説明

肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする装置およびプログラム

【課題】肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする装置を提供すること。
【解決手段】 肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする装置は、CT画像から肺の肺葉間を走行している葉間裂を抽出し、その抽出された葉間裂を境界面として肺を肺葉の単位にセグメンテーションする手段と、CT画像から肺の肺区域間を走行している複数の亜区域静脈を抽出し、その抽出された複数の亜区域静脈によって定義される面を境界面として肺葉を肺区域の単位にセグメンテーションする手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肺癌の手術においては、手術後の肺機能の温存や心肺機能維持のために、肺区域に限局した肺癌に対しては、肺区域切除への移行がみられる。
【0003】
従来から、肺の葉間裂を線強調関数を用いて2次元的に抽出し、そこから3次元にして葉間裂を抽出するソフトウェアが知られている(非特許文献1)。しかし、このソフトウェアでは、しばしば見られる不完全分葉に対応することができないという課題があった。また、従来から、ボロノイ分割を利用して、血管から肺葉を決定するソフトウェアも知られている(非特許文献2)。しかし、このソフトウェアで行われる肺の肺葉への分割は、葉間裂に則った分割ではないため、実際の解剖による分割とこのソフトウェアによる分割との間に相違が生じるおそれがあるという課題があった。
【0004】
さらに、肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションすることが可能な装置やプログラムは存在しなかった。このため、手術の前後もしくは治療前後に肺の領域ごとの呼吸機能評価を行うことや、手術前に画像を用いて手術のシミュレーションを行うことができないという課題があった。
【非特許文献1】Takida N, et al. Medical Imageing Technology 2004; Vol.22 269−277
【非特許文献2】Hayashi T,et al. Technical Report of IEICE MI 2003−53(2003−10)39−44
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の装置は、肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする装置であって、CT画像から肺の肺葉間を走行している葉間裂を抽出し、その抽出された葉間裂を境界面として肺を肺葉の単位にセグメンテーションする手段と、CT画像から肺の肺区域間を走行している複数の亜区域静脈を抽出し、その抽出された複数の亜区域静脈によって定義される面を境界面として肺葉を肺区域の単位にセグメンテーションする手段とを備え、そのことにより、上記目的が達成される。
【0007】
肺区域の境界面は、その抽出された複数の亜区域静脈の位置情報を保存し、各肺区域ごとに必要なの亜区域静脈の位置情報を読み込むことによって亜区域静脈の位置情報に基づいて定義されてもよい。
【0008】
肺区域の境界面は、3次元ベクトルの原理、または、Thin Plate Splineのいずれかを用いて定義されてもよい。
【0009】
前記装置は、肺区域をそれぞれ区別して3次元的に表示する手段をさらに備えていてもよい。
【0010】
本発明のプログラムは、肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする肺区域自動セグメンテーション処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、肺区域自動セグメンテーション処理は、CT画像から肺の肺葉間を走行している葉間裂を抽出し、その抽出された葉間裂を境界面として肺を肺葉の単位にセグメンテーションするステップと、CT画像から肺の肺区域間を走行している複数の亜区域静脈を抽出し、その抽出された複数の亜区域静脈によって定義される面を境界面として肺葉を肺区域の単位にセグメンテーションするステップとを包含し、そのことにより、上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする装置およびプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、肺の生理学的分類に基づいて肺を肺区域にセグメンテーションした場合における肺区域の種類を示す。図1に示されるように、肺は、右肺と左肺とにわかれている。右肺は、上葉、中葉、下葉と呼ばれる3つの肺葉に分割され、左肺は、上葉、下葉と呼ばれる2つの肺葉に分割される。右肺の上葉は、S、S、Sと呼ばれる3つの肺区域に分割され、右肺の中葉は、S、Sと呼ばれる2つの肺区域に分割され、右肺の下葉は、S、S、S、S、S10と呼ばれる5つの肺区域に分割される。左肺の上葉は、S1+2、S、S、Sと呼ばれる4つの肺区域に分割され、左肺の下葉は、S、S、S、S10と呼ばれる4つの肺区域に分割される。
