説明

耐候性二酸化チタン顔料及びその製造方法

本発明は、良好な光学的特性を有する耐候性二酸化チタン顔料であって、密な、金属原子でドープされた二酸化ケイ素被覆(dense skin(緻密層))を有する二酸化チタン顔料に関する。特に有利なドープ元素は、スズ、ジルコニウム、及びチタンである。前記の密な二酸化ケイ素被覆は多層に構成されていて、その際この最も内側の層は、顕著な量の金属原子を含有しない。本発明によるコーティングは、これらの成分を相次いで、移行するpH値で、アルカリ性懸濁液(少なくとも9のpH)中に添加することで製造される。前記のドープされた密なSiO被覆の完全な形成のためには、前記pHを最終的に9を下回る値にゆっくりと減少させることが必要である。前記顔料は、着色剤、塗料、及びプラスチックにおける使用に特に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性二酸化チタン顔料及びその製造方法に関する。
【0002】
二酸化チタンはその高い光屈折率に基づいて有用な顔料として様々な分野において、例えばプラスチック、コーティング、紙、繊維において使用される。その高い散乱能力により、二酸化チタンは前記系に有利な光学的特性、例えば明度、隠ぺい力、及び白色力を付与する。無論、二酸化チタンは光活性であり、即ち、紫外線の作用により電子−正孔−対を介してフリーラジカルがこの表面に生じ、前記フリーラジカルはこの周囲のマトリックス中に存在する物質と反応する可能性があり、これにより前記マトリックスの崩壊を生じる可能性がある。従って、フリーラジカルの発生、又はこの形成されたフリーラジカルとこの結合剤マトリックスの反応を妨げる、耐候性二酸化チタン顔料を製造することが望ましい。同時に、この際前記光学的特性は可能な限り損なわれないことが望ましい。TiO顔料の耐候性を改善するためにしばしば採用される方法は、即ち、結局は二酸化チタンに由来する光触媒効果を減少するための方法は、この粒子を後処理の枠内で、例えば二酸化ケイ素及び/又は酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムでコーティングすることからなる。特に複数の特許公報において、可能な限り密な、SiOからなる無定形被覆、いわゆる「dense skin(緻密層)」の設置が記載され、これは前記粒子表面でのフリーラジカルの形成を妨げるものである。
【0003】
US2,885,366は、微粒状の基材を、密な無定形SiO被覆で取り囲むための方法を記載する。この際、この微細な基材はSiOからならず、しかしながらこの表面は密なケイ酸被覆の積層のための十分な反応性を有することが重要である。この全体の基盤がこれらの反応性材料からなることは必ずしも必要ではなく、この表面のみが前記材料に相応することだけで十分である。複数の基材、例えば金属酸化物又はpH範囲7〜11において不溶性の金属シリケートが、この必要とされる反応性を示す。前記の密な無定形SiOの前記担体への設置は、活性のある二酸化ケイ素(「active silica」(活性シリカ))の添加により、即ち低縮合程度を有するSiOによりpH範囲8〜11において、60〜125℃の温度で、式により計算できる所定の程度を上回らない速度でもって行う。これにより、前記被覆の密度のための非直接的な指標として考慮されるこの粒子の比表面積が、拡大しないことが保証される。US 2,885,366による方法においては従って、基本的に、ゆっくりとした添加速度及び、無定形ケイ酸層の前記担体基材上への堆積がすぐさま生じるpH範囲において前記の活性のある二酸化ケイ素が添加される付随条件が重要である。
【0004】
高耐候性の他に、TiO顔料にとっては、その適用の際にコーティング物質中で高い不透明度及び高い光沢を達成することが重要である。US Re.27,818によれば、US2,885,366により製造された顔料はしかしながら、まさにこの欠損を示す。US Re.27,818によれば、前記の密な無定形SiO被覆の設置後に酸化アルミニウム水和物からなる更なる層が設けられる場合に、改善が達成される。これは、前記の密な無定形SiO被覆をpH範囲8〜11において堆積した後に、水溶性のアルミニウム化合物を添加し、この添加時に7未満に前記pH値を維持し、引き続きこの懸濁液をpH値7〜8に調整することで達成される。
