説明

耐熱性クロス共重合体の製造方法、得られる耐熱性クロス共重合体、及びその用途

【課題】 本発明は従来のクロス共重合体の耐熱性を改良し、さらに同時に他の物性も改良された新規クロス共重合体を提供することである。
【解決手段】 従来のエチレン−芳香族ビニル化合物共重合体及び従来のクロス共重合体の耐熱性を改良した新規クロス共重合体及び樹脂組成物を提供することである。
配位重合工程とラジカル重合工程からなる重合工程を含む製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いて芳香族ポリエン共重合マクロマーを合成し、次にラジカル重合工程として、この芳香族ポリエン共重合マクロマーと芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物の共存下、ラジカル重合開始剤を用いて重合することを特徴とするクロス共重合体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れ、軟質性と透明性に優れる特定のクロス共重合体、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のシングルサイト配位重合触媒により得られる、ジビニルベンゼンを少量含む共重合体(マクロマー、主鎖)を用い、本ジビニルベンゼンユニットのビニル基を介してアニオン重合やラジカル重合により異種ポリマー鎖(クロス鎖)を導入、結合する方法、いわゆるクロス共重合体の製造方法が提案されている(特許文献1)。本文献によれば重合液中のスチレンモノマーやジビニルベンゼンモノマーが活性高く、高い転換率でオレフィン系ポリマー中に取り込まれることにより、非常に効率の高い重合方法が提供される。特に、ポリマー中のジビニルベンゼンユニットのビニル基が重合せず高い効率で残るため、得られるマクロマー(主鎖)を利用してクロス共重合体を製造することが出来る。得られるポリマー(クロス共重合体)も主鎖(マクロマー)と比較し様々な物性が向上しており、また耐熱性も向上している。しかし、開示されているクロス鎖がポリスチレンの場合、耐熱性はガラス転移温度の100℃程度であり、更なる耐熱性の向上が求められている。
【0003】
一方、ラジカル重合により、芳香族ビニル化合物と不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物の共重合により得られる耐熱性共重合体は公知である。この中には芳香族ビニル化合物と不飽和ジカルボン酸無水物を共重合し、しかる後に第一級アミンとの反応で酸無水物をイミド化した共重合体も含まれる。これら共重合体樹脂は、耐熱性には優れるものの耐衝撃性が不足していたため、繊維を混合したり、あらかじめブタジエン等のゴム成分の共存のもとでラジカル共重合し耐衝撃性を向上することが提案されている。
【特許文献1】再表00/037517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来のクロス共重合体の耐熱性を改良し、さらに同時に他の物性も改良された新規耐熱性クロス共重合体(以下の明細書では単にクロス共重合体と記す場合がある)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
配位重合工程とこれに続くラジカル重合工程を含むクロス共重合体の製造方法であって、配位重合工程において、シングルサイト配位重合触媒を用いて芳香族ポリエン共重合マクロマーを合成し、次にラジカル重合工程において、芳香族ポリエン共重合マクロマー、芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物の共存下、ラジカル重合することを特徴とするクロス共重合体の製造方法である。また、ラジカル重合工程として、芳香族ポリエン共重合マクロマーと芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物の共存下、ラジカル重合することで得られた共重合体をさらにイミド化することを特徴とするクロス共重合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法により得られる耐熱性クロス共重合体は、従来のクロス共重合体と比較し、耐熱性に優れ、また耐油性に優れる特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造方法は、配位重合工程とこれに続くラジカル重合工程を含むクロス共重合体の製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いて芳香族ポリエン共重合マクロマーを合成し、次にラジカル重合工程として、芳香族ポリエン共重合マクロマーと芳香族ビニル化合物及びイミド化不飽和ジカルボン酸無水物の共存下、ラジカル重合することを特徴とする製造方法であり、また本製造方法により得られる耐熱性クロス共重合体である。
また本発明の製造方法は、配位重合工程とこれに続くラジカル重合工程を含むクロス共重合体の製造方法であって、配位重合工程として、シングルサイト配位重合触媒を用いて芳香族ポリエン共重合マクロマーを合成し、次にラジカル重合工程として、この芳香族ポリエン共重合マクロマーと芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物の共存下、ラジカル重合することを特徴とする製造方法であり、さらに得られた共重合体をイミド化する製造方法であり、これら本製造方法により得られる耐熱性クロス共重合体である。
本製造方法に於いて、用いられる芳香族ポリエン共重合マクロマーとは、芳香族ポリエンユニットを0.01モル%以上1モル%以下、好ましくは0.01モル%以上0.5モル%以下含み、他に配位重合可能な一種または二種以上の種類のモノマーユニットから構成される、重量平均分子量1000以上50万以下、好ましくは1万以上30万以下、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1以上6以下、好ましくは1.5以上3以下の共重合体である。
【0008】
好ましくは本製造方法に於いて、用いられる芳香族ポリエン共重合マクロマーが、エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体、エチレン−オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体から選ばれる一種以上である芳香族ポリエン共重合マクロマーであることを特徴とする製造方法である。
本発明の芳香族ポリエン共重合マクロマーから誘導されるクロス共重合体主鎖において、オレフィン連鎖構造に由来する結晶構造、例えばエチレン連鎖に基づく結晶構造が一定以上存在すると最終的に得られるクロス共重合体の軟質性が損なわれてしまう場合があり、さらに成形加工時に結晶化による収縮等成形体の寸法安定性が損なわれてしまう場合がある。そのため、軟質性、成形安定性に富むクロス共重合体を得るためには、好ましくはオレフィン結晶性および他の結晶性も含めた総結晶融解熱としては、50℃〜200℃の温度範囲においてDSCで測定される結晶融解熱の総和が、100J/g以下、さらに好ましくは50J/g以下、特に好ましくは30J/g以下であることを特徴とする製造方法である。
【0009】
ここで、用いられる芳香族ポリエン共重合マクロマーが、エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体である場合は、本条件を満たす好ましい組成は芳香族ビニルユニット含量5モル%以上50モル%以下、好ましくは10モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上1モル%以下、残部がエチレンユニット含量である。
用いられる芳香族ポリエン共重合マクロマーが、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体である場合は、オレフィンユニット含量5モル%以上50モル%以下、好ましくは10モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上1モル%以下、残部がエチレンユニット含量である。
【0010】
用いられる芳香族ポリエン共重合マクロマーが、エチレン−オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体である場合は、芳香族ビニルユニット含量(モル%)とオレフィンユニット含量(モル%)の合計が5モル%以上50モル%以下、好ましくは10モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上1モル%以下、残部がエチレンユニット含量である。
以上に示した芳香族ビニルユニットやオレフィンユニット含量、またはその合計が5モル%より低い場合、エチレン連鎖構造に基づく結晶化起こり、軟質性や成形加工時の寸法安定性が失われてしまう。また、本芳香族ビニルユニット含量やオレフィンユニット含量、またはその合計が50モル%より高くなると、最終的に得られるクロス共重合体のガラス転移温度が高くなり、低温特性が悪化したり、室温での軟質性が損なわれ、脆性が発現したりする場合があるので好ましくない。
【0011】
本方法で得られる耐熱性クロス共重合体には、主鎖である芳香族ポリエン共重合マクロマーにクロス鎖である芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物共重合体ポリマー鎖が主鎖芳香族ポリエンユニットを介し結合している構造(クロス共重合構造、またはSegregated star copolymer構造)を含むと考えられる。しかし、本クロス共重合体の構造や含まれる割合は任意であり、本発明の耐熱性クロス共重合体は本発明の製造方法により得られる共重合体(ポリマー)であると規定される。
【0012】
本発明に用いられる配位重合可能なモノマーとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、炭素数5〜20の環状オレフィン、炭素数8〜20の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
本発明に用いられるオレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィン、すなわちプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサンが例示でき、炭素数5〜20の環状オレフィン、すなわちシクロペンテン、ベンゾシクロブタン、ノルボルネンが挙げられる。好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、または1−オクテン等の単独または混合物が用いられ、最も好ましくは、プロピレン、1−ブテンが用いられる。 本発明に用いられる芳香族ビニル化合物は、炭素数8〜20の芳香族ビニル化合物であり、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン等が挙げられる。工業的には好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、特に好ましくはスチレンが用いられる。
【0013】
本発明に用いられる芳香族ポリエンは10以上30以下の炭素数を持ち、複数の二重結合(ビニル基)と一種または二種以上の芳香族基を有し配位重合可能な芳香族ポリエンであり、二重結合(ビニル基)の1つが配位重合に用いられて重合した状態において残された二重結合がラジカル重合可能な芳香族ポリエンである。好ましくは、オルトジビニルベンゼン、パラジビニルベンゼン及びメタジビニルベンゼンのいずれか1種または2種以上の混合物が好適に用いられる。
【0014】
本発明の芳香族ポリエン共重合マクロマーに用いられるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の例としては、最も好ましい例としてエチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体が挙げられ、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体の例としては、エチレン−プロピレン−ジビニルベンゼン共重合体やエチレン−1−ブテン−ジビニルベンゼン共重合体が挙げられ、エチレン−オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の例としては、エチレン−プロピレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やエチレン−1−ブテン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体が挙げられる。
以下に示す好ましい組成範囲の場合、最終的に得られるクロス共重合体は、耐熱性と軟質性に富み、良好な力学物性を示すことができる。
以上に示した、芳香族ポリエン共重合マクロマーの組成は、公知の一般的方法により上記範囲に制御することができるが、最も簡単には芳香族ビニル化合物やオレフィンモノマーの仕込み組成比を変更することや、エチレン分圧を変更することにより達成できる。
【0015】
さらに、本製造方法は、配位重合工程で得られる芳香族ポリエン共重合マクロマーの、ラジカル重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体に対する質量割合は任意であるが、10質量%以上95質量%以下であることが好ましい。本質量割合が10質量%未満では、最終的に得られるクロス共重合体の主鎖に由来する物性(軟質性や耐衝撃性)が不足し、95質量%以上では、クロス鎖に由来する物性、例えば耐熱性等が低下してしまう。さらに軟質性や耐衝撃性に富む耐熱性樹脂または耐熱性熱可塑性エラストマーを目的とする場合には本質量割合が20質量%以上80質量%以下であることを特徴とする製造方法である。本製造方法により得られるクロス共重合体のA硬度は40以上、D硬度70以下(A硬度では99以下)の範囲が好ましい。引張弾性率では1MPa以上200MPa以下が好ましい。さらに軟質性に富む耐熱性熱可塑性エラストマーを目的とする場合には本質量割合が40質量%以上80質量%以下であることを特徴とする製造方法である。この場合、A硬度は50以上90以下の範囲である。引張弾性率では3MPa以上100MPa以下である。
【0016】
本配位重合工程で得られる芳香族ポリエン共重合マクロマーの質量割合は、配位重合工程と引き続くラジカル重合工程を同じ重合液を用い連続して実施する場合には、例えばエチレン消費量、またはポリマー濃度や組成をモニターして本重合工程で生成する共重合体の質量を算出することで制御できる。本質量割合を下げるためには、例えば上記モニターを行い、生成する共重合体の質量を算出しながら配位重合工程の時間を短くして重合工程を早期に開始すればよく、本質量割合を上げるためには重合時間を長くしてラジカル重合工程開始を遅らせればよい。また、ラジカル重合工程で用いられるモノマーをラジカル重合工程開始時または工程中に追加添加してもよい。モノマーの追加添加量により、本配位重合工程で得られる芳香族ポリエン共重合マクロマーの質量割合を任意に変更することができる。
また、本発明の製造方法では、配位重合工程とラジカル重合工程を別々に実施することができる。すなわち、配位重合工程で得られた芳香族ポリエン共重合マクロマーを重合液から分離回収し、これを適当量新たな重合溶媒及びモノマー溶液に溶解しラジカル重合を行う事ができる。この場合は、用いる芳香族ポリエン共重合マクロマー量、用いるモノマー量/重合転換率により組成を制御することができる。
【0017】
芳香族ポリエン共重合マクロマーとして、エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を用いた場合、特に力学特性や風合い、耐油性に優れたクロス共重合体が得られる。芳香族ポリエン共重合マクロマーとして、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体を用いた場合、低温特性に優れた、脆化温度が低いクロス共重合体を得ることができる。さらにポリオレフィンとの相溶性が改善されたクロス共重合体を得ることができる。さらに芳香族ポリエン共重合マクロマーとして、エチレン−オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を用いた場合、その組成により上記両者の特徴をバランス良く合わせ有するクロス共重合体を得ることができる。
【0018】
また特に芳香族ポリエン共重合マクロマーとして、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体を用いた場合は、主鎖ポリオレフィンに芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物共重合体ポリマー鎖が芳香族ポリエンユニットを介し結合したポリマーが得られる。このようなポリマーはポリオレフィンの改質(着色性向上)や相溶化剤、接着剤、ヒートシール材として有用であると考えられる。
また、上記本製造方法の配位重合工程で得られる芳香族ポリエン共重合マクロマーの芳香族ポリエンユニット含量は0.01モル%以上1モル%以下である。芳香族ポリエンユニット含量が上記範囲より低くなるとクロス化効率が低くなり、得られるクロス共重合体に含まれるクロス化されない成分、すなわち芳香族ポリエン共重合マクロマーや芳香族ビニル化合物−イミド化不飽和ジカルボン酸無水物共重合体の割合が多くなり、クロス共重合体としての物性が低下し、単なる混合物としての性質が発現してくるため好ましくない。芳香族ポリエンユニット含量が上記より高くなると、最終的に得られるクロス共重合体の主鎖に由来する物性が発現しにくくなったり、また流動性、成形加工性の低下やゲルの発生等が起こる可能性が高くなる。
最終的に得られるクロス共重合体の力学物性、成形加工性(流動性、MFR(Melt Flow Rate)で評価できる)を考慮すると、好ましい芳香族ポリエンユニット含量は0.01モル%以上0.5モル%以下である。
最終的に得られるクロス共重合体の好ましいMFR値は、260℃、荷重10kgの測定条件において、0.01g/10分以上200g/10分以下、特に好ましくは0.1g/10分以上50g/10分以下である。
【0019】
以下に、本発明の製造方法について詳細に説明する。
<配位重合工程>
本製造方法の配位重合工程においては、シングルサイト配位重合触媒が用いられる。好ましくは、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒を用いる。
【0020】
【化1】

