説明

置換テトラフルオロベンジルアニリン化合物、及びその薬学的に許容される塩の製造方法

本発明は、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体、及びその薬学的に許容される化合物の製造方法に関する。特に、本発明は、中間体としてテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を用いることによる、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体及びその薬学的に許容される塩の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の化学式Iで表されるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の製造方法、及び急性及び慢性の神経変性疾患の予防及び治療に有用な、その薬学的に許容される塩化合物に関する。

(式中、Mはリチウム、ナトリウム又はカリウムを表し;R、R及びRは相互に独立的に、水素又はハロゲンであってもよい。)
【背景技術】
【0002】
韓国公開特許公報第2003−0097706(特許文献1)号及び第2004−0066639号(特許文献2)には、テトラフルオロベンジル誘導体が、急性及び慢性の神経変性疾患の予防及び治療において治療効果があり、アルツハイマー病、パーキンソン病及びハンチントン舞踏病等の神経変性疾患;てんかん等の発作の原因となる脳疾患;及び脳卒中等の脳虚血を予防又は治療するために有効に用いることができることが開示されている。
【0003】
テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の製造方法は、韓国公開特許公報第2003−0097706号(特許文献1)に記載されており、以下の反応スキームIIにおいて説明される。

(式中、R、R及びRは、それぞれ水素又はハロゲンであり;Rは、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロゲンで置換されているアルコキシ、アルカノイルオキシ又はニトロであり、Rは、カルボン酸又はC1−C4アルキルで置換されているカルボン酸、カルボキシアミド、スルホン酸、ハロゲン又はニトロである。)
【0004】
反応スキームIIは、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の製造方法を示す。最初に、ニトロベンゼン化合物を水素化し、得られたアニリン化合物を、トリエチルアミン及びジメチルホルムイミドの存在下、臭化テトラフルオロベンジル化合物と反応させ、所望のテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体を生産させる。
【0005】
しかし、前記方法は、また、全生成物の1%を超える量で、二量体(化学式III)を生成する。二量体は、出発物質、臭化テトラベンジル化合物、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の二級アミン基の間の副反応の結果として形成される。該二量体は、一般に再結晶法によっては容易に除去されず、0.1%の不純物のガイドラインの下にとどまるためには、更なる複雑な精製工程が必要である。従って、この反応スキームは産業的利用のためには不適当である。それは、所望の化合物の収率を低下させ、それによって製造生産原価を上昇させる。

(式中、R、R及びRは、相互に独立的に、水素又はハロゲンである。)
【0006】
更に、韓国公開特許公報第2003−0097706号(特許文献1)は、テトラフルオロ−5−アミノサリチル酸誘導体の塩化合物を詳細に記載していない。従って、安定性に関して、前述の化合物の他の製造研究が必要である。
【0007】
集中的かつ完全な研究を通じて、発明者は、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の製造における二量体の形成が、中間体としてテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を用いることにより回避できることを見出した。なお、同様に、所望の化合物の安定性は、アルカリ金属を用いて塩化合物を製造することによって向上し、それ故本発明をもたらす。
【特許文献1】韓国公開特許公報第2003−0097706号
【特許文献2】韓国公開特許公報第2004−0066639号
【非特許文献1】J.Org.Chem.,66巻(6),2001年,P1992〜1998
【非特許文献2】Tetrahedron Lett.,45巻(2),2003年,P243〜248
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、化学式IIIで表わされる二量体等の不純物の生成を防止するテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の新規な製造方法を提供することである。
【0009】
特に、本発明の他の目的は、中間体として化学式IIで表わされるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を用いることによる、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の新規な製造方法を提供することである。
【0010】
更に、本発明の他の目的は、安定性が向上し、かつ毒性が軽減した、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の塩化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸を製造するための新規な方法は、反応スキームIに示される。該方法は、以下の工程を含む。
a)化学式1で表されるテトラフルオロベンジルアルコールを化学式2で表わされるテトラフルオロベンズアルデヒドに酸化する工程;
b)テトラヒドロフルオロベンズアルデヒドと、化学式3で表わされる5−アミノ−サリチル酸との間の脱水−縮合反応によって、テトラフルオロベンズアルデヒドを、化学式IIで表されるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体に変換する工程;及び
c)テトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を、化学式Iで表わされるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸に水素化する工程。

(式中、Mはリチウム、ナトリウム又はカリウムを表し;R、R及びRは、相互に独立的に、水素又はハロゲンであってもよい。)