【0005】
US4,125,412によれば、前記方法(US Re.27,818)の本質的な欠点は、二酸化ケイ素添加後のpH値の減少のための長期間の添加時間にある。この後処理を連続的に実施する場合に、この極めて時間集約的な方法は特に欠点である。従って、加速され、従ってより経済的である、密なSiO層及びAl層の設置のための後処理方法が開示される。この際、水ガラスのTiO懸濁液への添加は、80〜100℃の温度で素早く行われ、その際前記TiO懸濁液のpH値は、酸性又は場合により、前記添加前に9〜10.5に調整されてよい。両者の場合に、pH値9〜10.5で熟成工程が行われ、この後で引き続きアルミニウム化合物の更なる層を設ける。
【0006】
上記方法は、前記「dense skin(緻密層)」SiO層の沈殿が、可能な限り完璧な被覆を生じるために非常に高温で行われなくてはならない欠点を有する。EP0245984B1(US4,781,761)においては、NaSiO含有溶液並びにB含有溶液のTiO懸濁液(これは前もってpH値7〜10.5に調整されている)への同時の添加により可能にされる後処理方法が記載され、この後処理方法は、問題とならない低温、65〜90℃で実施され、これにより方法技術的な観点から利点をもたらす。前記pH値は、前記溶液の添加によりpH値10.5〜11.5に上昇するが、引き続き、酸、例えばHClの添加により約8に減少する。
【0007】
前述の特許公報は、SiO−緻密層−コーティングの基本的な製造方法、後処理時間の短縮のための様々な方法、又はTiO顔料の前記分散挙動の最適化方法を記載する。この方法は、可能な限り密な、閉鎖したSiO後処理被覆を、低光活性のための保証として達成することを試みる点で共通している。これらはしかしながら、更なる、顔料安定性の向上又は光触媒活性の減少のための方法を記載しない。
【0008】
この観点におけるアプローチは、US2003/0089278A1に記載されている。前記文献には同様に、より外側のアルミニウム含有被覆を有するSiO−緻密層後処理顔料の製造方法が記載されている。前記分散挙動の改善の他に、安定性の向上が、前記SiO−緻密層−表面処理の実施前にクエン酸を添加することで達成される。前記安定性の向上は、SiO−緻密層−層(密なSiO被覆)とクエン酸安定化されたアルミニウム含有後処理層の組み合わせに起因する。
【0009】
SiO−緻密層処理は、安定性の改善のためにTiO顔料との関連においてのみ言及されるのではなく、例えば、ガラス繊維のコーティングの際にも、摩擦に対する耐性の向上のため、及び前記繊維の製造物品中での滑りの減少のためのガラス繊維のコーティングの際にも言及される。この関連において、US2,913,419は、その他の多価の金属イオンをケイ酸と共に、前記粒子表面上に沈殿させることを記載する。前記方法にとっては、前記活性ケイ酸及び金属溶液を同時に、しかしながら別々の流において、前記懸濁液中に添加し、その際このpH値を8〜11の範囲に、酸又はアルカリ溶液の並行した添加により一定に維持し、この化学薬品の並行した添加の間に可能な限り強力な混合を達成することが、本質的であるようである。例えば、後処理すべきTiO懸濁液を移送する遠心ポンプ中でのこの両方の溶液の添加が最適であるようである。更に、前記粒子の比表面積は前記処理の進行中に増加するものではない。前記方法は、100nmまでの粒径を有する様々な極めて微粒性の基材材料、例えばシリカゾル、金属粉末又は酸化物分割、粘土鉱物、繊維等に対して適用される。前記処理は、前記基剤材料の機械的保護に主として役立つ。
【0010】
本発明の課題は、耐候性二酸化チタン顔料を提供し、かつSiO−緻密層−二酸化チタン顔料の耐候性、特に白亜化安定性及び光沢安定性を、良好な光学的特性の維持下で更に改善することが可能である方法を提示することである。
【0011】
前記課題は、二酸化チタン顔料であって、この粒子が金属原子でドープされた密な二酸化ケイ素被覆を有する二酸化チタン顔料において、この密な二酸化ケイ素被覆は多層に構成されていて、かつこの最も内側の層は顕著な量の金属原子を含有しない、二酸化チタン顔料により解決される。
【0012】
