説明

能動型騒音制御装置及び車両

【課題】振動騒音の打消し効果を高く維持しつつ、部品点数の削減及び製品コストの低減を実現することができる能動型騒音制御装置及びこれを搭載した車両を提供する。
【解決手段】車両10に搭載された能動型騒音制御(ANC)装置12では、いわゆる適応制御により、振動騒音の打消音CSを出力する。ANC装置12は、ダンパスプリング48の上側に設けられたばね上加速度センサ16が検出したばね上加速度Azと、ダンパ46に設けられたダンパ変位センサ18が検出したダンパ変位量Szを2階微分したダンパ加速度Aszとに基づいて、適応制御で用いる参照信号Sb1、Sb2を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動騒音に対する打消音を発生させて該振動騒音を低減する能動型騒音制御装置及びこれを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内の振動騒音に関連して音響を制御する装置として、能動型騒音制御装置(Active Noise Control Apparatus)(以下「ANC装置」と称する。)が知られている。ANC装置では、振動騒音に対する逆位相の打消音を車室内のスピーカから出力することにより、前記振動騒音を低減する。また、振動騒音と打消音の誤差は、乗員の耳位置近傍に配置されたマイクロフォンにより残留騒音として検出され、その後の打消音の決定に用いられる。ANC装置には、例えば、車両の走行中に車輪と路面とが接触することに伴って車室内に生ずる振動騒音(ロードノイズ)を低減するものがある(特許文献1)。ロードノイズの発生メカニズムは非常に複雑であるが、例えば、図6のような経路でロードノイズが乗員の耳位置に届く。
【0003】
特許文献1では、サスペンションのロアアームに2つの振動センサを設け、車両の前後方向及び左右方向の振動を検出し、検出した振動に基づいて打消音を生成する(例えば、特許文献1の段落[0016]、[0017]、図4参照)。また、特許文献1では、高いコヒーレンスを得るための変形例として、ロアアームに3つの振動センサを設け、車両の前後方向、左右方向及び上下方向の振動を検出し、検出した振動に基づいて打消音を生成することも示されている(特許文献1の段落[0030]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−265471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、振動検出用に2つ又は3つの振動センサを用いることで、振動騒音の比較的高い打消し効果を得ることができる。しかしながら、振動騒音の打消しのためだけに振動センサを設けると、その分、部品点数が増えると共に製品コストが増加してしまう。
【0006】
この発明は、このような問題を考慮してなされたものであり、振動騒音の打消し効果を高く維持しつつ、部品点数の削減及び製品コストの低減を実現することができる能動型騒音制御装置及びこれを搭載した車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る能動型騒音制御装置は、路面入力に基づく参照信号を生成する参照信号生成器と、前記参照信号を用いた適応フィルタ処理を行って、前記路面入力に基づく振動騒音の打消音を規定する制御信号を生成する制御信号生成器と、前記制御信号に基づいて振動騒音の打消音を生成する打消音生成器と、前記振動騒音と前記打消音との差に基づく誤差を検出して、当該誤差を示す誤差信号を生成する誤差信号生成器とを備えるものであって、前記参照信号生成器は、サスペンションのばねの上側に設けられ、前記ばねの上側における加速度であるばね上加速度を検出するばね上加速度センサと、前記サスペンションのダンパに設けられ、前記ダンパの変位を検出するダンパ変位センサと、前記ダンパの変位を2階微分することで前記ダンパの加速度を算出するダンパ加速度算出手段とを備え、前記ばね上加速度と前記ダンパの加速度とに基づいて前記参照信号を生成することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、サスペンションのばねの上側におけるばね上加速度とダンパの加速度とに基づく参照信号を用いて振動騒音の打消音を生成する。ばね上加速度及びダンパ加速度とも略上下方向の加速度であるが、この2つを組み合わせて生成する打消音により、比較的高い打消し効果を得ることができる。加えて、ばね上加速度センサ及びダンパ変位センサは、サスペンションの減衰特性やばね特性等を能動的に制御する場合に利用することができる。このため、サスペンションの能動的制御に用いるばね上加速度センサとダンパ変位センサの出力を能動型振騒音制御装置に兼用することが可能となり、部品点数の削減及び製品コストの低減を実現することができる。
