能動複屈折レンズアレイ装置及びこれを備えた表示装置
【課題】表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置の、能動レンズ内での出力偏光の調整を提供する。
【解決手段】表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置は、レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、複屈折材料を、3Dモードと2Dモードとの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、3Dモードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、2Dモードでは、所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極と、3Dモードと2Dのモードとの間で切り替えるために、電極の両端の電圧を制御する電圧コントローラであって、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、3Dモードと2Dのモードとで印加される電圧を調整するように構成される電圧コントローラとを備える。
【解決手段】表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置は、レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、複屈折材料を、3Dモードと2Dモードとの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、3Dモードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、2Dモードでは、所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極と、3Dモードと2Dのモードとの間で切り替えるために、電極の両端の電圧を制御する電圧コントローラであって、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、3Dモードと2Dのモードとで印加される電圧を調整するように構成される電圧コントローラとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動複屈折レンズアレイ装置及びこれを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切り替え可能な能動レンズを用いて、切り替え可能な2次元(2D)/3次元(3D)自動立体(autostereoscopic)表示装置、切り替え可能な高輝度反射型表示システム、または、マルチユーザ表示システムを提供することができる。こうした表示システムを、コンピュータモニタ、電気通信ハンドセット、デジタルカメラ、ラップトップおよびデスクトップコンピュータ、ゲーム装置、自動車、ならびに他のモバイル表示用途で用いることができる。
【0003】
3Dディスプレイ
通常の人間の視覚は立体的であり、すなわち、それぞれの眼がわずかに異なる世界像(image of the world)を見ている。脳が2つの像(ステレオペアと呼ばれる)を融合することにより、奥行きの感覚を与える。3次元立体ディスプレイは、実世界のシーンを見ている場合に見られるであろう像に対応する別個のほぼ平坦な像を、それぞれの眼に対して再現する。すると脳は再びステレオペアを融合して、像の奥行きが見えるようにする。
【0004】
図1aは、ディスプレイ平面1の表示面の平面図を示す。右眼2は、ディスプレイ平面上の右眼相同像点(homologous image point)3を見ており、左眼4は、ディスプレイ平面上の左眼相同像点5を見ており、それにより、スクリーン平面の後方にユーザが認識する見かけ上の像点6が生成される。
【0005】
図1bは、ディスプレイ平面1の表示面の平面図を示す。右眼2は、ディスプレイ平面上の右眼相同像点7を見ており、左眼4は、ディスプレイ平面上の左眼相同像点8を見ており、それにより、スクリーン平面の前方に見かけ上の像点9が生成される。
【0006】
図1cは、左眼画像10および右眼画像11の外観を示す。左眼画像10の相同点5は、基準線12上に位置決めされる。右眼画像11の対応する相同点3は、基準線12に対して異なる相対位置3にある。基準線12からの点3の間隔13は、視差(disparity)と呼ばれ、この場合、スクリーン平面の後方にある点の正の視差(positive disparity)である。
【0007】
シーンにおける一般的な点に関して、図1aに示すようなステレオペアの各像には対応する点がある。これらの点は相同点と呼ばれる。2つの像の間の相同点の相対間隔は視差と呼ばれ、視差がゼロになる点は、ディスプレイの奥行き面(depth plane)の点に対応する。図1bは、非交差性視差を有する点がディスプレイの後方に現れることを示し、図1cは、交差性視差を有する点がディスプレイの前方に現れることを示す。相同点の間隔、観察者までの距離、および観察者の眼間距離の大きさにより、ディスプレイで認識される奥行きの程度が決まる。
【0008】
立体型ディスプレイは、従来技術において既知であり、ユーザが或る種類の視認補助具を装着して、左右の眼に送られるビューを実質的に分離するようにするディスプレイを指す。例えば、視認補助具は、画像が(例えば赤色および緑色に)色分けされるカラーフィルタ、画像が直交偏光状態で符号化される偏光眼鏡、またはビューが眼鏡のシャッタの開放と同期して画像の時間的配列として符号化されるシャッタ眼鏡であってもよい。
【0009】
自動立体ディスプレイは、観察者が視認補助具を装着しなくても動作する。自動立体ディスプレイでは、図2に示すように、空間内の限られた領域からビューのそれぞれを見ることができる。
【0010】
図2aは、パララックス(parallax)光学素子17が取り付けられた表示デバイス16を示す。表示デバイスは、右眼チャネルとして右眼画像18を生成する。パララックス光学素子17は、矢印19で示される方向に光を導き、ディスプレイの前方の領域に右眼観察ウィンドウ20を生成するようにする。観察者は、自身の右眼22をウィンドウ20の位置に位置付ける。左眼観察ウィンドウ24の位置を参照のために示す。観察ウィンドウ20は、垂直方向に延びた光学瞳とも呼ばれる。
【0011】
図2bは、左眼光学系を示す。表示デバイス16は、左眼チャネルとして左眼画像26を生成する。パララックス光学素子17は、矢印28で示される方向に光を導き、ディスプレイの前方の領域に左眼観察ウィンドウ30を生成するようにする。観察者は、自身の左眼32をウィンドウ30の位置に位置付ける。右眼観察ウィンドウ20の位置を参照のために示す。
【0012】
本システムは、ディスプレイと光学的方向制御機構(optical steering mechanism)とを備える。左画像26からの光は、観察ウィンドウ30と呼ばれるディスプレイの前方の限られた領域に送られる。眼32が観察ウィンドウ30の位置に位置付けられている場合、観察者にはディスプレイ16の全体にわたって適切な画像26が見える。同様に、光学系は、右画像18用に意図された光を別個のウィンドウ20に送る。観察者が自身の右眼22をウィンドウ20に位置付けている場合、右眼画像はディスプレイの全体にわたって見られる。概して、いずれの画像からの光も、各指向性分布(directional distribution)に光学的に方向制御された(ずなわち、導かれた)ものと考えられてよい。
【0013】
図3は、ウィンドウ平面42に左眼観察ウィンドウ36、37、38および右眼観察ウィンドウ39、40、41を生成する、ディスプレイ平面34における表示デバイス16、17の平面図を示す。ディスプレイからのウィンドウ平面の間隔は、公称視距離43と呼ばれる。ディスプレイに関して中央の位置にあるウィンドウ37、40は、ゼロ番ローブ44にある。ゼロ番ローブ44の右側にあるウィンドウ36、39は、+1番ローブ46にあり、ゼロ番ローブの左側にあるウィンドウ38、41は、−1番ローブ48にある。
【0014】
ディスプレイの観察ウィンドウ平面は、横方向の観察自由度が最大となるディスプレイからの距離を表す。図3の平面図に示すように、ウィンドウ平面から離れた地点には、ダイヤモンド形の自動立体観察ゾーンがある。図に見られるように、ディスプレイにわたる点それぞれからの光は、有限幅を有する円錐形で観察ウィンドウに放たれる。円錐の幅は、角度幅として定義されてよい。
【0015】
一対の観察ゾーン、例えば37、40のそれぞれに眼が位置付けられている場合、自動立体画像はディスプレイの全範囲にわたって見える。一次的には、ディスプレイの縦方向の観察自由度は、これらの観察ゾーンの長さにより決まる。
【0016】
図4aでは、ディスプレイのウィンドウ平面全体の強度50の変動(1つの有形形態の光の指向性分布を構成する)を、理想的なウィンドウの場合の位置51に関して示す。右眼ウィンドウ位置の強度分布52は図3のウィンドウ41に対応し、強度分布53はウィンドウ37に対応し、強度分布54はウィンドウ40に対応し、強度分布55はウィンドウ36に対応する。
【0017】
図4bは、より現実的なウィンドウの場合の位置での強度分布を概略的に示す。右眼ウィンドウ位置の強度分布56は図3のウィンドウ41に対応し、強度分布57はウィンドウ37に対応し、強度分布58はウィンドウ40に対応し、強度分布59はウィンドウ36に対応する。
【0018】
図4に示すように、画像の分離品質、およびディスプレイの横方向および縦方向の観察自由度の大きさは、ウィンドウの品質により決まる。図4aは、理想的な観察ウィンドウを示すが、図4bは、ディスプレイから出力され得る実際の観察ウィンドウの概略図である。ウィンドウ性能が不十分であることにより、いくつかのアーチファクト(artefact)が生じる可能性がある。右眼画像からの光を左眼で見た場合、およびその反対の場合、クロストークが生じる。これは、ユーザにとって視覚的歪みをもたらす可能性がある重要な3D画像劣化のメカニズムである。さらに、ウィンドウの品質が悪いと、観察者の観察自由度が低下することになる。本光学系は、観察ウィンドウの性能を最適化するように設計される。
【0019】
パララックス光学素子はパララックスバリアである場合がある。ディスプレイは、バックライト、列および行で配置される電子的に調整可能な画素のアレイ(空間光変調器、SLMとして知られる)、および、図5の平面図に示すように、ディスプレイの前部に取り付けられたパララックスバリアを備える。
【0020】
パララックスバリアは、ディスプレイの領域から光を遮ることに頼っているため、輝度およびデバイスの効率は通常、元のディスプレイの輝度の約20〜40%に低下する。ディスプレイの観察自由度を最適化するために、ディスプレイの画素構造に関してバリアのサブピクセル配向許容度の要件があるため、パララックスバリアが容易に取り外しおよび交換されることはない。2Dモードの解像度は半分である。
【0021】
立体ディスプレイで用いるものとして当技術分野においてよく知られている別のタイプのパララックス光学部品(パララックスバリアを参照)は、レンチキュラースクリーンと呼ばれ、これは垂直方向に延びた円柱マイクロレンズのアレイである。本明細書中で用いる「円柱」という用語は、当技術分野における通常の意味を有し、厳密に球面レンズ形状だけではなく非球面レンズ形状も含む。レンズのピッチは、視点補正条件に対応する、すなわち、各画素からの光を観察ウィンドウに方向制御するために、パララックスバリアのピッチは、画素アレイのピッチの2倍より少し小さい。こうしたディスプレイでは、ステレオペア画像のそれぞれの解像度は、ベースLCDの水平解像度の半分であり、2つのビューが作成される。
【0022】
レンズの曲率は、ウィンドウ平面においてLCD画素の画像を生成するように実質的に設定される。レンズが画素から円錐形の光を集光し、それをウィンドウに分配するため、レンチキュラーディスプレイはベースパネルのフル輝度を有する。
【0023】
図6は、レンチキュラーアレイを用いたレンチキュラー表示デバイスのための典型的な構造を示す。バックライト60は、LCD入力偏光子64上に入射する光出力62を生成する。光は、TFT LCD基板66を透過し、LCD画素平面67で列および行で配置された繰り返しの画素アレイ上に入射する。赤色画素68、71、73、緑色画素69、72、75、および青色画素70、73はそれぞれ、個々の制御可能な液晶層を備え、ブラックマスク76と呼ばれる不透明マスクの領域によって分離される。各画素は、透過領域、すなわち、画素開口78を構成する。画素を通過する光は、LCD画素平面74内の液晶材料によって位相変調され、LCDカラーフィルタ基板80上に配置されたカラーフィルタによって色変調される。光は、その後、出力偏光子82を通過し、出力偏光子82の後には、パララックスバリア84およびパララックスバリア基板86が設置される。パララックスバリア84は、垂直方向に延びた不透明領域によって分離された垂直方向に延びた透過領域のアレイを備え、画素69からの光についての光線88で示すように、1つおきの画素列69、71、73、75からの光を右眼へと導き、光線90で示すように、その間の列68、70、72、74からの光を左眼へと導くのに役立つ(この全体の光の方向パターンは光の指向性分布の別の例を形成する)。観察者には、バリアの開口92を照明する、下にある画素からの光が見える。光は、その後、レンチキュラースクリーン基板94と、レンチキュラースクリーン基板92の表面に形成されたレンチキュラースクリーン96とを通過する。パララックスバリアに関しては、レンチキュラースクリーン94が、画素69からの光線88で示されるように、1つおきの画素列69、71、73、75からの光を右眼へと導き、画素68からの光線90で示されるように、その間の列68、70、72、74からの光を左眼へと導くのに役立つ。観察者には、レンチキュラースクリーン96の個々のレンチクル98の開口を照明する、下にある画素からの光が見える。取り込まれた光円錐の範囲は、取り込まれた光線100により示される。
【0024】
レンチキュラーディスプレイは、非特許文献1に記載される。空間光変調器を用いる1つのタイプのレンチキュラーディスプレイは、特許文献1に記載されている。特許文献1の発明は特に、空中での(in air)非切り替えレンチキュラー要素を説明している。
【0025】
ディスプレイの画素の列に対して傾斜する円柱レンズを用いたレンチキュラーディスプレイは、非特許文献2に記載される。
【0026】
上述のフラットパネルディスプレイの観察自由度は、ディスプレイのウィンドウ構造により制限される。
【0027】
観察自由度が観察者の位置の測定およびそれに応じたパララックス素子の移動により改善されるディスプレイが、特許文献2に記載される。このような観察者測定装置および機械的作動は、高価かつ複雑である。
【0028】
ウィンドウの光学構造が変化せず(例えば固定パララックス光学ディスプレイ)、画像データが観察者の測定位置に応じて切り替えられて、観察者が実質的にオルソスコピック画像(orthoscopic image)を維持するようにするディスプレイが、たとえば特許文献3に記載される。
【0029】
上述のように、空間的に多重化された3D表示を生成するためのパララックス光学部品の使用により、各画像の解像度はフル表示解像度のせいぜい半分に制限される。多くの用途でディスプレイは、わずかな時間だけ3Dモードで用いることが意図され、フル解像度でアーチファクトのない2Dモードを有することが必要とされる。
【0030】
パララックス光学部品の効果が除去される1つのタイプのディスプレイとして、非特許文献3がある。この場合、切り替え可能ディフューザ素子が、光のラインを形成するために用いられる光学系に配置される。このような切り替え可能ディフューザは、例えば、高分子分散型液晶タイプのものであってよく、これは、材料の両端に印加電圧を適用することにより、分子配列が散乱モードと非散乱モードとの間で切り替わるものである。3Dモードでは、ディフューザは透明であり、後方パララックスバリア効果(rear parallax barrier effect)をもたらすために光のラインが生成される。2Dモードでは、ディフューザは散光性であり(scattering)、光のラインが消滅し(washed out)、均一光源の効果がもたされる。このように、ディスプレイの出力は実質的に均等拡散(Lambertian)であり、ウィンドウが消滅する。すると、観察者にはディスプレイがフル解像度の2Dディスプレイとして見える。このようなディスプレイでは、3Dモードでフレネル回折アーチファクトが生じ、またディフューザの透明な状態で望ましくない残留散乱が生じ、これがディスプレイのクロストークを増加させる。したがって、このようなディスプレイは高レベルの視覚的歪みを示す可能性が高い。
【0031】
特許文献4に開示される、別のタイプの切り替え可能2D−3Dディスプレイでは、第2のLCDがディスプレイの前部に配置されて、パララックス光学部品としての役割を果たす。第1のモードでは、パララックスLCDは透明であるため、ウィンドウが形成されず、画像は2Dで見られる。第2のモードでは、パララックスバリアのスリットを生成するようにデバイスが切り替えられる。すると、出力ウインドウが形成され、画像が3Dに見える。このようなディスプレイは、2つのLCD素子の使用によりコストおよび複雑性が増すとともに、輝度が低下するか、または消費電力が増す。反射モードの3D表示システムで用いる場合、パララックスバリアは、光をディスプレイに入る途中およびディスプレイから出る途中の両方でパララックスバリアの遮断領域により減衰させるために、非常に低い輝度をもたらす。
【0032】
特許文献5に開示される、別のタイプの切り替え可能2D−3Dディスプレイでは、パララックスバリアは、半波長リターダ素子(half-wave retarder elements)のパターン化されたアレイを含む。リターダ素子のパターンは、パララックスバリア素子のバリアスリットおよび吸収領域のパターンに対応する。3D動作モードでは、偏光子がディスプレイに加えられることにより、パターン化されたリターダのスリットが検査(analyse)される。こうして吸収パララックスバリアが生成される。2D動作モードでは、2D動作モードにはいかなる偏光特性も関与しないため、偏光子は完全に取り外される。したがって、ディスプレイの出力はフル解像度およびフル輝度である。1つの欠点は、このようなディスプレイはパララックスバリア技術を用いるため、3D動作モードではおそらく20〜30%の輝度に制限されることである。また、ディスプレイは、バリアの開口からの回折により制限される観察自由度およびクロストークを有することになる。
【0033】
光の方向を切り替えるために、電気的に切り替え可能な複屈折レンズを設けることが知られている。このようなレンズを用いて、ディスプレイを2D動作モードと3D動作モードとの間で切り替えることが知られている。
【0034】
例えば、電気的に切り替え可能な複屈折液晶マイクロレンズが、非特許文献4に記載されている。
【0035】
特許文献6および特許文献7に開示される、別のタイプの切り替え可能2D−3Dディスプレイでは、液晶材料で充填されたレンチキュラースクリーンを含む切り替え可能マイクロレンズが、レンチキュラースクリーンの光パワーを変えるために用いられる。特許文献6および特許文献7は、レンチキュラースクリーンにおける電子光学(electro-optic)材料の使用を教示しており、レンチキュラースクリーンの屈折率は、レンチキュラー手段の光出力誘導作用が提供される第1の値と、光出力誘導作用が取り除かれる第2の値との間の電位を選択的に印加することによって切り替え可能である。
【0036】
液晶フレネルレンズを含む3Dディスプレイが、非特許文献5に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】米国特許第4,959,641号明細書
【特許文献2】欧州特許第0,829,743号明細書
【特許文献3】欧州特許第0,721,131号明細書
【特許文献4】欧州特許第0,833,183号明細書
【特許文献5】欧州特許第0,829,744号明細書
【特許文献6】米国特許第6,069,650号明細書
【特許文献7】国際公開98/21620号明細書
【非特許文献】
【0038】
【非特許文献1】T.Okoshi: Three Dimensional Imaging Techniques: Academic Press, 1976
【非特許文献2】multiview 3D-LCD: SPIE Proceedings Vol.2653, 1996, pp32-39
【非特許文献3】Developments in Autostereoscopic Technology at Dimension Technologies Inc.: Proc. SPIE vol. 1915 Stereoscopic Displays and Applications IV (1993) pp177-186, 1993
【非特許文献4】L. G. Commander et al.: Electrode designs for tuneable microlenses: European Optical Society Topical Meetings Digest Series: 13,15-16 May 1997, pp48-58
【非特許文献5】S. Suyama et al.: 3D Display System with Dual Frequency Liquid Crystal Varifocal Lens: SID 97 DIGEST pp273-276
【発明の概要】
【0039】
第1の態様では、本発明は、表示デバイスの出力と能動レンズの配向方向の間の偏光整合を提供する。
【0040】
本発明の第1の態様の1つの形態では、実質的に直線偏光する出力を生成する表示装置のための、切り替え可能な複屈折レンズアレイが提供され、当該レンズアレイは、
平坦表面と、円柱レンズアレイを画定する凸表面との間に配置される複屈折材料と、
複屈折材料を、第1モードと第2モードの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、上記第1モードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、上記第2モードでは、上記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極とを備え、
第1モードでは、上記凸表面において、複屈折材料は、円柱レンズの幾何学的軸に平行に配向し、
第1モードでは、上記平坦表面において、複屈折材料は所定の角度で平坦表面に平行に配向するため、第1モードで、平坦表面と凸表面の間で配向方向がねじれる。
【0041】
複屈折材料の配向方向が、円柱レンズの幾何学的軸に平行であることは有利である。その理由は、それによって、配向膜表面エネルギーと凸表面構造配向表面エネルギーの間の競合による凸表面における転位(dislocation)が回避されるからである。その転位は、散乱を引き起こし、光学クロストークを増加させ、レンズコントラストを低下させ、かつ/または、緩和時間を増加させる可能性がある。同様に、製造が簡略化され、知られている製造技法の使用が可能になる。
【0042】
本発明の第1の態様によるレンズアレイは、実際のシステムでは光学的厚みが比較的厚いために、複屈折材料において実質的に無色の(achromatic)偏光誘導(guiding)が起こることになるという意外な利点を有する。換言すれば、偏光方向は、光が複屈折材料を通過するにつれて回転する。この誘導作用を用いて、レンズアレイ内のデバイスの偏光を制御することができる。
【0043】
レンズアレイによる偏光方向のこうした回転は、ディスプレイと能動レンズの間にさらなる波長板を必要としないことを意味し(任意選択で、1つまたは複数の波長板が付加される場合があるが)、したがって、素子の視距離を第1の動作モードにおいて低減し、デバイスコストを低減することが可能になる。
【0044】
配向は、任意の適した手段、たとえば、配向膜によって提供されることができる。
【0045】
本発明の第1の態様の別の形態では、指向性表示装置が提供され、当該指向性表示装置は、
実質的に直線偏光する出力表示デバイスと、
第1モードでは、偏光出力表示デバイスの指向性分布を修正し、第2モードでは、表示デバイスの指向性分布の修正を実質的に引き起こさないように構成された切り替え可能な複屈折円柱レンズとを備え、当該切り替え可能な複屈折円柱レンズは、
円柱マイクロレンズアレイを画定する凸表面層と、
凸表面層における複屈折材料の配向が、第1の動作モードでは、円柱レンズの幾何学的軸にほぼ平行であるように凸表面層上に形成された配向膜と、
第1および第2のモードについて、それぞれ、少なくとも第1と第2の向きの間で複屈折材料の向きを切り替えるように構成された電極層とを備え、
平坦基板における複屈折材料の配向は、表示デバイスの出力偏光と連携して配向するため、第1の動作モードでは、ねじれが凸表面層における円柱マイクロレンズアレイの幾何学的軸にほぼ平行である状態で、偏光が複屈折材料を通過する。
【0046】
好ましくは、以下の任意選択の特徴の1つまたは複数が存在する。
−複屈折材料は液晶である。
−平坦基板における配向方向は、表示デバイスの出力偏光に平行または直角である。
−実質的に偏光するディスプレイは、部分的に偏光するか、または、偏光しないディスプレイおよび偏光子素子を備えることができる。
−ディスプレイは、ディスプレイでない(non-display)指向性切り替え用途のための空間光変調器であってよい。
−第1モードにおいて、レンズを通過する偏光状態のねじれが存在する。
−偏光状態のねじれは45°、−45°、または135°である。
−実質的に偏光するディスプレイの出力偏光を回転させるために、表示デバイスと能動レンズの間に付加的な波長板を組み込んでもよい。
【0047】
そのため、以降で述べる本発明の実施形態は、以下の利点のうちの1つまたは複数を提供する。
−液晶の配向方向は、凸表面円柱マイクロレンズの幾何学的軸に平行である可能性がある。
−レンズ表面は、知られている表面配向技法を用いた製造に都合がよい。
−ディスプレイと能動レンズの間にさらなる波長板が必要とされず、したがって、素子の視距離を3D動作モードで低減し、デバイスコストを低減することができる。