【0021】
式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。ここで置換ベンゾインデニル基とは、置換可能な水素の1個以上が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)で置換されたベンゾインデニル基である。また、隣接する置換基は一体となって5〜8員環の芳香環または脂肪環を形成してもよい。
ここで置換インデニル基、置換シクロペンタジエニル基、または置換フルオレニル基とは、置換可能な水素の1個以上が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)で置換されたインデニル基、シクロペンタジエニル基またはフルオレニル基である。
【0022】
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(本置換基には他に1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、または珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基または硼素基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。2個のXは結合を有してもよい。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
【0023】
本製造方法の配位重合工程において、さらに好ましくは、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒を用いる。
【化2】

配位重合工程において、更に好ましくは上記一般式(1)で表される遷移金属化合物において、式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基である。ここで非置換もしくは置換ベンゾインデニル基とは、一般式(2)、(3)、(4)で示される非置換もしくは置換ベンゾインデニル基である。非置換及び置換インデニル基とは下記一般式(5)で示される非置換及び置換インデニル基である。
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
一般式(2)、(3)、(4)においてR1〜R3はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)である。R1同士、R2同士、R3同士は互いに同一でも異なっていてもよく、また、隣接するR1、R2基は一体となって5〜8員環の芳香環または脂肪環を形成してもよい。
【0028】
【化6】

【0029】
一般式(5)においてR4はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)である。R4同士は互いに同一でも異なっていてもよい。
非置換ベンゾインデニル基としては、4,5−ベンゾ−1−インデニル基、5,6−ベンゾ−1−インデニル基、6、7−ベンゾ−1−インデニル基が例示でき、非置換インデニル基としては1−インデニル基が例示できる。置換ベンゾインデニル基としては、α−アセナフト−1−インデニル基、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基、または1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル基が例示できる。
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(本置換基には他に1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、または珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基または硼素基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。2個のXは結合を有してもよい。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
【0030】
さらに本遷移金属化合物はラセミ体であることが好ましい。かかる遷移金属化合物の好適な例としては、EP−0872492A2公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報に具体的に例示した置換メチレン架橋構造を有する遷移金属化合物や、WO01/068719号公報に具体的に例示した硼素架橋構造を有する遷移金属化合物である。
さらに最も好ましく用いられるシングルサイト配位重合触媒の遷移金属化合物は、一般式(1)で示される構造を有し、かつ、A、Bは同一でも異なっていてもよく、A、Bは共に一般式(2)、(3)、(4)で示される非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、及び一般式(5)で示される非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基であり、かつ、YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基であり、かつ、本遷移金属化合物はラセミ体である。この条件を満たす場合、エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体やエチレン−オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体製造に於いて工業的に極めて有利な高活性を示す。さらに得られる本組成範囲のエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、エチレン−芳香族ビニル化合物の交互構造にアイソタクティックの立体規則性を有することができる。そのため、本発明のクロス共重合体は本交互構造に由来する微結晶性を有することが出来る。また、本エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体は、立体規則性がない場合と比較し交互構造の微結晶性に基づく良好な力学物性や耐油性を与えることができ、この特徴は最終的に本発明のクロス共重合体にも受け継ぐことが出来る。
【0031】
エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体の交互構造の微結晶性による結晶融点は概ね50℃〜200℃の範囲にありDSCによるその結晶融解熱は100J/g以下、好ましくは50J/g以下、最も好ましくは30J/g以下である。最終的に得られる本発明のクロス共重合体は総体として、50J/g以下、好ましくは30J/g以下の結晶融解熱を有することができる。この範囲の結晶融解熱を与える結晶性は、本クロス共重合体の軟質性、成形加工性に悪影響は与えず、むしろ優れた力学物性や耐油性の面で有益である。
また、下記一般式(6)で示される遷移金属化合物も好適に用いることができる。
【0032】
【化7】

