説明

繊維機械

【課題】 バルーニングを強制的に拡大することにより、細い糸からなる大径の給糸パッケージを処理できる繊維機械を提供する。
【解決手段】 スピンドル装置12を備え、給糸パッケージ91から解舒された糸を前記スピンドル装置12の周囲にバルーニング93させることにより、前記糸92に撚りを付与する繊維機械において、給糸パッケージ91から給糸パッケージ91の軸方向に離隔した位置であって、かつ、給糸パッケージ91の軸中心より給糸パッケージ91の半径方向外側の位置をバルーニング93の終了点Cとするバルーニング拡大手段を備える。これにより、バルーニング93の内側空間が強制的に拡大され、細い糸に撚りをかける場合であっても、バルーニング93を強制的に拡大することができ、細い糸からなる大径の給糸パッケージ91であっても、処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸に撚りを付与する繊維機械に関し、より詳しくは、バルーニングを強制的に拡大させることで、大径の給糸パッケージを用いて糸に撚りを付与することができる繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給糸パッケージから解舒された糸に撚りを付与する繊維機械が知られている。例えば、図6に示すように、繊維機械としての単錘駆動型撚糸機では、各スピンドル装置201にスピンドル駆動モータ202を設け、前記スピンドル駆動モータ202により給糸パッケージ204を載置するロータリーディスク203を駆動回転させて、給糸パッケージ204(スピンドル装置201)の周囲に糸205をバルーニングさせることにより、ロータリーディスク203の1回の回転について、糸205に2回の撚りを付与する処理を行っている(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2004―244773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の繊維機械では、給糸パッケージ204(スピンドル装置201)の周囲に糸205をバルーニングさせているため、バルーニングの広がりが小さいと、バルーニングが給糸パッケージ204(スピンドル装置201)に接触し、糸205が擦れて傷んでしまい、糸205に撚りを付与することができない。このため、処理できる給糸パッケージ204の大きさは、バルーニングが接触しない大きさに制限されている。細い糸に撚りをかける場合は、特にバルーニングが広がりにくいため、処理できる給糸パッケージは小径のものに限られている。処理できる給糸パッケージの大きさに制限があると、一度に処理できる糸の長さが制限されることとなり、長い糸の処理が困難である。
【0004】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、バルーニングを強制的に拡大することにより、細い糸からなる大径の給糸パッケージを処理できるようにした繊維機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1に記載の発明では、
スピンドル装置を備え、給糸パッケージから解舒された糸を前記スピンドル装置の周囲にバルーニングさせることにより、前記糸に撚りを付与する繊維機械において、
前記給糸パッケージから前記給糸パッケージの軸方向に離隔した位置であって、かつ、前記給糸パッケージの軸中心より前記給糸パッケージの半径方向外側の位置を前記バルーニングの終了点とするバルーニング拡大手段を備えたことを特徴とする繊維機械とした。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、
前記バルーニングの終了点は、前記スピンドル装置のバルーニングの開始点と前記給糸パッケージの上側角部とを結ぶ仮想線の延長上よりも前記給糸パッケージの半径方向外側である、ことを特徴とする繊維機械とした。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2のいずれか1項に記載の発明において、
前記バルーニング拡大手段は、前記スピンドル装置の回転方向と同方向に回転していることを特徴とする繊維機械とした。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、
前記バルーニング拡大手段の回転速度と、前記スピンドル装置の回転速度とを同期させることを特徴とする繊維機械とした。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項3または4のいずれか1項に記載の発明において、
前記スピンドル装置を駆動させるスピンドル駆動モータと、
前記バルーニング拡大手段を駆動させるバルーニング拡大手段駆動モータと、
