説明

肥満、糖尿病、うつ病及び不安を治療するためのMCHR1アンタゴニストとしての3−(4−アミノフェニル)チエノピリミド−4−オン誘導体

本発明は、メラニン凝集ホルモン受容体1(MCH R1)のアンタゴニストである新規アリールアミン、前記化合物を含有する医薬組成物、その製造方法、及び肥満、糖尿病、うつ病及び/または不安の治療用薬剤におけるその使用に関する。本発明の化合物は下記式を有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニン凝集ホルモン受容体1(通常、MCH R1、MCH1及びMCH−1Rと略記)におけるアンタゴニストである新規アリールアミン、前記化合物を含有する医薬組成物、その製造方法及び治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満の有病率は、世界中の先進国及び後進国の両方において驚くほどの速さで拡大しつつある。肥満は、非致命的な衰弱状態(例えば、変形性関節症)から命を脅かす慢性疾患(例えば、冠状動脈性心疾患、糖尿病及び特定の癌)までの多数の健康合併症を伴っている。肥満の精神的因果関係は自尊心の低さから臨床的うつ病までに及び得る。
【0003】
過食及び肥満は一般の住民において上記問題となるので、多くの人が現在減量及び/または健康的な体重及び所望のライフスタイルの維持に興味を持っている。
【0004】
特に、メラニン凝集ホルモン(MCH)及びMCH R1が体重の重要なメディエーターであることを示す重要な証拠がある。この証拠には、
1)MCHが摂食に関わる視床下部域において主にニューロンにより産生される;
2)MCH mRNAは栄養シグナル(絶食、授乳及び低血糖により上昇)及びレプチン欠乏(ob/obマウスで上昇)に応答する;
3)マウス及びラットにおいてMCHを長期間中心静脈輸液すると過食症及び軽度の肥満が生ずる;
4)MCHを過剰発現するトランスジェニックマウスは肥満、過食、インスリン耐性であり、食事誘発性の肥満に対してより感受性である;
5)MCHペプチドを産生しないトランスジェニックマウスは痩せており、比較的高い安静時代謝速度で低食欲である;
6)MCH R1遺伝子が欠失しているトランスジェニックマウスは高脂肪食誘導肥満に対して耐性であり、野生型対応マウスに比して軽い;及び
7)MCHペプチドのようにMCH R1は視床下部において高度に発現する;
ことが含まれている。
【0005】
肥満並びに他の関係または関連疾患及び状態の治療において有用なMCH R1アンタゴニストの開発が今も要望されている。
【0006】
従って、本発明者らは、Nature, Vol.400, p.261−265(1999)に開示されているメラニン凝集ホルモン受容体(MCH R1)のアンタゴニストとしての有用な活性プロフィールを発揮する新規なアリールアミン類を知見した。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、式(I):
【化1】

【0008】
[式中、
環Qは3〜7員ヘテロ環式環または7〜11員二環式ヘテロ環式環であり、前記した3〜7員ヘテロ環式環及び7〜11員二環式ヘテロ環式環は描かれている窒素原子を含有し、場合によりO及びSからなる群から選択される1または2個の追加のヘテロ原子を含有していてもよく、前記したヘテロ環式環及び二環式ヘテロ環式環は場合によりフェニル、C1−3アルキル、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、C1−3ヒドロキシアルキル、オキソ、ハロ及び−O(CHC(O)R(ここで、qは0〜2であり、RはC1−6アルキル、C1−6アルコキシ及びアリールからなる群から選択される)からなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で1〜4回置換されていてもよく;
各Rは独立してC1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−3ヒドロキシアルキル、トリハロメチル、トリハロメトキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、アセチル、C1−6アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、nは0〜4であり;
は水素、C1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−3アルキルチオからなる群から選択され;
各Rは独立してC1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−6アルコキシ、トリハロメチル、トリハロメトキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、アセチル、C1−6アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、rは0〜5であり;ただしrが0のとき、環Qはフェニル、C1−3アルキル、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、オキソ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノ及びハロからなる群から選択される少なくとも1個の置換基で1〜4回置換されている]
を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を提供する。
【0009】
1実施形態において、式(I)を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を提供する。
【0010】
本発明の別の実施形態において、本明細書に記載されている1つ以上の状態または適応症の治療(予防を含む)に使用するための式(I)を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を製薬上許容される担体または賦形剤と共に含有する医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明の1実施形態において、哺乳動物に対して式(I)を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を治療有効量投与することを含む前記哺乳動物における肥満、糖尿病、うつ病または不安の治療方法を提供する。
【0012】
本発明の別の実施形態において、哺乳動物に対して式(I)を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を製薬上許容される担体または賦形剤と共に含有する医薬組成物を治療有効量投与することを含む前記哺乳動物における肥満、糖尿病、うつ病または不安の治療方法を提供する。
【0013】
本発明の別の実施形態において、肥満、糖尿病、うつ病(主要及び/または二極性)または不安の治療用薬剤の製造における式(I)を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体の使用を提供する。更に別の実施形態において、肥満、糖尿病、うつ病(主要及び/または二極性)及び不安の治療のための式(I)を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を提供する。
【0014】
本発明の更なる実施形態において、式(I)を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体の製造方法を提供する。
【0015】
薬剤、特に哺乳動物(好ましくは、ヒト)において肥満、糖尿病、うつ病または不安を治療するための薬剤の調製または製造における式(I)を有する化合物、その塩、溶媒和物または生理的誘導体の使用をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書中で使用される場合、「本発明の化合物」または「式(I)を有する化合物」は式(I)を有する化合物、或いはその製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体(例えば、プロドラッグ)を意味する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、別段の記載がない限り、用語「アルキル」及び「アルキレン」は1〜6個の炭素原子を含有する直鎖もしくは分枝鎖炭化水素鎖を指す。本明細書中で使用される「アルキル」の例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル、イソプロピル、tert−ブチル及びヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される「アルキレン」の例には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン及びイソブチレンが含まれるが、これらに限定されない。「アルキル」は置換アルキルも含む。「アルキレン」は置換アルキレンも含む。アルキル及びアルキレン基は、場合によりヒドロキシ、C1−6アルコキシ、ハロ、チオ及びシアノからなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい。ハロ、C1−3アルコキシ及びヒドロキシが特に好ましい。
【0018】
本明細書中で使用される場合、別段の記載がない限り、用語「シクロアルキル」は3〜8個の炭素原子(別段の記載がない限り)を有し、炭素−炭素二重結合がない非芳香族炭素環式環を指す。「シクロアルキル」の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘブチル及びシクロオクチルが含まれる。「シクロアルキル」は置換シクロアルキルも含む。シクロアルキルは、場合によりヒドロキシ、シアノ、ハロ、C1−6アルコキシ及びアルキルからなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい。ハロ、ヒドロキシ及びC1−3アルコキシが好ましい。
【0019】
本明細書中で使用される場合、別段の記載がない限り、用語「アルケニル」は2〜8個の炭素原子及び少なくとも1個〜最高3個の炭素−炭素二重結合を含む直鎖もしくは分枝鎖炭化水素鎖を指す。本明細書中で使用される「アルケニル」の例には、エテニル及びプロペニルが含まれるが、これらに限定されない。「アルケニル」は置換アルケニルも含む。アルケニル基は、場合によりアルキル、ハロ、ヒドロキシ、C1−6 アルコキシ及びシアノからなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい。ハロ、ヒドロキシ及びC1−3アルコキシが好ましい。
【0020】
本明細書中で使用される場合、別段の記載がない限り、用語「シクロアルケニル」は3〜8個の炭素原子(別段の記載がない限り)及び最高3個の炭素−炭素二重結合を有する非芳香族炭素環式環を指す。「シクロアルケニル」の例には、シクロブテニル、シクロペンテニル及びシクロヘキセニルが含まれる。「シクロアルケニル」は置換シクロアルケニルも含む。この環は、場合によりシアノ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1−6アルコキシ(好ましくは、C1−3アルコキシ)及びC1−3アルキル(ハロアルキルを含む)からなる群から選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「ハロ」または「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。これらの中で、塩素(すなわち、クロロ)及びフッ素(すなわち、フルオロ)が好ましい。
【0022】
別段の記載がない限り、用語「アリール」(及び「芳香族」)は6〜12個の炭素原子及び少なくとも1個の芳香族環を有する単環式炭素環基及び縮合二環式炭素環基を指す。特定アリール基の例には、フェニル及びナフチルが含まれるが、これらに限定されない。「アリール」は置換アリール、特に置換フェニルも含む。アリール環は、場合によりハロ、アルキル(ハロアルキルを含む)、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、C1−6アルコキシ(好ましくは、C1−3アルコキシ)、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、カルボキシ、カルボキサミド、スルホンアミド、ヘテロアリール(「Het」と略記)、アミジン、シアノ及びニトロからなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい。本発明に従って好ましいアリール基には、フェニル及び置換フェニルが含まれるが、これらに限定されない。好ましい置換フェニルは、1個以上のハロ基、特にクロロ基及びフルオロ基で置換されているフェニルである。
【0023】
用語「ヘテロ環」及び「ヘテロ環式」はCと少なくとも1個のN、O及びSからなる群から選択される他の原子から構成される環系を指す。ヘテロ環は下記するヘテロ芳香族であってもなくてもよい。換言すると、ヘテロ芳香族はヘテロ環であるが、全てのヘテロ環がヘテロ芳香族ではない(及び/または、ヘテロシクリルとも称され得る)。
【0024】
用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族」はCと少なくとも1個のN、O及びSからなる群から選択される他の原子から構成される単環式または二環式芳香族環系を指す。
【0025】
ヘテロ環式、ヘテロアリール(別名:ヘテロ芳香族)及びアリール(別名:芳香族)基に関連する用語「員」(及びその類似語、例えば「員の」)は環を形成する全ての原子、炭素及びヘテロ原子(N、O及び/またはS)を指す。よって、6員ヘテロ環式環の例はピペリジンであり、6員ヘテロアリール(別名:ヘテロ芳香族)環の例はピリジンであり、6員アリール(別名:芳香族)環の例はベンゼンである。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「場合により」は、それに続いて記載されている事象が起こっていても起こっていなくてもよいことを意味し、起こっている事象及び起こっていない事象の両方が含まれる。
【0027】
本発明の式(I)を以下に詳記する。
【化2】