【0033】
式中、Cpは非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。ここで置換シクロペンタフェナンスリル基、置換ベンゾインデニル基、置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、または置換フルオレニル基とは、置換可能な水素の1個以上が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)で置換されたシクロペンタフェナンスリル基、ベンゾインデニル基、シクロペンタジエニル基、インデニル基、またはフルオレニル基である。
【0034】
Y’は、Cp、Zと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、または硼素基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y’は環状構造を有していてもよい。
Zは窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含み、窒素原子、酸素原子または硫黄原子でM’に配位する配位子でY’と結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の置換基を有する基である。
M’はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
X’は、水素、ハロゲン、炭素数1−15のアルキル基、炭素数6−10のアリール基、炭素数8−12のアルキルアリール基、炭素数1−4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1−10のアルコキシ基、または炭素数1−6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。
nは、1または2の整数である。
一般式(6)で示されるような遷移金属化合物は、WO99/14221号公報EP416815号公報、US6254956号公報に記載されている。
【0035】
本製造方法の配位重合工程において、好ましくは上記の一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒が用いられる。本遷移金属化合物を用いることにより、非常に高い活性、生産性で本共重合体を得ることができる。さらに芳香族ポリエン(ジビニルベンゼン)に対する共重合性が著しく高いためにその転換率を高くすることが可能であり、そのために配位重合工程で得られる重合液中に残留する芳香族ポリエン(ジビニルベンゼン)濃度/量を著しく低減させることができる。そのため、配位重合工程で得られる重合液とその中の芳香族ポリエン共重合マクロマー及び残留する未反応芳香族ビニル化合物(スチレン)をそのまま次のラジカル重合工程に用いることが可能であり、工業的に有用性が高い。対照的に、芳香族ポリエン(ジビニルベンゼン)に対する共重合性が十分ではないシングルサイト配位重合触媒を用いた場合、重合液中に残留する芳香族ポリエン(ジビニルベンゼン)濃度/量が高くなり、本重合液を次工程のラジカル重合工程に用いた場合、重合液粘度の増大、得られるクロス共重合体の成形加工性の低下やゲル化を引き起こしてしまう場合がある。このような場合には、配位重合工程で得られた重合液から芳香族ポリエン共重合マクロマーを分離回収し、新たな溶媒に溶解してラジカル重合工程に用いる必要があり、工業的には不利となる。
【0036】
本製造方法の配位重合工程において、芳香族ポリエン共重合マクロマーとして、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体、またはエチレン−オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を製造する場合には、上記の一般式(6)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒も好適に用いることができる。本触媒を用いた場合、十分に分子量が高いエチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体、またはエチレン−オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体を得ることができ、本発明のクロス共重合体製造のためには好ましい。
【0037】
本製造方法の配位重合工程で用いる助触媒としては、従来遷移金属化合物と組み合わせて用いられている公知の助触媒を使用することができる。そのような助触媒として、メチルアルミノキサン(またはメチルアルモキサンまたはMAOと記す)等のアルモキサンまたは硼素化合物が好適に用いられる。必要に応じて、これらアルモキサンや硼素化合物と共に、トリイソブチルアルミニウムやトリエチルアルミニウム等のアルキルアルミニウムを用いてもよい。かかる助触媒の例としては、EP−0872492A2号公報、特開平11−130808号公報、特開平9−309925号公報、WO00/20426号公報、EP0985689A2号公報、特開平6−184179号公報に記載されている助触媒やアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。
アルモキサン等の助触媒は、遷移金属化合物の金属に対し、アルミニウム原子/遷移金属原子比で0.1〜100000、好ましくは10〜10000の比で用いられる。0.1より小さいと有効に遷移金属化合物を活性化出来ず、100000を超えると経済的に不利となる。
【0038】
助触媒として硼素化合物を用いる場合には、硼素原子/遷移金属原子比で0.01〜100の比で用いられるが、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは1で用いられる。0.01より小さいと有効に遷移金属化合物を活性化出来ず、100を超えると経済的に不利となる。遷移金属化合物と助触媒は、重合設備外で混合、調製しても、重合時に設備内で混合してもよい。
【0039】
本発明の配位重合工程で芳香族ポリエン共重合マクロマーを製造するにあたっては、上記に例示した各モノマー、遷移金属化合物および助触媒を接触させるが、接触の順番、接触方法は任意の公知の方法を用いることができる。
以上の共重合の方法としては溶媒を用いずに液状モノマー中で重合させる方法、あるいはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロ置換ベンゼン、クロロ置換トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素の単独または混合溶媒を用いる方法がある。好ましくは混合アルカン系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン等を用いる。重合形態は溶液重合、スラリー重合いずれでもよい。また、必要に応じ、バッチ重合、連続重合、予備重合、多段式重合等の公知の方法を用いることが出来る。
単数や連結された複数のタンク式重合缶やリニアやループの単数、連結された複数のパイプ重合設備を用いることも可能である。パイプ状の重合缶には、動的、あるいは静的な混合機や除熱を兼ねた静的混合機等の公知の各種混合機、除熱用の細管を備えた冷却器等の公知の各種冷却器を有してもよい。また、バッチタイプの予備重合缶を有していてもよい。さらには気相重合等の方法を用いることができる。
【0040】
重合温度は、−78℃〜200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、200℃を超えると遷移金属化合物の分解が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、0℃〜160℃、特に好ましくは30℃〜160℃である。
重合時の圧力は、0.1気圧〜100気圧が適当であり、好ましくは1〜30気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜10気圧である。
【0041】
<ラジカル重合工程>
本発明の製造方法のラジカル重合工程では、配位重合工程で得られた芳香族ポリエン共重合マクロマーと、芳香族ビニル化合物及びイミド化不飽和ジカルボン酸無水物の共存下、ラジカル重合開始剤を用いて重合を行う。
また、本発明の製造方法のラジカル重合工程では、配位重合工程で得られた芳香族ポリエン共重合マクロマーと、芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物の共存下、ラジカル重合開始剤を用いて重合を行う。
ここで用いられる芳香族ビニル化合物は、配位重合工程で用いられる上記芳香族ビニル化合物と同じである。不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸(マレイン酸無水物)、イタコン酸、シトラコン酸、またはアユニット酸等の無水物が挙げられ、好適には無水マレイン酸が用いられる。イミド化不飽和ジカルボン酸無水物としては、アンモニアまたは炭素数1〜20までの置換基を有するアミン類との反応で得られるイミド化不飽和ジカルボン酸無水物である。本アミン類は他に一種または二種以上のOH基、COOH基、NH基、SH基、SiR基、Si(OR)基をその構造中に含んでいても良い。このようなアミン類の例としては、アニリン(フェニルアミン)、シクロヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、グリシン、エタノールアミンが挙げられる。
【0042】
最も好適なイミド化不飽和ジカルボン酸無水物の例としては、N−フェニルマレイミド(株式会社日本触媒からイミレックス−Pとして入手可能)、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド(株式会社日本触媒からイミレックス−Cとして入手可能)、N−グリシンマレイミド等が挙げられる。
なお、芳香族ビニル化合物(スチレン)と不飽和ジカルボン酸無水物の共重合体がクロス鎖である場合、通常不飽和ジカルボン酸無水物ユニットの安定化と高耐熱化のために、イミド化処理を行う。本イミド化処理は、公知の方法により対応するアンモニアまたは第一級アミンと反応させることで行う。この際、用いられる第一級アミンの例としては、アニリン(フェニルアミン)、メチルアミン、エチルアミン、グリシン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、エタノールアミンが例示できる。イミド化処理は溶液状態又は懸濁状態で行う場合は通常の反応容器、例えばオートクレーブ等を用いるのが好ましく、塊状溶融状態で行う場合には、脱揮装置のついた押出機を用いてもよい。イミド化処理の温度は約80〜350℃であり、好ましくは100〜300℃である。80℃未満の場合には反応速度が遅く、反応に長時間を要して実用的でない。一方350℃を越える場合には重合体の熱分解による物性低下をきたす。イミド化処理時に触媒を用いてもよく、その場合は第3級アミン、例えばトリエチルアミン等が好ましく用いられる。
【0043】
また、これらと共重合可能なビニルモノマーを共重合しても良い。その共重合量は、本ラジカル重合工程に於いて用いられる、芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物の合計モル数に対して0〜50モル%までである。共重合可能なビニルモノマーとしてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、メチルアクリル酸エステル、エチルアクリル酸エステル等のアクリル酸エステルモノマー、メチルメタクリル酸エステル、エチルメタクリル酸エステル等のメタクリル酸エステルモノマー、アクリル酸、メタクリル酸等のビニルカルボン酸モノマー、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド等があって、これらの中でアクリロニトリル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーが好ましい。
ビニル基を2個以上有する架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等のジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物、フタル酸ジアリール、マレイン酸ジアリール等のジアリール化合物、アクリル酸アリール、メタクリル酸アリール等の不飽和カルボン酸アリール等があり、これらは1種単独で用いても複数種併用してもよい。本ビニル基を2個以上有する架橋性モノマーの使用量は、本ラジカル重合工程に於いて用いられる、芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物の合計モル数に対して好ましくは0〜1モル%までである。1モル%以上ではゲルが生成し易くなる。
【0044】
本発明のラジカル重合工程には、公知のラジカル重合方法が用いることができるが、芳香族ビニル化合物と不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物の共重合に使用できる公知のラジカル重合系重合開始剤を用いることが好ましい。そのような例として過酸化物系(パーオキサイド)、アゾ系重合開始剤等必要に応じて当業者は自由に選択することが出来る。
そのような例は、日本油脂カタログ有機過酸化物organic peroxides第10版(http://www.nof.co.jp/business/chemical/pdf/product01/Catalog_all.pdfからダウンロード可能)、和光純薬カタログ等に記載されておりこれらの会社より入手することが出来る。
重合開始剤の使用量に特に制限はないが一般的にはモノマー100質量部に対し、0.001〜5質量部用いる。過酸化物系(パーオキサイド)、アゾ系重合開始剤等の開始剤、硬化剤を用いる場合には、その半減期を考慮し、適切な温度、時間で硬化処理を行う。この場合の条件は、開始剤、硬化剤に合わせて任意であるが、一般的には50℃から150℃程度の温度範囲が適当である。
本発明のラジカル重合工程には、クロス鎖の分子量制御を主な目的として公知の連鎖移動剤を用いることが出来る。そのような連鎖移動剤の例としては、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン誘導体、α−スチレンダイマー等が挙げられる。
【0045】
本発明のラジカル重合工程は、上記の配位重合工程の後に実施される。この際、配位重合工程で得られた共重合体は、クラムフォーミング法、スチームストリッピング法、脱揮槽、脱揮押出し機等を用いた直接脱溶媒法等、任意のポリマー回収法を用いて、重合液から分離、回収してラジカル重合工程に用いてもよい。しかし、配位重合後の重合液から、残留オレフィンを放圧後、あるいは放圧せずに、次のラジカル重合工程に用いるのが、経済的に好ましい。重合体を重合液から分離せずに、重合体を含んだ重合溶液をラジカル重合工程に用いることができることが本発明の特徴の1つである。また配位重合工程において重合液中に残留している未反応の芳香族ビニルモノマー(スチレン)を次工程のモノマーとして利用できる利点もある。配位重合工程における残存スチレンモノマーを、ラジカル重合工程における芳香族ビニルモノマーとして使用することは、プロセスの簡略化の点で非常に好ましい。
