説明

老人の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させる組成物及び方法

高齢者の筋肉量、強度及び機能的能力を、選択されたアミノ酸、カルニチン、及び血糖症指数の低い糖質を送達することにより、増加させる組成物及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、引用をもってその開示全体をここに援用することとする、2008年1月11日に提出された米国特許出願第12/013,269号の継続出願であり、それに基づく優先権を主張するものである。
【0002】
背景
1. 発明の分野
本発明は、概略的には、老人の筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる組成物及び方法に関する。具体的には、本組成物は、ロイシン、カルニチンを含む選択されたアミノ酸と、血糖症指数の低い糖質とから成る。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の解説
人口が老化するにつれ、そして特に「ベビー・ブーマー」たちが高齢になるにつれ、老化に伴う健康上の問題がますます重要になる。これは特に、保健医療にかかる費用が人口全体に分散しているような現行のものなどの保健システムにおいては特に真実である。老化に関連する健康上の問題が大きくなると、概して、全体に対するコストの増大につながるであろう。加えて、反応的な保健医療は、予防的保健医療よりも高価である。例えば、虚弱な患者の転倒後に骨折を治療する又は腰骨を置換するには、患者の虚弱性を減らすことで転倒を防ぐよりも費用がかかる。これらや他の理由から、特定の老化に関係する健康上の問題を防ぎ、緩和するための効果的で比較的に安価な手段があることが好ましい。
【0004】
このような健康上の問題の一つは「サルコペニア(原語:sarcopenia)」と呼ばれるものであろう。ここで用いられる場合の用語「サルコペニア」とは、老化と共に避けられずに起きる、筋肉量及び機能の喪失を言う。サルコペニアは身体活動レベルの減少の原因にもなり、ひいては体脂肪増加、そして更には筋肉の消失に至ることもある。筋肉量の喪失は、筋肉タンパク質合成と筋肉タンパク質分解との間の負の正味の均衡から起きる。このような、骨格筋量及び機能の喪失の病因が明解であるとは考えられていない。身体活動レベルの低下、中枢神経系の変化に続発する運動単位の喪失、そして不充分なタンパク質摂取がすべて、関係しているとされている。
【0005】
サルコペニア症の患者は、比較的に脆弱な状態にあるときには、彼らがより多量の筋肉量及び機能を有していたときにはより容易に行えたであろう身体作業を行う際にも転倒や傷害に遭い易い。また彼らの骨及び関節の健康も低下していることもあり、更に運動能力に制限がある場合がある。サルコペニアは傷害の危険性を増し、運動能力や生活の質を低下させ、他の問題も引き起こすため、サルコペニアを効果的に、非侵襲的に、そして比較的に安価で防止する又は緩和し、特に老人において筋肉量、強度及び身体機能を高めることが好ましい。
【0006】
筋肉タンパク質合成の刺激は筋肉強度を高めるための代謝上の基盤であると考えられる。筋肉タンパク質合成の増加により、強度に関連する筋肉量を増加させることができる。更に筋肉タンパク質合成を増加させると筋肉タンパク質のターンオーバー(即ち、タンパク質合成と分解の組合せ)が増加するが、これは分解速度が何らかの程度、合成速度にも関係していると考えられるからである。筋肉タンパク質のターンオーバーが増加すると、より古い、損傷を受けたタンパク質は新たに産生された、より効率的に機能するタンパク質に置き換えられるため、筋肉繊維単位の機能も高まる。このように、筋肉タンパク質合成及び筋肉タンパク質のターンオーバーを増加させる方法は、筋肉量、強度、及び身体機能を高めるという目標を達成するであろう。
【0007】
筋肉タンパク質合成の刺激には四つの中心となる成分があると考えられる。細胞の合成装置の能力が、まとめて真核性開始因子と呼ばれる一連の因子により活性化されねばならない。新しいタンパク質の合成に必要な成分アミノ酸のすべての能力が高められなければならず、また、トランスファーRNA(tRNA)分子がこれらのアミノ酸を細胞内の遊離したプール分からリボゾーム内の合成部位へと効果的に輸送されねばならない。最後に、反応のすべてが進行するのに必要な充分なエネルギーが、アデノシン三リン酸(ATP)の形で利用できなければならない。まとめると、身体機能の亢進には、充分な筋肉量や筋線維の機能だけでなく、筋肉収縮支援に要するエネルギーが必要なのである。エネルギーは細胞内にATP及びクレアチンリン酸(CP)として貯蔵することができる。ATPの合成はリボゾームの提供により促進されると考えられ、またクレアチンはCPの形のエネルギー貯蔵を促進すると考えられる。
【0008】
これら四つの成分のいずれか又は全ての対処することにより、筋肉タンパク質合成を薬理学的に、又は栄養を通じて増加させることができる。薬理学的介入(例えばテストステロン)が効果的であろうが、全てに著しい、望ましくない副作用があり、医学的監視が必要である。対照的に、栄養的組成物は非侵襲的であるため好ましく、またこのような副作用を抑えるべくデザインも可能であり、またこのような医学的監視なしで患者の慣習の一部とすることもできよう。
【0009】
現在のところ、高齢者の筋肉タンパク質合成を特異的に促進するようにデザインされた、あるいはより広くは、高齢者の強度及び機能的能力を向上させるようにデザインされた栄養的組成物はない。現在の栄養的組成物は、単独でも、あるいはクレアチンなどの筋肉増強化合物と組み合わせた場合でも、ここに示した目的を効果的に達成するために充分なロイシンを持たないと考えられる。例えばホエイ分離物は現在のところ、約6及び約9%のロイシンを含むが、これは高齢者で筋肉量、強度及び機能的能力を高めるには充分であるとは考えられない。
【0010】
高齢者は高率で何らかの程度の腎不全に、しばしば潜在性(従って未診断)のレベルで罹患している。腎機能の不全はサルコペニア症患者ではごく普通のことであり、従ってサルコペニア症を解決する栄養的アプローチは、腎臓が排出せねばならない尿素負荷を増加させてしまうことでこの潜在的問題を複合させてはならない。タンパク質の高摂取は、洗剤的に尿素産生を著しく増加させてしまうことでこの問題を増幅させ、ひいては尿排出増加を要することで腎臓に対して負荷増大を押し付けてしまいかねない。従って、合成を支援するいずれかの組成物について、腎負荷を抑えることが好ましい。
【0011】
骨の健康に対するタンパク質摂取増加の影響が議論されてきた。一方では、タンパク質合成は骨の健康に必須であり、タンパク質摂取の増加により刺激される。コラーゲンは骨の主要なタンパク質成分であり、グリシンはコラーゲンの約30%を構成するため、骨合成を促進する組成物にとって、骨内のコラーゲン合成を刺激するのに充分なグリシン及び他のアミノ酸を含有することが好ましい。他方、硫黄を含有するアミノ酸、特にシスチン及びシステインの摂取により、それらの代謝の過程で硫酸が産生される。硫酸が増加すると骨が酸化され、骨からのカルシウム喪失が加速される。従ってこのような組成物にとっては、シスチン又はシステインのいずれも筋肉タンパク質合成の刺激に必要ではないと考えられるため、これらのいずれも含まないことによりこの応答を回避することが好ましい。
【0012】
高齢者用の栄養サプリメントに伴う付加的な困難は、高齢者は概して、栄養サプリメントで送達されるエネルギー増加(即ちカロリー)を、食物摂取を減らすことにより補償してしまうことである。従って、食物又は通常のタンパク質サプリメントよりも効率的に筋肉合成を刺激するサプリメントをデザインすることが好ましい。
【0013】
概要
当業におけるこれら及び他の問題のために、ここで開示するのは、選択されたアミノ酸、カルニチンと、血糖症指数の低い糖質とを送達することにより、高齢者の筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる組成物及び方法である。
【0014】
ここでは、ロイシン、糖質、及びクレアチンを含む、筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる組成物を解説する。
【0015】
