成したことを示している。
【0079】
第一に,反対方向にテーパーを付けられた下方捕集器及び上方捕集器という二つの捕集器に分けられた捕集器本体の存在が,繊維懸濁液の事前清浄化を実行して,公知のタイプのストレーナ及び任意の遠心分離式クリーナーで可能であるものより重い汚染物質と軽い汚染物質をあらかじめ除去することを可能にする。
【0080】
特に,濾過バスケットを通した事実上の濾過工程の前に軽い汚染物質を事前に除去することは,軽い汚染物質の分裂を回避し、及び従って分裂後の軽い汚染物質を合格懸濁液中に見出す可能性を回避する。
【0081】
さらに,ローターを同軸で互いに離間されたいくつかのローターに分けることは,公知のタイプの同等のストレーナに比較して,不合格懸濁液中に存在する繊維の量の減少を可能にし,及び従ってストレーナの生産性が,回収される繊維の量の増加によって最適化されることを可能にする。
【0082】
圧力の連続的な監視もまた,目詰まり又は過負荷に起因して管又は濾過バスケットに対して生じることがある,何らかの異常状態を直視することによってストレーナの運転が最適化されることを可能にする。
【0083】
ローターの回転方向に対して後方に傾斜している,突出ブレードの前端の特有の構造形がどんな結合点も構成しないので,懸濁液中に存在するどんな糸状汚染物質も,ローター上に停止して蓄積する傾向をもっていない。
【0084】
これに加えて,汚染物質のより効率的且つ迅速な除去が,ストレーナの壁に対する摩擦を低減し,その結果ストレーナの壁は磨耗に対してより保護される。
【0085】
実施に際しては,本発明のストレーナ物体は,記載されて図解されたものとは異なる形状で実施されてよい。特に,本発明のストレーナ物体は,任意のサイズで構築され,また必要に応じて記載されたものと異なる,三個以上のローターで構成されるローターを備えることがある。
【0086】
しかしながら,これらの変形形態及び他の任意の変形形態は,本発明の請求項の範囲に含まれるなら,この特許によって確実に保護されると考えられることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明のストレーナ物体の縦断面図である。
【図2】ストレーナの運転中の,繊維懸濁液と汚染物質との流れが図1の縦断面図の中に示された図である。
【図3】垂直切断面III-IIIによる,図2のストレーナの横断面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図1の詳細な不等角投影図である。
【符号の説明】
【0088】
1 ストレーナ
2 容器
3 濾過バスケット
4 ローター
25 上方送出し室
27 下方送出し室
30 捕集器本体
35 ドレイン室
37 下方捕集器
38 上方捕集器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維懸濁液用のストレーナ(1)であって:
鉛直縦軸線(X)を形成するほぼ円筒状の容器(2)と;
前記容器(2)の内部に同軸に配置された少なくとも一つのほぼ円筒状の濾過バスケット(3; 21,22)と;
前記濾過バスケット(3; 21,22)の内部に同軸に配置された少なくとも一つのローター(4; 15,16)であって,突出ブレード(6; 18,20)を備えた基本的に円筒状の本体(5; 17,19)を具備する少なくとも一つのローター(4; 15,16)と;
前記ローター(4; 15,16)を回転させるために前記円筒状本体(5; 17,19)に連結された動力手段(7)と;
清浄化されるべき前記繊維懸濁液のための捕集室(31)を形成するために前記容器(2)の上方部分に配置された捕集器本体(30)と;
清浄化されるべき前記懸濁液用の少なくとも一つの入口管(32)及び前記繊維懸濁液から分離された汚染物質用の少なくとも一つの出口管(33,34)であって,両方とも前記捕集器本体(30)に接続されている少なくとも一つの入口管(32)及び少なくとも一つの出口管(33,34)と;
不合格懸濁液用の少なくとも一つのドレイン室(35)であって,前記容器(2)の下方部分に配置されて少なくとも一つのドレイン管(36)に接続された少なくとも一つのドレイン室(35)と;
濾過された懸濁液用の少なくとも一つの送出し室(25,27)であって,前記濾過バスケット(3; 21,22)と前記容器(2)との間に作られた空隙に含まれ,かつ少なくとも一つの送出し管(26,28)に接続された少なくとも一つの送出し室(25,27)と;を具備する繊維懸濁液用のストレーナ(1)において,