【0046】
ラジカル重合工程の溶媒は、上記配位重合工程と同じ溶媒を用いることが出来る。しかし、配位重合工程重合液からポリマーを分離回収しラジカル重合工程に用いる場合には、上記配位重合工程と異なる溶媒を用いることができる。そのような溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒が挙げられる。
重合形態は、ラジカル重合に用いられる任意の公知の方法を用いることができる。重合温度は、30℃〜200℃が適当である。30℃より低い重合温度は低温における重合液粘度の高さから攪拌、混合の点で、あるいは除熱の点で工業的に不利であり、200℃を超えると連鎖移動等好ましくない副反応が起こる可能性があり適当ではない。さらに工業的に好ましくは、50℃〜150℃である。重合時の圧力は、0.1気圧〜10気圧が適当である。
【0047】
ラジカル重合工程で得られる芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物からなる共重合体の組成は公知の方法、例えばH−NMRや13C−NMRにより求めることができる。また、化学分析によっても求めることができる。好ましい組成(モノマーユニットのモル比)は、芳香族ビニル化合物:不飽和ジカルボン酸無水物、またはイミド化不飽和ジカルボン酸無水物で、40:60〜99:1の範囲であり、更に好ましくは50:50〜70:30の範囲である。
さらに組成は、好ましくはDSC測定によるガラス転移温度が130℃以上260℃以下、さらに好ましくは、160℃以上240℃以下を示す組成範囲である。本組成は、原料マクロマーやモノマーの仕込み比やこれら原料及び/またはラジカル重合開始剤の分添により制御できる。
【0048】
ラジカル重合工程では、連鎖移動剤の添加量を適宜調節することで、クロス鎖の長さ、クロス化されなかったホモポリマーの分子量を任意に変更することが可能である。クロス鎖部分の長さ(分子量)は、クロス化されなかったホモポリマーの分子量から推定できるが、その長さは、重量平均分子量として、好ましくは3000以上15万以下、さらに好ましくは5000以上10万以下、特に好ましくは1万以上5万以下である。また、その分子量分布(Mw/Mn)は好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。
【0049】
<樹脂組成物>
本発明のクロス共重合体は、以下に挙げる芳香族ビニル化合物系ポリマーまたはオレフィン系ポリマーとの組成物として用いることが出来る。この場合、本クロス共重合体は組成物全体質量に対し1〜99質量%の範囲で用いることが出来る。本発明のクロス共重合体は芳香族ビニル化合物系ポリマーやオレフィン系ポリマーに対し比較的良好な相溶性を示す。そのため本クロス共重合体を例えば組成物の全体質量に対し1〜50質量%の範囲で用いた場合には相手の芳香族ビニル化合物系ポリマー(ポリスチレン等)やポリオレフィンの耐衝撃性改良や軟質化に効果があり、組成物の全体質量に対し50〜99質量%の範囲で用いた場合には、本クロス共重合体の物性(例えば弾性率)の調整や耐熱性及び耐油性の向上に効果がある。
【0050】
また本発明のクロス共重合体は、オレフィン系ポリマーと極性ポリマーの相溶化剤として用いることが出来る。この場合、オレフィン系ポリマーと極性ポリマーの組成比は任意であり、本クロス共重合体は組成物全体質量に対し1〜50質量%の範囲で用いることが出来る。
【0051】
さらに本発明のクロス共重合体は、ブロック共重合体系ポリマーとの組成物として用いることが可能で、組成物の全体質量に対し1〜99質量%の範囲で用いることが出来る。本発明のクロス共重合体は良好な軟質性と耐油性を有するため、ブロック共重合体系ポリマーとの組成物においてはその軟質性、力学物性を損なわずに耐油性を付与することが出来る。
【0052】
「芳香族ビニル化合物系ポリマー」
芳香族ビニル化合物単独の重合体または芳香族ビニル化合物と共重合可能な1種類以上のモノマー成分を含み芳香族ビニルユニット含量が10質量%以上、好ましくは30質量%以上の統計的共重合体。芳香族ビニル化合物系ポリマーに用いられる芳香族ビニルモノマーとしては、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。またジビニルベンゼン等の一分子中に複数個のビニル基を有する化合物等も挙げられる。また、これら複数の芳香族ビニル化合物間の統計的共重合体も用いられる。なお、芳香族ビニル化合物の相互の芳香族基間の立体規則性は、アタクティック、アイソタクティック、シンジオタクティックいずれでもよい。
【0053】
芳香族ビニル化合物と共重合可能なモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、その他の共役ジエン類;アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアミド誘導体やエステル誘導体;アクリロニトリル、無水マレイン酸及びその誘導体が挙げられる。共重合形式は統計的共重合である。以上の芳香族ビニル化合物系ポリマーは、その実用樹脂としての物性と成形加工性を発現するために、ポリスチレン換算重量平均分子量として、3万以上、好ましくは5万以上50万以下、好ましくは30万以下である必要がある。また、耐衝撃性を付与するためにゴム成分をブレンドまたはグラフトしてもよい。用いられる芳香族ビニル化合物系ポリマーは、例えばアイソタクティックポリスチレン(i−PS)、シンジオタクティックポリスチレン(s−PS)、アタクティックポリスチレン(a−PS)、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン−メタクリル酸エステル共重合体;スチレン−ジエン共重合体(SBRなど)およびその水添物;スチレン−マレイン酸共重合体;スチレン−イミド化マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0054】
「オレフィン系ポリマー」
炭素数2〜20までのオレフィンモノマーからなるオレフィン単独重合体または共重合体であり、例えば高密度ポリエチレン(LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、アイソタクティックポリプロピレン(i−PP、ホモPP、ランダムPP、ブロックPPを含む)、シンジオタクティックポリプロピレン(s−PP)、アタクティックポリプロピレン(a−PP)、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体が挙げられる。必要に応じてブタジエンやα−ωジエン等のジエン類を共重合した共重合体でも良い。このような例としてはエチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体等が挙げられる。以上のオレフィン系ポリマーは、その実用樹脂としての物性、成形加工性を発現するために、ポリスチレン換算重量平均分子量として、1万以上、好ましくは3万以上50万以下、好ましくは30万以下が必要である。
【0055】
「ブロック共重合体系ポリマー」
アニオン重合またはその他の重合方法によるリビング重合により得られるジブロック、トリブロック、マルチブロック、スターブロックあるいはテーパードブロック構造を有するブロック共重合体である。この様な例として、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)やこれらの水添物(SEBSやSIPS)が挙げられる。以上のブロック共重合体系ポリマーは、その実用樹脂としての物性、成形加工性を発現するために、ポリスチレン換算重量平均分子量として、5000以上、好ましくは1万以上30万以下、好ましくは20万以下が必要である。
【0056】
本発明のクロス共重合体は以下の「その他の樹脂、エラストマー、ゴム」と組成物として用いることも可能である。
【0057】
「その他の樹脂、エラストマー、ゴム」
例えば、石油樹脂およびその水添物、ナイロン等のポリアミド;ポリイミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリビニルアルコール、天然ゴム、シリコン樹脂、シリコンゴムが挙げられる。
【0058】
<可塑剤>
本発明のクロス共重合体には従来塩ビや他の樹脂に用いられる公知の任意の可塑剤を配合することが出来る。好ましく用いられる可塑剤は含酸素または含窒素系可塑剤であり、エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、エーテル系可塑剤、またはアミド系可塑剤から選ばれる可塑剤である。
【0059】
これらの可塑剤は、本発明のクロス共重合体に用いられる特にエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体との相溶性が比較的良好でブリードし難く、またガラス転移温度が低下する度合いで評価できる可塑化効果も大きく、好適に用いることが出来る。またこれらの可塑剤を用いた場合、特異的な効果として本発明のクロス共重合体に用いられるエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体、特にエチレン−芳香族ビニル化合物−ジビニルベンゼン共重合体中のエチレンと芳香族ビニルユニットのアイソタクティック交互構造の結晶化を促進し結晶化度を上げる効果があり、通常の可塑化効果に加え耐熱性や耐油性の向上効果をも示すことが出来る。
一方、例えば芳香族、脂肪族、脂環系の鉱物油は、本組成のエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体との相溶性が低いためブリードし易く、またガラス転移温度が低下する度合いで評価できる可塑化効果も少ないため適当でない場合がある。
【0060】
本発明に好適に用いることができるエステル系可塑剤の例としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、セバチン酸エステル、アゼレート系エステル、クエン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、グルタミン酸エステル、コハク酸エステル、酢酸エステル等のモノ脂肪酸エステル、リン酸エステルやこれらのポリエステルである。
【0061】
本発明に好適に用いることができるエポキシ系可塑剤の例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
【0062】
本発明に好適に用いることができるエーテル系可塑剤の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらの共重合物、混合物が挙げられる。
本発明に好適に用いることができるアミド系可塑剤の例としては、スルホン酸アミドが挙げられる。これら可塑剤は単独で用いても、複数で用いてもよい。
【0063】
本発明に特に好ましく用いられるのはエステル系可塑剤である。これらの可塑剤は、本組成範囲のエチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体との相溶性に優れ、可塑化効果に優れ(ガラス転移温度低下度が高い)、ブリードが少ないという利点がある。加えて優れたエチレンと芳香族ビニルユニットの交互構造の結晶化促進効果があり、高い融点を与え、好適である。さらに本発明に最も好ましく用いられるのは、アジピン酸エステルまたはアセチルクエン酸エステルの可塑剤である。これらの可塑剤を用いた場合、その結晶化速度が著しく速く、溶融成形から短時間で結晶が成長し各種物性が安定するという利点がある。
【0064】
可塑剤の配合量は、本発明のクロス共重合体またはその樹脂組成物100質量部に対して、可塑剤1質量部以上30質量部以下、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。1質量部未満では上記効果が不足し、30質量部より高いとブリードや、過度の軟化、それによる過度のべたつきの発現等の原因となる場合がある。
【0065】
<無機質充填剤(フィラー)>
以下、本発明に用いることができる無機質充填剤について示す。
無機質充填剤は、本クロス共重合体に難燃性を付与するためにも用いられる。無機質充填剤の体積平均粒子径は、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは10μm以下の範囲である。体積平均粒子径が、0.5μm未満であったり50μmを超えるとフィルム化したときの力学物性(引張強度、破断伸度等)の低下が生じるとともに柔軟性の低下やピンホールの発生を引き起こしてしまうことがある。体積平均粒子径は、レーザ回析法で測定した体積平均粒子径である。
【0066】
無機質充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、トリフェニルホスフィート、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、酸化ジリコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、リン酸グアニジン、ハイドロタルサイト、スネークタイト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムであり、これらから選ばれる1種又は2種以上の化合物が使用される。特に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、炭酸マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが難燃性の付与効果に優れ、経済的に有利である。
【0067】
無機質充填剤の配合量は、本クロス共重合体またはその樹脂組成物100質量部に対し1〜300質量部、好ましくは5〜200質量部の範囲である。無機質充填剤が1質量部未満では、難燃性が劣る場合がある。一方で、無機質充填剤が300質量部を超えると、樹脂組成物の成形性及び強度等の機械的物性が劣る場合がある。
無機質充填剤を非ハロゲン系難燃剤として配合した場合は、チャー(炭化層)の形成を図り、フィルム等の難燃性を向上させることもできる。
【0068】
本発明の樹脂組成物、可塑剤組成物、フィラー組成物を製造する方法は特に限定されず、公知の適当なブレンド法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、150〜300℃、好ましくは200〜250℃が一般的である。
【0069】
本発明のクロス共重合体またはその各種組成物の成形体を得るための成形法としては、真空成形、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、押出成形、異型押出成形、ロール成形、カレンダー成形等公知の成形法を用いることができ、それにより各種シート、フィルム、バッグ、チューブ、容器、発泡材、発泡シート、電線被覆材等に成形することが出来る。
更に、本発明記載の樹脂及び樹脂組成物はハロゲンを基本的に含有しないため、環境適応性や安全性が高いという基本的特徴を有する。
【0070】
<フィルム、シート>