更に、前記課題は、二酸化チタン顔料の製造方法であって、この粒子は金属原子でドープされた密な二酸化ケイ素被覆を用いてコーティングされている二酸化チタン顔料の製造方法において、このコーティング成分は相次いで、この懸濁液中に添加される、二酸化チタン顔料の製造方法により解決される。
【0013】
本発明の更に有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明の主題は従って、安定性に関して改善され、かつこれにより同じ良好な光学的特性で、例えば塗装又はプラスチックに改善した耐候性又は光堅牢性を付与する、コーティングされた二酸化チタン顔料であり、この際前記適用は前記系に制限されない。本発明の主題は更に、耐候性二酸化チタン顔料の製造方法であって、水相における後処理を介して、金属元素でドープされている密なSiO被覆を設ける製造方法並びに、前記顔料の使用であって、特に、塗料、着色剤、及びプラスチックにおける使用に関する。
【0015】
上記及び下記において、概念「金属元素」とは、場合により金属イオンも理解されたく、これは前記密なSiO被覆の構造中で、この結合の正確な種類は検出されることなしに化学的又は物理的に結合している。
【0016】
TiOで着色した系の耐候性は通常は、様々な特性値に基づいて記載される。例えば、顔料−塗料系の白亜化開始及び光沢安定性(50%残留光沢値の減少までの期間)が算出され、前記系を定義した位置での屋外耐候性試験又は促進耐候性試験(WOM)にかける。前記試験方法、特に屋外耐候性試験は、極めて長時間を要するので、耐候性の特性決定のためにしばしば、前記顔料粒子表面上でのSiOコーティングの密度が考慮される:この際、前記耐候性は、前記顔料粒子を被覆するSiO層の閉鎖性と相関するという前提から出発する。文献において、前記SiO被覆の品質(密度)を決定するためのこの関連事項並びに方法が記載される。SiO被覆の品質(密度)は、非直接的にHSO溶解性試験により決定されてよい(Dwight A. Holtzen et. al: 「TiO2 Photochemistry and Color Applications」, DuPont White Pigment and Mineral Products, ANTEC 2001 , 第2374頁)。HSO溶解性試験の際には、加熱した濃硫酸に対するTiO及びSiOの相違する溶解性が利用される:前記被覆が密であってかつ完璧であるほど、前記顔料粒子のHSO溶解性がより低くなる。
【0017】
前記被覆の品質のための更なる特性値は、前記基材に対する後処理による比表面積の変更である(例えば、Brunauer-Emmett-Teller方法、BETによる方法)。
【0018】
Dwight A. Holtzen et al.による前記刊行物によれば、屋外耐候性試験の際の前記コーティング系の挙動(光沢安定性及び白亜化抵抗性により示される)は、通常は、HSO溶解性試験からの結果と相関する。前記刊行物において、TiO顔料の品質上の区分は、その耐候性に関して、3つの分類に区分される。
【0019】
可能性のある試験の比較においては、促進耐候性試験(WOM)が、いかなる場合にもHSO溶解性よりも有利である。この種類の試験の際には、Michael P. Diebold 「Analysis and Testing−Unconventional Effects Of TiO2 on Paint Durability」, 以下に開示:www.coatinqs.de/articles/ecspapers/diebold/diebold.htm) によれば、白亜化開始及び光沢安定性の両者の試験結果のうち、更には白亜化安定性の試験結果が、残留光沢値よりも、TiO顔料の耐候性の特性決定のために有利である。
【0020】
著しく改善された耐候性を有する顔料が製造されることが意外にも見出され、その際SiO−緻密層−被覆(密なSiO被覆)のとりわけ高い密度は必要ではなく、それどころかHSO溶解性は、上昇する短期間耐候性と共に減少する。本発明による方法では、公知技術に対するこれらの耐候性の改善は、密なSiO被覆中への金属原子の組み込みにより、並びに特殊な種類の後処理の実施により達成される。密なSiO被覆中への組み込みにより耐候性の改善を生じる金属は、特に、Ti、Sn、及びZrである。アルミニウムは、前記の密なSiO被覆中へ組み込むべき金属元素としては使用されない。
【0021】
