説明

背光疑似象嵌加飾体

【課題】視認性をよくすることは勿論、昼間は疑似象嵌を呈して高級感を持たせると共に、夜間は光の演出により一層加飾性を高めた背光疑似象嵌加飾体を提供することを目的する。
【解決手段】透明樹脂基材11の一部に不透明アンダーコート層12を全体に、あるいは部分的に形成し、不透明アンダーコート層12や透明樹脂基材11上に少なくとも2個の加飾層13a、13bを隣接して形成し、加飾層13a、13b間の境界に透明樹脂基材11中に達するレーザー加工痕pを形成し、透明樹脂基材11に導光する光をレーザー加工痕p及び/又は加飾層13a、13bを通して視認できる構成にした背光疑似象嵌加飾体10としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、透光樹脂基材に形成した加飾層などの被服層を昼間は象嵌に見せ、夜間はバックライトを透過させて絵模様や文字等を視認できるようにした背光疑似象嵌加飾体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の背光疑似象嵌加飾体に関しては、知られていないが、車載用照光つまみに用いられているものがある(特許文献1参照)。これによれば、透光樹脂層にアンダーコート層及びトップコート層を形成し、レーザー光を用いてアンダーコート層及びトップコート層をカットし、透光樹脂層を露出させた表示部を形成してバックライトにより表示部から透光させている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−14967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のつまみは、レーザー光を何度も往復させる等して幅広の表示部を形成しているため、バックライティングするときには、このつまみが何のものかをよく視認できる。しかしながら、単に視認性が良くなるというに過ぎなかった。
【0005】
そこで、この発明は、視認性をよくすることは勿論、昼間は疑似象嵌を呈して高級感を持たせると共に、夜間は光の演出により一層加飾性を高めた背光疑似象嵌加飾体を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、透明樹脂基材の一部に不透明アンダーコート層を全体に、あるいは部分的に形成し、該不透明アンダーコート層上及び/又は該不透明アンダーコート層が形成されていない前記透明樹脂基材上に少なくとも2個の加飾層を隣接して形成し、前記加飾層間の境界に前記不透明アンダーコート層及び/又は前記加飾層を貫通して前記透明樹脂基材中に達するレーザー加工痕を形成し、前記透明樹脂基材に導光する光を前記レーザー加工痕及び/又は前記加飾層を通して視認できるようにしたことを特徴とする背光疑似象嵌加飾体としている。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1において、前記加飾層に、所望の図柄や文字からなる模様の前記透明樹脂基材中に達するレーザー加工痕を形成したことを特徴とする背光疑似象嵌加飾体としている。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2において、前記加飾層の少なくとも一つは、転写により形成され、他は、転写、塗装、シルク印刷、パッド印刷及びインモールド成形のいずれかで形成されていることを特徴とする背光疑似象嵌加飾体としている。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記光は、LED、白熱球、液晶用蛍光管のいずれかからのものであることを特徴とする背光疑似象嵌加飾体としている。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記レーザー加工痕には、適宜箇所に着色又は無色であって透光又は不透光の樹脂が入れられていることを特徴とする背光疑似象嵌加飾体としている。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記透明樹脂基材の前記加飾層と反対側面に、前記加飾層側に向かって反射させる位置に光反射膜層を形成したことを特徴とする背光疑似象嵌加飾体としている。
【0012】
