説明

耐酸化性の均質化した重合体状材料

本発明は、耐酸化性の、均質化された重合体状材料、および重合体状材料、例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含んでなる医療用充填材の製造方法に関する。本発明は、酸化防止剤をドーピングした医療用充填材の製造方法、例えば架橋UHMWPEを含む医療用装置に拡散によりビタミンEをドーピングして、酸化防止剤をドーピングしたUHMWPEを超臨界流体中でアニーリングすること、およびそれに使用する材料も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年8月22日提出の米国仮出願第60/709,795号(該出願は引用されることにより本願の開示の一部とされる。)を基礎として優先権を主張したものである。
【0002】
本発明は、耐酸化性の均質化した重合体状材料の製造方法およびその材料を含んでなる医療用充填材に関する。ポリエチレンを添加剤、例えばビタミンE、でドーピングし、該添加剤でドーピングしたポリエチレンを超臨界流体、例えばCO2、中でアニーリングする方法およびそれに使用する材料も提供する。
【背景技術】
【0003】
第一世代の高架橋超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、一般的に照射されて融解することにより、関節形成術でのUHMWPE構成部品の密着/摩耗を低減できる(Muratogluら, J. Arthroplasty, 2001. 16(2): p. 149-160、Muratogluら, Biomaterials, 1999. 20(16)p. 1463-1470、および、McKellopら, J. Orthop Res, 1999. 17(2): p. 157-167を参照)。照射されたUHMWPEに、耐酸化性を付与するために行われる照射後の融解工程は、一般的に照射されたポリエチレンの疲労強度を約20%低下させる(Oralら, Biomaterials, 2004, 25: p.5515-5522を参照)。
【0004】
一般的に、ポリエチレン粉末を、固化の前に酸化防止剤と混合することにより、ポリエチレン材料の耐酸化性を改良できることが知られている。ある研究者は、耐摩耗性を改良するための試みの中で、酸化防止剤(例えばビタミンEおよびβ−カロテン)を、UHMWPE粉末または粒子と混合している(Moriら, p.1017, the 47th Annual Meeting, Orthopaedic Res Soc, February 25-28, 2001, San Fransisco, CAで発表、McKellopらの国際公開WO 01/80778号、Schaffnerらの欧州特許出願公開公報第0995450号、Hahn D. 米国特許第5,827,904号、Lidgrenらの米国特許第6,448,315号を参照)。Mori et al.は、照射が、酸化防止剤をドーピングされたポリエチレンの耐酸化性を下げないことも開示している。これらの研究者は、ポリエチレン粉末を酸化防止剤と混合し、次いで酸化防止剤−粉末混合物を固化させて、耐酸化性ポリエチレンを得ることを記載している(McKellopらの国際公開WO 01/80778、Schaffnerらの欧州特許出願公開第0995450、Hahn Dの米国特許第5,827,904号、Lidgrenらの米国特許第6,448,315号を参照)。樹脂粉末、フレーク、または粒子を、ビタミンEと混合し、その後で固化させることにより、重合体状材料の色が黄色に変化する(例えば米国特許第6,448,315号を参照)。さらに、照射前に酸化防止剤をUHMWPEに加えることにより、照射の最中にUHMWPEが架橋するのを抑制することができる(Parthら, J Mater Sci-Mater Med, 2002. 13(10):p.917-921、Oralら, Biomaterials, 2005, 26: p.6657-6663)。しかし、重合体の耐摩耗性を向上させるには架橋が必要である。
【0005】
ビタミンEで安定化させた、高架橋UHMWPEは、次世代の高架橋UHMWPEであり、第一世代の照射して融解した高架橋UHMWPEに見られる機械的および疲労強度の劣化の程度を低減するために開発されたものである(Oralら, Biomaterials, 2004, 25: p.5515-5522、Muratogluら, Transactions of the Orthopaedic Research Society, 2005. 1661、Oralら, Transactions of the Orthopaedic Research Society, 2005. 1171、Oralら, J. Arthroplasty, 2005.印刷中、を参照)。融解を照射と組み合わせると、架橋を形成し、大部分結晶性区域に捕獲された、酸素と反応して酸化性脆化を引き起こす恐れがある残留フリーラジカルの再結合を促進する。しかし、架橋および照射後の融解に伴う結晶化度の低下は、放射線架橋させ、融解させたUHMWPEの疲労強度、降伏強度、極限引張強度、靱性および破断点伸びを低下させる理由であると考えられる。したがって、架橋したUHMWPEにおける、照射により形成された残留フリーラジカルを、結晶化度を下げずに、減少させ、低摩耗性を必要とする高応力用途向けの高い疲労耐性を達成することが望ましい。
【0006】
酸化防止剤を使用して照射により誘発されたフリーラジカルと相互作用させ、フリーラジカルが、他の鎖と反応してさらに酸化を広げるのを阻止することができる。これによって、放射線架橋したUHMWPEを照射後に融解させる必要が無くなり、照射後の融解に伴う結晶化度および強度の低下が回避される。ビタミンE(α−トコフェロール)は、そのような酸化防止剤であり、照射されたUHMWPEを酸化から保護する。しかし、照射した充填材の長期間酸化安定性には、ビタミンEが構成部品全体にわたって、常に存在する必要がある。
【0007】
以前に、高温ドーピングと、それに続く常圧における高温均質化が、照射されたUHMWPEにおけるα−トコフェロール拡散の強化に使用されている(Muratoglu, et al.、米国特許出願第10/757,551号、2004年1月15日提出、およびOral et al., Transactions of the Orthopaedic Research Society, 2005. 1673、参照)。この方法は、完成した構成部品のドーピングには好適である。しかし、ドーピングおよび均質化の持続時間が、構成部品の厚さと共に著しく増加する。従って、照射されたUHMWPEにおけるα−トコフェロール拡散速度を加速することが望ましいが、これは先行技術の実施では不可能であった。本発明により、酸化防止剤をバー原料中にも効率的に取り入れることができ、そのバー原料から医療用充填材を機械加工することができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、一般的には、一種以上の均質化した重合体状材料を含んでなる耐酸化性医療用装置の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、均質化した架橋ポリエチレン、例えば架橋した超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む、酸化防止剤をドーピングした医療用装置の製造方法、およびそれに使用する材料に関する。より詳しくは、本発明は、超臨界流体中でドーピングすることにより、添加剤をドーピングした、例えば酸化防止剤をドーピングした、均質化した、残留フリーラジカルを含む架橋ポリエチレン、例えば照射された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む非酸化性医療用装置の製造方法、およびそれに使用する材料に関する。
【0009】
本発明の一態様においては、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を製造する方法であって、a)重合体状材料に、その溶融状態より低い温度で、イオン化放射線を照射して、架橋重合体状材料を形成すること、b)前記架橋重合体状材料を常圧で添加剤、例えば酸化防止剤をドーピングすること、およびc)前記添加剤をドーピングした(例えば酸化防止剤をドーピングした)、架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、添加剤をドーピングした(例えば酸化防止剤をドーピングした)、均質化した、架橋重合体状材料を形成することを含んでなる、方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様においては、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を製造する方法であって、a)重合体状材料を常圧で酸化防止剤をドーピングすること、b)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した重合体状材料を形成すること、およびc)前記重合体状材料に、その溶融状態より低い温度で、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成すること、を含んでなる、方法を提供する。
【0011】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)重合体状材料を用意すること、b)前記重合体状材料を固化させること、c)前記固化した重合体状材料にイオン化放射線を照射して、固化した、架橋重合体状材料を形成すること、d)前記固化した、架橋重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、e)前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、およびf)前記酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)重合体状材料を用意すること、b)前記重合体状材料を固化させること、c)前記固化した重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、d)前記医療用充填材にイオン化放射線を照射して、架橋医療用充填材を形成すること、e)前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、およびf)前記酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋医療用充填材を形成すること、を含んでなる、方法を提供する。
【0013】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)重合体状材料を用意すること、b)前記重合体状材料を固化させること、c)前記重合体状材料に、イオン化放射線を照射して、架橋重合体状材料を形成すること、e)前記重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋重合体状材料を形成すること、f)前記酸化防止剤をドーピングした、架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成すること、g)前記酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を機械加工して、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0014】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)重合体状材料を用意すること、b)前記重合体状材料を固化させること、c)前記固化した重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングすること、d)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した重合体状材料を形成すること、e)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を機械加工して、酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を形成すること、およびf) 前記酸化防止剤をドーピングした、架橋重合体状材料に、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0015】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)重合体状材料を用意すること、b) 前記重合体状材料を固化させること、c) 前記固化した重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングすること、d) 前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した重合体状材料を形成すること、e) 前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料に、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、架橋重合体状材料を形成すること、およびf) 前記架橋した重合体状材料を機械加工して、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0016】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)重合体状材料を用意すること、b) 前記重合体状材料を固化させること、c) 前記固化した重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、d) 前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を形成すること、e) 前記酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した医療用充填材を形成すること、f) 前記医療用充填材を包装すること、およびg) 前記包装した医療用充填材に、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、無菌の架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0017】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)重合体状材料を用意すること、b) 前記重合体状材料を固化させること、c) 