説明

耐力フレームの構造

【課題】耐力フレームの斜材の両端部での面外変形を抑制する。
【解決手段】斜材13、14を有する耐力フレームの構造である。前記斜材13、14は、ブレース芯材22と、このブレース芯材22の座屈を防止しうる補剛材30とを含む。補剛材30は、ブレース芯材22の両外側に添設された一対の内補剛材23と、一対の内補剛材23をブレース芯材22にとともに束ねる筒状の外補剛材24とを含む。ブレース芯材22及び一対の内補剛材23は、長さ方向の両端部が外補剛材24から外側にはみ出す延出部22A、23Aを具える。ブレース芯材の延出部22Aには、その両側に設けられかつ内補剛材22の延出部23Aがブレース芯材22から離間するのを防ぐ端部拘束手段25が固着される。端部拘束手段25は、該端部拘束手段を両外側から挟むとともに垂直構面と平行な面内をのびる一対の取付プレート28を介して第1の柱材4及び第2の柱材12に固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨軸組構造の建築物の耐力壁として用いられる耐力フレームの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄骨軸組構造の建築物、とりわけ規格化住宅等の低層建築物において、種々の耐力フレームが提案されている(例えば下記特許文献1ないし2参照)。
【0003】
特許文献1には、矩形枠内に斜材を架設して構成した耐力壁フレームが記載される。この耐力壁フレームは、矩形枠が上下の梁間、又は梁と土台間に配設されて建物の垂直荷重を支持するための構造材により構成される。また、前記斜材は、両端部を矩形枠に架設して取付けられたブレース本体と、ブレース本体の軸方向変位を許容しつつその面外変形を拘束するための拘束部材とからなるアンボンドブレース(座屈拘束ブレース)が用いられている。
【0004】
また、特許文献2では、図12に示されるような耐力フレームaが提案されている。該耐力フレームaは、竪材bと横材cとを枠組みした矩形状のフレーム内に、斜材としての座屈拘束ブレースbの両端(図では一方のみを示す。)が固着されている。また、座屈拘束ブレースbは、ブレース芯材eと、このブレース芯材eの面外変形を防止する拘束部材fとを含んで構成される。
【0005】
前記拘束部材fは、例えば、内側に配される溝型状の内補剛材f1と、その外側に配される角筒状の外補剛材f2とで構成される。さらに、内補剛材f1の端部は、外補剛材f2からはみ出す延出部を有する。この延出部は、外補剛材f2で外部から拘束されないので、ブレース本体eがひずみ変形する際にブレース本体eから遊離しやすい。そこで、特許文献2では、このような内補剛材f1の遊離を防止するために、該内補剛材f1をブレース本体e側に拘束する外補剛材f2とは別の端部拘束手段gを設けることを提案している。
【0006】
このような耐力フレームaでは、外力が作用した場合、内補剛材f1の延出部は、端部拘束手段gによってブレース本体eと密に添着した状態が維持される。従って、特許文献2の耐力フレームaでは、強度の弱点となり易い座屈拘束ブレースbの端部での面外変形を防止することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−332570号公報
【特許文献2】特開2008−255654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2の座屈拘束ブレースaにおいても、より大きな荷重が作用した場合には、端部拘束手段gよりも竪材b側の取付プレートhが、ブレース本体eに対して面外方向に変形するという問題があった。従って、特許文献2の技術においても、さらなる改善の余地がある。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、上述のような端部拘束手段を、水平方向の両外側から挟む垂直構面と平行な面内をのびる一対の取付プレートを介して柱材に固着することを基本として、斜材の両端部での面外変形をより確実に防止し、さらに大きな耐力を発揮して大荷重時でも優れた耐久性及び信頼性を発揮しうる耐力フレームの構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のうち請求項1記載の発明は、建物の垂直構面に架設される耐力フレームの構造であって、実質的に平行にのびる一対の第1、第2の柱材と、一端が第1の柱材に固着されるとともに他端が第2の柱材に固着されて斜めにのびる斜材とを含み、前記斜材は、両端が前記第1の柱材及び第2の柱材と固着されることなく縁切りされかつ厚さ方向が水平方向に沿う板状のブレース芯材と、このブレース芯材の座屈を防止しつつ該ブレース芯材の長手方向の変形を許容する補剛材とを含み、前記補剛材は、前記ブレース芯材の厚さ方向両外側に添設された一対の内補剛材と、前記一対の内補剛材を前記ブレース芯材とともに束ねることによりブレース芯材からの離間を防ぐ筒状の外補剛材とを含み、前記ブレース芯材及び一対の内補剛材は、それぞれ長さ方向の両端部が前記外補剛材から外側にはみ出す延出部を具え、しかも前記ブレース芯材の延出部には、その厚さ方向の両側に設けられかつ内補剛材と前記長手方向に相対移動が可能かつ内補剛材の延出部がブレース芯材から離間するのを防ぐ端部拘束手段が固着されるとともに、前記端部拘束手段は、該端部拘束手段を前記厚さ方向の両外側から挟むとともに前記垂直構面と平行な面内をのびる一対の取付プレートを介して前記第1の柱材又は第2の柱材に固着されることを特徴とする。
【0011】
また請求項2記載の発明は、前記一対の内補剛材は、それぞれ断面コ字状の溝型鋼からなり、かつ、そのウエブが前記垂直構面と平行な面内をのびる請求項1記載の耐力フレームの構造である。
【0012】
また請求項3記載の発明は、前記端部拘束手段は、前記ブレース芯材の延出部の厚さ方向両側に配されかつ断面略コ字状の溝型鋼からなり、その溝部で内補剛材を囲むとともに一対のフランジ部が前記ブレース芯材に溶着されてなる請求項1又は2記載の耐力フレームの構造である。
【0013】
また請求項4記載の発明は、前記一対の取付プレートは、一端が第1の柱材又は第2の柱材に固着されるとともに、他端が溝型鋼のウエブに固着される請求項3記載の耐力フレームの構造である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の耐力フレームは、ブレース芯材の延出部に固着された端部拘束手段が、厚さ方向の両外側から垂直構面と平行な面内をのびる一対の取付プレートに挟まれて柱材に固着される。従って、外補剛材からはみ出すブレース芯材の延出部は、端部拘束手段及び両側の取付プレートで補強されるため、延出部での面外変形をより高荷重域まで遅らせることができる。また、ブレース芯材の軸力は、左右の取付プレートに分散してそれぞれ伝達されるため、取付プレートでの面外変形も効果的に防止しうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の耐力フレームを用いた軸組構造体の正面図である。
【図2】その斜視図である。
【図3】図2の分解図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】図1の断面図である。
【図6】アンボンドブレースの実施形態を示す斜視図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6のA−A断面図である。
【図9】図6のA−A断面図である。
【図10】上斜材と第2の柱材との接合部の拡大斜視図である。
【図11】(a)〜(b)は耐力フレームの施工方法を説明する部分正面図である。
【図12】従来の斜材と竪材との接合部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1〜3に示されるように、本実施形態の耐力フレーム1は、基礎2と、該基礎2に沿ってその上を水平にのびる梁3との間の垂直構面の上下空間Sに架設されることにより、例えば鉄骨軸組構造住宅の1階の軸組構造体F1の一部を構成する。
【0017】
本実施形態の耐力フレーム1は、前記上下空間Sをのびる第1の柱材4と、壁と対向した正面視において第1の柱材4に向かって凸となる横向きの略二等辺三角形状の三角フレーム体5とをボルト6にて結合することにより形成される。このように、耐力フレーム1を分割して構成することにより、現場への運搬性を向上できる。ただし、耐力フレーム1は、第1の柱材4と三角フレーム体5とが予め工場等で一体に固着されたものでも良いのは言うまでもない。
【0018】
前記第1の柱材4は、断面角パイプ状の鉄骨柱からなり、その下端は略箱状をなす取付金物B1を介して基礎2から突出するアンカーボルト2aに固定される。なお、基礎2と取付金物B1との間に土台等が介在しても良い。
【0019】
また、第1の柱材4の上端には、略水平な板材からなる取付プレートB2が固着される。そして、この取付プレートB2は、コーナ金物Cにボルトにて固定されるととともに、該コーナ金物Cに前記梁3の一端がボルトにて固定される。なお、コーナ金物Cは、梁3と剛固定されるので梁3の一部とみなすことができる。
【0020】
また、図4及び図5に拡大して示されるように、第1の柱材4には、その長さ方向の略中央部に、側方に突出する上の受け金物7と、下の受け金物8とが上下に距離を隔てて設けられる。