【0014】
図2は、肺の外科的分類に基づいて肺を肺区域にセグメンテーションした場合における肺区域の種類を示す。図2に示されるセグメンテーションは、手術の際に有用なように、図1に示されるセグメンテーションを簡易化したものである。図2に示されるように、右肺の上葉は、図1に示されるものと同一であるが、右肺の中葉は、S4+5と呼ばれる1つの肺区域に分割され、右肺の下葉は、Sと呼ばれる肺区域と、肺底区域(S〜S10)と呼ばれる肺区域との2つの肺区域に分割される。図2に示される肺区域S4+5は、図1に示される肺区域S、Sを統合した区域に相当する。図2に示される肺底区域(S〜S10)は、図1に示される肺区域S、S、S、S10を統合した区域に相当する。さらに、図2に示されるように、左肺の上葉は、(S1+2+S)と呼ばれる肺区域と、舌区(S+S)と呼ばれる肺区域との2つの肺区域に分割され、左肺の下葉は、Sと呼ばれる肺区域と、肺底区域(S〜S10)と呼ばれる肺区域との2つの肺区域に分割される。図2に示される肺区域(S1+2+S)は、図1に示される肺区域S1+2、Sを統合した区域に相当する。図2に示される舌区(S+S)は、図1に示される肺区域S、Sを統合した区域に相当する。図2に示される肺底区域(S〜S10)は、図1に示される肺区域S、S、S10を統合した区域に相当する。図2に示されるセグメンテーションによって、肺は、合計10個の肺区域に分割される。
【0015】
図3は、肺葉の境界である葉間裂を示す。図3において、斜めの線分は、斜裂と呼ばれる葉間裂を示し、水平な線分は、水平裂と呼ばれる葉間裂を示す。
【0016】
本発明の装置およびプログラムは、図2に示されるセグメンテーションを提供するように設計されている。具体的には、本発明の装置およびプログラムは、CT画像から肺の肺葉間を走行している葉間裂を抽出し、その抽出された葉間裂を境界面として肺を肺葉の単位にセグメンテーションすることと、CT画像から肺の肺区域間を走行している複数の亜区域静脈を抽出し、その抽出された複数の亜区域静脈によって定義される面を境界面として肺葉を肺区域の単位にセグメンテーションすることとを包含する。肺葉の境界である葉間裂は、薄い胸膜であるため、この膜はCT画像で見ることができる。従って、肺葉の境界は目で見ることができる。しかし、肺区域の境界は肺葉の境界のように目で見ることができない。本発明は、解剖学上の肺区域の境界が「複数の亜区域静脈と呼ばれる血管によって定義される面」であることに着目して、その血管によって定義される面を境界面として肺葉を肺区域の単位にセグメンテーションするというものである。
【0017】
図4は、各肺区域の境界を走行する亜区域静脈をまとめたものである。
【0018】
右肺の上葉の肺区域S、S、Sの境界には、V、V、V、Vという4つの亜区域静脈が走行している。そこで、本発明では、右肺の上葉の肺区域S、S、Sの境界面は、V、V、V、Vという4つの亜区域静脈によって定義される2つの面であるとした。右肺の下葉の肺区域Sと肺底区域(S〜S10)との境界には、2つの亜区域静脈V、Vが走行している。そこで、本発明では、右肺の下葉の肺区域Sと肺底区域(S〜S10)との境界面は、2つの亜区域静脈V、Vによって定義される面であるとした。
【0019】
左肺の上葉の肺区域(S1+2+S)と舌区(S+S)との境界には、2つの亜区域静脈V、Vが走行している。そこで、本発明では、左肺の上葉の肺区域(S1+2+S)と舌区(S+S)との境界面は、2つの亜区域静脈V、Vによって定義される面であるとした。左肺の下葉の肺区域Sと肺底区域(S〜S10)との境界には、2つの亜区域静脈V、Vが走行している。そこで、本発明では、左肺の下葉の肺区域Sと肺底区域(S〜S10)との境界面は、2つの亜区域静脈V、Vによって定義される面であるとした。
【0020】
図5は、本発明の実施の形態の肺区域自動セグメンテーションシステム1の構成の一例を示す。
【0021】
肺区域自動セグメンテーションシステム1は、CT装置10と、CT装置10に接続されたコンピュータ20と、コンピュータ20に接続された表示装置30とを含む。
【0022】
CT装置10は、3次元物体(例えば、人体の肺)のスライス画像を積層し、その積層されたスライス画像を複数のボクセルに分割することによって、3次元に配列された複数のボクセルを生成する。CT装置10によって生成された複数のボクセルは、コンピュータ20に出力される。
【0023】
図5において、参照番号12は、CT装置10によって生成され、3次元に配列された複数のボクセルV(i,j,k)の集合を模式的に示す。ここで、i=1,2,・・・L;j=1,2,・・・M;k=1,2,・・・Nであり、L、M、Nは、それぞれ、1以上の任意の整数である。各V(i,j,k)は、CT値を有している。CT値は、CT装置10によってボクセル単位に計測された値であり、例えば、整数によって表される。CT装置10としては、図5に示されるボクセルの集合12を出力し得る任意のタイプのCT装置を使用することができる。
【0024】
