説明

耐食性水系塗料組成物及び耐食性アルミニウム塗装材

【解決課題】ノンクロムであって耐食性に優れ、VOC排出量低減化が可能であり、しかも、塗布ムラ、ハジキ、タレ等の問題がなくて塗装作業性にも優れた耐食性水系塗料組成物、及びこれを用いてポストコート塗装された耐食性アルミニウム塗装材を提供する。
【解決手段】塗料樹脂、造膜助剤及び水を含む水含有量50質量%以上の水系塗料組成物であり、上記塗料樹脂がシリコンを0.01〜5質量%の割合で含むと共に、造膜助剤が3〜15質量%の割合で含有されている耐食性水系塗料組成物である。
また、この耐食性水系塗料組成物によりポストコート塗装された耐食性アルミニウム塗装材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐食性水系塗料組成物及び耐食性アルミニウム塗装材に係り、特に限定されるものではないが、スプレー塗装等のポストコート塗装に有利に用いることができ、VOC排出量の低減化を達成することができると共に塗装作業性にも優れた耐食性水系塗料組成物及び耐食性アルミニウム塗装材に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム塗装材の耐食性処理には、クロメート処理やリン酸クロメート処理等の6価又は3価のクロムを用いるクロム系表面処理剤を用いる方法(特開平1-299,877号、特公平02-42,389号、特公平03-77,440号等の各公報参照)が知られており、これらの方法は現在でも広く使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、環境負荷物質の使用を規制しようとする気運が世界的に高まってきており、EUでは廃自動車指令等により6価のクロムに関する法規制が始まっている。また、3価のクロムについては、今のところ法規制はないが、加熱すると一部6価のクロムに変化するという報告もあり、6価及び3価のクロムを含まない、いわゆる「ノンクロム」であって、環境にやさしい耐食性の良好なプライマー処理剤の開発が望まれている。
【0004】
更に、塗装材においては、ノンクロム以外にも揮発性有機溶剤(VOC)の排出が問題になっており、このVOC排出量削減の有効な手段の一つとして、従来の溶剤系塗料組成物に代えて水系塗料組成物を使用することが試みられており、例えば、特開2004-283,824号公報には、ノンクロムであってVOC排出量を低減した環境に優しい耐食性塗装材として、接触角が30°以下のアルミニウム基材表面に、水系又はエマルジョン系のシリコン含有塗料を塗装してシリコン元素を含むシリコン含有塗膜が形成されているアルミニウム塗装材が提案されている。
【0005】
しかしながら、水系塗料組成物は、溶剤系塗料組成物に比べると高い表面張力を持つため、スプレー塗装等のポストコート塗装時において塗料が濡れ難く、ハジキが発生し易い、揮発性が溶剤に比べて悪いため塗装ムラやタレが発生し易い等の問題がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、塗料組成物中に有機溶剤やレベリング剤等の添加剤を添加することが考えられるが、多量の添加剤を添加した場合には、良好な表面張力低下の効果は得られるものの、水性化や低VOC化の目的にそぐわなくなり、また、少量の添加剤で表面張力が低下する塗料を用いて添加剤の使用量を少量に抑えても、基材が金属やプラスチック等の場合で基材表面の接触角が高い(撥水性)場合には、ハジキの問題を解消することは難しく、溶剤系塗料を用いた場合のような均一な塗装外観を得るのは困難である。
【0007】
また、例えば特開2004-283,824号公報記載の発明においては、基材表面の接触角を下げて親水性にすることにより、水系塗料組成物におけるポストコート塗装時のハジキの問題は解決したが、タレの問題を解決することは難しく、ノンクロムであって耐食性に優れ、しかも、これらハジキやタレの問題がなくて塗装作業性にも優れた水系塗料組成物は知られていない。
【0008】
