説明

肺送達用組成物

本発明は、ポリペプチド(例えば、ドメイン抗体)の直接肺送達法、ならびに直接肺送達に適した特定のポリペプチド組成物に関する。本発明はまた、そのような組成物の、例えば肺疾患の治療および診断用(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および喘息の治療用)の医薬における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド(例えば、ドメイン抗体)の直接肺送達法、ならびに直接肺送達に適した特定のポリペプチド組成物に関する。本発明はまた、そのような組成物を、例えば肺疾患の治療および診断用(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および喘息の治療用)の医薬における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
治療薬または診断薬は、希望する特定の位置で目的の治療または診断効果を生ずるように組織や器官に浸透する能力を欠くことがよくある。
【0003】
したがって、そうした治療薬または診断薬を組織や器官に直接(例えば、肺組織に直接)投与して、かかる薬剤の治療域(therapeutic window)を長くするための方法が必要とされている。
【0004】
さらにまた、特定の組織や器官への直接投与に特に適した、そのような治療薬または診断薬を含む特定の組成物(例えば、肺への直接投与に特に適した治療薬または診断薬を含む組成物)も求められている。そうした組成物は疾患の治療、診断または予防に、例えば呼吸器疾患の治療、診断または予防に有用であり、その場合には薬剤が肺組織に直接局所投与されるように製剤化される。この種の薬剤の例としてドメイン抗体(dAb)がある。
【0005】
肺組織に存在する標的と結合するドメイン抗体(dAb)は、肺組織への局所投与に適した、呼吸器疾患の治療または予防用の組成物の製造において有用であることが分かっている。ある実施形態では、肺組織に存在する標的と結合するdAbが最大約10mg/kgまでの量で用いられる。別の実施形態では、肺組織に存在する標的が肺炎症または肺疾患を仲介するものである(WO 2007049017の開示を参照されたい;その内容を参照により本明細書に組み入れる)。
【0006】
興味深い1つの標的は腫瘍壊死因子(TNF-α)経路であり、この経路はCOPDや喘息といった肺疾患の発症に関与していると考えられる。
【0007】
TNFR1を阻害するいくつかのドメイン抗体(dAb)が作製されており、これらは(例えば、WO 2007049017およびWO 06038027に)記載されていて、肺炎症または呼吸器疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療するのに有効でありうる。
【0008】
TNF-αはCOPDに関連した広範囲の炎症作用があり、好中球、単球、マクロファージおよび上皮細胞の活性化、粘液分泌、ならびにプロテイナーゼの放出を介した肺実質の破壊をもたらす(Barnes PJ, et al., Chronic obstructive pulmonary disease: molecular and cellular mechanisms(慢性閉塞性肺疾患:分子および細胞機構). Eur Respir J. 2003 Oct;22(4):672-88)。
【0009】
公表された研究から、TNF-αは、普通の喫煙者や喘息患者と比較して、COPD患者の誘発喀痰中に高い濃度で存在することが明らかにされている(Keatings VM, et al., Differences in interleukin-8 and tumor necrosis factor-alpha in induced sputum from patients with chronic obstructive pulmonary disease or asthma(慢性閉塞性肺疾患または喘息の患者から得られた誘発喀痰中のインターロイキン-8および腫瘍壊死因子-αの相違点). Am J Respir Crit Care Med. 1996 Feb;153(2):530-4)。
【0010】
さらに、増大したTNF-α発現はCOPD患者における増悪エピソードと一時的に関連している可能性がある(Calikoglu M, et al., Leptin and TNF-alpha levels in patients with chronic obstructive pulmonary disease and their relationship to nutritional parameters(慢性閉塞性肺疾患の患者におけるレプチンおよびTNF-αレベル、ならびにそれらと栄養パラメーターとの関係). Respiration. 2004 Jan-Feb;71(1):45-50)。
【0011】
TNFR1の発現はCOPD患者から分離された末梢T細胞において増加しているようである(Hodge. G. et al., Increased intracellular T helper 1 proinflammatory cytokine production in peripheral blood, BAL and intraepithelial T cells of COPD subjects(COPD患者の末梢血、BALおよび上皮内T細胞における細胞内Tヘルパー1前炎症性サイトカイン産生の増加). Clin. Exp. Immunol. 2007. 150(1). 22-29)。
【0012】
その上、末梢の可溶性TNFR1レベルの上昇は、急性肺損傷および人工呼吸器誘発肺損傷の患者における罹患率および死亡率と強く関連している(Parsons, P. E. et al., Elevated plasma levels of soluble TNF receptors are associated with morbidity and mortality in patients with acute lung injury(可溶性TNF受容体の血漿レベルの上昇は急性肺損傷患者の罹患率および死亡率と関連する). Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2005. 288: L426-L431)。
【0013】
腫瘍壊死因子αは、病的状態にある体液中に低濃度で存在する多面的機能を有するサイトカインであって、免疫学的および病態生理学的反応の主要なメディエーターである。TNF-αは活性化されたマクロファージと単球により主に産生されるが、Bリンパ球、Tリンパ球、線維芽細胞を含めて他の多くの細胞型によっても産生される。通常、TNF-αは26kDaの前駆物質として合成され、この物質は膜結合型として細胞上に貯蔵される。細胞から放出される前に、その前駆物質の形態は、TNF-α変換酵素(TACE)または他のマトリックスメタロプロテイナーゼにより活性化されて、17kDaの可溶性TNF-αに変換される。
【0014】
TNF-αはホモ三量体であり、2つの明確に区別される細胞表面受容体である55〜60kDaのTNFR1鎖と70〜80kDaのTNFR2鎖(両方とも非共有結合型のホモ三量体受容体複合体として存在する)に結合する。これらのTNFRは多種多様な細胞によって発現されている。例えば、TNFR1を発現しない細胞型は体内でまだ見い出されていないが、TNFR2の発現は主に免疫細胞と内皮細胞によっておこなわれる。
【0015】
TNFR1およびTNFR2は主としてそれらの細胞外ドメインに28%の相同性を有する1回膜貫通型の糖タンパク質であって、システインに富む4つの縦列反復モチーフを含む。それらは機能的意義が知られているモチーフをいくつか含んでいる。TNFR1およびTNFR2はどちらも細胞外プレリガンド結合アセンブリドメイン(pre-ligand-binding assembly domain: PLAD)(リガンド結合領域と区別される)を含み、かかるドメインは、特にTNF-αリガンドにより活性化されると、受容体をあらかじめ複合体化して、三量体化を促進する。TNFR1はその受容体のカルボキシル末端側に約80アミノ酸長のデスドメイン(death domain: DD)モチーフを含み、これはTNFR1の細胞死誘導活性の点で重要である。
【0016】
0℃での結合研究により、両TNFRへのTNF-αの高親和性結合が明らかになり、TNFR1に対しては約300〜600pMの、そしてTNFR2に対しては70〜200pMのKd値を示した(MacEwan DJ. et al., TNF receptor subtype signalling: differences and cellular consequences(TNF受容体サブタイプのシグナル伝達:相違点および細胞への影響). Cell Signal. 2002 Jun;14(6):477-92)。
【0017】
しかしながら、生理的温度では、TNFR1(TNFR2ではない)が可溶性TNF-αに対する高親和性受容体であり(KD=19pM)、これには主にTNFR1に対するTNF-αの非常に遅いオフ(解離)速度が影響している。TNF-αとTNFR1との複合体は非常に安定していて(平均残存時間が約48分)、(解離よりも)内在化されやすく、結果として細胞内で持続するシグナル伝達複合体となる。TNFR1もTNFR2もリンホトキシンと結合する能力があるが、リンホトキシンはTNF-αとの相同性(30%のアミノ酸同一性)を示す。リンホトキシンの機能的役割はヒトではほとんど知られていない。
【0018】
膜結合型TNF-αはTNFR1とTNFR2の両方に結合して、それらを活性化する。一方、可溶性TNF-αはTNFR2と結合するが、その後のシグナル伝達は、膜結合型TNF-αによるTNFR2の活性化と比較して、著しく低下する。いったん活性化されると、TNFR2はマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)によって可溶性形態(まだTNF-αリガンドと結合する能力がある)に切断される(Pennica D, et al., Biochemical properties of the 75-kDa tumor necrosis factor receptor. Characterization of ligand binding, internalization, and, receptor phosphorylation(75kDa腫瘍壊死因子受容体の生化学的性質:リガンド結合、内在化および受容体リン酸化の性状解析). J Biol Chem. 1992 Oct 15;267(29):21172-8)。
【0019】
多数の実験的アプローチから、TNF-R1はTNF-αの大部分の生物学的活性を開始させることが明らかにされている。TNF-R1へのTNF-αの結合は一連の細胞内事象の引き金を引き、最終的には2つの主要な転写因子、核因子kB (NF-kB)およびc-Jun、の活性化をもたらす。これらの転写因子はさまざまな生物学的プロセス(細胞増殖および細胞死、発生、腫瘍形成、ならびに免疫、炎症およびストレス反応を含む)にとって重要な遺伝子の誘導性発現に関与している。TNFR1に欠陥があるトランスジェニックマウスは、リステリア菌(Listeria monocytogenes)や結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染に高い感受性を示すが、TNF-αまたはインターロイキン-1が介在するin vivo致死には耐性であり、さらに、リポ多糖およびD-ガラクトサミンにより誘発される内毒素性ショックのモデルにも耐性であった。TNFR1はまた、早期の移植片対宿主病を抑えることも示されている。
【0020】
TNFR2に欠陥があるトランスジェニックマウスを用いた研究からは、TNFR2がいくつかの有益な免疫学的プロセスで重要な役割を担っていることが明らかになった。TNFR2は抗原駆動性(antigen-driven)のT細胞応答および増殖においてある役割を果たすことが分かっている。1型受容体(CD120a)は、可溶性腫瘍壊死因子に対する高親和性受容体であり(Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Jan 20;95(2):570-5)、抗腫瘍効果(Zhao X, et al., Tumor necrosis factor receptor 2-mediated tumor suppression is nitric oxide dependent and involves angiostasis(腫瘍壊死因子受容体-2が介在する腫瘍抑制は酸化窒素依存性であり、血管新生阻害を伴う). Cancer Res. 2007 May 1;67(9):4443-50)、虚血誘発性新血管形成(Goukassian DA, et al., Tumor necrosis factor-alpha receptor p75 is required in ischemia-induced neovascularization(虚血誘発性新血管形成には腫瘍壊死因子-α受容体p75が必要である). Circulation. 2007 Feb 13;115(6):752-62)、樹状細胞-ナチュラルキラー細胞クロストーク、ランゲルハンス細胞の移動に関係する。最後に、Higuchi Yら(Higuchi, Y. et al., Tumor Necrosis Factor Receptors 1 and 2 Differentially Regulate Survival, Cardiac Dysfunction, and Remodeling in Transgenic Mice With Tumor Necrosis Factor Induced Cardiomyopathy(腫瘍壊死因子受容体1および2は、腫瘍壊死因子誘発型心筋症のトランスジェニックマウスにおいて生存、心機能不全およびリモデリングを示差的に調節する). Circulation. 2004;109:1892-1897)は、TNFR2を介したシグナル伝達がサイトカイン介在心不全の発症機序において心臓保護の役割を果たしうることを示した。TNFR1の特異的遮断によって、TNF-αは、TNFR1を介したシグナル伝達の有害作用を回避する一方で、TNFR2を介したシグナル伝達によるその有益な免疫機能のいくつかを発揮することが可能であると考えられる。
【0021】
前臨床および臨床試験から、TNF-αは多くの免疫介在炎症性疾患における免疫治療介入のための極めて重要な疾患分子および治療標的として同定され、かつ実証されている。臨床的適応症としては、慢性関節リウマチ、クローン病、強直性脊椎炎および乾癬が挙げられる。最近の臨床所見は、多くの慢性炎症性疾患が特定の病原経路を共有するが、その他は特定の疾患表現型に限られることを示している。抗TNFα剤をプローブとして用いて、TNF-αは、IL-1αやIL-1βなどの他の前炎症性サイトカイン、関節への炎症細胞の動員、マトリックスメタロプロテイナーゼ、および滑膜血管化を調節していることが実証された(Taylor PC, et al., Tumour necrosis factor alpha as a therapeutic target for immune-mediated inflammatory diseases(免疫介在炎症性疾患の治療標的としての腫瘍壊死因子α). Curr Opin Biotechnol. 2004 Dec;15(6):557-63)。
【0022】
TNF-αはCOPDや喘息のような肺疾患において極めて重要な役割を果たして、炎症反応を増幅し、結果として、上皮細胞、単球、マクロファージおよび好中球の活性化、粘液分泌、ならびにプロテイナーゼの放出を介した肺実質の破壊を引き起こすと考えられる。
【0023】
COPDは、完全には元に戻らない気道制限のゆっくりとした漸進的発達により特徴づけられる。古典的には、2つの臨床像または病理的所見、つまり慢性気管支炎および肺気腫、がCOPDとして挙げられる。慢性気管支炎は喀痰を伴う咳につながる粘液産生に基づいて臨床的に定義されるが、一方、肺気腫は肺胞破壊の病理学的過程である。COPDと診断された患者の気道では、顕著な炎症性浸潤に加えて、粘液細胞の異常増殖と肥大の両方が明らかである。臨床的に関係のある粘液分泌の主要な部位は比較的大きな気道のままであるが、気流閉塞の大半は非軟骨性の膜様細気管支および終末気道に存在すると考えられる。末梢気道での長期にわたる炎症は、上皮下線維症、細気管支の壁厚の増加、および粘液による内腔の詰まりにつながる。
【0024】
TNF-αは、普通の喫煙者や喘息患者と比べて、COPD患者の誘発喀痰中に高い濃度で存在する(Keatings VM, et al., Differences in interleukin-8 and tumor necrosis factor-alpha in induced sputum from patients with chronic obstructive pulmonary disease or asthma(慢性閉塞性肺疾患または喘息の患者から得られた誘発喀痰中のインターロイキン-8および腫瘍壊死因子-αの相違点). Am J Respir Crit Care Med. 1996 Feb;153(2):530-4)。さらに、増大したTNF-α発現はCOPD患者における増悪エピソードと一時的に関連している可能性がある(先に引用したCalikoglu et al., 2004)。肺組織でのTNFR1およびTNFR2の発現は研究されていないようであるが、末梢可溶性TNFR2レベルはCOPD患者において上昇していることが分かっており、また、TNFR1の発現はCOPD患者から分離された末梢T細胞で上昇しているようである(Hodge. G. et al., Increased intracellular T helper 1 proinflammatory cytokine production in peripheral blood, BAL and intraepithelial T cells of COPD subjects(COPD患者の末梢血、BALおよび上皮内T細胞における細胞内Tヘルパー1前炎症性サイトカイン産生の上昇). Clin. Exp. Immunol. 2007. 150(1). 22-29)。その上、末梢の可溶性TNFR1レベルの上昇は、急性肺損傷および人工呼吸器誘発肺損傷の患者における罹患率および死亡率と強く関連している(Parsons, P. E. et al., Elevated plasma levels of soluble TNF receptors are associated with morbidity and mortality in patients with acute lung injury(可溶性TNF受容体の血漿レベルの上昇は急性肺損傷患者の罹患率および死亡率と関連する). Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2005. 288: L426-L431)。
【0025】
TNF-αの血清濃度および末梢単球からの誘発性TNF-α産生は、体重減少とサルコペニア(筋肉量の減少)と共にCOPD患者において上昇している。このことは、重症COPDによく見られる悪液質の原因にTNF-αを関連づけるものである。
【0026】
それゆえに、抗TNFR1ドメイン抗体がTNFR1標的を阻害するために作製されている(例えば、WO 2007049017およびWO 06038027の開示内容を参照されたい)。
【0027】
肺疾患の治療または予防のために、そのような抗TNFR1ドメイン抗体の直接肺送達によりTNFR1標的の局所阻害を達成することが特に望ましく、したがって、肺組織への直接投与に特に適した、TNFR1標的を阻害できる物質(例えば、抗TNFR1ドメイン抗体)を含む組成物が求められている。かかる組成物は呼吸器疾患、例えばCOPD、喘息または肺サルコイドーシスの治療または予防に有用であると考えられる。
【0028】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という語は、他の異なるV領域またはドメインとは無関係に、ある抗原またはエピトープと特異的に結合する抗体可変ドメイン(VH、VHH、VL)をさす。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変領域または可変ドメインを含むフォーマット(例えば、ホモまたはヘテロ多量体)で存在することができ、その際、他の可変領域またはドメインは免疫グロブリン単一可変ドメインによる抗原結合に必要とされないものである(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインは追加の異なる可変ドメインとは無関係に抗原と結合する)。「ドメイン抗体」つまり「dAb」は、本明細書中で用いる場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。一実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインはヒト抗体可変ドメインであるが、げっ歯類(例えば、WO 00/29004に開示されるもの;その内容全体を参照により本明細書に組み入れる)、テンジクザメ(nurse shark)およびラクダ科動物(Camelid) VHH dAbのような他の動物種由来の単一抗体可変ドメインも含まれる。ラクダ科動物VHHは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、グアナコなどの、もともと軽鎖を欠く重鎖抗体を産生する動物種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。
【0029】
「ドメイン」は、そのタンパク質の残部から独立して三次構造を保持する、折りたたまれたタンパク質構造である。一般的に、ドメインはタンパク質の個々の機能特性に関与しており、多くの場合、タンパク質の残部の機能および/またはドメインの機能の低下なしに、付加されたり、除去されたり、他のタンパク質に転移されたりすることが可能である。「単一抗体可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む、折りたたまれたポリペプチドドメインである。したがって、それは完全な抗体可変ドメインと修飾された可変ドメインを含み、例えば、1以上のループが抗体可変ドメインに特徴的でない配列で置き換えられた抗体可変ドメイン、トランケートされた抗体可変ドメイン、またはN-もしくはC-末端延長部を含む抗体可変ドメイン、あるいは全長ドメインの結合活性および特異性を少なくとも保持する可変ドメインの折りたたまれたフラグメントを含む。
【発明の概要】
【0030】
本発明者らは、このたび、(a)ポリペプチド、例えば抗体(例:モノクローナル抗体)または免疫グロブリンポリペプチド(例:ドメイン抗体(dAb)もしくはナノボディ)と、さらに(b)製薬上許容される緩衝液と、を含むか、またはこれらから成る組成物を開発したが、かかる組成物は液滴を含んでなり、かつ組成物中に存在する液滴の約40%以上(例えば50%以上)が約6ミクロン以下、例えば約1ミクロン〜約6ミクロン、例えば約5ミクロン以下、例えば約1ミクロン〜約5ミクロンの範囲の液滴径を有するものである。これらの組成物は、例えば直接局所肺送達によって被験者に投与するのに特に適している。これらの組成物は、例えば、ネブライザー(噴霧器)などを用いて、吸入により、肺に直接投与することが可能である。
【0031】
したがって、本発明は、(a)ポリペプチド、例えば免疫グロブリンポリペプチド(例:ドメイン抗体(dAb)もしくはナノボディ組成物)と、さらに(b)製薬上許容される緩衝液と、を含むか、またはこれらから成る組成物を提供し、前記組成物は液滴を含んでなり、かつ組成物中に存在する液滴の約40%以上(例えば50%以上)が、直接局所肺送達によって被験者に投与するために、約6ミクロン以下、例えば約1ミクロン〜約6ミクロン、例えば約5ミクロン以下、または例えば約1ミクロン〜約5ミクロンの範囲の液滴径を有するものである。これらの組成物は生理的に許容される緩衝液を含むことができ、かかる緩衝液は約4〜約8(例えば約7〜約7.5)のpH範囲を有し、また、1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有するものである。
【0032】
前記組成物中に存在する液滴の少なくとも40%、例えば50%以上、例えば80%以上は、約6ミクロン以下、例えば約1ミクロン〜約6ミクロンの範囲の液滴径を有する。この液滴径範囲は、記載したとおり、約6ミクロン以下、例えば約1ミクロン〜約6ミクロン、例えば約2〜約5ミクロンとすることができ、肺の深い部分に送達する場合には、例えば約2〜約3ミクロンとすることが好ましい。
【0033】
現在知られている製薬上許容される緩衝液の例としては、リン酸、クエン酸、酢酸およびヒスチジンの緩衝液が挙げられる。緩衝液はさらに追加の作用物質を含むことができ、例えば、(a)粘度を高めるための物質、例えばPEG(例:PEG 1000)、糖類(例:ショ糖、マンノース)、lutrol(例:lutrol44)および/または(b)安定化剤、例えば界面活性剤、を含みうる。
【0034】
本発明はさらに、製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤をさらに含む、先に記載した組成物に関する。
【0035】
ポリペプチドは、例えば約150アミノ酸までの、被験者に送達することが望ましい、例えば治療用、予防用または診断用のポリペプチドを含むか、またはこれから成るものであってよい。
【0036】
ポリペプチドは、例えば抗体(例:モノクローナル抗体)もしくは免疫グロブリンポリペプチドであるか、またはそれらは、例えば約150アミノ酸までの、単量体のようなポリペプチドドメインでありうる。
【0037】
ポリペプチドは、例えばドメイン抗体(「dAb」)(例:ドメイン抗体(dAb)単量体)を含むか、またはこれから成るものであってよい。
【0038】
ポリペプチドはさらに、アフィボディ(affibody)のような非IgG様骨格(scaffold)を含むか、またはこれから成るものでもよい。
【0039】
本明細書中で用いる「ポリペプチド」またはドメイン抗体(「dAb」)という語は、他の分子(例えば被験者に送達することが望ましい分子)に融合された、またはコンジュゲートされた、または結合されたポリペプチドもしくはdAb、例えばAlbudab(半減期を延ばすために、dAbをヒト血清アルブミンに結合したもの)をさすためにも用いられる(例えば、WO 2005118642およびWO 2006059106を参照されたい;その教示内容を参照により本明細書に組み入れる)。
【0040】
ポリペプチド、例えばdAb単量体のようなドメイン抗体分子は、所望の標的、例えば肺組織に存在する標的と結合することができ、そして例えば、その標的は肺の病態または肺疾患もしくは障害においてある役割を果たすものであり、例えばその標的はTNF受容体(例:TNFR1)でありうる。ポリペプチドはまた2種以上の標的と結合してもよく、例えばそれらはWO 2004058821に記載されるような二重ターゲティングdAbでありうる。
【0041】
dAbは関心のあるどのような標的分子と結合するものでもよい。dAbはまた、フォーマット化されたdAbであってもよく、例えばそれらはdAb-Fc融合体であってもよいし、またはそれらは他の基(例:PEG基)に結合されてもよい。dAbはまた、他の分子(例えば、標的と結合する他の分子)に、例えば融合体として、連結されたものでもよい。
【0042】
本発明はさらに、直接局所肺送達によって被験者に投与するための、例えば肺組織に存在する標的と結合する、先に記載した組成物、例えばドメイン抗体(dAb)組成物の使用に関する。
【0043】
さらにまた、医薬、例えば呼吸器疾患または肺疾患もしくは障害(例:COPD、喘息または肺サルコイドーシス)の治療、予防または診断用の医薬において使用するための、本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載のdAb組成物、も提供される。
【0044】
本発明はまた、呼吸器疾患または肺疾患もしくは障害の治療、予防または診断用の医薬の製造における組成物、例えば先に記載したdAb組成物、の使用に関する。一実施形態では、肺組織に存在する標的と結合するdAbを最高で約10mgまで使用することができる。肺組織に存在する標的は、肺炎症または肺疾患を仲介するものでありうる。
【0045】
さらに、ある量の、例えば治療に有効な量の、dAb組成物のような本明細書に記載の組成物を被験者に投与することを含んでなる、疾患または病態(例えば、呼吸器疾患または肺疾患もしくは障害)を治療、予防または診断するための方法が提供される。投与量は、1日量として被験者の体重あたり約5mg/kg〜約0.005mg/kg、例えば約0.5mg/kg〜約0.1mg/kgの範囲でありうる。特定の実施形態では、前記組成物が肺組織に直接、例えば吸入により、例えばネブライザー、経鼻器具または吸入器を用いて、投与される。
【0046】
本発明はさらに、送達器具(例えばネブライザー、吸入器または経鼻送達器具)に関し、さらに疾患または病態(例えば、呼吸器の疾患または病態)を治療、予防または診断するために被験者に1回量(例えば、計量された用量)の本明細書に記載の組成物(例えば、dAb組成物)を提供するための前記送達器具の使用に関する。前記吸入器または経鼻送達器具はdAb製剤を含有し、例えば、最大で10mgまでのdAbを含む、計量された1日量を提供する。さまざまなタイプのネブライザー器具、例えばジェット式ネブライザー(例:PARI)、振動メッシュ式ネブライザー(例:eFlowおよびAeroneb)、さらに超音波器具(例:DeVilbissおよびKun-88)を本発明に従って用いることができる。
【0047】
さらに、(a)ポリペプチド、例えばドメイン抗体(dAb)を、(b)製薬上許容される緩衝液、例えば約4〜約8(例えば約7〜約7.5)のpH範囲を有し、かつ1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有する緩衝液と、混合するステップを含んでなる、本発明の組成物の製造方法が本発明により提供される。さらに、追加の作用物質、例えば製薬上許容される希釈剤、担体もしくは賦形剤、および/または粘度を高めるための物質、および/または安定化剤を添加してもよい。
【0048】
本発明はまた、診断目的(例えば、イメージング)のための本明細書に記載の組成物、例えばドメイン抗体(dAb)組成物の使用に関し、その際、免疫グロブリン様分子からの重鎖または軽鎖部分(例えば、ドメイン抗体)は検出可能な標識を含むことが有利である。好適な検出可能標識および標識方法は当技術分野でよく知られている。好適な検出可能標識としては、例えば以下が挙げられる:放射性同位元素(例:インジウム-111、テクネチウム-99mまたはヨウ素-131)、ポジトロン放出標識(例:フッ素-19)、常磁性イオン(例:ガドリニウム(III)、マンガン(II))、エピトープ標識(タグ)、アフィニティー標識(例:ビオチン、アビジン)、スピン標識、酵素、蛍光基または化学発光基。標識を利用しない場合には、複合体の形成を表面プラズモン共鳴または他の適当な方法によって確認することができる。
【0049】
本発明はさらに、肺への局所送達のための長時間作用型dAb吸入製剤を提供することを目的とした、ネブライザー、吸入器または経鼻送達器具の製造における本明細書に記載の組成物、例えば本明細書に記載のドメイン抗体(dAb)組成物の使用に関する。
【0050】
本発明はさらに、肺組織において長い治療域が生じるように、肺組織に存在する標的と結合する本明細書に記載の組成物、例えばドメイン抗体(dAb)組成物を被験者に投与する方法に関し、この方法は、有効量の前記組成物、例えば本明細書に記載のドメイン抗体(dAb)組成物を被験者の肺組織に局所的に投与することを含んでなる。
【0051】
本発明はまた、例えば肺の病態または疾患を治療、予防または診断するための、dAb組成物のようなポリペプチド組成物の製造方法に関し、この方法は、(a)ポリペプチドを、(b)約4〜約8のpH範囲を有し、かつ1.2%(w/v)ショ糖を含有する50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有する生理的に許容される緩衝液と、混合することを含んでなる。
【0052】
本発明はさらに、(a)ポリペプチドを、生理的に許容される緩衝液、例えば約4〜約8のpH範囲を有し、かつ1.2%(w/v)ショ糖を含有する50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有する緩衝液と混合し、次に(b)ステップ(a)から得られたポリペプチドと緩衝液の組成物をネブライザー、吸入器または経鼻送達器具に通す、各ステップを含んでなる、dAb組成物のようなポリペプチド組成物の製造方法に関する。
【0053】
本発明はさらにまた、例えば肺送達のための、dAb組成物のようなポリペプチド組成物を製造するための、約4〜約8のpH範囲を有し、かつ1.2%(w/v)ショ糖を含有する50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有する生理的に許容される緩衝液の使用に関する。
【0054】
本発明はまた、本明細書に記載の組成物を、例えばネブライザー、経鼻器具または吸入器具を使って、吸入により肺に最初に投与することを含む、所望の分子を体循環に送達するための方法に関する。
【0055】
本発明はまた、本明細書に記載のdAbおよびこれらのdAbを含む本明細書に記載の組成物、先に記載したdAbの使用、ならびにこれらのdAb組成物の調製方法、さらにまた、これらのdAb組成物を含む先に記載した器具(例えば、ネブライザーまたは吸入器)に関する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】TNFR1に対するDom1h-131リードドメイン抗体のアミノ酸配列を示す。
【図2】ヒトTNFR1受容体結合アッセイにおけるTNF-α用量曲線を示す。各サンプルを4回反復して試験した。
【図3】ヒトTNFR1受容体結合アッセイにおけるDOM1H-131-202、DOM1H-131-206およびDOM1H-131-511による阻害を示す。各サンプルを4回反復して試験した。
【図4】DOM1H-131-202、DOM1H-131-511およびDOM1H-131-206についてのプロテアーゼ安定性データを示す。
【図5】緩衝液および器具が噴霧されたDOM1H-131-511 (511)の液滴径に及ぼす影響を示す。
【図6】SECで測定される二量体形成により評価された、各種器具で噴霧した後のDOM1H-131-511 (511)の安定性を示す。
【図7】Pari LC器具を用いた最大1時間のDOM1H-131-206 40mg/mlのSECトレースを示す。
【図8】DOM1H-131-511 (511)が噴霧後に活性を保持することを示すRBA結果を示す。
【図9】Pari社製のE-flowおよびLC+でのDOM1H-131-202 (202)、DOM1H-131-206 (206)およびDOM1H-131-511 (511)のネブライザー試験を示す。タンパク質濃度はブリトン-ロビンソン(Britton-Robinson)緩衝液または処方緩衝液中5mg/mlとした。標準品(薬物X)は対照として送達するためにそれ自体の処方緩衝液で試験した。
【図10】振動メッシュ式ネブライザー(E-flow、Pari社)を用いた噴霧の前および後のDOM10-53-474についてのSECトレースを示す。
【図11】ジェット式ネブライザー(LC+、Pari社)を用いた噴霧の前および後のDOM10-53-474についてのSECトレースを示す。
【図12】(a) エキセンディン4 (G4S)3 DOM7h-14融合体(DAT0115)、(b) DOM10-53-474 (抗IL-13 dAb)、(c) DOM10-275-78 (抗IL-13 dAb)、(d) DOM4-130-202 (抗IL-1R1)、および(e) DOM4-130-201 (抗IL-1R1)のアミノ酸配列を示す。
【図13】特定の抗TNFR1 dAbである、(a) Dom 1h-131-201、(b) Dom 1h-131-203、(c) Dom 1h-131-204、および(d) Dom 1h-131-205のアミノ酸配列を示す。
【図14−1】特定の抗VEGF dAbである、(a) Dom 15-26-593、(b) Dom 15-26-501、(c) Dom 15-26-555、(d) Dom 15-26-558、および(e) Dom 15-26-589のアミノ酸配列を示す。
【図14−2】特定の抗VEGF dAbである、(f) Dom 15-26-591、(g) Dom 15-26-594、(h) Dom 15-26-595、および(i) DMS1529 (VEGF dAb 15-26-593-Fc融合体)のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
定義
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という語は、他の異なるV領域またはドメインとは無関係に、ある抗原またはエピトープと特異的に結合する抗体可変ドメイン(VH、VHH、VL)をさす。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の可変領域または可変ドメインを含むフォーマット(例えば、ホモまたはヘテロ多量体)で存在することができ、その際、他の可変領域またはドメインは免疫グロブリン単一可変ドメインによる抗原結合に必要とされないものである(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインは追加の可変ドメインとは無関係に抗原と結合する)。「ドメイン抗体」つまり「dAb」は、本明細書中で用いる場合、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。特定の実施形態において、免疫グロブリン単一可変ドメインはヒト抗体可変ドメインであるが、げっ歯類(例えば、WO 00/29004に開示されるもの;その内容全体を参照により本明細書に組み入れる)、テンジクザメ(nurse shark)およびラクダ科動物(Camelid) VHH dAbのような他の動物種由来の単一抗体可変ドメインも含まれる。ラクダ科動物VHHは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、グアナコなどの、もともと軽鎖を欠く重鎖抗体を産生する動物種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。
【0058】
「ドメイン」は、その三次構造をタンパク質の残部から独立して保持する、折りたたまれたタンパク質構造体である。一般的に、ドメインはタンパク質の個々の機能特性に関与しており、多くの場合、タンパク質の残部の機能および/またはドメインの機能の低下なしに、付加されたり、除去されたり、他のタンパク質に転移されたりすることが可能である。「単一抗体可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む、折りたたまれたポリペプチドドメインである。したがって、それは完全な抗体可変ドメインと修飾された可変ドメインを含み、例えば、1以上のループが抗体可変ドメインに特徴的でない配列で置き換えられた抗体可変ドメイン、トランケートされた抗体可変ドメイン、またはN-もしくはC-末端延長部を含む抗体可変ドメイン、あるいは全長ドメインの結合活性および特異性を少なくとも保持する可変ドメインの折りたたまれたフラグメントを含む。
【0059】
「ポリペプチド」とは、あらゆる種類のポリペプチドをさし、例えば、ペプチド、ヒトタンパク質、ヒトタンパク質の断片、非ヒト起源のタンパク質もしくはタンパク質の断片、遺伝子操作されたタンパク質もしくはタンパク質の断片、酵素、抗原、薬物、受容体分子のような細胞シグナル伝達に関与する分子、抗体ポリペプチドのような免疫グロブリンスーパーファミリーのポリペプチドを含む抗体、またはT細胞受容体ポリペプチドを含む。
【0060】
ポリペプチドは例えば抗体もしくは免疫グロブリンポリペプチドであるか、またはそれらは例えば、最大で約150アミノ酸までの、単量体のようなポリペプチドドメインである。
【0061】
ポリペプチドは、例えばドメイン抗体(「dAb」)(例:dAb単量体)を含むか、ドメイン抗体(dAb)から成ることが有用である。
【0062】
ポリペプチドはさらに、アフィボディ(affibody)のような非IgG様骨格を含むものでも、それから成るものでもよい。
【0063】
本明細書中で用いる「ポリペプチド」またはドメイン抗体(「dAb」)という語は、他の分子に融合された、またはコンジュゲートされた、または結合されたポリペプチドもしくはdAbをさすためにも用いられる。例えば、ポリペプチド(例:dAb)はPEG化されていてもよく、PEG化dAbは例えばWO 2004081026に記載されている。ポリペプチド(例:dAb)は血清アルブミンと結合されていてもよく、例えば、それらはWO 2005118642およびWO 2006059106に記載される血清アルブミン結合型dAb (Albudab)でありうる。
【0064】