【0021】
前記上の受け金物7は、第1の柱材4の三角フレーム体5側を向く柱面に溶接にて固着された一対の側板部7a、7aと、該側板部7aの下面に溶接にて固着されかつ三角フレーム体5を支持する略水平な板状の受け部7bとから構成される。この受け部7bには、略中央部に透孔9が形成されるとともに、受け部7bの下面は、実質的に水平な第1取付面10が形成される。
【0022】
同様に、下の受け金物8も、第1の柱材4の三角フレーム体5側を向く柱面に溶接にて固着された一対の側板部8a、8aと、該側板部8aの上面に溶接にて固着されかつ三角フレーム体5を支持する略水平な板状の受け部8bとから構成される。受け部8bにも、略中央部に透孔9が形成されるとともに、受け部8bの上面は、実質的に水平をなす第2取付面11が形成される。この第2取付面11は、上の受け金物7の前記第1取付面10と向き合いかつその下方に位置するように設けられている。
【0023】
前記三角フレーム体5は、図1〜3、とりわけ図3に示したように、第2の柱材12と、上斜材13と、下斜材14と、継ぎ部材15とを予め工場等で一体に固着して略三角形状に構成される。
【0024】
前記第2の柱材12の下端側には、第1の柱材4と同様、アンカーボルト2aに固着するための取付金物B1が予め固着されるとともに、上端側には梁3にボルト固定するための取付プレートB2が固着されている。
【0025】
前記上斜材13は、一端13aが第2の柱材12の上端側に固定されるとともに、他端側が第1の柱材4に向かって下降する傾斜を有する。他方、下斜材14は、一端14aが第2の柱材12の下端側に固定されるとともに、他端14b側が第1の柱材4に向かって上昇する傾斜を有する。本実施形態において、これらの各斜材13、14には、引張力のみならず圧縮力が作用した場合でも大きく座屈することなく十分な耐変形抵抗性を示すいわゆるアンボンドブレース(座屈拘束ブレース)20が採用される。
【0026】
図6には、上斜材13に用いられるアンボンドブレース20の一実施形態の斜視図を示す。また、図7〜9には、図6のA−A、B−B及びC−Cの各断面図をそれぞれ示す。
【0027】
前記アンボンドブレース20は、両端が第1の柱材4及び第2の柱材12と固着されることなく縁切りされかつ厚さ方向Tが水平方向に沿う板状のブレース芯材22と、このブレース芯材22の座屈を防止しつつ該ブレース芯材22の長手方向Lの変形を許容する補剛材30とを含んで構成される。
【0028】
前記ブレース芯材22には、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼又は合金鋼など各種の鉄鋼材料を採用できるが、好ましくは極低降伏点鋼等が望ましい。極低降伏点鋼は、一般鋼(例えばSM490やSS400)に比べると約1/4〜1/3の降伏点しか持たないが、伸びに関しては50%以上と非常に優れた性能を発揮できる。また、ブレース芯材22には、補剛材30との摩擦を軽減するために、表面がめっき仕上げされても良い。本実施形態のブレース芯材22は、例えば断面矩形状の長尺板状をなし、一例として幅が20〜100mm程度、厚さが例えば3〜15mm程度で構成される。
【0029】
前記補剛材30は、ブレース芯材22の厚さ方向Tの両外側に添設された一対の内補剛材23、23と、前記一対の内補剛材23、23を前記ブレース芯材22にとともに束ねることによりブレース芯材22からの離間を防ぐ筒状の外補剛材24とを含んで構成されている。
【0030】
前記一対の内補剛材23は、それぞれ断面略コ字状の溝型鋼からなり、ウエブ23aと、その両側から張り出す一対のフランジ23bとを有する。各内補剛材23は、ウエブ23aが前記垂直構面と平行な面内をのびており、この実施形態では、各内補剛材23は、各々のウエブ23aを背中合わせで向き合わせ、かつ、それらの間にブレース芯材22が配置されている。
【0031】
前記外補剛材24は、断面角パイプ状をなし、内部に挿入される内補剛材23とは、かしめ又は本実施形態のように溶接により一体化されるのが良い。ただし、ブレース芯材22は、軸力が作用したときの変形により、内補剛材23及び外補剛材24に対して相対的な移動が許容される。なお、内側補剛23及び外補剛材24からなる補剛材30は、ブレース芯材22の軸力支持機能を損なわないように、例えばその一端側のみがブレース芯材22に溶接されてることにより、位置ずれ等が防止されるのが良い。
【0032】
