説明

耐障害アクチュエータ

第一と第二の線形移動装置を含むアクチュエータ(2)であって、各線形装置はアクチュエータを伸長でき、第一と第二の線形移動装置の一方の障害が他方の操作を妨害しないように配置される。第一線形移動装置は第一線形ねじ(10)、第一ナット(12)、第一線形ねじと第一ナットの間で相対的な線形移動を行う第一原動機(14)を含む。第二線形移動装置も第二線形ねじ(20)、第二ナット(22)、第二線形ねじと第二ナットの間で相対的な線形移動を行う第二原動機(24)を含む。第一線形装置(10)はボア(18)を有し、アクチュエータ(2)が引戻された位置の時、この中に第二線形ねじ(20)を適応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関し、より具体的には、航空機部品を移動させるための耐障害(jam-tolerant)電気機械アクチュエータに関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
航空機部品、例えば、航空機の着陸装置(ランディングギヤ)を移動させるため、アクチュエータを用いることがある。航空機の着陸装置を展開させるようなアクチュエータシステムは、勿論、高度な完全さを備えて、故障のリスクを極めて低くすることが求められている。例えば、通常の展開システムが故障するような場合に、着陸装置を上方のロックされた位置(着陸前)から展開させて、着陸装置の室のドアを開放させるように、第二の、つまり、緊急用の展開システムを備えることが重要となる。このような緊急用の展開システムは、着陸装置を上方のロックされた位置からだけでなく、例えば、着陸装置を十分に格納することに失敗したような場合に、中間位置からも展開させることが求められている。
【0003】
従来技術の着陸装置の展開システムでは、油圧機械式アクチュエータを用いているが、これは、油圧機械式アクチュエータの正常な操作に基づく通常の展開システムと、緊急用の展開システムの双方を含んでいる。緊急用の展開システムは、フリーフォールシステムとしても知られており、装置を展開して、ドアを開けることを重力下で行うことで操作される。緊急用の展開システムの使用中、油圧機械式アクチュエータ内の油圧流体の力によって、展開中に(装置の下方のロック位置に向かう)装置を損傷から保護するように十分な減衰を提供する。着陸装置がこの完全に展開された位置に達した時、着陸装置や航空機のたわみに起因する何らかの負荷にアクチュエータが反応しないように、油圧機械式アクチュエータを構成している(そうでなければ油圧アクチュエータの位置がアクチュエータのシリンダーの内側でスライドすることを防ぐ)。
【0004】
しかし、大型の商用航空機では油圧システムに頼ることを減らすことが望ましいため、従前、油圧機械式アクチュエータが用いられていた所で電気アクチュエータを用いることが、現在求められている。利用可能な電気アクチュエータには二つのタイプがあり、つまり、間接駆動アクチュエータと直接駆動アクチュエータがある。間接駆動アクチュエータは、ギヤボックス、ウォームスクリュー又は同様の機械を用いて、電気モーターの回転移動を低速/高スラストの線形移動か、低速/高トルクの回転移動に変えており、これに対し、直接駆動アクチュエータ(これはリニアモーターとしても公知である)は、電気を直接的に線形移動に変えている。
【0005】
直接駆動アクチュエータは信頼性が高いが、航空機の所定の分野の展開/格納要求を満たすことが出来ない場合がある。一方、間接駆動アクチュエータは、要求(例えば、要する質量や体積、動力出力、展開性能)の多くを満たすことが出来るものの、要求された動作を作動させるため、モーターの移動を変えるように機械を用いる結果、直接駆動アクチュエータや油圧シリンダーと比べて障害を起こしやすい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題の一つ又は複数に対処できるアクチュエータを提供することを目的とする。あるいは、又は、これに加えて、本発明は、改良されたアクチュエータを提供することを目的とする。あるいは、又は、これに加えて、本発明は、航空機の中央油圧システムに頼る必要のない、航空機用の耐障害アクチュエータを提供することを目的とし、例えば、電気間接駆動アクチュエータの形態でアクチュエータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一と第二の線形移動装置を含むアクチュエータを提供し、この際、
前記第一線形移動装置は、第一線形ねじ(リニアスクリュー)、第一ナットを含み、かつ、前記第一線形ねじと前記第一ナットの間で相対的な線形移動を行うように第一原動機を配置し、