前記固化した重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、d) 前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を形成すること、e) 前記酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した医療用充填材を形成すること、f) 前記医療用充填材を包装すること、およびf) 前記包装した医療用充填材に、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、無菌の架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0018】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)重合体状材料を用意すること、b) 前記重合体状材料を固化させること、c) 前記固化した重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、d) 前記医療用充填材に、イオン化放射線を照射して、架橋医療用充填材を形成すること、e) 前記架橋医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、e) 前記酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0019】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)重合体状材料を用意すること、b) 前記重合体状材料を圧縮成形して、医療用充填材を形成すること、c) 前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を形成すること、d) 前記酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した医療用充填材を形成すること、e) 前記医療用充填材を包装すること、およびf) 前記包装した医療用充填材に、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、無菌の架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0020】
本発明の別の態様においては、医療用充填材を製造する方法であって、a)固化した重合体状材料を用意すること、b) 前記固化した重合体状材料に、イオン化放射線を照射して、固化した、架橋重合体状材料を形成すること、c) 前記固化した、架橋重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、d) 前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、およびe) 前記酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0021】
本発明の別の態様においては、検出可能な残留フリーラジカルを含む均質化した重合体状材料を提供するが、前記重合体状材料は、非酸化性であり、架橋している。
【0022】
本発明の別の態様おいては、検出可能な残留フリーラジカルを含む、非酸化性の、均質化した架橋重合体状材料を含んでなる医療用充填材の方法を提供する。
【0023】
さらに別の実施態様おいは、本発明は、酸化防止剤をドーピングした、均質化した架橋重合体状材料含む医療用充填材を製造する方法であって、前記充填材が、寛骨臼ライナー、肩関節窩、膝蓋骨成分、指関節成分、踝関節成分、肘関節成分、手首関節成分、足指関節成分、二極人工股関節、頸骨膝挿入物、補強金属およびポリエチレンポストを備えた頸骨膝挿入物、椎間板、心臓弁、腱、ステント、および血管移植片を包含する医療用装置を含んでなる、方法を提供する。
【0024】
さらに別の実施態様においては、本発明は、酸化防止剤をドーピングした、均質化した架橋重合体状材料含む、非永久的充填材を包含する医療用充填材を製造する方法であって、前記充填材が、バルーンカテーテル、縫合、管、および静脈内管を包含する医療用充填材を含んでなり、該重合体状材料が、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子、等、またはそれらの混合物である、方法を提供する。本明細書に記載するように、重合体状バルーン、例えばポリエーテル−ブロック コ−ポリアミド重合体(PeBAX(登録商標))、ナイロン、およびポリエチレンテレフタレート(PET)バルーンをビタミンEでドーピングし、ドーピング前、最中、または後に照射する。これらの方法により得られる医療用充填材も提供する。
【0025】
さらに別の実施態様においては、本発明は、医療用装置用の包装物を製造する方法であって、前記包装物が、イオン化放射線またはガス滅菌を実施した際に耐酸化性である、方法を提供する。前記包装物は、バリヤー材料、例えばブロー成形したPTP包装、熱収縮性包装物、熱密封された包装物、等、またはそれらの組合せを包含する。
【0026】
一態様においては、酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を包装し、イオン化放射線またはガス滅菌により滅菌し、無菌の、架橋医療用充填材を得る。
【0027】
別の態様においては、本発明の前記重合体状材料が、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子等、またはそれらの混合物であり、前記照射が、約1%〜約22%の酸素を含む雰囲気中で行われ、前記放射線量が約25 kGy〜約1000 kGyである。
【0028】
別の態様においては、本発明の前記重合体状材料が、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子等、またはそれらの混合物であり、前記重合体状材料に、固化の後に、ガス(例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等、またはそれらの組合せ)を含む不活性雰囲気中で照射し、前記放射線量は約25 kGy〜約1000 kGyである。
【0029】
別の態様においては、本発明の前記重合体状材料が、固化した重合体状材料であり、前記固化を、圧縮成形により行い、スラブを形成し、そのスラブから医療用装置を機械加工することができる。
【0030】
別の態様においては、本発明の前記重合体状材料が、固化した重合体状材料であり、前記固化を、直接圧縮成形により行い、完成した医療用装置を形成することができる。
【0031】
さらに別の実施態様においては、本発明の前記重合体状材料が、固化した重合体状材料であり、前記固化を、別の部品に対する圧縮成形により行い、界面および連結ハイブリッド材料を形成することができる。
【0032】
本発明の別の態様においては、ドーピングを、不活性、空気または超臨界中で、低または高圧で、超臨界におけるアニーリングの前に行うこともできる。
【0033】
本発明の別の態様においては、ドーピングした重合体状材料を、前記ドーピングした重合体状材料の融点より低い温度で、超臨界流体、例えばCO中でアニーリングすることにより、酸化防止剤の浸透性およびドーピングした重合体状材料中の酸化防止剤の均質性または一様性を増加させる方法を提供する。
【0034】
本発明の別の態様においては、ドーピングした重合体状材料を、前記ドーピングした重合体状材料の融点より上で、超臨界流体、例えばCO中でアニーリングすることにより、酸化防止剤の浸透性およびドーピングした重合体状材料中の酸化防止剤の均質性または一様性を増加させる方法を提供する。
【0035】
本発明の別の態様においては、耐酸化性の、高結晶性の架橋重合体状材料を、高圧結晶化により製造する方法であって、a)重合体状材料を、その溶融状態より高い温度に加熱すること、b) 前記高結晶性の架橋重合体状材料を、少なくとも約10〜1000 MPa下で加圧すること、c)この圧力を保持すること、d) 前記加熱された重合体状材料を、常圧における前記重合体の融点より低い温度または略室温に冷却すること、e) 前記圧力を大気圧レベルに解放すること、f) 前記重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を形成すること、g) 前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料に、その溶融状態より低い温度で、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を形成すること、およびh) 前記酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【0036】
本発明の別の態様においては、耐酸化性の、高結晶性の架橋重合体状材料を、高圧結晶化により製造する方法であって、a)重合体状材料を、少なくとも10〜1000 MPa強の下で加圧すること、b) 前記加圧された重合体状材料を、前記加圧された重合体状材料の溶融状態より低い温度に加熱すること、c)この圧力および温度を保持すること、d) 前記加熱された重合体状材料を、常圧における前記重合体の融点より低い温度または略室温に冷却すること、e) 前記圧力を大気圧レベルに解放すること、f) 前記高結晶性の重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の重合体状材料を形成すること、g) 前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料に、その溶融状態より低い温度で、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を形成すること、およびh) 前記酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成する、ことを含んでなる、方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0037】
本発明は、永久的および非永久的装置を包含する、医療用装置を含んでなる耐酸化性医療用充填材を製造する方法、および均質化した架橋重合体状材料(例えば、均質化した架橋ポリエチレン)を含んでなる包装物を提供する。本発明は、固化したポリエチレン(例えばUHMWPE)に、固化したポリエチレンを架橋させる前、最中、または後に、酸化防止剤をドーピングし、続いて前記酸化防止剤をドーピングしたポリエチレンを超臨界流体中でアニーリングする方法に関する。
【0038】
本発明は、ドーピング後のアニーリングで超臨界二酸化炭素(SC−CO)を使用し、重合体状材料を均質化させる方法を提供する。本発明により、ドーピング後のSC−CO中におけるアニーリングが、重合体状材料を膨潤させる能力のために、不活性ガスと比較して、α−トコフェロール浸透性を強化し、α−トコフェロール拡散の速度を加速する。
【0039】
重合体状材料の、ドーピング後のSC−CO中におけるアニーリングは、2004年1月15日提出のMuratogluらの米国特許出願第10/757,551号(詳細には、結晶性の高い重合体状材料の製造方法。この文献は引用されることにより本願発明の開示の一部とされる。)に開示されているように、高結晶性の重合体状材料にも適用できる。
【0040】
本発明の一態様において、固化したポリエチレンのドーピングは、酸化防止剤、例えばビタミンEのようなα−トコフェロールの拡散により行うことができる。本発明の一態様において、酸化防止剤の拡散は、温度および/または圧力を増加することにより、または超臨界流体(例えばCO)を使用し、続いて超臨界流体中でアニーリングすることにより、促進される。
【0041】
本発明の別の態様においては、純粋な形態、例えば純粋なビタミンEとして、または溶剤中に溶解させた形態を包含する種々の形態で酸化防止剤を送達する。
【0042】
本発明の別の態様においては、酸化防止剤溶液、例えばビタミンE溶液の濃度を増加することにより、ポリエチレン中への酸化防止剤の拡散速度を増加する。
【0043】
本発明の別の態様においては、固化したポリエチレンを、超臨界流体、例えば超臨界CO、すなわち温度が超臨界温度31.3℃より高く、圧力が超臨界圧力73.8バールより高い流体中で膨潤させることにより、ポリエチレン中への酸化防止剤の拡散速度を増加する。
【0044】
ビタミンEの溶解度は、超臨界二酸化炭素中で、第三の成分、例えばアルコールまたは界面活性剤(例えばTween 80)を添加することにより、変えることができる。本発明の一態様において、第三の成分は、加熱および加圧の際に可溶化させるチャンバー中に加えるか、または超臨界流体(または複数の流体)と共に、もしくは別に、アニーリング環境中にポンプ供給する。
【0045】
アニーリングする際の超臨界相への加熱および加圧は、幾つかの方法で行うことができる。本発明の一実施態様においては、試料を所望の温度に加熱し、次いで試料を超臨界流体または超臨界流体の混合物中で加圧する。あるいは、液体二酸化炭素を加圧環境中に装填し、続いて、試料を所望の温度に加熱し、同時に、環境の圧力を上昇させる。加熱および冷却は、約0.01℃〜約500℃/分、好ましくは約0.1℃〜10℃/分、より好ましくは約1℃/分の速度で行う。加圧は、約0.01 psi/分〜約20000 psi/分、好ましくは約1psi/分〜50 psi/分、より好ましくは約10 psi/分で行う。除圧は、約0.01 psi/分〜約20000 psi/分、好ましくは約1psi/分〜50 psi/分、より好ましくは約50 psi/分で行う。
【0046】
別の実施態様においては、アニーリング工程中に、試料を超臨界相中に、ある温度および圧力で維持し、次いで別の温度および/または圧力に維持する。
【0047】
一般的に、酸化防止剤として例えばビタミンEの場合、樹脂粉末、フレーク、粒子、またはそれらの混合物をビタミンEと混合し、その後で固化させることにより、重合体状材料の色が黄色に変化する。本発明により、固化に続いてドーピングすることにより、ビタミンEが固化の高温および高圧にさらされず、重合体状材料の変色が防止される。本発明により、酸化防止剤に対する熱的影響も小さくなる。熱的影響は、酸化防止剤の、重合体状材料を酸化から保護する効力を下げる場合がある。
【0048】
固化した状態でドーピングすることにより、固化した重合体状材料中に酸化防止剤の勾配を作ることができる。医療用装置中の重合体状材料の酸化が摩耗の観点で問題となる表面層の特定の厚さをドーピングすることができる。これは、完成した装置、例えば完成した医療用充填材を、純粋なビタミンEまたはビタミンEの溶液中に、特定の温度で特定時間、浸漬するか、または浸すことにより、達成できる。
【0049】