両方とも円錐台形状をした半径方向に長い輪郭を有するほぼ円形断面の下方捕集器(37)と上方捕集器(38)とであって,互いに長い方の底(37a,38a)で一致して結合された下方捕集器(37)と上方捕集器(38)とを前記捕集器本体(30)が具備し,そして前記下方捕集器(37)が前記濾過バスケット(3; 21,22)の方に向いた短い方の底(37b)を有し,前記上方捕集器(38)が上方に向いた短い方の底(38b)を有することを特徴とする,繊維懸濁液用のストレーナ(1)。
【請求項2】
前記汚染物質用の前記少なくとも一つの出口管(33,34)が:
前記上方捕集器(38)の前記長い方の底(38a)が前記下方捕集器(37)の前記長い方の底(37a)に接続されるところの領域(39)に一致して前記捕集器本体(30)にその接線に沿って接続された第一出口管(33)と;
前記上方捕集器(38)の前記短い方の底(38b)に接続された長い方の底(40a)を有する円錐台形フード(40)の短い方の底(40b)に結合された第二出口管(34)と;を含んでなることを特徴とする,請求項1に記載のストレーナ(1)。
【請求項3】
前記上方捕集器(38)の横断面の円形輪郭の接線に沿う水平の長さ方向(Z)であって,前記容器(2)によって形成された前記鉛直縦軸線(X)に垂直な水平の長さ方向(Z)を前記第一出口管(33)が形成することを特徴とする,請求項2に記載のストレーナ(1)。
【請求項4】
前記第二出口管(34)が,前記円錐台形フード(40)の短い方の底(40b)に同軸に配置されることを特徴とする,請求項2に記載のストレーナ(1)。
【請求項5】
前記入口管(32)が,前記上方捕集器(38)にその接線に沿って接続されて,前記捕集器本体(30)に入る前記繊維懸濁液の運動の水平の長さ方向(Y)を形成することを特徴とする,請求項1に記載のストレーナ(1)。
【請求項6】
前記入口管(32)が,前記入口管(32)の方に収束する傾斜をもつ円錐台形ユニオン(42)を介して供給管(41)に接続されることを特徴とする,請求項5に記載のストレーナ(1)。
【請求項7】
前記少なくとも一つのローターが:
上方円筒状本体(17)と上方突出ブレード(18)とを具備する上方ローター(15)と;
下方円筒状本体(19)と下方突出ブレード(20)とを具備する下方ローター(16)と;を具備し,
前記ローター(15,16)が,前記少なくとも一つの送出し室(25,27)に対応して前記濾過バスケット(3)内に収容され,また前記鉛直縦軸線(X)に関して互いに同軸に且つ連続して接続されることを特徴とする,ストレーナ(1)。
【請求項8】
前記濾過バスケット(3)が,前記上方ローター(15)を収容する上方濾過バスケット(21)と,前記下方ローター(16)を収容する下方濾過バスケット(22)とを具備し,前記濾過バスケット(21,22)及び前記ローター(15,16)が,それらの間に,希釈水入口管(24)に連通する希釈室(23)を形成するために,前記鉛直縦軸線(X)に従ってスペースを設けられることを特徴とする,請求項7に記載のストレーナ(1)。
【請求項9】
前記少なくとも一つの送出し室が:
前記上方濾過バスケット(21)に対応して配置され且つ上方送出し管(26)を備えられた上方送出し室(25)と;
前記下方濾過バスケット(22)に対応して配置され且つ下方送出し管(28)を備えられた下方送出し室(27)と;を具備することを特徴とする,請求項7に記載のストレーナ(1)。
【請求項10】
前記ローター(4; 15,16)の前記各ブレード(6; 18,20)が:
前記鉛直縦軸線(X)に平行に延在する翼状表面(45)と;
前記翼状表面(45)を前記ローター(4; 15,16)の前記円筒状本体(5; 17,19)に接続する接続要素(46)と;を具備することを特徴とする,請求項1に記載のストレーナ(1)。
【請求項11】
前記翼状表面(45)の前端(47)及び前記接続要素(46)の前端(48)が,それぞれの突出ブレード(18,20)と,前記ローターの前記回転軸線(X)を通り抜ける鉛直断面平面(α,β)との交差によって規定される方向(H,K)で鋭角(47a,48a)を形成することを特徴とする,請求項10に記載のストレーナ(1)。
【請求項12】
少なくとも一つの制御ユニット(50)に接続された圧力センサー(42a,26a,28a,36a)を備えることを特徴とする,請求項1に記載のストレーナ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−97217(P2006−97217A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358025(P2004−358025)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(503295390)コメル ソチエタ ペル アツィオニ (3)
【Fターム(参考)】