−配向膜表面エネルギーと凸表面構造配向表面エネルギーの間の競合により、切り替えレンズ内で回位(disclination)を受けないであろう。
−能動レンズセルのコントラストが最適化されるであろう。
−切り替え応答時間が最小になる。
−レンズ素子内の縮退(degeneracy)が最小になるため、デバイスが一様に切り替わる。
−本発明は、実際のシステムでは光学的厚みが比較的厚いために、レンズ内で偏光誘導が起こることになるという意外な利点を有する。この誘導作用を用いて、能動レンズ内のデバイスの偏光を制御することができる。
−ディスプレイは、固定した液晶ディスプレイ出力偏光状態によって、2Dおよび3Dモードにて高い輝度を生成することができる。
【0048】
第2の態様では、本発明は、ホメオトロピックに配向する複屈折材料を有するレンズアレイを提供する。
【0049】
本発明の第2の態様の1つの形態では、実質的に直線偏光する出力を生成する表示装置のための、切り替え可能な複屈折レンズアレイが提供され、当該レンズアレイは、
表面と、円柱レンズアレイを画定する少なくとも凸表面との間に配置される複屈折材料と、
複屈折材料を、第1モードと第2モードの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、上記第1モードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、上記第2モードでは、上記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極とを備え、
複屈折材料は、上記少なくとも1つの凸表面においてホメオトロピックに配向する。
【0050】
こうしたレンズアレイは、第2の動作モードでは、電力消費を全く必要としないように構成されることができるという利点を有する。その理由は、制御電圧が無い時に、複屈折材料は、光軸に平行に配向し、それによって、光は、凸表面において、複屈折材料の常光線屈折率を受けるからであり、それは、最も都合よくは、入射光に対して実質的に全く影響が存在しない第2の動作モードである。
【0051】
たとえば、2Dモードと自動立体3Dモードの間で切り替え可能な表示デバイスでは、これは、2Dモードは電力消費を必要としないことを意味する。したがって、電池による2D動作時間は影響を受けないであろう。能動レンズでは、レンズ奥行きが数十ミクロン程度である傾向があるため、セルの厚い部分を切り替えるために印加される必要がある電圧は、標準液晶セル動作電圧、たとえば、5μm厚セルについて5Vをほぼ超える。したがって、この種のレンズセルについての、駆動モードでの液晶の電力消費は、同じ液晶と駆動周波数を用いた標準5μm厚LCDの電力消費より実質的に大きい。したがって、2D駆動モードを有することは望ましくない。レンズスイッチが損傷する場合、デフォルトの動作モードは2Dモードにあるため、画像に対する劣化は見られないであろう。レンズの焦点距離は、所望のウィンドウの外観に合わせて電圧を修正することによって、3Dモードで調整される可能性がある。
【0052】
配向は、任意の適した手段、たとえば、配向膜によって提供されてもよい。ホメオトロピック配向膜は、容易に入手できる高分子材料の使用して、屈折率を著しく高くすることなくレンズ表面を形成することを可能にする。こうした高分子材料は、高コスト、高い毒性、および難しい処理方式(regime)に直面しない。
【0053】
本発明の第2の態様の別の形態では、複屈折光学材料および第1基板を備える切り替え可能な複屈折レンズを備える光学切り替え装置が提供され、
第1ホメオトロピック配向膜は凸表面構造上に形成され、
複屈折材料の誘電異方性はゼロ未満であるため、切り替え可能なレンズは、電界がセルに印加される時に第1モードで動作し、電界がセルに印加されない時に第2モードで動作する。
【0054】
好ましくは、以下の任意選択の特徴のうちの1つまたは複数が存在する。
−第1モードでは、凸表面構造における複屈折材料の光軸の配向は、幾何学的マイクロレンズ軸にほぼ平行である。
−その配向は、配向膜のホモジニアスなバイアスによって提供され、
−その配向は、溝付き構造によって提供されるホモジニアスなバイアスによって提供され、
−平坦基板における配向は、
−ホメオトロピックであり、
−ホモジニアスであり、
−ホメオトロピック配向およびホモジニアス配向を含むため、第1モードでホモジニアス配向特性を、第2モードでホメオトロピック配向特性を示し、
−第1動作モードにおいて入射偏光状態のねじれを提供するため、凸表面構造における偏光状態は複屈折レンズ光軸に平行である。
―波長板は、表示デバイスと平坦基板の間に位置するため、平坦基板における偏光角は、凸表面基板における偏光角と平行である。
【0055】
本発明の第3の態様の1つの形態では、表示装置が提供され、当該表示装置は、
空間光変調器および出力偏光子を有する表示デバイスと、
空間光変調器から光を受け取るように構成された電気的に切り替え可能な複屈折レンズアレイとを備え、
レンズアレイは、表示デバイスの空間光変調器と出力偏光子の間に配置される。
【0056】
こうした表示デバイスは、出力偏光子が通常位置である、空間光変調器のすぐ出力側に配置されるのに比べて、短い視距離を提供する。これは、空間光変調器とレンズアレイの間に出力偏光子が無いために、その間の距離を減らすことができるためである。
【0057】
本発明の第3の態様は、空間光変調器および出力偏光子を含む任意のタイプの表示デバイスに適用可能である。これは、入射光の偏光を位相変調して、或る変調量だけ、各画素における光の偏光の主軸についての楕円運動(ellipticity)および回転運動(rotation)を引き起こすように構成された液晶変調器などの空間光変調器に特に有利であり、出力偏光子が、所定の方向に偏光された光を選択するのに使用され、それによって、楕円および回転の量により出力光の振幅が変調される。しかしながら、第3の態様は、別法として、たとえば、偏光しない出力が生成され、出力偏光子が出力を偏光するのに使用される、発光型空間光変調器、または、偏光する出力が生成され、出力偏光子がクリーンアップ偏光子である、発光型空間光変調器に適用されてもよい。
【0058】
本発明の第3の態様の別の形態では、指向性表示装置が提供され、当該指向性表示装置は、
実質的に直線偏光する出力表示デバイスと、
第1モードでは、偏光出力表示デバイスの指向性分布を修正し、第2モードでは、表示デバイスの指向性分布の修正を実質的にもたらさないように構成される切り替え可能な複屈折円柱レンズを備える能動レンズとを備え、
能動レンズは、画素平面と表示デバイスの出力偏光子の間に位置する。
【0059】
本発明の第4の態様の1つの形態では、表示装置が提供され、当該表示装置は、空間光変調器の各画素で実質的に直線偏光する光を出力するように構成された発光型空間光変調器と、
空間光変調器から光を受け取るように構成された電気的に切り替え可能な複屈折レンズアレイとを備える。
【0060】
本発明の第4の態様の別の形態では、発光型光方向切り替え装置が提供され、発光型光方向切り替え装置は、
切り替え可能な複屈折光学材料を含む切り替え可能な複屈折レンズを備える光学切り替え装置と、
それぞれが実質的に偏光する光出力を有する、発光画素領域のアレイを備える発光型空間光変調器装置とを備える。
【0061】
こうした表示装置は、高い光効率を持って構成されることができる。
【0062】
本発明の第5の態様の1つの形態では、表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置が提供され、当該能動複屈折レンズアレイ装置は、
レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、
複屈折材料を、第1モードと第2モードの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、上記第1モードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、上記第2モードでは、上記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極と、
第1と第2のモードの間で切り替えるために、電極の両端の電圧を制御する電圧コントローラであって、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、第1と第2のモードで印加される電圧を調整するように構成される、電圧コントローラとを備える。
【0063】
等方性材料の屈折率、ならびに、複屈折材料の常光線および異常光の屈折率は、温度と共に変動する。そのため、或る温度で動作するように設計されたレンズアレイは、別の温度では光学特性が低下する場合がある。しかしながら、電圧制御は、温度による変動を補償することを可能にする。これは、光学性能を改善し、より広い動作温度範囲にわたるレンズアレイの動作を可能にする。
【0064】
或るタイプの装置では、温度センサを用いて、レンズアレイ装置の温度を検知し、電圧コントローラは、温度センサによって検知された温度に応答して、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、第1と第2のモードで印加される電圧を調整するように構成される。
【0065】
このタイプの装置は、温度変化の自動補償を提供する利点を有する。
【0066】
別のタイプの装置では、入力デバイスによって、ユーザが電圧調整を入力することが可能になり、電圧コントローラは、入力デバイスに入力された電圧調整に応答して第1および第2のモードで印加される電圧を調整するように構成される。
【0067】
このタイプの装置は簡便さの利点を有する。
【0068】
有利には、等方性材料の屈折率は、少なくとも25℃の限界より低い温度における、複屈折材料の常光線屈折率と複屈折材料の異常光屈折率の間にある。
【0069】
等方性材料の屈折率が、20℃の典型的な設計温度において、複屈折材料の常光線屈折率(または、他の材料系では、複屈折材料の異常光屈折率)に等しい典型的な状況と比較すると、等方性材料の屈折率が複屈折材料の常光線屈折率を超える(または、複屈折材料の異常光屈折率以下の)温度範囲が増加する、しかしながら、この範囲で、電圧コントローラは、複屈折材料の有効屈折率を調整することによって、温度に伴う変動を補償することができるため、この特徴は、動作温度範囲を効果的に増加させる。この限界は、さらに範囲を増加させるために25℃より大きい場合がある。
【0070】
有利には、能動複屈折レンズアレイ装置は、能動複屈折レンズアレイ装置と直列に配置された空間光変調器をさらに備える表示装置において用いられ、少なくとも25℃の限界より低い温度において、第1モードにおけるレンズアレイのパワーは、空間光変調器の最良のフォーカスを提供するためにレンズアレイに必要とされるパワーより大きい。
【0071】
第1モードにおけるレンズアレイのパワーが、20℃の典型的な設計温度において最良のフォーカスを提供するように設計される典型的な状況と比較すると、第1モードにおけるレンズアレイのパワーが、最良のフォーカスには強過ぎる温度範囲が増加する。しかしながら、この範囲で、電圧コントローラは、複屈折材料の有効屈折率を調整することによって、レンズアレイのフォーカスを最良のフォーカスに調整するために、パワーを減らすことができるため、この特徴は、動作温度範囲を効果的に増加させる。この限界は、さらに範囲を増加させるために25℃より大きい場合がある。
【0072】
本発明の第5の態様の別の形態では、表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置が提供され、当該能動複屈折レンズアレイ装置は、
レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、
複屈折材料を、第1モードと第2モードの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、上記第1モードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、上記第2モードでは、上記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極とを備え、
等方性材料の屈折率は、20℃を超える温度か、または、25℃以上の温度で、複屈折材料の常光線屈折率または複屈折材料の異常光屈折率のうちの1つに等しい。
【0073】
20℃は、表示装置用の設計温度として一般に用いられる典型的な室温である。材料に応じて、等方性材料の屈折率は、複屈折材料の常光線屈折率または複屈折材料の異常光屈折率のうちの1つにほぼ等しい。等方性材料の屈折率が、複屈折材料の屈折率のうちのその1つに正確に等しい温度は、材料選択による設計パラメータとして選択することができる。本発明の第5の態様のこの形態では、この温度は、20℃の標準設計温度ではなく、より高く、通常、25℃以上の温度である。こうした選択は、表示装置が、20℃の標準設計温度を超えた温度で用いられることがかなり多いことを理解することに基づく。したがって、等方性材料の屈折率が、複屈折材料の屈折率の関連する1つに正確に等しくなる温度を上げることによって、等方性材料の屈折率が、表示装置の通常の使用の大きな部分にわたって、複屈折材料の屈折率の関連する1つに実際に近くなる。
【0074】
現時点で好ましい材料の場合、等方性材料の屈折率は、複屈折材料の常光線屈折率にほぼ等しく、20℃を超える温度において正確に等しいが、他の材料の場合、等方性材料の屈折率は、複屈折材料の異常光屈折率にほぼ等しく、20℃を超える温度において正確に等しい場合がある。
【0075】
本発明の種々の態様の任意または全ては、有利には、組み合わせて用いられてもよい。したがって、一般に、本発明の任意の態様の任意の特徴は、本発明の他の任意の態様に適用されてもよい。
【0076】
本発明の態様全てにおいて、以下の注釈があてはまる。レンズアレイは、実質的に直線偏光する出力を生成する任意のタイプの表示装置、たとえば、出力を偏光させる偏光子を有するバックライトで照明される透過型空間光変調器、または、本質的に偏光せずに偏光子を備える場合があるか、または、偏光する場合がある発光型空間光変調器と共に用いられてもよい。一般に、表示デバイスは、透過型、発光型、または、反射型、あるいは、その組み合わせを含む、各画素の光を変調するための任意のタイプの空間光変調器を採用することができる。
【0077】
レンズアレイは、上記第1モードにおいて、入射光の指向性分布を修正するように構成される。これは、3D自動立体効果、高輝度領域、または、マルチユーザ表示システムの提供を含むが、それに限定しない種々の異なる効果を達成するのに用いられてもよい。
【0078】
したがって、こうしたデバイスは、
1つの動作モードでの、肉眼で観察することができるフルカラー3D立体動(moving)画像、および、第2動作モードでの、フル解像度2D画像を都合よく提供することができる自動立体表示手段、
第1モードでは、実質的に非指向性の輝度性能を示し、第2モードでは、実質的に指向性の輝度性能を示すことができる切り替え可能な高輝度半透過型および反射型表示システム、または、
1つの動作モードでの、1人の観察者に対する1つのフルカラー2D動画像および少なくとも第2の観察者に対する少なくとも第2の異なる2D画像、ならびに、第2の動作モードでの、全ての観察者によって見られるフル解像度2D画像を都合よく提供することができるマルチビュアー表示手段のために用いられることができる。
【0079】
本発明の実施形態は、単独で、または、組み合わせで、以下の利点を提供するために以下の利点を提供することができる。
【0080】
本発明は、低レベルの画像クロストークおよび高輝度を有する、高品質の自動立体3D画像およびフル解像度2D画像の生成を可能にする。
【0081】
本発明はまた、2Dモードと、画像(異なってもよい)を広い範囲の方向から異なる目視者(viewer)が見ることのできるモードの間で切り替えられることのできる指向性のマルチビュアー表示の生成を可能にする。
【0082】
マイクロレンズをガラス基板の内部になるように配置することによって、レンズの表面からの反射を最小化することができ、出力表面(平坦である場合がある)を反射防止コーティングすることができる。
【0083】
高輝度半透過型または反射型ディスプレイは、有利には、ディスプレイの反射体材料によって規定された実質的に非指向性の特性を有する第1モードを有し、第2モードでは、指向性の輝度特性を有するため、決められた角度範囲からの表示輝度が大きい。こうしたディスプレイは、フルカラーで動作し、反射型と透過型の両方の動作モードの輝度を増加するのに用いることができる。
【0084】
マルチビュアーディスプレイは、ディスプレイの複数の同時使用を可能にするために、1つの動作モードでは、全ての目視者が同じ画像を見、第2動作モードでは、異なる目視者が異なる画像を見ることができるように構成されることができる。
【0085】
これにより、各観察者が同じ表示ユニットから好みの画像を見ることを可能にすることによって、ある環境で必要とされるディスプレイおよびディスプレイドライバの数を減らすことができる。
【0086】
こうしたディスプレイは、自動車ディスプレイ、現金自動預払機、および、座席背面機内エンタテインメントディスプレイ(seat-back aviation entertainment displays)などのシステムに特に適する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1a】3Dディスプレイにおけるスクリーン平面の後方の物体の見かけ上の奥行きの生成を示す図である。
【図1b】3Dディスプレイにおけるスクリーン平面の前方の物体の見かけ上の奥行きの生成を示す図である。
【図1c】ステレオペア画像の各画像上の対応する相同点の位置を示す図である。
【図2a】自動立体3Dディスプレイの前方における右眼観察ウィンドウの構成を概略的に示す図である。
【図2b】自動立体3Dディスプレイの前方における左眼観察ウィンドウの構成を概略的に示す図である。
【図3】3Dディスプレイの出力円錐からの観察ゾーンの生成を示す平面図である。
【図4a】自動立体ディスプレイの理想的なウィンドウのプロファイルを示す図である。
【図4b】自動立体3Dディスプレイからの観察ウィンドウの出力プロファイルの概略図である。
【図5】パララックスバリアディスプレイの構造を示す図である。
【図6】レンチキュラースクリーンディスプレイの構造を示す図である。
【図7a】液晶配向がレンズの両面においてホモジニアスであるレンズアレイの2つの円柱レンズの第1の断面図である。
【図7b】図7aの断面に直角の第2の断面における、図7aの2つの円柱レンズを示す図である。
【図7c】図7bと同じ図において、代替の機構を示す図であり、先端が平坦表面に実質的に接触し、電極が凸表面上に形成される。
【図8a】能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図8b】能動レンズ輝度向上ディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図8c】ツイステッド能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図8d】ツイステッド能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための代替の配向方向および偏光方向を示す図である。
【図9a】液晶配向がレンズの両面においてホメオトロピックであるレンズアレイの2つの円柱レンズの第1の断面図である。
【図9b】図9aの断面に直角の第2の断面における、図9aの2つの円柱レンズを示す図である。
【図10a】ホメオトロピック配向膜を組み込む能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図10b】ホメオトロピック配向膜およびホモジニアス配向膜を組み込む能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図11a】液晶配向が、能動レンズの1つの表面でホメオトロピックであり、第2の表面でホモジニアスであるレンズアレイの2つの円柱レンズを示す第1断面図である。
【図11b】図11aの断面に直角の第2の断面における、図11aの2つの円柱レンズを示す図である。
【図12】ホメオトロピック配向膜およびホモジニアス配向膜を組み込む能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図13a】液晶配向が、レンズ表面においてホメオトロピックおよびホモジニアスであることのできるレンズアレイの2つの円柱レンズを示す第1断面図である。
【図13b】図13aの断面に直角の第2の断面における、図13aの2つの円柱レンズを示す図である。
【図14】内部偏光子を有する能動レンズ自動立体3Dディスプレイの構造を示す断面図である。
【図15】外部偏光子を有する能動レンズ自動立体3Dディスプレイの構造を示す断面図である。
【図16】外部偏光子を有する能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図17】偏光発光型ディスプレイを有する能動レンズ自動立体3Dディスプレイを示す図である。
【図18】能動レンズ輝度向上反射型ディスプレイを示す図である。
【図19】能動レンズ輝度向上反射型ディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図20】傾斜した幾何学的レンズ軸を有する能動レンズのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図21】能動レンズが、発光型ディスプレイと出力偏光子の間に配置される切り替え可能な自動立体ディスプレイを示す図である。
【図22】レンズ材料について、温度に伴う屈折率の変動を概略的に示す図である。
【図23】レンズセル駆動電圧を最適化するコントロール装置を示す図である。
【図24】2Dモードの場合のレンズ材料についての、温度に伴う有効レンズ屈折率の制御を概略的に示す図である。
【図25】3Dモードの場合のレンズ材料についての、温度に伴う有効レンズ屈折率の制御を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照して例示としてのみ説明する。
【0089】
種々の実施形態の一部は、共通の要素を採用し、共通の要素には、簡潔にするために、共通の参照符号が与えられ、その説明は繰り返さない。さらに、各実施形態の要素の説明は、他の実施形態の同一の要素および対応する効果を有する要素にも同様に、必要な変更を加えて適用される。同様に、ディスプレイである実施形態を示す図は、簡単にするために、ディスプレイの一部のみを示す。実際、ディスプレイの全体のエリアにわたって構成が繰り返される。
【0090】
本明細書では、複屈折材料の光軸の方向(ダイレクタ方向または異常光軸方向)は、複屈折光軸と呼ばれるであろう。これは、幾何光学によって通常の方法で規定されるレンズの光軸と混同されるべきではない。
【0091】
円柱レンズは、縁(或る曲率半径を有しており、他の非球面成分を有する場合がある)が、第1の直線方向に掃引された(swept)レンズを指す。幾何学的マイクロレンズ軸は、第1直線方向に、すなわち、縁の掃引方向に平行にレンズの中心に沿ったラインとして規定される。2D−3D型ディスプレイでは、幾何学的マイクロレンズ軸は垂直方向であるため、ディスプレイの画素の列に平行である。本明細書で説明する輝度向上ディスプレイでは、幾何学的マイクロレンズ軸は水平であるため、ディスプレイの画素の行に平行である。
【0092】
全ての使用において、特定の方向に配向している材料が参照される時、セル内での縮退を防止するためのプレチルトが存在する場合があり、その場合、完全な配向ではないが、かなりの配向が残ったままになる。
【0093】
本明細書では、SLM(空間光変調器)は、液晶ディスプレイなどの「光弁(light valve)」デバイスと、エレクトロルミネッセンスディスプレイおよびLEDディスプレイなどの発光型デバイスとの両方を含む。種々の表示装置において、レンズのピッチは視点補正条件に対応し、すなわち、パララックスバリアのピッチは、各画素からの光を観察ウィンドウに方向制御するために、画素アレイのピッチの2倍より少し小さい。
【0094】
以下の実施形態では、等方性材料として高分子材料が用いられるが、原理的に、高分子以外の材料、たとえば、ガラスを別法として用いることができ、その場合、凸表面はエッチングによって形成されてもよい。
【0095】
ゼロツイスト能動レンズ
能動レンズは、それぞれの指向性分布の間での切り替えを可能にする切り替え可能な複屈折材料を含むレンズである。図6の固定レンズ94、98は、有利には、たとえば、フル解像度2Dモードと自動立体3Dモードの間での切り替えを可能にするために、本発明の能動レンズによって置き換えられてもよい。
【0096】
図7aおよび図7bはそれぞれ、能動レンズと呼ぶ、1つのタイプの切り替え可能な複屈折レンズアレイの側面図を示す。レンズ形態は、細長い円柱レンズのアレイを備える。簡潔にするために、図7aおよび図7bは共に、電極110と115の間にある、電極110と115の両端に制御電圧が印加されていない第1円柱レンズ、および、電極112と114の間にある、電極112と114の両端に制御電圧が印加された第2円柱レンズを示す。第1基板102および第2基板104は複屈折材料106を間に挟む。第1基板102は、その上に凸表面構造108を形成される。構造108は、実質的に等方性の材料で構成されることができる。そのため、複屈折材料106は、第1基板102および構造108に隣接して凸表面を有し、第2基板104に隣接して平坦表面を有する。
【0097】
電極層110および112は、基板102上に形成され、電極層114および115は、基板104上に形成される。電極は、たとえば、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明電極であってよい。電極110および112は、別法として、レンズ構造108の表面上に形成されてもよい。
【0098】