(式中、Mはリチウム、ナトリウム又はカリウムを表し;R、R及びRは、相互に独立的に、水素又はハロゲンである。)
【0012】
本発明の更なる態様においては、化学式Iで表わされるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸化合物の製造のための新規な中間体として、化学式IIで表わされる2−ヒドロキシ−5−〔(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジリジン)−アミノ〕安息香酸が提供される。
【0013】
本発明のテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸化合物は、以下の反応スキームIによって合成される。
1)工程I:テトラフルオロベンズアルデヒドを、テトラフルオロベンジルアルコールの酸化によって生成し;
2)工程II:工程Iにおいて得られたテトラフルオロベンズアルデヒドと、5−アミノ−サリチル酸が、塩化メチレン溶媒の存在下、室温で脱水縮合反応を受け、モレキュラーシーブを用い、イミン化合物としての化学式IIで表わされるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を生成し;
3)工程III:工程IIで得られ、化学式IIで表されるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を、白金触媒及びアルコール溶媒を用いて接触還元により水素化し、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸化合物を製造する。
【0014】
前記方法を、下記に記載のように更に詳細に説明する。
【0015】
工程Iにおけるテトラフルオロベンズアルデヒドは、ピリジニウムクロロクロメート及び塩化メチレンを用いて、テトラフルオロベンジルアルコールの一般的酸化により、容易に製造することができる。
【0016】
工程IIにおいては、J.Org.Chem.,66巻(6),2001年,P1992〜1998(非特許文献1)に報告された方法に従い、工程Iで得られたテトラフルオロベンズアルデヒド、及び5−アミノサリチル酸を、室温で脱水−縮合反応にかけ、化学式IIで表わされるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を生成する。
【0017】
Tetrahedron Lett.,45巻(2),2003年,P243〜248(非特許文献2)に報告されているように、弱酸性試薬(パラトルエンスルホン酸等)が、脱水−縮合反応において用いられる。得られた化合物をアルコール又はジエチルエーテルから再結晶して化学式IIで表される高品質の化合物を得る。本発明の方法は、別の精製過程なしで、連続工程を用い、所望の化合物を製造することができる点で採算性がある。
【0018】
従って、本発明の工程IIは、韓国公開特許公報第2003−0097706号(特許文献1)に報告されている、化学式Iで表わされるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸化合物を製造する工程における二量体の生成を回避することによって特徴づけられる。
【0019】
工程IIIにおいては、工程IIで得られる、化学式IIで表わされるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体が、パラジウム触媒及びアルコール溶媒を用いて接触還元により水素化され、化学式Iで表わされるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸化合物を製造する。
【0020】
本発明の工程IIIにおけるイミン化合物の還元反応は、水素化ホウ素ナトリウム及びアルコール、又は遷移金属触媒及び酢酸等の弱酸を用いた、他の一般的及び一般の還元反応により実施され、化学式Iで表わされる所望の化合物を得ることができる。
【0021】
本発明は、化学式IIIで表わされる二量体等の不純物の生成を防止する、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の新規な製造方法を提供する。
【0022】
特に、本発明は、二量体の生成を防止するために、中間体としてテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体(化学式II)を用いることによって特徴づけられる。
【0023】
本発明の更なる態様は、化学式Iで表わされるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸の薬学的に許容される塩を提供する。本発明における、所望の化合物の薬学的に許容される塩には、ナトリウム、カリウム及びリチウム等のアルカリ金属が含まれる。
【0024】
本発明の化学式Iで表わされる所望の化合物の塩は、アルコール、アセトン、アセトニトリル及び他の有機溶媒の存在下で、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の無機試薬を用いて、直接結晶化又は凍結乾燥することによって製造することができる。
【0025】
本発明において、薬学的に許容される塩は、以下の基準に従って選択された。
【0026】
本発明者らは、化学式Iで表わされる所望の化合物の薬学的に許容される多種類の塩、すなわち、アルカリ金属;カルシウム等のアルカリ土類金属;塩酸、リン酸、硫酸、マレイン酸、酢酸又はクエン酸等の薬学的に許容される無毒の塩;N,N−ジベンジルエチレンジアミン又はエチレンジアミン等の有機塩をスクリーニングした。
【0027】
実施例3〜6で製造したような、ナトリウム、カリウム及びリチウム等の酸付加化合物及びそれらの塩を、水浴撹拌器中で、25℃で、100rpmで48時間撹拌し、水中での溶解度を測定した。酸(遊離塩基)化合物は水中での溶解性に乏しいが、ナトリウム、カリウム及びリチウム塩は、結晶化法により、それぞれ、25〜80mg/ml、590mg/ml及び500mg/mlの溶解度を有していた。