前記第二線形移動装置は、第二線形ねじ、第二ナットを含み、かつ、前記第二線形ねじと前記第二ナットの間で相対的な線形移動を行うように第二原動機を配置し、
前記第一線形ねじと前記第一ナットの間での相対的な線形移動、又は前記第二線形ねじと前記第二ナットの間での相対的な線形移動の結果として伸長されるように前記アクチュエータを配置し、
前記第一と前記第二の線形移動装置の一方の障害が、前記第一と前記第二の線形移動装置の他方の操作を妨害しないように、前記第一と前記第二の線形移動装置を配置したことを特徴とする。
【0008】
従って、本発明のアクチュエータは、第一と第二の線形移動装置の一方が障害を起こしても、他方が依然、アクチュエータを伸長するために用いられるという意味で、耐障害となる。幾つかの実施形態では、第一線形移動装置の操作だけで、又は第二線形移動装置の操作だけで、完全に展開された位置までアクチュエータを移動させるように、第一と第二の線形移動装置を配置してもよい。換言すると、第一と第二線形移動装置の双方を独立して配置して、他方の線形移動装置が障害を起こした場合に、アクチュエータを完全に展開させるように配置してもよい。
【0009】
勿論、第一と第二の線形移動装置の少なくとも一つ、好ましくは双方を、アクチュエータを収縮する動作を起こせるように便宜的に配置する。幾つかの実施形態では、アクチュエータの収縮は、アクチュエータを信頼性があるように伸長させる性能と比べて、より重要ではない場合がある。
【0010】
耐障害に関する従来技術の電気アクチュエータの例として、米国特許第4,637,272号と米国特許第5,144,851号に開示されたものがある。これらに開示された電気アクチュエータは、夫々、耐障害で、幾らかの二重の重複性を備えているものの、いずれの電気アクチュエータにも重大な短所があった。即ち、米国特許第4,637,272号のアクチュエータは、二つの分離し、独立した駆動ユニットに関連して、単一で共通の線形ねじを備えている。このような構成は、アクチュエータの長さが必要以上に長くなる結果、好ましくなかった。また、米国特許第5,144,851号のアクチュエータは、単一で共通のモーターを備えているものの、二重の動力経路を有して、動力経路のいずれかが障害を起こした場合にアクチュエータが対応できるようにしている。しかし、米国特許第5,144,851号のアクチュエータは、モーターの故障や障害に対応することができなかった。
【0011】
好ましくは、第一と第二の線形ねじの軸を平行に配置する。第一と第二の線形ねじの部品は、アクチュエータが収縮される位置にある時に、ねじの長さに沿う方向で同じ位置に配置してもよい。この構成によって、アクチュエータの占めるスペースをかなり節約できる。第一と第二の線形ねじの部品は、アクチュエータが収縮された位置の時、第一と第二の線形ねじの他方の少なくとも一部に適応するように配置してもよい。例えば、線形ねじの一方に、少なくともこの長さの一部内に沿ってボアを形成して、ねじの一方の端部に開口部を定めて、線形ねじの他方をこのボア内に適応させてもよい。
【0012】
第一線形移動装置は、後退移動可能でもよい。これによって、アクチュエータの使用中に、例えば、アクチュエータが作用する部品のたわみや、アクチュエータを適合させる構造のたわみに起因して、移動するアクチュエータを限定的な移動にできるので、アクチュエータを通じて反作用する結果の負荷を減らすか、除くことができる。
【0013】
第一線形移動装置は、アクチュエータを伸長及び収縮するための主要な手段として配置してもよい。この場合、第二線形移動装置は、第一線形移動装置が障害を起こした場合のバックアップ手段として考えることができる。特に、第二線形移動装置がバックアップ手段として作用する場合、第二線形移動装置を後退移動しないように配置してもよい。第二線形移動装置は、このため、作動手段としてだけではなく、第二モーターが装置の任意の部位にトルクを伝える必要なく、負荷下で位置を保持することができるようにされてもよい。第二線形移動装置は、低効率で後退移動可能でもよい。第一と第二の線形移動装置の双方とも後退移動可能にしてもよいが、第一装置と比べて第二装置の機械的効率を低くしてもよい。このため、第二装置は、負荷下で位置を保持できるように、さらにブレーキを備えることを必要としてもよい。
【0014】
第一と第二の線形移動装置のいずれか又は双方は、装置の線形ねじとナットを、ローラーねじとナットのアセンブリの形態として配置してもよい。ローラーねじとナットのアセンブリは、任意の適当な形態でもよく、例えば、遊星ローラーねじとナットのアセンブリ、又は再循環ローラーねじとナットのアセンブリでもよい。線形ねじとナットは、再循環ボールねじとナットのアセンブリの形態でもよい。線形ねじとナットは、アクメねじとナットのアセンブリの形態でもよい。