【特許文献1】特開2004-283,824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、ノンクロムであって耐食性に優れ、VOC排出量低減化が可能であり、しかも、塗布ムラ、ハジキ、タレ等の問題がなくて塗装作業性にも優れた耐食性水系塗料組成物について鋭意検討した結果、意外なことには、塗料樹脂中のシリコン含有量と塗料組成物中の造膜助剤の含有量とを所定の範囲内にすることにより、ノンクロムで耐食性に優れ、VOC排出量低減化が可能な水含有量50質量%以上の水系塗料組成物であっても、塗布ムラ、ハジキ、タレ等の問題がなくて優れた塗装作業性を有することを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
また、本発明者らは、このような耐食性水系塗料組成物がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム基材の表面に対して直接塗装するための、あるいは、プライマー塗装としてのポストコート塗装用として好適であることを見い出し、本発明を完成した。
【0011】
従って、本発明の目的は、ノンクロムであって耐食性に優れ、VOC排出量低減化が可能であり、しかも、塗布ムラ、ハジキ、タレ等の問題がなくて塗装作業性にも優れた耐食性水系塗料組成物を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、このような耐食性水系塗料組成物がアルミニウム基材の表面に直接ポストコート塗装された耐食性アルミニウム塗装材を提供することにある。
【0013】
更に、本発明の他の目的は、このような耐食性水系塗料組成物がアルミニウム基材の表面にプライマー塗料としてポストコート塗装された耐食性アルミニウム塗装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、塗料樹脂、造膜助剤及び水を含む水含有量50質量%以上の水系塗料組成物であり、上記塗料樹脂がシリコンを0.01〜5質量%の割合で含むと共に、造膜助剤が3〜15質量%の割合で含有されている耐食性水系塗料組成物である。
【0015】
また、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム基材の表面にこのような耐食性水系塗料組成物が直接ポストコート塗装されている耐食性アルミニウム塗装材であり、更に、アルミニウム基材の表面にこのような耐食性水系塗料組成物がプライマー塗料としてポストコート塗装されている耐食性アルミニウム塗装材である。
【0016】
本発明において、塗料樹脂は、その固形分中にシリコンを0.01質量%以上5質量%以下、好ましくは0.5質量%以上3質量%以下の割合で含むものであればよく、それがシリコン含有樹脂のみで構成されていても、また、このシリコン含有樹脂とその他の例えばアクリル、ウレタン、ポリエステル等のシリコン非含有樹脂との混合物であってもよいが、所定のシリコン含有量を達成するために好ましくはシリコン含有樹脂のみで構成される。シリコン含有量が0.01質量%より少ないと耐食性が低下し、反対に、5質量%より多いと塗膜が硬くなって塗膜の密着性が低下する。
【0017】
また、上記シリコン含有樹脂としては、例えば、アクリルシリコーン系、ウレタンシリコーン系、有機樹脂変性シリコーン系、シリカ・有機樹脂複合系、アルカリシリケート系、シリカ系等の樹脂を挙げることができ、これらはその1種のみを単独で用いることができるほか、2種以上の混合物として用いることもできる。これらのシリコン含有樹脂については、耐食性の観点から、好ましくはアクリルシリコーン系エマルジョンである。
【0018】
また、上記造膜助剤としては、例えば、カルビトール、ブチルカルビトール、酢酸カルビトール、酢酸ブチルカルビトール等のカルビトール系、酢酸ブチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テキサノール、ソルフィット等を挙げることができ、その1種のみを単独で用いることができるほか、2種以上の混合物として用いることもできる。この造膜助剤は、塗料組成物中に3重量%以上15重量%以下、好ましくは5重量%以上10重量%以下の範囲で含有されていることが必要であり、含有量が3重量%より少ないとスプレー塗装時に塗装ムラが生じ均一な外観が得られなくなり、反対に、15重量%を超えると、効果が飽和し、また、塗料組成物中の有機溶剤量が多くなることからVOC排出量低減化が難しくなる。
【0019】
