説明

育毛効果を有する藻類エキス

【課題】優れた育毛作用(テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用等)を有し、かつ、安全性の高い育毛剤、並びに、前記育毛剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供すること。
【解決手段】クラミドモナス属に属する藻類の抽出物を含有することを特徴とする育毛剤、並びに、前記育毛剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤及び飲食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛効果を有する藻類エキス(藻類抽出物)を含有する育毛剤、並びに、前記育毛剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の成長は、成長期、退行期、休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長及び脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期から成長期へかけての新たな毛包が形成されるステージが、発毛に最も重要であると考えられており、このステージにおける毛包上皮系細胞の増殖乃至分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞であり、毛包上皮系細胞へ働きかけてその増殖を促す等の、毛髪への分化に重要な役割を担っている(非特許文献1参照)。
このように、毛乳頭細胞は、毛包上皮系細胞の増殖乃至分化及び毛髪の形成において最も重要な役割を果たしており、例えば、毛乳頭細胞に対象物質を接触させて、その細胞の増殖活性の有無、あるいは強弱を特定することで、その対象物質の育毛効果を検定する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、毛乳頭細胞増殖促進作用を有する生薬の抽出物としては、例えばハトムギ抽出物、ワイルドタイム抽出物、スギナ抽出物、ショウブ抽出物、ローズマリー抽出物、ウコン抽出物、シラカバ抽出物、コウチャ抽出物などが提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
また、男性ホルモンの1種であるテストステロンは、還元酵素であるテストステロン−5α−リダクターゼにより還元されて、ジヒドロテストステロンとなる。生成されたジヒドロテストステロンが頭皮に蓄積すると、毛根を萎縮させて、脱毛を誘発する原因となることが知られている。したがってジヒドロテストステロンの生成を抑制乃至阻害することによって、脱毛を予防及び治療できると考えられている。
そこで、テストステロン−5αリダクターゼ活性阻害作用を有する生薬の抽出物としては、例えば、ウルシ科Choerospondias属植物の抽出物(特許文献3参照)、マジトの抽出物及びカチュアの抽出物(特許文献4参照)、五斂子の抽出物(特許文献5参照)、紅豆杉、鳥欖、幌傘楓、及び穿心蓮から選択されるいずれかの抽出物(特許文献6参照)、などが提案されている。
【0004】
しかしながら、安全性の高い天然物系のものであって、味、匂い、使用感等の点で添加対象物の品質に悪影響を及ぼさず、皮膚外用剤及び飲食品に広く使用可能な育毛剤の更なる提供が、強く求められているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開平10−229978号公報
【特許文献2】特開2006−219407号公報
【特許文献3】特開2003−55162号公報
【特許文献4】特開2002−241297号公報
【特許文献5】特開2002−241296号公報
【特許文献6】特開2002−87976号公報
【非特許文献1】「Trends Genet」,1992年,第8巻,p.56−61
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた育毛作用(テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用等)を有し、かつ、安全性の高い育毛剤、並びに、前記育毛剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、クラミドモナス属に属する藻類の抽出物、中でも、クラミドモナスW80株(FERM P−18474)の抽出物が、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、及び、毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかに基づく、優れた育毛作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> クラミドモナス属に属する藻類の抽出物を含有することを特徴とする育毛剤である。
<2> クラミドモナス属に属する藻類が、クラミドモナスW80株(FERM P−18474)である前記<1>に記載の育毛剤である。
<3> 抽出物が、エタノールと水との混合溶媒を用いて抽出される抽出物である前記<1>から<2>のいずれかに記載の育毛剤である。
<4> テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、及び、毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の育毛剤である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の育毛剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の育毛剤を含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた育毛作用(テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、毛乳頭細胞増殖促進作用等)を有し、かつ、安全性の高い育毛剤、並びに、前記育毛剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(育毛剤)
本発明の育毛剤は、クラミドモナス属に属する藻類の抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0011】
前記育毛剤は、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、及び、毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかに基づく育毛作用を有するものである。前記クラミドモナス属に属する藻類(本明細書中において、単に「藻類」と称することがある)の抽出物が含有する、育毛作用を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記藻類の抽出物がこのような優れた作用を有し、育毛剤として有用であることは、従来には全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0012】
前記クラミドモナス属(Chlamydomonas)に属する藻類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、培養が容易であり、かつ、育毛作用に優れる点で、クラミドモナスW80株を使用することが好ましい。クラミドモナスW80株は、日本国近畿地方の沿岸で採集された海産性のクラミドモナスであり、特許生物寄託センター[日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6(郵便番号305−8566)]にFERM P−18474として寄託されている。
【0013】
