説明

置換された複素環を調製する方法

本発明の開示は、癌の治療及び予防のために有用である置換されたチオフェンを製造する方法に関する。更に開示されるものは、本明細書中に開示される方法によって製造される置換されたチオフェンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、癌の治療及び予防のために有用である置換されたチオフェンを調製する方法に関する。更に開示されるものは、本明細書中に開示される方法によって製造される置換されたチオフェンである。
【背景技術】
【0002】
化学療法及び放射線暴露は、現時点における癌の治療のための主たる選択肢であるが、しかしこれらの両方の方法の使用は、正常な組織に対する強烈な副作用、及び腫瘍細胞の耐性の頻繁な発生によって厳しく制約される。従ってこのような治療の効率を、それに伴う毒性を増加させることのない方法で改良することが非常に望ましい。これを達成するための一つの方法は、本明細書中に記載されるもののような特異的感作剤の使用による。
【0003】
個々の細胞は、その染色体の正確な複写物を製造し、そして次いでこれらを別個の細胞に分離することによって複製する。このDNA複製、染色体分離及び分割のサイクルは、段階の秩序を維持する細胞内の機構によって調節され、そしてそれぞれの段階が正確に行われることを確実にする。これらの過程に対する鍵は、細胞周期チェックポイント(Hartwell et al.,Science,Nov 3,1989,246(4930):629−34)であり、ここで、細胞は、周期が細胞分裂を通って続けられる前に、DNA修復機構が機能するための時間を有することを確実にするために停止することができる。細胞周期には、二つのこのようなチェックポイント−p53によって調節されるG1/Sチェックポイント及びSer/Thrキナーゼチェックポイントキナーゼ1(CHK1)によってモニターされるG2/Mチェックポイントがある。
【0004】
これらのチェックポイントによって誘導される細胞周期の停止は、これによって細胞が放射線又は化学療法に由来する損傷を克服することができる重大な機構であるために、これらの抑止は、DNAを損傷する療法に対する腫瘍細胞の感受性を増加する筈である。更に、腫瘍の殆んどにおけるp53変異によるG1/Sチェックポイントの腫瘍特異的抑止は、腫瘍選択性薬剤を得ることによって開発することができる。G2/Mチェックポイントを抑止する化学感作物質を設計するための一つの方法は、鍵となるG2/M調節性キナーゼCHK1の阻害剤を開発することであり、そしてこの方法は多くの概念実証実験において有効であることが示されている(Koniaras et al.,Oncogene,2001,20:7453;Luo et al.,Neoplasia,2001,3:411;Busby et al.,Cancer Res.,2000,60:2108;Jackson et al.,Cancer Res.,2000,60:566)。
【0005】
本発明の置換されたチオフェンは、CHK1キナーゼの強力な阻害剤であることが示されている(WO2005/066163)。CHK1を阻害することによって、本発明中で開示される置換された複素環は、DNA損傷に反応するG2/Mチェックポイントにおける細胞周期の停止を防止する能力を保有する。従ってこれらの化合物は、その抗増殖性(抗癌性のような)活性のために有用であり、そして従ってヒト又は動物の身体の治療の方法において有用である。このような方法は、癌(固形腫瘍及び白血病)、線維増殖性及び分化性疾患、乾癬、リウマチ様関節炎、カポジ肉腫、血管腫、急性及び慢性腎症、アテローマ、アテローム性動脈硬化症、動脈再狭窄、自己免疫性疾病、急性及び慢性炎症、骨疾病並びに網膜血管増殖を伴う眼病のような、細胞周期の停止及び細胞増殖に伴う疾病状態の治療を含む。
【0006】
これらの置換されたチオフェンに接近するための現時点の方法は、これを、規模を拡大した調製のためにはほぼ非現実的なものにする幾つかの不利益を有している。困難さは、臭素化反応、並びに大過剰の出発物質の一つ及び比較的大量のAlMeを必要とするアミド結合形成に伴って起こる。この後者の試薬は、自然発火性であり、そして環境に優しくない。現時点で既知の方法による中間体の精製は、必要な多段のクロマトグラフィー、濾過及び溶媒の交換を課し、操作的に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願公開WO2005/066163。
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hartwell et al.,Science,Nov 3,1989,246(4930):629−34
【非特許文献2】Koniaras et al.,Oncogene,2001,20:7453
【非特許文献3】Luo et al.,Neoplasia,2001,3:411
【非特許文献4】Busby et al.,Cancer Res.,2000,60:2108
【非特許文献5】Jackson et al.,Cancer Res.,2000,60:566。
【発明の概要】
【0009】
従って、これらの価値ある化合物を合成するよりよい方法が必要とされる。本発明は、金属で触媒されたカップリング又は臭素化を使用せず、従って反応が行われる場合の規模を、事実上制約することができるクロマトグラフィーの必要性を排除する、置換されたチオフェンを調製する方法を提供する。再結晶化法は、溶媒の交換を置換え、これは、最終生成物の劣化を最小化する。全体収率は増加し、従って、はるかに少ない出発物質が必要となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一つの態様は、以下の式I:
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、
は、ハロゲン、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びヒドロキシから選択される一つ又はそれより多いR基で所望により置換されていてもよいアリール環であり;
は、−NHC(O)NHRであり、ここで、Rは、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシカルボニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択され;
は、−C(O)NRであり、ここで、R及びRは、H、C1−6アルキル、シクロアルキル、及び少なくとも一つの窒素原子を含有する5、6又は7員のヘテロシクリル環からそれぞれ独立に選択され、但し、R及びRが両方ともHであることはないことを条件とする]
の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を調製する方法であって、
(a) 2−チオアセトアミド化合物を、以下の式II:
【0013】
【化2】

【0014】
の化合物と反応させて、チオフェン中間体を製造し;そして
(b) チオフェン中間体を更に反応させて、式Iの化合物を形成すること;
を含んでなる方法を提供する。
【0015】
“中間体”は、本明細書中で使用される場合、出発物質及び式Iの最終化合物間の中間生成物として形成される化合物を指す。“反応混合物”は、本明細書中で使用される場合、試薬間の化学反応の少なくとも一つの生成物、並びに副産物、例えば不純物(好ましくない立体構造を持つ化合物を含む)、溶媒、及び出発物質のようないずれもの残存する試薬を含んでなる溶液又はスラリーを指す。一つの態様において、反応混合物はスラリーであり、ここで、スラリーは、少なくとも一つの固体及び少なくとも一つの液体(水、酸、又は溶媒のような)を含んでなる組成物、例えば固体の懸濁液又は分散物であることができる。一つの態様において、中間体は、次の転換を行う前に、反応混合物から単離されない。
【0016】
一つの態様において、反応工程は大規模に行うことができる。一つの態様において、“大規模”は、少なくとも1グラムの、例えば少なくとも2グラム、少なくとも5グラム、少なくとも10グラム、少なくとも25グラム、少なくとも50グラム、少なくとも100グラム、少なくとも500グラム、少なくとも1kg、少なくとも5kg、少なくとも10kg、少なくとも25kg、少なくとも50kg、又は少なくとも100kgの使用のような出発物質、中間体、又は試薬の使用を指す。
【0017】
一つの態様において、2−チオアセトアミド化合物は、以下の式III:
【0018】
【化3】

