説明

脂質とスチレン及びマレイン酸の共重合体とを含む組成物

脂質とスチレン及びマレイン酸の共重合体とを含む組成物であって、スチレン及びマレイン酸の共重合体は交互ではなく、かつ重合体及び脂質は、巨大分子集合体の形態である、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(組成物)
本発明は、疎水性物質の可溶化に、特に化粧品又は医薬の分野において有用な疎水性活性薬剤の可溶化に、並びにペプチド及びタンパク質の、これらの構造及びこれらのその他の物質との相互作用の研究のための可溶化に有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性が乏しいと、体内に、又は体の局所部位に油溶性活性物質を送達する際に根本的問題を生じる。より機能的及び/又は審美的に許容し得る水性製剤を作製することを意図して、多くの製剤化補助がこの制限を克服するために採用されてきた。アプローチには、数ある中で、界面活性物質系、リポソーム、ニソーム及びシクロデキストリンの使用を含む。しかし、これらの系の全ては、特定の欠点を有する。例えば:リポソーム及びシクロデキストリンは、充填能力が低いであろうし;リポソーム製剤は、静脈内投与後に体循環から迅速に除去され得るし;リポソーム及びニソームの両者は、透明性がないという欠点があり得るし;及び一定の界面活性剤の使用では、刺激性組成物を形成し得る。
【0003】
油溶性活性物質は、油中水型又は水中油型エマルションの一部として、典型的にはクリーム又はローションの形態で皮膚に適用される。これらは、一般に、触れると油性であり、審美的に不快であり、消費者へのアピールが不十分となり得る。更にまた、これらは、物理的に不安定で、静置時に析出し、又は「クリーム状になる」傾向があり、保存寿命が限られ、潜在的に組成物の不均一を引き起こし、この両者により、活性薬剤の適用の際に予測不能となり得る。
【0004】
疎水的に会合する重合体(これらの両親媒性の特徴のため、両親媒性重合体(amphipols)又は高コイル化重合体としても知られる)は、リン脂質と会合して、平らな円盤様分子集合体を形成し得る。例えば、エタクリル酸(すなわち、ポリ[2-エタクリル酸]、PEAAとしても知られる)のホモポリマーは、純粋なDLPC、DMPC、DPPC、DSPC(それぞれ、ジラウリル、ジミリスチル、ジパルミチル及びジステアリルホスファチジルコリン)及びDPPG(ジパルミチルホスファチジルグリセロール)、更にはDPPC/DPPA(ジパルミチルホスファチジン酸)の混合物と相互作用して、光学的に透明な水性溶液の形成を生じることが示されている(Seki, K and Tirrell, D Macromolecules 1983 17:1692-1698; Tirrell, D, Takigawa, D and Seki, K Ann. New York Acad. Sci. 1985 446:237-248; Thomas, JL, Devlin BP and Tirrell, DA Biochimica et Biophysica Acta 1996 1278:73-78)。この効果は、多価電解質の典型である低pHにおける伸長鎖から、ランダムコイルとしての中間状態を介して、密な高コイル化状態への高次構造転移の結果である。
【0005】
また、その他の疎水的に会合する重合体は、リン脂質と相互作用して、親水性及び疎水性の単量体成分を含む共重合体などの巨大分子集合体を形成することが公知である。国際特許出願WO99/009955(許可された特許EP1007002及びUS6426905に対応)は、無水マレイン酸(その加水分解されたマレイン酸の酸性型において、陰イオン性、親水性)とスチレン又はアルキルビニルエーテル(疎水性)との加水分解された交互共重合体の使用を開示する。無水マレイン酸とスチレンとの加水分解された交互重合体を、純粋なDLPC又はDPPCと組み合わせて使用して、直径10〜40nmの範囲の構造が製造された(詳細は、総説- Tonge, SR and Tighe, BJ Advanced Drug Delivery Reviews 2001 53:109-122を参照されたい)。
【0006】
スチレンと無水マレイン酸との交互共重合体
【化1】

【0007】
このような重合体/脂質巨大分子複合体は、水への溶解度が乏しい活性薬剤の可溶化のための手段として提唱されている。しかし、これらの系は両方とも、多くの不利な点を欠点としてもつ。PEAAは、市販されておらず、化粧品及び医薬での使用について、その適合性がいまだ決定されていない。更にまた、これらの合成重合体は、これらのそれぞれのpKa値(PEAAの場合、これは6.5である)の近く又は以下のpHレベルにおいてのみリン脂質と相互作用して巨大分子集合体を形成する(Fichtner, F and Schonert, H Colloid & Polymer Sci. 1977 255:230-232; Thomas, JL, Devlin BP and Tirrell DA Biochimica et Biophysica Acta 1996 1278:73-78)。
【0008】
スチレン及びマレイン酸の交互共重合体(すなわち、加水分解されたスチレン/無水マレイン酸重合体)は、3.75〜4.0の範囲のpKa値を有し(Sugai, S and Ohno, N Biophys. Chem. 1980 11:387-395)、個々の酸が機能するpKaは、およそ1.97及び6.24である。透明な溶液及びそれ故、巨大分子集合体の製造には、3〜5の間にpHを低下することが必要である。このようなpHレベルは、一般に体の感受性の高い表面に適用される組成物には適切でない。これらの交互共重合体製剤のpHを重合体/脂質複合体の形成後に上昇させてもよいが、このような調整により、不安定性を引き起こし、巨大分子集合体の分解につれて、時間と共に透明度の減少が観察され得る。
スチレン/無水マレイン酸又は対応するマレイン酸の酸加水分解生成物及び半エステルは、コーティングとしての使用を含む産業上及び家庭での適用に、並びに乳化剤及び分散剤の目的のために、広く使用されてきたが、これらの重合体は、個人看護及び生物医学的製品における適用が制限されてきた。
【0009】
スチレン及び無水マレイン酸の共重合体は、アスコルビン酸及びその親水性誘導体を安定化する手段として、皮膚を色素脱失する目的、アンチエイジングの目的で、紫外線、日焼けからの保護のために、皮膚から引き締まり及び/又は弾力が無くなるのを予防する際に(US20040001792、US20040042990、US20040052739及びUS20040047824に開示した通り)、又は上皮セラミドの合成を促進して皮膚の障壁機能を改善して皮膚に潤いを与え、及び色つやを改善するために(US20040175342)、皮膚の色素脱失に使用するためにリン酸化されたアスコルビン酸の金属塩を組み込むために、並びに抗しわ薬及び抗老化薬(US20040096406)として化粧品に使用することを記述している。いずれの場合においても、好ましくは無水マレイン酸及びスチレンの1:1共重合体が使用される。化粧品又は皮膚科学的用途のために適した水性コアを含むマイクロカプセルの水不溶性蝋コートの形成における成分として重合体を使用することは、US6,531,160に開示されている。
【0010】
ポリ[スチレン-共-マレイン酸/無水物]半ブチルエステルは、抗腫瘍薬ネオカルシノスタチンに抱合される医薬品製剤としてUS4,732,933に記述されており、この場合、重合体は、分子量及び親油性の両方を上昇させるように作用し、そして一定の標的組織に薬物が蓄積することとなる。この重合体薬物複合体は、SMANCS(Maeda, H Advanced Drug Delivery Reviews 2001 46:169-185)として公知である。JP01061424Aは、SMANCSの炭酸アンモニウム緩衝液(pH 7.5〜9.5)溶液を卵黄などのリン脂質の炭酸アンモニウム緩衝液溶液(pH 7.5〜9.5)溶液と混合して混合物を形成し、これを凍結乾燥して水を除去した後に、非水溶油性造影剤中に分散させ、次いでSMANCSのその中に透明、かつ透き通った分散剤を提供することによって製造される薬物ネオカルシノスタチンの分子に結合されたスチレン/マレイン酸モノブチルエステル共重合体の抱合であるSMANCSの医薬品製剤を開示している。
油溶性活性薬剤を高濃度で水性媒体に組み込むことができると共に、同時に生じる溶液を通る光の通過を中断させない、すなわち実質的に透明なままの、十分小さな巨大分子複合体を形成することができる安定な非刺激性の製剤化の補助を行うことが明らかに必要である。
【発明の開示】
【0011】
