説明

肝細胞癌の処置に有用な医薬組成物

本発明は、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花から単離される抽出物及び画分の肝細胞癌に対する抗癌活性に関する。具体的には、本発明は、花を極性溶媒、例えばエタノール、メタノール、エタノール水溶液又は水で抽出し、抽出物を溶媒、例えば塩化エチレン、塩化メチレン、クロロホルム又は酢酸エチルでトリチュレートすることにより脂肪非極性成分を除去し、残渣を水中に懸濁し、n−ブタノールで抽出し、水性部分を凍結乾燥することによりブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花から単離された、2〜9重量%の範囲のマークした(markered)フラボノイド配糖体、例えばブトリン及びイソブトリンを含む組成物の肝細胞癌に対する抗癌活性に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝細胞癌の処置に有用な医薬組成物に関する。
【0002】
より具体的には、それは、対象中の肝細胞癌を処置する方法に関する。
【0003】
本発明は、肝細胞癌の処置における、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部位から得られた抽出物又はその活性画分の使用にも関する。
【0004】
更に、それは、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部位からのブトリン(butrin)及び/又はイソブトリン(isobutrin)を含んで成る生物活性画分を単離するための方法にも関する。
【0005】
より具体的には、それは、肝細胞癌の処置における、生物活性画分及びブトリン及びイソブトリンの使用に関する。
【背景技術】
【0006】
ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)(Lam)(ファミリー:マメ科)は、インドの大部分で見られる中型の木であり、インドにおける医薬の固有の系において多くの用途を有することが報告されている。様々な薬理作用は、この植物の花、葉、皮及び根に帰する。葉は、収斂剤、強壮剤、利尿剤及び催淫剤である。それらは、おできを治療するのに用いられる。皮は、収斂性、苦味、刺激性、変質性、催淫性及び駆虫作用を有することが報告されている。根は、象皮病及び夜盲症の治療に有用である。花は、収斂性、浄化作用、催淫性及び強壮作用を有することが報告されている[Chopra,R.N.,Nayar,S.L.and Chopra,I.C.,Glossary of Indian Medicinal Plants,CSIR,New Delhi,1956,p.42;Wealth of India:Raw Material,CSIR,New Delhi,(1988)Vol.2B,p.341−46]。茎の皮の石油エーテル及び酢酸エチル抽出物は、抗真菌活性を示した。(−)−メディカルピンは、有効成分として同定された[Ratnayake Bandara,B.M.,Savitri Kumar,N.and Swarna Samaranayake,K.M.,Journal of Ethanopharmacology 25(1),735(1989)]。種子の熱いアルコールの抽出物は、ラット及びウサギそれぞれにおいて、顕著な着床抑制活性及び排卵抑制活性を示した。それは、マウスにおいて流産作用も示した[Choudhury,R.R and Khanna,U.,Indian Journal of Medical Research,56(10)1575,(1968)]。ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の種子から単離されたブチンは、ラットにおいて、着床抑制活性を有することが報告された[Bhargava,S.K.,Journal of Ethanopharmacology 18,95−101,(1986)]。花から単離されたトリテルペンは、実験動物における抗けいれん活性の有効成分として報告された[Kasture,V.S.,Kasture,S.B.and Chopde,C.T.,Pharmacol.Biochem.Behav.72,965−972(2002)]。種子のメタノール抽出物は、インビトロで試験した場合、顕著な駆虫活性を示した[Prashanth,D.Asha,M.K.,Amit,A.and Padmaja,R.Fitoterapia 72,421−422(2001)]。「Rasayana」がインビトロで寄生虫に殺効果を有さないので、1つの要素としてブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)を含む「Ayurvedic Rasayana」(漢方薬)は、恐らく免疫修飾により、ランブル鞭毛虫症の管理に関して報告された[Agarwal,A.K.,Singh,M.,Gupta,N.,Saxena,R.,Puri,A.,Verma,A.K.,Saxena R.P.,Dubey,C.B.,Saxena,K.C.Journal of Ethanopharmacology 44,143−146(1994)]。