電極110、112および114、115は、作用を説明するために個別の要素として示されるため、液晶の切り替えは、同じ画像の異なる部分における異なる電界について示される。実際のデバイスでは、両方の基板上の電極は、レンズエリアの異なる領域が2Dまたは3Dとなるように独立に制御されるようにセグメント化されるか、または、表示エリア全体にわたって単一要素であってもよい。具体的には、レンズアレイは、当技術分野で知られるように、受動的に多重アドレス指定されてもよい。
【0099】
レンズは、スペーサボール、スペーサファイバ、スペーサリブ、または他の知られているスペーサ技法によって第2基板104から離れて配置されてもよい。別法として、レンズは、平坦表面に接触してもよい。有利には、これは、スペーサに対する必要性をなくすが、能動レンズ開口を減らすであろう。
【0100】
電極110と115の間のギャプ内で、複屈折分子は、セルの両端に電界が印加されない状態で、正の誘電異方性のネマチック液晶材料によって表される。液晶分子のダイレクタは、凸表面構造108および第2基板104におけるホモジニアス配向膜116および118によって実質的に表面の面内で配向する。小さなプレチルト(図示せず)が、配向膜116、118によってセルに与えられてもよい。説明のために、分子は、異常光屈折率が分子の長軸に平行な状態で、細長い楕円として表される。
【0101】
切り替え(switched)状態では、電界は、液晶分子を再配向させる(reorient)働きをするため、レンズセルの中央のダイレクタ配向(orientation)120は、実質的に垂直方向である。これは、セル全体にわたる屈折率分布の変動を引き起こす。
【0102】
動作の際、こうした素子は、たとえば、図8aに示すように、薄膜トランジスタ(TFT)LCDの出力偏光子上で配向する。ディスプレイの直線出力偏光の透過方向122が0°である場合、光は、第2基板の層104、114、115、および118を備える第1平坦基板124に入射する。この基板における液晶材料の配向方向は偏光子122の透過軸に平行である。光は、複屈折材料を通過し、表面102、108、110,116を備えるレンズ基板126に当たる。
【0103】
オフ状態では、セルには電圧は印加されず、偏光は、液晶材料の異常光軸上に入射する。高分子の屈折率は、液晶材料の常光線屈折率に近くなるように設定され、したがって、レンズの表面に位相差が存在する。レンズは、垂直偏光状態の光に作用して、光出力の指向性分布の変化が引き起こされる。自動立体3Dディスプレイおよび指向性観察システムについてよく知られているように、画素平面がウィンドウ平面に実質的に結像されるような焦点距離をレンズが有するように位相構造が設定される可能性がある。
【0104】
輝度向上観察システムでは、画素平面の画像は、垂直配向したレンズではなく水平配向した円柱マイクロレンズアレイ127の場合に、ウィンドウ平面で生成される。この場合、出力偏光子123の配向方向は、図8bに示すように、水平であるように設定され、平面125および凸表面構造127における配向方向も、水平であるように設定される。以下の説明では、レンズは垂直方向に配向すると仮定されるが、同じ装置を、水平配向したレンズに適用することができる。
【0105】
オン状態では、セルの両端に電圧が印加され、液晶材料は、電界に平行に、図7aおよび図7bに示す向き120に再配向するため、入射偏光状態は、実質的に液晶の常光線屈折率に直面する(see)。レンズ構造108は、液晶材料の常光線屈折率に実質的に屈折率整合する(indexed matched)ため、液晶レンズでは、光学効果は実質的に全く観察されない。このモードでは、レンズによって、指向性分布の修正は実質的に全く与えられず、出力の指向性は、ベースディスプレイからの出力とほぼ同じである。実際のシステムでは、屈折率整合は、厳密でない場合があるため、厳密でない程度に応じて、小さな残留光学効果が存在する場合がある。この動作モードは、ディスプレイの2D出力または非修正出力に用いられる可能性がある。有利には、これによって、ユーザが、自動立体表示システムまたは指向性表示システムの場合にディスプレイの画素の全てを見るか、または、輝度向上表示システムの場合に均一に照明されたウィンドウ平面を見ることが可能になる。
【0106】
図7cは、レンズ先端(cusp)が平坦基板と接触し、電極が凸表面構造上に位置するセルを示す。付加的な絶縁層(図示せず)が、電気的短絡を防止するために、表面上に組み込まれてもよい。一般に、電気的短絡をなくすために、図7aおよび図7bに示すように、平坦表面上に電極を組み込むことが望ましい場合があるが、これは、セルの両端での駆動電圧を増加させる場合がある。
【0107】
平坦基板が、ディスプレイの出力偏光とアライメントをとられるこうしたデバイスは、有利には、両方の指向性分布の動作の場合に、同じ液晶モード(たとえば、ノーマリホワイトまたはノーマリブラック)で動作する。
【0108】
屈折率整合条件は、出力の指向性分布が実質的に修正されないように設定される。実際には、等方性屈折率と、複屈折率材料の屈折率のうちの1つの屈折率との間の小さな差が存在する場合がある。しかしながら、小さな屈折率の差の場合、画素平面での目のスポットサイズがレンズのサイズと同じであるため、光出力は、その差にかなり鈍感である場合がある。したがって、屈折率整合条件についての許容度は、比較的緩和される場合がある。たとえば、1つの作製された系では、555nmで1.56の等方性屈折率を有する材料Norland製NOA71が、対応する、1.52の常光線屈折率を有するMerck製のE7と組み合わせて用いられた。2D−3D表示のデモンストレーションでは、これは、2D画像の品質には実質的に影響を与えずに、使用時に2Dモードのウィンドウ平面において小さな輝度(intensity)変動をもたらした。
【0109】
ツイステッド能動レンズセル
実際には、偏光表示デバイスの出力偏光角度は、一般に、垂直方向になるように設定されない。これは、液晶ディスプレイなどのディスプレイの視野角性能の最適化による。たとえば、よく知られているノーマリホワイト透過型ツイステッドネマチックディスプレイは、45°の角度の出力偏光を有するが、半透過型および反射型ディスプレイは、たとえば、20°に近い出力角度を有する。これまでに述べた実施形態では、複屈折レンズの入力表面および出力表面上での偏光状態の出力角度は、この角度に整合しない場合がある、ゼロであるように設定される。
【0110】
凸表面構造は、付随する表面配向エネルギーを有し、配向膜と競合して、液晶セル上に配向を与えるであろう。この効果は、曲率半径が最小であるレンズ先端の近くで特に重要である場合がある。これは、異なる液晶ダイレクタ配向のエリア間で液晶材料の回位を引き起こす場合がある。回位は、散乱を引き起こし、光学クロストークを増加させ、レンズコントラストを低下させ、緩和時間を増加させる場合があり、したがって、望ましくない。したがって、レンズ表面における液晶材料を、レンズアレイの円柱レンズの幾何学的光軸に平行に配向させることが好ましい。
【0111】
1つの手法は、パネル出力偏光に平行である配向膜を平面および凸表面上に作成することであろう。これは、円柱レンズの幾何学的レンズ軸に平行でない、凸レンズ表面構造における配向膜を必要とするであろう。
【0112】
本発明の一実施形態では、ディスプレイの出力偏光は、能動レンズへの入力において、半波長板などの波長板を組み込むことによって修正することができる。これは、出力直線偏光状態が、能動レンズを通過する前に、垂直方向に対して回転することを可能にする。半波長板、および、色分散効果が減少する広帯域半波長板は当技術分野ではよく知られている。波長板は材料およびデバイスへの取り付けのために追加のコストがかかり、波長板は有彩色であってもよく、波長板は厚みを追加する。画素平面とレンズの分離は、表示デバイスからのウィンドウの距離を決め、したがって、この距離を増加させることは、ディスプレイからの最良の観察ゾーンの距離を増加させる。
【0113】
たとえば、80μmのカラーの画素以下のピッチを有する場合がある2ビューディスプレイは、ほぼ160μmのピッチのレンズ、および、900μmの、レンズに対する画素の典型的な分離を有することになり、この典型的な分離は、500μmのディスプレイ基板の厚み、200μmの出力偏光子の厚み、150μmのガラスMicrosheetの厚み、および50μm厚の液晶層を含む。この系は、ディスプレイから480mmの距離において65mm幅のウィンドウを生成するであろう。200μm厚の波長板が付加される場合、この距離は585mmに増加するであろう。こうした名目上の視距離の増加は、多くのディスプレイ、特にモバイルディスプレイにとって望ましくない。画素サイズを減少することは、視距離をさらに増加するであろう。処理時間および材料を追加するという犠牲を払って、高複屈折性の材料をコーティングすることによって作られるような薄い波長板が使用されてもよい。したがって、追加の波長板を導入することは、望ましいオプションでない場合がある。
【0114】
レンズデバイスに偏光回転機能を組み込むこと以外に、凸表面構造における3Dモードでの液晶材料の配向が、幾何学的レンズ軸に平行である能動レンズを作成することによって、垂直出力偏光を提供するために、波長板を追加するか、または、ディスプレイを再設計する必要がなくなることが望ましい。
【0115】
本発明の目的は、入射偏光状態のねじれが能動レンズの厚みを通して起こるような光パワーをレンズが有するモードにおいて、平坦基板上の液晶材料の配向とレンズ基板上の液晶材料の配向の間にある角度を設定することによって、能動レンズ内で誘導回転(guiding rotation)を用いることによる能動レンズ内での出力偏光の調整を提供することである。そのため、能動レンズは、指向性分布修正動作モードにおける円柱レンズの幾何学的光軸に対する複屈折材料の平行な配向に加えて、表示デバイスからの出力偏光の補正を提供するのに役立つ。
【0116】
例のシステムを調べることによってわかるように、これは意外なことに有利である。その例では、屈折率1.56の等方性材料、および、1.75の異常光屈折率を有するMerck Limited製のE7液晶材料を用いて得られる自動立体3Dディスプレイは、130μmの最適レンズ曲率半径を与える。こうしたレンズは27.5μmのサグ(sag)を有する。そのため、少なくともこの厚みの液晶層が、レンズの最も厚い部分で必要とされる。こうした層は、6μmを超える光学厚みを有し、Gooch−Tarryの関係から、したがって、Maugin限界に近づく、強く誘導された(strongly guided)レジーム(regime)内にある。したがって、偏光状態は、レンズエリアのほとんどにわたって都合よく誘導されるであろう。
【0117】
ポジティブパワーの(positive power)液晶レンズの場合、先端は厚みが薄く、したがって、誘導があまり有効でない場合がある。同様に、ネガティブパワーの(negative power)液晶レンズの場合、レンズの中心は厚みが薄く、誘導があまり有効でない場合がある。層が、偏光状態を誘導し、したがって、デバイスのコントラストを最適にし続けるように、液晶材料のさらなる均一な厚みの層を、セルの最も薄い部分の近くに組み込んでもよい。45°の出力偏光子透過角度を有するベースLCD200を用いた自動立体ディスプレイについての本発明の一実施形態が図8cに示される。ディスプレイからの出力は、ホモジニアスに配向した正の誘電異方性液晶材料を表面に有する平面基板上に入射する。レンズ表面における配向膜は、レンズに平行であり、したがって、垂直方向である。よって、レンズを通して偏光状態の45°の回転が起こり、レンズ表面において、偏光は液晶材料の異常光軸上に入射し、位相不整合、したがって、レンズ焦点距離が生成される。
【0118】
セル内での材料の回転は、コレステリック物質をドーピングすることによって補助されてもよい。配向膜の近くでのプレチルト効果を補償するために、平坦表面および凸表面における配向方向は、反平行である、垂直方向に分解した配向方向成分を有してもよく、その結果、オフ状態では、セルは構造全体にわたってほぼ均一なプレチルトを有する。任意選択で、セルは、平行かまたは反平行である、垂直方向の配向成分を有してもよく、その場合、反応速度が改善される場合がある。
【0119】
オン状態では、図7bに示すように、分子は、分子配向120が印加電界に平行な状態で、実質的に垂直配向状態に駆動される。この場合、レンズにおける偏光の回転が減るため、レンズ表面に入射する偏光状態は、幾何学的レンズ軸に平行ではない。しかしながら、偏光状態は、液晶屈折率の常光線成分に配向することになり、したがって、レンズは、ほぼ屈折率整合し、実質的に光パワーを有さないことになる。
【0120】
オン状態では、配向膜の近くで液晶材料の残留チルト(tilt)が存在する場合があり、この残留チルトによって、入射偏光状態についてレンズの焦点距離の増加がもたらされることになる。このチルトは、液晶材料の常光線成分の屈折率を、等方性材料より小さくなるように減少させることによって補償することができる。そのため、レンズの巨視的な(bulk)焦点距離を補償することができる。オフ状態の焦点距離を確定するために、液晶材料の異常光屈折率から曲率半径が設定される。
【0121】
本発明の実施形態の全てにおいて、第1基板上での配向膜の配向は、偏光表示デバイスからの入力偏光状態に対して平行ではなく直角である場合がある。これは、有利には、第1動作モードにおける能動レンズセルの偏光の誘導回転を改善する場合がある。これは、図8dに示され、平坦基板203における配向方向は、パネル出力偏光200に直角である。レンズアレイは配向方向205を有する。
【0122】
図18は、輝度向上半透過型表示モードで使用するための本発明の別の実施形態を示す。光源252は、ITO皮膜256を有する支持基板254および等方性微細構造258を含む能動レンズを照明する。配向膜260は、等方性微細構造258の表面上に形成され、液晶材料262は、配向膜260と、ITO皮膜266および配向膜264が表面に形成された平坦基板268との間に挟まれる。基板266は、たとえば、厚み160μmのMicrosheetであってよい。能動レンズは、標準半透過ディスプレイで使用されるような偏光子および波長板スタック270上に設置される。対向基板272および液晶層274は、吸収領域277、入射光を反射するための反射領域278、および、バックライト282および能動マトリクスバックプレーン284からの光を透過するための透過領域280を有する半反射反射(transflective reflective)画素平面276上に形成される。
【0123】
周囲光源252(装置の一部ではない)からの光はディスプレイを照明する。第1動作モードでは、レンズはオフ状態にあるためフォーカス機能が存在する。そのため、光源は画素平面276上に結像する。反射光は、隣接するレンズによって集光され、光線286で示すように観察者に結像する。ディスプレイの前部の制限されたウィンドウにおいて、画像が明るく現れるであろう。明るいウィンドウはより暗いウィンドウによって散在させられているため、全体の輝度が維持される。透過モードでは、制限された透過領域からの光は、画像の見かけの輝度を増加するため、ウィンドウ平面に同様に結像される。前部反射288は、有効光286と異なる方向にあるため、見えない。
【0124】
図18のディスプレイの動作は図19に示される。入射光は、レンズ262において2つの偏光状態に分解される。オフ状態では、レンズによって結像される偏光状態は、レンズ幾何学的軸292に平行であり、レンズを通して回転して平坦基板294上に入るため、典型的な半透過ディスプレイの場合、たとえば、20°である場合がある、ディスプレイの偏光子295の透過軸に平行に入射する。この光は、反射バックプレーン296上に透過され、光は、ディスプレイによって変調され、偏光子298および平坦基板300を通して反射される。第2の光の回転は、光がレンズ302によって観察者290に対して結像されるように起こる。
【0125】
非レンズモードでは、オン状態液晶配向において、入射偏光が、全ての偏光において常光線液晶屈折率に直面する(see)ため、レンズは、実際には全く機能を有さず、光出力は実質的に修正されない。
【0126】
能動レンズデバイスでの非ゼロねじれの使用のさらなる利点は、セルの配向縮退を減らすことができることである。縮退は、上部表面と下部表面の間の液晶配向についての、セル内の液晶の複数の最小エネルギーねじれ方向から生ずる。複数の回転エネルギー最小値が存在する場合、分子が、セルを通してたどる可能性がある複数の回転経路が存在し、したがって、誘導作用が異なる可能性があり、セルの異なる部分において異なるレンズ特性を与える。回転オフセットを用いることは、セル内の分子のための単一の好ましい回転経路を可能にし、したがって、セルの均一性を高める。
【0127】
こうして、能動レンズ内の偏光状態の回転は、レンズ表面における平行配向を維持しながら、特定のパネルについてのレンズ性能を最適化するのに役立つ。デバイスは、反射光の反射経路と同じように、透過光について機能する。
【0128】
図20に示す、さらなる実施形態では、円柱レンズアレイは、パネルの画素の列に対して傾斜する場合がある。ビュー間のクロストークが増加するという不利を伴って、見かけのビュー数を増加させるために、パネルの画素に対してレンズ軸を傾斜させることは、当技術分野ではよく知られている。本発明では、能動レンズが、幾何学的レンズ軸に平行である、レンズ表面における液晶の配向を有することが望ましい。こうしたデバイスは、有利には、ねじれを達成するために、平坦表面と凸表面の間のねじれを用いる場合がある。図20は、画素306が列および行で配置される画素平面304を示す。画素は、45°の出力偏光308を有する透過型ノーマリホワイトツイステッドネマチック液晶ディスプレイに組み込まれる。能動レンズの平坦基板310は45°の配向方向を有し、凸表面レンズ312は、たとえば、10°の幾何学的レンズ軸の配向を有する。この表面312上の配向膜方向は、190°に設定されるため、平坦基板上の配向方向は、垂直方向に反平行成分を有する。
【0129】
レンズは、別法として、凸表面の表面において、図に示す曲率とは逆の曲率で配向してもよい。この場合、液晶レンズの最も薄い部分は、先端の近くではなく、レンズの中心に配置される(align)。こうしたレンズは、レンズの収差の増加により、波面品質の低下を受ける。
【0130】
ホメオトロピック配向膜
これまでに述べた実施形態は、従来のホモジニアス配向膜および正の誘電異方性材料を使用する。しかしながら、デバイスを2Dモードで動作させるために、セルの両端で電圧が印加される必要がある。多くのデバイスの2Dモードは、より多く使用される可能性がある。2D画像のための3Dモードでのデバイスの動作は、ディスプレイのユーザに好ましくないアーチファクトを引き起こすことになり、したがって、望ましくない。したがって、こうした素子は、多くは切り替え式の動作状態に維持される必要があるであろう。これは、3Dモードと比較して、デバイスの電力消費の増加を引き起こすであろう。スイッチがうまく働かない場合、デバイスは、3Dモードのままとなることになり、同様に、望ましくない。
【0131】
デバイスが、オフ状態にある時に2Dモードで動作するために、光学微細構造材料108の屈折率は、液晶材料の異常光屈折率と同じであるように設定されるであろう。これは、低コストで容易に入手可能で、かつ、安全に扱うことのできる高分子および液晶材料の選択が必要であるために望ましくない。
【0132】
上記例では、E7は、550nmで、0.22のデルタnを有し、1.75の異常光屈折率(ne)を有するMerck製の典型的な正の誘電異方性材料である。1.6より大きい屈折率を有する高分子材料が入手可能であるが、これらの材料は、毒性があり、高価であり、扱うのが難しい傾向があり、したがって、望ましくない。別法として、正の誘電異方性液晶材料のneは、より受け入れやすい高分子材料に整合するように下げることができる。しかしながら、neを下げることは、材料のデルタnを下げる傾向がある。たとえば、Merck Limited製のMLC3376は、1.57のneを有するが、0.09のデルタnしか有さない。こうしたレンズは、−100μm未満のレンズ曲率を必要とするであろう。そのため、こうしたレンズは、サグが増加し、配向が反転し、表面反射が増加し、散乱、光学クロストーク、および反応時間の増加につながる収差が低下する。こうしたレンズは、同様に、あまり強く誘導しないため、セル内の入力偏光の回転が効果的でなくなるであろう。
【0133】
したがって、レンズ構造を形成するのに通常用いられる多くの高分子の場合、液晶材料の屈折率の異常光成分ではなく、常光線成分に対する等方性材料の屈折率整合を使用することが、簡単で、安価で、高い性能を提供する。
【0134】
そのため、ホモジニアス配向、正の誘電異方性液晶、および、容易に入手可能な高分子材料の組み合わせを用いて作製された能動レンズデバイスは、一般に、先に述べた理由で望ましくない、駆動式(driven)2D動作モードを必要とするであろう。
【0135】
能動レンズは、図7と同様である、図9aおよび図9bに示すように構成される。基板102は、電極110、112、光学微細構造108、および、その表面上に形成されたホメオトロピック配向膜128を有し、一方、基板104は、電極114、115およびその表面上に形成されたホメオトロピック配向膜130を有する。セルは、負の誘電異方性を有する液晶材料132で充填される。
【0136】
デバイスの動作は図10aで述べられる。ディスプレイの出力偏光子は、垂直方向に対して平行な入力直線偏光状態方向136を提供する。ホメオトロピック配向によって、ダイレクタが、表面の平面にほぼ直角に配向する。オフ状態では、図9において電極110の下の液晶材料配向124で示すように、偏光状態は、液晶材料上に入射し、液晶材料の常光線屈折率に直面し、次に、等方性高分子微細構造108の屈折率に整合する。そのため、レンズにおいて、実質的な位相段差は存在せず、レンズは、出力指向性分布に対して実質的に影響を与えない。
【0137】
オン状態では、図9aおよび図9bの電極112の下に示すように、液晶の負の誘電異方性により、その配向132が、セルの中央のダイレクタが実質的に基板の平面内にあるように変調される。したがって、ディスプレイの出力偏光が直面する液晶の異常光屈折率成分が存在し、レンズによって位相段差が生成される。こうしたレンズを用いて、ディスプレイの指向性分布を変更し、たとえば、3D動作モードを生成することができる。
【0138】
こうした実施形態は、有利には、屈折率の低い従来の高分子材料を用いた切り替え式でない2D動作モードを生成するのに役立ち、したがって、安価で、製造が簡単である。この実施形態では、デバイスの電力消費は、デバイスが3D動作モードにある時に存在するだけである。
【0139】
オン状態では、液晶分子は、電界によって基板に平行に引き寄せられる。レンズ表面における液晶材料の配向バイアスは、たとえば、レンズ微細構造の表面エネルギーによって、幾何学的マイクロレンズ軸に平行になる場合がある。駆動状態においてこの向きの配向を促進するために、付加的な配向特徴部(feature)がこの表面上に組み込まれる場合がある。こうした配向特徴部は、高分子微細構造内に形成された、幾何学的マイクロレンズ軸に平行に通る溝であってもよい。こうした溝は、たとえば、回折格子によって形成されてもよい。回折格子は、有利には、レンズと同じ複製プロセスで形成することができるように、マイクロレンズ構造のマスタリングプロセスにおいて形成されてもよい。
【0140】
平坦基板はまた、オン状態での分子の配向をバイアスするために、ホモジニアス配向構造を有してもよい。オン状態での配向膜のバイアスは、表示デバイスからの出力偏光状態が幾何学的マイクロレンズ軸にほぼ平行になるように回転するように、セルを通して偏光の回転を提供するように構成されてもよい。これは図10bに示される。たとえば、45°のパネル出力偏光が平坦基板上に入射する。オフ状態では、ホメオトロピックに配向した液晶が、常光線屈折率が等方性材料に整合した状態で見られるため、実質的に回転は必要とされない。しかしオン状態では、配向膜208は、ホモジニアス配向バイアスを有するため、液晶分子は、パネルの出力偏光方向にほぼ平行に(または直角に)配向する。レンズにおいて、ホモジニアス配向バイアスは、平坦基板における配向の垂直成分に反平行であり、したがって、セルを通して回転が提供される。こうした回転は、先に述べたものと同じ利点を提供し、特に、波長板の追加、または、表示デバイス出力偏光の他の変更を必要とすることなく、標準ディスプレイの出力偏光とレンズのアラメントをとることを可能にし、したがって、デバイスの視野角を最大にする。
【0141】
本発明のさらなる実施形態は、図11および図12に示される。この構成では、平坦基板における配向膜134は、ホモジニアス配向膜であり、液晶を基板に平行に配向させる。オフ状態では、入射偏光は、平坦基板の近くの材料136内で異常光屈折率に直面する。しかしながら、レンズ表面に近い材料138は、ホメオトロピックに配向するため、偏光状態は、凸表面領域において実質的に常光線屈折率に直面する。高分子屈折率は、液晶材料の常光線屈折率に実質的に整合するため、実質的に位相段差が存在せず、レンズは機能を有さない。
【0142】
ホモジニアス配向膜に近い領域における付加的なレンズパワーを補償するために、液晶の常光線屈折率は、高分子材料の屈折率より低い場合がある。レンズの曲率は、液晶材料の異常光屈折率および高分子屈折率によって設定される。
【0143】
オン状態では、負の誘電異方性材料は、ダイレクタ140が全体のセルを通して基板に実質的に平行であるように再配向し、偏光状態は、液晶材料の異常光屈折率に直面する。そのため、レンズにおける位相段差が存在し、修正された指向性分布および3D動作モードが生ずる。これは、図11aおよび図11bの電極112の下のダイレクタ配向140によって示される。
【0144】
図13に示すような双安定レンズを形成するために、レンズ表面上のそれぞれの配向膜におけるホメオトロピック配向およびホモジニアス配向の組み合わせを用いてもよい。こうしたレンズは、2つの状態の間で切り替えるため以外で、パワーを加えられる必要がない。画素輝度切り替え用途のための平坦セルは、G.P. Bryan-Brown, C.V. Brown, J.C. Jones, E.L. Wood, I.C. Sage, P. Brett, J. Rudin著「Grating aligned bistable Nematic device」(SID 97 Digest pp37-40)に記載されている。格子およびホメオトロピック配向膜の組み合わせを用いて、双安定セルが作成される。
