説明

耐放射線カメラ

【課題】CCD素子を含む基板を容易に交換できる構造とすることで、カメラユニットの損傷していない部品を再利用し、放射性廃棄物を削減する。
【解決手段】CCD部γ線遮蔽構造21は、CCDモジュール28を格納する有底筒状の内筒26と、内筒26に固定される内筒ふた24と、内筒26の外周面に摺動自在に外挿される筒状の外筒25と、外筒25の内筒ふた24側に固定されてレンズマウントとなる外筒ふた23とからなる。これら各部をγ線遮蔽材で形成し、外筒ふた23と内筒ふた24はレンズ7の光軸上に開口部23a,24aを設ける。更に、内筒26の底部外側には、外筒25に対して内筒26を摺動させて、CCDモジュール28の位置を移動させるためのフランジバック調整ネジ38、スプリング42等を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、γ線、中性子等の放射線環境下で使用される耐放射線カメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、特許文献1に記載された、従来の耐放射線カメラの構造を示す分解斜視図である。図9に示す耐放射線カメラ100は、前面カバー101と、レンズケース102と、カバー側キャッチクリップ103と、本体ケース104と、本体側キャッチクリップ105と、レンズ106と、カメラ部107と、取っ手110と、後面カバー111とを備える。レンズ106、カメラ部107及び後面カバー111を含むカメラユニットは、本体側キャッチクリップ105をキャッチクリップ受け105aから外し、取っ手110をもって本体ケース104から引き出すことで、容易に交換することができる。
【0003】
図10は、図9に示す耐放射線カメラ100の内部構造を示す断面図である。図9では前面カバー側中性子遮蔽材101aしか図示されていないが、前面カバー101、レンズケース102及び本体ケース104からなるケース内側には、図10に示すようなレンズケース側中性子遮蔽材102a,102c、本体ケース側中性子遮蔽材104a,104c、カメラ側中性子遮蔽材107a、カメラ側γ線遮蔽材120a,120b、本体ケース側γ線遮蔽材121a,121b等が取り付けられている。そして、ケース内にカメラユニットを収めた状態では、CCD130が搭載されたCCD基板131は全周を中性子遮蔽材に囲まれ、電子部品が搭載されたカメラ基板133は全周をγ線遮蔽材に囲まれた状態となる。
【0004】
このような耐放射線カメラは、主に原子力発電所内の放射線環境下で監視を行うために用いられるものであり、近年、耐放射線カメラの更なる長寿命化及び放射性廃棄物の量の低減が求められている。そこで、従来から行われているCCDの中性子遮蔽に加え、近年では後述するようなCCDのγ線遮蔽が行われている。
【0005】
ここで、CCDのγ線遮蔽構造を設けた、従来のカメラユニットの例を図11〜図13に示す。図11は、カメラユニット全体を示す外観斜視図、図12はCCD206のγ線遮蔽構造部の断面図、図13はCCD206をカメラユニットから取り外す作業を示す分解斜視図である。なお、図11〜図13に示すカメラユニットでは、CCDに電子冷却素子を取り付けて冷却することにより、画質を改善するようにしている。
【0006】
図12において、レンズ201の後段には、タングステン合金等のγ線遮蔽材203,204,205で囲まれた空間が設けられ、この空間内に、CCD206、CCD基板207、CCD基板207から電源を供給される電子冷却素子208、電子冷却素子208の熱を外へ伝える放熱ブロック209、この放熱ブロック209とγ線遮蔽材205とを接触させる熱伝導シート210が格納されている。γ線遮蔽材203,204の間、及びγ線遮蔽材204,205の間には、固化せずに流動性を保ちつつ、熱伝導性のよい物質、例えばシリコーン製のサーマルコンパウンド214が塗布されている。γ線遮蔽材203の後段には、カメラ部202が設けられている。
CCD206の周囲は、前方(即ちレンズ201側)を除いて、γ線遮蔽材203,204,205で覆われている。また、電子冷却素子208で発生する熱は、放熱ブロック209、熱伝導シート210、γ線遮蔽材205,204,203を経由して外部へ放熱される。
【0007】
また、フランジバック調整のために、γ線遮蔽材204とネジ勘合するフランジバック調整ネジ211、このフランジバック調整ネジ211を回転させるノブ212、γ線遮蔽材205を前方に押し出すためのスプリング213が設けられている。作業者がノブ212を指で回転させることによりフランジバック調整ネジ211が回転して、γ線遮蔽材204,205が前後に移動する。この際、γ線遮蔽材204,205に収納されたCCD206も前後に移動することで、フランジバック調整を行うことができる。
【0008】
なお、図12に例示しているカメラユニットも、特許文献1に記載された従来の耐放射線カメラと同じく、ケースとカメラユニットとを容易に分離できる構造となっており、耐放射線カメラを構成する電子部品が放射線により損傷を受けた場合、カメラユニットを交換することで、容易に機能を回復することができる。
ただし、カメラユニットには、耐放射線性能を向上させるためのγ線遮蔽材及び中性子遮蔽材、これらの部品を保持するためのフレーム、信号及び電源入出力のためのコネクタ及びケーブルが含まれているが、実際に放射線により損傷を受ける部分はその中の一部の電子部品に限られ、その中でも特にCCDはγ線及び中性子線により損傷を受けやすい。従って、放射性廃棄物の量を削減する観点からすれば、カメラユニットごと交換するのではなく、カメラユニットを分解してその中のCCDのみ交換し、他の部品は再利用することが好ましい。そこで、図11及び図12に示すカメラユニットは、CCD206を搭載したCCD基板207を交換することができる構造となっている。
【0009】
カメラユニットを分解して、CCD206及びCCD基板207を交換する場合の作業を、図13を用いて説明する。図13に示すようにカメラユニットからレンズ201を外した状態で、ネジ217を外してγ線遮蔽材203をカメラ部202に保持している板金220を取り外す。続いて、ネジ218を外して板金220からγ線遮蔽材203を取り外す。続いて、γ線遮蔽材204から、スプリング213、ノブ212、栓215を取り外し、更にネジ216を外してγ線遮蔽材205を取り外す。このとき、CCD206が冷却構造を有しているため、γ線遮蔽材204,205の間にはサーマルコンパウンド214が塗布されて張り付いており、これも引き剥がす。続いて、CCD基板207をγ線遮蔽材204から取り出し、フラットケーブル219をCCD基板207から取り外せば、CCD基板207を取り出すことができる。取り外したCCD基板207に代えて新しいCCD基板を用意して、上述の分解と逆の手順でカメラユニットを組み立てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−321394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の耐放射線カメラは以上のように構成されているので、特許文献1のような構造例ではカメラユニット全体を交換するので、再生利用可能な部品も含めてカメラユニットごと放射性廃棄物となってしまうという課題があった。
また、図13の構造例では、CCD基板207を交換するためにカメラユニットの前側を略完全に分解する必要があり、手間がかかってしまう。そのため、CCD基板207が損傷を受けた場合でも部品交換を行わず、カメラユニット全体を廃棄して新たなカメラユニットに交換していた。このため、再利用可能な部品もカメラユニットごと放射性廃棄物になってしまう問題は解消されない。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、CCD素子を含む基板を容易に交換できる構造とすることで、カメラユニットの損傷していない部品を再利用し、放射性廃棄物を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る耐放射線カメラは、CCD部γ線遮蔽構造を、γ線遮蔽材で構成され、CCD部を格納する有底筒状の内筒と、γ線遮蔽材で構成され、内筒に固定される内筒ふたと、γ線遮蔽材で構成され、内筒の外周面に摺動自在に外挿される筒状の外筒と、γ線遮蔽材で構成され、外筒の内筒ふた側に固定されてレンズマウントとなる外筒ふたと、内