前記スピンドル駆動モータと前記バルーニング拡大手段駆動モータとの回転速度を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする繊維機械とした。
【0011】
請求項6に記載の発明では、請求項3または4のいずれか1項に記載の発明において、
前記スピンドル装置と前記バルーニング拡大手段の駆動力が共通の駆動モータから伝達されることを特徴とする繊維機械とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1に記載の発明では、給糸パッケージから前記給糸パッケージの軸方向に離隔した位置であって、かつ、前記給糸パッケージの軸中心より前記給糸パッケージの半径方向外側の位置をバルーニングの終了点とするバルーニング拡大手段を備えているため、バルーニング拡大手段が、給糸パッケージから給糸パッケージの軸方向に離隔した位置において、強制的にバルーニングを半径方向外側に拡大させる。これにより、バルーニングの内側空間が強制的に拡大される。従って、細い糸に撚りをかける場合であっても、バルーニングを強制的に拡大することができ、細い糸からなる大径の給糸パッケージであっても、処理することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、バルーニングの終了点は、スピンドル装置のバルーニングの開始点と給糸パッケージの上側角部とを結ぶ仮想線の延長上よりも給糸パッケージの半径方向外側であるため、バルーニング中の糸が給糸パッケージと接触することを確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、バルーニング拡大手段は、スピンドル装置の回転方向と同方向に回転しているため、バルーニング拡大手段とスピンドル装置による遠心力がバルーニングに伝わり、バルーニングが効率的に拡大する。
【0016】
請求項4に記載の発明では、バルーニング拡大手段の回転速度と、スピンドル装置の回転速度とを同期させているため、バルーニング拡大手段とスピンドル装置による遠心力がバルーニングに効率的に伝わり、バルーニングが安定する。
【0017】
請求項5に記載の発明では、制御手段によりスピンドル駆動モータとバルーニング拡大手段駆動モータとの回転速度を制御するため、異なる駆動源により、同期回転と、相対速度に変化をつけた回転のいずれも可能である。
【0018】
請求項6に記載の発明では、スピンドル装置とバルーニング拡大手段の駆動力が共通の駆動モータから伝達されるため、機械的に簡単な構造でスピンドル装置とバルーニング拡大手段を同方向に回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1に係る繊維機械について、図1、図2を用いて説明する。本実施例に係る繊維機械は、セットされた給糸パッケージ91からの糸92を撚糸し、撚糸した糸を巻き取る処理を行う撚糸ユニットが多数並設された単錘駆動型撚糸機である。以下、前記多数並設された撚糸ユニットのうち、1つの撚糸ユニット11について説明する。図1、図2に示すように、前記撚糸ユニット11は、スピンドル装置12、バルーニング拡大手段21、巻取装置71及び、制御手段101を有している。前記スピンドル装置12は撚糸ユニット11の下部に設けられ、前記バルーニング拡大手段21は前記スピンドル装置12の上方に設けられる。前記巻取装置71は前記バルーニング拡大手段21の上方に設けられる。
【0021】
前記スピンドル装置12は、セットされた給糸パッケージ91の周囲に糸92を旋回させてバルーニングを行い、糸に撚りを付与するものである。図2に示すように、スピンドル装置12は、スピンドル駆動軸13、スピンドル駆動モータ16(直流ブラシレスモータ)、ロータリーディスク41、静止ディスク51を有している。前記スピンドル駆動軸13には、ロータリーディスク41が一体的に回転するように固定されているとともに、静止ディスク51がベアリングを介してスピンドル駆動軸13に対して回動自在に支持されている。スピンドル駆動軸13は、前記スピンドル駆動モータ16によって駆動されて回転し、前記スピンドル駆動モータ16の回転は、前記制御手段101によって制御されている。スピンドル駆動軸13の内部には、糸92が挿通される縦経路14が上下方向に形成されている。
【0022】
前記ロータリーディスク41は、前記給糸パッケージ91から巻取装置71により引き出された糸92にバルーニング93を形成させ、糸92に撚りをかけるものである。前述のように、前記ロータリーディスク41は、スピンドル駆動軸13に固定されており、スピンドル駆動軸13と一体的に回転する。ロータリーディスク主体42の内部には、前記スピンドル駆動軸13の縦経路14から連続し、ロータリーディスク主体42の外周部に向けて略L字型に屈曲する横経路45が形成されている。前記ロータリーディスク主体42の側部には、前記横経路45の開口端部であって、バルーニングする糸92が引き出される糸引出孔46が形成されている。