【0145】
第1電極領域110において、セルの両端でパルスが駆動されるため、材料は、セルにわたってホメオトロピック配向膜に従って配向する。入射直線偏光状態は、その後、液晶材料146の常光線屈折率に直面し、レンズ構造は分解されない。dc電圧パルスが印加される場合、レンズ表面における液晶配向は、ダイレクタ148が格子表面に平行になるように修正される。そのため、レンズ表面の領域では、偏光状態は、液晶材料の異常光屈折率に直面し、レンズが分解される。格子の表面エネルギーが、ホメオトロピック配向膜の表面エネルギーと同じになるように設定される場合、デバイスは双安定とすることができ、2Dモードと3Dモードの両方で駆動されないであろう。デバイスは、正または負の電圧パルスを印加することによって、2Dモードと3Dモードの間で切り替えられる。
【0146】
上記の実施形態では、ホメオトロピック配向膜は、レンズ表面で使用されるため、第1の非駆動モードでは、入射偏光状態は、高分子と屈折率整合する液晶の常光線屈折率に直面する。常光線屈折率を用いることによって、デバイスの作製時に標準高分子材料が使用されてもよい。位相構造がレンズ表面で生ずるため、レンズの平坦表面はホメオトロピックまたはホモジニアス配向のいずれかを使用することができる。
【0147】
外部偏光子の能動レンズデバイス
偏光出力表示システムにおいて、従来技術のディスプレイは、偏光子に対する能動レンズの相対位置を開示しない。図14に示すように、能動レンズは、たとえば、厚みが150μm以下のMicrosheetガラスまたはプラスチック材料基板である場合がある基板211、平坦基板配向膜とITO皮膜212およびレンズ基板配向膜とITO皮膜214、複屈折材料218および等方性材料220および最終基板216を備えてもよい。この構造は、ディスプレイの出力偏光子の後に配置してもよい。輝度は、ディスプレイ偏光子によって分解(analyse)されているため、レンズは、出力光の指向性のみを操作する。こうしたシステムは、出力偏光子の厚みのために、視距離の増加を受ける。
【0148】
システムの視距離は、図15に示すように、デバイスの能動レンズの後に偏光子を配置することによって減少させることができる。この場合、LCD偏光は、未だ出力偏光子82によって分解されていないが、まず能動レンズ211〜220を通過する。ディスプレイの動作は図16に示される。たとえば、ディスプレイが、出力偏光子によって0°に設定されたノーマリホワイト出力偏光角222を有する液晶ディスプレイである場合、平坦基板は、0°の配向角224を有するホモジニアス配向を有する。レンズのオフ状態では、LCDからのホワイト状態の光は、レンズを通過するため、円柱レンズアレイに入射する偏光226は、幾何学的レンズ軸に平行になる。この光は、その後、0°の透過方向を有する出力偏光子228を透過する。レンズのオン状態では、電界がセルに印加され、正の誘電異方性材料が、セルの基板にほぼ直角に再配向する。そのため、偏光状態は、レンズの常光線屈折率に直面し、レンズ機能は与えられない。出力偏光状態は、出力偏光子を通過する。
【0149】
こうした構成は、出力偏光子におけるコントラストの損失のために、レンズセルの非ゼロ°の偏光回転を有するデバイス内では都合よく動作しないであろう。こうしたデバイスは、ディスプレイの出力偏光を回転させるために、1つまたは複数の波長板の追加を必要とする場合がある。波長板は、有利には、偏光子より薄く作られる可能性がある。レンズセルにおけるコントラストの損失はまた、最終画像のコントラストを低下させる働きをする場合がある。
【0150】
外部偏光子の実施形態は、さらに、外部周囲光におけるレンズの可視性が減るという利点を有する。ディスプレイの前部に入射する外部光源は、入力偏光子を通過し、レンズおよび位相段差を有する他の表面(たとえば、ITOなどの反射皮膜から)においてフレネル反射を受け、その後、出力偏光子を通過して戻る。したがって、外部偏光子は、各方向に通過する光の一部を吸収し、したがって、レンズ反射を減らし、有利には、表示コントラストを増加させる。
【0151】
有利には、こうした素子は高い偏光変換効率を有する液晶モードで、モードのコントラストを最適化するために使用することができる。透過型ノーマリホワイトツイステッドネマチック液晶などの、一部のデバイスでは、オン状態(最大ホワイトレベルを生成する偏光状態と呼ぶ)は、ブラック状態に対して90°の回転を有する。そのため、レンズを通過する偏光状態は、オン状態のみから分解(resolve)することができる。たとえば、混合ツイステッドネマチックデバイスなどの、他のデバイスでは、オン偏光状態は、ブラック状態に直角でない場合がある。こうしたデバイスは、内部能動レンズ構成においてコントラストの減少を受ける。
【0152】
多くの反射型液晶ディスプレイなどの、偏光子に加えて波長板が光出力上で使用されるシステムでは、波長板は、画素平面と能動レンズデバイスの間に配置される場合があるため、ディスプレイからの出力はほぼ直線である。
【0153】
図21は、本発明のさらなる実施形態を示す。たとえば、高分子エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの発光型ディスプレイは、発光画素316〜330が形成される基板314を備える。発光画素は、偏光しないか、部分的に偏光するか、または、ディスプレイの素子の残りを通して最適な透過を提供するようにアライメントをとられた直線出力偏光方向を持って偏光する場合がある。発光型ディスプレイ対向基板332には、能動レンズ素子が取り付けられる。能動レンズは、たとえば、Microsheet334、ITO電極336、342、切り替え可能な複屈折材料338、等方性凸表面構造340、および、支持基板344を備える。最終出力偏光子346は、マイクロレンズアレイの幾何学的軸に平行である透過方向を持った状態で取り付けられる。
【0154】
オフ状態では、液晶材料は、画素から光を受け取り、垂直偏光状態(紙面に対して垂直)について、屈折構造において位相不整合が生じるため、レンズは光学機能を有する。この偏光状態は、出力偏光子346を透過する。そのため、能動レンズは、画素平面と出力偏光子の間に配置されてもよく、有利には、ディスプレイの視距離を減らす。オン状態では、分子が再配向するため、偏光子346を透過した出力偏光は液晶材料338の常光線屈折率に直面しており、レンズ機能は見られない。こうして、偏光子344は、クリーンアップ偏光子とレンズ分解(analyzing)偏光子の機能を組み合わせるのに役立つ。
【0155】
偏光発光型ディスプレイ
高分子および小分子有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを含む無機および有機のエレクトロルミネッセンスディスプレイなどの発光型ディスプレイは、通常、偏光しない光出力を生成する。しかしながら、指向性分布光学切り替えシステムは、たとえば、均等拡散である場合がある第1モードと、たとえば、自動立体3Dウィンドウである場合がある第2モードとの間でディスプレイが再構成されることが可能になるように偏光の切り替えに依存する場合がある。そのため、非偏光ディスプレイは、偏光指向性分布光学切り替えシステムと組み合わされると、偏光損失を示すことになる。
【0156】
本発明の目的は、能動レンズを備える指向性分布光学切り替えシステムの入力偏光状態に対して偏光発光型ディスプレイの出力偏光のアライメントをとることによって、発光型ディスプレイにおける高光効率を提供することである。偏光のアライメントは、ディスプレイの発光画素内の発光材料の一軸配向した発色団(uniaxial aligned chromophore)によって達成され得る。偏光出力の主軸の配向方向(alignment direction)は、複屈折マイクロレンズ内の複屈折材料の配向方向と連携するように設定される場合がある。
【0157】
こうして、能動レンズを用いた高効率発光型指向性分布光学切り替えディスプレイを達成することができる。こうしたディスプレイは、LCDディスプレイと比べてさらなる利点を有し、たとえば、バックライトを必要とせず、したがって、薄くかつ軽く作ることができ、モバイル用途にとって重要である可能性がある。
【0158】
偏光した出力を提供する任意のタイプの偏光発光型ディスプレイが用いられてもよい。たとえば、それは、A.E.A. Contoret, S.R. Farrar, P.O. Jackson, S.M. Khan, L. May, M. O'Neill, J.E. Nicholls, S.M. KellyおよびG.J. Richards著「Polarized Electroluminescence from an Anisotropic Nematic Network on a Non-contact Photoalignment Layer」(Adv. Mater. 2000, 12, No.13, July 5 p971)に記載される偏光有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであってもよい。これは、実際のシステムにおいて、11:1の偏光効率を達成することができることを証明する。
【0159】
図17は、本発明の一実施形態を示す。画素230〜244のアレイは表示基板246上に形成される。基板246は、画素のそれぞれが、電気信号によって独立にアドレス指定されるようにアドレス指定用の薄膜トランジスタおよび電極のアレイを備える場合がある。薄膜トランジスタは、無機であるか、または、有機材料で具現されてもよい。別法として、画素は、アドレス指定用トランジスタが画素に存在する必要がない受動アドレス指定方式(scheme)によってアドレス指定されてもよい。画素23〜244のそれぞれは、発光の偏光が、全画素について、ほぼ直線であり、かつ、ほぼ同じ向きであるように、発色団を備える発光材料が一軸配向する発光領域を備える。各画素は、ほぼ同じ偏光方向を有するように構成される。発光材料は、たとえば、高分子エレクトロルミネッセンス材料または小分子エレクトロルミネッセンス材料であってよい。発光材料の分子を配向させることによって、偏光発光を生成する手段が知られている。さらなるカバー基板248が画素に取り付けられる。基板248は、障壁層およびコントラスト強調ブラックマスク層を組み込む場合がある。
【0160】
任意選択の偏光子250が基板248に取り付けられてもよい。別法として、偏光子材料は、たとえば、基板248の内部表面上で、画素平面に、または、画素平面の近くに組み込まれてもよい。
【0161】
たとえば、1つの知られている偏光有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、11:1の偏光比を有する。偏光効率45%の典型的な偏光子と組み合わせると、光源からの全体のスループットは、クリーンアップ偏光子と組み合わせた非偏光の光源についての45%と比較すると、82.5%になるであろう。
【0162】
能動複屈折マイクロレンズ212〜220は、偏光子250の表面上に形成される。スイッチセルからの出力偏光を切り替えるために、電圧が液晶セルの両端に印加される。
【0163】
図17の装置は以下のように動作する。偏光発光画素アレイ230〜244からの出力偏光は、発光材料の偏光方向の主軸に平行な透過方向を有する直線偏光子250によってクリーンアップされる(cleaned)。この偏光状態は、オフ状態において、複屈折レンズ218内の液晶材料の配向に平行であるようにアライメントがとられる。この屈折率は、等方性材料40の屈折率と異なるため、レンズ効果が存在する。第2モードでは、材料218は、印加電界によって再配向するため、レンズ表面において等方性材料に対する屈折率段差が実質的に存在せず、レンズは光学機能を有さない。これは、2Dモードに対して光出力の指向性分布の変化を引き起こす。レンズは、ウィンドウ平面において画素平面の画像を生成するように構成される場合がある。
【0164】
最適動作温度範囲の拡張
次に、最適動作温度範囲を拡張するための考慮事項を述べる。これらの考慮事項は、先に述べた能動複屈折レンズアレイ全てに当てはまり、実際に一般に、電極両端の電圧制御によって2つのモードで動作する任意の他の能動複屈折レンズアレイに当てはまる。
【0165】
ディスプレイの性能は、動作温度と共に変化する場合がある。これは、温度に伴う、複屈折材料の常光線屈折率および異常光屈折率、ならびに、等方性材料の屈折率の変動によるものである可能性がある。
【0166】
液晶材料と高分子材料の典型的な組み合わせについての、温度352に対する屈折率350の変動が、図22に概略的に示される。常光線屈折率356は、ネマチック−等方性遷移温度に近づくにつれて増加する傾向があるが、異常光屈折率354は減少する。ネマチック−等方性遷移温度360を超えると、複屈折材料の屈折率は整合するようになる。高分子の屈折率358は、図示するように、温度と共に減少する場合がある。
【0167】
図22に示すシステムは、正の誘電異方性液晶材料について、高分子の屈折率356が、複屈折材料の常光線屈折率に実質的に整合する典型的な材料系の場合を示す。本出願の他の箇所で述べたように、こうしたシステムは、通常、高分子の屈折率と常光線屈折率が実質的に整合する2D動作モードを可能にするために、セルに電圧が印加されることを必要とする。他の材料系では、高分子の屈折率356は、複屈折材料の異常光屈折率に実質的に整合する場合があり、その場合、以下の考慮事項が、必要な変更を加えてやはり当てはまる。
【0168】
設計動作温度362は、通常、室温、たとえば、20〜25℃の範囲、好ましくは、20℃である。
【0169】
高分子の屈折率が常光線屈折率356に等しいゼロ電圧屈折率整合点368が、材料の的確な選択に応じて設計パラメータとして選択されてもよい。通常、ゼロ電圧屈折率整合点368は、設計動作温度に設定される。しかしながら、ゼロ電圧屈折率整合点368を、次の通り、より高い温度にバイアスする時に利点が存在することが理解されている。
【0170】
第1に、こうした選択は、表示装置が、20℃の標準設計温度を超えた温度で用いられることがかなり多いという考慮事項が存在する。したがって、高分子材料の屈折率が、複屈折材料の屈折率の関連する1つに正確に等しくなる温度を上げることによって、高分子材料の屈折率が、表示装置の通常の使用の大きな部分にわたって、複屈折材料の屈折率の関連する1つに実際に近くなる。
【0171】
複屈折レンズ材料の常光線屈折率356が、設計温度362において、高分子の屈折率358に実質的に整合する系の場合、屈折率整合条件は、温度が上昇すると失われる場合がある。これは、高分子の屈折率を、室温における常光線屈折率と異常光屈折率の間に設定することによって克服することができ、その結果、2Dモードについて、許容可能な低い輝度変動が、ウィンドウ平面で見られる。動作温度が上昇するにつれて、液晶の常光線屈折率356は高分子の屈折率358の方へ増加するため、先に述べたように、典型的な所望動作温度範囲について、十分に緊密な屈折率整合条件が2Dレンズ性能要件を満たす温度範囲が拡張される。
【0172】
第2に、温度変動について、デバイスの性能をさらに補償するのに用いることができる、図23に示す装置について以下で述べる。温度センサ370または手動ユーザ調節372を用いて、レンズセル376の両端の電圧を駆動する電圧コントローラ374が設定される。そのため、2Dモードでは、低い電圧がレンズの両端に印加される可能性がある。手動ユーザ調整は、直接的な電子調整によってか、または、電圧を制御するソフトウェアアプリケーションへのユーザ入力によって実施されてもよい。
【0173】
高分子の屈折率358は、設計動作温度362を超える、好ましくは、少なくとも25℃である限界までの温度範囲にわたって、常光線屈折率358と異常光屈折率354の間に設定される。この特定の実施形態では、限界はゼロ電圧屈折率整合点368である。この温度範囲にわたって、電圧コントローラ374は、第2モード(2Dモード)での温度変動を補償することができ、それによって、有効温度動作範囲が拡張される。
【0174】
図24は、こうしたデバイスにおける屈折率の変動を概略的に示す。有効屈折率は、複屈折レンズを通して観察者のところに通過する偏光状態が直面する結果として得られる屈折率である。有効屈折率は、複屈折材料の常光線屈折率と異常光屈折率の分解された成分である。電圧が複屈折材料に印加された場合、材料は再配向するため、偏光状態が直面する常光線屈折率と異常光屈折率の相対成分は変わり、したがって、有効屈折率が変わる。
【0175】
示した例では、複屈折材料を完全に切り替えるための電圧が印加される場合、設計動作温度362にて、レンズを通過する時に入射偏光状態が直面する有効屈折率は高分子の屈折率より低い。
【0176】
低い電圧が印加される場合、偏光状態が複屈折材料の異常光屈折率成分に直面し始めるため、偏光が直面する有効屈折率は、矢印364で示す量だけ増加するであろう。高分子の屈折率358が、標準動作温度での液晶の常光線屈折率を超えて設定される場合、レンズの有効屈折率は、動作温度において高分子の屈折率358に整合するように制御されることができる。
【0177】
電圧が、動作範囲にわたる動作温度に、たとえば、矢印366で示す温度に合うように調整される場合、第2モードの動作温度範囲を拡張することができる。温度368では、屈折率整合条件を達成するために電圧は印加されない。電圧信号374は、表示性能を最適化するために、温度センサ370からの自動フィードバックによってか、または、入力372による手動補正によって設定されることができる。
【0178】
同様に、第1モード(3Dモード)の動作温度範囲は、図25に示すように拡張することができる。温度352が上昇するにつれて、材料の異常光屈折率354が減ることになり、したがって、レンズの光パワーが減る。レンズの曲率半径の選択によって制御される場合があるレンズアレイのパワーは、設計動作温度362を超える、好ましくは、少なくとも25℃である限界までの温度範囲にわたって、表示装置内の空間光変調器の最良のフォーカスでの設計温度362の動作に必要とされるパワーより大きくなるように設定される場合がある。この温度範囲にわたって、電圧コントローラ374は、第1モード(3Dモード)における温度変動を補償することができ、それによって、有効温度動作範囲が拡張される。
【0179】
この特定の実施形態では、セルに電圧が印加されない場合、レンズの光パワーは、室温での最適性能に必要とされるより少し大きい。調整された電圧が、最適なレンズ動作を達成するために、レンズセルの両端に印加されてもよい。これは、矢印370で示され、レンズの偏光状態が直面する有効屈折率は、屈折率372の場所に当たる。温度が上昇するにつれて、レンズの有効屈折率は低下することになるため、必要とされる屈折率降下374は小さくなり、レンズの光学性能を維持するための駆動電圧を下げることができる。図23に示す同じコントロールシステムを用いて、最良のディスプレイフォーカスを設定することによって、システム性能を最適化することができる。温度範囲にわたる最良フォーカスの較正は、エンドユーザへの出荷前のディスプレイについて決定される可能性がある。
【0180】
レンズの最良フォーカスは、レンズの光パワーおよび空間光変調器の画素平面からのレンズの分離によって決定される。
【0181】
レンズの最良フォーカスは、たとえば、当技術分野でよく知られているように、近軸フォーカス、最小オンアクシススポットサイズ、フィールド平均化スポットサイズ、最小オンアクシス2乗平均平方根光路差、または、最小フィールド平均化2乗平均平方根光路差として規定されることができる。別法として、最良フォーカスは、画素平面での目のスポットサイズ(すなわち、画素平面における名目上の人の瞳の画像サイズ)に関して決定されてもよい。最良フォーカスは、一般に、目のスポットサイズを最小にすることによって設定されてもよい。別法として、最良フォーカスは、画素平面における最小の目のスポットサイズと異なっていてもよい。たとえば、最良フォーカスの目のスポットサイズは、画素列間のギャップより大きい場合があるため、得られるスポットは、列間のギャップを結像することによるウィンドウ平面における輝度差をぼかしてなくすのに役立つ。最良フォーカスは、別法として、ディスプレイの視覚による観察によって決定されてもよいため、観察者がディスプレイに対して横方向に移動する時に、表示表面上に見られるフリンジの視覚的な外観が、ディスプレイの外観が最良に認識されるように最適化される。最良フォーカス設定は、ユーザが、ユーザの個人的好みに最もよく合うようにディスプレイの外観を変えることを可能にするために、ディスプレイ上でのユーザ設定であってもよい。
【0182】
レンズが、ホメオトロピック配向膜および負の誘電異方性を有する複屈折材料を組み込む場合、3D動作についてより高い駆動電圧が必要とされる。この場合、2Dモードは、駆動電圧を上げることによって最適化されるため、有効屈折率は高分子の屈折率の方に増加する。3Dモードでは、駆動電圧は減少するため、有効屈折率は、最良フォーカス位置を得るため低下する。
【0183】
高分子の屈折率はまた、複屈折材料の異常光屈折率に近いが、それ未満であるように設定される場合がある。この場合、有効屈折率の小さな変化が、屈折率整合を生じ、一方、駆動電圧の低下を用いて、3Dモードでの有効屈折率を増加させ、よって、最良フォーカスのための屈折率段差を生成することができる。
【0184】
こうして、ディスプレイの動作範囲は、有利には、高分子の屈折率を常光線屈折率と異常光屈折率の間に設定することによって拡張することができる。
【0185】
さらに、3Dモードの動作温度範囲は、有利には、設計動作温度で最適化された対応するレンズの場合よりレンズの曲率半径を小さくなるように設定することによって最適化される場合がある。
【0186】
レンズがねじれを組み込む本発明の実施形態は、さらなる補償を必要とする場合がある。レンズのねじれの量は、オフセット駆動電圧によって決定される場合がある。そのため、小さなオフセット駆動電圧は、駆動電圧が無い場合に存在するよりも少ないレンズのねじれを引き起こす場合がある。別法として、最大駆動電圧のオフセットは、普通なら存在しないねじれを導入する場合がある。ねじれの作用を除去するために、パネル出力偏光方向を補償するための波長板を用いることが望ましい場合がある。別法として、デバイスの設計上のねじれは、製造時に設定されて、最適化されるため、オフセット電圧が印加されると、設計動作温度において、正確なねじれがレンズセル内で生じる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、能動複屈折レンズアレイ装置及びこれを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切り替え可能な能動レンズを用いて、切り替え可能な2次元(2D)/3次元(3D)自動立体(autostereoscopic)表示装置、切り替え可能な高輝度反射型表示システム、または、マルチユーザ表示システムを提供することができる。こうした表示システムを、コンピュータモニタ、電気通信ハンドセット、デジタルカメラ、ラップトップおよびデスクトップコンピュータ、ゲーム装置、自動車、ならびに他のモバイル表示用途で用いることができる。
【0003】
3Dディスプレイ
通常の人間の視覚は立体的であり、すなわち、それぞれの眼がわずかに異なる世界像(image of the world)を見ている。脳が2つの像(ステレオペアと呼ばれる)を融合することにより、奥行きの感覚を与える。3次元立体ディスプレイは、実世界のシーンを見ている場合に見られるであろう像に対応する別個のほぼ平坦な像を、それぞれの眼に対して再現する。すると脳は再びステレオペアを融合して、像の奥行きが見えるようにする。
【0004】
図1aは、ディスプレイ平面1の表示面の平面図を示す。右眼2は、ディスプレイ平面上の右眼相同像点(homologous image point)3を見ており、左眼4は、ディスプレイ平面上の左眼相同像点5を見ており、それにより、スクリーン平面の後方にユーザが認識する見かけ上の像点6が生成される。
【0005】
図1bは、ディスプレイ平面1の表示面の平面図を示す。右眼2は、ディスプレイ平面上の右眼相同像点7を見ており、左眼4は、ディスプレイ平面上の左眼相同像点8を見ており、それにより、スクリーン平面の前方に見かけ上の像点9が生成される。
【0006】
図1cは、左眼画像10および右眼画像11の外観を示す。左眼画像10の相同点5は、基準線12上に位置決めされる。右眼画像11の対応する相同点3は、基準線12に対して異なる相対位置3にある。基準線12からの点3の間隔13は、視差(disparity)と呼ばれ、この場合、スクリーン平面の後方にある点の正の視差(positive disparity)である。
【0007】
シーンにおける一般的な点に関して、図1aに示すようなステレオペアの各像には対応する点がある。これらの点は相同点と呼ばれる。2つの像の間の相同点の相対間隔は視差と呼ばれ、視差がゼロになる点は、ディスプレイの奥行き面(depth plane)の点に対応する。図1bは、非交差性視差を有する点がディスプレイの後方に現れることを示し、図1cは、交差性視差を有する点がディスプレイの前方に現れることを示す。相同点の間隔、観察者までの距離、および観察者の眼間距離の大きさにより、ディスプレイで認識される奥行きの程度が決まる。
【0008】
立体型ディスプレイは、従来技術において既知であり、ユーザが或る種類の視認補助具を装着して、左右の眼に送られるビューを実質的に分離するようにするディスプレイを指す。例えば、視認補助具は、画像が(例えば赤色および緑色に)色分けされるカラーフィルタ、画像が直交偏光状態で符号化される偏光眼鏡、またはビューが眼鏡のシャッタの開放と同期して画像の時間的配列として符号化されるシャッタ眼鏡であってもよい。
【0009】
自動立体ディスプレイは、観察者が視認補助具を装着しなくても動作する。自動立体ディスプレイでは、図2に示すように、空間内の限られた領域からビューのそれぞれを見ることができる。
【0010】
図2aは、パララックス(parallax)光学素子17が取り付けられた表示デバイス16を示す。表示デバイスは、右眼チャネルとして右眼画像18を生成する。パララックス光学素子17は、矢印19で示される方向に光を導き、ディスプレイの前方の領域に右眼観察ウィンドウ20を生成するようにする。観察者は、自身の右眼22をウィンドウ20の位置に位置付ける。左眼観察ウィンドウ24の位置を参照のために示す。観察ウィンドウ20は、垂直方向に延びた光学瞳とも呼ばれる。