【0015】
第一と第二の線形移動装置のいずれか又は双方の原動機は、電気モーターでもよい。第一線形移動装置に関する原動機は、第二線形移動装置の原動機と比べて、より大きく、より容量があり、及び/又は、より動力を有していてもよい。
【0016】
第一と第二の線形移動装置のいずれか又は双方の原動機は、線形ねじとナットのアセンブリと直接的につなげられていてもよい。また、原動機は、例えば、ギヤボックスを介して、線形ねじとナットのアセンブリと間接的につなげられていてもよい。
【0017】
第一と第二の線形移動装置のいずれかによって生じ得る相対的な線形移動は、線形移動装置の原動機とナットの間で相対的な線形移動を起こしてもよい。また、第一と第二の線形移動装置のいずれかによって生じ得る相対的な線形移動は、線形移動装置の原動機と線形ねじの間で相対的な線形移動を起こしてもよい。線形移動装置の一つは、この線形移動装置の原動機とナットの間で相対的な移動を起こしてもよく、この際、他方の線形移動装置は、この他方の線形移動装置の原動機と線形ねじの間で相対的な移動を起こしてもよい。第一と第二の線形移動装置のいずれかによって生じ得る相対的な線形移動は、第一と第二の原動機の少なくとも一つの線形移動を起こしてもよい。
【0018】
好ましくは、アクチュエータは、航空機部品、例えば、着陸装置を移動させるのに適するように構成される。
【0019】
本発明は、さらに、着陸装置アセンブリを提供するが、これは、航空機の少なくとも一つの車輪を支持する着陸装置の脚と、着陸装置の脚を展開させるために配置されたアクチュエータを含み、このアクチュエータを、本明細書で記載した本発明の任意の特徴に従うアクチュエータとする。本発明は、さらに、このような着陸装置アセンブリを含む航空機を提供する。この航空機は、乾燥重量で50トン以上重くてもよく、より好ましくは、乾燥重量で200トン以上重くてもよい。また、この航空機は、75人以上、より好ましくは、200人以上、搬送可能なように構成される航空機と同等の大きさを有していてもよい。勿論、本発明のアクチュエータに関する本発明の特徴は、本発明の着陸装置アセンブリや航空機に含ませることができる。
【0020】
さらに、本明細書で説明した本発明の任意の特徴に従うアクチュエータを製造するための部品のキットも提供する。このキットは、少なくとも第一と第二の線形ねじと、第一と第二の線形ナットを含むことができる。また、このキットは、第一と第二の原動機を含むことができる。勿論、本発明のアクチュエータに関する本発明の特徴は、部品のキットに関する本発明に含ませることができる。
以下、添付した図を参照して、本発明の実施形態について説明するが、これらは単に例示的に示されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
添付した図を参照すると、大型の商用旅客航空機の、機首側の着陸装置の展開及び格納用のシステムに用いられる、耐障害の電気機械式間接駆動アクチュエータについての本発明の実施形態が示されている。この実施形態に従うアクチュエータの利点として、電気の直接駆動線形モーターに対して、電気モーターからの高速で低トルクの回転移動を、低速/高トルクの移動に変えることができる。
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施形態に従う間接駆動アクチュエータが断面で示されている。このアクチュエータ2は、第一と第二の線形移動装置を含むが、これらは夫々、アクチュエータを伸長させることができ、また、前もってこの装置によって伸長されている場合には、駆動される装置の方向に基づいて、収縮することができる。このため、固定構造と移動される部品に対して取付け可能なアクチュエータの反対側の端部4a、4bを、夫々、互いに対して離れたり、向かうように移動させることができる。ここでは、アクチュエータ2の可動端部4bを着陸装置の脚に接続するように、アクチュエータを機首側の着陸装置に接続している。
【0023】
各線形移動装置は、ローラーねじの形態の、線形ねじと、これに対して回転可能なように取付けられて、ねじの長さに沿って上下動可能な遊星ローラーナットと、ナットとねじの間で相対的な移動を行うことができる電気ブラシレスDCモーターを含む。この際、第一線形ねじ10、第一ナット12、及び第一電気モーター14によって第一線形移動装置を形成し、第二線形ねじ20、第二ナット22、及び第二電気モーター24によって第二線形移動装置を形成する。モーター14、24は、双方とも主ハウジング30の一方の端部に収容されるが、主ハウジング30は、モーターよりも延びて、アクチュエータ2が収縮された位置にある時(図1に示した位置)、ねじのほぼ全長に沿って線形ねじ10、20の双方を適応させる。