前記藻類の培養方法としては、特に制限はなく、従来公知の手法に従い行うことができ、例えば、特開2006−28412号公報に記載の方法等に従い行うことができる。また、前記藻類は、培養後、遠心分離等の常法を用いて回収することができる。
【0014】
回収した前記藻類は、そのままの状態で、或いは、乾燥させた状態で、抽出原料として使用することができる。前記藻類を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、例えば、フリーズドライ、スプレードライなどの手法が挙げられる。また、前記藻類は、細胞そのままの状態で、或いは、細胞を破砕した状態で、抽出原料として使用することができる。なお、前記藻類は、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、前記藻類の極性溶媒による抽出処理を、効率よく行うことができる。
【0015】
前記藻類の抽出物は、藻類の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができる。また、前記藻類の抽出物としては、市販品を使用してもよい。なお、前記藻類の抽出物には、前記藻類の抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又は、これらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0016】
前記抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又は、これらの混合溶媒を、室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。前記藻類に含まれる育毛作用を示す成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって、容易に抽出することができる。
【0017】
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。したがって、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0018】
前記抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、該親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。これらの中でも、前記抽出溶媒としては、エタノールと水との混合溶媒を使用することが好ましい。
【0019】
抽出原料である前記藻類から、育毛作用を有する抽出物を抽出するにあたって、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、前記抽出原料を投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分〜4時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物を得ることができる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50〜95℃にて1〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40〜80℃にて30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま本発明の育毛剤の有効成分として用いることができる。
【0020】
抽出により得られる前記藻類の抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るため、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。なお、得られる前記藻類の抽出液は、そのままでも育毛剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、常法を利用することができ、また、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、抽出原料である前記藻類は特有の匂いと味を有している場合があり、そのため、前記藻類の抽出物に対しては、生理活性の低下を招かない範囲で、脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、例えば皮膚化粧料に添加する場合などには大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。なお、精製は、具体的には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0021】
以上のようにして得られる前記藻類の抽出物は、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、及び、毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを有し、これらの作用に基づき、本発明の育毛剤の有効成分として好適に利用可能なものである。なお、前記藻類の抽出物は、前記した各作用に基づき、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害剤、及び、毛乳頭細胞増殖促進剤としても、それぞれ好適に利用可能である。
前記育毛剤中の前記藻類の抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、また、前記育毛剤は、前記藻類の抽出物そのものであってもよい。
また、前記育毛剤中、前記藻類の抽出物は、いずれか1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。前記育毛剤中に2種以上の藻類抽出物が含まれる場合の、各々の含有量比としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
また、前記育毛剤中に含まれ得る、前記藻類の抽出物以外のその他の成分としても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記藻類の抽出物を所望の濃度に希釈等するための、生理食塩液などが挙げられる。また、前記育毛剤中の前記その他の成分の含有量にも、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記育毛剤は、必要に応じて製剤化することにより、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形とすることができる。
【0023】
本発明の育毛剤は、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、及び、毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかに基づく優れた育毛作用を有すると共に、安全性に優れるため、例えば、後述する本発明の皮膚外用剤、本発明の飲食品などへの利用に好適である。
【0024】
(皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤は、前記した本発明の育毛剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記皮膚外用剤とは、皮膚に適用される各種の薬剤を意味し、その区分としては特に制限されるものではなく、例えば、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものである。
前記皮膚外用剤は、前記藻類の抽出物を、その活性を妨げないように任意の皮膚外用剤に配合したものであってもよいし、前記藻類の抽出物を主成分とした皮膚外用剤であってもよい。また、前記皮膚外用剤は、前記藻類の抽出物そのものであってもよい。
【0025】
