説明

能動型音響制御システム及びプログラム

【課題】従来技術のように、専用の能動型音響制御装置を準備する必要がなく、低コストで、小型・軽量で汎用性のある能動型音響制御システム及び能動型音響制御プログラムを提供する。
【解決手段】マイクロホン22、ANC機能制御プログラムとANC機能制御プログラムの実行の要否を判定するプログラムを記憶するメモリ26、及び前記ANC機能制御プログラムを実行するマイクロコンピュータ18、を備えるスマートフォン12が、車両100の車室内に設けられたクレードル14に装着されていることを前記マイクロコンピュータ18により検出すると、前記マイクロコンピュータ18が前記ANC機能制御プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、能動型騒音制御装置及び能動型効果音発生装置のうち、少なくとも1つの装置を備える能動型音響制御システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車室内の騒音に関連して音響を制御する装置として、能動型騒音制御装置(Active Noise Control Apparatus)(以下「ANC装置」という。)と、能動型効果音発生装置(Active Sound Control Apparatus)(以下「ASC装置」という。)が知られている。
【0003】
ANC装置は、例えば、エンジンの作動(振動)に応じて車室内に生ずる騒音(エンジンこもり音)や、車両走行中における車輪と路面との接触によって車室内に生ずる騒音(ロードノイズ)等の騒音に対する相殺音を発生させて前記騒音を低減する。
【0004】
また、ASC装置は、例えば、前記エンジンこもり音に同期した効果音(擬似エンジン音)を発生させることで、車両の速度変化を強調する等、車室内の音響効果を高める。
【0005】
ところで、ANC装置やASC装置を低コストでユーザに供給するために、上記した相殺音あるいは効果音は、車載オーディオ装置等の車載娯楽装置の車載スピーカを共用して発生するように構成されている(特許文献1)。
【0006】
なお、ANC装置やASC装置の処理機能は、例えば、特許文献2等により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−261518号公報
【特許文献2】特開2008−230341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、単体としてのANC装置搭載基板、又は単体としてのASC装置搭載基板にコネクタが設けられる一方、車載娯楽装置搭載基板に前記コネクタと嵌合するコネクタが設けられ、車載娯楽装置搭載基板のコネクタにANC装置搭載基板のコネクタ又はASC装置搭載基板のコネクタが装着されることで、前記車載娯楽装置のスピーカを利用して、能動型騒音制御又は能動型効果音発生制御が行われるように構成されている。
【0009】
ところで、上述したコネクタが設けられたANC装置搭載基板、あるいはコネクタが設けられたASC装置搭載基板は、車両用オプションとしてユーザに提供されるが、その車両に適合した専用品であるため、絶対的な数量が少なくコストが高いという問題がある。また、ANC装置の機能実行のために必要とされるマイクロホンも専用品として前記車室内又は前記ANC装置搭載基板に装備しておく必要がありコスト高を招き、ANC装置の普及の制限要件の一つとなっている。
【0010】
この発明は、上記の課題を考慮してなされたものであり、低コストで、小型・軽量で汎用性の高い能動型音響制御システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る能動型音響制御システムは、音検出部、能動型音響制御プログラムを記憶する記憶部、及び前記能動型音響制御プログラムを実行するコンピュータ、を備える携帯端末と、車両の室内に設けられ、前記携帯端末が着脱可能なクレードルと、前記クレードルに接続された車載スピーカと、から構成され、前記コンピュータは、前記音検出部の出力信号を取り込んで前記能動型音響制御プログラムを実行し、前記車載スピーカを通じて相殺音として出力させる制御信号を生成するものであり、前記コンピュータは、前記携帯端末が前記クレードルに装着されていることを検出すると、前記能動型音響制御プログラムを実行することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、音検出部、能動型音響制御プログラムを記憶する記憶部、及び前記能動型音響制御プログラムを実行するコンピュータ、を備える携帯端末が、車室内に設けられたクレードルに装着されていることを前記コンピュータにより検出すると、前記コンピュータが前記能動型音響制御プログラムを実行するので、低コストで、小型・軽量の能動型音響制御システムを提供することができる。