【0023】
前記ロータリーディスク主体42の図示上部には、前記糸引出孔46から引き出された糸92を更に半径方向外側に案内して、バルーニング93を大きく拡大させるためのロータリーディスクガイド部43が形成されている。ロータリーディスクガイド部43の周縁部は、バルーニング93の開始点Aとなって、バルーニング前の糸92を給糸パッケージ91の半径方向外側に向けて案内する部分となる。
【0024】
図2に示すように、前記ロータリーディスク41の上方には、静止ディスク51が設けられている。静止ディスク51は、前述のように前記スピンドル駆動軸13に対して回動自在に支持されており、スピンドル駆動軸13の回転が静止ディスク51に伝達されないようにしている。また、前記静止ディスク51内には、第1磁石52が設けられており、前記静止ディスク51の側方のフレーム(図示せず)には、前記第1磁石52に対向する位置に、前記第1磁石52を引き付けるための第2磁石53が固定されている。従って、静止ディスク51には、スピンドル駆動軸13の回転が伝達されず、また、前記第1磁石52、第2磁石53が引き付け合うため、スピンドル駆動軸13が回転しても静止状態を保持する。尚、静止ディスク51には、チーズカバー54が一体的に形成されており、チーズカバー54はセットされた給糸パッケージ91の外周を覆っている。
【0025】
撚糸対象となる給糸パッケージ91は、ボビン94に巻回されており、このボビン94が前記静止ディスク51上にアダプタ95を介してセットされている。給糸パッケージ91は静止ディスク51上にセットされているため、スピンドル駆動軸13が回転しても静止状態を保持する。また、前述のように、給糸パッケージ91は、バルーニング中の糸92との接触等を防ぐため、その外周が前記チーズカバー54により覆われている。尚、給糸パッケージ91のセットを容易にするため、チーズカバー54を形成しなくてもよい。
【0026】
前記スピンドル駆動軸13の上方には、テンション装置61が設けられている。テンション装置61は、糸92に所定のテンションを付与するものである。テンション装置61の内部には、糸92を挿通させるためのテンション孔62が形成されており、テンション孔62に挿通された糸92は前記スピンドル駆動軸13内部に形成された縦経路14に挿通されるようにしている。また、テンション装置61には、給糸パッケージ91から解舒された糸92に従動して回動するフライヤー63が回動自在に支持されている。
【0027】
次に、前記バルーニング拡大手段21について説明する。バルーニング拡大手段21は、バルーニング93を強制的に給糸パッケージ91の半径方向外側に向けて拡大させるためのものである。バルーニング拡大手段21は、図2に示すように、拡大ディスク23、バルーニング拡大手段駆動軸22、バルーニング拡大手段駆動モータ33(直流ブラシレスモータ)を有している。バルーニング拡大手段21は、給糸パッケージ91から給糸パッケージ91の軸方向に離隔した位置に設けられており、前記給糸パッケージ91の図示上方に設けられている。前記バルーニング拡大手段駆動軸22は、前記拡大ディスク23が取り付けられている部分であり、内部には、糸92が挿通される縦経路26が上下方向に形成されている。
【0028】
前記拡大ディスク23は拡大ディスク主体24と拡大ディスクガイド部25を有している。前記拡大ディスク主体24は略円柱状の形状であり、内部には、前記バルーニング拡大手段駆動軸22内から連続する縦経路26と、前記縦経路26から連続し、拡大ディスク主体24の外周部に向けて略L字型に屈曲する横経路27とが形成されている。拡大ディスク主体24の側部には、前記横経路27の開口端部であって、バルーニングされた糸92を引き入れる糸引入孔28が形成されている。
【0029】
前記拡大ディスクガイド部25は、前記スピンドル装置12からの糸92を半径方向外側に張り出させて、バルーニング93を強制的に拡大させる部分であり、また、拡大ディスクガイド部25の周縁部は、バルーニング93の終了点Cとなって、バルーニング後の糸92を給紙パッケージ91の半径方向外側に向けて案内する部分となる。図2に示すように、バルーニング93の終了点Cである拡大ディスクガイド部25の周縁部(バルーニング終了時の糸92の位置を決める部分)は、バルーニング93の開始点Aであるロータリーディスクガイド部43の周縁部(バルーニング開始時の糸92の位置を決める部分)と給糸パッケージ91の上側角部Bとを結ぶ仮想線ABの延長線上よりも給糸パッケージ91の半径方向外側に位置するように形成される。このように形成することにより、チーズカバー54が設けられていない場合に、バルーニング中の糸92が給糸パッケージ91と接触することを確実に防止することができる。
【0030】
