説明

耐久性グラファイトコネクタ及びそれを製造する方法

【課題】グラファイト部品を含む物品を提供する。
【解決手段】本物品のグラファイト部品は、熱分解グラファイト(pG)で被覆されて、機械的強度が非被覆グラファイト部品よりも少なくとも25%高くなるようになる。半導体処理組立体に用いるヒータのようなコネクタ用途では、pG被覆構成要素は、少なくとも電気絶縁材料の保護層でオーバコートされ、その場合、pG被覆グラファイト部品の一部は、組立体との電気接続部を形成するために露出される(保護層で被覆されていない)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封グラファイト部品に関し、1つの実施形態では、ウェーハ処理装置における延長した有効寿命の被覆グラファイトコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
グラファイトは一般に、溶融金属及び合金を含む半導体処理又は冶金処理のような高温用途に用いられる。グラファイトは3550℃の融点を有し、これは元素の中で最も高く、従って他の材料に比べて優れた耐熱性を有する。この材料は、容易に機械加工でき、良好な導電性を有し、耐熱衝撃性に優れ、かつ極度な高温において高レベルの耐熱性及び強度を有する。また、グラファイト構成要素は、同様の大きさの金属又はセラミック構成要素よりも安価である。
【0003】
グラファイトは、プラズマチャンバ内にウェーハ基板を保持するようになったヒータ用接続ポストとしてしばしば用いられる。特許文献1には、そのような用途が開示されており、ここでは、グラファイトポストは、ヒータの加熱エレメントを外部電源に接続するために用いられている。特許文献2には、ヒータを外部電源に接続するためのグラファイト同心ポスト(中実又は中空のいずれか)を備えたウェーハ支持組立体が開示されている。特許文献3には、円柱体と1対のグラファイト「脚部」すなわち接続ポストとを有するヒータが開示されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されているような従来技術の1つの実施形態では、グラファイトポストは、少なくともグラファイトを反応環境から保護する例えば窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の保護層で被覆される。しかしながら、グラファイトポストの特定の部分は、グラファイトポスト、従ってヒータに対して電気接続を行うことができるように露出させなければならない。皮膜層は、腐食性環境においてグラファイト部品に保護を与える。しかしながら、被覆を受けるのに適したグラファイトは一般的に、機械的強度が不足しており、引張強度及び曲げ強度は1〜4ksiの範囲にある。そのような接続に用いられる例えばタンタル及びモリブデンなどの金属の引張強度及び曲げ強度の典型的な値は、100ksiである。グラファイトの機械的強度の不足により、荷重又は応力が加わるとグラファイト部品すなわちグラファイトポストの割れ又は破損が生じる可能性がある。これは、グラファイトポストの外部電源への接続の間、熱サイクルの間、処理ツール内への設置の間及び時には出荷の間においてさえ起こる可能性がある。保護皮膜層で封入されていない領域で発生する損傷部分は、そうでない領域よりも非常に頻繁に発生する。被覆グラファイトセクションは、非被覆部分ほど頻繁ではないが、同様に作動中にかなり頻繁に損傷する。グラファイト部品の被覆セクション又は非被覆セクションにおけるいずれかの損傷状態は、加熱ユニットを機能しないものにすることになる。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,343,022号
【特許文献2】米国特許公開第2004173161号
【特許文献3】米国特許第5,233,163号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
優れた導電性及び耐熱衝撃性のようなグラファイト固有の特性を損なわずに、特にヒータ用接続ポストのようなグラファイト部品の寿命を延ばしかつその強度を高めることに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、グラファイト物品に関し、本グラファイト物品は、0.001インチ〜0.10インチの平均厚さを有する熱分解グラファイト(pG)を含む皮膜層を有し、本グラファイト物品は、pG皮膜層がない状態の対応するグラファイト物品よりも少なくとも25%高い引張強度を有する。1つの実施形態では、本グラファイト部品にはさらに、B、Al、Si、Ga、耐熱硬金属、遷移金属及びその組合せからなる群から選択された元素の窒化物、炭化物、炭窒化物又は酸窒化物の少なくとも1つを含む保護皮膜層が設けられる。