イソブトリン及びブトリンは、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花からの抗肝毒性成分として同定された[Wagner,H.,Geyer,B.,Fiebig,M.,Kiso,Y.and Hikino,H.Planta Medica 77−79(1986)]。ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花は、抗ストレス活性を有することが報告された[Bhatwadekar,A.D.,Chintawar,S.D.,Logade,N.A.,Somani,R.S.,Kasture,V.S.and Kasture,S.B.Indian Journal of Pharmacology,31,153−155(1999)]。我々の知る限りでは、今までのところ、任意の植物部分又はその単離物/成分の抗癌活性は報告されていない。
【0007】
多くのフラボノイド、すなわちブテイン、ブチン、ブトリン、イソブトリン、パラシトリン(palasitrin)、コレオプシン(coreopsin)、イソコレオプシン(isocoreopsin)、スルフレチン(sulphuretin)、モノスペルモシド(monospermoside)及びプルネチンは、この植物の花から単離された[Gupta,S.R.,Ravindranath,B.and Seshadri,T.R.,Phytochemisrty 9,2231−35(1970);Puri,B.and Seshadri,T.R.J.Sci.Ind.Res.(India)12B,462(1953);Lal,J.B.and Dutt,S.,J.Ind.Chem.Soc,12,262(1935)]。いくつかの窒素成分も報告され、これは、パラソニン(palasonin)[Raj,R.K.and Karup,P.A.,Ind.J.Chem.5,86−87(1967)]、モノスペルミン(monospermin)[Mehta,B.K.and Bokadia,M.M.,Chem.&Ind.3,98(1981)]、アロファン酸誘導体[Porwal,M.,Sharma,S.and Mehta,B.K.,Ind.J.Chem.27B,281−82(1988)]及びパラシミド(palasimide)[Guha,P.K.,Poi,R.and Bhattacharya,A.Phytochemistry 29,2017(1990)を含む。種子は、α−アミリン、β−シトステロール、β−シトステロールグルコシドを含むことも報告された[Chandra,S.,Lal,J.and Sabir,M,Ind.J.Pharmacy 35,79−80,1977]及びヘキセイコサノイック酸(hexeicosanoic acid)δ−ラクトン[Bishnoi,P.and Gupta,P.C.Planta Medica 35,286−88,(1979)]。種子から単離されたパラソニン(Palasonin)は、駆虫活性を示した[Kaleysa Raj,R.and Karup,P.A.Ind.Jour.Med.Res.56,12,(1968)]。茎からの2つの新規の化合物3α−ヒドロキシエウフ(hydroxyeuph)−25−エン及び2,14−ジヒドロキシ−11,12−ジメチル−8−オキソ−オクタデカ−11−エニルシクロヘキサン(enylcyclohexane)の単離が報告された[Mishra,M.,Shukla,Y.N.and Kumar,S.,Phytochemistry 54(8),835−38,(2000)]。種子−ラック(lac)の樹脂画分から、ジャラール酸エステル(jalaric ester)I、ジャラール酸エステルII、ラクシジャラール酸エステル(laccijalaric ester)I及びラクシジャラール酸エステル(laccijalaric ester)IIと呼ばれる4つの酸エステルの単離が報告された[Singh,A.N.,Upadhye,V.,Mhaskar,V.V.and Dev.S.Tetrahedron,30,867−74,(1974)]。
【0008】
植物は、ISM中の肝疾患の処置に関して周知である。花からの活性化合物(ブトリン及びイソブトリン)は、肝臓保護活性に関して報告された。「Butea monosperma and chemomodulation: Protective role against thioacetamide−mediated hepatic alternations in Wistar rats by A.Sehrawat,T H Khan,L.Prasad and S.Sultana(Phytomedicine 13.157−163,2006)」という題名の最近の研究論文において、これらの化合物を有する植物抽出物の肝臓保護作用は、チオアクタマイド(thioactamide)誘導性肝毒性に対して試験された。チオアクタマイドは、有害、毒性及び発癌性である。同じ論文において、さらに2つのパラメータ、すなわちDOC及びH3チミジンの組み込みが試験され、それは、これらの2つのパラメータを阻害することにより腫瘍形成を阻害し得ることを実証した。ブテア(Butea)抽出物の直接的な抗癌作用に関する示唆は存在しない。対照動物における癌の進行でさえ実証されてなく、どのパラメータも癌への保護作用を示さず、せいぜい、それは化学予防/抗癌作用として考慮され得る。筆者自身、「全体的な結果は、B.モノスペルマ(B.Monosperma)のメタノール抽出物が肝臓保護作用を有し、それは酸化ストレス及びポリアミン生合成経路の阻害により促進段階も抑制し得ることを示唆している」と結論づけた。