【0028】
環Qは3〜7員ヘテロ環式環または7〜11員二環式ヘテロ環式環である。環Qの3〜7員ヘテロ環式環及び7〜11員二環式ヘテロ環式環の各々は描かれている窒素原子を含有し、場合によりO及びSからなる群から選択される1または2個の追加のヘテロ原子を含有していてもよい。前記したヘテロ環式環及び二環式ヘテロ環式環は、場合によりフェニル、C1−6アルキル(好ましくは、C1−3アルキル)、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ(好ましくは、C1−3アルコキシ)、C1−3ヒドロキシアルキル、オキソ、ハロ及び−O(CHC(O)R(ここで、qは0〜2であり、RはC1−6アルキル(好ましくは、C1−3アルキル)、C1−6アルコキシ(好ましくは、C1−3アルコキシ)及びアリールからなる群から選択される)からなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で1〜4回置換されている。
【0029】
好ましくは、環Qは5〜6員ヘテロ環式環または7〜10員二環式ヘテロ環式環であり、前記したヘテロ環式環または二環式ヘテロ環式環は場合によりC1−3アルキル、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、オキソ、ハロ及び−O(CHC(O)R(ここで、qは0〜1であり、RはC1−3アルキル、C1−2アルコキシ及びアリールなる群から選択される)からなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で1〜4回置換されている。より好ましくは、環Qは1回置換されている5員ヘテロ環式環である。最も好ましくは環Qは3−ヒドロキシピロリジンである。
【0030】
各Rは独立してC1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−3ヒドロキシアルキル、トリハロメチル、トリハロメトキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、アセチル、C1−6アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、nは0〜4である。好ましくは、RはC1−3直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−3アルコキシ、トリハロメチル、C1−3ジアルキルアミノ、シアノ、アセチル、C1−3アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、nは0〜2である。最も好ましくは、Rはメトキシであり、nは1である。
【0031】
は水素、C1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−3アルキルチオからなる群から選択される。好ましくは、Rは水素及びC1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキルからなる群から選択される。最も好ましくは、Rは水素である。
【0032】
各Rは独立してC1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−6アルコキシ、トリハロメチル、トリハロメトキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、アセチル、C1−6アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、rは0〜5であり;ただしrが0のとき、環Qはフェニル、C1−3アルキル、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、オキソ及びハロからなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で1〜4回置換されている。好ましくは、各RはC1−3直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C1−3アルコキシ、トリハロメチル、C1−3ジアルキルアミノ、シアノ、アセチル、C1−3アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、rは1または2である。最も好ましくは、Rはハロ(例えば、クロロ)であり、rは1である。
【0033】
本発明の好ましい化合物は以下の通りである:
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
6−(4−フルオロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;及び
6−(4−クロロフェニル)−3−(3−メトキシ−4−ピロリジン−1−イルフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0034】
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オンが最も好ましい。
【0035】
式(I)を有する特定化合物は立体異性体形態で存在し得る(例えば、化合物は1個以上の不斉炭素原子を含み得、またはシス−トランス異性を示し得る)。各立体異性体(エナンチオマー及びジアステレオマー)及びその混合物も本発明の範囲に包含される。本発明はまた、1個以上のキラル中心が反転しているその異性体との混合物としての式(I)で表される化合物の個々の異性体も包含される。式(I)を有する特定化合物は位置異性体として製造され得る。本発明は位置異性体の混合物または個別の化合物を包含する。また、式(I)を有する化合物は式に示した以外の互変異性形態で存在し得、これらも本発明の範囲に含まれると理解される。本発明は上記した特定基の全ての組み合わせ及び部分集合を含むと理解される。
【0036】
当業者が認識しているように、本発明の化合物はその製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体(例えば、プロドラッグ)の形態でも利用され得る。
【0037】
式(I)を有する化合物の製薬上許容される塩には製薬上許容される無機または有機酸または塩基から形成される慣用の塩及び4級アンモニウム塩が含まれる。適当な酸塩の具体例には、マレイン酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、フミン酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、アレン酸(aleic)、酒石酸、クエン酸、パルモン酸(palmoic)、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸(メシレート)、ナフタリエン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化水素酸、リンゴ酸、ステロン酸(steroic)、タンニン酸の塩等が含まれる。
【0038】
それ自体製薬上許容されない他の酸(例えば、シュウ酸)も本発明の化合物及びその製薬上許容される塩を得るための中間体として有用な塩を製造する際に使用され得る。適当な塩基性塩の具体例には、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン及びプロカイン塩が含まれる。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「溶媒和物」は溶質(式(I)を有する化合物)及び溶媒から形成される各種化学量論を有する複合体を指す。溶媒の例には、水、メタノール、エタノール及び酢酸が含まれる。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「生理学的機能性誘導体」は動物、特に哺乳動物(例えば、ヒト)に投与したときに(直接または間接的に)本発明の化合物またはその活性代謝物を与えることができる本発明の化合物の製薬上許容される誘導体、例えば式(I)を有する化合物のエステルまたはアミドを指す。例えば、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 第5版, 1巻: Principles and Practiceを参照されたい。
【0041】
式(I)を有する化合物の製薬上許容される塩、溶媒和物及び生理学的機能性誘導体の製造方法は当業界で慣用されている。例えば、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 第5版, 1巻: Principles and Practicを参照されたい。
【0042】
式(I)を有する具体的化合物には表Iに記載されている化合物及び/または本明細書中の実施例で製造した化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【表1】