【0019】
を有する。
一つの態様において、2−チオアセトアミド化合物は、式IIの化合物と反応させられる反応混合物のスラリー中に存在することができる。一つの態様において、2−チオアセトアミド化合物の式IIの化合物との反応は、求核性塩基の存在中で行うことができる。もう一つの態様において、塩基は、前駆体のチオアセチル中間体を脱アセチル化することによってin situで2−チオアセトアミド化合物を形成するために役立つことができる。更なる態様において、塩基は、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、ナトリウム又はカリウムエトキシド、ナトリウム又はカリウムt−ブトキシド、及びナトリウムt−アミレートから選択することができる。更なる態様において、塩基は、ナトリウムメトキシドであることができる。塩基は、式IIの化合物の前又は後に加えることができる。塩基は、例えば約1.1−3.5当量、例えば約1.5当量で存在することができる。式IIの化合物は、例えば約0.9当量で存在することができる。反応は、当業者によって適しているとみなされるいずれもの溶媒中でも行うことができる。一つの態様において、溶媒は、2−メチルテトラヒドロフランであることができる。
【0020】
反応は、約0−40℃において行うことができる。一つの態様において、この方法は、更に得られたチオフェン中間体を結晶化によって精製することを含んでなる。更なる態様において、結晶化は、約0−5℃で1−3日間で行うことができる。
【0021】
【化4】

【0022】
式IIの化合物は、アセトフェノンIVをビルスマイヤー試薬で処理することによって形成して、イミニウム種Vを得ることができる。イミニウム種V上の可変基Rは、メチル基のようなアルキル基であることができる。アセトフェノンは、ビルスマイヤー試薬の形成の前又は後のいずれかに加えることができる。適したビルスマイヤー試薬は、DMF及びPOCl、DMF及び塩化オキザリル、DMF及びPCl、DMF及び塩化チオニル、並びにDMF、POCl、及びPClから調製することができる。一つの態様において、DMF及びPOClを使用することができる。DMFが大部分の溶媒であることができるが、更なる態様において、トルエン又はアセトニトリル中の約2当量のDMFを使用することができる。もう一つの態様において、DMFの代わりに、R基が一緒にシクロアルキル及びモルホリンのような環(cycle)を形成するホルムアミドを含む、異なったジアルキルホルムアミドHC(O)NRを使用することができる。イミニウムVのCl対イオンの代替物は、過塩素酸塩及びPF塩を含む。
【0023】
イミニウムVを、ヒドロキシルアミン塩酸塩、リン酸塩又は硫酸塩で処理して、オキシムVIを形成することができ、これは、更に反応して、式IIの化合物を与える。ヒドロキシルアミン塩及びイミニウムVは、いずれの順序でも加えることができる。一つの態様において、オキシムVIは、式IIの化合物への転換の前に単離することができる。もう一つの態様において、オキシムVIは、in situで反応して、式IIの化合物を得ることができる。一つの態様において、結晶化による式IIの化合物の精製は、その形成と同じ日に行うことができる。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、以下の式I:
【0025】
【化5】

【0026】
[式中、
は、ハロゲン、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びヒドロキシから選択される一つ又はそれより多いR基で所望により置換されていてもよいアリール環であり;
は、−NHC(O)NHRであり、ここで、Rは、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシカルボニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択され;
は、−C(O)NRであり、ここで、R及びRは、H、C1−6アルキル、シクロアルキル、及び少なくとも一つの窒素原子を含有する5、6又は7員のヘテロシクリル環からそれぞれ独立に選択され、但し、R及びRが両方ともHであることはないことを条件とする]
の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を調製する方法であって、
(a) HNRを、ハロアセチルハロゲン化物と反応させて、ハロアセトアミド中間体を形成し;
(b) ハロアセトアミド中間体を、チオ酢酸塩と反応させて、チオアセチル中間体を形成し;
(c) チオアセチル中間体を脱アセチル化して、2−チオアセトアミド中間体を形成し;
(d) 2−チオアセトアミド中間体を、以下の式II:
【0027】
【化6】

【0028】
の化合物と反応させて、チオフェン中間体を形成し;そして
(e) チオフェン中間体を更に反応させて、式Iの化合物を形成すること;
を含んでなる方法を提供する。
【0029】
一つの態様において、モル過剰、例えば約1.5当量のハロアセチルハロゲン化物をHNRに加える。一つの態様において、ハロアセチルハロゲン化物は、塩化クロロアセチル又は臭化クロロアセチルであることができる。もう一つの態様において、ピリジン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、2,6−ルチジン、及びN,N−ジメチルアミノピリジンのような塩基は、ハロアセチルハロゲン化物と共に加えることができる。更なる態様において、塩基はピリジンであることができる。塩基は、HNRのモル過剰、例えば1.2当量で加えることができる。
【0030】
一つの態様において、ハロアセトアミド中間体は、チオ酢酸塩の添加の前に単離されない。もう一つの態様において、ハロアセトアミド中間体は、チオ酢酸塩による処理の前に単離される。一つの態様において、ハロアセトアミド中間体は、ClCHC(O)NRであることができる。一つの態様において、チオ酢酸塩は、チオ酢酸カリウムのようなアルカリ土類塩又はチオ酢酸テトラメチルアンモニウムであることができる。チオ酢酸塩は、ハロアセトアミド中間体のモル過剰で、例えば約1.5当量で加えることができる。反応は、当業者によって適しているとみなされるいずれの溶媒中でも行うことができる。一つの態様において、チオ酢酸塩の添加は、二相性の水/2−メチルテトラヒドロフラン系中で行うことができる。無水のテトラヒドロフラン又は無水の2−メチルテトラヒドロフランも更に使用することができる。
【0031】
本発明のもう一つの態様は、以下の式I:
【0032】
【化7】

【0033】
[式中、
は、ハロゲン、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びヒドロキシから選択される一つ又はそれより多いR基で所望により置換されていてもよいアリール環であり;
は、−NHC(O)NHRであり、ここで、Rは、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシカルボニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択され;
は、−C(O)NRであり、ここで、R及びRは、H、C1−6アルキル、シクロアルキル、及び少なくとも一つの窒素原子を含有する5、6又は7員のヘテロシクリル環からそれぞれ独立に選択され、但し、R及びRが両方ともHであることはないことを条件とする]
の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を調製する方法であって、
(a) 以下の式VII:
【0034】
【化8】

【0035】
のチオフェン中間体、又は医薬的に受容可能なその塩を、イソシアン酸塩と反応させて、ウレイド中間体を形成し;
(b) ウレイド中間体を、塩基と反応させて、尿素中間体を形成し;そして
(c) 尿素中間体を更に反応させて、式Iの化合物を形成すること;
を含んでなる方法を提供する。
【0036】
一つの態様において、ウレイド中間体は、以下の式VIII:
【0037】
【化9】

【0038】
の化合物である。
一つの態様において、モル過剰、例えば約2当量までのイソシアン酸塩が式IVの中間体に加えられる。更なる態様において、イソシアン酸塩は、イソシアン酸トリクロロアセチルであることができる。もう一つの態様において、溶媒は、テトラヒドロフランのような、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びメチルtert−ブチルエーテルから選択することができる。
【0039】
一つの態様において、ウレイド中間体は、塩基と反応させる前に単離することができる。もう一つの態様において、ウレイド中間体は、塩基が加えられるとき、反応混合物のスラリー中にあることができる。一つの態様において、塩基は、モル過剰、例えば約2.5当量でウレイド中間体に加えることができる。塩基は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メチルアミン、並びにエタノールマグネシウム塩及びメタノールから選択することができる。一つの態様において、塩基は、トリエチルアミンであることができる。
【0040】
一つの態様において、反応は、約2.5ないし約4時間行うことができる。反応は、当業者によって適しているとみなされるいずれの溶媒中でも行うことができる。一つの態様において、溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ヘキサン、及び四塩化炭素から選択することができる。更なる態様において、溶媒は、テトラヒドロフランであることができる。一つの態様において、得られた尿素中間体は、水の分割添加による結晶化によって精製することができる。
【0041】
別の態様において、式Iの化合物の形成は、
(a) 以下の式VII:
【0042】
【化10】