【発明の開示】
【0009】
本発明の主な目的は、肝細胞癌の処置に有用な医薬組成物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、対象中の肝細胞癌を処置する方法を提供することである。
【0011】
更に、本発明の別の目的は、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分からのブトリン及び/又はイソブトリンを含んで成る生物活性画分を単離するための方法を提供することである。
【0012】
本発明の更に別の目的は、肝細胞癌の処置における、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分から得られる抽出物又はその生物活性画分の使用を提供することである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、肝細胞癌の処置におけるブトリン及びイソブトリンの使用を提供することである。
【0014】
発明の概要
本発明は、対象中の肝細胞癌の処置に有用な医薬組成物を扱い、ここで、当該組成物は、任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量のブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分から得られる抽出物又はその活性画分或いは治療有効量の化合物ブトリン及び/若しくはイソブトリン又はその誘導体若しくは類似体又はその医薬として許容される塩を含んで成る。更に、それは、対象中の肝細胞癌を処置する方法、及びブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分からのブトリン及び/又はイソブトリンを含んで成る生物活性画分を単離するための方法、及び肝細胞癌の処置におけるその使用にも関する。
【0015】
発明の詳細な説明
従って、本発明は、肝細胞癌の処置に有用な医薬組成物を提供し、当該組成物は、任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量のブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分から得られる抽出物及び/又はその活性画分或いは治療有効量の化合物ブトリン及び/若しくはイソブトリン又はその誘導体若しくは類似体又はその医薬として許容される塩を含んで成る。
【0016】
本発明の実施態様において、組成物は、任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量のブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分から得られる抽出物及び/又はその活性画分を含んで成る。
【0017】
本発明の別の実施態様において、組成物の用量は、少なくとも0.5g/kg体重の単位用量で投与される。
【0018】
更に、本発明の別の実施態様において、組成物は、任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量の化合物ブトリン及び/若しくはイソブトリン又はその誘導体若しくは類似体又はその医薬として許容される塩を含んで成る。
【0019】
本発明の更に別の実施態様において、組成物の用量は、0.5g/kg体重未満の単位用量で投与される。
【0020】
本発明の更に別の実施態様において、組成物の用量は、可溶形態、好ましくは懸濁形態で投与される。
【0021】
本発明の更に別の実施態様において、用いられる担体は、生理食塩水、アカシアガム、カルボキシメチルセルロース又は任意の他の既知の医薬として許容される担体から成る群から選択される。
【0022】
本発明の更に別の実施態様において、組成物は、全身的、経口的、又は任意の臨床的、医学的に許容される方法により用いられる。
【0023】
本発明の更に別の実施態様において、投与経路は、腹腔内、静脈内、筋肉内、経口などを含んで成る群から選択される。
【0024】
本発明の更に別の実施態様において、組成物は、予防及び治療の双方の目的で用いられる。
【0025】