【0043】

【0044】

【0045】
本発明では、式(I)を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物及び生理学的機能性誘導体はうつ病、不安、肥満及び/または糖尿病の治療において役割を有すると考えられている。本発明の化合物はMCH R1アンタゴニストであり、メラニン凝集ホルモンに起因または帰因する疾患を治療するために使用され得る。肥満の疾患及び/または状態に関して、本発明の化合物は空腹を減らす、食欲を抑える、摂食をコントロールする及び/またはエネルギー消費を増やすことができる。
【0046】
従って、本発明は、肥満、糖尿病、うつ病(例えば、主要うつ病及び/または双極性異常)及び/または不安のような幾つかの状態または疾患の治療方法を提供する。前記治療は、哺乳動物、好ましくはヒトに対して式(I)を有する化合物、その塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を治療有効量投与するステップを含む。前記治療はまた、哺乳動物、好ましくはヒトに対して式(I)を有する化合物、その塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を含有する医薬組成物を治療有効量投与するステップを含み得る。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「治療」は、既に罹患または診断されている患者または被験者における特定状態の緩和、その状態の1つ以上の症状の解消または軽減、その状態の進行の減速または解消、及びその状態の再発の防止または遅延を指す。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」は、例えば研究者または臨床医が求めている投与を受けた被験者において細胞培養物、組織、系、動物(ヒトを含む)の生物学的または医学的応答を誘発させるのに十分な式(I)を有する化合物の量を意味する。
【0049】
治療に使用するためには、治療有効量の式(I)を有する化合物、その塩、溶媒和物または機能性誘導体はそのまま化学品として投与され得るが、典型的には医薬組成物(または、製剤)の活性成分として存在させてもよい。従って、本発明は更に、式(I)を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を含有する医薬組成物を提供する。この医薬組成物は更に、1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤及び/または賦形剤を含み得る。これらの担体、希釈剤及び/または賦形剤は組成物の他の成分との適合性及びレシピエントに非有害性の点で許容されるものでなければならない。
【0050】
医薬組成物は、単位用量あたり所定量の活性成分を含有する単位用量形態で提供され得る。前記単位は、治療有効用量の式(I)を有する化合物(その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を含む)を含んでいてもよく、あるいは、マルチプルユニット剤形を所定の時間に投与することにより所望の治療有効用量を達成できるような治療有効用量の一部分(すなわちサブ用量)を含んでいてもよい。好ましい単位剤形は、活性成分を上記した1日用量またはそのサブ用量、或いはその適当な画分を含有するものである。更に、前記医薬組成物は製薬業界で公知の方法により製造され得る。
【0051】
式(I)を有する化合物、並びにその塩、溶媒和物及び機能性誘導体の正確な治療有効量は複数の要因(これらの要因には治療対象の被験者の年齢及び体重、治療を要する正確な疾患及びその重篤度、製剤の種類及び投与ルートが含まれるが、これらに限定されない)に依存し、最終的には担当医または獣医師の裁量である。式(I)を有する化合物(或いは、その塩、溶媒和物または機能性誘導体)は、一般的には約0.001〜約30mg/kg−レシピエント(動物)体重/日、より一般的には約0.01〜約20mg/kg体重/日の範囲で治療のために投与される。一般的に、許容される単位用量は約0.1〜約3000mg/日、好ましくは約0.1〜約2000mg/日であり得る。単位用量は通常1日1回以上、好ましくは1日約1〜約4回に分けて投与される。
【0052】
医薬組成物は適当なルートにより、例えば経口(口腔内または舌下を含む)、経腸、経鼻、局所(口腔内、舌下または経皮を含む)、経膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内)ルートにより投与するために改造され得る。前記組成物は製薬業界で公知の方法により、例えば活性成分を担体、希釈剤及び/または賦形剤と混合することにより製造され得る。経口投与が最も好ましい。
【0053】
医薬組成物を形成するために、1種以上の本発明の化合物を1種以上の非毒性製薬上許容される成分及び場合により他の活性抗増殖剤と一緒に存在させ得る。前記組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences(第14版),編集長John E. Hoover, Mack Publishing Co.(1970年)発行またはPharmaceutical Dosage Form and Drug Delivery Systems (第6版), Anselら編,Williams & Wilkins(1995年)発行に教示されているような当業界で公知の技術を適用することにより製造され得る。
【0054】
意図する投与ルート用組成物を製造するために適当として使用され得る慣用の製薬成分には、以下のものが含まれる:

酸性化剤、その例には酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸及び硝酸が含まれるが、これらに限定されない;

アルカリ化剤、その例にはアンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン及びトロラミンが含まれるが、これらに限定されない;

吸着剤、その例には粉末セルロース及び活性炭が含まれるが、これらに限定されない;

エアゾール噴射剤、その例には二酸化炭素、CCl、FClC−CClF及びCClFが含まれるが、これらに限定されない;

空気置換剤、その例には窒素及びアルゴンが含まれるが、これらに限定されない;

抗真菌性保存剤、その例には安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン及び安息香酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない;

抗微生物性保存剤、その例には塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀及びチメロサールが含まれるが、これらに限定されない;

抗酸化剤、その例にはアスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート及びメタ重亜硫酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない;

結合剤、その例にはブロックポリマー、天然及び合成ゴム、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコーン及びスチレン−ブタジエンコポリマーが含まれるが、これらに限定されない;

緩衝剤、その例にはメタリン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、無水クエン酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウム二水和物が含まれるが、これらに限定されない;

担体、その例にはアカシアシロップ、芳香シロップ、芳香エリキシル、チェリーシロップ、ココアシロップ、オレンジシロップ、シロップ、コーン油、鉱油、落花生油、ゴマ油、静菌性注射用塩化ナトリウム及び静菌性注射用水が含まれるが、これらに限定されない;

キレート化剤、その例にはエデト酸ジナトリウム及びエデト酸が含まれるが、これらに限定されない;

着色剤、その例には食用赤色3号、食用赤色20号、食用黄色6号、食用青色2号、食用緑色5号、食用橙色5号、食用赤色8号、カラメル及び赤色酸化第二鉄が含まれるが、これらに限定されない;

清澄剤、その例にはベントナイトが含まれるが、これに限定されない;

乳化剤、その例にはアカシア、セトマクロゴール、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン及びポリエチレングリコール50ステアレートが含まれるが、これらに限定されない;

カプセル化剤、その例にはゼラチン及びフタル酸酢酸セルロースが含まれるが、これらに限定されない;

着香料、その例にはアニス油、ケイ皮油、ココア、メントール、オレンジ油、ハッカ油及びバニリンが含まれるが、これらに限定されない;
保湿剤、その例にはグリセリン、プロピレングリコール及びソルビトールが含まれるが、これらに限定されない;
研和剤、その例には鉱油及びグリセリンが含まれるが、これらに限定されない;

油、その例にはラッカセイ油、鉱油、オリーブ油、落花生油、ゴマ油及び植物油が含まれるが、これらに限定されない;

軟膏基剤、その例にはラノリン、親水性軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ワセリン、親水ワセリン、白色軟膏、黄色軟膏及びローズ水軟膏が含まれるが、これらに限定されない;

浸透強化剤(経皮デリバリー)、その例にはモノヒドロキシまたはポリヒドロキシアルコール、飽和または不飽和脂肪族アルコール、飽和または不飽和脂肪族エステル、飽和または不飽和ジカルボン酸、精油、ホスファチジル誘導体、セファリン、テルペン、アミド、エーテル、ケトン及び尿素が含まれるが、これらに限定されない;

可塑剤、その例にはフタル酸ジエチル及びグリセリンが含まれるが、これらに限定されない;
溶媒、その例にはアルコール、コーン油、綿実油、グリセリン、イソプロピルアルコール、鉱油、オレイン酸、落花生油、精製水、注射用蒸留水、注射用滅菌水及び洗浄用滅菌水が含まれるが、これらに限定されない;
補強剤、その例にはセチルアルコール、セチルエステルロウ、微結晶ワックス、パラフィン、ステアリルアルコール、白蝋及び黄蝋が含まれるが、これらに限定されない;
座剤基剤、その例にはカカオ脂及びポリエチレングリコール(混合物)が含まれるが、これらに限定されない;
界面活性剤、その例には塩化ベンザルコニウム、ノノキシノール10、オクトキシノール9、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム及びモノパルミチン酸ソルビタンが含まれるが、これらに限定されない;
懸濁剤、その例には寒天、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カオリン、メチルセルロース、トラガカント及びビーガムが含まれるが、これらに限定されない;
甘味剤、その例にはアスパルテーム、デキストロース、グリセリン、マンニトール、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、ソルビトール及びスクロースが含まれるが、これらに限定されない;
錠剤付着防止剤、その例にはステアリン酸マグネシウム及びタルクが含まれるが、これらに限定されない;
錠剤結合剤、その例にはアカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、圧縮性糖、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、メチルセルロース、ポビドン及び予ゼラチン化デンプンが含まれるが、これらに限定されない;

錠剤及びカプセル剤賦形剤、その例には二塩基性リン酸カルシウム、カオリン、ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ソルビトール及びデンプンが含まれるが、これらに限定されない;

錠剤コーティング剤、その例には液体グルコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、フタル酸酢酸セルロース及びセラックが含まれるが、これらに限定されない;

錠剤直接圧縮賦形剤、その例には二塩基性リン酸カルシウムが含まれるが、これに限定されない;

錠剤崩壊剤、その例にはアルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、微結晶性セルロース、ポラクリンカリウム、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム及びデンプンが含まれるが、これらに限定されない;
錠剤流動促進剤、その例にはコロイド状シリカ、コーンスターチ及びタルクが含まれるが、これらに限定されない;
錠剤滑沢剤、その例にはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ステアリン酸及びステアリン酸亜鉛が含まれるが、これらに限定されない;
錠剤/カプセル剤不透明化剤、その例には二酸化チタンが含まれるが、これに限定されない;

