説明

耐震補強用型枠支持金具

【課題】H形鋼の下フランジ下面に、堰板とバタ材(通しバタ)とを破損や傾きがないように確実かつ安定して固定することができる、耐震補強用型枠支持金具を提供すること。
【解決手段】主固定ボルト14により耐震補強用のH形鋼2の下フランジ2FLをその上面側から押えるフランジ押え部材11と、H形鋼2の下フランジ2FLの下面に接触した状態で設置される堰板3を、バタ材(通しバタ)4を介して支持する型枠支持材12と、フランジ押え部材および型枠支持材12それぞれの基部側をそれぞれ連結する連結部材13と、を有し、型枠支持材12に対し垂直方向の高さを調整可能に取り付けられ、高さを調整してH形鋼2の下フランジ2FLの下面に当接し、H形鋼2をその下フランジ2FLの下面側から支持する高さ調整ボルト16を型枠支持材12に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のコンクリート構造物(以下、既存構造物と略す。)の柱や梁の外側に沿って耐震補強用のH形鋼を設けると共に、そのH形鋼と既存構造物との空隙部分にモルタル等のコンクリートを流入して一体化を図る際に使用する堰板やバタ材(通しバタ)等の耐震補強用型枠を、その外側の一方向から固定する耐震補強用型枠支持金具に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のコンクリート構造物の耐震補強方法として、例えば、その既存構造物の柱や、梁に沿って、フレーム状に連結された耐震補強用のH形鋼を外方側に所定の間隔を有して設けると共に、そのH形鋼と既存構造物との空隙部分にモルタル等を流入して両者の一体化を図る耐震補強方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、一般に、耐震補強の施工では、モルタルを流入する前に、型枠をH形鋼の各フランジ面に沿わせた状態で設置するが、これらの型枠を固定する方法としては、前記特許文献1の方法や、従来の型枠緊結金具を用いる方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
これらの方法は、モルタル固化後に幅止めボルトのナットや、型枠緊結金具等を取り外す必要があるため、作業手順が煩雑になる、という問題はあるが、特に後者の固定方法については、型枠(堰板)外面にその長手方向に沿ったバタ材(通しバタ)を設けるため、型枠緊結金具の取り付けピッチを広く取ることができるという利点がある。
【0005】
また、H形鋼の各フランジに対して基端部がくさび部材を介して固定されると共に、その先端部で型枠下面を支持する型枠支持金具が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この支持金具は、補強材であるH形鋼が開口周りや柱部の外面に設けられるような箇所を対象としたものであるが、これを用いることで下フランジに設置された型枠を、支保工を使用することなく固定することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−193639号公報
【特許文献2】特開2007−2635号公報
【特許文献3】特開2000−320156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この支持金具は、型枠を直接支持する構成であるため、従来の木製型枠(堰板)を用いると、支持金具の取り付けピッチを狭くする必要があり、従来のものより必要設置数が多くなる、という問題がある。
【0008】
また、取り付けピッチを広くさせるために、型枠(堰板)下面にバタ材(通しバタ)を設け、その状態で支持金具を下フランジに固定させようとすると、くさび部材を打ち込むと同時に支持金具の先端部が型枠(堰板)から離れる方向(下方側)に傾いてしまい、モルタル部分のはらみ、流出の虞れがあり、型枠(堰板)を支持する力が弱くなる、という問題もある。
【0009】