【0011】
図2bは、左眼光学系を示す。表示デバイス16は、左眼チャネルとして左眼画像26を生成する。パララックス光学素子17は、矢印28で示される方向に光を導き、ディスプレイの前方の領域に左眼観察ウィンドウ30を生成するようにする。観察者は、自身の左眼32をウィンドウ30の位置に位置付ける。右眼観察ウィンドウ20の位置を参照のために示す。
【0012】
本システムは、ディスプレイと光学的方向制御機構(optical steering mechanism)とを備える。左画像26からの光は、観察ウィンドウ30と呼ばれるディスプレイの前方の限られた領域に送られる。眼32が観察ウィンドウ30の位置に位置付けられている場合、観察者にはディスプレイ16の全体にわたって適切な画像26が見える。同様に、光学系は、右画像18用に意図された光を別個のウィンドウ20に送る。観察者が自身の右眼22をウィンドウ20に位置付けている場合、右眼画像はディスプレイの全体にわたって見られる。概して、いずれの画像からの光も、各指向性分布(directional distribution)に光学的に方向制御された(ずなわち、導かれた)ものと考えられてよい。
【0013】
図3は、ウィンドウ平面42に左眼観察ウィンドウ36、37、38および右眼観察ウィンドウ39、40、41を生成する、ディスプレイ平面34における表示デバイス16、17の平面図を示す。ディスプレイからのウィンドウ平面の間隔は、公称視距離43と呼ばれる。ディスプレイに関して中央の位置にあるウィンドウ37、40は、ゼロ番ローブ44にある。ゼロ番ローブ44の右側にあるウィンドウ36、39は、+1番ローブ46にあり、ゼロ番ローブの左側にあるウィンドウ38、41は、−1番ローブ48にある。
【0014】
ディスプレイの観察ウィンドウ平面は、横方向の観察自由度が最大となるディスプレイからの距離を表す。図3の平面図に示すように、ウィンドウ平面から離れた地点には、ダイヤモンド形の自動立体観察ゾーンがある。図に見られるように、ディスプレイにわたる点それぞれからの光は、有限幅を有する円錐形で観察ウィンドウに放たれる。円錐の幅は、角度幅として定義されてよい。
【0015】
一対の観察ゾーン、例えば37、40のそれぞれに眼が位置付けられている場合、自動立体画像はディスプレイの全範囲にわたって見える。一次的には、ディスプレイの縦方向の観察自由度は、これらの観察ゾーンの長さにより決まる。
【0016】
図4aでは、ディスプレイのウィンドウ平面全体の強度50の変動(1つの有形形態の光の指向性分布を構成する)を、理想的なウィンドウの場合の位置51に関して示す。右眼ウィンドウ位置の強度分布52は図3のウィンドウ41に対応し、強度分布53はウィンドウ37に対応し、強度分布54はウィンドウ40に対応し、強度分布55はウィンドウ36に対応する。
【0017】
図4bは、より現実的なウィンドウの場合の位置での強度分布を概略的に示す。右眼ウィンドウ位置の強度分布56は図3のウィンドウ41に対応し、強度分布57はウィンドウ37に対応し、強度分布58はウィンドウ40に対応し、強度分布59はウィンドウ36に対応する。
【0018】
図4に示すように、画像の分離品質、およびディスプレイの横方向および縦方向の観察自由度の大きさは、ウィンドウの品質により決まる。図4aは、理想的な観察ウィンドウを示すが、図4bは、ディスプレイから出力され得る実際の観察ウィンドウの概略図である。ウィンドウ性能が不十分であることにより、いくつかのアーチファクト(artefact)が生じる可能性がある。右眼画像からの光を左眼で見た場合、およびその反対の場合、クロストークが生じる。これは、ユーザにとって視覚的歪みをもたらす可能性がある重要な3D画像劣化のメカニズムである。さらに、ウィンドウの品質が悪いと、観察者の観察自由度が低下することになる。本光学系は、観察ウィンドウの性能を最適化するように設計される。
【0019】
パララックス光学素子はパララックスバリアである場合がある。ディスプレイは、バックライト、列および行で配置される電子的に調整可能な画素のアレイ(空間光変調器、SLMとして知られる)、および、図5の平面図に示すように、ディスプレイの前部に取り付けられたパララックスバリアを備える。
【0020】
パララックスバリアは、ディスプレイの領域から光を遮ることに頼っているため、輝度およびデバイスの効率は通常、元のディスプレイの輝度の約20〜40%に低下する。ディスプレイの観察自由度を最適化するために、ディスプレイの画素構造に関してバリアのサブピクセル配向許容度の要件があるため、パララックスバリアが容易に取り外しおよび交換されることはない。2Dモードの解像度は半分である。
【0021】
立体ディスプレイで用いるものとして当技術分野においてよく知られている別のタイプのパララックス光学部品(パララックスバリアを参照)は、レンチキュラースクリーンと呼ばれ、これは垂直方向に延びた円柱マイクロレンズのアレイである。本明細書中で用いる「円柱」という用語は、当技術分野における通常の意味を有し、厳密に球面レンズ形状だけではなく非球面レンズ形状も含む。レンズのピッチは、視点補正条件に対応する、すなわち、各画素からの光を観察ウィンドウに方向制御するために、パララックスバリアのピッチは、画素アレイのピッチの2倍より少し小さい。こうしたディスプレイでは、ステレオペア画像のそれぞれの解像度は、ベースLCDの水平解像度の半分であり、2つのビューが作成される。
【0022】
レンズの曲率は、ウィンドウ平面においてLCD画素の画像を生成するように実質的に設定される。レンズが画素から円錐形の光を集光し、それをウィンドウに分配するため、レンチキュラーディスプレイはベースパネルのフル輝度を有する。
【0023】
図6は、レンチキュラーアレイを用いたレンチキュラー表示デバイスのための典型的な構造を示す。バックライト60は、LCD入力偏光子64上に入射する光出力62を生成する。光は、TFT LCD基板66を透過し、LCD画素平面67で列および行で配置された繰り返しの画素アレイ上に入射する。赤色画素68、71、73、緑色画素69、72、75、および青色画素70、73はそれぞれ、個々の制御可能な液晶層を備え、ブラックマスク76と呼ばれる不透明マスクの領域によって分離される。各画素は、透過領域、すなわち、画素開口78を構成する。画素を通過する光は、LCD画素平面74内の液晶材料によって位相変調され、LCDカラーフィルタ基板80上に配置されたカラーフィルタによって色変調される。光は、その後、出力偏光子82を通過し、出力偏光子82の後には、パララックスバリア84およびパララックスバリア基板86が設置される。パララックスバリア84は、垂直方向に延びた不透明領域によって分離された垂直方向に延びた透過領域のアレイを備え、画素69からの光についての光線88で示すように、1つおきの画素列69、71、73、75からの光を右眼へと導き、光線90で示すように、その間の列68、70、72、74からの光を左眼へと導くのに役立つ(この全体の光の方向パターンは光の指向性分布の別の例を形成する)。観察者には、バリアの開口92を照明する、下にある画素からの光が見える。光は、その後、レンチキュラースクリーン基板94と、レンチキュラースクリーン基板92の表面に形成されたレンチキュラースクリーン96とを通過する。パララックスバリアに関しては、レンチキュラースクリーン94が、画素69からの光線88で示されるように、1つおきの画素列69、71、73、75からの光を右眼へと導き、画素68からの光線90で示されるように、その間の列68、70、72、74からの光を左眼へと導くのに役立つ。観察者には、レンチキュラースクリーン96の個々のレンチクル98の開口を照明する、下にある画素からの光が見える。取り込まれた光円錐の範囲は、取り込まれた光線100により示される。
【0024】
レンチキュラーディスプレイは、非特許文献1に記載される。空間光変調器を用いる1つのタイプのレンチキュラーディスプレイは、特許文献1に記載されている。特許文献1の発明は特に、空中での(in air)非切り替えレンチキュラー要素を説明している。
【0025】
ディスプレイの画素の列に対して傾斜する円柱レンズを用いたレンチキュラーディスプレイは、非特許文献2に記載される。
【0026】
上述のフラットパネルディスプレイの観察自由度は、ディスプレイのウィンドウ構造により制限される。
【0027】
観察自由度が観察者の位置の測定およびそれに応じたパララックス素子の移動により改善されるディスプレイが、特許文献2に記載される。このような観察者測定装置および機械的作動は、高価かつ複雑である。
【0028】
ウィンドウの光学構造が変化せず(例えば固定パララックス光学ディスプレイ)、画像データが観察者の測定位置に応じて切り替えられて、観察者が実質的にオルソスコピック画像(orthoscopic image)を維持するようにするディスプレイが、たとえば特許文献3に記載される。
【0029】
上述のように、空間的に多重化された3D表示を生成するためのパララックス光学部品の使用により、各画像の解像度はフル表示解像度のせいぜい半分に制限される。多くの用途でディスプレイは、わずかな時間だけ3Dモードで用いることが意図され、フル解像度でアーチファクトのない2Dモードを有することが必要とされる。
【0030】
パララックス光学部品の効果が除去される1つのタイプのディスプレイとして、非特許文献3がある。この場合、切り替え可能ディフューザ素子が、光のラインを形成するために用いられる光学系に配置される。このような切り替え可能ディフューザは、例えば、高分子分散型液晶タイプのものであってよく、これは、材料の両端に印加電圧を適用することにより、分子配列が散乱モードと非散乱モードとの間で切り替わるものである。3Dモードでは、ディフューザは透明であり、後方パララックスバリア効果(rear parallax barrier effect)をもたらすために光のラインが生成される。2Dモードでは、ディフューザは散光性であり(scattering)、光のラインが消滅し(washed out)、均一光源の効果がもたされる。このように、ディスプレイの出力は実質的に均等拡散(Lambertian)であり、ウィンドウが消滅する。すると、観察者にはディスプレイがフル解像度の2Dディスプレイとして見える。このようなディスプレイでは、3Dモードでフレネル回折アーチファクトが生じ、またディフューザの透明な状態で望ましくない残留散乱が生じ、これがディスプレイのクロストークを増加させる。したがって、このようなディスプレイは高レベルの視覚的歪みを示す可能性が高い。
【0031】
特許文献4に開示される、別のタイプの切り替え可能2D−3Dディスプレイでは、第2のLCDがディスプレイの前部に配置されて、パララックス光学部品としての役割を果たす。第1のモードでは、パララックスLCDは透明であるため、ウィンドウが形成されず、画像は2Dで見られる。第2のモードでは、パララックスバリアのスリットを生成するようにデバイスが切り替えられる。すると、出力ウインドウが形成され、画像が3Dに見える。このようなディスプレイは、2つのLCD素子の使用によりコストおよび複雑性が増すとともに、輝度が低下するか、または消費電力が増す。反射モードの3D表示システムで用いる場合、パララックスバリアは、光をディスプレイに入る途中およびディスプレイから出る途中の両方でパララックスバリアの遮断領域により減衰させるために、非常に低い輝度をもたらす。
【0032】
特許文献5に開示される、別のタイプの切り替え可能2D−3Dディスプレイでは、パララックスバリアは、半波長リターダ素子(half-wave retarder elements)のパターン化されたアレイを含む。リターダ素子のパターンは、パララックスバリア素子のバリアスリットおよび吸収領域のパターンに対応する。3D動作モードでは、偏光子がディスプレイに加えられることにより、パターン化されたリターダのスリットが検査(analyse)される。こうして吸収パララックスバリアが生成される。2D動作モードでは、2D動作モードにはいかなる偏光特性も関与しないため、偏光子は完全に取り外される。したがって、ディスプレイの出力はフル解像度およびフル輝度である。1つの欠点は、このようなディスプレイはパララックスバリア技術を用いるため、3D動作モードではおそらく20〜30%の輝度に制限されることである。また、ディスプレイは、バリアの開口からの回折により制限される観察自由度およびクロストークを有することになる。
【0033】
光の方向を切り替えるために、電気的に切り替え可能な複屈折レンズを設けることが知られている。このようなレンズを用いて、ディスプレイを2D動作モードと3D動作モードとの間で切り替えることが知られている。
【0034】
例えば、電気的に切り替え可能な複屈折液晶マイクロレンズが、非特許文献4に記載されている。
【0035】
特許文献6および特許文献7に開示される、別のタイプの切り替え可能2D−3Dディスプレイでは、液晶材料で充填されたレンチキュラースクリーンを含む切り替え可能マイクロレンズが、レンチキュラースクリーンの光パワーを変えるために用いられる。特許文献6および特許文献7は、レンチキュラースクリーンにおける電子光学(electro-optic)材料の使用を教示しており、レンチキュラースクリーンの屈折率は、レンチキュラー手段の光出力誘導作用が提供される第1の値と、光出力誘導作用が取り除かれる第2の値との間の電位を選択的に印加することによって切り替え可能である。
【0036】
液晶フレネルレンズを含む3Dディスプレイが、非特許文献5に記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】米国特許第4,959,641号明細書
【特許文献2】欧州特許第0,829,743号明細書
【特許文献3】欧州特許第0,721,131号明細書
【特許文献4】欧州特許第0,833,183号明細書
【特許文献5】欧州特許第0,829,744号明細書
【特許文献6】米国特許第6,069,650号明細書
【特許文献7】国際公開98/21620号明細書
【非特許文献】
【0038】
【非特許文献1】T.Okoshi: Three Dimensional Imaging Techniques: Academic Press, 1976
【非特許文献2】multiview 3D-LCD: SPIE Proceedings Vol.2653, 1996, pp32-39
【非特許文献3】Developments in Autostereoscopic Technology at Dimension Technologies Inc.: Proc. SPIE vol. 1915 Stereoscopic Displays and Applications IV (1993) pp177-186, 1993
【非特許文献4】L. G. Commander et al.: Electrode designs for tuneable microlenses: European Optical Society Topical Meetings Digest Series: 13,15-16 May 1997, pp48-58
【非特許文献5】S. Suyama et al.: 3D Display System with Dual Frequency Liquid Crystal Varifocal Lens: SID 97 DIGEST pp273-276
【発明の概要】
【0039】
第1の態様では、本発明は、表示デバイスの出力と能動レンズの配向方向の間の偏光整合を提供する。
【0040】
本発明の第1の態様の1つの形態では、実質的に直線偏光する出力を生成する表示装置のための、切り替え可能な複屈折レンズアレイが提供され、当該レンズアレイは、
平坦表面と、円柱レンズアレイを画定する凸表面との間に配置される複屈折材料と、
複屈折材料を、第1モードと第2モードの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、上記第1モードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、上記第2モードでは、上記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極とを備え、
第1モードでは、上記凸表面において、複屈折材料は、円柱レンズの幾何学的軸に平行に配向し、
第1モードでは、上記平坦表面において、複屈折材料は所定の角度で平坦表面に平行に配向するため、第1モードで、平坦表面と凸表面の間で配向方向がねじれる。
【0041】
複屈折材料の配向方向が、円柱レンズの幾何学的軸に平行であることは有利である。その理由は、それによって、配向膜表面エネルギーと凸表面構造配向表面エネルギーの間の競合による凸表面における転位(dislocation)が回避されるからである。その転位は、散乱を引き起こし、光学クロストークを増加させ、レンズコントラストを低下させ、かつ/または、緩和時間を増加させる可能性がある。同様に、製造が簡略化され、知られている製造技法の使用が可能になる。
【0042】
本発明の第1の態様によるレンズアレイは、実際のシステムでは光学的厚みが比較的厚いために、複屈折材料において実質的に無色の(achromatic)偏光誘導(guiding)が起こることになるという意外な利点を有する。換言すれば、偏光方向は、光が複屈折材料を通過するにつれて回転する。この誘導作用を用いて、レンズアレイ内のデバイスの偏光を制御することができる。
【0043】
レンズアレイによる偏光方向のこうした回転は、ディスプレイと能動レンズの間にさらなる波長板を必要としないことを意味し(任意選択で、1つまたは複数の波長板が付加される場合があるが)、したがって、素子の視距離を第1の動作モードにおいて低減し、デバイスコストを低減することが可能になる。
【0044】
配向は、任意の適した手段、たとえば、配向膜によって提供されることができる。
【0045】
本発明の第1の態様の別の形態では、指向性表示装置が提供され、当該指向性表示装置は、
実質的に直線偏光する出力表示デバイスと、
第1モードでは、偏光出力表示デバイスの指向性分布を修正し、第2モードでは、表示デバイスの指向性分布の修正を実質的に引き起こさないように構成された切り替え可能な複屈折円柱レンズとを備え、当該切り替え可能な複屈折円柱レンズは、
円柱マイクロレンズアレイを画定する凸表面層と、
凸表面層における複屈折材料の配向が、第1の動作モードでは、円柱レンズの幾何学的軸にほぼ平行であるように凸表面層上に形成された配向膜と、
第1および第2のモードについて、それぞれ、少なくとも第1と第2の向きの間で複屈折材料の向きを切り替えるように構成された電極層とを備え、
平坦基板における複屈折材料の配向は、表示デバイスの出力偏光と連携して配向するため、第1の動作モードでは、ねじれが凸表面層における円柱マイクロレンズアレイの幾何学的軸にほぼ平行である状態で、偏光が複屈折材料を通過する。
【0046】
好ましくは、以下の任意選択の特徴の1つまたは複数が存在する。
−複屈折材料は液晶である。
−平坦基板における配向方向は、表示デバイスの出力偏光に平行または直角である。
−実質的に偏光するディスプレイは、部分的に偏光するか、または、偏光しないディスプレイおよび偏光子素子を備えることができる。
−ディスプレイは、ディスプレイでない(non-display)指向性切り替え用途のための空間光変調器であってよい。
−第1モードにおいて、レンズを通過する偏光状態のねじれが存在する。
−偏光状態のねじれは45°、−45°、または135°である。
−実質的に偏光するディスプレイの出力偏光を回転させるために、表示デバイスと能動レンズの間に付加的な波長板を組み込んでもよい。
【0047】
そのため、以降で述べる本発明の実施形態は、以下の利点のうちの1つまたは複数を提供する。
−液晶の配向方向は、凸表面円柱マイクロレンズの幾何学的軸に平行である可能性がある。
−レンズ表面は、知られている表面配向技法を用いた製造に都合がよい。
−ディスプレイと能動レンズの間にさらなる波長板が必要とされず、したがって、素子の視距離を3D動作モードで低減し、デバイスコストを低減することができる。
−配向膜表面エネルギーと凸表面構造配向表面エネルギーの間の競合により、切り替えレンズ内で回位(disclination)を受けないであろう。
−能動レンズセルのコントラストが最適化されるであろう。
−切り替え応答時間が最小になる。
−レンズ素子内の縮退(degeneracy)が最小になるため、デバイスが一様に切り替わる。
−本発明は、実際のシステムでは光学的厚みが比較的厚いために、レンズ内で偏光誘導が起こることになるという意外な利点を有する。この誘導作用を用いて、能動レンズ内のデバイスの偏光を制御することができる。
−ディスプレイは、固定した液晶ディスプレイ出力偏光状態によって、2Dおよび3Dモードにて高い輝度を生成することができる。
【0048】
第2の態様では、本発明は、ホメオトロピックに配向する複屈折材料を有するレンズアレイを提供する。
【0049】
本発明の第2の態様の1つの形態では、実質的に直線偏光する出力を生成する表示装置のための、切り替え可能な複屈折レンズアレイが提供され、当該レンズアレイは、
表面と、円柱レンズアレイを画定する少なくとも凸表面との間に配置される複屈折材料と、
複屈折材料を、第1モードと第2モードの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、上記第1モードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、上記第2モードでは、上記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極とを備え、
複屈折材料は、上記少なくとも1つの凸表面においてホメオトロピックに配向する。
【0050】
こうしたレンズアレイは、第2の動作モードでは、電力消費を全く必要としないように構成されることができるという利点を有する。その理由は、制御電圧が無い時に、複屈折材料は、光軸に平行に配向し、それによって、光は、凸表面において、複屈折材料の常光線屈折率を受けるからであり、それは、最も都合よくは、入射光に対して実質的に全く影響が存在しない第2の動作モードである。
【0051】
たとえば、2Dモードと自動立体3Dモードの間で切り替え可能な表示デバイスでは、これは、2Dモードは電力消費を必要としないことを意味する。したがって、電池による2D動作時間は影響を受けないであろう。能動レンズでは、レンズ奥行きが数十ミクロン程度である傾向があるため、セルの厚い部分を切り替えるために印加される必要がある電圧は、標準液晶セル動作電圧、たとえば、5μm厚セルについて5Vをほぼ超える。したがって、この種のレンズセルについての、駆動モードでの液晶の電力消費は、同じ液晶と駆動周波数を用いた標準5μm厚LCDの電力消費より実質的に大きい。したがって、2D駆動モードを有することは望ましくない。レンズスイッチが損傷する場合、デフォルトの動作モードは2Dモードにあるため、画像に対する劣化は見られないであろう。レンズの焦点距離は、所望のウィンドウの外観に合わせて電圧を修正することによって、3Dモードで調整される可能性がある。
【0052】
配向は、任意の適した手段、たとえば、配向膜によって提供されてもよい。ホメオトロピック配向膜は、容易に入手できる高分子材料の使用して、屈折率を著しく高くすることなくレンズ表面を形成することを可能にする。こうした高分子材料は、高コスト、高い毒性、および難しい処理方式(regime)に直面しない。
【0053】
本発明の第2の態様の別の形態では、複屈折光学材料および第1基板を備える切り替え可能な複屈折レンズを備える光学切り替え装置が提供され、
第1ホメオトロピック配向膜は凸表面構造上に形成され、
複屈折材料の誘電異方性はゼロ未満であるため、切り替え可能なレンズは、電界がセルに印加される時に第1モードで動作し、電界がセルに印加されない時に第2モードで動作する。
【0054】
好ましくは、以下の任意選択の特徴のうちの1つまたは複数が存在する。
−第1モードでは、凸表面構造における複屈折材料の光軸の配向は、幾何学的マイクロレンズ軸にほぼ平行である。
−その配向は、配向膜のホモジニアスなバイアスによって提供され、
−その配向は、溝付き構造によって提供されるホモジニアスなバイアスによって提供され、
−平坦基板における配向は、
−ホメオトロピックであり、
−ホモジニアスであり、
−ホメオトロピック配向およびホモジニアス配向を含むため、第1モードでホモジニアス配向特性を、第2モードでホメオトロピック配向特性を示し、
−第1動作モードにおいて入射偏光状態のねじれを提供するため、凸表面構造における偏光状態は複屈折レンズ光軸に平行である。
―波長板は、表示デバイスと平坦基板の間に位置するため、平坦基板における偏光角は、凸表面基板における偏光角と平行である。
【0055】
本発明の第3の態様の1つの形態では、表示装置が提供され、当該表示装置は、
空間光変調器および出力偏光子を有する表示デバイスと、
空間光変調器から光を受け取るように構成された電気的に切り替え可能な複屈折レンズアレイとを備え、
レンズアレイは、表示デバイスの空間光変調器と出力偏光子の間に配置される。
【0056】
こうした表示デバイスは、出力偏光子が通常位置である、空間光変調器のすぐ出力側に配置されるのに比べて、短い視距離を提供する。これは、空間光変調器とレンズアレイの間に出力偏光子が無いために、その間の距離を減らすことができるためである。
【0057】
本発明の第3の態様は、空間光変調器および出力偏光子を含む任意のタイプの表示デバイスに適用可能である。これは、入射光の偏光を位相変調して、或る変調量だけ、各画素における光の偏光の主軸についての楕円運動(ellipticity)および回転運動(rotation)を引き起こすように構成された液晶変調器などの空間光変調器に特に有利であり、出力偏光子が、所定の方向に偏光された光を選択するのに使用され、それによって、楕円および回転の量により出力光の振幅が変調される。しかしながら、第3の態様は、別法として、たとえば、偏光しない出力が生成され、出力偏光子が出力を偏光するのに使用される、発光型空間光変調器、または、偏光する出力が生成され、出力偏光子がクリーンアップ偏光子である、発光型空間光変調器に適用されてもよい。
【0058】
本発明の第3の態様の別の形態では、指向性表示装置が提供され、当該指向性表示装置は、
実質的に直線偏光する出力表示デバイスと、
