説明

耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法

ある局面では、本発明は、耐加水分解性シリコーン化合物に関する。具体的には、立体障害性耐加水分解性シリコーン化合物と高純度耐加水分解性シリコーン化合物が開示される。また、耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法も開示されており、開示される方法による生成物;開示される化合物及び開示される方法による生成物を含む組成物及びポリマー;そして、開示される組成物、開示されるポリマー、開示される化合物及び開示される方法による生成物を含むコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜及び眼鏡レンズなどの眼用レンズも開示される。本要約は、特定の技術分野での調査のための検索ツールとして意図されるものであり、本発明を制限することを意図するものではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2006年9月29日に出願した米国特許出願第60/848,192号及び2006年11月20日に出願した米国特許出願第11/561,525号(これらの文献の全文は、参照により本明細書に組み込まれる)に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
眼用レンズ用モノマーとして、ケイ素基を有するモノマーが知られている。例えば、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートが眼用レンズ用モノマーとして広く用いられている。この3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートと親水性モノマーであるN,N-ジメチルアクリルアミドを共重合して得られるポリマーは透明かつ高酸素透過性であるという有益な特長を有する。しかし、含水率の増加を図るためにメタクリル酸などのカルボン酸を共重合成分として用いると、シリコーン成分が徐々に加水分解されて、長期間保存する際にコンタクトレンズの物性低下を招くおそれがあった。
【0003】
そこでこの問題を解決するために、加水分解を抑制するため、特許文献1記載の3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートを得ようと、トリエチルクロロシランと3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートを反応させると、副生成物であるヘキサエチルジシロキサンが大量に生成して、目的のシリコーン化合物は数%しか得られないという欠点があった。
【0004】
従って、ケイ素含有材料の従来の生成工程は、典型的には、有益な透明度と酸素透過性を保持しつつ十分な収量と純度を提供できない。従って、これらの欠点を克服し、効果的に耐加水分解性ケイ素含有材料を提供する方法及び組成物に対する需要が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,377,371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書に具体化されて明白に記載されるように、本発明は、ある局面において、耐加水分解性シリコーン化合物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
立体障害性の耐加水分解性シリコーン化合物が開示される。例えば、該化合物は、立体障害性の末端ケイ素基を有していてもよい。
【0008】
また、高純度耐加水分解性シリコーン化合物も開示される。例えば、該化合物は、生成の際に生じるジシロキサン副生成物が少ない。
【0009】
また、耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法も開示される。更なる局面では、本発明は、アルコキシシリル化合物と1又は2種類以上のハロゲン化シリル化合物との反応に関する。更なる局面では、本発明は、ハロゲン化シリルとシラノールとの反応に関する。
【0010】
開示される方法の生成物も開示される。
【0011】
開示される化合物及び開示される方法の生成物を含む組成物及びポリマーも開示される。
【0012】
また、開示される組成物、開示されるポリマー、開示される化合物及び開示される方法の生成物を含む、眼用レンズ、例えば、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜及び眼鏡レンズも開示される。
【0013】
本発明の更なる利点については、その一部は以下の明細書の記載に説明されており、また、その一部は明細書の内容から自明であるか又は本発明の実施により理解することができる。本発明の利点は、特に、添付する各請求項に指摘される要素及びその組み合わせにより実現及び達成される。先の一般的記載及び以下の詳細な説明は、単に例示と説明を提供するためのものであり、本発明を限定するものではなく、本発明は、請求項によって限定されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に取り込まれ、その一部を構成する添付図面は、複数の態様を図示し、記載と共に開示される組成物及び方法を図示するものである。
【0015】
【図1】図1は、R(1/Q)対 厚さ(lm)のプロット図を表す。
【図2】図2は、酸素透過性測定用の装置を示す。
【図3】図3は、酸素透過性の測定に用いられる電極ユニットの構造を示す。
【図4】図4は、酸素透過性測定用装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、以下の本発明の局面の詳細な説明とこれに含まれる実施例を参照することにより、更に容易に理解できる。
【0017】
本発明の化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法を開示して説明する前に、これらは、他に特定されてない場合、特定の合成方法に限定されるものではなく、又は他に特定されてない場合、特定の試薬に限定されるものではなく、無論のこと、それ自体として変化してもよいことが理解されなければならない。また、本明細書で用いる用語は、単に特定の態様を説明することのみを目的としており、何らかの制限を意図するものではない。本明細書に説明する方法及び原料と類似するか又は同等のいかなる方法及び原料を本発明の実施又は試験に用いることも可能であるが、これより例示的な方法と原料を説明する。
【0018】
本明細書で言及する全ての文献は、これらの文献を引用して開示及び説明する方法及び/又は原料を参照することにより、本明細書に組み込まれるものとする。本明細書で議論する文献は、本発明の出願日よりも先の開示だけを提示するものとする。しかしながら、これら文献のいずれも、先行発明によって、本発明が、このような文献に先行していないことを容認するものとして解釈すべきではない。更に、本明細書に提示する文献の日付は、実際の発行日と異なっているかもしれないが、実際の発行日については個別に確認する必要があるだろう。
【0019】
A. 定義
本明細書及び添付する請求項で用いる場合、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「該(the)」には、その文に明確な指摘のない限り、複数形の指示対象も含まれる。従って、例えば、「1つの成分(a component)」、「1つのポリマー(a polymer)」又は「1つの残基(a residue)」には、これらの成分、ポリマー又は残基等の複数からなる混合物が含まれる。
【0020】
範囲については、本明細書では、「約」1つの特定の値から、そして/又は「約」別の特定値と表す場合がある。このような範囲が表現された場合、別の態様には、1つの特定の値からそして/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、値が近似値で表される場合、「約」という先行詞を用いることで、この特定の値が、別の態様を形成することが理解されるであろう。また更に、これらの範囲の各終点は、もう一方の終点との関連においても有意であるし、そしてもう一方の終点とは無関係に有意でもあることが理解されるであろう。また、本明細書には数多くの数値が開示されており、各数値は、ここにおいて、その数値自体に加えて、その数値の「約」としても開示されていることが理解される。例えば、「10」という数値が開示されている場合、「約10」も開示されていることになる。また、2つの特定の構成単位間の各構成単位も開示されていることが理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、11、12、13及び14も開示されていることになる。
【0021】
化学種の残基は、本明細書及び結びの請求項で用いる場合、特定の反応スキームにおける化学種の生成物、又はこれから得られる組成(formulation)若しくは化学製品である成分を指し、このことは、この成分が実際に前記化学種から得られたかどうかに関係ない。従って、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、エチレングリコールを用いてポリエステルを調製したかどうかに関係なく、該ポリエチレン中の1つ以上の-OCH2CH2O-ユニットを指す。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基は、この残基が、ポリエステルを得るためにセバシン酸又はこのエステルを反応させることで得られるかどうかに関係なく、該ポリエチレン中の1つ以上の-CO(CH2)8CO-部分を指す。
【0022】
本明細書で用いる場合、「随意の(optional)」又は「随意に(optionally)」という用語は、続いて記載される現象又は状況が、起こっても起こらなくてもよく、この記載に、前記現象若しくは状況が起こる場合と起こらない場合が含まれることを意味する。
【0023】
本明細書で用いる場合、「共重合体」という用語は、2種類以上の異なる繰り返し単位(モノマー残基)から形成されるポリマーを指す。例としては、共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であってもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
本明細書で用いる場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことを意図している。広い局面では、許容可能な置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分枝及び非分枝、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族置換基が含まれる。例示的な置換基には、例として、以下に記載するものが含まれる。許容可能な置換基は、適切な有機化合物に対して、1つ若しくは複数であっても、又は同一若しくは異なっていてもよい。この開示の目的において、窒素等のヘテロ原子は、水素原子置換基及び/又は本明細書に記載される有機化合物のいずれかの許容可能な置換基であって、このヘテロ原子の原子価を満たす置換基を有していてもよい。本開示は、有機化合物の許容可能な置換基によって、いかなる形でも制限を受けることを意図していない。また、「置換」又は「〜で置換された」という用語には、このような置換が、置換された原子及び置換基の許容できる原子価数に一致するものであり、そして該置換が、安定な化合物、自発的に、例えば、転位、環化、脱離等により変化しない化合物を生じるという明確な条件が含まれる。
【0025】
種々の用語を定義するにおいて、「A1」、「A2」、「A3」及び「A4」は、ここでは、種々の特定の置換基を表す包括的記号として用いられる。これらの記号は、いずれの置換基であってもよく、本明細書に開示される置換基に限定されるものではない。そして、これらの記号が、1つの例において特定の置換基として定義される場合であっても、別の例では、別の置換基として定義される場合がある。
【0026】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、炭素数1〜24、例えば、炭素数1〜12又は炭素数1〜6の分枝状又は非分枝状の飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等である。アルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アルキル基は、本明細書に記載される、置換又は非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよいが、これらの基に限定されるものではない。「低級アルキル」基とは、1ないし6個の炭素原子を含むアルキル基である。
【0027】
「アルキル」とは、明細書を通して、通常は、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を指すものとして用いられる;しかしながら、本明細書では、置換アルキル基は、該アルキル基上の具体的な置換基を特定することにより、具体的に言及される。例えば、「ハロゲン化アルキル」という用語は、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素のハロゲン化合物の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルコキシアルキル」という用語は、例えば、以下に記載されるアルコキシ基の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。「アルキルアミノ」という用語は、例えば、以下に記載されるアミノ基等の1つ又は複数で置換されたアルキル基を具体的に指す。1つの例で「アルキル」を用いて、そして、別の例で「アルキルアルコール」等の具体的な用語を用いた場合でも、「アルキル」という用語が、「アルキルアルコール」等の具体的な用語も指さないことを意味するものではない。
【0028】
