説明

脂環式ポリエステル及びその製造方法ならびに樹脂組成物

【課題】光学材料として好適な、着色が少なく、熱安定性や加水分解安定性も良好で、異物の少ない脂環式ポリエステル、及び当該脂環式ポリエステルとポリカーボネートとの樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂環式ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と脂環式ジオールを主成分とするジオール成分とから、重縮合触媒としてチタン化合物とアルカリ土類金属化合物を使用して製造される脂環式ポリエステルであって、当該脂環式ポリエステル中に含まれるチタンが金属原子換算で1重量ppm以上、25重量ppm未満であり、チタンとアルカリ土類金属(M)との比(M/Ti)が金属原子重量換算で0.25〜1.0であり、かつ固有粘度が0.4dl/g以上である脂環式ポリエステル及び当該脂環式ポリエステルとポリカーボネートから成る樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式ジカルボン酸成分及び脂環式ジオール成分を主成分とする脂環式ポリエステルに関するものであり、詳しくは、脂環式ジカルボン酸成分及び脂環式ジオール成分を、チタン系触媒とアルカリ土類金属触媒を使用して重合させることにより製造される、透明性、色相及び耐熱性に優れた脂環式ポリエステル及びその製造方法ならびに当該脂環式ポリエステルを含有する樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種のポリエステル樹脂は、種々の成形方法により、フィルム、繊維、成形体などに成形できることから、広い分野で利用されている。中でも、脂環式ジカルボン酸、特に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(以下、1,4−CHDAと略記することがある)を主たるジカルボン酸成分とし、脂環式ジオールを主たるジオール成分とする原料から得られる脂環式ポリエステルは、透明性、耐熱性、耐候性が優れているので、その用途が広がりつつあり、光学材料として期待されている。
【0003】
ジカルボン酸成分とジオール成分とからポリエステルを製造する際、重縮合反応触媒としてチタン化合物を使用することが一般に知られている。ところが、チタン触媒を使用すると、生成したポリエステルが黄色に着色する傾向があり、改良が求められていた。また、チタン触媒を使用したポリエステルは他の樹脂との溶融ブレンドを行う際に、着色や分子量の低下が生ずることがあり、この点での改善も求められていた。
【0004】
ポリエステルの着色を改良するには触媒としてのチタン化合物の使用量を低下させることが望ましい。しかしながら、ジカルボン酸成分として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル(以下、1,4−DMCDと略記することがある)、脂環式ジオールとして1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、1,4−CHDMと略記することがある)を使用し、エステル交換反応を経て重縮合させることにより、脂環式ポリエステル(以下、PCCDと略記することがある)を製造する際には、触媒として必要とされるチタン化合物の量が多く、例えば、チタン触媒をチタン原子換算200ppm使用する例が知られている(特許文献1)。
【0005】
また、チタン化合物に他の金属化合物を助触媒として併用することにより、チタン使用量が1〜10ppmである触媒系でポリエステルを重縮合することが提案されている(特許文献2)。しかし、チタンの量を減らす代わりにMnなどの助触媒を併用しているため、製造されたポリエステルの熱安定性及び他の樹脂とアロイ化した時の熱安定性が不十分で満足できるものではなかった。
【0006】
一方、1,4−CHDAと1,4−CHDMとから製造されたPCCDが知られており、このPCCDは、1,4−DMCDを原料とするものよりは少ない触媒量で製造できるが、それでも工業的に十分な重合速度で脂環式ポリエステルを製造するためには比較的多量のチタン触媒を必要とし、例えば、チタンを25ppm使用する例が知られている(特許文献3)。しかし、脂環式ポリエステルの熱安定性やアロイ化に際しての着色問題が不十分で満足できるものではなかった。
【0007】
更に、ポリエステルとポリカーボネートとの樹脂組成物を製造する際に、チタン触媒をチタン原子換算で約1〜約30ppmを使用して製造したポリエステルを使用し、着色を低減化するという提案がある(特許文献4)。しかし、ここには、ポリエステルの製造にアルカリ土類金属化合物を併用することは開示されていない。
【0008】
【特許文献1】アメリカ特許第5,986,040号明細書
【特許文献2】特開昭53−25696号公報
【特許文献3】特開2004−169009号公報