本発明によるコーティングは、これらの成分が、相次いで、移行するpH値で前記TiO懸濁液中に添加されることにより製造される。前記TiO懸濁液はまず、少なくとも9、有利には少なくとも10、特に有利には11のpH値に調整される。この調整は、アルカリ化合物を用いて、例えばNaOHを用いて行われる。引き続き、SiO成分が添加され、有利にはアルカリ金属シリケート溶液、例えばカリウム水ガラス又はナトリウム水ガラスとして添加される。この後で、前記金属成分の添加を金属塩溶液の形で行い、これはアルカリ性又は酸性の性質を有してよい。通常は、酸性成分、例えば塩化チタニル、硫酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、スズ(II)−塩化物その他が使用される。当業者には、更なる適した化合物が公知である。金属塩溶液の混合物又は複数の金属塩溶液を相次いで添加してよい。金属元素でドープされた、密なSiO被覆の完全な形成のためには、このpH値を9未満、有利には8未満に減少させることが必要である。これは、十分に酸性化した金属塩溶液の添加により、又は付加的な金属塩不含の酸、例えばHCl又はHSOの添加により達成される。前記の密なSiO被覆並びに金属成分の沈殿は、pH範囲>6において生じる。
【0022】
選択的な有利な一実施態様において、まず前記金属塩溶液をTiO懸濁液中に添加し、その際pH値は9、有利には10、特に少なくとも11を下回らないことが望ましい。この後で、前記シリケート溶液を添加し、このpH値を引き続き9未満、有利には8未満に減少させる。
【0023】
本発明による方法の実施は、前記金属元素の配分における勾配が、前記の密なSiO被覆内で生じることによって特徴付けられる。第一に前記シリケート溶液が添加される場合には、前記TiO粒子の表面上に第一の層SiOが形成される。前記層は、顕著な割合の金属成分を含有しない。「顕著な割合を含有しない」とは、この関連において、この生成物の特性に対する影響がなく、かつ意図的に付加されたものでない量を意味する。前記金属塩溶液の引き続く添加の過程において、前記金属成分の他に更なるケイ酸が、前記の第一SiO層上に、SiO及び金属成分からなる混合層の形で沈殿する。前記金属塩溶液の添加後に実施された、金属塩不含の塩を用いた9未満へのpH値減少は、この残りのケイ酸の前記粒子表面上での析出を生じる。
【0024】
付加的な酸化アルミニウム水和物被覆の設置により、前記顔料の光学的特性、例えば白色力、分散挙動その他が改善される。前記酸化アルミニウム水和物被覆の沈殿は、3.5〜10.0の範囲にある一定のpH値で行ってよく、又は変化するpH値であってよい。出発物質として、例えばアルミン酸ナトリウムが前記pH値の調整のために適していて、その一方で前記酸化アルミニウム水和物の沈殿には特にHClが適する。
【0025】
本発明による顔料は、前記粒子表面上の密な被覆(「dense skin」)において、総顔料に対して、2.0〜6.0質量%、有利には2.5〜4.0質量%のSiO、及び酸化物として計算して0.1〜3.0質量%、有利には0.1〜1.0質量%の金属を含有する。
【0026】
有利な一実施態様において、前記粒子は更に、総顔料に対して、Alとして計算して、0.5〜6.0質量%、有利には1.0〜4.0質量%の酸化アルミニウム水和物からなる付加的な層で被覆されている。
【0027】
実施例
本発明は、以下の実施例に基づいて、この実施例により本発明を制限することなくより詳細に説明される。
【0028】
本発明による方法は、クロリド方法又はスルファート方法により製造されたTiO基材から出発する。また、複数の基材の種類の混合物を使用してもよい。TiO基材とは、まだ後処理されていないTiO粒子が理解される。前記基材の光安定性は、これは前記TiO基材の結晶変態−ルチル又はアナターゼ−により決定され、更に公知の物質、例えばAl、Cr、その他を用いたドーピングにより更に向上されてよいが(これらは当業者に公知である)、前記顔料の耐候性の出発レベルを設定し、この出発レベルは、本発明による方法により向上されるものである。前記基材をまず、粉砕してよく、例えば湿式粉砕方法により粉砕してよい。有利には、前記湿式粉砕の際に分散剤を添加してよく、その際前記分散剤は、ポリホスフェート、ポリアクリラート、又はその他の当業者に公知の分散剤であってよい。前記出発懸濁液のpH値は、酸(例えばHCl)又はアルカリ溶液(例えばNaOH)により少なくとも10又は11のpH値に調整されてよい。