この慣行は、本明細書に記載する他の基についても用いられる。即ち、「シクロアルキル」等の用語は、非置換シクロアルキル部分及び置換シクロアルキル部分の両方を指すが、本明細書では、該置換部分は、これに加えて、具体的に定義される場合がある;例えば、特定の置換シクロアルキルが、「アルキルシクロアルキル」等と呼ばれる場合もある。同様に、置換アルコキシは、例えば「ハロゲン化アルコキシ」等と具体的に言及される場合があり、特定の置換アルケニルが、例えば「アルケニルアルコール」等となる場合もある。繰り返しになるが、「シクロアルキル」等の一般名と「アルキルシクロアルキル」等の具体的用語を用いる慣行は、該一般名が、該具体的用語を含まないことを暗示するものではない。
【0029】
本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、3個以上の炭素原子から構成される非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例は、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、上記で定義されるシクロアルキル基の一種であり、「シクロアルキル」という用語の意味に含まれ、環に含まれる少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0030】
本明細書で用いる「ポリアルキレン基」という用語は、相互に結合したCH2基を複数有する基である。ポリアルキレン基は、式-(CH2)a-で表すことが可能であり、ここで、「a」は、2〜500の整数である。
【0031】
本明細書で用いる「アルコキシ」及び「アルコキシル」という用語は、エーテル結合を介して結合したアルキル又はシクロアルキルを指す;即ち、「アルコキシ」基は、-OA1として定義可能であり、ここで、A1は、上記に定義されるアルキル又はシクロアルキルである。「アルコキシ」には、直ぐ上に記載するアルコキシ基から成るポリマーも含まれる;即ち、アルコキシは、-OA1-OA2又は-OA1-(OA2)a-OA3等のポリエーテルであってもよく、ここで、「a」は、1〜200の整数であり、かつA1、A2及びA3は、アルキル基及び/又はシクロアルキル基である。
【0032】
本明細書で用いる「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する構造式を有する炭素数2〜24の炭化水素基である。(A1A2)C=C(A3A4)等の非対称構造は、E異性体とZ異性体の両方を含むことを意図している。このことは、本明細書において、非対称アルケンが存在する構造式において適用されてもよく、又は、結合記号C=Cで明確に示してもよい。アルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0033】
本明細書で用いる「シクロアルケニル」という用語は、3個以上の炭素原子から構成され、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合、即ち、C=Cを含む非芳香族炭素系環である。シクロアルケニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、ノルボルネニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、上記で定義されるシクロアルケニル基の一種であり、「シクロアルケニル」という用語の意味に含まれ、環に含まれる少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルケニル基及びヘテロシクロアルケニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0034】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む構造式を有する、炭素数2〜24の炭化水素基である。アルキニル基は、置換されていなくてもよく、又は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0035】
本明細書で用いる「シクロアルキニル」という用語は、7個以上の炭素原子から構成され、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む非芳香族炭素系環である。シクロアルキニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロヘプチニル、シクロオクチニル、シクロノニニル等が挙げられる。「ヘテロシクロアルキニル」という用語は、上記で定義されるシクロアルキニル基の一種であり、「シクロアルキニル」という用語の意味に含まれ、環に含まれる少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄又はリン等のヘテロ原子で置換されたものである。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。シクロアルキニル基及びヘテロシクロアルキニル基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。
【0036】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、これらに限定されないが、ベンゼン、ナフタレン、フェニル、ビフェニル、フェノキシベンゼン等を含む、いずれかの炭素系芳香族基を含有する基である。「アリール」という用語には、芳香族基であって、該芳香族基の環内に少なくと1つのヘテロ原子が組み込まれた芳香族基を含有する基として定義される「ヘテロアリール」も含まれる。ヘテロ原子の例としては、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄及びリンが挙げられる。同様に、「アリール」の用語にも含まれる「非ヘテロアリール」という用語は、ヘテロ原子を含まない芳香族基を含有する基を定義する。アリール基は、置換されていても置換されていなくてもよい。アリール基は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ケトン、アジド、ニトロ、シリル、スルホ‐オキソ(sulfo-oxo)、又はチオールを含む、1つ又は複数の基で置換されていてもよい。「ビアリール」という用語は、特定の種類のアリール基であり、「アリール」の定義に含まれる。ビアリールは、ナフタレンのような縮合環式構造を介して共に結合した2つのアリール基、又はビフェニルのように1つ以上の炭素−炭素結合を介して結合した2つのアリール基を指す。
【0037】
本明細書で用いる「アルデヒド」という用語は、式-C(O)Hで表される。この明細書を通して、「C(O)」はカルボニル基、即ち、C=Oの略式表記である。
【0038】
本明細書で用いる「アミン」又は「アミノ」という用語は、式NA1A2A3で表され、ここで、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0039】
本明細書で用いる「カルボン酸」という用語は、式-C(O)OHにより表される。
【0040】
本明細書で用いる「エステル」という用語は、式-OC(O)A1又は-C(O)OA1により表され、ここで、A1は、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「ポリエステル」という用語は、式-(A1O(O)C-A2-C(O)O)a-又は-(A1O(O)C-A2-OC(O))a-により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよく、そして「a」は1〜500の整数である。「ポリエステル」とは、2個以上のカルボン酸基を有する化合物と2個以上のヒドロキシル基を有する化合物との反応により生成する基を説明するために用いられる用語である。
【0041】
本明細書で用いる「エーテル」という用語は、式A1OA2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「ポリエーテル」という用語は、式-(A1O-A2O)a-により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよく、そして「a」は1〜500の整数である。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリブチレンオキシドが挙げられる。
【0042】
本明細書で用いる「ハライド」という用語は、ハロゲン類、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0043】
本明細書で用いる「ヒドロキシル」という用語は、式-OHにより表される。
【0044】
本明細書で用いる「ケトン」という用語は、式A1C(O)A2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0045】
本明細書で用いる「アジド」という用語は、式-N3により表される。
【0046】
本明細書で用いる「ニトロ」という用語は、式-NO2により表される。
【0047】
本明細書で用いる「ニトリル」という用語は、式-CNにより表される。
【0048】
本明細書で用いる「シリル」という用語は、式-SiA1A2A3で表され、ここで、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0049】
本明細書で用いる「スルホ-オキソ(sulfo-oxo)」という用語は、式-S(O)A1、-S(O)2A1、 -OS(O)2A1、又は-OS(O)2 OA1で表され、ここで、A1は、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書を通じて、「S(O)」とは、S=Oの略式表記である。「スルホニル」という用語は、本明細書で用いる場合、式-S(O)2A1で表されるスルホ-オキソ基を指し、ここで、A1は、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「スルホン」という用語は、式A1S(O)2A2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。本明細書で用いる「スルホキシド」という用語は、式A1S(O)A2により表され、ここで、A1及びA2は、独立して、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0050】
本明細書で用いる「チオール」という用語は、式- SHにより表される。
【0051】
本明細書で用いる場合、「シロキサニル」という用語は、少なくとも1つのSi-O-Si結合を有する構造体を指す。従って、例えば、シロキサニル基は、少なくとも1つのSi-O-Si部分を有する基を意味し、シロキサニル化合物は、少なくとも1つのSi-O-Si基を有する化合物を指す。
【0052】
本明細書で用いる場合、「アルコキシシリル」という用語は、少なくとも1つのSi-O-A1結合を有する構造体を指す。従って、例えば、アルコキシシリル基は、少なくとも1つのSi-O-A1部分を有する基を意味し、アルコキシシリル化合物は、少なくとも1つのSi-O-A1基を有する化合物を意味する。更なる局面では、アルコキシシリルは、Si-O-A1基を1つ有していてもよい。種々の局面において、アルコキシシリル部分のA1は、本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。また、更なる局面において、アルコキシシリルという用語に、置換アルコキシシリル基及び加水分解されたアルコキシシリル基(即ち、シラノール基)等のアルコキシシリル誘導体が含まれることも意図される。
【0053】
本明細書で用いる場合、「ハロゲン化シリル」という用語は、式X1SiA1A2A3又はX1X2SiA1A2又はX1X2X3SiA1又はX1X2X3X4Siで表される構造を指し、ここで、X1、X2、X3及びX4は、独立して、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、そしてA1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基である。更なる局面では、ハロゲン化シリルは、X1SiA1A2A3の構造を有していてもよい。
【0054】
本明細書で用いる場合、「シラノール」という用語は、式 -SiA1A2A3A4で表される構造を有するシリル部分を指し、ここで、A1、A2、A3及びA4は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよいが、但し、A1、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つがヒドロキシルとなる。更なる局面では、A1、A2、A3及びA4のうち1つがヒドロキシルである。
【0055】
本明細書で用いる場合、「シラノキシ」及び「シラノキシル」という用語は、式 -OSiA1A2A3で表される構造を有するシリル部分を指し、ここで、A1、A2及びA3は、独立して、水素又は本明細書に記載されるような置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基であってもよい。
【0056】
本明細書で用いる場合、「アルキルアクリル酸」という用語は、アクリル酸、アルキル置換アクリル酸、これらの塩及びこれらの誘導体を指す。ある局面では、アルキルアクリル酸は、更に置換されていてもよい。更なる局面では、アルキルアクリル酸は、メタクリル酸である。
【0057】
本明細書で用いる場合、「加水分解性基」という用語は、加水分解又は加溶媒分解により水素へと変換可能な基又は部分を指す。ある局面では、加水分解性基は、周囲温度で又は周囲温度前後で、大気圧で又は大気圧前後で、水又はプロトン性溶媒に暴露することにより加水分解できる(即ち、水素基に変換できる)。更なる局面では、加水分解性基は、高温又は高圧下で水又はプロトン性溶媒に暴露することで加水分解できる。更なる局面では、加水分解性基は、酸性水若しくはアルカリ水又は酸性プロトン性溶媒若しくはアルカリ性プロトン性溶媒に暴露することにより加水分解できる。
【0058】
本明細書で用いる場合、「立体障害性」という用語は、第三級又は第四級の置換部分を指し、ここで、少なくとも1つの置換基が、2個以上の炭素原子を有する。例えば、立体障害性部分は、以下の構造を有していてもよい。
【0059】
【化1】