【0028】
無毒の酸をアミンと組み合わせて用いた場合、反応は観察されず、所望の生成物は生成されなかった。有機塩を用いた実験においては、反応が観察され、所望の生成物が得られたが、それらは水中における溶解性に乏しいものであった。
【0029】
従って、種々の酸又は有機塩を用いた所望の化合物の製造方法は、本発明から除外された。カルシウム等のアルカリ土類金属を含む、所望の化合物の薬学的に許容される塩は、また、それらの水中における乏しい溶解度のために除外された。
【0030】
従って、本発明は、化学式Iで表わされる所望の化合物の薬学的に許容される塩のうちで、良好な溶解性、及び安定性を有する、ナトリウム、カリウム及びリチウムの塩を提供する。
【0031】
本発明の塩は、経口製剤中で、低毒性と共に良好な安定性を有する。
【発明の効果】
【0032】
前述のように、本発明は、化学式IIIで表わされる二量体等の不純物の生成を防止する、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の新規な製造方法を提供する。
【0033】
本発明は、中間体として、化学式IIで表わされるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を用いることによる、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の新規な製造方法を提供する。
【0034】
本発明の他の目的は、所望の化合物の良好な安定性及び低毒性を有する、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の塩化合物を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明を、単に具体例であり、本発明の範囲を制限しない、以下の実施例及び実験例を参照して説明する。
【0036】
実施例1:2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒドの調製
2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコール(49.62g、0.200モル)及び塩化メチレン(500mL)を室温で撹拌し、完全に溶解し、次いで反応混合物に、ピリジニウムクロロクロメート(73.29g、0.340モル)をゆっくりと加えた。反応混合物を4時間環流し、その間に反応温度が上昇し、次いで冷却した。減圧下に、未溶解物質をろ過した後、残渣を500mLの精製水及び500mLの飽和生理食塩水で洗浄した。分離した油相をMgSO(5g)で乾燥し、減圧下で濃縮し、所望の化合物;48.23gの2,3,5,6−テトラフルオロベンズアルデヒドを黄色の油状物質として得た(0.196モル、98.0%収率)。
H NMR(CDCl,300MHz):10.35(m,1H)
【0037】
実施例2:2−ヒドロキシ−5−〔(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジリジン)−アミノ〕安息香酸の調製
実施例1で調製した、2,3,5,6−テトラフルオロベンズアルデヒド(48.23g、0.196モル)の溶液に、5−アミノ−サリチル酸(33.02g、0.216モル)を加えた。反応混合物を10分間撹拌し、4Åモレキュラーシーブ(5.0g)を加えた後、室温で16時間撹拌した。減圧下に、未溶解物質をろ過した後、残渣を500mLの精製水及び500mLの飽和生理食塩水で洗浄した。分離した油相をMgSO(5g)で乾燥し、減圧下でろ過した。減圧下に油溶液を濃縮し、黄色の油溶液として、2−ヒドロキシ−5−〔(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジリジン)−アミノ〕安息香酸を得た。残渣をエタノール(200mL)から再結晶し、減圧下に乾燥し、65.97g(0.173モル、88.3%収率)の所望の白色固体を得た。
H NMR(CDCl,300MHz):7.12(dd,1H),7.57(d,1H),7.95(d,1H),8.39(s,2H)
【0038】
実施例3:2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸の調製
実施例1で調製した、2,3,5,6−テトラフルオロベンズアルデヒド(48.23g、0.196モル)の溶液に、5−アミノ−サリチル酸(33.02g、0.216モル)を加えた。反応混合物を10分間撹拌し、4Åモレキュラーシーブ(5.0g)を加えた後、室温で16時間撹拌した。減圧下に、未溶解物質をろ過した後、MgSO(10g)で乾燥した。減圧下で溶液を濃縮し、次いで、エタノール(600mL)を残渣に加えた。白金触媒(9.65mg)を溶液に加え、4atm、20〜25℃で2時間撹拌した。減圧下に、未溶解物質をろ過し、濃縮して溶媒を除去した。濃縮した残渣に、酢酸エチル(500mL)及び精製水(500mL)を加えた。溶液を5〜10℃に冷却し、5〜10℃の温度に安定させながら、塩酸を用いて溶液のpHを1.0〜1.5に調整した。溶液を室温で30分間撹拌し、放置した。分離した油相を500mLの精製水及び500mLの飽和生理食塩水で、この順に洗浄した。活性炭(5g)を分離した油相に加え、室温で1時間撹拌した。減圧下に油相をろ過し、濃縮して青白い白色固体として残渣を得た。濃縮した残渣に酢酸エチル(100mL)を加え、温度を50℃まで上昇させ、完全に溶解させた。n−ヘキサン(400mL)を反応混合物に加え、溶液を5〜10℃に冷却し、6時間撹拌した。沈殿した結晶をろ過し、減圧下にろ過して63.99g(0.167モル、85.2%収率)の2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸を、所望の化合物として得た(HPLC純度:99.8%以上)。
H NMR(CDCl,300MHz):4.41(s,2H),6.77(d,1H),6.94(dd,1H),7.08(d,1H)
【0039】
実施例4:2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸カリウムの調製
<方法4−1>
実施例3で調製した2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸(100g、0.261モル)を、無水エタノール(500mL)に加え、温度を50℃に上昇させ、完全に溶解した。得られた溶液を10℃に冷却した。別々に調製した、85%水酸化カリウム(17.22g、0.261モル)溶液及び無水エタノール(30mL)を用いて、溶液のpHを6.8〜7.0に調整した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、沈殿した結晶をろ過し、乾燥し、100.8g(0.239モル、91.7%収率)の2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸カリウムを所望の化合物として得た。
【0040】
<方法4−2>
実施例3で調整した2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸(100g、0.261モル)を、精製水(3000mL)に加え、次いで、得られた溶液を10℃に冷却した。同じ温度で、1N水酸化カリウム溶液を用いて、溶液のpHを6.8〜7.0に調整し、更に2時間撹拌した。溶液を凍結乾燥し、109.9g(0.261モル、100.0%収率)の2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸カリウムを所望の化合物として得た。
【0041】
実施例5:2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸ナトリウムの調製
<方法5−1>
水酸化カリウムを、同じモル数の水酸化ナトリウムに置換した以外は、実施例4の方法4−1の方法を繰り返した。96.75g(0.239モル、91.5%収率)の2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸ナトリウムを所望の化合物として得た。
【0042】
<方法5−2>
水酸化カリウムを、同じモル数の2−エチルヘキサン酸ナトリウムに置換した以外は、実施例4の方法4−2の方法を繰り返した。97.70g(0.241モル、92.4%収率)の2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸ナトリウムを所望の化合物として得た。
【0043】
<方法5−3>
水酸化カリウムを、同じモル数の1N−水酸化ナトリウム溶液に置換した以外は、実施例4の方法4−2の方法を繰り返した。105.7g(0.261モル、100.0%収率)の2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸ナトリウムを所望の化合物として得た。
【0044】
実施例6:2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸リチウムの調製
<方法1>
水酸化カリウムを、同じモル数の水酸化リチウムに置換した以外は、実施例4の方法4−1の方法を繰り返した。90.38g(0.232モル、89.0%収率)の2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸リチウムを所望の化合物として得た。
【0045】
<方法2>
水酸化カリウムを、同じモル数の1N−水酸化リチウム溶液に置換した以外は、実施例4の方法4−2の方法を繰り返した。101.5g(0.261モル、100.0%収率)の2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸リチウムを所望の化合物として得た。
【0046】
実施例7:注射用製剤
実施例4〜6で調整された各塩(Na−塩、K−塩、Li−塩)を、2mg/mLの濃度で注射用水(WFI)に溶解して注射用製剤を調製した。該溶液をバイアル瓶に充填し、真空内で処理した。
【0047】
実験例1:注射製剤の安定性試験
実施例7で記載されたように注射製剤を調製した後、種々の温度(25℃、40℃、60℃)に6ヶ月間保存し、活性成分の量をHPLCを用いて測定した。
【0048】
以下の表1、2及び3は、時間毎の注射製剤中の活性成分の残存量を示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
上記表に示すように、各塩の量は時間の経過により、及び温度の上昇により徐々に減少する傾向にあり、より多い量が減少した。
【0053】
特に、カリウム塩化合物の安定性プロフィールは、ナトリウム塩及びリチウム塩化合物よりも良好であった。
【0054】
実験例2:経口製剤の安定性
実施例4〜6で調製された各塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)の粉末を、バイアル瓶に充填し、真空に保存した。次いで、種々の温度(25℃、40℃、60℃)に6ヶ月間保存し、粉末中の活性成分の量をHPLCを用いて測定した。
【0055】
以下の表4、5及び6は、期間毎の粉末中の活性成分の残存量を示す。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
表4、5及び6に示すように、粉末形態における安定性プロフィールは、溶液におけるものよりも良好であった。25℃における各粉末試料の量における変化は観察されなかった。
【0060】
従って、試験結果は、粉末形態におけるカリウム及びナトリウム塩化合物が高温で相対的に安定であり、経口製剤としての上昇した安定性プロフィールを保証する。
【0061】
実験例3:ラットにおける遊離塩基形態に対する急性毒性試験
特定の無菌のオスのSD(Sprague Dawely)ラット、6〜8週齢をこの実験に用いた。化合物を生理食塩水に溶解した後、使い捨ての注射器を用いて、動物の尾静脈に試料を静脈注射した。各試料を単回投与した。表7〜9に示すように、投与14日後に、種々の投与量レベルについて死亡率を記録した。
【0062】
【表7】