更にここでは、ロイシン、他のアミノ酸、糖質、及びクレアチンを含む、筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる物質の組成物も解説するが、この場合の他のアミノ酸は、ヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、アルギニン、グリシン、カルニチン、及びシトルリン(原語:citrullene)から成る群より選択される。
【0016】
このような組成物のある実施態様では、他のアミノ酸はヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン(原語:phenylanlanine)、スレオニン、グリシン及びアルギニン、又はヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、
フェニルアラニン、スレオニン、グリシン及びシトルリンを含んでもよい。
【0017】
このような組成物のある実施態様では、糖質はリボースを含む。
【0018】
このような組成物のある実施態様では、前記ロイシンは、質量で当該組成物の約10乃至約25パーセント、より好ましくは約11乃至約20パーセントのパーセンテージを含む。
【0019】
ある実施態様では、このような組成物は、液体投与のための手段の成分である。
【0020】
更に更なる実施態様では、前記組成物は更に医薬品添加物を含む。
【0021】
更にここでは、筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる方法であって、患者を有するステップと、患者に対し、ロイシン、糖質、及びクレアチンを含む物質の組成物を送達するステップとを含む方法を解説する。
【0022】
本方法のある実施態様では、当該患者は高齢者であり、送達する方法は、例えば液体投与を通じてなどの経口であってよい。
【0023】
本方法の別の実施態様では、前記組成物は更に、ヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、アルギニン、グリシン、カルニチン、及びシトルリンから成る群より選択される他のアミノ酸を含む。
【0024】
本方法の更に更なる実施態様では、ロイシンは質量で当該組成物の約10乃至約25パーセント、より好ましくは約11乃至約20パーセントのパーセンテージを含む。
【0025】
本方法の更に更なる実施態様では、前記組成物は更に医薬品添加物を含み、前記糖質はリボースを含む。
【0026】
更にここでは、高齢者において筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる方法であって、ロイシン、糖質、及びクレアチニンを含む物質の組成物を作製するステップと、前記物質の組成物を高齢の患者に提供するステップとを含む方法を解説する。
【0027】
本方法のある実施態様では、前記組成物は更に、ヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、アルギニン、グリシン、カルニチン、及びシトルリンから選択される他のアミノ酸を含む。
【0028】
本方法の更に更なる実施態様では、前記ロイシンは質量で当該組成物の約10乃至約25パーセント、より好ましくは約11乃至約20パーセントのパーセンテージを含む。
【0029】
本方法の更に更なる実施態様では、前記提供するステップは、例えば液体投与によるなどの経口である。
【0030】
本方法の更に更なる実施態様では、前記糖質はリボースを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、RNA合成の代謝経路と、リボース及びグリシンがどのように新しいRNAの産生のための前駆体として働くと考えられているかとを示す。
【図2】図2は、ある実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物の3種類の用量のうちの一つを対象に輸注した結果を示す。
【図3】図3は、ある実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物の摂取に対する正味の筋肉タンパク質平衡の応答を示す。
【図4】図4は、若年及び高齢の対象における筋肉タンパク質同化作用に対して、二つの実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物が及ぼす効果の比較を示す。
【図5】図5は、ある実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物に対する用量応答を、ウェイタンパク質でのそれに等しいプロファイルで示す。
【図6】図6は、ある実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物が、筋肉タンパク質合成に対して及ぼす効果を示す。
【図7】図7は、筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物を送達した後の正味のフェニルアラニン取り込みを示す。
【図8】図8は、ある実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物が、脂肪なし体重及び筋肉機能の保存に及ぼす影響を示す。
【図9】図9は、筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物のある実施態様を送達した後に維持される筋肉縮み速度及びピーク・パワーを示す。
【図10】図10は、ある実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物の単一の用量を摂取後の筋肉タンパク質合成における増加を、インシュリン、テストステロン及び成長ホルモンによる薬理処置と比較して示す。
【図11】図11は、絶食状態中の肝臓と筋肉との間の窒素フラックスを示す。
【図12】図12は、ある実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物の送達に関連する肝臓と筋肉との間の窒素フラックスを示す。
【図13】図13は、ある実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物の送達後のアラニン濃度を示す。
【図14】図14は、ある実施態様の筋肉量、強度及び機能的能力を増加させるための組成物の送達後の尿素産生を示す。
【0032】
好適な実施態様の説明
運動性を含め、強度及び身体機能は、筋肉タンパク質合成を刺激することによって筋肉量を増加させ、骨及び関節の健康を高めることにより、向上させられる。ここで開示するのは、限定はしないが高齢者又は60歳を越える対象を含め、サルコペニア症を罹患した対象における、筋肉タンパク質量、強度及び身体機能を増加させる組成物及び方法である。本組成物は、概略的には、ロイシンを含むアミノ酸と糖質との混合物であって、各アミノ酸の比率と糖質の量が、筋肉タンパク質合成及び筋肉タンパク質ターンオーバーを最適化し、ひいては筋肉量、強度及び身体機能を増加させるように調整された、混合物から成る。本組成物は更に、又は代替的に、クレアチンを含んでもよい。
【0033】
一般的には、新規な本組成物はタンパク質合成の全ての局面に対応する。真核性開始因子はアミノ酸・ロイシンによって活性化する。身体では産生されない必須アミノ酸の利用能が、本組成物の摂取によって増加するであろう。新たに合成されたタンパク質の非必須アミノ酸成分は、タンパク質分解又はde novo合成の結果生じた利用可能なプールから得られるであろう。tRNAの利用能は、ヌクレオチド合成の鍵となる前駆体であるリボース及びグリシンの摂取と、摂取されたアミノ酸によるtRNA合成の刺激とにより、増加するであろう。エネルギーは、最低のインシュリン応答を誘導すると思われる血糖症指数の低い糖質によって提供されるであろう。ある実施態様では、このようなエネルギーは必要な丁度の量で提供される。タンパク質合成は鍵となるアミノ酸前駆体の提供と、更にタンパク質合成の律速段階を支配するトランスファー-リボ核酸(tRNA)の合成の刺激とによって、増加させられるであろう。機能は、筋肉内の貯蔵エネルギーを増加させることにより、亢進させられるであろう。
【0034】
本組成物及び方法はまた、腎負荷も抑えるであろう。身体で産生されない必須アミノ酸(即ち、必須アミノ酸、又はEAA)を高比率で摂取すると、二つの主な尿素生成性アミノ酸であるアラニン及びグルタミンの利用能が減じられるであろう。必須アミノ酸の提供によって、アラニン及びグルタミンはより高速でタンパク質内に再取り込みされ、しかし尿素産生は増加することなく、実際には減少するであろう。主な尿素生成性アミノ酸であるアラニン及びグルタミンへの肝臓への輸送が抑えられ、代わりにそれらのタンパク質内への再取り込みが刺激されることで尿素産生が抑えられることによって、腎機能が保たれるであろう。