筒ふた及び外筒ふたそれぞれの、レンズの光軸上に形成された開口部とを有し、内筒の底部外側には、外筒に対して内筒を摺動させて、CCD部の位置を移動させるフランジバック調整部を有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、CCD部をγ線から遮蔽するCCD部γ線遮蔽構造を、有底筒状の内筒、内筒ふた、内筒の外周面に摺動自在に外挿される筒状の外筒、レンズマウントとなる外筒ふたから構成し、フランジバック調整部を内筒の底部外側に設けるようにしたので、外筒ふた及び内筒ふたを取り外せば、内筒の内部に格納されたCCD部を容易に交換することができる。この結果、耐放射線カメラを構成する部品のうち、γ線により損傷したCCD部以外の損傷していない部品が再利用可能となり、放射性廃棄物を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1に係る耐放射線カメラを示し、図1(a)は側面図、図1(b)は正面図、図1(c)は後面図である。
【図2】図1に示す耐放射線カメラの分解斜視図である。
【図3】図1に示す耐放射線カメラを、図1(b)のAA線に沿って切断した断面図である。
【図4】図3に示す耐放射線カメラの断面図のうち、CCD部γ線遮蔽構造21を拡大した断面図である。
【図5】実施の形態1に係るCCDモジュール28の分解斜視図である。
【図6】実施の形態1に係るCCD部γ線遮蔽構造21の分解斜視図である。
【図7】実施の形態1に係るCCDモジュール28の分解途中の状態を示す斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る耐放射線カメラを図1(b)のAA線に相当する位置で切断し、そのうちのCCD部γ線遮蔽構造21を拡大した断面図である。
【図9】特許文献1に記載された、従来の耐放射線カメラの構造を示す分解斜視図である。
【図10】図9に示す耐放射線カメラの内部構造を示す断面図である。
【図11】従来のカメラユニット全体を示す外観斜視図である。
【図12】図11に示すカメラユニットのCCDγ線遮蔽構造部を示す断面図である。
【図13】図11に示すカメラユニットからCCDを取り外す作業を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る耐放射線カメラを示し、図1(a)は側面図、図1(b)は正面図、図1(c)は後面図である。図2は、図1に示す耐放射線カメラの分解斜視図である。図3は、耐放射線カメラを図1(b)のAA線に沿って切断した断面図であり、そのうちのCCD部γ線遮蔽構造21を拡大した断面図を図4に示す。また、CCDモジュール(CCD部)28の分解斜視図を図5に示し、CCD部γ線遮蔽構造21の分解斜視図を図6に示す。
【0017】
先ず、本実施の形態1に係る耐放射線カメラの構成を説明する。
図1及び図2に示すように、本実施の形態1の耐放射線カメラは、前面カバー1と、レンズケース2と、前面カバー側キャッチクリップ3と、本体ケース4と、本体側キャッチクリップ5と、カメラ側キャッチクリップ6と、カメラユニットを備える。カメラユニットは、レンズ7と、CCD部γ線遮蔽構造21と、カメラ部8と、取っ手9とからなる。先立って説明した従来の耐放射線カメラと同様に、このカメラユニットも、カメラ側キャッチクリップ6をキャッチクリップ受け6aから外し、取っ手9をもって本体ケース4から引き出すことで、容易に取り外すことができる。
【0018】
図3に示すように、前面カバー1には前面カバー側中性子遮蔽材10が取り付けられている。また、レンズケース2にはレンズケース側中性子遮蔽材11,12が取り付けられている。また、本体ケース4には本体ケース側中性子遮蔽材13,14、本体ケース側γ線遮蔽材18,19が取り付けられている。
また、カメラ部8の内部にはカメラ側中性子遮蔽材15、カメラ基板部γ線遮蔽材16,17が取り付けられている。また、CCD(CCD素子)22を含むCCDモジュール28は、CCD部γ線遮蔽構造21の内部に格納されている。
従って、前面カバー1、レンズケース2及び本体ケース4からなるケース内に、カメラユニットを収めた状態では、CCD22は全周を中性子遮蔽材及びγ線遮蔽材に囲まれ、カメラ基板20はγ線遮蔽材に囲まれた状態となる。