有利には、抗体ポリペプチドは、重鎖(VH)および軽鎖(VL)の両ポリペプチド、または重鎖(VH)もしくは軽鎖(VL)のどちらかのポリペプチドを含む単一ドメイン抗体レパートリーを含むことができる。本明細書中で用いる抗体ポリペプチドは、抗体または抗体の一部であるポリペプチドであって、修飾された、または修飾されてないポリペプチドである。したがって、抗体ポリペプチドという語には、以下が含まれる:重鎖、軽鎖、重鎖-軽鎖二量体、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、重鎖単一ドメイン、軽鎖単一ドメイン、Dabフラグメント、または一本鎖Fv (scFv)を含むFvフラグメント。このような抗体分子およびそれらをコードする核酸の構築方法は当技術分野でよく知られている。
【0065】
ドメイン抗体のようなポリペプチドを含む本明細書に記載の組成物は、肺組織に存在する標的と結合することができるが、かかる標的は以下からなる群より選択される:TNFR1、IL-1、IL-1R、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-6、IL-6R、IL-8、IL-8R、IL-9、IL-9R、IL-10、IL-12 IL-12R、IL-13、IL-13Rα1、IL-13Ra2、IL-15、IL-15R、IL-16、IL-17R、IL-17、IL-18、IL-18R、IL-23、IL-23R、IL-25、CD2、CD4、CD11a、CD23、CD25、CD27、CD28、CD30、CD40、CD40L、CD56、CD138、ALK5、EGFR、FcER1、TGFb、CCL2、CCL18、CEA、CR8、CTGF、CXCL12 (SDF-1)、キマーゼ(chymase)、FGF、フーリン(Furin)、エンドセリン-1、エオタキシン(Eotaxin)類(例:エオタキシン、エオタキシン-2、エオタキシン-3)、GM-CSF、ICAM-1、ICOS、IgE、IFNa、I-309、インテグリン類、L-セレクチン、MIF、MIP4、MDC、MCP-1、MMP類、好中球エラスターゼ、オステオポンチン、OX-40、PARC、PD-1、RANTES、SCF、SDF-1、siglec8、TARC、TGFb、トロンビン、Tim-1、TNF、TNFR1、TRANCE、トリプターゼ、VEGF、VLA-4、VCAM、α4β7、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CCR8、alpha v beta 6、alpha v beta 8、cMET、およびCD8。
【0066】
ドメイン抗体のようなポリペプチドを含む本明細書に記載の組成物は全身性の標的と結合してもよく、例えば、かかる標的はGLP-1、エキセンディン(Exendin)およびインターフェロンでありうる。
【0067】
ある実施形態において、ドメイン抗体のようなポリペプチドを含む本明細書に記載の組成物は、TNFシグナル伝達カスケードに含まれるタンパク質からなる群より選択される標的と結合することができる。特定の実施形態では、このタンパク質標的は以下を含む群より選択される:TNFα、TNFβ、TNFR2、TRADD、FADD、カスパーゼ-8、TNF受容体関連因子(TRAF)、TRAF2、受容体相互作用タンパク質(RIP)、Hsp90、Cdc37、IKKα、IKKβ、NEMO、kBの阻害剤(IkB)、NF-kB、NF-kBエッセンシャルモジュレーター、アポトーシスシグナル調節キナーゼ-1(aSMase)、中性スフィンゴミエリナーゼ(nSMase)、ASK1、カテプシン-B、胚中心キナーゼ(germinal center kinase: GSK)、GSK-3、因子結合デスドメインタンパク質(FADD)、中性スフィンゴミエリナーゼ活性化と関連した因子(FAN)、FLIP、JunD、NF-kBキナーゼの阻害剤(IKK)、MKK3、MKK4、MKK7、IKKγ、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ/Erkキナーゼキナーゼ(MEKK)、MEKK1、MEKK3、NIK、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)、PKC-ζ、Re1A、T2K、TRAF1、TRAF5、デスエフェクタードメイン(DED)、デスドメイン(DD)、細胞死誘導シグナリング複合体(DISC)、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、ホスホイノシチド-3OHキナーゼ(PI3K)、プロテインキナーゼA (PKA)、PKB、PKC、PLAD、PTEN、relホモロジードメイン(RHD)、RING (really interesting new gene)、ストレス活性化プロテインキナーゼ(SAPK)、TNFα変換酵素(TACE)、デスドメインタンパク質のサイレンサー(SODD)、およびTRAF関連NF-kBアクチベーター(TANK)。これらの好ましい標的に関しては、WO 04046189、WO 04046186およびWO 04046185を参照されたい(参照により本明細書に組み入れる)。これらは細胞内標的をターゲティングするための抗体単一可変ドメインの選択についての指針を提供する。
【0068】
本発明は特に、本明細書に記載するとおりに製剤化されたドメイン抗体であるTNFR1のアンタゴニスト、ならびに肺炎症および/または呼吸器疾患(例えば、COPDまたは喘息)を治療、抑制または予防するための医薬の製造におけるその使用に関する。
【0069】
さらに、IL-13と結合する分子(例えば、dAb)を含む、例えば喘息の治療に使用するための、肺送達用の本明細書に記載の組成物も提供される。これらのdAbの例は、例えばWO 2007/085815に記載されており、また、DOM10-275-78およびDOM10-275-78として本明細書中にも記載される。
【0070】
本発明はさらに、IL-13と結合し、かつ図12b (Dom 10-53-474)または図12c (Dom 10-275-78)に開示されるアミノ酸配列と同一であるか、図12bまたは図12cに開示されるアミノ酸配列に例えば80%の同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%もしくは97%の同一性)を示すアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、例えば喘息を治療するための、肺送達用の本明細書に記載の組成物を提供する。
【0071】
本発明はさらに、IL-1R1と結合し、かつ図12d (Dom 4-130-202)または図12e (Dom 4-130-201)に開示されるアミノ酸配列と同一であるか、図12dまたは図12eに開示されるアミノ酸配列に例えば80%の同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%もしくは97%の同一性)を示すアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、例えば炎症性の病態(例:肺炎症、肺疾患または慢性関節リウマチ)を治療するための、肺送達用の本明細書に記載の組成物を提供する。
【0072】
さらに、Dom 4-130-202のアミノ酸配列(図12dに示す)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を有する、肺送達用の本明細書に記載の組成物も提供される。
【0073】
さらに、Dom 4-130-201のアミノ酸配列(図12eに示す)と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を有する、肺送達用の本明細書に記載の組成物も提供される。
【0074】
さらにまた、VEGFと結合する分子(例えば、dAb)(例えば、WO 2007080392およびWO 2007066106に記載されるもののいずれか)を含む、例えば癌を治療するための、肺送達用の本明細書に記載の組成物も提供される。
【0075】
本発明はさらに、VEGFと結合し、かつ図14に開示されるアミノ酸配列と同一であるか、図14に開示されるアミノ酸配列に例えば80%の同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性)を示すアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、例えば癌を治療するための、肺送達用の本明細書に記載の組成物を提供する。
【0076】
さらに、DOM15-26-593のアミノ酸配列(図14aに示す)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を有する抗VEGF免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、肺送達用の本明細書に記載の組成物も提供される。
【0077】
さらにまた、DOM15-26-593のアミノ酸配列(図14aに示す)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を有する抗VEGF免疫グロブリン単一可変ドメインを含み、かつ抗体定常領域のドメインをさらに含む、肺送達用の本明細書に記載の組成物も提供される。
【0078】
本発明はまた、DOM15-26-593のアミノ酸配列(図14aに示す)およびDOM15-26-593-Fc融合体のアミノ酸配列(DMS1529; 図14iに示す)から選択されるアミノ酸配列を有する抗VEGF免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、肺送達用の本明細書に記載の組成物を提供する。
【0079】
本発明の組成物は肺への直接送達に特に適しており、したがって、本組成物は肺もしくは呼吸器の病態または疾患を、例えば送達部位またはその付近で、治療、抑制、予防または診断するために使用することができる。
【0080】
しかしながら、本組成物は最初に肺に送達されるものの、他の身体部分の疾患(例えば、全身性疾患)を治療するためにも使用することができる。その理由は、初めに肺に送達された本組成物がその後体循環に吸収されるため、肺疾患以外の疾患の治療を可能にすると考えられるからである。例えば、GLP受容体と結合する分子を肺に送達することができ、これらを用いて糖尿病や肥満といった疾病を治療することができる。こうした分子の例には、WO 2006/059106に記載されるもの、およびエキセンディン4 (G4S)3 DOM7h-14融合体(DAT0115)として本明細書に記載されるalbudab結合エキセンディン-4またはdat0115アミノ酸配列に例えば80%の同一性(例えば、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性)を示す分子が含まれる。
【0081】
本発明の医薬、組成物および製剤、ならびに方法を用いて治療、抑制または予防される呼吸器の病態または疾患としては、以下が挙げられる:肺炎症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、肺炎、過敏性肺炎、肺好酸球浸潤、環境肺疾患、肺炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症、間質性肺疾患、原発性肺高血圧症、肺血栓塞栓症、胸膜の障害、縦隔の障害、隔膜の障害、換気過少、過換気、睡眠時無呼吸、急性呼吸促進症候群、中皮腫、肉腫、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、肺癌、アレルギー性鼻炎、アレルギー、石綿肺症、アスペルギルス腫、アスペルギルス症、気管支拡張症、慢性気管支炎、気腫、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、侵襲性肺炎球菌疾患、インフルエンザ、非結核性抗酸菌症、胸水、塵肺症、ニューモサイトーシス(pneumocytosis)、肺炎、肺放線菌症、肺胞蛋白症、肺炭疽、肺水腫、肺塞栓症、肺炎症、肺組織球症X、肺高血圧症、肺ノカルジア症、肺結核、肺静脈性閉塞症、リウマチ様肺疾患、サルコイドーシス、ヴェーゲナー肉芽腫症、および非小細胞肺癌。
【0082】
それゆえ、本発明は、TNFR1と結合し、かつ図1または図13に開示されるアミノ酸配列と同一であるか、図1または図13に開示されるアミノ酸配列に例えば80%の同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%もしくは97%の同一性)を示すアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、肺送達用の本明細書に記載の組成物を提供する。
【0083】
本発明はまた、DOM1h-131-206のアミノ酸配列(図1に示す)と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を有する抗TNFα受容体1型(TNFR1; p55)免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、肺送達用の本明細書に記載の組成物を提供する。
【0084】
本発明はまた、DOM1h-131-511のアミノ酸配列(図1に示す)と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する抗TNFα受容体1型(TNFR1; p55)免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、肺送達用の本明細書に記載の組成物を提供する。
【0085】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのアミノ酸配列と25以下のアミノ酸位置で相違し、かつ本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR1配列に少なくとも50%の同一性を示すCDR1配列を有するものである。
【0086】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのアミノ酸配列と25以下のアミノ酸位置で相違し、かつ本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR2配列に少なくとも50%の同一性を示すCDR2配列を有するものである。
【0087】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのアミノ酸配列と25以下のアミノ酸位置で相違し、かつ本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR3配列に少なくとも50%の同一性を示すCDR3配列を有するものである。
【0088】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのアミノ酸配列と25以下のアミノ酸位置で相違し、かつ本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR1またはCDR2配列にそれぞれ少なくとも50%の同一性を示すCDR1配列およびCDR2配列を有するものである。
【0089】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのアミノ酸配列と25以下のアミノ酸位置で相違し、かつ本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR2またはCDR3配列にそれぞれ少なくとも50%の同一性を示すCDR2配列およびCDR3配列を有するものである。
【0090】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのアミノ酸配列と25以下のアミノ酸位置で相違し、かつ本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR1またはCDR3配列にそれぞれ少なくとも50%の同一性を示すCDR1配列およびCDR3配列を有するものである。
【0091】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ酸配列は、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのアミノ酸配列と25以下のアミノ酸位置で相違し、かつ本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR1、CDR2またはCDR3配列にそれぞれ少なくとも50%の同一性を示すCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を有するものである。
【0092】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR1配列に少なくとも50%の同一性を示すCDR1配列を有するものである。
【0093】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR2配列に少なくとも50%の同一性を示すCDR2配列を有するものである。
【0094】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR3配列に少なくとも50%の同一性を示すCDR3配列を有するものである。
【0095】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR1およびCDR2配列にそれぞれ少なくとも50%の同一性を示すCDR1およびCDR2配列を有するものである。
【0096】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR2およびCDR3配列にそれぞれ少なくとも50%の同一性を示すCDR2およびCDR3配列を有するものである。
【0097】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR1およびCDR3配列にそれぞれ少なくとも50%の同一性を示すCDR1およびCDR3配列を有するものである。
【0098】
本発明の組成物中で用いられるドメイン抗体は、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含むことができ、ここで、TNFR1と結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書に記載の抗TNFR1 dAbのCDR1、CDR2およびCDR3配列にそれぞれ少なくとも50%の同一性を示すCDR1、CDR2およびCDR3配列を有するものである。
【0099】
肺送達用の本発明の組成物中で用いられるポリペプチド、免疫グロブリン単一可変ドメインおよびアンタゴニストは、以下の酵素の1種以上に抵抗性でありうる:セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ類(例:カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB)、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン、エラスターゼ、ロイコザイム(leukozyme)、パンクレアチン、トロンビン、プラスミン、カテプシン類(例:カテプシンG)、プロテイナーゼ類(例:プロテイナーゼ1、プロテイナーゼ2、プロテイナーゼ3)、サーモリシン、キモシン、エンテロペプチダーゼ、カスパーゼ類(例:カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ9、カスパーゼ12、カスパーゼ13)、カルパイン、フィカイン(ficain)、クロストリパイン(clostripain)、アクチニダイン(actinidain)、ブロメライン(bromelain)、およびセパラーゼ(separase)。特定の実施形態では、プロテアーゼがトリプシン、エラスターゼまたはロイコザイムである。プロテアーゼはまた、生物抽出物、生物ホモジネートまたは生物調製物によって供給されてもよい。一実施形態では、プロテアーゼが痰、粘液(例:胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄液、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液中に見い出せるプロテアーゼである。一実施形態では、プロテアーゼが眼および/または涙液中に見い出せるものである。眼に見い出せるそのようなプロテアーゼの例として、カスパーゼ、カルパイン、マトリックスメタロプロテアーゼ、ディスインテグリン、メタロプロテアーゼ類(ADAM)およびトロンボスポンジンモチーフを含むADAM、プロテオソーム、組織プラスミノーゲン活性化因子、セクレターゼ、カテプシンBおよびD、シスタチンC、セリンプロテアーゼPRSS1、ユビキチンプロテオソーム経路(UPP)が挙げられる。一実施形態において、プロテアーゼは非細菌性プロテアーゼである。ある実施形態では、プロテアーゼが動物、例えば哺乳動物(例:ヒト)のプロテアーゼである。ある実施形態では、プロテアーゼがGI管プロテアーゼまたは肺組織プロテアーゼ、例えばヒトに見い出せるGI管プロテアーゼまたは肺組織プロテアーゼである。ここに記載したこうしたプロテアーゼはまた、ライブラリーのレパートリーをプロテアーゼにさらすことを含む、本明細書に記載の方法においても使用することができる。
【0100】
一態様において、本発明の組成物はプロテアーゼ抵抗性の免疫グロブリン単一可変ドメインを含み、ここにおいて、可変ドメインは、(i)少なくとも10μg/mlの濃度(c)のプロテアーゼと共に37℃で少なくとも1時間の期間(t)にわたりインキュベートしたとき、または(ii)少なくとも40μg/mlの濃度(c')のプロテアーゼと共に30℃で少なくとも1時間の期間(t)にわたりインキュベートしたとき、プロテアーゼに抵抗性を示す。一実施形態において、プロテアーゼ(例:トリプシン)と可変ドメインの比(モル/モル基準による)は8,000:80,000のプロテアーゼ:可変ドメインであり、例えば、濃度(c)が10μg/mlであるとき、その比は800:80,000のプロテアーゼ:可変ドメインであり、濃度(c)または(c')が100μg/mlであるとき、その比は8,000:80,000のプロテアーゼ:可変ドメインである。一実施形態において、プロテアーゼ(例:トリプシン)と可変ドメインの比(重量/重量基準、例えばマイクログラム/マイクログラム基準による)は16,000:160,000のプロテアーゼ:可変ドメインであり、例えば、濃度(c)が10μg/mlであるとき、その比は1,600:160,000のプロテアーゼ:可変ドメインであり、濃度(c)または(c')が100μg/mlであるとき、その比は1,6000:160,000のプロテアーゼ:可変ドメインである。一実施形態において、濃度(cまたはc')は少なくとも100または1000μg/mlのプロテアーゼである。一実施形態において、濃度(cまたはc')は少なくとも100または1000μg/mlのプロテアーゼである。ペプチドもしくはポリペプチドのレパートリーまたはライブラリーを扱うときに用いるためのプロテアーゼのタンパク質分解活性に適する条件(例えば、w/wパラメーター)に関しては、本明細書中で説明する。これらの条件は特定の免疫グロブリン単一可変ドメインのプロテアーゼ抵抗性を決定するための条件として用いることができる。一実施形態では、期間(t)が約1時間、3時間、24時間または一晩(例えば、約12〜16時間)である。一実施形態では、可変ドメインが条件(i)のもとで抵抗性を示し、その際の濃度(c)は約10または100μg/mlのプロテアーゼであり、期間(t)は1時間である。一実施形態では、可変ドメインが条件(ii)のもとで抵抗性を示し、その際の濃度(c')は約40μg/mlのプロテアーゼであり、期間(t)は約3時間である。一実施形態では、プロテアーゼがトリプシン、エラスターゼ、ロイコザイムおよびパンクレアチンから選択される。一実施形態では、プロテアーゼがトリプシンである。一実施形態では、プロテアーゼが痰、粘液(例:胃粘液、鼻粘液、気管支粘液)、気管支肺胞洗浄液、肺ホモジネート、肺抽出物、膵臓抽出物、胃液、唾液、涙液または眼に見い出せるプロテアーゼである。一実施形態では、プロテアーゼが眼および/または涙液中に見い出せるものである。一実施形態では、プロテアーゼが非細菌性プロテアーゼである。ある実施形態では、プロテアーゼが動物、例えば哺乳動物(例:ヒト)のプロテアーゼである。ある実施形態では、プロテアーゼがGI管プロテアーゼまたは肺組織プロテアーゼ、例えばヒトに見い出せるGI管プロテアーゼまたは肺組織プロテアーゼである。ここに記載したこうしたプロテアーゼはまた、ライブラリーのレパートリーをプロテアーゼにさらすことを含む、本明細書に記載の方法において使用することができる。
【0101】
一実施形態において、可変ドメインはトリプシンおよび/または少なくとも1種の他のプロテアーゼ(エラスターゼ、ロイコザイムおよびパンクレアチンから選択されるもの)に対して抵抗性を示す。抵抗性は、例えば、トリプシンとエラスターゼ;トリプシンとロイコザイム;トリプシンとパンクレアチン;トリプシンとエラスターゼとロイコザイム;トリプシンとエラスターゼとパンクレアチン;トリプシンとエラスターゼとパンクレアチンとロイコザイム;またはトリプシンとパンクレアチンとロイコザイムに対して示される。
【0102】
一実施形態において、可変ドメインは、条件(i)または(ii)のもとで、例えば106〜1013(例えば108〜1012)の複製単位(感染性ビリオン)のファージライブラリーサイズで、インキュベートしたときバクテリオファージ上に提示される。
【0103】
一実施形態において、可変ドメインは、例えばBIAcoreTMまたはELISA(例:ファージELISAもしくはモノクローナルファージELISA)を用いて評価したとき、条件(i)または(ii)のもとでのインキュベーション後にその標的と特異的に結合する。
【0104】
一実施形態において、本発明の可変ドメインはプロテインAまたはプロテインLと特異的に結合する。一実施形態では、プロテインAまたはプロテインLとの特異的結合が条件(i)または(ii)のもとでのインキュベーション後に存在する。
【0105】
一実施形態において、本発明の可変ドメインは、例えば条件(i)または(ii)のもとでのインキュベーション後に、ELISA(例:ファージELISAもしくはモノクローナルファージELISA)におけるOD450値が少なくとも0.404でありうる。
【0106】
一実施形態において、本発明の可変ドメインは、例えば条件(i)または(ii)のもとでのインキュベーション後に、ゲル電気泳動で(実質的に)単一のバンドを示す。
【0107】
本明細書に記載の組成物は、(a)ポリペプチド、例えばドメイン抗体(dAb)と、(b)生理的に許容される緩衝液、例えば約4〜約8のpH範囲を有し、かつ1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有する緩衝液と、を含んでなり、ここにおいて、前記組成物は液滴を含んでなり、かつ組成物中に存在する液滴の約40%以上、例えば50%以上が約6ミクロン以下、例えば約1ミクロン〜約6ミクロンの範囲、例えば約5ミクロン以下、例えば約1または約2ミクロン〜約5ミクロンの範囲の液滴径を有するものである。肺の深い部分に送達する場合には、粒子径を約1〜約3ミクロンの範囲にすることが有効でありうる。
【0108】
本発明に従って利用しうる適当な緩衝液は生理的に許容される緩衝液、例えば肺に安全に投与できるもの(例:リン酸、クエン酸、酢酸またはヒスチジンの緩衝液)である。
【0109】
pH範囲:一実施形態において、緩衝液のpHは約4〜約8、例えば約7〜約7.5、または約5〜約6の範囲である。
【0110】
特定の実施形態において、緩衝液の粘度は好ましくは1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しいものである。粘度は、当技術分野で知られた標準方法を用いて、例えば円錐・平板法または磁気ビーズマイクロレオメーター法により、測定することができる。
【0111】
組成物中に存在する液滴の大きさは、粒子径を測定するための標準方法により、例えばMalvernレーザー走査装置を用いて、または例えばDekatieインパクター装置もしくはMarpleインパクター装置のようなカスケードインパクター(Cascade Impactor)を用いて、測定することができる。
【0112】
緩衝液に、例えば粘度を変えるために、添加しうる有用な添加剤は、例えば、PEG 1000のようなポリエチレングリコール(PEG)またはショ糖やマンノースのような糖類であり、他の添加剤としては、例えば界面活性剤(例:Tweens)のような安定化剤が含まれる。
【0113】
本明細書に記載されるような直接肺送達用に製剤化するための、dAbのようなポリペプチドは、例えば抗TNFR1結合体(例:TNFR1と結合するdAb)とすることが有用であり、例えば、それは実質的にアンタゴニスト性の抗TNFR1 dAb、例えばWO 2007/049017(その内容および教示を参照により本明細書中に特別に組み入れる)に記載されるアンタゴニスト性抗TNFR1 dAbであってよく、例えば、それはWO 2007/049017の配列番号1〜650(これらの配列の全てを参照により本明細書中に特別に組み入れる)のいずれか1つに記載のコード配列をもち得る。そのような抗TNFR1 dAb組成物はCOPDや喘息といった呼吸器疾患を治療するための有用な治療薬になりうる。
【0114】
本組成物のポリペプチド(例えば、dAb)にとって、高い融解温度(Tm)をもつことが望ましいことがある。例えば、融解温度(Tm)がより高いdAbはせん断ストレス、高温および長期保存によって誘発される凝集に対してより耐性であることが示されている。せん断ストレスも熱ストレスも噴霧中に凝集体形成を誘発するうえで重要な役割を果たし、それゆえに融解温度の高いdAbを選択することが有利である。これを達成する1つの方法は、dAbのファージディスプレイライブラリーを作製し、プロテアーゼ(例えば、トリプシン)を用いて、この酵素の作用に抵抗する分子を選択し同定することだろう。この方法によって得られるプロテアーゼ抵抗性dAbは比較的高い融解温度を有するが、これはdAbのコア安定性を高めるdAbの配列の変化に起因したことであり、結果として、この分子のペプチド骨格が酵素による加水分解を受けにくくなる。
【0115】
プロテアーゼ抵抗性ドメイン抗体およびそれらの選択方法は、例えば、USSN 60/933,632(その教示内容を参照により本明細書中に組み入れる)にさらに記載されている。
【0116】
dAbのTmの改善は、例えば選択の過程でdAbを加熱することによっても、達成できるだろう。したがって、本発明の組成物がドメイン抗体を含む場合、そのdAbのTmは、例えば約55℃〜約90℃(例:約80℃〜約90℃)の範囲であることが望ましい。Tmは例えば示差走査熱量測定(DSC)などの標準技法を用いて測定することができる。
【0117】
本明細書に記載の組成物中で用いられるポリペプチド(例えば、dAb)の濃度は約1mg/ml〜約40mg/mlの範囲とすることができる。より高い(例えば、dAbの)濃度、例えば約20mg/ml〜約40mg/mlは、肺への送達を改善するのに有用でありうる。
【0118】
本発明は、単なる例として、以下の実施例においてさらに説明される。
【0119】
実施例
ヒトTNFR1に対するドメイン抗体のリード選択&特性解析を以下で詳しく説明する:
作製したドメイン抗体はDomantis社のファージライブラリーから誘導されたものである。受動的に吸着させたヒトTNFR1に対する可溶性選択およびパンニングは、関連するDomantis社の標準方法に従って実施した。ヒトTNFR1はR&D systems社(カタログ番号636-R1-025/CF)またはPeprotech社(カタログ番号310-07)から可溶性組換えタンパク質として購入し、直接(受動的選択の場合に)使用するか、または第1級アミンを介したカップリングを用いるビオチン化と、これに続く生物学的アッセイでのその活性の品質管理と、質量分析によるそのMWおよびビオチン化度の解析の後で使用した。一般的には3回の選択をおこなったが、次回の選択ごとに抗原レベルを次第に減らしていった。
【0120】
選択からのアウトプットをファージELISAによって抗TNFR1結合クローンの存在についてスクリーニングした。これらのファージ選択物からDNAを単離して、可溶性dAbフラグメント発現用の発現ベクターにサブクローニングした。可溶性dAbフラグメントを96ウェルプレートで発現させ、上清を用いて抗TNFR1結合dAbの存在についてスクリーニングしたが、そのスクリーニングには、抗c-myc検出を含む直接結合ELISAを使用するか、またはストレプトアビジン/ビオチン化TNFR1 BIAcoreTMチップを用いて、オフ(解離)速度に従ってランク付けするBIAcoreTMを使用した。
【0121】
以下に記載するリード分子は、DOM1h-131と指定された親dAbに由来するものであった。この分子は60nMのビオチン化抗原を用いる3回の選択の後でファージディスプレイライブラリーから選択された分子である。各回の選択において捕捉試薬としてストレプトアビジンまたはニュートラアビジンをコーティングしたDynaビーズを交互に用いて、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンに対する結合体の選択を防いだ。この段階でのリードDOM1h-131の効力は、MRC-5線維芽細胞/IL-8放出細胞アッセイで測定して、低いマイクロモルレベルの範囲であった。BIAcoreTMで測定された結合反応速度論は一般に、オン(結合)速度もオフ(解離)速度も速い(fast-on/fast-off rates)ことを示した。このDOM1h-131リード分子(C末端にmycタグをつけた単量体として)の大腸菌での発現レベルは8mg/lほどであった。
【0122】
リード分子の親和性成熟:
DOM1h-131を親和性成熟の段階へと進めて、より高い効力と改善された生物物理学的特性を示す変異体を作製した(DOM1h-131由来のリード分子のアミノ酸配列については図1を参照されたい)。エラープローン(error-prone:エラーを起こしやすい)PCRポリメラーゼ(Genemorph II、Stratagene社)を用いてエラープローンライブラリー(dAb配列あたり平均1個のアミノ酸の変化、ライブラリーサイズ8×107)を作製した後、これらのエラープローンライブラリーを利用して7回の選択をおこなった。この戦略によってクローンDOM1h-131-8が分離されることとなり、この分子は4個のアミノ酸(フレームワーク1 (FR1)、CDR1、CDR3およびFR4にそれぞれ1個ずつ)が変化しており、MRC-5アッセイで測定したとき、その効力が約100倍向上していた(約4nM)。
【0123】
効力をさらに高めるため、エラープローンリードコンセンサス情報から示唆された重要な位置でのオリゴ指定突然変異誘発(oligo-directed mutagenesis)によって単一アミノ酸位置を多様化した。この過程で、DOM1h-131-8クローンの改良型であるDOM1h-131-24(最初はDOM1h-131-8-2と命名され、その後訂正された)がBIAcoreTMスクリーニングにより分離された。DOM1h-131-24は単一のK94Rアミノ酸変異(アミノ酸番号付けはKabatに従う)および200〜300pMのRBA効力を有していた。
【0124】
このリード分子とそれが誘導されたNNSライブラリーに基づいてさらなるエラープローンライブラリーを作製し、熱処理を用いる3回のファージ選択に供した(方法については、Jespers L, et al.,「熱変性によりファージ上に選択された凝集抵抗性ドメイン抗体(Aggregation-resistant domain antibodies selected on phage by heat denaturation )」. Nat Biotechnol. 2004 Sep;22(9):1161-5を参照されたい)。この選択の間、ライブラリーをプールし、2回目の選択から誘導されたクローンがより熱安定性であると考えられるDOM1h-131-53などのdAbをもたらした。これらのクローンはより良好な生物物理学的特性を備えていると推察された。クローンDOM1h-131-53におけるいくつかのフレームワーク変異を生殖系列化(germline)して、クローンDOM1h-131-83を作製した。このクローンは、先に記載したファージディスプレイ選択を用いるか、またはエマルションによるin-vitroコンパートメント化技術を用いて、各CDRのオリゴ指定突然変異誘発を介したさらなる多様化のための基礎を築いた。ファージディスプレイ戦略によりリードDOM1h-131-117およびDOM1h-131-151が生成し、in-vitroコンパートメント化技術によりDOM1h-131-511が生成した。
【0125】
この段階で、これら3つのリード分子を生物物理学的アッセイと生物学的アッセイで比較したところ、DOM1h-131-511が最良の性質を備えた分子であった。さらに、トリプシンまたはロイコザイムの存在下でのタンパク質分解切断に対するこれらの分子の抵抗性についても試験した。ロイコザイムは嚢胞性線維症の患者からプールされた痰からなり、高レベルのエラスターゼと他のプロテアーゼを含んでおり、肺疾患のin vivo病態に代わるものとして用いられた。このデータは、3種全てのリードDOM1h-131-117、DOM1h-131-151およびDOM1h-131-511がトリプシンまたはロイコザイムの存在下で急速に分解されることを示した。この知見により、患者の体内にあるときのDOM1h-131-511のin vivo持続性についての懸念が呼び起こされ、向上したトリプシン抵抗性を選択するための戦略が開発された。そうしたトリプシン抵抗性の向上はその分子の他の生物物理学的性質に有益な影響を及ぼすと推察された。本質的には、抗原での選択に先だってプロテアーゼの存在下での選択を可能にするように標準ファージ選択法を改変した。そのために、新しいファージベクターを遺伝子工学的に作製したが、このベクターにおいては、ディスプレイされたdAbがファージから切断されることなくトリプシンの存在下での選択可能とするために、c-mycタグが欠失された。DOM1h-131-511に基づくエラープローンライブラリーを作製し、その新しいpDOM33ベクターにクローニングした。このライブラリーから生じたファージストックをトリプシンで前もって処理し、続いて、関連抗原での選択に先だってトリプシン活性をブロックするためにプロテアーゼ阻害剤を添加した。4回の選択を実施した。発現された可溶性TNFR1結合dAbは、BIAcoreTMを用いて、プロテアーゼを存在させてまたは存在させずに、TNFR1と結合するその能力について評価した。これにより、2種のリード分子DOM1h-131-202およびDOM1h-131-206が分離されたが、これらはBIAcoreTM抗原結合実験により示されるように、改善されたプロテアーゼ抵抗性を示した。興味深いことに、DOM1h-131-202はDOM1h-131-511と比較してCDR2にただ1つの変異(V53D、全てのアミノ酸番号付けはKabatに従う)を含んでいたのに対し、DOM1h-131-206は2つの変異だけを含み、すなわち、第1の変異はDOM1h-131-202と同じであり(CDR2におけるV53D変異)、第2の変異はFR3におけるY91H変異であった(図1参照)。FR3におけるこのY91H変異は3−20のヒト生殖系列遺伝子で起こっており、このことはこの残基がヒト抗体中に存在することを示している。3種のクローンDOM1h-131-511、DOM1h-131-202およびDOM1h-131-206は、図1に示すアミノ酸配列を有する。
【0126】
分子の活性は以下のように測定した:
ヒトTNFR1への結合についてのDOM1h-131-202、DOM1h-131-511およびDOM1h-131-206のBIAcoreTM結合親和性評価:
大腸菌により発現されたヒト組換えTNFR1への結合についてのDOM1H-131-202、DOM1H-131-511およびDOM1H-131-206の結合親和性をBIAcoreTM解析により評価した。解析はビオチン化ヒトTNFR1を用いておこなった。1400RUのビオチン化TNFR1をストレプトアビジン(SA)チップにコーティングした。弱酸性の溶出条件を用いて表面をベースラインにまで再生した。この表面の上にDOM1H-131-202、DOM1H-131-511およびDOM1H-131-206を所定の濃度で50μl/分の流速にて通過させた。この実験はBIAcoreTM 3000装置で実施し、データを解析して1:1結合モデルに適合させた。全ての試験分子の結合データが1:1モデルによく適合した。konおよびkoff速度から全てのKD値を算出した。BIAcoreTMの運転は25℃でおこなった。
【0127】
以下のデータは3つの独立した実験から得られたものである。それぞれの実験において、kdについては最高dAb濃度を、kaについてはより低い濃度を用いて、いくつかの適合(fit)を平均化することにより結果を算出した。データを結果の平均および標準偏差(カッコ内)として表す(表1)。
【表1】

