繊維補強シート及びその製造方法と製造装置
【課題】繊維シートを容易に3層に積層することができるとともに層間剥離が起こり難い繊維補強シートを提供する。
【解決手段】繊維束6を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シート2が繊維補強シート1の長手方向に沿って配され、繊維シート5を巻き付け角度θ°の傾きを持たせて重なるように順番に第1繊維シート2を巻き付けるように折り返して螺旋状に巻き付け、長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シート2と、+θ°よりなる第2繊維シート3と、−θ°よりなる第3繊維シート4との三層を有するものである。
【解決手段】繊維束6を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シート2が繊維補強シート1の長手方向に沿って配され、繊維シート5を巻き付け角度θ°の傾きを持たせて重なるように順番に第1繊維シート2を巻き付けるように折り返して螺旋状に巻き付け、長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シート2と、+θ°よりなる第2繊維シート3と、−θ°よりなる第3繊維シート4との三層を有するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維束、ガラス繊維束、アラミド繊維束などの強化繊維束を用いた多軸の繊維補強シート、その製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、2軸方向を補強した繊維補強シートであって、その2軸方向が繊維補強シートの長手方向に対し対称方向であるものを提供した。すなわち、繊維束を一方向に引き揃え配列した繊維シートを一対の折り返しガイド部に沿ってθ°の傾きを持たせて重ねるように順番に折り返して巻き付け、繊維シートの方向が+θ°よりなる第1繊維シートと−θ°よりなる第2繊維シートの二層から構成された繊維補強シートを製造するものである(特許文献1参照)。
【0003】
また、最近は、繊維シートを積層する場合に、その繊維シートの厚さが薄いほど、繊維シートを積層した場合の層間剥離が起こらないことが分かってきた(非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−221771号公報
【非特許文献1】「多方向強化複合材料積層板の初期破損に関する層厚さの影響」 笹山秀樹他著 日本複合材料学会誌Vol.30 No.4 2003年7月31日受付
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近の繊維補強シートにおいては、上記2軸の繊維補強シートに加えて、3軸以上の多軸の繊維補強シートが要求されてきている。
【0005】
そこで本発明は、繊維シートを容易に多軸に積層することができるとともに層間剥離が起こり難い繊維補強シート、その製造方法及び製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多軸の繊維補強シートであって、繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートが前記繊維補強シートの長手方向に沿って配され、前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを、所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて重なるように順番に前記第1繊維シートを巻き付けるように折り返して螺旋状に巻き付け、前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シートと、前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと、前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートと、三層を有することを特徴とする繊維補強シートである。
【0007】
また、本発明は、多軸の繊維補強シートであって、繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを前記繊維補強シートの長手方向に沿って配され、前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを、所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて重なるように順番に折り返して螺旋状に巻き付け、前記第1繊維シートと前記螺旋状に巻き付けられた一枚の繊維シートが重ねられ、前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シートと、前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと、前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートと、三層を有することを特徴とする繊維補強シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維補強シートであると、繊維補強シートの長手方向に対して0°の第1繊維シートと、+θ°の第2繊維シートと、−θ°の第3繊維シートが積層された繊維補強シートを積層したものを実現することができ、その製造も容易である。
【0009】
また、繊維補強シートの長手方向に対して90°の第4繊維シートを積層することにより4軸の繊維補強シートを実現できる。
【0010】
また、各繊維シートの厚さを0.005mm〜0.08mmにすることにより、層間剥離も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態ついて説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。
【0013】
(1)繊維補強シート1の構造
第1の実施形態の繊維補強シート1について、図1に基づいて説明する。
【0014】
図1は、繊維補強シート1の平面図である。
【0015】
繊維補強シート1は、繊維束2を一方向に引き揃えた繊維シートを、三層に積層した3軸の繊維補強シートである。この三層の中の第1積層シート4は、この繊維補強シート1の長手方向に沿って配されている。そして、1枚の繊維シート5を繊維補強シート1の長手方向に対して所定角度θ°(以下、巻き付け角度θという)の傾きを持たせて重ねるように順番に折り返して第1繊維シート2に螺旋状に巻き付ける。
【0016】
これにより、3軸の繊維補強シート1は、繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シート3と、繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シート3と、繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シート4の三層から構成される。
【0017】
なお、繊維束としては炭素繊維束、ガラス繊維束、アラミド繊維束などの強化繊維束である。また、各繊維シート2,5を構成する繊維束が、幅広く薄い状態に連続開繊した開繊糸である。また、繊維束は熱融着糸、または、目止め剤を付着させた繊維束よりなる。さらに、各繊維シート2,5が、熱可塑性樹脂、または、熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグシートである。
【0018】
ここで、巻き付け角度θ°としては、0°〜90°であり、好適には15°〜75°である。なお、θ°=0°の場合には上記したように繊維補強シート1の長手方向になり、90°の場合にはその幅方向となる。
【0019】
また、この第1繊維シート2及び繊維シート5の厚みは、0.005mm〜0.08mmであり、好適には0.01mm〜0.06mmである。これにより第1繊維シート3と、第2繊維シート3と、第3繊維シート4との間で層間剥離が起こらない。
【0020】
この繊維補強シート1を用いると、疑似等方性があり、かつ、厚み方向において対称となる大形複合板材を容易に実現することができる。さらに、この繊維補強シート1は、第1繊維シート2、第2繊維シート3及び第3繊維シート4の三層構造であるためより強度の高い板材を実現することができる。
【0021】
(2)繊維補強シート製造装置10の構成
次に、上記で説明した繊維補強シート1を製造するための繊維補強シート製造装置10について図2〜図5に基づいて説明する。
【0022】
図2は繊維補強シート製造装置10の斜視図である。まず、本明細書においての座標系について定義しておく。図2において、繊維補強シート1の長手方向をz軸方向、繊維補強シート1の幅方向をx軸方向、その幅方向に対して直交する方向(法線方向)をy軸方向と設定する。
【0023】
(2−1)第1繊維シート供給ロール26
第1繊維シート2を供給するための第1繊維シート供給ロール26が、x軸方向に回転軸が配されるように取り付けられている。この第1繊維シート供給ロール26は他動であり、巻き付けられた第1繊維シート2が引っ張られることにより回転する。
【0024】
(2−2)テンターチェーン12
第1繊維シート2と3軸の繊維補強シート1を−z軸方向に走行させるために、第1繊維シート供給ロール26の下方であって、繊維補強シート1の両耳部の位置に相当する箇所に、左右一対のテンターチェーン12,12が互いに平行にz軸に沿って設けられている。
【0025】
テンターチェーン12はピンテンターであり、図3及び図4に基づいて説明する。なお、図2においては、テンターチェーン12は簡略化して表示している。
【0026】
まず、左側のテンターチェーン12について説明する。
【0027】
テンターチェーン12は、図3に示すように、無端状のチェーン14が、ほぼ長方形状に張り巡らされ、それぞれチェーン14の折曲部分にチェーンホイール16が設けられ、このチェーンホイール16が回転することによりチェーン14が図3において反時計回りの方向に移動する(図2では、時計回りの方向に回転する)。チェーンホイール16は、トルク制御を行うことができるトルク制御モータTM3によって回転する。
【0028】
チェーン14には、図4に示すように針18が植設された保持部20が複数個連結されている。この保持部20は、チェーン14の移動とともに順番に移動する。保持部20は、図4に示すように、ほぼ立方体よりなり、+y軸方向と−y軸方向に向かって針18が4本ずつ植設されている。この+y軸方向と−y軸方向に突設した針18に繊維補強シート1が取り付けられ、テンターチェーン12によって繊維補強シート1が走行する。
【0029】
そして、この保持部20の左側部には溝22が設けられている。この溝22は、後から説明するカッター24が挿入され、針18に植設された繊維補強シート1を切断する。
【0030】
右側のテンターチェーン12についても同様の構造である。
【0031】
一対のテンターチェーン12,12においてz軸方向に沿って移動するチェーン14の下端部近傍には、保持部20の針18に取り付けられた繊維補強シート1を外すための一対の取り外し板28,28が設けられている。取り外し板28の上方が三角形状であり、カッター24によって二つに切断された繊維補強シート1の端部がこの三角形状の取り外し板28にくると、第1補強シート1が分割されながら外側に広がるように移動する。この広がるように移動することにより針18から繊維補強シート1が外れる。
【0032】
(2−3)巻き付け装置32
一対のテンターチェーン12,12の外方には、繊維束2を一方向に引き揃え配列した繊維シート5を巻き付けた繊維シート供給ロール30が配されている。この繊維シート供給ロール30は、トルク制御モータTM1によって回転する。この繊維シート供給ロール30の回転軸は、繊維補強シート1の長手方向、すなわち、z軸方向に対してθ°の傾きを持って配されている。
【0033】
トルク制御モータTM1及び繊維シート供給ロール30とを一対のテンターチェーン12,12の外周で回転させるための巻き付け装置32が設けられている。
【0034】
この巻き付け装置32は、リング状のリングギア34から外方に腕部材36が突出し、この腕部材36の先端に角度θ°をもってトルク制御モータTM1が配され、このトルク制御モータTM1の回転軸に繊維シート供給ロール30の回転軸が接続されている。
【0035】
リングギア34は、ギア38を介して回転スピード制御モータSM2によってz軸と平行な軸を中心にして回転する。
【0036】
(2−4)走行ロール40,42
巻き付け装置32の下方には、完成した繊維補強シート1を走行させるための一対の走行ロール40,42が設けられている。この走行ロール42は、回転スピード制御モータSM1によって回転する。