【0009】
この発明に係る車両は、上述した能動型騒音制御装置と、前記サスペンションの減衰特性を能動的に制御するサスペンション制御装置とを備える車両であって、前記ばね上加速度センサ及び前記ダンパ変位センサは、前記能動型騒音制御装置と前記サスペンション制御装置の両方に検出値を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、サスペンションのばねの上側におけるばね上加速度とダンパの加速度とに基づく参照信号を用いて振動騒音の打消音を生成する。ばね上加速度及びダンパ加速度とも略上下方向の加速度であるが、この2つを組み合わせて生成する打消音により、比較的高い打消し効果を得ることができる。加えて、ばね上加速度センサ及びダンパ変位センサは、サスペンションの減衰特性やばね特性等を能動的に制御する場合に利用することができる。このため、サスペンションの能動的制御に用いるばね上加速度センサとダンパ変位センサの出力を能動型振騒音制御装置に兼用することが可能となり、部品点数の削減及び製品コストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態に係る能動型騒音制御装置を搭載した車両の概略的な構成図である。
【図2】前記車両に設けられたばね上加速度センサ及びダンパ変位センサとそれらの周辺の概略構成図である。
【図3】前記能動型騒音制御装置の概略構成図である。
【図4】前記実施形態において、打消音を生成するフローチャートである。
【図5】本実施形態と比較例とで振動騒音の打消し効果を比較した図である。
【図6】ロードノイズの発生メカニズムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[A.一実施形態]
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
1.全体及び各部の構成
(1)全体構成
図1は、この発明の一実施形態に係る能動型騒音制御装置12(以下「ANC装置12」と称する。)を搭載した車両10の概略的な構成を示す図である。車両10は、ガソリン車や電気自動車、燃料電池車等の車両とすることができる。
【0014】
ANC装置12は、サスペンション14に設けられたばね上加速度センサ16(以下「加速度センサ16」ともいう。)及びダンパ変位センサ18(以下「変位センサ18」ともいう。)と、スピーカ20と、マイクロフォン22とに接続されている。また、ANC装置12とスピーカ20との間には増幅器24が設けられている。
【0015】
ANC装置12は、加速度センサ16が検出した略上下方向の振動加速度Az[mm/s/s]と、変位センサ18が検出した略上下方向の変位量Sz[mm]と、マイクロフォン22が出力したアナログ誤差信号e_aとに基づいてアナログ制御信号Sdaを生成する。アナログ制御信号Sdaは、増幅器24で増幅された後、スピーカ20に出力される。スピーカ20は、アナログ制御信号Sdaに対応する打消音CSを出力する。
【0016】
車両10の車室内に発生する振動騒音は、図示しないエンジンの振動に伴って生じる振動騒音(エンジンこもり音NZe)と、車両10の走行中に車輪26と路面Rとが接触し、車輪26が振動することに伴って生じる振動騒音(ロードノイズNZr)とを複合した振動騒音(複合騒音NZc)である。本実施形態のANC装置12によれば、複合騒音NZcのうちロードノイズNZrの成分を打消音CSが打ち消し、消音効果を得ることができる。
【0017】
なお、ANC装置12には、ロードノイズNZrの消音機能に加え、エンジンこもり音NZeの消音機能を持たせることもできる。すなわち、ANC装置12に従前のエンジンこもり音用の構成(例えば、特開2004−361721号公報)を併せ持たせることも可能である。
【0018】
また、図1では図示していないが、加速度センサ16及び変位センサ18はそれぞれ4つ設けられており(図3参照)、各加速度センサ16及び各変位センサ18は、4つの車輪26(左前輪、右前輪、左後輪、右後輪)に対応して設けられている。さらに、図1及び図3では、スピーカ20及びマイクロフォン22をそれぞれ1つずつしか示していないが、発明の理解の容易化のためであり、ANC装置12の用途に応じて複数のスピーカ20及びマイクロフォン22を用いることもできる。その場合、その他の構成要素の数も適宜変更される。