コンピュータ20は、ボクセルの集合12に基づいて、肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする肺区域自動セグメンテーション処理を実行する。コンピュータ20としては、各種プログラムを実行するCPUと各種データを格納するメモリとを含む任意のタイプのコンピュータを使用することができる。
【0025】
表示装置30は、コンピュータ20によって実行された肺区域自動セグメンテーション処理の結果を表示する。表示装置30は、肺区域自動セグメンテーション処理の結果として生成された画像を3次元的にカラーで表示することが可能な表示装置であることが好ましい。表示装置30は、例えば、液晶表示装置であってもよいし、CRT表示装置であってもよい。
【0026】
図6は、コンピュータ20の構成の一例を示す。
【0027】
コンピュータ20は、CPU21と、メモリ22と、入力インターフェース部23と、出力インターフェース部24と、ユーザインターフェース部25と、バス26とを含む。
【0028】
CPU21は、プログラムを実行する。そのプログラムは、例えば、肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする肺区域自動セグメンテーション処理をコンピュータ20に実行させるプログラムである。そのプログラムやそのプログラムの実行に必要なデータは、例えば、メモリ22に格納されている。そのプログラムがどのような態様でメモリ22に格納されているかは問わない。例えば、メモリ22が書き換え可能なメモリである場合には、コンピュータ20の外部からそのプログラムをインストールすることにより、そのプログラムをメモリ22に格納するようにしてもよい。あるいは、メモリ22が書き換え不可能なメモリ(読み出し専用メモリ)である場合には、メモリ22に固定する(焼き付ける)形式でそのプログラムをメモリ22に格納するようにしてもよい。
【0029】
入力インターフェース部23は、CT装置10から複数のボクセルを受け取るための入力インターフェースとして機能する。
【0030】
出力インターフェース部24は、肺区域自動セグメンテーション処理の結果を表示装置30に出力するための出力インターフェースとして機能する。
【0031】
ユーザインターフェース部25は、ユーザとのインターフェースとして機能する。ユーザインターフェース部25には、例えば、マウス25aやキーボード25bなどの入力デバイスが接続されている。
【0032】
バス26は、コンピュータ20内の構成要素21〜25を相互に接続するために使用される。
【0033】
図7は、肺区域自動セグメンテーション処理の手順の一例を示す。このような肺区域自動セグメンテーション処理は、例えば、プログラムの形式で実現され得る。そのようなプログラムは、例えば、CPU21によって実行される。
【0034】
ステップ701:コンピュータ20は、複数のボクセルを取得する。複数のボクセルのそれぞれはCT値を有している。このような複数のボクセルの取得は、例えば、CPU21が入力インターフェース部23を介してCT装置10から出力された複数のボクセルを受け取ることによって達成される。しかし、複数のボクセルを取得する態様は、これに限定されない。コンピュータ20は、任意の態様で複数のボクセルを取得し得る。例えば、コンピュータ20は、磁気ディスクなどの記録媒体に記録された複数のボクセルを読み出すことによって複数のボクセルを取得してもよいし、CT装置10から受け取った複数のボクセルのうちの一部(例えば、CT装置10から受け取った複数のボクセルのうちユーザによって選択されたもの)を取得するようにしてもよい。
【0035】
ステップ702:コンピュータ20は、肺を肺葉の単位にセグメンテーションする。このようなセグメンテーションは、例えば、CT画像において葉間裂を強調し、その強調された葉間裂をCT画像から抽出し、その抽出された葉間裂を境界面として肺を複数の肺葉に分割することによって達成される。
【0036】
葉間裂を強調することは、例えば、Sheet Filterを用いることによって達成される。Sheet Filterを用いて葉間裂を強調することは、各ボクセルにおけるHessian行列の固有値を求めることと、その固有値を大きい順からλ>λ>λとするとき、(数1)によって規定されるSheet Filterを適用することとを包含する。ここで、(数1)におけるω(λ,λ)は、(数2)に示されるように規定される。葉間裂を強調する方法については、例えば、Sato Y,et al.IEEE TRANSACTIONS ON VISUALIZATION AND COMPUTER GRAPHICS 2000;Vol.6 160−180を参照。
【0037】
【数1】

【0038】
【数2】

ここで、本発明では、葉間裂がより強く反応することにより、葉間裂がより強調されるようにSheet Filterが改良されている。具体的には、(数2)において、αの値を0より大きく1より小さい値(定数)とすることにより、Sheet Filterを改良した。
【0039】