【0024】
第一線形ねじ10は、ボア18を定めた内面を有し、この中に第二線形ねじ20を適合させる。第一線形ねじ10は、効率の高い、後退駆動可能なねじであって、第一モーター14と直接的に接続されており、障害のリスクを高めるおそれのあるギヤボックスの利用を避けている。第二線形ねじ20は、効率の低い(小ピッチ)、後退駆動不可能なねじである。また、第二ねじ20は、第一モーター14よりも小さく、動力の劣る第二モーター24によって間接的に駆動される。
【0025】
航空機内の近くの固定構造に接続されるアクチュエータ2の一方の端部4aは、第二線形ねじ20の端部に位置する。また、機首側の着陸装置の脚に接続される他方の端部4bは、ナットハウジング32の端部に定められ、これは第一ナット12に接続されて、適応する。従って、アクチュエータ2の一方の端部4aを固定端部4aとして参照することができ、また、他方の端部4bを可動端部4bとして参照することができる。
【0026】
第一電気モーター14は、第一線形ねじ10を回転させるように配置されており、これによって、ナット12を線形ねじの長さに沿って線形に移動させる。ナットハウジング32に接続されるナット12の移動により、ナットハウジング32と、従ってアクチュエータの可動端部4bを、固定端部4aに対して移動させる。従って、アクチュエータ2を、第一線形ねじ10と第一ナット12の間の相対的な線形移動の結果として、伸長させたり、収縮することが可能になる。
【0027】
第二電気モーター24は、第二ナット22を回転させるように配置されており、これによって、ナット22を線形ねじ20の長さに沿って線形に移動させる。第二電気モーターに接続されるナット22は、次に、主ハウジング30と接続されており、主ハウジング30、モーター14、24、第一線形ねじ10、第一ナット12、及びナットハウジング32と共に移動する。よって、ナット22の移動により、アクチュエータの可動端部4bを、固定端部4aに対して移動させる。従って、アクチュエータ2を、第二線形ねじ20と第二ナット22の間の相対的な線形移動の結果として、伸長させることが可能となる。
【0028】
これら第一と第二の線形移動装置は、互いに独立して操作可能となるように配置されている。このため、第一線形移動装置に障害が起きても、第二線形移動装置の操作は妨害されない。従って、アクチュエータは、第一と第二の独立した線形移動装置を備えて、アクチュエータ内に二重の重複を設けたという意味で、耐障害となる。
【0029】
アクチュエータ2の第一線形移動装置10、12、14は、着陸装置の通常の展開/格納システムとして作用して、全デューティサイクル(つまり、航空機の全操作ライフ)用に構成される。通常の操作下では、アクチュエータ2は、第一線形移動装置10、12、14を操作することで、着陸装置を12秒以内に展開する(又は格納する)ことができる。上述したように、第一線形移動装置のローラーねじとナットのアセンブリ10、12は、後退駆動可能であるため、アクチュエータの任意の構成で(完全に伸長されるか、収縮される)、航空機のフレーム/装置のたわみ中に反作用する負荷を減らすことができる。第一線形移動装置は、モーター14を停止させるためにブレーキ(図示せず)を含むので、伸長位置でアクチュエータ2を保持することができる。一方、第二線形移動装置20、22、24は、第一装置が動力を失ったり、障害を起こした場合に、緊急用に伸長能力を提供する。第二線形移動装置のねじ20とナット22は、通常、後退駆動しないが、モーター24を停止させるためにブレーキ36を備えている。第二線形移動装置20、22、24は、主に緊急時に用いられるバックアップシステムとして提供されるだけなので、第二線形移動装置を限定的なデューティサイクルに限定して構成することは、許容できる。第二線形移動装置20、22、24を限定的なデューティサイクル用にのみ構成することで、第二線形移動装置20、22、24の大きさを(例えば、第一線形移動装置10、12、14と比較して)小さくすることができる。このため、例示した実施形態では、第二線形移動装置20、22、24を、第一線形移動装置10、12、14の内側に取付けられるように大きさを定めることができるので、全体的なアクチュエータの長さを短めにするのに役立つ。
【0030】