【0008】
1つの実施形態では、本発明は、ヒータ組立体のウェーハ基板ホルダを支持しかつヒータの加熱エレメントに対する電気接続を行うのに用いるグラファイトコネクタに関する。本グラファイトコネクタはさらに、少なくとも熱分解グラファイト(pG)の層と少なくともpBN又はAlNの層を含むオーバコート保護層とで被覆される。pG被覆グラファイトコネクタの少なくとも一端部は、加熱エレメントを外部電源に接続するために露出される(pBN及び/又はAlNのいずれによっても被覆されてない)。
【0009】
1つの態様では、本発明は、グラファイト部品を含む物品に関し、グラファイト部品は、熱分解グラファイト(pG)で被覆されて、機械的強度が非被覆グラファイト部品よりも少なくとも50%高くなるようになる。半導体処理組立体に用いるヒータのようなコネクタ用途では、pG被覆構成要素は、少なくとも電気絶縁材料の保護層でオーバコートされ、その場合、pG被覆グラファイト部品の一部は、組立体との電気接続部を形成するために露出される(保護層で被覆されていない)。
【0010】
本発明はさらに、グラファイト部品に0.001インチ〜0.10インチの平均厚さを有する熱分解グラファイトの皮膜層を設けることによって、該グラファイト部品の高温環境における引張強度、従って有効寿命を高める方法に関する。1つの実施形態では、pG被覆グラファイト部品にはさらに、B、Al、Si、Ga、耐熱硬金属、遷移金属及びその組合せからなる群から選択された元素の少なくとも窒化物、炭化物、炭窒化物又は酸窒化物を含むオーバコート保護層が設けられる。1つの実施形態では、pG被覆グラファイト部品の少なくとも一部分は、グラファイト部品を導電体として機能させるために露出される(被覆されていない)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書で用いる場合、「第1の」、「第2の」等の用語は、いかなる序列又は重要度も意味するものではなく、むしろ1つの要素を別の要素と区別するために用いており、また数詞を付していない用語は、数量の制限を意味するものではなく、むしろ記載したアイテムが少なくとも1つ存在することを意味する。本明細書に開示した全ての範囲は、包括的なものでありかつ組合せ可能である。さらに、本明細書に開示した全ての範囲は、端点を含みかつ独立して組合せ可能である。また明細書及び特許請求の範囲で用いる場合、「〜を含む」という用語は、「〜から成る」及び「本質的に〜成る」実施形態を含むことができる。
【0012】
本明細書で用いる場合、関連する基本的な機能を変更せずに変化させることができるあらゆる定量的表現を修正するために、近似言語を用いることができる。従って、「約」及び「実質的に」のような1つ又は複数の用語によって修飾した値は、場合によっては、特定した正確な値に限定されないものとすることができる。
【0013】
また、本明細書で用いる場合、「ウェーハ処理装置」という用語は、1つ又は複数の「ヒータ」、「チャック」、「静電チャック」、「ESC」及び「サセプタ」と互換的に用いることができ、半導体素子の製造時にウェーハ、基板又は別のタイプの被加工物を支持するための装置を意味する。ウェーハ処理装置の1つの実施形態では、ウェーハは、外部電極とウェーハ処理装置内に埋め込んだ電極との間に発生した静電気力によってチャック面に固定される。ESCは、Columbicタイプ又はJohnson−Rahbekタイプとすることができる。
【0014】
本明細書で用いる場合、「保護皮膜」層は、1つ又は複数として用いる「保護フィルム皮膜層」、「皮膜層」又は「皮膜フィルム」、或いは「保護層」、或いは「保護皮膜層」と互換的に用いることができ、部品を被覆するための少なくとも1つの層又は複数の層が存在することを示す。
【0015】
本明細書で用いる場合、「接続組立体」という用語は、「コネクタ組立体」又は単に「コネクタ」と互換的に用いることができ、2つの異なる部品又は構造体の接続に用いるグラファイト部品であって、2つの部品間での電気的接続性が必要である。グラファイト部品は、例えばヒータ組立体の場合には2つの部品又は構造体の1つと一体形部品とすることができ、或いはグラファイト部品は、ヒータ組立体を外部電源に接続するためにヒータ本体と一体形のポスト又はコネクタとすることができる。