【0019】
本実施形態における車両10は、ANC装置12に加え、サスペンション制御装置28(以下「制御装置28」ともいう。)を有する。この制御装置28は、例えば、特開2006−044523号公報に記載されるようなものであり、各サスペンション14を能動的に制御することにより、運転性能や乗り心地の向上を実現する。加速度センサ16及び変位センサ18は、主として、制御装置28で用いることを企図されており、ANC装置12は、加速度センサ16及び変位センサ18の出力を兼用する。
【0020】
(2)サスペンション14、加速度センサ16及び変位センサ18
図2には、加速度センサ16及び変位センサ18を設けたサスペンション14の構成が示されている。サスペンション14は、いわゆるダブル・ウィッシュ・ボーンタイプである。サスペンション14は、車輪26のホイール32に連結されたナックル30と、連結部材38a、38bを介してナックル30及びボディ36に連結されたアッパーアーム34と、連結部材44a、44bを介してナックル30及びサブフレーム42に連結されたロアアーム40と、ダンパスプリング48を介してボディ36に連結され、連結部材50を介してロアアーム40に連結されたダンパ46とを有する。ダンパスプリング48の内側にはアクチュエータ49が設けられており、このアクチュエータ49は、サスペンション制御装置28からの指令に応じて減衰特性を変化させる。ボディ36とサブフレーム42は連結部材52を介して連結されている。また、ナックル30の内部には、エンジンから延びるドライブシャフト54が回転自在に挿入されている。
【0021】
図2に示すように、加速度センサ16は、ダンパスプリング48の上側(ばね上)に設けられ、ボディ36の変位の影響を受け易い位置に設けられている。また、変位センサ18は、ダンパ46の下側に設けられ、ロアアーム40やこれに連結されたナックル30の変位の影響を受け易い位置に設けられている。
【0022】
各加速度センサ16は、ダンパスプリング48の上側において略上下方向(図1中、Z方向)の振動加速度Az[mm/s/s]を検出し、当該振動加速度Azを示すばね上加速度信号Saz(以下「加速度信号Saz」ともいう。)をANC装置12に出力する。
【0023】
各変位センサ18は、ダンパ46の下側において略上下方向(図1中、Z方向)の変位量Sz[mm]を検出し、当該変位量Szを示す変位量信号SszをANC装置12に出力する。
【0024】
(3)ANC装置12
(a)全体構成
ANC装置12は、スピーカ20からの打消音CSの出力を制御するものであり、マイクロコンピュータ58、メモリ59(図1)等を備える。マイクロコンピュータ58は、打消音CSを決定する機能(打消音決定機能)等の機能をソフトウェア処理により実行可能である。
【0025】
図3は、ANC装置12の概略構成図である。図3に示すように、ANC装置12は、加速度センサ16毎に設けられる第1アナログ/デジタル変換器60(以下「第1A/D変換器60」という。)、第1参照信号生成部61及び第1制御信号生成部62と、変位センサ18毎に設けられる第2アナログ/デジタル変換器64(以下「第2A/D変換器64」という。)、第1微分器66、第2微分器68、第2参照信号生成部69及び第2制御信号生成部70と、第1加算器72と、第2加算器74と、デジタル/アナログ変換器76(以下「D/A変換器76」という。)と、第3アナログ/デジタル変換器78(以下「第3A/D変換器78」という。)とを有する。上記のうち、第1参照信号生成部61、第1制御信号生成部62、第1微分器66、第2微分器68、第2参照信号生成部69、第2制御信号生成部70、第1加算器72及び第2加算器74は、マイクロコンピュータ58及びメモリ59により構成される。
【0026】
また、説明の便宜のため、車輪26毎(加速度センサ16と変位センサ18の組合せ毎)の第1A/D変換器60、第1参照信号生成部61、第1制御信号生成部62、第2A/D変換器64、第1微分器66、第2微分器68、第2参照信号生成部69、第2制御信号生成部70及び第1加算器72を制御信号生成ユニット79と呼ぶ。図3では、一番上の制御信号生成ユニット79のみ内部を示し、その他の制御信号生成ユニット79は内部を省略して示している。
【0027】
(b)第1A/D変換器60
第1A/D変換器60は、加速度センサ16からのアナログ加速度信号Sazをアナログ/デジタル(A/D)変換したデジタル加速度信号Sad1を出力する。