本発明のクロス共重合体またはその樹脂組成物をフィルムとして用いる場合、その厚みに特に制限はないが、一般に3μm〜1mm、好ましくは10μm〜0.5mmである。本発明の樹脂組成物からなるフィルム、シートを製造するには、インフレーション成形、Tダイ成形、カレンダー成形、ロール成形などの成形法を採用することができる。本発明のフィルムは、物性の改善を目的として、他の適当なフィルム、例えば、アイソタクティックまたはシンジオタクティックのポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE、またはLLDPE)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のフィルムと多層化することができる。さらに、本発明のフィルムは、組成を適宜選択することにより自己粘着性、接着性を有することができる。しかし、更に強い自己粘着性が要求される場合には、自己粘着性を有する他のフィルムとの多層フィルムにすることも出来る。
【0071】
本発明のフィルムの具体的用途は、特に限定されないが、一般包装材料、容器として有用であり、包装用フィルム、ストレッチフィルム、シュリンクフィルム、各種マスキングフィルム、保護フィルム、バッグ、パウチに使用することができる。
<テープ基材>
また、本発明のクロス共重合体、またはクロス共重合体を主として含む樹脂組成物からなるフィルムは各種テープ基材として用いることが出来る。ここにおいて、クロス共重合体を主として含む樹脂組成物とは、上記<無機質充填剤>を除いたテープ基材質量(主に樹脂質量となる)に対して50質量%以上含まれていることを示す。他に樹脂組成物として配合されて良い樹脂は任意であるが、好ましくは上記「芳香族ビニル化合物系ポリマー」、「オレフィン系ポリマー」、及び/または「ブロック共重合体系ポリマー」である。これらは、テープ基材の弾性率、モジュラスの調整のために適宜配合される。
上記<無機質充填剤>は、テープ基材に難燃性を付与するために好適に添加され、その配合量は公知の範囲で任意であるが、概ねテープ基材全質量に対して1質量%以上70質量%以下である。
テープ基材として用いる場合、本クロス共重合体の軟質性、耐油性、特徴ある引張物性がメリットとなる。本クロス共重合体を含む組成物をテープ基材とし粘着テープを成形するには、公知の粘着剤、添加剤、及び公知の成形方法が用いられる。このような粘着剤、添加剤、成形方法は例えば特許公開公報2000−111646号公報に記載されている。本テープ基材からなる粘着テープは、各種結束用テープ、封かん用テープ、保護用テープ、固定用テープ、電子材料用の各種テープ、例えばダイシング用テープ、バックグラインド用テープ、またはマスキング用テープ等のテープ基材として好適に用いることが出来る。また各種ラベルとしても有用である。
【0072】
本発明のフィルムは必要に応じて、コロナ、オゾン、プラズマ等の表面処理、防曇剤塗布、滑剤塗布、印刷等を実施することができる。本発明のフィルムは、必要に応じて1軸または2軸等の延伸配向を行った延伸フィルムとして作製することが出来る。本発明のフィルムは必要に応じて、熱、超音波、高周波等の手法による融着、溶剤等による接着等の手法によりフィルム同士、あるいは他の熱可塑性樹脂等の材料と接合することができる。
【0073】
更に、本発明のフィルムは、例えば100μm以上の厚みを有する場合、真空成形、圧縮成形、圧空成形等の熱成形等の手法により食品、電気製品等の包装用トレーとして成形することができる。
【0074】
テープ基材には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の着色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、滑剤、安定剤、その他の添加剤を配合することができる。
【0075】
本発明において、テープ基材は、通常、クロス共重合体、及び必要に応じて芳香族ビニル化合物系樹脂及びオレフィン系樹脂と無機質充填剤(及び充填剤等の必要に応じて配合される材料)をドライブレンドし、当該混合物をバンバリーミキサー、ロール、押出機等を用いて混練し、当該混練物を圧縮成形、カレンダー成形、射出成形、押出成形等の公知の成形方法によりフィルムに成形することにより得られる。
【0076】
テープ基材の厚みは、粘着テープの用途によっても異なるが、特に制限されず、例えば、40〜500μm、好ましくは70〜200μm、さらに好ましくは80〜160μmである。なお、テープ基材は単層の形態を有していてもよく、又、複層の形態を有していてもよい。
<動的加硫体>
本発明のクロス共重合体は他のポリマーと共に動的加硫処理により熱可塑性エラストマー組成物にすることができる。具体的には本発明のクロス共重合体が50質量%以上95質量%以下、好ましくは60質量%以上95質量%以下、その他のポリマーを5質量%以上50質量%以下、好ましくは5質量%以上40質量%以下含み、動的加硫処理して得られる熱可塑性エラストマーである。ここで、その他のポリマーとは、前記「芳香族ビニル化合物系ポリマー」、「オレフィン系ポリマー」、「ブロック共重合体系ポリマー」、または「その他の樹脂、エラストマー、ゴム」である。
更に好適には本発明のクロス共重合体を50質量%以上95質量%以下、結晶性プロピレン系ポリマーを5質量%以上50質量%以下含み、動的加硫処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物である。ここで、結晶性プロピレン系ポリマーとは上記プロピレン系ポリマーのうち、アイソタクティックまたはシンジオタクティックの立体規則性を有し、結晶融点が100℃以上170℃以下、好ましくは120℃以上170℃以下であるポリマーである。本結晶性プロピレン系ポリマーは単独で或いは組み合わせて用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は(A)本発明のクロス共重合体と(B)その他のポリマー(結晶性プロピレン系ポリマー等)からなるブレンド物を、有機過酸化物やフェノール樹脂架橋剤の存在下でいわいる動的加硫処理(動的に熱処理する)することにより得ることが出来る。動的加硫処理は各種配合物を溶融状態で、架橋剤が反応する条件下で強力に混練させることにより分散と架橋を同時に起させる手法であり、A.Y.Coranらの文献(Rub.Chem.and Technol.vol.53,141(1980))に詳細に記されており広く知られている。動的加硫はバンバリーミキサー、加圧式ニーダーの様な密閉式混練機、一軸又は二軸押出機等を用いて行われる。混練温度は通常130〜300℃、好ましくは150〜250℃である。混練時間は通常1〜30分である。
【0077】
動的加硫処理に用いられる有機過酸化物としては、具体的にはジキュミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3、ジ−tert−ブチルペルオキシド等が挙げられる。本発明において、有機過酸化物は(A)本発明のクロス共重合体100質量部に対し好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.5〜3質量部の割合で用いられる。又、有機過酸化物による動的加硫処理の際にマレイミド化合物の様な過酸化物架橋用助剤、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレートの様な多官能性ビニルモノマーを配合することが出来る。
また、本動的加流処理の際に、前記ポリマー成分以外に、前記「可塑剤」や「無機質充填剤」を加えることも可能である。「可塑剤」は好ましくはポリマー成分100質量部に対し1〜20質量部、「無機質充填剤」は好ましくはポリマー成分100質量部に対し1〜200質量部の割合で用いられる。
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、結晶性プロピレン系ポリマーの高い耐熱性と本発明のクロス共重合体の軟質性、耐油性、力学物性等の特徴をあわせ有することができる。本特徴の発現には、本発明のクロス共重合体の特に軟質性が寄与している。また、本発明のクロス共重合体にポリエチレン結晶性が実質的にないことが結晶性プロピレンポリマーとの相溶性の向上に寄与していると考えられる。
【0078】
<石油樹脂/水添石油樹脂との組成物>
本発明のクロス共重合体に、石油樹脂及び/または水添石油樹脂を添加し樹脂組成物とすることができる。その配合は前記の通りであるが、好ましくは本発明のクロス共重合体を70質量%以上99質量%以下、石油樹脂及び/または水添石油樹脂を1質量%以上30質量%以下の範囲、特に好ましくは本発明のクロス共重合体を80質量%以上99質量%以下、水添石油樹脂を1質量%以上20質量%以下の範囲である。
上記配合範囲の場合、クロス共重合体本来の力学特性を損なわずに成形加工性(MFR値で規定される)を幅広く制御でき、成形加工法にあったMFRに調整できる。クロス共重合体よりも十分に低分子量である石油樹脂及び/または水添石油樹脂の配合量は多くなるほど本樹脂組成物のMFRを増大させる。MFRの調整は、配合量を上記の範囲で調整することで当業者らには容易に実施できる。
さらに、石油樹脂及び/または水添石油樹脂を本範囲で配合することで、クロス共重合体の透明性が著しく向上する効果がある。樹脂組成物の着色、透明性を考慮すると、無色透明性が高い水添石油樹脂が本目的には好ましい。石油樹脂及び/または水添石油樹脂は本範囲より少ない場合、上記効果が十分ではなく、多い場合は樹脂組成物に石油樹脂及び/または水添石油樹脂に由来する粘着性が発現しやすくなり用途によっては好ましくない。もちろん粘着性を要求される用途、例えば粘着剤、ヒートシールフィルム等の用途の場合には上記範囲より多く配合することもできる。
【0079】
<電線被覆材>
本発明記載のクロス共重合体及び樹脂組成物は、各種電線、ケーブル被覆材として好適に用いることができる。特にフィラー及びまたは公知の難燃剤との組成物は、軟質性、力学物性、耐摩耗性、及び耐油性に優れこのような用途には好適である。また、耐熱性を向上させるために、各種の公知の架橋法、例えば架橋剤による化学架橋、電子線等による架橋法を行うことも可能である。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により、本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0081】
実施例で得られた共重合体の分析は以下の手段によって実施した。
【0082】
共重合体中のスチレンユニット含量の決定は、H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUCKER社製AC−250を用いた。重1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、測定は、130℃で行った。TMSを基準としてフェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.5ppm)とアルキル基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の面積強度比較で行った。
共重合体中のα−オレフィン(オクテン、ヘキセン、プロピレン)ユニット含量の決定は、同様にH−NMRで行い、α−オレフィンユニットに由来するメチル基プロトン由来のピークとアルキル基由来のプロトンピークの面積強度比較で行った。本方法において、ポリマー末端のメチル基については、別途求めた数平均分子量からその存在割合を求めてその寄与を補正してα−オレフィンユニット含量を求めた。
【0083】
分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。測定は以下の条件で行った。
カラム:TSK−GEL MultiporeHXL−M φ7.8×300mm(東ソー社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:THF
送液流量:1.0ml/min.
または高温GPC(東ソー社製HLC−8121GPC/HT)を用いて下記の条件のもと分子量を算出した。
カラム:TSK−GEL GMHHR−H HT(東ソー社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:145℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン
送液流量:1.0ml/min.
【0084】
DSC測定は、セイコーインスツルメンツ社製EXSTAR6000を用い、窒素気流下で行った。すなわち樹脂組成物10mgを用い、昇温速度10℃/分で−100℃から260℃までDSC測定を行い、融点、結晶融解熱及びガラス転移点を求めた。
【0085】
<引張試験>
試料は加熱プレス法(温度260℃、5分間、圧力100kg/cm2)により成形した厚さ1.0mmのシートを用いた。JIS K−6251に準拠し、シートを2号1/2号型テストピース形状にカットし、オリエンテック社製UCT−1T型引張試験機を用い、引張速度300mm/minにて測定した
【0086】
<A硬度>
A硬度はJIS K−7215プラスチックのデュロメーター硬さ試験法に準じてタイプAのデュロメーター硬度を求めた。この硬度は瞬間値である。
【0087】
<全光線透過率、ヘーズ>
透明性は、加熱プレス法(温度260℃、時間5分間、圧力100kg/cmG)により1.0mm厚にシートを成形しJIS K−7375プラスチックの光学的特性試験方法に準じて日本電色工業社製濁度計NDH2000を用いて全光線透過率およびヘーズを測定した。
<粘弾性スペクトルの測定>
動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社RSA−III)を使用し、周波数1Hz、温度領域−60℃〜+250℃の範囲で測定した。加熱プレス法(温度260℃、時間5分間、圧力100kg/cmG)により得た、厚み約0.3から0.5mmのフィルムから測定用サンプル(4mm×60mm)を切り出した。
<耐熱変形試験>
JIS2号小型1/2ダンベルを所定のオーブン内に吊し、所定の温度で1時間加熱処理し、処理前とダンベル縦方向、幅方向で長さを測定し、以下の式により伸び/収縮変形率を求めた。本伸び/収縮変形率が縦、幅方向すべてについて5%以内に収まる最高温度を耐熱変形温度とした。
伸び変形率=100×(試験後の長さ−試験前の長さ)/試験前の長さ
収縮変形率=100×(試験前の長さ−試験後の長さ)/試験前の長さ
本試験は、最高180℃まで実施した。
<室温耐油性試験>
JIS2号小型1/2ダンベルをエンジンオイルおよびオリーブオイルに浸漬し14日後の引張試験により浸漬前後での破断強度保持率を求めた。
破断強度保持率(%)=100×(浸漬後の破断強度/浸漬前の破断強度)
【0088】
<ジビニルベンゼン>
以下の実施例で用いたメタジビニルベンゼンは、新日鉄化学社製のジビニルベンゼン(メタ・パラ混合品ジビニルベンゼンとして純度80%以上)である。
【0089】
<触媒(遷移金属化合物)>
以下の実施例A、B,C,Eでは、触媒(遷移金属化合物)として、rac(ラセミ体)−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド(式8)を用いた。
【0090】
【化8】