【0016】
本発明は、グラファイトの優れた導電性及び耐熱衝撃性を維持しながらグラファイト部品の強度を高める方法の改善に関する。熱分解グラファイトの引張及び曲げ強度は、グラファイト構成要素に熱分解グラファイトの薄い皮膜を付加することによってグラファイトの引張及び曲げ強度の約10倍(グラファイトの1〜4ksiに比べて12〜20ksiの範囲にある)になるので、グラファイト部品の導電性特性を依然として維持しながら該部品の複合強度が増加する。
【0017】
被覆グラファイトコネクタ
1つの実施形態では、グラファイト部品の少なくとも一部は、熱分解グラファイト(「pG」)皮膜層で被覆されて、グラファイトポストに構造的完全性が付加される。pG皮膜層は、グラファイト部品に非被覆部品よりも少なくとも25%高い引張強度の増加を与えるのに十分な厚さで施される。1つの実施形態では、皮膜層は、被覆グラファイト部品の引張強度が非被覆グラファイト部品よりも少なくとも50%高くなるのに十分な厚さで施される。また別の実施形態では、被覆グラファイト部品は、少なくとも70%の引張強度の増加を示す。1つの実施形態では、pG皮膜層は、0.001インチ〜0.10インチ(0.00254〜0.254cm)の範囲の平均厚さを有する。第2の実施形態では、pG皮膜層は、0.005インチ〜0.05インチ(0.0127〜0.127cm)の範囲の厚さを有する。第3の実施形態では、皮膜層は、少なくとも0.0254インチの厚さを有する。第4の実施形態では、皮膜層は、0.05インチ(0.0254cm)よりも薄い厚さを有する。
【0018】
半導体処理用途のウェーハ支持組立体におけるコネクタ又はポスト、例えばヒータとして本発明のグラファイト部品を用いる場合には、別の付加的な利点がある。これら用途では、グラファイト部品のほとんどは(電源との電気接続のためのコネクタの露出した端部を除いて)、pBN、AlN等のような保護電気絶縁材料で被覆される。グラファイト部分をpG層で被覆した「強化」グラファイト部品では、pGは、グラファイトの細孔(1つの実施例では、典型的な容量空隙率は10%〜20%である)を充填し、従ってグラファイト部品の合成強度をさらに高くする傾向がある。
【0019】
pG皮膜によって強化したグラファイト部品のさらに別の利点もある。用いるグラファイトに応じて、グラファイトは一般的に、1.2〜8.2×10−6/Kの範囲の熱膨張率(CTE)を有する。熱分解グラファイトは、a−b方向で0.5×10−6/K及びc方向で20×10−6/KのCTEを有する。熱分解窒化ホウ素は、a−b方向で2×10−6/K及びc方向で40×10−6/KのCTEを有する。pBNで被覆した(露出した/被覆していない電気接続部を除いて)ヒータ用の強化グラファイトコネクタの1つの実施形態では、オーバコートpG層は、隣接するpBN層のCTEに緊密に一致したCTEを有するので、pBNとpGとの間に優れた密着性があり、従って全体としてヒータの剥離又は割れの欠点を軽減する。
【0020】
pG皮膜層はさらに、酸化環境におけるグラファイトの腐食速度を低下させることで下にあるグラファイト部品を保護する。グラファイトは酸化を生じやすいことが知られており、この酸化は、比較的低温で始まり、温度が上昇するにつれ次第により深刻になり、グラファイト部品の変化によって判定されるようになる。1つの実施形態では、グラファイト部品は、強化グラファイト部品が少なくとも800℃の温度で10nm/分よりも小さい酸化率(酸化速度)(重量損失から表面からの厚さの損失に換算した)になるのに十分なほど厚いpG層で被覆される。第2の実施形態では、pG被覆部品は、少なくとも600℃の温度で5nm/分よりも小さい酸化率である。第3の実施形態では、pG被覆部品は、少なくとも500℃の温度で2nm/分より小さい酸化率である。
【0021】
ヒータコネクタとして用いる強化グラファイトコネクタの実施形態では、保護皮膜層はpBNに限定されないことに留意されたい。保護皮膜層は、B、Al、Si、Ga、耐熱硬金属、遷移金属及びその組合せからなる群から選択された元素の窒化物、炭化物、炭窒化物又は酸窒化物のいずれかから選択することができる。1つの実施形態では、皮膜層は、25〜1000℃の範囲の温度において2.0×10−6/K〜10×10−6/Kの範囲のCTEを有する。1つの実施形態では、皮膜は、約2マイクロメートル(μm)よりも大きいか又はそれに等しくかつ500μmよりも小さい厚さを有する。別の実施形態では、保護皮膜の厚さは、約10μmよりも大きいか又はそれに等しい。第3の実施形態では、厚さは、約50μmよりも大きいか又はそれに等しい。さらに別の実施形態では、厚さは、約75μmよりも大きいか又はそれに等しい。第4の実施形態では、厚さは、5〜300μmの範囲にある。