本発明の耐食性水系塗料組成物については、必要により主としてタレ防止をより確実にするレオロジー調整剤として増粘剤を添加してもよい。この目的で用いられる増粘剤としては、例えば、モンモリロナイト系粘土鉱物、これらの鉱物を含むベントナイト、コロイド状アルミナ等の無機充填剤系増粘剤、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヘキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系増粘剤、ウレタン樹脂系、ポリエーテル樹脂系、ウレタン変性ポリエーテル系等の会合型増粘剤、ポリエーテルポリオール系ウレタン樹脂系等の特殊高分子非イオン型増粘剤、ノニオン系等の界面活性剤系増粘剤、アクリル酸系増粘剤等を挙げることができ、これらはその1種のみを使用できるほか、2種以上混合して用いることもできる。この増粘剤の使用量は、塗料樹脂の固形分100質量部に対して5質量部以下、好ましくは2.5質量部以下の範囲であるのがよく、5質量部を超えて添加すると、塗膜の耐食性が低下する。
【0020】
本発明の耐食性水系塗料組成物は、そのままで、あるいは、必要に応じて着色顔料、フィラー、体質顔料、溶剤、消泡剤、紫外線吸収剤、湿潤剤、酸化防止剤、防菌剤、防かび剤、防藻剤、レベリング剤等の添加剤を配合して、種々の基材の表面に塗布することができ、特に成形加工等の手段で製品の形状に形成された基材の表面に塗装する、いわゆるポストコート塗装用として好適に用いることができる。本発明の耐食性水系塗料組成物は、基材の表面に直接ポストコート塗装してもよく、また、プライマー塗料としてポストコート塗装してもよい。
【0021】
本発明の耐食性水系塗料組成物が塗布される基材については、特に限定されないが、好適には金属材料や無機材料である。基材がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム基材である場合、例えば圧延材、押出形材、ダイカスト材、鋳物材等や、これらを適宜加工した加工材等が挙げられる。
【0022】
基材としてアルミニウム基材が用いられる場合、本発明の耐食性水系塗料組成物をポストコート塗装する前に、予めアルミニウム基材の表面にアルカリ性溶液、酸性溶液、界面活性剤等を含む中性溶液等による前処理や、これらの前処理を2種以上組み合わせた前処理を施してもよく、この前処理の際にアルミニウム基材の表面がエッチングされても、エッチングされなくてもよい。また、前処理の前後に、更には2種以上の前処理を行う場合には各前処理の間にそれぞれ水洗を行なってもよく、この際に用いる水については工業用水、地下水、水道水、イオン交換水等のいずれでもよい。更に、前処理後又は水洗後には、必要により、エアーブロー、ドライヤー、オーブン等の強制乾燥手段で、あるいは、室温で放置する自然乾燥により乾燥してもよい。
【0023】
また、上記の前処理の後、アルミニウム基材の表面に塗膜層を形成する前に陽極酸化処理を行ってもよい。陽極酸化処理としては、酸性浴の建浴に硫酸、シュウ酸、クロム酸、ホウ酸等を用いる公知の方法が適用可能であり、また、低温で高い電解電圧を付与して皮膜の溶解を抑えた硬質アルマイト処理も適用することができる。
【0024】
更に、上記陽極酸化皮膜については、この皮膜が、厚さ方向に沿って細径の通電孔が多数内包された多孔性であるため、陽極酸化皮膜が形成された後直ちに、公知の方法で封孔処理を行って通電孔を封孔してもよい。また、上記陽極酸化皮膜はその表面に着色が施されたものであってもよく、この着色が施された陽極酸化皮膜としては、例えば陽極酸化皮膜が電解着色された電解着色陽極酸化皮膜等が挙げられる。
【0025】
更にまた、アルミニウム基材の表面に塗膜層を形成する前に、アルミニウム基材の粗面化処理を行ってもよい。粗面化処理の具体的な方法としては、例えば、サンドペーパー、不織布研磨材等による研磨、アルミナ等のセラミックス、砂、金属、プラスチック、ガラス、植物種子等の粒子を用いるブラスト処理、例えば酸やアルカリ等のエッチング液を用いるエッチング処理、例えば少なくとも一方のロール表面が粗面化された一対の圧延ロールを用いてこの粗面化表面を基材表面に転写させるエンボスロール圧延処理等の種々の方法を挙げることができる。また、粗面化処理を施した後、シンナー等による溶剤洗浄、上述した前処理、陽極酸化処理、乾燥等を行ってもよい。
【0026】