【0043】
のチオフェン中間体、又は医薬的に受容可能なその塩を、一つ又はそれより多い試薬と反応させて、尿素中間体を形成し;そして
(b) 尿素中間体をさらに反応させて、式Iの化合物を形成すること;
を含んでなる。
【0044】
一つの態様において、この一つ又はそれより多い試薬は、イソシアン酸トリメチルシリルとそれに続く酸性の仕上げ;シアン酸ナトリウム、カリウム、又は銀;イソシアン酸;イソシアン酸モノクロロアセチルとそれに続くNaOMe;カルボジイミドとそれに続く尿素;還流下のピリジン中の尿素;ニトロ尿素;イソシアン酸ベンジルとそれに続くNaOH;イソシアン酸ベンジルオキシとそれに続く水素化分解;ホスゲン、アンモニア、及びベンゼン;チオ尿素、トリエチルアミン、及びメタノール;イソシアン酸クロロカルボニルとそれに続くアンモニア;クロロギ酸エチルとそれに続くアンモニア;並びにテトライソシアン酸ケイ素から選択することができる。
【0045】
一つの態様において、ウレイド中間体は、酸に不安定な保護基を保有し、これを塩基と反応させ、保護された尿素中間体を得る。次いでこの中間体を酸で処理して、酸に不安定な保護基を除去し、そして式Iの化合物を得ることができる。一つの態様において、保護された尿素中間体は、酸と反応させる前に単離することができる。もう一つの態様において、酸は、保護された尿素中間体を含んでなる反応混合物のスラリーに加えることができる。酸は、保護された尿素中間体にモル過剰、例えば約3当量で加えることができる。一つの態様において、保護された尿素中間体は、t−ブチルカルバミン酸保護基のようなカルバミン酸保護基を保有することができる。他の適したカルバミン酸保護基は、例えばカルバミン酸2,2,2−トリクロロエチル、カルバミン酸2−トリメチルシリルエチル、カルバミン酸アリル、カルバミン酸ベンジル、カルバミン酸2−フェニルエチル、及びカルバミン酸2−クロロエチルを含む。更に、他の有用な保護基は、例えばホルムアミド、ベンズアミド、アセトアミド、ペンタ−4−エンアミド、o−ニトロフェニルアセトアミド、o−ニトロフェノキシアセトアミド、アリル、N−4−メトキシベンジルアミン、及びジフェニルホスフィンアミドを含む。
【0046】
各種の酸性条件を、保護された中間体の式Iの化合物への転換を行うために使用することができる。これらは、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、又は酢酸エチル中の無水の又は水性のHCl;メタノール中の塩化アセチル;硫化物を伴う又は伴わないトリフルオロ酢酸;トルエンスルホン酸;ジオキサン中の硫酸;ブロモカテコールボラン;フェノール/ジクロロメタン中の塩化トリメチルシリル;フェノール/ジクロロメタン中のテトラクロロシラン;硫化物を伴うトリメチルシリルトリフレート;tert−ブチルジメチルシリルトリフレート;ジオキサン/ジクロロメタン中のメタンスルホン酸;シリカゲル;アセトニトリル中の硝酸セリウムアンモニウム;及びテトラヒドロフラン中の亜鉛を含む。更なる態様において、酸は、メタノール中の水性HClであることができる。酸に不安定な保護基を除去するための他の条件は、パラジウムで触媒された還元、触媒を伴うH、ヨウ化サマリウム、及びテトラヒドロフラン中のヨウ素を含む。酸に不安定な保護基の除去後、トリエチルアミン又は炭酸ナトリウムのような塩基を加えることができる。
【0047】
式Iの化合物は、温かいうちに、例えば30℃で化合物の懸濁液をガラスフィルターを通して濾過し、次いで約10−15℃に冷却し、水を加え、そして式Iの化合物の種結晶で結晶化を誘導することによって更に精製することができる。撹拌を伴う更なる水の添加により、結晶化過程を完結することができる。
【0048】
本発明のもう一つの態様は、以下の式I:
【0049】
【化11】

【0050】
[式中、
は、ハロゲン、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びヒドロキシから選択される一つ又はそれより多いR基で所望により置換されていてもよいアリール環であり;
は、−NHC(O)NHRであり、ここで、Rは、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシカルボニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択され;
は、−C(O)NRであり、ここで、R及びRは、H、C1−6アルキル、シクロアルキル、及び少なくとも一つの窒素原子を含有する5、6又は7員のヘテロシクリル環からそれぞれ独立に選択され、但し、R及びRが両方ともHであることはないことを条件とする]
の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を調製する方法であって、
(a) HNRを、ハロアセチルハロゲン化物と反応させて、ハロアセトアミド中間体を形成し;
(b) ハロアセトアミド中間体を、チオ酢酸塩と反応させて、チオアセチル中間体を形成し;
(c) チオアセチル中間体を、脱アセチル化して、2−チオアセトアミド中間体を形成し;
(d) 2−チオアセトアミド中間体を、以下の式II:
【0051】
【化12】

【0052】
の化合物と反応させて、以下の式VII:
【0053】
【化13】

【0054】
のチオフェン中間体を形成し;
(e) 式VIIのチオフェン中間体を、イソシアン酸塩と反応させて、ウレイド中間体を形成し;
(f) ウレイド中間体を、塩基と反応させて、保護された中間体を形成し;そして
(g) 保護された中間体を、酸と反応させて、式Iの化合物を形成すること;
を含んでなる方法を提供する。
【0055】
本発明のもう一つの態様は、以下の式I:
【0056】
【化14】

【0057】
の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を調製する方法であって、以下の工程:
【0058】
【化15】

【0059】
及び所望により、化合物12を更に反応させて、医薬的に受容可能なその塩を形成することを含んでなる方法を提供する。
カッコは、更なる反応の前に単離されない中間体を示す。化合物1を、DMF中のPOClで処理し、続いてヒドロキシアミン塩酸塩を加えて、化合物4を得ることができる。化合物5を、塩化クロロアセチル及びピリジンと反応させて、中間体6を得ることができ、これは、チオ酢酸カリウムによる処理によって中間体7を得る。化合物4及びナトリウムメトキシドの中間体7への添加は、化合物9の形成をもたらす。化合物9とイソシアン酸トリクロロアセチルとの反応は、化合物10を与え、これは、アルコール性トリエチルアミンによる処理で化合物11に転換することができる。化合物11は、メタノール性HClと反応させて、化合物12を得ることができる。化合物12の塩は、本明細書中で以下に記載される方法によって、又は当技術において公知の方法によって形成することができる。
【0060】
前記の方法を、式Iの他の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を、商業的に入手可能であることができるか、又は本明細書中に記載される類似の方法或いは当技術において既知の方法によって製造することができる適当な出発物質を使用して製造するために使用することができることは当業者にとって明白であるものである。
【0061】
一つの態様は、本明細書中に開示される方法のいずれかによって製造される、以下の式Iの化合物:
【0062】
【化16】