錠剤研磨剤、その例にはカルナウバ蝋及び白蝋が含まれるが、これらに限定されない;
シックナー、その例には蜜ろう、セチルアルコール及びパラフィンが含まれるが、これらに限定されない;
等張化剤、その例にはデキストロース及び塩化ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない;
増粘剤、その例にはアルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポビドン、アルギン酸ナトリウム及びトラガカントが含まれるが、これらに限定されない;及び
湿潤剤、その例にはヘプタデカエチレンオキシセタノール、レシチン、ポリエチレンソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレートが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
投与ルートに応じて、組成物は、エアゾール剤、クリーム剤、エリキシル剤、エマルジョン剤、泡剤、ホイップ剤、ゲル剤、顆粒剤、カシェ剤、キャンデー、吸入剤、ローション剤、マグマ剤、軟膏剤、経口的固体、迅速溶解舌テープ(または、シート)、散剤、スプレー剤、シロップ剤、座剤、懸濁液剤、錠剤、カプセル剤及びチンキ剤のような個別単位の形態をとり得る。錠剤、カプセル剤、顆粒剤及び散剤が好ましい。錠剤及びカプセル剤が最も好ましい。これらの個別単位の製造方法は製薬業界で公知である。
【0056】
本発明の別の態様によれば、式(I)を有する化合物、その塩、溶媒和物または機能性誘導体を1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤及び/または賦形剤と混合することを含む医薬組成物の製造方法も提供する。
【0057】
経口投与に適した医薬組成物は、カプセル剤(軟ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのような他のポリマーから作成したカプセルを含む)または錠剤;散剤及び顆粒剤;溶液剤、エマルジョン剤、または水性または非水性液体中の懸濁液剤;食用泡剤またはホイップ剤;水中油型液体エマルジョン剤または油中水型エマルジョン剤のような個別単位として与えられ得る。例えば、錠剤またはカプセル剤(例えば、硬質、軟質、弾性、ゼラチン質及び/または非ゼランチン質)の形態で投与するためには、活性薬物成分を経口用非毒性の製薬上許容される不活性担体、例えばエタノール、グリセロール、水等と混合され得る。散剤は、化合物を適当な微小サイズに粉砕し、同様に粉砕した医薬用担体(例えば、デンプンまたはマンニトールような食用炭水化物)と混合することにより製造される。着香料、保存剤、不透明化剤、分散剤及び着色剤または染料も存在させ得る。
【0058】
カプセル剤は、上記した粉末混合物を作成し、形成されているゼラチン及び/または非ゼラチン質鞘に充填することにより製造される。充填操作前に粉末混合物に流動促進剤及び滑沢剤(例えば、コロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固体ポリエチレングリコール)を添加してもよい。カプセル剤を服用するときに薬物のアベイラビリティーを改善するために崩壊剤または可溶化剤(例えば、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム)も添加され得る。
【0059】
更に、所望または所要により、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤を混合物に配合し得る。適当な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えば、グルコースまたはβ−ラクトース)、コーン甘味料、天然及び合成ガム(例えば、アカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム)、セルロースポリマー(例えば、ヒドロゲル(HPMC、HPC、PVA)等)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウ、ポリビニルピロリドン等が含まれる。上記剤形中に使用される滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が含まれる。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
錠剤は、例えば粉末混合物を作成し、顆粒化またはスラッグし、滑沢剤及び崩壊剤を添加し、錠剤に圧縮することにより製造され得る。粉末混合物は、適当に粉砕した化合物を上記した希釈剤または基剤、場合により結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン)、溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、再吸収促進剤(例えば、4級塩)及び/または吸収剤(例えば、ベントナイト、カオリンまたはリン酸ジカルシウム)と混合することにより作成される。この粉末混合物を結合剤(例えば、シロップ、デンプンペースト、アカシア漿剤、またはセルロースまたはポリマー材料の溶液)で湿らし、篩いにかけることにより顆粒化してもよい。顆粒化する代わりに、粉末混合物を錠剤機にかけると、顆粒に崩壊された不完全に形成されたスラッグが生ずる。錠剤形成ダイに粘着するのを防止するためにステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を添加することにより顆粒を滑沢化してもよい。その後、滑沢化した混合物を錠剤に圧縮する。本発明の化合物を自由流動性不活性担体と混合し、顆粒化またはスラッグステップを経ることなく直接錠剤に圧縮することもできる。セラックのシーリングコート、糖またはポリマー材料(例えば、HPMC)のコーティング及びロウの研磨コーティングからなる透明または不透明保護コーティングを設けてもよい。異なる1回量を区別するために前記コーティングに染料を添加することができる。
【0061】
薬物を揮発性液体(例えば、水またはエタノール)に溶解乃至分散させ、ノンパレルビーズに噴霧することができる。結合剤(例えば、スクロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)を使用してもよい。少なくとも1コーティング後、ポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)の保護コートを施しても及び/または徐放性または遅延放出性コーティングを施してもよい。このようにコーティングを施したビーズは場合により錠剤に圧縮するかまたはカプセルに充填され得る。
【0062】
経口流体(例えば、溶液剤、シロップ剤及びエリキシル剤)は、所与量が所定量の活性成分を含有するような1回量剤形で製造され得る。シロップ剤は化合物を適当に着香させた水溶液中に溶解させることにより製造され得、エリキシル剤は非毒性アルコールビヒクルを用いて製造される。懸濁液剤は、化合物を非毒性ビヒクル中に分散させることにより調製され得る。可溶化剤及び乳化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール及びポリオキシエチレンソルビトールエーテル)、保存剤、着香料(例えば、ペパーミント油)、天然甘味料、サッカリンまたは他の人口甘味料等を添加してもよい。
【0063】
適当な場合、経口投与用1回量組成物をマイクロカプセル化してもよい。この組成物は、放出を延長または持続するために例えば粒状材料をポリマー、ワックス等でコーティングまたはその中に埋め込むことによっても製造され得る。「迅速溶解」薬剤として投与するために、式(I)を有する化合物をキャンデー、カシェ剤及び/または舌テープ製剤に配合することもできる。経口投与製剤は水と共にまたは水なしで服用され得る。
【0064】
更に、本発明は、肥満、糖尿病(例えば、ロシグリタゾン及び/またはメトホルミン)、高血圧及び動脈硬化症を治療するための少なくとも1種の物質または薬物からなる群から選択される少なくとも1種の他の成分と組み合わせた式(I)を有する化合物、その塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を含む。特に、式(I)を有する化合物、その塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体は、肥満を治療するためのヒト毛様体神経栄養因子、CB−1アンタゴニストまたはインバースアゴニスト(例えば、リモナバント)、神経伝達物質再取り込み阻害剤(例えば、シブトラミン、ブプロピオンまたはブプロピオンHCl)、リパーゼ阻害剤(例えば、オルリスタット)、MC4Rアゴニスト、5−HT2cアゴニスト、グリレン受容体アンタゴニスト、CCK−A受容体アゴニスト、NPY Y1アンタゴニスト、PYY3−36及びPPARアクチベーターからなる群から選択される少なくとも1種の成分と組み合わされ得る。
【0065】
式(I)を有する化合物、並びにその塩、溶媒和物及び生理学的機能性誘導体は、有利には本明細書に概説または記載されている反応スキーム及び/または方法に従って製造される。
【0066】
当業者に自明のように、下記する式(I)を有する化合物の製造方法において、特定の中間体は化合物の製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体の形態であり得る。式(I)を有する化合物の製造方法において使用される中間体に関して、用語または識別子は式(I)を有する化合物に関して上記したと同一の意味を有する。通常、中間体の製薬上許容される塩、溶媒和物及び生理学的機能性誘導体の製造方法は公知であり、式(I)を有する化合物の製薬上許容される塩、溶媒和物及び生理学的機能性誘導体の製造方法は同様であり、下記する。別段の記載がない限り、本明細書に列挙した全ての方法に関する環Q、R、R、R、R、n、q及びrは式(I)に定義した通りである。
【0067】
すなわち、式(I)(式中、Rは水素である)を有する化合物は、式(II)のアニリンを式(III)のホルムアミジンエステルと反応させることにより製造され得る。
【化3】

【0068】
上記式中、RはC1−4アルキルである。
【0069】
式(I)を有する化合物は、対応のアミノ酸(式IV)及び所望のアニリン(式II)を溶媒(例えば、ジクロロメタン)中、アミドカップリング剤(例えば、EDCI(1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩))とアミドカップリングさせた後、還流カルボン酸(IVa)(例えば、ギ酸)中で環化することによっても製造され得る。
【化4】

【0070】
式(I)を有する化合物は、式(Va):
【化5】

【0071】
(式中、Tは離脱基、例えばクロロ、ブロモ、ヨード及びトリフレート(−OSOCF)である)
の化合物を基:
【化6】

【0072】
を導入できる化合物と反応させることによっても製造され得る。
【0073】
式(I)を有する化合物は、式(Va)の化合物からスズキカップリング反応に従ってボロン酸及びパラジウム触媒を用いるか、またはスティルカップリング反応に従って有機スタンナン(organostannane)試薬及びパラジウム触媒を用いて製造され得る。
【0074】
式(I)(式中、Rは水素である)を有する化合物は、式(III)(式中、RはC1−4アルキルである)のアミノエステルと式(II)のアニリンを溶媒(例えば、ジクロロメタンまたは1,2−ジクロロエタン)中、トリメチルアルミニウムの存在下で反応させて式(Vb)の化合物を生成し、この式(Vb)の化合物を環化することによっても製造され得る。
【化7】

【0075】
式(I)(式中、Rは水素である)を有する化合物は、式(VI)のような硫黄含有化合物を溶媒(例えば、エタノール)中で還元剤(例えば、ラネーニッケル)と反応させることによっても製造され得る。
【化8】

