説明

羊膜組織を含む材料で修飾されたステント及び対応する方法

羊膜組織と組み合わされたステントスキャフォールドは、生体適合性及び血液適合性が向上した生体適合性ステントを提供する。羊膜組織は、非凍結羊膜組織、可溶化羊膜組織、羊膜組織布材、化学修飾された羊膜組織、放射線処理された羊膜組織、熱処理された羊膜組織、又はそれらの組み合わせなどの、様々に修飾された又は修飾されていない形態の羊膜組織であり得る。ポリマー、胎盤組織、心膜組織、小腸粘膜下層などの材料を羊膜組織と組み合わせて使用することができる。羊膜組織は、ステントスキャフォールドの内側、外側、内側及び外側の双方、又は完全な被包体に取り付けることができる。いくつかの実施形態において、被覆材又は裏装材の少なくとも一部は複数の羊膜組織層を含む。生体適合性ステントの作製方法並びにその送達及び展開方法もまた考察される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、羊膜組織を含む材料を使用したステントの修飾に関する。本発明は、さらに、羊膜組織を使用したステントの修飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、インターベンショナルカーディオロジー、インターベンショナルラジオロジー、消化器医学、及び呼吸器医学において広く用いられている。ステントは、一般的に狭窄した管腔を開大するために用いられ得る。しかしながら、ステントの植込みは再狭窄のリスクがあることが知られている。例えば、ベアメタル冠動脈ステントは、小血管における展開後1年の再狭窄率が一般的に15%〜30%より高いことが知られている。薬剤溶出性(drug eluding)冠動脈ステントにより、12ヶ月再狭窄率は1桁前半まで低下している。しかしながら、薬剤溶出性ステントは、再内皮化(re−endothelization)の遅延などの新たな臨床リスクを提起している。冠動脈ステントの内皮化(endothelization)の遅延によって12ヶ月亜急性血栓症率が1〜2%となることが観察されている。薬剤溶出性冠動脈ステントの亜急性血栓症は、体内でそれが起こる患者の相当数において致死的であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様において、本発明は、生体対象の体管(vessel)内に留置される生体適合性ステントに関する。このステントは、ステントスキャフォールド(stent scaffold)と、ステントスキャフォールドに連係された生体適合性材料とを含む。生体適合性材料は、再構成羊膜組織、−60℃〜−100℃の温度で凍結保存されていない羊膜組織、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、再構成羊膜組織は、可溶化羊膜組織、羊膜の縫合糸、フィラメント、若しくはヤーンを織り上げるか、編み組みするか、若しくは編み上げることにより作製された布材、化学修飾された羊膜組織、放射線処理された羊膜組織、熱処理された羊膜組織、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、生体適合性材料は、ステントスキャフォールドの内側、外側、又は内側及び外側の双方に取り付けられる。一実施形態において、生体適合性材料は羊膜組織の被覆材又は裏装材を含む。いくつかの実施形態において、生体適合性材料は複数の羊膜組織層を含む。一実施形態において、生体適合性ステントは、血栓溶解剤、抗再狭窄剤、細胞物質、又はそれらの組み合わせをさらに含む。一実施形態において、細胞物質は幹細胞である。いくつかの実施形態において、生体適合性材料は、小腸粘膜下組織、心膜組織、胎盤組織、ポリマー材料、又はそれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、ステントスキャフォールドは、金属、合金、ポリマー、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態において、ステントスキャフォールドは生体吸収性である。いくつかの実施形態において、ステントスキャフォールドは、二股に分岐しているか、セグメント化されているか、連続しているか、クリンプされているか、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、使用される羊膜組織は羊膜上皮細胞を含む。
【0004】
第2の態様において、本発明は、生体対象の体管内に留置される別の生体適合性ステントに関する。この別の生体適合性ステントは、ステントスキャフォールドと、ステントスキャフォールドを実質的に完全に包み込む、羊膜組織を含む生体適合性材料とを含む。いくつかの実施形態において、羊膜組織は、可溶化羊膜組織、羊膜の縫合糸、フィラメント、若しくはヤーンを織り上げるか、編み組みするか、若しくは編み上げることにより作製された布材、化学修飾された羊膜組織、放射線処理された羊膜組織、熱処理された羊膜組織、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態において、ステントスキャフォールドは可溶化羊膜組織のコーティングで包み込まれる。いくつかの実施形態において、生体適合性材料は、被覆材、裏装材、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、被覆材又は裏装材の少なくとも一部は複数の羊膜組織層を含む。いくつかの実施形態において、生体適合性材料は、小腸粘膜下組織、心膜組織、胎盤組織、ポリマー材料、又はそれらの組み合わせをさらに含む。一実施形態において、生体適合性ステントは生体吸収性である。いくつかの実施形態において、生体適合性ステントは、血栓溶解剤、抗再狭窄剤、細胞物質、又はそれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、使用される羊膜組織は羊膜上皮細胞を含む。
【0005】
第3の態様において、本発明は、生体対象の体管内に留置されるステントスキャフォールドの修飾方法に関する。この方法は、加工された生体適合性材料をステントスキャフォールドと連係させるステップを含む。加工生体適合性材料は、再構成羊膜組織、−60〜−100℃の温度で凍結保存されていない羊膜組織、又はそれらの組み合わせを含む生体適合性材料から加工される。いくつかの実施形態において、生体適合性材料は被覆材又は裏装材を形成する方法により加工され、連係させるステップは、被覆材又は裏装材をステントスキャフォールドの内側、外側、又は内側及び外側の双方に取り付けることを含む。一実施形態において、被覆材又は裏装材は多層状の加工生体適合性材料を含む。被覆材又は裏装材は、機械ベース、電子ベース、接着剤ベース、エネルギーベースの方法、又はそれらの組み合わせによってステントスキャフォールドに取り付けることができる。一実施形態において、生体適合性材料は、羊膜組織を機械的、化学的、又は酵素的に破壊して可溶化羊膜組織を形成することを含む方法により加工される。次に可溶化羊膜組織は、(1)ステントスキャフォールドの少なくとも一部を可溶化羊膜組織で被覆すること、及び(2)可溶化羊膜組織で被覆されたスキャフォールドを乾燥させてステントスキャフォールド上にコーティングを形成することにより、ステントスキャフォールドと連係される。別の実施形態において、次に可溶化羊膜組織は、(1)予め被覆又は裏装されたステントスキャフォールドの被覆材又は裏装材の少なくとも一部を可溶化羊膜組織で被覆すること、及び(2)可溶化羊膜組織で被覆された被覆材又は裏装材を乾燥させて被覆材又は裏装材上にコーティングを形成することにより、ステントスキャフォールドと連係される。ある実施形態において、生体適合性材料は、羊膜の縫合糸、フィラメント、又はヤーンを織り上げるか、編み組みするか、又は編み上げることにより羊膜布材を作製することを含む方法により加工され、連係させるステップは、羊膜布材をステントスキャフォールドと連係させることを含む。
【0006】
第4の態様において、本発明は、生体対象の体管内に留置されるステントスキャフォールドの別の修飾方法に関する。この方法は、羊膜組織を含む生体適合性材料から加工される加工生体適合性材料でステントスキャフォールドを事実上完全に包み込むステップを含む。いくつかの実施形態において、加工生体適合性材料は、生体適合性材料から被覆材又は裏装材を形成することを含む方法で形成され、包み込むステップは、機械ベース、電子ベース、接着剤ベース、エネルギーベースの方法、又はそれらの組み合わせによってステントスキャフォールドを被覆材又は裏装材で被覆することを含む。一実施形態において、生体適合性材料は、羊膜組織を機械的、化学的、又は酵素的に破壊して可溶化羊膜組織を形成することを含む方法により加工される。次にステントスキャフォールドは、(a)ステントスキャフォールドを可溶化羊膜組織で被覆すること、(b)可溶化羊膜組織で被覆されたステントスキャフォールドを乾燥させてステントスキャフォールド上にコーティングを形成することにより、可溶化羊膜組織で包み込まれる。
【0007】
第5の態様において、本発明は生体適合性ステントの展開方法に関し、これは、生体適合性ステントを治療部位に送達するステップと、ステントを展開形態に展開するステップとを含む。いくつかの実施形態において、生体適合性ステントは自己拡張式である。一実施形態において、生体適合性ステントはバルーンにより展開される。いくつかの実施形態において、この方法は、ステントの送達前に治療部位を処置するステップをさらに含む。
【0008】
第6の態様において、本発明は、ステントスキャフォールドと、ステントスキャフォールドと連係された、胎盤組織を含む生体適合性材料とを含む生体適合性ステントに関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】細胞外基質成分の層を示す満期(at term)胎膜の構造の概略図である。
【図2(a)】チューブ状に丸められる羊膜を示す一組の図面であり、突合せ継目を示すチューブの側面図及び断面図を含み、膜は場合により、膜の拡大部分により示される孔を含む。
【図2(b)】2つの層と突合せ継目とを有する、チューブ状に丸められる長い羊膜を示す一組の図面である。
【図2(c)】羊膜の縫合糸、フィラメント、又はヤーンを織り上げるか、編み組みするか、又は編み上げることにより作製される羊膜布材の上面図である。
【図3(a)】チューブ状に丸められる羊膜のシートを示す一組の図面であり、重ね継目を示すチューブの側面図及び断面図を含む。
【図3(b)】V字形継目を備えてチューブ状に形成される羊膜シートを示す一組の図面であり、突合せ接合部を示すチューブの側面図及び断面図を含む。
【図3(c)】正弦波形継目を備えてチューブ状に形成される羊膜シートを示す一組の図面であり、突合せ接合部を示すチューブの側面図及び断面図を含む。
【図3(d)】円周上のらせん形継目を備えてチューブ状に形成される羊膜シートを示す一組の図面であり、突合せ接合部を示すチューブの側面図及び断面図を含む。
【図4(a)】鋸歯形継目を備えて突合せ接合部によりチューブ状に形成される羊膜シートを示す一組の図面である。
【図4(b)】四角形切欠き状継目を備えて突合せ接合部によりチューブ状に形成される羊膜シートを示す一組の図面である。
【図4(c)】雌雄嵌合型接合部を備えて突合せ接合部によりチューブ状に形成される羊膜シートを示す一組の図面である。
【図4(d)】一連のベルト及びスロットを備えて突合せ接合部によりチューブ状に形成される羊膜シートを示す一組の図面である。
【図5(a)】拡張型ステントスキャフォールドと組み合わされて生体適合性ステントを形成する羊膜チューブを示す一組の図面である。
【図5(b)】図5(a)の生体適合性ステントの長手方向断面図である。
【図6(a)】釣り針状バーブ(fish hook liker barb)が羊膜被覆材をステントスキャフォールドに固定する生体適合性ステントの側面図及び断面図である。
【図6(b)】ステープルが羊膜被覆材をステントスキャフォールドに固定する生体適合性ステントの側面図及び断面図である。
