説明

耐震構造

【課題】小変形時からPδ効果等によって耐震部材に耐力低下が生じる大変形時まで、架構の耐力を保持し、高いエネルギー吸収能力を発揮する。
【解決手段】層間変形角が1/200を越えるような大きな変形であっても、架構100を構成する梁120及び支持部以外の柱110の剛性が維持されると共に、支持部以外の柱110の曲げ降伏が防止又は抑制される。このように層間変形角が1/200を越える大きな変形が可能となることで、第一耐震装置200のブレース材202と第二耐震装置300のブレース材310,320の両方が、例えば破断等で耐力を失うまで、架構100全体として、エネルギー吸収効果を発揮する。したがって、小変形時から第一耐震装置200のブレース材202と第二耐震装置300のブレース材310,320の両方に耐力低下が生じる大変形時まで、架構100の耐力が保持され、高いエネルギー吸収能力が発揮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、摩擦ダンパーを備えたエネルギー吸収機能を有する剛性の高い剛ブレースを配置して成る剛架構と、剛性は低いが弾性範囲の大きい復元機能を有する柔ブレースを配置して成る柔架構と、を配置した制振架構において、柔ブレースと剛ブレースの各ブレースの剛性と弾性範囲とを独立して調整可能とすると共に、剛架構の梁長よりも柔架構の梁長を小さくした制震構造が提案されている。
【0003】
特許文献2には、梁架構の面内にブレース状に配置された鋼材系の大振幅用ダンパーと、前記大振幅用ダンパーに直列状に結合された小振幅用ダンパーと、の組み合せから成り、前記小振幅用ダンパーにはその振幅の大きさを限定するストッパを設けた制震架構が提案されている。
【0004】
特許文献3には、制震ダンパー自体にギャップ機構を付加することにより、経済性及び施工性を維持しつつ建物の層崩壊あるいは最弱層の甚大な被害を防止することを可能にし、且つ建物の層間変形量がギャップ幅未満である場合においても制震効果を発揮させることが可能な制震ダンパーが提案されている。
【0005】
ここで、小変形時からPδ効果等によって耐震部材に耐力低下が生じる想定外の大変形時まで、安定した耐力を保持することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006―2511号公報
【特許文献2】特開平10−280727号公報
【特許文献3】特開2010−1700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、小変形時から耐震部材に耐力低下が生じる大変形時まで、架構の耐力を保持し、エネルギー吸収能力を発揮させることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、柱と前記柱にピン接合された梁とで構成された複数層の架構と、前記架構に設けられ、前記架構が第一の層間変形角になるまでは降伏しない第一耐震部材を有する第一耐震装置と、前記架構に設けられ、前記架構が前記第一の層間変形角よりも大きな第二の層間変形角になるまでは降伏しない第二耐震部材を有し、前記第二耐震部材に剛性が生じる前記架構の層間変形角が前記第一の層間変形角と一致又は略一致するように構成された第二耐震装置と、前記柱の柱脚部に設けられ、ピン接合された又は少なくとも前記第二の層間変形角を越えると曲げ降伏するように構成された支持部と、を備える。
【0009】
請求項1の発明では、梁は柱にピン接合されているので、架構に水平力がかかっても柱と梁との接合部は回転する。また、架構にかかる水平力は第一耐震装置と第二耐震装置とで抵抗し、耐力が保持される。
【0010】
第一の層間変形角になるまでは第一耐震装置の第一耐震部材が降伏することなく剛性が保持され、架構の耐力が保持される。第一の層間変形角を越えると第一耐震装置の第一耐震部材が降伏する。
【0011】
しかし、第一の層間変形角を越えると、第二耐震装置の第二耐震部材によって、架構に剛性が付与され、耐力が保持される。なお、第一の層間変形角を越えると第一耐震装置の第一耐震部材が降伏し塑性変形することで、エネルギー吸収効果を発揮する。
【0012】
第二耐震装置の第二耐震部材は、第二の層間変形角になるまでは、降伏することなくことなく剛性が保持され、架構の耐力が保持される。第二の層間変形角を越えると、第二耐震装置の第二耐震部材が降伏し塑性変形することで、エネルギー吸収効果を発揮する。
【0013】
ここで、柱に梁がピン接合されているので柱と梁の接合部は回転する。また、柱の柱脚部にはピン接合又は曲げ降伏する支持部が設けられており、第二の層間変形角を越えると、この支持部が回転する。