本明細書に記載する方法により、酸化防止剤、例えばビタミンEを重合体状材料の中に、照射の前、最中、または後にドーピングすることができる(例えば図2および3参照)。これらの方法は、超臨界流体中におけるアニーリング工程をさらに含んでなる。例えば、酸化防止剤をドーピングした、架橋した、または架橋していない重合体状材料の溶融状態より低い温度で、超臨界流体、例えば超臨界CO、中で行う。
【0050】
ドーピングした酸化防止剤が、医療用充填材または医療用装置の製造に使用した重合体状材料から、使用前の貯蔵中または生体内使用中に浸出することがある。永久的医療用装置には、生体内の持続時間は、患者の余命までになることがあり、これは装置の移植から患者の死亡までの長さ、例えば1〜120年である。酸化防止剤の浸出が問題になる場合、医療用充填材または医療用装置の照射もしくはそれらのいずれかの部分の照射は、酸化防止剤をドーピングした後に行うことができる。これによって、酸化防止剤を宿主重合体に共有結合により確実に架橋させ、医療用充填材または装置からの酸化防止剤の損失を最小に抑えることができる。
【0051】
本発明の別の態様においては、重合体状材料、例えば樹脂粉末、フレーク、粒子、またはそれらの混合物を、酸化防止剤と混合し、次いでその混合物を固化させる。固化した、酸化防止剤とブレンドした、酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を、機械加工し、医療用充填材中の部品として、または医療用装置として使用することができる。
【0052】
本発明の別の態様においては、出発材料は、添加剤と重合体状材料とのブレンドでよい。添加剤は、一種類の酸化防止剤および/またはその誘導体、および/または複数の酸化防止剤および/またはそれらの誘導体のブレンドでよく、そのような酸化防止剤の一種はビタミンEである。
【0053】
本発明の別の態様により、固化した重合体状材料、例えば固化した樹脂粉末、成形シート、ブロー成形フィルム、チューブ、バルーン、フレーク、粒子、またはそれらの混合物を、添加剤、例えば酸化防止剤、例えばα−トコフェロールの形態にあるビタミンEで、拡散によりドーピングすることができる。固化した重合体状材料、例えば固化したUHMWPE、を、例えば100%ビタミンEまたはα−トコフェロールをアルコール、例えばエタノールまたはイソプロパノール、に入れた溶液中に浸漬することができる。α−トコフェロールの約50重量%エタノール溶液を使用し、超臨界流体、例えばCO2、と接触させたUHMWPE中に拡散させることができる。バルーン、例えばPeBAX(登録商標)、ナイロン、およびPETバルーン、は、ビタミンEでドーピングし、ドーピングの前、最中、または後に照射することができる。
【0054】
本発明は、高度に架橋したポリエチレンから製造され、金属片を含む医療用装置、例えば二極人工股関節、補強金属およびポリエチレンポストを備えた頸骨膝挿入物、椎間板系、およびガス滅菌法により容易に滅菌できない表面を含むすべての充填材を製造するための下記の処理工程にも関する。
【0055】
本発明の一態様により、医療用充填材のポリエチレン成分が別の材料、例えば金属製メッシュまたはバック、非金属製メッシュまたはバック、頸骨トレー、膝蓋骨トレー、または寛骨臼シェル、と緊密に接触し、その際、ポリエチレン、例えば樹脂粉末、フレークおよび粒子をこれらの対向面に直接圧縮成形する。例えば、ポリエチレン樹脂粉末を頸骨トレーに、金属製メッシュまたはバックに、もしくは非金属製メッシュまたはバックに圧縮成形することにより、ポリエチレン頸骨挿入物を製造する。後者の場合、メッシュは、成長骨(bony in-growth)を通して、または接着剤、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)骨セメントの使用により、骨との固定界面として役立つように成形する。これらの形状は、寛骨臼ライナー、全またはユニコンパートメント膝充填材用の頸骨トレー、膝蓋骨トレー、および関節窩成分、踝、肘、または指成分を包含する様々な形態を有する。本発明の別の態様は、成形されたポリエチレンと、充填材の一部を形成する他の断片、例えば金属または非金属片、との機械的な噛み合わせに関する。
【0056】
界面の幾何学的構造は、ポリエチレンがその固化した形状で、その幾何学的構造を取るので、極めて重要である。ポリエチレンは、高密度の物理的絡み合いを生じる非常に高い分子量を有するために、「形状記憶」の顕著な特性を有する。固化に続いて、塑性変形が、融解した時に好ましい高エントロピー形状を達成する永久的形状変化を導入する。この、本来の固化した形状の回復は、ポリエチレンを固化させた時に達成される「形状記憶」によるものである。
【0057】
残留フリーラジカルをクエンチするためにアニーリングを実施した時の重合体状材料の回復も、高度の配向を有する医療用装置では問題である。バルーンカテーテルは、重合体鎖の意図する軸方向および半径方向の整列を有することができる場合が多い。ポリエチレン製のバルーンカテーテルは、架橋により耐摩耗性が改良されているために、ステントと共に使用した時に有利である。さらに、薬物被覆されたカテーテルおよびステントの使用は、場合によりエチレンオキシド滅菌を妨害し、従って、イオン化放射線を使用する必要があり、バルーンカテーテルを、フリーラジカルにより誘発される酸化の有害な影響から保護しなければならない。これらの材料をメルト転移温度近くにアニーリングすると、材料全体の鎖運動が起こり、部品の寸法公差が失われることがある。架橋または滅菌のためにイオン化放射線に露出する前、最中、または後に、100%ビタミンEまたはα−トコフェロールのアルコール、例えばエタノールまたはイソプロパノール、溶液を、医療用装置(例えばバルーンカテーテル)中に拡散させることにより、照射後の酸化に関連する問題を、熱処理を行わずに回避することができる。本明細書に記載するように、バルーン、例えばPeBAX(登録商標)、ナイロン、およびPETバルーン、を、ビタミンEでドーピングし、ドーピングの前、最中、または後に照射することができる。
【0058】
本発明の別の態様においては、ポリエチレンを機械的連結を含む対向面に圧縮成形した後、イオン化放射線を使用してハイブリッド成分を所望の線量レベルに、例えば約25 kGy〜約1000 kGy、好ましくは約25 kGy〜約150 kGy、より好ましくは約50 kGy〜約100 kGyに照射する。本発明の別の態様においては、照射工程が残留フリーラジカルを発生させるので、その後に融解工程を導入し、残留フリーラジカルを消滅させる方法を開示する。ポリエチレンを界面の形状に固化させ、それによって、重合体の「形状記憶」を設定するので、ポリエチレンは対向面から分離しない。
【0059】
本発明の別の態様においては、ポリエチレンを架橋させて、ポリエチレンを基材とする医療用装置を形成する方法であって、前記装置を非酸化性媒体、例えば不活性ガスまたは不活性流体中に浸漬し、前記媒体を、照射されたポリエチレン(例えばUHMWPE)の融点より低い(約137℃より低い)温度に加熱し、架橋の際にある程度の結晶性物質を除去する、方法を提供する。
【0060】
本発明の別の態様においては、ポリエチレンを架橋させ、ポリエチレンを基材とする医療用装置を形成する方法であって、前記装置を非酸化性媒体、例えば不活性ガスまたは不活性流体中に浸漬し、前記媒体を、照射されたポリエチレン(例えばUHMWPE)の融点より高い(約137℃より高い)温度に加熱して結晶性物質を除去し、残留フリーラジカルを再結合/排除させる、方法を提供する。圧縮成形された重合体の形状記憶が機械的連結部の界面で設定され、その記憶が架橋工程により強化されるので、ポリエチレンと対向面との間の界面に重大な分離は起こらない。
【0061】
本発明の別の態様においては、上記のフリーラジカル除去工程に続いて、照射の際に使用される高い照射線量レベルのために、金属と重合体との間の界面が無菌になる。ポリエチレンの外側表面上に、フリーラジカル除去または照射工程の際に誘発されたかなりの酸化物がある場合、装置表面をさらに機械加工し、酸化された表面層を除去することができる。本発明の別の態様においては、充填材の融解後に機械加工する場合、融解工程を不活性ガスの存在下で行うことができる。
【0062】
本発明の別の態様においては、製造された装置の滅菌方法であって、界面は無菌であるが、残りの部品が無菌ではない場合、前記装置をエチレンオキシド、ガスプラズマ、または他のガスでさらに滅菌する、方法を包含する。
【0063】
別の態様において、本発明は、圧縮成形された充填材または装置を包含する、照射された、酸化防止剤をドーピングされた医療用充填材または装置の包装方法であって、充填材または装置をイオン化放射線またはガス滅菌により滅菌し、無菌の架橋医療用充填材または医療用装置を得ることができる、方法を開示する。
【0064】
定義
「添加剤」とは、この分野で公知の、重合体状材料以外の別の成分を意味する。「添加剤」は、例えば核形成剤、酸化防止剤、リピド、低分子量ポリエチレンでよい。
【0065】
「酸化防止剤」とは、この分野で公知の、アルファ−およびデルタ−トコフェロール、プロピル、オクチル、またはドデシルガレート、乳酸、クエン酸、および酒石酸およびそれらの塩、オルトホスフェート、トコフェロールアセテート、好ましくはビタミンE、を意味する(例えば、国際公開第WO/80778号、米国特許第6,448,315号参照)。
【0066】
「超臨界流体」とは、この分野で公知の、例えば超臨界プロパン、アセチレン、二酸化炭素(CO)を意味する。これに関して、臨界温度とは、その温度を超えると、圧力だけではガスが液化できない温度である。臨界温度において、ある圧力未満で、ある物質がその液体と平衡状態にあるガスとして存在し得る場合、その圧力が臨界圧である。超臨界流体状態は、一般的に流体が、超臨界流体およびそれによって、超臨界流体混合物が得られるような温度および圧力にさらされることを意味し、その温度は超臨界温度を超え、超臨界温度は、COでは31.3℃であり、その圧力は超臨界圧を超え、超臨界圧は、COでは73.8バールである。より詳しくは、超臨界条件とは、例えばUHMWPEと酸化防止剤の混合物の、高い温度および圧力で、超臨界流体混合物が形成され、次いで、その混合物からCOが蒸発し、酸化防止剤をドーピングされたUHMWPEが得られる条件である(例えば、米国特許第6448315号および国際特許出願第WO02/26464号号参照)。
【0067】
用語「溶解剤」とは、添加剤(例えばビタミンE)の、超臨界流体または超臨界流体の混合物中における溶解度を増加することができる化合物を意味する。
【0068】
本明細書で使用する用語「圧縮成形」とは、一般的にはこの分野で公知の内容に関し、特に重合体状材料を高温成形することに関連し、重合体状材料が、粉末形態を包含するすべての物理的状態にあり、スラブ形態、または医療用充填材、例えば頸骨挿入物、寛骨臼ライナー、関節窩ライナー、膝蓋骨、またはユニコンパートメント挿入物、の型の中に圧縮され、機械加工することができる。
【0069】
本明細書で使用する用語「直接圧縮成形」とは、一般的にはこの分野で公知の内容に関し、特にポリエチレンを基材とする装置、例えば医療用充填材、に適用できる成形に関連し、そこでは粉末形態を包含するすべての物理的状態にあるポリエチレンが、非中空の支持体、例えば金属製バック、金属製メッシュ、または溝、刻み目または切り取り部を含む金属表面に圧縮される。圧縮成形は、ポリエチレンを、樹脂粉末、フレークおよび粒子を包含する様々な状態で高温圧縮成形し、医療用充填材、例えば頸骨挿入物、寛骨臼ライナー、関節窩ライナー、膝蓋骨、またはユニコンパートメント挿入物、を形成することも包含する。
【0070】
用語「機械的連結(interlocked)」とは、一般的にはポリエチレンと対向面との連結を意味し、これは、圧縮成形、熱および照射、を包含する種々の方法で行われ、それによって、連結した界面を形成し、連結ポリエチレンを「形状記憶」させる。そのような連結界面を有する装置の成分は、「ハイブリッド材料」と呼ぶことができる。そのようなハイブリッド材料を有する医療用充填材は、実質的に無菌の界面を含む。
【0071】
用語「実質的に無菌」とは、物体、例えば界面またはハイブリッド材料または界面を含む医療用充填材の、その界面が、医療用に受け入れるのに十分に無菌である、すなわち感染を引き起こさないか、または修正手術を必要としない、状態を意味する。
【0072】
「金属製メッシュ」とは、様々な細孔径、例えば0.1〜3 mm、の多孔質金属表面を意味する。多孔質表面は、幾つかの異なった方法により得られ、例えば金属粉末を結合剤と共に焼結させ、この結合剤を続いて除去し、後に多孔質表面を残すか、直径0.1〜3 mmの短い金属繊維を焼結させるか、または異なったサイズの金属製メッシュを重ね合わせ、連続開気孔構造を得る。
【0073】
「骨セメント」とは、この分野で公知の、医療用装置を骨に結合させるのに使用する接着剤を意味する。典型的には、骨セメントは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)から製造される。
【0074】
「高温圧縮成形」とは、あらゆる形態、例えば樹脂粉末、フレークまたは粒子、にあるポリエチレンを、圧力および温度をかけて圧縮成形し、新しい幾何学的構造を与えることを意味する。高温(ポリエチレンの融点より高い)圧縮成形の際、ポリエチレンをその融点より高い温度に加熱し、所望の形状を有する型の中に押し込み、加圧下で冷却させ、所望の形状を維持する。
【0075】
「形状記憶」とは、この分野で公知のように、ポリエチレン(例えばUHMWPE)の、融解した時に好ましい高エントロピー形状を取る特性を意味する。好ましい高エントロピー形状は、樹脂粉末を、圧縮成形を通して固化させた時に達成される。
【0076】
「検出可能な残留フリーラジカルが実質的に無い」の句は、ポリエチレン成分の、十分にフリーラジカルが排除され、酸化性劣化を避けた状態を意味し、これは電子スピン共鳴(ESR)により評価できる。「検出可能な残留フリーラジカル」の句は、ESR以上により検出可能なフリーラジカルの最も低いレベルを意味する。現状技術水準の計器で検出可能なフリーラジカルの最も低いレベルは、約1014スピン/グラムであり、従って、用語「検出可能な」とは、ESRによる1014スピン/グラムの検出限界を意味する。
【0077】
数値および範囲における用語「約」または「およそ」は、本発明を意図した通りに実行できるように、例えば本明細書に含まれる開示から当業者には明らかなように、所望の程度の架橋を有する、および/またはフリーラジカルが所望の程度に少なくなるように、記載する値または範囲に近似するか、または近い値または範囲を意味する。これは、少なくとも部分的に、重合体組成物の特性が様々であることに起因する。従って、これらの用語は、系統的な誤差から生じる値を超える値を包含する。
【0078】