【0060】
(式中、A1は、炭素原子又はケイ素原子であり、そして、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つが炭素数2以上の有機基である。更なる局面では、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つがメチルであり、そしてA2、A3及びA4のうち少なくとも1つが炭素数2以上の有機基である)。
【0061】
立体障害性基の一例としては、立体障害性末端ケイ素基が挙げられ、これは、以下の構造を有していてもよい:
【0062】
【化2】

【0063】
(式中、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つが炭素数2以上の有機基である。更なる局面では、A2、A3及びA4のうち少なくとも1つがメチルであり、そしてA2、A3及びA4のうち少なくとも1つが炭素数2以上の有機基である)。
【0064】
本明細書で用いる場合、「ラジカル重合可能な重合基」という用語は、例えば、ラジカル開始剤などのラジカル源に暴露させた際に、付加重合を起こすことが可能な部分を指す。ラジカル共重合可能な重合基としては、オレフィン類並びにアクリレート類、例えば、アクリル酸及びその誘導体(例えば、アクリル酸アルキル)並びにメタクリル酸及びその誘導体(例えば、メタクリル酸アルキル)等が挙げられる。このような重合は、典型的には、連鎖成長機構を通じて進行し、連鎖成長動態を示す。
【0065】
本明細書で用いる場合、「加水分解耐性」という用語は、加水分解条件下で化合物又は組成物が存続し続ける能力を指す。ある局面では、酸加水分解が意図される。本明細書で用いる場合、「耐加水分解性」という用語は、加水分解条件下で存続し続ける特性を指す。ある局面では、化合物の残基について、組成物が、その化合物の残基を含む場合に、その化合物の残基を含まない類似組成物と比べて、より高い加水分解耐性を示す場合に、前記化合物の残基が加水分解性であると称することができる。
【0066】
他に記載のない限り、くさび又は破線ではなく実線のみで示される化学結合を有する式は、それぞれの可能な異性体及び、例えば、各エナンチオマー及びジアステレオマー並びにラセミ混合物又はスケールミック(scalemic)混合物等の異性体の混合物を意図している。
【0067】
本発明の組成物の調製に用いられる成分、並びに本発明の方法で用いられる組成物自体が開示される。これらと他の原料が本明細書に開示されており、これら原料の組合せ、サブセット、相互作用、グループ等が開示される場合は、これら化合物の個々の種々の組合せ及び集合的な組み合わせ及び順序が明確に開示されていないかもしれないがその場合にも、それぞれは、本明細書において、具体的に意図されて記載されているものと理解される。例えば、特定の化合物が開示されて議論され、該化合物を含む数多くの分子に施すことが可能な数々の修飾が議論される場合、特に表示のない限り、該化合物と可能な修飾のそれぞれ及び全ての組合せと順序が具体的に意図されている。従って、あるクラスの分子A、B及びCが、あるクラスの分子D、E及びFと共に開示され、そして組合せ分子A-Dの例が開示されている場合には、それぞれが個別に記載されていなくても、それぞれが、個別かつ集合的に意図されており、組み合わせA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E及びC-Fが開示されているものと見なされることを意味している。同様に、これらのあらゆるサブセット又は組み合わせも開示されているものとする。従って、例えば、A-E、B-F及びC-Eのサブグループも開示されているものとみなされることになる。この概念は、これらに限定されないが、本発明の組成物の製造方法及び使用方法における工程を含む、本出願の全ての局面にあてはまる。従って、実施可能な種々の更なる工程が存在する場合には、これらの更なる工程のそれぞれが、本発明の方法のいずれかの具体的な態様又は態様の組合せで実施できるものと理解される。
【0068】
本明細書に開示する組成物が、一定の機能を有することが理解される。本明細書には、開示される機能を実行するための特定の構造上の要件が開示されており、開示される構造に関する機能と同一の機能を実行可能な種々の構造が存在すること、そしてこれらの構造が、典型的には同一の結果を達成するであろうことが理解される。
【0069】
B.耐加水分解性シリコーン化合物
ある局面において、本発明は、高純度耐加水分解性シリコーン化合物に関する。即ち、シリコーン化合物は、ジシロキサン副生成物を減少せしめ、従って、収率と純度の向上が可能である。
【0070】
1.高純度耐加水分解性シリコーン化合物
ある局面において、本発明は、以下の構造を有する高純度耐加水分解性シリコーン化合物に関する。
【0071】
【化3】

【0072】
(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;
Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;
R、R1、R2及びR3は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは、炭素数2以上の基であり;そして
nは、1〜3の整数を表す。特定の局面では、n = 1、n = 2、そしてn = 3である)。
【0073】
このような高純度耐加水分解性シリコーン化合物は、例えば、以下の構造を有するハロゲン化シリル
【0074】
【化4】

【0075】
(式中、Xは、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲンを表す)
を以下の構造を有するシラノール
【0076】
【化5】

【0077】
と反応させる工程により調製できる。
【0078】
更なる局面では、このような化合物は、ガスクロマトグラフィー分析において、約10%以上の収率で生成される。例えば、収率は、ガスクロマトグラフィー分析において、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上又は約50%以上となる場合がある。
【0079】
更なる局面では、k = 0であり、mは、1〜3である。更なる局面では、k = 1であり、mは、1〜7である。更なる局面では、R1、R2及びR3のうち1つが、メチルであり、かつR1、R2及びR3の少なくとも1つが、エチル、プロピル又はブチルである。また更なる局面では、R1、R2及びR3のうち2つが、メチルであり、かつR1、R2及びR3のうち1つが、エチル、プロピル又はブチルである。
【0080】
ある局面では、水は実質的に含まれない。
【0081】
a. ラジカル重合可能な重合基
ある局面では、本発明の高純度耐加水分解性シリコーン化合物は、本明細書に開示するラジカル重合可能な重合基Mを少なくとも1つ含む。1つのラジカル重合可能な重合基は、本発明に係る他の化合物の他のラジカル重合可能な重合基又はコモノマーのラジカル重合可能な重合基と重合反応を起こし、これによって、本発明に係る化合物の残基を含むポリマーが生成可能なことが理解されるべきである。
【0082】
b.結合基
ある局面では、本発明の高純度耐加水分解性シリコーン化合物は、結合基Lを1個以上含んでいてもよい。ある局面では、Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基であってもよく、例えば、置換された若しくは置換されていない炭素数1〜16の有機基、炭素数1〜12の有機基、炭素数1〜8の有機基又は炭素数1〜4の有機基であってもよい。更なる局面では、結合基Lは、置換された若しくは置換されていないポリアルキレン基となる場合がある。即ち、Lは、相互に結合されたCH2基を2個以上含み、式 -(CH2)a-(式中、「a」は、1〜20の整数)で表される基であってもよい。例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン及びヘキシレンが挙げられる。前記有機基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。
【0083】
更なる局面では、結合基Lは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよい。例えば、Lは、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、アミド基、アルキルアミド基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はこれらの官能基の組合せで置換されていてもよい。また更なる局面では、Lは、ヒドロキシ基又はヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。特に、ある局面では、Lは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0084】
更なる局面では、結合基Lの1又は2個以上のCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい。例えば、Lの1又は2個以上のCH2基は、O、S、N-RL、P-RL又はこれらのヘテロ原子の組合せで置換されていてもよい(RLは、炭素数1〜20の置換若しくは非置換アルキル基又は炭素数6〜20の置換若しくは非置換アリール基であり、RLは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよく、そして、RLのCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい)。また更なる局面では、Lの1又は2個以上のCH2基は、0又はN-RLで置換されていてもよい。
【0085】
更なる局面では、Lは、以下の構造を有する:
【0086】
【化6】

