説明

聾唖者対応型非常電話機

【課題】健常者用と聾唖者用の双方の電話機を設置するとコストが嵩み、発信者の個人差のある通信内容を各別に登録する作業は大変厄介で、文字情報による通信の途中で通話に切り替える形式は、健常者にとっては使い勝手が悪い。
【解決手段】本発明に係る聾唖者対応型非常電話機は、表示用タッチパネル(1)、通話用ハンドセット(2)、押しボタン(3)、通話ボタン(4)、聾唖ボタン(5)、回線送受信装置(6)、電源(7)及び中央演算装置(8)を備えている。 該表示タッチパネル(1)は液晶型で該押しボタン(3)を被覆する。該回線送受信装置(6)には通信回線(61)が接続される。該電源(7)はAC入力電源(71)とバックアップ電源用のバッテリー(72)を備えている。該中央演算装置(8)はこれらを統括制御する機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は聾唖者対応型非常電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声による情報の伝達ができないか困難な者のために、音声なしに情報の伝達が可能なシステムが考案されている。特開平7―193651号公報は、道路上の非常電話機を聾唖者でも使用できる非常用電話機システムに関し、また、特開2000−115397号公報は、会話なしでも相手に情報の送信が可能な情報伝送装置に関し、更に、特開2003−337995号公報は、聾唖者や難聴者でも電話でタクシーを呼ぶことができるシステムと電話機に関している。
【特許文献1】特開平7―193651号公報
【特許文献2】特開2000−115397号公報
【特許文献3】特開2003−337995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開平7―193651号公報に示された非常用電話機システムは、その段落0040〜0042に述べられているように、聾唖者向けの非常用電話機を採用している。従って、通話用の電話機と聾唖者向けの特殊電話機の双方を設置する必要があり、コストが嵩む。
【0004】
特開2000−115397号公報に示された情報伝送装置は、段落0025〜0027の記載から、予め発信者の通信内容を受信側に登録しておく必要があり、個人差のある通信内容を各別に登録する作業は大変厄介なことである。
【0005】
特開2003−337995号公報に示されたタクシー呼び出し用通信システムは、初期段階で発信者と受信者間の意思の伝達が文字でなされ、受信者が非聾唖者で発信者の発する文字情報の内容に不満足な場合にボタン操作で通話に切り替え、発信者と直接会話ができるようにしている。非聾唖者にとっては使い勝手が悪い。
【0006】
本発明は、単一の電話機を音声通話と通信通話の双方に選択的に使用でき、表示面をタッチパネルで覆うことにより簡易に情報の伝送ができる聾唖者対応型非常電話機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)本発明に係る聾唖者対応型非常電話機は、表示用タッチパネル、通話用ハンドセット、押しボタン、通話ボタン、聾唖ボタン、回線送受信装置、電源及び中央演算装置を備えている。該表示用タッチパネルは液晶型で該押しボタンを被覆している。該回線送受信装置には通信回線が接続される。該電源はAC入力電源とバックアップ電源用のバッテリーを備えている。そして、該中央演算装置はこれらを統括制御する機能を備えている。
【0008】
この非常電話機は道路の脇に設置される。高速道路が効果的であるが、一般の道路でももちろん採用可能である。運転者又は通行人が道路上での事故や道路近傍での火災等、交通に支障のある事象に遭遇した場合、この非常電話を利用し、情報の発信者となって受信者である道路管理者に通報する。
【0009】
この発信者が健常者の場合、通常のようにハンドセットを取り上げるか通話ボタンを押して、音声で受信者と遣り取りする。発信者が聾唖者の場合は通話ができないので、聾唖ボタンを押す。これで通信回線がモデムV90モードに切り替わり、文字による情報伝送がなされる。受信者側からの情報は該表示タッチパネル面上に表示されるので、聾唖者でも情報の内容を理解できる。
【0010】
(請求項2)該押しボタンは通報内容別に分かれた複数個となっていてもよい。
こうすると、各ボタンに異なる情報の要点のみを付属させられるので、情報の伝送が簡潔になされる。
【0011】
(請求項3)該回線送受信装置は外付け電話機用のジャックを備えていてもよい。
こうすると、該ジャックに別の電話機を接続することにより、この非常電話機の回線を利用して、他の業務用通信が可能となる。
【0012】
(請求項4) 該通信回線は音声通話とモデム通信を兼ねており、該通話ボタンが押されたときはアナログ通話用となり、該聾唖ボタンが押されたときはモデムV90モードに切り替わるようになっていてもよい。
こうすると、該通信回線を簡略化できる。
【0013】
(請求項5)該バッテリーは停電時の情報伝送用であってもよい。