重合体状材料 超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)とは、分子量が約500,000を超える、好ましくは約1,000,000を超える、より好ましくは約2,000,000を超える、直鎖状の、分岐していないエチレン鎖を意味する。分子量は、約8,000,000以上にも達する場合が多い。初期平均分子量とは、あらゆる照射前の、UHMWPE出発材料の平均分子量を意味する。米国特許第5,879,400号、1999年7月16日提出のPCT/US99/16070号、および1997年2月11日提出のPCT/US97/02220号を参照。
【0079】
本発明の製品および方法は、様々な種類の重合体状材料、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはそれらの混合物を包含するすべてのポリオレフィン、にも適用される。重合体状材料は、本明細書で使用するように、様々な形態のポリエチレン、例えば樹脂粉末、フレーク、粒子、粉末、またはそれらの混合物、もしくは上記のいずれかに由来する固化した形態、にも適用される。
【0080】
架橋性ポリエチレン重合体状材料 重合体状材料(例えばUHMWPE)は、架橋薬品(例えば過酸化物および/またはシラン)および/または照射を使用する方法を包含する、様々な手法により架橋させることができる。架橋させるための好ましい手法は、照射を使用する。架橋したUHMWPEは、米国特許第5,879,400号、米国特許第6,641,617号、およびPCT/US97/02220/号によっても得ることができる。
【0081】
固化した重合体状材料 固化した重合体状材料とは、固体の、固化した棒状原料、原料から機械加工した固体材料、または本明細書に記載する、固化させることができるすべての形態、例えば樹脂粉末、フレーク、粒子、またはそれらの混合物、に由来する重合体状材料半固体形態を意味する。固化した重合体状材料は、スラブ、ブロック、固体の棒状原料、機械加工した部品、フィルム、チューブ、バルーン、プリフォーム、充填材、または完成した医療用装置の形態でもよい。
【0082】
用語「非永久的装置」とは、この分野で公知の、数ヶ月より短い期間体内に移植するための装置を意味する。非永久的装置の中には、体内に数秒間〜数分間存在するものもあれば数日、数週間、または数ヶ月まで移植ができるものもある。非永久的装置としては、例えばカテーテル、チューブ、静脈内チューブ、および縫合がある。
【0083】
「薬学的化合物」とは、本明細書で使用するように、粉末、懸濁液、エマルション、粒子、フィルム、ケーキ、または成形された形態にある薬物を意味する。薬物は、独立していても、医療用装置の成分として取り入れることもできる。
【0084】
用語「圧力チャンバー」とは、内部圧力を大気圧より高いレベルに上昇させることができる容器またはチャンバーを意味する。
【0085】
用語「包装物」とは、医療用装置を中に入れて包装および/または輸送する容器を意味する。包装物としては、バッグ、PTP包装、熱収縮包装物、箱、アンプル、ビン、チューブ、トレー、等またはそれらの組合せを挙げることができる。単一の成分を幾つかの個別の種類の包装物で輸送することができ、例えば成分をバッグに入れ、それをトレーに載せ、それを箱に入れることができる。その組立構造全体を滅菌し、輸送することができる。包装物材料としては、植物性羊皮紙、多層ポリエチレン、ナイロン6、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびエチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体があるが、これらに限定するものではない。
【0086】
用語「密封」とは、チャンバーまたは包装物中の開口部を閉鎖することにより、チャンバーまたは包装物を外部環境から隔離する工程を意味する。密封は、熱の作用(例えば熱的密封)、接着剤の使用、折り曲げ、冷間成形、ステープル留め、または圧力作用を包含する様々な手段により、達成することができる。
【0087】
用語「PTP包装」とは、堅牢なプラスチックボウルおよび包装された内容物を取り出すために剥がすか、または破る蓋等を含んでなる包装物を意味する。蓋は、アルミニウム、またはガス透過性メンブラン、例えばTyvekから製造される場合が多い。PTP包装は、ブロー成形、つまりプラスチックをその変形温度より高い温度に加熱し、その時点で加圧ガスがプラスチックを必要な形状に変形させる製法により、製造されることが多い。
【0088】
用語「熱収縮性包装物」とは、内部に高度の配向を有するプラスチックフィルム、バッグ、またはチューブを意味する。熱を作用させることにより、配向した鎖が後退するにつれて包装物が収縮し、医療用装置の周囲を緊密に包み込むことが多い。
【0089】
用語「椎間板系」とは、脊柱の中で脊椎を分離する人造円盤を意味する。この系は、一種類の材料から構成されていても、複合材料構造、例えば金属縁部を含む架橋されたUHMWPEでもよい。
【0090】
用語「バルーンカテーテル」とは、この分野で公知の、血管または類似物の内側空間を拡張するのに使用される装置を意味する。バルーンカテーテルは、通常、膨脹可能な先端を有する薄壁重合体装置であり、閉塞した動脈、ステント、を広げることができるか、または血圧測定に使用できる。一般的に使用される重合体バルーンとしては、例えばポリエーテル−ブロック コ−ポリアミド重合体(PeBAX(登録商標))、ナイロン、およびポリエチレンテレフタレート(PET)バルーンがある。バルーンおよびカテーテルに一般的に使用される重合体材料としては、例えばポリエーテルとポリアミドの共重合体(例えばPeBAX(登録商標))、ポリアミド、ポリエステル(例えばPET)、およびカテーテル製造に使用されるエチレンビニルアルコール(EVA)がある。
【0091】
医療用装置チューブ 静脈内チューブを包含する医療用装置チューブに使用される材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびブレンドまたはアロイ、例えば熱可塑性エラストマー、ポリアミド/イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、または各種のフルオロポリマーがある。
【0092】
用語「ステント」とは、この分野で公知の、体内管、例えば血管、を開いた状態に保持するのに使用される、金属製または重合体製の籠状の装置である。ステントは、通常、体内に潰れた状態で導入され、体内の所望の位置でバルーンカテーテルにより拡張され、そこにとどまる。
【0093】
「メルト転移温度」とは、材料中のすべての結晶性領域が消失する、最低温度を意味する。
【0094】
界面
本発明における用語「界面」とは、充填材が、ある成分が別の断片(例えば金属または非金属成分)と接触する配置にある時に形成される、医療用装置中のニッシェとして定義され、これが重合体と金属または別の重合体状材料との間の界面を形成する。例えば、重合体−重合体または重合体−金属の界面は、医療用補欠物、例えば整形外科学的関節および骨置換部品、例えば股、膝、肘または踝置換物、中にある。
【0095】
工場で組み立てられた部品を含み、ポリエチレンと密に接触する医療用充填材は、界面を形成する。ほとんどの場合、界面は、ガス滅菌工程の際にエチレンオキシドガスまたはガスプラズマが容易に到達できない。
【0096】
照射
本発明の一態様においては、好ましくはイオン化する種類の放射線を使用する。本発明の別の態様により、使用するイオン化放射線の線量は約25 kGy〜約1000 kGyである。放射線量は、約25 kGy、約50 kGy、約65 kGy、約75 kGy、約100 kGy、約150 kGy、約200 kGy、約300 kGy、約400 kGy、約500 kGy、約600 kGy、約700 kGy、約800 kGy、約900 kGy、あるいは約1000 kGy、または約1000 kGyを超える、もしくはそれらの近傍またはその間のすべての整数もしくは分数でよい。好ましくは、放射線量は、約25 kGy〜約150 kGyまたは約50 kGy〜約100 kGyでよい。X線、ガンマ線、および/または電子線を包含するこれらの種類の放射線が、細菌、ウイルス、または他の、界面を含む医療用充填材を汚染する可能性がある微生物剤を殺すか、または不活性化させ、製品の無菌性を達成する。本発明により電子線またはガンマ線でよい照射は、酸素を含む空気雰囲気中で行うことができ、その際、雰囲気中の酸素濃度は少なくとも1%、2%、4%、または約22%まで、もしくはそれらの近くまたは間のすべての整数である。別の態様においては、照射を不活性雰囲気中で行うことができ、その際、雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、等、またはそれらの組合せからなる群から選択されたガスを含む。照射は、真空中で行うこともできる。
【0097】
本発明の好ましい態様において、照射は、増感性雰囲気中で行うことができる。この雰囲気は、重合体中に拡散するのに十分に小さい分子サイズを有し、照射により、多官能性グラフト化部分として作用する気体状物質を含んでなることができる。例としては、置換または未置換のポリ不飽和炭化水素、例えばアセチレン系炭化水素(例えばアセチレン)、共役または非共役オレフィン系炭化水素(例えばブタジエンおよび(メタ)アクリレートモノマー)、一塩化硫黄があり、クロロ−トリ−フルオロエチレン(CTFE)またはアセチレンが特に好ましい。「気体状」とは、本明細書では、増感性雰囲気が、照射温度で、その臨界温度より上または下で、気相にあることを意味する。
【0098】
金属断片
本発明では、重合体状材料と界面を形成する断片は、例えば金属である。本発明により、ポリエチレンと機能的な関係にある金属断片は、例えばコバルトクロム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金またはニッケルコバルト合金から製造することができる。
【0099】
非金属断片 本発明では、重合体状材料と界面を形成する断片は、例えば非金属である。本発明により、ポリエチレンと機能的な関係にある非金属断片は、例えばセラミック材料から製造することができる。
【0100】
不活性雰囲気 用語「不活性雰囲気」とは、酸素含有量が1%以下である環境、より好ましくは滅菌処理の際に、酸素無しで、重合体状材料中のフリーラジカルに架橋を形成させる酸化体が存在しない条件、を意味する。不活性雰囲気は、重合体状材料(例えばUHMWPE)を含んでなる医療用装置を酸化する恐れがあるOを避けるために使用する。不活性雰囲気条件、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、またはネオン、は、イオン化放射線により重合体状医療用充填材を滅菌処理するのに使用される。
【0101】
不活性雰囲気条件、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、または真空は、イオン化放射線により医療用充填材中の重合体−金属および/または重合体−重合体の界面を滅菌処理することにも使用される。
【0102】
不活性雰囲気条件は、不活性ガス、不活性流体、または不活性液体媒体、例えば窒素ガスまたはシリコーン油、も意味する。
【0103】
無酸素環境 「無酸素環境」とは、酸素含有量が21%〜22%未満、好ましくは酸素含有量が2%未満の、ガス、例えば窒素を含む環境を意味する。無酸素環境中の酸素濃度は、少なくとも1%、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、または約22%まで、あるいはその近傍またはその間のすべての整数もしくは分数でもよい。
【0104】
真空
用語「真空」とは、滅菌処理の際に重合体状材料中のフリーラジカルに、酸化なしに架橋を形成ができる、感知できる量のガスを含まない環境を意味する。真空は、重合体状材料、例えばUHMWPE、を含んでなる医療用装置を酸化する恐れがあるOを避けるために使用する。真空条件は、イオン化放射線により重合体状医療用充填材を滅菌処理するのに使用することができる。
【0105】
真空条件は、市販の真空ポンプを使用して造り出すことができる。真空条件は、イオン化放射線により医療用充填材中の重合体−金属および/または重合体−重合体の界面を滅菌処理する時にも使用される。
【0106】
残留フリーラジカル
「残留フリーラジカル」は、重合体をイオン化放射線、例えばガンマ線またはe線照射、に露出した時に発生するフリーラジカルを意味する。フリーラジカルの中には、互いに再結合して架橋を形成するものもあれば、結晶性領域中に捕獲されるものもある。捕獲されたフリーラジカルは、残留フリーラジカルとも呼ばれる。
【0107】
本発明の一態様においては、重合体中の、イオン化放射線(例えばガンマ線または電子線)照射の際に発生した残留フリーラジカルのレベルは、電子スピン共鳴を使用して測定し、適切に処理し、フリーラジカルを減少させる。
【0108】
滅菌
本発明の一態様においては、重合体状材料(例えば架橋UHMWPE)を含む医療用充填材の滅菌方法を開示する。本方法は、ガンマ線または電子線放射で、例えば線量レベル約25〜70kGy、でイオン化滅菌することにより、あるいはエチレンオキシドまたはガスプラズマでガス滅菌することにより、医療用充填材を滅菌することを含んでなる。
【0109】
本発明の別の態様においては、重合体状材料(例えば架橋UHMWPE)を含む医療用充填材の滅菌方法を開示する。本方法は、ガンマ線または電子線放射で、例えば線量レベル約25〜200kGy、でイオン化滅菌することにより、医療用充填材を滅菌することを含んでなる。この滅菌の線量レベルは、照射に使用する標準的なレベルよりも高い。これは、滅菌の際に医療用充填材を架橋させるか、またはさらに架橋させるためである。
【0110】
別の態様において、本発明は、別の部品への圧縮成形により固化した重合体状材料を含む、別の部品と接触している重合体状材料(例えば架橋されたUHMWPE)を含み、それによって、界面および連結ハイブリッド材料を形成する医療用充填材の滅菌方法であって、界面をイオン化放射線により滅菌すること、媒体を照射されたUHMWPEの融点より高い温度(約137℃を超える)に加熱し、結晶性物質を除去し、残留フリーラジカルを再結合/排除すること、および医療用充填材をガス、例えばエチレンオキシドまたはガスプラズマで滅菌することを含んでなる、方法を開示する。
【0111】
加熱