【0029】
例1
クロリド方法からの湿式粉砕された、5kgのTiO基材を350g/lの濃度で含有するルチル−TiO懸濁液を、80℃に加熱し、NaOHを用いてpH値11.5に調整した。この後で、3.0質量%のSiOを、カリウム水ガラスの形で30分間のうちに添加した。10分間の保留後、このpH値を150分間のうちのHClの添加によりpH値4に減少させた。10分間の撹拌後、3.0質量%のAlをアルミン酸ナトリウムとして、HClと共に30分間のうちに添加し、このpH値を、この並行した添加の間に約4に一定に維持した。
【0030】
前記懸濁液をNaOHを用いてpH値6.5〜7に調整し、この材料を引き続き、慣用とおりに、通常に濾別し、洗浄し、乾燥し、かつ蒸気ジェットミル(Dampfstrahlmuehle)を用いて、TMP(トリメチロールプロパン)の添加下で細分化した。
【0031】
例2
クロリド方法からの湿式粉砕された、5kgのTiO基材を350g/lの濃度で有するルチル−TiO懸濁液を、80℃に加熱し、NaOHを用いてpH値11.5に調整した。この後で、3.0質量%のSiOを、カリウム水ガラスの形で30分間のうちに添加した。10分間の保留後、このpH値を、オキシ塩化チタンの形にある0.2質量%のTiOのHClと一緒での150分間のうちの添加によりpH値4に減少させた。この更なる処理は、実施例1と同様に行われた。
【0032】
例3
実施例2と同様であるが、オキシ塩化チタンの形にある0.4質量%のTiOを添加した。
【0033】
例4
実施例2と同様であるが、オキシ塩化チタンの形にある0.6質量%のTiOを添加した。
表1
【0034】
【表1】

【0035】
例5
クロリド方法からの湿式粉砕された、7kgのTiO基材を350g/lの濃度で含有するルチル−TiO懸濁液を、75℃に加熱し、NaOHを用いてpH値約11.5に調整した。この後で、3.0質量%のSiOを、ナトリウム水ガラスの形で30分間のうちに添加した。15分間の保留後、このpH値を200分間のうちのHClの添加によりpH値7.5に減少させた。10分間の撹拌後、1.5質量%のAlをアルミン酸ナトリウムとして、HClと共に30分間のうちに添加し、このpH値を、この並行した添加の間に約7.5に一定に維持した。前記懸濁液をHClを用いてpH値約5.5に調整し、この材料を引き続き、慣用とおりに、通常に濾別し、洗浄し、乾燥し、かつ蒸気ジェットミルを用いて、TMPの添加下で細分化した。
【0036】
例6
クロリド方法からの湿式粉砕された、7kgのTiO基材を350g/lの濃度で含有するルチル−TiO懸濁液を、75℃に加熱し、NaOHを用いてpH値約11.5に調整した。この後で、3.0質量%のSiOを、ナトリウム水ガラスの形で30分間のうちに添加した。15分間の保留後、0.5質量%のTiOをオキシ塩化チタン溶液として150分間のうちに添加した。この後で、前記pH値をHClの添加により50分間のうちに7.5に減少させた。10分間の撹拌後、1.5質量%のAlをアルミン酸ナトリウムとして、HClと共に30分間のうちに添加し、このpH値を、この並行した添加の間に約7.5に一定に維持した。この更なる処理は実施例5と同様に行った。
【0037】
例7
クロリド方法からの湿式粉砕された、7kgのTiO基材を350g/lの濃度で含有するルチル−TiO懸濁液を、75℃に加熱し、NaOHを用いてpH値約11.5に調整した。この後で、3.0質量%のSiOを、ナトリウム水ガラスの形で30分間のうちに添加した。15分間の保留後、0.6質量%のZrOを硫酸ナトリウム溶液として80分間のうちに添加した。この後で、前記pH値をHClの添加により130分間のうちに7.5の値に減少させた。10分間の撹拌後、1.5質量%のAlをアルミン酸ナトリウムとして、HClと共に30分間のうちに添加し、このpH値を、この並行した添加の間に約7.5に一定に維持した。この更なる処理は実施例5と同様に行った。
【0038】
例8