【特許文献4】特表2005−521772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、光学材料として好適な、着色が少なく、熱安定性や加水分解安定性も良好であり、異物の少ない脂環式ポリエステルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、1,4−CHDAと1,4−CHDMを主原料として得られ、所定のチタン濃度及びアルカリ土類金属濃度、及び適当な固有粘度を有する特定物性の脂環式ポリエステルが光学材料としての有用性に優れることを見出し本発明に達した。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、脂環式ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と脂環式ジオールを主成分とするジオール成分とから、重縮合触媒としてチタン化合物とアルカリ土類金属化合物を使用して製造される脂環式ポリエステルであって、当該脂環式ポリエステル中に含まれるチタンが金属原子換算で1重量ppm以上、25重量ppm未満であり、チタン(Ti)とアルカリ土類金属(M)との比(M/Ti)が金属原子重量換算で0.25〜1.0であり、かつ固有粘度が0.4dl/g以上であることを特徴とする脂環式ポリエステルに存する。
【0012】
本発明の他の要旨は、脂環式ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と脂環式ジオールを主成分とするジオール成分とから、重縮合触媒としてチタン化合物とアルカリ土類金属化合物を使用し、チタンが金属原子換算で1重量ppm以上、25重量ppm未満であり、チタン(Ti)とアルカリ土類金属(M)との比(M/Ti)が金属原子重量換算で0.25〜1.0であり、かつ固有粘度が0.4dl/g以上である脂環式ポリエステルを製造する方法であって、上記のアルカリ土類金属化合物を水又は有機溶媒の溶液として使用することを特徴とする脂環式ポリエステルの製造方法に存する。
【0013】
また、本発明の他の要旨は、上記の脂環式ポリエステル1〜99重量部とポリカーボネート99〜1重量部から成ることを特徴とする樹脂組成物に存する。
【0014】
本発明の脂環式ポリエステルの好適な態様として、脂環式ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であること;脂環式ジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールであること;脂環式ポリエステルの色調b値が3以下であること;脂環式ポリエステルのポリマー末端ビニルシクロヘキセン構造が5μmol/g未満であること;脂環式ポリエステルの固有粘度(IV)と、当該脂環式ポリエステルを窒素雰囲気下、280℃で1時間処理した後の固有粘度(IV)とから、下記の式(1)により算出される粘度保持率Rが90%以上であること;クロロホルム18.0gに脂環式ポリエステル2.0gを溶解させた溶液の光路長10mmにおけるヘーズ値が1.5%以下であること;脂環式ポリエステルの固有粘度(IV)と、当該脂環式ポリエステルを水蒸気雰囲気下、111kPa(ゲージ圧)、120℃で24時間処理した後の固有粘度(IV)とから、下記の式(2)により算出される粘度保持率Rが65%以上であること、脂環式ポリエステル中のシクロヘキサンジカルボン酸単位のトランス率が85モル%以上であることが挙げられる。更に、樹脂組成物がリン化合物を含有することも挙げることが出来る。また、脂環式ポリエステルの製造方法の好適な態様として、アルカリ土類金属化合物の有機溶媒溶液の水分が2重量%以上であることが挙げられる。
【0015】
【数1】

【発明の効果】
【0016】
本発明の脂環式ポリエステルは、各種成形方法により、フィルム、繊維、成形体などに成形することが出来、特にフィルムとした場合は、透明性が高く、着色も少ないので、光学材料として使用することができ非常に有用である。また、熱安定性が高いので、成形時の分子量低下が少なく、成形品は機械的性質にも優れたものとなる。更に、ポリエステル中のチタン含有量が少なく、アルカリ土類金属を含有するので、他の樹脂とのアロイにした際の着色も低減でき、産業上非常に有用な素材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の脂環式ポリエステルは、ジカルボン酸成分及びジオール成分を原料とし、エステル化反応を経て溶融重縮合反応させることにより得られる。原料に使用されるジカルボン酸成分の主成分は脂環式ジカルボン酸であり、ジオール成分の主成分は脂環式ジオールである。そして、本発明の脂環式ポリエステルは、その中に含まれるチタンがチタン金属原子換算で1重量ppm以上、25重量ppm未満であり、チタン(Ti)とアルカリ土類金属(M)との比(M/Ti)が金属原子重量換算で0.25〜1.0であり、かつ固有粘度が0.4dl/g以上であることを特徴とする。
【0018】
脂環式ポリエステル中のチタン含有量が1重量ppm未満の場合は、重合速度が遅くなり、25重量ppm以上だと熱安定性等が悪くなり、また、ポリエステルのヘーズが高くなる傾向があり好ましくない。また、触媒としてチタン単独で使用するよりもアルカリ土類金属を併用することにより、色調がより改善される。ここで、アルカリ土類金属のチタンに対する比(M/Ti)が0.25未満だと色調改良効果は低く、1.0を超えると重合速度が非常に遅くなるので好ましくない。また、上記の比が0.25以上1.0以下であると得られるポリエステルのヘーズが低く好ましい。