【図6(c)】ステントスキャフォールドを巻き込むように折り返された端部を備える内側スリーブが中央でクリンプされている生体適合性ステントの長手方向断面図。
【図6(d)】端部がステントスキャフォールドを巻き込むように折り返された内側スリーブを備える生体適合性ステントの長手方向断面図。
【図6(e)】端部がステントスキャフォールドを巻き込むように折り返された外側裏装材を備える生体適合性ステントの長手方向断面図。
【図7(a)】ステントスキャフォールドのメッシュを羊膜溶液で包み込むため、ステントスキャフォールドが回転している間にステントスキャフォールドに羊膜溶液を噴霧するノズルの概略側面図である。
【図7(b)】噴霧される間にマンドレル上にあるステントスキャフォールドの概略側面図である。
【図8】生体適合性ステントの長手方向断面を示す一組の断面図であり、(a)内側羊膜スリーブ;(b)2つの内側スリーブ;(c)内側及び外側羊膜スリーブ、及び(d)2つの同軸状ステントスキャフォールド間に挟まれた羊膜層を含む。
【図9】生体適合性ステントの長手方向断面を示す一組の断面図であり、羊膜組織がステントスキャフォールドメッシュの中まで封じることで、(a)外側コーティング;(b)内側コーティング;(c)内側及び外側コーティング、及び(d)2つの同軸状ステントスキャフォールド間の間隙を充填する羊膜充填材を形成している。
【図10】生体適合性ステントの長手方向断面を示す一組の断面図であり、羊膜組織がステントスキャフォールドを包み込むことで、(a)巻き付いた形の端部領域を有する内側及び外側コーティング;(b)コートされた形の端部領域を有する内側及び外側コーティング;及び(c)コートされた形の端部領域を有し、且つ羊膜組織がステントメッシュの中まで封じる内側及び外側コーティングを形成している。
【図11(a)】ステントスキャフォールドが内側にあり、且つ自由な支持されていない羊膜スリーブが中央にある羊膜シートの断面側面図である。
【図11(b)】羊膜シースがステントスキャフォールドの外面を被覆する二股ステントの断面側面図である。
【図11(c)】ステントスキャフォールドの端部分にある2つの羊膜スリーブの断面側面図であり、ステントスキャフォールドの中央部分は被覆されていない。
【図11(d)】血液又は流体の側枝潅流を可能にする側孔を備えた羊膜シートの側面図である。
【図11(e)】突合せ接合部によりチューブ状に丸められた図10(d)のシートの側面図である。
【図12】生体適合性ステントの長手方向断面を示す一組の断面図であり、(a)スリーブとして胎盤動脈又は静脈により被覆されたステントスキャフォールド、(b)内側羊膜スリーブ及び外側ポリマースリーブ;及び(c)外側羊膜スリーブ、内側ポリマースリーブ及び内側ポリマースリーブの内側にある内側羊膜スリーブを含む。
【図13(a)】拡張されていない状態及び拡張された状態のステントスキャフォールドの側面図である。
【図13(b)】圧縮された状態及び拡張された状態の自己拡張式(self expending)ステントスキャフォールドの側面図である。
【図14(a)】縫合糸を固定するための場所を提供するアイレットを端部及びステントメッシュに備えるステントスキャフォールドの側面図である。
【図14(b)】縫合糸固定用アイレットを有する長手方向バーをさらに備えるステントスキャフォールドの側面図である。
【図15】放射線不透過性マーカーを備えるステントの側面図である。
【図16(a)】自己拡張式ステントを送達するためのデリバリーカテーテルの平面図である。
【図16(b)】バルーン拡張型ステントを送達するためのバルーンカテーテルである。
【図17(a)】チューブ状に丸められる羊膜のシートを示す一組の図面であり、周方向の繊維主配向を示すチューブの側面図及び断面図を含む。
【図17(b)】チューブ状に丸められる羊膜のシートを示す一組の図面であり、長手方向の繊維主配向を示すチューブの側面図及び断面図を含む。
【図17(c)】チューブ状に丸められる羊膜のシートを示す一組の図面であり、長手方向と角度をなす繊維主配向を示すチューブの側面図及び断面図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載されるステントは、ステントが患者の天然組織との接触に対して改良された表面を提供するよう羊膜組織で修飾されたステントスキャフォールドを含む。本明細書に記載されるステントスキャフォールド修飾により、動脈、例えば冠動脈において使用されるとともに人体内の他の管腔においても使用される、羊膜組織が連係した生体適合性ステントがもたらされる。ステントスキャフォールドは、例えば、胎盤の羊膜嚢に由来する羊膜組織により修飾することができる。羊膜組織は抗原性が低い、又は全くない表面を提供し、従ってその組織は、内皮細胞などの患者の天然細胞との材料の定着に比類のない適切な材料を提供する。ステントは、一般的に体管を通じた流動を提供する一方で体管腔の開大を促進するように設計されるが、他のステント構造を同様に修飾することもできる。いくつかの実施形態において、ステントは略円筒形状を有し得る。ステントスキャフォールドは、得られるステント製品において修飾組織を支持する構造要素である。羊膜組織で修飾されたステントスキャフォールドによりステントの生体適合性が向上し、修飾されたステントの植込み後の再狭窄率が低下し、及び治療された血管区間の再内皮化(re−endothelization)が促進されるものと考えられる。いくつかの実施形態では、ステントスキャフォールドは、血管に対して露出している表面全てが羊膜組織と連係するように組織でコートされ得る。また、羊膜組織をステントスキャフォールドに取り付けるための望ましい処理及び加工方法が記載される。ステントの再内皮化の向上により、ステントに関連した血栓症の低減が、対応する臨床結果の改善と共に期待され得る。
【0011】
本明細書に記載されるステントは、体管の支持、移植、及び治癒が関わる治療において使用することができる。例えば、生体適合性ステントは、腹部大動脈瘤(AAA)の治療において、又は塞栓コイルとして使用することができる。加えて、いくつかの実施形態において、生体適合性ステントは、冠動脈及び静脈、末梢動脈及び静脈、腎血管、尿道及び尿管、胆管、気管、気管支管、食道管、頸動脈管、頭蓋内血管、神経血管、膣管、及び静脈系を含む生体管が関わる治療手技に使用することができる。いくつかの他の実施形態において、本明細書に記載される生体適合性ステントは、ステント再狭窄、及び血管閉塞の治療に使用することができる。いくつかの実施形態において、生体適合性ステントは、例えば、ステントを通じた流動を制限するようにステントがクリンプされている場合における左心耳(LAA)器具、経頚静脈性肝内門脈大循環短絡術(TIPS)、動静脈(A/V)グラフト、卵円孔開存症(PFO)の治療、動脈管開存症(PDA)の治療、心房中隔欠損症(ASD)の治療、及び心室中隔欠損症(VSD)の治療として使用され、又は適合され得る。生体適合性とは、本明細書で使用されるとき、患者への送達時に事実上非毒性で無菌であり、且つ血液への曝露時に事実上抗血栓性である材料を指す。
【0012】
胎盤組織は、2つの主要な膜成分である羊膜と絨毛膜とを含み、羊膜は、哺乳動物、例えばヒトの胎児を囲い込む羊膜嚢に関して絨毛膜より内側にある。層を図1に示す。本明細書に記載されるとおり、羊膜嚢の羊膜層は、絨毛膜から分離して直接使用することができる。分離した羊膜組織の上皮層を伴う側が一般的に表側と称され、一方、細胞外基質成分を伴う側が一般的に裏側と称される。或いは、羊膜層と絨毛膜層との双方を含む胎盤組織を使用して、ステントスキャフォールドと連係させる組織を作製することができる。胎盤組織のうち羊膜層を伴う側が一般的に表側と称され、一方、絨毛膜層を伴う側が一般的に裏側と称される。本明細書で使用されるとき、用語「羊膜組織」は、羊膜嚢の羊膜層、その一部分、又は羊膜層を含むか、若しくはそれに由来する任意の材料を指す。ステントスキャフォールドの被覆材又は裏装材として使用されるとき。羊膜組織の表側がステントスキャフォールドと反対側を向き得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、羊膜組織の裏側がステントスキャフォールドの側に向くことがより望ましいこともある。用語「胎盤組織」は、羊膜層、絨毛膜層、その一部分又はそれらの組み合わせなどの羊膜嚢の構成分を含む任意の材料を指す。一般に、胎盤組織の表側層がステントスキャフォールドと反対側を向くことが、一般的に好ましい構成である。本明細書に記載される用途には羊膜組織が特に望ましく、これは、羊膜組織が一般的に組織に損傷を与えることなく伸張し得るためであり、かかる伸張は、一般的に本明細書に記載されるとおりのステントスキャフォールドの展開に関連する。羊膜組織材料を含む縫合糸、フィラメント又はヤーンが織り上げられるか、編み組みされるか、又は編み上げられることにより組織ベースの布材が形成されてもよく、次にその布材を使用して、被覆材及び/又は裏装材などのステントスキャフォールドコーティングを形成することができる。羊膜組織の代替又は追加の材料として、小腸粘膜下層、心膜、胎盤動脈及び静脈を使用してステントスキャフォールドを修飾してもよい。いくつかの実施形態では、羊膜組織と併せてポリマー材料も同様に用いられ得る。
【0013】
本明細書に記載されるステントは、一般的に、ステントの骨組みを提供するステントスキャフォールドと、ステントスキャフォールドにより支持される組織材料とを含む。いくつかの実施形態において、組織は、ステントスキャフォールドと連係されるスリーブ等に形成することができる。スリーブ又はステントスキャフォールドと連係される他の構造を作製するために使用される羊膜組織は、生の(fresh)(架橋なし)であっても、架橋されていても、又は部分的に架橋されていてもよい。羊膜組織は、被覆材又は裏装材などの層状に形成されてステントスキャフォールドに取り付けられ得る。羊膜の被覆材又は裏装材は、機械的に取り付けられても(フック、リベット、ステープル)、接着結合されても、架橋されても、レーザー溶接されても、超音波溶接されても、高周波溶接されても、圧嵌めされても、ステントスキャフォールドと嵌合されてもよく、又はそれらが組み合わされてもよい。
【0014】
様々な生体管への留置には、略円筒形状のステントスキャフォールドが望ましいものであり得るが、用途によっては他の形状も好都合に使用することができる。特に、用途によっては、開大及び/又は流動の維持に使用するのではなく、流動を遮断することが望ましいこともある。従って、いくつかの実施形態において、ステントは流動を制限又は遮断するように、一端で、及び/又は両端の間でクリンプされるか、又はその他の方法で拘束され得る。閉塞する実施形態は、例えば、心臓の左心耳に嵌入させて心耳に至る血流を抑制する左心耳器具として望ましいものであり得る。クリンプされたステントは自己拡張式であってもよく、それにより放出されたステントが留置場所の形状に適合する一方、クリンプが器具の部分的又は完全に閉塞された構成を維持する。
【0015】
使用されるステントスキャフォールドは、自己拡張型であっても、又はバルーンなどの別の構成要素により拡張されてもよい。ステントスキャフォールドは、ステント形成に関する当該技術分野の広範な知識に基づき設計することができる。一般に、ステントスキャフォールドは患者体内でより拡がった形態に展開される。特定の目的のいくつかの実施形態において、ステントは、少なくとも部分的に閉塞されている血管の開大を促進するように設計された血管ステントである。かかる血管ステントは、最初の展開準備形態及びより大きい直径を有する展開された形態で略円筒形状である。羊膜組織は、他の種類の組織と比べて伸張性があり、従って羊膜組織は、引裂及び/又は組織に対する他の損傷を起こすリスクが少ないステントの展開により良好に適合させることができる。
【0016】