クロリド方法からの湿式粉砕された、7kgのTiO基材を350g/lの濃度で含有するルチル−TiO懸濁液を、75℃に加熱し、NaOHを用いてpH値11.5に調整した。この後で、3.0質量%のSiOを、ナトリウム水ガラスの形で30分間のうちに添加した。15分間の保留後、0.5質量%のSnOをスズ(II)−塩化物溶液として90分間のうちに添加した。この後で、前記pH値をHClの添加により120分間のうちに7.5に減少させた。10分間の撹拌後、1.5質量%のAlをアルミン酸ナトリウムとして、HClと共に30分間のうちに添加し、このpH値を、この並行した添加の間に約7.5に一定に維持した。この更なる処理は実施例5と同様に行った。
【0039】
表2
【0040】
【表2】

【0041】
例9
クロリド方法からの湿式粉砕された、7kgのTiO基材を350g/lの濃度で含有するルチル−TiO懸濁液を、75℃に加熱し、NaOHを用いてpH値10に調整した。この後で、3.0質量%のSiOを、ナトリウム水ガラスの形で30分間のうちに添加した。15分間の保留後、0.5質量%のSnOをスズ(II)−塩化物溶液として90分間のうちに添加した。この後で、前記pH値をHClの添加により25分間のうちに7.5に減少させた。水ガラスの添加の間に、SiOの全体量の約1/3又は2/3等の添加後に、及び引き続くSnCl溶液の添加の間に、SnClの全体量−SnOとして計算して−の約1/3又は2/3等の添加後に、懸濁液試料を取り出した。前記試料を更なる変更なしに、付加的な沈殿を回避するために遠心分離した。特に、pH値の調整及び洗浄を行わなかった。この材料を160℃で乾燥室中で乾燥させ、乳鉢中で破砕して、かつSiO及びSnOに対する蛍光X線(RFA)を用いて分析した。この分析結果を表3に示した。前記分析結果は、約50%の添加したケイ酸、及びSiO及びSnOからなる引き続く混合層からなる内側層を有する多層のSiO被覆を示す。
【0042】
表3(質量%における量の記載)
【0043】
【表3】

【0044】
試験方法
光安定性(白亜化/光沢安定性):
製造された実施例の顔料の光安定性を、短期間の耐候性試験に曝したアルキド樹脂−塗料系において試験した。この耐候性試験は、耐候性試験装置、いわゆるウェザロメーター(WOM)において行われ、前記装置は
a)放射線供給源(作動中にアークを生じる炭素電極)、
b)特殊ガラスからなる放射線フィルター、
c)試料に散水するための装置、
d)空気湿分を生じるための噴霧機、
e)回転可能である試料ホルダー
を有する換気した試験室からなる。
【0045】
前記試験サイクルの間に、時間縮約して屋外耐候性試験(Freibewitterung)を模擬実験した。前記試験時間のうちに、前記塗料は風化し、かつ白亜化抵抗性及び光沢安定性を試験した。理想的には、同じ試験サイクルからの試料のみが相互に比較される。
【0046】
前記白亜化の測定を、DIN53159により行った。この際この白亜化する塗料表面上に、水で湿らせた黒色印画紙を圧着させた。白亜化開始(白亜化抵抗性)として、顔料粒子及び充填物粒子が完全な白色の跡を残す日数が考慮される。前記光沢安定性は、樹脂−光沢−反射率計を用いて日毎の光沢測定により算出された。この光沢が、出発値の50%に減少する日数で時間点を記す。同じ試験サイクルからの試料では、白亜化抵抗性及び光沢安定性の絶対値(日数)が直接的に比較できる。
【0047】
SO溶解性:
25mlの濃硫酸(96%)中の500mgの顔料からなる懸濁液を60分間175℃に維持した。濾過により濾液中の溶解したTiOを、ICP発光分光分析を用いて測定した。前記の溶解したTiOの濃度が減少するほど、前記顔料表面上の前記SiO被覆はより密である。
【0048】
BETによる比表面積(Brunauer-Emmett-Teller):
BET表面積はMicromeritics社のTristar 3000を用いて静的な容量測定による原理に従い測定した。
【0049】
試験結果