【0128】
DOM1H-131-202、DOM1H-131-511およびDOM1H-131-206は同様に、高親和性で、ヒトTNFR1と結合した。DOM1H-131-202およびDOM1H-131-206はそれぞれ0.55nMおよび0.47nMの平均親和性で結合する。DOM1H-131-202とDOM1H-131-206の両方は、平均親和性が1.07nMのDOM1H-131-511と比較して、やや良好な親和性を有する。
【0129】
受容体結合アッセイ:
受容体結合アッセイでヒトTNFR1に対するdAbの効力を測定した。このアッセイは、TNFR1へのTNF-αの結合およびこの相互作用を阻止する可溶性dAbの能力を測定するものである。ヤギ抗ヒトIgG(H&L社)を予めコーティングしたビーズにTNFR1を捕捉させる。その受容体コーティングビーズを、黒の側面と透明な底面をもつ384ウェルプレート内で、TNF-α(10ng/ml)、dAb、ビオチン結合抗TNF-αおよびストレプトアビジンalexa fluor 647と共にインキュベートする。6時間後、プレートをABI 8200 Cellular Detectionシステムで読み取り、ビーズに結合した蛍光を測定する。dAbがTNFR1へのTNF-α結合を阻止するならば、蛍光強度が低下するだろう。
【0130】
データはABI 8200解析ソフトウェアを用いて解析した。濃度効果曲線と効力(EC50値)はGraphPad Prismおよびシグモイド型用量反応曲線(可変勾配)を用いて測定した。アッセイを別々に3回繰り返した。各実験にTNF-α用量曲線を含めた(図2および3)。TNFR1(10ng/ml)に結合するdAbと競合させるために用いるTNF-αの濃度は、このアッセイでの最大TNF-α反応の約90%とする。
【0131】
代表的なグラフを図3に示すが、この図はTNFR1へのTNF-αの結合を阻止するdAbの能力を示している。3つの実験のすべてにおいて、陰性対照サンプル(HEL4およびVH模擬品)はTNF-αとTNFR1との相互作用を高濃度で弱く阻止する。試験サンプルおよび陽性対照(R&D Systems社から得られる抗TNFR1 mAbのmAb225)ならびにエンブレルTM(エタネルセプト(etanercept);IgG1のFc部分に連結されたTNFR2からなる融合二量体;慢性関節リウマチの治療用に認可されたもの)の平均効力(EC50値)を表2に示す。
【表2】