驚くべきことに、当業者の期待に反して、及びW099/009955の教示とは対照的に、スチレン/無水マレイン酸の加水分解されたブロック共重合体(すなわち、スチレン/マレイン酸のブロック共重合体)を重合体/脂質複合体の製造に使用してもよく、このような重合体/脂質複合体は、例えば油溶性活性薬剤の可溶化に有用であることが見いだされた。スチレン/無水マレイン酸の加水分解されたブロック共重合体を含む組成物は、従来技術のアプローチと比較して1つ以上の以下の利点を有し得る:
(i)より安定であり
(ii)より刺激が少なくなり
(iii)より多くの活性薬剤を充填することができ
(iv)油溶性活性薬剤を実質的に透明な水溶液として製剤化することができ
(v)皮膚を介した浸透の増強が容易になり
(vi)膜タンパク質及び/又はペプチドを、天然の膜を綿密に模倣する環境において可溶化することができる。
【0012】
本発明の第1の態様において、脂質とスチレン及びマレイン酸の共重合体とを含む組成物であって、スチレン及びマレイン酸の共重合体は、交互ではなく、かつ重合体及び脂質は、巨大分子集合体の形態である、組成物が提供される。このような組成物は、本明細書において、本発明の組成物と称し得る。
また、本発明に従って、脂質とスチレン及びマレイン酸の共重合体とを含む組成物であって、スチレン対マレイン酸単量体単位の比は、1:1よりも大きく、重合体及び脂質は、巨大分子集合体の形態である、組成物が提供される。このような組成物は、本発明の組成物の例である。
【0013】
重合体について明示された単量体比は、重合体におけるそれぞれの単量体単位の数に基づいて定義され、例えば、3:1のスチレン及び無水マレイン酸の比は、重合体鎖のそれぞれの無水マレイン酸単量体単位について、3つのスチレン単量体単位があることを示す。明示された単量体比は、平均であり、重合反応の不確定度の結果として、いずれの具体的重合体鎖についても必ずしも正確な比を表すのではないことが理解されよう。典型的には、50%を上回る、特に75%を上回る、特に90%を上回る(重量に対する重量基準で)及び適切には、重合体鎖の全てが、明示した値の35%以内、適切には25%(例えば、15%以内)、より詳細には10%以内及び特に5%以内などの50%以内の単量体比を有する。例えば、10%の変動がある3:1のスチレン及び無水マレイン酸の比は、3.3:1〜2.7:1を包含する。
【0014】
巨大分子集合体(共有結合形成によって維持されていない巨大分子の構造中の個々の分子の会合)の存在は、巨大分子複合体とも呼ばれ、粒径サイズの測定のために当業者が利用できる多くの手段、例えば電子顕微鏡法(交互スチレン/マレイン酸共重合体を組み込む巨大分子集合体についてTonge, SR and Tighe, BJ Advanced Drug Delivery Reviews 2001 53:109-122で使用されたものなど)又はレーザー回折技術によって確認してもよい。しかし、実際には、巨大分子集合体の形成は、裸眼で見えることが多い。例えば、重合体と脂質との曇ったエマルションが相対的に高いpHにて調製され(その結果、重合体は、高度に荷電した、伸長鎖の形態である可能性が最も高い)、次いでpHがその後に重合体鎖の親水性/疎水性バランスが巨大分子集合体の形成のために適したレベル(このpHレベルは、臨界pHと呼ばれ得る)まで低下したときに、存在する個々の成分の量及び正確な性質に応じて著しい脂質の可溶化が生じることが見られ、顕著な部分的又は完全な混合物の透明化を生じるであろう。
【0015】
臨界pHは、巨大分子集合体を形成するであろうpHを下回るレベルをいう。スチレン/マレイン酸共重合体は、これらの具体的単量体比に応じて、異なる臨界pH値を有し、スチレン含量が多いほど、臨界pHがより高い。一旦形成されたら、巨大分子集合体を含む溶液のpHを臨界pHよりも上に上昇させてもよいが、巨大分子集合体は、一般にこのような条件下で安定ではなく、時間と共に分解すると考えられる(臨界pHを上回る実質的な増大は、典型的にはより迅速な分解を生じる)。また、実質的に臨界pHを下回るpHレベルでは、重合体鎖の疎水性が、重合体がもはや水に可溶性でないレベルに到達し得るので、巨大分子集合体の崩壊を生じ得る。
【0016】
本明細書で使用される「ブロック状の」共重合体という用語は、重合体内の単量体単位が交互ではない様式で分布されるという事実をいう。定義上、1:1以外の単量体比を含む共重合体は、複数単位の単一の単量体を含むブロックが存在することにより、交互になることができない。1:1の単量体比を有する共重合体は、交互になり得るし、又は存在する単量体及び製造工程に応じて性質がブロック状であり得る。
本発明に有用な加水分解されたスチレン/無水マレイン酸共重合体は、交互ではなく、すなわちスチレン及びマレイン酸残基が交互の関係に配置されない。
【0017】
溶液の透明性は、当業者に公知の方法によって、例えばOrbeco-Hellingによって提供されたものなどの濁度計を使用することによって決定してもよい。濁度測定装置のその他の提供者には、Hach-Langeを含む。濁度は、比濁分析濁度単位(NTU)などの多数の標準単位に基づいていてもよい。比濁分析濁度単位(NTU)は、ホルマジン比濁分析の単位(FNU)と直接交換可能である。「透明な」という用語は、本明細書に使用されるときに、150未満のNTU、特に100未満のNTU、特に50未満のNTU、適切には25未満のNTUの(例えば、5NTU未満の)濁度読みである溶液を意味する。無色の溶液は、いずれの特定の可視波長の吸光もなく光を透過するものである。透明溶液は、これらが可視域内の光を吸収する成分(例えば、特定の活性薬剤又は着色剤)を含む場合に着色され得る。
【0018】
「安定な」及び適切な場合「安定性」という用語は、溶液の透明性に関して本明細書に使用されるときに、溶液が一定の透明性のままである能力をいう。典型的には、溶液の透明性は、恒温下で(例えば、4℃にて、適切には25℃にて)貯蔵されたときに、ある期間(例えば、少なくとも1日、特に少なくとも1週、特に少なくとも1月及び適切には少なくとも6月)にわたって実質的に不変のままであろう(例えば、100未満のNTU、特に50未満のNTU、特に25未満のNTU及び適切には5未満のNTUまで変化する)。
【0019】
「安定な」(及び適切な場合、「安定性」)の代わりの定義は、溶液の透明性が所与の時間にわたってある程度の変動を示すが、所望の濁度範囲内のままである場合である。この場合には、典型的には、溶液は、恒温下で(例えば、4℃にて、適切には25℃にて)貯蔵されたときに、ある期間の間(例えば、少なくとも1日、特に少なくとも1週、特に少なくとも1月及び適切には少なくとも6月)、150NTU未満、特に100NTU未満、特に50NTU未満、適切には25NTU未満(例えば、5NTU未満)のままである濁度読みを有する。
【0020】
本発明の一つの実施態様において、安定な溶液は、ある期間にわたって(上記の通りの)実質的に不変のままであるものである。本発明の第2の実施態様において、安定な溶液は、ある期間の間(上記の通りの)所望の濁度範囲内のままである。本発明の第3の実施態様において、安定な溶液は、ある期間(上記の通りの)にわたって、実質的に不変のままで、所望の濁度範囲内のものである。
【0021】
以前に記載したように、WO99/009955は、膜形成脂質と相互作用しておよそ10〜40nmの直径の(従って、水溶液中で実質的に透明、かつ無色に見える光の波長よりも小さい)巨大分子の構造を形成するためには、重合体が、疎水基及び陰イオン性親水基が均一に配置された直鎖状バックボーンを有する交互共重合体(すなわち、非ブロック共重合体)の形態でなければならないことを教示する。
【0022】
当業者であれば、ホモポリマーの正確に定義された分子構築又は交互共重合体が両親媒性のコイル状構造の形成のために必要とされること、及びこの構造が脂質との相互作用に必要とされると考えられることを予期するであろう。(Borden, KA, Voycheck, CL, Tan, IS and Tirrell DA Polym. Prep. (Am. Chem. Soc. Div. Poly. Chem.) 1987 28(1):284-285)。ホモポリマー又は共重合体交互スチレン/マレイン酸共重合体のブロックスチレン/マレイン酸との置換により、同様の膜形成脂質との相互作用を示すことは予想されないであろう。今回、驚くべきことに、疎水性及び親水性単量体単位のホモポリマー又は厳密に交互である共重合体を使用する必要は実際にはないが、加水分解された形態(すなわち、スチレン/マレイン酸として)のスチレン及び無水マレイン酸のブロック共重合体も、脂質と相互作用して重合体/脂質巨大分子複合体を形成し、これにより実質的に透明、かつ無色の水溶液を形成し得ることを見いだした。