ここで、この先端部の傾きを防止するために、型枠を支持金具の基端部側まで延ばし、その基部側周辺にバタ材を設けたとしても、支持金具の基端部がそのバタ材(通しバタ)に喰い込んでしまうため、結果的に傾きを防止することができない。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、H形鋼の下フランジ下面に、堰板とバタ材(通しバタ)とを破損や傾きがないように確実かつ安定して固定することができる、耐震補強用型枠支持金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の耐震補強用型枠支持金具は、主固定ボルトにより耐震補強用のH形鋼の下フランジをその上面側から押えるフランジ押え部材と、H形鋼の下フランジの下面に接触した状態で設置される堰板を、バタ材を介して支持する型枠支持材と、前記フランジ押え部材および前記型枠支持材の基部側をそれぞれ連結する連結部材と、を有し、前記連結部材を介した前記フランジ押え部材と前記型枠支持材との間に、前記H形鋼の下フランジと、前記堰板と、前記バタ材とが配設される耐震補強用型枠支持金具であって、前記型枠支持材に高さ調整可能に取り付けられ、高さを調整して前記H形鋼の下フランジの下面に当接することにより、前記H形鋼をその下フランジの下面側から支持する高さ調整ボルトを有する、ことを特徴とする耐震補強用型枠支持金具である。
ここで、前記主固定ボルトと、前記調整ボルトとは、それらの軸心がほぼ同一直線上に設けられている、ようにしても勿論よい。
また、前記フランジ押え部材には、前記主固定ボルトより前記H形鋼のウエブに近い先端側に、副固定ボルトが設けられている、ようにしても勿論よい。
また、さらに、前記型枠支持材の長手方向にスライド可能に取り付け、前記型枠支持材の長手方向の長さを補うスライド部材を有する、ようにしても勿論よい。
また、さらに、前記スライド部材の両端部のうち、前記型枠支持材をスライドさせる開口端とは逆側の閉塞端側に連結され、前記型枠支持材および前記スライド部材の長手方向の長さを補う長さ補助部材を有する、ようにしても勿論よい。
また、さらに、前記型枠支持材における前記連結部材の取り付け側とは反対側の端部に連結され、前記型枠支持材の長手方向の長さを補う長さ補助部材を有する、ようにしても勿論よい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耐震補強用型枠支持金具によれば、型枠支持材に取り付けた高さ調整ボルトにより、堰板とバタ材の厚さ(高さ)分を確保して高さ調整ボルト上面がH形鋼の下フランジの下面に当接するように高さを調整することができるため、H形鋼の下フランジの上面側から主固定ボルトを締め付けても、高さ調整ボルトにより堰板とバタ材に過大な締め付け力が加わることを防止した状態で、堰板とバタ材(通しバタ)とをH形鋼の下フランジ下面に破損や傾きがないように確実かつ安定して固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具を使用する耐震補強用型枠の一例を示す図である。
【図2】(a)〜(d)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具全体の斜視図、正面図、平面図、左側面図である。
【図3】(a),(b)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具を構成する型枠支持材の正面図、側面図である。
【図4】(a),(b)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具を構成する連結部材の正面図、平面図である。
【図5】(a),(b)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具を構成する補強プレートの正面図、平面図である。
【図6】(a),(b)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具の使用例を示す斜視図である。
【図7】(a)〜(c)は、それぞれ、実施の形態2の耐震補強用型枠支持金具に追加されるスライド部材の正面図、平面図、左側面図である。
【図8】(a)〜(c)は、それぞれ、実施の形態2のスライド部材の使用例を示す図である。
【図9】(a)〜(c)は、それぞれ、実施の形態3の耐震補強用型枠支持金具に追加される長さ補助部材の正面図、平面図、左側面図である。
【図10】それぞれ、実施の形態3の長さ補助部材の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る耐震補強用型枠支持金具の実施の形態1〜3を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
実施の形態1.