【0013】
この場合、前記携帯端末は、内部バッテリを備え、前記クレードルには、車載バッテリから電源が供給される。従って、前記携帯端末が前記クレードルに装着されると、前記携帯端末に対して前記車載バッテリから前記電源の供給が行われる。前記携帯端末の前記コンピュータは、前記携帯端末が前記車載バッテリから前記電源が供給されていることに基づき、前記携帯端末が前記クレードルに装着されていると検出することができる。
【0014】
なお、能動型音響制御システムをANC装置として作動させる場合、車室内のクレードルに装着された携帯端末の音検出部と、車載スピーカとを利用して、前記携帯端末のコンピュータにより能動型音響制御プログラムを実行することで能動型音響制御機能を実現することができるのでANC装置の機能が廉価となりANC装置普及の敷居を低くすることができるとともに、音検出部の位置と車載スピーカの位置とが固定されていることから、安定的な消音効果を得ることができる。
【0015】
また、前記携帯端末は、外部のサーバ装置と通信可能な通信部を備え、前記外部のサーバ装置から前記車両に適合した制御特性(音検出部と車載スピーカとの間の伝達特性を含む。)をダウンロードするように構成することで、前記携帯端末により簡易に当該車両に適合した能動型音響制御を実現することができる。
【0016】
この発明に係るプログラムは、車載スピーカを備える車室内に設けられたクレードルに着脱可能で、音検出部と、当該音検出部と前記車載スピーカとを利用して能動型音響制御機能を実現させる能動型音響制御プログラムと、を有する携帯端末に内蔵されたコンピュータにより実行されるプログラムであって、前記コンピュータに、前記携帯端末が前記クレードルに装着されているか否かを判定させる手順と、前記携帯端末が前記クレードルに装着されていると判定したとき、前記能動型音響制御プログラムを実行させる手順と、を実行させる。
【0017】
この発明によれば、携帯端末に、前記プログラムを載せる(インストールする)だけで、携帯端末の音検出部と車載スピーカとを用いて車室内の能動型音響制御を実現することができる。すなわち、携帯端末がクレードルに装着されているか否かを判定させ、携帯端末の音検出部が特定の位置に固定されたときのみコンピュータにより能動型音響制御プログラムが実行されるので、安定的に消音効果を得ることができる。
【0018】
この発明に係る前記プログラムを実行するコンピュータを有する携帯端末もこの発明に含まれる。
【0019】
なお、携帯端末としては、携帯電話の他、例えば、電子メール機能やインターネットブラウザ機能等の付加的なソフトウエア機能を含むスマートフォンを利用することができる。そのようなスマートフォンもこの発明に含まれる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、携帯端末を利用した、低コストで、小型・軽量で汎用性の高い能動型音響制御システムを実現することができる。
【0021】
すなわち、音検出部、能動型音響制御プログラムを記憶する記憶部、及び前記能動型音響制御プログラムを実行するコンピュータ、を備える携帯端末が、車室内に設けられたクレードルに装着されていることを前記コンピュータにより検出すると、前記コンピュータが前記能動型音響制御プログラムを実行するので、低コストで、小型・軽量で汎用性の高い能動型音響制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施形態に係る能動型音響制御システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】車室内のクレードルの設置位置の例を示す一部省略斜視図である。
【図3】車載スピーカ位置、クレードル位置、及びエンジン位置等を概略的に描いた車両の模式的側面図である。
【図4】ANCプログラムのコンピュータによる実行によって実現されるANC機能を含む能動型音響制御システムの概略的な構成を示す機能ブロック図である。
【図5】ANCプログラムを実行するコンピュータにより実行される、スマートフォンに格納されたプログラムの概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明に係る能動型音響制御システムについて、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【0024】
図1は、この発明の一実施形態に係る能動型音響制御システム10の概略的な構成を示すブロック図である。
【0025】