バルーニング拡大手段駆動軸22及び拡大ディスク23は、前記バルーニング拡大手段駆動モータ33によって駆動されて回転する。前記バルーニング拡大手段駆動モータ33の回転は、前記制御手段101によって制御されている。バルーニング拡大手段駆動モータ33による拡大ディスク23の回転方向は、前記ロータリーディスク41の回転方向と同方向である。制御手段101により、拡大ディスク23と、ロータリーディスク41とは同期した状態で回転している。上記同期回転は、拡大ディスク23とロータリーディスク41が一定の位相のずれを有した状態で回転していることを含む。
【0031】
前記拡大ディスクガイド部25は、前記ロータリーディスクガイド部43と略同径としたが、同径に限定されず、ロータリーディスクガイド部43の径と相違させてもよい。拡大ディスクガイド部25とロータリーディスクガイド部43の径を相違させた場合であっても、拡大ディスク23の回転方向は、ロータリーディスク41と同方向とし、拡大ディスク23と、ロータリーディスク41とは同期した状態で回転しているものとする。
【0032】
次に前記制御手段101について説明する。前記ロータリーディスク41の回転速度と拡大ディスク23の回転速度とを同期させることで、ロータリーディスク41と拡大ディスク23による遠心力がバルーニング93に効率的に伝わり、バルーニング93が安定する。このため、制御手段101によって、前記スピンドル駆動モータ16と前記バルーニング拡大手段駆動モータ33の回転を制御して、ロータリーディスク41と拡大ディスク23の回転を制御している。スピンドル駆動モータ16及びバルーニング拡大手段駆動モータ33には、直流ブラシレスモータを用いているため、制御手段101によって回転の制御を容易に行うことができる。
【0033】
図3に示すように、制御手段101は、ロータリーディスク41の回転数を検出する回転検出器102と、拡大ディスク23の回転数を検出する回転検出器103と、バルーニング拡大手段駆動モータ33用の磁極位置検出センサ104と、スピンドル駆動モータ16用の磁極位置検出センサ105とに接続されるとともに、スピンドル駆動モータ16と、バルーニング拡大手段駆動モータ33とに接続されている。前記制御手段101は、前記スピンドル駆動モータ16とバルーニング拡大手段駆動モータ33の回転数を制御することにより、ロータリーディスク41と拡大ディスク23の回転速度を一致させており、拡大ディスク23とロータリーディスク41を同期させた状態で同方向に回転させる。また、制御手段101は、定常運転時、停止状態から定常運転の回転数に至るまでの加速時、定常運転から停止状態に至るまでの減速時等のいずれの状態であっても、ロータリーディスク41と拡大ディスク23の回転速度を一致させて回転させるようにしている。
【0034】
次に、前記巻取装置71について説明すると、図1に示すように、前記巻取装置71は、ガイドローラ72、サイドローラ73、フィードローラ74、トラバースガイド75、巻取ドラム76等を有しており、スピンドル装置12及びバルーニング拡大手段21で加撚された撚糸を巻取パッケージ77に巻き上げるように構成されている。前記バルーニング拡大手段駆動軸22から上方へ導出される撚糸は、ガイドローラ72、サイドローラ73、フィードローラ74を経てトラバースガイド75に至る。そして、トラバースガイド75に至った撚糸は、トラバースガイド75により綾振りされながら、巻取ドラム76に接する巻取パッケージ77に巻き取られる。前記巻取ドラム76は、スピンドル駆動モータ16とは別個に設けられる巻取用モータ(図示せず)により駆動されている。
【0035】
以上構成の実施例1に係る繊維機械の動作について説明する。図2に示すように、まず、静止ディスク51にセットされた給糸パッケージ91から上方へ解舒された糸92は、フライヤー63に案内されて、テンション装置61のテンション孔62に上方から挿通され、テンション装置61によって所定のテンションを付与された後、スピンドル駆動軸13内部の縦経路14内に挿通される。そして、糸92は、ロータリーディスク41内部の横経路45内に挿通され、ロータリーディスク主体42の側部に開口する糸引出孔46から引き出される。前記糸引出孔46から引き出された糸92は、ロータリーディスクガイド部43によってロータリーディスク41の半径方向外側に案内される。
【0036】
前記ロータリーディスク41から引き出された糸92は、図示上方に案内され、ロータリーディスク41の図示上方に設けられた拡大ディスク23の拡大ディスクガイド部25によって、拡大ディスク23の半径方向外側に張り出した状態とされる。糸92は、拡大ディスク主体24の側部に開口する糸引入孔28に引き入れられ、拡大ディスク23内部の前記横経路27内に挿通される。そして、バルーニング拡大手段駆動軸22内部の縦経路26に挿通された後、前記巻取装置71に案内される。
【0037】