第1モードでは、偏光出力表示デバイスの指向性分布を修正し、第2モードでは、表示デバイスの指向性分布の修正を実質的にもたらさないように構成される切り替え可能な複屈折円柱レンズを備える能動レンズとを備え、
能動レンズは、画素平面と表示デバイスの出力偏光子の間に位置する。
【0059】
本発明の第4の態様の1つの形態では、表示装置が提供され、当該表示装置は、空間光変調器の各画素で実質的に直線偏光する光を出力するように構成された発光型空間光変調器と、
空間光変調器から光を受け取るように構成された電気的に切り替え可能な複屈折レンズアレイとを備える。
【0060】
本発明の第4の態様の別の形態では、発光型光方向切り替え装置が提供され、発光型光方向切り替え装置は、
切り替え可能な複屈折光学材料を含む切り替え可能な複屈折レンズを備える光学切り替え装置と、
それぞれが実質的に偏光する光出力を有する、発光画素領域のアレイを備える発光型空間光変調器装置とを備える。
【0061】
こうした表示装置は、高い光効率を持って構成されることができる。
【0062】
本発明の第5の態様の1つの形態では、表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置が提供され、当該能動複屈折レンズアレイ装置は、
レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、
複屈折材料を、第1モードと第2モードの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、上記第1モードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、上記第2モードでは、上記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極と、
第1と第2のモードの間で切り替えるために、電極の両端の電圧を制御する電圧コントローラであって、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、第1と第2のモードで印加される電圧を調整するように構成される、電圧コントローラとを備える。
【0063】
等方性材料の屈折率、ならびに、複屈折材料の常光線および異常光の屈折率は、温度と共に変動する。そのため、或る温度で動作するように設計されたレンズアレイは、別の温度では光学特性が低下する場合がある。しかしながら、電圧制御は、温度による変動を補償することを可能にする。これは、光学性能を改善し、より広い動作温度範囲にわたるレンズアレイの動作を可能にする。
【0064】
或るタイプの装置では、温度センサを用いて、レンズアレイ装置の温度を検知し、電圧コントローラは、温度センサによって検知された温度に応答して、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、第1と第2のモードで印加される電圧を調整するように構成される。
【0065】
このタイプの装置は、温度変化の自動補償を提供する利点を有する。
【0066】
別のタイプの装置では、入力デバイスによって、ユーザが電圧調整を入力することが可能になり、電圧コントローラは、入力デバイスに入力された電圧調整に応答して第1および第2のモードで印加される電圧を調整するように構成される。
【0067】
このタイプの装置は簡便さの利点を有する。
【0068】
有利には、等方性材料の屈折率は、少なくとも25℃の限界より低い温度における、複屈折材料の常光線屈折率と複屈折材料の異常光屈折率の間にある。
【0069】
等方性材料の屈折率が、20℃の典型的な設計温度において、複屈折材料の常光線屈折率(または、他の材料系では、複屈折材料の異常光屈折率)に等しい典型的な状況と比較すると、等方性材料の屈折率が複屈折材料の常光線屈折率を超える(または、複屈折材料の異常光屈折率以下の)温度範囲が増加する、しかしながら、この範囲で、電圧コントローラは、複屈折材料の有効屈折率を調整することによって、温度に伴う変動を補償することができるため、この特徴は、動作温度範囲を効果的に増加させる。この限界は、さらに範囲を増加させるために25℃より大きい場合がある。
【0070】
有利には、能動複屈折レンズアレイ装置は、能動複屈折レンズアレイ装置と直列に配置された空間光変調器をさらに備える表示装置において用いられ、少なくとも25℃の限界より低い温度において、第1モードにおけるレンズアレイのパワーは、空間光変調器の最良のフォーカスを提供するためにレンズアレイに必要とされるパワーより大きい。
【0071】
第1モードにおけるレンズアレイのパワーが、20℃の典型的な設計温度において最良のフォーカスを提供するように設計される典型的な状況と比較すると、第1モードにおけるレンズアレイのパワーが、最良のフォーカスには強過ぎる温度範囲が増加する。しかしながら、この範囲で、電圧コントローラは、複屈折材料の有効屈折率を調整することによって、レンズアレイのフォーカスを最良のフォーカスに調整するために、パワーを減らすことができるため、この特徴は、動作温度範囲を効果的に増加させる。この限界は、さらに範囲を増加させるために25℃より大きい場合がある。
【0072】
本発明の第5の態様の別の形態では、表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置が提供され、当該能動複屈折レンズアレイ装置は、
レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、
複屈折材料を、第1モードと第2モードの間で電気的に切り替えるために、複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、レンズアレイは、上記第1モードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、上記第2モードでは、上記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極とを備え、
等方性材料の屈折率は、20℃を超える温度か、または、25℃以上の温度で、複屈折材料の常光線屈折率または複屈折材料の異常光屈折率のうちの1つに等しい。
【0073】
20℃は、表示装置用の設計温度として一般に用いられる典型的な室温である。材料に応じて、等方性材料の屈折率は、複屈折材料の常光線屈折率または複屈折材料の異常光屈折率のうちの1つにほぼ等しい。等方性材料の屈折率が、複屈折材料の屈折率のうちのその1つに正確に等しい温度は、材料選択による設計パラメータとして選択することができる。本発明の第5の態様のこの形態では、この温度は、20℃の標準設計温度ではなく、より高く、通常、25℃以上の温度である。こうした選択は、表示装置が、20℃の標準設計温度を超えた温度で用いられることがかなり多いことを理解することに基づく。したがって、等方性材料の屈折率が、複屈折材料の屈折率の関連する1つに正確に等しくなる温度を上げることによって、等方性材料の屈折率が、表示装置の通常の使用の大きな部分にわたって、複屈折材料の屈折率の関連する1つに実際に近くなる。
【0074】
現時点で好ましい材料の場合、等方性材料の屈折率は、複屈折材料の常光線屈折率にほぼ等しく、20℃を超える温度において正確に等しいが、他の材料の場合、等方性材料の屈折率は、複屈折材料の異常光屈折率にほぼ等しく、20℃を超える温度において正確に等しい場合がある。
【0075】
本発明の種々の態様の任意または全ては、有利には、組み合わせて用いられてもよい。したがって、一般に、本発明の任意の態様の任意の特徴は、本発明の他の任意の態様に適用されてもよい。
【0076】
本発明の態様全てにおいて、以下の注釈があてはまる。レンズアレイは、実質的に直線偏光する出力を生成する任意のタイプの表示装置、たとえば、出力を偏光させる偏光子を有するバックライトで照明される透過型空間光変調器、または、本質的に偏光せずに偏光子を備える場合があるか、または、偏光する場合がある発光型空間光変調器と共に用いられてもよい。一般に、表示デバイスは、透過型、発光型、または、反射型、あるいは、その組み合わせを含む、各画素の光を変調するための任意のタイプの空間光変調器を採用することができる。
【0077】
レンズアレイは、上記第1モードにおいて、入射光の指向性分布を修正するように構成される。これは、3D自動立体効果、高輝度領域、または、マルチユーザ表示システムの提供を含むが、それに限定しない種々の異なる効果を達成するのに用いられてもよい。
【0078】
したがって、こうしたデバイスは、
1つの動作モードでの、肉眼で観察することができるフルカラー3D立体動(moving)画像、および、第2動作モードでの、フル解像度2D画像を都合よく提供することができる自動立体表示手段、
第1モードでは、実質的に非指向性の輝度性能を示し、第2モードでは、実質的に指向性の輝度性能を示すことができる切り替え可能な高輝度半透過型および反射型表示システム、または、
1つの動作モードでの、1人の観察者に対する1つのフルカラー2D動画像および少なくとも第2の観察者に対する少なくとも第2の異なる2D画像、ならびに、第2の動作モードでの、全ての観察者によって見られるフル解像度2D画像を都合よく提供することができるマルチビュアー表示手段のために用いられることができる。
【0079】
本発明の実施形態は、単独で、または、組み合わせで、以下の利点を提供するために以下の利点を提供することができる。
【0080】
本発明は、低レベルの画像クロストークおよび高輝度を有する、高品質の自動立体3D画像およびフル解像度2D画像の生成を可能にする。
【0081】
本発明はまた、2Dモードと、画像(異なってもよい)を広い範囲の方向から異なる目視者(viewer)が見ることのできるモードの間で切り替えられることのできる指向性のマルチビュアー表示の生成を可能にする。
【0082】
マイクロレンズをガラス基板の内部になるように配置することによって、レンズの表面からの反射を最小化することができ、出力表面(平坦である場合がある)を反射防止コーティングすることができる。
【0083】
高輝度半透過型または反射型ディスプレイは、有利には、ディスプレイの反射体材料によって規定された実質的に非指向性の特性を有する第1モードを有し、第2モードでは、指向性の輝度特性を有するため、決められた角度範囲からの表示輝度が大きい。こうしたディスプレイは、フルカラーで動作し、反射型と透過型の両方の動作モードの輝度を増加するのに用いることができる。
【0084】
マルチビュアーディスプレイは、ディスプレイの複数の同時使用を可能にするために、1つの動作モードでは、全ての目視者が同じ画像を見、第2動作モードでは、異なる目視者が異なる画像を見ることができるように構成されることができる。
【0085】
これにより、各観察者が同じ表示ユニットから好みの画像を見ることを可能にすることによって、ある環境で必要とされるディスプレイおよびディスプレイドライバの数を減らすことができる。
【0086】
こうしたディスプレイは、自動車ディスプレイ、現金自動預払機、および、座席背面機内エンタテインメントディスプレイ(seat-back aviation entertainment displays)などのシステムに特に適する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1a】3Dディスプレイにおけるスクリーン平面の後方の物体の見かけ上の奥行きの生成を示す図である。
【図1b】3Dディスプレイにおけるスクリーン平面の前方の物体の見かけ上の奥行きの生成を示す図である。
【図1c】ステレオペア画像の各画像上の対応する相同点の位置を示す図である。
【図2a】自動立体3Dディスプレイの前方における右眼観察ウィンドウの構成を概略的に示す図である。
【図2b】自動立体3Dディスプレイの前方における左眼観察ウィンドウの構成を概略的に示す図である。
【図3】3Dディスプレイの出力円錐からの観察ゾーンの生成を示す平面図である。
【図4a】自動立体ディスプレイの理想的なウィンドウのプロファイルを示す図である。
【図4b】自動立体3Dディスプレイからの観察ウィンドウの出力プロファイルの概略図である。
【図5】パララックスバリアディスプレイの構造を示す図である。
【図6】レンチキュラースクリーンディスプレイの構造を示す図である。
【図7a】液晶配向がレンズの両面においてホモジニアスであるレンズアレイの2つの円柱レンズの第1の断面図である。
【図7b】図7aの断面に直角の第2の断面における、図7aの2つの円柱レンズを示す図である。
【図7c】図7bと同じ図において、代替の機構を示す図であり、先端が平坦表面に実質的に接触し、電極が凸表面上に形成される。
【図8a】能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図8b】能動レンズ輝度向上ディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図8c】ツイステッド能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図8d】ツイステッド能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための代替の配向方向および偏光方向を示す図である。
【図9a】液晶配向がレンズの両面においてホメオトロピックであるレンズアレイの2つの円柱レンズの第1の断面図である。
【図9b】図9aの断面に直角の第2の断面における、図9aの2つの円柱レンズを示す図である。
【図10a】ホメオトロピック配向膜を組み込む能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図10b】ホメオトロピック配向膜およびホモジニアス配向膜を組み込む能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図11a】液晶配向が、能動レンズの1つの表面でホメオトロピックであり、第2の表面でホモジニアスであるレンズアレイの2つの円柱レンズを示す第1断面図である。
【図11b】図11aの断面に直角の第2の断面における、図11aの2つの円柱レンズを示す図である。
【図12】ホメオトロピック配向膜およびホモジニアス配向膜を組み込む能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図13a】液晶配向が、レンズ表面においてホメオトロピックおよびホモジニアスであることのできるレンズアレイの2つの円柱レンズを示す第1断面図である。
【図13b】図13aの断面に直角の第2の断面における、図13aの2つの円柱レンズを示す図である。
【図14】内部偏光子を有する能動レンズ自動立体3Dディスプレイの構造を示す断面図である。
【図15】外部偏光子を有する能動レンズ自動立体3Dディスプレイの構造を示す断面図である。
【図16】外部偏光子を有する能動レンズ自動立体3Dディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図17】偏光発光型ディスプレイを有する能動レンズ自動立体3Dディスプレイを示す図である。
【図18】能動レンズ輝度向上反射型ディスプレイを示す図である。
【図19】能動レンズ輝度向上反射型ディスプレイのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図20】傾斜した幾何学的レンズ軸を有する能動レンズのための配向方向および偏光方向を示す図である。
【図21】能動レンズが、発光型ディスプレイと出力偏光子の間に配置される切り替え可能な自動立体ディスプレイを示す図である。
【図22】レンズ材料について、温度に伴う屈折率の変動を概略的に示す図である。
【図23】レンズセル駆動電圧を最適化するコントロール装置を示す図である。
【図24】2Dモードの場合のレンズ材料についての、温度に伴う有効レンズ屈折率の制御を概略的に示す図である。
【図25】3Dモードの場合のレンズ材料についての、温度に伴う有効レンズ屈折率の制御を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照して例示としてのみ説明する。
【0089】
種々の実施形態の一部は、共通の要素を採用し、共通の要素には、簡潔にするために、共通の参照符号が与えられ、その説明は繰り返さない。さらに、各実施形態の要素の説明は、他の実施形態の同一の要素および対応する効果を有する要素にも同様に、必要な変更を加えて適用される。同様に、ディスプレイである実施形態を示す図は、簡単にするために、ディスプレイの一部のみを示す。実際、ディスプレイの全体のエリアにわたって構成が繰り返される。
【0090】
本明細書では、複屈折材料の光軸の方向(ダイレクタ方向または異常光軸方向)は、複屈折光軸と呼ばれるであろう。これは、幾何光学によって通常の方法で規定されるレンズの光軸と混同されるべきではない。
【0091】
円柱レンズは、縁(或る曲率半径を有しており、他の非球面成分を有する場合がある)が、第1の直線方向に掃引された(swept)レンズを指す。幾何学的マイクロレンズ軸は、第1直線方向に、すなわち、縁の掃引方向に平行にレンズの中心に沿ったラインとして規定される。2D−3D型ディスプレイでは、幾何学的マイクロレンズ軸は垂直方向であるため、ディスプレイの画素の列に平行である。本明細書で説明する輝度向上ディスプレイでは、幾何学的マイクロレンズ軸は水平であるため、ディスプレイの画素の行に平行である。
【0092】
全ての使用において、特定の方向に配向している材料が参照される時、セル内での縮退を防止するためのプレチルトが存在する場合があり、その場合、完全な配向ではないが、かなりの配向が残ったままになる。
【0093】
本明細書では、SLM(空間光変調器)は、液晶ディスプレイなどの「光弁(light valve)」デバイスと、エレクトロルミネッセンスディスプレイおよびLEDディスプレイなどの発光型デバイスとの両方を含む。種々の表示装置において、レンズのピッチは視点補正条件に対応し、すなわち、パララックスバリアのピッチは、各画素からの光を観察ウィンドウに方向制御するために、画素アレイのピッチの2倍より少し小さい。
【0094】
以下の実施形態では、等方性材料として高分子材料が用いられるが、原理的に、高分子以外の材料、たとえば、ガラスを別法として用いることができ、その場合、凸表面はエッチングによって形成されてもよい。
【0095】
ゼロツイスト能動レンズ
能動レンズは、それぞれの指向性分布の間での切り替えを可能にする切り替え可能な複屈折材料を含むレンズである。図6の固定レンズ94、98は、有利には、たとえば、フル解像度2Dモードと自動立体3Dモードの間での切り替えを可能にするために、本発明の能動レンズによって置き換えられてもよい。
【0096】
図7aおよび図7bはそれぞれ、能動レンズと呼ぶ、1つのタイプの切り替え可能な複屈折レンズアレイの側面図を示す。レンズ形態は、細長い円柱レンズのアレイを備える。簡潔にするために、図7aおよび図7bは共に、電極110と115の間にある、電極110と115の両端に制御電圧が印加されていない第1円柱レンズ、および、電極112と114の間にある、電極112と114の両端に制御電圧が印加された第2円柱レンズを示す。第1基板102および第2基板104は複屈折材料106を間に挟む。第1基板102は、その上に凸表面構造108を形成される。構造108は、実質的に等方性の材料で構成されることができる。そのため、複屈折材料106は、第1基板102および構造108に隣接して凸表面を有し、第2基板104に隣接して平坦表面を有する。
【0097】
電極層110および112は、基板102上に形成され、電極層114および115は、基板104上に形成される。電極は、たとえば、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明電極であってよい。電極110および112は、別法として、レンズ構造108の表面上に形成されてもよい。
【0098】
電極110、112および114、115は、作用を説明するために個別の要素として示されるため、液晶の切り替えは、同じ画像の異なる部分における異なる電界について示される。実際のデバイスでは、両方の基板上の電極は、レンズエリアの異なる領域が2Dまたは3Dとなるように独立に制御されるようにセグメント化されるか、または、表示エリア全体にわたって単一要素であってもよい。具体的には、レンズアレイは、当技術分野で知られるように、受動的に多重アドレス指定されてもよい。
【0099】
レンズは、スペーサボール、スペーサファイバ、スペーサリブ、または他の知られているスペーサ技法によって第2基板104から離れて配置されてもよい。別法として、レンズは、平坦表面に接触してもよい。有利には、これは、スペーサに対する必要性をなくすが、能動レンズ開口を減らすであろう。
【0100】
電極110と115の間のギャプ内で、複屈折分子は、セルの両端に電界が印加されない状態で、正の誘電異方性のネマチック液晶材料によって表される。液晶分子のダイレクタは、凸表面構造108および第2基板104におけるホモジニアス配向膜116および118によって実質的に表面の面内で配向する。小さなプレチルト(図示せず)が、配向膜116、118によってセルに与えられてもよい。説明のために、分子は、異常光屈折率が分子の長軸に平行な状態で、細長い楕円として表される。
【0101】
切り替え(switched)状態では、電界は、液晶分子を再配向させる(reorient)働きをするため、レンズセルの中央のダイレクタ配向(orientation)120は、実質的に垂直方向である。これは、セル全体にわたる屈折率分布の変動を引き起こす。
【0102】
動作の際、こうした素子は、たとえば、図8aに示すように、薄膜トランジスタ(TFT)LCDの出力偏光子上で配向する。ディスプレイの直線出力偏光の透過方向122が0°である場合、光は、第2基板の層104、114、115、および118を備える第1平坦基板124に入射する。この基板における液晶材料の配向方向は偏光子122の透過軸に平行である。光は、複屈折材料を通過し、表面102、108、110,116を備えるレンズ基板126に当たる。
【0103】
オフ状態では、セルには電圧は印加されず、偏光は、液晶材料の異常光軸上に入射する。高分子の屈折率は、液晶材料の常光線屈折率に近くなるように設定され、したがって、レンズの表面に位相差が存在する。レンズは、垂直偏光状態の光に作用して、光出力の指向性分布の変化が引き起こされる。自動立体3Dディスプレイおよび指向性観察システムについてよく知られているように、画素平面がウィンドウ平面に実質的に結像されるような焦点距離をレンズが有するように位相構造が設定される可能性がある。
【0104】
輝度向上観察システムでは、画素平面の画像は、垂直配向したレンズではなく水平配向した円柱マイクロレンズアレイ127の場合に、ウィンドウ平面で生成される。この場合、出力偏光子123の配向方向は、図8bに示すように、水平であるように設定され、平面125および凸表面構造127における配向方向も、水平であるように設定される。以下の説明では、レンズは垂直方向に配向すると仮定されるが、同じ装置を、水平配向したレンズに適用することができる。
【0105】
オン状態では、セルの両端に電圧が印加され、液晶材料は、電界に平行に、図7aおよび図7bに示す向き120に再配向するため、入射偏光状態は、実質的に液晶の常光線屈折率に直面する(see)。レンズ構造108は、液晶材料の常光線屈折率に実質的に屈折率整合する(indexed matched)ため、液晶レンズでは、光学効果は実質的に全く観察されない。このモードでは、レンズによって、指向性分布の修正は実質的に全く与えられず、出力の指向性は、ベースディスプレイからの出力とほぼ同じである。実際のシステムでは、屈折率整合は、厳密でない場合があるため、厳密でない程度に応じて、小さな残留光学効果が存在する場合がある。この動作モードは、ディスプレイの2D出力または非修正出力に用いられる可能性がある。有利には、これによって、ユーザが、自動立体表示システムまたは指向性表示システムの場合にディスプレイの画素の全てを見るか、または、輝度向上表示システムの場合に均一に照明されたウィンドウ平面を見ることが可能になる。
【0106】
図7cは、レンズ先端(cusp)が平坦基板と接触し、電極が凸表面構造上に位置するセルを示す。付加的な絶縁層(図示せず)が、電気的短絡を防止するために、表面上に組み込まれてもよい。一般に、電気的短絡をなくすために、図7aおよび図7bに示すように、平坦表面上に電極を組み込むことが望ましい場合があるが、これは、セルの両端での駆動電圧を増加させる場合がある。
【0107】
平坦基板が、ディスプレイの出力偏光とアライメントをとられるこうしたデバイスは、有利には、両方の指向性分布の動作の場合に、同じ液晶モード(たとえば、ノーマリホワイトまたはノーマリブラック)で動作する。
【0108】
屈折率整合条件は、出力の指向性分布が実質的に修正されないように設定される。実際には、等方性屈折率と、複屈折率材料の屈折率のうちの1つの屈折率との間の小さな差が存在する場合がある。しかしながら、小さな屈折率の差の場合、画素平面での目のスポットサイズがレンズのサイズと同じであるため、光出力は、その差にかなり鈍感である場合がある。したがって、屈折率整合条件についての許容度は、比較的緩和される場合がある。たとえば、1つの作製された系では、555nmで1.56の等方性屈折率を有する材料Norland製NOA71が、対応する、1.52の常光線屈折率を有するMerck製のE7と組み合わせて用いられた。2D−3D表示のデモンストレーションでは、これは、2D画像の品質には実質的に影響を与えずに、使用時に2Dモードのウィンドウ平面において小さな輝度(intensity)変動をもたらした。
【0109】
ツイステッド能動レンズセル
実際には、偏光表示デバイスの出力偏光角度は、一般に、垂直方向になるように設定されない。これは、液晶ディスプレイなどのディスプレイの視野角性能の最適化による。たとえば、よく知られているノーマリホワイト透過型ツイステッドネマチックディスプレイは、45°の角度の出力偏光を有するが、半透過型および反射型ディスプレイは、たとえば、20°に近い出力角度を有する。これまでに述べた実施形態では、複屈折レンズの入力表面および出力表面上での偏光状態の出力角度は、この角度に整合しない場合がある、ゼロであるように設定される。
【0110】