更に、本発明は、対象中の肝細胞癌を処置する方法も提供し、当該方法は、任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量のブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分から得られる抽出物及び/又はその活性画分或いは治療有効量の化合物ブトリン及び/若しくはイソブトリン又はその誘導体若しくは類似体又はその医薬として許容される塩を含んで成る医薬組成物を対象に投与する段階を含んで成る。
【0026】
本発明の実施態様において、対象は、ヒト及び動物から成る群から選択され、好ましくはヒトである。
【0027】
本発明の実施態様において、方法は、任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量のブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分から得られる抽出物及び/又はその活性画分を含んで成る医薬組成物を対象に投与する段階を含んで成る。
【0028】
本発明の別の実施態様において、投与される組成物の用量は、少なくとも0.5g/kg体重の単位用量である。
【0029】
更に、本発明の別の実施態様において、方法は、任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量の化合物ブトリン及び/若しくはイソブトリン又はその誘導体若しくは類似体又はその医薬として許容される塩を含んで成る医薬組成物を対象に投与する段階を含んで成る。
【0030】
本発明の更なる実施態様において、投与される組成物の用量は、0.5g/kg体重未満の単位用量である。
【0031】
本発明の更なる実施態様において、組成物の用量は、可溶形態、好ましくは懸濁形態で投与される。
【0032】
本発明の更なる実施態様において、用いられる担体は、生理食塩水、アカシアガム、カルボキシメチルセルロース又は任意の他の既知の医薬として許容される担体から成る群から選択される。
【0033】
本発明の更に別の実施態様において、組成物は、全身的、経口的、又は任意の臨床的、医学的に許容される方法により用いられる。
【0034】
本発明の更なる実施態様において、投与経路は、腹腔内、静脈内、筋肉内、経口などから成る群から選択される。
【0035】
本発明は、肝細胞癌の処置における、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)から得られる抽出物及び生物活性画分の使用も提供する。
【0036】
本発明の実施態様において、化合物ブトリン及びイソブトリンの使用は、肝細胞癌の処置においてである。
【0037】
更に、本発明は、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分からブトリン及び/又はイソブトリンを含んで成る生物活性画分を単離するための方法を提供し、当該方法は、
a)植物材料を粉末にすること、
b)段階(a)から得られた粉末を、エタノール、メタノール、水を含んで成る群から選択される溶媒を個々に又はそれらの組み合わせで用いるパーコレーションにより抽出し、抽出物を得ること、
c)段階(b)から得られた抽出物を、減圧下で、<50℃で濃縮すること、
d)段階(c)から得られた抽出物を、塩化エチレン、塩化メチレン、クロロホルム及び/又は酢酸エチルを含んで成る群から選択される溶媒を用いて滴定し、残渣を得ること、
e)段階(d)から得られた残渣を、水相と有機相の間に分配すること、
f)段階(e)から得られた水性部分を乾燥し、既知の方法により所望の活性画分を得ること、
を含んで成る。
【0038】
本発明の実施態様において、残渣を分配するために用いられる有機相は、n−ブタノールである。
【0039】
ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)からの活性画分の単離に関する流れ図
【化1】

【0040】
以下の実施例は、本発明の例示によって与えられ、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【実施例】
【0041】
実施例1
ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の500gmの乾燥粉末化した花を、3Lの蒸留水中に浸し、スチームバス上で4時間加熱した。水性抽出物をセライトに通して濾過し、ロータベーパー(rotavapor)上で50℃において250mlまで濃縮した。この抽出工程を更に3回繰り返し、混ぜ合わせた濃縮水性抽出物(1L)を凍結乾燥して、乾燥粉末を得た(145g)。この抽出物を酢酸エチルでトリチュレートし、残渣を水(750ml)に取り入れ、n−ブタノールで抽出した(4×200ml)。水性画分を凍結乾燥して、活性画分を得た(88g)。
【0042】
実施例2
ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の日陰で乾燥した粉末化した花(1kg)を最高濃度アルコール(rectified spirit)に浸し、一晩保持した。抽出物を流し、セライトに通して濾過した。この抽出工程を更に3回繰り返した。最高濃度アルコールを減圧下で蒸発させ、暗褐色の塊を得、この抽出物を酢酸エチルで滴定した。残った残渣を水に溶解し、n−ブタノールで抽出した(3×400ml)。水性画分を凍結乾燥し、活性画分を得た(156g)。
【0043】
実施例3
ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の日陰で乾燥した粉末化した花(1kg)を、メタノールに浸し、一晩保持した。抽出物を流し、セライトに通して濾過した。この抽出工程を更に3回繰り返した。メタノールを減圧下で蒸発させ、暗褐色の塊を得、この抽出物を酢酸エチルでトリチュレート。残った残渣を水(1L)に溶解し、n−ブタノールで抽出した(3×400ml)。水性画分を凍結乾燥し、乾燥粉末を得た(142g)。
【0044】
実施例4
活性画分のHPLC分析:
活性画分は、イソブトリン及びブトリンを最小で、全抽出物の2〜4.5重量%及び9〜12重量%の範囲で含む。
【0045】
溶媒系アセトニトリル:0.001Mのリン酸(30:70)、カラムRP18e(E.Merck、5um、4.0×250mm)、カラム温度30℃、流速0.6ml/分、波長254。
【0046】
実施例5
化合物1及び2の特性:
ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の水性抽出からの水性画分(25g)を、シリカゲル(600g)のカラム上でクロマトグラフした。酢酸エチルによる溶出:メタノール(85:15)は、150mgのイソブトリン(1)、続いて1.2gのブトリン(2)を与えた。
【0047】
【化2】

【0048】
【化3】

【0049】
実施例6
ヒト癌細胞株に対する水性抽出物及び水性画分のインビトロでの細胞毒性:
国立癌研究所(Frederick、U.S.A)又はNational Center for Cell Science(Pune,India)から入手したヒト癌細胞株を、本試験において用いた。細胞を、組織培養フラスコ中で、完全成長培地(2mMのグルタミン、100μg/mlのストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地、pH7.4、使用の前に、濾過により滅菌し、10%のウシ胎仔血清及び100ユニット/mlのペニシリンを加えた)中で、37℃で、5%のCO2及び90%の相対湿度の雰囲気中で、二酸化炭素インキュベーター中で培養した。サブコンフルエント段階の細胞を、細胞毒性の決定のために、トリプシン(0.02%のEDTAを含むPBS中で0.5%)を用いた処理によりフラスコから回収した。トリパンブルー排除により決定した場合に98%超の生存率を有する細胞を、試験に用いた。必要とされる細胞密度の細胞懸濁液を、細胞毒性の決定のために、ゲンタマイシン(50μg/ml)を含む完全成長培地中で調製した。
【0050】
20mg/mlの試験物質のストック溶液を、蒸留水中で調製した。ストック溶液を、50μg/mlのゲンタマイシンを含む完全成長培地により連続希釈し、必要とされる濃度の作業用の試験溶液を得た。
【0051】
96ウエルの組織培養プレートを用いて、インビトロでのヒト癌細胞株に対する細胞毒性を決定した(Monks,A.,Scudiero,D.,Skehan,P.,Shoemaker R.,Paull,K.,Vistica,D.,Hose,C,Langley,j.,Cronise,P.,Vaigro−Wolff,A.,Gray−Goodrich,M.,Campbell,H.,Mayo,J and Boyd,M.(1991).Feasibility of a high−flux anticancer drug screen using a diverse panel of cultured human tumor cell lines.J.Natl.Cancer Inst.83,757−766.)。100μlの細胞懸濁液を、96ウエルの組織培養プレートの各ウエルに添加した。細胞を24時間インキュベートした。完全成長培地(100μl)中の試験物質を、細胞懸濁液を含むウエルに、24時間のインキュベーション後に添加した。試験物質の添加後に、プレートを48時間更にインキュベートし(37℃で、5%及び90%の相対湿度の雰囲気中で、二酸化炭素インキュベーター中で)、その後、全てのウエル中の培地の上にトリクロロ酢酸(TCA、50μl、50%)を穏やかに重ねることにより、細胞成長を止めた。プレートを4℃で1時間インキュベートし、細胞をウエルの底に結合させ固定した。全てのウエルの液体を穏やかにピペットで取り、捨てた。プレートを蒸留水で5回洗い、TCA,成長培地の低分子量の代謝物、血清タンパク質などを除去し、風乾した。スルホローダミンB色素を用いて染色することにより、細胞成長を測定した(P.Skehan,R.Storeng,D.Scudiero,A.Monks,J.McMohan,D.Vistica,J.T.Warren,H.Bokesch,S.Kenney,M.R.Boyd(1990)New colorimetric cytotoxic Assay for Anticancer−Drug Screening Journal of the National Cancer Institute 82,1107−1112)。吸着色素をトリス緩衝液(100μl、0.01M、pH10.4)に溶解し、プレートを機械撹拌器上で5分間穏やかに撹拌した。吸光度(OD)を、ELISA読取機で540nmにおいて記録した。