図8は、改良されたSheet Filterを用いて葉間裂を強調した一例を示す。図8において、左部分は、肺のCT画像を示し、右部分は、葉間裂を強調した結果の画像を示す(強調された葉間裂は、白い線として示されている)。
【0040】
強調された葉間裂を抽出することは、例えば、閾値処理、ラビング処理によって葉間裂を強調した結果の画像からノイズを除去することによって達成される。このようにして、図9に示されるように、右肺の葉間裂が2枚(すなわち、右斜裂、右水平裂)、左肺の葉間裂が1枚(すなわち、左斜裂)の合計3枚の葉間裂が得られる。このようにして得られた3枚の葉間裂のそれぞれに対して、Thin Plate Splineの処理を適用することにより、葉間裂の面にある穴を補正することが好ましい。これにより、葉間裂の面(すなわち、肺葉の境界面)を完全な面とすることができる。これらの3つの境界面を用いて、右肺を3つの肺葉(すなわち、上葉、中葉、下葉)に分割するとともに、左肺を2つの肺葉(上葉、下葉)に分割することができる。
【0041】
ここで、Thin Plate Splineとは、Radial Basis Function(放射状の基底関数)の一種をいう。Radial Basis Function(RBF)とは、非線形の連続関数f(x)を「円形の等高線を持つ基底関数φ(r)」で展開する方法をいう。すなわち、f(x)は、(数3)に示されるように展開することができる。ここで、φ(r)は、基底関数を示し、rは、制御点からの距離を示す。Thin Plate Splineの場合、φ(r)=rlog(r)である。
【0042】
【数3】

図10は、左右5個の肺葉をそれぞれ区別して異なる色で3次元的に表示した一例を示す。
【0043】
ステップ703:コンピュータ20は、肺葉を肺区域の単位にセグメンテーションする。このようなセグメンテーションは、例えば、肺のマスク画像(CT画像の肺が含まれる領域を切り取った画像)から亜区域静脈を抽出し、その抽出された亜区域静脈の位置情報を保存し、各肺区域ごとに必要な亜区域静脈の位置情報を読み込むことによって亜区域静脈の位置情報に基づいて肺区域の境界面を定義し、その境界面で肺葉を複数の肺区域に分割することによって達成される。
【0044】
肺のマスク画像から亜区域静脈を抽出することは、例えば、市販の”Vertial Place”というソフトフェアの血管抽出Kitを用いて行うことができる。このようにして抽出された亜区域静脈の位置情報は、例えば、XML形式のファイルとしてメモリ22に格納される。CT画像から血管を抽出する技術は、例えば、Yamamoto H,et al. Technical Report of IEICE, JAMITpp.169〜pp.175(2005)に記載されている。
【0045】
図11は、亜区域静脈の位置情報(XML形式のファイル)の一例を示す。図11において、”Entry”というタグは、その位置の状態を示す。ここで、Root=始点、Branch=分岐点、End=終点である。”Position”というタグは、その位置の座標(x,y,z)を示す。”Vector”というタグは、その位置から次の位置への単位ベクトル(x,y,z)を示す。
【0046】
亜区域静脈の位置情報に基づいて肺区域の境界面を定義することは、2種類の方法のいずれかを用いて行われる。1つ目の方法は、3次元ベクトルの原理を用いて境界面を定義する方法であり、2つ目の方法は、Thin Plate Splineを用いて境界面を定義する方法である。
【0047】
図12は、3次元ベクトルの原理を用いて境界面を定義する方法を説明するための図である。図12において、2本の矢印がそれぞれ抽出された亜区域静脈を示す。この場合、2本の矢印を含む平面が肺区域の境界面として定義される。このようにして、図12に示される例では、左肺の上葉(左上葉)において肺区域(S1+2+S)と舌区(S+S)との境界面が定義される。このようにして定義された境界面の法線と左上葉のある点とがなす角度をθとするとき、0<cosθ≦1なら、左上葉のある点は境界面より上にあると判定され、−1≦cosθ<0なら、左上葉のある点は境界面より下にあると判定され、cosθ=0なら、左上葉のある点は境界面上にあると判定される。このように、3次元ベクトルの原理を用いて境界面を定義する方法は、処理時間が短い、同じ親枝を持つものには対応することができるという長所を有している一方で、異なる親枝を持つものには対応することができない、同じ親枝でも血管が曲がって走行すればベクトルは始点と終点とからとっているので完全に血管に沿ってセグメントしているとは言えないという短所を有している。
【0048】
Thin Plate Splineは、葉間裂を補間するために用いられたのと同様に、血管で形成される面を補間するために用いられ得る。Thin Plate Splineを用いて境界面を定義する方法は、異なる親枝を持つものには対応することができる、右上葉のような複雑な面を定義する場合にも対応することができるという長所を有している一方で、処理時間が長いという短所を有している。
【0049】