【0063】
[式中、
は、ハロゲン、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びヒドロキシから選択される一つ又はそれより多いR基で所望により置換されていてもよいアリール環であり;
は、−NHC(O)NHRであり、ここで、Rは、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシカルボニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択され;
は、−C(O)NRであり、ここで、R及びRは、H、C1−6アルキル、シクロアルキル、及び少なくとも一つの窒素原子を含有する5、6又は7員のヘテロシクリル環からそれぞれ独立に選択され、但し、R及びRが両方ともHであることはないことを条件とする]、又は医薬的に受容可能なその塩を提供する。もう一つの態様は、本明細書中に開示される方法のいずれかによって製造される式Iの化合物、及び医薬的に受容可能な担体を含んでなる組成物を提供する。
【0064】
式I−VIII中に含有される可変基のための以下の置換基は、本発明の更なる態様である。このような具体的な置換基は、本明細書中で先に又は以下に定義される、定義、請求項、又は態様のいずれかと共に適宜に使用することができる。
【0065】
一つの態様において、Rは、フルオロのようなハロゲンである。もう一つの態様において、Rは、フルオロ基で一置換されたアリール環である。もう一つの態様において、RはHである。もう一つの態様において、Rは、C1−6アルコキシカルボニルである。
【0066】
一つの態様において、Rは、5、6、又は7員のヘテロシクリル環であり、そしてRは、Hである。更なる態様において、Rは、一つの窒素原子を含有する6員の飽和のヘテロシクリルである。更なる態様において、窒素原子は、t−ブトキシカルボニルのようなカルバミン酸保護基によって保護されている。
【0067】
全ての態様が、例示的及び説明的のみであり、そして特許請求されているような本発明を拘束するものではないことは理解されることである。
本明細書及び付属する特許請求の範囲において使用される場合、単数形“一つ”、“一つの”、及び“この”は、文脈が明白に他を示さない限り、複数の言及を含むことは注意するべきである。従って、例えば、“一つの化合物”を含有する方法に対する言及は、二つ又はそれより多い化合物の混合物を含む。用語“又は”は、文脈が明確に他を指さない限り、“及び/又は”をその意味に含んで一般的に使用されることも更に注意するべきである。他に規定しない限り、化学基は、その非置換の又は置換された形態を指す。
【0068】
用語“化合物”は、本明細書中で使用される場合、中性化合物(例えば遊離塩基)、及びその塩の形態(医薬的に受容可能な塩のような)を指す。化合物は、無水の形態、又は水和物、或いは溶媒和物で存在することができる。化合物は、立体異性体(例えば、鏡像異性体及びジアステレオ異性体)として存在することができ、そして鏡像異性体、ラセミ混合物、ジアステレオ異性体、及びこれらの混合物として単離することができる。固体の形態の化合物は、各種の結晶質及び非晶質の形態で存在することができる。
【0069】
単独で又は接頭辞として使用される用語“Cm−n”又は“Cm−n基”は、mないしn個の炭素原子を有するいずれもの基を指す。
用語“アルケニル”は、本明細書中で使用される場合、少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する、本明細書中でそれぞれC−C12アルケニル、C−C10アルケニル、及びC−Cアルケニルと呼ばれる、2−12個、2−10個、又は2−6個の炭素原子の直鎖又は分枝鎖基のような、不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素を指す。例示的なアルケニル基は、制約されるものではないが、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニル、等を含む。
【0070】
用語“アルコキシ”は、本明細書中で使用される場合、酸素に接続されたアルキル基(−O−アルキル−)を指す。例示的なアルコキシ基は、制約されるものではないが、本明細書中でそれぞれC−C12アルコキシ、C−Cアルコキシ、及びC−Cアルコキシとして呼ばれる、1−12、1−8、又は1−6個の炭素原子のアルキル、アルケニル或いはアルキニルとの基を含む。例示的なアルコキシ基は、制約されるものではないが、メトキシ、エトキシ、等を含む。同様に、例示的な“アルケノキシ”基は、制約されるものではないが、ビニルオキシ、アロイルオキシ、ブテノキシ、等を含む。
【0071】
用語“アルキル”は、本明細書中で使用される場合、本明細書中でそれぞれC−C12アルキル、C−C10アルキル、及びC−Cアルキルと呼ばれる、1−12、1−10、又は1−6個の炭素原子の直鎖又は分枝鎖基のような、飽和の直鎖又は分枝鎖の炭化水素を指す。例示的なアルキル基は、制約されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、等を含む。
【0072】
アルキル基は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、硫化物、スルホンアミド、及びスルホニルから選択される少なくとも一つの基で所望により置換されているか、又はこれによって中断されていることができる。
【0073】
用語“アルキニル”は、本明細書中で使用される場合、本明細書中でそれぞれC−C12アルキニル、C−Cアルキニル、及びC−Cアルキニルと呼ばれる、2−12、2−8、又は2−6個の炭素原子の直鎖或いは分枝鎖基のような、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する不飽和の直鎖又は分枝鎖の炭化水素を指す。例示的なアルキニル基は、制約されるものではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4−メチル−1−ブチニル、4−プロピル−2−ペンチニル、及び4−ブチル−2−ヘキシニル、等を含む。
【0074】
用語“アミド(amide)”又は“アミド(amido)”は、本明細書中で使用される場合、−RC(O)N(R)−、−RC(O)N(R)R−、又は−C(O)NRの形態のラジカルを指し、ここにおいて、R及びRは、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、及びニトロからそれぞれ独立に選択される。アミドは、炭素、窒素、R、R又はRを経由してもう一つの基に接続することができる。アミドは更に環式であることができ、例えばR及びR、R及びR、又はR及びRは、結合して、3ないし12員の環、例えば3ないし10員の環又は5ないし6員の環を形成することができる。用語“カルボキシアミド”は、−C(O)NRの構造を指す。
【0075】
用語“アミン”又は“アミノ”は、本明細書中で使用される場合、−NR、−N(R)R−、−RN(R)R−の形態のラジカルを指し、ここで、R、R、及びRは、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、及びニトロから独立に選択される。アミノは、親分子基に窒素、R、R、又はRを経由して接続することができる。アミノは、更に環式であることもでき、例えばR、R、又はRのいずれか二つは一緒に、或いはNと結合して、3ないし12員の環、例えば、モルホリノ又はピペリジニルを形成することができる。用語アミノは、更にいずれものアミノ基に対応する第四アンモニウム塩、例えば−[N(R)(R)(R)]を含む。例示的なアミノ基は、R、R、又はRの少なくとも一つがアルキル基であるアミノアルキル基を含む。
【0076】
用語“アリール”は、本明細書中で使用される場合、単環、二環、又は他の多環炭素環式の芳香族環系を指す。アリール基は、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択される一つ又はそれより多い環に所望により縮合することができる。本発明のアリール基は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、硫化物、スルホンアミド、及びスルホニルから選択される基で置換されていることができる。例示的なアリール基は、制約されるものではないが、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、及びナフチル、並びに5,6,7,8−テトラヒドロナフチルのようなベンゼン縮合炭素環式分子を含む。
【0077】
用語“アリールアルキル”は、本明細書中で使用される場合、少なくとも一つのアルキル置換基を有するアリール基、例えば、−アリール−アルキル−を指す。例示的なアリールアルキル基は、制約されるものではないが、単環式芳香族環系を有するアリールアルキルを含み、ここにおいて、環は6個の炭素原子を含んでなる。例えば、“フェニルアルキル”は、フェニルCアルキル、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、等を含む。
【0078】
用語“カルバミン酸”は、本明細書中で使用される場合、−ROC(O)N(R)−、−RC(O)N(R)R−、又は−OC(O)NRの形態のラジカルを指し、ここにおいて、R、R及びRは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、硫化物、スルホニル、及びスルホンアミドからそれぞれ独立に選択される。例示的なカルバミン酸は、制約されるものではないが、アリールカルバミン酸又はヘテロアリールカルバミン酸を含み、例えば、ここにおいて、R、R及びRの少なくとも一つは、フェニル及びピリジニルのようなアリール又はヘテロアリールから独立に選択される。
【0079】
用語“カルボニル”は、本明細書中で使用される場合、ラジカル−C(O)−を指す。
用語“カルボキシアミド”は、本明細書中で使用される場合、ラジカル−C(O)NRR’を指し、ここで、R及びR’は、同一又は異なっていることができる。R及びR’は、例えば、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクリルから選択することができる。
【0080】
用語“カルボキシ”は、本明細書中で使用される場合、ラジカル−COOH又はその対応する塩、例えば、−COONa、等を指す。
用語“シアノ”又は“ニトリル”は、本明細書中で使用される場合、−CNを指す。
【0081】
用語“シクロアルコキシ”は、本明細書中で使用される場合、酸素に接続されたシクロアルキル基を指す。
用語“シクロアルキル”は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で、例えば“C4−8シクロアルキル”と呼ばれる、シクロアルカンから誘導された3−12、3−8、4−8、又は4−6個の炭素の一価の飽和又は不飽和の環式、二環式、或いは架橋した二環式炭化水素基を指す。例示的なシクロアルキル基は、制約されるものではないが、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロブタン及びシクロプロパンを含む。シクロアルキル基は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、硫化物、スルホンアミド、及びスルホニルで置換されていることができる。シクロアルキル基は、他のシクロアルキル、アリール、又はヘテロシクリル基に縮合することができる。縮合環は、一般的にその間で二つの原子を共有する少なくとも二つの環を指す。
【0082】
用語“エーテル”は、−R−O−R−の構造を有するラジカルを指し、ここで、R及びRは、独立にアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はエーテルであることができる。エーテルは、R又はRを経由して親分子基に接続していることができる。例示的なエーテルは、制約されるものではないが、アルコキシアルキル及びアルコキシアリール基を含む。エーテルは、更に例えばR及びRの一つ又は両方がエーテルであるポリエーテルを含む。
【0083】
用語“ハロ”又は“ハロゲン”或いは“ハル”は、本明細書中で使用される場合、F、Cl、Br、又はIを指す。
用語“ハロアルキル”は、本明細書中で使用される場合、一つ又はそれより多いハロゲン原子で置換されたアルキル基を指す。
【0084】
用語“ヘテロアリール”は、本明細書中で使用される場合、一つ又はそれより多い窒素、酸素、及び硫黄のような異種原子、例えば1ないし4個の異種原子を含有する、単環、二環、又は他の多環式芳香族環系を指す。ヘテロアリールは、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、硫化物、スルホンアミド、及びスルホニルを含む一つ又はそれより多い置換基で置換されていることができる。ヘテロアリールは、更に非芳香族環に縮合することができる。ヘテロアリール基の例示的例は、制約されるものではないが、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジル、トリアジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、(1,2,3)−及び(1,2,4)−トリアゾリル、ピラジニル、ピリミジリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フリル、フェニル、イソオキサゾリル、及びオキサゾリルを含む。例示的なヘテロアリール基は、制約されるものではないが、環が2ないし5個の炭素原子及び1ないし3個の異種原子を含んでなる単環式芳香族環を含む。
【0085】
用語“複素環”、“ヘテロシクリル”、又は“複素環式”は、本明細書中で使用される場合、窒素、酸素、及び硫黄から独立に選択される少なくとも一つの異種原子を含有する飽和、部分的に不飽和、又は不飽和の4−12員の環を指す。他に規定しない限り、異種原子は、炭素又は窒素連結であることができ、−CH−基は、所望により−C(O)−によって置換されていることができ、そして環の硫黄原子は、所望により酸化されて、スルフィニル又はスルホニル基を形成することができる。複素環は、芳香族(ヘテロアリール)又は非芳香族であることができる。複素環は、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、硫化物、スルホンアミド、及びスルホニルを含む一つ又はそれより多い置換基で置換されていることができる。
【0086】
複素環は、更に上記の複素環式環のいずれかが、アリール、シクロアルキル、及び複素環から独立に選択される一つ又は二つの環と縮合した、二環式、三環式、及び四環式基を含む。例示的な複素環は、1H−インダゾリル、2−ピロリドニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、2H−ピロリル、3H−インドリル、4−ピペリドニル、4aH−カルバゾリル、4H−キノリジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、アクリジニル、アゼパニル、アゼチジニル、アジリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダザロニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、b−カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジオキソラニル、フリル、2,3−ジヒドロフラニル、2,5−ジヒドロフラニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラニル、フラニル、フラザニル、ホモピペリジニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシラニル、オキサゾリジニルピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニル、プテリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、プリニル、ピラニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリドチアゾリル、ピリジニル、N−オキシド−ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリジニル、ピロリジン−2−オニル、ピロリニル、ピロリル、ピリジニル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、カルボリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、チオファニル、チオテトラヒドロキノリニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアゾリジニル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオモルホリニル、チオフェニル、チオピラニル、チイラニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、及びキサンテニルを含む。
【0087】
用語“ヒドロキシ”及び“ヒドロキシル”は、本明細書中で使用される場合、ラジカル−OHを指す。
用語“ヒドロキシアルキル”は、本明細書中で使用される場合、アルキル基に接続されたヒドロキシラジカルを指す。
【0088】
用語“ニトロ”は、本明細書中で使用される場合、ラジカル−NOを指す。
用語“フェニル”は、本明細書中で使用される場合、6員の炭素環式芳香族環を指す。フェニル基は、更にシクロヘキサン又はシクロペンタン環に縮合することもできる。フェニルは、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、硫化物、スルホンアミド、及びスルホニルを含む一つ又はそれより多い置換基で置換されていることができる。
【0089】
用語“スルホンアミド”は、本明細書中で使用される場合、−N(R)−S(O)−R−又は−S(O)−N(R)Rの構造を有するラジカルを指し、ここで、R及びRは、例えば、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルであることができる。例示的なスルホンアミドは、アルキルスルホンアミド(例えば、Rがアルキルである)、アリールスルホンアミド(例えば、Rがアリールである)、シクロアルキルスルホンアミド(例えば、Rがシクロアルキルである)、及びヘテロシクリルスルホンアミド(例えば、Rがヘテロシクリルである)、等を含む。
【0090】
用語“スルホニル”は、本明細書中で使用される場合、RSO−の構造を有するラジカルを指し、ここで、Rは、アルキル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリル、例えばアルキルスルホニルであることができる。用語“アルキルスルホニル”は、本明細書中で使用される場合、スルホニル基に接続したアルキル基を指す。
【0091】
用語“硫化物”は、本明細書中で使用される場合、RS−の構造を有するラジカルを指し、ここで、Rは、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバミン酸、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及びケトンであることができる。用語“アルキル硫化物”は、本明細書中で使用される場合、硫黄原子に接続されたアルキル基を指す。例示的な硫化物は、“チオ”を含み、これは本明細書中で使用される場合、−SHラジカルを指す。
【0092】
用語“医薬的に受容可能な担体”は、本明細書中で使用される場合、医薬的投与と適合性である、いずれもの、そして全ての溶媒、分散媒体、被覆、等張及び吸収遅延剤、等を指す。医薬的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術において公知である。組成物は、更に補充的な、付加的な又は向上した治療機能を与える他の活性化合物を含有することができる。
【0093】
用語“医薬組成物”は、本明細書中で使用される場合、一つ又はそれより多い医薬的に受容可能な担体と一緒に処方された本明細書中で開示される少なくとも一つの化合物を含んでなる組成物を指す。
【0094】
用語“医薬的に受容可能な塩(類)”は、本明細書中で使用される場合、本発明の組成物中に使用される化合物中に存在することができる酸性又は塩基性基の塩を指す。本来塩基性である本発明の組成物中に含まれる化合物は、各種の無機及び有機酸と広い範囲の塩を形成することが可能である。このような塩基性化合物の医薬的に受容可能な酸付加塩を調製するために使用することができる酸は、非毒性の酸付加塩を形成するもの、即ち、制約されるものではないが、リンゴ酸、シュウ酸、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸、硫酸、重硫酸、リン酸、酸性リン酸、イソニコチン酸、酢酸、乳酸、サリチル酸、クエン酸、酒石酸、オレイン酸、タンニン酸、パントテン酸、重酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸(glucaronate)、糖酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びパモエート(即ち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))塩を含む、薬理学的に受容可能なアニオンを含有する塩である。例えば、二つの酸性基を有する酸は、塩基性化合物と1:1又は1:2の酸:塩基性化合物の比で塩を形成することができる。一つの態様において、塩は、フマル酸塩である。もう一つの態様において、塩は、ヘミフマル酸塩である。
【0095】
アミノ分子を有する化合物は、先に記述した酸に加えて、各種のアミノ酸と医薬的に受容可能な塩を形成することができる。本来酸性である化合物は、各種の薬理学的に受容可能なカチオンと塩基塩を形成することが可能である。このような塩の例は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を、そして特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、及び鉄塩を含む。
【0096】
開示の化合物は、一つ又はそれより多いキラル中心及び/又は二重結合を含有することができ、そして従って、幾何異性体、鏡像異性体又はジアステレオ異性体のような立体異性体として存在することができる。用語“立体異性体”は、本明細書中で使用される場合、全ての幾何異性体、鏡像異性体又はジアステレオ異性体からなる。化合物は、不斉炭素原子の周りの置換基の立体配置によって、記号“R”又は“S”によって命名することができる。本発明は、これらの化合物の各種の立体異性体及びその混合物包含する。立体異性体は、鏡像異性体及びジアステレオ異性体を含む。鏡像異性体又はジアステレオ異性体の混合物は、命名法において“(±)”と命名することができるが、しかし当業者は、構造がキラル中心を意味することができることを暗黙のうちに認識するものである。
【0097】
本発明の化合物の個々の立体異性体は、商業的に入手可能な非対称又は不斉中心を含有する出発物質から合成的に、或いはラセミ化合物の調製、それに続く当業者にとって公知の分割方法によって調製することができる。これらの分割の方法は、(1)鏡像異性体の混合物のキラル助剤への付着、得られたジアステレオ異性体の混合物の再結晶化又はクロマトグラフィーによる分離、及び光学的に純粋な生成物の助剤からの遊離、(2)光学的に活性な分割剤を使用する塩の形成、或いは(3)光学的鏡像異性体の混合物のキラルクロマトグラフィーカラムによる直接分離によって例示される。立体異性体の混合物は、更にキラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高性能液体クロマトグラフィー、キラル塩複合体としての化合物の結晶化、或いはキラル溶媒中の化合物の結晶化のような公知の方法によってその成分の立体異性体に分割することもできる。立体異性体は、更に立体異性体的に(stereomerically)純粋な中間体、試薬、及び触媒から、公知の不斉合成法によって得ることができる。
【0098】
幾何異性体も、更に本発明の化合物中に存在することができる。本発明は、炭素−炭素二重結合周りの置換基の配置、又は炭素環式環の周りの置換基の配置から得られる各種の幾何異性体及びその混合物を包含する。炭素−炭素二重結合周りの置換基は、“Z”又は“E”立体配置であるとして命名され、ここにおいて、用語“Z”及び“E”は、IUPAC基準に従って使用される。他に規定しない限り、二重結合を表す構造は、“E”及び“Z”異性体の両方を包含する。
【0099】
炭素−炭素二重結合周りの置換基は、別の方法で“cis”又は“trans”と呼ぶができ、ここで、“cis”は、二重結合の同じ側の置換基を表し、そして“trans”は、二重結合の反対側の置換基を表す。炭素環式環の回りの置換基の配置は、“cis”又は“trans”として命名される。用語“cis”は、環の平面の同じ側の置換基を表し、そして用語“trans”は、環の平面の反対側の置換基を表す。置換基が環の平面の同じ及び反対側の両方に配置された化合物の混合物は、“cis/trans”と命名される。
【実施例】
【0100】
本発明の化合物は、有機合成の当業者にとって公知の多くの方法で調製することができる。更に具体的には、本発明の化合物は、本明細書中に記載される反応及び技術を使用して調製することができる。以下に記載される合成方法の説明において、溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験の時間及び仕上げ方法を含む提案される全ての反応条件が、他に規定しない限り、反応のための標準的な条件として選択することができることは理解されることである。分子の各種の部分に存在する官能基が、提案される試薬及び反応と適合性でなければならないことは有機合成の当業者によって理解されることである。反応条件と適合性ではない置換基は、当業者にとって明白であるものであり、そして従って、別の方法が示されている。
【0101】
実施例のための出発物質は、商業的に入手可能であるか、又は既知の物質から標準的な方法によって容易に調製されるかのいずれかである。以下の実施例において、条件は、他に記述しない限り、以下のとおりである:
(i) 温度は、摂氏度(℃)で与えられる;操作は、他に記述しない限り、室温又は周囲温度、例えば約18−25℃の範囲で行われている;
(ii) 一般的に、反応の進行は、TLC又は液体クロマトグラフィー/質量分光器(LC/MS)によって追跡され、そして反応時間は、例示のみのために与えられている;
(iii) 最終生成物は、プロトン磁気共鳴(NMR)スペクトル及び/又は質量スペクトルデータを使用して分析している;
(iv) 収率は、例示のみのために与えられ、そして必ずしも入念な工程開発によって得られたものではない;更なる物質が所望される場合、調製を繰り返すことができる;
(v) 与えられた場合、核磁気共鳴(NMR)データは、d−DMSO又はd−MeOD中の300又は400MHzのいずれかで決定された、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対するパーツパーミリオン(ppm)で与えられる主要な診断プロトンに対するデルタ(δ)値の形態である;
(vi) 化学記号は、当技術におけるその通常の意味を有する;そして
(vii) 溶媒比は、体積:体積(v/v)の表現で与えられるている。
【0102】
実施例1:
(Z)−3−クロロ−3−(3−フルオロフェニル)−アクリロニトリルの、3’−フルオロアセトフェノンからの合成
【0103】
【化17】