【0035】
ここで開示された組成物の基盤にある原理は、当該成分の個々の効果と、それらの相互作用による効果の両方に関係する。アミノ酸は筋肉タンパク質合成を刺激するであろう。特定の必須アミノ酸が提供されるが、それはなぜなら身体では産生されないからであり、従ってそれらの利用能はタンパク質合成にとって律速的だからである。アルギニンは通常、身体内では充分な量、産生されるが、内因的な産生は高齢者では限界があることがある。グリシンもまた身体内で産生されるが、量は限られている。余分にグリシンがあると、tRNAや腱及び靭帯でのコラーゲンの合成が刺激されるであろう。シトルリンをアルギニン前駆体として用いて、血漿中のアルギニン・レベルを増加させることができる。骨の健康への悪影響を避けるためにシスチン及びシステインや、他の含硫アミノ酸を除外してもよい。アミノ酸は遊離型で含めても、ペプチドの組み合わせで含めても、インタクトタンパク質及び遊離アミノ酸の組み合わせで含めても、遊離アミノ酸及びペプチドの組合せで含めても、あるいは遊離アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の組合せで含めてもよい。それらの送達方法及び量は、不用な腎負荷がないようなものである。
【0036】
低血糖症指数を持つ一種以上の糖質に、新しいタンパク質を産生するのに必要なエネルギーを、有意なインシュリン応答を惹起することなく提供させてもよい。このエネルギー源はまた、使用者又は患者にカロリ摂取量増加を補償させることなく筋肉合成を達成させるために食物又は他のタンパク質サプリメントよりも効率的に筋肉成長を惹起するであろう。徐放性糖類と呼ばれることもあるこのような化合物には、限定はしないがヌトリオース(原語:nutriose)、スクラマルト(原語:sucramalt)、イソマルツロース(原語:isomaltulose)、デキストラン、マルトデキストラン、及びそれらの機能的均等物を含め、長い炭素鎖長を持つ複合糖質が含まれよう。高齢者は一般にインシュリン作用に対して耐性であり、血糖症指数の低い糖質を用いることによりインシュリン応答を避けることはこの集団にとって有利であろう。
【0037】
血糖症指数の低い糖質又は徐放性糖類に加えて、又は代わりに、本組成物はリボースを含んでもよい。リボースはtRNAの量を増加させると考えられ、このことは、この実施態様で提供される律速性アミノ酸の利用能向上と組み合わせられると有用であろう。グリシン及びリボースがRNA合成を刺激すると思われる代謝経路を図1に示す。血糖症指数の低い糖質、徐放性糖類、及びリボースの働きがここで開示する本組成物及び方法で似通っているため、ここで用いられる用語「糖質」はこれら全ての化合物を言う場合がある。血糖症指数の低い糖質は質量で約0−50%、含まれるであろう。総アミノ酸の約2倍の糖質を加えてもよく、これにより、当該アミノ酸から起きる筋肉タンパク質合成の刺激に必要なエネルギー量ちょうどが提供されるであろう。このような計算の実施態様が下の実施例10に開示されている。ある好適な実施態様では、約25、26、27、28、29、又は30 g の糖質を加えてもよい。これらの実施態様は当該アミノ酸から起きるタンパク質合成の必要エネルギー量と、糖質により提供されるエネルギー量に基づくものである。これら二つの値を近い数字に適合させると、最低量の糖質で機能性が最大となる。
【0038】
クレアチンは、筋肉内の貯蔵エネルギーを増加させることにより筋肉量を増し、強度を向上させると考えられるため、筋肉量を増加させる組成物の一成分であってもよい。このような成分(即ち、必須アミノ酸、血糖症指数の低い糖質、及びクレアチン)を好適な実施態様で相互に結び付けると、筋肉の強度、量、及び身体機能が、いずれか一つの成分に対する応答で予測されるよりも高い程度、増加するであろう。
【0039】
ある実施態様は、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-バリン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-スレオニン、L-アルギニン、血糖症指数の低い糖質、及びα-メチルグアニジノ酢酸、又はクレアチンを含む組成物を包含するものである。
【0040】
別の実施態様は、L-ヒスチジン、 L-イソロイシン、 L-バリン、 L-リジン、 L-メチオニン、 L-フェニルアラニン、 L-スレオニン、 L-シトルリン、血糖症指数の低い糖質、及びクレアチンを含む組成物を包含する。
【0041】
説明したように、ロイシンは、タンパク質合成の真核性開始因子を活性化すると考えられる。ある実施態様では、L-ロイシンの質量による濃度はアミノ酸成分の約6%よりも大きい。ある好適な実施態様では、L-ロイシンの濃度は約10乃至約40%の間である。あるより好適な実施態様では、L-ロイシンの濃度は、約10乃至約45%の間である。ある最も好適な実施態様では、L-ロイシンの濃度は約11乃至約20%の間である。
【0042】
他のアミノ酸の濃度は筋肉タンパク質合成を最適化するためにいずれの比率であってもよい。シトルリンはアミノ酸の重量で約0-10%の範囲であってよく、アルギニンは約 0-10%の範囲であってよく、そしてカルニチンは約 0-15%であってよい。組成物中のL-ヒスチジンの濃度はアミノ酸の重量で約 9%、10%、11%、12%、又は13%であってよい。組成物中のL-メチオニンの濃度はアミノ酸の質量で約 3%、3.5%、又は4% であってよい。組成物中のL-フェニルアラニンの濃度は質量でアミノ酸の約13%、14%、15%、16%、又は17%であってよい。組成物中のL-スレオニンの濃度は質量でアミノ酸の約 13%、14%、15%、16%、又は17% であってよい。L-バリンの濃度はアミノ酸の質量で約10-12%であってよい。L-イソロイシンの濃度はアミノ酸の質量で約 9%、10%、11%、又は13% であってよい。組成物中のL-リジンの濃度は質量でアミノ酸の約 9%、19%、11%、又は12 % であってよい。L型のアミノ酸は身体内に通常存在する天然発生性の異性体である。
【0043】
ある好適な実施態様では、以下の成分は質量で以下の総アミノ酸のうちの以下のパーセンテージを有する:ヒスチジン、約 6.4;イソロイシン、約 6.2;リジン、約 11.0;メチオニン、約 2.0;フェニルアラニン、約 11.0;スレオニン、約 9.5;トリプトファン、約 0.4;バリン、約 7.3;グリシン、約 3.8;シトルリン、アルギニン、又はこれらの組合せ、約 3.0;及びロイシン、その残り。更に好適な実施態様では、これらの成分は合成で総アミノ酸の20 g になる。
【0044】
更に好適な実施態様では、クレアチンは質量で当該組成物の約 8.0% を含んでよい。糖質はヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、及びバリンの総質量の約2倍を含んでよい。リボースはこれらの糖質の約10パーセントを含んでよい。食品科学上の要件から、これらの数値のパーセンテージを変更する必要があるかも知れないことは考察されている。
【0045】
別の実施態様では、カルニチンがアミノ酸の質量の約 0-10% の範囲であってよく、そしてアルギニンがアミノ酸の約 0-10%の範囲であってよい。ロイシンはアミノ酸の質量の約 23-30%であってよく、そして血糖症指数の低い糖質は総質量の約 0-50%であってよい。他のアミノ酸は筋肉タンパク質合成を最適化する比率となっていてよい。
【0046】
効果を犠牲にすることなく組成物の味を向上させられる別の実施態様では、シトルリンはアミノ酸の質量で約 0-10%の範囲であってよく、そしてアルギニンを除外してもよい。カルニチンはアミノ酸の質量の約 0-15%の範囲であってよく、L-ロイシンはアミノ酸の質量の約 18-30%の範囲であってよく、そして血糖症指数の低い糖質は質量で0-50%の範囲であってよい。
【0047】
アミノ酸の選択に加え、ここで開示される組成物及び方法で送達されるアミノ酸が大量であることも、筋肉の強度、量、及び身体機能を増加させる。タンパク質の総量又はパーセンテージが大きいこと、そして必須アミノ酸、特にロイシン、の量又はパーセンテージが大きいことは、健康上の効果の増大に寄与するであろう。ある好適な実施態様では、約 20gのアミノ酸を送達するとき、その20gのうちの約 11 乃至約 20 パーセントはロイシンである。