さらに、請求項7記載の発明は、請求項6において、前記光反射膜層は、メッキ、スパッタリング、金属蒸着、銀鏡反応塗装、イオンプラズマエバポレーション及びインモールド成形のいずれかで形成されていることを特徴とする透光樹脂装飾品としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明は、隣接する加飾層間の境界にレーザー加工痕を形成することにより、象嵌に見せることが出来高級感を与え、夜間などにバックライティングすることにより、無味乾燥な暗い空間が、光の演出で一層加飾性を高めた背光疑似象嵌加飾体を提供することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1の効果に加えて、境界以外に自由に線状刻された模様等がバックライトによって浮かび上がり、より一層装飾効果をあげた背光疑似象嵌加飾体を提供することができる。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の効果に加え、種々の加飾方法の組み合わせが採用できる背光疑似象嵌加飾体を提供することができる。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの効果に加え、種々の光源が採用できると共に、LEDの場合には消費電力が少なく、高輝度であり、全体として小さな
エネルギー消費の背光疑似象嵌加飾体を提供することができる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの効果に加え、あたかも象嵌のように見せたり、模様の一部を異なる色で透過させて見せる背光疑似象嵌加飾体を提供することができる。
【0018】
請求項6及び7の発明は、請求項1〜5のいずれかの効果に加え、弱い光であっても反射によりより有効に模様を浮き出させる背光疑似象嵌加飾体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、この発明の背光疑似象嵌加飾体を自動車の内装パネル等に適用した好適な一実施形態を示す添付図面の図1〜図3に基づいてこの発明を詳細に説明する。ここにおいて、図1はこの発明の一実施形態の背光疑似象嵌加飾体の断面図、図2はこの発明の背光疑似象嵌加飾体の平面図、図3はこの発明の背光疑似象嵌加飾体を自動車の内装パネルに適用した助手席近傍の斜視図である。
【0020】
図1、2に示す背光疑似象嵌加飾体10は、平板だけでなく曲面のあるものでもよく、また種々の装飾品単独でもよいし、家具や乗り物等の一部であってもよい。例えば、自動車20に適用する場合でも、ハンドルの一部、天井、シート等にも適用することができる。ここでは、図3に示すように自動車20の助手席近傍のインストルメントパネル21のグローブボックス22、ドアパネル23などに取り付けられた背光疑似象嵌加飾体10の事例を示すものでる。
【0021】
この背光疑似象嵌加飾体10は、図1に示すような断面をしており、透明樹脂基材11の一部に不透明アンダーコート層12を全体に、あるいは部分的に形成し、この不透明アンダーコート層12上及び/又は不透明アンダーコート層12が形成されていない透明樹脂基材11上に少なくとも2個の加飾層13a、13bを隣接して形成し、これら加飾層13a、13b間の境界に不透明アンダーコート層12及び/又は加飾層13a、13bを貫通して透明樹脂基材11中に達するレーザー加工痕pを形成し、透明樹脂基材11に導光する光18をレーザー加工痕p及び/又は加飾層13a、13bを通して視認できるようにした構成をしている。レーザー加工痕pは、前記境界のみならず、加飾層13a、13bに所望の図柄や文字からなる模様を透明樹脂基材11中に達するように形成しており、図示しないが加工精度、加工位置設定、加工速度などでかなりの満足を得ているレーザー加工装置により点、線状痕の組み合わせでなされている。
【0022】
透明樹脂基材11は、アクリル、ポリカーボネート、PMMAなどの透明合成樹脂製としている。この透明樹脂基材11は曲面を持った複雑なものでも良いが、ここでは平板の例を示している。この透明樹脂基材11の一部には不透明アンダーコート層12が全体にあるいは部分的に塗装で形成され、さらには転写等種々の方法で不透明アンダーコート層12上及び/又は不透明アンダーコート層12が形成されていない透明樹脂基材11上に少なくとも2個の加飾層13a、13bが隣接して形成されている。この積層された不透明アンダーコート層12及び加飾層13a、13bにレーザー光を用いてレーザー加工をし、透明樹脂基材11中に達する点、線状痕からなるレーザー加工痕pを形成している。レーザー加工痕pでもって図2に示すような両加飾層13a、13bの境界や図柄(家、木、星等)や文字からなる模様が形成されている。そして、この加飾層13a、13bの上に透明なトップコート層14を形成して表面を保護して背光疑似象嵌加飾体10としている。加飾面13a、13bの境界にレーザー加工痕pを形成して象嵌のように見せたり、両者を際立たしている。
【0023】