【0019】
図4に示すように、CCD22を含むCCDモジュール28は、CCD部γ線遮蔽構造21の内部に格納されている。このCCD部γ線遮蔽構造21は、CCDモジュール28を格納する有底筒状の内筒26とその内筒ふた24、内筒26の外周面に摺動自在に外挿された外筒25とその外筒ふた23とで構成される。これら外筒ふた23、内筒ふた24、外筒25、及び内筒26はタングステン合金等のγ線遮蔽材からなる。また、外筒25と内筒26の間には、グリス又はシリコーン製サーマルコンパウンド等の、固化せずに流動性を保ちつつ、熱伝導性の良い熱伝導性物質が塗布されている。ここでは、熱伝導性物質としてサーマルコンパウンド27が塗布されているものとする。なお、外筒ふた23がレンズマウントを兼ねている。
CCDモジュール28とカメラ基板20(図2に示す)とはフラットケーブル29によって電気的に接続されており、このフラットケーブル29はゴム等の弾性体を素材とする栓30によって保持されている。また、CCDモジュール28と内筒26の底面との間には、シリコーン等を素材とする熱伝導シート37が敷かれている。
【0020】
図5に示すように、CCDモジュール28は、光学フィルタ31、この光学フィルタ31を支持する光学フィルタ用ホルダ32、CCD22、光学フィルタ用ホルダ32とのピン−穴勘合によりCCD22の位置決めを行って接着固定するCCD用ホルダ33、CCD基板34、CCD22を冷却する電子冷却素子35、この電子冷却素子35の熱を外部に伝える放熱ブロック36とからなる。CCD22とCCD基板34とが電気的に接続され、更に、このCCD基板34のコネクタ34aと図4に示すフラットケーブル29とが電気的に接続される。
なお、放熱ブロック36は、銅等の熱伝導性の高い物質を素材とする。この放熱ブロック36は、内筒26の底面に敷かれた熱伝導シート37上に設置される。そして、CCD22を冷却する電子冷却素子35で発生する熱は、放熱ブロック36、熱伝導シート37、内筒26及び外筒25を経由して外部に伝達される。
【0021】
図6に示すように、CCD部γ線遮蔽構造21の外筒ふた23と外筒25はネジ43によって固定され、内筒ふた24と内筒26はネジ44によって固定される。また、内筒26及び内筒ふた24を格納した外筒25はネジ45によってプレート40に固定される。このプレート40は、CCD部γ線遮蔽構造21をカメラ部8に結合するためのものであり、CCD部γ線遮蔽構造21が固定されたプレート40をネジによってカメラ部8側に固定する。また、外筒ふた23及び内筒ふた24には、レンズ7の光軸上に、それぞれ開口部23a,24aが形成されている。この内筒ふた24の開口部24aには光学フィルタ31が嵌合する。また、外筒ふた23の開口部23aには、後述するフランジバック調整により前方(レンズ7側)に移動してきた内筒ふた24の凸部が嵌入する。
【0022】
また、図6に示すように、CCD部γ線遮蔽構造21には、フランジバック調整部として、一端部を内筒26の底部にネジ勘合させ、他端部をプレート40に貫通させるフランジバック調整ネジ38、このフランジバック調整ネジ38の他端部側を回転させるノブ39、フランジバック調整ネジ38の溝に嵌合してフランジバック調整ネジ38とプレート40を軸方向に結合するEリング41、内筒26を前方に付勢するスプリング42が設けられている。作業者がノブ39を指で回転させることによりフランジバック調整ネジ38が回転し、フランジバック調整ネジ38とネジ勘合した内筒26がスプリング42に付勢された状態で前後に移動する。この際、内筒26に収納されたCCD22も前後に移動することで、フランジバック調整を行うことができる。なお、内筒26と外筒25の摺動面にはサーマルコンパウンド27が塗布されているため、フランジバック調整時に内筒26は滑らかに前後移動できる。
【0023】
次に、耐放射線カメラのCCDモジュール28の交換作業を説明する。図7は、CCDモジュール28の分解途中の状態を示す斜視図である。