【0048】
代替的又は更なる実施態様では、補助的なミネラルも含めてよい。適したミネラルには一種以上のミネラル又はミネラル源が含まれよう。ミネラルの非限定的な例には、限定はしないが、塩化物、ナトリウム、カルシウム、鉄、クロム、銅、ヨウ素、亜鉛、マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリウム、及びセレンがある。前記のミネラルのいずれかの適した形には、可溶性のミネラル塩、微可溶性のミネラル塩、不溶性のミネラル塩、キレート化ミネラル、ミネラル錯体、カルボニル・ミネラルなどの非反応性のミネラル、及び還元型ミネラル並びにこれらの組合せがある。
【0049】
本組成物は更に選択的にビタミンを含んでもよい。該ビタミンは脂溶性又は水溶性のビタミンであってよい。適したビタミンには、限定はしないが、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB12、ビタミンK、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンD、ビタミンB6、葉酸、ピリドキシン、チアミン、パントテン酸、及びビオチンがある。ビタミンの形には、ビタミンの塩類、ビタミンの誘導体、ビタミンの同じ又は類似の活性を有する化合物、及びビタミンの代謝産物が含まれよう。
【0050】
また本組成物は少なくとも一種の医薬品添加物を含んでもよい。適した医薬品添加物の非限定的な例には、緩衝剤、保存剤、安定化剤、結合剤、締め固め剤、甘味料、着色料、及びこれらの物質のいずれかの組合せがある。
【0051】
ある実施態様では、医薬品添加物は緩衝剤である。適した緩衝剤の非限定的な例には、クエン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、及び重炭酸カルシウムがある。
【0052】
医薬品添加物は保存剤を含んでもよい。保存剤の適した例には、例えばアルファ-トコフェロール又はアスコルビン酸などの抗酸化剤、及び、パラベン、クロロブタノール、又はフェノールなどの抗菌剤がある。
【0053】
ある代替的な、又は更なる実施態様では、医薬品添加物は結合剤であってもよい。適した結合剤には、でんぷん、アルファ化でんぷん、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン、ポリビニルアルコール、C12-C18 脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、糖、オリゴ糖、ポリペプチド、オリゴペプチド、及びこれらの組合せがある。
【0054】
ある代替的な、又は更なる実施態様では、医薬品添加物は潤滑剤であってもよい。潤滑剤の適した非限定的な例にはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水素化植物油、ステロテックス(原語:sterotex)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン、タルク、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、及び軽鉱物油がある。
【0055】
医薬品添加物は分散促進剤であってよい。適した分散剤には、でんぷん、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、グアーガム、カオリン、ベントナイト、精製ウッドセルロース、でんぷんグリコール酸ナトリウム、イソ非晶質シリケート、及び高HLB乳濁化剤サーファクタントとしての微結晶セルロースが含まれよう。
【0056】
更に別の実施態様では、医薬品添加物は崩壊剤であってよい。崩壊剤は非発泡性の崩壊剤であってもよい。非発泡性の崩壊剤の適した例には、コーンスターチ、いもでんぷん、これらのアルファ化及び化工でんぷんなどのでんぷん、甘味料、ベントナイトなどのクレイ、微結晶セルロース、アルギン酸塩、でんぷんグリコール酸ナトリウム、寒天、グアー、ローカスト・ビーンなどのゴム、インドゴム、ペシチン、及びトラガカントなどのゴムがある。崩壊剤は発泡性の崩壊剤であってもよい。適した発泡性の崩壊剤には、クエン酸と組み合わされた重炭酸ナトリウム、及び酒石酸と組み合わされた重炭酸ナトリウムがある。
【0057】
医薬品添加物には着香料が含まれよう。外側の層に取り入れられる着香料は合成の香油及び着香芳香剤;天然油;植物、葉、花、及び果実からの抽出物;及びこれらの組合せから選択されよう。例を挙げると、これらにはシナモン油;ウィンターグリーン油;ペパーミント油;クローバー油;干草油;アニス油;ユーカリプタス;バニラ;レモン油、オレンジ油、グレープ及びグレープフルーツなどの柑橘油;並びにリンゴ、桃、梨、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップル及びアプリコットを含む果実エッセンスが含まれよう。
【0058】
別の実施態様では、医薬品添加物には甘味料が含まれよう。非限定的な例を挙げると、甘味料はグルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、及びこれらの混合物(担体として用いられない場合);サッカリン及び例えばナトリウム塩などのその多様な塩類;アスパルテームなどのジペプチド甘味料;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリジン;ステビア-レバウジアナ(原語:Stevia
Rebaudiana )(ステビオシド);スクラロースなど、スクロースのクロロ誘導体;及びソルビトール、マンニトール、シリトールなどの糖アルコール、等々から選択されよう。更に考察されるのは水素化でんぷん加水分解産物、及び合成甘味料3,6-ジヒドロ-6-メチル-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシド、特にカリウム塩(アセスルファム-K)並びにこれらのナトリウム及びカリウム塩である。
【0059】
着色料を提供することが好ましい場合がある。適した着色剤には食品、薬物及び美容用染料(FD&C)、薬物及び美容用染料(D&C)、又は外用薬物及び美容用染料(Ext. D&C)がある。着色料又は染料、それらの対応するレーキ、及び特定の天然及び誘導着色剤は、特定の実施態様での使用に適するであろう。
【0060】
調合物中の医薬品添加物又は医薬品添加物の組合せの重量での割合は、アミノ組成物の総重量の約 30%以下、約 25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約5%以下、約2%又は約1%以下であってよい。
【0061】
更に考察されるのは、投薬量を含め、しかしこれに限らず、ここで開示した組成物の送達方法である。ここで開示された又は明らかにされた組成物は、多様な形に調合でき、又は数多くの異なる手段によって投与できよう。本組成物を経口、直腸、又は非経口的に、必要に応じて従来許容可能な担体、アジュバント、及び賦形剤を含有する調合物にして、投与してもよい。ここで用いられる場合の用語「非経口」には、皮下、静脈内、筋肉内、又は槽内注射、又は輸注技術が含まれる。ある例示的な実施態様では、本発明の化合物を経口投与する。
【0062】
経口投与用の固体剤形には、カプセル、錠剤、カプレット(原語:caplet)、丸剤、トローチ、ロゼンジ、粉末、及び顆粒がある。カプセルは典型的には、本発明の組成物を含むコア材料と、コア材料を封入したシェル壁とを含む。コア材料は固体で、液体でも、又は乳濁液でもよい。シェル壁の材料は軟質ゼラチン、硬質ゼラチン、又はポリマーを含むであろう。適したポリマーには、限定はしないが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC)、メチルセルロース、 エチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートフタレート、 セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチル
セルローススクシネート及びカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系ポリマー;アクリル酸ポリマー及びコポリマー、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、アンモニオメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート及び/又はエチルメタクリレート(例えば商標名「Eudragit」の下で販売されているコポリマー)から形成されたもの;ポリビニルピロリドン、酢酸ポリビニル、ポリビニルアセテートフタレート、ビニルアセテートクロトン酸コポリマー、及びエチレン-ビニルアセテートなどのビニルポリマー及びコポリマー);及びシェラック(精製済みlac)がある。いくつかのこのようなポリマーは食味マスキング物質としても機能するであろう。
【0063】
錠剤、丸剤等を圧縮、多重圧縮、多重層形成、及び/又は被覆してもよい。コーティングは単一でも複数でもよい。ある実施態様では、コーティング材料は多糖、又は糖の混合物や、植物、真菌又は微生物から抽出された糖タンパク質を含んでもよい。非限定的な例には、コーンスターチ、小麦でんぷん、いもでんぷん、タピオカでんぷん、セルロース、ヘミセルロース、デキストラン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、イヌリン、ペクチン、マンナン、アラビアゴム、ローカストビーンゴム、メスキートゴム、グアーガム、カラヤゴム、ガッチーゴム、トラガカントゴム、フノリ、カラギーナン、寒天、アルギン酸塩、キトサン、又はゲランゴムがある。別の実施態様では、コーティング材料はタンパク質を含んでもよい。適したタンパク質には、限定はしないが、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ウェイタンパク質、ダイズタンパク質、コメタンパク質、及びコーンタンパク質がある。ある代替的な実施態様では、コーティング材料は脂肪又は油、特に高温融解性の脂肪又は油を含んでよい。脂肪又は油は水素化したものでも、又は部分的に水素化したものでもよいが、好ましくは、植物由来であるとよい。脂肪又は油はグリセリド、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、又はこれらの混合物を含んでよい。更に別の実施態様では、コーティング材料は食用ろうを含んでもよい。食用ろうは動物由来、昆虫由来、又は植物由来であってよい。非限定的な例には、みつろう、ラノリン、西洋ヤマモモろう、カルナウバろう、及び米ぬかろうがある。更に錠剤又は丸剤は腸溶コーティングと一緒に調製できよう。
【0064】
代替的には、ここで開示され、ここで自明とされた組成物を用いた粉末又は顆粒を食品中に取り入れてもよい。ある好適な実施態様では、食品は経口投与用の飲料であってもよい。適した飲料の非限定的な例には、果汁、果実飲料、人工着香飲料、人工甘味飲料、炭酸飲料、スポーツドリンク、液体ダイアリー(原語:diary)製品、シェーク、等々がある。経口投与用に適した他の手段には、水性及び非水性の溶液、乳濁液、懸濁液、並びに、非発泡性の顆粒から再構成された溶液又は懸濁液があり、中には適した溶媒、保存剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、着色剤、及び着香料が含まれる。
【0065】
食品はまた固型の食料品であってもよい。固型の食料品の適した例には、フードバー、スナックバー、クッキー、ブラウニー、マフィン、クラッカー、アイスクリーム・バー、冷凍ヨーグルト・バー、等々がある。
【0066】
本発明の組成物を、筋肉量、強度及び身体機能を増加させる方法で用いてもよい。ある実施態様では、本方法は、一日当り2回、食間に上述した通りに上記の組成物を投与するステップを含む。一日当りの量は約 10、 11、 12、 13、 14、 15、 16、 17、 18、 19、 20、 21、 22、 23、 24、 25、 26、 27、 28、 29、 又は30 gであってよい。代替的には、本組成物を、一日当り一日、一日当り三回、又は一日当り四回、投与してもよい。
【0067】
代替的な、又は更なる実施態様の送達方法においては、本組成物を運動と組み合わせて用いてもよい。例えば本組成物を運動の前又は運動直後に与えてもよい。
【0068】
以下の例では、組成物、それらの使用、及びこのような使用の効果の実施態様を提供する。
【実施例1】
【0069】
本組成物の適した用量の選択は、摂取された1グラム当りの有効性を最大にするために重要である。従って、ある研究を行って、筋肉タンパク質合成の刺激の大きさを、血漿中アミノ酸濃度の増加の程度に関係付けた。対象に3種類の用量のうちの一つのアミノ酸を輸注して、三種類の異なるレベルの血漿中アミノ酸を生じさせた。アミノ酸をAMINOSYN(R)(アミノ酸を含有する栄養製剤)として送達してもよい。その結果を、血漿中EAAsの増加と筋肉タンパク質のFSRとの間の関係を示した図2で強調しておく。血漿中EAA濃度は市販で入手できるTravasol(R)の輸注により増加した。血漿中EAA 濃度及び筋肉タンパク質合成の増加はすべて、基線に比較して顕著だった。87及び261 mg/kg/h でのFSRは43 mg/kg/h
(P<0.05)では著しく高かったが、互いの間では異ならなかった。
【0070】
血漿中必須アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、 リジン、メチオニン、スレオニン、フェニルアラニン)(EAAs)が約35%又は約60%、増加したとき、筋肉タンパク質FSRにも比例した増加があった。しかしながら、血漿中EAAsが約 300%を越えて増加した場合では、筋肉タンパク質合成は僅かにそれ以上、増加しただけだった。血漿中EAA濃度と筋肉タンパク質FSR との間の関係を用いて、提案する組成物中でのEAAsの投薬量を開発した。
【実施例2】
【0071】
高齢者における必須及び非必須アミノ酸の筋肉タンパク質同化作用に対する相対的役割を検討した。この場合、同化作用とは、筋肉タンパク質合成と分解(即ち筋肉タンパク質の正味の増量分及び減量分)の速度間の違いを言う。健康な高齢者のボランティア (BAA: n=8, 年齢 71 ± 2歳; EAA: n=6, 年齢 69 ± 2歳)に経口投与された約 18 gの必須アミノ酸(EAA)を持つ組成物実施態様に対する筋肉タンパク質代謝の応答を、約40 gの平衡させたアミノ酸(BAAs)
(約 18 g EAA + 約 22 g 非必須アミノ酸、NEAA) を持つ組成物実施態様に対する応答と比較した(図3) (35)。アミノ酸は牛肉タンパク質に見られるプロファイルにあった。図3は、牛肉タンパク質のプロファイル中の約 40 gm のアミノ酸、あるいは40gmの混合物が含有する約 18
gのEAAsの摂取に対する、正味の筋肉タンパク質平衡の応答を示している。両方の調合物とも、筋肉タンパク質合成の刺激が原因で、正味の筋肉タンパク質平衡を著しく向上させた。非必須アミノ酸をなくしても、この応答に悪影響はなかった。
【0072】
脚部全体のフェニルアラニンの正味のバランス(正味の筋肉タンパク質合成、即ちタンパク質合成と分解の差)は、両方の群(BAA: -16 ±5 乃至 16 ± 4; EAA:
-18 ± 5 乃至 14 ± 13; nmol・分-1・100ml 脚部-1)で基線(p<0.01)から同じように著しく増加したと判定されたが、これは筋肉タンパク質合成 (BAA: 43 ± 11 乃至 67 ± 11; EAA:
62 ± 6 乃至 75 ± 10; nmol・分-1・100ml 脚部-1) に同様の増加(p<0.01)があり、分解には何の変化もなかったためである。別の例では、非必須アミノ酸(NEAAs) のみの摂取では、筋肉タンパク質合成には何の影響もなかった。
【0073】
必須アミノ酸は高齢者における筋肉タンパク質同化作用のアミノ酸誘導性刺激を単独で担っていると結論付けられた。従って、非必須アミノ酸は、サルコペニア症用の栄養サプリメントから除いてもよいであろう。この観察は、筋肉タンパク質合成の刺激という点で通常の食品摂取よりも効率的なEAAベースのサプリメントの基盤を提供するものである(実施例4を参照されたい)。
【実施例3】
【0074】
実施例1及び2は、アミノ酸は筋肉タンパク質合成を刺激することを実証しているが、それでも尚、以前の研究では、耐性運動後の高齢者において高タンパク質食は筋原線維中タンパク質合成を亢進しなかったことが示されている。インシュリンの、通常はアナボリックな作用に対する感受性変化が、筋肉タンパク質合成に対する糖及びアミノ酸摂取間の正常な相互作用効果を損なうのではないかという仮説を検討した。