【0037】
(2−5)シート回収ロール44
走行ロール40,42の下方には、繊維補強シート1を回収するためのシート回収ロール44が配され、このシート回収ロール44はトルク制御モータTM2によって回転する。
【0038】
(2−6)加熱ロール46,48
走行ロール40,42とシート回収ロール44との間には、三層に積層された繊維補強シート1を加熱及び加圧するための一対の加熱ロール46,48が設けられている。
【0039】
なお、図2においては図示を省略したが、加熱ロール46,48の間に繊維補強シート1を挿入する前に、繊維補強シート1の両面に離型紙を供給する離型紙供給ロールが設けられ、さらに加熱ロール46,48の下方には、繊維補強シート1の両面に張りつけられた離型紙を回収するための一対の離型紙回収ロールも設けられている。
【0040】
(2−7)繊維補強シート製造装置10の電気的構成
図5は、繊維補強シート製造装置10のブロック図である。
【0041】
コンピュータよりなる制御部50によって回転スピード制御モータSM1,SM2及びトルク制御モータTM1,TM2,TM3が接続され、また、加熱ロール46,48を加熱制御する加熱部及び回転させるためのモータ49も接続され、それぞれ回転スピード及びトルクと温度が制御されている。さらに、制御部50を操作するための操作部52が設けられている。
【0042】
(3)繊維補強シート製造装置10の動作状態
上記で説明した繊維補強シート製造装置10を用いて、図1に示す3軸の繊維補強シート1を製造する工程について説明する。
【0043】
(3−1)第1工程
第1繊維シート供給ロール26から繊維束をz軸方向に引き揃え配列した第1繊維シート2を供給し、一対のテンターチェーン12,12に取り付ける。この場合に、第1繊維シート2の両耳部に一対のテンターチェーン12,12の保持部20の針18をそれぞれ取り付け、第1繊維シート2が拡布状態で−z軸方向に走行させる。
【0044】
(3−2)第2工程
リングギア34を回転スピード制御モータSM2によって回転させ、繊維シート供給ロール30から繊維シート5をθ°の傾きを持って引き出す。
【0045】
(3−3)第3工程
リングギア34を一定速度で回転させて、引き出した繊維シート5を、例えば右側のテンターチェーン12の位置で折り返す。この場合に、一対のテンターチェーン12,12の間には拡布状態で第1繊維シート2が走行しているため、この第1繊維シート2を繊維シート5で包むように折り返す。この折り返しは、巻き付け装置32のリングギア34を回転させると折り返すことができる。
【0046】
ここで重要なことは、テンターチェーン12によって繊維シート5を折り返すために、太繊度の繊維束でも折り返すことができる。すなわち、太繊度の繊維束は開織によりシート化しているが、テンターチェーン12に沿って折り返すことができる。
【0047】
(3−4)第4工程
リングギア34を一定速度で回転させ、かつ、第1繊維シート2を一対のテンターチェーン12,12によって一定速度で走行させると、右側のテンターチェーン12で折り返した繊維シート5を繊維シート供給ロール30から引き出しつつ+θ°の傾きを持って右側のテンターチェーン12から左側のテンターチェーン12に向かって引き出す。これによって第2繊維シート3が形成できる。
【0048】
(3−5)第5工程
さらに、リングギア34を一定速度で回転させて、第1繊維シート2を一定速度で走行させると、第2繊維シート3が左側のテンターチェーン12で折り返される。
【0049】
(3−6)第6工程
リングギア34を一定速度で回転させて、第1繊維シート2を一定速度で走行させると、折り返した第2繊維シート3を左側のテンターチェーン12から右側のテンターチェーン12に向かって繊維シート供給ロール30によって引き出されながら第3繊維シート4が形成される。
【0050】
(3−7)第7工程
リングギア34を一定速度で回転させて、第1繊維シート2を一定速度で走行させると、第3繊維シート4が右側のテンターチェーン12で折り返される。そして、第3工程と同様に第2繊維シート3が形成される。
【0051】
以下同様にして、第3工程から第7工程を1サイクルとして、このサイクルを繰り返して一対のテンターチェーン12に繊維シート5を巻き付け角度θ°の傾きを持って螺旋状に巻き付けることによって、図1に示すような3軸の繊維補強シート1が製造される。
【0052】
(3−8)第8工程
製造した3軸の繊維補強シート1は、一対の走行ロール40,42によって引っ張られている状態となっているが、この一対の走行ロール40,42の間に設けられたカッター24によって、第2繊維シート3と第3繊維シート4とに分断される。すなわち、一対のカッター24,24によって、繊維補強シート1の両耳部でz軸方向に沿って分断される(図4参照)。カッター24によって分断された繊維補強シート1は、三角形状の取り外し板28によって+y軸方向と−y軸方向に押し広げられ、この押し広げられることによってテンターチェーン12の保持部20の針18から取り外されることとなる。なお、上記したようにカッター24は保持部20の溝22に挿入されるため、保持部20と接触することがない。
【0053】
(3−9)第9工程
第1繊維シート2、第2繊維シート3、第3繊維シート4の三層によって構成された3軸の繊維補強シート1が、一対の加熱ロール46,48の間を移動することにより加熱圧着される。
【0054】
なお、上記したように加熱及び加圧する場合に、繊維補強シート1の両面に離型紙を取り付け、この離型紙の上から加熱及び加圧をする。そして、加熱及び加圧を終了すると、両面に取り付けられた離型紙を回収する。
【0055】
(3−10)第10工程
離型紙が回収された3軸の繊維補強シート1をシート回収ロール44によって回収する。
【0056】
この製造工程において、巻き付け装置32が回転スピード制御モータSM2によって回転する回転速度と、一対の走行ロール40,42を回転させる回転制御モータSM1の回転速度を合致させる。また、テンターチェーンを走行させるトルク制御モータTM3のトルクが、繊維補強シート1を引っ張るテンションに合わす必要があり、さらに、シート回収ロール44を走行させるトルク制御モータTM2のトルクは、その積層される繊維補強シート1の回転スピードとテンションに合わせる。この調整は、制御部50によって行う。そして、弛みがないように制御する。
【0057】
具体的には、回転制御モータSM2の回転により繊維シート5が1回転する間に、回転スピード制御モータSM1の回転は、繊維補強シート1をL(1回転分の巻き取り長さ)だけ送るように制御する。
【0058】
ここで、巻き付け装置32の1回転分の巻き取り長さLと、図1に示す繊維シート5の幅Bとの関係は、
L=B/sinθ
であり、繊維補強シート1の幅Wとの関係は、
W=B/(2×cosθ)
である。
【0059】
(4)本実施形態の効果
以上により、繊維補強シート製造装置10を用いれば、3軸の繊維補強シート1を簡単に、かつ、連続して製造することができる。
【0060】
(第1の実施形態の変更例)
第1の実施形態では、繊維シート3を供給するものとして繊維シート供給ロール30を使用したが、これに代えて、繊維束6を巻回したボビンを複数個配列させて、繊維シート5として供給する構造であってもよい。
【0061】
なお、この構造は第1繊維シート2を供給する場合についても適応することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の繊維補強シート1について、図6に基づいて説明する。
【0063】
第1の実施形態では、1枚の繊維シート5を折り返して第2繊維シート3と第3繊維シート4を形成して繊維補強シート1を製造したが、本実施形態では、図6に示すように、2枚の繊維シート5−1、5−2を交互に順次折り返しながら第1繊維シート2を巻き付け、第2繊維シート3と第3繊維シート4を形成し、繊維補強シート1を製造する。
【0064】
この場合に、1回転分の巻き取り長さLは、
L=(B1+B2)/sinθ
であり、繊維補強シート1の幅Wは、
(B1+B2)/(2×cosθ)となる。
【0065】
なお、B1は1枚目の繊維シート5−1の幅であり、B2は2枚目の繊維シート5−2の幅を表している。
【0066】
(第2の実施形態の変更例)
第2の実施形態では2枚の繊維シート5−1,5−2を交互に順次折り返して巻く構造を示したが、これに限らず3枚以上の繊維シート5を順次折り返して繊維補強シート1を製造してもよい。
【0067】
例えば、4枚の繊維シート5を用いて製造する場合には、一対のテンターチェーン12,12を中心として、4本の繊維シート供給ロール30が存在し、それぞれ45°毎に配されている。そして、これら4本の繊維シート供給ロール30を順番に同じ回転速度で一対のテンターチェーン12,12の周囲を回転させることにより繊維補強シート1を製造することができる。
【0068】
ここで、n枚の繊維シート5を用いた場合の繊維補強シート1の幅Wと、1サイクルの工程で製造される繊維補強シート1の長さLは次のように表すことができる。
【数1】
【0069】
なお、Bkは繊維シート1のk番目(1=<k=<n)の幅を意味しており、θは巻き付け角度である。
【0070】
(第3の実施形態)
図7に基づいて、第3の実施形態について説明する。
【0071】
第1の実施形態では、第1繊維シート2を繊維シート5で巻き付け、三層の繊維シート層を形成したが、本実施形態では、一対のテンターチェーン12,12の間を第1の実施形態と同様に繊維シート5を角度θをもって巻き付け、まず第2繊維シート3と第3繊維シート4を形成する。
【0072】
第2繊維シート3と第3繊維シート4を螺旋状に巻き付け形成された2軸の繊維補強シートに、第1繊維シート2を外方から積層し、3軸の繊維補強シート1を製造する。
【0073】
そのため、本実施形態の繊維補強シート製造装置10においては、テンターチェーン12,12の間を第2繊維シート3と第3繊維シート4のみ走行させ、一対の走行ロール40,42の手前で、第1繊維シート2を合わせて一対の走行ロール40,42で3軸の繊維補強シート1を製造する。
【0074】
後の工程については第1の実施形態と同様である。
【0075】
本実施形態であっても、疑似等方性があり、かつ、厚み方向において対称積層となる繊維補強シート1を製造することができる。
【0076】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について図8〜図12に基づいて説明する。
【0077】
第1の実施形態から第3の実施形態においては3軸の繊維補強シート1について説明したが、第4の実施形態では4軸の繊維補強シート1について説明する。
【0078】
(1)繊維補強シート1の構造
図8は、本実施形態の4軸の繊維補強シート1の平面図である。
【0079】
繊維補強シート1は、繊維束6をz軸方向に引き揃えた第1繊維シート2を配する。そして、繊維束6を一方向に引き揃えた繊維シート5を、この繊維補強シート1の長手方向に対して巻き付け角度θの傾きを持たせて重ねるように順次折り返して第1繊維シート2を螺旋状に巻き付ける。これにより、第1繊維シート2と繊維シート5の方向が+θ°よりなる第2繊維シート3と、繊維シート5の方向が−θ°よりなる第3繊維シート4よりなる3軸の繊維補強シートが形成される。次に、3軸の繊維補強シートに、長手方向に対し、θ=90°の方向に繊維束6を引き揃えた第4繊維シート7を積層して4軸の繊維補強シートが形成される。
【0080】
この4軸の繊維補強シート1であっても、疑似等方性があり、かつ、厚み方向において対称となる大形複合板材を容易に実現することができる。なお、この四層の繊維シートについても第1の実施形態と同様にその厚みが0.05mm〜0.08mm、好ましくは0.01mm〜0.06mmが好適である。
【0081】
(2)繊維補強シート製造装置10の構成
次に、4軸の繊維補強シート1を製造する繊維補強シート製造装置10について説明する。
【0082】
この繊維補強シート製造装置10において、走行ロール40,42までの構造については第1の実施形態の繊維補強シート製造装置10と同様であるので説明は省略する。
【0083】
走行ロール40,42の側方には、3軸の繊維補強シート1を+y軸方向に移動するための第1テンターチェーン54が設けられている。また、この第1テンターチェーン54,54とは、一定の間隔を開けて第2テンターチェーン56,56が設けられている。
【0084】
さらに、第2テンターチェーン56,56とは一定の間隔を開けて第3テンターチェーン58,58が設けられている。
【0085】
第1テンターチェーン54と第2テンターチェーン56との間には、上下方向に移動自在な第1調整ロール60が設けられている。
【0086】
第2テンターチェーン58の途中には、第4繊維シート7を3軸の繊維補強シート1に積層する第4繊維シート積層装置57を設けられている。この第4繊維シート積層装置57については後から詳しく説明する。