図2は、車室内のクレードル14の設置位置例を示す一部省略斜視図である。
【0026】
図3は、車載スピーカ16の位置、クレードル14の位置、及びエンジンEの位置等を概略的に描いた車両の模式的側面図である。
【0027】
能動型音響制御システム10は、ANC装置及びASC装置双方の機能を併せて持たせているが、この実施形態では主にANC装置の機能(ANC機能という。)について説明する。
【0028】
この実施形態に係る能動型音響制御システム10は、基本的には、電子メール機能やインターネットブラウザ機能等の付加的なソフトウエア機能を含む携帯端末(携帯電話)であるスマートフォン12と、車両100の室内に設けられスマートフォン12が着脱可能なクレードル14と、クレードル14に接続される車載スピーカ16とから構成される。車載スピーカ16は、前ドアのキックパネル部に設けられている。
【0029】
この実施形態において、スマートフォン12用の支持装置であるクレードル14は、図2、図3に示すように、ダッシュボード102上に、スマートフォン12が着脱可能に設けられている。スマートフォン12は、クレードル14のスロット部15に対して挿入乃至排出される。すなわち、クレードル14(のスロット部14)は、スマートフォン12に対して着脱自由に構成している。機種が異なり寸法等が異なるスマートフォン12を着脱自由とするためにアダプタを設けてもよい。なお、クレードル14は、ダッシュボード102上に設けることに限らず、運転席と助手席との間のインナールーフ上の位置や、バックミラーの上部位置等に設けても良い。
【0030】
スマートフォン12とクレードル14とは、各コネクタ42、44を通じて電気的に接続される。
【0031】
図1に示すように、スマートフォン12は、マイクロコンピュータ18を内蔵し、このマイクロコンピュータ18に接続されるタッチパネル等の操作入力部兼用表示パネル(以下、単に、表示パネルともいう。)20を備える。さらに、スマートフォン12は、音検出部として機能するマイクロホン22と、音声を含むオーディオ出力用のスピーカ24と、メモリ26(記憶部)と、通信部28と、電源スイッチ(電源SW)30と、を備える。
【0032】
スマートフォン12は、さらにまた、内部バッテリ32と、充電回路34と、電圧調整回路36と、プルダウン抵抗器である抵抗器38とを備える。
【0033】
マイクロホン22は、スマートフォン12を携帯電話として使用する場合には、音声入力用として使用され、スマートフォン12を能動型音響制御システム10の構成要素として使用する場合には、エンジン騒音等の車室内騒音を検出する騒音入力用として使用される。
【0034】
メモリ26には、ANC機能を実現するための制御プログラムを格納する領域(ANC機能制御プログラム格納部という。)26Aと、ANC機能制御プログラムを実行するか否かを判定するためのプログラムを格納する領域(実行要否判定機能制御プログラム格納部という。)26Bと、当該クレードル14が設けられた車両を含む車両の補正フィルタ{マイクロホン22(クレードル14の位置で代用)と車載スピーカ16との間の伝達特性であって、ANC機能の制御特性ともいう。}を車名・型式をインデックスとしたデータとして格納する領域(補正フィルタ格納部という。)26C等が記憶される。
【0035】
なお、マイクロコンピュータ18がANC機能制御プログラムを実行する際には、実行要否判定機能制御プログラムを必ず実行するので、これらのプログラムは、マージしてANC制御プログラムとしてメモリ26に格納してもよい。この実施形態では、発明の理解の便宜のために、上記したように、メモリ26の別の領域に分けて格納するようにしている。
【0036】
通信部28は、図示しない移動通信網を通じて外部サーバ装置40等に接続する無線通信機能を有する。
【0037】
交換自由な内部バッテリ32は、電圧Vb2の電源を供給する。充電回路34は、車両100からクレードル14を通じて供給される電圧Vc1の電源を充電電源として内部バッテリ32を充電する。
【0038】
電圧調整回路36は、前記電圧Vb2を電圧Vc2に変換し、変換した電圧Vc2の電源をマイクロコンピュータ18他、スマートフォン12の各構成要素に供給する。抵抗器38は、マイクロコンピュータ18に対し、電圧Vc1の電源のスマートフォン12への供給の有無を判断するために設けられている。
【0039】