【0075】
筋肉タンパク質合成及び分解を、アミノ酸−糖混合物の基線吸収後状態及び投与中の若年(30 ± 3 歳)及び高齢 (72 ± 1 歳) のボランティアで、L-[リング-2H5]フェニルアラニン輸注、大腿動脈及び静脈のカテーテル法、及び筋肉生検を用いて測定した。基線アミノ酸ターンオーバーは若年及び高齢の対象において同様であった。両方の群で該混合物はフェニルアラニンの脚部への送達及び筋肉内への輸送を増加させた。フェニルアラニンの正味のバランスは両方の群で増加していた(若年、-27 ± 8 乃至 64 ± 17; 高齢者、-16 ± 4 乃至29 ± 7 nmol/(分・100 mL); P<0.0001、基線vs. 混合物)が、その増加は高齢者では著しく鈍いものだった (P=0.030 対、若年)。筋肉タンパク質合成は若年では増加していたが、高齢者では変わらないままだった [若年、61 ± 17 乃至 133 ± 30 (P=0.005);高齢者、62 ± 9 乃至70 ± 14 nmol/(分・100 mL) (P=S)]。両方の群で、混合物によりタンパク質分解は減少し (P=0.012) 、脚部糖取り込みは増加していた (P=0.0258) (図4)。図4は、若年及び高齢の対象におけるアミノ酸−糖サプリメント、対、同量のアミノ酸単独の、筋肉タンパク質同化作用に対する効果の比較を示す。脚部全体のフェニルアラニン正味のバランスは全ての群において経口によるサプリメント投与中に著しく増加した。しかしながら、アミノ酸単独に比べると、サプリメントへの糖添加により、若年では著しく高い応答が誘導されたが、他方、高齢者ではいずれの利益も加わらなかった。数値は平均±SEである。*、P < 0.01 対 基線; §, P < 0.05 対 他のもの。
【0076】
健康な高齢者では、筋肉タンパク質同化作用の応答は、同時の糖質摂取に対するインシュリン応答により損なわれると結論付けられた。この結果の実際的な意味合いは、高齢者における筋肉タンパク質合成を促進するための食餌用サプリメントはインシュリン応答を誘導してはならないということである。エネルギー及び食味を提供するために血糖症指数の低い糖質を用いると、惹起されるインシュリン応答を抑えられるというのはこれが理由である。
【実施例4】
【0077】
ホエイタンパク質の総成分に対する各EAAの比例上の貢献度をまねた実施例で、若年及び高齢者(年齢>65 歳)の対象に約 7 gm 又は約 15 gm のEAAs を与えた。7 gm の用量への応答では高齢者の応答は低く、総合成率は若年の僅かに半分、増加しただけだった。しかし、15gへの応答は、ホエイタンパク質でのそれの等しいプロファイルで必須アミノ酸への用量応答を示す図5に見られるように二つの群で同等だった。これらの結果は、高齢者で強力な応答を惹起するために充分な用量を提供することの重要性を強調するものである。この観察を以下の実施例では更に深く、掘り下げる。
【実施例5】
【0078】
EAAによる筋肉タンパク質合成の刺激機序には、1)タンパク質合成の開始に関与する因子の活性化;及び2)前駆体の利用能増加という二つの成分があると仮定された。図6に示したその結果は、タンパク質合成の開始を最終的に活性化するシグナル伝達経路の応答性は、高齢者では鈍らされたことを示唆しており、これはなぜなら、前駆体の利用能は若年及び高齢者の両方で同様に増加するためである。図6は、筋肉タンパク質合成に対するEAA混合物の組成物の効果を示す。投薬は約 7 gm の各混合物だった;低ロイシン =
26% ロイシン;高ロイシン = 40% ロイシン。* は、高齢者における低ロイシンとの有意な違いを示す(p<0.05)。+ は、若年における低ロイシンとの差を示す。最後に、EAA混合物の組成物を調節する効果を検査した。ロイシンの比率を上げると開始経路が活性化するであろうと考えられたため、アミノ酸の総混合物に対するロイシンの比率の上での貢献度を8(ホエイタンパク質での比率)から40パーセントに増加させた。その結果を、高齢者の対象において15 g EAA (N=7) 又は15g のホエイ(N=8)から3.5時間後の正味のフェニルアラニン取り込み(タンパク質合成を反映する)を示した図7に示す。* は、ホエイタンパク質に比較したときのP<0.05を示すが、両方の増加とも、絶食時の取り込みよりも有意に大きい。
【0079】
これらの結果は、余分なロイシンがあっても若年の対象では特に利点がないことを示している。おそらく、開始プロセスのより広範な活性化という点での利点は、前駆体としての他のEAAの供給減少で平衡されたのであろう。対照的に、高齢者における主な制限因子は、明らかに開始の活性化であり、それはなぜなら、高ロイシン混合物は、若年で同様に、約 7 g のEAAs に対する応答を効果的に増加させたからである。
【実施例6】
【0080】
麻酔したウサギにおいて、アルギニンが、輸注された総アミノ酸の約 50%まで増加したときに、筋肉タンパク質合成を刺激した。アルギニンをアミノ酸溶液に加えたときも、筋肉タンパク質分解は不変だったことは、正味の筋肉異化作用は実質的にはこれらの吸収語ウサギでは完全に反転されたことを意味するものである。このアルギニン効果は、ロイシンの比率を総量の約50%に増加させたことに対する応答に匹敵していた。アルギニンがタンパク質合成の開始を活性化する機序は、ロイシンと同じである。更に、アルギニンは高齢者では比較的に不足している。このように、アルギニンの追加は、高齢者においてロイシンと協働してタンパク質合成を活性化すると考えられる。
【実施例7】
【0081】
サプリメント投与が栄養学的にはカロリーとの相殺を伴うのであれば、サプリメントは、従来の摂取のみよりも大きく、正味の筋肉タンパク質合成を刺激できるはずである。これを理由として、約 15 g EAA のサプリメント投与(N=7;
67 ± 2 歳)及び 約 15 g の 高品質インタクトタンパク質(ホエイ;N=8; 69 ± 2 歳)に対する高齢者のボランティアによる正味の筋肉タンパク質合成(正味のフェニルアラニン取り込みに反映される)の急性応答を検討した。
【0082】
正味のフェニルアラニン取り込みは、正味のタンパク質バランスの指標であるが、ホエイ群に比較して, EAA 群では有意に大きかった(P<0.05;
53 ± 10 mg phe/脚部 EAA 対 21 ± 5 mg phe/脚部 ホエイ; 図7)。両方のサプリメントとも筋肉タンパク質合成を刺激した(p<0.05)が、増加はEAA群の方が大きかった。筋肉タンパク質の食事後画分合成速度はEAA群では 0.088 ±
0.011 %.-1 であり、そしてホエイ群では0.066 ±
0.004 %.hr-1 だった (p<0.05)。上述したような、フェニルアラニン取り込みの、mgのタンパク質への転化の結果、EAAサプリメントでは4.0 ± 0.4 g のタンパク質/脚部、対、ホエイタンパク質では2.2 ± 0.3 gのタンパク質/脚部、が生じ、15 g EAA サプリメントはホエイタンパク質よりも大きな同化作用性刺激を提供することが示された。EAA混合物はより効果的であっただけでなく、タンパク質資化の効率(正味のタンパク質合成/タンパク質
[即ち、AA] 摂取)は、ホエイタンパク質ではほぼ0.2であったのとは対照的に、EAA混合物ではほぼ1.1 だった。このような、EAAの四倍高い比率は、さもなければ排出されてしまうであろう非必須アミノ酸の効率的な再利用を反映したものである。この比率はまた、筋肉タンパク質合成の必須要件に適合させた、EAA混合物の最適な処方も反映したものである。これらの結果は、この案の基盤にある一般的仮説を裏付けるだけでなく、外因性AAの基本的な効果は、筋肉タンパク質の破壊ではなく合成に対して働くことを示している。このように、食間のEAAサプリメントの摂取は、食後異化作用の時間を減らし、筋肉タンパク質合成の頻回の刺激を提供する。
【実施例8】
【0083】
筋肉タンパク質合成は不活動性と共に減少するため、我々は、EAAは床上安静時の筋肉の合成能を回復させられるのではないかと提案した。この仮説は、28日間の床上安静時全般を通じて骨格筋タンパク質合成の反復的な栄養刺激は、LBMの喪失を緩和し、筋肉機能を維持するであろうというものだった。若くて健康なボランティア(n=7)の一群に、毎日3回、約 15