【0087】
第2テンターチェーン56と第3テンターチェーン58との間にも、上下方向に移動自在な第2調整ロール62が設けられている。
【0088】
第3テンターチェーン58の途中には、四層に積層された4軸の繊維補強シート1を加熱及び加圧するための加熱ロール64,66が設けられている。第3テンターチェーン58の終了位置近傍には、一対のカッター68が設けられており、4軸の繊維補強シート1の両耳部を切断することができる。
【0089】
また、第3テンターチェーン58の終了側の近傍には、完成した4軸の繊維補強シート1を回収するためのシート回収ロール44が設けられている。
【0090】
さらに、カッター70,74によって切断された両耳部を回収するための耳回収ロール72も左右一対設けられ、モータ74によって回転する。
【0091】
(3)繊維補強シート製造装置10の動作状態
次に、繊維補強シート製造装置10の動作状態について説明する。
【0092】
三層の繊維補強シート1を製造するまでは、第1の実施形態と同様であるので省略する。
【0093】
(3−1)
第1工程においては、3軸の繊維補強シート1を両耳部を第1テンターチェーン54に取り付ける。この第1テンターチェーン54は、ピンテンターであり、保持部に針が植設され、この針に三層の繊維補強シート1を拡布状態で取り付ける。すると、3軸の繊維補強シート1は第1テンターチェーン54,54に沿って+y軸方向に移動する。
【0094】
(3−2)第2工程
第2工程においては、第1テンターチェーン54,54の搬送が終了すると、この一対の第1テンターチェーン54,54から取り外され、第1調整ロール60にかけ渡され、次に第2テンターチェーン56,56に取り付けられる。第1調整ロール60は、上下動移動可能であり、その位置によって、第1テンターチェーン54と第2テンターチェーン56との間に滞留する3軸の繊維補強シート1の量を調整することができる。詳しくは後から説明する。
【0095】
第2テンターチェーン56も、ピンテンターであり、3軸の繊維補強シート1を拡布状態で搬送する。
【0096】
(3−3)第3工程
第3工程においては、第2テンターチェーン56,56によって搬送される3軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を第4繊維シート積層装置57によって積層する。この積層についても後から詳しく説明する。
【0097】
(3−4)第4工程
四層に積層された繊維補強シート1は第2テンターチェーン56,56から取り外され、第2調整ロール62にかけ渡され第3テンターチェーン58,58に取り付けられる。この第3テンターチェーン58もピンテンターであり、4軸の繊維補強シート1を拡布状態で搬送する。
【0098】
(3−5)第5工程
第3テンターチェーン58,58によって搬送されている4軸の繊維補強シート1を一対の加熱ロール64,66によって加熱及び加圧することにより4軸の繊維補強シート1を一体にする。
【0099】
(3−6)第6工程
四層に積層された4軸の繊維補強シート1において、各テンターチェーンによって孔が空いている両耳部が不要なため、一対のカッター70,70によって切断し、シート回収ロール44によって両耳部が切断された4軸の繊維補強シート1を回収する。なお、不要な両耳部は耳回収ロール72,72によって回収する。
【0100】
以上によって、4軸の繊維補強シート1を製造することができる。
【0101】
(4)第4繊維シート積層装置57の構成と動作状態
次に、3軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を積層する第4繊維シート積層装置57の構成と動作状態について図10に基づいて説明する。
【0102】
図10は、第4繊維シート積層装置57の構成と動作状態によって第4繊維シート7を積層する状態を表す図面であり、図10(a)〜(i)の各図面において、上段の図面は第2テンターチェーン56を走行する繊維補強シート1の平面図であって、下から上に走行している。また、下段の図は、第2テンターチェーン56の位置における後から前を見た図である。
【0103】
(4−1)第4繊維シート積層装置57の構成
まず、第4繊維シート積層装置57の構成について説明する。
【0104】
第2テンターチェーン56の両側に沿って、上下動移動自在に一対の棒状の第1押え部材76,76が第2テンターチェーン56,56の上方に位置している。
【0105】
一対の第1押え部材76,76の両側には、上下動移動自在にカッター86,86が設けられている。
【0106】
第2テンターチェーン56とは直交する方向に、第4繊維シート7を供給する第4繊維シート供給ロール78が設けられている。この第4繊維シート供給ロール78と右側の第2テンターチェーン56との間には、支持台80が設けられ、この支持台80の上方には上下動移動自在に第2押え部材82が設けられている。
【0107】
一対の第2テンターチェーン56,56を挟んで第4繊維シート供給ロール78とは反対側に、第4繊維シート7を迎えにいくための把持部材84が設けられている。この把持部材84の先端部はクリップとなっており、第4繊維シート7の端部を把持することができるとともに、x軸方向に沿って移動自在となっている。
【0108】
第4繊維シート積層装置57を用いて第4繊維シート7を積層する工程を説明する。
【0109】
(4−2)第1工程
第1工程について図10(a)に基づいて説明する。
【0110】
3軸の繊維補強シート1を第2テンターチェーン56,56によって拡布状態で走行させる。この場合に第1押え部材SSS,SSSは走行する3軸の繊維補強シート1を押さえていない状態である。そして、把持部材84は待機状態となっている。また、第4繊維シート供給ロール78から引き出された第4繊維シート7は、支持台80の上に第2押え部材82によって押さえられた状態となっている。しかし、この幅Wの第4繊維シート7の端部は支持台80から突出した状態にしておく(図10(a)参照)。
【0111】
(4−3)第2工程
第2工程について図10(b)に基づいて説明する。
【0112】
3軸の繊維補強シート1の走行を停止される。把持部材84が待機状態から突出した状態となり、一対の第2テンターチェーン56,56の上方を移動し、支持台80から突出した幅Wの第4繊維シート7の端部を把持する。
【0113】
(4−4)第3工程
第3工程について図10(c)図11(a)に基づいて説明する。
【0114】
図10(c)に示すように、幅Wの第4繊維シート7の端部を把持した把持部材84は突出した状態から待機状態の位置に復帰するように移動し始める。このように移動することにより、第4繊維シート7が、3軸の繊維補強シート1の上に被さる状態となる。なお、把持部材84が第4繊維シート7を引き出す場合に、第2押え部材82は上方に移動し第4繊維シート7の押え状態を解消する。
【0115】
そして、図11(a)に示すように、把持部材84が完全な復帰状態となると、繊維束6の方向がθ°=90°となる第4繊維シート7が3軸の繊維補強シート1に被さる状態となる。
【0116】
(4−5)第4工程
第4工程について、図11(b)(c)に基づいて説明する。
【0117】
図11(b)に示すように、一対の第1押え部材SSS,SSSを下方に移動させ、第4繊維シート7を3軸の繊維補強シート1に押圧する。
【0118】
そして、図11(c)に示すように、第2押え部材82を再び下降させ、第4繊維シート7を支持台80に押圧し固定する。
【0119】
(4−6)第5工程
第5工程について、図12(a)(b)に基づいて説明する。
【0120】
図12(a)に示すように、一対の第1押え部材SSSの両側に設けれたカッター86,86を下方に移動させ、第4繊維シート7を3軸の繊維補強シート1の両耳部の位置で切断する。この場合に、第4繊維シート7は、一対の第1押え部材SSS,SSSによって押えられているため移動することがない。
【0121】
そして、図12(b)に示すように、切断が終了すると一対の第1押え部材SSS,SSS及びカッター86,86を上方に移動させる。
【0122】
(4−7)第6工程
第6工程について、図12(c)に基づいて説明する。
【0123】
第6工程では、図12(c)に示すように、把持部材84に掴まれている不要な第4繊維シート7を廃棄し、第2押え部材82によって押えられている第4繊維シート7については、次の工程まで保持しておく。
【0124】
そして、4軸になった繊維補強シート1を再び走行させる。
【0125】
上記のようにして、第1工程から第6工程によって、幅Wの第4繊維シート7が3軸の繊維補強シート1に積層されると第4繊維シート7の幅Wだけ3軸の繊維補強シート1を移動させ再び停止させる。そして、上記と同様の工程によって再び第4繊維シート7を積層する。このようにして、幅Wの第4繊維シート7を順番に3軸の繊維補強シート1に並べるようにして積層していく。
【0126】
(5)走行状態の調整
上記のように三軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を積層する場合に、3軸の繊維補強シート1を第2テンターチェーン56,56の上で停止させる必要がある。しかしながら、この第2テンターチェーン56,56以前の工程は連続して3軸の繊維補強シート1が製造されている。
【0127】
一方、第2テンターチェーン56,56より後の工程においてもシート回収ロール44によって連続して4軸の繊維補強シート1が回収されている。
【0128】
そのため、この停止時間の間の繊維補強シート1の長さを調整するために、第1調整ロール60と第2調整ロール62が存在する。以下、その動作について図11及び図12に基づいて説明する。
【0129】
(5−1)停止中
第2テンターチェーン56,56が停止し、3軸の繊維補強シート1の走行が停止している場合には、図13に示すように、第1テンターチェーン54,54から供給される3軸の繊維補強シートを吸収するために第1調整ロール60を下方に移動させ、その長さを吸収する。
【0130】
一方、第2テンターチェーン56,56から供給される4軸の繊維補強シート1も停止するため、第2調整ロール62によって弛んでいる部分の4軸の繊維補強シート1を第3テンターチェーン58,58に供給する。これによって、第2テンターチェーン56が停止した状態でも、繊維補強シート製造装置10全体としてはその走行を停止させる必要がない。
【0131】
(5−2)走行中
次に、第2テンターチェーン56,56において第4繊維シート7の積層が終了し走行を開始すると、図14に示すように、第1調整ロール60を再び上方に移動させ、弛んで保持している3軸の繊維補強シート1を第2テンターチェーン56に供給する。一方、第2テンターチェーン56,56から供給される4軸の繊維補強シート1については、次回の停止の場合に備えて弛みを持たせるため、第2調整ロール62を下方に移動させる。
【0132】
上記のようにして停止と走行の状態を繰り返す。
【0133】
(第4の実施形態の変更例)
上記実施形態では、第1の実施形態によって製造された3軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を積層したが、これに代えて、第2の実施形態から第3の実施形態によって製造された3軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を積層してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】第1の実施形態の繊維補強シートの平面図である。
【図2】第1の実施形態の製造装置の斜視図である。
【図3】同じく製造装置の斜視図であり、テンターチェーンを詳しく説明した図である。
【図4】テンターチェーンの一部拡大斜視図である。
【図5】同じく製造装置のブロック図である。
【図6】第2の実施形態の繊維補強シートの平面図である。
【図7】第2の実施形態の製造装置の斜視図である。
【図8】第4の実施形態の繊維補強シートの平面図である。
【図9】第4の実施形態の製造装置の斜視図である。
【図10】3軸の繊維補強シートに第4繊維シートを積層する場合の(a)〜(c)の説明図である。
【図11】3軸の繊維補強シートに第4繊維シートを積層する場合の(a)〜(c)の説明図である。
【図12】3軸の繊維補強シートに第4繊維シートを積層する場合の(a)〜(c)の説明図である。
【図13】第1調整ロールと第2調整ロールの動きを示す図であり、第2テンターチェーンが停止した状態の側面図である。
【図14】同じく第2テンターチェーンが走行している状態の側面図である。
【符号の説明】
【0135】
1 繊維補強シート
2 第1繊維シート
3 第2繊維シート
4 第3繊維シート
5 繊維シート
10 製造装置
12 テンターチェーン
14 チェーン
16 チェーンホイール
18 針
20 保持部
22 溝
24 カッター
26 第1繊維シート供給ロール
28 取り外し板