【0028】
(c)第1参照信号生成部61
第1参照信号生成部61は、第1A/D変換器60からのデジタル加速度信号Sad1に基づいて、適応制御(適応フィルタ処理)のための参照信号Sb1を生成し、第1制御信号生成部62に出力する。
【0029】
(d)第1制御信号生成部62
第1制御信号生成部62は、第1参照信号生成部61からの参照信号Sb1を用いた適応フィルタ処理を行って、打消音CSを規定するデジタル制御信号Scr1を生成するものであり、適応フィルタ80と、参照信号補正部82と、フィルタ係数更新部84とを有する。
【0030】
適応フィルタ80は、FIR(Finite impulse response:有限インパルス応答)型のフィルタであり、参照信号Sb1に対してフィルタ係数W1を用いた適応フィルタ処理を行って、ロードノイズNZrを低減するための打消音CSの波形を示すデジタル制御信号Scr1を出力する。
【0031】
参照信号補正部82は、第1参照信号生成部61からの参照信号Sb1に対して伝達関数処理を行うことで補正参照信号Sr1を生成する。補正参照信号Sr1は、フィルタ係数更新部84においてフィルタ係数W1を演算する際に用いられる。また、伝達関数処理は、スピーカ20からマイクロフォン22への打消音CSの伝達関数C^(フィルタ係数)に基づき参照信号Sb1を補正する処理である。この伝達関数処理で用いられる伝達関数C^は、スピーカ20からマイクロフォン22への打消音CSの実際の伝達関数Cの測定値又は予測値である。
【0032】
フィルタ係数更新部84は、フィルタ係数W1を逐次演算・更新する。フィルタ係数更新部84は、適応アルゴリズム演算{例えば、最小二乗法(LMS)アルゴリズム演算}を用いてフィルタ係数W1を演算する。すなわち、参照信号補正部82からの補正参照信号Sr1と第3A/D変換器78からのデジタル誤差信号e_dに基づいて、デジタル誤差信号e_dの二乗e_d2をゼロとするようにフィルタ係数W1を演算する。
【0033】
(e)第2A/D変換器64
第2A/D変換器64は、変位センサ18からのアナログ変位信号SszをA/D変換したデジタル変位信号Sad2を出力する。
【0034】
(f)第1微分器66、第2微分器68
第1微分器66は、第2A/D変換器64からのデジタル変位信号Sad2が示すダンパ46の変位量Szを微分して、ダンパ46の略上下方向の変位速度Vsz[mm/s]を演算する。そして、変位速度Vszを示す変位速度信号Svszを第2微分器68に出力する。
【0035】
第2微分器68は、第1微分器66が演算した変位速度Vszを微分してダンパ46の略上下方向の加速度(ダンパ加速度Asz)[mm/s/s]を演算する。そして、ダンパ加速度Aszを示すダンパ加速度信号Saszを第2参照信号生成部69に出力する。
【0036】
(g)第2参照信号生成部69
第2参照信号生成部69は、第2微分器68からのダンパ加速度信号Saszに基づいて、適応フィルタ制御のための参照信号Sb2を生成し、第2制御信号生成部70に出力する。
【0037】
(h)第2制御信号生成部70
第2制御信号生成部70は、第2参照信号生成部69からの参照信号Sb2を用いて適応フィルタ処理を行い、打消音CSを規定するデジタル制御信号Scr2を生成するものであり、適応フィルタ90と、参照信号補正部92と、フィルタ係数更新部94とを有する。
【0038】
適応フィルタ90は、FIR型のフィルタであり、参照信号Sb2に対してフィルタ係数W2を用いた適応フィルタ処理を行って、ロードノイズNZrを低減するための打消音CSの波形を示すデジタル制御信号Scr2を出力する。
【0039】
参照信号補正部92は、第2参照信号生成部69からの参照信号Sb2に対して伝達関数処理を行うことで補正参照信号Sr2を生成する。補正参照信号Sr2は、フィルタ係数更新部94においてフィルタ係数W2を演算する際に用いられる。また、伝達関数処理は、スピーカ20からマイクロフォン22への打消音CSの伝達関数C^(フィルタ係数)に基づき参照信号Sr2を補正する処理である。この伝達関数処理で用いられる伝達関数C^は、スピーカ20からマイクロフォン22への打消音CSの実際の伝達関数Cの測定値又は予測値である。
【0040】
フィルタ係数更新部94は、フィルタ係数W2を逐次演算・更新する。フィルタ係数更新部94は、適応アルゴリズム演算(例えば、LMSアルゴリズム演算)を用いてフィルタ係数W2を演算する。すなわち、参照信号補正部92からの補正参照信号Sr2と第3A/D変換器78からのデジタル誤差信号e_dに基づいて、デジタル誤差信号e_dの二乗e_d2をゼロとするようにフィルタ係数W2を演算する。