【0087】
(式中、kは、0〜6の整数を表し;そして、mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 ≦ 3k + m ≦ 20である。更なる、局面では、k = 1であり、mは、1〜7である。)。別の更なる局面では、Lは、本発明の化合物及び/又は組成物に含まれない。
【0088】
c.シラノキシ基(silanoxy group)
ある局面では、本発明の化合物は、以下の構造を有するシラノキシ基を1つ、2つ又は3つ含んでいてもよい:
【0089】
【化7】

【0090】
(式中、R、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数1〜20の置換又は非置換アルキル基又は炭素数6〜20のの置換又は非置換アリール基を表す)。
【0091】
前記炭素数1〜20のアルキル基は、例えば、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル及びドデシルが挙げられる。前記アルキル基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。
【0092】
前記炭素数6〜20のアリール基は、例えば、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜10のアリール基であってもよい。例としては、フェニル、トルエニル、ピリジニル及びナフタレニルが挙げられる。
【0093】
更なる局面では、R1、R2及びR3の少なくとも1つが、炭素数2以上の基である。例えば、各シラノキシ基は、独立して以下の式で表される構造を有していてもよい:
【0094】
【化8】

【0095】
d.ジシロキサン副生成物
ある局面では、ジシロキサン化合物は、以下の構造を有し、
【0096】
【化9】

【0097】
ガスクロマトグラフィー分析において、約0%ないし約20%の量で存在する。例えば、ジシロキサンの存在量は、約0%ないし約15%、約0%ないし約10%、約0%ないし約5%、約0%ないし約3%、約0%ないし約3%、約0%ないし約1%、又は約0%となる場合がある。ある局面では、ジシロキサン化合物は、実質的に含まれない。
【0098】
C.耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法
ある局面では、本発明は、高純度耐加水分解性シリコーン化合物の製造方法に関する。即ち、本発明の方法により、ジシロキサン副生成物の量が少なく、高収率及び高純度でシリコーン化合物を製造できる。
【0099】
1.ハロゲン化シリルとシラノールの反応
ある局面では、本発明は、以下の構造を有するシリコーン化合物の製造方法
【0100】
【化10】

【0101】
(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;R、R1、R2及びR3は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは、炭素数2以上の基であり;そしてnは、1〜3の整数を表す)
であって、以下の構造を有するハロゲン化シリル
【0102】
【化11】

【0103】
(式中、Xは、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲンを表す)
を以下の構造を有するシラノール
【0104】
【化12】

【0105】
と反応させる工程を含む方法に関する。
【0106】
更なる局面では、水は、実質的に含まれない。
【0107】
a.ラジカル重合可能な重合基
ある局面では、本発明の方法により、ラジカル重合可能な重合基Mを少なくとも1つ含む化合物が生成される。ある局面では、Mは、例えば、ラジカル開始剤などのラジカル源に暴露させた場合に、付加重合を起こすことが可能な、当業者に知られるいずれかの部分である。更なる局面では、Mは、オレフィンとなる場合がある。例えば、Mは、エチレン部分、1,3-ブタジエン部分又はスチリル部分を含むアルケン基であってもよい。更なる局面では、Mは、アクリレートとなる場合がある。例えば、Mは、アクリル酸若しくはその誘導体(例えば、アクリル酸アルキル)の残基又はメタクリル酸若しくはその誘導体(例えば、メタクリル酸アルキル)の残基であってもよい。特に、ある局面では、Mは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であってもよい。
【0108】
1つのラジカル重合可能な重合基は、本発明に係る他の化合物の他のラジカル重合可能な重合基又はコモノマーのラジカル重合可能な重合基と重合反応を起こし、これによって、本発明に係る化合物の残基を含むポリマーが生成可能なことが理解されるべきである。
【0109】
b.結合基
ある局面では、本発明により、結合基Lを1個以上含んでいてもよい化合物が生成される。ある局面では、Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基であってもよく、例えば、置換された若しくは置換されていない炭素数1〜16の有機基、炭素数1〜12の有機基、炭素数1〜8の有機基又は炭素数1〜4の有機基であってもよい。更なる局面では、結合基Lは、置換若しくは非置換ポリアルキレン基となる場合がある。即ち、Lは、相互に結合されたCH2基を2個以上含み、式 -(CH2)a-(式中、「a」は、1〜20の整数)で表される基であってもよい。例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン及びヘキシレンが挙げられる。前記有機基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。
【0110】
更なる局面では、結合基Lは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよい。例えば、Lは、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、アミド基、アルキルアミド基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基又はこれらの官能基の組合せで置換されていてもよい。また更なる局面では、Lは、ヒドロキシ基又はヒドロキシアルキル基で置換されていてもよい。特に、ある局面では、Lは、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0111】
更なる局面では、結合基Lの1又は2個以上のCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい。例えば、Lの1又は2個以上のCH2基は、O、S、N-RL、P-RL又はこれらのヘテロ原子の組合せで置換されていてもよい(RLは、炭素数1〜20の置換若しくは非置換アルキル基又は炭素数6〜20の置換若しくは非置換アリール基であり、RLは、1又は2個以上の官能基で置換されていてもよく、そして、RLのCH2基は、1又は2個以上のヘテロ原子で置換されていてもよい)。また更なる局面では、Lの1又は2個以上のCH2基は、0又はN-RLで置換されていてもよい。
【0112】
更なる局面では、Lは、以下の構造を有する:
【0113】
【化13】

【0114】
(式中、kは、0〜6の整数を表し;そして、mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 ≦ 3k + m ≦ 20である)。
【0115】
更なる、局面では、k = 1であり、mは、1〜7である。別の更なる局面では、k = 0であり、mは、1〜3である。また更に別の局面では、Lは、本発明の方法に含まれない。
【0116】
c.ハロゲン化シリル化合物
ある局面では、本発明の方法は、以下の構造を有するハロゲン化シリルに関する。
【0117】
【化14】

【0118】
ある局面では、Xは、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲンを表す。
【0119】
更なる局面では、3-nは、0〜2の整数である。即ち、nは、1〜3の整数を表す。例えば、nは1、2又は3であって、3-nは2,1または0になる場合がある。
【0120】
また更なる局面では、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。前記炭素数1〜20のアルキル基は、例えば、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル及びドデシルが挙げられる。前記アルキル基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。前記炭素数6〜20のアリール基は、例えば、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜10のアリール基であってもよい。例としては、フェニル、トルエニル、ピリジニル及びナフタレニルが挙げられる。
【0121】
d.シラノール
ある局面では、本発明の方法は、以下の構造を有するシラノールに関する。
【0122】
【化15】