凸表面構造は、付随する表面配向エネルギーを有し、配向膜と競合して、液晶セル上に配向を与えるであろう。この効果は、曲率半径が最小であるレンズ先端の近くで特に重要である場合がある。これは、異なる液晶ダイレクタ配向のエリア間で液晶材料の回位を引き起こす場合がある。回位は、散乱を引き起こし、光学クロストークを増加させ、レンズコントラストを低下させ、緩和時間を増加させる場合があり、したがって、望ましくない。したがって、レンズ表面における液晶材料を、レンズアレイの円柱レンズの幾何学的光軸に平行に配向させることが好ましい。
【0111】
1つの手法は、パネル出力偏光に平行である配向膜を平面および凸表面上に作成することであろう。これは、円柱レンズの幾何学的レンズ軸に平行でない、凸レンズ表面構造における配向膜を必要とするであろう。
【0112】
本発明の一実施形態では、ディスプレイの出力偏光は、能動レンズへの入力において、半波長板などの波長板を組み込むことによって修正することができる。これは、出力直線偏光状態が、能動レンズを通過する前に、垂直方向に対して回転することを可能にする。半波長板、および、色分散効果が減少する広帯域半波長板は当技術分野ではよく知られている。波長板は材料およびデバイスへの取り付けのために追加のコストがかかり、波長板は有彩色であってもよく、波長板は厚みを追加する。画素平面とレンズの分離は、表示デバイスからのウィンドウの距離を決め、したがって、この距離を増加させることは、ディスプレイからの最良の観察ゾーンの距離を増加させる。
【0113】
たとえば、80μmのカラーの画素以下のピッチを有する場合がある2ビューディスプレイは、ほぼ160μmのピッチのレンズ、および、900μmの、レンズに対する画素の典型的な分離を有することになり、この典型的な分離は、500μmのディスプレイ基板の厚み、200μmの出力偏光子の厚み、150μmのガラスMicrosheetの厚み、および50μm厚の液晶層を含む。この系は、ディスプレイから480mmの距離において65mm幅のウィンドウを生成するであろう。200μm厚の波長板が付加される場合、この距離は585mmに増加するであろう。こうした名目上の視距離の増加は、多くのディスプレイ、特にモバイルディスプレイにとって望ましくない。画素サイズを減少することは、視距離をさらに増加するであろう。処理時間および材料を追加するという犠牲を払って、高複屈折性の材料をコーティングすることによって作られるような薄い波長板が使用されてもよい。したがって、追加の波長板を導入することは、望ましいオプションでない場合がある。
【0114】
レンズデバイスに偏光回転機能を組み込むこと以外に、凸表面構造における3Dモードでの液晶材料の配向が、幾何学的レンズ軸に平行である能動レンズを作成することによって、垂直出力偏光を提供するために、波長板を追加するか、または、ディスプレイを再設計する必要がなくなることが望ましい。
【0115】
本発明の目的は、入射偏光状態のねじれが能動レンズの厚みを通して起こるような光パワーをレンズが有するモードにおいて、平坦基板上の液晶材料の配向とレンズ基板上の液晶材料の配向の間にある角度を設定することによって、能動レンズ内で誘導回転(guiding rotation)を用いることによる能動レンズ内での出力偏光の調整を提供することである。そのため、能動レンズは、指向性分布修正動作モードにおける円柱レンズの幾何学的光軸に対する複屈折材料の平行な配向に加えて、表示デバイスからの出力偏光の補正を提供するのに役立つ。
【0116】
例のシステムを調べることによってわかるように、これは意外なことに有利である。その例では、屈折率1.56の等方性材料、および、1.75の異常光屈折率を有するMerck Limited製のE7液晶材料を用いて得られる自動立体3Dディスプレイは、130μmの最適レンズ曲率半径を与える。こうしたレンズは27.5μmのサグ(sag)を有する。そのため、少なくともこの厚みの液晶層が、レンズの最も厚い部分で必要とされる。こうした層は、6μmを超える光学厚みを有し、Gooch−Tarryの関係から、したがって、Maugin限界に近づく、強く誘導された(strongly guided)レジーム(regime)内にある。したがって、偏光状態は、レンズエリアのほとんどにわたって都合よく誘導されるであろう。
【0117】
ポジティブパワーの(positive power)液晶レンズの場合、先端は厚みが薄く、したがって、誘導があまり有効でない場合がある。同様に、ネガティブパワーの(negative power)液晶レンズの場合、レンズの中心は厚みが薄く、誘導があまり有効でない場合がある。層が、偏光状態を誘導し、したがって、デバイスのコントラストを最適にし続けるように、液晶材料のさらなる均一な厚みの層を、セルの最も薄い部分の近くに組み込んでもよい。45°の出力偏光子透過角度を有するベースLCD200を用いた自動立体ディスプレイについての本発明の一実施形態が図8cに示される。ディスプレイからの出力は、ホモジニアスに配向した正の誘電異方性液晶材料を表面に有する平面基板上に入射する。レンズ表面における配向膜は、レンズに平行であり、したがって、垂直方向である。よって、レンズを通して偏光状態の45°の回転が起こり、レンズ表面において、偏光は液晶材料の異常光軸上に入射し、位相不整合、したがって、レンズ焦点距離が生成される。
【0118】
セル内での材料の回転は、コレステリック物質をドーピングすることによって補助されてもよい。配向膜の近くでのプレチルト効果を補償するために、平坦表面および凸表面における配向方向は、反平行である、垂直方向に分解した配向方向成分を有してもよく、その結果、オフ状態では、セルは構造全体にわたってほぼ均一なプレチルトを有する。任意選択で、セルは、平行かまたは反平行である、垂直方向の配向成分を有してもよく、その場合、反応速度が改善される場合がある。
【0119】
オン状態では、図7bに示すように、分子は、分子配向120が印加電界に平行な状態で、実質的に垂直配向状態に駆動される。この場合、レンズにおける偏光の回転が減るため、レンズ表面に入射する偏光状態は、幾何学的レンズ軸に平行ではない。しかしながら、偏光状態は、液晶屈折率の常光線成分に配向することになり、したがって、レンズは、ほぼ屈折率整合し、実質的に光パワーを有さないことになる。
【0120】
オン状態では、配向膜の近くで液晶材料の残留チルト(tilt)が存在する場合があり、この残留チルトによって、入射偏光状態についてレンズの焦点距離の増加がもたらされることになる。このチルトは、液晶材料の常光線成分の屈折率を、等方性材料より小さくなるように減少させることによって補償することができる。そのため、レンズの巨視的な(bulk)焦点距離を補償することができる。オフ状態の焦点距離を確定するために、液晶材料の異常光屈折率から曲率半径が設定される。
【0121】
本発明の実施形態の全てにおいて、第1基板上での配向膜の配向は、偏光表示デバイスからの入力偏光状態に対して平行ではなく直角である場合がある。これは、有利には、第1動作モードにおける能動レンズセルの偏光の誘導回転を改善する場合がある。これは、図8dに示され、平坦基板203における配向方向は、パネル出力偏光200に直角である。レンズアレイは配向方向205を有する。
【0122】
図18は、輝度向上半透過型表示モードで使用するための本発明の別の実施形態を示す。光源252は、ITO皮膜256を有する支持基板254および等方性微細構造258を含む能動レンズを照明する。配向膜260は、等方性微細構造258の表面上に形成され、液晶材料262は、配向膜260と、ITO皮膜266および配向膜264が表面に形成された平坦基板268との間に挟まれる。基板266は、たとえば、厚み160μmのMicrosheetであってよい。能動レンズは、標準半透過ディスプレイで使用されるような偏光子および波長板スタック270上に設置される。対向基板272および液晶層274は、吸収領域277、入射光を反射するための反射領域278、および、バックライト282および能動マトリクスバックプレーン284からの光を透過するための透過領域280を有する半反射反射(transflective reflective)画素平面276上に形成される。
【0123】
周囲光源252(装置の一部ではない)からの光はディスプレイを照明する。第1動作モードでは、レンズはオフ状態にあるためフォーカス機能が存在する。そのため、光源は画素平面276上に結像する。反射光は、隣接するレンズによって集光され、光線286で示すように観察者に結像する。ディスプレイの前部の制限されたウィンドウにおいて、画像が明るく現れるであろう。明るいウィンドウはより暗いウィンドウによって散在させられているため、全体の輝度が維持される。透過モードでは、制限された透過領域からの光は、画像の見かけの輝度を増加するため、ウィンドウ平面に同様に結像される。前部反射288は、有効光286と異なる方向にあるため、見えない。
【0124】
図18のディスプレイの動作は図19に示される。入射光は、レンズ262において2つの偏光状態に分解される。オフ状態では、レンズによって結像される偏光状態は、レンズ幾何学的軸292に平行であり、レンズを通して回転して平坦基板294上に入るため、典型的な半透過ディスプレイの場合、たとえば、20°である場合がある、ディスプレイの偏光子295の透過軸に平行に入射する。この光は、反射バックプレーン296上に透過され、光は、ディスプレイによって変調され、偏光子298および平坦基板300を通して反射される。第2の光の回転は、光がレンズ302によって観察者290に対して結像されるように起こる。
【0125】
非レンズモードでは、オン状態液晶配向において、入射偏光が、全ての偏光において常光線液晶屈折率に直面する(see)ため、レンズは、実際には全く機能を有さず、光出力は実質的に修正されない。
【0126】
能動レンズデバイスでの非ゼロねじれの使用のさらなる利点は、セルの配向縮退を減らすことができることである。縮退は、上部表面と下部表面の間の液晶配向についての、セル内の液晶の複数の最小エネルギーねじれ方向から生ずる。複数の回転エネルギー最小値が存在する場合、分子が、セルを通してたどる可能性がある複数の回転経路が存在し、したがって、誘導作用が異なる可能性があり、セルの異なる部分において異なるレンズ特性を与える。回転オフセットを用いることは、セル内の分子のための単一の好ましい回転経路を可能にし、したがって、セルの均一性を高める。
【0127】
こうして、能動レンズ内の偏光状態の回転は、レンズ表面における平行配向を維持しながら、特定のパネルについてのレンズ性能を最適化するのに役立つ。デバイスは、反射光の反射経路と同じように、透過光について機能する。
【0128】
図20に示す、さらなる実施形態では、円柱レンズアレイは、パネルの画素の列に対して傾斜する場合がある。ビュー間のクロストークが増加するという不利を伴って、見かけのビュー数を増加させるために、パネルの画素に対してレンズ軸を傾斜させることは、当技術分野ではよく知られている。本発明では、能動レンズが、幾何学的レンズ軸に平行である、レンズ表面における液晶の配向を有することが望ましい。こうしたデバイスは、有利には、ねじれを達成するために、平坦表面と凸表面の間のねじれを用いる場合がある。図20は、画素306が列および行で配置される画素平面304を示す。画素は、45°の出力偏光308を有する透過型ノーマリホワイトツイステッドネマチック液晶ディスプレイに組み込まれる。能動レンズの平坦基板310は45°の配向方向を有し、凸表面レンズ312は、たとえば、10°の幾何学的レンズ軸の配向を有する。この表面312上の配向膜方向は、190°に設定されるため、平坦基板上の配向方向は、垂直方向に反平行成分を有する。
【0129】
レンズは、別法として、凸表面の表面において、図に示す曲率とは逆の曲率で配向してもよい。この場合、液晶レンズの最も薄い部分は、先端の近くではなく、レンズの中心に配置される(align)。こうしたレンズは、レンズの収差の増加により、波面品質の低下を受ける。
【0130】
ホメオトロピック配向膜
これまでに述べた実施形態は、従来のホモジニアス配向膜および正の誘電異方性材料を使用する。しかしながら、デバイスを2Dモードで動作させるために、セルの両端で電圧が印加される必要がある。多くのデバイスの2Dモードは、より多く使用される可能性がある。2D画像のための3Dモードでのデバイスの動作は、ディスプレイのユーザに好ましくないアーチファクトを引き起こすことになり、したがって、望ましくない。したがって、こうした素子は、多くは切り替え式の動作状態に維持される必要があるであろう。これは、3Dモードと比較して、デバイスの電力消費の増加を引き起こすであろう。スイッチがうまく働かない場合、デバイスは、3Dモードのままとなることになり、同様に、望ましくない。
【0131】
デバイスが、オフ状態にある時に2Dモードで動作するために、光学微細構造材料108の屈折率は、液晶材料の異常光屈折率と同じであるように設定されるであろう。これは、低コストで容易に入手可能で、かつ、安全に扱うことのできる高分子および液晶材料の選択が必要であるために望ましくない。
【0132】
上記例では、E7は、550nmで、0.22のデルタnを有し、1.75の異常光屈折率(ne)を有するMerck製の典型的な正の誘電異方性材料である。1.6より大きい屈折率を有する高分子材料が入手可能であるが、これらの材料は、毒性があり、高価であり、扱うのが難しい傾向があり、したがって、望ましくない。別法として、正の誘電異方性液晶材料のneは、より受け入れやすい高分子材料に整合するように下げることができる。しかしながら、neを下げることは、材料のデルタnを下げる傾向がある。たとえば、Merck Limited製のMLC3376は、1.57のneを有するが、0.09のデルタnしか有さない。こうしたレンズは、−100μm未満のレンズ曲率を必要とするであろう。そのため、こうしたレンズは、サグが増加し、配向が反転し、表面反射が増加し、散乱、光学クロストーク、および反応時間の増加につながる収差が低下する。こうしたレンズは、同様に、あまり強く誘導しないため、セル内の入力偏光の回転が効果的でなくなるであろう。
【0133】
したがって、レンズ構造を形成するのに通常用いられる多くの高分子の場合、液晶材料の屈折率の異常光成分ではなく、常光線成分に対する等方性材料の屈折率整合を使用することが、簡単で、安価で、高い性能を提供する。
【0134】
そのため、ホモジニアス配向、正の誘電異方性液晶、および、容易に入手可能な高分子材料の組み合わせを用いて作製された能動レンズデバイスは、一般に、先に述べた理由で望ましくない、駆動式(driven)2D動作モードを必要とするであろう。
【0135】
能動レンズは、図7と同様である、図9aおよび図9bに示すように構成される。基板102は、電極110、112、光学微細構造108、および、その表面上に形成されたホメオトロピック配向膜128を有し、一方、基板104は、電極114、115およびその表面上に形成されたホメオトロピック配向膜130を有する。セルは、負の誘電異方性を有する液晶材料132で充填される。
【0136】
デバイスの動作は図10aで述べられる。ディスプレイの出力偏光子は、垂直方向に対して平行な入力直線偏光状態方向136を提供する。ホメオトロピック配向によって、ダイレクタが、表面の平面にほぼ直角に配向する。オフ状態では、図9において電極110の下の液晶材料配向124で示すように、偏光状態は、液晶材料上に入射し、液晶材料の常光線屈折率に直面し、次に、等方性高分子微細構造108の屈折率に整合する。そのため、レンズにおいて、実質的な位相段差は存在せず、レンズは、出力指向性分布に対して実質的に影響を与えない。
【0137】
オン状態では、図9aおよび図9bの電極112の下に示すように、液晶の負の誘電異方性により、その配向132が、セルの中央のダイレクタが実質的に基板の平面内にあるように変調される。したがって、ディスプレイの出力偏光が直面する液晶の異常光屈折率成分が存在し、レンズによって位相段差が生成される。こうしたレンズを用いて、ディスプレイの指向性分布を変更し、たとえば、3D動作モードを生成することができる。
【0138】
こうした実施形態は、有利には、屈折率の低い従来の高分子材料を用いた切り替え式でない2D動作モードを生成するのに役立ち、したがって、安価で、製造が簡単である。この実施形態では、デバイスの電力消費は、デバイスが3D動作モードにある時に存在するだけである。
【0139】
オン状態では、液晶分子は、電界によって基板に平行に引き寄せられる。レンズ表面における液晶材料の配向バイアスは、たとえば、レンズ微細構造の表面エネルギーによって、幾何学的マイクロレンズ軸に平行になる場合がある。駆動状態においてこの向きの配向を促進するために、付加的な配向特徴部(feature)がこの表面上に組み込まれる場合がある。こうした配向特徴部は、高分子微細構造内に形成された、幾何学的マイクロレンズ軸に平行に通る溝であってもよい。こうした溝は、たとえば、回折格子によって形成されてもよい。回折格子は、有利には、レンズと同じ複製プロセスで形成することができるように、マイクロレンズ構造のマスタリングプロセスにおいて形成されてもよい。
【0140】
平坦基板はまた、オン状態での分子の配向をバイアスするために、ホモジニアス配向構造を有してもよい。オン状態での配向膜のバイアスは、表示デバイスからの出力偏光状態が幾何学的マイクロレンズ軸にほぼ平行になるように回転するように、セルを通して偏光の回転を提供するように構成されてもよい。これは図10bに示される。たとえば、45°のパネル出力偏光が平坦基板上に入射する。オフ状態では、ホメオトロピックに配向した液晶が、常光線屈折率が等方性材料に整合した状態で見られるため、実質的に回転は必要とされない。しかしオン状態では、配向膜208は、ホモジニアス配向バイアスを有するため、液晶分子は、パネルの出力偏光方向にほぼ平行に(または直角に)配向する。レンズにおいて、ホモジニアス配向バイアスは、平坦基板における配向の垂直成分に反平行であり、したがって、セルを通して回転が提供される。こうした回転は、先に述べたものと同じ利点を提供し、特に、波長板の追加、または、表示デバイス出力偏光の他の変更を必要とすることなく、標準ディスプレイの出力偏光とレンズのアラメントをとることを可能にし、したがって、デバイスの視野角を最大にする。
【0141】
本発明のさらなる実施形態は、図11および図12に示される。この構成では、平坦基板における配向膜134は、ホモジニアス配向膜であり、液晶を基板に平行に配向させる。オフ状態では、入射偏光は、平坦基板の近くの材料136内で異常光屈折率に直面する。しかしながら、レンズ表面に近い材料138は、ホメオトロピックに配向するため、偏光状態は、凸表面領域において実質的に常光線屈折率に直面する。高分子屈折率は、液晶材料の常光線屈折率に実質的に整合するため、実質的に位相段差が存在せず、レンズは機能を有さない。
【0142】
ホモジニアス配向膜に近い領域における付加的なレンズパワーを補償するために、液晶の常光線屈折率は、高分子材料の屈折率より低い場合がある。レンズの曲率は、液晶材料の異常光屈折率および高分子屈折率によって設定される。
【0143】
オン状態では、負の誘電異方性材料は、ダイレクタ140が全体のセルを通して基板に実質的に平行であるように再配向し、偏光状態は、液晶材料の異常光屈折率に直面する。そのため、レンズにおける位相段差が存在し、修正された指向性分布および3D動作モードが生ずる。これは、図11aおよび図11bの電極112の下のダイレクタ配向140によって示される。
【0144】
図13に示すような双安定レンズを形成するために、レンズ表面上のそれぞれの配向膜におけるホメオトロピック配向およびホモジニアス配向の組み合わせを用いてもよい。こうしたレンズは、2つの状態の間で切り替えるため以外で、パワーを加えられる必要がない。画素輝度切り替え用途のための平坦セルは、G.P. Bryan-Brown, C.V. Brown, J.C. Jones, E.L. Wood, I.C. Sage, P. Brett, J. Rudin著「Grating aligned bistable Nematic device」(SID 97 Digest pp37-40)に記載されている。格子およびホメオトロピック配向膜の組み合わせを用いて、双安定セルが作成される。
【0145】
第1電極領域110において、セルの両端でパルスが駆動されるため、材料は、セルにわたってホメオトロピック配向膜に従って配向する。入射直線偏光状態は、その後、液晶材料146の常光線屈折率に直面し、レンズ構造は分解されない。dc電圧パルスが印加される場合、レンズ表面における液晶配向は、ダイレクタ148が格子表面に平行になるように修正される。そのため、レンズ表面の領域では、偏光状態は、液晶材料の異常光屈折率に直面し、レンズが分解される。格子の表面エネルギーが、ホメオトロピック配向膜の表面エネルギーと同じになるように設定される場合、デバイスは双安定とすることができ、2Dモードと3Dモードの両方で駆動されないであろう。デバイスは、正または負の電圧パルスを印加することによって、2Dモードと3Dモードの間で切り替えられる。
【0146】
上記の実施形態では、ホメオトロピック配向膜は、レンズ表面で使用されるため、第1の非駆動モードでは、入射偏光状態は、高分子と屈折率整合する液晶の常光線屈折率に直面する。常光線屈折率を用いることによって、デバイスの作製時に標準高分子材料が使用されてもよい。位相構造がレンズ表面で生ずるため、レンズの平坦表面はホメオトロピックまたはホモジニアス配向のいずれかを使用することができる。
【0147】
外部偏光子の能動レンズデバイス
偏光出力表示システムにおいて、従来技術のディスプレイは、偏光子に対する能動レンズの相対位置を開示しない。図14に示すように、能動レンズは、たとえば、厚みが150μm以下のMicrosheetガラスまたはプラスチック材料基板である場合がある基板211、平坦基板配向膜とITO皮膜212およびレンズ基板配向膜とITO皮膜214、複屈折材料218および等方性材料220および最終基板216を備えてもよい。この構造は、ディスプレイの出力偏光子の後に配置してもよい。輝度は、ディスプレイ偏光子によって分解(analyse)されているため、レンズは、出力光の指向性のみを操作する。こうしたシステムは、出力偏光子の厚みのために、視距離の増加を受ける。
【0148】
システムの視距離は、図15に示すように、デバイスの能動レンズの後に偏光子を配置することによって減少させることができる。この場合、LCD偏光は、未だ出力偏光子82によって分解されていないが、まず能動レンズ211〜220を通過する。ディスプレイの動作は図16に示される。たとえば、ディスプレイが、出力偏光子によって0°に設定されたノーマリホワイト出力偏光角222を有する液晶ディスプレイである場合、平坦基板は、0°の配向角224を有するホモジニアス配向を有する。レンズのオフ状態では、LCDからのホワイト状態の光は、レンズを通過するため、円柱レンズアレイに入射する偏光226は、幾何学的レンズ軸に平行になる。この光は、その後、0°の透過方向を有する出力偏光子228を透過する。レンズのオン状態では、電界がセルに印加され、正の誘電異方性材料が、セルの基板にほぼ直角に再配向する。そのため、偏光状態は、レンズの常光線屈折率に直面し、レンズ機能は与えられない。出力偏光状態は、出力偏光子を通過する。
【0149】
こうした構成は、出力偏光子におけるコントラストの損失のために、レンズセルの非ゼロ°の偏光回転を有するデバイス内では都合よく動作しないであろう。こうしたデバイスは、ディスプレイの出力偏光を回転させるために、1つまたは複数の波長板の追加を必要とする場合がある。波長板は、有利には、偏光子より薄く作られる可能性がある。レンズセルにおけるコントラストの損失はまた、最終画像のコントラストを低下させる働きをする場合がある。
【0150】
外部偏光子の実施形態は、さらに、外部周囲光におけるレンズの可視性が減るという利点を有する。ディスプレイの前部に入射する外部光源は、入力偏光子を通過し、レンズおよび位相段差を有する他の表面(たとえば、ITOなどの反射皮膜から)においてフレネル反射を受け、その後、出力偏光子を通過して戻る。したがって、外部偏光子は、各方向に通過する光の一部を吸収し、したがって、レンズ反射を減らし、有利には、表示コントラストを増加させる。
【0151】
有利には、こうした素子は高い偏光変換効率を有する液晶モードで、モードのコントラストを最適化するために使用することができる。透過型ノーマリホワイトツイステッドネマチック液晶などの、一部のデバイスでは、オン状態(最大ホワイトレベルを生成する偏光状態と呼ぶ)は、ブラック状態に対して90°の回転を有する。そのため、レンズを通過する偏光状態は、オン状態のみから分解(resolve)することができる。たとえば、混合ツイステッドネマチックデバイスなどの、他のデバイスでは、オン偏光状態は、ブラック状態に直角でない場合がある。こうしたデバイスは、内部能動レンズ構成においてコントラストの減少を受ける。
【0152】
多くの反射型液晶ディスプレイなどの、偏光子に加えて波長板が光出力上で使用されるシステムでは、波長板は、画素平面と能動レンズデバイスの間に配置される場合があるため、ディスプレイからの出力はほぼ直線である。
【0153】
図21は、本発明のさらなる実施形態を示す。たとえば、高分子エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの発光型ディスプレイは、発光画素316〜330が形成される基板314を備える。発光画素は、偏光しないか、部分的に偏光するか、または、ディスプレイの素子の残りを通して最適な透過を提供するようにアライメントをとられた直線出力偏光方向を持って偏光する場合がある。発光型ディスプレイ対向基板332には、能動レンズ素子が取り付けられる。能動レンズは、たとえば、Microsheet334、ITO電極336、342、切り替え可能な複屈折材料338、等方性凸表面構造340、および、支持基板344を備える。最終出力偏光子346は、マイクロレンズアレイの幾何学的軸に平行である透過方向を持った状態で取り付けられる。
【0154】
オフ状態では、液晶材料は、画素から光を受け取り、垂直偏光状態(紙面に対して垂直)について、屈折構造において位相不整合が生じるため、レンズは光学機能を有する。この偏光状態は、出力偏光子346を透過する。そのため、能動レンズは、画素平面と出力偏光子の間に配置されてもよく、有利には、ディスプレイの視距離を減らす。オン状態では、分子が再配向するため、偏光子346を透過した出力偏光は液晶材料338の常光線屈折率に直面しており、レンズ機能は見られない。こうして、偏光子344は、クリーンアップ偏光子とレンズ分解(analyzing)偏光子の機能を組み合わせるのに役立つ。