ステントスキャフォールドは、ポリマー材料、金属材料、又はポリマーと金属との組み合わせ材料から形成されてもよい。好適な材料は、特に、材料に過度の歪みを生じることなく構造の大幅な拡張に耐えることができるばね用金属を含み得る。好適な金属としては、例えば、チタン、コバルト、ステンレス鋼、ニッケル、鉄合金、コバルト合金、例えば、Elgiloy(登録商標)、コバルト−クロム−ニッケル合金、MP35N、ニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金、Nitinol(登録商標)、ニッケル−チタン合金、及びそれらの組み合わせが挙げられる。望ましい特性及び医療器具分野での経験に基づけば、好適な合成ポリマーとしては、特に、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステルテレフタレート(polyester teraphthalate)、ポリカーボネート、ポリスルホン、それらの他の共重合体及び混合物が挙げられる。非常に多数の血管ステント設計が公知であり、そうした設計を本明細書に記載されるステント用ステントスキャフォールドとしての使用に適合させることができる。代表的な血管ステントが、例えば、「Stent」と題されるNaguraらに対する米国特許出願公開第2009/0276036号明細書、「Intravascular Stent」と題されるJangに対する米国特許第7,326,241号明細書、及び「Stents, and Methods for Preparing Stents From Wires Having Hydrogel Coating Layers Thereon」と題されるVerhoevenらに対する米国特許第7,442,205号明細書に記載され、これらの3文献は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
ステントスキャフォールドはステントスキャフォールド本体のステントメッシュ又は端部にアイレットを有し、縫合糸を固定するための場所を提供し得る。或いは、ステントスキャフォールドは、縫合糸固定用のアイレットを含む長手方向バーを有してもよい。いくつかの実施形態において、ステントスキャフォールドは放射線不透過性マーカーを含んでもよく、これは、白金−イリジウム若しくは白金−タングステンから、又は放射線遮蔽材(radio−pacifier)、例えば、硫酸バリウム、三酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、タングステン粉末、又はタンタル粉末などをポリマーに加えて形成することができる。胎盤組織で修飾されたステントスキャフォールドから形成される生体適合性ステントは、カテーテル器具及び任意の関連するデリバリー用具を使用して送達され得る。自己拡張式生体適合性ステントについては、ステントは、体管内部に送達されるカテーテルに装填されると同時に被覆され得る。或いは、バルーンカテーテルを使用してバルーン拡張型修飾ステントが送達され得る。
【0018】
一般に、組織は、ステントスキャフォールドの内面、ステントスキャフォールドの外面、ステントスキャフォールドの端部又はその一部分をコートするようにステントスキャフォールドと連係させることができる。同様に、ステントスキャフォールドは開放された構造を有し得るため、ステントスキャフォールドを組織に埋め込むことでコートされたステントを形成することができる。いくつかの実施形態では、ステントスキャフォールドの表面全体及び両端をコートすることが特に望ましく、内面、外面及び端部をコートして、血管壁及び血液の双方を含めた生体組織との接触に特に望ましい表面を提供することが望ましいこともある。例えば、ステントスキャフォールドの端部は塞栓形成用の表面を提供することができ、従ってステントスキャフォールドの端部の被覆材が望ましいものとなり得る。ステント設計は、再狭窄を引き起こし得る炎症反応を回避することができる天然細胞の定着が表面により提供されることから、ステントを再狭窄の低減に関して安定させることができるものであり、且つ下流に移動し得ることで患者にとって対応するリスクを伴う栓子を生じさせ得る塞栓形成を誘発し得る露出した表面を低減することができるものでもある有効な設計を含む。
【0019】
ステントスキャフォールドと連係される組織層は、例えば、羊膜組織のシート、羊膜組織から作製された材料、例えば布材などから作製されてもよく、又は再構成組織が、液状羊膜組織溶液から噴霧によるか、浸漬コーティングによるか、若しくは電気泳動技術を使用するなどしてステントスキャフォールド上にコートされてもよい。液状羊膜組織溶液は、羊膜組織、例えば、化学的消化、酵素的消化、機械的破壊、又はそれらの組み合わせを介した羊膜組織から形成されてもよい。ステントスキャフォールドメッシュは平滑な内表面及び/又は外表面を提供するよう包み込まれ得る。加えて、羊膜組織のスリーブはまた、2つのステントスキャフォールド間に挟まれてもよい。羊膜組織スリーブを挟むステントスキャフォールドは、ステントメッシュを埋め込む他の羊膜組織をさらに有し得る。いくつかの実施形態において、ステントスキャフォールドは羊膜組織被覆材の両端で被覆材に包み込まれ、一方、被覆材の中心はステントスキャフォールドの支持がない状態であり得る。特別な流体潅流を可能にするため、ステントスキャフォールドは、ステントスキャフォールドの端部分の双方を被覆する2つの外側組織スリーブを有し、ステントスキャフォールドの中心部分を通じて枝管に至らせる潅流を可能にし得る。また、二股ステントスキャフォールドを使用して二股生体適合性ステントを作製することもできる。複数の羊膜組織層を使用してステントスキャフォールドを被覆又は裏装してもよい。被覆又は裏装されたステントスキャフォールドを羊膜組織でさらにコートしてもよい。或いは、コートされたステントスキャフォールドを羊膜組織でさらに被覆又は裏装してもよい。
【0020】
被覆材及び/又は裏装材の形成に関して、羊膜組織は、例えば長手方向の継目を備えたチューブ状に丸めることができる。チューブは、被覆材として使用してステントスキャフォールドの外面を被覆するか、又は裏装材として使用してステントスキャフォールドの内面を裏装することができる。いくつかの実施形態では、ステントスキャフォールドの外面及び内面の双方が被覆及び裏装されてもよく、カフ又は他の組織構造を使用してステントスキャフォールドの端部を被覆することができる。作製される羊膜シートは、血液又は流体の側枝潅流を可能にする側孔を有し得る。これは、ステントが分枝血管に隣接して留置される場合に望ましい。外面被覆材又は内側裏装材は、或いは、ステントスキャフォールドの端部を巻き込むように被覆材又は裏装材を折り返してカフを形成することによりステントスキャフォールドに取り付けられてもよい。組織チューブの被覆材又は裏装材の長手方向の継目は、突合せ継目で継ぎ合わされても、又は重ね継目で継ぎ合わされてもよい。継目は、縫合、接着、超音波溶接、レーザー溶接、サーマルボンディングにより、又はクリップ、ステープル、釣り針状バーブ、リベットを使用して接合され得る。継目の形状は、ジグザグ形、正弦波形、円周上のらせん形及び四角形切欠き状であってもよい。継目は雌雄嵌合型接合部を有してもよく、又は一体につなぎ合わされる一連のベルト及びスロットを有してもよい。
【0021】
組織被覆材又は裏装材は、丸形、楕円形、四角形又はスロット若しくは他の好適な形状の孔を含み得る。孔は平均直径が5ミクロン〜1000ミクロンであってもよい。孔は組織内植率を高めることができる。また、孔には、好適な用途に対してヘパリン、タキソール、ラパマイシンなどの薬物又は他の好適な薬物を搭載する(loaded with)ことができる。羊膜組織は幹細胞が豊富であってもよい。幹細胞は、器具の内側ルーメンに対する内皮細胞の成長を促進し得る。羊膜組織は2つの方法、すなわち生細胞を含む方法及び生細胞を含まない方法で使用することができる。羊膜組織の上皮層は取り除かれてもよく、又は被覆材若しくは裏装材に対して無傷のまま残されてもよい。
【0022】
それに加えて又は代えて、ステントスキャフォールド又は被覆若しくは裏装されたステントは、組織溶液でコートしてもよい。胎盤組織、例えば羊膜組織を、化学的、酵素的又は機械的手段により分散させて溶液を形成することができる。組織溶液は、ステントスキャフォールド又は被覆若しくは裏装されたステントにコート若しくは噴霧することができる。噴霧が実施される間、スキャフォールドを回転させてもよい。いくつかの実施形態において、羊膜溶液による噴霧を受ける間、ステントスキャフォールドはマンドレル上に装填され得る。羊膜溶液を接着手段としてさらに使用して、羊膜被覆材又は裏装材をステントスキャフォールドに取り付けてもよい。いくつかの実施形態において、羊膜の内側スリーブで修飾されたステントスキャフォールドは、本明細書に記載される羊膜溶液から作製された羊膜の外側コーティングをさらに有し得る。
【0023】
一般に、特定のステント構造に関わらず、組織修飾されたステントは、一般的に、従来のステントのステント展開のために開発された技法を適合させることにより展開することができる。従って、例えば組織修飾されたステントは、デリバリーカテーテル上の収縮しているバルーンに被せて配置され得る。位置決め後、バルーンを膨張させてステントを拡張させることができる。必要であればバルーンをさらに数回膨張させて、所望の程度まで拡張したステントをもたらすことができる。バルーンを収縮させた後、カテーテルを取り出すことができ、ステントが展開された形態で体管内に残り得る。さらに、自己拡張式ステントがシースから展開されてもよい。組織修飾されたステントは展開準備形態でシース内に配置することができる。シースがステントを被覆している状態から引き抜かれ、それによりステントは展開された形態に自己拡張することができる。シースが体管から引き抜かれると、展開されたステントが体管内の所定位置に残り得る。本明細書に記載される羊膜組織はいくつかの利点を提供する。ステントの送達に関して、羊膜組織は、適度に大きい伸び量であっても一般的に裂けたり又は割れたりすることなく組織が伸びることができるという利点を有する。従って、組織修飾されたステントは、一般的に修飾されていないステントと同様に展開することができる。
【0024】
生体適合性ステントの構造
いくつかの実施形態において、羊膜組織は、ステントスキャフォールド用の被覆材又は裏装材としてチューブ状に丸めることができる。図2(a)に示されるとおり、羊膜組織のシート101はチューブ102の形に丸められ、チューブの側面図及び断面図に突合せ継目103が示される。羊膜嚢から分離された羊膜組織は約0.002インチ厚である。この層厚さにより、2つ以上の羊膜組織層を使用し、それでもなお生体内用途に適切な厚さを満たすことが可能となる。用途によっては被覆材及び/又は裏装材の多層構成が有利なこともあり、これは、羊膜組織全体の厚さの増加により組織強度が増加し、且つ易操作性が高まるためである。いくつかの実施形態において、被覆材及び/又は裏装材は1層〜25層、別の実施形態では約2層〜約15層、及びさらなる実施形態では約2層〜約10層を含み得る。多層状の組織が用いられる場合、少なくとも1つの層が羊膜組織である限り、それらの層の一部は他の供給源由来の組織を含んでもよいが、しかしながら組織層の全てについて羊膜組織を使用することが望ましいものであり得る。他の種類の組織については以下に記載される。いくつかの実施形態において、羊膜組織は積層体の一方の表面に置かれてもよく、別の実施形態では、積層体の双方の表面に羊膜組織が置かれ得る。いくつかの実施形態において、裏装材、被覆材又はそれらの組み合わせの平均組織厚さは、約0.001インチ厚〜約0.05インチ厚、別の実施形態では約0.002インチ厚〜約0.03インチ厚、及びさらなる実施形態では約0.002インチ厚〜約0.02インチ厚であり得る。例えば図2(b)に示されるとおり、長い羊膜104が、突合せ継目106を有する多層状の羊膜組織を備えたチューブ105の形に丸められてもよい。層は、接着、縫合、又は機械的取付け手段により一体に留めることができる。当業者は、上記の明示的な範囲内における別の範囲の層数及び厚さが企図され、それらが本開示に含まれることを認識するであろう。
【0025】