図1は実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1を使用する耐震補強用型枠の一例を示す図、図2(a)〜(d)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1全体の斜視図、正面図、平面図、左側面図であり、図3(a),(b)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具を構成する型枠支持材の正面図、側面図、図4(a),(b)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具を構成する連結部材の正面図、平面図、図5(a),(b)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具を構成する補強プレートの正面図、平面図である。
【0016】
図1に示すように、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1を使用する耐震補強用型枠は、既存構造物10の柱や梁外側の壁面10aに沿って、その外側に所定の間隔を有して、内側の上フランジ2FUの一部分を、モルタル等を流入させるためにカットしたH形鋼2を設けると共に、そのH形鋼2と既存構造物10との空隙部分にモルタル等を流入して一体化を図るものである。なお、図1において、3はコンクリート型枠である堰板、4a,4bは堰板3を下方側から支持するバタ材である。また、210は既存構造物10の壁面10aやH形鋼2のウエブ2Wに適宜設けられたスタッドボルトである。そして、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1は、H形鋼2の下側フランジ2FLと、堰板3と、バタ材4a,4bとを固定するものである。
【0017】
図2(a)〜(d)に示すように、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1は、主固定ボルト14により耐震補強用のH形鋼2の下フランジ2FLをその上面側から押えるフランジ押え部材11と、H形鋼2の下フランジ2FLの下面に接触した状態で設置される堰板3をバタ材(通しバタ)4を介して支持する型枠支持材12と、フランジ押え部材11および型枠支持材12それぞれの基部側を連結する連結部材13と、を有する。つまり、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1は、フランジ押え部材11と型枠支持材12との間に、H形鋼2の下フランジ2FLと、堰板3と、バタ材4a,4bとが配設される空間部を形成するようにほぼコ字状に形成されている。
【0018】
フランジ押え部材11は、図2(a)〜(d)に示すように、断面ほぼC形の一対のチャンネル材111,112間に固定ナット113,114を挟んで溶接して形成されたものである。そして、フランジ押え部材11の長手方向ほぼ中央に溶接された固定ナット113には、主固定ボルト14がネジ結合により取り付けられている一方、その長手方向の先端側に溶接された固定ナット114には、副固定ボルト15がネジ結合により取り付けられている。そして、主固定ボルト14および副固定ボルト15は、それらを回転させれば、固定ナット113,114に対し上下に移動することができ、H形鋼2の下フランジ2FLを図上上側から押さえることができる。なお、本発明では、主固定ボルト14を設けることは必須であるのに対し、副固定ボルト15を設けることは任意とするが、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1は、H形鋼2の下フランジ2FLの一方側、すなわち既存構造物10の壁とは反対側のみを片持ち的に支持するので、副固定ボルト15を設けないと、H形鋼2の下フランジ2FLに実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1を取り付けた際、金具全体が安定せず回転や落下等し易くなるので、副固定ボルト15を設けることが望ましい。
【0019】
型枠支持材12は、図2(a)〜(d)および図3(a),(b)に示すように、断面長方形の鋼管から構成されており、その上面21には、孔開け部分に溶接された固定ナット121と、その固定ナット121にネジ結合して型枠支持材12に対し垂直方向の高さを調整可能に取り付けられ、その回転により高さを調整して前記H形鋼2の下フランジ2FLの下面に当接し、H形鋼2をその下フランジ2FLの下面側から支持する高さ調整ボルト16が設けられている。
【0020】
ここで、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1では、図2(a),(b)に示すように、フランジ押え部材11に設けられる主固定ボルト14と、型枠支持材12に設けられる調整ボルト16とは、それらの軸心が一致するようにほぼ同一直線上に設けられている。これにより、H形鋼2の下フランジ2FLの上面側と下面側とで、一直線上に押圧力が加わるので、H形鋼2の下フランジ2FLの上面側と下面側とで押圧力が加わる場所のズレにより生じる耐震補強用型枠支持金具1の回転を防止することができる。なお、主固定ボルト14と、調整ボルト16とがほぼ同一直線上に設けられることは、望ましい態様であるが、本発明では、これに限らず、同一直線状でなく、ずれていても勿論よい。