【0023】
理論によって限定されないが、ブロック重合体の酸度関数のpKaは、交互重合体のものとは微妙に異なっていてもよいが、脂質相互作用が生じるpHは、主に重合体鎖の特定の親水性/疎水性バランスの達成に依存すると考えられる。スチレン及びマレイン酸の交互重合体は、これらの相対的に高い酸含量の結果として、正確な親水性/疎水性バランスが得られる前に、酸機能のかなりの割合を中和させる必要があるが、pH約3〜5にて脂質との相互作用を開始するだけで、及び一旦pHが実質的にこのレベルを上回って(例えば、pH 5.5を上回って)上昇したならば、その相互作用が不安定になる。スチレン及びマレイン酸の酸残基の比が1:1よりも大きいスチレン及びマレイン酸のブロック状の共重合体は、スチレン単量体単位がより多く、マレイン酸単量体単位がより少なく存在するために、より疎水性である。従って、正確な親水性/疎水性バランスを得るためには、酸機能をより少ない割合で中和しなければならない(すなわち、バランスは、より高いpHにて得てられるであろう)。この知見を考慮して、重合体が特定のpH範囲にわたって脂質と相互作用するように、スチレン及び無水マレイン酸単量体単位の比を目的に合わせることができ、これにより選選択した適用のために理想的に適したスチレン/マレイン酸共重合体の選択が可能になる。
【0024】
スチレン及び無水マレイン酸のフリーラジカルで開始される共重合は、極めてよく特徴づけられた重合反応である(Trivedi, BC and Culbertson, BM Maleic Anhydride, Plenum (1982), ISBN 0306409291)。任意の単量体対についての反応性比r1及びr2は、共重合反応における交互頻度を評価するための指標として使用され得る。r1、r2及びr1r2が1に等しいときに、理想的な(すなわち、ランダムな)共重合条件が存在する。r1、r2及びr1r2がゼロの傾向がある場合、交互の程度は、増加する。スチレン(単量体1)の無水マレイン酸(単量体2)との反応性比r1及びr2は、それぞれ0.097及び0.001であり(Fried, J Polymer Science and Technology, 2nd Ed, Prentice Hall (2003), ISBN 0130181684)、両方の単量体が他方と優先して反応するが、スチレンは、無水マレイン酸ほど有意に識別していないことを示している。従って、スチレン及び無水マレイン酸の共重合体の順序分布は、単量体供給組成に依存し、生じる共重合体は、1:1の交互とは異なることができる。スチレン対無水マレイン酸の比が1:1(例えば、2:1、3:1又は4:1)よりも大きい場合に、数多くのスチレン-スチレン配列が存在する。
【0025】
スチレン/無水マレイン酸共重合体は、典型的には芳香族炭化水素溶剤、例えばトルエン又はジクロロベンゼン中での沈殿過程によって都合よく調製される。重合は、ラジカル開始剤、例えばAIBN(アゾイソブチロニトリル)を使用して開始してもよく、分子量は、高度にアルキル化された芳香族炭化水素(例えばp-シメン)などの末端キャッピング薬をしようすることによって制御してもよい。重合体における単量体の比は、供給組成物を変動することによって制御してもよく、加水分解された重合体のマレイン酸の酸含量を決定するために、当業者に公知の手段によって、例えば滴定によって決定してもよい。
【0026】
本発明に有用なスチレン/マレイン酸共重合体は、典型的には500,000ダルトン未満、特に150,000ダルトン未満、特に50000ダルトン未満及び適切には20,000ダルトン未満(例えば、1,500〜15,000のダルトン)の平均分子量(Mw)を有する。Mw/Mn(Mnは、数平均分子量である)は、多分散性を示し、典型的には5未満、特に4未満、特に3未満及び適切には2未満(例えば、1.5未満)である。重合体は、これらが高コイル状になる能力を示してもよいが、適切には、鎖間相互作用の結果として、粘性を伴って支障をきたすほど長くないように十分な長さであるべきである。
【0027】
多数のブロックスチレン/無水マレイン酸共重合体がSartomer Inc.から市販されており、商用名SMA2000、SMA3000及びSMA4000の下で販売されている。SMA2000、SMA3000及びSMA4000の場合、スチレン対無水マレイン酸の比は、それぞれ2:1、3:1及び4:1である。これらの例において、スチレンは、スチレン含量が増加するにつれて、数多くの短いブロックを形成する。SMA2000、SMA3000及びSMA4000は、粉末、薄片又は超微細粉末標品として入手される。SMA2000についての典型的な分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって評価すると、Mw 7,500(Mn 2,700)であり;SMA3000について、Mw 9,500(Mn 3,050)であり、及びSMA4000について、Mw 11,000(Mn 3,600)である。
【0028】
スチレン/無水マレイン酸共重合体は、本発明に使用するために加水分解させなければならず、このような加水分解された重合体は、任意に塩の形態で使用してもよい。重合体は、多数の手段によって、例えば水溶液中で、適切には水酸化ナトリウムなどの強塩基の存在下において還流することによって加水分解してもよい。また、部分的に加水分解されたスチレン/無水マレイン酸共重合体も、本発明に有用であろうが、しかしながら、水性溶液中で、これらは、更に加水分解する可能性が高く、安定性の理由で、完全に加水分解された重合体が、典型的には使用される。
【0029】
加水分解されたスチレン/無水マレイン酸共重合体の一定の塩が市販されており、例えばSMA3000HNaは、加水分解されたSMA3000のナトリウム塩であり、SMA3000HKは、加水分解されたSMA3000のカリウム塩であり、及びSMA4000HNaは、加水分解されたSMA4000のナトリウム塩である。アンモニウム塩などのその他の塩形態も市販されている。本発明に使用するための適しているが、アンモニウム塩は、これらに付随する匂いのため、一般に化粧品として、及び医薬としての適用にはあまり望ましくない。
多数のスチレン/無水マレイン酸共重合体半エステルが市販されている。これらのエステルを本発明に使用するために加水分解してもよい。このような半エステルは、SMA1440、SMAI 7352、SMA2625、SMA3840及びSMA3190として知られるSartomer Inc.製品を含む。
【0030】
工業用のために供給されるスチレン/無水マレイン酸共重合体の商用銘柄は、単量体、末端キャッピング薬残留物及び開始剤残留物(例えば、無水マレイン酸、スチレン、クメン及びアセトフェノン)を含んでいてもよいものの、該残留物は、一般に個人看護、化粧品として、医薬として、又は生物医学的製品に使用するための組成物には望ましくない。残留する不純物は、当業者に公知の手段によって除去するか、又は大量に減少させてもよく、このような技術には、アルコール(例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノール)中で、又は塩素化された溶媒(例えば、クロロホルム又はジクロロメタン)中での残留成分の選択的溶媒和を含むが、これに限定されるわけではない。
【0031】
本発明に有用な加水分解されたスチレン/無水マレイン酸共重合体、すなわちスチレン/マレイン酸及びその塩(例えば、アルカリ金属塩、例えばカリウム又はナトリウムなどの化粧品として、及び医薬として許容し得る塩)は、典型的には1:1を上回る、特に1.2:1を上回る、特に1.5:1を上回る、適切には2.5:1を上回るスチレン対マレイン酸の単量体比率を有するが;加えて、典型的には4.5:1未満、特に3.5:1未満のスチレン対マレイン酸の比を有する。本発明に有用な例示的な単量体比率には:2:1、3:1及び4:1、適切には2:1又は3:1を含む。本発明の一つの実施態様において、スチレン及びマレイン酸単量体単位の比は、2:1である。本発明の第2の実施態様において、スチレン及びマレイン酸単量体単位の比は、3:1である。
本発明の一つの実施態様において、スチレン及びマレイン酸(又はその塩)の共重合体は、4,500〜12,000の範囲の平均分子量を有し、かつ約2:1、3:1又は4:1、特に約2:1又は約3:1のスチレン対マレイン酸の比を有する。
【0032】