【0123】
更なる局面では、nは、1〜3の整数を表す。例えば、nは、1、2又は3となる場合がある。
【0124】
別の更なる局面では、R1、R2及びR3は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。前記炭素数1〜20のアルキル基は、例えば、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキル基であってもよい。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル及びドデシルが挙げられる。前記アルキル基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。前記炭素数6〜20のアリール基は、例えば、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数6〜10のアリール基であってもよい。例としては、フェニル、トルエニル、ピリジニル及びナフタレニルが挙げられる。
【0125】
更なる局面では、前記シラノールは、立体障害性の末端ケイ素基を含む。即ち、ある局面では、R1、R2及びR3の少なくとも1つが、炭素数2以上の基である。即ち、R1、R2及びR3のうち1つ又は2つ又は3つが、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、フェニル基、トルエニル基、ピリジニル基又はナフタレニル基などの炭素数2以上の基であってもよい。更なる局面では、R1、R2及びR3のうち1つがメチルであり、R1、R2及びR3の少なくとも1つが、エチル、プロピル又はブチルである。また更なる局面では、R1、R2及びR3のうち2つが、メチルであり、R1、R2及びR3のうち1つが、エチル、プロピル又はブチルである。
【0126】
e.反応条件
典型的には、ハロゲン化シリル(例えば、トリハロシラン)とこれに対して1モル当量以上のシラノール(例えば、トリアルキルシリルアルコール)が、有機溶媒とアミン系溶媒の混合物に添加される。トリアルコキシシリルアルキルアクリレートとトリアルキルシリルハライドは、典型的には、別々に添加され、そして典型的には、滴下漏斗を用いて添加される。このような添加は、典型的には、混合物を撹拌、振とう又は超音波処理により混和させながら行われる。
【0127】
i.試薬
ある局面では、例えば、トリハロシランなどの本明細書に開示されるハロゲン化シリルは、本明細書に開示する方法と関連して用いることができる。典型的には、この試薬の1モル当量が使用される。
【0128】
更なる局面では、例えば、トリアルキルシリルアルコールなどの本明細書に開示されるシラノールは、本明細書に開示する方法と関連して用いることができる。有機合成分野の当業者であれば、反応に用いるシラノールの相対量を直ちに決定可能であろうが、典型的には、ハロゲン化シリルがモノハライドである場合には、ハロゲン化シリルに対して1モル当量以上のシラノールが用いられる。ハロゲン化シリルがジハライドである場合には、典型的には、ハロゲン化シリルに対して2モル当量以上のシラノールが用いられる。ハロゲン化シリルがトリハライドである場合には、典型的には、ハロゲン化シリルに対して3モル当量以上のシラノールが用いられる。更なる局面では、過剰量が所望される場合には、4、5、6モル当量又はこれ以上を用いてもよい。
【0129】
更なる局面では、開示する方法との関連で有機溶媒を用いてもよい。種々の局面において、この有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、エチルベンゼン、ピリジン及びジメチルアニリンなどの芳香族溶媒; ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン又はデカンなどの炭化水素;ジエチルエーテルなどのエーテル;又はジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びジエチルアセトアミドなどのアミドであってもよい。典型的には、ハロゲン化シリル1 mmol当たりに3.2 mLの有機溶媒が用いられる;しかしながら、ハロゲン化シリル1 mmol当たりに約2.0 mLないし約10.0 mLの有機溶媒を用いてもよい。
【0130】
ある局面では、開示する方法との関連でアミン系溶媒を用いてもよい。典型的には、アミン系溶媒は、芳香族アミン又は第3級アミン等の非プロトン性アミンとなる。適切なアミン系溶媒としては、ピリジン、N-メチルピぺリジン、N-メチルピロリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びジメチルアニリンが挙げられる。典型的には、シラノール1 mmol当たりに約1 mmolのアミン系溶媒が用いられる;しかしながら、シラノール1 mmol当たりに約1 mmolないし約3.0 mmolのアミン系溶媒を用いてもよい。
【0131】
ii.温度及び圧力
添加は、典型的には、室温(約25℃)で行うことが可能である。添加は、大気圧(即ち、約760 Torr)下で好適に行うことが可能である。更なる局面では、反応系は、添加前及び/又は添加中に、例えば、約25℃ないし約100℃の温度、例えば、約25℃ないし約50℃、約50℃ないし約75℃、又は約75℃ないし約100℃の温度に加熱される。更なる局面では、反応系は、添加前及び/又は添加中に、例えば、約0℃ないし約25℃の温度、例えば、約0℃ないし約5℃、約5℃ないし約10℃、約15℃ないし約20℃又は約20℃ないし約25℃の温度に冷却される。
【0132】
iii.時間
ある局面では、反応は、約30分間ないし約6時間、例えば、約1時間ないし約4時間又は約3時間撹拌させてもよい。当業者であれば、クロマトグラフ法(例えば、薄層クロマトグラフィー(TCL)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はガスクロマトグラフィー(GC))によって出発物質(例えば、ハロゲン化シリル)の消費をモニターすることにより、反応の完了を直ちに決定できるであろう。
【0133】
iv.精製
反応が完了すると、典型的には、生成物を含む溶液を水で1回又は複数回洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。次いで、粗生成物をろ過し、濃縮して、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;ヘキサン/酢酸エチル)により精製できる。その後、生成物を、例えば、GCによって分析し、いずれかのジシロキサン副生成物のピーク面積に対する目的のシリコーン化合物のピーク面積の比率を求めることができる。
【0134】
f.本発明の方法により生成される耐加水分解性シリコーン化合物
本発明の方法により生成される生成物も開示される。ある局面では、本発明の方法により生成される耐加水分解性シリコーン化合物は、以下の構造を有する場合がある:
【0135】
【化16】

【0136】
(本明細書に開示されるとおり、式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;R、R1、R2及びR3は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、ただし、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは、炭素数2以上の基であり;そして
nは、1〜3の整数を表す。)
【0137】
2.収率と純度
更なる局面では、本発明の方法により、従来の方法と比較して高収率及び/又は高純度で化合物を生成することができる。
【0138】
a.高収率
本発明の方法は、典型的には、従来の方法と比べて高い収率を示す。例えば、ある局面では、本発明は、以下の構造を有するシリコーン化合物の製造方法に関する:
【0139】
【化17】

【0140】
本明細書に開示されるように、前記シリコーン化合物は、ガスクロマトグラフィー分析において、約10%以上の収率で生成される。例えば、前記シリコーン化合物は、ガスクロマトグラフィー分析において、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%又は約50%以上の収率で生成される。ある局面では、水は、実質的に含まれない。
【0141】
方法の収率は、例えば、下記の実施例5-1及び比較例5-1に記載されるように、得られる粗生成物のガスクロマトグラフィー(GC)分析により測定できる。本発明の化合物又は本発明の方法による生成物に相当すると考えられるピークの面積を、副生成物に相当すると考えられるピークの面積又はクロマトグラム中の全てのピークの総面積と比較することにより、収率の測定値を得ることができる。
【0142】
b.高純度
ある局面では、ジシロキサン化合物は、以下の構造を有し:
【0143】
【化18】