例えば、右下葉、左上葉、左下葉のそれぞれに3次元ベクトルの原理を用いて境界面を定義する方法を適用し、右上葉にThin Plate Splineを用いて境界面を定義する方法を適用するようにしてもよい。あるいは、右上葉、右下葉、左上葉、左下葉のそれぞれにThin Plate Splineを用いて境界面を定義する方法を適用するようにしてもよい。
【0050】
図13は、左右10個の肺区域をそれぞれ区別して3次元的に表示した一例を示す。
【0051】
図14は、左右10個の肺区域をそれぞれ区別して3次元的に表示した他の一例を示す。
【0052】
図13、図14に示されるように、肺を肺区域の単位にセグメンテーションし、肺区域をそれぞれ区別して表示することにより、本発明の装置を外科出術の際に手術支援ツールとして用いることができる。あるいは、本発明の装置を薬理評価に使用するような肺区域の体積観察ツールとして用いることもできるし、解剖学的な勉強をするための教養ツールとして用いることもできる。
【0053】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする装置およびプログラム等を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】肺の生理学的分類に基づいて肺を肺区域にセグメンテーションした場合における肺区域の種類を示す図
【図2】肺の外科的分類に基づいて肺を肺区域にセグメンテーションした場合における肺区域の種類を示す図
【図3】肺葉の境界である葉間裂を示す図
【図4】各肺区域の境界を走行する亜区域静脈を示す図
【図5】本発明の実施の形態の肺区域自動セグメンテーションシステム1の構成の一例を示す図
【図6】コンピュータ20の構成の一例を示す図
【図7】肺区域自動セグメンテーション処理の手順の一例を示す図
【図8】改良されたSheet Filterを用いて葉間裂を強調した一例を示す図
【図9】3枚の葉間裂を示す図
【図10】左右5個の肺葉をそれぞれ区別して異なる色で3次元的に表示した一例を示す図
【図11】亜区域静脈の位置情報(XML形式のファイル)の一例を示す図
【図12】3次元ベクトルの原理を用いて境界面を定義する方法を説明するための図
【図13】左右10個の肺区域をそれぞれ区別して3次元的に表示した一例を示す図
【図14】左右10個の肺区域をそれぞれ区別して3次元的に表示した他の一例を示す図
【符号の説明】
【0056】
1 肺区域自動セグメンテーションシステム
10 CT装置
12 ボクセルの集合
20 コンピュータ
30 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする装置であって、
CT画像から肺の肺葉間を走行している葉間裂を抽出し、その抽出された葉間裂を境界面として肺を肺葉の単位にセグメンテーションする手段と、
CT画像から肺の肺区域間を走行している複数の亜区域静脈を抽出し、その抽出された複数の亜区域静脈によって定義される面を境界面として肺葉を肺区域の単位にセグメンテーションする手段と
を備えた、装置。
【請求項2】
肺区域の境界面は、その抽出された複数の亜区域静脈の位置情報を保存し、各肺区域ごとに必要なの亜区域静脈の位置情報を読み込むことによって亜区域静脈の位置情報に基づいて定義される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
肺区域の境界面は、3次元ベクトルの原理、または、Thin Plate Splineのいずれかを用いて定義される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
肺区域をそれぞれ区別して3次元的に表示する手段をさらに備えた、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
肺を肺区域の単位に自動的にセグメンテーションする肺区域自動セグメンテーション処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
肺区域自動セグメンテーション処理は、
CT画像から肺の肺葉間を走行している葉間裂を抽出し、その抽出された葉間裂を境界面として肺を肺葉の単位にセグメンテーションするステップと、
CT画像から肺の肺区域間を走行している複数の亜区域静脈を抽出し、その抽出された複数の亜区域静脈によって定義される面を境界面として肺葉を肺区域の単位にセグメンテーションするステップと
を包含する、プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−142481(P2008−142481A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336431(P2006−336431)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(503341686)メド・ソリューション株式会社 (9)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【出願人】(506414129)株式会社Aze (3)
【出願人】(506065415)有限会社カスクリード (3)
【Fターム(参考)】