皮膚に対する頻繁な適用のための製剤は、弱酸性であって、典型的にはpH 5.0〜7.5、特にpH 5.5〜7.5の範囲であってもよいが、その他の部位に対する適用のための、又は内服のための製剤は、典型的にはpH 6.5〜7.5周辺に維持されるべきである。具体的に目に適用するための製剤は、理想的にはpH 7.1〜7.8、特にpH 7.3〜7.6の範囲である(Carney, LG and Hill, RM Arch. Ophthalmol. 1976 94(5):821-824)。1:1を超える、及び4.5:1未満のスチレン対マレイン酸の単量体比であるスチレン/マレイン酸共重合体は、脂質と相互作用して、生理学的使用のために適したpHレベル(例えば、上記の範囲内)にて安定な巨大分子複合体を形成し得る。本発明の特定の実施態様では、必ずしも特定した全てのpH範囲全体で安定な重合体及び脂質巨大分子集合体を示すわけではないことに留意すべきである。
【0033】
本発明の一つの実施態様において、重合体及び脂質巨大分子集合体は、5.0〜7.5の間、特に5.5〜-7.5の間のpHにて水溶液中で安定である(例えば、皮膚に対する一般的適用のための典型的な製剤に使用するために適切)。
本発明の一つの実施態様において、重合体及び脂質巨大分子集合体は、6.5〜7.5の間のpHにて水溶液中で安定である(例えば、体に対する一般的適用のための典型的製剤に使用するために適切)。
本発明の一つの実施態様において、重合体及び脂質巨大分子集合体は、7.1〜7.8の間、特に7.3〜7.6の間のpHにて水溶液中で安定である(例えば、眼に対する適用のための典型的な製剤に使用するために適切)。
【0034】
本発明に有用な脂質は、典型的には膜形成脂質である。膜形成脂質には、特にリン脂質(例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルセリン)、セラミド及びスフィンゴミエリンを含む多様な範囲の構造を含む。膜形成脂質は、典型的には極性頭部基(これは、膜において水相に向いて整列される)及び1つ以上の(例えば2つの)疎水性尾部基(これは、膜において会合して疎水性コアを形成する)を有する。疎水性尾部基は、典型的にはアシルエステルの形態であり、これらは、これらの長さ(例えば、8〜26炭素原子)及びこれらの不飽和度(例えば1、2又は3つの二重結合)の両方を変化させてもよい。
【0035】
本発明に有用な脂質は、天然起源又は合成起源であってもよく、単一の純粋成分(例えば、重量基準で90%純粋、特に95%純粋及び適切には99%純粋)であってもよい単一クラスの脂質成分(例えば、ホスファチジルコリンの混合物、又は変わりに保存されたアシル鎖型である脂質混合物)であってもよく、又は多くの異なる脂質型の混合物であってもよい。
本発明の一つの実施態様において、脂質は、単一の純粋成分である。
【0036】
純粋脂質は、一般に合成又は半合成起源である。本発明に有用な純粋脂質の例には、ホスファチジルコリン(例えば、DLPC、DMPC、DPPC及びDSPC;特にDLPC、DMPC及びDPPC; DLPC及びDPPCなどの;特にDLPC)及びホスファチジルグリセロール(例えば、DPPG)、適切にはホスファチジルコリンを含む。純粋脂質の組成は定義されているため、これらの使用が望ましいが、これらは、一般に非常に高価である。
本発明の一つの実施態様において、脂質は、成分の混合物である。
【0037】
本発明に有用な脂質の混合物は、天然起源であってもよく、当業者に公知の手段による抽出精製によって得られる。天然起源の脂質混合物は、一般に純粋な合成脂質よりもかなり安価である。天然由来脂質は、卵又はダイズからの脂質抽出物を含み、これらの抽出物は、一般にアシル鎖長、不飽和度及び頭部基型の混合物を伴った脂質を含む。本発明に有用な例示的脂質抽出物には、Degussa Texturant Systems UK Ltdから入手可能なエピクロン(Epikuron) 200;Lucas Meyer Cosmetics SAから入手可能なエムルメチク(Emulmetik)950、エムルメチク 930、Pro-Lipo H及びPro-Lipo Duo;Lipoid GmbHから入手可能なリポソーム0041、S75、S100、 S PC、SL 80 及びSL 80-3;Phospholipid GmbHから入手可能なホスホリポン(Phospholipon)(登録商標)90H、ホスホリポン(登録商標)80H、ホスホリポン(登録商標)90 NG、Nat 8539を含む。植物起源の脂質抽出物は、典型的には動物起源のものよりも高い不飽和レベルを示すことが予想されるであろう。供与源の変動のため、脂質抽出物の組成がバッチ間で変化し得ることに留意すべきである。水素付加された脂質は、より不飽和が存在しないため、過剰酸化の傾向がなく、典型的にはより呈色が少なく、かつより匂いが少ない。
【0038】
本発明の一つの実施態様において、脂質は、重量において、少なくとも50%、特に少なくとも75%及び適切には少なくとも90%の単一頭部基型(例えば、ホスファチジルコリン)リン脂質を含む脂質抽出物である。本発明の第2の実施態様において、特定の脂質抽出物は、これらが比較的安価なコストであるため、好ましいであろう。本発明の第3の実施態様において、好ましい脂質抽出物は、最も高い透明性の溶液を生じるものである。本発明の第4の実施態様において、脂質は、保存されたアシル鎖長(例えば、重量において、少なくとも50%、特に少なくとも75%及び適切には少なくとも90%)、例えば12(例えば、ラウリル)、14(例えば、ミリスチル)、16(例えば、パルミチル)又は18(例えば、ステアリル)炭素原子の長さ、特に12〜16(例えば、14又は16)炭素原子を有する脂質混合物である。本発明のもう一つの実施態様において、脂質は、水素付加された(すなわち、アシル鎖が完全に飽和されている)脂質混合物である。
【0039】
適切には、本発明に有用な脂質抽出物は、重量において、少なくとも50%のリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミン)、特に少なくとも55%のリン脂質、特に少なくとも60%(75%又は90%など)のリン脂質を含む。
1つの適切な脂質抽出物は、ダイズに由来し:少なくとも92%のホスファチジルコリン、最大3%のリゾホスファチジルコリン及び最大2%の油を含み;そのうちのアシル鎖の14〜20%は、パルミチルであり、3〜5%は、ステアリルであり、8〜12%は、オレイン酸であり、62〜66%はリノール酸であり、及び6〜8%は、リノレン酸である。第2の適切な脂質抽出物は、ダイズに由来し:少なくとも90%の水素付加されたホスファチジルコリン、最大4%の水素付加されたリゾホスファチジルコリン及び最大2%の油及びトリグリセリドを含み;そのうちのアシル鎖の少なくとも80%は、ステアリルであり、及び少なくとも10%は、パルミチルである。
【0040】
また、脂質混合物は、純粋脂質の組み合わせによって、又は1つの脂質抽出物のその他の脂質抽出物と、若しくは純粋脂質とのいずれかとの組み合わせによって調製してもよい。
比較的低い相転移温度を有する脂質(純粋脂質又は脂質混合物)を利用すると、加熱のない場合の本発明の組成物の製造が容易になり得るので、これが望ましい。
化粧品として、及び医薬としての適用のためには、典型的には脂質(例えば、純粋脂質又は脂質混合物)は、適宜、化粧品として及び/又は医薬としての適用に使用するために承認されたものである。
【0041】
当業者であれば、本発明に有用な脂質混合物が、非膜形成性脂質成分(例えば、コレステロール)を含んでいてもよいこと、又は一部の環境では、非膜形成性のみの混合物であってもよく、これらが膜形成能及び本発明に使用するための適合性を組み合わせて示す脂質であることを認識するであろう。
本発明に使用するための特定の純粋脂質又は脂質混合物の適合性は、本明細書に提供されるガイダンスに基づいて、当業者によるルーチン試験によって決定されるであろう。
【0042】
典型的には、本発明の組成物における重合体対脂質の比は、重量基準で1:2よりも大きく、特に1:1よりも大きい(例えば、約1.5:1又は2.5:1)。適切には、本発明の組成物における重合体対脂質の比は、1.25:1よりも大きい。重合体の量が不十分だと、最適以下の透明性をもつ溶液を生じ得る。過剰量の重合体では、溶液粘度の増大を生じ得る(これは、特定の適用に応じ、望ましい特色でもあり、又は望ましくない特色でもあろう)。適切には、本発明の組成物における重合体対脂質の比は、10:1よりも少なく(例えば、5:1よりも少ない)、特に100:1よりも少ない(25:1よりも少ないなど)。
【0043】