アクチュエータのストロークは約350mmであり、アクチュエータの移動は約370mmである(いずれかの端部で約10mmにわたる移動がある)。完全に収縮された時のアクチュエータの長さは、約850mmであり、この直径は、最も幅広の場所で約240mmである。第一線形移動装置を操作する時、アクチュエータのスラストは約75kNである。このスラストを生じさせるために必要な最大機械動力は、約2.2kWであるが、これは、約5kWのアクチュエータの第一モーター14からの最大電気動力に相当する。アクチュエータの全重量は、約20kgである。
【0031】
図2のa、b、cには、アクチュエータの構成部品を断面で示している。図2aを参照すると、第二線形ねじ20とこれに一体形成されたアクチュエータの左手側の固定端部4aが示されている。図2bを参照すると、主ハウジング30の第一部30a内に収容される第一モーター14が示されており、主ハウジング内には第一中空ねじ10も適応される。また、図2bには、主ハウジング30の第二部30b内に収容される第二モーター24が示されているが、これは、主ハウジング30の第二部30bとナット22の間に取付けられるブレーキ36と第二ナット22にも適応している。使用時には、ハウジング30の二つの部位30a、30bは、固定用に備えられた複数のボルト34を用いて、互いにボルト締めされる。図2cを参照すると、第一ナット12を適応させるナットハウジング32が示されているが、これには、アクチュエータ2の右手側の可動端部4bが含まれる。ナットハウジング32と主ハウジング30は、例えば、スプライン(図示せず)を用いて接続されて、これら二つの部品間での相対的な回転を防ぐようにするが、相対的な線形移動は許容する。
【0032】
次に、図3のa〜dを参照して、アクチュエータの操作について説明する。図3aを参照すると、完全に収縮された位置にあるアクチュエータが示されている。この位置では、第一ナット12は、第一ねじ10の左手側端部にあり(図3a参照)、第二ナット22は、第二ねじ20の左手側端部にある。通常の操作では、第一線形移動装置を用いて、アクチュエータ2を伸長させたり、収縮させるが、これが次に、航空機の着陸装置を展開させたり、格納する。図3bを参照すると、第一線形移動装置だけを操作した結果として、完全に伸長された位置にあるアクチュエータが示されている。この位置では、第一ナット12は、第一ねじ10の右手側端部にあり、また、第二ナット22は、第二ねじ20の左手側端部にある。第一線形移動装置が故障した場合、アクチュエータを伸長させることができなくなるが、第二線形移動装置を用いることで、アクチュエータ2と、従って着陸装置を伸長させることができる。図3cを参照すると、第二線形移動装置だけを操作した結果として、完全に伸長された位置にあるアクチュエータが示されている。この位置では、第一ナット12は、第一ねじ10の左手側端部にあり、また、第二ナット22は、第二ねじ20の右手側端部にある。さらに、アクチュエータの伸長中に第一線形移動装置が故障した場合、完全に伸長させるために利用できなくなるが、第二線形移動装置を用いて、第一線形移動装置によって部分的に伸長された部分の他、アクチュエータを完全に伸長させることができる。図3dを参照すると、第一線形移動装置を操作した結果として、アクチュエータを中途の位置まで移動させ、これに続いて、移動を完了するように第二線形移動装置を操作した結果として、完全に伸長させるように移動したアクチュエータ2が示されている。この位置では、第一ナット12は、第一ねじ10に沿った中間位置にあり、第二ナット22は、第二ねじ20に沿った中間位置にある。勿論、図3のcとdから理解できるように、第二の、緊急用の線形移動装置を用いてアクチュエータを操作する場合、主ハウジング30は、双方のモーター14、24を含み、アクチュエータ2の可動端部4bとともに移動する。
【0033】
要約すると、本発明の実施形態は、夫々独立した電気モーターを特徴とする二つの背中合わせのローラーねじを含む、一連の重複したアクチュエータを提供する。第一と第二の線形移動装置を配置して、独立させた結果、故障した線形移動装置の接続を外したり、再構成をする必要なく、緊急用の伸長機能を提供することができる。
【0034】
よって、本発明の実施形態は、この利点として、二つの完全に独立した線形移動装置を備えたアクチュエータを提供する。例えば、本発明の所定の実施形態に従うアクチュエータの線形移動装置では、各移動装置には独立したねじ、ナット及びモーターが備えられているため、中断したり、相互干渉したりしない。各移動装置は、完全にアクチュエータを伸長させるように独立して機能できる。以上、特定の実施形態を参照して、本発明について説明して、図示したが、当該技術分野における当業者ならば、ここで示した特定のもの以外に、本発明には多くの様々な変更を導くことが出来ることを理解するであろう。
【0035】