先ず、本体ケース4からカメラユニットを取り出し、更に、カメラユニットからレンズ7を外した状態にする。この状態から、図7に示すように、ネジ43を外して外筒25から外筒ふた23を取り外し、更に、ネジ44を外して内筒26から内筒ふた24を取り外す。続いて、カメラ側中性子遮蔽材15をカメラ部8から引き抜いて内筒26底面を露出させて(図7では図示省略)、内筒26底面側から栓30を取り出し、内筒26上面側にCCDモジュール28を引き出す。そして、フラットケーブル29をCCD基板34のコネクタ34aから取り外せば、CCDモジュール28を取り出すことができる。
【0024】
カメラユニットからCCDモジュール28を取り出し、新たなCCDモジュールをフラットケーブル29と接続し、このCCDモジュールと内筒ふた24とを嵌合させて内筒26に押し込み、ネジ44によって内筒26と内筒ふた24とを固定する。続いて、内筒26の底面に、フラットケーブル29の一端を通した栓30を取り付けて、カメラ部8にカメラ側中性子遮蔽材15を嵌め込めば、CCDモジュール28から新たなCCDモジュールへの交換作業が完了する。
【0025】
なお、CCDモジュール28の交換作業中に、外筒25、内筒26、プレート40及びカメラ部8を分解する必要がない。従って、内筒26とプレート40の間に取り付けられたフランジバック調整ネジ38、ノブ39、Eリング41、スプリング42等を分解する必要もない。
【0026】
以上より、実施の形態1によれば、CCD部γ線遮蔽構造21を、γ線遮蔽材で構成され、CCDモジュール28を格納する有底筒状の内筒26と、γ線遮蔽材で構成され、内筒26に固定される内筒ふた24と、γ線遮蔽材で構成され、内筒26の外周面に摺動自在に外挿される筒状の外筒25と、γ線遮蔽材で構成され、外筒25の内筒ふた24側に固定されてレンズマウントとなる外筒ふた23と、内筒ふた24及び外筒ふた23それぞれの、レンズ7の光軸上に形成された開口部24a,23aとから構成し、更に、内筒26の底部外側には、外筒25に対して内筒26を摺動させて、CCDモジュール28の位置を移動させるフランジバック調整部を有するように構成した。このため、レンズ7を取り外した状態で、外筒ふた23及び内筒ふた24を取り外せば、内筒26の内部に格納されたCCDモジュール28を容易に交換することができる。この結果、耐放射線カメラを構成する部品のうち、γ線により損傷したCCDモジュール28以外の、損傷していない部品が再利用可能となり、放射性廃棄物を削減することができる。
【0027】
また、CCD部γ線遮蔽構造21の内筒に格納されるCCDモジュール28を、CCD22を搭載したCCD基板34と、CCD基板34の内筒ふた24側を向く面に取り付けられる光学フィルタ31と、CCD基板34の内筒ふた24側を向く面とは反対の面に接着され、CCD基板34から電源を供給される電子冷却素子35と、電子冷却素子35に接着されて、電子冷却素子35の熱を伝達するための放熱ブロック36とから構成し、更に、CCD部γ線遮蔽構造21は、内筒26の底部内側に固着され、放熱ブロック36に密着する熱伝導シート37を有するように構成した。このため、交換が必要なCCDモジュール28が冷却構造を有する場合でも、電子冷却素子35の発熱を外部へ放熱するための放熱経路を放熱ブロック36、熱伝導シート37、内筒26、外筒25及びカメラ部8によって確保することができる。
【0028】
また、フランジバック調整部を、CCD部γ線遮蔽構造21をカメラ部8側に取り付けるためのプレート40と内筒26の底部外側との間に挿入され、この内筒26を外筒ふた23側に付勢するスプリング42と、一端部が内筒26の底部にネジ勘合し、他端部がノブ39と一体で回転することにより内筒26を外筒25内で摺動させるフランジバック調整ネジ38とから構成した。このため、CCD部γ線遮蔽構造21にフランジバック調整のための部品を組み込んでフランジバック調整を行うことができる。また、CCDモジュール28を交換する際に、内筒26の底部外側に設けられたフランジバック調整のための部品を分解する必要がない。
【0029】
また、内筒26と外筒25の摺動面には、熱伝導性物質としてサーマルコンパウンド27を塗布するように構成した。このため、フランジバック調整の際に、外筒25に対する内筒26の摺動を滑らかにし、かつ、電子冷却素子35の放熱経路として内筒26から外筒25へ熱を伝えることができる。
【0030】
実施の形態2.