本発明の一態様において、製造の際に医療用充填材の重合体状成分における、ドーピングに続く酸化防止剤の一様性を、重合体状材料の融解温度に応じた時間加熱することにより、高める方法を開示する。例えば、好ましい温度は約137℃以下である。本発明の別の態様においては、空気中、酸素濃度が少なくとも1%、2%、4%、または約22%まで、あるいはその近傍またはその間のすべての整数である、酸素を含む雰囲気中で行うことができる加熱工程を開示する。別の態様で、本発明は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等、またはそれらの組合せからなる群から選択されたガスを含む不活性雰囲気と充填材が接触している間に行うことができる加熱工程を開示する。別の態様において、本発明は、含まれる酸素が1%以下である非酸化性媒体、例えば不活性流体媒体と充填材とが接触している間に行うことができる加熱工程を開示する。別の態様において、本発明は、充填材が真空中にある間に行うことができる加熱工程を開示する。
【0112】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤の一様性を減少増加するための充填材の加熱方法を記載する。重合体状原料(例えばUHMWPE)を含んでなる医療用装置を、一般的に、酸化防止剤をドーピングした後に約137℃以下の温度に加熱する。この医療用装置を、酸化防止剤の所望の一様性に達するまで、不活性媒体中で加熱する。
【0113】
用語「融点未満」または「溶融状態より低い温度」とは、ポリエチレン(例えばUHMWPE)の融点より低い温度を意味する。用語「融点未満」または「溶融状態より低い」とは、145℃未満の温度であり、これはポリエチレンの融解温度によって異なり、例えば145℃、140℃または135℃であり、処理しているポリエチレンの特性、例えば分子量の平均および範囲、バッチ変動、等によっても異なる。融解温度は、典型的には示差走査熱量測定(DSC)を使用し、毎分10℃の加熱速度で測定する。こうして測定されるピーク融解温度を融点と呼び、ある等級のUHMWPEでは約137℃になる。融解温度を測定し、照射およびアニーリング温度を決定するために、出発ポリエチレン材料に対して融解試験を行うのが好ましい場合がある。
【0114】
用語「アニーリング」とは、重合体をそのピーク融点より低い温度に加熱することを意味する。アニーリング時間は、少なくとも1分間〜数週間まで長くてよい。一態様においては、アニーリング時間は約4時間〜約48時間、好ましくは24〜48時間、より好ましくは約24時間である。「アニーリング温度」とは、本発明によるアニーリングのための熱的条件を指す。
【0115】
用語「アニーリング」とは、架橋した、および架橋していない、固化した、または固化していない、固体ブロックのまたは機械加工されたプリフォーム、もしくは完成した重合体状材料、医療用充填材または加工された製品、を包含する、添加剤をドーピングした、(例えば酸化防止剤をドーピングした)重合体状材料の、その溶融状態より低い温度での、超臨界流体(例えばCO)におけるアニーリングも意味する。アニーリングは、超臨界流体中で、溶融状態より低い温度で、好ましくは200 psiより高い、より好ましくは約1100 psiを超える加圧下で行うことができる。
【0116】
用語「接触した」とは、増感剤がその意図する機能を果たせるような、物理的な近傍または接触を包含する。好ましくは、ポリエチレン組成物またはプリフォームを、増感剤中に浸漬されるように、十分に接触させ、これによって十分な接触を確保する。浸漬は、試料を特殊な環境中に十分な時間、適切な温度で、配置することとして定義され、例えば試料を酸化防止剤溶液中に浸漬する。この環境を、室温〜材料の融点より低い温度に加熱する。接触時間は、少なくとも約1分間〜数週間であり、この持続時間は、環境の温度によって異なる。
【0117】
用語「非酸化性」とは、重合体状材料を空気中、80℃の加熱炉で5週間エージングさせた後の酸化指数(A.U.)が約0.5未満である重合体状材料の状態を意味する。例えば、非酸化性の架橋された重合体状材料は、一般的に、エージング期間の後、約0.5未満の酸化指数(A.U.)を示す。
【0118】
ドーピング
ドーピングとは、この分野で良く知られている工程である(例えば米国特許第6,448,315号および第5,827,904号参照)。これに関して、ドーピングは、一般的に、本明細書で記載するように、重合体状材料を酸化防止剤と特定の条件下で接触させることを意味し、例えばUHMWPEを、超臨界条件下で添加剤(例えば酸化防止剤)をドーピングする。
【0119】
より詳しくは、固化した重合体状材料は、材料を添加剤の溶液中に浸漬することにより、添加剤でドーピングすることができる。これによって、添加剤を重合体中に拡散させることができる。例えば、材料を100%添加剤、例えば100%酸化防止剤中に浸漬することができる。また、材料を添加剤溶液中に浸漬することもでき、その際、キャリヤー溶剤を使用して添加剤濃度を希釈することができる。添加剤の拡散深度を増加するために、材料を、より長い時間、より高い温度で、より高い圧力で、および/または超臨界流体の存在下で、ドーピングすることができる。
【0120】
ドーピング工程では、重合体状材料、医療用充填材または装置を、添加剤(例えば酸化防止剤、例えばビタミンE)中に、約1時間〜数日間、好ましくは約1時間〜24時間、より好ましくは1時間〜16時間浸漬することができる。酸化防止剤を室温から約160℃まで加熱することができ、ドーピングを室温から約160℃までで行うことができる。好ましくは、酸化防止剤を100℃に加熱し、ドーピングを100℃で行うことができる。
【0121】
ドーピング工程に続いて、空気中または無酸素環境での加熱工程を行い、重合体状材料、医療用充填材または装置中の添加剤(例えば酸化防止剤)の一様性を改良することができる。加熱は、ピーク融点より高温もしくは低温、またはピーク融点で、行うことができる。
【0122】
本発明の一実施態様においては、医療用充填材または装置を、洗浄してから、包装および滅菌する。
【0123】
別の実施態様において、本発明は、医療用充填材の製造方法であって、重合体状材料を添加剤(例えばビタミンE)とブレンドすること、前記重合体ブレンドを固化させること、その溶融状態より低いまたは高い温度で、超臨界流体中でアニーリングすること、前記重合体ブレンドに照射して、架橋重合体ブレンドを形成すること、および前記架橋したブレンドを機械加工して、酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を形成する、ことを含んでなる方法を提供する。
【0124】
別の実施態様において、本発明は、医療用充填材の製造方法であって、重合体状材料を添加剤(例えばビタミンE)とブレンドすること、前記重合体ブレンドを固化させること、前記重合体ブレンドに照射して、架橋重合体ブレンドを形成すること、その溶融状態より低いまたは高い温度で、超臨界流体中でアニーリングすること、および前記架橋したブレンドを機械加工して、酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を形成する、ことを含んでなる方法を提供する。
【0125】
別の実施態様において、本発明は、医療用充填材の製造方法であって、重合体状材料を用意すること、前記固化した重合体状材料に照射して、架橋重合体状材料を形成すること、前記照射された重合体状材料を、その融解温度より低い温度で変形させること、前記変形した、照射された重合体状材料に、酸化防止剤をドーピングすること、前記酸化防止剤をドーピングした、変形した、照射された重合体状材料を、超臨界流体中で、その融解温度より低いまたは高い温度でアニーリングすること、および前記酸化防止剤をドーピングした、架橋重合体状材料を機械加工して、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる方法を提供する。
【0126】
別の実施態様において、本発明は、医療用充填材の製造方法であって、固化した重合体状材料を用意すること、前記固化した重合体状材料にイオン化放射線を照射して、固化した、架橋重合体状材料を形成すること、前記固化した、架橋重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、および前記酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を、その溶融状態より低いまたは高い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる方法を提供する。
【0127】
別の実施態様において、本発明は、医療用充填材の製造方法であって、固化した重合体状材料を用意すること、前記固化した重合体状材料にイオン化放射線を照射して、固化した、架橋重合体状材料を形成すること、前記固化した、架橋重合体状材料を機械加工して、プリフォームを形成すること、前記プリフォームに、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、前記酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を、その溶融状態より低いまたは高い温度で、超臨界流体中でアニーリングすること、および前記プリフォームを機械加工して、酸化防止剤をドーピングした、均質化した架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる方法を提供する。
【0128】
別の実施態様において、本発明は、耐酸化性の、高結晶性の架橋重合体状材料を、高圧結晶化により製造する方法であって、固化した重合体状材料または重合体状材料と酸化防止剤とのブレンドを用意すること、前記重合体状材料またはブレンドに照射すること、前記照射された重合体状材料またはブレンドを、少なくとも10〜1000 MPa強の下で加圧すること、前記加圧された、照射された重合体状材料またはブレンドを、前記加圧された、照射された重合体状材料またはブレンドの溶融状態より低い温度で加熱すること、前記圧力および温度を保持すること、前記加熱された重合体状材料を、常圧における前記重合体の融点より低い温度に、または略室温に冷却すること、前記圧力を大気圧レベルに解放すること、前記高結晶性の重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を形成すること、および前記酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成する、ことを含んでなる方法を提供する。
【0129】
別の実施態様において、本発明は、耐酸化性の、高結晶性の架橋重合体状材料を高圧結晶化により製造する方法であって、固化した重合体状材料または重合体状材料と酸化防止剤とのブレンドを用意すること、前記重合体状材料またはブレンドに照射すること、前記照射された重合体状材料またはブレンドを、前記融点より高い温度に加熱すること、前記照射された重合体状材料またはブレンドを、少なくとも10〜1000 MPa強の下で加圧すること、前記圧力および温度を保持すること、前記加熱された重合体状材料を、常圧における前記重合体の融点より低い温度に、または略室温に冷却すること、前記圧力を大気圧レベルに解放すること、前記高結晶性の重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を形成すること、および前記酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成する、ことを含んでなる方法を提供する。
【0130】
高圧結晶化は、一般的に、六方晶相で伸びきり鎖を形成できる全ての方法を意味する。この変換は、幾つかの異なった方法により行うことができる。第一の方法では、常圧でポリエチレンの融点より高い温度に加熱し、次いで、溶融物から六方晶への転移が起こる条件に達するまで、加圧の際に試料が溶融物にあるように加圧する。あるいは、試料が、六方晶相に近くなるまで、常に溶融状態にはないように、段階的な加熱および加圧を行う。試料の加熱および加圧は、六方晶相変換が起こる時に、UHMWPEが大量の予備形成された結晶を含まず、溶融相にあると考えられるように、様々な様式で行うことができる。
【0131】
六方晶相が達成され、伸びきり鎖結晶が形成される条件になった後、所望の結晶性構造が失われる恐れがあるので、試料を完全に融解させることはできない。したがって、試料を六方晶または斜方晶区域に止めるための冷却および除圧スキームを使用する。例えば、200℃および380 MPa(55,000 psi)で高圧結晶化させた試料を、室温でポリエチレンのほぼ融点未満(約135〜140℃)に冷却し、次いで圧力を解除する。あるいは、試料が実質的に融解しない限り、段階的な冷却および除圧方法を使用する。
【0132】
斜方晶と六方晶の比は、六方晶相で費やした時間、および試料が冷却の際に融解したか、否かによって異なる場合がある。試料が六方晶相で完全に結晶化し、部分的または完全に溶融相に遭遇するように冷却され、および/またはそうなるような圧力に除圧され、その新しい圧力における温度低下だけで試料が六方晶相にならない場合、試料をさらに冷却し、除圧した場合に、結晶の一部または全部が斜方晶に転化されるであろう。
【0133】
別の態様において、本発明は、拡散によるドーピングにより、あるいは粉末とブレンドし、このブレンドを固化させることにより、添加剤を配合したUHMWPEを提供するが、前記UHMWPEは、高圧結晶化され、続いて照射され、超臨界流体中でアニーリングされる。高圧結晶化は、前記照射された、または照射されていないUHMWPEの融点より高い温度に常圧で加熱すること、少なくとも約10〜1000 MPa、好ましくは少なくとも約150 MPa、より好ましくは少なくとも約250 MPa、に加圧すること、融点より高い温度に加熱すること、略室温に冷却すること、および前記圧力を解放することにより行う。高圧結晶化は、少なくとも約10〜1000 MPa、好ましくは少なくとも約150 MPa、より好ましくは少なくとも約250 MPa、に加圧すること、前記照射された、または照射されていないUHMWPEの常圧における融点より高く、前記加圧された、照射された、または照射されていないUHMWPEの融点より低い温度に加熱すること、略室温に冷却すること、および前記圧力を解除することにより、行うこともできる。
【0134】
本発明の一実施態様においては、完成品を機械加工する。本発明の別の実施態様においては、完成品を包装し、滅菌する。
【0135】
本発明を下記の例によりさらに説明するが、これらの例は、本発明をいかなる様式においても制限するものではない。
【実施例】
【0136】
例1 照射(100 kGy)したポリエチレン中への酸化防止剤の拡散に続く、超臨界二酸化炭素(SC−CO)中での均質化
100 kGy照射したGUR1050 UHMWPEの2”ロッドから試験試料(2 cm立方体)を機械加工した。次いで、これらの試料を、2リットルガラス反応フラスコ中、アルゴン流下で、α−トコフェロールで120℃で2時間ドーピングした。
【0137】
ドーピングに続いて、過剰のα−トコフェロールを表面からふき取り、試料を四種類のドーピング後均質化工程、すなわち(1)何も無し、(2)窒素流下、120℃で24時間、(3)窒素、1700 psiおよび120℃で24時間、および(4)SC−CO、1700 psi、120℃で24時間、の一つを実施した。