【0022】
1つの実施形態では、保護皮膜層は、熱分解窒化ホウ素、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、窒化ケイ素又はその複合体の1つである。別の実施形態では、皮膜層は、例えばAlN、AlON、Al等のような同じ材料の複数皮膜の多層であるか、又は相次いで被覆したAlN、AlON、pBN、SiN等の複数の異なる層である。さらに別の実施形態では、グラファイト部品は、最初にpGで被覆され、その後pBNの皮膜、次にpG皮膜の別の層、その後AlN皮膜が相次いで被覆される。
【0023】
ポスト又はチューブ(中空又は部分的に中空の中心部を有する)の形態のグラファイトコネクタの1つの実施形態では、コネクタはさらに、中空コネクタの外側及び/又は内側表面を熱分解グラファイト皮膜層で被覆することによって強化される。図2Aに示すような中空グラファイトコネクタ又はポストのさらに別の実施形態では、グラファイトコネクタの構造的完全性はさらに、金属ロッドのようなコア部材を中空コア内に挿入することによって補強される。
【0024】
1つの実施形態では、コア部材は、グラファイトコネクタの中空中心部内に最後まで挿入するのに十分な大きさの中実ロッドである。第2の実施形態では、コア部材は、コネクタ内に途中まで挿入される。第3の実施形態では、コア部材は、図2Bに示すように円筒形チューブの形態になっており、その長さに沿った全長(部分長)スリットを備え、従ってコア部材をコネクタの中空コア内に容易に摺動挿入することを可能にし、かつ/又は異なる部品間の熱的な不整合応力を軽減する。
【0025】
グラファイトコネクタに十分な構造的強度を与える中空コア部材を備えた1つの実施形態では、支持コア部材はさらに、ポストへの熱伝達を減少させることに関して付加的な利点をもたらす。図3の応力モデルの線図に示すように、ロッド(中実コア)コネクタの固定端部においてまたロッドコネクタの中心軸線付近において、応力はほぼゼロである。図示するように、応力はロッドの半径に沿って線形に増大するので、応力は、断面の円周の周りに一層集中する。従って、中実コネクタ(ロッドのような)から中空コネクタ(チューブのような)にすることでは、ロッドの強度は大きくは低下しない。しかしながら、熱伝導は断面積に比例するので、中実コネクタから中空コネクタにすることにより、熱伝導が著しく減少し、従ってコネクタの端部の温度をさらに低下させることになる。
【0026】
形成方法
熱分解グラファイト(「pG」)は、ガス状炭化水素化合物を熱分解反応させてグラファイトコネクタの表面上に熱分解グラファイトを堆積させるようにすることによってグラファイト部品上に形成することができる。保護皮膜層、例えばpG及び他の皮膜材料は、当技術分野で公知の方法、例えば膨張熱プラズマ(ETP)法、イオンプレーティング法、イオンプラズマ蒸着法(又は、陰極アーク蒸着法)、化学気相蒸着(CVD)法、プラズマ強化化学気相蒸着(PECVD)法、有機金属化学気相蒸着(MOCVD)法(また、有機金属化学気相成長(OMCVD)法とも呼ばれる)、有機金属気相エピタキシ(MOVPE)法、スパッタリングのような物理的気相成長法、反応性電子ビーム(eビーム)堆積法、及びプラズマ溶射法のいずれかによって、グラファイト部品上に堆積させることができる。例示的な処理法は、ETP、CVD及びイオンプレーティングである。
【0027】
グラファイト部品構造体には、それに限定されないが、グラファイトロッド、中空グラファイトロッド、スタンプ、リード線、ネジ付きナット等が含まれる。強度が高められかつ有効寿命が延びた本発明のpG被覆/強化グラファイト部品はまた、半導体処理におけるグラファイトコネクタ/ポスト以外の用途に用いることができる。1つの実施形態では、pG被覆/強化グラファイト部品は、結晶引上げ装置のヒータ機構における該ヒータが昇温した時に炉内に突出させる電極の上方部分の少なくとも一部に用いられる。
【0028】