一方、車両100は、車載電子制御装置{以下、車載ECU(Electronic Control Unit)という。}50を有し、この車載ECU50に対し、音源52、燃料噴射制御装置{以下、FI−ECU(FI−ECU:Fuel Injection − Electronic Control Unit)という。}54、電圧調整回路56の出力側、及び増幅器58の入力側が接続されている。電圧調整回路56の入力側は、車載バッテリ60に接続されている。電圧調整回路56は、車載バッテリ60から供給される電圧Vb1の電源を電圧Vc1の電源に変換して車載ECU50等の車載装置に供給するとともに、コネクタ44及びコネクタ42を通じてクレードル14からスマートフォン12に供給する。
【0040】
音源52は、ハードディスクプレイヤ、CDプレイヤ、及びラジオ等であり、これらの1つから発生されるオーディオ信号が、車載ECU50及び増幅器58を通じて車載スピーカ16に供給され、車載スピーカ16から楽音として車室内に流される。
【0041】
スマートフォン12のマイクロコンピュータ18は、メモリ26に格納されている上述した実行要否判定制御プログラムやANC機能制御プログラムを条件が揃ったときに適宜実行する。
【0042】
マイクロコンピュータ18によりメモリ26のANC機能制御プログラム格納部26Aに格納されているANC機能制御プログラムが実行されると、図4に示すように、エンジン回転周波数検出回路72、基準信号生成回路74、及びANC回路76からなるフィードフォワード型のANC機能(ANC本体部機能ともいう。)78が実現され、この場合、ANC機能は、さらに、スマートフォン12のマイクロホン22、車両100の増幅器58及び車載スピーカ16等の入出力機器により補完されて機能が達成される。
【0043】
エンジンルーム内に配置されるエンジンEに対し、該エンジンEの燃料噴射を制御するFI−ECU54から、車載ECU50、クレードル14のコネクタ44、及びスマートフォン12のコネクタ42、を通じてANC機能78を実現しているマイクロコンピュータ18のエンジン回転周波数検出回路72にエンジンパルスEpが入力される。
【0044】
(ANC装置)
能動型音響制御システム10における前記ANC装置としての処理は、例えば、特許文献2に記載された処理を基本的に用いることができる。
【0045】
すなわち、エンジンパルスEpの周波数(エンジン回転周波数fe)[Hz]を周波数カウンタ等のエンジン回転周波数検出回路72で検出する。次に、基準信号生成回路74において、前記エンジン回転周波数feに基づいて余弦波及び(又は)正弦波の基準信号Srを生成する。さらに、ANC回路76の適応フィルタ82において、基準信号Srに対して適応フィルタ処理を施す。適応フィルタ処理後の制御信号をD/A変換器(図示せず)によりアナログ変換し、アナログ処理後の制御信号を加算器80として機能している車載ECU50(図4参照)を通じて増幅器58に供給し、増幅器58により制御信号が増幅された相殺信号に基づく相殺音を車載スピーカ16から出力する。エンジンEの作動に伴う騒音と前記相殺音との誤差(残留騒音成分)をマイクロホン22において検出し、誤差信号eとして出力する。
【0046】
適応フィルタ82で用いるフィルタ係数は、ANC回路76の補正フィルタ84において伝達関数処理を施した基準信号Srと、マイクロホン22からの誤差信号eとを用いて最小二乗法(LMS)アルゴリズム演算を行うANC回路76のフィルタ係数更新回路86において更新される。
【0047】
このようにして、ANC装置としての処理が行われる。
【0048】
なお、車載ECU50とFI−ECU54とは、CAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を通じて相互にデータ通信される。
【0049】
基本的には以上のように構成されかつ動作する能動型音響制御システム10について、次に上述した実行要否判定機能制御プログラム格納部26Bに格納されているANC機能制御プログラムを実行するか否かを判定するためのプログラム(実行要否判定機能制御プログラム)の実行動作について、図5に示す実行要否判定機能制御プログラム(上述したように、ANC機能制御プログラムと実行要否判定機能制御プログラムを併せて、理解の便宜のために、能動型音響制御プログラムともいう。)の概略フローチャートを参照して説明する。
【0050】
スマートフォン12のマイクロコンピュータ(以下、単に、コンピュータともいう。)18は、ステップS1において、自身(スマートフォン12)の電源スイッチ30がオン状態にされている否かを検出する。
【0051】
電源スイッチ30がオン状態にされたとき、内部バッテリ32から電圧調整回路36を通じてコンピュータ18を含むスマートフォン12の内部回路全体に電源の供給が開始される。
【0052】
ステップS1の判定において、電源スイッチ30がオン状態とされているとき、ステップS2において、コンピュータ18は、抵抗器38が接続されているポートの電源状態を検出する。