上記のように配置された糸92は、スピンドル駆動モータ16により駆動されるロータリーディスク41、及びバルーニング拡大手段駆動モータ33により駆動される拡大ディスク23が回転することによりバルーニングされる。糸92は、テンション装置61のカプセル64によって所定のテンションを付与されており、ロータリーディスク41が1回転する間に、静止状態のカプセル64から回転するロータリーディスク41へ至る間で、1回撚りを受ける。また、ロータリーディスク41から拡大ディスク23へ至る間にもう1回撚りを受ける。したがってスピンドル装置12及びバルーニング拡大手段21の1回転につき、糸92は2回の撚りを受けることになる。
【0038】
以上説明した、本実施例1に係る繊維機械によれば、給糸パッケージ91から給糸パッケージ91の軸方向に離隔した位置であって、かつ、給糸パッケージ91の軸中心より給糸パッケージ91の半径方向外側の位置に、バルーニング93の終了点Cとなって糸92を案内するバルーニング拡大手段21を備えているため、バルーニング拡大手段21の拡大ディスク23が、給糸パッケージ91から給糸パッケージ91の軸方向に離隔した位置において、強制的にバルーニング93を半径方向外側に拡大させる。これにより、給糸パッケージ91から給糸パッケージ91の軸方向に離隔した位置は、バルーニング93が広がりにくい位置であるが、バルーニング拡大手段21が強制的にバルーニング93を半径方向外側に拡大させるため、バルーニング93の内側空間が強制的に拡大される。従って、細い糸に撚りをかける場合であっても、バルーニング93を強制的に拡大することができ、細い糸からなる大径の給糸パッケージ91であっても、処理することができる。
【0039】
また、スピンドル駆動モータ16と、バルーニング拡大手段駆動モータ33の回転を制御手段101で制御することにより、バルーニング拡大手段21の拡大ディスク23と、前記スピンドル装置12のロータリーディスク41を同期させた状態で回転させるため、バルーニング拡大手段21の拡大ディスク23と、スピンドル装置12のロータリーディスク41による遠心力がバルーニング93に効率的に伝わり、バルーニング93が安定する。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明の実施例2に係る繊維機械について、説明する。実施例2では、バルーニング拡大手段21の回転速度と、スピンドル装置12の回転速度とを相対的に変化させた点が実施例1と大きく異なっている。実施例1と同一部分は同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0041】
実施例1では、前記制御手段101は、前記スピンドル駆動モータ16とバルーニング拡大手段駆動モータ33の回転数を制御することにより、ロータリーディスク41と拡大ディスク23の回転速度を一致させていたが、実施例2では、前記制御手段101は、前記スピンドル駆動モータ16とバルーニング拡大手段駆動モータ33の回転数を制御することにより、拡大ディスク23とロータリーディスク41を同方向に回転させた状態で、ロータリーディスク41の回転速度と拡大ディスク23の回転速度とを相対的に変化させている。
【0042】
変化のさせ方としては、例えば、ロータリーディスク41の回転速度を一定とし、時間の経過と共に、拡大ディスク23の回転速度をロータリーディスク41の回転速度より速くしたり、遅くしたりすることによって、両者の回転速度を相対的に変化させるようにしてもよい。また、ロータリーディスク41の回転速度と拡大ディスク23の回転速度の両者をそれぞれ時間の経過と共に変化させることによって、両者の回転速度を相対的に変化させるようにしてもよい。さらに、通常はロータリーディスク41の回転速度と拡大ディスク23の回転速度とを一致させた状態としておき、必要に応じて、両者の回転速度を相対的に変化させるようにし、一時的に回転速度が相対的に変化した状態となるようにしてもよい。
【0043】
以上説明した、本実施例2に係る繊維機械によれば、スピンドル駆動モータ16と、バルーニング拡大手段駆動モータ33の回転を制御手段101で制御することにより、バルーニング拡大手段21の拡大ディスク23の回転速度と、スピンドル装置12のロータリーディスク41の回転速度とを相対的に変化させた場合、糸太さのむらに起因するバルーニングの変動(脈動)を、バルーニング拡大手段21とスピンドル装置12との相対速度の変化により打ち消すことができる。
【実施例3】
【0044】
次に、本発明の実施例3に係る繊維機械について、図4を用いて説明する。実施例3では、バルーニング拡大手段21にトラベラー29を設けた点が実施例1と大きく異なっている。実施例1と同一部分は同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0045】