【0021】
また、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1では、型枠支持材12の両側面22,23に、4つの連結孔24a〜24dが形成されている。ただし、4つの連結孔24a〜24dは、本実施の形態1では使用せず、後述する実施の形態2で使用するものであるので、実施の形態1では省略しても良い。また、4つでなく、3以下でも、5以上の連結孔でも勿論よい。
【0022】
また、連結部材13は、図4(a),(b)に示すように、断面長方形の鋼管から構成されている。そして、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1では、連結部材13の側面131と、型枠支持材12の上面21とが、図5(a),(b)に示すような補強プレート17により溶接されて補強されている。
【0023】
次に、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1の使用方法について説明する。
【0024】
以上のように構成された実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1を、図6(a),(b)に示すように、フランジ押え部材11と型枠支持材12との間のほぼコ字状の空間部に、H形鋼2の下フランジ2FLと、堰板3と、バタ材4a,4bとを配設する。
【0025】
その際、図6(a)に示すように、型枠支持材12の上面21の固定ナット121に取り付けられた高さ調整ボルト16を回転させることにより、堰板3とバタ材4a,4bの厚さ(高さ)分を確保して、高さ調整ボルト16上面がH形鋼2の下フランジ2FLの下面に当接するように高さを調整する。
【0026】
また、図6(b)に示すように、フランジ押え部材11を構成する一対のチャンネル材111,112間の固定ナット113,114にネジ結合された主固定ボルト14および副固定ボルト15を回転させて、H形鋼2の下フランジ2FLの上面側から主固定ボルト14等により締め付ける。
【0027】
従って、本実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1によれば、型枠支持材12に取り付けた高さ調整ボルト16を回転させることにより、堰板3とバタ材4a,4bの厚さ(高さ)分を確保して高さ調整ボルト16上面がH形鋼2の下フランジ2FLの下面に当接するように高さを調整することができるため、H形鋼2の下フランジ2FLの上面側から主固定ボルト14および副固定ボルト15により締め付けても、高さ調整ボルト16により堰板3とバタ材4a,4bに過大な締め付け力が加わることを防止することができる。その結果、堰板3やバタ材4a,4bの破損を防止してH形鋼2の下フランジ2FLの下面側に、堰板3とバタ材4a,4bとを確実に固定することができる。また、モルタルを注入し、モルタル固化後に、高さ調整ボルト16を逆回転させて下げることにより、簡単に堰板3やバタ材4a,4bを取外すことができる。
【0028】
また、本実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1では、上述したように、フランジ押え部材11に設けられる主固定ボルト14と、フランジ押え部材11に対向する型枠支持材12に設けられる調整ボルト16とは、H形鋼2の下フランジ2FLを挟んで互いに対向するようにほぼ同一直線上に設けるようにしたため、H形鋼2の下フランジ2FLの上面側と下面側とで一直線上に押圧力が加わることになり、H形鋼2の下フランジ2FLの上面側と下面側とで押圧力が加わる場所のズレにより生じる耐震補強用型枠支持金具1の回転を防止することができる。なお、本発明では、主固定ボルト14と高さ調整ボルト16とをほぼ同一直線上に設けることは任意であり、例えば、高さ調整ボルト16を主固定ボルト14と副固定ボルト15との中間位置に設けるようにしても勿論良い。
【0029】
また、本実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1では、フランジ押え部材11に、主固定ボルト14の他に副固定ボルト15を設けるようにしたため、主固定ボルト14のみしか設けない場合と比較して、金具1自体の落下や回転等を防止して、より安定してH形鋼2の下フランジ2FLの下面側に堰板3とバタ材4a,4bとを固定することができる。なお、本発明では、副固定ボルト15を設けることは任意である。
【0030】
また、本実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1では、連結部材13の側面131と、型枠支持材12の上面21とを補強プレート17により溶接することにより補強するようにしたため、より安定してH形鋼2の下フランジ2FLの下面側に堰板3とバタ材4a,4bとを固定することができる。なお、本発明では、補強プレート17を設けることは任意である。
【0031】
実施の形態2.