上述した実施形態では、第一線形移動装置だけが、(一度、この装置によって伸長された)アクチュエータを収縮するのに利用できるため、着陸装置を展開位置又は中間位置から格納位置まで移動させることができる。よって、この実施形態では、第一線形移動装置が部分的又は完全な伸長位置で障害を起こした場合、第二線形移動装置ではアクチュエータを完全に収縮することができない。しかしながら、第一線形移動装置が完全に収縮された位置で障害を起こしたり、故障した場合、第二線形移動装置によって、アクチュエータを完全に伸長させて、完全に収縮させる双方を行うことができる。アクチュエータをこのように調整することで、アクチュエータの第一線形移動装置が任意の位置で障害を起こしたり、故障するような場合に、第二線形移動装置を用いてアクチュエータを収縮することができる。例えば、このような機能は、第二ねじの長さを倍にして、ねじをナット上に中心に位置決めする(第二線形移動装置のニュートラル位置にする)ことで提供することができる。ねじユニットの長さは小さいため、このような調整による重量ペナルティーは許容範囲内となる。従って、第二線形移動装置は、第一線形移動装置が故障したり、障害を起こす位置に係わらず、アクチュエータと、従って着陸装置を伸長させたり、収縮させる双方で、限定的な時間で利用できる(例えば、終日まで)。よって、航空機の緊急時の信頼性を高めることができる。
【0036】
尚、第一線形ねじは、障害をもたらし得る作用の劣化を検出して、防ぐため、状態監視システムによって監視することができる。ねじの状態を監視して、障害を起こし得る重大な状態まで悪化する前に問題を直すことで、比較的短い寿命のサイクルでも信頼性が求められる、第二の、重複した線形ねじを、緊急時の利用にだけ、しっかりと確保できる。このような状態監視システムは、位置、負荷及び電流センサを備えて、アクチュエータによってもたらされる力を監視して、磨耗と劣化を検出するものでもよい。
【0037】
上述した実施形態では、遊星ローラーねじを用いているが、回転移動を線形移動に変えることができる他の任意の適当な装置を用いてもよく、例えば、ボールねじを用いることができる。
【0038】
以上、上述した説明で、記載した一体品や部品が、従来公知なものや、自明若しくは予測可能な等価物の場合、これら等価物は、個別に説明されていなくとも、本明細書に含まれるものとする。よって、本発明の真の範囲を定めるためには、特許請求の範囲について参照する必要があるが、これには、上述のような等価物を含むと考えられる。また、好適である、利点がある、便利である、又は同様のように説明された本発明の一体品や特徴は、選択的であって、各請求項の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に従うアクチュエータの断面図である。
【図2】図1に示した部品の分解断面図を2a〜2cに分けて示した図である。
【図3】様々な異なる状態におけるアクチュエータの断面図を3a〜3dに分けて示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一と第二の線形移動装置を含むアクチュエータであって、
前記第一線形移動装置は、第一線形ねじ、第一ナットを含み、かつ、前記第一線形ねじと前記第一ナットの間で相対的な線形移動を行うように第一原動機を配置し、
前記第二線形移動装置は、第二線形ねじ、第二ナットを含み、かつ、前記第二線形ねじと前記第二ナットの間で相対的な線形移動を行うように第二原動機を配置し、
前記第一線形ねじと前記第一ナットの間での相対的な線形移動、又は前記第二線形ねじと前記第二ナットの間での相対的な線形移動の結果として伸長されるように前記アクチュエータを配置し、
前記第一と前記第二の線形移動装置の一方の障害が、前記第一と前記第二の線形移動装置の他方の操作を妨害しないように、前記第一と前記第二の線形移動装置を配置したことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第一線形移動装置の操作のみによって、又は、前記第二線形移動装置の操作のみによって、前記アクチュエータを完全に伸長させた位置に移動させるように、前記第一と前記第二の線形移動装置を配置したことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第一線形移動装置は、全デューティサイクル用に構成され、前記第二線形移動装置は、限定的なデューティサイクル用に構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記アクチュエータが収縮された位置の時、前記第一と前記第二の線形ねじの一方の少なくとも一