【0052】
実験セットの平均OD値から各ブランクの平均OD値を引くことにより、細胞成長を計算した。任意の試験物質の不在下での成長を100%と見なして、試験物質の存在下での成長率が計算され、同様に、試験物質の存在下での成長阻害率が計算されるだろう。
【0053】
ヒト癌細胞株に対するブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花の水性抽出物及び水性画分のインビトロでの細胞毒性(成長阻害率)を、表1にまとめる。
【0054】
表1:ヒト癌細胞株に対するブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花の抽出物及び画分のインビトロでの細胞毒性(成長阻害率)。
【表1】

【0055】
ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花の水性抽出物を、100μg/mlの濃度で、多くのヒト癌細胞株、すなわち乳房(MCF−7、T−47−D及びZR−75−1)、頸部(HeLa及びSiHa)、CNS(IMR−32、SK−N−MC,SK−N−SH及びSNB−78)、結腸(Colo−205及びSW−620)、肝臓(Hep−2)、肺(A−549及びNCI−H23)、口腔(KB)、卵巣(NIH−OVCAR−3及びOVCAR−5)及び前立腺(DU−145)に対する、そのインビトロでの細胞毒性に関して評価した。それは、SW−620、Colo−205及びIMR−32ヒト癌細胞株それぞれに対して、高度の成長阻害(すなわち95、87及び81%)を示した。Hep−2、SK−N−SH及びSK−N−MCヒト癌細胞株は、それぞれ51、43及び23%の緩やかな効果を示した。A−549(19%)及びKB(16%)のヒト癌細胞株に対する応答は、低度であった。残りのヒト癌細胞株は、乏しい応答であるか又は全く応答を示さなかった。
【0056】
ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花の水性画分も、100μg/mlの濃度で、多くのヒト癌細胞株、すなわち乳房(T−47−D)、頸部(SiHa)、CNS(SK−N−MC)、結腸(Colo−205、HCT−15及びHT−29)、肝臓(Hep−2)、肺(A−549)、口腔(KB)及び卵巣(NIH−OVCAR−5及びOVCAR−5)に対する、そのインビトロでの細胞毒性に関して評価した。それは、Hep−2(35%)、続いてNIH−OVCAR−5(27%)及びA−549(11%)に対して最大の成長阻害を示した。残りのヒト癌細胞株は、更に小さい応答であるか又は全く応答を示さなかった。
【0057】
実施例7
水性抽出物及び水性画分のインビトロでの抗癌活性:
遺伝子組み換えマウス:X−myc遺伝子組み換えマウスの開発は、他に記載されている[Kumar,V.,Singh,M.,Totey,S.M.and Anand,R.K.(2001).Bicistronic DNA construct comprising X−myc transgene for use in production of transgenic animal model systems for human hepatocellular carcinoma and transgenic animal model systems so produced.米国特許第6,274,788B1]。この動物は、CPCSEAのガイドラインにより交配し、世話をした(プロジェクトNo.VIR−2,ICGEB,2001)。遺伝子導入陽性動物を、4週齢において、PCRを用いた尾のゲノムDNA分析により選抜した(Kumar et al.2001)。
【0058】
薬物処理:各動物は、週2回、生理食塩水(対照群)又は薬物を含有する生理食塩水(500mg/Kg)(処理群)のいずれかの9回の腹腔内注射を受けた。
【0059】
実施例8
組織病理学的試験及び他のパラメータ:
対照群及び処理群両方の動物を、12週齢又は20週齢で屠殺し、肝臓の肉眼的外観を記録した。組織病理学的調査のために、試料を10%の緩衝化ホルマリン中に回収し、パラフィン・ブロックを調製した。肝臓の形態学的及び細胞学的詳細を、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した組織切片(2〜5mmの厚さ)の光学顕微鏡検査により調べた。
【0060】