30 繊維シート供給ロール
32 巻き付け装置
34 リングギア
36 腕部材
38 ギア
40 走行ロール
42 走行ロール
44 シート回収ロール
46 加熱ロール
48 加熱ロール
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維束、ガラス繊維束、アラミド繊維束などの強化繊維束を用いた多軸の繊維補強シート、その製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、2軸方向を補強した繊維補強シートであって、その2軸方向が繊維補強シートの長手方向に対し対称方向であるものを提供した。すなわち、繊維束を一方向に引き揃え配列した繊維シートを一対の折り返しガイド部に沿ってθ°の傾きを持たせて重ねるように順番に折り返して巻き付け、繊維シートの方向が+θ°よりなる第1繊維シートと−θ°よりなる第2繊維シートの二層から構成された繊維補強シートを製造するものである(特許文献1参照)。
【0003】
また、最近は、繊維シートを積層する場合に、その繊維シートの厚さが薄いほど、繊維シートを積層した場合の層間剥離が起こらないことが分かってきた(非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−221771号公報
【非特許文献1】「多方向強化複合材料積層板の初期破損に関する層厚さの影響」 笹山秀樹他著 日本複合材料学会誌Vol.30 No.4 2003年7月31日受付
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近の繊維補強シートにおいては、上記2軸の繊維補強シートに加えて、3軸以上の多軸の繊維補強シートが要求されてきている。
【0005】
そこで本発明は、繊維シートを容易に多軸に積層することができるとともに層間剥離が起こり難い繊維補強シート、その製造方法及び製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多軸の繊維補強シートであって、繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートが前記繊維補強シートの長手方向に沿って配され、前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを、所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて重なるように順番に前記第1繊維シートを巻き付けるように折り返して螺旋状に巻き付け、前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シートと、前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと、前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートと、三層を有することを特徴とする繊維補強シートである。
【0007】
また、本発明は、多軸の繊維補強シートであって、繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを前記繊維補強シートの長手方向に沿って配され、前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを、所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて重なるように順番に折り返して螺旋状に巻き付け、前記第1繊維シートと前記螺旋状に巻き付けられた一枚の繊維シートが重ねられ、前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シートと、前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと、前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートと、三層を有することを特徴とする繊維補強シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維補強シートであると、繊維補強シートの長手方向に対して0°の第1繊維シートと、+θ°の第2繊維シートと、−θ°の第3繊維シートが積層された繊維補強シートを積層したものを実現することができ、その製造も容易である。
【0009】
また、繊維補強シートの長手方向に対して90°の第4繊維シートを積層することにより4軸の繊維補強シートを実現できる。
【0010】
また、各繊維シートの厚さを0.005mm〜0.08mmにすることにより、層間剥離も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態ついて説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。
【0013】
(1)繊維補強シート1の構造
第1の実施形態の繊維補強シート1について、図1に基づいて説明する。
【0014】
図1は、繊維補強シート1の平面図である。
【0015】
繊維補強シート1は、繊維束2を一方向に引き揃えた繊維シートを、三層に積層した3軸の繊維補強シートである。この三層の中の第1積層シート4は、この繊維補強シート1の長手方向に沿って配されている。そして、1枚の繊維シート5を繊維補強シート1の長手方向に対して所定角度θ°(以下、巻き付け角度θという)の傾きを持たせて重ねるように順番に折り返して第1繊維シート2に螺旋状に巻き付ける。
【0016】
これにより、3軸の繊維補強シート1は、繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シート3と、繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シート3と、繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シート4の三層から構成される。
【0017】
なお、繊維束としては炭素繊維束、ガラス繊維束、アラミド繊維束などの強化繊維束である。また、各繊維シート2,5を構成する繊維束が、幅広く薄い状態に連続開繊した開繊糸である。また、繊維束は熱融着糸、または、目止め剤を付着させた繊維束よりなる。さらに、各繊維シート2,5が、熱可塑性樹脂、または、熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグシートである。
【0018】
ここで、巻き付け角度θ°としては、0°〜90°であり、好適には15°〜75°である。なお、θ°=0°の場合には上記したように繊維補強シート1の長手方向になり、90°の場合にはその幅方向となる。
【0019】
また、この第1繊維シート2及び繊維シート5の厚みは、0.005mm〜0.08mmであり、好適には0.01mm〜0.06mmである。これにより第1繊維シート3と、第2繊維シート3と、第3繊維シート4との間で層間剥離が起こらない。
【0020】
この繊維補強シート1を用いると、疑似等方性があり、かつ、厚み方向において対称となる大形複合板材を容易に実現することができる。さらに、この繊維補強シート1は、第1繊維シート2、第2繊維シート3及び第3繊維シート4の三層構造であるためより強度の高い板材を実現することができる。
【0021】
(2)繊維補強シート製造装置10の構成
次に、上記で説明した繊維補強シート1を製造するための繊維補強シート製造装置10について図2〜図5に基づいて説明する。
【0022】
図2は繊維補強シート製造装置10の斜視図である。まず、本明細書においての座標系について定義しておく。図2において、繊維補強シート1の長手方向をz軸方向、繊維補強シート1の幅方向をx軸方向、その幅方向に対して直交する方向(法線方向)をy軸方向と設定する。
【0023】
(2−1)第1繊維シート供給ロール26
第1繊維シート2を供給するための第1繊維シート供給ロール26が、x軸方向に回転軸が配されるように取り付けられている。この第1繊維シート供給ロール26は他動であり、巻き付けられた第1繊維シート2が引っ張られることにより回転する。
【0024】
(2−2)テンターチェーン12
第1繊維シート2と3軸の繊維補強シート1を−z軸方向に走行させるために、第1繊維シート供給ロール26の下方であって、繊維補強シート1の両耳部の位置に相当する箇所に、左右一対のテンターチェーン12,12が互いに平行にz軸に沿って設けられている。
【0025】
テンターチェーン12はピンテンターであり、図3及び図4に基づいて説明する。なお、図2においては、テンターチェーン12は簡略化して表示している。
【0026】
まず、左側のテンターチェーン12について説明する。
【0027】
テンターチェーン12は、図3に示すように、無端状のチェーン14が、ほぼ長方形状に張り巡らされ、それぞれチェーン14の折曲部分にチェーンホイール16が設けられ、このチェーンホイール16が回転することによりチェーン14が図3において反時計回りの方向に移動する(図2では、時計回りの方向に回転する)。チェーンホイール16は、トルク制御を行うことができるトルク制御モータTM3によって回転する。
【0028】
チェーン14には、図4に示すように針18が植設された保持部20が複数個連結されている。この保持部20は、チェーン14の移動とともに順番に移動する。保持部20は、図4に示すように、ほぼ立方体よりなり、+y軸方向と−y軸方向に向かって針18が4本ずつ植設されている。この+y軸方向と−y軸方向に突設した針18に繊維補強シート1が取り付けられ、テンターチェーン12によって繊維補強シート1が走行する。
【0029】
そして、この保持部20の左側部には溝22が設けられている。この溝22は、後から説明するカッター24が挿入され、針18に植設された繊維補強シート1を切断する。
【0030】
右側のテンターチェーン12についても同様の構造である。
【0031】
一対のテンターチェーン12,12においてz軸方向に沿って移動するチェーン14の下端部近傍には、保持部20の針18に取り付けられた繊維補強シート1を外すための一対の取り外し板28,28が設けられている。取り外し板28の上方が三角形状であり、カッター24によって二つに切断された繊維補強シート1の端部がこの三角形状の取り外し板28にくると、第1補強シート1が分割されながら外側に広がるように移動する。この広がるように移動することにより針18から繊維補強シート1が外れる。
【0032】
(2−3)巻き付け装置32
一対のテンターチェーン12,12の外方には、繊維束2を一方向に引き揃え配列した繊維シート5を巻き付けた繊維シート供給ロール30が配されている。この繊維シート供給ロール30は、トルク制御モータTM1によって回転する。この繊維シート供給ロール30の回転軸は、繊維補強シート1の長手方向、すなわち、z軸方向に対してθ°の傾きを持って配されている。
【0033】
トルク制御モータTM1及び繊維シート供給ロール30とを一対のテンターチェーン12,12の外周で回転させるための巻き付け装置32が設けられている。
【0034】
この巻き付け装置32は、リング状のリングギア34から外方に腕部材36が突出し、この腕部材36の先端に角度θ°をもってトルク制御モータTM1が配され、このトルク制御モータTM1の回転軸に繊維シート供給ロール30の回転軸が接続されている。
【0035】
リングギア34は、ギア38を介して回転スピード制御モータSM2によってz軸と平行な軸を中心にして回転する。
【0036】
(2−4)走行ロール40,42
巻き付け装置32の下方には、完成した繊維補強シート1を走行させるための一対の走行ロール40,42が設けられている。この走行ロール42は、回転スピード制御モータSM1によって回転する。
【0037】
(2−5)シート回収ロール44
走行ロール40,42の下方には、繊維補強シート1を回収するためのシート回収ロール44が配され、このシート回収ロール44はトルク制御モータTM2によって回転する。
【0038】
(2−6)加熱ロール46,48
走行ロール40,42とシート回収ロール44との間には、三層に積層された繊維補強シート1を加熱及び加圧するための一対の加熱ロール46,48が設けられている。
【0039】
なお、図2においては図示を省略したが、加熱ロール46,48の間に繊維補強シート1を挿入する前に、繊維補強シート1の両面に離型紙を供給する離型紙供給ロールが設けられ、さらに加熱ロール46,48の下方には、繊維補強シート1の両面に張りつけられた離型紙を回収するための一対の離型紙回収ロールも設けられている。
【0040】
(2−7)繊維補強シート製造装置10の電気的構成
図5は、繊維補強シート製造装置10のブロック図である。
【0041】