【0138】
高圧均質化は、空気対流式加熱炉中に置いた1リットルセル破壊容器(HC4635, Parr Instruments, Moline, IL)中で行った。容器を室温に冷却した後、圧力を解除した。
【0139】
SC−CO実験には、液体CO(純度99.97%、Airgas East, Hingham, MA)を容器に、120℃に加熱しながら、ポンプ(Supercritical 24, Constant Pressure Dual Piston Pump, SSI/Lab Alliance)で、温度および圧力が超臨界相になる静止圧1700 psiに供給した。
【0140】
ドーピングおよび/または均質化工程に続いて、試料を赤外線分光法で分析し、α−トコフェロールプロファイルを測定した。各2 cm試料の対向面を除去し、切断の際の汚れ(smearing)を除去した。次いで、試料を、削り取った面に対して直角に、半分に切り、ミクロトームを使用して切断した。赤外線スペクトルは、BioRad UMA 500顕微鏡(Natick, MA)により、アパーチャサイズ50x50μmで、深度の関数として集めた。平均表面α−トコフェロール指数(STI)は、3試料の表面指数の平均であった。浸透深度は、ビタミンE指数0.02として規定した。
【0141】
SC−COの使用により、照射したUHMWPEにおけるα−トコフェロールの浸透深度が増加した。超臨界CO中、120℃および1700 psiにおける浸透深度は、同じ温度および圧力で、Nで達成した深度のほとんど2倍であった。
【0142】
中で均質化圧力を常圧から1700 psiに増加した時の、α−トコフェロールの浸透深度に対する圧力の大きな影響は無かった。N中、1700 psiで均質化した試料は、常圧で均質化した、試料よりも表面濃度が高かった。
【0143】
SC−CO試料では、著しい浸透増加により、表面濃度低下が引き起こされた(図1および表1参照)。SC−COによる浸透増加は、溶剤の、重合体を膨潤させる能力に帰せられる。
【0144】
照射したUHMWPEの表面における、ドーピング後の高い濃度により、ドーピング後の均質化の際、α−トコフェロールが試料の中に拡散し易くなる。これは、α−トコフェロール濃度が高い表面から、α−トコフェロールを含まない材料に向けて作用する、大きな化学的駆動力によるものである。
【0145】
【表1】

【0146】
α−トコフェロールの拡散は、重合体の無定形部分で起こる。従って、高温により、鎖の移動度が増加し、拡散が増加する。
【0147】
SC−COは、α−トコフェロールを溶解させることも分かっている。結晶性薄層は、小さな分子、例えば酸素、に対しても不透過性であるので、この膨潤は、ほとんど無定形相でのみ起こり、α−トコフェロール拡散のための自由体積を造り出すのであろう。これらのファクターの組合せにより、拡散速度が改良される。
【0148】
例2 酸化防止剤のポリエチレン中への拡散と、それに続く超臨界二酸化炭素中での均質化
圧縮成形されたGUR1050 UHMWPEスラブを原料として使用する。この原料から試験試料(2 cm立方体)を機械加工する。次いで、試料を、2リットルガラス反応フラスコ中、アルゴン流下で、α−トコフェロールで120℃で2時間ドーピングする。ドーピングに続いて、過剰のα−トコフェロールを表面からふき取り、試料を、超臨界CO、1700 psi、120℃で24時間実施する。
【0149】
例3 酸化防止剤のポリエチレン中への拡散と、それに続く超臨界二酸化炭素中での均質化と、それに続く照射
圧縮成形されたGUR1050 UHMWPEスラブを原料として使用する。この原料から試験試料(2 cm立方体)を機械加工する。次いで、試料を、2リットルガラス反応フラスコ中、アルゴン流下で、α−トコフェロールで120℃で2時間ドーピングする。ドーピングに続いて、過剰のα−トコフェロールを表面からふき取り、試料を、超臨界CO、1700 psi、120℃で24時間実施する。次いで、これらのブロックを真空中で包装し、ガンマ線照射により25、65、100、150および200 kGyに照射する。
【0150】
例4 ポリエチレン中への酸化防止剤拡散の測定
α−トコフェロール中に浸漬した試験試料(例えば例1〜3参照)における酸化防止剤の拡散プロファイルを測定するために、LKB Sledge Microtomeを使用して、浸漬した部分から断面(100〜150μm)を切り取った。ついで、この薄い断面を、BioRad UMA 500赤外線顕微鏡(Natick, MA)を使用して分析した。赤外線スペクトルを、アパーチャサイズ50×50μmで、試料の、浸漬の際に酸化防止剤と接触した自由表面と一致する縁部の一方から離れて行く深度の関数として集めた。1226〜1295 cm−1の吸光度は、α−トコフェロールに特徴的であり、ポリエチレンはこれらの周波数の近くでは吸収しない。ポリエチレンに関して、CH横揺れモードに対する1895 cm−1波数が内部基準として典型的である。1260 cm−1および1895 cm−1の積分吸光度の比である規格化された値は、ポリエチレン中のα−トコフェロール組成物の相対的な距離を与える指数である。
【0151】
例5 ビタミンE
他に指示がない限り、本明細書に記載する実験には、ビタミンE(Acros(商品名)99%D−α−トコフェロール、Fisher Brand)を使用した。使用したビタミンEは、色が非常に明るい黄色であり、室温で粘性の液体である。その融点は2〜3℃である。
【0152】
例6 滅菌または架橋のためのポリエチレンのガンマ線照射
円筒形ブロック(直径89 mm、長さ50 cmを超える)を、Co60線源(Steris Isomedix, Northborough, MA)を使用して照射した。これらのブロック群は、照射の前に真空包装し、包装したブロックを照射した。別のブロック群は、包装し、窒素下で照射した。
【0153】
例7 高度に架橋した医療用装置の製造
例えば頸骨膝挿入物を、圧縮成形したGUR1050 UHMWPEから機械加工する。次いで、この挿入物を100%ビタミンEまたはビタミンE溶液に浸漬する。挿入物中へのビタミンEの拡散は、温度および/または圧力を増加することにより、促進することができ、これは空気中または不活性もしくは無酸素環境中で行うことができる。次いで、ビタミンEドーピングした頸骨膝挿入物を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体、例えばCO、中で、高圧下で、例えば1100 psiより上で、アニーリングする。所望レベルのビタミンE拡散に達した後、挿入物を空気中または不活性もしくは無酸素環境中で包装する。次いで、包装した挿入物を100 kGy線量に照射する。照射は、二つの目的、すなわち(1)ポリエチレンを架橋させ、耐摩耗性を改良すること、および(2)充填材を滅菌することに役立つ。
【0154】
この例では、ポリエチレン充填材は、他の材料、例えば金属、に突き合わせた界面を含む装置を包含する、全てのポリエチレン医療用装置でよい。この一例は、全関節形成術(total joint arthroplasty)に使用する非モジュール式の、金属で裏打ちしたポリエチレン部品である。
【0155】
例8 UHMWPEを処理する順序
UHMWPEは、例えば図2および3に示すように、様々な段階で、酸化防止剤をドーピングすることができる。これらの方法は、超臨界流体中でアニーリングする工程をさらに含んでなる。例えば、酸化防止剤をドーピングした、架橋した、または架橋していない重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体、例えば超臨界CO中で行う。
【0156】
例9 高圧結晶化(先ず融解させ、次いで加圧)させ、照射したUHMWPEの、ビタミンEドーピングおよび超臨界二酸化炭素中でのアニーリング
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。直径2インチのシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、水中で180℃に加熱し、5時間保持する。次いで、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加し、試料をこの温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。このバーを真空中で100 kGyに照射する。次いで、このバーを、120℃、アルゴン流下、常圧で24時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、バーをビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700 psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に72時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。
【0157】
例10 高圧結晶化(先ず融解させ、次いで加圧)させたUHMWPEの、ビタミンEドーピングおよび超臨界二酸化炭素中でのアニーリング
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。直径2インチのシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、水中で180℃に加熱し、5時間保持する。次いで、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加し、試料をこの温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。次いで、この試料を、120℃、アルゴン流下、常圧で24時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、試料をビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700 psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に72時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。次いで、この結晶性の高いUHMWPEの、ビタミンEでドーピングし、アニーリングしたバーを真空中で100kGyに照射する。
【0158】
例11 高圧結晶化(先ず融解させ、次いで加圧)させ、照射したUHMWPE医療用充填材の、ビタミンEドーピングおよび超臨界二酸化炭素中でのアニーリング
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。直径2インチのシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、水中で180℃に加熱し、5時間保持する。次いで、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加し、試料をこの温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。このバーを医療用充填材に機械加工する。この医療用充填材を包装し、100 kGyに照射する。次いで、この医療用充填材を、120℃、アルゴン流下、常圧で6時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、この医療用充填材をビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700 psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に24時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。
【0159】
例12 高圧結晶化(先ず融解させ、次いで加圧)させ、照射したUHMWPEの、ビタミンEドーピングおよび超臨界二酸化炭素中でのアニーリング
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。直径2インチのシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、水中で180℃に加熱し、5時間保持する。次いで、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加し、試料をこの温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。このバーを真空中で100kGyに照射する。この高圧結晶化させ、照射したバーから医療用充填材を機械加工する。次いで、この医療用充填材を、120℃、アルゴン流下、常圧で6時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、この医療用充填材をビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に24時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。
【0160】
例13 高圧結晶化(先ず加圧し、次いで加熱)させ、照射したUHMWPEの、ビタミンEドーピングおよび超臨界二酸化炭素中でのアニーリング
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。直径2インチのシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加する。次いで、試料を水中で180℃に加熱し、この温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。このバーを真空中で100kGyに照射する。次いで、このバーを、120℃、アルゴン流下、常圧で24時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、バーをビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に72時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。
【0161】
例14 高圧結晶化(先ず加圧し、次いで加熱)させたUHMWPEの、ビタミンEドーピングおよび超臨界二酸化炭素中でのアニーリング