バックライトとしての光18は、光源としてLEDや白熱球や液晶用蛍光管が用いられる。光18は透明樹脂基材11の端面あるいは不透明アンダーコート層12に対面した下面側から導入される。必要ならば、透明樹脂基材11の下面には、塗装やフィルムにより全面的にあるいは部分的に着色膜層15が形成されて無色、有色の光18であってもこれを所望の色にすることが出来る。
【0024】
また、加飾層13a,13bは木目模様、カーボンフェース調、無模様など種々の地模様で構成されている。複数の加飾層13a,13b・・・は、選択的にマスキングしたり、境界にレーザー加工痕pを形成したりして、例えば少なくとも一つは転写により形成され、他は、転写、塗装、シルク印刷、パッド印刷及びインモールド成形のいずれかで形成されている。転写は液圧転写で行われるのが好ましく、インモールド成形は透明樹脂基材11の製品成形時に金属膜、金属蒸着膜を形成することが出来る。
【0025】
この液圧転写は、水を満たした転写槽に転写フィルムを浮かしておき、その転写フィルムの上から転写を必要としない部分をマスキングした基材を押しつけて水中に沈め、水圧によって基材に液圧転写膜を転写させる公知の処理方法である。この方法による転写は、基材の複雑な立体形状にも対応できるとともに、液圧転写膜の厚みは、1〜2ミクロンである。この液圧転写膜による加飾層13a、13bは、厚みが薄く、地模様が濃くなく半透明であれば、レーザー加工痕pによる模様と共に、透光によって模様が浮き出てくる。
【0026】
また、光18を透明樹脂基材11の端面から導入する場合の一例として、2点差線で示す光反射膜層16が形成されている。この光反射膜層16は、透明樹脂基材11の不透明アンダーコート層12を形成しない表面で、外部に透光させる部位、例えば半透膜による加飾層13aの模様、レーザー加工痕pによる境界線や模様等に向かって反射させる位置、すなわち加飾層13a、13bと反対側面に形成されている。また、光反射膜層16は、メッキ、スパッタリング、金属蒸着、銀鏡反応塗装、イオンプラズマエバポレーション及びインモールド成形によって形成されている。なお、着色膜層15が二つの透明樹脂基材11間に挟み着けられる構成にしても良く、一個の透明樹脂基材11に形成されても良い。また、この光反射膜層16とともに、またこの代わりに、透明樹脂基材11の不透明アンダーコート層12の対向する側の面に凹凸を設け、反射を良くするようにしても良い。
【0027】
さらに、レーザー加工痕pは、境界に形成されるだけでなく、図2に示すように家、木、星などの図柄、模様などをも細かく小さい点、細い線などの組み合わせで表現している。そこで、加工細さ、加工速度、加工の再現性等からレーザー加工が適当であり、種々のレーザーのうち、例えば炭酸ガスレーザーで、パワーを調整することにより、70〜150ミクロンの小さな点、極細の幅の線に形成されている。このレーザー加工痕pには、何も充填しないか、有色、適宜箇所に着色又は無色の透光又は不透光の樹脂、あるいは透光又は不透光のインキや塗料が充填されている。
【0028】
以上のように構成された背光疑似象嵌加飾体10は、その制作は前述のように、簡単で早く、正確に行われる。また、その適用と使用の説明を以下に行う。
まず、背光疑似象嵌加飾体10の適用事例は、前述したが、ここでは自動車20に適用した事例で説明する。
【0029】
図3に示すように、背光疑似象嵌加飾体10は、グローブボックス22のリッドあるいはドアパネル23のグローブボックス22の高さとほぼ同じ高さの位置に、すなわち、この高さの車室内を取り巻くように装着されている。場合によっては、絵柄模様等が代えられるように着脱可能に装着されている。
【0030】
これら背光疑似象嵌加飾体10は、図外のライトスイッチと連動し、ライト点灯時に光18が点、線状痕からなるレーザー加工痕pを透光して絵模様、加飾層13の模様等を浮かび上がらせ夜間の無味乾燥なドライブを光の演出で高級感を与え、楽しませることが出来る。LED等を異なる色、多くの個数を使い、所望の模様位置からそれぞれに会った光18を出し、あるいはシーケンシャルに動きのある発光も可能である。照明しない昼間は、境界に形成したレーザー加工痕pにより加飾層13a、13bのいずれかが他のものにあたかも象嵌された高級な象嵌細工のように見え、車格の向上が図れる。
【0031】
次に、この発明の他の実施形態の背光疑似象嵌加飾体を図4に基づいて説明する。この背光疑似象嵌加飾体は、自動車内装品としてトルクコンバータ車のシフトレバーでの駆動選択位置を示す表示板である。以下、前述の実施形態と同じことは、説明を省略し、この実施形態に特有のことを中心に説明する。
【0032】