使用される羊膜組織はレーザーでアブレーション処理するか、又は穿孔器(hold punch)若しくは他の適切な工具により機械的に切断して組織に孔を開けることができる。孔は任意の好適な形状又はサイズを有してもよく、例えば、約5ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の平均直径、別の実施形態では約10ミクロン〜約500ミクロンの範囲の平均直径であり得る。当業者は、上記の明示的な範囲内における別の範囲の平均直径が企図され、それらが本開示に含まれることを認識するであろう。ステントスキャフォールドに対する被覆材又は裏装材として使用される場合、羊膜組織に孔が存在することにより体管組織の内植を増加させ、従って天然細胞による定着を促進することが可能となり得る。加えて、所望の治療用途に対してヘパリン、パクリタキセル、ラパマイシンなどの薬物、又は他の好適な薬物を羊膜組織の孔の内部に装填し、体管内部に放出させることができる。いくつかの実施形態において、羊膜組織は、ステントスキャフォールドの被覆又は裏装に使用される場合、−60℃〜−100℃の温度で凍結保存されていないものであり得る。他の実施形態において、羊膜は、ステントスキャフォールドの被覆又は裏装に使用される前に凍結保存されてもよい。凍結保存はいくつかの細胞型についての細胞培養物の保存に使用することができ、組織保管用に提案されているが、例えば、弾性の少なくとも一部が失われるなど、凍結保存によって組織の機械的特性が望ましくない形で変化し得る。生細胞を含む組織については、凍結保存は細胞死をもたらし得る。従って、いくつかの実施形態では、−55℃を上回る温度、さらなる実施形態では約−30℃より高い温度、他の実施形態では約−20℃〜約10℃より高い温度で組織を保管することが望ましいこともある。生細胞を含む組織についてのいくつかの特殊な保管技法を以下にさらに記載する。当業者は、上記の明示的な範囲内における別の範囲の保管温度が企図され、それらが本開示に含まれることを認識するであろう。
【0026】
或いは、当該技術分野において公知の羊膜の縫合糸、フィラメント、又はヤーンを使用して図2(c)に示されるとおりの羊膜布材108を作製することができる。次に羊膜布材を使用して、羊膜組織と同様にステントスキャフォールド用の被覆材又は裏装材を形成することができる。羊膜布材の1つ又は複数の層を使用して、上記に記載したとおり所望の全厚を実現することができる。
【0027】
羊膜チューブの継目、例えば長手方向の継目、カフ又は他の組織構造は、機械ベース、電子ベース、接着剤ベース、エネルギーベースの方法、又はそれらの組み合わせ、例えば、縫合、接着、クリッピング、ステープル打ち、リベット打ち、超音波溶接、レーザー溶接、サーマルボンディング、圧嵌め、ステントスキャフォールドとの嵌合、又はそれらの組み合わせにより接合することができる。例えば、これらの手順は好適な医療器具で実施することができる。例えば、縫合は縫合糸で実施することができ、接着は外科用接着剤で実施することができ、ステープル打ち及びクリッピングは外科用ステープル及びクリップで実施することができる。継目は図2(a)に示されるとおりの突合せ継目であってもよく、又は図3(a)に示されるとおりの重ね継目であってもよい。図3(a)を参照すると、羊膜組織110がチューブ111の形に丸められ、チューブの側面図及び断面図に重ね継目109が示される。継目は様々な形態を有し得る。例えば、継目は、図3(b)、図3(c)、及び図3(d)にそれぞれ示されるとおり、V字形継目112、正弦波形継目113、又は円周上のらせん形継目114であってもよい。或いは、継目は、図4(a)、図4(b)、図4(c)、及び図4(d)にそれぞれ示されるとおり、鋸歯形継目115、四角形切欠き状継目116、雄型タブ117と雌型タブ118とが互いに嵌合した継目119、又は一連のベルト121とスロット120とが接合された継目122であってもよい。図3(b)〜図3(d)及び図4(a)〜図4(d)に示される継目は突合せ継目であるが、これらの代替的な継目の選択肢に対して同様に重ね継目の形態を適用することもできる。
【0028】
羊膜組織はステントスキャフォールドに様々な方法で取り付けられ得る。図5(a)を参照すると、羊膜チューブ123をステントスキャフォールド124上に摺動させることにより、羊膜組織に被覆されたステント125が形成される。図5(b)は、羊膜層123がステントスキャフォールドメッシュ124を被覆しているステント125の長手方向断面の拡大図である。被覆材又は裏装材は、縫合糸、ステープル、フック、リベット又はそれらの組み合わせなどの機械的な固着手段によってステントに取り付けられてもよい。被覆材又は裏装材はまた、ステントに接着結合されてもよい。例えば、図6(a)、図6(b)、図6(d)、及び図6(e)は、羊膜被覆材又は裏装材をステントスキャフォールドに取り付けるいくつかの方法を示す。図6(a)を参照すると、生体適合性ステント126は、羊膜被覆材層128をステントスキャフォールド129に固定する釣り針状バーブ127を含む。図6(b)を参照すると、生体適合性ステント130は、羊膜被覆材層132をステントスキャフォールド133に固定するステープル131を含む。図6(d)は、ステントスキャフォールド136の端部を巻き込むように羊膜組織を折り返すことにより羊膜135で裏装された生体適合性ステント134の長手方向断面の拡大図である。図6(e)は、ステントスキャフォールド274の端部を巻き込むように羊膜組織を折り返すことにより羊膜272で裏装された生体適合性ステント270の長手方向断面の拡大図である。ステントがクリンプされているか、又は他の方法で拘束されていることにより部分的又は完全に閉塞した構造を形成するステントの実施形態についても、同様の組織構造の形成方法を適合させることができる。図6(c)を参照すると、内側羊膜組織裏装材278がステントスキャフォールド280の端部を巻き込むように折り返された生体適合性ステント276が、クリンプ282により中央でクリンプされている。所望の形状及び機能に応じて、ステントスキャフォールドは異なる形で裏装若しくは被覆され、及びクリンプされてもよい。
【0029】
また、化学的、酵素的、又は機械的手段を使用して羊膜組織を消化することにより羊膜溶液を形成してもよい。ステントスキャフォールドは、スプレーコーティング(spay coating)、浸漬コーティング又は電気泳動手段によって羊膜組織溶液でコートされ得る。羊膜コーティングは平滑であってよく、又はステントスキャフォールドの表面にコルゲート面を提供してもよい。図7(a)を参照すると、ステントスキャフォールドを回転させる間に、ノズル137を使用して羊膜の溶液(liquid solution)がステントスキャフォールド138に噴霧される。ステントスキャフォールド138のメッシュが羊膜コーティング139でコートされることが示される。図7(b)に示されるとおり、回転マンドレル140を使用して噴霧される間のステントスキャフォールドが支持される。或いは、ステントスキャフォールドは、ステントスキャフォールドを羊膜の溶液に浸漬することにより浸漬コートし、その後乾燥させて羊膜コーティングを形成してもよい。ステントスキャフォールドが予め羊膜被覆材又は裏装材で被覆され、その後羊膜コーティングでさらに被覆されてもよい。また、羊膜溶液を接着剤として使用することにより羊膜をステントスキャフォールドに固定してもよい。
【0030】
図8〜図11は、材料の組み合わせを使用した羊膜組織によるステントスキャフォールドの様々な修飾方法を開示する。図8(a)を参照すると、ステントスキャフォールドメッシュ143が羊膜層142で裏装されるステント141の長手方向断面の拡大図が示される。図8(b)には、ステントスキャフォールドメッシュ145が2つの羊膜層146で裏装されるステント144の長手方向断面の拡大図が示される。図8(c)には、ステントスキャフォールドメッシュ148が2つの羊膜層149の間に挟まれるステント147の長手方向断面の拡大図が示される。図8(d)には、羊膜層151が2つのステントスキャフォールドメッシュ152の間に挟まれるステント150の長手方向断面の拡大図が示される。いくつかの実施形態において、ステントスキャフォールドは生体適合性材料によって完全に封じ込まれる。例えば、図9(a)には、平滑な内表面及び外表面を提供するよう外側羊膜被覆材154がステントスキャフォールドメッシュ155の中まで封じる生体適合性ステント153の長手方向断面が示される。図9(b)には、平滑な内表面及び外表面を提供するよう内側羊膜被覆材157がステントスキャフォールドメッシュ158の中まで封じる生体適合性ステント156の長手方向断面が示される。図9(c)には、ステントメッシュ162が内側羊膜裏装材160と外側羊膜被覆材161との間に挟まれ、160及び161の双方がステントメッシュ162の中まで封じるステント159の長手方向断面が示される。図9(d)には、羊膜164が2つの同軸状のステント165と166との間に挟まれ、羊膜164がステントメッシュ165及び166の中まで封じるステント163の長手方向断面が示される。
【0031】
ステントスキャフォールドを羊膜組織に封じ込める方法は、図10(a)〜図10(c)に例示するものなど種々ある。具体的には、図10(a)には、巻き付いた形の端部領域を有する羊膜組織の内側及び外側コーティングを形成するように羊膜組織303がステントスキャフォールド305を包み込む生体適合性ステント301の長手方向断面図が示される。図10(b)には、コートされた形の端部領域を有する羊膜組織の内側及び外側コーティングを形成するように羊膜組織309がステントスキャフォールド311を包み込む生体適合性ステント307の長手方向断面図が示される。図10(c)には、コートされた形の端部領域を有し、且つ羊膜組織がステントメッシュの中まで封じる羊膜組織の内側及び外側コーティングを形成するように羊膜組織315がステントスキャフォールド317を包み込む生体適合性ステント313の長手方向断面図が示される。
【0032】
図8(d)及び図9(d)に示される二重同軸ステントスキャフォールド構成は、特別な技術的利点を有し得る。例えば、二重同軸ステントは、それが展開される体管に対してより強力な支持を提供することができ、及びステントそれ自体が追加のアンカーなしに羊膜組織を所定位置に保持することができ、但し必要であれば追加のアンカーが使用されてもよい。また、他の代替的なステント構成を使用して所望の特性を実現することもできる。例えば、図11(a)は羊膜グラフト167の長手方向図を示し、これはステントスキャフォールドの左端168及び右端169を被覆する羊膜被覆材170を含む。被覆材170の中心部分はステントスキャフォールドによって支持されていない。図11(b)は二股生体適合性ステント171の長手方向断面を示し、これは、羊膜組織173で被覆された二股ステントスキャフォールドメッシュ172を含む。図11(c)は羊膜グラフト174の長手方向図を示し、これは、スキャフォールドの両端がそれぞれ羊膜組織断片176及び177で被覆され、且つステントスキャフォールドの中心部分が被覆されておらず、それによりステントの中心部分を通じた、すなわち分枝血管に至る潅流が可能であるステントスキャフォールド175を含む。或いは、分枝潅流の要求に応えるため、図11(d)に示されるとおり羊膜組織179に側孔178が切り抜かれてもよい。羊膜組織179がチューブ180の形に丸められると分枝孔181が設けられ、分枝孔を通じた潅流の流れが可能となる。図11(a)〜図11(e)における実施形態並びに本明細書に記載される他の実施形態は、組織カフ及びステントスキャフォールドが羊膜組織で完全に被覆されるような別の組織層において適合させることができる。
【0033】