【0076】
式(I)(式中、Rは水素である)を有する化合物は、式(II)のアミンを強塩基(例えば、ナトリウムヘキサメチルジシラザン)で処理し、式(III)(式中、RはC1−4アルキルである)のエステルと溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)中で反応させて式(Vb)の化合物を生成し、この式(Vb)の化合物を環化することによっても製造され得る。
【化9】

【0077】
式(II)を有する化合物は、対応のニトロ芳香族(式VII)
【化10】

【0078】
(式中、n、環Q及びRは式(I)に定義した通りであるか、これに変換され得る基である)
を水素及び触媒(例えば、炭素担持10% Pd、塩化第1スズまたは亜ジチオン酸ナトリウム)を用いて還元することによって製造され得る。
【0079】
式(VII)を有する化合物は、式(VIII)のアミンをハロ芳香族(式IX)と反応させることにより製造され得る。
【化11】

【0080】
上記式中、Xはハロであり、n、環Q及びRは式(I)に定義した通りであるか、これに変換され得る基である。
【0081】
式(III)(式中、RはC1−4アルキルである)のホルムアミジンエステルは、対応アミノエステル(式X)をN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(式XI)と溶媒(例えば、エタノール)中で反応させることにより製造され得る。
【化12】

【0082】
上記式中、r及びRは式(I)に定義した通りであるか、これに変換され得る基である。
【0083】
下記実施例は例示の目的のみで、本発明の範囲を限定するものと決して意図されない。本発明は請求の範囲により規定される。
【0084】
実施例
試薬は市販されているかまたは文献記載の手順に従って調製される。
【実施例1】
【0085】
【化13】

【0086】
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【化14】

【0087】
ステップA:(3R)−1−[2−(メチルオキシ)−4−ニトロフェニル]−3−ピロリジノール
1−クロロ−2−(メチルオキシ)−4−ニトロベンゼン(9.35g,0.050モル)及び(3R)−3−ピロリジノール(8.7g,0.100モル)の混合物を100℃に一晩加熱した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、ジクロロメタン(200ml)及び水酸化ナトリウム(1N,200ml)で希釈し、ブラインで3回抽出し、乾燥し、濾過し、濃縮して、(3R)−1−[2−(メチルオキシ)−4−ニトロフェニル]−3−ピロリジノール(10.8g,0.045モル,91%)を得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 7.80(d,1H),7.60(s,1H),6.60(d,1H),4.98(m,1H),4.35(m,1H),3.80(s,3H),3.40−3.80(m,4H),1.95(m,2H)。LCMS m/z=239(M+H)。
【化15】

【0088】
ステップB:5−(4−クロロフェニル)−3−{[(E)−(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}−2−チオフェンカルボン酸メチル
エタノール(350ml)中に3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)−2−チオフェンカルボン酸メチル(37.3ミリモル,10.0g)及びN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(74.7ミリモル,8.9g)を含む混合物を3時間還流加熱した。ロータリーエバポレータにより溶媒を除去した。残渣にトルエン(15ml)を添加し、ロータリーエバポレータにより溶媒を除去した。この手順を3回繰り返した。生じた粘着性残渣にヘキサン(20ml)を添加した後、生成物が固化するまで0℃で酢酸エチルを徐々に添加した。生じた固体を濾過により集めて、所望中間体(11.9g,98.9%)を得た。H NMR(CDCl) δ 3.08(6H,d,J=6.5Hz),3.81(3H,s),6.98(1H,s),7.35(2H,d,J=8.6Hz),7.53(2H,d,J=8.5Hz),7.69(1H,s)。LCMS m/z=323(M+H)。
【化16】

【0089】
ステップC:6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(3R)−1−[2−(メチルオキシ)−4−ニトロフェニル]−3−ピロリジノール(ステップAの生成物,1.19g,0.005モル)を含むジオキサン(35ml)溶液をPd(OH)/C(0.1g)と共にパール振とう装置において45psi水素圧下で2時間撹拌した。反応混合物を窒素雰囲気から外し、セライトを介して濾過し、5−(4−クロロフェニル)−3−{[(1Z)−(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}チオフェン−2−カルボン酸メチル(ステップBの生成物,1.61g,0.005モル)にジオキサン溶液(45ml)として添加した。この溶液をフェノール(4g)と共に濃縮した後、130℃に1時間加熱した。混合物を周囲温度まで冷却し、ジエチルエーテルで希釈した。沈殿した固体を濾過し、ジエチルエーテルと摩砕して、標記化合物を黄色固体(1.3g,0.007モル,48%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.42(s,1H),8.03(s,1H),7.97(d,2H),7.63(d,2H),7.18(s,1H),7.01(d,1H),6.78(d,1H),4.95(m,1H),4.40(m,1H),3.75(s,3H),3.60(m,1H),3.45(m,1H),3.23(m,1H),3.10(m,1H),2.05(m,1H),1.90(m,1H)。LCMS m/z=454(M+H)。
【実施例2】
【0090】
【化17】

【0091】
酢酸(3R)−1−{4−[6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル]−2−メトキシフェニル}ピロリジン−3−イル
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(実施例1からの標記化合物,0.10g,0.2ミリモル)をピリジン(2ml)中に含む溶液を塩化アセチル(100mg,0.8ミリモル)と共に15分間撹拌し、水で希釈した後、濾過して、標記化合物を白色固体(0.097g,98%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.42(s,1H),8.01(s,1H),7.99(d,2H),7.62(d,2H),7.18(s,1H),7.02(d,1H),6.80(d,1H),5.34(m,1H),3.80(s,3H),3.60(m,1H),3.45(m,2H),3.23(d,1H),2.25(m,2H),2.08(s,3H)。LCMS m/z=496(M+H)。
【実施例3】
【0092】
【化18】

【0093】
安息香酸(3R)−1−{4−[6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル]−2−メトキシフェニル}ピロリジン−3−イル
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(実施例1からの標記化合物,0.10g,0.2ミリモル)をピリジン(2ml)中に含む溶液を塩化ベンゾイル(100mg,0.7ミリモル)と一緒に15分間撹拌した後、水で希釈し、濾過して、標記化合物を白色固体(0.097g,98%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.42(s,1H),8.20(d,1H),8.05(m,3H),8.01(s,1H),7.70(d,1H),7.62(d,2H),7.58(d,2H),7.18(s,1H),7.02(d,1H),6.80(d,1H),5.62(m,1H),3.97(m,1H),3.80(s,3H),3.65(m,1H),3.45−3.60(m,1H),3.23(m,1H),2.40(m,1H),2.25(m,1H)。LCMS m/z=558(M+H)。
【実施例4】
【0094】
【化19】

【0095】
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(3S)−3−ピロリジノールを出発物質とし、実施例1に詳記されている方法を用いて、標記化合物を淡褐色粉末(0.45g,22%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.40(s,1H),7.97(s,1H),7.95(d,2H),7.60(d,2H),7.18(s,1H),6.80(m,2H),4.82(m,1H),4.33(m,1H),3.75(s,3H),3.60(m,1H),3.45(m,1H),3.23(m,1H),3.10(m,1H),1.99(m,1H),1.80(m,1H)。LCMS m/z=454(M+H)。
【実施例5】
【0096】
【化20】

【0097】
6−(4−フルオロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
3−{[(1E)−(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}−5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸メチル(3−アミノ−5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸メチルから実施例1のステップBに詳記されている方法を用いて製造)を出発物質とし、実施例1のステップA及びCに詳記されている技術を用いて、標記化合物を淡褐色粉末(0.60g,67%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.40(s,1H),7.97(d,2H),7.95(s,1H),7.40(d,2H),7.07(s,1H),6.97(d,1H),6.70(d,1H),4.82(d,1H),4.37(m,1H),3.75(s,3H),3.62(m,1H),3.20−3.55(m,2H),3.18(m,1H),2.00(m,1H),1.80(m,1H)。LCMS m/z=438(M+H)。
【実施例6】
【0098】
【化21】

【0099】
6−(4−フルオロフェニル)−3−(3−メトキシ−4−ピロリジン−1−イルフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
実施例1に詳記されている方法においてピロリジン及び3−{[(1E)−(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}−5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸メチル(3−アミノ−5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸メチルから実施例1のステップBに詳記されている方法を用いて製造)を用いて、標記化合物を黄色粉末(0.21g,50%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.40(s,1H),7.97(d,2H),7.95(s,1H),7.40(d,2H),7.02(s,1H),6.95(d,1H),6.70(d,1H),3.75(s,3H),3.25−3.55(m,4H),1.82(m,4H)ppm。LCMS m/z=422(M+H)。
【実施例7】
【0100】
【化22】

【0101】
6−(4−クロロフェニル)−3−(3−メトキシ−4−ピロリジン−1−イルフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
ピロリジンを出発物質とし、実施例1に詳記されている方法を用いて、標記化合物を黄色粉末(0.175g,5%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.40(s,1H),7.97(d,2H),7.95(s,1H),7.40(d,2H),7.02(s,1H),6.95(d,1H),6.70(d,1H),3.75(s,3H),3.25−3.55(m,4H),1.82(m,4H)。LCMS m/z=438(M+H)。
【実施例8】
【0102】
【化23】