図4に示すように、拡大ディスク23は略円柱状であり、拡大ディスクガイド部25は形成されていない。前記拡大ディスク23の内部には、バルーニング拡大手段駆動軸22内から連続する縦経路26と、前記縦経路26から連続し、拡大ディスク23の外周部に向けて略L字型に屈曲する横経路27とが形成されている。そして、拡大ディスク23の側部には、前記横経路27の開口端部であって、バルーニングされた糸92を引き入れる糸引入孔28が形成されている。
【0046】
図4に示すように、前記拡大ディスク23の半径方向外側には、拡大ディスク23に対向するように、トラベラー29が設けられている。トラベラー29は、バルーニング93の終了点Cとなって、バルーニング後の糸92を給紙パッケージ91の半径方向外側に向けて案内する部分として設けられており、前記拡大ディスク23の糸引入孔28に引き入れられる糸92を強制的に半径方向外側に拡大させるためのものである。トラベラー29は、レール30とガイドリング31を有している。前記レール30は環状であり、レール30に支持される前記ガイドリング31がレール30上を周回できるようにされている。レール30は前記拡大ディスク23と略同心であって、かつ、前記拡大ディスク23の側面部に対向するように設置されている。また、前記ガイドリング31は、糸92を挿通させて拡大ディスク23の半径方向外側に糸92を案内する部材である。ガイドリング31は、前記環状のレール30に摺動自在に支持されており、拡大ディスク23及びロータリーディスク41による糸92の旋回(バルーニング)に伴う軽い力で前記レール30に沿って従動し、周回できるようにされている。
【0047】
以上説明した、本実施例3に係る繊維機械によれば、給糸パッケージ91から給糸パッケージ91の軸方向に離隔した位置であって、かつ、給糸パッケージ91の軸中心より給糸パッケージ91の半径方向外側の位置に、バルーニング93の終了点Cとなって、バルーニング後の糸92を給紙パッケージ91の半径方向外側に向けて案内する部分となるトラベラー29を設けており、給糸パッケージ91から給糸パッケージ91の軸方向に離隔した位置において、前記バルーニング拡大手段21のトラベラー29が強制的にバルーニング93を半径方向外側に拡大させる。これにより、バルーニング93が広がりにくい位置である、給糸パッケージ91から離隔した位置において、バルーニング93が強制的に半径方向外側に拡大され、バルーニング93の内側空間を強制的に拡大することができ、細い糸からなる大径の給糸パッケージ91であっても、処理することができる。
【実施例4】
【0048】
次に、本発明の実施例4に係る繊維機械について、図5を用いて説明する。実施例4では、共通の駆動モータ80で、スピンドル駆動軸13及びバルーニング拡大手段駆動軸22を駆動させる点が他の実施例と大きく異なっている。実施例1と同一部分は同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0049】
前記実施例1、2では、スピンドル駆動モータ16及びバルーニング拡大手段駆動モータ33を別個に設けたが、実施例4では、共通の駆動モータ80でスピンドル駆動軸13及びバルーニング拡大手段駆動軸22を駆動させるようにしている。図5に示すように、スピンドル駆動軸13にスプロケット15を設け、バルーニング拡大手段駆動軸22にはスプロケット32を設ける。駆動軸81にはスプロケット82、83を設ける。そして、前記スプロケット15とスプロケット82との間にタイミングベルト84を巻回し、前記スプロケット32とスプロケット83との間にタイミングベルト85を巻回する。駆動モータ80によってスピンドル駆動軸13を駆動させ、タイミングベルト84、駆動軸81、タイミングベルト85を介してバルーニング拡大手段駆動軸22を駆動させる。
【0050】
前述のように、バルーニング拡大手段21の拡大ディスク23と、前記スピンドル装置12のロータリーディスク41の回転速度を一致させ、同期させた状態で回転させることにより、バルーニング拡大手段21の拡大ディスク23と、スピンドル装置12のロータリーディスク41による遠心力がバルーニング93に効率的に伝わり、バルーニング93が安定するのであるが、本実施例4のようにスピンドル駆動軸13とバルーニング拡大手段駆動軸22を駆動軸81とタイミングベルト84、85を用いて駆動させた場合、定常運転時、加速時、減速時等のいずれの場合においても容易に回転速度を一致させることができる。さらに、機械的に簡単な構造で前記同期回転を達成することができる。
【0051】
尚、実施例は上記に限定されるものではなく、例えば、以下のようにしてもよい。
【0052】
前記バルーニング拡大手段21には、拡大ディスク23を設けたが、ディスク状に限定されず、糸92をバルーニング93の半径方向外側に拡大させるものであればよい。ディスク状の他、アーム状のものを用いてもよい。また、バルーニング拡大手段21に形成される縦経路26、横経路27は、閉鎖された管状のものでなくてもよく、例えば、リング状のガイド部材を複数箇所に設けて糸92を案内するものであってもよい。