コンピュータよりなる制御部50によって回転スピード制御モータSM1,SM2及びトルク制御モータTM1,TM2,TM3が接続され、また、加熱ロール46,48を加熱制御する加熱部及び回転させるためのモータ49も接続され、それぞれ回転スピード及びトルクと温度が制御されている。さらに、制御部50を操作するための操作部52が設けられている。
【0042】
(3)繊維補強シート製造装置10の動作状態
上記で説明した繊維補強シート製造装置10を用いて、図1に示す3軸の繊維補強シート1を製造する工程について説明する。
【0043】
(3−1)第1工程
第1繊維シート供給ロール26から繊維束をz軸方向に引き揃え配列した第1繊維シート2を供給し、一対のテンターチェーン12,12に取り付ける。この場合に、第1繊維シート2の両耳部に一対のテンターチェーン12,12の保持部20の針18をそれぞれ取り付け、第1繊維シート2が拡布状態で−z軸方向に走行させる。
【0044】
(3−2)第2工程
リングギア34を回転スピード制御モータSM2によって回転させ、繊維シート供給ロール30から繊維シート5をθ°の傾きを持って引き出す。
【0045】
(3−3)第3工程
リングギア34を一定速度で回転させて、引き出した繊維シート5を、例えば右側のテンターチェーン12の位置で折り返す。この場合に、一対のテンターチェーン12,12の間には拡布状態で第1繊維シート2が走行しているため、この第1繊維シート2を繊維シート5で包むように折り返す。この折り返しは、巻き付け装置32のリングギア34を回転させると折り返すことができる。
【0046】
ここで重要なことは、テンターチェーン12によって繊維シート5を折り返すために、太繊度の繊維束でも折り返すことができる。すなわち、太繊度の繊維束は開織によりシート化しているが、テンターチェーン12に沿って折り返すことができる。
【0047】
(3−4)第4工程
リングギア34を一定速度で回転させ、かつ、第1繊維シート2を一対のテンターチェーン12,12によって一定速度で走行させると、右側のテンターチェーン12で折り返した繊維シート5を繊維シート供給ロール30から引き出しつつ+θ°の傾きを持って右側のテンターチェーン12から左側のテンターチェーン12に向かって引き出す。これによって第2繊維シート3が形成できる。
【0048】
(3−5)第5工程
さらに、リングギア34を一定速度で回転させて、第1繊維シート2を一定速度で走行させると、第2繊維シート3が左側のテンターチェーン12で折り返される。
【0049】
(3−6)第6工程
リングギア34を一定速度で回転させて、第1繊維シート2を一定速度で走行させると、折り返した第2繊維シート3を左側のテンターチェーン12から右側のテンターチェーン12に向かって繊維シート供給ロール30によって引き出されながら第3繊維シート4が形成される。
【0050】
(3−7)第7工程
リングギア34を一定速度で回転させて、第1繊維シート2を一定速度で走行させると、第3繊維シート4が右側のテンターチェーン12で折り返される。そして、第3工程と同様に第2繊維シート3が形成される。
【0051】
以下同様にして、第3工程から第7工程を1サイクルとして、このサイクルを繰り返して一対のテンターチェーン12に繊維シート5を巻き付け角度θ°の傾きを持って螺旋状に巻き付けることによって、図1に示すような3軸の繊維補強シート1が製造される。
【0052】
(3−8)第8工程
製造した3軸の繊維補強シート1は、一対の走行ロール40,42によって引っ張られている状態となっているが、この一対の走行ロール40,42の間に設けられたカッター24によって、第2繊維シート3と第3繊維シート4とに分断される。すなわち、一対のカッター24,24によって、繊維補強シート1の両耳部でz軸方向に沿って分断される(図4参照)。カッター24によって分断された繊維補強シート1は、三角形状の取り外し板28によって+y軸方向と−y軸方向に押し広げられ、この押し広げられることによってテンターチェーン12の保持部20の針18から取り外されることとなる。なお、上記したようにカッター24は保持部20の溝22に挿入されるため、保持部20と接触することがない。
【0053】
(3−9)第9工程
第1繊維シート2、第2繊維シート3、第3繊維シート4の三層によって構成された3軸の繊維補強シート1が、一対の加熱ロール46,48の間を移動することにより加熱圧着される。
【0054】
なお、上記したように加熱及び加圧する場合に、繊維補強シート1の両面に離型紙を取り付け、この離型紙の上から加熱及び加圧をする。そして、加熱及び加圧を終了すると、両面に取り付けられた離型紙を回収する。
【0055】
(3−10)第10工程
離型紙が回収された3軸の繊維補強シート1をシート回収ロール44によって回収する。
【0056】
この製造工程において、巻き付け装置32が回転スピード制御モータSM2によって回転する回転速度と、一対の走行ロール40,42を回転させる回転制御モータSM1の回転速度を合致させる。また、テンターチェーンを走行させるトルク制御モータTM3のトルクが、繊維補強シート1を引っ張るテンションに合わす必要があり、さらに、シート回収ロール44を走行させるトルク制御モータTM2のトルクは、その積層される繊維補強シート1の回転スピードとテンションに合わせる。この調整は、制御部50によって行う。そして、弛みがないように制御する。
【0057】
具体的には、回転制御モータSM2の回転により繊維シート5が1回転する間に、回転スピード制御モータSM1の回転は、繊維補強シート1をL(1回転分の巻き取り長さ)だけ送るように制御する。
【0058】
ここで、巻き付け装置32の1回転分の巻き取り長さLと、図1に示す繊維シート5の幅Bとの関係は、
L=B/sinθ
であり、繊維補強シート1の幅Wとの関係は、
W=B/(2×cosθ)
である。
【0059】
(4)本実施形態の効果
以上により、繊維補強シート製造装置10を用いれば、3軸の繊維補強シート1を簡単に、かつ、連続して製造することができる。
【0060】
(第1の実施形態の変更例)
第1の実施形態では、繊維シート3を供給するものとして繊維シート供給ロール30を使用したが、これに代えて、繊維束6を巻回したボビンを複数個配列させて、繊維シート5として供給する構造であってもよい。
【0061】
なお、この構造は第1繊維シート2を供給する場合についても適応することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の繊維補強シート1について、図6に基づいて説明する。
【0063】
第1の実施形態では、1枚の繊維シート5を折り返して第2繊維シート3と第3繊維シート4を形成して繊維補強シート1を製造したが、本実施形態では、図6に示すように、2枚の繊維シート5−1、5−2を交互に順次折り返しながら第1繊維シート2を巻き付け、第2繊維シート3と第3繊維シート4を形成し、繊維補強シート1を製造する。
【0064】
この場合に、1回転分の巻き取り長さLは、
L=(B1+B2)/sinθ
であり、繊維補強シート1の幅Wは、
(B1+B2)/(2×cosθ)となる。
【0065】
なお、B1は1枚目の繊維シート5−1の幅であり、B2は2枚目の繊維シート5−2の幅を表している。
【0066】
(第2の実施形態の変更例)
第2の実施形態では2枚の繊維シート5−1,5−2を交互に順次折り返して巻く構造を示したが、これに限らず3枚以上の繊維シート5を順次折り返して繊維補強シート1を製造してもよい。
【0067】
例えば、4枚の繊維シート5を用いて製造する場合には、一対のテンターチェーン12,12を中心として、4本の繊維シート供給ロール30が存在し、それぞれ45°毎に配されている。そして、これら4本の繊維シート供給ロール30を順番に同じ回転速度で一対のテンターチェーン12,12の周囲を回転させることにより繊維補強シート1を製造することができる。
【0068】
ここで、n枚の繊維シート5を用いた場合の繊維補強シート1の幅Wと、1サイクルの工程で製造される繊維補強シート1の長さLは次のように表すことができる。
【数1】
【0069】
なお、Bkは繊維シート1のk番目(1=<k=<n)の幅を意味しており、θは巻き付け角度である。
【0070】
(第3の実施形態)
図7に基づいて、第3の実施形態について説明する。
【0071】
第1の実施形態では、第1繊維シート2を繊維シート5で巻き付け、三層の繊維シート層を形成したが、本実施形態では、一対のテンターチェーン12,12の間を第1の実施形態と同様に繊維シート5を角度θをもって巻き付け、まず第2繊維シート3と第3繊維シート4を形成する。
【0072】
第2繊維シート3と第3繊維シート4を螺旋状に巻き付け形成された2軸の繊維補強シートに、第1繊維シート2を外方から積層し、3軸の繊維補強シート1を製造する。
【0073】
そのため、本実施形態の繊維補強シート製造装置10においては、テンターチェーン12,12の間を第2繊維シート3と第3繊維シート4のみ走行させ、一対の走行ロール40,42の手前で、第1繊維シート2を合わせて一対の走行ロール40,42で3軸の繊維補強シート1を製造する。
【0074】
後の工程については第1の実施形態と同様である。
【0075】
本実施形態であっても、疑似等方性があり、かつ、厚み方向において対称積層となる繊維補強シート1を製造することができる。
【0076】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態について図8〜図12に基づいて説明する。
【0077】
第1の実施形態から第3の実施形態においては3軸の繊維補強シート1について説明したが、第4の実施形態では4軸の繊維補強シート1について説明する。
【0078】
(1)繊維補強シート1の構造
図8は、本実施形態の4軸の繊維補強シート1の平面図である。
【0079】
繊維補強シート1は、繊維束6をz軸方向に引き揃えた第1繊維シート2を配する。そして、繊維束6を一方向に引き揃えた繊維シート5を、この繊維補強シート1の長手方向に対して巻き付け角度θの傾きを持たせて重ねるように順次折り返して第1繊維シート2を螺旋状に巻き付ける。これにより、第1繊維シート2と繊維シート5の方向が+θ°よりなる第2繊維シート3と、繊維シート5の方向が−θ°よりなる第3繊維シート4よりなる3軸の繊維補強シートが形成される。次に、3軸の繊維補強シートに、長手方向に対し、θ=90°の方向に繊維束6を引き揃えた第4繊維シート7を積層して4軸の繊維補強シートが形成される。
【0080】
この4軸の繊維補強シート1であっても、疑似等方性があり、かつ、厚み方向において対称となる大形複合板材を容易に実現することができる。なお、この四層の繊維シートについても第1の実施形態と同様にその厚みが0.05mm〜0.08mm、好ましくは0.01mm〜0.06mmが好適である。
【0081】
(2)繊維補強シート製造装置10の構成
次に、4軸の繊維補強シート1を製造する繊維補強シート製造装置10について説明する。
【0082】
この繊維補強シート製造装置10において、走行ロール40,42までの構造については第1の実施形態の繊維補強シート製造装置10と同様であるので説明は省略する。
【0083】
走行ロール40,42の側方には、3軸の繊維補強シート1を+y軸方向に移動するための第1テンターチェーン54が設けられている。また、この第1テンターチェーン54,54とは、一定の間隔を開けて第2テンターチェーン56,56が設けられている。
【0084】
さらに、第2テンターチェーン56,56とは一定の間隔を開けて第3テンターチェーン58,58が設けられている。
【0085】
第1テンターチェーン54と第2テンターチェーン56との間には、上下方向に移動自在な第1調整ロール60が設けられている。
【0086】
第2テンターチェーン58の途中には、第4繊維シート7を3軸の繊維補強シート1に積層する第4繊維シート積層装置57を設けられている。この第4繊維シート積層装置57については後から詳しく説明する。
【0087】
第2テンターチェーン56と第3テンターチェーン58との間にも、上下方向に移動自在な第2調整ロール62が設けられている。
【0088】
第3テンターチェーン58の途中には、四層に積層された4軸の繊維補強シート1を加熱及び加圧するための加熱ロール64,66が設けられている。第3テンターチェーン58の終了位置近傍には、一対のカッター68が設けられており、4軸の繊維補強シート1の両耳部を切断することができる。
【0089】
また、第3テンターチェーン58の終了側の近傍には、完成した4軸の繊維補強シート1を回収するためのシート回収ロール44が設けられている。
【0090】
さらに、カッター70,74によって切断された両耳部を回収するための耳回収ロール72も左右一対設けられ、モータ74によって回転する。
【0091】
(3)繊維補強シート製造装置10の動作状態
次に、繊維補強シート製造装置10の動作状態について説明する。
【0092】
三層の繊維補強シート1を製造するまでは、第1の実施形態と同様であるので省略する。
【0093】
(3−1)