羊膜組織の延伸能力は、主に組織中のコラーゲン含有分によってもたらされる。コラーゲンの延伸能力は、主に一方向性であることが知られている。従って羊膜組織の延伸能力の方向は、種々のステントスキャフォールド特性及び用途上の必要性に基づき調整することができる。一実施形態において、羊膜組織の延伸能力は、ステントスキャフォールドの周方向に方向付けることができる。別の実施形態において、羊膜組織の延伸能力は、ステントスキャフォールドの長手方向に方向付けることができる。さらに別の実施形態において、羊膜組織の延伸能力は、ステントスキャフォールドの長手方向に対して角度をなして方向付けることができる。いくつかの実施形態において、羊膜シート片がシートの端部に関してバイアスを有する延伸方向を有するとき、羊膜シートがステントと「バイアス」を有して連係される場合に羊膜組織はより良好に適合し得る。一実施形態において、バイアスは45度である。図17(a)を参照すると、チューブ252の形に丸められる羊膜のシート250が一組の図面に示され、チューブの側面図及び断面図に周方向の繊維主配向254が示される。図17(b)は、チューブ258の形に丸められる羊膜のシート256の一組の図面を示し、長手方向の繊維主配向260を示すチューブの側面図及び断面図を含む。図17(c)は、チューブ264の形に丸められる羊膜のシート262の一組の図面を示し、長手方向と角度をなす繊維主配向266を示すチューブの側面図及び断面図を含む。
【0034】
生体適合性材料
様々な生体適合性材料を使用してステントスキャフォールドを修飾することができる。例えば、天然由来の生体適合性材料としては、例えば、哺乳動物供給源由来の羊膜組織、I〜VI型コラーゲン、小腸粘膜下組織、心膜組織、胎盤組織、胎盤静脈又は動脈又はそれらの組み合わせが挙げられる。特に、羊膜組織は、この組織に関連した抗原提示性が天然で極めて低いこと、並びにこの組織は、一般的に機械的損傷を回避しながら伸張可能な性質をもつことから、特に望ましいものであり得る。天然由来の適合性材料に加えて合成の生体適合性材料を使用することができ、例えば、シリコーン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)、ポリウレタン、シリコーンポリウレタン共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、Gore−Tex(商標)(ポリテトラフルオロエチレン、又はePTFE)、Kevlar(商標)(パラアラミド)、Spectra(商標)及びDyneena(商標)などの超高分子量ポリエチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
羊膜組織
胎盤組織の羊膜嚢は、絨毛膜と羊膜との2つの組織層からなり、羊膜組織は羊膜嚢の最内側層である。図1に示されるとおり、羊膜組織は、単一の上皮層と、厚い基底膜と、無血管性の間質とから構成される。羊膜層は弾性が高く、且つ免疫原性が低いことが知られ、従って望ましい天然由来の生体適合性材料となる。免疫原性のリスクが低いことは、本明細書に記載される生体適合性ステントの実施形態の重要な特性である。羊膜組織はまた、天然細胞、例えば血管の表面を構成する内皮細胞及び/又は内皮細胞の下側の血管基質を占める線維芽細胞による定着に適した表面を提供することができることからも望ましい。胎盤組織も同様に使用することができ、例えば、羊膜成分が天然組織に曝露されるように位置決めされる。胎盤組織は、必要に応じて、羊膜組織表面を提供する一方でより大きい厚さを提供することができる。
【0036】
クラスIヒト白血球抗原(HLA)−A、−B、及び−Cは、ペプチド抗原をT細胞に提示する(present)ことにより特異的免疫応答を誘発する。ドナーとホストとの間のランダムな移植は、HLA−A、B又はC抗原の一致を生じる可能性が低いため、ミスマッチが移植片拒絶反応の主な原因となる。羊膜組織ではHLA−A、−B、及び−C遺伝子は下方制御される。対照的に、HLA−Gは羊膜組織で発現する。HLA−Gは、NK細胞及びマクロファージに存在する阻害性受容体に対するリガンドとして作用することにより、免疫寛容の誘発に関わると考えられている。さらに、羊膜上皮細胞(AEC)もまた細胞表面上にHLA−A、−B、−D、及び−DR抗原を発現せず、しかしその表面上にHLA−Gは発現する。従ってAECを含む羊膜組織は免疫原性が低い。
【0037】
羊膜嚢の羊膜層は絨毛膜から分離して単独で使用することができ、或いは羊膜層又は絨毛膜層の双方を、ステントスキャフォールドを修飾する材料として共に使用することができる。羊膜嚢の絨毛膜層と羊膜層との接続は強力ではなく、従って鈍的剥離などの機械的方法により分離させることができる。分離した羊膜層は直接使用してもよく(生の(fresh))、又はステントスキャフォールドの修飾に使用する前に再構成してもよい。胎盤組織は病院などの出産に関わる施設から入手することができる。胎盤は一般的に廃棄され、使用のために胎盤を回収し得る。胎盤は、本明細書に記載される組織に加工するため、適切に保管及び輸送され得る。特に、組織は輸送のため妥当な無菌条件下に適切に水和され、冷蔵され得る。適切な組織処理手順は当該技術分野において公知であり、本明細書に記載される目的に適合させることができる。
【0038】
羊膜組織の上皮層は取り除かれても、又は無傷のまま残されてもよい。羊膜組織は、化学修飾されるか、放射線処理されるか、又は熱処理され得る。例えば、羊膜組織は赤外線処理により組織を徐々に加温することができ、又は穏やかな条件下で紫外線処理により組織の表面を滅菌することができる。最も一般的な化学修飾は、羊膜組織の架橋又は部分的架橋を含む。組織の架橋により材料の機械的安定化をもたらすことができる。しかしながら、架橋は、処理された組織中の任意の生細胞に有害であり得る。グルタルアルデヒド、トリグリシジルアミン、又はEDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)などの架橋剤を使用することができる。グルタルアルデヒドは、ヒトに植え込まれる生物補綴組織の形成において広く使用されている。カップリング剤及び/又はカップリング促進剤を伴う生物補綴組織のポリアミンによる生体内架橋/安定化について、参照により本明細書に組み込まれる「Variably Crosslinked Tissue」と題されるGirardotらに対する米国特許出願公開第2006/0159641号明細書にさらに記載されている。加えて、参照により本明細書に組み込まれる「Drug-Eluting Stent Having Collagen Drug Carrier Chemically Treated with Genipin」と題されるSungらに対する米国特許第7,351,421号明細書に記載されるとおり、血管ステントにおいては、患者の脆弱プラークを治療するためのコラーゲン架橋剤/安定化剤としてゲニピンが使用されている。トリグリシジルアミン(TGA)による架橋組織の特性については、Van Wachem PB, Brouwer LA, Zeeman R, et al. J Biomed Mater Res 2000; 53(1): 18-27及びConnolly JM, Alferiev I, Clark-Gruel JN, et al. Am J Pathol 2005; 166(1): 1-13(双方とも参照により本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。
【0039】
羊膜組織は、生細胞を含み、又は生細胞を含まず使用することができる。羊膜組織に存在する幹細胞は、生体適合性ステントの内側ルーメンにおける内皮細胞の成長を促進し得る。例えば、生体適合性ステントを植込み位置まで送達するとき、ステントの植込み前又はステントの植込みと同時に植込み場所の状態を整えるか、又はそこに傷害を与えることが望ましいこともある。天然組織が傷害されると、羊膜組織の取込み又は治癒の加速がもたらされるはずである。羊膜組織の架橋程度を用いて羊膜組織の吸収速度を制御することができる。非架橋組織は吸収がより速い。必要であれば、羊膜組織にはさらに幹細胞が播種されてもよい。
【0040】
縫合糸、フィラメント、又はヤーンは羊膜組織に由来してもよく、羊膜の縫合糸、フィラメント、又はヤーンを織り上げるか、編み組みするか、又は編み上げることによる羊膜布材の作製に使用することができる。いくつかの実施形態において、羊膜組織は、例えば組織の細長片を切断することによってフィラメント、ヤーンなどに機械的に形成することができる。次にフィラメント又はヤーンは布材などに加工することができる。羊膜布材は、用途上の必要性に基づき、所望の厚さ、強度、延伸能力、及び透過性に製造することができる。羊膜の縫合糸、フィラメント、又はヤーンと併せて生体適合性ポリマー及び金属などの他の材料を使用して布材を作製することにより、所望の特性を実現してもよい。
【0041】
羊膜組織の最上層は、一般的に羊膜上皮細胞(AEC)の単一層を含む。AECは、Niknejadらによって“Properties of the amniotic membrane for potential use in tissue engineering”, European Cells and Materials Vol. 15, 2008, pages 88-99(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるとおり、フィーダー層を必要とすることなく幹細胞様の特性を有することが報告されている。Niknejadによれば、AECは個別で使用するために単離することができ、又は無傷の羊膜組織から剥がし取って剥脱羊膜組織を形成することができる。いくつかの実施形態において、使用される羊膜組織はAECを含み得る。他の実施形態において、AECは羊膜組織から剥がし取られ、剥脱羊膜組織が使用される。さらなる実施形態において、AECは、羊膜の膠質性部分の全て又は一部分が剥がし取られて羊膜組織を形成し、使用される。
【0042】
可溶化羊膜組織
羊膜組織はまた、化学的、酵素的、機械的、又はそれらの組み合わせによる手段を使用して可溶化されることにより羊膜溶液を形成することもできる。例えばVoytik-Harbinらは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,147,871号明細書において、腸粘膜下層を消化するための酵素的消化プロトコルを開示している。羊膜溶液もまた、同様の酵素的消化を使用して形成することができる。単離された羊膜組織は、典型的には低張液で十分にリンスすることにより、羊膜組織となお結合している任意の細胞が溶解され、細胞分解生成物が除去される。可溶化形態の羊膜を生成するため、羊膜組織は、羊膜組織のコラーゲン成分を実質的に破壊することなく羊膜組織を可溶化する崩壊剤で処理される。一実施形態において、羊膜組織は、羊膜組織構造成分の少なくとも一部分を加水分解し、且つ羊膜の加水分解物を生成するのに十分な所定の時間にわたり1つ又は複数の酵素で処理される。羊膜組織は、羊膜を酵素的に消化する前に、回収した羊膜組織を引裂、切断、破砕、又は剪断することにより微細片化されてもよい。より詳細には、羊膜組織は、高速ブレンダーで剪断するか、又は凍結若しくはフリーズドライ状態の羊膜組織を破砕することによって微細片化され、次に材料を凍結乾燥させることにより約0.1〜約1.0mmのサイズ範囲の粒子を有する粉末を生成することができる。後に羊膜粉末を水又は緩衝生理食塩水で水和させることにより、液体又はペースト様の稠度のアミノ流体を形成することができる。一実施形態において、羊膜組織は、液体窒素下において産業用ブレンダーで羊膜組織を凍結して微粉砕することにより微細片化される。いくつかの実施形態において、微細片化又は微粉化された羊膜組織は、さらなる処理なしにステントスキャフォールドの修飾に直接使用することができる。流体化した形態の腸粘膜下層組織の調製については、「Fluidized Intestinal Submucosa and its use in an Injectable Tissue Graft」と題されるBadylakらに対する米国特許第5,275,826号明細書(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)にさらに記載され、及びこの文献の教示は流体化羊膜組織の調製に適合させることができる。
【0043】