本発明において、耐食性水系塗料組成物がポストコート塗装された塗装材は、基材表面に耐食性水系塗料組成物が直接ポストコート塗装された単独の塗膜層を有する塗装材であっても、また、基材表面に耐食性水系塗料組成物がプライマー塗料としてポストコート塗装され、その上に他の塗料組成物が上塗り塗料として塗装された2層以上の塗膜層を有する塗装材であってもよい。本発明の耐食性水系塗料組成物がプライマー塗膜である場合、その上の1層又は2層以の塗膜層を上塗り塗料としては、特に制限はなく、例えばアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系、フッソ系、アクリルシリコーン系、ウレタンシリコーン系、アクリルウレタンシリコーン系、アルカリシリケート系、コロイダルシリカ等を使用したシリカゾル系、酸化チタン系、セラミックス系等の塗料を挙げることができ、有機系、有機・無機ハイブリッド系、無機系等のいずれでもよい。
【0027】
基材の表面にポストコート塗装を行う塗装方法についても特に制限はなく、例えばスプレーコート法、刷毛塗り法、スピンコート法、浸漬法、静電塗装法等の公知の方法を採用することができる。また、塗装後の乾燥は、塗料に応じた乾燥条件で行うことができ、例えばエアーブロー、ドライヤー、熱風乾燥炉、遠赤外線炉等を用いて室温〜300℃及び5分〜24時間の乾燥条件で行なうことができる。
【0028】
更に、本発明の耐食性水系塗料組成物をポストコート塗装する際の膜厚については、塗膜形成後の膜厚で1μm以上25μm以下、好ましくは5μm以上20μm以下であり、膜厚が1μmより薄いと均一に塗装できず、反対に、25μmより厚いと性能が飽和し、必要以上の膜厚となってコスト高の問題を招く。
【発明の効果】
【0029】
本発明の耐食性水系塗料組成物は、ノンクロムであって耐食性に優れ、造膜助剤以外には実質的に揮発性有機溶剤(VOC)を含むことがなくてVOC排出量低減化が可能であり、しかも、塗布ムラ、ハジキ、タレ等の問題がなくて塗装作業性にも優れている。また、本発明の耐食性アルミニウム塗装材は、このような耐食性水系塗料組成物がアルミニウム基材の表面に直接にあるいはプライマー塗料としてポストコート塗装されており、ノンクロムでありながら耐食性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0031】
[実施例1〜4及び比較例1〜3]
〔耐食性水系塗料組成物の調製〕
シリコン含有樹脂(塗料樹脂)としてアクリルシリコーン系エマルジョン(ダイセル化学工業社製商品名:アクアブリッド4790;塗料樹脂濃度50.2質量%、水分濃度49.8質量%及び塗料樹脂中Si含有量0.06質量%)(塗料樹脂A)又はアクリルシリコーン系エマルジョン(ダイセル化学工業製商品名社製商品名:アクアブリッドASi91;塗料樹脂濃度30.1質量%、水分濃度69.9質量%及び塗料樹脂中Si含有量0.7質量%)(塗料樹脂B)を使用し、また、造膜助剤としてテキサノール(造膜助剤C)又はブチルカルビトール(造膜助剤D)を使用し、更に、増粘剤としてサンノプコ社製商品名:シックナー612(増粘剤E;固形分濃度40質量%)又は旭電化工業社製商品名:アデカノールUH-540(増粘剤F;固形分濃度30質量%)を使用し、更にまた、水として脱イオン水を使用し、表1に示す割合で混合し、実施例1〜4及び比較例1〜3の耐食性水系塗料組成物を調製した。
【0032】
〔耐食性アルミニウム塗装材の調製〕
被塗装物として250mm×200mm×1.0mmの大きさのアルミニウム板(JIS 5052;アルミニウム基材)を用意し、前処理として、実施例1と比較例1及び3では、アセトンで超音波洗浄して乾燥し、また、実施例2では、平均粒径50〜200μmのアルミナ粒子を用いたブラスト処理により表面粗面化をした後にアセトンで超音波洗浄して乾燥し、実施例3及び比較例2では、アルカリ性脱脂剤(日本ペイント社製商品名:サーフクリーナー155)の2質量%溶液に60℃で1分浸漬した後に水洗して乾燥し、実施例4では、アルカリエッチング処理して中和処理した後に水洗して乾燥し、純水を用いて接触角計(協和界面化学社製CA-A型)によりそれぞれ前処理後のアルミニウム板(アルミニウム基材)の表面の接触角(基材表面接触角)を測定した。この基材表面接触角(°)の値を表1に示す。
【0033】