【0104】
3’−フルオロアセトフェノン(80.0g、0.579mol)のN,N−ジメチルホルムアミド(560ml)中の約40℃の溶液に、塩化ホスホリル(92.50ml、1.01mol)を、添加中温度を約39−41℃に維持しながら滴下により加えた。得られた反応混合物を約40℃で一晩撹拌してから、2への転換に対してHPCLによって試料採取した。
【0105】
得られた反応混合物に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(45.17g、0.637mol)のN,N−ジメチルホルムアミド(240ml)中の溶液を、添加中約39−45℃の温度を維持しながら滴下により加え、続いてN,N−ジメチルホルムアミド(40ml)により管路を洗浄した。40℃で15分間攪拌した後、反応混合物を4への転換に対して試料採取してから、約15−20℃に冷却し、そして水(800ml)を、温度を約17ないし約21℃間に維持しながら滴下により加えた。次いで反応混合物を約5℃に冷却し、そしてこの温度で更に20分間保持してから、固体を濾過し、二回の別個の部分の水(2×240ml)で置換洗浄し、そして約40℃で一晩乾燥して、表題化合物を淡黄色の固体(74.24g、71%収率)として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:7.72−7.65(m,2H),7.63−7.56(m,1H),7.49−7.42(m,1H),7.03(s,1H).
13C NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:162.0(d,J=245Hz),149.3(d,J=3Hz),135.6(d,J=8Hz),131.1(d,J=9Hz),123.3(d,J=3Hz),118.8(d,J=21Hz),115.8,113.8(d,J=24Hz),89.3。
【0106】
実施例2:
(3S)−3−({[3−アミノ−5−(3−フルオロフェニル)チオフェン−2−イル]カルボニル}アミノ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルの、(S)−1−Boc−3−アミノピペリジン及び化合物4からの合成
【0107】
【化18】