【0132】
このアッセイにおいて、DOM1H-131-206は試験した他の2つのdAbより効力が強いように思われ、市販されている抗TNFR1 mAbのmAb225 (R&D Systems社)と同様の効力を有する。
【0133】
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)からのリードクローンの発現を下記のとおりに実施した:
3種のリード分子の一次アミノ酸配列を用いて、ピキア・パストリスでの分泌型発現のために、コドン最適化された遺伝子を作製した。3種の合成遺伝子を発現ベクターpPIC-Zα(Invitrogen社から入手)にクローニングし、次に2種のピキア株X33およびKM71Hに形質転換した。これらの形質転換細胞を漸増濃度のゼオシン(Zeocin) (100、300、600および900μg/ml)プレート上に広げて、複数の組込み体を含むクローンを選択した。それぞれの細胞株および構築物に対して約15個のクローンを発現スクリーニングのために選択した。ピキア・パストリスにおいては、高い/低い遺伝子コピー数と発現レベルの間の相関関係が十分には理解されていないので、ゼオシン濃度範囲にわたっていくつかのクローンを選び出した。高生産性について広範にスクリーニングされなかったクローンを用いて5L発酵槽の実験を実施した。これによりさらなる研究のための物質の大量生産が可能となった。
【0134】
タンパク質特性解析のための物質の生産:
微生物の培養上清からVH dAbを精製するために、プロテインAを固定化したクロマトグラフィー樹脂が広範に使用されている。これは高純度の物質(大抵の場合に通常>90%)を得るための一段階精製法を可能にするが、分子によっては低いpH溶出条件が凝集物の形成をもたらすことがある。また、dAbに対するアフィニティー樹脂の能力が限られているという問題もある;このことは、発酵槽から処理するのに大量の樹脂を用いることを意味するだろう。特性解析用の、さらには安定性およびネブライザー研究用の、高品質の物質を得るために、一次捕捉ステップとして混合モード電荷誘導樹脂を用い、続いてアニオン交換樹脂を用いる下流精製法を考案した。大幅な最適化なしで、これは発現されたdAbの約70%の回収率、約95%の純度を可能にした。混合モード電荷誘導樹脂(GE Healthcare社からのCapto MMC)への捕捉ステップのために、50mMリン酸ナトリウムpH6.0を用いてカラムの平衡化をおこない、希釈やpH調整の必要性なしに上清をローディングする。カラムの洗浄後、50mM Tris pH9.0の溶出緩衝液を用いてpH勾配によりタンパク質を溶出させる。特定の洗浄および勾配条件は、溶出されるタンパク質のpIに応じて、若干異なるだろう。
【0135】
その後、ピーク溶出液をアニオン交換クロマトグラフィーによるフロースルー(通り抜け)ステップでさらに精製する。これによって、アルコールオキシダーゼのような残留HMW汚染物質が除かれ、また、エンドトキシンが減少する。この樹脂をPBS緩衝液またはリン酸緩衝液pH7.4(塩を含まない)で平衡化する。Capto MMCからの溶出液をアニオン交換樹脂にローディングすると、dAbは樹脂に結合せず、フロースルー(通り抜け)画分から回収される。エンドトキシンと他の汚染物質は樹脂に結合する。塩なしで達成されるタンパク質回収率が86%であるのに対し、もしPBS緩衝液を用いるならば、塩の存在がこのステップのタンパク質回収率を91%に改善する。しかしながら、塩の存在によってエンドトキシン除去の有効性が低下する。その結果、塩を含めたこのステップの後のdAbの一般的なエンドトキシンレベルが58EU/mlと測定されたのに対して、塩がまったく存在しない場合に得られたレベルは<1.0EU/mlであった。
【0136】
タンパク質の特性解析:
5L発酵槽の実験から生産された物質は、その正体(identity)についてエレクトロスプレー質量分析、アミノ末端配列解析および等電点電気泳動(IEF)を用いて、また、純度についてSDS-PAGE、SECおよびGelcode糖タンパク質染色キット(Pierce社)を用いて、特性解析した。
【0137】
正体:
各タンパク質の最初の5残基のアミノ末端配列解析は予想通り(EVQLL...)であった。質量分析は、C4 Zip-tips (Millipore社)を用いて、H2O:アセトニトリル(0.1%氷酢酸を含む)50:50に緩衝液交換したタンパク質のサンプルで実施した。3種のタンパク質のそれぞれの測定質量は、内部ジスルフィド結合の形成からの−2の質量差を考慮するとき、一次アミノ酸配列に基づく理論的質量(平均質量を用いて計算)の0.5Da以内にあった。IEFを用いることで、各タンパク質ごとに相違するそのpIに基づいて、これらのタンパク質を同定した。
【0138】
純度:
3種のタンパク質を1μgおよび10μg量で非還元SDS-PAGEゲルに2回反復してローディングした。すべての場合に単一のバンドが観察された。
【0139】
純度を証明するためにサイズ排除クロマトグラフィーも実施した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のため、各タンパク質100μgをTOSOH G2000 SWXLカラムに0.5ml/分の流速でローディングした。移動相はPBS/10%エタノールとした。
【0140】
選択候補に対するdAb安定性の検討:
COPDの徴候に対しては、ネブライザー器具を使ってdAbを肺に送達することが必要だろう。これは次のことを意味する。すなわち、dAbタンパク質は、用いるネブライザーのタイプに応じて、さまざまなせん断および熱ストレスを受ける可能性があり、また、肺環境に存在するプロテアーゼにより酵素的分解を受けやすいと考えられる。dAbタンパク質がこのタイプの器具を使って送達され得るのか、正しい粒子径分布を形成するのか、また、ネブライザー送達後にまだ機能性のままであるのか、を知ることは明らかに必要不可欠であった。したがって、ベースライン安定性および最も感度の高い安定性表示アッセイを判定するために、広範な物理的ストレスに対する各分子の固有の安定性を検討した。各タンパク質の安定性はそれを可溶化する緩衝溶液に左右されるので、多少の予備処方作業が必要であった。この情報(緩衝液、pHなど)は下流の精製法とその後の貯蔵の間のタンパク質の安定性を理解する上でも有用だろう。広範な物理的ストレスにさらされている分子の変化を特徴づけるため、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、SDS-PAGEおよび等電点電気泳動(IEF)などのさまざまな分析技術を採用した。
【0141】
DOM1H-131-202、DOM1H-131-511およびDOM1H-131-206のプロテアーゼ安定性の評価:
DOM1H-131-202、DOM1H-131-511およびDOM1H-131-206のプロテアーゼ安定性は、過剰のプロテアーゼの存在下で特定の時間にわたりプレインキュベートした後の残留結合活性のBIAcoreTM解析によって評価した。約1400RUのビオチン化TNFR1をストレプトアビジン(SA)チップにコーティングした。250nMのDOM1H-131-202、DOM1H-131-511およびDOM1H-131-206をPBSと共に、または100μg/mlのトリプシン、エラスターゼまたはロイコザイムと共に30℃で1、3および24時間インキュベートした。この反応をプロテアーゼ阻害剤のカクテルの添加により停止させた。その後、参照セル減算を用いて、dAb/プロテアーゼ混合物をTNFR1コーティングチップに通した。それぞれの注入サイクルの間にチップ表面を10μlの0.1MグリシンpH2.2で再生した。プロテアーゼと共にプレインキュベートした後でヒトTNFR1に結合したDOM1H-131-202、DOM1H-131-511およびDOM1H-131-206の画分(10秒間)を、プロテアーゼの不在下でのdAb結合と比較して測定した。BIAcoreTMの運転は25℃でおこなった。
【0142】
3つの独立した実験からデータを得た。棒グラフは平均値を示し、エラーバーは結果の標準偏差を示す(結果については図4を参照されたい)。
【0143】
DOM1H-131-202およびDOM1H-131-206は、DOM1H-131-511と比較して、トリプシン、エラスターゼまたはロイコザイムによるタンパク質分解に対してより大きな抵抗性をもつことが見い出された。DOM1H-131-202およびDOM1H-131-206をDOM1H-131-511と比較したときの差異は、トリプシンでは1時間後、エラスターゼまたはロイコザイムでは3時間後に、最も顕著である。
【0144】
DSCを用いて測定したときの熱安定性:
どのpHで分子が最大の安定性をもつかを決定するために、示差走査熱量計(DSC)を用いてブリトン-ロビンソン(Britton-Robinson)緩衝液中で各dAbの融解温度(Tm)を測定した。ブリトン-ロビンソンは3成分緩衝系(酢酸、リン酸およびホウ酸)で構成されるので、同一溶液中で3〜10のpH範囲を生み出すことが可能である。理論的pIはタンパク質の一次アミノ酸配列から決定した。DSCから、dAbが最大の固有熱安定性を示すpHは、DOM1H-131-202 (202)についてはpH7、DOM1H-131-206 (206)についてはpH7〜7.5、そしてDOM1H-131-511 (511)についてはH7.5であると判明した。以後のすべてのストレスおよび安定性実験のために、各dAbに対して次のpHを採用した:DOM1H-131-202 (202)およびDOM1H-131-206 (206)についてはブリトン-ロビンソン緩衝液中でpH7.0、DOM1H-131-511 (511)についてはブリトン-ロビンソン緩衝液中でpH7.5。結果を表3にまとめてある。
【表3】