本発明のグラファイト部品の他の実施例には、それに限定されないが、炉(CVD)用途用のエレメント支持体、支持バー及び固定具と、プレート、ナット、ロッド、スペーサ、ボルト、スリーブ、ディスク、チューブ、ワッシャ及びスタッドのような一般的ハードウェア組立体と、ギヤ、ローラ、シャフト、摺動プレート、リフトオフアーム、軸受、押込みバー、停止ロッド等を含む一般的動力学ハードウェア用途と、コネクタ(図に示したような)、電力引込み線、スラット及び加熱エレメントのような一般的ヒータハードウェアとが含まれる。過酷な/腐食性の環境からのいずれの保護が必要かのように用途に応じて、部品はさらに、少なくともpBN、AlN等のような電気絶縁層で被覆することができる。電気接続が必要な場合には、pG皮膜層の少なくとも幾らかが露出されて電源との接続を可能にする。
【0029】
半導体処理業界におけるヒータ組立体の例示的な用途に用いる図を参照して、本発明の強化グラファイトコネクタの様々な実施形態を以下に説明する。
【0030】
1つの実施形態では、強化グラファイト部品は、図1Aに示すように二本グラファイトポストを備えたヒータ10に用いられ、図1Aは、ほぼ円形断面の被覆グラファイト本体10と本体10から延びる2つのタブ2とを示すヒータの上面図である。グラファイト本体10(加熱パターン又は溝6を除く)は、少なくとも保護層9(図示せず)で全体的に被覆される。加熱エレメント1は、皮膜層下方のグラファイトを露出させて溝6を通る電気回路を形成する。孔3が、グラファイトコネクタ又はポスト11を被覆グラファイト本体10に取り付けるためにタブ2を貫通してドリル加工される。
【0031】
図1Bにおいて、ポストコネクタは、グラファイトポスト12及び13とグラファイトネジ14及び15とを含む。グラファイトポストは、一端部にネジ14及び15を受けるネジ孔16及び17を有し、図1Aの被覆グラファイト本体と結合されるようになる。ポストの他端部には、外部電源(図示せず)に取り付けるために露出セクション18及び19が設けられる。各ポストコネクタ11について一対の可撓性グラファイトワッシャ7及び8を用いて、各ポストコネクタ11と加熱エレメント1との間の安定した物理的及び電気的取り付けを形成する。グラファイトポスト11は、外部電源への取り付けのために被覆しない状態のままにしておくタップ孔18(左側)又はリング19(右側)を除いて、少なくとも保護層9で被覆される。保護層9は、B、Al、Si、Ga、耐熱硬金属、遷移金属及びその組合せからなる群から選択された元素の窒化物、炭化物、炭窒化物又は酸窒化物のような材料を含む。1つの実施形態では、保護層9は、熱分解窒化ホウ素である。第2の実施形態では、保護層9は、窒化アルミニウムである。
【0032】
さらに別の実施形態では、強化グラファイトコネクタは、図4に示すような「キノコ型」ウェーハ加熱組立体の単体構造組立体に用いるシャフトの形態になっている。この図において、装置20は、プラットフォーム22とプラットフォーム22から延びかつ実質的にプラットフォーム22の長手方向軸線と直交したシャフトの形態の支持構造体24とを含む。装置の外表面は、シャフト24の末端部26を除いて少なくとも保護層9で被覆され、この非被覆端部は外部電源に接続するためのものである。シャフト24は、グラファイトの中実体から中空のグラファイトコアを形成するように機械加工し、後でグラファイトプラットフォームに機械的に取り付けることができる。別の実施形態では、シャフトは、該シャフト24及びプラットフォーム22が単一の単体構造グラファイト本体を形成するように、グラファイトプラットフォーム22の構成に合わせて製造される。導電体25は、その一端部で、露出端部26(保護層によって被覆されていない)を通して外部電源に接続される。
【0033】
図5は、円柱形態のグラファイトコネクタのさらに別の実施形態を示す。図において、ウェーハ支持組立体30は、ウェーハ保持基体を形成した平坦面38を有する円筒形グラファイト本体を含む。開口部39が、一対のほぼ平行な柱37及び平行な脚部すなわちコネクタ35のために本体の下方部分に形成される。複数の溝(図示せず)が、ヒータパターンのために柱37上に形成される。加熱エレメントは、脚部コネクタ35を介して外部熱源に接続される。柱37、脚部35を含むが脚部の露出した熱分解グラファイト被覆端部36を除く円筒形本体全体は、少なくとも保護皮膜層(図示せず)で被覆される。
【0034】
実施例
本明細書では、本発明を説明するために実施例を示すが、これら実施例は、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【0035】