こうすると、落雷等で停電しても、非常電話が使えなくなることがないので、情報伝送に支障がない。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1)本発明にかかる聾唖者対応型非常電話機によれば、運転者又は通行人が道路上での事故や道路近傍での火災等、交通に支障のある事象に遭遇した場合、この非常電話を利用し、情報の発信者となって受信者である道路管理者に通報するが、この発信者が聾唖者の場合、聾唖ボタンを押すことにより通信回線がモデムV90モードに切り替わって初めから文字による双方向情報伝送が可能となり、受信者側からの情報は表示用タッチパネル面上に表示されるので、聾唖者でも情報の内容を確認できる。
【0015】
請求項2によれば、該押しボタンは通報内容別に分かれた複数個となっているので、各ボタンに異なる情報の要点のみを付属させられ、情報の伝送が簡潔になされる。
【0016】
請求項3によれば、該回線送受信装置は外付け電話機用のジャックを備えているので、該ジャックに別の電話機を接続することにより、この非常電話機の回線を利用して、他の業務用通信が可能となる。
【0017】
請求項4によれば、該通信回線は音声通話とモデム通信を兼ねており、該通話ボタンが押されたときはアナログ通話用となり、該聾唖ボタンが押されたときはモデムV90モードに切り替わるようになっているので、該通信回線を簡略化できる。
【0018】
請求項5によれば、該バッテリーは停電時の情報伝送用なので、落雷等で停電しても非常電話が使えなくなることがなく、情報伝送に支障がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る聾唖者対応型非常電話機の概念図である。
【図2】状態遷移の通常運用の場合の概念図である。
【図3】同じく折り返し試験の場合の概念図である。
【図4】動作説明のフロー図で発呼の場合である。
【図5】同じく通話又は通信の場合である。
【図6】同じくアナログ通話モードの場合である。
【図7】同じくモデムV90モードの場合である。
【図8】非常電話回線折り返し試験動作フロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(請求項1)本発明にかかる聾唖者対応型非常電話機の一形態は、図1に示すとおり、 表示用タッチパネル1、通話用ハンドセット2、押しボタン3、通話ボタン4、聾唖ボタン5、回線送受信装置6、電源7及び中央演算装置8を備えている。表示用タッチパネル1は液晶型で押しボタン3を被覆している。この被覆は単に押しボタン3の上面を覆っているカバーの場合もあり、押しボタン3と一体となっている場合もある。回線送受信装置6には通信回線61が接続される。電源7はAC入力電源71とバックアップ電源用のバッテリー72を備えている。そして、中央演算装置8は通常のように、これらを統括制御する機能を備えている。
【0021】
この非常電話機は道路の脇に設置される。高速道路が効果的であるが、一般の道路でももちろん採用可能である。運転者又は通行人が道路上での事故や道路近傍での火災等、交通に支障のある事象に遭遇した場合、この非常電話を利用し、情報の発信者となって受信者である道路管理者に通報する。
【0022】
図2は状態遷移の通常運用の場合の概念図である。待機の状態からオフフック又は通話ボタン4を押すとモデムDTMFモードがアナログ通話モードとなり、受信者側でオフフック「#」受信が可能となる。オンフックにより回線は遮断され、待機状態となる。同様に待機の状態から聾唖ボタン5をONにすると、モデムDTMFモードがモデムV90モードとなり、受信者側で聾唖ボタン5のON状態での「#」受信が可能となる。聾唖ボタン5をOFFにすれば押すと回線は遮断され、待機状態となる。アナログ通話モード中に聾唖ボタン5をONにするとモデムV90モードとなり、モデムV90モード中に通話ボタン4をONにするかオフフックすると、アナログ通話モードとなる。
【0023】
図1で、発信者が健常者の場合、通常のように通話用ハンドセット2を取り上げるか通話ボタン4を押して、音声で受信者と遣り取りする。発信者が聾唖者の場合は通話ができないので、聾唖ボタン5を押す。これで通信回線61がモデムV90モードに切り替わり、文字による情報伝送がなされる。受信者側からの情報は標示用タッチパネル1面上に表示されるので、聾唖者でも情報の内容を理解できる。
【0024】
図3は同じく折り返し試験の場合の概念図である。待機状態からモデムDTMFモードに対して曲版検出を行うと、モデムDTMFモードからDTMF“861”送出がなされ、試験が完了する。
【0025】
図4はモデムDTMFモードにおける動作説明のフロー図で、発呼の場合である。待機状態からハンドセットをオフフックするか通話ボタン4か聾唖ボタン5を押すと(ステップ1)、V90モデム終端を経て(ステップ2)、非常電話機に与えられている個別識別信号を送出し(ステップ3)、極反検出して(ステップ4)表示用タッチパネル11を起動する(ステップ5)。ここで押しボタン3の一つを押すとそれが点灯し(ステップ6)、そのボタンに与えられているPB信号を送出する(ステップ7)。受信者側では受付台応答「#」又はPB送出5回?を検出し(ステップ8)、検出できなかった場合はステップ7以降の操作を繰り返す。受付台応答「#」又はPB送出5回?を検出した場合は、通話又は通信を行う(ステップ9)。