【0053】
そして、ステップS3において、コンピュータ18は、車両100の車載バッテリ60に基づく外部電源の接続があるか否かを判定する。具体的には、車両100の車載バッテリ60から電圧調整回路56及びクレードル14を通じて電圧Vc1の電源が供給されているか否かを判定し、電圧がゼロ値(ゼロボルト)であって、電圧Vc1の電源が車載バッテリ60(車両100)から供給されていないと判定した場合には、ステップS4においてANC機能制御プログラムを停止させる。この場合、スマートフォン12は、クレードル14のスロット部15に装着されていない。
【0054】
その一方、ステップS3の判定において、電圧が電圧Vc1の電源がスマートフォン12の充電回路34に供給されていることを検出し、電源が車載バッテリ60から供給されていると判断した場合(スマートフォン12が、クレードル14のスロット部15に装着されている場合)には、ステップS4において、ANC機能制御プログラムが停止中であるか否かを検出する。
【0055】
電源が車載バッテリ60からスマートフォン12の充電回路34に供給されているとステップS3で判断した後の最初のステップ4の処理判定は肯定的となる。
【0056】
なお、ステップS3において、外部電源の接続があると判定された場合、車載バッテリ60からの電圧Vb1が電圧調整回路56により調整された電圧Vc1の電源により充電回路34が内部バッテリ32に対する充電を行い、内部バッテリ32からの電圧Vb2の電源が電圧調整回路36に供給され、電圧調整回路36で調整された電圧Vc2の電源がコンピュータ18を含むスマートフォン12の全体に供給される。換言すれば、スマートフォン12がクレードル14に装着されて(ステップS3:YES)スマートフォン12の電源スイッチ30がオン状態にされると(ステップS1:YES)、車載バッテリ60から電圧調整回路56及び充電回路34を通じて内部バッテリ32が充電され、充電されている内部バッテリ32からスマートフォン12の全体に電源が供給されるので、スマートフォン12は、実質的に、車載バッテリ60から電源が供給されるようになる。なお、車載バッテリ60から電源が供給されるのは、車両100用の図示しないイグニッションスイッチがオン状態とされているときである。
【0057】
図5のフローチャートでは、スマートフォン12の電源スイッチ30をオン状態としたときに、プログラムの実行を開始するようになっているが、これに限らず、電源スイッチ30がオフ状態となっていても、ステップS2の処理からプログラムを実行し、スマートフォン12がクレードル14に装着されたときにスリープ状態にあるコンピュータ18が電圧Vc1を検出したときに、電源スイッチ30を自動的にオン状態とし、コンピュータ18がウェイクアップ状態となるようにプログラムを変更することもできる。
【0058】
なお、ステップS3の処理では、コンピュータ18が電圧Vc1を検出するのに代替して、クレードル14にフォトインタラプタを搭載し、このクレードル14に携帯端末としてのスマートフォン12が装着(挿入)されたときに、スマートフォン12のケーシングにより前記フォトインタラプタの光通路が遮断されると、それを検出した車載ECU50が、コネクタ44、42を通じて、スマートフォン12のコンピュータ18に接続されている特定のポートがローレベルからハイレベルに遷移する信号を送ることで、コンピュータ18は、その信号を受けたとき、車載バッテリ60に基づく外部電源の接続が有ると判定するようにしてもよい。
【0059】
次いで、ステップS5において、コンピュータ18は、車載ECU50から車両100の車名と型式を取得する。
【0060】
次に、ステップS6において、コンピュータ18は、補正フィルタ格納部26Cを参照し、ステップS5で取得した車名と型式に該当する補正フィルタ84が格納されているか否かを判定する。
【0061】
ステップS5で取得した車名と型式に該当する補正フィルタ84が補正フィルタ格納部26Cに格納されていない場合には、ステップS7において、コンピュータ18は、通信部28を介して外部サーバ装置40にアクセスし、外部サーバ装置40から前記車名と前記型式に該当する補正フィルタ84を通信により取得して(ダウンロードして)補正フィルタ格納部26Cに格納する。
【0062】
ステップS6の判定が肯定的であった場合、又は外部サーバ装置40から補正フィルタ84を取得した場合(ステップS7の処理)、ステップS8において、コンピュータ18は、ANC機能制御プログラム格納部26AからANC機能制御プログラムを読み出し上述した(ANC装置)の処理に係わるANC機能制御プログラムを実行する。
【0063】