実施例1
グラファイトコネクタとして用いる3/8インチの直径を有するグラファイトポストの試験のために、米国特許第5,343,022号に開示されているような熱分解加熱ユニットを用いた。しかしながら、グラファイトポスト全体は、最初に0.005インチの厚さのグラファイト層で被覆した後にヒータ組立体として組み立てた。グラファイトポストの端部は電気接続のために露出させることになっているので、端部(長さ約1/2インチ)は、追加pBN被覆のための次のステップではマスイクした。露出したグラファイト端部は、ポスト全体にpBN被覆を行い、次にpBNをその後に機械的に除去又はエッチングすることによって得ることができたことに留意されたい。
【0036】
実施例1を反復したが、しかしながら、各グラファイトポストは、米国特許第5,343,022号に記載されているのと同様にかついかなるpG強化皮膜層もない状態で製作した。
各グラファイトポストに対して、3点曲げ試験を実施した。試験結果は、pG被覆グラファイトポストは、比較実施例のpG皮膜がない状態でのグラファイトポストよりも引張強度が70%増加したことを示した。これは、有効寿命も対応して増大すると解釈される。
【0037】
実施例2
実施例1のpG被覆グラファイトポスト(但し、追加pBN皮膜がない状態の)及び非被覆グラファイトポスト(いかなるpGも追加pBN皮膜もない状態の)を、それぞれオーブン及び管状炉内で高温に加熱した。部品の重量における変化を記録して、オーブン又は環状炉内の酸化によって引き起こされた重量の変化を判定した。実験の結果は、図6に示すようなものであり、酸化率は、重量損失から厚さ損失にナノメートル/分として換算した。
【0038】
この記載した説明では、本発明を開示するために最良の形態を含む実施例を用いており、あらゆる当業者が本発明を製作しかつ利用するのを可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】Aは、二本ポスト組立体を備えたヒータの場合での、本発明の耐久性/強化グラファイトコネクタを使用したヒータの上面図。Bは、Aのヒータの断面図。
【図2】Aは、中空コアを有するグラファイトコネクタの別の実施形態の断面図。Bは、Aのグラファイトコネクタの中空コア内への挿入に用いるコア部材の断面図。
【図3】中実グラファイトコネクタの応力状態を示す図。
【図4】単体構造又は「キノコ型」ヒータ組立体の形態での、本発明の強化グラファイトコネクタを使用したヒータの別の実施形態の断面図。
【図5】本発明の強化グラファイトコネクタを使用したヒータの別の実施形態の断面図。
【図6】高温における被覆グラファイトコネクタ対非被覆部品の酸化率を比較したグラフ。
【符号の説明】
【0040】
1 加熱エレメント
2 タブ
3 孔
6 溝
7、8 グラファイトワッシャ
9 保護層
10 グラファイト本体
11 グラファイトコネクタ
12、13 グラファイトポスト
14、15 グラファイトネジ
16、17 ネジ孔
18、19 露出セクション


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体処理環境用の組立体で用いるためのグラファイト物品であって、
グラファイトコアと、
熱分解グラファイトを含み、0.001インチ〜0.10インチの平均厚さを有する皮膜層と、
前記熱分解グラファイト皮膜層の少なくとも一部分上に配置され、B、Al、Si、Ga、耐熱硬金属、遷移金属及びその組合せからなる群から選択された元素の窒化物、炭化物、炭窒化物又は酸窒化物の少なくとも1つを含む保護皮膜層と、を含み、
該グラファイト物品が、前記熱分解グラファイト皮膜層及び保護皮膜層がない状態の対応するグラファイト物品よりも少なくとも25%高い引張強度を有する、
グラファイト物品。
【請求項2】
該グラファイト物品が、前記熱分解グラファイト皮膜層及び保護皮膜層がない状態の対応するグラファイト物品よりも少なくとも50%高い引張強度を有する、請求項1記載のグラファイト物品。
【請求項3】
前記熱分解グラファイト皮膜層が、0.005インチ〜0.05インチの厚さを有する、請求項1及び請求項2のいずれか1項記載のグラファイト物品。
【請求項4】