【0026】
図5は同じく通話又は通信の場合である。発呼すると(ステップ11)モード選択に移行し(ステップ12)、ここで、ハンドセット2をオフフックするか通話ボタン4をONするとアナログ通話モードとなり(ステップ13)、聾唖ボタン5をONするとモデムV90モードとなる(ステップ14)。ステップ13や14以降はそれぞれステップ12以降の作業を繰り返す。
【0027】
図6は同じくアナログ通話モードの場合である。スタートすると(ステップ21)、V90モデムが開放されてハンドセット2終端となり(ステップ22)、聾唖ボタン5をONすると(ステップ23)モデムV90モードとなる(ステップ24)。聾唖ボタン5がONされた状態で、電流検出がないと切断かと判断して(ステップ25)ステップ23以降の作業を繰り返し、切断と判断した場合は非常電話回線を開放して(ステップ26)待機する(ステップ27)。
【0028】
図7は同じくモデムV90モードの場合である。スタートすると(ステップ31)V90データリンクに移行し(ステップ32)、通話ボタン4をONするかハンドセット2をオフフックすると(ステップ33)電流が流れ、アナログ通話モードとなる(ステップ34)。もし電流が流れないと切断かなと判断して(ステップ35)、ステップ33以降の操作を繰り返す。それでも電流が流れなかったときは、切断と判断し、非常電話回線を開放して(ステップ36)待機する(ステップ37)。
【0029】
図8はモデムDTMFモードの場合の非常電話回線折り返し試験動作フロー図である。待機状態から(ステップ41)試験回線給電検出をし(ステップ42)、MODEM 試験回線LOOP形成をし(ステップ43)、PB受信をする(ステップ44)。受信をしたPBが自己アドレスかどうかを確認し(ステップ45)、確認できた場合はMODEM 試験回線LOOP形成をし(ステップ46)、PB受信“861”を送出して(ステップ47)待機する(ステップ48)。自己アドレスの確認ができなかった場合は直接待機に移行する。
【0030】
(請求項2)押しボタン3は通報内容別に分かれた複数個となっている。
この場合、各押しボタン3に異なる情報の要点のみを付属させられるので、情報の伝送が簡潔になされる。
【0031】
(請求項3)回線送受信装置6は外付け電話機用のジャック62を備えている。
この場合、ジャック62に別の電話機を接続することにより、この非常電話機の回線を利用して、他の業務用通信が可能となる。
【0032】
(請求項4)通信回線61は音声通話とモデム通信を兼ねており、通話ボタン4が押されたときはアナログ通話用となり、聾唖ボタン5が押されたときはモデムV90モードに切り替わるようになっている。
この場合、通信回線を簡略化できる。
【0033】
(請求項5)バッテリー72は停電時の情報伝送用となっている。
この場合、落雷等で停電しても、非常電話が使えなくなることがないので、情報伝送に支障がない。
【符号の説明】
【0034】
1 表示用タッチパネル
2 通話用ハンドセット
3 押しボタン
4 通話ボタン
5 聾唖ボタン
6 回線送受信装置
61 通信回線
62 ジャック
7 電源
71 AC入力電源
72 バッテリー
8 中央演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示用タッチパネル(1)、通話用ハンドセット(2)、押しボタン(3)、通話ボタン(4)、聾唖ボタン(5)、回線送受信装置(6)、電源(7)及び中央演算装置(8)を備え、
該表示用タッチパネル(1)は液晶型で該押しボタン(3)を被覆し、
該回線送受信装置(6)には通信回線(61)が接続され、
該電源(7)はAC入力電源(71)とバックアップ電源用のバッテリー(72)を備え、
該中央演算装置(8)はこれらを統括制御する機能を備え
ていることを特徴とする聾唖者対応型非常電話機。
【請求項2】
該押しボタン(3)は通報内容別に分かれた複数個となっている請求項1に記載の聾唖者対応型非常電話機。
【請求項3】
該回線送受信装置(6)は外付け電話用のジャック(62)を備えている請求項1又は2に記載の聾唖者対応型非常電話機。
【請求項4】
該通信回線(61)は音声通話とモデム通信を兼ねており、該通話ボタン(4)が押されたときはアナログ通話用となり、該聾唖ボタン(5)が押されたときはモデムV90モードに切り替わるようになっている請求項1、2又は3に記載の聾唖者対応型非常電話機。
【請求項5】
該バッテリー(72)は停電時の情報伝送用である請求項1、2、3又は4に記載の聾唖者対応型非常電話機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−97489(P2011−97489A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251593(P2009−251593)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(508337204)株式会社ネクスコ・エンジニアリング新潟 (4)
【Fターム(参考)】