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。直径2インチのシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加する。次いで、試料を水中で180℃に加熱し、この温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。次いで、この試料を、120℃、アルゴン流下、常圧で24時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、試料をビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700 psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に72時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。次いで、この結晶性の高いUHMWPEの、ビタミンEでドーピングし、アニーリングしたバーを真空中で100 kGyに照射する。
【0162】
例15 高圧結晶化(先ず加圧し、次いで加熱)させ、照射したUHMWPE医療用充填材の、ビタミンEドーピングおよび超臨界二酸化炭素中でのアニーリング
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。直径2インチのシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加する。次いで、試料を水中で180℃に加熱し、この温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。このバーを医療用充填材に機械加工する。この医療用充填材を包装し、100 kGyに照射する。次いで、この医療用充填材を、120℃、アルゴン流下、常圧で6時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、この医療用充填材をビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700 psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に24時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。
【0163】
例16 高圧結晶化(先ず加圧し、次いで加熱)させ、照射したUHMWPEの、ビタミンEドーピングおよび超臨界二酸化炭素中でのアニーリング
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。直径2インチのシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加する。次いで、試料を水中で180℃に加熱し、この温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。このバーを真空中で100 kGyに照射する。この高圧結晶化させ、照射したバーから医療用充填材を機械加工する。次いで、この医療用充填材を、120℃、アルゴン流下、常圧で6時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、この医療用充填材をビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700 psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に24時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。
【0164】
例17 UHMWPEをビタミンEドーピングし、超臨界二酸化炭素中でアニーリングしてから、高圧結晶化(先ず加圧し、次いで加熱)
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。2インチバーを、120℃、アルゴン流下、常圧で6時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、このバーをビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700 psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に24時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。次いで、この直径2”のシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加する。次いで、試料を水中で180℃に加熱し、この温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。次いで、この試料を包装し、照射する。
【0165】
例18 高圧結晶化(先ず融解させ、次いで加圧)させ、照射したUHMWPEの、ビタミンEドーピングおよび超臨界二酸化炭素中でのアニーリング
ラム押出したGUR1050 UHMWPEを原料として使用する。直径2インチのシリンダーを、120℃、アルゴン流下、常圧で24時間、ビタミンEでドーピングする。続いて、このシリンダーをビタミンE浴から取り出し、室温に冷却する。過剰のビタミンEを表面から除去し、バーを圧力チャンバー中に入れ、次いで圧力チャンバーを、1700 psiに加圧した二酸化炭素で満たす。このチャンバーを120℃に加熱し、この圧力および温度に72時間保持する。容器を室温に冷却し、圧力を解除する。次いで、このシリンダーを圧力チャンバー中に入れ、水中で180℃に加熱し、5時間保持する。次いで、圧力を310 MPa(45,000 psi)に増加し、試料をこの温度および圧力に5時間保持する。最後に、試料を室温に冷却し、続いて圧力を解除する。次いで、この試料を包装し、照射する。
【0166】
例19 超臨界二酸化炭素のアニーリング(均質化)温度の、照射したUHMWPEにおけるビタミンEの浸透深度に対する影響
圧縮成形したGUR1050 UHMWPEのスラブを、e−線照射により100 kGyに照射した。この照射した原料から立方体(2 cm立方体)を機械加工した。これらの立方体を、純粋なビタミンE(D,L−α−トコフェロール、DSM Nutritional Products, XX, NJ)中、120℃、2時間、アルゴン流下でドーピングした。続いて、これらの立方体を、略室温〜60℃に冷却し、表面上にある過剰のビタミンEを、綿ガーゼパッドでふき取った。次いで、試料を圧力ボンベ(HC4635, Parr Instruments, Moline, IL)に入れ、空気対流式加熱炉中に入れ、液体二酸化炭素タンクに接続した。圧力ボンベを二酸化炭素で掃気し、次いで閉鎖した。ボンベを所望の温度に加熱しながら、二酸化炭素を1500 psiにポンプ(Supercritical 24, Constant Pressure Dual Piston Pump, SSI/Lab Alliance)供給した。圧力が1500 psiを超えた場合、平衡温度および圧力に達するまで、約100〜200 psiの二酸化炭素を排気した。実験は、各3個の立方体で、90、110、120および130℃で行った。それぞれの温度および1500 psiに達した後、試料をその温度および圧力に24時間保持した。次いで、ボンベをほぼ室温に冷却し、次いで除圧した。
【0167】
これらの試料のビタミンE濃度プロファイルを、に記載する様にFTTR分光法を使用することにより、測定した。図4は、これらの100 kGy照射し、ビタミンEでドーピングし、超臨界二酸化炭素アニーリングしたUHMWPE立方体表面からの、ビタミンE濃度プロファイルを示す。浸透は、120℃まで、アニーリング温度を増加するにつれて改良されている。130℃におけるアニーリングは、120℃におけるアニーリングで得た浸透より、改良されていない。
【0168】
無論、本説明、具体例およびデータは、代表的な実施態様を示しているが、説明のために記載するのであって、本発明を制限するものではない。本明細書に含まれる考察、開示およびそこに含まれるデータから、様々な変形および修正が当業者には明らかであり、従って、本発明の一部と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】アルゴン中、120℃で16時間α−トコフェロールでドーピングし、続いて様々な均質化条件で処理した、100 kGy照射したUHMWPE試料のα−トコフェロール指数プロファイルを示す。
【図2】様々な工程でUHMWPEを処理およびドーピングする順序の例を図式的に示す。
【図3】様々な工程でUHMWPEを処理およびドーピングする順序の例を図式的に示す。
【図4】アルゴン流下、120℃、常圧でビタミンEでドーピングし、続いて均質化しなかった、または超臨界二酸化炭素中、1500 psiで、90、110、120および130℃で24時間均質化した、100 kGy照射したUHMWPEのビタミンE濃度プロファイルを示す。
【図5】常圧下、120℃で2時間ドーピングし、超臨界二酸化炭素中、1500 psiで、90、110、120および130℃で24時間アニーリング(均質化)した、100 kGy照射したUHMWPEのビタミンE浸透深度とアニーリング温度の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を製造する方法であって、
a)重合体状材料に、その溶融状態より低い温度で、イオン化放射線を照射して、架橋重合体状材料を形成すること、
b)前記架橋重合体状材料に、常圧で酸化防止剤をドーピングすること、および
c)前記酸化防止剤をドーピングした、架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成する、ことを含んでなる、方法。
【請求項2】
酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を製造する方法であって、
a)重合体状材料に、常圧で酸化防止剤をドーピングすること、
b)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した重合体状材料を形成すること、および
c)前記重合体状材料に、その溶融状態より低い温度で、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成すること、を含んでなる、方法。
【請求項3】
前記出発重合体状材料の結晶化度が高い(50%を超える)、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記出発重合体状材料が、完成品である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記出発重合体状材料がプリフォームである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ドーピングが、常圧または高圧で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記ドーピングが、空気、不活性ガスまたは超臨界流体中で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記アニーリングが、30℃より高温で、200 psiより高圧で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記アニーリングが、約120℃で、約1700 psiで行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記アニーリングが、120℃より高温で、1700 psiより高圧で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記重合体状材料に、略室温〜約90℃の温度で照射する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記重合体状材料に、約90℃〜前記重合体状材料のピーク融点の温度で照射する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記重合体状材料に、前記重合体状材料のピーク融点より高い温度で照射する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
医療用充填材を製造する方法であって、
a)重合体状材料を用意すること、
b)前記重合体状材料を固化させること、
c)前記固化した重合体状材料にイオン化放射線を照射して、固化した、架橋重合体状材料を形成すること、
d)前記固化した架橋重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、
e)前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、および
f)前記酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法。
【請求項15】
医療用充填材を製造する方法であって、
a)重合体状材料を用意すること、
b)前記重合体状材料を固化させること、
c)前記固化した重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、
d)前記医療用充填材にイオン化放射線を照射して、架橋した医療用充填材を形成すること、
e)前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、および
f)前記酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法。
【請求項16】
医療用充填材を製造する方法であって、
a)重合体状材料を用意すること、
b)前記重合体状材料を固化させること、
c)前記固化した重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングすること、
d)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した重合体状材料を形成すること、
e)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を機械加工して、酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を形成すること、および
f)前記酸化防止剤をドーピングした架橋重合体状材料に、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成することを含んでなる、方法。
【請求項17】
医療用充填材を製造する方法であって、
a)重合体状材料を用意すること、
b)前記重合体状材料を固化させること、