【0145】
固有溶解性試験:
すべてのリードdAbをVivaspin遠心濃縮装置(5Kカット-オフ)で濃縮して、それらの最大溶解性と濃縮後の回収レベルを測定した。実験はブリトン-ロビンソン緩衝液中で最大安定pHにておこなった。サンプルの体積と濃度を経時的に測定し、予想された濃度からの偏差だけでなくサンプルの回収パーセントも記録した。
【0146】
全部のタンパク質がブリトン-ロビンソン緩衝液中100mg/ml以上に濃縮できることがわかった。DOM1H-131-202 (202)とDOM1H-131-206 (206)は、DOM1H-131-511 (511)と比較して、予想より低い回収率を示したが、まだ許容レベルの範囲内であった。
【0147】
リードdAbのネブライザー送達:
さまざまなネブライザーと処方緩衝液を検査することによって、dAbが広範な噴霧器具を使って効果的に送達され得ることが実証された。さらに重要なことには、処方緩衝液中のdAbの噴霧化は、タンパク質の機能性を維持しながら、効果的な肺送達のための好適な粒子径分布(5μmより小さい液滴の割合を用いて比較した)をもたらすことが初めて示された。これについては以下でさらに説明する。
【0148】
各種器具の性能比較:
DOM1H-131-511 (511)は、液体製剤用ネブライザーの3つの主なグループ、すなわち、超音波式ネブライザー、ジェット式ネブライザーおよび振動メッシュ式ネブライザーのそれぞれから2個の器具を含む6個のネブライザー器具を使って試験した。各器具では、dAbを5mg/mlで、ある範囲のPEG濃度を用いて試験した。各サンプルについて、5μmより小さい液滴径の割合をMalvern Spraytek装置(Malvern Instruments Limited、UK)で測定し、その結果を図5に示す。噴霧した後の各サンプルの安定性は、SECを用いて、カップに残っている物質と回収されたエアロゾルの双方に含まれる二量体化サンプルの量を分析することにより評価した。結果を図6に示す。二量体形成の程度が低い程、安定性が大きくなる。さらに、図7は、PBS中40mg/mlでさえも、GSK206が噴霧化に対して安定したままであり、二量体形成が少ないことを証明するSECトレースを示す。
【0149】
ほとんどの器具は40%以上の液体製剤を正しい液滴径範囲で送達できるが、eFlow(振動メッシュ式ネブライザー)器具とPARI LC(ジェット式ネブライザー)器具はより良い性能を示し、PARI LC* (スター)器具は、緩衝液にPEGを加えたとき80%より多くを送達できる。PEGによるこの送達増加はeFlowでも観察され、程度は劣るものの、PARI LC+でも観察される。重要なことは、dAbの活性が噴霧後にも保持されることがわかったことである(図8に示した結果を参照されたい)。
【0150】
緩衝液添加剤の効果:
DOM1H-131-511 (511)の安定性が比較的低いため、せん断ストレスと熱ストレスの両方からのdAbの保護に役立つように、50mMリン酸処方緩衝液にPEG 1000とショ糖の両方を含めた(1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しいと定義される範囲内の粘度を有する)。DOM1H-131-202 (202)とDOM1H-131-206 (206)はいずれもより高いTm'を有して、熱ストレスに対してかなり改善された安定性を示したので、これらの分子はもとの処方緩衝液とブリトン-ロビンソン緩衝液(処方緩衝液よりも粘度が低い)の両緩衝液中で試験した。dAbはタンパク質濃度5mg/mlにてE-flowおよびPari LC+器具を用いて稼働時間3.5分で試験し、粒子径分布をMalvern Spraytek装置により測定した。比較として、ネブライザー器具により送達される嚢胞性線維症用の市販薬(標準タンパク質Xと指定される)をそれ自体の処方緩衝液中で試験した。結果を図9に示す。肺の深部への良好な送達と分配のため、理想的な粒子径は6ミクロンより小さく、例えば<5μmである。すべてのdAbがブリトン-ロビンソン緩衝液でも処方緩衝液(先に記載したもの)でも5μmより小さい粒子径を同程度でもたらす。しかし、処方緩衝液のより高い粘度は、正しい粒子径範囲に入る粒子、例えば5μmより小さい粒子、を生成するのに特に有益であると考えられる。器具のカップ内のdAbの濃度を噴霧の前と後でA280測定により調べたが、タンパク質濃度は有意に変化してないことが判明した。このことはタンパク質もビヒクルも送達中に優先的に噴霧化されないことを示している。
【0151】
抗IL13単量体dAbのネブライザー送達:
喘息のような他の肺疾患のための作用部位にdAbを直接送達することも望ましいだろう。サイトカインIL13と結合する単量体dAbを試験することによって、dAbはネブライザーを用いる肺送達によって効果的に投与することができ、喘息の治療に使用できる可能性があることが実証された。これについては以下でさらに説明する。
【0152】
IL13と結合するdAbはWO 2007/085815に記載されており、そこに挙げられたdAbのうち、2種のdAbを選択して、それらの標的に対する効力およびそれらの生物物理学的性質に基づいてネブライザー送達について試験した - これらはDOM10-53-474とDOM10-275-78であった。
【0153】
抗IL-13 dAb DOM10-53-474およびDOM10-275-78の効力
HEK細胞アッセイにおいて:
このアッセイでは、STAT6遺伝子とSEAP(分泌型胚性アルカリ性ホスファターゼ)レポーター遺伝子で安定にトランスフェクトされたHEK293細胞(Invitrogen社、San Diego)を用いる。IL-13で刺激すると、SEAPが上清に分泌されるので、これを比色法により測定する。STAT6経路を経るIL-13シグナル伝達を遮断する可溶性dAbの能力について試験した。簡単に説明すると、dAbを6ng/mlの組換えIL-13 (GSK社)と共に1時間プレインキュベートし、その後組織培養マイクロタイタープレートに入れたDMEM (Gibco、Invitrogen Ltd、英国Paisley)中の50000個のHEKSTAT6細胞に添加する。そのプレートを37℃、5%CO2で24時間インキュベートする。次に、培養上清をQuantiBlue (Invivogen社)と混合し、吸光度を640nmで読み取る。抗IL-13 dAb活性は、IL-13刺激に対してSTAT6活性化の低下と、それに対応するA640の低下を引き起こす。
【0154】
これらの結果を以下の表4にまとめてあり、表4はヒトIL-13 (hIL-13)とカニクイザルIL-13 (cIL-13)の双方に対する選択したdAbのそれぞれのEC50を示す。
【表4】

【0155】
DOM10-53-474はそのすぐれた効力ゆえに好ましい臨床候補であるが、NHP臨床モデルでは効力が低下すると考えられる。DOM10-275-78はNHP臨床モデルで効力の向上を示すだろう。
【0156】
DOM10サンドイッチELISA:
このアッセイもまたdAbの効力を測定するものである。このアッセイでは、マウス抗ヒトIL-13捕捉抗体と別のマウス抗ヒトIL-13検出抗体(bender MedSystems社、カタログ番号BMS231/3MST)を用いる。捕捉AbをELISAプレート上に捕捉させ、次にIL-13 (GSK社)とdAbタンパク質との混合物を添加する。その後、捕捉されたIL-13をビオチン化抗IL-13検出Abとストレプトアビジン-HRPによって検出する。発色基質を用いてプレートを発色させ、450nmでODを読み取る。IL-13結合を阻止するdAbはODの減少により示される。
【0157】
結果を以下の表5にまとめてあり、表5はヒトIL-13に対する選択したdAbのそれぞれのEC50を示す。
【表5】