【0053】
また、本実施例では、繊維機械として、単錘駆動型撚糸機の場合について説明したが、単錘駆動に限定されず、全撚糸ユニットを駆動ベルトを用いて一斉に駆動する撚糸機としてもよい。
【0054】
以上説明した本発明の技術的範囲は、上記の実施例に限定されるものではなく、上記実施例の形状に限定されない。本発明の技術的範囲は、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例1に係る繊維機械の一部を示す斜視簡略図。
【図2】本発明の実施例1に係る繊維機械の一部を示す側面簡略図。
【図3】制御手段101の概略構成を示すブロック図。
【図4】本発明の実施例3に係る繊維機械の一部を示す側面簡略図。
【図5】本発明の実施例4に係る繊維機械の一部を示す側面簡略図。
【図6】従来の繊維機械の一部を示す側面簡略図。
【符号の説明】
【0056】
11 撚糸ユニット
12 スピンドル装置
13 スピンドル駆動軸
14 縦経路
15 スプロケット
16 スピンドル駆動モータ
21 バルーニング拡大手段
22 バルーニング拡大手段駆動軸
23 拡大ディスク
24 拡大ディスク主体
25 拡大ディスクガイド部
26 縦経路
27 横経路
28 糸引入孔
29 トラベラー
30 レール
31 ガイドリング
32 スプロケット
33 バルーニング拡大手段駆動モータ
41 ロータリーディスク
42 ロータリーディスク主体
43 ロータリーディスクガイド部
45 横経路
46 糸引出孔
51 静止ディスク
52 第1磁石
53 第2磁石
54 チーズカバー
61 テンション装置
62 経路
63 フライヤー
64 カプセル
71 巻取装置
72 ガイドローラ
73 サイドローラ
74 フィードローラ
75 トラバースガイド
76 巻取ドラム
77 巻取パッケージ
80 駆動モータ
81 駆動軸
82、83 スプロケット
84、85 タイミングベルト
91 給糸パッケージ
92 糸
93 バルーニング
94 ボビン
95 アダプタ
101 制御手段
102、103 回転検出器
104、105 磁極位置検出センサ
201 スピンドル装置
202 スピンドル駆動モータ
203 ロータリーディスク
204 給糸パッケージ
205 糸
A バルーニングの開始点
B 給糸パッケージの上側角部
C バルーニングの終了点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドル装置を備え、給糸パッケージから解舒された糸を前記スピンドル装置の周囲にバルーニングさせることにより、前記糸に撚りを付与する繊維機械において、
前記給糸パッケージから前記給糸パッケージの軸方向に離隔した位置であって、かつ、前記給糸パッケージの軸中心より前記給糸パッケージの半径方向外側の位置を前記バルーニングの終了点とするバルーニング拡大手段を備えたことを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
前記バルーニングの終了点は、前記スピンドル装置のバルーニングの開始点と前記給糸パッケージの上側角部とを結ぶ仮想線の延長上よりも前記給糸パッケージの半径方向外側である、ことを特徴とする請求項1に記載の繊維機械。
【請求項3】
前記バルーニング拡大手段は、前記スピンドル装置の回転方向と同方向に回転していることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の繊維機械。
【請求項4】
前記バルーニング拡大手段の回転速度と、前記スピンドル装置の回転速度とを同期させることを特徴とする請求項3に記載の繊維機械。
【請求項5】
前記スピンドル装置を駆動させるスピンドル駆動モータと、
前記バルーニング拡大手段を駆動させるバルーニング拡大手段駆動モータと、
前記スピンドル駆動モータと前記バルーニング拡大手段駆動モータとの回転速度を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項3または4のいずれか1項に記載の繊維機械。
【請求項6】
前記スピンドル装置と前記バルーニング拡大手段の駆動力が共通の駆動モータから伝達されることを特徴とする請求項3または4のいずれか1項に記載の繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−223157(P2008−223157A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60249(P2007−60249)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】