【0091】
実施例D,F,H,Iでは、触媒(遷移金属化合物)として、テトラメチルシクロペンタジエニルジメチルシランターシャリーブチルアミドチタニウムジクロリド(式9)を用いた。
【0092】
【化9】

【0093】
実施例Gでは、触媒(遷移金属化合物)として、ジフェニルメチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(式10)を用いた。
【0094】
【化10】

【0095】
実施例A(マクロマーAの合成)
<配位重合工程>
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。
シクロヘキサン4200ml、スチレン600ml及び新日鉄化学社製のジビニルベンゼン(メタ、パラジビニルベンゼンとして20.8mmol)を仕込み、内温60℃にて窒素を約100Lバブリングして系内及び反応液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソー・ファインケム社製、MMAO−3A)をAl基準で25.2mmol(表中ではMAOと記載)加え、内温85℃に加熱攪拌した。ただちにエチレンを導入し、圧力0.45MPa(3.5kg/cmG)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを17μmol、トリイソブチルアルミニウム0.98mmolを溶かしたトルエン溶液約30mlを反応液に加えた。内温を85℃、エチレンを補給しながら圧力を0.45MPaに維持し、1時間の重合を実施した(配位重合工程)。反応終了後、得られたポリマー液を、大量のメタノール液中に投入し、激しく攪拌して、ポリマーを回収した。
このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に50℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。680gのポリマー(マクロマー)が得られ、組成、分子量等を求めた。
【0096】
実施例B(マクロマーBの合成)
触媒としてrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、以下のように実施した。
容量50L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。
シクロヘキサン26.5L、スチレン3.5L及びジビニルベンゼン(メタ、パラ混合品、ジビニルベンゼンとして122mmol)を仕込み、内温60℃に調整し攪拌(220rpm)した。乾燥窒素ガスを30L/分の流量で数十分、液中にバブリングして系内及び重合液の水分をパージした。次いで、トリイソブチルアルミニウム20mmol、メチルアルモキサン(東ソー・ファイケム社製、MMAO−3A)をAl基準で40mmol(表中ではMAOと記載)加え、ただちにエチレンで系内をパージした。十分にパージした後、内温を90℃に昇温してエチレンを導入し、圧力0.50MPa(4.0kg/cmG)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを80μmol、トリイソブチルアルミニウム1mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブ中に加えた。さらに、内温を90℃、エチレンを補給しながら圧力を0.50MPaに維持し、約90分間重合を実施した。
重合終了後エチレンを直ちにパージし、得られたポリマー液を分散剤(プルロニック)とカリミョウバンを含む激しく攪拌した加熱水中にギアポンプにて少しずつ投入し、溶媒を除去し、加熱水中に分散したポリマークラム(大きさ約1cm)を得た。このポリマークラムを、遠心脱水し、室温で1昼夜風乾した後に60℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。その結果、約2.8kgのポリマー(マクロマー)を得た。
【0097】
実施例C(マクロマーCの合成)
実施例Bと同じ重合装置、同じ触媒を用い、同じ手順で、但し、重合条件を表1記載の条件に変更し実施した。
【0098】
実施例D(マクロマーDの合成、エチレン−オクテン−ジビニルベンゼン共重合体)
触媒としてテトラメチルシクロペンタジエニルジメチルシランターシャリーブチルアミドチタニウムジクロリドを用い、以下のように実施した。
実施例Aと同じ容量10Lのオートクレーブを用いて重合を行った。シクロヘキサン4200ml、1−オクテン600ml及び新日鉄化学社製のジビニルベンゼン(メタ、パラジビニルベンゼンとして42.4mmol)を仕込み、内温60℃にて窒素を約100Lバブリングして系内及び反応液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソー・ファインケム社製、MMAO−3A)をAl基準で25.2mmol加え、内温100℃に加熱攪拌した。ただちにエチレンを導入し、圧力0.55MPa(4.5kg/cmG)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、テトラメチルシクロペンタジエニルジメチルシランターシャリーブチルアミドチタニウムジクロリドを29μmol、トリイソブチルアルミニウム0.98mmolを溶かしたトルエン溶液約30mlを反応液に加えた。内温を100℃、エチレンを補給しながら圧力を0.55MPaに維持し、30分間重合を実施した(配位重合工程)。反応終了後、得られたポリマー液を、大量のメタノール液中に投入し、激しく攪拌して、ポリマーを回収した。
このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に50℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。530gのポリマー(マクロマー)が得られ、組成、分子量等を求めた。
【0099】
実施例E(マクロマーEの合成)
実施例Bと同じ重合装置、同じ触媒を用い、同じ手順で、但し、重合条件を表1記載の条件に変更し実施した。
【0100】
実施例F(マクロマーFの合成、エチレン−ヘキセン−ジビニルベンゼン共重合体)
<配位重合工程>
触媒としてテトラメチルシクロペンタジエニルジメチルシランターシャリーブチルアミドチタニウムジクロリドを用い、以下のように実施した。
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。トルエン4400ml、1−ヘキセン400ml及びジビニルベンゼン(メタ、パラジビニルベンゼンとして36mmol)を仕込み、内温50℃にて窒素を約100Lバブリングして系内及び反応液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソー・ファインケム社製、MMAO−3A)をAl基準で25.2mmol加え、内温95℃に加熱攪拌した。ただちにエチレンを導入し、圧力0.6MPa(5.1kg/cm2G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、テトラメチルシクロペンタジエニルジメチルシランターシャリーブチルアミドチタニウムジクロリドを33μmol、トリイソブチルアルミニウム0.98mmolを溶かしたトルエン溶液約30mlとして反応液に加えた。内温を100℃、エチレンを補給しながら圧力を0.6MPaに維持し、24分の重合を実施した(配位重合工程)。反応終了後、得られたポリマー液を、大量のメタノール液中に投入し、激しく攪拌して、ポリマーを回収した。
このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に50℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。480gのポリマー(マクロマー)が得られ、組成、分子量等を求めた。
実施例IもFと同様の触媒を用いて表1記載の条件により実施した。
【0101】
実施例G(マクロマーGの合成、エチレン−ヘキセン−ジビニルベンゼン共重合体)
触媒としてジフェニルメチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドを用い、表1記載の条件により実施した。
【0102】
実施例H(マクロマーHの合成、エチレン−プロピレン−ジビニルベンゼン共重合体)
実施例Dと同じ触媒を用い、同じ手順で、但し、重合条件を表1記載の条件に変更し実施した。
実施例Aと同じ容量10Lのオートクレーブを用いて重合を行った。シクロヘキサン4800ml、及びジビニルベンゼン(メタ、パラジビニルベンゼンとして25mmol)を仕込み、内温60℃にて窒素を約100Lバブリングして系内及び反応液をパージした。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソー・ファインケム社製、MMAO−3A)をAl基準で38mmol加え、内温95℃に加熱攪拌した。ただちにプロピレンを100NL(normal liter)、次いでエチレンを導入し、圧力0.9MPa(8.1kg/cm2G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、テトラメチルシクロペンタジエニルジメチルシランターシャリーブチルアミドチタニウムジクロリドを38μmol、トリイソブチルアルミニウム0.98mmolを溶かしたトルエン溶液約30mlとして反応液に加えた。内温を100℃、エチレンを補給しながら圧力を0.8MPaに維持し、3.5時間重合を実施した(配位重合工程)。反応終了後、得られたポリマー液を、大量のメタノール液中に投入し、激しく攪拌して、ポリマーを回収した。
このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に50℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。260gのポリマー(マクロマー)が得られ、組成、分子量等を求めた。