次に、前処理後のアルミニウム板を縦吊りし、スプレーガン(アネスト岩田社製スプレーガンW61-2G)を用いて上記各実施例1〜4又は各比較例1〜3の耐食性水系塗料組成物をプライマー塗料として、焼付後の膜厚が約10μmになるようにスプレー塗装(ポストコート塗装)し、10分間セッティングの後、120℃で5分間焼付乾燥させた。
【0034】
更に、上記各実施例1〜4又は各比較例1〜3の耐食性水系塗料組成物でプライマー塗装されたアルミニウム板の上に、上塗りとして、ポリエステル樹脂系紛体塗料(久保孝ペイント社製商品名:ニッシンパウダーコートS,プラチナメタリック)を用い、焼付後の膜厚が約40μmになるように静電塗装を行い、185℃、50分の条件で焼付を行い、各実施例1〜4及び各比較例1〜3の耐食性アルミニウム塗装材を作製した。
【0035】
このようにして調製された各実施例1〜4又は各比較例1〜3の耐食性アルミニウム塗装材について、前処理後のアルミニウム板(アルミニウム基材)の表面にスプレー塗装を行った際の塗装後の外観評価と耐食性アルミニウム塗装材の耐食性評価とを行った。
結果を表1に示す。
【0036】
なお、塗装後の外観評価については、スプレー塗装直後からセティング中に行い、ムラ、ハジキについて○:塗装ムラ及び塗料のハジキが共に無く、均一で良好な外観のもの、×:塗装ムラ又は塗料のハジキが生じ、外観が不良なもので評価し、また、タレについて○:塗料のタレがなく外観が良好なもの、×:塗料のタレが発生し外観が不良なもので評価した。また、耐食性評価については、塩水噴霧試験(JIS K5600)及び耐湿試験(JIS K5600)をそれぞれ1,000時間行い、○:1,000時間後に塗膜に異常が認められないもの、×:1,000時間後に塗膜にフクレ、剥がれ、腐食等の異常が認められるもので評価した。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の耐食性水系塗料組成物及び耐食性アルミニウム塗装材は、ノンクロムであって耐食性に優れ、造膜助剤以外には実質的に揮発性有機溶剤(VOC)を含むことがなくてVOC排出量低減化が可能であり、しかも、塗布ムラ、ハジキ、タレ等の問題がなくて塗装作業性にも優れており、スプレー塗装等のポストコート塗装を容易に実施することができ、環境に配慮した塗料組成物であってその工業的価値の高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料樹脂、造膜助剤及び水を含む水含有量50質量%以上の水系塗料組成物であり、上記塗料樹脂がその固形分中にシリコンを0.01〜5質量%の割合で含むと共に、造膜助剤が3〜15質量%の割合で含有されていることを特徴とする耐食性水系塗料組成物。
【請求項2】
塗料樹脂が、シリコン含有樹脂からなる請求項1に記載の耐食性水系塗料組成物。
【請求項3】
シリコン含有樹脂が、アクリルシリコーン系エマルジョンである請求項2に記載の耐食性水系塗料組成物。
【請求項4】
増粘剤が、塗料樹脂の固形分100質量部に対して5質量部以下の範囲で含まれている請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性水系塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の耐食性水系塗料組成物がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム基材の表面にポストコート塗装されていることを特徴とする耐食性アルミニウム塗装材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の耐食性水系塗料組成物がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム基材の表面にプライマー塗料としてポストコート塗装されていることを特徴とする耐食性アルミニウム塗装材。

【公開番号】特開2007−169353(P2007−169353A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365791(P2005−365791)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】