以降、電源スイッチ30がオン状態であって、スマートフォン12がクレードル14に装着された状態が継続されている場合には、ステップS1肯定、ステップS2の処理、ステップS3肯定、ステップS4の判定が否定とされるので、ステップS8のANC機能制御プログラムの実行が継続される。
【0064】
その一方、電源スイッチ30がオン状態であってANC機能制御プログラムの実行を継続中に、スマートフォン12がクレードル14から取り外された場合、ステップS2で検出される抵抗器38の両端の電圧により判定される電源状態は、電圧がゼロ値と検出されるので、ステップS3での判定が否定的とされ、ステップS9にて、ANC機能制御プログラムの実行が停止される。
【0065】
以上説明したように上述した実施形態に係る能動型音響制御システム10は、マイクロホン22、ANC機能制御プログラムと当該ANC機能制御プログラムの実行の要否を判定するプログラムを記憶するメモリ26(26A、26B、26C)、及びANC機能制御プログラム(実行要否判定機能制御プログラムを含む)を実行するコンピュータ18、を備えるスマートフォン12と、車両100の室内に設けられ、スマートフォン12が着脱可能なクレードル14と、クレードル14に接続された車載スピーカ16と、から構成され、コンピュータ18は、マイクロホン22の誤差信号eを取り込んで前記ANC機能制御プログラムを実行し、車載スピーカ16を通じて相殺音として出力させる制御信号を生成するものであり、コンピュータ18は、スマートフォン12がクレードル14に装着されていることを検出すると、前記能ANC機能制御プログラムを実行するように構成されている。
【0066】
この実施形態によれば、マイクロホン22、前記ANC機能制御プログラムと前記ANC機能制御プログラムの実行の要否を判定するプログラムを記憶するメモリ26、及び前記ANC機能制御プログラムを実行するコンピュータ18、を備えるスマートフォン12が、車室内に設けられたクレードル14に装着されていることをコンピュータ18により検出すると、コンピュータ18が前記ANC機能制御プログラムを実行するようにしていることから、従来技術のように、専用の能動型音響制御装置を使用する必要がなく、低コストで、小型・軽量で汎用性のある能動型音響制御システム10を提供することができる。
【0067】
この場合、スマートフォン12がクレードル14に装着され、マイクロホン22が特定の位置(所定の位置)に固定されたときのみコンピュータ18により能動型音響制御プログラムが実行されるので、安定的に消音効果を得ることができる。すなわち、マイクロホン22の位置と車載スピーカ16の位置とが固定されていることから、安定的に消音効果を得ることができる。
【0068】
なお、スマートフォン12は、外部サーバ装置40と通信可能な通信部28を備え、外部サーバ装置40から車両100の車名及び型式に適合した補正フィルタ84{制御特性(マイクロホン22と車載スピーカ16との間の伝達特性を含む。)}をダウンロードするように構成しているので、スマートフォン12により簡易に当該車両100に適合したANC機能制御を実現することができる。
【0069】
スマートフォン12に、ANC機能制御プログラムを載せるだけで、スマートフォン12のマイクロホン22と車載スピーカ16とを用いて車室内のANC機能制御を実現することができるので、ANC機能を低コストで提供することが可能になり、車両の快適性を高めるANC機能の普及に貢献することができる。
【0070】
なお、この発明は、上述した実施形態に限らず、例えば、フィードフォワード型のANC機能78に代替して、マイクロホン22で受音したエンジン騒音信号からエンジン騒音信号の周波数に依存して位相量が可変される可変移相器とエンジン騒音信号の周波数に依存して利得が可変される可変増幅器を用いて制御信号を生成し、生成した前記制御信号を増幅器58を通じて相殺信号としスピーカ16から相殺音として出力させるフィードバック型のANC機能にする(オーディオ信号は、公知のエコーキャンセラでキャンセルする構成としてもよい。)等、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採りうることができる。
【符号の説明】
【0071】
10…車両用能動型音響制御システム 12…スマートフォン
14…クレードル 15…スロット部
16…車載スピーカ
18…マイクロコンピュータ(コンピュータ)
22…マイクロホン 26…メモリ
26A…ANC機能制御プログラム格納部
26B…実行要否判定機能制御プログラム格納部
26C…補正フィルタ格納部 38…抵抗器
78…ANC機能 100…車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音検出部、能動型音響制御プログラムを記憶する記憶部、及び前記能動型音響制御プログラムを実行するコンピュータ、を備える携帯端末と、