【0103】
【表1】


得られたマクロマーの分析結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
実施例1
<ラジカル重合工程>
1Lのオートクレーブに配位重合工程の実施例Aで得られたマクロマー50g、スチレンモノマー21g、トルエン229g、連鎖移動剤n−DDM:1−ドデカンチオール(1−Dodecanethiol)1.6gを仕込み、オートクレーブ内を窒素置換後に90℃に昇温した。昇温終了後、トルエン400g、N−フェニルマレイミド35g、パーブチルO 0.08gを溶解させた分添液を2時間フィードさせた。フィード終了後、90℃を維持して更に30分反応を継続した。反応終了後、得られたポリマー液を、大量のイソプロピルアルコール液中に投入し、激しく攪拌して、ポリマーを回収した。
このポリマーを、室温で1昼夜風乾した後に50℃、真空中、質量変化が認められなくなるまで乾燥した。86gのポリマー(クロス共重合体)を得た。
【0106】
実施例2〜14
実施例1と同様の手順で表3記載の条件で重合を行った。
【0107】
実施例15
実施例1と同一条件の下で重合を行った。ただし、N−フェニルマレイミドの代わりに不飽和ジカルボン酸無水物として無水マレイン酸を用いた分添液をフィードした。反応終了後、大量のイソプロピルアルコール液中に投入しポリマーを回収した。次にイミド化工程として回収したポリマー、アニリンを添加してトリエチルアミンを触媒とするイミド化をオートクレーブにて行い、実施例1と同等組成のクロス共重合体を得た。
【0108】
比較例1
実施例で得られたマクロマーの代わりに、ジビニルベンゼンを含まないスチレン−エチレン共重合体(スチレンユニット含量23モル%、分子量Mw12万、Mw/Mn=2.2、触媒はrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、特開平11−130808号公報記載の方法で製造)を用い、実施例1と同様の手順で表3記載の条件で重合を行った。
【0109】
【表3】

【0110】
表4には、実施例1〜14、比較例1で得られたポリマーの硬度、透明性、力学物性、MFRの測定結果を示す。MFRは、260℃、10kgの荷重条件で測定した。
【0111】
【表4】


配位重合工程で得られたポリマーの収量、組成、分子量等を求めた。配位重合工程で得られたポリマーのジビニルベンゼンユニット含量は、ガスクロマトグラフィ分析により求めた重合液中の未反応ジビニルベンゼン量と重合に用いたジビニルベンゼン量の差から求めた。
また、配位重合工程で得られる芳香族ポリエン共重合マクロマーの、ラジカル重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体に対する質量割合は、用いたマクロマー質量と得られたクロス共重合体の質量の比から求めた。
【0112】
クロス鎖であるスチレン−マレイミド(N−フェニルマレイミド)共重合体の組成は、13C−NMRスペクトルから求めたが、スチレンユニット含量は50〜55モル%の範囲内であった。さらに今回得られたクロス共重合体のDSC測定から得られたクロス鎖由来のTgはいずれも210℃〜230℃の範囲内であったことからもその組成はほぼスチレンユニット含量50モル%付近であることがわかる。
表2にUS6096849号公報に従って、本実施例配位重合工程で得られた主鎖エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のTUS/DOU値を示した。ここで、TUSは、共重合体に含まれるトータルのビニル基含量で、芳香族ポリエン(ジビニルベンゼン)ユニットに由来するビニル基とポリマー末端のビニル基の含量の総和であり、1H−NMR測定により求めた。またDOU値は主鎖エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に含まれるジビニルベンゼンユニット含量である。
本発明の配位重合工程で得られる芳香族ポリエン共重合マクロマー(エチレン−スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、エチレン−オレフィン−ジビニルベンゼン共重合体)においては、TUS/DOU値は1.1より高い値をとり、概ね1.2以上10以下、好ましくは1.2以上3以下の値をとる。TUS/DOU値がより大きい場合、芳香族ポリエンユニット含量が少なすぎ、本発明のクロス共重合体としての機能が失われてしまう場合がある。また、TUS/DOU値が1.1以下の場合、芳香族ポリエンユニット含量が多すぎて主鎖に由来する機能が失われやすくなり、またクロス共重合体の成形加工性が悪化してしまったり、クロス共重合体中にゲル分が生成してしまう恐れがある。
【0113】
本発明のクロス共重合体は、A硬度で40以上、D硬度70以下、引張弾性率では1MPa以上400MPa以下の値を示し、熱可塑性エラストマーとして良好な力学物性、すなわち破断点強度5MPa以上、破断点のび30%以上を示す。さらに、配位重合工程で得られる芳香族ポリエン共重合マクロマーのラジカル重合工程を経て最終的に得られるクロス共重合体に対する質量割合が40質量%以上80質量%以下である場合、A硬度は50以上90以下、引張弾性率では3MPa以上100MPa以下の値を示し、熱可塑性エラストマーとしてさらに良好な力学物性、すなわち破断点強度5MPa以上、破断点伸び100%以上を示す。
【0114】
さらに本発明のクロス共重合体は、いずれも耐熱変形温度180℃以上を示し、著しく高い耐熱変形温度を示し、かつ力学物性も良好である。一方、スチレン−エチレン共重合体を用いて合成した共重合体(比較例1)は、耐熱変形試験において、低い耐熱変形温度を与えた(表5)。
【0115】
【表5】

【0116】
本発明で得られたクロス共重合体の室温耐油性を評価したところ、エンジンオイルとオリーブオイル中においても高い破断強度保持率を示すことがわかる。一方、スチレン−エチレン共重合体を用いて合成した共重合体(比較例1)は強度低下が著しく、耐油性に劣る結果を与えた(表6)。
【0117】
【表6】