次に、本発明に加わる実施の形態2の耐震補強用型枠支持金具について説明する。なお、実施の形態2の耐震補強用型枠支持金具では、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1に、さらに、スライド部材18を追加したものである。従って、実施の形態2のスライド部材18とその使用例について説明する。
【0032】
図7(a)〜(c)は、それぞれ、実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1に追加される実施の形態2のスライド部材18の正面図、平面図、側面図である。
【0033】
実施の形態2のスライド部材18は、図7(a)〜(c)に示すように、左右両側面181,182と底面183とを有する上部開口形状の断面U字状のチャネル材から構成されており、左右両側面181,182の間隔は、その間を型枠支持材12がスライドできるように、型枠支持材12の両側面22,23の幅より広く構成している。なお、長手方向の長さは、型枠支持材12の長手方向の長さを380mmとした場合、スライド部材18の長手方向の長さは、450mmとしている。
【0034】
また、実施の形態2のスライド部材18の左右両側面181,182には、図7(a)〜(c)に示すように、型枠支持材12の両側面22,23を貫通する4つの連結孔24a〜24d(図2参照。)と同様に、左右両側面181,182を貫通する4つの連結孔184a〜184dが形成されている。ここで、型枠支持材12の両側面22,23を貫通する4つの連結孔24a〜24dと、スライド部材18の左右両側面181,182を貫通する4つの連結孔184a〜184dの孔径および孔開け間隔は同一である。また、スライド部材18に対し型枠支持材12のスライドを可能にするため、連結孔184aと連結孔184cとの間の間隔、および連結孔184bと連結孔184dとの間の間隔は、連結孔24aと連結孔24cとの間の間隔、および連結孔24bと連結孔24dとの間の間隔と同一にしている。これにより、後述するように、型枠支持材12の長手方向の長さの380mmで足りない場合に、スライド部材18を利用して、型枠支持材12の長手方向の不足する長さを補うようにしている。なお、本発明では、型枠支持材12の両側面22,23を貫通する4つの連結孔24a〜24dと、スライド部材18の左右両側面181,182を貫通する4つの連結孔184a〜184dとを形成することは任意であり、スライド部材18を利用して、型枠支持材12の長手方向の不足する長さを補えればよいので、型枠支持材12の両側面22,23とスライド部材18の左右両側面181,182とのそれぞれの長手方向に長尺の長孔を形成するようにしても勿論よい。
【0035】
また、実施の形態2のスライド部材18の長手方向の一端側は、型枠支持材12が出入してスライド可能なように、型枠支持材12を出入自在に開放する開口端18aが設けられている一方、他端側は、ボルト孔18b2が形成された閉塞板18b1により塞がれた閉塞端18bを形成している。ただし、スライド部材18の長手方向の他端側を閉塞板18b1により塞がれた閉塞端18bを形成することは、次に説明する実施の形態3の長さ補助部材19を連結するためであり、本実施の形態2では、実施の形態3の長さ補助部材19を連結することを前提にしていないため、スライド部材18の長手方向の他端側を閉塞板18b1で塞がず開口端としても勿論良い。
【0036】
次に、実施の形態2のスライド部材18の使用方法について説明する。
【0037】
図8(a)〜(c)は、それぞれ、実施の形態2のスライド部材18の使用方法を示す説明図である。
【0038】
図8(a)は、実施の形態2のスライド部材18の左右両側面181,182間に型枠支持材12を挿入し、スライド部材18の左右両側面181,182の4つの連結孔184a〜184dと、型枠支持材12の両側面22,23に形成された4つの連結孔24a〜24dとの位置を合わせて、そのうち2箇所、例えば、連結孔184a,184cと連結孔24a,24cとにそれぞれ固定ボルト185a,185bを挿入して連結した状態を示している。ここで、例えば、既存構造物10の壁面10aからH形鋼2の下フランジ2FLの外側端部まで400mmあり、型枠支持材12の長手方向の長さ380mmより長いとする。この場合、実施の形態2のスライド部材18がなければ、型枠支持材12だけでは、既存構造物10の壁面10aから遠いバタ材4bを支持することができても、既存構造物10の壁面10aに近いバタ材4aを支持することができないが、実施の形態2のスライド部材18を追加したことにより、実施の形態2のスライド部材18により既存構造物10の壁面10aに近いバタ材4aを支持することが可能となる。