前記試験結果を、表1及び表2にまとめた。実施例1〜4又は5〜8は、それぞれ共通して1つの耐候性サイクルに曝した。ドープされていない密なSiO被覆(実施例1又は5)を有する顔料に対して、ドープされた密なSiO被覆を有する顔料(実施例2〜4又は6〜8)は、著しく改善した耐候性−白亜化安定性及び光沢安定性として記載した−を示した。最も良好な結果は、スズを用いて達成された。同時に、前記顔料の耐候性が意外にも、前記被覆の密度−HSO溶解性として記載される−に相関しないことが観察されるものである。更に、BETによる比表面積は、未処理の基材との比較において(BET 6.5m/g)、純粋なSiOコーティングでも、本発明による処理でも、耐候性との相関なしに上昇することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン顔料であって、この粒子が金属原子でドープされた密な二酸化ケイ素被覆を有する二酸化チタン顔料において、前記の密な二酸化ケイ素被覆は多層に構成されていて、かつこの最も内側の層は顕著な量の金属原子を含有しないことを特徴とする、二酸化チタン顔料。
【請求項2】
前記の密な二酸化ケイ素被覆は、スズ、ジルコニウム、又はチタン、又はこれらの混合物でドープされていることを特徴とする、請求項1記載の二酸化チタン顔料。
【請求項3】
前記粒子は更に、酸化アルミニウム水和物からなるより外側の被覆を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の二酸化チタン顔料。
【請求項4】
前記の密な二酸化ケイ素被覆は、この総顔料に対して、2.0〜6.0質量%、有利には2.5〜4.0質量%のSiOを含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の二酸化チタン顔料。
【請求項5】
前記の密な二酸化ケイ素被覆は、この総顔料に対して、酸化物として計算して、0.1〜3.0質量%、有利には0.1〜1.0質量%の金属を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の二酸化チタン顔料。
【請求項6】
前記のより外側の被覆は、この総顔料に対して、0.5〜6.0質量%、有利には1.0〜4.0質量%のAlを含有することを特徴とする、請求項3記載の二酸化チタン顔料。
【請求項7】
二酸化チタン顔料の製造方法であって、この粒子は金属原子でドープされた密な二酸化ケイ素被覆を用いてコーティングされている二酸化チタン顔料の製造方法において、このコーティング成分は相次いで、この懸濁液中に添加されることを特徴とする、二酸化チタン顔料の製造方法。
【請求項8】
前記の密な二酸化ケイ素被覆は、スズ、ジルコニウム、又はチタン、又はこれらの混合物でドープされていることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記二酸化チタン懸濁液のpH値は、前記のケイ素成分及び金属成分の添加開始時には少なくとも9、有利には少なくとも10、特に有利には少なくとも11であることを特徴とする、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記pH値は、前記のケイ素成分及び金属成分の添加後には9未満、有利には8未満に減少することを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
酸化アルミニウム水和物からなるより外側の被覆を堆積させることを特徴とする、請求項7から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1から6までのいずれか1項記載の二酸化チタン顔料の、塗料、着色剤、又はプラスチックにおける使用。

【公表番号】特表2008−508404(P2008−508404A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524197(P2007−524197)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006797
【国際公開番号】WO2006/012950
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(592039299)クローノス インターナショナル インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】KRONOS INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】Peschstrasse 5, D−51373 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】