車両の室内に設けられ、前記携帯端末が着脱可能なクレードルと、
前記クレードルに接続された車載スピーカと、から構成され、
前記コンピュータは、前記音検出部の出力信号を取り込んで前記能動型音響制御プログラムを実行し、前記車載スピーカを通じて相殺音として出力させる制御信号を生成するものであり、
前記コンピュータは、前記携帯端末が前記クレードルに装着されていることを検出すると、前記能動型音響制御プログラムを実行する
ことを特徴とする能動型音響制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の能動型音響制御システムにおいて、
前記携帯端末は、内部バッテリを備え、
前記クレードルには、車載バッテリから電源が供給され、前記携帯端末が前記クレードルに装着されると、前記携帯端末に対して前記車載バッテリから前記電源の供給を行うことが可能となるものであり、
前記コンピュータは、
前記携帯端末が前記車載バッテリから前記電源が供給されていることに基づき、前記携帯端末が前記クレードルに装着されていると検出する
ことを特徴とする能動型音響制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の能動型音響制御システムにおいて、
前記携帯端末は、
外部のサーバ装置と通信可能な通信部を備え、前記外部のサーバ装置から前記車両に適合した制御特性をダウンロードする
ことを特徴とする能動型音響制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の能動型音響制御システムにおいて、
前記携帯端末は、電子メール機能やインターネットブラウザ機能等の付加的なソフトウエア機能を含むスマートフォンである
ことを特徴とする能動型音響制御システム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の携帯端末又は請求項4に記載のスマートフォン。
【請求項6】
車載スピーカを備える車室内に設けられたクレードルに着脱可能で、音検出部と、当該音検出部と前記車載スピーカとを利用して能動型音響制御機能を実現させる能動型音響制御プログラムと、を有する携帯端末に内蔵されたコンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記携帯端末が前記クレードルに装着されているか否かを判定させる手順と、
前記携帯端末が前記クレードルに装着されていると判定したとき、前記能動型音響制御プログラムを実行させる手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項7】
請求項6記載のプログラムにおいて、
前記携帯端末が前記クレードルに装着されているか否かを判定させる前記手順は、
前記クレードルを通じて車載バッテリに基づく外部電源が前記携帯端末に供給されているか否かを検出させ、前記車載バッテリに基づく前記外部電源が供給されていると検出したときに、前記携帯端末が前記クレードルに装着されていると判定させ、前記車載バッテリに基づく前記外部電源が供給されていないと検出したときに、前記携帯端末が前記クレードルに装着されていないと判定させる手順である
プログラム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のプログラムにおいて、
前記携帯端末が前記クレードルに装着されていると判定したとき、前記能動型音響制御プログラムを実行させる前記手順を実行させる前に、
前記能動型音響制御プログラムを実行させるために必要な前記音検出部と前記車載スピーカとの間の伝達特性データが前記携帯端末のメモリに格納されているか否かを判定させる手順と、
前記伝達特性データが前記携帯端末のメモリに格納されていないときには、当該車両に適合した前記伝達特性データを、外部のサーバ装置から前記携帯端末の無線通信部を通じてダウンロードさせる手順と、
を実行させるプログラム。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のプログラムが載せられた前記携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131244(P2012−131244A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282567(P2010−282567)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】