【0158】
DOM10結合アッセイ:
このアッセイでは、dAbを捕捉するためにビオチン化ヒトIL-13(社内で調製したビオチン化GSK IL-13)を用いる。ELISAプレートをNeutrAvidin (Pierce社、カタログ番号31000)でコーティングしてビオチン化IL-13を捕捉する。dAbを添加し、結合したdAbをウサギ抗ヒトIg (VH特異的) Ab、続いてHRPコンジュゲート抗ウサギIgGAM Ab (Sigma社、カタログ番号A-2074)によって検出する。発色基質を用いてプレートを発色させ、450nmでODを読み取る。アッセイからのシグナルは結合したdAbの量に比例する。
【0159】
結果を以下の表6にまとめてあり、表6は選択したdAbのそれぞれのEC50を示す。
【表6】

【0160】
BIACORE(登録商標)オフ速度スクリーニング:
ストレプトアビジンコーティングSAチップ(Biacore社)に、約100RUのビオチン化ヒトIL-13 (R&D Systems社、米国Minneapolis)またはカニクイザルIL-13 (社内で調製)をコーティングした。dAbをHBS-EPランニングバッファーで連続的に希釈した。50〜100μlの希釈した上清を50μl/分の流速で注入し(kininject)、続いて5分の解離期をおいた。BIAevaluationソフトウェアv4.1 (Biacore社)を用いて結合・解離のオフ速度と定数を計算した。
【0161】
表7は、ヒトおよびカニクイザルの両方のIL-13に対する2つの選択したdAb DOM10-53-474およびDOM10-275-78の結合親和性を比較して示す。
【表7】

【0162】
変異型IL-13 (R130Q)との結合:
IL-13の遺伝的変異体(そのうちR130Qはありふれた変異型である)は、喘息(Heinzmann et al. Hum Mol Genet. (2000) 9549-59)および気管支過敏症(Howard et al., Am. J. Resp. Cell Molec. Biol. (2001) 377-384)のリスク増加と関連している。したがって、抗IL-13 dAbがこの変異型のサイトカインに対しても結合親和性を示すことが望ましい。DOM10-53-474はIL-13 (R130Q)と結合し、2つの細胞アッセイ(TF-1 & Hek-Stat6)においてIL-13 (R130Q)刺激増殖を抑制した。
【0163】
表8は、変異型IL-13に対するDOM10-53-474の結合親和性を示す。
【表8】

【0164】
アゴニスト活性:
DOM10-53-474が非標的タンパク質と結合するかどうかを確かめるため、また、望ましくないサイトカイン/インターフェロンがdAbのアゴニスト活性によって放出されることがないことを確かめるため、ヒト血液アッセイでDOM10-53-474のアゴニスト活性について試験した。各サンプルを1μMから10nMまでのDOM10-53-474にタイトレーションし、2つのドナーAおよびBにおいて試験した。アッセイは2回反復(a & b)で構成し、メソスケールディスカバリー(meso scale discovery: MSD)を2回繰り返しておこなった。空ウェルは血液のみを含み(すなわち、dAbの添加なし)、ドナーAについては8個の空ウェル、そしてドナーBについては4個の空ウェルが存在した。アッセイしたサイトカインはIL-8、IL-6、TNFα、IL-10、IL-1β、IL-12p70およびIFNγであった。IL-6、TNFα、IL-10、IL-1β、IL-12p70またはIFNγに関しては、アゴニスト活性がまったく認められなかった。1μM濃度で少しのIL-8産生が認められたが、これは非常に低かった。
【0165】
SEC-MALLS:
dAbタンパク質の溶液中での性質は、SEC (サイズ排除クロマトグラフィー;TSKgel G2000/3000SWXL、Tosoh Biosciences社、ドイツ;BioSep-SEC-S2000/3000、Phenomenex社、米国CA)での初期分離と、これに続くUV (Abs280nm)、RI (屈折率)および光散乱(685nmのレーザー光)による溶出中のタンパク質性物質のオンライン検出によって調べた。タンパク質の初期濃度は、280nmでの吸光度で測定して、DOM10-275-78が2mg/mL、DOM10-53-474が1.4mg/mlであり、不純物をSDS-PAGEにより肉眼で検査した。注入されるサンプルの等質性(homogeneity)は一般に90%を超えていた。100μLをSECカラムに注入した。SECでのタンパク質分離は0.5mL/分で45分間おこなった。移動相としてPBS (リン酸緩衝生理食塩水±10% EtOH)を用いた。ASTRAソフトウェア(Wyatt社、米国CA)は3つの検出器すべてのシグナルを統合して、「first physical principles」からタンパク質のモル質量(kDa)の確定を可能にした。運転間変動(inter-run variations)およびデータの質は、サンプルバッチごとに、溶液での状態が知られている陽性対照を一緒に流すことで評価した。
【0166】
一部のDOM10-53クローンについては、信頼できる溶解状態を割り当てることができなかった。その理由は、これらの分子がカラムマトリックスと非特異的に結合したか、またはサイズ排除カラムを用いて分割されなかったためである。溶解状態が信頼できる事例(すなわち、DOM10-53-474およびDOM10-275-78)では、DOM10-275-78分子が溶液中で主に単量体であり、90%がカラムから溶出されること、そしてDOM10-53-474分子に関しては、タンパク質の大部分が明確な単量体であることが実証された。DOM10-53-474は単一ピークとして溶出され、このピークの右側ではモル質量が13kDa(単量体)と特定されたが、ピークの左側では18kDaまで徐々に上昇し、ある程度の急速な自己会合が起こったことを示している(このピークにわたる平均質量は14kDaである)。
【0167】
示差走査熱量測定(DSC):
DOM10-275-78タンパク質を、濾過済みPBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水)中に供給して2mg/mlの濃度とし、また、50mMリン酸カリウム緩衝液pH7.4中に2mg/mlの濃度で供給した。濃度は280nmでの吸光度により測定した。PBS緩衝液とリン酸カリウム緩衝液はそれぞれのサンプルのための基準として用いた。DSCはキャピラリーセルマイクロカロリメーターVP-DSC (Microcal社、米国MA)を用いて180℃/hの加熱速度でおこなった。典型的なスキャンは通常、基準緩衝液とタンパク質サンプルの両方に対して25〜90℃とした。基準緩衝液/サンプルの各対の後に、キャピラリーセルを1%Decon水溶液で、次にPBSで洗浄した。得られたデータトレースをOrigin 7 Microcalソフトウェアによって解析した。基準緩衝液から得られたDSCトレースをサンプルトレースから差し引いた。サンプルの正確なモル濃度をデータ解析ルーチンに入れて、見かけのTm、エンタルピー(ΔH)およびvan't Hoffエンタルピー(ΔHv)の値を得た。一般に、データは非2状態モデル(non-2-state model)に適合した。DSC実験から、いくつかのDOM10分子(例えば、10-53-474 (配列番号2105))は他の分子(例えば、10-275-78)と比較して、高い融解温度をもつことが示された。以下の表9を参照されたい。そうした性質は安定性の向上を示しており、例えば肺送達への、すぐれた適格性を示唆している。
【0168】
表9は、選択した両dAb DOM10-275-78およびDOM10-53-474の見かけのTmを示す。
【表9】

【0169】
DOM10-53-474タンパク質のアンフォールディング(unfolding)は不可逆的であり、したがって、アンフォールディング機構のいくつかの不可逆的な段階が融解点の前に起こるため、見かけのTmは融解温度より低い可能性がある。
【0170】
溶解性:
特定の目的のためには、高濃度のdAbを含有する液体製剤が望ましい。例えば、噴霧器具によって治療的に送達されるタンパク質は、全身送達のために期待されるよりも高い濃度である必要がある。なぜならば、噴霧されたタンパク質のすべてが肺に吸入または沈着されるとは限らないからである。投与される量もまた、対象となるネブライザーの貯蔵容器の大きさによって制限される。そのために、DOM10-53-474とDOM10-275-78の両方の溶解性を測定して、凝集と沈殿によるタンパク質の損失を招く前に達成しうる最高濃度を決定した。
【0171】
PBS中の出発濃度が知られている(280nmでの吸光度を測定することにより決定した)、既知量のタンパク質をそれぞれ、MWCO 3,000DaのPES膜を備えたVivaspin 20遠心濃縮装置(Vivasciences社)にアプライし、卓上遠心機で4,000g、10〜30分間遠心した。最初に10分の時間を採用したが、希望の体積減少を得るためにタンパク質がより濃縮されているときにはその時間を増加させた。
【0172】
各遠心後、タンパク質を装置から取り出し、ピペットを使って最も近い50μl単位まで体積を測定して濃度を求めた。濃度の決定は、サンプルを16,000gで遠心して沈殿物を取り除いた後、280nmで測定した吸光度から320nmで測定した吸光度を差し引くことによって得られた吸光度測定値を用いておこなった。
【0173】
実験的濃度をその体積での理論的濃度に対してプロットし、実験的濃度が理論的濃度から分岐した地点を最大溶解度と見なした。
【0174】
両タンパク質について、分岐する前に100mg/mlの濃度が達成され、実際のタンパク質回収率は出発物質に対して約100%であった。
【0175】
DOM10-53-474の下流処理および得られた純度:
DOM10-53-474をピキア・パストリス発現系により発現させて、上清に分泌させた。DOM10-53-474を含有する発酵槽上清の初期捕捉ステップは、PBSで平衡化したプロテインA Streamline樹脂(GE Healthcare社)への直接ローディングによるものであった。樹脂を5〜10カラム容量のPBSで、続いて2〜5カラム容量の50mM Tris HCl pH8で洗ってから、タンパク質を4カラム容量の0.1MグリシンpH2.0で溶出させた。溶出したタンパク質を1M Tris HCl pH8を用いて中和して0.2M Tris HClの最終濃度とした。中和時に沈殿が見られ、この沈殿物を遠心により回収し、そのタンパク質を再可溶化した。タンパク質の再可溶化は、そのペレットをPrA精製ステップからの1カラム容量に等しい容量の10mM Tris HCl pH7.4中に再懸濁することによって実施し、その後1M NaOHを添加して75mMの最終濃度とし、沈殿したタンパク質を完全に溶解させた。pHは1MグリシンpH2を段階的に添加してpH8に調整した(約0.1Mの最終濃度)。SDS-PAGEによる分析から、再可溶化タンパク質溶液はDOM10-53-474について約80%の純度であることが示された。DOM10-53-474をアニオン交換クロマトグラフィーでさらに精製した。再可溶化したペレットを50mMリン酸カリウムpH6に対して透析し、50mMリン酸カリウムpH6で平衡化したQFFカラムにローディングした。DOM10-53-474を0〜100%50mMリン酸カリウムpH6+1M NaCl勾配により20カラム容量にわたって溶出させた。溶出ピークの画分をSDS-PAGEで分析し、純度の高い画分を合わせて、PBSへと緩衝液交換した。この段階で、溶出タンパク質はSECにより測定して約97%の純度であった。
【0176】
DOM10-275-78の下流処理および得られた純度:
発酵槽上清または細胞膜周辺画分からの抗体および抗体フラグメントの初期捕捉および精製のための伝統的な方法は、不活性マトリックスに固定化したプロテインAを用いることである。アフィニティークロマトグラフィーのステップとして、この方法はタンパク質の良好な回収率と高い純度(例えば、約90%)という利点を有する。しかし、いくつかの欠点がある。あらゆる形式のアフィニティークロマトグラフィーと同様に、リガンドの一部が溶出中にカラム支持マトリックスから浸出することがある。プロテインAは免疫原になりうることが知られている。したがって、プロテインAを用いるのであれば、カラムから浸出された残留プロテインAを後続のクロマトグラフィーステップで取り除くか、または可能な限り低減させる必要がある。
【0177】
DOM10-275-78の精製:
DOM10-275-78を含有する発酵槽上清または細胞膜周辺画分の初期捕捉ステップは、PBSで平衡化したプロテインA Streamline樹脂(GE Healthcare社)への直接ローディングによるものであった。樹脂を2〜5カラム容量のPBSで洗ってから、タンパク質を4カラム容量の0.1MグリシンpH3.0で溶出させた。この段階で、溶出タンパク質はSECにより測定して約99%の純度であり、約1%の二量体DOM10-275-78を含んでいた。タンパク質の回収率は実質的に100%であった。残留PrAをPrA ELISAキット(Cygnus社、#F400)で測定したところ、50〜200ppmであることが判明した。
【0178】
残留PrAの除去:
残留PrAは2つのさらなるクロマトグラフィーステップを用いて低減させた。PrAステップからの溶出液を1M Tris pH8.0でpH6.5に調整し、1%(v/v) 0.5Mリン酸ナトリウムpH6.5を加えて最終リン酸濃度を5mMとすることによってヒドロキシアパタイトII型での精製に備えた。PrA溶出液を5mMリン酸pH6.5で平衡化したカラムにアプライした。DOM10-275-78単量体はフロースルー画分中に溶出した。二量体はカラムに結合し、DOM10-275-78を回収した後に添加した塩勾配の開始時に溶出した。勾配は30カラム容量にわたって5mMリン酸pH6.5中の0〜1M NaClを流した。PrAはこの勾配で溶出すると予想されたが、その量が少なすぎてクロマトグラム上の吸収によって確認できなかった。PrAとDOM10-275-78の複合体は、塩勾配の後で、500mMリン酸pH6.5洗浄液をカラムに添加したときに溶出した。この段階でのDOM10-275-78単量体の回収率は280nmの吸光度に基づいて74%と測定され、純度はSECにより測定して100%であった。残留プロテインAレベルを測定したところ、0.4〜0.56ppm(百万分率、すなわちng/mg)に減っていたことが判った。
【0179】
残留PrAをさらにもっと減らすために、さらなる精製ステップを導入した。ヒドロキシアパタイトカラムからの溶出液プールを、NaClを添加して最終濃度を2Mとした後で、フェニル(HIC)カラム(GE Healthcare社)に直接アプライした。このカラムは25mMリン酸pH7.4+2M NaClで平衡化しておいた。タンパク質は20カラム容量にわたる2M NaClから無塩までの勾配で溶出した。このステップの後で、残留PrAレベルは0.15〜0.19ppmに低下し、タンパク質回収率は280nmの吸光度によって80%と測定された。
【0180】
DOM10-53-474およびDOM10-275-78のネブライザー試験:
DOM10-53-474の試験:
噴霧器具はdAb溶液を噴霧して液滴にすることができるが、その液滴のほんの一部が肺沈着に必要な粒子径範囲(1〜5μm)に入るにすぎない。エアロゾル粒子の粒子径は、Malvern Spraytek装置を用いてレーザー光散乱により測定した。2つの噴霧後サンプルを回収した:i)貯蔵容器に残っていたタンパク質溶液と、ii)凝縮によって回収されたエアロゾル化タンパク質。噴霧処理を評価するために以下のパラメーターを測定した:i)呼吸性画分 - 1〜5μmの粒子径範囲に入る粒子の%、これはどのくらいのdAbが肺の奥深くに到達するかを調べるのに重要である;ii) dAbの粒子径分布(psd);iii)空気動力学的質量中央粒子径(Mass median aerodynamic diameter: MMAD) - psd内の噴霧化dAb溶液の平均液滴径。噴霧処理に対するdAbの安定性は、噴霧前と噴霧後のサンプルを各種の方法で比較することによって評価した:i)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC) - 噴霧処理がdAbの凝集を引き起こしたかどうかを証明する;ii) hIL-13との結合についてのサンドイッチELISA。
【0181】
DOM10-53-474の噴霧特性は、ジェット式ネブライザー(LC+、Pari社製)と振動メッシュ式ネブライザー(E-flow、Pari社製)の両方を用いて調べた。DOM10-53-474タンパク質をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中2.6mg/mlの濃度で、また、25mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5、7%(v/v) PEG1000、1.2%(w/v)ショ糖中2.3mg/mlおよび4.7mg/mlの濃度で試験した。噴霧を約3分間おこなった。100μLのタンパク質サンプル(1mg/mLに希釈した)をSEC (TSKgel G2000SWXL、Tosoh Biosciences社、ドイツ)カラムに注入した。SECでのタンパク質分離は0.5mL/分で45分間実施した。移動相としてPBS(リン酸緩衝生理食塩水)+10%EtOHを用いた。溶出するタンパク質性物質の検出はUV(280nm & 215nmの吸光度)によるオンライン検出でおこなった。噴霧前サンプルと2つの噴霧後サンプルのSECプロファイルはまったく同じであって、凝集を示すピークが噴霧後に認められなかった。図10および11を参照されたい。先に記載したサンドイッチELISAを用いてhIL-13との結合についてサンプルを分析したところ、表10に示すように、その効力は噴霧によって影響されないことがわかった。
【0182】
表10は、DOM10-53-474の噴霧前および噴霧後サンプルのサンドイッチELISAデータを示す。14 - 2.3mg/mL 25mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5、7%(v/v) PEG1000、1.2%(w/v)ショ糖; 15 - 4.7mg/mL 25mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.5、7%(v/v) PEG1000、1.2%(w/v)ショ糖; 16 - 2.6mg/mL PBS; Cup - 噴霧後のカップ内に残存する物質; Aero - エアロゾル化された物質。DOM10-53-474は1×PBS中の物質である。
【表10】

【0183】
最適MMADは3μmであり、肺の奥深くに送達するために望ましい呼吸性画分は5μmより小さい粒子の割合が最も高いものである。以下の表11に示すように、LC+ (Pari)ジェット式ネブライザーはより良好なMMADを与える。緩衝液がPEGを含む場合には、MMAD値がより低い;タンパク質濃度が上昇するとMMADが低下する。LC+ (Pari)ジェット式ネブライザーはより高い%<5μmを与える;緩衝液がPEGを含むときには、より高い%<5μm値が得られる;タンパク質濃度が上昇すると、%<5μmも増加する。
【0184】
表11は、LC+ (Pari)ジェット式ネブライザーおよびE-flow Rapidネブライザーを用いて噴霧した後のMMADおよび粒子<5μmのパーセンテージを示す。
【表11】