【0155】
偏光発光型ディスプレイ
高分子および小分子有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを含む無機および有機のエレクトロルミネッセンスディスプレイなどの発光型ディスプレイは、通常、偏光しない光出力を生成する。しかしながら、指向性分布光学切り替えシステムは、たとえば、均等拡散である場合がある第1モードと、たとえば、自動立体3Dウィンドウである場合がある第2モードとの間でディスプレイが再構成されることが可能になるように偏光の切り替えに依存する場合がある。そのため、非偏光ディスプレイは、偏光指向性分布光学切り替えシステムと組み合わされると、偏光損失を示すことになる。
【0156】
本発明の目的は、能動レンズを備える指向性分布光学切り替えシステムの入力偏光状態に対して偏光発光型ディスプレイの出力偏光のアライメントをとることによって、発光型ディスプレイにおける高光効率を提供することである。偏光のアライメントは、ディスプレイの発光画素内の発光材料の一軸配向した発色団(uniaxial aligned chromophore)によって達成され得る。偏光出力の主軸の配向方向(alignment direction)は、複屈折マイクロレンズ内の複屈折材料の配向方向と連携するように設定される場合がある。
【0157】
こうして、能動レンズを用いた高効率発光型指向性分布光学切り替えディスプレイを達成することができる。こうしたディスプレイは、LCDディスプレイと比べてさらなる利点を有し、たとえば、バックライトを必要とせず、したがって、薄くかつ軽く作ることができ、モバイル用途にとって重要である可能性がある。
【0158】
偏光した出力を提供する任意のタイプの偏光発光型ディスプレイが用いられてもよい。たとえば、それは、A.E.A. Contoret, S.R. Farrar, P.O. Jackson, S.M. Khan, L. May, M. O'Neill, J.E. Nicholls, S.M. KellyおよびG.J. Richards著「Polarized Electroluminescence from an Anisotropic Nematic Network on a Non-contact Photoalignment Layer」(Adv. Mater. 2000, 12, No.13, July 5 p971)に記載される偏光有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであってもよい。これは、実際のシステムにおいて、11:1の偏光効率を達成することができることを証明する。
【0159】
図17は、本発明の一実施形態を示す。画素230〜244のアレイは表示基板246上に形成される。基板246は、画素のそれぞれが、電気信号によって独立にアドレス指定されるようにアドレス指定用の薄膜トランジスタおよび電極のアレイを備える場合がある。薄膜トランジスタは、無機であるか、または、有機材料で具現されてもよい。別法として、画素は、アドレス指定用トランジスタが画素に存在する必要がない受動アドレス指定方式(scheme)によってアドレス指定されてもよい。画素23〜244のそれぞれは、発光の偏光が、全画素について、ほぼ直線であり、かつ、ほぼ同じ向きであるように、発色団を備える発光材料が一軸配向する発光領域を備える。各画素は、ほぼ同じ偏光方向を有するように構成される。発光材料は、たとえば、高分子エレクトロルミネッセンス材料または小分子エレクトロルミネッセンス材料であってよい。発光材料の分子を配向させることによって、偏光発光を生成する手段が知られている。さらなるカバー基板248が画素に取り付けられる。基板248は、障壁層およびコントラスト強調ブラックマスク層を組み込む場合がある。
【0160】
任意選択の偏光子250が基板248に取り付けられてもよい。別法として、偏光子材料は、たとえば、基板248の内部表面上で、画素平面に、または、画素平面の近くに組み込まれてもよい。
【0161】
たとえば、1つの知られている偏光有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、11:1の偏光比を有する。偏光効率45%の典型的な偏光子と組み合わせると、光源からの全体のスループットは、クリーンアップ偏光子と組み合わせた非偏光の光源についての45%と比較すると、82.5%になるであろう。
【0162】
能動複屈折マイクロレンズ212〜220は、偏光子250の表面上に形成される。スイッチセルからの出力偏光を切り替えるために、電圧が液晶セルの両端に印加される。
【0163】
図17の装置は以下のように動作する。偏光発光画素アレイ230〜244からの出力偏光は、発光材料の偏光方向の主軸に平行な透過方向を有する直線偏光子250によってクリーンアップされる(cleaned)。この偏光状態は、オフ状態において、複屈折レンズ218内の液晶材料の配向に平行であるようにアライメントがとられる。この屈折率は、等方性材料40の屈折率と異なるため、レンズ効果が存在する。第2モードでは、材料218は、印加電界によって再配向するため、レンズ表面において等方性材料に対する屈折率段差が実質的に存在せず、レンズは光学機能を有さない。これは、2Dモードに対して光出力の指向性分布の変化を引き起こす。レンズは、ウィンドウ平面において画素平面の画像を生成するように構成される場合がある。
【0164】
最適動作温度範囲の拡張
次に、最適動作温度範囲を拡張するための考慮事項を述べる。これらの考慮事項は、先に述べた能動複屈折レンズアレイ全てに当てはまり、実際に一般に、電極両端の電圧制御によって2つのモードで動作する任意の他の能動複屈折レンズアレイに当てはまる。
【0165】
ディスプレイの性能は、動作温度と共に変化する場合がある。これは、温度に伴う、複屈折材料の常光線屈折率および異常光屈折率、ならびに、等方性材料の屈折率の変動によるものである可能性がある。
【0166】
液晶材料と高分子材料の典型的な組み合わせについての、温度352に対する屈折率350の変動が、図22に概略的に示される。常光線屈折率356は、ネマチック−等方性遷移温度に近づくにつれて増加する傾向があるが、異常光屈折率354は減少する。ネマチック−等方性遷移温度360を超えると、複屈折材料の屈折率は整合するようになる。高分子の屈折率358は、図示するように、温度と共に減少する場合がある。
【0167】
図22に示すシステムは、正の誘電異方性液晶材料について、高分子の屈折率356が、複屈折材料の常光線屈折率に実質的に整合する典型的な材料系の場合を示す。本出願の他の箇所で述べたように、こうしたシステムは、通常、高分子の屈折率と常光線屈折率が実質的に整合する2D動作モードを可能にするために、セルに電圧が印加されることを必要とする。他の材料系では、高分子の屈折率356は、複屈折材料の異常光屈折率に実質的に整合する場合があり、その場合、以下の考慮事項が、必要な変更を加えてやはり当てはまる。
【0168】
設計動作温度362は、通常、室温、たとえば、20〜25℃の範囲、好ましくは、20℃である。
【0169】
高分子の屈折率が常光線屈折率356に等しいゼロ電圧屈折率整合点368が、材料の的確な選択に応じて設計パラメータとして選択されてもよい。通常、ゼロ電圧屈折率整合点368は、設計動作温度に設定される。しかしながら、ゼロ電圧屈折率整合点368を、次の通り、より高い温度にバイアスする時に利点が存在することが理解されている。
【0170】
第1に、こうした選択は、表示装置が、20℃の標準設計温度を超えた温度で用いられることがかなり多いという考慮事項が存在する。したがって、高分子材料の屈折率が、複屈折材料の屈折率の関連する1つに正確に等しくなる温度を上げることによって、高分子材料の屈折率が、表示装置の通常の使用の大きな部分にわたって、複屈折材料の屈折率の関連する1つに実際に近くなる。
【0171】
複屈折レンズ材料の常光線屈折率356が、設計温度362において、高分子の屈折率358に実質的に整合する系の場合、屈折率整合条件は、温度が上昇すると失われる場合がある。これは、高分子の屈折率を、室温における常光線屈折率と異常光屈折率の間に設定することによって克服することができ、その結果、2Dモードについて、許容可能な低い輝度変動が、ウィンドウ平面で見られる。動作温度が上昇するにつれて、液晶の常光線屈折率356は高分子の屈折率358の方へ増加するため、先に述べたように、典型的な所望動作温度範囲について、十分に緊密な屈折率整合条件が2Dレンズ性能要件を満たす温度範囲が拡張される。
【0172】
第2に、温度変動について、デバイスの性能をさらに補償するのに用いることができる、図23に示す装置について以下で述べる。温度センサ370または手動ユーザ調節372を用いて、レンズセル376の両端の電圧を駆動する電圧コントローラ374が設定される。そのため、2Dモードでは、低い電圧がレンズの両端に印加される可能性がある。手動ユーザ調整は、直接的な電子調整によってか、または、電圧を制御するソフトウェアアプリケーションへのユーザ入力によって実施されてもよい。
【0173】
高分子の屈折率358は、設計動作温度362を超える、好ましくは、少なくとも25℃である限界までの温度範囲にわたって、常光線屈折率358と異常光屈折率354の間に設定される。この特定の実施形態では、限界はゼロ電圧屈折率整合点368である。この温度範囲にわたって、電圧コントローラ374は、第2モード(2Dモード)での温度変動を補償することができ、それによって、有効温度動作範囲が拡張される。
【0174】
図24は、こうしたデバイスにおける屈折率の変動を概略的に示す。有効屈折率は、複屈折レンズを通して観察者のところに通過する偏光状態が直面する結果として得られる屈折率である。有効屈折率は、複屈折材料の常光線屈折率と異常光屈折率の分解された成分である。電圧が複屈折材料に印加された場合、材料は再配向するため、偏光状態が直面する常光線屈折率と異常光屈折率の相対成分は変わり、したがって、有効屈折率が変わる。
【0175】
示した例では、複屈折材料を完全に切り替えるための電圧が印加される場合、設計動作温度362にて、レンズを通過する時に入射偏光状態が直面する有効屈折率は高分子の屈折率より低い。
【0176】
低い電圧が印加される場合、偏光状態が複屈折材料の異常光屈折率成分に直面し始めるため、偏光が直面する有効屈折率は、矢印364で示す量だけ増加するであろう。高分子の屈折率358が、標準動作温度での液晶の常光線屈折率を超えて設定される場合、レンズの有効屈折率は、動作温度において高分子の屈折率358に整合するように制御されることができる。
【0177】
電圧が、動作範囲にわたる動作温度に、たとえば、矢印366で示す温度に合うように調整される場合、第2モードの動作温度範囲を拡張することができる。温度368では、屈折率整合条件を達成するために電圧は印加されない。電圧信号374は、表示性能を最適化するために、温度センサ370からの自動フィードバックによってか、または、入力372による手動補正によって設定されることができる。
【0178】
同様に、第1モード(3Dモード)の動作温度範囲は、図25に示すように拡張することができる。温度352が上昇するにつれて、材料の異常光屈折率354が減ることになり、したがって、レンズの光パワーが減る。レンズの曲率半径の選択によって制御される場合があるレンズアレイのパワーは、設計動作温度362を超える、好ましくは、少なくとも25℃である限界までの温度範囲にわたって、表示装置内の空間光変調器の最良のフォーカスでの設計温度362の動作に必要とされるパワーより大きくなるように設定される場合がある。この温度範囲にわたって、電圧コントローラ374は、第1モード(3Dモード)における温度変動を補償することができ、それによって、有効温度動作範囲が拡張される。
【0179】
この特定の実施形態では、セルに電圧が印加されない場合、レンズの光パワーは、室温での最適性能に必要とされるより少し大きい。調整された電圧が、最適なレンズ動作を達成するために、レンズセルの両端に印加されてもよい。これは、矢印370で示され、レンズの偏光状態が直面する有効屈折率は、屈折率372の場所に当たる。温度が上昇するにつれて、レンズの有効屈折率は低下することになるため、必要とされる屈折率降下374は小さくなり、レンズの光学性能を維持するための駆動電圧を下げることができる。図23に示す同じコントロールシステムを用いて、最良のディスプレイフォーカスを設定することによって、システム性能を最適化することができる。温度範囲にわたる最良フォーカスの較正は、エンドユーザへの出荷前のディスプレイについて決定される可能性がある。
【0180】
レンズの最良フォーカスは、レンズの光パワーおよび空間光変調器の画素平面からのレンズの分離によって決定される。
【0181】
レンズの最良フォーカスは、たとえば、当技術分野でよく知られているように、近軸フォーカス、最小オンアクシススポットサイズ、フィールド平均化スポットサイズ、最小オンアクシス2乗平均平方根光路差、または、最小フィールド平均化2乗平均平方根光路差として規定されることができる。別法として、最良フォーカスは、画素平面での目のスポットサイズ(すなわち、画素平面における名目上の人の瞳の画像サイズ)に関して決定されてもよい。最良フォーカスは、一般に、目のスポットサイズを最小にすることによって設定されてもよい。別法として、最良フォーカスは、画素平面における最小の目のスポットサイズと異なっていてもよい。たとえば、最良フォーカスの目のスポットサイズは、画素列間のギャップより大きい場合があるため、得られるスポットは、列間のギャップを結像することによるウィンドウ平面における輝度差をぼかしてなくすのに役立つ。最良フォーカスは、別法として、ディスプレイの視覚による観察によって決定されてもよいため、観察者がディスプレイに対して横方向に移動する時に、表示表面上に見られるフリンジの視覚的な外観が、ディスプレイの外観が最良に認識されるように最適化される。最良フォーカス設定は、ユーザが、ユーザの個人的好みに最もよく合うようにディスプレイの外観を変えることを可能にするために、ディスプレイ上でのユーザ設定であってもよい。
【0182】
レンズが、ホメオトロピック配向膜および負の誘電異方性を有する複屈折材料を組み込む場合、3D動作についてより高い駆動電圧が必要とされる。この場合、2Dモードは、駆動電圧を上げることによって最適化されるため、有効屈折率は高分子の屈折率の方に増加する。3Dモードでは、駆動電圧は減少するため、有効屈折率は、最良フォーカス位置を得るため低下する。
【0183】
高分子の屈折率はまた、複屈折材料の異常光屈折率に近いが、それ未満であるように設定される場合がある。この場合、有効屈折率の小さな変化が、屈折率整合を生じ、一方、駆動電圧の低下を用いて、3Dモードでの有効屈折率を増加させ、よって、最良フォーカスのための屈折率段差を生成することができる。
【0184】
こうして、ディスプレイの動作範囲は、有利には、高分子の屈折率を常光線屈折率と異常光屈折率の間に設定することによって拡張することができる。
【0185】
さらに、3Dモードの動作温度範囲は、有利には、設計動作温度で最適化された対応するレンズの場合よりレンズの曲率半径を小さくなるように設定することによって最適化される場合がある。
【0186】
レンズがねじれを組み込む本発明の実施形態は、さらなる補償を必要とする場合がある。レンズのねじれの量は、オフセット駆動電圧によって決定される場合がある。そのため、小さなオフセット駆動電圧は、駆動電圧が無い場合に存在するよりも少ないレンズのねじれを引き起こす場合がある。別法として、最大駆動電圧のオフセットは、普通なら存在しないねじれを導入する場合がある。ねじれの作用を除去するために、パネル出力偏光方向を補償するための波長板を用いることが望ましい場合がある。別法として、デバイスの設計上のねじれは、製造時に設定されて、最適化されるため、オフセット電圧が印加されると、設計動作温度において、正確なねじれがレンズセル内で生じる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、
前記複屈折材料を、3Dモードと2Dモードとの間で電気的に切り替えるために、前記複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、前記レンズアレイは、前記3Dモードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、前記2Dモードでは、前記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極と、
前記3Dモードと前記2Dのモードとの間で切り替えるために、前記電極の両端の電圧を制御する電圧コントローラであって、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、前記3Dモードと前記2Dのモードとで印加される電圧を調整するように構成される電圧コントローラと
を備える、表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項2】
レンズアレイ装置の温度を検知するための温度センサをさらに備え、前記電圧コントローラは、前記温度センサによって検知された温度に応答して、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、前記3Dモードと前記2Dのモードとで印加される電圧を調整するように構成される、請求項1に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項3】
ユーザが電圧調整を入力することを可能にするための入力デバイスをさらに備え、前記電圧コントローラは、前記入力デバイスに入力された前記電圧調整に応答して前記3Dモードと前記2Dのモードとで印加される電圧を調整するように構成される、請求項1に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項4】
前記等方性材料の屈折率は、少なくとも25℃の限界より低い温度における、前記複屈折材料の常光線屈折率と前記複屈折材料の異常光屈折率との間にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項5】
前記等方性材料の屈折率は、前記複屈折材料の前記異常光屈折率より前記複屈折材料の前記常光線屈折率に近い、請求項4に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項6】
前記等方性材料は高分子材料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の能動複屈折レンズアレイ装置と、
該能動複屈折レンズアレイ装置と直列に配置された空間光変調器と
を備え、
少なくとも25℃の限界より低い温度において、前記3Dモードにおける前記レンズアレイのパワーは、前記空間光変調器の最良フォーカスを提供するために前記レンズアレイに必要とされるパワーより大きい表示装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の能動複屈折レンズアレイ装置と、
該能動複屈折レンズアレイ装置と直列に配置された空間光変調器と
を備え、
少なくとも25℃の限界より低い温度において、前記3Dモードにおける前記レンズアレイのねじれは、前記空間光変調器の出力偏光状態の最良の回転を提供するために前記レンズアレイに必要とされるねじれより大きい表示装置。
【請求項9】
レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、
前記複屈折材料を、3Dモードと2Dモードとの間で電気的に切り替えるために、前記複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、前記レンズアレイは、前記3Dモードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、前記2Dモードでは、前記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極と
を備え、
前記等方性材料の屈折率は、20℃を超える温度における、前記複屈折材料の常光線屈折率または前記複屈折材料の異常光屈折率のうちの1つに等しい、表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項10】
前記等方性材料は高分子材料である、請求項9に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項1】
レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、
前記複屈折材料を、3Dモードと2Dモードとの間で電気的に切り替えるために、前記複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、前記レンズアレイは、前記3Dモードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、前記2Dモードでは、前記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極と、
前記3Dモードと前記2Dのモードとの間で切り替えるために、前記電極の両端の電圧を制御する電圧コントローラであって、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、前記3Dモードと前記2Dのモードとで印加される電圧を調整するように構成される電圧コントローラと
を備える、表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項2】
レンズアレイ装置の温度を検知するための温度センサをさらに備え、前記電圧コントローラは、前記温度センサによって検知された温度に応答して、レンズアレイ装置の温度の変動を補償するために、前記3Dモードと前記2Dのモードとで印加される電圧を調整するように構成される、請求項1に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項3】
ユーザが電圧調整を入力することを可能にするための入力デバイスをさらに備え、前記電圧コントローラは、前記入力デバイスに入力された前記電圧調整に応答して前記3Dモードと前記2Dのモードとで印加される電圧を調整するように構成される、請求項1に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項4】
前記等方性材料の屈折率は、少なくとも25℃の限界より低い温度における、前記複屈折材料の常光線屈折率と前記複屈折材料の異常光屈折率との間にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項5】
前記等方性材料の屈折率は、前記複屈折材料の前記異常光屈折率より前記複屈折材料の前記常光線屈折率に近い、請求項4に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項6】
前記等方性材料は高分子材料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の能動複屈折レンズアレイ装置と、
該能動複屈折レンズアレイ装置と直列に配置された空間光変調器と
を備え、
少なくとも25℃の限界より低い温度において、前記3Dモードにおける前記レンズアレイのパワーは、前記空間光変調器の最良フォーカスを提供するために前記レンズアレイに必要とされるパワーより大きい表示装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の能動複屈折レンズアレイ装置と、
該能動複屈折レンズアレイ装置と直列に配置された空間光変調器と
を備え、
少なくとも25℃の限界より低い温度において、前記3Dモードにおける前記レンズアレイのねじれは、前記空間光変調器の出力偏光状態の最良の回転を提供するために前記レンズアレイに必要とされるねじれより大きい表示装置。
【請求項9】
レンズアレイを画定する凸表面を間に有する複屈折材料および実質的に等方性の材料と、
前記複屈折材料を、3Dモードと2Dモードとの間で電気的に切り替えるために、前記複屈折材料の両端に制御電圧を印加するための電極であって、前記レンズアレイは、前記3Dモードでは、所定の方向に偏光した入射光の指向性分布を修正し、前記2Dモードでは、前記所定の方向に偏光した入射光に実質的に影響を与えないように構成される、制御電圧を印加するための電極と
を備え、
前記等方性材料の屈折率は、20℃を超える温度における、前記複屈折材料の常光線屈折率または前記複屈折材料の異常光屈折率のうちの1つに等しい、表示装置のための能動複屈折レンズアレイ装置。
【請求項10】
前記等方性材料は高分子材料である、請求項9に記載の能動複屈折レンズアレイ装置。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−53692(P2011−53692A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211169(P2010−211169)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2006−502217(P2006−502217)の分割
【原出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【出願人】(504011210)エーユー オプトロニクス コーポレイション (36)
【氏名又は名称原語表記】AU Optronics Corp.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2006−502217(P2006−502217)の分割
【原出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【出願人】(504011210)エーユー オプトロニクス コーポレイション (36)
【氏名又は名称原語表記】AU Optronics Corp.
【Fターム(参考)】
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