また、図6に示されるように、前記ブレース芯材22及び内補剛材23は、それぞれ両端部が外補剛材24からはみ出す延出部22A、23Aを有する。本実施形態では、このブレース芯材22の延出部22Aには、その厚さ方向Tの両側に設けられかつ内補剛材23に対して長手方向Lに相対移動が可能かつ内補剛材23の延出部23Aがブレース芯材22から離間するのを防ぐ端部拘束手段25が固着される。
【0033】
本実施形態の端部拘束手段25は、例えば図6及びそのC−C断面である図9に示されるように、ブレース芯材22の延出部22Aの厚さ方向Tの両側に配されかつ断面略コ字状の溝型鋼26からなる。該溝型鋼26は、その溝部で内補剛材23を囲むとともに、一対のフランジ部26b、26bがブレース芯材22に溶着される。また、溝型鋼26は、外補剛材24から離間した位置に設けられることにより、外補剛材24とは縁切りされて設けられる。このような溝型鋼26は、内補剛材23がブレース芯材12から離間する向きの移動のみを拘束するが、内補剛材23が溝型鋼26に対して長手方向にスライドすることを許容する。
【0034】
さらに、端部拘束手段としての溝型鋼26は、図6、図10に示されるように、該溝型鋼26を前記厚さ方向Tの両外側から挟むとともに垂直構面と平行な面内をのびる一対の取付プレート28を介して前記第1の柱材4又は第2の柱材12に固着される。より具体的に述べると、一対の取付プレート28は、一端が第1の柱材4又は第2の柱材12の柱面に溶接にて固着されるとともに、他端が溝型鋼26のウエブ26aに溶接にて固着される。なお、符号j1、j2は溶接ビードを示す。
【0035】
前記三角フレーム体5の継ぎ部材15は、上斜材13の他端13bと、下斜材14の他端14bとを継いで第2の柱材12と平行に上下にのびている。図4に示されるように、本実施形態の継ぎ部材15は、溝部を第2の柱材12側に向けた溝型の枠材15aと、この枠材15aの上端に溶着されることにより継ぎ部材15の上端面Uをなす上板15bと、枠材15aの下端に溶着されることにより継ぎ部材15の下端面Dをなす下板15cとで構成される。また、前記上板15b及び下板15cには、上下の受け金物7、8にそれぞれ設けられた透孔9と同心に揃えられる透孔16が形成される。なお、継ぎ部材15の上端面U及び下端面Dも、実質的に平坦な水平面として形成される。
【0036】
また、図5に示されるように、本実施形態において、継ぎ部材15の前記上端面Uから下端面Dまでの垂直長さhは、前記上、下の受け金物7、8の第1取付面10と第2取付面11との間の垂直方向の間隙の高さHと実質的に同一か、これよりもわずかに小さく形成されている。
【0037】
前記ボルト6は、上側ボルト6A及び下側ボルト6Bからなる。上側ボルト6Aは、継ぎ部材15の上板15bと上の受け金物7とを締結する。また、下側ボルト6Bは、継ぎ部材15の下板15cと下の受け金物8とを締結する。各ボルト6A、6Bは、それぞれ受け金物側から透孔9及び16に挿入され、継ぎ部材15の内側に溶着されたナットに螺着される。なお、本実施形態のボルト6A、6Bには、安価ないわゆる中ボルトを用いることができる。
【0038】
以上のように構成された耐力フレーム1を用いた建築物の施工方法の一例について述べる。先ず、図11(a)に示されるように、基礎2上に第1の柱材4が固定される。また、第1の柱材4の上端にはコーナ金物Cを介して梁3が固定される。これにより、1階の軸組構造体F1の一部が構築される。
【0039】
次に、図11(b)に示されるように、三角フレーム体5の第2の柱材12の上端及び下端は、それぞれ前記基礎2及び梁3に固定されるとともに、第1の柱材4の上、下の受け金物7、8間に、三角フレーム体5の継ぎ部材15が固定される。これにより、三角フレーム体5の第2の柱材12が、前記上下空間Sに建て込まれる。
【0040】
このような耐力フレーム1では、図11(b)に示されるように、軸組構造体F1に水平力A又はBが作用した場合、ブレース芯材22に引張又は圧縮変形が生じるが、特に圧縮変形時には補剛材30によってブレース芯材22の座屈が防止され、引張・圧縮の双方の荷重に対して対向力を発揮することができる。
【0041】
また、外補剛材24のないブレース芯材22の延出部22aにおいても、端部拘束手段25によってブレース芯材22と内側補剛23との密着した状態が維持される。このため、従来、弱点箇所となり易いアンボンドブレース20と竪材(第1ないし第2の柱材4、12)との接合部近傍での面外変形(座屈)を効果的に抑制し、安定した耐荷重特性を得ることができる。
【0042】
さらに、前記端部拘束手段25は、厚さ方向Tの両外側から一対の取付プレート28、28に挟まれて柱材4又は12に固着される。このように、端部拘束手段25を挟むようその両外側に固着された取付プレート28を介してブレース芯材22を柱材に接合している。従って、外補剛材24からはみ出すブレース芯材の延出部22Aは、端部拘束手段25及び両側の取付プレート28で面外方向への変形をより高荷重域まで遅らせることができる。また、ブレース芯材22の軸力は、左右の取付プレート28に分散してそれぞれ伝達されるため、取付プレートでの面外変形が効果的に防止される。