【0019】
ここで、脂環式ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分とは、全ジカルボン酸成分に対する脂環式ジカルボン酸の割合が50モル%を超えることをいう。全ジカルボン酸成分に対する脂環式ジカルボン酸の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。脂環式ジカルボン酸の割合が50モル%以下だと得られるポリエステルの光学特性が悪化する傾向がある。
【0020】
主成分である脂環式ジカルボン酸としては、例えば1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−CHDA)、1,4−、1,5−、2,6−、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。なかでも、1,4−CHDAは工業的に入手し易く、得られる脂環式ポリエステルの成形温度が従来の汎用ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)の成形温度に近いので好ましく使用される。この場合、得られる脂環式ポリエステルを構成する1,4−CHDAに由来するシクロヘキサンジカルボン酸単位のうち、トランス体とシス体との合計に対するトランス体の割合(トランス率)が85モル%以上、好ましくは88モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であると得られるポリエステルの耐熱性が高くなり好ましい。
【0021】
原料1,4−CHDAとしては、トランス体を少なくとも85モル%、好ましくは88モル%含有するものを使用することが出来るが、ポリエステル製造時の異性化を考慮すると、トランス体を90モル%以上、95モル%以上含有するものを使用するのが更に好ましい。
【0022】
また、1,4−CHDAとしては、チタン及びアルカリ土類金属以外の金属不純物が1重量ppm以下であることが好ましい。従来知られている1,4−CHDAは金属不純物を多く含んでおり、これらの金属不純物があると重合反応を阻害したり、副反応を引き起こして色調を悪化させる等の問題を生起する。そこで、その対策として触媒のチタン化合物を多量に使用したり、リン化合物等の安定剤を使用して金属不純物を失活させる等の手段が取られているが、リン化合物はチタン触媒の活性を抑制するので、やはり触媒としてのチタン化合物は多量に必要とされた。本発明では、金属不純物の含有量が1重量ppm以下の1,4−CHDAを使用することにより、より着色の少ない脂環式ポリエステルを得ることを可能にする。金属不純物が1重量ppm以下でトランス体が85モル%以上の1,4−CHDAは、例えば市販の1,4−CHDAのシス・トランス混合物を熱異性化することにより得ることが出来る。熱異性化の方法は、例えば特開2004−43426に記載の方法で行うことが出来る。
【0023】
上記主成分たる脂環式ジカルボン酸以外に使用し得るジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸,1,4−フェニレンジオキシジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、及びコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられ、これらジカルボン酸は、一種又は二種以上が使用されてもよい。
【0024】
本発明の脂環式ポリエステルに使用されるジオール成分は、主成分が脂環式ジオールである。ここで、主成分が脂環式ジオールとは、全ジオール成分に対する脂環式ジオールの割合が50モル%を超えることをいう。全ジオール成分に対する脂環式ジオールの割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。ジオール成分に対する脂環式ジオールの割合が50モル%以下であると、生成する脂環式ポリエステルの光学特性が悪化する傾向がある。
【0025】
主成分である脂環式ジオールとしては、例えば、1,2−、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−シクロペンタンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等の5員環ジオール、1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の6員環ジオール等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられ、特に1,4−CHDMは、高重合度の脂環式ポリエステルが得やすいこと、高いガラス転移点の脂環式ポリエステルが得られること等から好ましく使用される。1,4−CHDMは、通常トランス体とシス体との混合物であり、そのトランス体とシス体との比は、通常80:20〜60:40である。
【0026】
上記主成分としての脂環式ジオール以外のジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、トリシクロデカンジメタノール及びキシリレングリコール、4,4’−ヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオールが挙げられる。これらジオールは、一種または二種以上を使用してもよい。