少量の共界面活性物質の存在は、スチレン/マレイン酸共重合体の脂質(特に脂質混合物)を可溶化する能力を増強し得る。この共界面活性物質は、Lipoid GmbHから商用名S LPCの下で入手できる天然に存在するリゾ-ホスファチジルコリン(リゾ-PC)などの低分子量の材料又はポロキサマーとして公知で、BASF Corporationによって供給される合成ブロック共重合体ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン(例えば、商用名ルトロール(Lutrol)(登録商標)F127の下で公知)などの重合体界面活性物質の形態をとることができる。また、共界面活性物質は、複数の界面活性物質の組み合わせであってもよい。適切には、共界面活性物質は、組成物の脂質の重量の0.1〜5%、特に0.5〜2.5%及び特に0.75〜1.5%の間(例えば、約1%)に相当する量で添加される。本発明の一つの実施態様において、共界面活性物質は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンのブロック共重合体である(例えば、ルトロール(登録商標)F127で見いだされるような約12600Daなどの、5000〜15000Da、特に10000〜13000Daの分子量を有する)。本発明の第2の実施態様において、共界面活性物質は、リゾ-PCである。一定の脂質抽出物は、リゾ-PCをもとから含んでいるであろうが、これは共界面活性物質の添加を妨げないことに留意されたい。
【0044】
共界面活性物質としてのリゾ-PCは、その純粋形態で(例えば、Lipoid GmbHからのS LPC)又は脂質混合物の一成分として(例えば、重量において、少なくとも10%のリゾ-PC含量、特に少なくとも15%のリゾ-PCを有するものなどの高リゾ-PC含量レシチン)添加してもよい。例示的な高リゾ-PC含量レシチンは、Lipoid GmbHからのSL 80-3である。
高リゾ-PC含量をもとから含む脂質混合物(脂質抽出物など)は、一般に共界面活性物質として更にリゾ-PCの添加から多大な利益を得ることはない。従って、共界面活性物質の必要は、リゾ-PCの十分な量をもとから含む脂質混合物を選択することにより、簡単に回避することができる。
【0045】
本発明の組成物は、水溶液、特に安定な透明水溶液、適切には安定な透明かつ無色の水溶液の形態であってもよい。しかし、輸送及び取扱いの容易さのために、一旦調製し、組成物を凍結乾燥して、体積及び重量の両方をより少なくする利益を有する乾燥粉末を形成してもよい。本発明の一つの実施態様において、組成物は、水溶液の形態である。本発明の更なる実施態様において、組成物は、凍結乾燥された形態である(例えば、粉末、樹脂又は薄片として、特に粉末又は薄片として、特に粉末として)。水溶液は、ゲルなどの半固体水溶液を含む。本発明による組成物の水溶液は、相対的に高濃度にて調製してもよく、例えば重量において30%の濃度は、活性薬剤TECAを含む再構成された凍結乾燥させた組成物から調製されている。高濃度では、粘性の増大を示すであろう。本発明の一つの実施態様では、重量において0.001〜10%(組成物及び水の総重量と相対的な本発明の組成物の乾燥重量によって決定される割合)の本発明の組成物を含む水溶液が提供される。本発明の第2の実施態様において、重量において10〜20%の本発明の組成物を含む水溶液が提供される。本発明の第3の実施態様において、重量において20%を超える本発明の組成物を含む水溶液が提供される。
【0046】
本発明の組成物は、スチレン及びマレイン酸の共重合体が交互ではないスチレン/マレイン酸共重合体の溶液を、脂質を含む水性エマルションと混合すること、必要に応じて、重合体/脂質巨大分子集合体を形成するように、生じる混合物のpHを調整することによって適切に調製してもよい。
本発明のその他の組成物は、1:1を超えるスチレン対マレイン酸単量体の比を有するスチレン/マレイン酸共重合体の溶液を、脂質を含む水性エマルションと混合すること、必要に応じて、重合体/脂質巨大分子集合体を形成するように、生じる混合物のpHを調整することによって適切に調製してもよい。
【0047】
重合体溶液は、水に重合体を、任意に撹拌及び加熱(例えば、およそ50℃に)しながら溶解することによって調製してもよい。脂質エマルションは、撹拌及び加熱下で(適切には、脂質成分の相転移温度より上の温度、例えばおよそ50℃に)乾燥脂質を水と混合し、続いてホモジナイズすることによって調製してもよい。適切には、重合体溶液及び脂質エマルションは、重合体溶液への脂質エマルションの添加(例えば、ゆっくりと添加)によって、任意に加熱(例えば、約50℃に)と共に、混合する。
【0048】
溶液のpHは、適宜、酸又は塩基を使用して調整してもよい。化粧品又は医薬の分野に使用するための組成物は、典型的には生理的に許容し得る酸及び/又は塩基を利用する。生理的に許容し得る酸には、塩酸を含む。生理的に許容し得る塩基には、ナトリウム又は水酸化カリウム、適切には水酸化ナトリウムを含む。
共界面活性物質は、存在するときには、典型的には水性エマルションの形成の前に脂質と混合されるであろう。
【0049】
本発明の更なる実施態様において、スチレン及びマレイン酸の共重合体は交互ではなく、重合体及び脂質は巨大分子集合体の形態である、脂質及びスチレン及びマレイン酸の共重合体含む組成物の製造方法であって:
(i)スチレン及びマレイン酸の共重合体の水溶液を調製する工程であって、スチレン及びマレイン酸の共重合体は、交互ではない工程;
(ii)水性脂質エマルションを調製する工程;
(iii)水性脂質エマルション及び共重合体の水溶液を混合する工程;
(iv)必要に応じて、重合体/脂質巨大分子集合体が形成するように混合物のpHを調整する工程、
を含む方法が提供される。
望ましい場合、更に水を除去する任意の工程を行ってもよい。
【0050】
本発明の更なる実施態様において、スチレン対マレイン酸単量体単位の比は1:1よりも大きく、重合体及び脂質は巨大分子集合体の形態である、脂質及びスチレン及びマレイン酸の共重合体を含む組成物の製造方法であって:
(i)スチレン及びマレイン酸の共重合体の水溶液を調製する工程であって、スチレン対マレイン酸単量体単位の比は、1:1よりも大きい工程;
(ii)水性脂質エマルションを調製する工程;
(iii)共重合体の水性脂質エマルション及び水溶液を混合する工程;
(iv)必要に応じて、重合体/脂質巨大分子集合体が形成するように混合物のpHを調整する工程、
を含む方法が提供される。
望ましい場合、更に水を除去する任意の工程を行ってもよい。
【0051】
水溶液の形態の本発明の組成物は、凍結乾燥して、凍結乾燥された粉末の形態の本発明の組成物を作製してもよい。凍結乾燥させた組成物は、撹拌し、暖めながら水を添加することによって容易に水溶液に再構成され得る。本発明の組成物の凍結乾燥に対する耐久性は、保護剤、例えばトレハロース(α,α-D-トレハロース二水和物、CMS Chemicals Ltd(UK)から入手可能)などの糖の添加によって改善してもよい。
水は、減圧下での回転蒸発及び高温度(例えば、65〜75℃)にてなどのその他の手段によって除去してもよい。
本発明の組成物の1つの使用は、可溶化剤としてのものである。
【0052】
可溶化剤は、不十分な水溶解度(例えば、1%w/w未満、適切には0.1%w/w未満又は0.01%w/w未満の水溶解度)である活性薬剤を可溶化する製剤化補助として有用であろう。また、可溶化剤は、可溶化剤内に優先的に分配する活性薬剤(例えば、水と対照的に、オクタノールに分配する活性薬剤)のための担体として有用であろう。活性薬剤は、例えば医学的障害の治療又は予防のための医薬品であってもよく、又は代わりに、化粧品として薬剤又は化粧品目的のために適用される薬剤であってもよい。
【0053】
水溶解度が乏しい活性薬剤には、油溶性ビタミン(ビタミンA、D、E及びKを含む)及び水溶性ビタミン(ビタミンCを含む)の脂溶性誘導体を含み、これらは、抗酸化剤、非色素沈着薬、モイスチャライザー、コラーゲン刺激薬、抗老化薬、抗しわ薬及び抗炎症薬として、油中水型又は水中油型エマルションの一部として皮膚に頻繁に適用される。
【0054】
ビタミンAファミリーには、レチノール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール及び関連したレチノイド、更にはプロビタミンA(例えば3-カロテン)を含む。ビタミンCの油溶性誘導体には、アスコルビルパルミテート、アスコルビルジパルミタート及びアスコルビル テトライソパルミタート(特に、アスコルビルパルミテート及びアスコルビルジパルミタート)を含む。ビタミンD及びその誘導体には、コレカルシフェロール/カルシトリオール(ビタミンD)カルシポトリオール及びタカルシトール(特にコレカルシフェロールに)を含み、これらは、乾癬の治療に使用してもよい。K1(フィトナジオン)を含む一連のビタミンKは、打撲傷を負った皮膚の治療に、及び毛細血管損傷の修復に使用してもよい。7-デヒドロコレステロールは、ビタミンDの前駆体である。