上記実施の形態1において、電子冷却素子35で発生する熱を外部に伝達するためには、放熱経路上の電子冷却素子35、放熱ブロック36、熱伝導シート37及び内筒26を密着させて熱伝導率を向上させる必要があり、そのためには熱伝導シート37を圧縮する必要がある。熱伝導シート37を圧縮すると、この圧縮力と同じ大きさの力を電子冷却素子35が反力として受ける。電子冷却素子35が受ける圧縮力を低減するためには、熱伝導シート37の硬度を下げるのが効果的だが、熱伝導シート37の硬度を下げると、例えば光学フィルタ31を前方から押されたときに熱伝導シート37が圧縮されるとそのまま圧縮状態から復元しなくなり、CCD22の位置が後方に下がったままになってしまう場合がある。そこで、本実施の形態2の耐放射線カメラは、この問題を解決するために、上記実施の形態1の構成に改良を加えた構成にする。
【0031】
図8は、この発明の実施の形態2に係る耐放射カメラを図1(b)のAA線に相当する位置で切断し、そのうちのCCD部γ線遮蔽構造21を拡大した断面図である。なお、図8において図4と同一又は相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
図8に示す実施の形態2のCCD部γ線遮蔽構造21では、放熱ブロック36の熱伝導シート37対向面に穴部36aを形成し、かつ、熱伝導シート37にも穴部を形成して、ここにスプリング(付勢部材)46を挿入している。図8ではスプリング46としてコイルスプリングを用いる。このスプリング46が、放熱ブロック36ごとCCDモジュール28を内筒ふた24側に付勢するため、開口部24aに嵌合している光学フィルタ31が前方から押された場合でも元の位置に押し戻され、結果としてCCD22が正規の位置に保たれる。
なお、熱伝導シート37が柔らかい場合には、スプリング46が熱伝導シート37に食い込んで内筒26に接触するので、熱伝導シート37に穴部を形成しなくてもよい。
【0032】
以上より、実施の形態2によれば、放熱ブロック36の熱伝導シート37側に穴部36aを設けてスプリング46を挿入し、このスプリング46は、放熱ブロック36ごとCCDモジュール28を内筒ふた24側に付勢するように構成した。そのため、熱伝導シート37が柔らかい材質であっても、スプリング46がCCDモジュール28を内筒ふた24側に付勢して光学フィルタ31を内筒ふた24の開口部24aに押し戻すため、CCD22を正規の位置に保持できる。
【符号の説明】
【0033】
1 前面カバー、2 レンズケース、3 前面カバー側キャッチクリップ、4 本体ケース、5 本体側キャッチクリップ、6 カメラ側キャッチクリップ、6a キャッチクリップ受け、7 レンズ、8 カメラ部、9 取っ手、10 前面カバー側中性子遮蔽材、11,12 レンズケース側中性子遮蔽材、13,14 本体ケース側中性子遮蔽材、15 カメラ側中性子遮蔽材、16,17 カメラ基板部γ線遮蔽材、18,19 本体ケース側γ線遮蔽材、20 カメラ基板、21 CCD部γ線遮蔽構造、22 CCD(CCD素子)、23 外筒ふた、23a,24a 開口部、24 内筒ふた、25 外筒、26 内筒、27 サーマルコンパウンド(熱伝導性物質)、28 CCDモジュール(CCD部)、29 フラットケーブル、30 栓、31 光学フィルタ、32 光学フィルタ用ホルダ、33 CCD用ホルダ、34 CCD基板、34a コネクタ、35 電子冷却素子、36 放熱ブロック、36a 穴部、37 熱伝導シート、38 フランジバック調整ネジ(フランジバック調整部)、39 ノブ、40 プレート、41 Eリング、42 スプリング(フランジバック調整部)、43,44,45 ネジ、46 スプリング(付勢部材)、100 耐放射線カメラ、101 前面カバー、101a 前面カバー側中性子遮蔽材、102 レンズケース、102a,102c