羊膜組織の酵素的消化は、内因性羊膜コラーゲン繊維の自己組織化能を維持する条件下で行われる。使用される酵素の濃度は、使用される特定の酵素、消化させる羊膜組織の量、所定の消化時間、反応の温度、及び最終産物の所望の特性に基づき調整される。一実施形態において、約0.1%〜約0.2%の酵素(例えばペプシン)が添加され、消化は4℃で72時間行われる。しかしながら、消化は4〜37℃の範囲にわたる任意の温度で行うことができ、対応して消化時間は2時間〜180時間で調整することができる。一般に、全酵素に対する(水和した)羊膜組織の濃度の比は約25〜約125の範囲であり、より典型的には比は約50であり、消化は4℃〜37℃で24時間〜72時間行われる。当業者は、上記の明示的な範囲内における別の範囲の酵素濃度及び処理時間が企図され、それらが本開示に含まれることを認識するであろう。
【0044】
羊膜組織を可溶化するために使用される酵素又は他の崩壊剤は、ステントスキャフォールドの修飾に使用する前に除去又は不活性化され得る。また、任意の崩壊剤、特に、組織の保管中も存在して活性を保つ酵素は、溶液の組成及び潜在的に特性を変化させ得る。ペプシンなどの酵素は、プロテアーゼ阻害薬、中性pHへのシフト、0℃未満への温度降下、熱失活により不活性化するか、又は分画(fractionation)による酵素の除去を介することができる。これらの方法の組み合わせを利用して所定のエンドポイントでアミノ組織の消化を停止させてもよく、例えば羊膜組織は、直ちに凍結して後に分画することにより、羊膜組織の消化を制限することができる。
【0045】
羊膜組織は、羊膜成分の加水分解物を生成するのに十分な時間にわたり酵素的に消化される。典型的には羊膜組織は一つの酵素で処理されるが、しかしながら羊膜組織を酵素の混合物で処理して羊膜組織の構造成分を加水分解し、分子量が低減した加水分解羊膜成分を複数有する加水分解物を調製してもよい。消化時間の長さは用途に応じて異なり、消化は羊膜組織が完全に可溶化されるまで延長することができる。いくつかの実施形態において、羊膜組織は部分的に可溶化され、加水分解された羊膜成分と加水分解されていない羊膜成分とを含む羊膜消化組成物が生成される。
【0046】
一実施形態において、消化組成物は、加水分解されていない羊膜成分の少なくとも一部を取り除くためさらに操作される。例えば、加水分解されていない成分は、遠心によって加水分解された部分から分離することができる。或いは、ろ過などの、当業者に周知されている他の分離技法が本発明において使用されてもよい。従って、部分的に可溶化された羊膜は、ろ過されるか、又は遠心に供されることにより消化組成物の不溶部分が取り除かれ、ひいては羊膜組織の実質的に一様な加水分解物を形成し得る。最終溶液のイオン強度、pH、及び分子カットオフは、可溶化された羊膜がステントスキャフォールドの修飾に使用され得る前に調整される必要があり得る。可溶化羊膜組織又はこのようにして形成された羊膜組織は保管のため凍結乾燥することができる。凍結乾燥した羊膜組織は再構成した後、ステントスキャフォールドを修飾する好適な材料として使用することができる。羊膜チューブ又はシートもまた羊膜溶液から形成することができる。
【0047】
可溶化羊膜組織は羊膜溶液又は羊膜懸濁液を形成することが可能であり得る。本明細書で使用される用語「可溶化羊膜組織」は、溶液形態及び懸濁液形態の双方の羊膜を指す。浸漬コーティング法及び噴霧法の他にも、電着を含む様々な方法を使用してステントスキャフォールドを可溶化羊膜組織でコートすることができる。可溶化組織の電着は、例えば、上記の米国特許第5,275,826号明細書、及び「Stent With Collagen」と題されるBuirgeらに対する米国特許第6,391,052号明細書(その双方とも参照により本明細書に組み込まれる)に一般的に記載されている。
【0048】
他の生体適合性材料
生体適合性材料としては、羊膜組織又は胎盤組織に代えて、又はそれと併せて、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、又はウマを供給源とする小腸粘膜下層及び心膜を使用することができる。異種移植片組織は使用前にグルタルアルデヒドなどにより架橋することで、組織の所望の機械的完全性を維持しながら細胞を死滅させ、より極度の拒絶反応を取り除くことができる。加えて、絨毛膜組織、胎盤動脈又は静脈を使用してもよい。例えば、図12(a)は、胎盤動脈又は静脈184で裏装されたステントスキャフォールドメッシュ183を含む生体適合性ステント182の長手方向断面図を示す。いくつかの実施形態において、ポリエステル、例えばDACRON(登録商標)などの材料を、羊膜組織の支持体として使用することができる。
【0049】
生体適合性ポリマーも同様に、ステント支持体又はその一部の被覆材として使用することができる。例えば、図12(b)は、ステントスキャフォールド186と、内側羊膜裏装材187と、ポリマー布材から作製された外側被覆材188とを備えた生体適合性ステント185の長手方向断面を示す。ポリマー布材は、一般的に、上記の材料の節に列挙されるポリマー材料のいずれから作製されてもよい。布材は、織布、不織布、編組されたもの、又は編み上げられたものであり得る。布材スリーブは継目なしであっても、又は継目を有してもよい。布材は、縫製、フック、バーブ、及び縫合糸などの機械的手段によりステントに取り付けられてもよい。布材はまた、高周波溶接、超音波溶接、サーマルボンディング、レーザー溶接又は接着結合によりステントに取り付けられてもよい。一実施形態において、ポリマー布材は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含む。図12(c)は、ステントスキャフォールド190がポリマー布材191で裏装された生体適合性ステント189の長手方向断面を示す。次にポリマー布材層191が羊膜裏装材192で裏装されている。ステントスキャフォールド190の外面は外側羊膜被覆材193で被覆されている。内側羊膜層及び布材層は、さらに接着又は縫製により一体に固定されてもよい。一実施形態において、ポリマー布材はePTFEを含む。
【0050】
ステントスキャフォールド
血管ステント用途について、ステントスキャフォールドは従来の血管ステントからの構造要素を組み込み得る。特に、血管ステントは、より低いプロファイルの送達形態から適切に展開して拡張した展開形態となるよう設計され得る。修飾されたステントは、一般的に、約2mm〜約50mm、別の実施形態では約2.5mm〜約25mm、及び他の実施形態では約3mm〜約10mmの範囲の拡張した直径を有することができる。また、修飾されたステントは、約3mm〜約100mm、別の実施形態では約4mm〜約85mm、さらなる実施形態では約5mm〜約75mmの範囲の長さを有することができる。当業者は、上記の明示的な範囲内における別の範囲のステント寸法が企図され、それらが本開示に含まれることを認識するであろう。ステントスキャフォールドは、近似的に管状の要素からレーザー切断などによって材料を取り除くことにより拡張型構造に形成することができる。いくつかの実施形態において、ステントスキャフォールドは、ワイヤ、リボン、成形要素などの構造要素を組み立てることにより形成することができ、それらの構造要素は、溶接、はんだ、ヒートボンディング又は任意の他の妥当な手法により取り付けることができる。接続されたストラットにより形成されるステントが、参照により本明細書に組み込まれる「Intravascular Stent」と題されるJangに対する米国特許第7,326,241号明細書にさらに記載される。
【0051】
ステントスキャフォールドは、自己拡張型であっても、及び/又は機械的に拡張可能であってもよい。自己拡張式器具は、一般的に、拘束体から解除すると、又は患者体内の温度に曝露されると拡張する材料を含む。自己拡張式ステントを送達するための器具が、参照により本明細書に組み込まれる「Stent Loading Assembly for a Self-Expanding Stent」と題されるCampbellらに対する米国特許第6,090,035号明細書に記載される。さらに、ステントスキャフォールドは、バルーン、機械的拡張器具などにより拡張されてもよい。バルーンベースのデリバリーシステムが、参照により本明細書に組み込まれる「Balloon Catheter and Stent Delivery System having Enhanced Stent Retention and Method」と題されるMillerらに対する米国特許第6,293,959号明細書にさらに記載される。
【0052】
一般に、ステントスキャフォールドは、拡張されていない、又は圧縮された形態と、拡張した形態とを有する。図13(a)を参照すると、拡張されていない形態及び拡張された形態のステントスキャフォールド200が示され、拡張されていない形態はより小さい直径pを有し、及び拡張された形態はより大きい直径p’を有する。図13(b)は、より小さい断面直径を有する圧縮された形態及びより大きい断面直径を有する拡張された形態の自己拡張式(self expending)ステントスキャフォールド210を示す。ステントスキャフォールドは、スロット付きのチューブ状、丸められた平面状シート、コイル状、又は編み組みされたものであり得る。
【0053】
ステントスキャフォールドは、縫合糸を固定するための位置を提供するアイレットを有し得る。図14(a)を参照すると、ステントスキャフォールド215は端部及びステントメッシュにそれぞれアイレット216及び217を有し、縫合糸を固定するための場所を提供している。図14(b)は、縫合糸固定用のアイレット220を備えた長手方向バー219をさらに備えるステントスキャフォールド218を示す。いくつかの実施形態では、ステントスキャフォールドに放射線不透過性マーカーが存在してもよい。図15を参照すると、ステントスキャフォールド225は、スキャフォールドの端部に放射線不透過性マーカー221を有する。
【0054】
ステントスキャフォールドは、金属、ポリマー、又はそれらの組み合わせから作製され得る。ステントスキャフォールドに好適な金属としては、ニチノールなどのニッケルチタン合金;304及び316L、BioDur(登録商標)108合金、Pyromet合金(登録商標)CTX−909、Pyromet(登録商標)合金CTX−3、Pyromet(登録商標)合金31、Pyromet(登録商標)合金CTX−1、21Cr−6Ni−9Mnステンレス、21Cr−6Ni−9Mnステンレス、Pyromet合金350、18Cr−2Ni−12Mnステンレス、Custom630(17Cr−4Ni)ステンレス、Custom 465(登録商標)ステンレス、Custom 455(登録商標)ステンレス、Custom 450(登録商標)ステンレス、Carpenter 13−8ステンレス、Type 440Cステンレスなどのステンレス鋼合金;MP35N、Elgiloy、L605、Carpenter CCM合金などのコバルトクロム合金;チタン、並びにTi−6Al−4V/ELI及びTi−6Al−7Nb、Ti−15Moなどのチタン合金;タンタル;タングステン及びタングステン合金;白金;白金−イリジウム合金;白金−ニッケル合金;ニオブ;イリジウム;conichrome;金及び金合金が挙げられる。ステントスキャフォールドが吸収性であるよう意図される場合、鉄、マグネシウム、及びマグネシウム合金などの吸収性金属もまた使用することができる。
【0055】
ステントスキャフォールドに好適なポリマーとしては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)、ナイロン(登録商標)6、ナイロン(登録商標)6−6、ナイロン(登録商標)12、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(フェニレンサルファイド)(PPS)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(p−フェニレンオキシド)(PPO)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリオキシメチレン(POM)、エチレン酢酸ビニル、スチレンアクリロニトリル、及びポリブチレンが挙げられる。ステントスキャフォールドが吸収性であるよう意図される場合、ポリグリコール酸(PGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、及びポリ(ラクチド−co−グリコリド)などの吸収性ポリマーもまた使用することができる。ポリマーは、例えば、成形、ヒートボンディング又はその他の適切な加工により所望の構造を形成することができる。