第1工程においては、3軸の繊維補強シート1を両耳部を第1テンターチェーン54に取り付ける。この第1テンターチェーン54は、ピンテンターであり、保持部に針が植設され、この針に三層の繊維補強シート1を拡布状態で取り付ける。すると、3軸の繊維補強シート1は第1テンターチェーン54,54に沿って+y軸方向に移動する。
【0094】
(3−2)第2工程
第2工程においては、第1テンターチェーン54,54の搬送が終了すると、この一対の第1テンターチェーン54,54から取り外され、第1調整ロール60にかけ渡され、次に第2テンターチェーン56,56に取り付けられる。第1調整ロール60は、上下動移動可能であり、その位置によって、第1テンターチェーン54と第2テンターチェーン56との間に滞留する3軸の繊維補強シート1の量を調整することができる。詳しくは後から説明する。
【0095】
第2テンターチェーン56も、ピンテンターであり、3軸の繊維補強シート1を拡布状態で搬送する。
【0096】
(3−3)第3工程
第3工程においては、第2テンターチェーン56,56によって搬送される3軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を第4繊維シート積層装置57によって積層する。この積層についても後から詳しく説明する。
【0097】
(3−4)第4工程
四層に積層された繊維補強シート1は第2テンターチェーン56,56から取り外され、第2調整ロール62にかけ渡され第3テンターチェーン58,58に取り付けられる。この第3テンターチェーン58もピンテンターであり、4軸の繊維補強シート1を拡布状態で搬送する。
【0098】
(3−5)第5工程
第3テンターチェーン58,58によって搬送されている4軸の繊維補強シート1を一対の加熱ロール64,66によって加熱及び加圧することにより4軸の繊維補強シート1を一体にする。
【0099】
(3−6)第6工程
四層に積層された4軸の繊維補強シート1において、各テンターチェーンによって孔が空いている両耳部が不要なため、一対のカッター70,70によって切断し、シート回収ロール44によって両耳部が切断された4軸の繊維補強シート1を回収する。なお、不要な両耳部は耳回収ロール72,72によって回収する。
【0100】
以上によって、4軸の繊維補強シート1を製造することができる。
【0101】
(4)第4繊維シート積層装置57の構成と動作状態
次に、3軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を積層する第4繊維シート積層装置57の構成と動作状態について図10に基づいて説明する。
【0102】
図10は、第4繊維シート積層装置57の構成と動作状態によって第4繊維シート7を積層する状態を表す図面であり、図10(a)〜(i)の各図面において、上段の図面は第2テンターチェーン56を走行する繊維補強シート1の平面図であって、下から上に走行している。また、下段の図は、第2テンターチェーン56の位置における後から前を見た図である。
【0103】
(4−1)第4繊維シート積層装置57の構成
まず、第4繊維シート積層装置57の構成について説明する。
【0104】
第2テンターチェーン56の両側に沿って、上下動移動自在に一対の棒状の第1押え部材76,76が第2テンターチェーン56,56の上方に位置している。
【0105】
一対の第1押え部材76,76の両側には、上下動移動自在にカッター86,86が設けられている。
【0106】
第2テンターチェーン56とは直交する方向に、第4繊維シート7を供給する第4繊維シート供給ロール78が設けられている。この第4繊維シート供給ロール78と右側の第2テンターチェーン56との間には、支持台80が設けられ、この支持台80の上方には上下動移動自在に第2押え部材82が設けられている。
【0107】
一対の第2テンターチェーン56,56を挟んで第4繊維シート供給ロール78とは反対側に、第4繊維シート7を迎えにいくための把持部材84が設けられている。この把持部材84の先端部はクリップとなっており、第4繊維シート7の端部を把持することができるとともに、x軸方向に沿って移動自在となっている。
【0108】
第4繊維シート積層装置57を用いて第4繊維シート7を積層する工程を説明する。
【0109】
(4−2)第1工程
第1工程について図10(a)に基づいて説明する。
【0110】
3軸の繊維補強シート1を第2テンターチェーン56,56によって拡布状態で走行させる。この場合に第1押え部材SSS,SSSは走行する3軸の繊維補強シート1を押さえていない状態である。そして、把持部材84は待機状態となっている。また、第4繊維シート供給ロール78から引き出された第4繊維シート7は、支持台80の上に第2押え部材82によって押さえられた状態となっている。しかし、この幅Wの第4繊維シート7の端部は支持台80から突出した状態にしておく(図10(a)参照)。
【0111】
(4−3)第2工程
第2工程について図10(b)に基づいて説明する。
【0112】
3軸の繊維補強シート1の走行を停止される。把持部材84が待機状態から突出した状態となり、一対の第2テンターチェーン56,56の上方を移動し、支持台80から突出した幅Wの第4繊維シート7の端部を把持する。
【0113】
(4−4)第3工程
第3工程について図10(c)図11(a)に基づいて説明する。
【0114】
図10(c)に示すように、幅Wの第4繊維シート7の端部を把持した把持部材84は突出した状態から待機状態の位置に復帰するように移動し始める。このように移動することにより、第4繊維シート7が、3軸の繊維補強シート1の上に被さる状態となる。なお、把持部材84が第4繊維シート7を引き出す場合に、第2押え部材82は上方に移動し第4繊維シート7の押え状態を解消する。
【0115】
そして、図11(a)に示すように、把持部材84が完全な復帰状態となると、繊維束6の方向がθ°=90°となる第4繊維シート7が3軸の繊維補強シート1に被さる状態となる。
【0116】
(4−5)第4工程
第4工程について、図11(b)(c)に基づいて説明する。
【0117】
図11(b)に示すように、一対の第1押え部材SSS,SSSを下方に移動させ、第4繊維シート7を3軸の繊維補強シート1に押圧する。
【0118】
そして、図11(c)に示すように、第2押え部材82を再び下降させ、第4繊維シート7を支持台80に押圧し固定する。
【0119】
(4−6)第5工程
第5工程について、図12(a)(b)に基づいて説明する。
【0120】
図12(a)に示すように、一対の第1押え部材SSSの両側に設けれたカッター86,86を下方に移動させ、第4繊維シート7を3軸の繊維補強シート1の両耳部の位置で切断する。この場合に、第4繊維シート7は、一対の第1押え部材SSS,SSSによって押えられているため移動することがない。
【0121】
そして、図12(b)に示すように、切断が終了すると一対の第1押え部材SSS,SSS及びカッター86,86を上方に移動させる。
【0122】
(4−7)第6工程
第6工程について、図12(c)に基づいて説明する。
【0123】
第6工程では、図12(c)に示すように、把持部材84に掴まれている不要な第4繊維シート7を廃棄し、第2押え部材82によって押えられている第4繊維シート7については、次の工程まで保持しておく。
【0124】
そして、4軸になった繊維補強シート1を再び走行させる。
【0125】
上記のようにして、第1工程から第6工程によって、幅Wの第4繊維シート7が3軸の繊維補強シート1に積層されると第4繊維シート7の幅Wだけ3軸の繊維補強シート1を移動させ再び停止させる。そして、上記と同様の工程によって再び第4繊維シート7を積層する。このようにして、幅Wの第4繊維シート7を順番に3軸の繊維補強シート1に並べるようにして積層していく。
【0126】
(5)走行状態の調整
上記のように三軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を積層する場合に、3軸の繊維補強シート1を第2テンターチェーン56,56の上で停止させる必要がある。しかしながら、この第2テンターチェーン56,56以前の工程は連続して3軸の繊維補強シート1が製造されている。
【0127】
一方、第2テンターチェーン56,56より後の工程においてもシート回収ロール44によって連続して4軸の繊維補強シート1が回収されている。
【0128】
そのため、この停止時間の間の繊維補強シート1の長さを調整するために、第1調整ロール60と第2調整ロール62が存在する。以下、その動作について図11及び図12に基づいて説明する。
【0129】
(5−1)停止中
第2テンターチェーン56,56が停止し、3軸の繊維補強シート1の走行が停止している場合には、図13に示すように、第1テンターチェーン54,54から供給される3軸の繊維補強シートを吸収するために第1調整ロール60を下方に移動させ、その長さを吸収する。
【0130】
一方、第2テンターチェーン56,56から供給される4軸の繊維補強シート1も停止するため、第2調整ロール62によって弛んでいる部分の4軸の繊維補強シート1を第3テンターチェーン58,58に供給する。これによって、第2テンターチェーン56が停止した状態でも、繊維補強シート製造装置10全体としてはその走行を停止させる必要がない。
【0131】
(5−2)走行中
次に、第2テンターチェーン56,56において第4繊維シート7の積層が終了し走行を開始すると、図14に示すように、第1調整ロール60を再び上方に移動させ、弛んで保持している3軸の繊維補強シート1を第2テンターチェーン56に供給する。一方、第2テンターチェーン56,56から供給される4軸の繊維補強シート1については、次回の停止の場合に備えて弛みを持たせるため、第2調整ロール62を下方に移動させる。
【0132】
上記のようにして停止と走行の状態を繰り返す。
【0133】
(第4の実施形態の変更例)
上記実施形態では、第1の実施形態によって製造された3軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を積層したが、これに代えて、第2の実施形態から第3の実施形態によって製造された3軸の繊維補強シート1に第4繊維シート7を積層してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】第1の実施形態の繊維補強シートの平面図である。
【図2】第1の実施形態の製造装置の斜視図である。
【図3】同じく製造装置の斜視図であり、テンターチェーンを詳しく説明した図である。
【図4】テンターチェーンの一部拡大斜視図である。
【図5】同じく製造装置のブロック図である。
【図6】第2の実施形態の繊維補強シートの平面図である。
【図7】第2の実施形態の製造装置の斜視図である。
【図8】第4の実施形態の繊維補強シートの平面図である。
【図9】第4の実施形態の製造装置の斜視図である。
【図10】3軸の繊維補強シートに第4繊維シートを積層する場合の(a)〜(c)の説明図である。
【図11】3軸の繊維補強シートに第4繊維シートを積層する場合の(a)〜(c)の説明図である。
【図12】3軸の繊維補強シートに第4繊維シートを積層する場合の(a)〜(c)の説明図である。
【図13】第1調整ロールと第2調整ロールの動きを示す図であり、第2テンターチェーンが停止した状態の側面図である。
【図14】同じく第2テンターチェーンが走行している状態の側面図である。
【符号の説明】
【0135】
1 繊維補強シート
2 第1繊維シート
3 第2繊維シート
4 第3繊維シート
5 繊維シート
10 製造装置
12 テンターチェーン
14 チェーン
16 チェーンホイール
18 針
20 保持部
22 溝
24 カッター
26 第1繊維シート供給ロール
28 取り外し板
30 繊維シート供給ロール
32 巻き付け装置
34 リングギア
36 腕部材
38 ギア
40 走行ロール
42 走行ロール
44 シート回収ロール
46 加熱ロール
48 加熱ロール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸の繊維補強シートであって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートが前記繊維補強シートの長手方向に沿って配され、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを、所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて重なるように順番に前記第1繊維シートを巻き付けるように折り返して螺旋状に巻き付け、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シートと、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートと、
の三層を有する
ことを特徴とする繊維補強シート。