【0041】
(i)第1加算器72
各第1加算器72は、第1制御信号生成部62から出力されたデジタル制御信号Scr1と、第2制御信号生成部70から出力されたデジタル制御信号Scr2を合成し、第1合成制御信号Scc1を生成する。
【0042】
(j)第2加算器74
第2加算器74は、各第1加算器72から出力された第1合成制御信号Scc1を合成し、第2合成制御信号Scc2を生成する。
【0043】
(k)D/A変換器76
D/A変換器76は、第2加算器74からの第2合成制御信号Scc2をデジタル/アナログ(D/A)変換してアナログ制御信号Sdaを出力する。
【0044】
(l)第3A/D変換器78
第3A/D変換器78は、マイクロフォン22から出力されたアナログ誤差信号e_aをA/D変換して、デジタル誤差信号e_dとして各第1制御信号生成部62のフィルタ係数更新部84及び各第2制御信号生成部70のフィルタ係数更新部94に出力する。上述のように、デジタル誤差信号e_dは、フィルタ係数W1、W2の演算に用いられる。
【0045】
(4)増幅器24
増幅器24は、D/A変換器76から出力されたアナログ制御信号Sdaの振幅をユーザのマニュアル操作で変更するためのパワーアンプである。
【0046】
(5)スピーカ20
スピーカ20は、ANC装置12(マイクロコンピュータ58)からのアナログ制御信号Sdaに対応する打消音CSを出力する。これにより、ロードノイズNZrの消音効果が得られる。
【0047】
(6)マイクロフォン22
マイクロフォン22は、ロードノイズNZrと打消音CSとの誤差を残留騒音として検出し、この残留騒音を示すアナログ信号であるアナログ誤差信号e_aをANC装置12(マイクロコンピュータ58)に出力する。
【0048】
2.打消音CSの生成
次に、本実施形態における打消音CSの生成の流れについて説明する。図4には、打消音CSを生成するフローチャートが示されている。
【0049】
ステップS1において、ばね上加速度センサ16は、略Z軸方向の加速度Az(振動加速度)を検出し、加速度Azを示すアナログ加速度信号Sazを生成する。
【0050】
ステップS2において、ダンパ変位センサ18は、ダンパ46の略Z軸方向の変位量Szを検出し、変位量Szを示すアナログ変位量信号Sszを生成する。
【0051】
ステップS3において、制御信号生成ユニット79は、加速度信号Sazと変位量信号Sszに基づいて第1合成制御信号Scc1を生成する。
【0052】
より具体的には、第1A/D変換器60によりアナログ加速度信号SazをA/D変換してデジタル加速度信号Sad1を生成する。そして、第1参照信号生成部61において、デジタル加速度信号Sad1に基づいて参照信号Sb1を生成する。次いで、第1制御信号生成部62において適応フィルタ処理を行い、デジタル制御信号Scr1を生成する。
【0053】
また、第2A/D変換器64によりアナログ変位量信号SszをA/D変換してデジタル変位量信号Sad2を生成する。そして、デジタル変位量信号Sad2が示す変位量Szを、第1微分器66及び第2微分器68により2階微分してダンパ加速度Aszを算出し、このダンパ加速度Aszを示すダンパ加速度信号Saszを生成する。次いで、第2参照信号生成部69において、ダンパ加速度信号Saszに基づいて参照信号Sb2を生成する。第2制御信号生成部70において適応フィルタ処理を行い、デジタル制御信号Scr2を生成する。そして、第1加算器72によりデジタル制御信号Scr1、Scr2を合成して第1合成制御信号scc1を生成する。
【0054】
ANC装置12は、上記ステップS1〜S3を、加速度センサ16と変位センサ18の組合せ毎にそれぞれに行う。
【0055】
ステップS4において、第2加算器74は、各制御信号生成ユニット79から出力された第1合成制御信号Scc1を合成して第2合成制御信号Scc2を生成する。
【0056】
ステップS5において、増幅器24は、第2合成制御信号Scc2をD/A変換したアナログ制御信号Sdaを所定の増幅率で増幅する。ステップS6において、スピーカ20は、増幅後のアナログ制御信号Sdaに基づく打消音CSを出力する。
【0057】
ステップS7において、マイクロフォン22は、ロードノイズNZrを含む複合騒音NZcと打消音CSとの差を残留騒音として検出し、この残留騒音に対応するアナログ誤差信号e_aを出力する。このアナログ誤差信号e_aは、ANC装置12のその後の適応フィルタ処理で用いられる。