【0144】
ガスクロマトグラフィー分析において、約0%ないし約20%の量で存在する。例えば、ジシロキサンの存在量は、ガスクロマトグラフィー分析において、約0%ないし約15%、約0%ないし約10%、約0%ないし約5%、約0%ないし約3%、約0%ないし約3%、約0%ないし約1%、又は約0%となる場合がある。ある局面では、ジシロキサン化合物は、実質的に含まれない。
【0145】
理論による束縛を願うものではないが、シラノール(又はシラノール前駆体)と立体障害性ハロゲン化シリルとの反応により、不所望のジシロキサン副生成物が不満足な量で生じる恐れがあると考えられている。対照的に、ここでも理論への束縛を願うものではないが、立体障害性シラノールとハロゲン化シリルとの反応により、不所望のジシロキサン副生成物の生成量を最小に留めると同時に、所望の耐加水分解性シリコーン化合物の生成の促進が可能になると考えられている。
【0146】
D.耐加水分解性ポリマー
ある局面では、本発明は、本発明の化合物の残基を1個以上又は本発明の方法により調製される生成物の残基を1個以上含むポリマーに関する。即ち、耐加水分解性ポリマーの1個以上のサブユニットが、耐加水分解性化合物の残基で構成される。
【0147】
1.共重合
更なる局面では、本発明のポリマー組成物は、共重合体として提供されてもよい。即ち、前記ポリマーは、耐加水分解性化合物の残基及び1又は2種類の更なるモノマーの残基を含む。例えば、本発明の化合物は、1種類以上のコモノマー、例えば、親水性コモノマーと共重合させてもよい。適切な親水性コモノマーとしては、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0148】
共重合に使用可能な重合可能な原料としては、重合可能な炭素-炭素不飽和結合を有するモノマー、例えば、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基又はビニル基を用いることができる。
【0149】
このようなモノマーの好ましい例としては、以下が挙げられる:アルキル(メタ)アクリレート、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸, ビニル安息香酸, メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレート;多官能性(メタ)アクリレート、例えば、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、両末端に(メタ)アクリルオキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン、一端に(メタ)アクリルオキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン及び側鎖に複数の(メタ)アクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン;ハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート;ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアクリルアミド、N,N-ジ-n-ブチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピぺリジン、N-アクリロイルピロリジン及びN-メチル(メタ)アクリルアミド;N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、芳香族ビニルモノマー、例えば、スチレン、α-メチルスチレン及びビニルピリジン;マレイミド;複素環式ビニルポリマー、例えば、N-ビニルピロリドン;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[ビス(トリメチルシロキシ) メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル] プロピル(メタ)アクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3-[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]メチル(メタ)アクリレート、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリレート、[トリス(トリメチルシロキシ) シリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]メチル(メタ)アクリルアミド、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]スチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]スチレン、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]スチレン及び一端に(メタ)アクリルオキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン。
【0150】
このようなモノマーの更なる好ましい例としては、以下が挙げられる:2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(SiGMA);末端にモノメタクリルオキシプロピルとモノ-n-ブチルを有するポリジメチルシロキサン(mPDMS;分子量(MW)800-1000(数平均分子量(Mn)));ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(acPDMS)(MW 1000及び2000, それぞれ、Gelest製及びDegussa製のアクリル化ポリジメチルシロキサン);Gelest製の末端にメタクリルオキシプロピルを有するポリジメチルシロキサン(MW 550-700)(maPDMS);並びに末端にモノ-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルとモノ-ブチルを有するポリジメチルシロキサン(mPDMS-OH)。
【0151】
本発明での使用に適した他のシリコン含有成分としては、ポリシロキサン基、ポリアルキレンエーテル基、ジイソシアネート基、ポリフッ素化炭化水素基、ポリフッ素化エーテル基及び多糖基を含有するマクロマーといった、国際公開公報第WO 96/31792号に記載される成分が挙げられる。米国特許第5,321,108号;同第5,387,662号及び同第5,539,016号には、極性を有するフッ素化グラフト又は2つのフッ素で置換された末端炭素原子に結合した水素原子を有する側鎖を有するポリシロキサンが記載されている。米国特許出願第2002/0016383号には、エーテル及びシロキサン結合を含有する親水性のシロキサニルメタクリレート並びにポリエーテル基及びポリシロキサニル基を含有する架橋性モノマーが記載されている。
【0152】
2.ポリマー修飾
ある局面では、前記ポリマーは、ホモポリマーである。即ち、前記モノマー残基の実質的に全てが、耐加水分解性化合物の残基で構成される。
【0153】
更なる局面では、モノマー残基の全部ではなく一部分が、耐加水分解性化合物の残基を含む。更なる局面では、前記ポリマーの少なくとも5%が、本発明の化合物の残基又は本発明の方法により調製される生成物の残基を含む。例えば、前記ポリマーの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%又は少なくとも50%が、本発明の化合物の残基又は本発明の方法により調製される生成物の残基を含む場合がある。
【0154】
更なる局面では、前記ポリマーの質量の全部ではなく一部分が、耐加水分解性化合物の残基により構成される。別の更なる局面では、前記ポリマーの質量の少なくとも5%が、本発明の化合物の残基又は本発明の方法により調製される生成物の残基により構成される。例えば、前記ポリマーの質量の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%又は少なくとも50%が、本発明の化合物の残基又は本発明の方法により調製される生成物の残基により構成される。
【0155】
E.耐加水分解性組成物
本発明の化合物及び本発明の方法により調製される生成物を、耐加水分解性の化合物及び/又は組成物に適した当業者に公知のあらゆる用途に用いることが可能なことが理解されるべきであるが、本発明の化合物、組成物及び本発明の方法による生成物は、眼用レンズ、例えば、コンタクトレンズの製造用の原料として用いることができる。
【0156】
ある局面では、本発明は、本発明の化合物の残基又は本発明の方法による生成物の残基を1個以上含有するポリマーを含む眼用レンズに関する。更なる局面では、本発明は、本発明の化合物の残基又は本発明の方法による生成物の残基を1個以上含有するポリマーを含むコンタクトレンズに関する。
【0157】
F.加水分解耐性
理論への束縛を願うものではないが、立体障害性末端ケイ素基を含む化合物は、立体障害性末端ケイ素基を含まない化合物と比べて、加水分解条件(例えば、酸加水分解)に対してより耐性が高いと考えられている。
【0158】
ある局面では、本発明の化合物、本発明の組成物及び本発明の方法による生成物は、加水分解耐性を有する。即ち、本発明の化合物は、従来型の化合物(即ち、立体障害性末端ケイ素基を含まない化合物)と比べて、より加水分解耐性が高い。また、本発明の組成物は、本発明の化合物の残基又は本発明の方法による生成物の残基を含む場合に、該化合物又は方法による組成物の残基を含まない同様の組成物と比べて、より加水分解耐性が高い。
【0159】
化合物又は方法の生成物の加水分解耐性は、例えば、アルコール、水、酸(例えば、酢酸などのカルボン酸)及び随意に重合阻害剤(例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)の存在下で加熱することにより測定することができる。この混合物を加水分解温度(例えば、80℃又は90℃)で加水分解時間(例えば、136時間又は168時間)に渡って加熱し、そして粗生成物のガスクロマトグラフィー(GC)によって分解率を測定できる。加水分解条件に付する前に試験した前記化合物又は生成物に相当すると考えられるピークの面積を加水分解条件に付した後に試験した該化合物又は生成物に相当すると考えられるピークの面積と比較することにより、試験した前記化合物又は生成物の加水分解条件下での存続率(パーセンテージ)を測定することができる。
【0160】
種々の局面において、本発明の化合物、本発明の方法による生成物及び本発明の組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%又は少なくとも約98%の加水分解耐性(H2O/2-プロパノール中に約5重量%の酢酸;80℃;136時間)を示す。対照的に、従来型の非耐加水分解性化合物を用いた比較例は、僅かに約46%の加水分解耐性(H2O/2-プロパノール中に約5重量%の酢酸;80℃;136時間)を示すことができるに過ぎない。
【0161】
更なる種々の局面では、本発明の化合物、本発明の方法による生成物及び本発明の組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約92%又は少なくとも約94%の加水分解耐性(H2O/n-ブタノール中に約5重量%の酢酸;90℃;136時間)を示す。対照的に、従来型の非耐加水分解性化合物を用いた比較例は、典型的には、約78%、約61%、又は僅かに約35%の加水分解耐性(H2O/n-ブタノール中に約5重量%の酢酸;90℃;136時間)を示すに過ぎない。
【0162】
種々の局面において、本発明の化合物の重合により得られるポリマーは、50%以下の伸び率の減少、45%以下の伸び率の減少又は40%以下の伸び率の減少といった加水分解耐性(約1.6重量%の(メタ)アクリル酸共重合体、55℃で8週間又は95℃で1週間)を示すことが可能である。対照的に、従来型の非耐加水分解性化合物を用いた比較例は、典型的には、約55%、更には約66%もの加水分解耐性(約1.6重量%の(メタ)アクリル酸共重合体、55℃で8週間又は95℃で1週間)を示す。