レンズケース側中性子遮蔽材、103 カバー側キャッチクリップ、104 本体ケース、104a,104c 本体ケース側中性子遮蔽材、105 本体側キャッチクリップ、105a キャッチクリップ受け、106 レンズ、107 カメラ部、107a カメラ側中性子遮蔽材、110 取っ手、111 後面カバー、120a,120b カメラ側γ線遮蔽材、121a,121b 本体ケース側γ線遮蔽材、130 CCD、131 CCD基板、133 カメラ基板、201 レンズ、202 カメラ部、203,204,205 γ線遮蔽材、206 CCD、207 CCD基板、208 電子冷却素子、209 放熱ブロック、210 熱伝導シート、211 フランジバック調整ネジ、212 ノブ、213 スプリング、214 サーマルコンパウンド、215 栓、216,217,218 ネジ、219 フラットケーブル、220 板金。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCD部を内部に格納してγ線から遮蔽するCCD部γ線遮蔽構造を備える耐放射線カメラであって、
前記CCD部γ線遮蔽構造は、
γ線遮蔽材で構成され、前記CCD部を格納する有底筒状の内筒と、
γ線遮蔽材で構成され、前記内筒に固定される内筒ふたと、
γ線遮蔽材で構成され、前記内筒の外周面に摺動自在に外挿される筒状の外筒と、
γ線遮蔽材で構成され、前記外筒の前記内筒ふた側に固定されてレンズマウントとなる外筒ふたと、
前記内筒ふた及び前記外筒ふたそれぞれの、レンズの光軸上に形成された開口部とを有し、
前記内筒の底部外側には、前記外筒に対して前記内筒を摺動させて、前記CCD部の位置を移動させるフランジバック調整部を有することを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項2】
CCD部γ線遮蔽構造の内筒に格納されるCCD部は、
CCD素子を搭載したCCD基板と、
前記CCD基板の内筒ふた側を向く面に取り付けられる光学フィルタと、
前記CCD基板の前記内筒ふた側を向く面とは反対の面に接着され、前記CCD基板から電源を供給される電子冷却素子と、
前記電子冷却素子に接着されて、前記電子冷却素子の熱を伝達するための放熱ブロックとを有し、
前記CCD部γ線遮蔽構造は、
前記内筒の底部内側に固着され、前記放熱ブロックに密着する熱伝導シートを有することを特徴とする請求項1記載の耐放射線カメラ。
【請求項3】
フランジバック調整部は、CCD部γ線遮蔽構造を取り付けるプレートと内筒の底部外側との間に挿入され、当該内筒を外筒ふた側に付勢するスプリングと、
一端部が前記内筒の底部にネジ勘合し、他端部が回転することにより前記内筒を外筒内で摺動させるフランジバック調整ネジとを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の耐放射線カメラ。
【請求項4】
内筒と外筒の摺動面には、熱伝導性物質が塗布されることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の耐放射線カメラ。
【請求項5】
放熱ブロックの熱伝導シート側に穴部を設けて付勢部材を挿入し、
前記付勢部材は、前記放熱ブロックごとCCD部を内筒ふた側に付勢することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の耐放射線カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−18967(P2011−18967A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160646(P2009−160646)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】