【0185】
DOM10-275-78の試験:
前臨床PKおよび効力試験においてこの分子が効果的な肺沈着に必要な特性を備えているかどうかを調べるために、噴霧中のその性質を、PARI LC*ジェット式ネブライザーを用いて試験した。解析した性質は次のものである:i)エアロゾルの粒子径分布、これはMalvern Spraytekを用いてレーザー光散乱によって解析した;ii)呼吸性画分 - 1〜5μmの粒子径範囲に入る粒子の%;iii)空気動力学的質量中央粒子径(Mass median aerodynamic diameter: MMAD) - psd内の噴霧化dAb溶液の平均液滴径。噴霧処理に対するdAbの安定性は、噴霧前と噴霧後のサンプルを各種の方法で比較することによって評価した:i)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC) - 噴霧処理がdAbの凝集を引き起こしたかどうかを証明する;ii) hIL-13との結合についてのサンドイッチELISA;iii) HEK細胞アッセイ。
【0186】
dAbはPBS中20mg/mlの濃度(280nmでのUV吸収により測定)で試験したが、この濃度は現実的な投与濃度に相当する。dAbを30分間噴霧し、その際、噴霧中の3つの時点のそれぞれにおいて2種類のサンプルを回収した:i)貯蔵容器内に残存していたタンパク質溶液、およびii)凝縮によって回収されたエアロゾル化タンパク質。前記3つの時点は3分、15分および29分であり、それぞれ噴霧の開始、中間および終了時に相当する。
【0187】
100μLのタンパク質サンプル(1mg/mLに希釈した)をSEC (TSKgel G2000SWXL、Tosoh Biosciences社、ドイツ)カラムに注入した。SECでのタンパク質分離を0.5mL/分で45分間実施した。移動相としてPBS (リン酸緩衝生理食塩水)を用いた。溶出するタンパク質性物質の検出はUV(280nm & 215nmの吸光度)によるオンライン検出でおこなった。噴霧サンプルのSECプロファイルはまったく同一であって、凝集を示すピークが噴霧後に認められなかった。hIL-13との結合についてサンプルを分析したところ、以下の表12に示すように、その効力は噴霧によって影響されないことがわかった。
【0188】
表12は、噴霧前および噴霧後のdAbのhIL-13への結合についての効力を示す。
【表12】

【0189】
表13は、空気動力学的質量中央粒子径(Mass median aerodynamic diameter: MMAD) - 噴霧化dAb溶液の平均液滴径を示す。最適MMADは2〜3μmであり、肺の奥深くに送達するために望ましい呼吸性画分は5μmより小さい粒子の割合ができるだけ高いものであろう。
【表13】

【0190】
DOM10-275-78はPARI LC*ジェット式ネブライザーによる噴霧に対して安定しており、5μmより小さい液滴が高い割合で存在し、かつ望ましいMMADが達成される。
【0191】
前臨床PKおよび効力試験においてDOM10-275-78を送達するためのネブライザーの使用
カニクイザルPK:
カニクイザルにおけるDOM10-275-78の薬物動態プロファイルを調べるため、したがって、おそらく必要とされる臨床上の投与頻度の予測を可能にするため、カニクイザルへのDOM10-275-78の試験送達をおこなった。肺に送達されたときにこの分子の根底にある薬物動態の可能な限り包括的な理解を得るために、いくつかの異なる試験を実施した。以下の表14に試験プロトコルを要約して示す。
【表14】

【0192】
鎮静状態の動物に薬物を増量しながら3回送達して(0.01、0.1および1mg/kg)、薬物耐容性を確実なものとした。鎮静化はすべての場合に2mg/kgのテラゾール(Telazol)を用いておこなった。一貫したレベルの薬物送達を確保するため、また、噴霧する異なる薬液濃度の異なる性質を考慮して、0.01および0.1mg/kg送達は18分の送達期間を通しておこなった。1mg/kg用量は20分かけて送達した。意識的ベル送達(bell-delivered)動物の予期された比較的高い呼吸数と1回換気量を補うため、これらは薬物を1回量で10分間だけ受け取った。噴霧された薬物の量は、充填したネブライザーカップの送達前と送達後の計量により確認した。
【0193】
送達後の肺および血清中のDOM10-275-78の存在についてサンプルを試験するため、血液と気管支肺胞洗浄液(BAL)(リン酸緩衝生理食塩水による動物肺の一部のフラッシング液に相当する)を採取した。一般的に、血液の採取は、倫理ガイドラインに従って、投薬前と、投薬後の最初の24時間うちの最大9時点でおこなった。BAL採取は、その侵襲性のため、送達の1時間後または24時間後に各送達につき動物あたり1回だけおこなった。採取後で遠心前に血液を凝固させて血清を生じさせた。その後、分析に先だって血清とBALを−80℃で保存した。
【0194】
PK試験サンプルの試験:
採取したサンプルに含まれるDOM10-275-78のレベルを確かめるため、薬物動態アッセイを設定した。標準結合電気化学発光を備えたプレートにニュートラアビジンをコーティングし、ブロッキングし、その後ビオチン化IL-13を加えてニュートラアビジンに捕捉させた。次にサンプルを一定範囲の希釈率で加えた。その後、結合したDOM10-275-78をポリクローナルウサギ抗Vh抗体、続いて抗ウサギ-スルホタグ二次抗体を用いて検出した。1×濃度のMSD T読取り緩衝液(Mesoscale Discovery社、Maryland)を加えて、プレートをSector 6000 MSD Imager (Mesoscale Discovery社、Maryland)により読み取った。アッセイの各段階の間で洗浄ステップをおこなった。
【0195】
薬物動態試験の結果:
採取した各時点の血清およびBAL濃度を計算し、各動物について得られたデータをWinnonLin (Pharsight Corporation、California)薬物動態解析ソフトウェアで解析した。この解析を通して得られた薬物動態パラメーターを以下の表15にまとめて示す。
【表15】

【0196】
各試験のいくつかの時点での平均血清濃度を以下の表16にまとめて示す。
【表16】

【0197】
さらに、24時間後のBAL中に存在する薬物レベルの解析をおこない、尿素レベル測定を用いて希釈について調整して、気道上皮被覆液(epithelial lining fluid: ELF) mlあたりの数量を得た。これらの結果を以下の表17に示す。
【表17】

【0198】
結論として、相当レベルのドメイン抗体をカニクイザルの肺に送達することが可能であり、これらは24時間後にかなり残存している。加えて、それらは、毎日の反復投与後に、たとえ蓄積があったにしても、わずかな蓄積しか示さない。アレルギー体質の動物は一般に200ng/mlほどの最大血清薬物濃度を示し、これらは意識があるときに薬物を送達された動物において最も高かった。最高レベルは一般に送達後2〜4時間で達成された。DOM10-275-78の半減期はすべての場合に4時間ほどであり、有意に治療に関連するレベルの薬物が送達の24時間後に肺と血清の両方に存在していた。このことは薬物の連日投与の可能性を支持するものである。
【0199】
代替dAbフォーマットのネブライザー送達:
リガンド(例えば、dAb単量体)の流体力学的サイズおよびその血清半減期はまた、リガンドを、in vivoで半減期を増加させる抗原もしくはエピトープと結合する結合ドメイン(例えば、抗体または抗体フラグメント)にコンジュゲートまたは連結することによって、増加させることができる。例えば、リガンド(例えば、dAb単量体)を抗血清アルブミンdAbに、またはヒトIgG分子のFcドメインにコンジュゲートまたは連結することが可能である。また、他の生物学的に活性なペプチド(例えば、エキセンディン-4)は抗血清アルブミンdAbとのコンジュゲーションによりそれらのin vivo半減期を改善することができる。
【0200】
PK試験から、肺に送達されたdAbは容易かつ迅速に循環へ移行することが実証された。したがって、血清半減期のより長い代替dAbフォーマットが必要不可欠な特性を示すことができるならば、肺送達はかかるdAbフォーマットのための簡便で有効な投与経路となる可能性がある。
【0201】
それゆえ、2種の代替dAbフォーマットを2つの異なるネブライザー器具で試験して、代替dAbフォーマットがうまく噴霧されるかどうかを調べた。試験したdAbはDMS1529(ヒトFcにコンジュゲートされた抗VEGF dAb)およびDAT0115(エキセンディン-4ペプチドにコンジュゲートされた抗ヒト血清dAb)であり、これらはそれぞれGLP受容体およびヒトアルブミンに結合する。
【0202】
DMS1529の製造:
DMS1529をCHO細胞において血清/タンパク質フリーの培地中に約0.5mg/mlの力価で発現させた。培養上清を0.2μmフィルターにかけ、アフィニティークロマトグラフィーで次のように精製した。XK50カラムにMab Select Sure樹脂(GE Healthcare社)を20cmの床高さにまで充填し、1×PBSへと30ml/分で平衡化した。このカラムを2カラム容量(CV) (0.8L)の0.1M NaOHで洗浄し、4CV (1.6L)の1×PBSで再平衡化した。
【0203】
次に、10LのDMS1529上清を30ml/分(cm/h)でアプライした。上清をローディングした後、カラムを4CV (1.6L)の1×PBS、2CV (0.8L)の0.85M NaClを添加した1×PBS、および4CV (1.6L)の10mM酢酸ナトリウムpH5.5で洗浄した。0.1M酢酸ナトリウムpH3.6を用いてタンパク質を溶出させた。OD280が20mAusに達したとき回収を開始し、それが35mAusより下がったとき中止した。溶出ピークは600mlで、pHは3.7であった。このpHで1時間保持してから2M酢酸ナトリウムでpH4.5に中和した。pHが4.5に近づいたとき溶液が濁ってきた。その後、タンパク質をSartoBran-Pデプスフィルターに通して濾過し、ODを測定した。そのタンパク質プールを濾過滅菌してから4℃で保存した。
【0204】
最終タンパク質プールの濃度は6mg/mlであり、その純度はSECによって96.4%と測定された。100μlのタンパク質サンプルをTSK3000 SWXL SECカラム(Tosoh社、ドイツ)にローディングし、0.1Mリン酸Na/400mM NaCl pH6.8移動相を用いて0.5ml/分で30分流した。
【0205】
40mlのこのタンパク質をより安定した処方物(10mM酢酸ナトリウム/2%グリシン/0.05mM EDTA/0.04%Tween 80/10%ショ糖pH5を含有する)に緩衝液交換したが、その際、直列に配置した3本の53ml CV脱塩カラム(GE Healthcare社)を用いて5ml/分で流した。緩衝液交換したタンパク質はMWCO 3,000Daを備えたVivaspin遠心濃縮装置(Vivasciences社)を用いて9.8mg/mlに濃縮し、ネブライザーで試験するまで4℃で保存した。
【0206】
DAT0115の製造:
1Lの凍結した大腸菌培養上清(5L発酵槽で生産)を室温で解凍し、一晩4℃で保存した。Akta Xpress Module(英国GE Healthcare社から得られる精製システム)を1M NaOH中に一晩放置することによって消毒し、翌朝Aktaを無菌のエンドトキシンフリーダルベッコ(dulbeccos) PBSへと洗い流した。解凍した上清を16,000rpmで遠心し、0.2μmフィルターで濾過した。200mlプロテインL streamlineカラムを200mlの6MグアニジンHClで洗い、PBSへと洗い流した。解凍した上清をこのカラムに20ml/minでアプライし、次にカラムをダルベッコPBSでA280が15mAus以下になるまで洗い、その後約400mlの20mM Tris pH7.4で洗った。このカラムを0.1MグリシンpH2で溶出し、溶出ピークを2つの画分(最大ピークと引きずるテイルの一部を含む主ピーク(200ml)、および溶出テイルの残部を含む溶出テイル(200ml))として回収した。両方の溶出画分を最終容量の1/5の1M Tris pH7.4を加えて中和し、pHをpH試験紙で検査し、これらの画分を濾過滅菌してから4℃で保存した。最大ピークを含む画分を8.3mg/mlに濃縮して、ネブライザー試験に用いた。
【0207】
代替dAbフォーマットの噴霧化:
異なるdAbフォーマットを約10mg/mlで最大30分間試験した。Malvern Spraytekを用いて粒子径分布、MMADおよび粒子(液滴)<5μmの割合を調べることで、それらの肺沈着特性を判定した。
【0208】
両方のdAbフォーマットをジェット式ネブライザー(LC+、Pari社)と振動メッシュ式ネブライザー(E-flow、Pari社)を用いて試験した。試験中、サンプルを3つの時点でネブライザーのサンプル貯蔵容器(カップ)から採取し、さらに回収されたエアロゾル化dAbの凝縮物からも採取した。これらのサンプルの安定性について、i)凝集の増加を測定するためのSEC-HPLC、およびii)活性の低下を評価するための効力アッセイを用いて評価した。サンプリングの時点は、LC+ネブライザーで噴霧したサンプルの場合に3分、15分および29分としたが、e-Flowネブライザーの場合は、この器具が以下の表18に示すとおり非常に速くサンプルを噴霧するので、3分だけとした。
【表18】

【0209】
この試験の結果から示されるように、DMS1529は30分の噴霧時間を通してかなり一定した速度で噴霧されるが、DAT0115の噴霧量は容量が少なくなるにつれて経時的に減少するようである。したがって、この分子については、希望する臨床送達時の噴霧量を測定する必要があるだろう。
【0210】
噴霧中のタンパク質の安定性および凝集傾向を調べるため、100μLのタンパク質サンプルをSECカラムに注入した。DMS1529については、サンプルを0.1Mリン酸Na/400mM NaCl pH6.8で1mg/mlに希釈し、用いたカラムはTSKgel G3000SWXL (Tosoh Biosciences社、ドイツ)であった。タンパク質の分離は0.5mL/分で45分間おこなった。移動相として0.1Mリン酸Na/400mM NaCl pH6.8を用いた。DAT0115の場合に用いたカラムはSuperdex 200 10/300カラム(GE Healthcare社)であった。タンパク質の分離は0.5mL/分で50分間おこなった。200mM Tris/80mMグリシンpH7.4中約8.3mg/mlの未希釈サンプル100μlを注入し、移動相として20mMクエン酸ナトリウムpH6.2、100mM NaClを用いた。カラムから溶出するタンパク質性物質の検出はUV(280nm & 215nmの吸光度)によるオンライン検出でおこなった。噴霧前および噴霧後サンプルのSECプロファイルは実質的に同じであって、凝集の増加を示すピークは噴霧後に認められなかった。各サンプル中の単量体の割合をクロマトグラムの積分から算出した。それぞれの活性アッセイで結合についてサンプルを解析したところ、表19に示すように、効力は噴霧によって影響されないことがわかった。
【表19】

【0211】
DMS1529のために用いた効力アッセイはDOM15 Fc結合アッセイであり、DAT0115のために用いた効力アッセイはDAT01細胞アッセイであった。これらのアッセイについては以下で説明する。
【0212】
最適MMADは約3μmであり、肺の奥深くに送達するために望ましい呼吸性画分は、粒子<5μmの割合が可能な限り高いものだろう。両ネブライザーで試験した両dAbフォーマットについてのこれらの測定値を表20に示す。
【表20】