対照及び処理マウスの血清中のVEGFの濃度を、マウス特異的ELISAキット(Oncogene Research Products,USA,Cat#QIA52)を用いて測定した。全ての操作は、供給者の指示どおりに行った。VEGF濃度を、ピコグラム/ml血清として表した;
【0061】
組織病理学的試験及び血清VEGF濃度の結果を、それぞれ図1〜3及び表2に示す。
【0062】
表2:ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花の抽出物の処理後のX−mycマウス中の血清VEGF濃度(pg/ml)。
【表2】

【0063】
対照動物の肝臓(図1)は、異型分裂、異形成及び正常な肝臓構造の喪失を示した。悪性肝細胞索は、多核細胞化及び大核小体を有する大きな多形核を示した。図2及び3は、それぞれ、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花の水性抽出物(A003)及び水性画分(F009)による処理の効果を示す。ここで、肝臓は、処理後12及び20週の両方において正常であるように見えた。処理動物の血清VEGF濃度(表2)が有意に減少したので(p<0.001〜0.01)、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の抗癌活性は、抗血管新生機能に関連するようである。
【0064】
実施例9
ヒト癌細胞株に対する水性画分から単離された化合物のインビトロでの細胞毒性:
方法論は、20mg/mlの代わりに1×10-2Mのストック溶液を調製したこと除いて、実施例6で与えられるものと同じである。
【0065】
化合物を、1×10-4、1×10-5及び1×10-6Mの濃度で、多くのヒト癌細胞株、すなわち頸部(SiHa)、CNS(SK−N−SH)、結腸(HT−29、HCT−15、Colo−205及びSW−620)、肺(HOP−62)に対する、そのインビトロでの細胞毒性に関して評価した。両方の化合物は、高度の成長阻害、すなわち用いた細胞株に対して1×10-4Mで40〜99%を示した。1×10-5Mでの最大の成長阻害は、26%であった。化合物は、1×10-6Mで不活性であった。
【0066】
化合物のインビトロでの細胞毒性(成長阻害率)を、表3にまとめる。
【0067】
表3:ヒト癌細胞株に対する化合物(ブトリン及びイソブトリン)のインビトロでの細胞毒性(成長阻害率)
【表3】

【0068】
利点:
本発明の主な利点:
2.本発明は、肝細胞癌に対する抗癌活性を有する新規の抽出物/画分の単離に関する。
3.本方法は、天然において豊富な高度に経済的な原材料を利用する。
4.本方法で用いられる概念は、向上するために、それを望ましく、最も容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、化合物イソブトリン及びブトリンの一般構造を示す。
【化4】

【化5】

【図2】図2は、x−mycマウス(対照、非処理)(A.12週及びB.20週)の肝組織像を示す(全て、100×)。対照動物の肝臓は、異型分裂、異形成及び正常な肝臓構造の喪失を示した。悪性肝細胞索は、多核細胞化及び大核小体を有する大きな多形核を示した。
【図3】図3は、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花の水性抽出物により処理したx−マウス(A.12週及びB.20週)の肝組織像を示す(全て、100×)。肝臓は、処理後12及び20週の両方において正常であるように見えた。
【図4】図4は、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の花の画分により処理したx−マウス(A.12週及びB.20週)の肝組織像を示す(全て、100×)。肝臓は、処理後12及び20週の両方において正常であるように見えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量のブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分から得られる抽出物及び/又はその活性画分或いは治療有効量の化合物ブトリン及び/若しくはイソブトリン又はその誘導体若しくは類似体又はその医薬として許容される塩を含んで成る、肝細胞癌の処置に有用な医薬組成物。
【請求項2】
任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量のブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分から得られる抽出物及び/又はその活性画分を含んで成る、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
組成物の用量が、少なくとも0.5g/kg体重の単位用量で投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量の化合物ブトリン及び/若しくはイソブトリン又はその誘導体若しくは類似体又はその医薬として許容される塩を含んで成る、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