乏しい水溶解度を示す多数の活性薬剤は、トリテルペノイド又はステロイド核周辺に基づいている。これらの薬剤の多くは、強力な生物活性を有し、化粧品及び医薬に広く使用されている。
【0055】
トリテルペノイド構造に基づいた油溶性活性物質は、天然の抽出物(例えば、コラーゲン合成を調節し、及び活性化するのに有用であるTECA、アジチコシド、アジア酸及びマデカシ酸(madecassic acid)(特にTECA、或いはアジチコシド)などのセンテラ・アシアテラ(Centella asiatica)(Hydrocotyl);又は抗チロシナーゼ及び抗菌剤として有用なグラブリジンなどのカンゾウ抽出物、並びに5-α-レダクターゼの阻害剤として、及び抗菌物質として有用であるリコカルコン(licochalcone)Aからのもの)を含む。更なる活性物質には、トチノキ属(Aesculus)(セイヨウトチノキ(Horse chestnut))からの抽出物を含む。その他の活性物質には、エスシン(トリテルペノイド)及びエスクロシド(エスクリン、クマリン)を含む。更なる配糖体活性物質には、ルスコゲニン及びニューロルスコゲニンを含むルスカス(Ruscus)(ナギイカダ)からの抽出物を含む。Sabinsa Corporation USAからのBoswellin(登録商標)CGを含むボスウェリア(Boswellia)(トスゴム(frankincense))のトリテルペノイド抽出物も、この種の活性物質の例である。ステロイド構造に基づいたその他の油溶性活性物質には、炎症性状態を治療するために使用されるもの(ヒドロコルチゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸フルチカゾン及びデキサメサゾン、特にヒドロコルチゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸クロベタゾール及びデキサメサゾンなど)及びホルモン(テストステロン、エストロゲン及びエストロゲンなど)を含む。更なるステロイド化合物には、酢酸デキサメタゾン無水物、酢酸ヒドロコルチゾン及び酢酸コルチゾンを含む。ステロイド様化合物には、例えば加湿に使用され得るコレステロール及びコレステロール硫酸カリウムを含む。
【0056】
その他の活性薬剤には、ダイズイソフラボン;Sabinsa Corporation USAからのリコライス(Licorice)CG、Maruzen Pharmaceuticals Co. Ltd. JapanからのPU及びP140などのカンゾウ抽出物を含む。
セラミド(例えば、セラミドIIIA)を含む内因性皮膚脂質は、乏しい水溶解度を有し、皮膚モイスチャライザー及び白化薬として有用である。Sederma、FranceからのセラミドHO3などの、その他のセラミドには、セラミドIIIB及び合成セラミドを含む。
【0057】
その他の相対的に油溶性の活性物質には、ローソニア・アルバ(lawsonia alba)の天然のヘンナ抽出物であるローソン(lawsone)(2-ヒドロキシ-1、フィトナジオン)、カフェイン及びミノキシジルを含む。
抗菌性活性薬剤には:エリスロマイシン、ネオマイシン(例えば、サルフェートとして)などの抗菌性物質;シクロピロックスオラミン、ピロクトンオラミン(これらのそれぞれが、ピリドン抗真菌薬の例である)、クロトリマゾール、フルコナゾール、エコナゾール、ケタコナゾール及びニスタチン(特に、ピロクトンオラミン、クロトリマゾール、ケタコナゾール及びニスタチン)などの抗真菌薬を含む。
【0058】
ペプチド構造を有する活性薬剤の油溶性誘導体には、マトリキシル(Matrixyl)(商標)(コラゲナーゼをダウンレギュレートし、従ってコラーゲン産生を増大するパルミトイル-KTTKS)及びアルギレリンアルギレリン(Argireline)(登録商標)(アセチルコリン結合を阻害し、神経筋のシグナルの強度を減少させ、従って筋収縮を減少させるアセチルヘキサペプチド-3)を含む。
【0059】
更なる油溶性活性植物抽出物は、Sabinsa Corporation USAからのロスマリン酸及び緑茶抽出物、イラクサ抽出物、並びにイチョウ抽出物を含む。
Sabinsa Corporation USAからのコスモペリン(登録商標)は、油溶性透過増強剤である。
油溶性抗酸化剤は、Whyte Chemicals UKからのNDGA(ノルジヒドログアヤレト酸)である。
【0060】
活性薬剤のもう一つの種類には、日焼け止めを含む。例示的な日焼け止めには、ケイ皮酸オクチルメトキシ、樟脳ベンゾフェノン3,3-ベンジリデン、アボベンゼン、パラアミノ安息香酸(PABA)及びガランガ(ケイ皮酸エチルヘキシルパラ-メトキシ)を含む。
活性薬剤のなおさらなる種類には、メラロイコール(melaleucole)油及びハッカ油を含む精油、並びにArriva Fragrances(UK)によって供給されるユニセックスブーケ(Unisex Bouquet)(AFL-3607/A)、アプリコサル(Apricosal)(AFL-3607/E)及びFougere(AFL-3607/D)を含む芳香剤がある。
【0061】
活性薬剤のなおさらなる種類には、Quest International(UK)によって供給されるクエスティス(Questice) CQ U/A(メンチルPCA)などの冷却剤及び天然の保湿剤がある。
活性薬剤のもう一つの種類には、色素がある。
本発明の組成物と組み合わせても、及び可溶化してもよい活性薬剤の量は、典型的には重合体の重量の0.001〜50%及び脂質の範囲、特に0.001〜25%(例えば、5〜20%)の範囲であろう。
【0062】
本発明の更なる実施態様において、本発明の組成物を含む製剤が提供され、これは、活性薬剤を更に含む。本発明の一つの実施態様において、活性薬剤は、脂溶性ビタミン又は脂溶性ビタミン誘導体(例えば、アスコルビルパルミテート、アスコルビルジパルミタート及びアスコルビルテトライソパルミタート、特にアスコルビルパルミテート及びアスコルビルジパルミタート)である。本発明の第2の実施態様において、活性薬剤は、トリテルペノイド(例えば、TECA又はアジア酸)又はステロイド核を有する。本発明の第3の実施態様において、活性薬剤は、脂溶性ペプチド(例えば、パルミチル-KTTKS又はアセチルヘキサペプチド-3)である。本発明の第4の実施態様において、活性薬剤は、日焼け止めである。
【0063】
活性薬剤は、水性脂質エマルションの調製の前に、及びエマルション及び重合体溶液を混合する前に、脂質への(及び適切な場合、脂質及び共界面活性物質への)活性薬剤の添加によって本発明の組成物に都合よく組み込まれてもよい。
本発明の組成物を含む水性製剤が提供され、これは、活性薬剤を更に含む。
本発明の組成物と類似の様式において、本発明の水性製剤(これは、活性薬剤を含む)は、一般に凍結乾燥し、必要に応じて再構成してもよい。従って、本発明の組成物を含み、更に凍結乾燥された形態である(例えば、粉末、樹脂又は薄片、特に粉末又は薄片として)活性薬剤を含む製剤も提供される。
【0064】
一般に、本発明の製剤は、特定の目的、使用様式及び投与様式の目的に合わせらた化粧品として、又は医薬として調製に組み込まれる。製剤は、一つ以上の化粧品として、又は医薬として許容し得る担体又は賦形剤(抗酸化剤、防腐剤、粘度調整剤、着色剤、芳香剤、香料、緩衝液、酸性度制御因子、キレート薬又はその他の賦形剤)と共に、及び任意に必要に応じて、その他の治療成分と共に混合してもよい。このような製剤は、当該技術分野において公知の方法のいずれによって調製してもよく、例えば吸入法、局所的又は非経口的(静脈内、関節内、筋肉内、皮内及び皮下)投与用にデザインしてもよい。
【0065】
全身送達のための製剤は、適切には、低分子量共重合体を使用して作製され、この重合物質は、非分解性であるが、ブチル半エステルは、以前に医薬品に使用されており、腎臓を通って容易に排出される可能性がある。この用途に記述されたリン脂質のいくつかは、中心静脈栄養法のために使用され、深刻な問題を生じさせることなく体内でかなり容易に破壊される可能性がある。非経口的送達のための製剤は、適切には無菌である。
本発明の組成物は、特に皮膚への活性薬剤の送達のために適切であると考えられる。
【0066】