g のEAAs に 約 30 g のグルコースを加えたサプリメントを与え、他方の群 (n=6) にはプラセボ飲料を与えた。その結果は、28日間の不活動性の間を通じて、EAA飲料は正味の筋肉タンパク質合成を刺激することができたことを示した。対照的に、従来の食事置換型飲料臨床食 (Boost) の摂取は、特に不活動性後は、筋肉同化を刺激する上での効果は最小だった。EAAにグルコースを加えたサプリメントに対する筋肉の正味のバランスのピーク時応答は、Boosに対する応答のほとんど6倍の大きさだった。筋肉タンパク質合成の反復刺激はLBM の維持に並行した(図8A)。更に、LBMの保存により、長期の床上安静時の筋肉機能の消失が緩和する(図8B)。両脚のプラセボ群の筋肉量(二重エネルギーX線吸収測定[DEXA] 分析で推定される)は著しく減少した(28日間でほぼ438 ± 135 g ;図8A)。対照的に、脚部筋肉量はサプリメント治験では非有意な210 ± 125 g の増加を示したことは、ほぼ650gの筋肉/28日間という、一つの治験から他のものへの差を意味している。このように、図8は、必須アミノ酸(EAA) サプリメントは、7人の対象において28日間の床上安静後、脂肪なし体重(DEXAで、パネルA)を維持することを示している(P<0.05)。プラセボ群に比べてEAA群では 筋肉機能はより高い程度、保存される(パネルB)(N=6; P<0.05)。
【0084】
EAA + グルコースの効果はまた、単一の線維レベルでも明らかだった。7人の対象において28日間のサプリメント投与後、EAA + グルコースのサプリメントは速筋タイプII線維において床上安静誘導性のピーク・パワーや短縮速度の低下を防いだ(図9)。図9は、短縮速度(線維長(FL)/秒;P<0.01) 及びピーク・パワー (μN/FL/秒; P0.05) が、対プラセボ (N=6)に比較してEAA サプリメント (N=7)、を投与された対象で維持されたことを示す。プラセボ群は、床上安静時からの単線維ピーク・パワーの低下を示したが (57.6 ± 2.5 対 69.5 ± 3.5 μN/線維長 (FL)/秒; P<0.05)、EAA群ではピーク・パワーは維持された (63.9 ± 3.9 μN/FL/秒)。更に、短縮速度はEAA群では床上安静時前レベルで維持された (0.346 ± 0.015 FL/秒、対、0.323 ± 0.013 FL/秒、床上安静時; P<0.01)。このように、このデータは EAAは筋肉機能を単線維レベルで維持すること、そしてこれは全筋肉レベルでの機能の増加につながることを示すものである。
【0085】
これらの発見は二つの重要な点を強調する。第一に、若くて健康なボランティアにEAAs + グルコースをサプリメント投与すると、長期の不活動性が原因の筋肉量喪失が緩和した。第二に、筋肉タンパク質ターナー(原語:turner)の食餌サプリメントによる反復的刺激の結果、単線維レベルでの筋肉機能が向上し、この向上は、生理的レベルでの強度喪失の緩和につながった。
【実施例9】
【0086】
63歳以上の12人の対象に、8週間の間、一日当り2回、必須アミノ酸サプリメントの実施態様を投与した。該サプリメントの組成を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
対象 (n=12) は62歳を越えていた(平均= 65.6±2.8)。対象のうちの5人は男性であり、5人は女性だった。全体を通じて維持された食餌及び活動の記録の基本上で、二人の対象が落伍した。一つのケースでは、食餌タンパク質摂取がほぼ40%、変わってしまい、他方のケースでは対象が運動プログラムを開始及び構築するにつれ、活動レベルが劇的に変わった。
【0089】
最初のスクリーニング及び研究への受け入れ後、対象は予備検査に向けてクリニカル・リサーチ・センター(原語:Clinical Research Center (CRC) に報告された。その後彼らには、予め梱包された形のサプリメント投薬量が与えられた。彼らは朝食と昼食の間、そして昼食と夕食の間にカプセルを摂るよう、そして空の単一用量の容器を、いつ彼らがカプセルを摂ったかを記録した日誌と共に返却するように指示された。対象はCRCに4週目及び8週目に再検査のために報告した。
【0090】
コンプライアンスについては、対象はカプセル摂取について何の問題もなかった。しかし二人の対象が、一定の食餌摂取(一人の対象)又は活動レベル(一人の対象)を維持するようにとの指示に従わず、本研究から落伍した。従ってコンプライアンスは83%だった。
【0091】
脂肪なし体重に関しては、総脂肪なし体重はすべての対象で増加し、平均の増加は1.4 ± 0.3 Kg (平均 ± SEM)
(p=0.025)だった。同様に、脚部の脂肪なし量も平均して0.5
± 0.01 Kg (p=0.0045)、増加した。最初の脂肪なし量又は性別が、応答の規模に対して及ぼした効果は認められなかった。
【0092】
脚部強度に関しては総平均(すべての対象)の脚部強度は基線の134, 3 ± 21.8 から 149.9 ± 19.9
(平均 ± SEM) (p=0.0076)に増加した。
【0093】
多種の機能検査を行った。対象は虚弱についてはスクリーニングされなかった。その結果、検査のいくつかに対する能力は、研究開始前に最大に近かった。例えば、研究開始前のショート・フィジカル・パフォーマンス・バッテリー (SPPB) 検査の得点の平均は11.6 ±
0.3 (平均 ± SEM) だった。最大値は12であるため、いずれかの処置の効果を期待するためにも、改善に向けた充分な余地はなかった。EAA サプリメント投与の有意な正の効果が、最大値のなかった機能検査で観察された。EAAサプリメント投与後の歩行速度に規定値1.26 ± 0.015 m/s から0.12 ± 0.015
m/s(平均 ± SEM)の増加があった(平均 ± SEM) (p= 0.002)。
【0094】
EAAサプリメント投与の統計上有意な効果が観察された全てのケースにおいて、開始値と、処置の影響の程度との間に有意な相関があった。例えば研究開始時の対象が虚弱であるほど、EAAなどによる強度獲得が大きかった。
【0095】
従って、通常の食餌摂取を、二つの用量の11 g
の必須アミノ酸をサプリメントとして一緒に摂ると、健康な高齢者において筋肉量、強度、及び身体機能が増したと結論付けられた。
【実施例10】
【0096】
高齢者におけるインシュリンの潜在的同化作用に対する応答性欠如は、高インシュリン応答を惹起するサプリメントを望ましくないものにする。しかしながら、タンパク質合成応答を惹起するにはエネルギーは必要である。精確なエネルギー・コストを計算することができる。EAA摂取後の筋肉タンパク質合成の刺激にかかる推定エネルギー費の計算は6kgという、高齢者の平均脚部筋肉量
(LMM) に基づく。一方の脚の筋肉は総筋肉量のほぼ20%を占め、脚部LMMの約 26% はタンパク質結合型アミノ酸である。筋肉タンパク質合成の合計速度を計算するために、以前の研究で筋肉タンパク質の部分合成速度は15グラムのEAA摂取後、平均0.03 /時増加したことが判明している。筋肉タンパク質合成のエネルギー・コストを計算するために、(1)平均1モルのアミノ酸 (AA) =150 g の AAとする; (2)1モルのAAを合成するコストは4ATPに等しい;そして(3)1モルのATPが加水分解すると20 Kcalのエネルギーが放出される、と想定した。式は以下の通りに表される:
(1) 筋肉の総結合型AA含有量 (gm)= Leg LMM (グラム) x 5 x 0.26
(2) AAの 筋肉タンパク質への取り込み (gm/h) =
(1) x FSR (1/h)
(3) 筋肉タンパク質合成の刺激のエネルギー・コスト (Kcal/h) = 2X 1 モルのタンパク質結合型アミノ酸/
150 g 筋肉 x 4モル ATP/モルのタンパク質結合型アミノ酸 x 20 Kcal/モル ATP。
【0097】
これらの計算は、EAAに対するタンパク質合成型応答には約 108 Kcal のエネルギーが必要であることを示している。このようなエネルギー量はほぼ27gの糖質で提供することができる。
【実施例11】
【0098】
多種の研究で用いられた薬理的処置は高齢者の筋肉量及び強度を増加させている。最も強力だったのはホルモン・テストステロン(男性において)、成長ホルモン、及びインシュリンであった。インシュリンの効果は、EAAと有効性が同じ範囲のもので唯一だった。しかしながら、インシュリンでの結果は、正常血糖を維持するためにグルコースを同時に輸注するという、大変緊密に制御された研究室環境においてであった。このアプローチは自由な生活環境では実際的でないため、関係する比較はEAAとテストステロンと成長ホルモンとの間である。EAAの効果は、単一用量の15 gのEAAの摂取後の筋肉タンパク質合成の増加を、インシュリン、テストステロン及び成長ホルモンによる薬理処置と比較したものを示す図10に示すように最も大きい。