【0014】
よって、第一耐震部材と第二耐震部材とが降伏する第二の層間変形角を越えるような大きな変形であっても、架構を構成する梁及び支持部以外の柱の剛性が維持されると共に、支持部以外の柱の曲げ降伏が防止又は抑制される。つまり、架構は、脆性的な破壊が生じることなく、第二の層間変形角を越える大きな変形が可能となっている。
【0015】
また、このように第二の層間変形角を越える大きな変形が可能となることで、第一耐震部材と第二耐震部材との両方が、例えば破断等で耐力を失うまで、架構全体として、エネルギー吸収効果を発揮する。
【0016】
したがって、小変形時から第一耐震部材及び第二耐震部材の両方に耐力低下が生じる大変形時まで、架構の耐力が保持され、高いエネルギー吸収能力が発揮される。
【0017】
請求項2の発明は、前記第一耐震装置の剛性と、前記第二耐震装置の剛性と、が一致又は略一致するように設定された請求項1に記載の耐震構造。
【0018】
請求項2の発明では、第一耐震装置の剛性と第二耐震装置の剛性とが一致又は略一致するように設定されているので、第一耐震装置の剛性と第二耐震装置の剛性とが一致していない構成と比較し、安定した耐震性能が発揮される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小変形時から第一耐震部材及び第二耐震部材の両方に耐力低下が生じる大変形時まで、架構の耐力を保持し、エネルギー吸収能力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る耐震構造が適用された架構を備える構造物の構造を示す立面図である。
【図2】(A)はレベル1の場合の架構を示す立面図であり、(B)はレベル2の場合の架構を示す立面図であり、(C)はレベル3の場合の架構を示す立面図である。
【図3】第二耐震装置を示す(A)が正面図であり、(B)は(A)のB−B線に沿った断面の縦断面図であり、(C)は(A)のC−C線に沿った断面を拡大した水平断面図である。
【図4】(A)はレベル1の場合の第二耐震装置の粘弾性ダンパー部の応力状態を説明する図3(C)に対応した説明図であり、(B)レベル2又はレベル3の場合の第二耐震装置の粘弾性ダンパー部の応力状態を説明する図3(C)に対応した説明図である。
【図5】柱と梁との柱梁接合部を示す(A)は水平断面図であり、(B)は梁の長手方向に沿った垂直断面図である。
【図6】(A)は柱の構造を説明するための斜視図であり、(B)柱の柱脚部を示す斜視図である。
【図7】(A)は本実施形態の耐震構造が適用された架構の層階変形角と層せん断力とを関係を示す荷重変形関係のグラフであり、(B)は第一耐震装置の荷重変形関係の示すグラフであり、(C)は第二耐震装置の荷重変形関係の示すグラフである。
【図8】本発明が適用されていない架構の上に本発明の一実施形態に係る耐震構造が適用された架構が構築された構造物の構造を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態>
図1には、本発明の一実施形態に係る耐震構造が適用された架構100で構成された構造物10が示されている。架構100は、複数層からなり、地盤12に設けられた基礎50に支持された複数の柱110と複数の梁120と含んで構成されている。なお、本実施形態における梁120は、構造上主要な大梁である。
【0022】
柱110は、本実施形態では、図5及び図6(A)に示すように、鉄筋コンクリート製のプレキャストコンクリートで構成されている。また、架構100の最下層の柱110の柱脚150は、図6(B)に示すように、コンクリート充填鋼管(CFT)で構成された支持部152が設けられている。
【0023】
柱110と梁120との柱梁接合部125は、ピン接合とされている。具体的には、図5に示すように、柱110に埋設されたブラケット112の上面部112Aに(図6(A)も参照)、梁120を載せて梁120の下端フランジ122を二本の高力ボルトでブラケット112にボルト接合されている。また、梁120の端部120Tと柱110の側面110Tの間は隙間(クリアランス)L1が設けられている。なお、本実施形態では、隙間L1は60mmに設定されている。
【0024】
図1に示すように、正面視における架構100における中央部分の各層には第一耐震装置200が設けられている。第一耐震装置200は、低降伏点鋼からなるブレース材202を正面視X状に配置し、ブレース材202の端部が柱110と梁120とで構成する角部115に固定された構成とされている。
【0025】