【0103】
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(2S)−2−ピロリジニルメタノールを出発物質とし、実施例1に詳記されている方法を用いて、標記化合物を黄色粉末(0.20g,42%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.40(s,1H),7.97(s,1H),7.95(d,2H),7.60(d,2H),7.09(s,1H),6.95(d,1H),6.82(d,1H),4.60(t,2H),4.05(m,1H),3.80(s,3H),3.60(m,1H),3.25−3.55(m,1H),3.00−3.20(m,1H),2.05(m,1H),1,90(m,2H),1.82(m,1H)。LCMS m/z=468(M+H)。
【実施例9】
【0104】
【化24】

【0105】
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R,4R)−3,4−ジヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(3R,4R)−3,4−ピロリジンジオールを出発物質とし、実施例1に詳記されている方法を用いて、標記化合物を黄色固体(0.22g,23%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.40(s,1H),7.97(s,1H),7.95(d,2H),7.60(d,2H),7.07(s,1H),6.95(d,1H),6.64(d,1H),5.05(m,1H),4.60(t,1H),4.00(m,1H),3.80(s,3H),3.68(m,1H),3.25−3.55(m,2H),3.30(s,1H),3.20(d,1H)。LCMS m/z=470(M+H)。
【実施例10】
【0106】
【化25】

【0107】
6−(4−フルオロフェニル)−3−[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−3−メトキシフェニル]チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
実施例1に詳記されている方法において4−ピペリジノール及び3−{[(1E)−(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}−5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸メチル(3−アミノ−5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−カルボン酸メチルから実施例1のステップBに詳記されている方法を用いて製造)を用いて、標記化合物を淡褐色粉末(0.22g,12%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.40(s,1H),7.97(d,2H),7.95(s,1H),7.35(d,2H),7.18(s,1H),7.00(m,2H),4.65(s,1H),3.75(s,3H),3.60(m,1H),3.45(m,2H),2.75(t,2H),1.80(m,2H),1.55(m,2H)。LCMS m/z=452(M+H)。
【実施例11】
【0108】
【化26】

【0109】
6−(4−クロロフェニル)−3−{3−メトキシ−4−[(3R)−3−メトキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【化27】

【0110】
ステップA:(3R)−3−(メチルオキシ)−1−[2−(メチルオキシ)−4−ニトロフェニル]ピロリジン
(3R)−1−[2−(メチルオキシ)−4−ニトロフェニル]−3−ピロリジノール(実施例1のステップAの生成物,2.2g,0.009モル)、DMF(10ml)及びNaH(0.40g,鉱油中60%,0.010モル)の混合物を窒素雰囲気下で30分間撹拌した。ヨウ化メチル(1.49g,0.010モル)を添加し、更に30分間撹拌し続けた。酢酸エチルと水の混合物(40ml,50%v/v)を添加し、反応物を水で3回抽出し、乾燥し、濾過し、次いで淡褐色固体(2.20g,97%)に濃縮した。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 7.80(d,1H),7.60(s,1H),6.60(d,1H),4.02(m,1H),3.82(s,3H),3.77(m,1H),3.60(m,2H),3.40(m,1H),3.22(s,3H),2.00(m,2H)。LCMS m/z=253(M+H)。
【化28】

【0111】
ステップB:6−(4−クロロフェニル)−3−{3−メトキシ−4−[(3R)−3−メトキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(3R)−3−(メチルオキシ)−1−[2−(メチルオキシ)−4−ニトロフェニル]−ピロリジン(ステップAの生成物)を出発物質とし、実施例1のステップCに詳記されている方法を用いて、標記化合物を灰色粉末(0.55g,14%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.40(s,1H),7.97(s,1H),7.95(d,2H),7.60(d,2H),7.09(s,1H),6.95(d,1H),6.74(d,1H),4.04(m,1H),3.78(s,3H),3.60(m,1H),3.30−3.50(m,2H),3.24(m,1H),3.22(s,3H),2.00(m,2H)。LCMS m/z=468(M+H)。
【実施例12】
【0112】
【化29】

【0113】
[((3R)−1−{4−[6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル]−2−メトキシフェニル}ピロリジン−3−イル)オキシ]酢酸エチル
【化30】

【0114】
ステップA:({(3R)−1−[2−(メチルオキシ)−4−ニトロフェニル]−3−ピロリジニル}オキシ)酢酸エチル
ブロモ酢酸エチルを出発物質とし、実施例11のステップAに詳記されている方法を用いて上記中間体を淡褐色固体(0.65g,20%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 7.80(d,1H),7.64(s,1H),6.64(d,1H),4.27(m,1H),4.21(s,2H),4.19(q,2H),3.90(s,3H),3.77(m,1H),3.60(m,3H),2.18(s,1H),2.07(m,1H),1.22(t,3H)。LCMS m/z=325(M+H)。
【化31】

【0115】
ステップB:({(3R)−1−[4−[6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル]−2−(メチルオキシ)フェニル]−3−ピロリジニル}オキシ)酢酸エチル
実施例1のステップCに詳記されている方法において({(3R)−1−[2−(メチルオキシ)−4−ニトロフェニル]−3−ピロリジニル}オキシ)酢酸エチル(ステップAの生成物)を用いて、標記化合物を褐色粉末(0.058g,11%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.40(s,1H),7.97(s,1H),7.95(d,2H),7.60(d,2H),7.10(s,1H),7.00(d,1H),6.78(d,1H),4.23(m,1H),4.18(s,2H),4.12(q,2H),3.79(s,3H),3.62(m,1H),3.20−3.48(m,2H),3.20(m,1H),2.05(m,2H),1.21(t,3H)。LCMS m/z=540(M+H)。
【実施例13】
【0116】
【化32】

【0117】
6−(4−クロロフェニル)−3−{3−(ヒドロキシメチル)−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【化33】

【0118】
ステップA:(3R)−1−[2−(ヒドロキシメチル)−4−ニトロフェニル]ピロリジン−3−オール
実施例1のステップAに詳記されている方法において(2−クロロ−5−ニトロフェニル)メタノールを用いて、(3R)−1−[2−(ヒドロキシメチル)−4−ニトロフェニル]ピロリジン−3−オールを褐色粉末(0.45g,22%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.15(s,1H),7.95(d,1H),6.66(d,1H),5.40(t,1H),5.05(d,1H),4.60(m,2H),4.37(m,1H),3.75(m,2H),3.60(m,1H),3.40(m,1H),1.96(m,2H)。LCMS m/z=239(M+H)。
【化34】

【0119】
ステップB:6−(4−クロロフェニル)−3−{3−(ヒドロキシメチル)−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
実施例1のステップCに詳記されている方法において(2−クロロ−5−ニトロフェニル)メタノール(ステップAの生成物)を用いて、標記化合物を淡褐色粉末(1.48g,39%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.39(s,1H),7.97(s,1H),7.95(d,2H),7.60(d,2H),7.40(s,1H),7.21(d,1H),6.88(d,1H),5.22(t,1H),4.98(m,1H),4.55(t,2H),4.19(m,1H),3.33−3.60(m,2H),3.23(m,1H),3.10(d,1H),2.05(m,1H),1.82(m,1H)。LCMS m/z=454(M+H)。
【実施例14】
【0120】
【化35】

【0121】
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メチルフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【化36】

【0122】
ステップA:(3R)−1−(2−メチル−4−ニトロフェニル)−3−ピロリジノール
1−クロロ−2−メチル−4−ニトロベンゼン及び実施例1のステップAに記載されている方法を用いて、標記化合物を淡褐色粉末(1.23g,55%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 7.97(s,1H),7.95(d,1H),6.75(d,1H),5.09(m,1H),4.40(m,1H),3.60−3.80(m,3H),3.50(m,1H),2.44(s,3H),1.80−2.10(m,2H)。LCMS m/z=223(M+H)。
【化37】

【0123】
ステップB:6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシ−1−ピロリジニル]−3−メチルフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
実施例1のステップCに詳記されている方法において(3R)−1−(2−メチル−4−ニトロフェニル)−3−ピロリジノール(ステップAの生成物)を用いて、標記化合物を淡褐色粉末(0.35g,40%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.42(s,1H),8.00(s,1H),7.95(d,2H),7.62(d,2H),7.25(s,1H),7.23(d,1H),6.95(d,1H),5.00(m,1H),4.40(m,1H),3.60(m,1H),3.50(m,1H),3.28(m,1H),3.10(m,1H),2.40(s,3H),2.10(m,1H),1.92(m,1H)。LCMS m/z=438(M+H)。
【実施例15】
【0124】
【化38】

【0125】
6−(4−クロロフェニル)−3−{3−フルオロ−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【化39】