【0108】
1−Boc−3−(S)−アミノピペリジン(120.0g、0.599mol)を、2−メチルテトラヒドロフラン(540ml)中に溶解した。ピリジン(58.14ml、0.719mol)を加え、続いて2−メチルテトラヒドロフラン(60ml)で管路洗浄した。塩化クロロアセチル(55.32ml、0.689mol)を、温度を約21−25℃に維持しながら滴下により加え、続いて2−メチルテトラヒドロフラン(60ml)で管路洗浄した。周囲温度で2.5時間後、反応混合物を6への転換に対してHPLCによって試料採取してから、塩化ナトリウムの16重量/重量%の水溶液(360ml)を加えた。混合物を30分間撹拌してから、水相を分離した。
【0109】
全体を通して温度を約19−26℃に維持しながら、有機相に、チオ酢酸カリウム(102.65g、0.899mol)の水(204ml)中の濾過した溶液を加え、続いて水(36ml)で管路洗浄した。一晩周囲温度で攪拌した後、有機相を、7への転換に対してHPLCによって試料採取してから、水相を分離した。
【0110】
有機相に、4(97.93g、0.539mol)を加えてから、メタノール中のナトリウムメトキシドの溶液(25重量/重量%で202ml、0.899mol)を、温度を21−24℃に維持しながら滴下により加えた。続いてメタノール(36ml)で管路洗浄した。1時間50分周囲温度で攪拌した後、反応混合物を9への転換に対してHPLCによって試料採取してから、約33℃に加熱し、続いて水(600ml)を滴下により加えた。10分間撹拌した後、水相を分離した。
【0111】
有機相に、イソヘキサン(960ml)を滴下により加えてから、少量の反応混合物の試料を取除き、これを冷却させ、そしてこれを播種結晶化のために原体混合物に戻した。第二の部分のイソヘキサン(480ml)の滴下による添加、それに続く1時間かけた約3℃の段階的冷却、及びその後のこの温度での一晩の保持により、生成物の結晶化が起きた。濾過、氷冷の酢酸tert−ブチル(240ml)並びに酢酸tert−ブチル及びイソヘキサン(1:1、2×240ml)の氷冷の混合溶媒系による固体の二回の置換洗浄、並びに約40℃における3日間の乾燥により、9を、淡黄色の固体(192.69g、1−Boc−3−(S)−アミノピペリジンに基づき77%収率)として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d6,80℃)δ:7.49−7.32(m,3H),7.19−7.12(m,1H),7.01(s,1H),6.91(d,1H),6.29(br,s,1H),3.91−3.64(m,3H),2.96−2.77(m,2H),1.92−1.77(m,1H),1.74−1.30(m,12H).
質量スペクトル:420[MH]及び364[M−tBu]
【0112】
実施例3:
(3S)−3−({[5−(3−フルオロフェニル)−3−{[(トリクロロアセチル)カルバモイル]アミノ}チオフェン−2−イル]カルボニル}アミノ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルの、化合物9及びイソシアン酸トリクロロアセチルからの合成
【0113】
【化19】