前記熱分解グラファイト皮膜層が、0.0245インチ〜0.05インチの厚さを有し、エレメント支持体、支持バー、固定具、プレート、ナット、ロッド、スペーサ、ボルト、スリーブ、ディスク、チューブ、ワッシャ、スタッド、ギヤ、ローラ、シャフト、摺動プレート、リフトオフアーム、軸受、押込みバー、停止ロッド、コネクタ、電力引込み線及びスラットの1つとして使用するためのものである、請求項1から請求項3のいずれか1項記載のグラファイト物品。
【請求項5】
前記グラファイトコアが、表面を有する中空体であり、前記中空コアの表面の少なくとも一部分が、少なくとも熱分解グラファイト皮膜層の0.001インチ〜0.10インチの平均厚さを有する層によって被覆される、請求項1から請求項3のいずれか1項記載のグラファイト物品。
【請求項6】
前記熱分解グラファイト皮膜層が、B、Al、Si、Ga、耐熱硬金属、遷移金属及びその組合せからなる群から選択された元素の窒化物、炭化物、炭窒化物又は酸窒化物の少なくとも1つを含む保護皮膜層によってさらに被覆される、請求項5記載のグラファイト物品。
【請求項7】
前記グラファイトコアが中空であり、該グラファイト物品が、前記中空コア内に配置された支持部材をさらに含み、前記支持部材が、金属を含むチューブである、請求項5及び請求項6のいずれか1項記載のグラファイト物品。
【請求項8】
化学気相蒸着炉内のウェーハ処理装置に用いるためのものであり、該グラファイト物品が、少なくとも600℃の温度において10nm/分よりも小さい酸化率を有する、請求項1から請求項7のいずれか1項記載のグラファイト物品。
【請求項9】
該物品が、少なくとも600℃の温度において5nm/分よりも小さい酸化率を有する、請求項1から請求項8のいずれか1項記載のグラファイト物品。
【請求項10】
前記保護皮膜層が、25〜1000℃の温度範囲において2.0×10−6/K〜10×10−6/Kの範囲にあるCTEを有する熱分解窒化ホウ素及び窒化アルミニウムの1つを含む、請求項1から請求項9のいずれか1項記載のグラファイト物品。
【請求項11】
前記熱分解グラファイト皮膜層の少なくとも一部分が、外部電源と電気接続するために露出されかつ前記保護皮膜層で被覆されていない、請求項1から請求項10のいずれか1項記載のグラファイト物品。
【請求項12】
ウェーハ基板を加熱するためのウェーハ処理組立体であって、
前記ウェーハ基板を支持するための平坦面と前記平坦面を支持するための少なくとも支持シャフトとを有するグラファイト基体を含む電気ヒータを含み、
前記支持シャフトが、前記電気ヒータを電源手段に接続するためのグラファイトコネクタを含み、
前記グラファイトコネクタが、0.001インチ〜0.10インチの厚さを有する少なくとも熱分解グラファイトの層で被覆され、
前記グラファイトコネクタが、前記pG皮膜層がない状態での対応するグラファイト物品よりも少なくとも25%高い引張強度を有する、
ウェーハ処理組立体。
【請求項13】
前記熱分解グラファイト被覆グラファイトコネクタが、前記グラファイト皮膜層の少なくとも一部分上を少なくとも保護皮膜層でさらに被覆され、
前記保護皮膜層が、B、Al、Si、Ga、耐熱硬金属、遷移金属及びその組合せからなる群から選択された元素の窒化物、炭化物、炭窒化物又は酸窒化物の少なくとも1つを含む、
請求項12記載のウェーハ処理組立体。
【請求項14】
前記支持シャフトが、該シャフト内に配置された支持部材をさらに含み、
前記支持部材が、金属を含むチューブである、
請求項12及び請求項13のいずれか1項記載のウェーハ処理組立体。
【請求項15】
半導体処理用途に用いるための組立体のグラファイト部品の有効寿命を延ばす方法であって、
前記グラファイト部品を、少なくとも0.001インチ〜0.10インチの厚さを有する熱分解グラファイト(pG)の層で被覆する段階と、
前記pG被覆グラファイトの少なくとも一部を、2〜500μmの厚さを有しかつB、Al、Si、Ga、耐熱硬金属、遷移金属及びその組合せからなる群から選択された元素の少なくとも窒化物、炭化物、炭窒化物又は酸窒化物を含む層で被覆して、前記グラファイト物品が、前記pG皮膜層及び外側保護層がない状態での対応するグラファイト物品よりも少なくとも25%高い引張強度を有するようにする段階と、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−335831(P2007−335831A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−323722(P2006−323722)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】