皮膚に活性薬剤を送達するときに、一般に、材料が角質層に適切に吸収されるように、皮膚の外層内の角質細胞間に見いだされる脂質間隔のものよりも粒径を小さくすることが重要である。角質細胞間の間隔は、約50〜100nmの厚みを有し、それ故、粒子(例えば、本発明の巨大分子集合体)は、効率的に吸収されるように、望ましくは100nm、特に50nm未満及び特に25nm未満よりも小さいサイズにするべきである。皮膚内の角質細胞と脂質ラメラ層との間の親水性孔/空間は、脂質間隔よりも実質的に小さく、約0.4nmで始まるが、直径20〜3Onm周辺まで拡大する能力を有する(Cevc, G Advanced Drug Delivery Reviews 2004 56:675-711)。本出願に記述した新規の巨大分子集合体は、角質細胞間の脂質層、更には親水性孔を透過するのに非常に適しており、従って、油状材料、例えば活性薬剤を送達するために使用することができるであろう。巨大分子集合体は、角質層内に閉じこめられしてもよいので、これらは、活性薬剤のための貯蔵所として作用して、皮膚のより深い層への徐放が可能になり、これにより異なる治療プロフィールを提供する。好都合には、これは、製品有効性を改善することができ、必要とされる適用の回数及び活性薬剤の量を減少させ、消費者又は患者にとってより都合がよくなるであろう。
【0067】
局所適用のための製剤には、例えば抗酸化剤(例えば、α‐トコフェロール、ブチルヒドロキシアニゾール(BHA)又はブチルオキシトルエン(BHT))、防腐剤(例えば、2-フェノキシエタノール、ソルビン酸又はパラベン)、粘度調整剤(例えば、キサンタンガムなどの水溶性ゴム及び樹脂、又はカルボポールなどの軽く架橋された合成重合体)、着色剤、芳香剤、香料、緩衝液、酸性度調整剤、キレート薬(例えば、EDTA、エデト酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム又はエデト酸二ナトリウムカルシウムなど)、透過増強剤及び粘着防止剤を含んでいてもよい。適切なカルボマには、カルボポール(Carbopol)(登録商標)980及びウルトレツ(Ultrez)(登録商標)20を含む。
【0068】
局所適用のための製剤は、ヒドロゲルパッチ(すなわち、固定された構造の三次元ゲル)に組み込まれていてもよい。ヒドロゲルを利用する適用では:(i)ヒドロゲルパッチが長期投与のための便利な貯蔵所として作用し得る点及び/又は(ii)ヒドロゲルパッチは、投与される活性薬剤の量を効率的に制御することができるように、定量化可能な剤形を提供し得る点で有利であろう。
【0069】
従って、本発明の組成物及び活性薬剤を含む化粧品製剤が提供され、これは、化粧品として許容し得る担体又は賦形剤を更に含む。
また、本発明の組成物及び活性薬剤を含む医薬品製剤は提供され、これは、医薬として許容し得る担体又は賦形剤を更に含む。
従って、治療に使用するための本発明の組成物も提供される。
【0070】
本発明の更なる実施態様において、例えば活性薬剤(例えば、脂溶性ビタミン若しくは脂溶性ビタミン誘導体、トリテルペノイド若しくはステロイド核を有する薬剤又は油溶性ペプチド)の可溶化における可溶化剤としての本発明の組成物の使用が提供される。可溶化され得るその他の活性薬剤には、テルペノイドを含む。
【0071】
本発明の組成物のその他の可能性のある使用には、膜ペプチド又はタンパク質を、これらの構造研究のために可溶化する手段としての使用を含む。リン脂質膜内で、これらの固有の立体配座を保持し、これによりこれらの構造を調査することができるような方法で(例えば、NMR分光法により)、膜ペプチド及びタンパク質(複合的な、膜に繋がれたか、又は膜会合したタンパク質、例えば薬物受容体タンパク質を含む)の可溶化のために使用することができる可溶化剤を同定することが必要である。
【0072】
構造研究に加えて、膜タンパク質及びペプチドのその他の種との相互作用を調査することも望ましいであろう。また、このようなその他の種も、膜ペプチド及びタンパク質であってもよい。膜受容体の場合、その他の種には、リガンド及びリガンド断片(例えば、アゴニスト及びアンタゴニスト)を含む。酵素の場合、このようなその他の種は、リガンド及びリガンド断片(例えば、基質及び阻害剤)であってもよい。研究の対照となり得るその他の膜結合したか、又は膜会合した分子には、糖脂質を含む。
NMRに加えて、ペプチド及びタンパク質を調査するための当業者に周知の多くのその他の適切な分光技術がある(X線結晶学、赤外分光法及び円二色性を含む)。
【0073】
洗浄剤で可溶化された状態から脂質二重層状態への膜タンパク質の転移のための多数の技術が存在する。例えば、バイオビーズを使用して洗浄剤を除去し、これにより転移を促進してもよいが、凍結融解などのその他の技術を使用することもできる。凍結融解は、膜タンパク質集団に広く使用されている技術であり、迅速な凍結(例えば、液体窒素を使用する)及び融解(例えば、37℃)のサイクルを含み(これが複数回、例えば4回繰り返される)、これにより本発明の巨大分子集合体内に膜タンパク質を組み込ませる。特定のタンパク質を組み込むために最も適切な技術は、使用する洗浄剤の絶対的及び臨界ミセル濃度に応じて変更してもよい。
【0074】
本発明の組成物は、膜ペプチド及びタンパク質を再構成するために、バイセル(bicelles)(Sanders, CR and Landis, GC Biochemistry 1995 34(12) :4030-4040)の使用以上の利点を提供し得る。
従って、膜ペプチド又はタンパク質の可溶化のための本発明の組成物の使用が提供される。また、膜ペプチド又はタンパク質を更に含む本発明の組成物が(例えば、乾燥又は水性形態で)提供される。
また、膜ペプチド又はタンパク質の可溶化のための方法であって、前記膜ペプチド又はタンパク質を含む本発明の組成物を形成することを含む方法が提供される。
【0075】
更に、
(i)本発明の組成物に膜タンパク質又はペプチドを可溶化する工程;
(ii)候補薬剤を試験して可溶化された膜タンパク質又はペプチドと相互作用するかどうかを決定する工程、
を含む候補薬剤を膜タンパク質又はペプチドとの相互作用についてのスクリーニング方法が提供される。
【0076】
候補薬剤は、推定上のリガンド又はリガンド断片(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤その他)であってもよい。
また、本発明の組成物は、事実上免疫原性であるペプチド又はタンパク質(例えば、抗原)を可溶化するために使用してもよいことが想定され得る。或いは、W095/11700は、免疫原性を増強し、及びワクチンにおける抗原の免疫応答を改善するためのワクチンアジュバントとして使用するための水中油型サブミクロンエマルション(SME)を開示する点に留意されたい。また、本発明の組成物は、粒子ワクチンアジュバントとして有用であろう。
【0077】
更にまた、粘膜表面に影響を及ぼす医学的状態の治療のための、例えば「ドライアイ」症候群として公知の状態の治療などにおける眼での使用のための、及び生体膜(例えば、滑膜)を潤滑するための需要がある。涙液膜は、リン脂質のコーティングを有し、安定な涙液膜の形成のためにはこれが必要である。涙液膜が欠損する疾患は、本発明の組成物の水溶液などの水性リン脂質溶液の添加により、潜在的に治療されるかもしれない。本発明の組成物は、不透明であろう従来の水性リン脂質製剤とは異なり、透明、かつ無色であるので、これらはこの点に関して有利である。
【0078】
また、関節炎条件に関連した多関節表面を処理するための、又は体内若しくは体に装着される医療用具及びプロステーシス、例えば人工関節及びコンタクトレンズの表面を潤滑するために、又は外科的手技の間に生じる可能性のあるものなどの組織間の局所的接着を防止するために、リン脂質を潤滑するための需要がある。本発明の組成物は、この点に関して有用であろう(例えば、関節内投与による)。
【0079】
また、本発明の組成物は、肺に局所的に、又は深肺を裏打ちする高度に浸透性の膜を介して体循環に活性薬剤を送達する能力を有し得る。本発明のリン脂質組成物と肺の内部肺胞及び気管支表面を裏打ちする界面活性物質液体との間の類似性により、本発明の組成物は、天然の肺表面活性物質又はリン脂質のレベルが不十分なことにより特徴づけられる状態である新生児若しくは成人呼吸窮迫症候群の治療のために、肺、特に深肺に活性薬剤を送達するために、又は肺にリン脂質を送達する手段として作用させるために適合することを保証するであろう。肺に対する送達は、エアロゾルによって、又は噴霧によってもよい。
【0080】
以下の実施例は、非限定的であり、当業者がより容易に本発明の性質を認識し、本発明を実用的に実施に移し得るように、本発明による組成物の調製及び使用を例証するために提供される。
【実施例】
【0081】
(比較実施例1-一般的界面活性物質が脂質を可溶化する能力)
4つの一般に使用される界面活性物質が多数の脂質混合物を可溶化する能力を、本発明の可溶化組成物と比較する目的で試験した。
(方法)
適当量の2倍強度の脂質エマルションをおよそ50℃まで加熱することによって調製し、一様なエマルションが形成されるまで撹拌した。次いで、混合物を10分間ホモジナイズした。界面活性物質を水に添加して、2倍強度の保存液を形成し、次いで、これに撹拌及び加熱下で等量の脂質エマルションを滴状に添加した。