【0114】
9(73.12g、0.174mol)のテトラヒドロフラン(800ml)中の溶液に、イソシアン酸トリクロロアセチル(23.23ml、0.196mol)を、添加中温度を約20−30℃に維持しながら加えた。周囲温度で2.5時間後、混合物を10への転換に対して試料採取してから、イソヘキサン(1120ml)を1時間かけて滴下により加えた。更に1時間撹拌した後、反応混合物を濾過し、固体をイソヘキサン(160ml)で洗浄し、そして約40℃で乾燥して、10を、淡桃色の固体(103.54g、98%収率)として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d6,70℃)δ:11.70(s,1H),11.49(br.s,1H),8.24(s,1H),7.80(d,1H),7.57−7.40(m,3H),7.26−7.18(m,1H),3.97−3.67(m,3H),2.95−2.78(m,2H),1.97−1.84(m,1H),1.78−1.53(m,2H),1.51−1.33(m,10H).
13C NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:162.3(d,J=245Hz),161.7,160.3,153.7,148.5,141.9(d,J=3Hz),140.5,134.6(d,J=8Hz),131.1(d,J=9),121.4(d,J=3Hz),119.5,115.3(d,J=21Hz),114.7,112.0(d,J=23Hz),91.8,78.4,47.4,45.7,43.2,29.2,27.7,23.2。
【0115】
実施例4:
(3S)−3−({[3−(3−ウレイド)−5−(3−フルオロフェニル)チオフェン−2−イル]カルボニル}アミノ)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルの、化合物10の脱保護による合成
【0116】
【化20】

【0117】
10(101.45g、0.169mol)のメタノール(516ml)中の懸濁液に、トリエチルアミン(58.15ml、0.417mol)を加えた。周囲温度で更に2.5時間後、混合物を11への転換に対して試料採取してから、水(206ml)を10分かけて加えた。周囲温度で一晩攪拌した後、反応混合物を約45℃で15分間加熱してから、第二の部分の水(1083ml)を2時間かけて加えた。約45℃で更に1時間後、反応混合物を約20℃まで冷却させ、そしてこの時間で1時間保った。反応混合物を濾過し、そして固体を水(206ml)で洗浄してから、約40℃で一晩乾燥して、10を、白色の固体(77.10g、99%収率)として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d6,80℃)δ:9.86(s,1H),8.24(s,1H),7.60−7.41(m,3H),7.41−7.33(m,1H),7.22−7.15(m,1H),6.36(br,s,2H),3.94−3.68(m,3H),2.97−2.79(m,2H),1.94−1.84(m,1H),1.76−1.55(m,2H),1.47−1.34(m,10H)
質量スペクトル:486[MNa]
【0118】
実施例5:
5−(3−フルオロフェニル)−3−ウレイドチオフェン−2−カルボン酸(S)−ピペリジン−3−イルアミドの、化合物11の脱保護による合成
【0119】
【化21】

【0120】
11(75.3g、0.163mol)のメタノール(383ml)中の懸濁液に、塩酸の水溶液(水中の37重量/重量%で40.78ml、0.488mol)を、温度を約20−30℃に維持しながら滴下により加えた。次いで得られた反応混合物を約50℃で4時間加熱してから、12への転換に対して試料採取した。トリエチルアミン(85.10ml、0.610mol)を滴下により加えてから、水(345ml)を加えた。次いで反応混合物の少量の試料を取除き、これを冷却させてから、原体混合物に戻して、30分間撹拌しながら播種結晶化した。更なる水(613ml)を1.5時間かけて加えてから、更に30分間約50℃を保ち、そして一晩撹拌しながら約20℃まで冷却させた。反応混合物を濾過し、そして固体を水(153ml)で洗浄してから、約40℃で一晩乾燥して、12を、白色の固体(57.26g、97%収率)として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d6,80℃)δ:9.88(br.s,1H),8.22(s,1H),7.52−7.36(m,4H),7.19(m,1H),6.35(br.s,2H),3.81(m,1H),2.95(m,1H),2.76(m,1H),2.44−2.56(m,2H),1.82(m,1H),1.67−1.34(m,3H).
質量スペクトル:363[MH]
【0121】
実施例6:
5−(3−フルオロフェニル)−3−ウレイドチオフェン−2−カルボン酸(S)−ピペリジン−3−イルアミド(化合物12)の精製
12(50.0g、0.138mol)のメタノール(650ml)中の懸濁液を、約30℃で30分間撹拌してから、得られた濁った懸濁液を1.6ミクロンのガラスマイクロファイバー濾紙を通して、第二の容器に濾過し、続いてメタノール(100ml)によって管路洗浄し、固体の残渣を廃棄した。得られた溶液を約10℃に冷却してから、水(250ml)を、温度を約10−15℃に維持しながら20分かけて滴下により加えた。次いで播種結晶化のために、精製した12(150mg、0.3重量/重量%)を加え、そして容器の内容物を約10℃で30分間攪拌させた。第二の部分の水(50ml)を、温度を約10−13℃に維持しながら1時間30分かけて加え、続いて約10℃で20時間撹拌し、完全な結晶化を得た。濾過、固体の水(2×100ml)による洗浄、30分間吸引乾燥してからの、真空下の約40℃における一晩の乾燥により、精製された12を、白色の固体(46.91g、92%収率)として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:10.04(s,1H),8.29(s,1H),7.77(d,1H),7.55−7.42(m,3H),7.24(m,1H),6.67(br.s,2H),3.79(m,1H),2.94(m,1H),2.78(m,1H),2.49−2.37(m,2H),1.82(m,1H),1.65−1.34(m,3H).
質量スペクトル:363[MH]
【0122】
実施例7:
5−(3−フルオロフェニル)−3−ウレイドチオフェン−2−カルボン酸(S)−ピペリジン−3−イルアミドフマル酸塩(化合物12のフマル酸塩)の合成
【0123】
【化22】