【0063】
【表8】

【0064】
【表9】

【0065】
表7〜9に示すように、カリウム及びナトリウムの塩形態は、遊離塩基よりも毒性が低い。従って、本発明の塩形態が、所望の化合物の毒性プロフィールを有意に向上する役割を演じていることが証明される。
【0066】
実験例4:中大脳動脈を閉鎖することによる局所性脳虚血を患っているラットにおける、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸化合物及びその塩の保護作用
実施例3〜5で製造された化合物を用いて、化学質Iで表されるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸化合物、及びそのカリウム及びナトリウム塩の保護作用を、中大脳動脈を閉鎖することによる局所性脳虚血を患っているラットにおいて調べた。
【0067】
中大脳動脈を60分間閉鎖することにより、特定の無菌のオスのSD(Sprague Dawely)ラットを、局所性脳虚血にし、再灌流後に薬物で処理した。24時間後に、動物を安楽死させ、脳を除去した。図1に示すように、塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)で脳切片を染色した後、梗塞の容積を解析した。
【0068】
図1に示すように、3種の化合物は、局所性脳虚血に対して同様の保護を示した。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】中大脳動脈を閉鎖することによる虚血性脳虚血を患っているラットにおける、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸化合物の保護作用、及びテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸のカリウム及びナトリウム塩の保護作用を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含む、化学式Iで表されるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体、及びその薬学的に許容される塩の製造方法。
a)化学式1で表されるテトラフルオロベンジルアルコールを化学式2で表わされるテトラフルオロベンズアルデヒドに酸化する工程;
b)テトラヒドロフルオロベンズアルデヒドと、化学式3で表わされる5−アミノ−サリチル酸との間の脱水−縮合反応によって、テトラフルオロベンズアルデヒドを、化学式IIで表されるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体に変換する工程;及び
c)テトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を、化学式Iで表わされるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体に水素化する工程。










(式中、Mはリチウム、ナトリウム又はカリウムを表し;R、R及びRは、相互に独立的に、水素又はハロゲンであってもよい。)
【請求項2】
テトラフルオロベンズアルデヒドと、5−アミノ−サリチル酸が、塩化メチレン溶媒の存在下、室温で脱水縮合反応を受け、モレキュラーシーブを用い、化学式IIで表わされるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を生成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
テトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を水素化してイミン基を還元し、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体の塩が、アルコール、アセトン、アセトニトリル及び他の有機溶媒の存在下、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の無機試薬を用いて、直接結晶化又は凍結乾燥することによって製造され得る、請求項1記載の方法。
【請求項4】
2−ヒドロキシ−5−〔(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジリジン)−アミノ〕安息香酸。
【請求項5】
2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸カリウム。
【請求項6】
2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸リチウム。
【請求項7】
2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸ナトリウム。
【請求項8】
2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸カリウムを含む経口製剤。
【請求項9】
2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸リチウムを含む経口製剤。
【請求項10】
2−ヒドロキシ−5−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−トリフルオロメチル−ベンジルアミノ)安息香酸ナトリウムを含む経口製剤。
【請求項11】
化学式IIで表わされるテトラフルオロベンジリジン−5−アミノサリチル酸誘導体を水素化することにより、テトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体を製造する、化学式Iで表わされるテトラフルオロベンジル−5−アミノサリチル酸誘導体及びその薬学的に許容される塩の製造方法。



(式中、Mはリチウム、ナトリウム又はカリウムを表し;R、R及びRは、相互に独立的に、水素又はハロゲンであってもよい。)

【図1】
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【公表番号】特表2008−546642(P2008−546642A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513376(P2008−513376)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001993
【国際公開番号】WO2006/126846
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(500309115)チョンワエ ファーマ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】