【請求項2】
多軸の繊維補強シートであって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを前記繊維補強シートの長手方向に沿って配され、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを、所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて重なるように順番に折り返して螺旋状に巻き付け、
前記第1繊維シートと前記螺旋状に巻き付けられた一枚の繊維シートが重ねられ、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シートと、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートと、
の三層を有する
ことを特徴とする繊維補強シート。
【請求項3】
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートと前記第3繊維シートが積層された繊維補強シートに加えて、前記長手方向に対して繊維シートの方向が90°よりなり、かつ、長さが前記繊維補強シートの幅寸法と略同じである第4繊維シートが、前記繊維補強シートの長手方向に沿って複数並べた状態で積層された
ことを特徴とする請求項1または2記載の繊維補強シート。
【請求項4】
前記各繊維シートの厚さが、0.005mm〜0.08mmである
ことを特徴とする請求項1から3の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項5】
前記各繊維シートを構成する繊維束が、幅広く薄い状態に連続開繊した繊維束である開繊糸である
ことを特徴とする請求項1から4の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項6】
前記各繊維シートが、熱融着糸、または、目止め剤を付着させた繊維束よりなる
ことを特徴とする請求項1から5の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項7】
前記各繊維シートが、熱可塑性樹脂、または、熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグシートである
ことを特徴とする請求項1から5の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項8】
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートと前記第3繊維シートが、加圧処理または加熱しながら加圧処理を行うことにより接着されている
ことを特徴とする請求項5から7の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項9】
15°=<θ°=<75°である
ことを特徴とする請求項1から9の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項10】
前記繊維シートが、複数枚並べられた状態で折り返されている
ことを特徴とする請求項1から9の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項11】
多軸の繊維補強シートの製造方法であって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に沿って走行させ、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも1枚の繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に対して+θ°(但し、0°<θ<90°である)の傾きをもって引き出し第2繊維シートを形成する第1工程と、
前記形成した第2繊維シートを前記長手方向に対して−θ°の傾きを持たせて前記第1繊維シートに対して折り返す第2工程と、
前記折り返した第2繊維シートを引き出し第3繊維シートを形成する第3工程と、
前記形成した第3繊維シートを前記長手方向に対して+θ°の傾きを持たせて前記第1繊維シートに対して折り返す第4工程と、
前記折り返した第3繊維シートを引き出し第2繊維シートを形成する第5工程と、
前記第2工程から第5工程を1サイクルとして繰り返して前記繊維シートを前記第1シートに対して螺旋状に巻き付け、前記繊維補強シートを長手方向に延びるように製造する
ことを特徴とする繊維補強シートの製造方法。
【請求項12】
多軸の繊維補強シートの製造方法であって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に沿って走行させ、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも1枚の繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に対して+θ°(但し、0°<θ<90°である)の傾きをもって引き出し第2繊維シートを形成する第1工程と、
前記形成した第2繊維シートを前記長手方向に対して−θ°の傾きを持たせて折り返す第2工程と、
前記折り返した第2繊維シートを引き出し第3繊維シートを形成する第3工程と、
前記形成した第3繊維シートを前記長手方向に対して+θ°の傾きを持たせて折り返す第4工程と、
前記折り返した第3繊維シートを引き出し第2繊維シートを形成する第5工程と、
前記第2工程から第5工程を1サイクルとして繰り返して前記繊維シートを螺旋状に巻き付け、この巻き付けた繊維シートに前記第1繊維シートを積層して、前記繊維補強シートを長手方向に延びるように製造する
ことを特徴とする繊維補強シートの製造方法。
【請求項13】
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートと前記第3繊維シートが積層された繊維補強シートに加えて、前記長手方向に対して繊維シートの方向が90°よりなり、かつ、長さが前記繊維補強シートの幅寸法と略同じである第4繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に沿って複数並べた状態で積層する
ことを特徴とする請求項10または11記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項14】
前記各繊維シートの厚さが、0.005mm〜0.08mmである
ことを特徴とする請求項11から13の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項15】
前記各繊維シートを構成する繊維束が、幅広く薄い状態に連続開繊した繊維束である開繊糸である
ことを特徴とする請求項11から13の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項16】
前記各繊維シートが、熱融着糸、または、目止め剤を付着させた繊維束よりなる
ことを特徴とする請求項11から15の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項17】
前記各繊維シートが、熱可塑性樹脂、または、熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグシートである
ことを特徴とする請求項11から15の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項18】
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートと前記第3繊維シートを、加圧処理、または、加熱しながら加圧処理を行うことにより接着する
ことを特徴とする請求項11から17の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項19】
多軸の繊維補強シートの製造装置であって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを供給する第1繊維シート供給手段と、
前記第1繊維シート供給手段から供給された第1繊維シートを前記繊維補強シートの長手方向に沿って搬送するための一対のテンターチェーンと、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを供給する第2繊維シート供給手段と、
前記第2繊維シート供給手段から供給された前記繊維シートを前記第1繊維シートに対して所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて当てつつ相対回転させて、前記一対のテンターチェーンの位置で順番にそれぞれ折り返して螺旋状に巻き付け、前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる前記第1繊維シートと前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートの三層から構成される前記繊維補強シートを形成する繊維シート巻き付け手段と、
前記形成された前記繊維補強シートを回収する繊維補強シート回収手段と、
を有する
ことを特徴とする繊維補強シートの製造装置。
【請求項20】
多軸の繊維補強シートの製造装置であって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを供給する第1繊維シート供給手段と、
前記繊維補強シートの長手方向に沿って走行する一対のテンターチェーンと、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを供給する第2繊維シート供給手段と、
前記第2繊維シート供給手段から供給された前記繊維シートを前記一対のテンターチェーンに対して所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて当てつつ相対回転させて、前記一対のテンターチェーンの位置で順番にそれぞれ折り返して螺旋状に巻き付け、前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートからなる二層の繊維シートを形成する繊維シート巻き付け手段と、
前記二層の繊維シートに前記第1繊維シート供給手段から供給された第1繊維シートを積層して繊維補強シートを形成する第1繊維シート積層手段と、
前記形成された前記繊維補強シートを回収する繊維補強シート回収手段と、
を有する
ことを特徴とする繊維補強シートの製造装置。
【請求項21】
前記長手方向に対して繊維シートの方向が90°よりなる第4繊維シートを供給する第4繊維シート供給手段と、
、前記三層に積層した繊維補強シートに前記第4繊維シートを積層する第4繊維シート積層手段と、
前記積層した状態で前記第4繊維シートを前記繊維補強シートの幅寸法に合わせて切断する切断手段と、
を有する
ことを特徴とする請求項17または18記載の繊維補強シートの製造装置。
【請求項22】
前記各繊維シートの厚さが、0.005mm〜0.08mmである
ことを特徴とする請求項20から22の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項23】
前記第1繊維シート供給手段と前記第2繊維シート供給手段が、
前記繊維シートを巻回した繊維シート巻回手段である
ことを特徴とする請求項19または20記載の繊維補強シートの製造装置。
【請求項24】
前記第1繊維シート供給手段と前記第2繊維シート供給手段が、
前記繊維束を巻回した複数の繊維束巻回手段である
ことを特徴とする請求項19または20記載の繊維補強シートの製造装置。
【請求項25】
前記繊維補強シートを、加圧処理、または、加熱しながらの加圧処理を行い、前記各繊維シート同士を接着させる加圧手段を有する
ことを特徴とする請求項19または20記載の繊維補強シートの製造装置。
【請求項26】
前記加圧手段は、
前記繊維補強シートの両面に離型フィルムを配し、これら離型フィルムを介して加圧処理、または、加熱しながら加圧処理を行う
ことを特徴とする請求項25記載の繊維補強シートの製造装置。
【請求項1】
多軸の繊維補強シートであって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートが前記繊維補強シートの長手方向に沿って配され、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを、所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて重なるように順番に前記第1繊維シートを巻き付けるように折り返して螺旋状に巻き付け、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シートと、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートと、