【0213】
両分子とも両ネブライザーで効果的に噴霧される。両分子について、e-Flowネブライザーは5μmより小さい液滴をより多く発生するが、MMADはLC+よりもe-Flowのほうが高い。これはLC+で観察されるよりもe-Flowで観察されるPSDのほうが密であることを示すだろう。両分子ともLC+では、一貫したMMADおよび%<5μmでもって、最大30分間噴霧される。DAT0115の場合には、2つの噴霧化方法(ジェット式または振動メッシュ式)間の差異がDMS1529の場合よりも顕著である。DAT0115はe-Flow振動メッシュ式ネブライザーでより効果的に噴霧され、その際のMMADは約3μmであり、85%の液滴が呼吸性画分に含まれる。
【0214】
DMS1529結合アッセイ:
組換えヒトVEGFをNunc maxisorp ELISAプレートに捕捉させ、その後PBS中の1%BSAで非特異的結合をブロッキングする。次にプレートをdms 1529 (dAb-hFc)と共に1時間インキュベートする。ペルオキシダーゼ抗ヒトIgG (Fc特異的)抗体を用いて結合を検出する。1時間後、SureBlue TMB基質(KPL社)を用いてプレートを発色させ、吸光度を450nmで読み取る。
【0215】
DAT01細胞アッセイ:
このアッセイでは、6CRE/ルシフェラーゼレポーター遺伝子で安定にトランスフェクトされたCHO細胞(CHO-luc) (GSK社)を用いる。cAMPが産生され、続いて受容体がGLP-1活性化されると、プロモーター遺伝子(6コピーのcAMP応答エレメントを含む - 6CRE)がルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を推進する。その後これはルシフェリンとの反応を触媒し、その結果プレートリーダーにより測定可能な光が発生する。簡単に説明すると、CHO-luc細胞を組織培養プレートに付着させ、その後dAbサンプルを加える。3時間後、Bright Gloルシフェラーゼ試薬(Promega社)をウェルに添加して、発光をプレートリーダーで測定する。
【0216】
DOM 1h-131-206の噴霧化:
これらの実験は、ドメイン抗体DOM 1h-131-206が経口吸入のために噴霧化され得るかどうかを確かめるために実施した。経口吸入用の噴霧化用量が適切であるかは、いくつかの重要な物理的パラメーターに非常に左右されるので、液滴径分布、活性成分の濃度および活性成分の安定性(断片化/凝集)の観点からDOM 1h-131-206の噴霧化の影響を調べる実験もおこなった。
【0217】
方法:
処方物を噴霧することの影響を調べる:
Pari eFlowを用いて、4% Lutrol L44、0.5%アルギニン、0.01%ポリソルベート80および0.682%NaClを含む20mM酢酸緩衝液pH5.5中9.7mg/mlのDOM 1h-131-206の溶液を噴霧した。
【0218】
ネブライザーからのエアロゾルアウトプットをツインインピンジャー(twin impinger)装置に回収した。この装置は補助ポンプに接続したとき60L/分の流量を引き入れるようにセットした(ヨーロッパ薬局方、セクション2.9.18.)。この実験の設定は次のとおりであった。ネブライザーのマウスピースを、4cm離して設置したツインインピンジャーのスロート部の入口の前にインラインで直接配置した。ツインインピンジャーはステージ1に7mlの緩衝液を、ステージ2に30mlの同緩衝液を含んでいた。この実験で用いた緩衝液の組成は、0.5%アルギニンおよび0.682% NaClを含む20mM酢酸緩衝液pH5.5であった。
【0219】
順に、Pari eFlowに6mlの薬液を充填した。ツインインピンジャー装置に接続したポンプを作動させ、続いてネブライザーのスイッチを入れた。そのとき、ネブライザーからの用量がツインインピンジャー装置に入り、それによって回収された。複数のサンプルを回収するため、ネブライザーを2分間作動させた後でネブライザーのスイッチを切り、ツインインピンジャー装置を取り替えた。ネブライザーのスイッチを入れて、ネブライザー内の同物質からさらに2分間回収した。ツインインピンジャー装置のそれぞれからのサンプルを、それぞれステージ1およびステージ2用の100ml容量フラスコに定量的に洗い流した。この洗い流しは緩衝液(先に記載したとおり)を用いておこなった。サンプルをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)にかけて、単量体ピークの濃度を測定し、また、サンプルが投与の際に断片化/凝集を受けたかどうかを観察した。単量体ピークの濃度の測定は、既知濃度の分析用標準溶液と比較することにより可能であった。
【0220】
表21は、SECのための方法の詳細を示す。
【表21】

【0221】
噴霧化プルーム(plume)の液滴径分布(DSD)を調べる:
DSD測定に用いた装置は、レーザー光散乱によって液滴径を測定する非侵襲的システムのMalvern Spraytec (英国Malvern Instruments社、モデルSTP5311)であった。
【0222】
ネブライザーのマウスピースをレーザービームから1cm、受信用光学レンズから3cm離して設置した。噴霧化プルームがレーザー測定ゾーンを通過するようにツインインピンジャー装置を70L/分にセットした。ツインインピンジャー装置のマウスピースは、噴霧化プルームの移動の方向に、レーザービームから1cmのところに置いた。
【0223】
Pari eFlowのプルームは濃密であり、ビームステアリング(beam steering)の問題を引き起こす。ビームステアリングは、噴射剤ガスや他の蒸気が高濃度で存在する場合など、測定ゾーンの空気の密度(それゆえに、その屈折率)が周囲の空気と著しく異なる場合に観察される。これが起こると、レーザービームが周囲の条件でのそのアライメントから逸れて、結果的に大きい粒子についての誤った測定値をもたらす。したがって、ビームステアリングによって影響された検出器は作動を停止させた。このことは、大きい粒子を検出することができないため、解析の液滴径範囲を減縮してしまう。しかし、これらのサンプル中にはこうした粒子が存在しない。
【0224】
測定ゾーンに存在する噴霧化液滴からの水の蒸発は、「ビームステアリング」を引き起こす。非常に大きい液滴がいくらか存在すると気付いたときには、2モード分布が消失するまで検出器をオフにしたが、これは光散乱装置の検出器1〜12を使用停止にしたことを意味する。測定は、5秒ごとに測定する連続測定法を用いて実施した。
【0225】
順に、Pari eFlowに6mlの薬液を充填した。ツインインピンジャー装置に接続したポンプを作動させ、続いて測定の初期化をおこなった。その後ネブライザーのスイッチを入れて、ネブライザーからの用量をSpraytecの測定ゾーンに通し、ツインインピンジャー装置によって回収した。複数のサンプルを回収するため、ネブライザーを2分間作動させた後でネブライザーのスイッチを切り、測定を中止して、ツインインピンジャー装置を取り替えた。ネブライザーのスイッチを入れて、ネブライザー内の同物質からさらに2分間回収した。
【0226】
結果:
表22は、噴霧化時間に対する、SECで測定されたツインインピンジャーのステージ1および2における活性物質の量を示す。
【表22】

【0227】
表22の結果から、ネブライザーの出力量がもともと可変的であるにもかかわらず、一貫して変わらぬ量が経時的に送達されたことがわかる。
【0228】
表23は、SECで測定された面積%としての活性物質(単量体)の濃度を示す。
【表23】

【0229】
表23の結果から、噴霧化されたサンプルは投入物質に匹敵する量のDOM 1h-131-206を有することがわかる。このことは、このデータを量的濃度データと関連させて用いるとき、この物質が噴霧化の際に有意な断片化または凝集を受けないことを示唆している。
【0230】
表24は、噴霧化された活性物質の液滴径分布を示す。
【表24】

【0231】
表24に記載した液滴径分布は、第2時点で液滴が多少粗大化することを示しているが、これは噴霧化処方物の共通した傾向である。Dv値の最大変化は0.34μmであり、これがin vivo用量に影響を与える可能性はなさそうである。
【0232】
要するに、提供した結果は、処方物の濃度および組成にほとんど影響を与えずに、Pari eFlowネブライザーを用いて活性dAbをうまく噴霧化できることを示している。
【0233】
結論:
上述したように、dAbのようなポリペプチドをいろいろな市販のネブライザー器具で噴霧化することができること、重要なことには、それらが噴霧後に安定性と生物学的活性を保持していること、そして、噴霧後に観察される重大な凝集が存在しないことが実証された。PEGのような増粘剤を緩衝液処方物に添加すると、粒子径分布および5μmより小さい液滴径の割合が改善され、したがって、肺の深部へのdAb送達が改善される可能性がある。
【0234】
dAbの肺への送達はまた、dAbの安定性または活性をなんら低下させることなく、dAb濃度(例えば、最大約40mg/mlまでの濃度)および送達時間を増加することによって、さらに改善することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリペプチドと、(b)生理的に許容される緩衝液と、を含むか、またはこれらから成る組成物であって、該組成物は液滴を含んでなり、かつ組成物中に存在する液滴の約40%以上が約6ミクロン以下の液滴径を有するものである、上記組成物。
【請求項2】
前記組成物中に存在する液滴の約40%以上が約1〜約6ミクロンの範囲の液滴径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中に存在する液滴の約40%以上が約5ミクロン以下の液滴径を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドがポリペプチドドメイン、例えば単量体、を含むか、またはこれから成る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが免疫グロブリン分子を含むか、またはこれから成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが最大150のアミノ酸を含むか、またはこれから成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドがドメイン抗体(dAb)を含むか、またはこれから成る、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリペプチドがアフィボディのような非Ig骨格を含むか、またはこれから成る、請求項1〜4および6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチド、例えばドメイン抗体、が約55℃〜約90℃の範囲の融解温度(Tm)を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記緩衝液が約4〜約8のpH範囲を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記緩衝液が1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
(a)ポリペプチドと、(b)生理的に許容される緩衝液と、を含むか、またはこれらから成る組成物であって、該緩衝液が約4〜約8のpH範囲を有し、かつ1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有するものである、上記組成物。
【請求項13】
前記ポリペプチドがポリペプチドドメインを含むか、またはこれから成り、例えば、該ポリペプチドドメインが単量体として存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリペプチドが免疫グロブリン分子を含むか、またはこれから成る、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリペプチドが最大150のアミノ酸を含むか、またはこれから成る、請求項12〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリペプチドがドメイン抗体(dAb)を含むか、またはこれから成る、請求項12〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリペプチドがアフィボディのような非Ig骨格を含むか、またはこれから成る、請求項12、13または15に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリペプチドが約55℃〜約90℃の範囲の融解温度(Tm)を有する、請求項12〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物中に存在する液滴の約40%以上が約6ミクロン以下の液滴径を有する、請求項12〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物中に存在する液滴の約40%以上が約1〜約6ミクロンの範囲の液滴径を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物中に存在する液滴の約40%以上が約5ミクロン以下の液滴径を有する、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
前記緩衝液がリン酸、酢酸、クエン酸またはヒスチジン緩衝液であり、場合により、(a)粘度を高めるための追加の物質および/または(b)安定化剤をさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリペプチド、例えばdAbが標的分子、例えば肺組織に存在する標的と結合することができる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記標的がTNF受容体、TNFR1、IL-1、IL-1R、IL-4、IL-4R、IL-5、IL-6、IL-6R、IL-8、IL-8R、IL-9、IL-9R、IL-10、IL-12、IL-12R、IL-13、IL-13Rα1、IL-13Ra2、IL-15、IL-15R、IL-16、IL-17R、IL-17、IL-18、IL-18R、IL-23、IL-23R、IL-25、CD2、CD4、CD11a、CD23、CD25、CD27、CD28、CD30、CD40、CD40L、CD56、CD138、ALK5、EGFR、FcER1、TGFb、CCL2、CCL18、CEA、CR8、CTGF、CXCL12 (SDF-1)、キマーゼ、FGF、フーリン、エンドセリン-1、エオタキシン類(例えば、エオタキシン、エオタキシン-2、エオタキシン-3)、GM-CSF、ICAM-1、ICOS、IgE、IFNa、I-309、インテグリン類、L-セレクチン、MIF、MIP4、MDC、MCP-1、MMP類、好中球エラスターゼ、オステオポンチン、OX-40、PARC、PD-1、RANTES、SCF、SDF-1、siglec8、TARC、TGFb、トロンビン、Tim-1、TNF、TNFR1、TRANCE、トリプターゼ、VEGF、VLA-4、VCAM、α4β7、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR7、CCR8、alpha v beta 6、alpha v beta 8、cMET、およびCD8から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ポリペプチドが抗TNF受容体ドメイン抗体(dAb)である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
抗TNF受容体dAbがDom 1h-131、Dom 1h-131-8、Dom 1h-131-24、Dom 1h-131-53、Dom 1h-131-70、Dom 1h-131-83、Dom 1h-131-117、Dom 1h-131-151、Dom 1h-131-511、Dom 1h-131-202、Dom 1h-131-206、Dom 1h-131-201、1h-131-203、1h-131-204、および1h-131-205から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
抗TNF受容体dAbがDOM1h-131-206のアミノ酸配列(図1に示す)と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
抗TNF受容体dAbがDOM1h-131-511のアミノ酸配列(図1に示す)と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記dAbがIL-13と結合し、かつ、例えば図12b (Dom 10-53-474)または図12c (Dom 10-275-78)に開示されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含むか、図12bまたは図12cに開示されるアミノ酸配列に例えば80%の同一性、例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%もしくは97%の同一性を示すアミノ酸配列を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項30】
前記dAbがIL-1R1と結合し、かつ、例えば図12d (Dom 4-130-202)または図12e (Dom 4-130-201)に開示されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含むか、図12dまたは図12eに開示されるアミノ酸配列に例えば80%の同一性、例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%もしくは97%の同一性を示すアミノ酸配列を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項31】
前記dAbがDom 4-130-202のアミノ酸配列(図12dに示す)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記dAbがDom 4-130-201のアミノ酸配列(図12eに示す)と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項30に記載の組成物。
【請求項33】
前記dAbがVEGFと結合し、かつ、例えば図14に開示されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含むか、図14に開示されるアミノ酸配列に例えば80%の同一性、例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を示すアミノ酸配列を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項34】
前記dAbがDOM15-26-593のアミノ酸配列(図14aに示す)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記dAbがDOM15-26-593のアミノ酸配列(図14aに示す)と少なくとも97%同一であるアミノ酸配列を有し、さらに抗体定常領域のドメインを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
前記dAbがIL-13と結合し、かつ、例えば図12b (Dom 10-53-474)または図12c (Dom 10-275-78)に開示されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含むか、図12bまたは図12cに開示されるアミノ酸配列に例えば80%の同一性、例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%もしくは97%の同一性を示すアミノ酸配列を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項37】
前記ポリペプチド、例えばdAbが全身性の標的分子と結合することができ、例えば、全身性の標的分子がヒトもしくは動物タンパク質、サイトカイン、サイトカイン受容体、酵素の補因子、またはDNA結合タンパク質、例えばApoE、Apo-SAA、BDNF、カルジオトロフィン-1、EGF、EGF受容体、ENA-78、エオタキシン、エオタキシン-2、エキソダス-2、EpoR、FGF-酸性、FGF-塩基性、線維芽細胞増殖因子-10、FLT3リガンド、フラクタルカイン(CX3C)、GDNF、G-CSF、GM-CSF、GF-β1、インスリン、IFN-γ、IGF-I、IGF-II、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8 (72アミノ酸)、IL-8 (77アミノ酸)、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18 (IGIF)、インヒビンα、インヒビンβ、IP-10、ケラチノサイト増殖因子-2(KGF-2)、KGF、レプチン、LIF、リンホタクチン、ミュラー管抑制因子、単球コロニー抑制因子、単球誘引タンパク質、M-CSF、MDC (67アミノ酸)、MDC (69アミノ酸)、MCP-1 (MCAF)、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MDC (67アミノ酸)、MDC (69アミノ酸)、MIG、MIP-1α、MIP-1β、MIP-3α、MIP-3β、MIP-4、骨髄系前駆細胞抑制因子-1(myeloid progenitor inhibitor factor-1: MPIF-1)、NAP-2、ニュールツリン、神経成長因子、β-NGF、NT-3、NT-4、オンコスタチンM、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PF-4、RANTES、SDF1α、SDF1β、SCF、SCGF、幹細胞因子(SCF)、TARC、TGF-α、TGF-β、TGF-β2、TGF-β3、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF-α、TNF-β、TNF受容体I、TNF受容体II、TNIL-1、TPO、VEGF、VEGF受容体1、VEGF受容体2、VEGF受容体3、GCP-2、GRO/MGSA、GRO-β、GRO-γ、HCC1、1-309、HER 1、HER 2、HER 3およびHER 4、エキセンディンならびにGLP-1から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項38】
前記dAbがヒトアルブミンと結合することができ、それがエキセンディンまたはGLP分子に連結されている、請求項13に記載の組成物。
【請求項39】
ポリペプチド分子がエキセンディン4 (G4S)3 DOM7h-14融合体(DAT0115)またはdat0115アミノ酸配列に例えば80%の同一性、例えば、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を示す分子である、請求項13に記載の組成物。
【請求項40】
製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む、請求項1〜39のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
医薬において使用するための、請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
ポリペプチド(例えばdAb)を肺に送達するための、または例えばポリペプチドを全身的に送達するための、請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
肺もしくは呼吸器の病態または疾患を治療、予防または診断するための、請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
前記dAbがフォーマット化されたdAbであり、例えば、それがdAb-Fc融合体である、請求項1〜43のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
肺もしくは呼吸器の病態または疾患の治療、予防または診断用の医薬の製造における、請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項46】
肺深部の病態または疾患の治療、予防または診断用の医薬の製造における、請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項47】
ポリペプチドを肺深部の組織に送達するための、請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項48】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物を被験者の肺に直接投与することを含んでなる、所望の分子の被験者への送達方法。
【請求項49】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物を被験者の肺組織に直接投与することを含んでなる、肺疾患または呼吸器障害の治療、予防または診断方法。
【請求項50】
前記組成物を、治療すべき被験者の体重あたり約5mg/kg〜約0.005mg/kgの1日量で投与する、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物を、ネブライザー、吸入器または経鼻器具を用いて被験者に投与する、請求項48〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物を含む、ネブライザー、吸入器または経鼻器具。
【請求項53】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物を被験者の肺組織に送達するための、請求項39に記載のネブライザー、吸入器または経鼻器具の使用。
【請求項54】
(a)請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物を、(b)製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に、混合することを含んでなる、例えば肺の病態もしくは疾患の治療、予防または診断用の、医薬組成物の製造方法。
【請求項55】
(a)ポリペプチドを、(b)約4〜約8のpH範囲を有し、かつ1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有する、生理的に許容される緩衝液、と混合することを含んでなる、例えば肺の病態または疾患の治療、予防または診断用の、ポリペプチド組成物の製造方法。
【請求項56】
前記ポリペプチドがドメイン抗体(dAb)を含むか、またはこれから成る、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
(a)ポリペプチドを生理的に許容される緩衝液と混合し、次に(b)ステップ(a)から得られたポリペプチドと緩衝液の組成物をネブライザー、吸入器または経鼻送達器具に通す、各ステップを含んでなる、請求項1〜40のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項58】
前記生理的に許容される緩衝液が、約4〜約8のpH範囲を有し、かつ1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ポリペプチド組成物、例えば肺送達用のポリペプチド組成物を製造するための、約4〜約8のpH範囲を有しかつ1.2%(w/v)ショ糖を含む50mMリン酸緩衝液中のPEG 1000の約2〜約10%溶液の粘度にほぼ等しい粘度を有する、生理的に許容される緩衝液の使用。
【請求項60】
前記ポリペプチド組成物がドメイン抗体(dAb)を含むか、またはこれから成る、請求項59に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【公表番号】特表2011−506396(P2011−506396A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537443(P2010−537443)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067295
【国際公開番号】WO2009/074634
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】