前記皮膚外用剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、頭皮・頭髪に適用される頭皮・頭髪用化粧料であることが好ましく、例えば、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンスなどが挙げられる。
【0026】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、皮膚外用剤を製造するにあたって通常用いられる成分、例えば、収斂剤、殺菌、抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、抗老化剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。
【0027】
前記皮膚外用剤中の、前記育毛剤の含有量としては、特に制限はなく、皮膚外用剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、前記藻類の抽出物の量として、0.0001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。
【0028】
(飲食品)
本発明の飲食品は、前記した本発明の育毛剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
前記飲食品は、前記藻類の抽出物を、その活性を妨げないように任意の飲食物に配合したものであってもよいし、前記藻類の抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。また、前記飲食品は、前記藻類の抽出物そのものであってもよい。
【0029】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
【0030】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲食品を製造するにあたって通常用いられる、補助的原料又は添加物などが挙げられる。
前記補助的原料又は添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0031】
前記飲食品中の、前記育毛剤の含有量としては、対象となる飲食品の種類に応じて異なり、一概には規定することができないが、例えば、飲食品本来の味を損なわない範囲で任意の飲食物に配合することを目的とする場合には、有効成分である前記藻類の抽出物の量として、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜20質量%がより好ましい。また、例えば、前記藻類の抽出物を主成分とする顆粒、錠剤、カプセル形態等の栄養補助飲食品を製造することを目的とする場合には、有効成分である前記藻類の抽出物の量として、0.01質量%〜100質量%が好ましく、5質量%〜100質量%がより好ましい。
【0032】
(効果)
本発明の育毛剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、日常的に使用することが可能であり、有効成分である前記藻類の抽出物の働きによって、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、及び、毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかに基づく育毛作用を、極めて効果的に発揮させることができるものである。そのため、本発明の育毛剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品によれば、例えば、男性型脱毛症等の予防・改善を、効果的に行えるようになることが期待される。
【0033】
なお、本発明の育毛剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することも可能である。また、本発明の育毛剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、天然由来の前記藻類の抽出物を有効成分としたものであり、安全性に優れる点でも、有利である。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
(製造例1)
−クラミドモナスW80株の水抽出物の製造−
抽出原料として、クラミドモナスW80株(FERM P−18474)の凍結乾燥品、100gを、水1,000mLに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、80℃に保った後、濾過した。濾液を60℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、抽出物(粉末状)を得た。得られた抽出物の収率を表1に示す。
【0036】
(製造例2)
−クラミドモナスW80株の50質量%エタノール抽出物の製造−
抽出原料として、クラミドモナスW80株(FERM P−18474)の凍結乾燥品、100gを、50質量%エタノール(水とエタノールとの質量比1:1)1,000mLに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、80℃に保った後、濾過した。濾液を60℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、抽出物(粉末状)を得た。得られた抽出物の収率を表1に示す。
【0037】
(製造例3)
−クラミドモナスW80株の80質量%エタノール抽出物の製造−
抽出原料として、クラミドモナスW80株(FERM P−18474)の凍結乾燥品、100gを、80質量%エタノール(水とエタノールとの質量比1:4)1,000mLに投入し、穏やかに攪拌しながら2時間、80℃に保った後、濾過した。濾液を60℃で減圧下に濃縮し、更に減圧乾燥機で乾燥して、抽出物(粉末状)を得た。得られた抽出物の収率を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
(実施例1:テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用試験)
前記製造例2で得られたクラミドモナスW80株の50質量%エタノール抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりテストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用を試験した。
【0040】
蓋付V底試験管にて、プロピレングリコールで調製した4.2mg/mL テストステロン20μL、1mg/mL NADPH含有5mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.13)825μLを混合した。これに、エタノール、50%エタノール、若しくは精製水で調製した被験試料80μL、及び、S−9 75μLを加え再び混合し、37℃にて30分反応させた後、塩化メチレン1mLを加え反応を停止した。これを遠心(1600×g、10分)し、塩化メチレン層を下記の条件でガスクロマトグラフィー分析した。同様の方法で空試験を行った。
予め、3α−アンドロスタンジオール、ジヒドロテストステロン(DHT)、及び、テストステロンの標準品の塩化メチレン溶液を同様にガスクロマトグラフィー分析し、これら3化合物の精秤量とピーク面積よりピーク面積あたりの化合物量を算出しておき、S−9による反応後の3α−アンドロスタンジオール、ジヒドロテストステロン(DHT)、及び、テストステロンそれぞれのピーク面積あたりの濃度を求めた(式1)。その後、式2に従い、被験試料の変換率を求めた。この変換率を基に、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用を式3に従い求めた。結果を表2に示す。