【0163】
G.同様の機能を有する組成物
本明細書に開示する組成物は、一定の機能を有することが理解される。本明細書には、開示される機能を実行するための特定の構造上の要件が開示されており、開示される構造に関する機能と同一の機能を実行可能な種々の構造が存在すること、そしてこれらの構造が、最終的には同一の結果を達成するであろうことが理解される。
【0164】
H.プラスチック成型体の調製
本発明に係るプラスチック成型体製造用の原料を単体で、又は1又は2種類以上の他の原料と共に重合させることにより、本発明の原料からプラスチック成型体を調製できる。
【0165】
プラスチック成型体、特に眼用レンズの調製には、良好な力学的特性並びに消毒液及び洗浄液に対する良好な耐久性が得られることから、分子内に複数の重合性炭素-炭素不飽和結合を有する1又は2種類以上の共重合性原料を用いることが好ましい場合がある。共重合に用いられる全モノマー量に対する分子内に複数の共重合性炭素-炭素不飽和結合を有する重合性原料の共重合に用いられる量の比率は、好ましくは、約0.01重量%以上であり、より好ましくは、0.05重量%以上であり、更により好ましくは、0.1重量%以上である。
【0166】
1.開始剤
プラスチック成型体の調製のための(共)重合においては、容易に重合を行うために、過酸化物及びアゾ化合物に代表される熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合、好適な反応温度で最適な分解特性を示す熱重合開始剤を選択する。一般的に、アゾ開始剤及び過酸化物開始剤は、約40℃ないし約120℃の温度で、10時間の半減期を有するものが好ましい。。光開始剤の例としては、カルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化化合物及び金属塩が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で又は組み合わせで用いることができる。重合開始剤の量は、重合混合物に対して約1重量%以下となるであろう。
【0167】
2.溶媒
本発明のプラスチック成型体の調製のための(共)重合においては、重合溶媒を用いることができる。この溶媒としては、種々の有機溶媒及び無機溶媒を用いることができる。この溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、直鎖プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、直鎖ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル及び安息香酸メチル等のエステル系溶媒;直鎖ヘキサン、直鎖ヘプタン及び直鎖オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン及びエチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;並びに石油系溶媒。これらの溶媒は、個別に用いてもよく、又はこれらの溶媒の複数を組み合わせて用いてもよい。
【0168】
3.添加剤
前記プラスチック成型体は、更なる成分を含んでいてもよく、これらに限定されないが、UV吸収剤、着色剤、色素剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬成分及び栄養補助成分、相溶化成分(compatibilizing component)、抗菌化合物、離型剤及びこれらの組み合せ等を含んでいてもよい。前述のいずれも、非反応性の形態、重合可能な形態、そして/又は共重合された形態で組み込むことができる。
【0169】
4.重合
本発明のプラスチック成型体製造用の原料の重合方法、及びプラスチックの成形方法については、既知の方法を用いることができる。例えば、原料を一度重合させて、丸い棒又はプレートの形状に成形し、次いで、得られた丸い棒又はプレートを切削などにより所望の形状へ加工する方法、モールド重合法及びスピンキャスト重合法を用いることができる。
【0170】
例として、本発明のプラスチック成型体を製造するための原料を含有する原料組成物をモールド重合法により重合させることで眼用レンズを作製する方法について説明する。
【0171】
最初に、2つのモールドパーツ間の所定の形状を有する空隙を原料組成物で満たし、光重合又は熱重合を行って、前記組成物を、モールド間の空隙の形状へ成形する。モールドは、樹脂製、ガラス製、セラミック製、金属製等である。光重合の場合、光透過性の原料が用いられ、通常は樹脂又はガラスが用いられる。眼用レンズを作製する場合、相互に向かい合う2つのモールドパーツの間に空隙が形成され、この空隙が、原料組成物で充填される。空隙の形状と原料組成物の特性にもよるが、眼用レンズに所定の厚さを与えて、空隙間に充填された原料組成物の漏出を防ぐため、ガスケットを用いてもよい。次いで、空隙に充填された原料組成物を含むモールドに、紫外線、可視光線又はこれらの組合せ等の化学線を照射するか、又は前記モールドをオーブン若しくは恒温槽内に静置して原料組成物を加熱することで重合を行う。前記の2種類の重合方法は、組み合わせで用いてもよい。即ち、光重合の後に熱重合を行ってもよく、熱重合の後に光重合を行ってもよい。光重合の態様では、水銀ランプ又は捕虫灯から発せられる光線等の紫外線を含む光線を短時間(通常は1時間以内)照射する。熱重合を行う場合、眼用レンズの光学的均一性、高い品質及び高い再現性の観点から、前記組成物が、数時間ないし数十時間の時間をかけて、ゆっくりと室温から約60℃ないし約200℃の温度へと加熱される条件を用いることが好ましい。
【0172】
本発明の原料から作製されたプラスチック成型体は、好ましくは、約130°以下、より好ましくは、約120°以下、更により好ましくは、約100°以下の動的接触角(前進時、浸漬速度:約0.1 mm/秒)を有していてもよい。含水率は約3%ないし約0%が好ましく、約5%ないし約50%がより好ましく、約7%ないし約50%が更により好ましい。前記眼用レンズがコンタクトレンズとして使用される場合の着用者の負担を軽減する観点から、酸素透過性が高い程好ましい。酸素透過性については、酸素透過係数[×10-11 (cm2/秒) mLO2 / (mL・hPa)]が約50以上であることが好ましく、約60以上がより好ましく、約65以上が更により好ましい。引張弾性率は、約0.01ないし約30 MPaが好ましく、約0.1ないし約7 MPaがより好ましい。引張伸びは約50%以上が好ましく、約100%以上がより好ましい。引張伸びが大きいとプラスチック成型体が破れにくくなるため、プラスチック成型体は、高い引張伸びを有していることが好ましい。
【0173】
5.例示的用途
ある局面では、本発明の化合物、本発明の組成物及び本発明の方法による生成物は、加水分解耐性が向上したプラスチック成型体を製造可能にする原料を提供する。このプラスチック成型体は、ドラッグデリバリーに用いられる薬物吸着剤や、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜及び眼鏡レンズ等の眼用レンズとして好適に用いることができる。これらのうち、前記プラスチック成型体は、特にコンタクトレンズに適している。
【0174】
ある局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を1種類以上含む成形品が提供される。更なる局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を1種類以上含む眼用レンズが提供される。また更なる局面では、本発明の化合物及び組成物を用いることで、本発明の組成物を1種類以上含むコンタクトレンズが提供される。
【実施例】
【0175】
I. 実験
下記の実施例は、当業者に、本出願の請求項に係る化合物、組成物、製品、装置及び/又は方法を作製して評価する方法について完全な開示と記載を提供するために示されるものであり、単に本発明の例示として意図されているに過ぎず、本発明者らが彼らの発明と見なす範囲を制限することを意図するものではない。数値(例えば、量、温度等)については、正確を期するために尽力したが、誤差や偏差も考慮すべきである。特に他に表示のない限り、部(parts)は重量部であり、温度は℃であるか又は周囲温度であり、圧力は、大気圧であるか又はその前後である。
【0176】
1.分析方法
a.ガスクロマトグラフィー
【0177】
ガスクロマトグラフィー(GC)分析では、分離ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)により、式(A1)(n = 0〜12)で表されるシロキサニル化合物のピークを同定する。
【0178】
i.装置とパラメータ
装置:HEWLETT-PACKARD製GC6890型又はこの同等物。検出器:水素炎イオン化検出器(FID)。カラム:Restek DB-1HT (30 m x 0.25 mm x 0.1 μm又はこの同等物)。キャリアガス:ヘリウム。一定流量:1.0 mL/分。サンプル注入量:2.0 μL。スプリット比:30:1。注入口温度:300℃。検出器温度:350℃。オートサンプラー洗浄溶媒:2-プロパノール。注入口セプタム:Alltech 7/16" HT-X-11又はこの同等物。
【0179】
ii.温度プログラム
開始温度100℃。開始時間:2分間。勾配:15℃/分;終了時温度:200℃(保持時間:0分間)。勾配:5℃/分;終了時温度:350℃(保持時間:0分)。勾配:15℃/分;終了時温度:400℃(保持時間:15分)。
【0180】
iii.データ解析条件
Slope Sensitivity:50。Peak Width:0.04。Area Reject:1。Height Reject:1。Integration Off:0〜4分間。
【0181】
iv.サンプル調製
約50μL のサンプルを 1.0 mL の2-プロパノールに溶解する。サンプルと2-プロパノールはGC用バイアル瓶に直接入れて混合する。
【0182】
b.ガスクロマトグラフィー‐質量分析(GC-MS)
ガスクロマトグラフィー‐質量分析(GC-MS)分析は、GC分析を上記の「ガスクロマトグラフィー分析条件」に記載する条件で行い、JEOL製の質量分析器JMS-DX303を用いて行った。
【0183】
c.ゲル浸透クロマトグラフィー
以下の条件でGPCを行った:カラム:昭光通商社製のShodex GPC K-801及びShodex GPC K-802(各カラムは、8.0 mmの内径と30 cmの長さを有する)。これら2つのカラムを連結させた。溶媒:クロロホルム。カラム温度:40℃。流速:1.0 mL/分。装置:東ソー社製のHLC-8022GPC(UV検出器と示差屈折計を組み合わせた一体型装置)。
【0184】
d.マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)には、島津製作所製のAXIMA-CFRプラスを用いた。
【0185】
e.酸素透過係数試験
理化精機工業社製の製科研式フィルム酸素透過率計を用いて、サンプルの酸素透過係数を測定した。フィルム状のサンプルの酸素透過係数は、35℃にて水中で測定した。厚さの異なる4種類のフィルムサンプルを調製した(0.1 mm、0.2 mm、0.3 mm及び0.4 mm;直径16 mm)。これらの厚さの異なる4種類のサンプルを測定して、各例におけるPmを決定した(図1参照)このサンプルの一つを、電極に接続した。0.5 NのKCl(水溶液)を、電解液として電極に注入した(図2ないし4参照)。電極を、蒸留水中に設置した(pH = 7、体積 = 800ml)。最初に、零点補正を行うため、窒素バブリング下での電流(流速 = 100mL/分;平衡に達した後に電流iを測定する)を測定した。次いで、酸素バブリング下での電流を測定した。以下の式により、Rを計算した:
【0186】
【数1】