【0126】
ステップA:(3R)−1−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−3−ピロリジノール
1,2−ジフルオロ−4−ニトロベンゼン及び実施例1のステップAに詳記されている方法を用いて上記中間体を淡褐色粉末(1.52g,69%)として製造した。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 7.97(s,1H),7.95(d,1H),6.75(d,1H),5.18(m,1H),4.42(m,1H),3.60−3.80(m,3H),3.50(m,1H),1.90−2.10(m,2H)。LCMS m/z=227(M+H)。
【化40】

【0127】
ステップB:6−(4−クロロフェニル)−3−{3−フルオロ−4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
(3R)−1−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−3−ピロリジノール(ステップAの生成物,226mg,1ミリモル)、塩化第一スズ(0.9g,4ミリモル)、無水エタノール(15ml)及び水性HCl(5ml,1N)の混合物を7時間還流加熱した。反応物を水性水酸化ナトリウム(5ml,6N)で希釈し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル溶液を水で3回抽出し、乾燥し、5−(4−クロロフェニル)−3−{[(1Z)−(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}チオフェン−2−カルボン酸メチル(実施例1のステップBの生成物,322mg,1ミリモル)及びフェノール(0.6g)と混合し、濃縮し、130℃に3時間加熱した。反応物を室温に冷却し、ジエチルエーテルで希釈し、生じた固体を濾過し、酢酸エチルと摩砕して、標記化合物をオリーブ色粉末(171mg,39%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO−d) δ 8.42(s,1H),8.01(s,1H),7.99(d,2H),7.62(d,2H),7.40(m,1H),7.23(m,1H),6.82(m,1H),5.02(m,1H),4.42(m,1H),3.60(m,1H),3.55(m,1H),3.40(m,1H),3.20(m,1H),2.08(m,1H),1.95(m,1H)。LCMS m/z=442(M+H)。
【実施例16】
【0128】
【化41】

【0129】
6−(4−クロロフェニル)−3−(4−モルホリン−4−イルフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
5−(4−クロロフェニル)−3−{[(E)−(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}−2−チオフェンカルボン酸メチル(実施例1のステップBの生成物,0.54ミリモル)をエタノール(1.5ml)中に溶解し、CEM Discover(登録商標)マイクロ波化学装置を用いてバイアル中で4−モルホリン−4−イルアニリンと160℃、150psiで20分間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、生じた固体を集めて、標記化合物(30mg,13%)を得た。H NMR(DMSO−d) δ 8.37(s,1H),7.96(s,1H),7.92(d,2H,J=8.62Hz),7.57(d,2H,J=8.45Hz),7.36(d,2H,J=8.97Hz),7.07(d,2H,J=8.97Hz),3.75(m,4H),3.18(m,4H)。LCMS m/z=424(m+H)。
【実施例17】
【0130】
【化42】

【0131】
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[3−(ヒドロキシメチル)ピペリジン−1−イル]フェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
3−ヒドロキシメチルピペリジン及び1−クロロ−4−ニトロベンゼンを出発物質とし、実施例1に記載されている方法により標記化合物を得た。H NMR(DMSO−d) δ 8.38(s,1H),7.96(m,3H),7.58(d,2H,J=8.6Hz),7.32(d,2H,J=8.8Hz),7.03(d,2H,J=9.1Hz),4.57(t,1H,J=5.4Hz),3.78(m,2H),3.32(m,2H),2.77(m,1H),2.55(m,2H),1.75−1.45(m,3H),1.16(m,1H)。LCMS m/z=452(M+H)。.
【実施例18】
【0132】
【化43】

【0133】
6−(4−クロロフェニル)−3−[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)フェニル]チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
4−ヒドロキシピペリジン及び1−クロロ−4−ニトロベンゼンを出発物質とし、実施例1に記載されている方法により標記化合物を得た。H NMR(DMSO−d) δ 8.38(s,1H),7.96(m,3H),7.58(d,2H,J=8.6Hz),7.32(d,2H,J=8.8Hz),7.05(d,2H,J=8.9Hz),4.70(d,1H,J=4.3Hz),3.66(m,3H),2.95(m,2H),1.82(m,2H),1.49(m,2H)。LCMS m/z=438(M+H)。
【0134】
本発明で使用される化合物の活性は下記するようにMCH R1の機能性アッセイで評価され得る。
【0135】
(材料)
ブラックの96ウェル組織培養物処理プレート(#3904)はマサチューセッツ州ケンブリッジに所在のCorning Costarから入手した。LucPlus(商品名)ルシフェラーゼリポーター遺伝子アッセイキット(#6016969)はコネチカット州メリデンに所在のPackardから入手した。プレートシール(#097−05−00006)はカリフォルニア州フラートンに所在のBeckman/Sagianから入手した。DMEM/F12培地(#11039−021)、ウシ胎児血清(#16140−071)、L−グルタミン(#25030−081)、0.05%トリプシン(#25300−054)、G418(#10131−035)及びdPBS(#4190−144)はメリーランド州ゲイサーズバーグに所在のGibco BRLから入手した。トロンビン(T7009)はミズーリ州セントルイスに所在のSigma Chemical Coから入手した。MCHペプチド(H−1482)はカリフォルニア州トーランスに所在のBaChem Californiaから入手した。チャイニーズハムスター卵巣(CHO−K1)細胞はメリーランド州ロックビルに所在のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手した。
【0136】
方法
elkgal4−lucリポーター遺伝子を安定的に発現するCHO細胞(宿主)にヒトメラニン凝集ホルモン1受容体をエレクトロポレーションすることによりトランスフェクトした。機能的アンタゴニストアッセイのために安定なクローンをG418を用いて選択した。MCH1R−elkgal4−luc CHO細胞をT225フラスコ中の完全培地(DMEM/F12、5% FBS、2mM L−グルタミン)において増殖させた。アッセイの48時間前に、細胞を0.05%トリプシン(2ml)を用いて収集し、完全培地で洗浄し、ブラックの96ウェルプレート中の完全培地において10,000細胞/ウェルの濃度で平板培養した。アッセイの18時間前に、細胞から培地を吸引により除き、90μl/ウェルの無血清DMEM/F12と交換した。アッセイ時に、10ポイント濃度曲線としてのアンタゴニスト(1μl,100% DMSO)を培地にピペットで加え、プレートを細胞培養インキュベータにおいて37℃で45分間インキュベートした。このインキュベート後、EC80濃度のMCH(10uL)を培地に添加し、プレートを細胞培養インキュベータにおいて37℃で5時間インキュベートした。培地を真空により吸引した後、LucPlus(商品名)とdPBS/1mM CaCl/1mM MgClの1:1混合物(50μl)を添加した。ルシフェラーゼ活性を阻害もしくは刺激し得る化合物または光シグナルを阻害し得る化合物による潜在的アッセイ干渉を避けるために吸引ステップを実施した。プレートをシールし、室温で10分間暗順応にかけた後、ルシフェラーゼ活性を3秒/ウェルのカウント時間を用いてTopCount(商品名)マイクロプレートシンチレーションカウンター(Packard)で定量した。MCH EC80応答を阻害するアンタゴニストの能力は、マイクロソフト・エクセルに配備されている曲線の当てはめプログラムを用いて非線形回帰分析により定量化した。MCH R1応答の特異性は、前記アンタゴニストが宿主細胞においてEC80トロンビン応答(内因性)を阻害する能力を測定することにより同一プロトコルを用いて測定した。
【0137】
実施例に記載されている化合物は7以上のpIC50値を有する。例えば、実施例1及び4の化合物はそれぞれ以下に示すMCH R1 pIC50値を有する。
【表A】

比較研究:
本発明の化合物と国際特許出願公開第03/033476号(GlaxoSmithKline)に記載されている化合物の1つの相違点は、本発明の化合物には該出願の式(Ia)中のM----Lに相当する置換基がないことである。加えて、本発明の化合物は、ヒトether−a−go−go関連遺伝子(hERG)カリウムイオンチャネルの阻害に関して国際特許出願公開第03/033476号に開示されている化合物と比較して好ましい特性を示した。hERGカリウムチャネルは、心筋活動電位の再分極化に関与し、このチャネルを阻害すると心電図のQT間隔が延長する恐れがある。QT間隔延長は、心室細動及び突然心臓死に進行し得る心室性不整脈、多形性心室頻脈に関連している。hERG阻害のための新しい化学物質を試験することは臨床試験前にQT間隔延長傾向を早期に検出する戦略である。比較試験の結果は、hERG阻害の減少、よって望ましくない心血管合併症の可能性を低下させる点で驚くほど予期せぬ結果を示している。
【0138】
比較例1〜3(国際特許出願公開第03/033476号に記載されている)を本発明の実施例1〜4と比較した。比較のための国際特許出願公開第03/033476号に記載されている化合物は以下の通りであった:
【化44】