【0027】
更に、本発明の脂環式ポリエステルにおいては、必要に応じ、上記ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に少量の共重合成分を使用してもよい。共重合成分としては、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能成分が挙げられ、これらはポリエステルの溶融粘度を調整し、成形性を高めるために有用である。
【0028】
本発明の脂環式ポリエステルは、主成分が脂環式ジカルボン酸であるジカルボン酸成分と、主成分が脂環式ジオールであるジオール成分から、エステル化反応及び重縮合反応を経て製造されるが、エステル化反応に供するジカルボン酸成分に対するジオール成分の割合は、モル比で102/100以上、150/100以下、好ましくは102/100以上、145/100以下である。モル比が102/100より小さい時は重縮合反応後のポリマーの末端酸価が高くなる場合があり、150/100より大きい時は重合性が低下する傾向となり、固有粘度の高い脂環式ポリエステルが得られない場合がある。
【0029】
本発明の脂環式ポリエステルの製造に使用されるチタン触媒の量は、得られる脂環式ポリエステル中のチタン濃度が金属原子換算で1重量ppm以上、好ましくは3重量ppm以上、25重量ppm未満、好ましくは22重量ppm未満となるように使用される。チタン触媒は重縮合反応触媒として使用されるが、カルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応触媒としての機能も有しており、エステル化の場合も、チタン触媒は、生成ポリエステル中のチタン含有量が上記所望値となるように使用される。
【0030】
触媒として使用されるチタン化合物の例としては、例えばテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のテトラアルキル(又はアリール)チタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0031】
また、チタン触媒としては、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸から成る反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物から成る反応生成物、チタンのオルトエステルまたは縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸又は塩基とから成る反応生成物なども挙げられる。
チタン触媒としては、これらの中、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートが好適に使用される。
【0032】
本発明の脂環式ポリエステルの製造触媒としては、チタン化合物と共にマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属の化合物を使用する。アルカリ土類金属化合物の中、特にマグネシウム化合物は色調を改善する効果があり好ましい。アルカリ土類金属(M)化合物の使用量は、得られる脂環式ポリエステル中のチタンに対する比(M/Ti)が金属原子重量換算で0.25〜1.0、好ましくは0.3〜0.9の範囲となる量で使用される。
【0033】
アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の炭酸塩、水酸化物、酸化物、酢酸塩等の有機酸塩、アルコキシド等が挙げられる。これらの中マグネシウム化合物が好ましく、好適なマグネシウム化合物としては、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド等が挙げられ、特に酢酸マグネシウムが好ましい。
【0034】
更に、本発明の脂環式ポリエステルは、その固有粘度(IV)が0.4dl/g以上であることを必須とする。固有粘度が0.4dl/g未満であると、成形時に溶融粘度が低すぎて成形性に劣り、また得られる成形体の機械的強度が不足するので好ましくない。固有粘度の上限は溶融成形時の成形可能な溶融粘度の上限によるが通常2.00dl/g以下である。
【0035】
本発明の脂環式ポリエステルは、その固有粘度(IV)と、当該脂環式ポリエステルを窒素雰囲気下、280℃で1時間処理(以下、耐熱性試験と言うこともある)した後の固有粘度(IV)とから下記の式(1)によって算出される粘度保持率Rが90%以上であるのが好ましく、より好ましくは92%以上である。
【0036】
【数2】

【0037】
一般にポリエステル中のチタン含有量が25重量ppm以上、100重量ppm以下の場合この粘度保持率の値はほぼ80%以上、90%未満の範囲に入ることが知られている。本発明の脂環式ポリエステルは、そのチタン含有量が25重量ppm未満と低濃度であるので、粘度保持率が高く、非常に熱安定性に優れ成形時の劣化が少なく成形品は高品質である。
【0038】