【0124】
12(1.00g、2.8mmol)及びフマル酸(160mg、1.4mmol)の混合物に、アセトン(3.0ml)及び水(1.9ml)を加えた。得られた濁った溶液をシリンジフィルターを通して濾過してから、これをアセトン(18.5ml)及び水(0.5ml)中のフマル酸(160mg、1.4mmol)の溶液、並びに12のフマル酸塩の種結晶を含有する第二の容器中に滴下により加えた。溶液の添加は、周囲温度で1時間かけて行われ、そして続いてアセトン(1.0ml)及び水(1.0ml)で管路洗浄した。生成物の漸進的結晶化が起こり、そして得られたスラリーの周囲温度における1時間30分の撹拌後、固体を濾過し、そしてアセトン(2×2.0ml)で洗浄し、30分間吸収乾燥してから、真空下で約40℃で一晩乾燥して、12のフマル酸塩を、白色の固体(0.96g、96%収率)として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:10.00(s,1H),8.29(s,1H),8.24(d,1H),7.54−7.42(m,3H),7.24(m,1H),6.67(br.s,2H),6.52(s,2H[2Hフマル酸]),4.16(br.m,1H),3.22(m,1H),3.09(m,1H),2.91−2.76(m,2H),1.86(m,2H),1.65(m,2H).
質量スペクトル:363[MH]
【0125】
実施例8:
5−(3−フルオロフェニル)−3−ウレイドチオフェン−2−カルボン酸(S)−ピペリジン−3−イルアミドフマル酸塩(化合物12のヘミ−フマル酸塩)の合成
【0126】
【化23】

【0127】
12(2.0g、5.6mmol)のメタノール(33.7ml)中の溶液に、フマル酸(327mg、2.8mmol)を加え、そして得られた溶液を30分間約18℃で攪拌した。溶液を12のヘミ−フマル酸塩(5mg、0.006mmol)で播種し、そして5時間約18−19℃で攪拌した後、反応混合物を約5℃に冷却し、撹拌を止め、そして反応物をこの温度で一晩保った。得られた固体の濾過、メタノール(1×2ml)による洗浄、及びフィルター上の吸引乾燥により、12のヘミ−フマル酸塩を、白色の固体(1.90g、80%)として得た。
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:10.02(s,1H),8.28(s,1H),8.08(d,1H),7.54−7.42(m,3H),7.24(m,1H),6.66(brs.,2H),6.47(s,1H[2Hフマル酸]),4.02(br.m,1H),3.11(m,1H),2.96(m,1H),2.75−2.60(m,2H),1.85(m,1H),1.76(m,1H),1.58(m,2H).
質量スペクトル:363[MH]
【0128】
本発明の他の態様は、本明細書中に開示された本発明の明細書及び実践の考察から当業者にとって明白となるものである。明細書及び実施例は、例示のみと考慮されることを意図し、本発明の真の範囲及び思想は、特許請求の範囲によって示されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式I:
【化1】

[式中、
は、ハロゲン、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びヒドロキシから選択される一つ又はそれより多いR基で所望により置換されていてもよいアリール環であり;
は、−NHC(O)NHRであり、ここで、Rは、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシカルボニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択され;
は、−C(O)NRであり、ここで、R及びRは、H、C1−6アルキル、シクロアルキル、及び少なくとも一つの窒素原子を含有する5、6又は7員のヘテロシクリル環からそれぞれ独立に選択され、但し、R及びRが両方ともHであることはないことを条件とする]
の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を調製するための方法であって、
(a) 2−チオアセトアミド化合物を、以下の式II:
【化2】

の化合物と反応させて、中間体を製造し;そして
(b) 前記中間体を更に反応させて、式Iの化合物を形成すること;
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記式Iの化合物が、以下の式:
【化3】

又は医薬的に受容可能なその塩である、請求項1に記載の式Iの化合物を調製するための方法。
【請求項3】
前記式IIの化合物が、以下の式:
【化4】

である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の式Iの化合物を調製するための方法。
【請求項4】
前記2−チオアセトアミド化合物の式IIの化合物との反応が、求核性塩基の存在中で行われる、請求項1−3のいずれか1項に記載の式Iの化合物を調製するための方法。
【請求項5】
前記2−チオアセトアミド化合物が、in situで前駆体を脱アセチル化することによって形成される、請求項1−3のいずれか1項に記載の式Iの化合物を調製するための方法。
【請求項6】
前記求核性塩基が、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、ナトリウム又はカリウムエトキシド、ナトリウム又はカリウムt−ブトキシド、及びナトリウムt−アミレートから選択される、請求項4に記載の式Iの化合物を調製するための方法。
【請求項7】
前記医薬的に受容可能な塩が、フマル酸又はヘミ−フマル酸塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
以下の式I:
【化5】

[式中、
は、ハロゲン、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールオキシ、カルボキシ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びヒドロキシから選択される一つ又はそれより多いR基で所望により置換されていてもよいアリール環であり;
は、−NHC(O)NHRであり、ここで、Rは、H、C1−6アルキル、C1−6アルコキシカルボニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択され;
は、−C(O)NRであり、ここで、R及びRは、H、C1−6アルキル、シクロアルキル、及び少なくとも一つの窒素原子を含有する5、6又は7員のヘテロシクリル環からそれぞれ独立に選択され、但し、R及びRが両方ともHであることはないことを条件とする]
の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を調製するための方法であって、
(a) 以下の式VII:
【化6】

のチオフェン中間体、又は医薬的に受容可能なその塩を、イソシアン酸塩と反応させて、ウレイド中間体を形成し;
(b) 前記ウレイド中間体を塩基と反応させて、尿素中間体を形成し;そして
(c) 前記尿素中間体を更に反応させて、式Iの化合物を形成すること;
を含んでなる方法。
【請求項9】
前記式Iの化合物が、以下の式:
【化7】

又は医薬的に受容可能なその塩である、請求項8に記載の式Iの化合物を調製するための方法。
【請求項10】
前記医薬的に受容可能な塩が、フマル酸又はヘミ−フマル酸塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1−10に記載の方法によって製造される式Iの化合物又は医薬的に受容可能なその塩、及び医薬的に受容可能な担体を含んでなる組成物。

【公表番号】特表2011−518870(P2011−518870A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506779(P2011−506779)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050424
【国際公開番号】WO2009/133389
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】