【0139】
比較のために使用した本発明の化合物は以下の通りであった:
【化45】

【0140】
比較は次のように実施した。hERGカリウムチヤネルを、Bacmamウイルス発現系(Kostら, 2000;Pfohら, 2001)を用いてHEK−293細胞において一時的に発現させた。HEK−293細胞は、D−MEM/F12、10%ウシ胎児血清、100単位/mlのペニシリンGナトリウム及び100μg/mlの硫酸ストレプトマイシンから構成されている細胞培地において維持した。細胞をフラスコにおいて集密的に増殖し、経代させる前にPBSで1回洗浄した。フラスコから細胞を分離するためにフラスコを37℃でVERSENE(EDTA)1:5000と5分間インキュベートした。電気生理学的実験に使用する細胞をカバーガラスに載せ、24〜72時間トランスフェクトした後使用した。
【0141】
hERGチャネルは、パッチクランプ法(Hamillら, 1981)の全細胞モードを用いて研究した。ピペット溶液は、145mM K+アスパルテート、11mM EGTA、5mM NaCl、5mM MgATP、5mM HEPES(pH7.4)を含んでおり、バス溶液は145mM NaCl、4mM KCl、2mM CaCl、1mM MgCl、10mM HEPES、10mM d−グルコース(pH7.4)を含んでいた。薬物効果を調べるために、細胞を−80mVで保持し、その後400ミリ秒間で+20mVまで上昇させ、その後−40mVまでの第2パルスを加えてhERGの外側テール電流特性の測定が可能なようにした。hERGテール電流を−40mVで測定した。というのは、非トランスフェクト細胞では他のテール電流がこの電位で存在しなかったからである。このパルスプロトコルを、バス溶液で希釈した試験物質の灌流中10秒間隔で繰り返した。hERGの阻害は、化合物の適用前及び適用後の−40mVでのテール電流のピーク振幅を測定することにより調べた。最大半減阻害濃度(IC50)は、Hill式のデータポイントへの曲線当てはめから求めた。結果を表2に詳記する。全ての実験は室温(約25℃)で実施した。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
環Qは3〜7員ヘテロ環式環または7〜11員二環式ヘテロ環式環であり、前記した3〜7員ヘテロ環式環及び7〜11員二環式ヘテロ環式環は描かれている窒素原子を含有し、場合によりO及びSからなる群から選択される1または2個の追加のヘテロ原子を含有していてもよく、前記したヘテロ環式環及び二環式ヘテロ環式環の各々は場合によりフェニル、C1−3アルキル、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、C1−3ヒドロキシアルキル、オキソ、ハロ及び−O(CHC(O)R(ここで、qは0〜2であり、RはC1−6アルキル、C1−6アルコキシ及びアリールからなる群から選択される)からなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で1〜4回置換されていてもよく;
各Rは独立してC1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−3ヒドロキシアルキル、トリハロメチル、トリハロメトキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、アセチル、C1−6アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、nは0〜4であり;
は水素、C1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル及びC1−3アルキルチオからなる群から選択され;
各Rは独立してC1−6直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C3−6シクロアルキル、C1−6アルコキシ、トリハロメチル、トリハロメトキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、C1−6ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、アセチル、C1−6アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、rは0〜5であり;ただしrが0のとき、環Qはフェニル、C1−3アルキル、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、オキソ及びハロからなる群から独立して選択される少なくとも1個の置換基で1〜4回置換されている]
を有する化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体。
【請求項2】
環Qが5〜6員ヘテロ環式環または7〜10員二環式ヘテロ環式環であり、前記したヘテロ環式環及び二環式ヘテロ環式環は場合によりC1−3アルキル、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、オキソ、ハロ及び−O(CHC(O)R(ここで、qは0〜1であり、RはC1−3アルキル、C1−3アルコキシまたはアリールからなる群から選択される)からなる群から選択される少なくとも1個の置換基で1〜4回置換されていてもよい請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環Qが1回置換されている5員ヘテロ環式環である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
環Qが3−ヒドロキシピロリジンである請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
nが0〜2である請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
各RがC1−3直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C1−3アルコキシ、トリハロメチル、C1−3ジアルキルアミノ、シアノ、アセチル、C1−3アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、nが1である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
がメトキシである請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が水素及びC1−3直鎖もしくは分枝鎖アルキルからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が水素である請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
各RがC1−3直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C1−3アルコキシ、トリハロメチル、C1−3ジアルキルアミノ、シアノ、アセチル、C1−3アルキルチオ及びハロからなる群から選択され、rが1または2である請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
がハロであり、rが1である請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
がクロロである請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3S)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;
6−(4−フルオロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン;及び
6−(4−クロロフェニル)−3−(3−メトキシ−4−ピロリジン−1−イルフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
6−(4−クロロフェニル)−3−{4−[(3R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−イル]−3−メトキシフェニル}チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オンである請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
糖尿病治療薬、高血圧治療薬及び動脈硬化症治療薬からなる群から選択される少なくとも1種と組み合わせた請求項1に記載の化合物、その塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体。
【請求項16】
(i)ヒト毛様体神経栄養因子、(ii)CB−1アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、(iii)神経伝達物質再取り込み阻害剤、(iv)リパーゼ阻害剤、(v)MC4Rアゴニスト、(vi)5−HT2cアゴニスト、(vii)グリレン受容体アンタゴニスト、(viii)CCK−A受容体アゴニスト、(ix)NPY Y1アンタゴニスト、(x)PYY3−36及び(xi)PPARアクチベーターからなる群から選択される少なくとも1種の肥満治療薬と組み合わせた請求項1に記載の化合物、その塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体。
【請求項17】
哺乳動物に対して請求項1に記載の化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体を有効量投与することを含む前記哺乳動物における肥満、糖尿病、うつ病または不安の治療方法。
【請求項18】
哺乳動物がヒトである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物に対して請求項1に記載の化合物、その製薬上許容される塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体及び製薬上許容される賦形剤を含有する医薬組成物を有効量投与することを含む前記哺乳動物における肥満、糖尿病、うつ病または不安の治療方法。
【請求項20】
哺乳動物がヒトである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
式(II):
【化2】

を有するアニリンを式(III)
【化3】

(式中、環Q,、R、R、n及びrは式(I)に定義した通りであり、RはC1−4アルキルであり、RはHである)
を有する化合物と溶媒中で加熱しながら反応させることを含む請求項1に記載の式(I)を有する化合物の製造方法。
【請求項22】
式(IV):
【化4】

を有するアミノ酸を溶媒中、少なくとも1種のカップリング剤の存在下で式(II):
【化5】

を有するアニリンとカップリングさせて、式(V)
【化6】

を有する化合物を生成し、この式(V)を有する化合物を式(IVa):
【化7】

(式中、Q、R、R、R、n及びrは式(I)に定義した通りである)
を有する酸を用いて環化して、式(I)を有する化合物を形成することを含む請求項1に記載の式(I)を有する化合物の製造方法。
【請求項23】
式(Va):
【化8】

(式中、環Q、R、R、n及びrは式(I)に定義した通りであり、Tは離脱基である)
を有する化合物を(i)スズキカップリングを用いてボロン酸及びパラジウム触媒と反応させ、または(ii)スティルカップリング反応を用いて有機スタンナン試薬及びパラジウム触媒と反応させることを含む請求項1に記載の式(I)を有する化合物の製造方法。
【請求項24】
式(III):
【化9】

(式中、RはC1−4アルキルである)
を有するアミノエステルを式(II):
【化10】

を有するアニリンと溶媒中、トリメチルアルミニウムの存在下でカップリングさせて、式(Vb):
【化11】

(式中、環Q、R、R、n及びrは式(I)に定義した通りである)
を有する化合物を生成し、この式(Vb)を有する化合物を環化して、式(I)を有する化合物を形成することを含む請求項1に記載の式(I)(式中、Rは水素である)を有する化合物の製造方法。
【請求項25】
式(VI):
【化12】

(式中、環Q、R、R、n及びrは式(I)に定義した通りである)
を有する硫黄含有化合物を溶媒の存在下でラネーニッケル還元剤と反応させることを含む請求項1に記載の式(I)(式中、Rは水素である)を有する化合物の製造方法。
【請求項26】
式(II):
【化13】

を有するアミンを強塩基(例えば、ナトリウムヘキサメチルジシラザン)で処理し、式(III):
【化14】

(式中、RはC1−4アルキルである)
を有するエステルと溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)中で反応させて、式(Vb):
【化15】

(式中、環Q、R、R、n及びrは式(I)に定義した通りであり、Rは水素である)
を有する化合物を生成し、この式(Vb)を有する化合物を環化して、式(I)を有する化合物を形成することを含む請求項1に記載の式(I)(式中、Rは水素である)を有する化合物の製造方法。
【請求項27】
薬剤、特に哺乳動物、好ましくはヒトにおいて肥満、糖尿病、うつ病または不安を治療するための薬剤の製造における式(I)を有する化合物、その塩、溶媒和物または生理学的機能性誘導体の使用。

【公表番号】特表2007−509158(P2007−509158A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536779(P2006−536779)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/034846
【国際公開番号】WO2005/042541
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】