更に、本発明の脂環式ポリエステルは、その固有粘度(IV)と、当該脂環式ポリエステルを水蒸気雰囲気下、111kPa(ゲージ圧)、120℃で24時間処理(以下、耐加水分解性試験ということもある)した後の固有粘度(IV)とから下記の式(2)によって算出される粘度保持率Rが65%以上であるのが好ましく、より好ましくは70%以上である。粘度保持率がこの値以上であると、耐加水分解性が良好であるので好ましい。
【0039】
【数3】

【0040】
本発明の脂環式ポリエステルは色調b値が3以下であるのが好ましく、より好ましくは2以下である。b値が3より高い値であると黄色味が増し、光学材料として好ましくない。ここで、色調b値はJIS Z8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標b値である。
【0041】
本発明の脂環式ポリエステルは、そのポリマー末端のビニルシクロヘキセン構造が5μmol/g未満であることが好ましく、より好ましくは3μmol/g未満である。この構造が5μmol/g以上あると、溶融時の熱安定性特に、色調変化(黄変)が大きい。また、耐加水分解性も悪い傾向となる。末端ビニルシクロヘキセン構造は熱分解により生成すると考えられているので生成を避けるためには、重縮合反応を短時間で終了させるか、重縮合反応を270℃以下、特に265℃以下の重合温度で行うのが好ましい。また、生成した末端ビニルシクロヘキセン構造は、重合反応に寄与しないため、高分子量のポリマーを得ることが困難になり易い。
【0042】
本発明の脂環式ポリエステル2.0gを、クロロホルム18.0gに溶解させた溶液のヘーズ値が1.5%以下であることが好ましく、より好ましくは1.2%以下である。この値が低いことはポリマー中に異物が少ないことを意味しており、光学材料としての使用を考えると重要である。ここで、溶液のヘーズ値は、後述の方法によって測定した値である。
【0043】
本発明の脂環式ポリエステルは、ジカルボン酸成分として1,4−CHDAを、ジオール成分として1,4−CHDMを原料とすることが好ましい。また、本発明の脂環式ポリエステル中の1,4−CHDAに由来するシクロヘキサンジカルボン酸単位のトランス率は、85モル%以上であることが好ましく、より好ましくは88モル%以上である。トランス率が85モル%未満であると脂環式ポリエステルの耐熱性が劣るため好ましくない。
【0044】
本発明の脂環式ポリエステルは、透明性、耐熱性に優れており、他の樹脂との組成物として使用し得るが、特にポリカーボネート樹脂との組成物では色調の劣化や分子量低下を生ずることがなく優れた樹脂組成物を提供し得る。
【0045】
本願の第2の発明は、本発明の脂環式ポリエステル1〜99重量部とポリカーボネート99〜1重量部から成る樹脂組成物に存する。脂環式ポリエステルとポリカーボネートとの割合は、得られる樹脂組成物の使用目的に応じて適宜決められるが、好ましくは、脂環式ポリエステルが10〜50重量部、更に好ましくは20〜40重量部である。
【0046】
また、本発明の樹脂組成物においてはリン化合物を含有させることが出来、リン化合物は樹脂組成物の色調を良くするのに効果がある。樹脂組成物におけるリン化合物の使用量は、リン原子として、脂環式ポリエステル中のTi触媒に由来するチタン(金属原子換算)対しモル比で少なくとも10倍量使用することにより効果を発揮させることが出来る。リン化合物のチタンに対するモル比(P/Ti)は、金属原子換算で、通常10〜1000、好ましくは10〜500である。
【0047】
リン化合物は、脂環式ポリエステルとポリカーボネート樹脂を配合する際に添加することが出来るが、脂環式ポリエステルの重縮合反応が安定剤としてのリン化合物の存在下行われた場合には、そのまま使用してもよい。
【0048】
リン化合物としては特に限定はされないが、リン酸並びにリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸フェニル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類、亜リン酸並びにトリメチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の亜リン酸エステル類、モノエチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート等のアシッドホスフェート類、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸化合物類、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル等のホスフィン酸化合物類、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスホプロピオネート等のホスフィンオキサイド化合物等、亜ホスホン酸化合物類、亜ホスフィン酸化合物類、ホスフィン化合物類、ホスホニウムベタイン化合物類等が挙げられる。これらの中では、リン酸、リン酸エステル類、アシッドホスフェート類が好ましく、アシッドホスフェート類がより好ましい。
【0049】