【0058】
ANC装置12では、以上のステップS1〜S7を繰り返す。
【0059】
3.本実施形態における効果
以上のように、本実施形態によれば、ダンパスプリング48の上側におけるばね上加速度Azに基づく参照信号Sb1と、ダンパ加速度Aszに基づく参照信号Sb2を用いてロードノイズNZrの打消音CSを生成する。ばね上加速度Az及びダンパ加速度Aszとも略上下方向の加速度であるが、この2つを組み合わせて生成する打消音CSにより、比較的高い打消し効果を得ることができる。加えて、ばね上加速度センサ16及びダンパ変位センサ18は、サスペンション制御装置28によるサスペンションの能動的な制御において利用することができる。このため、サスペンションの能動的な制御に用いるばね上加速度センサ16とダンパ変位センサ18の出力をANC装置12に兼用することが可能となり、部品点数の削減及び製品コストの低減を実現することができる。
【0060】
図5は、ANC装置12を作動させた際にマイクロフォン22が検出した音圧の波形の一例としての波形100と、ANC装置12を作動させない際にマイクロフォン22が検出した音圧の波形の一例としての波形200とを示す。図5からわかるように、ロードノイズNZrの周波数帯域である40〜180Hzの帯域では、波形100の方が波形200よりも音圧が低く、ロードノイズNZrの打消し効果が得られていることがわかる。
【0061】
[B.この発明の応用]
なお、この発明は、上記実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下に示す構成を採ることができる。
【0062】
上記実施形態では、4つの車輪26それぞれについてばね上加速度センサ16及びダンパ変位センサ18を設けたが、そのうちのいずれかの車輪26にのみ加速度センサ16及び変位センサ18を設ける構成も可能である。
【符号の説明】
【0063】
10…車両 12…能動型騒音制御装置
14…サスペンション 16…ばね上加速度センサ
18…ダンパ変位センサ 20…スピーカ(打消音生成器)
22…マイクロフォン(誤差信号生成器)
28…サスペンション制御装置 46…ダンパ
48…ダンパスプリング 61…第1参照信号生成部
62…第1制御信号生成部 66…第1微分器(ダンパ加速度算出手段)
68…第2微分器(ダンパ加速度算出手段)
69…第2参照信号生成部 70…第2制御信号生成部
Az…ばね上加速度 CS…打消音
e_a…アナログ誤差信号 e_d…デジタル誤差信号
Sb1、Sb2…参照信号 Sc1、Sc2…デジタル制御信号
Sz…ダンパの変位量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面入力に基づく参照信号を生成する参照信号生成器と、
前記参照信号を用いた適応フィルタ処理を行って、前記路面入力に基づく振動騒音の打消音を規定する制御信号を生成する制御信号生成器と、
前記制御信号に基づいて振動騒音の打消音を生成する打消音生成器と、
前記振動騒音と前記打消音との差に基づく誤差を検出して、当該誤差を示す誤差信号を生成する誤差信号生成器と
を備える能動型騒音制御装置であって、
前記参照信号生成器は、
サスペンションのばねの上側に設けられ、前記ばねの上側における加速度であるばね上加速度を検出するばね上加速度センサと、
前記サスペンションのダンパに設けられ、前記ダンパの変位を検出するダンパ変位センサと、
前記ダンパの変位を2階微分することで前記ダンパの加速度を算出するダンパ加速度算出手段と
を備え、
前記ばね上加速度と前記ダンパの加速度とに基づいて前記参照信号を生成する
ことを特徴とする能動型騒音制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の能動型騒音制御装置と、
前記サスペンションの減衰特性を能動的に制御するサスペンション制御装置とを備える車両であって、
前記ばね上加速度センサ及び前記ダンパ変位センサは、前記能動型騒音制御装置と前記サスペンション制御装置の両方に検出値を送信する
ことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−126300(P2011−126300A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283647(P2009−283647)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】