の三層を有する
ことを特徴とする繊維補強シート。
【請求項2】
多軸の繊維補強シートであって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを前記繊維補強シートの長手方向に沿って配され、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを、所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて重なるように順番に折り返して螺旋状に巻き付け、
前記第1繊維シートと前記螺旋状に巻き付けられた一枚の繊維シートが重ねられ、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる第1繊維シートと、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと、
前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートと、
の三層を有する
ことを特徴とする繊維補強シート。
【請求項3】
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートと前記第3繊維シートが積層された繊維補強シートに加えて、前記長手方向に対して繊維シートの方向が90°よりなり、かつ、長さが前記繊維補強シートの幅寸法と略同じである第4繊維シートが、前記繊維補強シートの長手方向に沿って複数並べた状態で積層された
ことを特徴とする請求項1または2記載の繊維補強シート。
【請求項4】
前記各繊維シートの厚さが、0.005mm〜0.08mmである
ことを特徴とする請求項1から3の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項5】
前記各繊維シートを構成する繊維束が、幅広く薄い状態に連続開繊した繊維束である開繊糸である
ことを特徴とする請求項1から4の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項6】
前記各繊維シートが、熱融着糸、または、目止め剤を付着させた繊維束よりなる
ことを特徴とする請求項1から5の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項7】
前記各繊維シートが、熱可塑性樹脂、または、熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグシートである
ことを特徴とする請求項1から5の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項8】
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートと前記第3繊維シートが、加圧処理または加熱しながら加圧処理を行うことにより接着されている
ことを特徴とする請求項5から7の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項9】
15°=<θ°=<75°である
ことを特徴とする請求項1から9の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項10】
前記繊維シートが、複数枚並べられた状態で折り返されている
ことを特徴とする請求項1から9の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シート。
【請求項11】
多軸の繊維補強シートの製造方法であって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に沿って走行させ、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも1枚の繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に対して+θ°(但し、0°<θ<90°である)の傾きをもって引き出し第2繊維シートを形成する第1工程と、
前記形成した第2繊維シートを前記長手方向に対して−θ°の傾きを持たせて前記第1繊維シートに対して折り返す第2工程と、
前記折り返した第2繊維シートを引き出し第3繊維シートを形成する第3工程と、
前記形成した第3繊維シートを前記長手方向に対して+θ°の傾きを持たせて前記第1繊維シートに対して折り返す第4工程と、
前記折り返した第3繊維シートを引き出し第2繊維シートを形成する第5工程と、
前記第2工程から第5工程を1サイクルとして繰り返して前記繊維シートを前記第1シートに対して螺旋状に巻き付け、前記繊維補強シートを長手方向に延びるように製造する
ことを特徴とする繊維補強シートの製造方法。
【請求項12】
多軸の繊維補強シートの製造方法であって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に沿って走行させ、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも1枚の繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に対して+θ°(但し、0°<θ<90°である)の傾きをもって引き出し第2繊維シートを形成する第1工程と、
前記形成した第2繊維シートを前記長手方向に対して−θ°の傾きを持たせて折り返す第2工程と、
前記折り返した第2繊維シートを引き出し第3繊維シートを形成する第3工程と、
前記形成した第3繊維シートを前記長手方向に対して+θ°の傾きを持たせて折り返す第4工程と、
前記折り返した第3繊維シートを引き出し第2繊維シートを形成する第5工程と、
前記第2工程から第5工程を1サイクルとして繰り返して前記繊維シートを螺旋状に巻き付け、この巻き付けた繊維シートに前記第1繊維シートを積層して、前記繊維補強シートを長手方向に延びるように製造する
ことを特徴とする繊維補強シートの製造方法。
【請求項13】
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートと前記第3繊維シートが積層された繊維補強シートに加えて、前記長手方向に対して繊維シートの方向が90°よりなり、かつ、長さが前記繊維補強シートの幅寸法と略同じである第4繊維シートを、前記繊維補強シートの長手方向に沿って複数並べた状態で積層する
ことを特徴とする請求項10または11記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項14】
前記各繊維シートの厚さが、0.005mm〜0.08mmである
ことを特徴とする請求項11から13の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項15】
前記各繊維シートを構成する繊維束が、幅広く薄い状態に連続開繊した繊維束である開繊糸である
ことを特徴とする請求項11から13の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項16】
前記各繊維シートが、熱融着糸、または、目止め剤を付着させた繊維束よりなる
ことを特徴とする請求項11から15の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項17】
前記各繊維シートが、熱可塑性樹脂、または、熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグシートである
ことを特徴とする請求項11から15の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項18】
前記第1繊維シートと前記第2繊維シートと前記第3繊維シートを、加圧処理、または、加熱しながら加圧処理を行うことにより接着する
ことを特徴とする請求項11から17の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項19】
多軸の繊維補強シートの製造装置であって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを供給する第1繊維シート供給手段と、
前記第1繊維シート供給手段から供給された第1繊維シートを前記繊維補強シートの長手方向に沿って搬送するための一対のテンターチェーンと、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを供給する第2繊維シート供給手段と、
前記第2繊維シート供給手段から供給された前記繊維シートを前記第1繊維シートに対して所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて当てつつ相対回転させて、前記一対のテンターチェーンの位置で順番にそれぞれ折り返して螺旋状に巻き付け、前記長手方向に対して繊維シートの方向が0°よりなる前記第1繊維シートと前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートの三層から構成される前記繊維補強シートを形成する繊維シート巻き付け手段と、
前記形成された前記繊維補強シートを回収する繊維補強シート回収手段と、
を有する
ことを特徴とする繊維補強シートの製造装置。
【請求項20】
多軸の繊維補強シートの製造装置であって、
繊維束を一方向に引き揃え配列した1枚の第1繊維シートを供給する第1繊維シート供給手段と、
前記繊維補強シートの長手方向に沿って走行する一対のテンターチェーンと、
前記第1繊維シートとは異なる他の少なくとも一枚の繊維シートを供給する第2繊維シート供給手段と、
前記第2繊維シート供給手段から供給された前記繊維シートを前記一対のテンターチェーンに対して所定角度θ°(但し、0°<θ°<90°である)の傾きを持たせて当てつつ相対回転させて、前記一対のテンターチェーンの位置で順番にそれぞれ折り返して螺旋状に巻き付け、前記長手方向に対して繊維シートの方向が+θ°よりなる第2繊維シートと前記長手方向に対して繊維シートの方向が−θ°よりなる第3繊維シートからなる二層の繊維シートを形成する繊維シート巻き付け手段と、
前記二層の繊維シートに前記第1繊維シート供給手段から供給された第1繊維シートを積層して繊維補強シートを形成する第1繊維シート積層手段と、
前記形成された前記繊維補強シートを回収する繊維補強シート回収手段と、
を有する
ことを特徴とする繊維補強シートの製造装置。
【請求項21】
前記長手方向に対して繊維シートの方向が90°よりなる第4繊維シートを供給する第4繊維シート供給手段と、
、前記三層に積層した繊維補強シートに前記第4繊維シートを積層する第4繊維シート積層手段と、
前記積層した状態で前記第4繊維シートを前記繊維補強シートの幅寸法に合わせて切断する切断手段と、
を有する
ことを特徴とする請求項17または18記載の繊維補強シートの製造装置。
【請求項22】
前記各繊維シートの厚さが、0.005mm〜0.08mmである
ことを特徴とする請求項20から22の中で少なくとも一項に記載の繊維補強シートの製造方法。
【請求項23】
前記第1繊維シート供給手段と前記第2繊維シート供給手段が、
前記繊維シートを巻回した繊維シート巻回手段である
ことを特徴とする請求項19または20記載の繊維補強シートの製造装置。
【請求項24】
前記第1繊維シート供給手段と前記第2繊維シート供給手段が、
前記繊維束を巻回した複数の繊維束巻回手段である
ことを特徴とする請求項19または20記載の繊維補強シートの製造装置。
【請求項25】
前記繊維補強シートを、加圧処理、または、加熱しながらの加圧処理を行い、前記各繊維シート同士を接着させる加圧手段を有する
ことを特徴とする請求項19または20記載の繊維補強シートの製造装置。
【請求項26】
前記加圧手段は、
前記繊維補強シートの両面に離型フィルムを配し、これら離型フィルムを介して加圧処理、または、加熱しながら加圧処理を行う
ことを特徴とする請求項25記載の繊維補強シートの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−224543(P2006−224543A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42796(P2005−42796)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(300046658)株式会社ミツヤ (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(300046658)株式会社ミツヤ (17)
【Fターム(参考)】
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