本発明の脂環式ポリエステルは、他の熱可塑性樹脂、とりわけポリカーボネートと良く相溶する。その際、触媒失活剤、UV吸収剤、ゴム成分をコアとしアクリル系ポリマー成分をシェルとする衝撃吸収剤、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルイミドエステルエラストマー、ポリオレフィン、ABS樹脂、ポリアクリレート、オレフィン−アクリレート共重合体、ポリアリレート、シリコンオイル等を添加して機械的性質等を改良することが出来る。
【0050】
本発明の樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂組成物の加工方法で製造できる。例えば脂環式ポリエステルとポリカーボネートとを必要に応じて配合される添加成分とを予め混合した後、攪拌翼を装備した反応器、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出し機、二軸混練押出し機、ニーダーなどで溶融混練することによって製造することが出来る。
【0051】
本発明の脂環式ポリエステルは、上記のジカルボン酸成分及びジオール成分を原料として、エステル化反応を経て溶融重縮合反応させることにより製造されるが、製造方法としては通常行われているポリエステルの製造方法に準ずることが出来る。
【0052】
好ましい製造方法においては、例えばエステル化反応は、原料ジカルボン酸成分とジオール成分とを、攪拌機及び留出管を備えたエステル化反応槽に仕込み、不活性ガス雰囲気下で攪拌しつつ反応によって生ずる水を留去しながら行うことが出来る。触媒のチタン化合物は、原料の仕込み時に添加してもよいしエステル化反応の途中で添加してもよい。又はエステル化の全工程をチタン化合物なしで行ってもよい。この場合はエステル化反応終了後溶融重縮合が始まるまでの段階に添加する。
【0053】
チタンアルコラートはエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの有機溶媒に溶解させて添加することが出来る。マグネシウム化合物、特に酢酸マグネシウムは水溶液として添加するのが好ましい。またエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの有機溶媒に溶解して添加してもよい。アルカリ土類金属化合物を有機溶媒に溶解する場合、その溶液中の水分量は2.0重量%以上であることが好ましい。溶液中の水分量が2.0重量%以上であると、アルカリ土類金属成分の溶液中での析出が抑制され、ポリエステル中でより均一な分散が可能となる。このため、得られるポリエステルのヘーズが低く透明となり好ましい。エステル化反応においてアルカリ土類金属化合物の添加は、チタン化合物の添加より前であることが好ましいが、エステル化反応開始以前であってもよい。上記の溶液中の水分量の上限は、特に限定されないが、通常50重量%である。
【0054】
エステル化反応の反応温度は、通常150〜230℃、好ましくは150〜220℃であり、反応圧力は通常100〜110kPa(ゲージ圧)、反応時間は、通常10分乃至10時間、好ましくは30分乃至5時間である。
【0055】
エステル化反応終了後、エステル化反応物を攪拌機及び留出管を備えた重縮合槽に移し、徐々に反応槽内を減圧にしつつ溶融重縮合反応を行う。場合により、エステル化反応槽に減圧付加装置を備えて、一槽でエステル化反応および溶融重縮合反応を行うことも出来る。
【0056】
溶融重縮合反応は、エステル化反応終了時の温度以上で、270℃以下、好ましくは265℃以下で、反応槽内圧力が常圧から最終的に133Pa(絶対圧力)以下となる圧力、好ましくは67Pa(絶対圧力)以下で、10分乃至10時間、好ましくは30分乃至7時間行われ、固有粘度(IV)が0.4dl/g以上のポリエステルが生成する。反応温度を270℃以下、好ましくは265℃以下、特に好ましくは260℃以下で行うことにより、着色や末端ビニルシクロヘキセン構造の生成を抑制することが出来る。重縮合反応物(ポリエステル)は、反応終了後、反応槽底部より通常ストランド状に抜き出され、水冷しつつカッティングし、ペレットとして得られる。なお、これらの一連の反応は、回分法でも連続法でも行うことが出来る。
【0057】
本発明の脂環式ポリエステル及び/又は樹脂組成物には、必要に応じ各種の添加成分を配合することが出来る。添加成分としては、例えば、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム等の無機充填材、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、相溶化剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、パラフィンオイル等の可塑剤、フッソ樹脂パウダー、スリップ剤、分散剤、着色剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加剤が挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。以下に本発明の脂環式ポリエステルの物性の評価方法をまとめて示す。
【0059】
[評価方法]
<1.脂環式ポリエステル中のチタン量およびマグネシウム量>
サンプル(脂環式ポリエステル)2.5gに硫酸12mlを添加後、過酸化水素水25mlを加えて分解し、純水を加えて50mlとした後に、堀場製作所製JY138U ICP発光分析装置により分析した。