架構100における両側部には、二層に跨って配置された第二耐震装置300が設けられている。第二耐震装置300は、正面視においてV字形状の上側のブレース部材310と、逆V字形状の下側のブレース部材320と、を有している(図3(A)も参照)。各ブレース部材310,320の端部は、柱110と梁120とで構成する角部(隅部)115に、ブラケット等を介して固定された構成とされている。
【0026】
図3(A)に示すように、第二耐震装置300は、ブレース部材310、320と、粘弾性ダンパー部350と、を含んで構成されている。
【0027】
上側のブレース部材310は、2本の鉄骨製のブレース材312をV字型に結合したV型ブレースとされ、下側のブレース部材320は、2本の鉄骨製のブレース材322をA字型(逆V字型)に結合したA型ブレースとされている。上側のブレース部材310と下側のブレース部材320とは、粘弾性ダンパー部350によって連結されている。
【0028】
粘弾性ダンパー部350は、上側のブレース部材310(ブレース材312)の端部と一体となった上側部材360と、下側のブレース部材320(ブレース材322)の端部と一体となった下側部材370とを備えている。
【0029】
上側部材360には複数の板部材362が面外方向に間隔をあけて設けられている。下側部材370には複数の板部材372が面外方向に間隔をあけ、且つ、上側部材360の板部材362の間に設けられている。板部材362と板部材372との隙間には、板状の粘弾性体390が設けられている。この粘弾性体390は、板部材362,372に加硫接着等で固定されている。
【0030】
板部材362,372及び粘弾性体390には、貫通孔364,374,394がそれぞれ形成されており、これらの貫通孔364.374.394に円柱状のシャフト380が貫通されている。
【0031】
板部材362の貫通孔364及び粘弾性体390の貫通孔394は、シャフト380と略同じ内径の円形の孔とされている。しかし、板部材372の貫通孔374は、水平方向を長手方向とする長孔とされている。また、板部材372の貫通孔374とシャフト380との水平方向(長手方向)の端部との隙間をL2とする。
【0032】
<設定(設計)>
つぎに、本実施形態の耐震構造の各諸言の設定(設計)方法の一例について説明する。
【0033】
[レベル1]
架構100の層間変形角を1/400以下と想定する。また、震度5相当を想定。
【0034】
第二耐震装置300に貫通孔374にシャフト380が当接しないように設定する。また、第一耐震装置200のブレース材202が塑性化しないで弾性変形するように設定する(図7(B)及び図7(C)を参照)。具体的には、ベースシア係数が0.15として、ブレース材202を設計。
【0035】
また、BCJ-L1波において、層間変形角が1/400程度となる第二耐震装置300の粘弾性ダンパー部350の減衰係数hを決定する(例えば、h=0.05)。
【0036】
[レベル2]
架構100の層間変形角が、1/400よりも大きく、且つ1/200と想定する。また、震度6相当を想定。
【0037】
下側部材370の貫通孔374に当たり、上側部材360と下側部材370との相対変位が規制されるように設定する(本実施形態は隙間L2=30mm)。また、BCJ-L1波での応答速度Vの2倍に対して第二耐震装置300の粘弾性ダンパー部350を設計する。
【0038】
また、第二耐震装置300を構成する上側のブレース部材310(ブレース材312)と下側のブレース部材320(ブレース材322)とが塑性化しないで弾性変形するように設定する(図7(C)を参照)。
【0039】
なお、この状態でも、最下層の柱110の柱脚150におけるコンクリート充填鋼管(CFT)で構成された支持部152は、曲げ降伏せずに弾性が維持されるように設定することが望ましい。
【0040】
[レベル3]
架構100の層間変形角1/200よりも大きくなった場合を想定する。震度7相当以上を想定。
【0041】
最下層の柱110の柱脚150におけるコンクリート充填鋼管(CFT)で構成された支持部152が曲げ降伏するように構成する。
【0042】
<作用及び効果>
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0043】
梁120は柱110にピン接合されているので、架構100に水平力がかかっても柱110と梁120との柱梁接合部125は回転する(図5参照)。また、架構100にかかる水平力は第一耐震装置200と第二耐震装置300とが抵抗することで、耐力が保持される。
【0044】
レベル1においては、図2(A)及び図7に示すように、層間変形角が1/400になるまでは第一耐震装置200のブレース材202が降伏することなく剛性K1が保持され、架構100の耐力が保持される。