(式1)濃度(%)=被験試料のピーク面積×標準品濃度/標準品のピーク面積
(式2)変換率(%)=(A+B)/(A+B+C)
A:3α−アンドロスタンジオールの濃度
B:ジヒドロテストステロン(DHT)の濃度
C:テストステロンの濃度
(式3)テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害率(%)=(1−E/D)×100
D:空試験での変換率
E:被験試料添加での変換率
[ガスクロマトグラフィーの条件]
・使用機器:Shimadzu GC−7A(株式会社島津製作所製)
・カラム:DB−1701(直径0.53mm×30m、膜厚:1.0μm)
・カラム温度/注入温度:240℃/300℃
・検出器:FID
・キャリアガス:窒素ガス
【0041】
【表2】

【0042】
(実施例2:毛乳頭細胞増殖促進作用試験)
前記製造例2で得られたクラミドモナスW80株の50質量%エタノール抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により毛乳頭細胞増殖促進作用を試験した。
【0043】
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞を、1%FCS及び増殖添加剤を含有した毛乳頭細胞増殖培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10%FBS含有ダルベッコMEMを用いて2.0×10cells/mLの濃度に希釈した後、コラーゲンコートした96wellプレートに1well当たり100μL播種し、3日間培養した。培養後、培地を抜き、無血清DMEMに溶解した被験試料を各wellに200μL添加し、更に4日間培養した。毛乳頭細胞増殖促進作用は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLで無血清のDMEMに溶解したMTTを各wellに100μL添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。
毛乳頭細胞増殖促進作用の計算方法は以下のとおりである。結果を表3に示す。
毛乳頭細胞増殖促進率(%)=A/B×100
A:被験試料添加時の吸光度
B:被験試料無添加時の吸光度
【0044】
【表3】

【0045】
実施例1〜2の結果から、クラミドモナスW80株等のクラミドモナス属に属する藻類の抽出物は、優れたテストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、及び、毛乳頭細胞増殖促進作用を有することが確認され、育毛剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示された。
【0046】
(配合例1)
−ヘアトニック−
下記組成に従い、ヘアトニックを常法により製造した。
・塩酸ピリドキシン・・・0.1g
・レゾルシン・・・0.01g
・D−パントテニルアルコール・・・0.1g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.1g
・l−メントール・・・0.05g
・1,3−ブチレングリコール・・・4.0g
・オタネニンジンエキス・・・0.5g
・エタノール・・・25.0g
・クラミドモナスW80株の水抽出物(製造例1)・・・0.2g
・香料・・・適量
・精製水・・・残部(合計:100.0g)
【0047】
(配合例2)
−シャンプー−
下記組成に従い、シャンプーを常法により製造した。
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム・・・30.0g
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム・・・20.0g
・ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン・・・6.0g
・ヤシ油脂肪酸モジエタノールアミド・・・4.0g
・ジステアリン酸エチレングリコール・・・2.0g
・防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)・・・0.15g
・クラミドモナスW80株の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.2g
・ムクロジエキス・・・0.2g
・黄杞エキス・・・0.5g
・オウバクエキス・・・0.3g
・ローズマリーエキス・・・0.5g
・香料・・・0.01g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・精製水・・・残部(合計:100.0g)
【0048】
(配合例3)
−リンス−
下記組成に従い、リンスを常法により製造した。
・塩化ステアリルトリメチルアンモニウム・・・1.5g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル・・・1.0g
・セチルアルコール・・・2.0g
・オクチルドデカノール・・・1.0g
・カチオン化セルロース・・・0.5g
・プロピレングリコール・・・5.0g
・クラミドモナスW80株の80質量%エタノール抽出物(製造例3)・・・0.2g
・ムクロジエキス・・・0.2g
・黄杞エキス・・・0.5g
・オウバクエキス・・・0.3g
・ローズマリーエキス・・・0.5g
・香料・・・3.0g
・精製水・・・残部(合計:100.0g)
【0049】
(配合例4)
−錠剤状栄養補助食品−
下記の混合物を打錠して、錠剤状栄養補助食品を製造した。
・クラミドモナスW80株の水抽出物(製造例1)・・・30g
・粉糖(ショ糖)・・・178g
・ソルビット・・・10g
・グリセリン脂肪酸エステル・・・12g
【0050】
(配合例5)
−顆粒状栄養補助食品−
下記の混合物を顆粒状に形成して、顆粒状栄養補助食品を製造した。
・クラミドモナスW80株の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・20g
・ビートオリゴ糖・・・1000g
・ビタミンC・・・167g
・ステビア抽出物・・・10g
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の育毛剤、並びに、皮膚外用剤及び飲食品は、優れた育毛作用を有するので、例えば、男性型脱毛症等の予防・改善を目的とした皮膚外用剤や飲食品に、好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラミドモナス属に属する藻類の抽出物を含有することを特徴とする育毛剤。
【請求項2】
クラミドモナス属に属する藻類が、クラミドモナスW80株(FERM P−18474)である請求項1に記載の育毛剤。
【請求項3】
抽出物が、エタノールと水との混合溶媒を用いて抽出される抽出物である請求項1から2のいずれかに記載の育毛剤。
【請求項4】
テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、及び、毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを有する請求項1から3のいずれかに記載の育毛剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の育毛剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の育毛剤を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2010−13416(P2010−13416A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176831(P2008−176831)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】