【0056】
接着材料
液状羊膜に加え、シリコーン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)、ポリウレタン、シリコーンポリウレタン共重合体、羊膜又はコラーゲンから作製された生体接着剤などの材料を接着材料として使用することにより羊膜被覆材又は裏装材を形成し、被覆材又は裏装材をステントスキャフォールドに対して固定することができる。ポリエステル、ナイロン、ePTFE、カットグット、及びクロムなどの材料は、縫合材料として使用することができる。
【0057】
生体適合性ステントはカテーテルを使用して送達され得る。かかるカテーテルの作製に好適な材料としては、シリコーン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)、ポリウレタン、シリコーンポリウレタン共重合体、ナイロン(登録商標)、例えば、ナイロン(登録商標)6、ナイロン(登録商標)6−6、及びナイロン(登録商標)12など、ポリエチレンテレフタレート(PET)、Gore−Tex、ePTFE、Kevlar、Spectra、Dyneena、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(フェニレンサルファイド)(PPS)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(p−フェニレンオキシド)(PPO)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリオキシメチレン(POM)、エチレン酢酸ビニル、スチレンアクリロニトリル、及びポリブチレンが挙げられる。
【0058】
生体適合性ステントの送達及び展開方法
生体適合性ステントは、カテーテルなどを使用して送達され得る。この器具は、一般的に適切な手法を用いて患者の体管内に導入される。血管内への留置には、従来の経皮的手技を使用することができ、この手技においては小切開を介して器具の遠位端が血管内に配置され、適切な止血バルブなどにより血管が隔離される。次にカテーテルの遠位端を、冠動脈などの手技場所まで進めることができる。
【0059】
図16(a)を参照すると、自己拡張式生体適合性ステントの送達に好適であり得るデリバリーカテーテル235が示される。図16(b)は、バルーン拡張型生体適合性ステントを送達するためのバルーンカテーテルを示し、バルーン236は拡張されている。一実施形態では、経皮経管的血管形成(PTA)バルーンが使用されてもよい。別の実施形態では、経皮経管的冠動脈(PTCA)バルーンが使用されてもよい。生体適合性ステントは、自己拡張型、植込み型、着脱型、局所適用に好適なもの、一時的な植込みに好適なもの、又は吸収性であってもよい。
【0060】
羊膜組織は延伸性が良好なため、羊膜組織で修飾されたステントスキャフォールドから形成される生体適合性ステントは、修飾されていないステントスキャフォールドと同様の拡張性を有し、従って同様に送達及び展開することができる。ステントは、典型的には機械的経管的手技によって留置又は植込みが行われる。ステントの植込みに一般的な手技の一つは、初めにバルーンカテーテルで体管の領域を開大し、次に留置カテーテルを用いて治療される体管部分に架設するステントを所定位置に留置するものである。ステントは、必要に応じて挿入後にカテーテルを用いて植込み形態に拡張される。具体的には、1988年3月29日に発行されたPalmazに対する米国特許第4,733,665号明細書が、カテーテルを用いて植え込まれるステント形態を多数開示している。カテーテルは、好ましくはカテーテルの膨張可能な部分に、ステントを装着及び保持する手段を含む。ステントは、それを血管内で位置決めし、その位置を観察モニターで監視することにより植え込まれる。ステントが適切に位置決めされると、カテーテルが拡張され、ステントがカテーテル本体から分離される。次にカテーテルは対象から引き抜かれ、血管内でステントが所定位置に残り得る。1990年8月21日に発行されたSavin etらに対する米国特許第4,950,227号明細書も同様であり、双方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
別の同様の米国特許第5,019,090号明細書は、略円筒形ステント、及び収縮したバルーンカテーテルを使用してステントを体管内に位置決めするその植込み技法を開示する。ステントが適切に位置決めされると、バルーンを膨らませることによりステントが体管の内壁層に押し付けられる。次にバルーンを収縮させて血管から引き抜くと、ステントが所定位置に残る。1985年3月12日に発行されたDotterに対する米国特許第4,503,569号明細書は、温度の変化により植込み形態に拡張するスプリングステントを開示し、これは参照により本明細書に組み込まれる。スプリングステントはコイル状の配置で植え込まれ、ステントを作製している形状記憶合金の特性に起因して加熱によりスプリングが拡張される。同様に、1985年4月23日に発行されたBalkoらに対する米国特許第4,512,338号明細書は、形状記憶合金ステント並びにその送達及び使用方法を開示し、他の種類の自己拡張式ステントは当該技術分野において公知であり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
1993年3月23日に発行されたSchatzに対する米国特許第5,195,984号明細書は、拡張型ステント用の典型的なバルーン拡張手技について記載している。この特許は全体として参照により本明細書に組み込まれる。この特許は、拡張可能な可膨張部分が連係したカテーテルについて記載する。従来の方法において、ステントを植込みのために拡張することが所望される生体通路内の所望の位置までカテーテル及びステントが送達される。蛍光透視、及び/又は他の従来技術を利用して、カテーテル及びグラフトが所望の位置まで送達されたことを確実にし得る。次に、カテーテルの拡張可能な可膨張部分、典型的にはバルーンを制御可能に拡張させることにより、ステントが制御可能に拡張及び変形される。結果としてステントは半径方向外側に変形して生体通路の壁と接触する。この点で、カテーテルの拡張可能な可膨張部分は、当該技術分野において既に公知のとおりの従来の血管形成バルーンであり得る。ステントの所望の拡張及び変形が達成された後、血管形成バルーンを収縮させ、カテーテルを従来の方法で通路から取り出し得る。また、この発明は、米国特許第4,732,152号明細書及び米国特許第4,848,343号明細書(その双方が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるものなどの自己拡張式ステントにおいても有用である。
【0063】
直径を変えることのできるタイプのステントは、バルーン拡張型であるか、又は自己拡張式であることができ、その双方とも当該技術分野において公知である。前者のタイプの例が米国特許第4,733,665号明細書、米国特許第4,739,762号明細書及び米国特許第4,776,337号明細書に示され、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。現在の本発明の目的上、後者のタイプ、すなわち自己拡張式、特に同様に参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,503,569号明細書及び米国特許第4,512,338号明細書においてその例が考察されるNitinolで作製されるものが好ましい。
【0064】
ステント保管
組織修飾されたステントは保管前に滅菌され得る。保管される時間の長さに応じて異なる保管方法が用いられ得る。また、保管技法は、組織が生細胞を含むか否かに基づき選択することができる。短期間、すなわち1週間未満の保管については、組織で被覆されたステントは、当該技術分野において周知のものなどの、無菌の生物学的に適合性を有する緩衝液中に保管され得る。組織が生細胞を含まない場合、好適な緩衝液を使用するこの技法は、中程度の期間にわたる組織の保管であっても好適であり、容器には、時間の経過に起因する任意の組織分解が許容し得るレベルの範囲内であれば器具を使用することができる旨の適切な表示を行うことができる。
【0065】
生細胞を含む組織の保管にはより注意を要し得るが、ドナー組織の保管に適した技法が開発されている。例えば、凍結点に近い温度が関わる保管技法が、参照により本明細書に組み込まれる「Methods and Solutions for Storing Donor Organs」と題されるToledo-Pereyraらに対する米国特許第7,029,839号明細書に記載されている。凍結点に近い温度が関わる別の組織保管技法が、参照により本明細書に組み込まれる「Hypothermic Preservation of Biological Tissues and Cells」と題されるShelegらに対する米国特許出願公開第2009/0286220号明細書に記載されている。
【0066】
器具は使用に適切な医療従事者に対して販売される。器具は、器具の適正な使用を説明するFDA承認マークを付して販売される。
【0067】
上記の実施形態は例示を意図としたもので、限定することは意図していない。さらなる実施形態が特許請求の範囲に含まれる。加えて、本発明は特定の実施形態を参照して記載されているが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細に変更を加え得ることを認識するであろう。上記文献の参照による組み入れは、本明細書における明示的な開示に反するいかなる主題も組み入れられないものとして限定される。
【0068】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に組み込まれる「Stents Covered or Coated With Amnion Tissue and Methods」と題される2009年3月4日に出願されたSchorglらに対する同時係属中の仮出願(provisional patent application) serial number 61/157,462に対する優先権を主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントスキャフォールドと、
前記ステントスキャフォールドに連係された生体適合性材料であって、再構成羊膜組織、−60℃〜−100℃の温度で凍結保存されていない羊膜組織、又はそれらの組み合わせを含む生体適合性材料と、
を含む、生体対象の体管内に留置される生体適合性ステント。
【請求項2】
前記再構成羊膜組織が、可溶化羊膜組織、羊膜の縫合糸、フィラメント、若しくはヤーンを織り上げるか、編み組みするか、若しくは編み上げることにより作製された布材、化学修飾された羊膜組織、放射線処理された羊膜組織、熱処理された羊膜組織、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の生体適合性ステント。
【請求項3】
前記生体適合性材料が、前記ステントスキャフォールドの内側、外側、又は内側及び外側の双方に取り付けられる、請求項1に記載の生体適合性ステント。
【請求項4】
前記生体適合性材料が羊膜組織の被覆材又は裏装材を含む、請求項3に記載の生体適合性ステント。
【請求項5】
前記生体適合性材料が複数の羊膜組織層を含む、請求項1に記載の生体適合性ステント。