【0045】
また、図4に示すように、第二耐震装置300の上側部材360と下側部材370とが相対変位し、粘弾性体390がせん断変形する。このように粘弾性体390がせん断変形することで、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて振動が低減される。
【0046】
なお、本実施形態の架構と本発明が適用されていない架構とを比べると、応答値が減少するとともに応答のばらつきが大幅に減少することが、シミュレーション等で確認されており、ロバスト性が高い。なお、ロバスト性とは、「ある外力レベルの中での■確実性(外力特性・材料特性)に対して、応答のばらつきを抑制できること」である。
【0047】
なお、層間変形角が1/400になるまでは、第二耐震装置300のブレース材312,322には剛性が生じない。また、ブレース材312,322は、層間変形角1/400になるまでは、粘弾性ダンパー部350を支持する支持部材として機能する。
【0048】
レベル2においては、図2(B)及び図7に示すように、層間変形角が1/400を越えると第一耐震装置200のブレース材202が降伏する(特に図7(B)を参照)。しかし、第二耐震装置300の下側部材370の貫通孔374に当たり、上側部材360と下側部材370との相対変位が規制されブレース材312,322が剛性K2を生じ架構100に剛性が付与され、架構100の耐力が保持される(特に図7(C)を参照)。
【0049】
また、第一耐震装置200のブレース材202が降伏し塑性変形することで、エネルギー吸収効果を発揮する。
【0050】
第二耐震装置300のブレース材312,322は、層間変形角が1/200になるまでは、降伏することなくことなく剛性K2が保持され、架構100の耐力が保持される(特に図7(C)を参照)。
【0051】
レベル3においては、図2(C)及び図7に示すように、層間変形角が1/200を越えると、第二耐震装置300のブレース材312,322が降伏し塑性変形することで、エネルギー吸収効果を発揮する(特に図7(C)を参照)。
【0052】
さて、前述したように、柱110に梁120がピン接合されているので、柱110と梁120の柱梁接合部125は回転する。そして、層間変形角が1/200を越えると、柱110の柱脚150の支持部152が曲げ降伏し回転する共にエネルギーが吸収される。
【0053】
よって、層間変形角が1/200を越えるような大きな変形であっても、架構100を構成する梁120及び支持部152以外の柱110の剛性が維持されると共に、支持部152以外の柱110の曲げ降伏が防止又は抑制される。つまり、架構100(構造物10)は、脆性的な破壊が生じることなく、層間変形角が1/200を越える大きな変形が可能となっている。
【0054】
また、このように層間変形角が1/200を越える大きな変形が可能となることで、第一耐震装置200のブレース材202と第二耐震装置300のブレース材312,322の両方が、例えば破断等で耐力を失うまで、架構100全体として、エネルギー吸収効果を発揮する。
【0055】
したがって、小変形時からPδ効果等によって第一耐震装置200のブレース材202と第二耐震装置300のブレース材312,322の両方に耐力低下が生じる大変形時まで、架構100の耐力が保持され、高いエネルギー吸収能力が発揮される。
【0056】
つまり、一般的な鉄骨造建物では甚大な外力が作用すると梁やブレースの破断により脆性的な破壊に至る。しかし、本実施形態では、ブレースが破断するまで(理論上は層間変形角が1/10程度まで)は、Pδ効果などにより水平耐力の低下はあるものの脆性的な破壊には至らす冗長性が高い構造となる。
【0057】
柱梁接合部125は、梁120に鉛直荷重のみを負担させるピン接合とすることで、梁120の材料強度や寸法公差による耐震性能への影響を排除している。また、甚大な外力に対しても柱110の崩壊(層崩壊)となることなく、冗長性が更に向上する。
【0058】
なお、本実施形態での冗長性が高い構造とは、「建築基準法で想定しているレベルを超えるような想定外の大きな外力に対しても、本発明を適用することで脆性的な破壊に至らないこと」である。別の観点から説明すると「本発明を適用していないと想定外の大きな外力を受けると脆性的な破壊に至る場合であっても、本発明を適用することで脆性的な破壊に至らない」ことである。
【0059】
また、図7に示すように、第一耐震装置200のブレース材202の剛性K1と第二耐震装置300のブレース材312,322の剛性K2とが一致又は略一致するように設定されているので、安定した耐震性能が発揮される。
【0060】