組成物の用量が、0.5g/kg体重未満の単位用量で投与される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
組成物の用量が、可溶形態、好ましくは懸濁形態で投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
用いられる担体が、生理食塩水、アカシアガム、カルボキシメチルセルロース又は任意の他の既知の医薬として許容される担体を含んで成る群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
投与経路が、腹腔内、静脈内、筋肉内、経口などを含んで成る群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
任意に1つ以上の医薬として許容される担体と共に、治療有効量のブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分から得られる抽出物及び/又はその活性画分或いは治療有効量の化合物ブトリン及び/若しくはイソブトリン又はその誘導体若しくは類似体又はその医薬として許容される塩を含んで成る医薬組成物を対象に投与する段階を含んで成る、対象中の肝細胞癌を処置する方法。
【請求項10】
用いられる対象が、ヒト及び動物から成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項2に記載の医薬組成物を対象に投与する段階を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
投与される組成物の用量が、少なくとも0.5g/kg体重の単位用量である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項4に記載の医薬組成物を対象に投与する段階を含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
投与される製剤の用量が、0.5g/kg体重未満の単位用量である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
組成物の用量が、可溶形態、好ましくは懸濁形態で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
用いられる担体が、生理食塩水、アカシアガム、カルボキシメチルセルロース又は任意の他の既知の医薬として許容される担体を含んで成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
投与経路が、腹腔内、静脈内、筋肉内、経口などから成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
肝細胞癌の処置における、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)から得られる抽出物及び生物活性画分の使用。
【請求項19】
肝細胞癌の処置における、化合物ブトリン及びイソブトリンの使用。
【請求項20】
a)植物材料を粉末にすること、
b)段階(a)から得られた粉末を、エタノール、メタノール、水を含んで成る群から選択される溶媒を個々に又はそれらの組み合わせで用いるパーコレーションにより抽出し、抽出物を得ること、
c)段階(b)から得られた抽出物を、減圧下で、<50℃で濃縮すること、
d)段階(c)から得られた抽出物を、塩化エチレン、塩化メチレン、クロロホルム及び/又は酢酸エチルを含んで成る群から選択される溶媒を用いて滴定し、残渣を得ること、
e)段階(d)から得られた残渣を、水相と有機相の間に分配すること、
f)段階(e)から得られた水性部分を乾燥し、既知の方法により所望の活性画分を得ること、
を含んで成る、ブテア・モノスペルマ(Butea monosperma)の任意の植物部分からブトリン及び/又はイソブトリンを含んで成る生物活性画分を単離するための方法。
【請求項21】
残渣を分画するために用いられる有機相がn−ブタノールである、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−542254(P2008−542254A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512941(P2008−512941)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001355
【国際公開番号】WO2006/126067
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【出願人】(507385039)インターナショナル センター フォー ジェネティック エンジニアリング アンド バイオテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】