【0043】
なお、前記水平力A又はBが作用した場合、軸組構造体F1は菱形に変形し、第1の柱材4に対して、三角フレーム体5は相対的に上下に変位するので、第1の柱材4と、三角フレーム体5とは、軸組構造体F1に作用する水平荷重を水平な前記第1、第2の取付面10、11の面圧方向で受けることができる。従って、接合面に作用するせん断力を大幅に減じることができ、両部材4、5の位置固定をより確実とし接合面での滑りによる位置ずれを確実に防止することもできる。また、上記面圧方向で水平荷重を受ける結果、ボルト6A、6Bに、標準的な中ボルトなどを用いた場合でも、その折損等を効果的に防止でき低コストで軸組構造体F1の耐久性をも向上しうる。
【0044】
上記実施形態では、主として1階の軸組構造体F1を中心に説明したが、本実施形態の耐力フレーム1は、2階以上の階上の軸組構造体にも適用することができるのは言うまでもない。また、上記実施形態では、横材が梁3又は基礎2で構成されているが、慣例に従い、予め矩形状に形成されたフレーム内に前記斜材を配することにより、梁3及び基礎2とは独立した構成とすることも勿論可能である。さらに、上記実施形態では、端部拘束手段25が左右の溝型鋼26で構成されているが、外補剛材24と同様に角筒状のもので構成されても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 耐力フレーム
2 基礎
3 梁
4 第1の柱材
5 三角フレーム体
6 ボルト
6A 上側ボルト
6B 下側ボルト
7 上の受け金物
8 下の受け金物
10 第1取付面
11 第2取付面
12 第2の柱材
13 上斜材
14 下斜材
15 継ぎ部材
20 アンボンドブレース
22 ブレース芯材
22A ブレース芯材の延出部
23 内補剛材
23A 内補剛材の延出部
24 外補剛材
25 端部拘束手段
26 溝型鋼
28 取付プレート
30 補剛材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の垂直構面に架設される耐力フレームの構造であって、
実質的に平行にのびる一対の第1、第2の柱材と、一端が第1の柱材に固着されるとともに他端が第2の柱材に固着されて斜めにのびる斜材とを含み、
前記斜材は、両端が前記第1の柱材及び第2の柱材と固着されることなく縁切りされかつ厚さ方向が水平方向に沿う板状のブレース芯材と、
このブレース芯材の座屈を防止しつつ該ブレース芯材の長手方向の変形を許容する補剛材とを含み、
前記補剛材は、前記ブレース芯材の厚さ方向両外側に添設された一対の内補剛材と、前記一対の内補剛材を前記ブレース芯材とともに束ねることによりブレース芯材からの離間を防ぐ筒状の外補剛材とを含み、
前記ブレース芯材及び一対の内補剛材は、それぞれ長さ方向の両端部が前記外補剛材から外側にはみ出す延出部を具え、しかも
前記ブレース芯材の延出部には、その厚さ方向の両側に設けられかつ内補剛材と前記長手方向に相対移動が可能かつ内補剛材の延出部がブレース芯材から離間するのを防ぐ端部拘束手段が固着されるとともに、
前記端部拘束手段は、該端部拘束手段を前記厚さ方向の両外側から挟むとともに前記垂直構面と平行な面内をのびる一対の取付プレートを介して前記第1の柱材又は第2の柱材に固着されることを特徴とする耐力フレームの構造。
【請求項2】
前記一対の内補剛材は、それぞれ断面コ字状の溝型鋼からなり、かつ、そのウエブが前記垂直構面と平行な面内をのびる請求項1記載の耐力フレームの構造。
【請求項3】
前記端部拘束手段は、前記ブレース芯材の延出部の厚さ方向両側に配されかつ断面略コ字状の溝型鋼からなり、その溝部で内補剛材を囲むとともに一対のフランジ部が前記ブレース芯材に溶着されてなる請求項1又は2記載の耐力フレームの構造。
【請求項4】
前記一対の取付プレートは、一端が第1の柱材又は第2の柱材に固着されるとともに、他端が溝型鋼のウエブに固着される請求項3記載の耐力フレームの構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−265648(P2010−265648A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116894(P2009−116894)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】