この背光疑似象嵌加飾体10は、一例として矩形平板状の透明樹脂基材11の一部、ここでは表面に不透明アンダーコート層12が内側の矩形内を抜いた部分に形成され、さらにその上には加飾層13aが形成されている。内側の矩形内には、透明樹脂基材11の上に加飾層13bが形成されている。この加飾層13bの中央部には小円が5個連なって形成されるていて透明樹脂基材11が露出している。さらに小円5個のそれぞれの中心には、P、R、N、D、Lの文字が色を変えたり、模様無しにしても良いが、例えば加飾層13bと同じ模様で形成されている。
【0033】
加飾層13aと加飾層13bとの境界、連なった小円5個の外形線及びP、R、N、D、Lの文字の外形線は、透明樹脂基材11中に達するレーザー加工痕pで形成されている。この加飾層13a、13bの形成には必要に応じてマスキングしたり、転写などを繰り返して行われる。加飾層13a、13b等の保護のため、さらにこの上にトップコート層が形成される。
【0034】
このような背光疑似象嵌加飾体10は、光を投光しない日中などは、境界によって象嵌のように見え、高級感を与え、加飾層13a、13bの模様が反射光によって視認できる。また、これにバックライティングすると、加飾層13a、13bが不透光の場合には露出した透明樹脂基材11から透光し、加飾層13a、13bは反射光によって模様等が視認される。加飾層13bが液圧転写など薄膜で形成されているときには、露出した透明樹脂基材11から透光するとともに、加飾層13bからも透光して模様や文字等が視認される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施形態の背光疑似象嵌加飾体の断面図である。
【図2】この発明の背光疑似象嵌加飾体の平面図である。
【図3】この発明の背光疑似象嵌加飾体を自動車の内装パネルに適用した助手席近傍の斜視図である。
【図4】この発明の他の実施形態の背光疑似象嵌加飾体の平面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 背光疑似象嵌加飾体
11 透明樹脂基材
12 アンダーコート層
13a、13b 加飾層
14 トップコート層
15 着色膜層
16 光反射膜層
18 光
20 自動車
21 インストルメントパネル
22 グローブボックス
23 ドアパネル
p レーザー加工痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂基材の一部に不透明アンダーコート層を全体に、あるいは部分的に形成し、該不透明アンダーコート層上及び/又は該不透明アンダーコート層が形成されていない前記透明樹脂基材上に少なくとも2個の加飾層を隣接して形成し、前記加飾層間の境界に前記不透明アンダーコート層及び/又は前記加飾層を貫通して前記透明樹脂基材中に達するレーザー加工痕を形成し、前記透明樹脂基材に導光する光を前記レーザー加工痕及び/又は前記加飾層を通して視認できるようにしたことを特徴とする背光疑似象嵌加飾体。
【請求項2】
請求項1において、
前記加飾層に、所望の図柄や文字からなる模様の前記透明樹脂基材中に達するレーザー加工痕を形成したことを特徴とする背光疑似象嵌加飾体。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記加飾層の少なくとも一つは、転写により形成され、他は、転写、塗装、シルク印刷、パッド印刷及びインモールド成形のいずれかで形成されていることを特徴とする背光疑似象嵌加飾体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記光は、LED、白熱球、液晶用蛍光管のいずれかからのものであることを特徴とする背光疑似象嵌加飾体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記レーザー加工痕には、適宜箇所に着色又は無色の透光又は不透光の樹脂が入れられていることを特徴とする背光疑似象嵌加飾体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記透明樹脂基材の前記加飾層と反対側面に、前記加飾層側に向かって反射させる位置に光反射膜層を形成したことを特徴とする背光疑似象嵌加飾体。
【請求項7】
請求項6において、
前記光反射膜層は、メッキ、スパッタリング、金属蒸着、銀鏡反応塗装、イオンプラズマエバポレーション及びインモールド成形のいずれかで形成されていることを特徴とする背光疑似象嵌加飾体。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−23922(P2008−23922A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201382(P2006−201382)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(505156891)ナガシマ工芸株式会社 (9)
【Fターム(参考)】