【0060】
<2.固有粘度(IV)>
脂環式ポリエステルペレットを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)混合液を溶媒として溶解し、ウベローデ型粘度計を使用して30℃で測定することにより求めた。
<3.色調b値>
ポリエステルペレット試料を、内径30mm、深さ13mmの円柱状の粉体測色用セルにすりきり充填し、測色色差計(日本電色工業社製「カラーメーターZE2000」)を使用し、JIS Z8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標b値を、反射法により測定した。試料のb値は測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
【0061】
<4.末端ビニルシクロヘキセン構造量>
NMR法により測定した。重クロロホルム溶媒を使用し、BRUKER社製「AV400M」分光計でプロトンNMRスペクトルを測定した。テトラメチルシランを基準物質として、4.6ppm付近に現れるピークを末端ビニルシクロヘキセン構造のプロトンと帰属し、積分値より定量を行った。
【0062】
<5.溶液のヘーズ値>
クロロホルム18.0gに、脂環式ポリエステルペレット2.0gを室温にて30分間かけて溶解し、溶解後30±1℃の恒温水槽で15分間調節した。この溶液を、光路長10mmのセルに入れ、ヘーズメーター(スガ試験機社製「SMカラーコンピューター・SM−5−IS−2B」)を使用して測定したヘーズ値を溶液ヘーズ(%)とした。
【0063】
<6.ポリエステル中のシクロヘキサンジカルボン酸単位中のトランス体量>
上記4.と同様のNMR法により測定し、2.5ppm付近のシス体、2.3ppm付近のトランス体との比で求め%で表示した。
【0064】
<7.耐熱性の評価 Δb、粘度保持率R
脂環式ポリエステルペレット10gを枝つき試験管に入れ、シリコーンゴム栓をした。オイルバスを使用して100℃に加熱し5時間真空乾燥した。次に枝つき試験管をオイルバスから引き上げた。オイルバスの温度を280℃に昇温し、前記枝つき試験管内を窒素で復圧しシール状態にした後、280℃のオイルバスに漬け、1時間処理した。枝つき試験管の底部から樹脂をストランド状に水中に抜き出し、その後、ペレット状にした。得られたポリエステルペレットの色調b値を測定し耐熱試験前のペレットの色調b値との差を△bとした。△bは小さいほうが耐熱性は良好である。また、上記280度時間処理後のペレットを100℃で5時間真空乾燥機で乾燥した後、固有粘度を測定し、前記式(1)から粘度保持率Rを算出した。
【0065】
<8.耐加水分解性 粘度保持率R
脂環式ポリエステルペレット10gを平山製作所製「PC−242型」プレッシャークッカー装置に入れ、水蒸気雰囲気下111kPa(ゲージ圧)、120℃で24時間処理した。処理後のポリエステルペレットは100℃で5時間真空乾燥した。得られたポリエステルペレットの固有粘度を測定し、前記式(2)から粘度保持率Rを算出した。
【0066】
(実施例1)
攪拌翼、留出管および減圧装置を装備した反応器に1,4−CHDM160g、酢酸マグネシウム4水和物の1%水溶液2.6g、1,4−CHDA184gを仕込み攪拌混合する。更にテトラ−n−ブチルチタネート(TBT)の6%1,4−ブタンジオール溶液0.36gを仕込み、窒素フロー下で180℃に昇温させ、180℃で2時間反応させ、その後220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。その後220℃から250℃まで1時間30分かけて昇温すると同時に反応器内を徐々に減圧にしながら重縮合反応を行った。反応器内圧67Pa、反応温度250℃で減圧開始からの時間として3時間46分重合した後、生成したポリエステルを反応器底部からストランド状に水中に抜出した後カッティングしペレットにした。得られたポリエステルペレットは100℃で5時間真空乾燥機により乾燥した。乾燥後のポリエステルの固有粘度(IV)は0.679dl/g、色調b値は0.8、溶液ヘーズは0.4%であった。
【0067】
ポリエステルペレットについて、窒素雰囲気下、280℃で1時間処理(耐熱性試験)および水蒸気雰囲気下111kPa(ゲージ圧)、120℃で24時間処理(耐加水分解性試験)を行い、それぞれの固有粘度(IV)、(IV)を測定した。その結果、このポリエステルの耐熱性試験後のb値の増加即ちΔb値は2.5であり粘度保持率Rは92.0%であり、耐加水分解性試験後の粘度保持率Rは77.8%であった。
ポリエステルの物性の測定結果を他の物性とまとめて表1に示す。
【0068】
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
1,4−CHDM量、TBTの6%1,4−ブタンジオール溶液の添加量、1%酢酸マグネシウム水溶液の添加量及び重合時間を表1及び表2に記載の値に変えた以外は実施例1と同様に行った。得られたポリエステルの固有粘度(IV)、色調b値、末端ビニルシクロヘキセン量、CHDA単位のトランス比、Δb、粘度保持率RおよびR、溶液のヘーズ値等をまとめて表1及び表2に示す。