【0039】
図8(b)は、図8(a)に示す場合よりも幅広の堰板3を使用したため、実施の形態2のスライド部材18の左右両側面181,182間に型枠支持材12を挿入し、スライド部材18の左右両側面181,182の連結孔184b,184dと、型枠支持材12の両側面22,23に形成された連結孔24a,24cとの位置を合わせて、それぞれ固定ボルト185a,185bを挿入して連結した状態を示している。つまり、スライド部材18と型枠支持材12との間で、連結孔を1つずらして連結した状態を示している。ここで、例えば、既存構造物10の壁面10aからH形鋼2の下フランジ2FLの外側端部まで475mmあり、型枠支持材12の長手方向の長さ380mmより長いので、実施の形態2のスライド部材18がなければ、型枠支持材12だけでは、既存構造物10の壁面10aから遠いバタ材4bを支持することができても、既存構造物10の壁面10aに近いバタ材4aを支持することができない。そのため、実施の形態2のスライド部材18を使用して連結孔を1つずらして連結することにより、図8(b)に示すように、実施の形態2のスライド部材18により既存構造物10の壁面10aに近いバタ材4aを支持することが可能となる。
【0040】
図8(c)は、図8(a),(b)に示す場合よりもさらに幅広の堰板3を使用したため、実施の形態2のスライド部材18の左右両側面181,182間に型枠支持材12を挿入し、スライド部材18の左右両側面181,182の連結孔184b,184dと、型枠支持材12の両側面22,23に形成された連結孔24a,24cとの位置を合わせて、それぞれ固定ボルト185a,185bを挿入して連結した状態を示している。つまり、スライド部材18と型枠支持材12との間で、連結孔を1つずらして連結した状態を示している。ここで、例えば、既存構造物10の壁面10aからH形鋼2の下フランジ2FLの外側端部まで550mmあり、型枠支持材12の長手方向の長さ380mmより長いので、実施の形態2のスライド部材18がなければ、型枠支持材12だけでは、既存構造物10の壁面10aから遠いバタ材4bを支持することができても、既存構造物10の壁面10aに近いバタ材4aを支持することができない。そのため、実施の形態2のスライド部材18を使用して連結孔を1つずらして連結することにより、図8(c)に示すように、実施の形態2のスライド部材18により既存構造物10の壁面10aに近いバタ材4aを支持することが可能となる。
【0041】
なお、スライド部材18の左右両側面181,182および型枠支持材12の両側面22,23に設ける連結孔の数は上述したように任意であり、また、スライド部材18のスライドによる調整量も任意である。
【0042】
従って、本実施の形態2の耐震補強用型枠支持金具によれば、前述の実施の形態1の耐震補強用型枠支持金具1の効果が得られると共に、スライド部材18を追加したことにより、型枠支持材12の長手方向の長さでは不足する長さを簡単に補うことが可能となる。
【0043】
実施の形態3.
次に、本発明に加わる実施の形態3の耐震補強用型枠支持金具について説明する。なお、実施の形態3の耐震補強用型枠支持金具では、実施の形態2のスライド部材18に連結してさらに長さを補助する長さ補助部材19を追加したものである。従って、実施の形態3の長さ補助部材19とその使用例について説明する。
【0044】
図9(a)〜(c)は、それぞれ、実施の形態3の長さ補助部材19の正面図、平面図、側面図である。
【0045】
実施の形態3の長さ補助部材19は、実施の形態2のスライド部材18に連結して、さらに型枠支持材12の長さを補助するもので、図9(a)〜(c)に示すように、スライド部材18と同様に、両側面191,192と底面193とを有する上部開口形状の断面U字状のチャネル材から構成されている。なお、長さ補助部材19の長手方向の長さは、型枠支持材12の長手方向の長さを380mm、スライド部材18の長手方向の長さ450mmに対し、100mmとしているが、この長さは任意であり、例えば、200mm以上にしても勿論よい。
【0046】
そして、実施の形態3の長さ補助部材19の長手方向の一端側の開口端19a側には、スライド部材18の閉塞端18b側に設けられた閉塞板18b1に連結した際に、回転止めするための回転止めピース19a1が複数設けられている一方、他端側には、ボルト孔19b2が形成された閉塞板19b1により塞がれた閉塞端19bを形成している。