部を、前記第一と前記第二の線形ねじの他方の少なくとも一部内に適合するように配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第一線形移動装置は、後退駆動可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第二線形移動装置は、後退駆動不可能か、若しくは後退駆動可能だが、前記第一線形移動装置と比べて機械的効率がかなり劣ることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第一線形移動装置は、前記アクチュエータを伸長する主要な手段であって、前記第二線形移動装置は、前記第一線形移動装置が故障した場合のバックアップ手段であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記第一線形移動装置の前記第一線形ねじと前記第一ナットは、ローラーねじとナットのアセンブリの形態であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記第二線形移動装置の前記第二線形ねじと前記第二ナットは、ローラーねじとナットのアセンブリの形態であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記ローラーねじとナットのアセンブリは、遊星ローラーねじとナットのアセンブリであることを特徴とする請求項8又は9に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記ローラーねじとナットのアセンブリは、再循環ローラーねじとナットのアセンブリであることを特徴とする請求項8又は9に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記第一原動機と前記第二原動機は、夫々、第一電気モーターと第二電気モーターの形態であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記第一と前記第二の線形移動装置の一方によって生じ得る相対的な線形移動は、前記線形移動装置のナットと原動機の間で相対的な線形移動を引き起こし、前記第一と前記第二の線形移動装置の他方によって生じ得る相対的な線形移動は、前記線形移動装置の前記線形ねじと前記原動機の間で相対的な線形移動を引き起こすことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項14】
前記第一と前記第二の線形移動装置の一方によって生じ得る相対的な線形移動は、前記第一と前記第二の原動機の少なくとも一方の線形移動を引き起こすことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項15】
前記アクチュエータは、航空機部品の移動を引き起こすのに適するように構成したことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項16】
前記航空機部品は、着陸装置であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項17】
航空機の車輪の少なくとも一つを支持するために着陸装置の脚を有する着陸装置アセンブリであって、前記着陸装置の脚を展開するように前記アクチュエータを配置して、請求項16に記載のように前記アクチュエータを構成したことを特徴とする着陸装置アセンブリ。
【請求項18】
請求項16に記載の着陸装置アセンブリを含むことを特徴とする航空機。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれかに記載のアクチュエータを製造するための部品のキットであって、少なくとも前記第一と前記第二の線形ねじ、及び前記第一と第二の線形ナットを含むことを特徴とするキット。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【公表番号】特表2009−528495(P2009−528495A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556850(P2008−556850)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000726
【国際公開番号】WO2007/099333
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(302053010)エアバス・ユ―ケ―・リミテッド (54)
【Fターム(参考)】