【0118】
本発明のクロス共重合体は、従来のエチレン−スチレン共重合体や他の軟質樹脂と比較し、より軟質塩ビに近い引張特性を有することが解る。本特性は引張弾性率(MPa)に対する100%伸びの時点での応力(MPa)の比Rm値(=100%伸びの時点での応力/引張弾性率)で示すことができる。
一般的な軟質塩ビの場合、Rm値は、0.15〜0.5程度の範囲となる。本実施例で得られたクロス共重合体のRm値は、概ね0.2〜0.6とほぼ軟質塩ビと同じ範囲の値を取ることが解り、軟質塩ビ類似の引張特性、すなわち風合いを有することが解る。
さらに用いられる芳香族ポリエン共重合マクロマーが、エチレン−オクテン−ジビニルベンゼン共重合体やエチレン−ヘキセン−ジビニルベンゼン共重合体、エチレン−プロピレン−ジビニルベンゼン共重合体といったα−オレフィンをコモノマーに選んだ場合、力学物性は若干劣るもののガラス転移温度が低く、耐寒性に優れるクロス共重合体を得ることができる。
【0119】
図1には、各実施例、比較例で得られた粘弾性測定結果を示す。図中、縦軸表記 E´(Pa)、例えば1.0E+06とは、1MPaを示す。
【0120】
本発明のクロス共重合体は、従来のエチレン−スチレン共重合体や他の軟質樹脂と比較し、貯蔵弾性率が200℃まで1×10Pa以上を維持しており、耐熱特性を有することが解る。さらにマクロマーにエチレン−オクテン−ジビニルベンゼン共重合体を用いたクロス共重合体(実施例9)やエチレン−ヘキセン−ジビニルベンゼン共重合体(実施例11)やエチレン−プロピレン−ジビニルベンゼン共重合体(実施例13)は低温条件下での軟質性に優れていることがわかる。
一方、比較例1で得られたポリマーは、80℃付近で軟質化し、溶融した。さらに市販のPP系エラストマー1は、120℃付近で軟質化し、溶融した。さらに市販のPP系エラストマー2は、120℃付近でサンプルが破断した。
【0121】
図2、3には、実施例4と比較例1で得られたポリマーのTEM写真を示す。実施例4の場合、非常に高分散した微細構造が観測される(図2)のに対し、比較例1では、数百nmの大きさの相分離構造が観測される(図3)。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】各実施例、比較例で得られた粘弾性測定結果である。
【図2】実施例4で得られたポリマーのTEM写真である。
【図3】比較例1で得られたポリマーのTEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配位重合工程とこれに続くラジカル重合工程を含むクロス共重合体の製造方法であって、配位重合工程において、シングルサイト配位重合触媒を用いて芳香族ポリエン共重合マクロマーを合成し、次にラジカル重合工程において、芳香族ポリエン共重合マクロマー、芳香族ビニル化合物及びイミド化不飽和ジカルボン酸無水物を共重合することを特徴とするクロス共重合体の製造方法。
【請求項2】
配位重合工程とこれに続くラジカル重合工程を含むクロス共重合体の製造方法であって、配位重合工程において、シングルサイト配位重合触媒を用いて芳香族ポリエン共重合マクロマーを合成し、次にラジカル重合工程において、芳香族ポリエン共重合マクロマー、芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物を共重合することを特徴とするクロス共重合体の製造方法。
【請求項3】
配位重合工程、ラジカル重合工程及びイミド化工程を含むクロス共重合体の製造方法において、(1)配位重合工程で、シングルサイト配位重合触媒を用いて芳香族ポリエン共重合マクロマーを合成し、(2)次にラジカル重合工程において、芳香族ポリエン共重合マクロマー、芳香族ビニル化合物及び不飽和ジカルボン酸無水物を共重合し、(3)さらに得られた共重合体をイミド化することを特徴とするクロス共重合体の製造方法。
【請求項4】
芳香族ポリエン共重合マクロマーが、エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体、エチレン−芳香族ビニル化合物−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項5】
50℃〜200℃の温度範囲においてDSCで測定される結晶融解熱の総和が、70J/g以下である芳香族ポリエン共重合マクロマーを用いることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項6】
芳香族ポリエン共重合マクロマーが、エチレン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体であって、芳香族ビニルユニット含量5モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上1モル%以下、残部がエチレンユニット含量であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項7】
芳香族ポリエン共重合マクロマーが、エチレン−オレフィン−芳香族ポリエン共重合体であって、オレフィンユニット含量5モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上1モル%以下、残部がエチレンユニット含量であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項8】
芳香族ポリエン共重合マクロマーが、エチレン−オレフィン−芳香族ビニル化合物−芳香族ポリエン共重合体であって、芳香族ビニルユニットとオレフィンユニット含量の合計が5モル%以上50モル%以下、芳香族ポリエンユニット含量0.01モル%以上1モル%以下、残部がエチレンユニット含量であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項9】
配位重合工程において、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒を用いることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【化1】

式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。ここで置換ベンゾインデニル基とは、置換可能な水素の1個以上が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)で置換されたベンゾインデニル基である。また、隣接する置換基は一体となって5〜8員環の芳香環または脂肪環を形成してもよい。
ここで置換インデニル基、置換シクロペンタジエニル基、または置換フルオレニル基とは、置換可能な水素の1個以上が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)で置換されたインデニル基、シクロペンタジエニル基またはフルオレニル基である。
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(本置換基には他に1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、または珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基または硼素基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。2個のXは結合を有してもよい。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
【請求項10】
配位重合工程において、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒を用いることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【化2】

式中、A、Bは同一でも異なっていてもよく、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換インデニル基から選ばれる基である。ここで非置換もしくは置換ベンゾインデニル基とは、一般式(2)、(3)、(4)で示される非置換もしくは置換ベンゾインデニル基である。非置換及び置換インデニル基とは下記一般式(5)で示される非置換及び置換インデニル基である。
【化3】

【化4】

【化5】

一般式(2)、(3)、(4)においてR1〜R3はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)である。R1同士、R2同士、R3同士は互いに同一でも異なっていてもよく、また、隣接するR1、R2基は一体となって5〜8員環の芳香環または脂肪環を形成してもよい。
【化6】

一般式(5)においてR4はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)である。R4同士は互いに同一でも異なっていてもよい。
YはA、Bと結合を有し、他に置換基として水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基(本置換基には他に1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子、燐原子、または珪素原子を含んでもよい)を有するメチレン基または硼素基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは環状構造を有していてもよい。Xは、水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、または炭素数1〜20の炭化水素置換基を有するアミド基である。2個のXは結合を有してもよい。
Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
【請求項11】
配位重合工程において、下記の一般式(6)で表される遷移金属化合物と助触媒から構成されるシングルサイト配位重合触媒を用いることを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【化7】

式中、Cpは非置換もしくは置換シクロペンタフェナンスリル基、非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、非置換もしくは置換シクロペンタジエニル基、非置換もしくは置換インデニル基、または非置換もしくは置換フルオレニル基から選ばれる基である。ここで置換シクロペンタフェナンスリル基、置換ベンゾインデニル基、置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、または置換フルオレニル基とは、置換可能な水素の1個以上が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR基、SiR基またはPR基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)で置換されたシクロペンタフェナンスリル基、ベンゾインデニル基、シクロペンタジエニル基、インデニル基、またはフルオレニル基である。Y’は、Cp、Zと結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基、シリレン基、エチレン基、ゲルミレン基、または硼素基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Y’は環状構造を有していてもよい。Zは窒素、酸素またはイオウを含み、窒素、酸素またはイオウでM’に配位する配位子でY’と結合を有し、他に水素もしくは炭素数1〜15の置換基を有する基である。
M’はジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
X’は、水素、ハロゲン、炭素数1−15のアルキル基、炭素数6−10のアリール基、炭素数8−12のアルキルアリール基、炭素数1−4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1−10のアルコキシ基、または炭素数1−6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。
nは、1または2の整数である。
【請求項12】
芳香族ポリエン化合物がジビニルベンゼンであることを特徴とする請求項1〜11のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項13】
ラジカル重合工程において用いられる芳香族ビニルモノマーがスチレンであることを特徴とする請求項1〜12のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項14】
ラジカル重合工程において用いられるイミド化不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−グリシルマレイミドから選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項1及び請求項4〜13のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項15】
ラジカル重合工程において用いられる不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、またはアユニット酸の各酸の無水物から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項2または3記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項16】
配位重合工程における芳香族ビニルモノマーがスチレンであり、重合後の残存スチレンモノマーを、ラジカル重合工程における芳香族ビニルモノマーとして使用することを特徴とする請求項1〜15のうちいずれか一項記載のクロス共重合体の製造方法。
【請求項17】
ガラス転移温度が、130℃以上260℃以下であることを特徴とする請求項1〜16のうちいずれか一項記載の製造方法により得られるクロス共重合体
【請求項18】
請求項1〜16のうちいずれか一項記載の製造方法で得られるクロス共重合体と、芳香族ビニル化合物系ポリマーを含有してなる樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1〜16のうちいずれか一項記載の製造方法で得られるクロス共重合体と、オレフィン系ポリマーを含有してなる樹脂組成物。
【請求項20】
請求項1〜16のうちいずれか一項記載の製造方法で得られるクロス共重合体、芳香族ビニル化合物系ポリマー及びオレフィン系ポリマーを含有してなる樹脂組成物。
【請求項21】
請求項1〜16のうちいずれか一項記載の製造方法で得られるクロス共重合体と、ブロック共重合体系ポリマーを含有してなる樹脂組成物。
【請求項22】
請求項1〜16のうちいずれか一項記載の製造方法で得られるクロス共重合体を含有してなる成形体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−167387(P2009−167387A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267796(P2008−267796)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】