【0047】
次に、実施の形態3の長さ補助部材19の使用方法について説明する。
【0048】
図10は、実施の形態3の長さ補助部材19の使用方法を示す説明図である。
【0049】
つまり、実施の形態3の長さ補助部材19の開口端19a側を、実施の形態2のスライド部材18の閉塞端18bの閉塞板18b1に当てて、長さ補助部材19の閉塞端19b側の閉塞端19b1と、スライド部材18の閉塞端18b側の閉塞板18b1とを連結ボルト20により連結した状態を示している。ここで、例えば、既存構造物10の壁面10aからH形鋼2の下フランジ2FLの外側端部まで600mm以上あった場合、図10に示すように、実施の形態2のスライド部材18と実施の形態3の長さ補助部材19がなければ、型枠支持材12だけでは、既存構造物10の壁面10aから遠いバタ材4bを支持することができても、既存構造物10の壁面10aに近いバタ材4aを支持することができない。そのため、実施の形態2のスライド部材18に、さらに、実施の形態3の長さ補助部材19を付け足して連結することにより、図10に示すように、既存構造物10の壁面10aに近いバタ材4aを支持することが可能となる。
【0050】
従って、本実施の形態3の耐震補強用型枠支持金具によれば、前述の実施の形態1,2の耐震補強用型枠支持金具の効果が得られると共に、実施の形態2のスライド部材18に、さらに、実施の形態3の長さ補助部材19を付け足して連結することにより、型枠支持材12とスライド部材18とを連結しただけでは不足する長さを簡単に補うことが可能となる。
【0051】
なお、実施の形態3の耐震補強用型枠支持金具では、実施の形態2のスライド部材18に連結してさらに長さを補助する長さ補助部材19について説明したが、本発明ではこれに限らず、実施の形態1の型枠支持材12の一端部に直接連結して、実施の形態2のスライド部材18と同様に、実施の形態1の型枠支持材12の長さの不足する長さを補うようにしても勿論よい。
【符号の説明】
【0052】
1 耐震補強用型枠支持金具
11 フランジ押え部材
12 型枠支持材
13 連結部材
14 主固定ボルト
15 副固定ボルト
16 高さ調整ボルト
17 補強プレート
18 スライド部材
19 長さ補助部材
20 連結ボルト
2 H形鋼
2FU 上フランジ
2FL 下フランジ
2W ウエブ
210 スタッドボルト
3 堰板
4a,4b バタ材(通しバタ)
10 既存構造物
10a 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主固定ボルトにより耐震補強用のH形鋼の下フランジをその上面側から押えるフランジ押え部材と、H形鋼の下フランジの下面に接触した状態で設置される堰板を、バタ材を介して支持する型枠支持材と、前記フランジ押え部材および前記型枠支持材の基部側をそれぞれ連結する連結部材と、を有し、前記連結部材を介した前記フランジ押え部材と前記型枠支持材との間に、前記H形鋼の下フランジと、前記堰板と、前記バタ材とが配設される耐震補強用型枠支持金具であって、
前記型枠支持材に高さ調整可能に取り付けられ、高さを調整して前記H形鋼の下フランジの下面に当接することにより、前記H形鋼をその下フランジの下面側から支持する高さ調整ボルトを有する、
ことを特徴とする耐震補強用型枠支持金具。
【請求項2】
請求項1に記載の耐震補強用型枠支持金具において、
前記主固定ボルトと、前記調整ボルトとは、それらの軸心がほぼ同一直線上に設けられている、
ことを特徴とする耐震補強用型枠支持金具。
【請求項3】
請求項2に記載の耐震補強用型枠支持金具において、
前記フランジ押え部材には、
前記主固定ボルトより前記H形鋼のウエブに近い先端側に、副固定ボルトが設けられている、
ことを特徴とする耐震補強用型枠支持金具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一請求項に記載の耐震補強用型枠支持金具において、
さらに、
前記型枠支持材の長手方向にスライド可能に取り付け、前記型枠支持材の長手方向の長さを補うスライド部材を有する、
ことを特徴とする耐震補強用型枠支持金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−122227(P2012−122227A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272686(P2010−272686)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】