c)前記固化した重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングすること、
d)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した重合体状材料を形成すること、
e)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料に、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、架橋重合体状材料を形成すること、および
f)前記架橋重合体状材料を機械加工して、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、を含んでなる、方法。
【請求項18】
医療用充填材を製造する方法であって、
a)重合体状材料を用意すること、
b)前記重合体状材料を固化させること、
c)前記固化した重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、
d)前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を形成すること、
e)前記酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した医療用充填材を形成すること、
f)前記医療用充填材を包装すること、および
g)前記包装した医療用充填材に、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、無菌の架橋医療用充填材を形成すること、を含んでなる、方法。
【請求項19】
医療用充填材を製造する方法であって、
a)重合体状材料を用意すること、
b)前記重合体状材料を圧縮成形して、医療用充填材を形成すること、
c)前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を形成すること、
d)前記酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した医療用充填材を形成すること、
e)前記医療用充填材を包装すること、および
f)前記包装した医療用充填材に、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、無菌の架橋医療用充填材を形成すること、を含んでなる、方法。
【請求項20】
医療用充填材を製造する方法であって、
a)固化した重合体状材料を用意すること、
b)前記固化した重合体状材料にイオン化放射線で照射して、固化した、架橋重合体状材料を形成すること、
c)前記固化した、架橋重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成すること、
d)前記医療用充填材に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を形成すること、および
e)前記酸化防止剤をドーピングした、架橋医療用充填材を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した架橋医療用充填材を形成すること、を含んでなる、方法。
【請求項21】
前記酸化防止剤をドーピングした医療用充填材を包装し、イオン化放射線またはガス滅菌により滅菌して、無菌の架橋医療用充填材を形成する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記重合体状材料を、別の部品または医療用充填材に対して圧縮成形して、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記固化した重合体状材料を、別の部品に対して圧縮成形して、界面および連結ハイブリッド材料を形成する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ドーピングが、前記医療用充填材を酸化防止剤中に約1〜約16時間浸漬することにより行われる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記酸化防止剤を約100℃に加熱し、前記ドーピングを100℃で行う、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記酸化防止剤を略室温に加熱し、前記ドーピングを略室温で行う、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度、または、前記固化した架橋重合体状材料の溶融状態より高い温度でアニーリングする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記重合体状材料が、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルケトンまたはそれらの混合物である、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリオレフィンが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記充填材が、寛骨臼ライナー、肩関節窩、膝蓋骨成分、指関節成分、踝関節成分、肘関節成分、手首関節成分、足指関節成分、二極人工股関節、頸骨膝挿入物、補強金属およびポリエチレンポストを備えた頸骨膝挿入物、椎間板、縫合、腱、心臓弁、ステント、血管移植片からなる群から選択される医療用装置を含んでなる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記重合体状材料が、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子等、またはそれらの混合物である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記照射が、約1%〜約22%の酸素を含む雰囲気中で行われる、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記照射が、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等、またはそれらの組合せからなる群から選択されたガスを含んでなる不活性雰囲気中で行われる、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記照射が真空中で行われる、請求項1〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記架橋した重合体状材料が、約1%〜約22%の酸素を含む雰囲気中で加熱される、請求項1〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記放射線量が約25〜約1000 kGyである、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記放射線量が約65 kGy、約75 kGyまたは約100 kGyである、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記放射線がガンマ線照射である、請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記放射線が電子線照射である、請求項1〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記重合体状材料を、前記架橋重合体状材料の融点より上に加熱することにより、前記架橋重合体状材料中のフリーラジカルが低減する、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記医療用充填材を、約50重量%酸化防止剤含むエタノール溶液中に浸漬する、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記超臨界流体がCOである、請求項1〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記酸化防止剤がビタミンEである、請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記酸化防止剤がα−トコフェロールである、請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記医療用充填材が非永久的医療用装置である、請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記重合体状材料を、別の部品または医療用充填材に対して圧縮成形して、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項1〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記固化した重合体状材料を、別の部品に対して圧縮成形して、界面および連結ハイブリッド材料を形成する、請求項1〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ドーピングが、前記医療用充填材をビタミンE中に約1〜約16時間浸漬することにより行われる、請求項1〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ビタミンEを約100℃に加熱し、前記ドーピングを100℃で行う、請求項1〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記ビタミンEを略室温に加熱し、前記ドーピングを室温で行う、請求項1〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
検出可能な残留フリーラジカルを含む、均質化した重合体状材料であって、前記重合体状材料が非酸化性であり、架橋したものである、重合体状材料。
【請求項52】
非酸化性で、均質化した、検出可能な残留フリーラジカルを含む架橋重合体状材料を含んでなる、医療用充填材。
【請求項53】
前記ドーピングが約1700 psiで行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項54】
医療用充填材を製造する方法であって、
a)固化した重合体状材料を用意すること、
b)前記固化した重合体状材料にイオン化放射線を照射して、固化した、架橋重合体状材料を形成すること、
c)前記架橋重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、架橋重合体状材料を形成すること、
e)前記酸化防止剤をドーピングした、架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成すること、および
f)前記酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を機械加工して、医療用充填材を形成する、ことを含んでなる、方法。
【請求項55】
耐酸化性の、高結晶性の架橋重合体状材料を製造する方法であって、
a)重合体状材料を、その溶融状態より高い温度に加熱すること、
b)前記高結晶性の架橋重合体状材料を、少なくとも約10〜1000 MPa下で加圧すること、
c)前記圧力を保持すること、
d)前記加熱された重合体状材料を室温に冷却すること、
e)前記圧力を大気圧レベルに解放すること、
f)前記重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした重合体状材料を形成すること、
g)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料に、その溶融状態より低い温度で、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を形成すること、および
h)前記酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成すること、を含んでなる、方法。
【請求項56】
耐酸化性の、高結晶性の架橋重合体状材料を製造する方法であって、
a)重合体状材料を、少なくとも10〜1000 MPa強の下で加圧すること、
b)前記加圧された重合体状材料を、前記加圧された重合体状材料の溶融状態より低い温度に加熱すること、
c)前記圧力および温度を保持すること、
d)前記加熱された重合体状材料を室温に冷却すること、
e)前記圧力を大気圧レベルに解放すること、
f)前記高結晶性の重合体状材料に、拡散により酸化防止剤をドーピングして、酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の重合体状材料を形成すること、
g)前記酸化防止剤をドーピングした重合体状材料に、その溶融状態より低い温度で、イオン化放射線を照射して、酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を形成すること、および
h)前記酸化防止剤をドーピングした、高結晶性の架橋重合体状材料を、その溶融状態より低い温度で、超臨界流体中でアニーリングして、酸化防止剤をドーピングした、均質化した、架橋重合体状材料を形成すること、を含んでなる、方法。
【請求項57】
前記固化した重合体状材料が高結晶性 (50%を超える)である、請求項1〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記医療用充填材が高結晶性 (50%を超える)である、請求項1〜57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記超臨界流体が、流体の混合物である、請求項1〜58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記超臨界流体が溶解剤を含んでなる、請求項1〜59のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−504899(P2009−504899A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528014(P2008−528014)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/032329
【国際公開番号】WO2007/024689
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(593030244)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション ディー ビー エイ マサチューセッツ ジェネラル ホスピタル (8)
【Fターム(参考)】