【0069】
(実施例5)
実施例4において、1,4−CHDM量を160gに代えて158gに、及び酢酸マグネシウム4水和物の1%水溶液1.3gの代わりに酢酸マグネシウム4水和物の1%1,4−ブタンジオール溶液(水分5%)を1.3gにした以外は、実施例4と同様に行った。得られたポリエステルの固有粘度(IV)、色調b値、末端ビニルシクロヘキセン量、CHDA単位のトランス比、Δb、粘度保持率RおよびR、溶液のヘーズ値等を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
(実施例6)
実施例1と同じ反応器に実施例1で製造した脂環式ポリエステル30g、ポリカーボネート(三菱化学エンジニアリングプラスチックス社製「ユーピロンS−3000F」)70g、「アデカスタブAX−71」((株)ADEKA製:モノステアリルアシッドホスフェートとジステアリルアシッドホスフェートの混合物)0.03gを秤り取り、100Pa、280℃で20分間攪拌混合した。得られた樹脂組成物は固有粘度0.685dl/gで色調のb値は2.5と良好だった。
【0073】
(比較例4)
1,4−CHDA184gの代わりに1,4−DMCD214gにした以外は実施例1と同様に行った。重合反応はあまり進まず、ポリエステルをストランド状に抜出すことは出来なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と脂環式ジオールを主成分とするジオール成分とから、重縮合触媒としてチタン化合物とアルカリ土類金属化合物を使用して製造される脂環式ポリエステルであって、当該脂環式ポリエステル中に含まれるチタンが金属原子換算で1重量ppm以上、25重量ppm未満であり、チタン(Ti)とアルカリ土類金属(M)との比(M/Ti)が金属原子重量換算で0.25〜1.0であり、かつ固有粘度が0.4dl/g以上であることを特徴とする脂環式ポリエステル。
【請求項2】
脂環式ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である請求項1に記載の脂環式ポリエステル。
【請求項3】
脂環式ジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールである請求項1又は2に記載の脂環式ポリエステル。
【請求項4】
脂環式ポリエステルの色調b値が3以下である請求項1〜3の何れかに記載の脂環式ポリエステル。
【請求項5】
脂環式ポリエステルのポリマー末端ビニルシクロヘキセン構造が5μmol/g未満である請求項1〜4の何れかに記載の脂環式ポリエステル。
【請求項6】
脂環式ポリエステル中のシクロヘキサンジカルボン酸単位のトランス率が85モル%以上である請求項1〜5の何れかに記載の脂環式ポリエステル。
【請求項7】
脂環式ポリエステルの固有粘度(IV)と、当該脂環式ポリエステルを窒素雰囲気下、280℃で1時間処理した後の固有粘度(IV)とから、下記の式(1)により算出される粘度保持率Rが90%以上である請求項1〜6の何れかに記載の脂環式ポリエステル。
【数1】

【請求項8】
脂環式ポリエステルの固有粘度(IV)と、当該脂環式ポリエステルを水蒸気雰囲気下、111kPa(ゲージ圧)、120℃で24時間処理した後の固有粘度(IV)とから、下記の式(2)により算出される粘度保持率Rが65%以上である請求項1〜7の何れかに記載の脂環式ポリエステル。
【数2】

【請求項9】
クロロホルム18.0gに脂環式ポリエステル2.0gを溶解させた溶液の光路長10mmにおけるヘーズ値が1.5%以下である請求項1〜8の何れかに記載の脂環式ポリエステル。
【請求項10】
脂環式ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と脂環式ジオールを主成分とするジオール成分とから、重縮合触媒としてチタン化合物とアルカリ土類金属化合物を使用し、チタンが金属原子換算で1重量ppm以上、25重量ppm未満であり、チタン(Ti)とアルカリ土類金属(M)との比(M/Ti)が金属原子重量換算で0.25〜1.0であり、かつ固有粘度が0.4dl/g以上である脂環式ポリエステルを製造する方法であって、上記のアルカリ土類金属化合物を水又は有機溶媒の溶液として使用することを特徴とする脂環式ポリエステルの製造方法。
【請求項11】
アルカリ土類金属化合物の有機溶媒溶液の水分が2重量%以上である請求項10に記載の脂環式ポリエステルの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9の何れかに記載の脂環式ポリエステル1〜99重量部とポリカーボネート99〜1重量部からなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項13】
リン化合物を含有する請求項12に記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−138139(P2007−138139A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186447(P2006−186447)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】