また、第一耐震装置200のブレース材202を靭性の高い低降伏点鋼を用いることで、大変形時にも確実にエネルギー吸収能力を発揮する。また、X型としてフレームと取り合うことで梁120に軸力を負担させない架構形式となっている。
【0061】
また、図5に示すように、柱110と梁120との柱梁接合部125は、ブラケット112に梁120を乗せてボルト接合した単純な接合形式であり、建設時の仮設部材も不要であるなど施工性と経済性が高い接合形式となっている。
【0062】
なお、レベル2までは柱110と梁120の柱梁接合部125には水平力が作用するが、レベル3となり第二耐震装置300のブレース材312,322に軸力が生じることによって、柱110が曲げ抵抗型から軸抵抗型へと変化する。そして、柱110にかかる軸力は、第二耐震装置300のブレース材312,322の軸耐力によって制御することができる。このように、柱110は軸力で設計できるので柱断面が抑制できる。よって経済性が向上する。また、型枠の共有化になどからプレキャスト柱を採用することが可能となり、施工性を向上させることができる。
【0063】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0064】
例えば、上記実施形態では、架構100は基礎50の上に構築されていたがこれに限定されない。例えば、図8に示すように、本発明が適用されていない架構101の上に本発明の一実施形態に係る耐震構造が適用された架構100が構築された構造物11であってもよい。また、図示は省略するが、本発明の一実施形態に係る耐震構造が適用された架構100の上に本発明が適用されていない架構101が構築された構造物であってもよい。
【0065】
また、例えば、上記実施形態では、第二耐震装置300には粘弾性ダンパー部350が設けられていたが、これに限定されない。粘性ダンパーであってよい。更に、粘弾性ダンパー又は粘性ダンパーがない構成であってもよい(一例として、上記実施形態の粘弾性ダンパー部350に粘弾性体390が設けられていない構成)。
【0066】
また、第一耐震装置200は、低降伏点鋼からなるブレース材202がX字状に配置されたX型ブレースであったが、これに限定されない。他の型のブレースであってもよい。更に、例えば、第一耐震装置が制振間柱や制振壁で構成されていてもよい。
【0067】
また、例えば、上記実施形態では、柱110の柱脚150の支持部152は、層間変形角が1/200を越えるまで曲げ降伏することなく弾性が維持されていたが、これに限定されない。層間変形角が1/200よりも小さくても曲げ降伏してもよい。また、支持部はピン接合であってもよい。
【0068】
また、上記、レベル1、レベル2、及びレベル3で想定した層間変形角や震度は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0069】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない
【符号の説明】
【0070】
10 構造物
100 架構
110 柱
120 梁
150 柱脚部
152 支持部
200 第一耐震装置
202 ブレース材(第一耐震部材)
300 第二耐震装置
312 ブレース材(第二耐震部材)
322 ブレース材(第二耐震部材)
K1 剛性
K2 剛性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と前記柱にピン接合された梁とで構成された複数層の架構と、
前記架構に設けられ、前記架構が第一の層間変形角になるまでは降伏しない第一耐震部材を有する第一耐震装置と、
前記架構に設けられ、前記架構が前記第一の層間変形角よりも大きな第二の層間変形角になるまでは降伏しない第二耐震部材を有し、前記第二耐震部材に剛性が生じる前記架構の層間変形角が前記第一の層間変形角と一致又は略一致するように構成された第二耐震装置と、
前記柱の柱脚部に設けられ、ピン接合された又は少なくとも前記第二の層間変形角を越えると曲げ降伏するように構成された支持部と
を備える耐震構造。
【請求項2】
前記第一耐震装置の剛性と、前記第二耐震装置の剛性と、が一致又は略一致するように設定された請求項1に記載の耐震構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−36164(P2013−36164A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170225(P2011−170225)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】