【0099】
以上、本発明は特定の好適な実施例との関係から開示してきたが、これは紹介された詳細のすべてへの限定と捉えられてはならない。記載された実施例の改変及び変更が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われようが、他の実施態様も、当業者であれば理解されるように、本開示に包含されるものと理解されねばならない。
【実施例12】
【0100】
絶食状態では、EAA及び非必須アミノ酸(NEAA)の両者に、タンパク質から細胞内遊離アミノ酸プールに、そしてまたタンパク質へという一定のサイクルがある。図11は、絶食中の肝臓と筋肉との間の窒素フラックスを示す。しかしながら、タンパク質分解の結果放出されるアミノ酸の意部分は代謝され、その結果アラニン及びグルタミンが産生される。更にEAA及び他のNEAAの血漿中への正味の放出もある。アラニン及びグルタミンは、代謝されたアミノ酸由来の窒素(N)が肝臓へ輸送されて戻され、最終的には尿素に取り込まれた後に排出されるという基本の形として役立っている。
【0101】
EAA摂取後は、EAAの正味の取り込みにより状況は変わる。図12は、EAA摂取後の肝臓と筋肉の間の窒素フラックスを示す。この結果、合成が刺激される。NEAAは新しいタンパク質の合成に必要であるため、タンパク質分解から放出されるNEAAは、より高い程度でタンパク質にリサイクルされるが、これは、血漿中に放出される量が少ないことを意味する。こうしてアラニン及びグルタミン濃度は落ちる。それぞれ6 gmのEAAの大量摂取後のアラニン濃度に対するこの効果を0分後及び60分後で図13に示す。アラニン及びグルタミンは尿素産生の基本的な前駆体であるため、尿素産生は図14に示すように、EAA摂取後も増加しない。これは、Nの摂取増加が尿素産生と腎臓の排出への負担が増加する、ホエイタンパク質などのインタクトタンパク質の摂取に対する応答とは対照的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイシン、糖質、及びクレアチンを含む、筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる物質の組成物。
【請求項2】
ロイシン、他のアミノ酸、糖質、及びクレアチンを含む、筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる物質の組成物であって;
前記他のアミノ酸がヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、アルギニン、グリシン、カルニチン、及びシトルリンから成る群より選択される、組成物。
【請求項3】
ヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアンラニン(原語:phenylanlanine)、スレオニン、グリシン及びアルギニンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記他のアミノ酸がヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、グリシン及びシトルリンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記糖質がリボースを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ロイシンが質量で前記組成物の約 10 乃至約 25パーセントのパーセンテージを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ロイシンが質量で前記組成物の約11 乃至約 20パーセントのパーセンテージを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が液体投与のための手段の成分である、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
医薬品添加物を更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる方法であって;
患者を有するステップと;
ロイシン、糖質、及びクレアチンを含む物質の組成物を前記患者に送達するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記患者が高齢者である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記送達するステップが経口である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記送達するステップが液体投与による、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、ヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、アルギニン、グリシン、カルニチン、及びシトルリンから成る群より選択される他のアミノ酸を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ロイシンが質量で前記組成物の約 10 乃至約 25パーセントのパーセンテージを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ロイシンが質量で前記組成物の約 11 乃至約 20パーセントのパーセンテージを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が医薬品添加物を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記糖質がリボースを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
高齢者において筋肉量、強度、及び機能的能力を増加させる方法であって;
ロイシン、糖質、及びクレアチンを含む物質の組成物を作製するステップと;
前記物質の組成物を高齢者の患者に提供するステップと
を含む、方法。
【請求項20】
前記組成物がヒスチジン、イソロイシン、バリン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、アルギニン、グリシン、カルニチン、及びシトルリンから成る群より選択される他のアミノ酸を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ロイシンが質量で前記組成物の約 10 乃至約 25パーセントのパーセンテージを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ロイシンが質量で前記組成物の約 11 乃至約 20パーセントのパーセンテージを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記提供するステップが経口である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記提供するステップが液体投与による、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記糖質がリボースを含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−509293(P2011−509293A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542243(P2010−542243)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/087956
【国際公開番号】WO2009/088738
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510190875)ヘルススパン ソリューションズ, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】