(ここで、Ps = 760 mmHg(大気圧)、N = 4(電極での反応に関与する電子数)、F = 96500クーロン/mol(ファラデー係数)、A = 電極の面積(cm2)、i = 測定電流(uA))。Rは、定常(非比例)部分を伴うので、Pmの決定には、複数回の測定とプロッティングが必要である(図1参照)。R対サンプルの厚さをプロットした。傾きの逆数が、酸素透過係数(Pm)である。
【0187】
f.含水率
約10 mm x 10 mm x 0.2 mmのサイズのフィルム状のサンプルを用いた。サンプルを、真空乾燥機中で40℃にて16時間かけて乾燥させ、このサンプルの重量(Wd)を測定した。その後、得られたサンプルをサーモスタット恒温槽中の40℃の純水に一晩以上浸漬させ、表面の水分をキムワイプで拭き取って、重量(Ww)を測定した。含水率は、以下の式により計算した:
【0188】
【数2】

【0189】
g.引張弾性率
引張試験:約19.5 mm x 15 mm x 0.2 mmのサイズのフィルム状のサンプルを用いた。引張弾性率は、ORIENTEC社製のTensilon RTM-100型を用いて測定した。引張速度は、100 mm/分で、グリップ間の距離は、5 mmであった。
【0190】
h.光学的不均一性
コンタクトレンズの形状に成形したサンプルに、写真フィルム用プロジェクターを用いて光を照射し、スクリーン上にその像を投影させ、スクリーン上に投影された像を肉眼で観察して、光学的不均一度を評価した。評価は、以下の3段階に分類することで行った:
A: 歪み又は濁りは、全く観察されない。
B: 歪み又は濁りは、殆ど観察されない。
C: 歪み又は濁りが、観察される。
【0191】
2.実施例5-1
滴下漏斗を2つ取り付けた500 mL三つ口フラスコに80 mLのトルエンと11.85 g(75 mmol)のピリジンを添加した。得られた混合物を室温で撹拌しながら、50 mLのトルエンに6.55 g(25 mmol)の3-トリクロロシリルプロピルメタクリレートを溶解させた溶液を滴下漏斗から滴下し、同時に他方の滴下漏斗から9.90 g(75 mmol)のトリエチルシラノールを滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温で3時間撹拌し、ガスクロマトグラフィー(GC)で出発物質の消失を確認して反応終了とした。反応液を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム上で脱水し、エバポレータで有機溶媒を濃縮して粗生成物の液体を得た。得られた液体のGC測定を行ったところ、目的のシリコーン化合物と副生成物のジシロキサンのピーク面積比は表2の通りであった。
【0192】
得られた粗シリコーン化合物の液体10gに対して40gの割合でシリカゲルを用い、溶出液としてヘキサン/酢酸エチル = 20/1、15/1、10/1、7/1、4/1及び4/1の比率で各80mLずつ使用してカラムクロマトグラフィーにより精製し、下式(5p1)で表されるシリコーン化合物を得た。
【0193】
【化19】

【0194】
3.比較例5-1
50 mLのナスフラスコに5 mLの水、2.5 mLのメタノール及び2.5 mLのヘキサンを添加し、得られた混合物を氷上で撹拌しながら2〜3℃に冷却し、その後に滴下漏斗から2.48g (10 mmol)の3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートと7.36 g(60 mmol)のトリエチルクロロシランの混合物を滴下した。滴下終了後、反応溶液を室温で3時間撹拌し、ガスクロマトグラフィー(GC)で出発物質の消失を確認して反応終了とした。反応終了後、撹拌を停止し、水層を捨てた。有機層を分液漏斗に移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で1回、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。得られた混合物を濾過して溶媒をエバポレーターで蒸発させた。得られた粗生成物のGC測定を行ったところ、シリコーン化合物(5p1)と副生成物のヘキサエチルジシロキサンのピーク面積比は表1の通りであった。
【0195】
【表1】

【0196】
4.比較例5-2
トリエチルクロロシランの代わりにトリメチルクロロシランを用いた以外は、上記の比較例5-1と同様の試験を行った。得られた粗生成物のGC分析によれば、主生成物として3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレートが、GC面積%として69.8%の率で得られた。
【0197】
5.実施例6-1:レンズの調製
実施例5-1で得た式(5p1)で表されるシリコーン化合物(17.5重量部)、N,N-ジメチルアクリルアミド(15重量部)、ヒドロキシエチルメタクリレート(12.58重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(1.5重量部)、メタクリル酸(0.8重量部)、Irgacure 819(CIBA Specialty Chemicals社、0.13重量部)、PVP-K90(2.5重量部)及び3,7-ジメチル-3-オクタノール(50重量部)を混合して撹拌すると、均一で透明なモノマー混合物が得られた。このモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。このモノマー混合物を、窒素雰囲気下のグローブボックス中で透明樹脂(ポリ(4-メチルペント-1-エン))製のコンタクトレンズ用モールドに注入し、蛍光灯(20ワット)を用いて光照射(1.6 mW/cm2、30分間)して55℃でモノマーを重合させると、コンタクトレンズ状サンプルが得たられた。
【0198】
得られたサンプルをバイアル瓶中のホウ酸バッファー(pH 7.1〜7.3)に浸漬した。バイアル瓶を密封し、120℃で30分間該バイアル瓶をオートクレーブ処理した。放冷後、レンズ状サンプルをバイアル瓶から取り出し、ホウ酸バッファー(pH 7.1〜7.3)に浸漬した。
【0199】
b.比較例6-1
式(5p1)で表されるシリコーン化合物の代わりに以下の式(5r1)で表される市販のシリコーン化合物を用いた以外は、上記の実施例6-1と同様の重合を行った。
【0200】
【化20】

【0201】
c.比較例6-2
日本国特許公開公報S56-22325号に記載された方法で合成した下記式(5r2)で表されるシリコーン化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、式(5p1)で表されるシリコーン化合物の代わりに用いたこと以外は、上記の実施例6-1と同様の重合を行った。
【0202】
【化21】

【0203】
サンプルの物理特性を表2に示す。
【0204】
【表2】

【0205】
サンプルを55℃のオーブンに8週間置いた。次いでサンプルを取り出して、23℃で16時間以上放置し、その後に測定を行った。伸び率測定の結果を表3に示す。
【0206】
【表3】

【0207】
本発明の範囲と趣旨を逸脱することなく、本発明に種々の修飾及び変更を施すことが可能なことは、当業者にとって自明であろう。本明細書及び本明細書に開示する本発明の実施態様を検討することにより、本発明のその他の態様も当業者に明らかとなるであろう。本明細書と実施例は、単に例示的なものとしてのみ解釈されることが意図されており、本発明の真の範囲と趣旨は、これに続く各請求項に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有するシリコーン化合物の製造方法
【化1】

(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;
Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;
R、R1、R2及びR3は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは、炭素数2以上の基であり;そして
nは、1〜3の整数を表す)
であって、以下の構造を有するハロゲン化シリル
【化2】

(式中、Xは、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲンを表す)
を以下の構造を有するシラノール
【化3】

と反応させる工程を含む方法。
【請求項2】
Mが、アクリロイル基又はメタクリロイル基を含む基である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Lが、以下の構造を有する、請求項1記載の方法。
【化4】

(式中、kは、0〜6の整数を表し;そして
mは、kが0の場合に、1〜3の整数を表し、kが0でない場合に、1〜20の整数を表すが、但し、1 ≦ 3k + m ≦ 20である)。
【請求項4】
実質的に水が含まれていない、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ガスクロマトグラフィー分析において、以下の構造を有するジシロキサン化合物が、約0%〜約5%の量で存在する、請求項4記載の方法。
【化5】

【請求項6】
kが0であり、mが1〜3である、請求項3記載の方法。
【請求項7】
kが1であり、mが1〜7である、請求項3記載の方法。
【請求項8】
R1、R2及びR3のうち1つがメチルであり、かつR1、R2及びR3の少なくとも1つが、エチル、プロピル又はブチルである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
R1、R2及びR3のうち2つがメチルであり、かつR1、R2及びR3のうち1つが、エチル、プロピル又はブチルである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
以下の構造を有するシリコーン化合物の製造方法
【化6】

(式中、Mは、ラジカル重合可能な重合基を表し;
Lは、置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表し;
R、R1、R2及びR3は、独立して、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表すが、但し、R1、R2及びR3のうち少なくとも1つは、炭素数2以上の基であり;そして
nは、1〜3の整数を表す)
であって、以下の構造を有するハロゲン化シリル
【化7】

(式中、Xは、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるハロゲンを表す)
を以下の構造を有するシラノール
【化8】

と反応させる工程を含み、
ここで、前記シリコーン化合物が、ガスクロマトグラフィー分析において、約10%以上の収率で生成される方法。
【請求項11】
前記シリコーン化合物が、ガスクロマトグラフィー分析において、約25%以上の収率で生成される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記シリコーン化合物が、ガスクロマトグラフィー分析において、約50%以上の収率で生成される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
実質的に水が存在しない、請求項10記載の方法。
【請求項14】
ガスクロマトグラフィー分析において、以下の構造を有するジシロキサン化合物が、約0%〜約20%の量で存在する、請求項10記載の方法。
【化9】

【請求項15】
ガスクロマトグラフィー分析において、前記ジシロキサン化合物が、約10%未満の量で存在する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1記載の方法による生成物。
【請求項17】
請求項1記載の方法により調製された化合物の残基を1つ以上含むポリマー。
【請求項18】
前記ポリマーの25%以上が、請求項1記載の方法により調製された化合物の残基を含む、請求項17記載のポリマー。
【請求項19】
請求項17記載のポリマーを含む眼用レンズ。
【請求項20】
請求項17記載のポリマーを含むコンタクトレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−505030(P2010−505030A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530394(P2009−530394)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/020668
【国際公開番号】WO2008/042158
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】