【請求項6】
血栓溶解剤、抗再狭窄剤、細胞物質、又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の生体適合性ステント。
【請求項7】
前記細胞物質が幹細胞である、請求項6に記載の生体適合性ステント。
【請求項8】
前記生体適合性材料が、小腸粘膜下組織、心膜組織、胎盤組織、ポリマー材料、又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の生体適合性ステント。
【請求項9】
前記ステントスキャフォールドが、金属、合金、ポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の生体適合性ステント。
【請求項10】
前記ステントスキャフォールドが生体吸収性である、請求項1に記載の生体適合性ステント。
【請求項11】
前記ステントスキャフォールドが、二股に分岐しているか、セグメント化されているか、連続しているか、クリンプされているか、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の生体適合性ステント。
【請求項12】
前記羊膜組織が羊膜上皮細胞を含む、請求項1に記載の生体適合性ステント。
【請求項13】
ステントスキャフォールドと、
前記ステントスキャフォールドを実質的に完全に包み込む生体適合性材料であって、羊膜組織を含む生体適合性材料と、
を含む、生体対象の体管内に留置される生体適合性ステント。
【請求項14】
前記羊膜組織が、可溶化羊膜組織、羊膜の縫合糸、フィラメント、若しくはヤーンを織り上げるか、編み組みするか、若しくは編み上げることにより作製された布材、化学修飾された羊膜組織、放射線処理された羊膜組織、熱処理された羊膜組織、又はそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の生体適合性ステント。
【請求項15】
前記ステントスキャフォールドが、可溶化羊膜組織のコーティングで包み込まれている、請求項14に記載の生体適合性ステント。
【請求項16】
前記生体適合性材料が、被覆材、裏装材、又はそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の生体適合性ステント。
【請求項17】
前記被覆材又は裏装材の少なくとも一部が複数の羊膜組織層を含む、請求項16に記載の生体適合性ステント。
【請求項18】
前記生体適合性材料が、小腸粘膜下組織、心膜組織、胎盤組織、ポリマー材料、又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項13に記載の生体適合性ステント。
【請求項19】
生体吸収性である、請求項13に記載の生体適合性ステント。
【請求項20】
血栓溶解剤、抗再狭窄剤、細胞物質、又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項13に記載の生体適合性ステント。
【請求項21】
前記羊膜組織が羊膜上皮細胞を含む、請求項13に記載の生体適合性ステント。
【請求項22】
生体対象の体管内に留置されるステントスキャフォールドの修飾方法であって、
加工生体適合性材料を前記ステントスキャフォールドと連係させるステップ、
を含み、前記加工生体適合性材料が、再構成羊膜組織、−60℃〜−100℃の温度で凍結保存されていない羊膜組織、又はそれらの組み合わせを含む生体適合性材料から加工される、方法。
【請求項23】
前記生体適合性材料が、被覆材又は裏装材を形成する方法により加工され、前記連係させるステップが、前記被覆材又は裏装材を前記ステントスキャフォールドの内側、外側、又は内側及び外側の双方に取り付けることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記被覆材又は裏装材が多層状の加工生体適合性材料を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記被覆材又は裏装材が、機械ベース、電子ベース、接着剤ベース、エネルギーベースの方法、又はそれらの組み合わせによって前記ステントスキャフォールドに取り付けられる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記生体適合性材料が、羊膜組織を機械的、化学的、又は酵素的に破壊して可溶化羊膜組織を形成することを含む方法により加工され、及び前記連係させるステップが、(1)前記ステントスキャフォールドの少なくとも一部を前記可溶化羊膜組織で被覆すること、(2)前記可溶化羊膜組織で被覆されたスキャフォールドを乾燥させて前記ステントスキャフォールド上にコーティングを形成することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記生体適合性材料が、羊膜組織を機械的、化学的、又は酵素的に破壊して可溶化羊膜組織を形成すること、並びに(1)請求項23に記載の被覆材又は裏装材の少なくとも一部を前記可溶化羊膜組織で被覆すること、及び(2)前記可溶化羊膜組織で被覆された被覆材又は裏装材を乾燥させて前記被覆材又は裏装材上にコーティングを形成することを含む方法により加工される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記生体適合性材料が、羊膜の縫合糸、フィラメント、又はヤーンを織り上げるか、編み組みするか、又は編み上げることにより羊膜布材を作製することを含む方法により加工され、前記連係させるステップが、前記羊膜布材を前記ステントスキャフォールドと連係させることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
生体対象の体管内に留置されるステントスキャフォールドの修飾方法であって、
前記ステントスキャフォールドを加工生体適合性材料で事実上完全に包み込むステップであって、前記加工生体適合性材料が、羊膜組織を含む生体適合性材料から加工されるステップ、
を含む方法。
【請求項30】
前記加工生体適合性材料が、前記生体適合性材料から被覆材又は裏装材を形成することを含む方法で形成され、及び前記包み込むステップが、機械ベース、電子ベース、接着剤ベース、エネルギーベースの方法、又はそれらの組み合わせによって前記ステントスキャフォールドを前記被覆材又は裏装材で被覆することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記加工生体適合性組織が、羊膜組織を機械的、化学的、又は酵素的に破壊して可溶化羊膜組織を形成することを含む方法で形成され、及び前記包み込むステップが、(a)前記ステントスキャフォールドを可溶化羊膜組織で被覆すること、(b)可溶化羊膜組織で被覆されたステントスキャフォールドを乾燥させて前記ステントスキャフォールド上にコーティングを形成することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記生体適合性ステントを治療部位に送達するステップと、前記生体適合性ステントを展開形態に展開するステップとを含む、請求項1に記載の生体適合性ステントの展開方法。
【請求項33】
前記生体適合性ステントが自己拡張式である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記生体適合性ステントがバルーンにより展開される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記ステントの送達前に治療部位を処置するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記生体適合性ステントを治療部位に送達するステップと、前記生体適合性ステントを展開形態に展開するステップとを含む、請求項13に記載の生体適合性ステントの展開方法。
【請求項37】
ステントスキャフォールドと、前記ステントスキャフォールドに連係された生体適合性材料と、
を含む生体適合性ステントであって、
前記生体適合性材料が胎盤組織を含む、生体適合性ステント。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図4(d)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図6(d)】
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【図6(e)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図8(c)】
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【図8(d)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図9(d)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図11(a)】
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【図11(b)】
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【図11(c)】
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【図11(d)】
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【図11(e)】
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【図12(a)】
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【図12(b)】
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【図12(c)】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図14(a)】
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【図14(b)】
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【図15】
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【図16(a)】
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【図16(b)】
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【図17(a)】
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【図17(b)】
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【図17(c)】
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【公表番号】特表2012−519543(P2012−519543A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552993(P2011−552993)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025558
【国際公開番号】WO2010/101780
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511214897)ペイタント・ソリューションズ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】PEYTANT SOLUTIONS, INC.
【Fターム(参考)】