【0082】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
一旦混合物を調製したら、これらを視覚的に調べて、界面活性物質成分が脂質成分を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0083】
(界面活性物質)
ドデシル硫酸ナトリウム(CAS Ref 151-21-3)は、頭字語でSDSといわれることが多く、最も広く使用されている陰イオン性界面活性物質の1つであり、例えば、これは、多くの汎用の洗浄剤に使用される。SDSは、研究室試薬用粉末として利用した。
【0084】
マカナート(Mackanate) DC3Oは、Mcintyre Group Ltd(USA)によって製造され、一般名ジナトリウムジメチコーンコポリオールスルホスクシナートとして公知である。マカナートは、個人看護洗浄剤に使用される軽度の陰イオン性界面活性物質である。マカナートは、30%の濃度にて透明な液体として供給された。
【0085】
ルトロール(登録商標)F127(CAS Ref 9003-11-6)は、一般名ポロキサマー407として公知であり、BASFによって製造され、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体界面活性物質である。F127は、非イオン性重合体の界面活性物質であり、70%のポリエチレンオキシド含量、平均分子量12,600を有し、粉末として供給される。低度の皮膚及び眼への刺激を有し、F127は、個人看護適用に広範に使用されている。
【0086】
リゾホスファチジルコリン(CAS Ref 9008-30-4)は、Lipoid GmbHから商用名S LPCとして入手可能である。ホスファチジルコリンに構造的に関連しているが、これは、一つの脂肪酸鎖のみを含み、非常に高い界面活性を生じるという点で異なっている。S LPCは、個人看護適用において穏やかな乳化剤として使用される。本明細書に使用されるS LPCは、93.9%の純度であり、粉末として供給された。
【0087】
(脂質)
ホスホリポン(登録商標)90Hは、本明細書において略語90Hによって称され、Phospholipid GmbH(Germany)から入手可能で、少なくとも90%のホスファチジルコリン含量の水素付加されたダイズレシチン抽出物であり、医薬及び化粧品として使用のために承認されている。これは、一般に乳化剤として使用され、リポソームを形成することが公知である。
【0088】
Pro-LipoHは、本明細書において略語ProHによって称され、20%のホスファチジルコリンを80%の水、アルコール及びグリセリン含量で含む水素付加されたダイズリン脂質ゲル濃縮物である。これは、プロリポソーム組成物であり、Lucas Meyer Cosmetics SAから入手可能である。医薬適用のためのProHの使用は、EP0158441によって包含される。
【0089】
(結果)
下記の表1は、実験の結果を要約する。
【表1】

【0090】
表1のデータから分かるように、一般に、5% w/wの濃度の従来の界面活性物質は、1.0% w/wの濃度の脂質を可溶化して透明かつ無色の溶液を形成することができない。しかし、SDS及びS LPCの両者は、使用した脂質がPro Hであったときに、2.5%の濃度にて透明かつ無色の溶液を生成し、SDSは、脂質が90Hであるときに、5%の濃度にて透明かつ無色の溶液を生成する。Pro Hは、そのプレプロセス形態及び残留するアルコール含量のために、非典型的な脂質の例と考えられるであろう。
【0091】
(比較実施例2-一般的界面活性物質が活性薬剤を可溶化する能力)
4つの一般に使用される界面活性物質が乏しい水溶性を有する例示的な活性薬剤を可溶化する能力を、本発明の可溶化組成物と比較する目的で試験した。
(方法)
適当量の界面活性物質及び活性薬剤を水に添加し、次いでこれをおよそ50℃まで暖めて、撹拌した。次いで、混合物を10分間ホモジナイズした。
【0092】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
一旦混合物を調製したら、これらを視覚的に調べて、界面活性物質成分が活性薬剤を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0093】
(界面活性物質)
4つの界面活性物質(SDS、Mackanate、F127及びS LPC)は、比較実施例1において上に記述した通りであった。
(活性薬剤)
本明細書においてTECAと称されるセンテラ・アシアテラの滴定された抽出物は、Roche Nicholas Laboratory SA-Serdex Division(France)(現在は、Bayer Sante Familiale)から入手可能である。TECAは、54〜66%(すなわち、およそ60%)の遊離ゲニン(アジア酸及びマデカシック酸)と36〜44%(すなわち、およそ40%)のアジアチコシドとの混合物であり、コラーゲン合成、創傷治癒、抗しわ、調色及び抗セルライト治療を調節するのに有用である。医薬品等級(95%の純度)が利用され、粉末として供給された。
【0094】
(結果)
下記の表2は、実験の結果を要約する。
【表2】

例示的な界面活性物質は、試験した濃度にて乏しい水溶性を有する例示的な活性薬剤を可溶化することができなかった。
【0095】
(比較実施例3-脂質が活性薬剤を可溶化する能力)
3つの脂質組成が乏しい水溶性を有する例示的な活性薬剤を可溶化する能力を、本発明の可溶化組成物と比較する目的でテストした。
(方法)
適当量の脂質及び活性薬剤を水に添加し、次いでこれをおよそ50℃まで暖めて一様なエマルションが形成されるまで撹拌した。次いで、エマルションを10分間ホモジナイズした。
【0096】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
一旦混合物を調製したら、これらを視覚的に調べて、脂質成分が活性薬剤を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0097】
(脂質)
3つの脂質組成(90H、Pro H及びEm930)は、比較実施例1において上に記述した通りであった。
(活性薬剤)
例示的な活性薬剤のTECAは、比較実施例2に記述した通りであった。
【0098】
(結果)
下記の表3は、実験の結果を要約する。
【表3】

3つの例示的な脂質組成は、試験した濃度にてTECAと相互作用せず、透明かつ無色の水性溶液を形成しなかった。
【0099】
(比較実施例4-ブロック状スチレン/マレイン酸共重合体が活性薬剤を可溶化する能力)
例示的なブロック状スチレン/マレイン酸共重合体(すなわち、加水分解されたスチレン/無水マレイン酸共重合体)が乏しい水溶性を有する例示的活性薬剤を可溶化する能力を、本発明の可溶化組成物と比較する目的で試験した。
【0100】
(方法)
ブロック状スチレン/マレイン酸重合体の2倍強度の水性保存液を調製した。これに等量の2倍強度のTECAの水性エマルションを添加して、所望の濃度の両成分を含む最終混合物を提供した。この混合物をおよそ50℃に暖め、更に20分間撹拌し、10分間ホモジナイズした。
【0101】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
一旦混合物を調製したら、これらを視覚的に調べて、重合体成分が活性薬剤を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0102】
(重合体)
SMA3000 HNaは、Sartomer Inc.から得た。これは、加水分解されたSMA3000のナトリウム塩型(すなわち、スチレン/マレイン酸ナトリウム塩)であり、3:1の比のスチレン対マレイン酸単量体単位を含む。重合体は、樹脂として供給される。
(活性薬剤)
例示的な活性薬剤のTECAは、比較実施例2において記述した通りであった。
【0103】
(結果)
下記の表4は、実験の結果を要約する。
【表4】

3:1の比のスチレン対マレイン酸単量体単位を含むブロック状スチレン/マレイン酸共重合体であるSMA3000 HNaは、試験した濃度にて、例示的活性薬剤を可溶化することができず、透明かつ無色の水溶液を生成しなかった。
【0104】
(比較実施例5-脂質及び界面活性物質の混合物が活性薬剤を可溶化する能力)
脂質及び界面活性物質の混合物が乏しい水溶性を有する例示的活性薬剤を可溶化する能力を、本発明の可溶化組成物と比較する目的で試験した。
(方法)
適当量の脂質、界面活性物質及び活性薬剤を水に添加し、次いでこれをおよそ50℃に暖め、一様なエマルションが形成されるまで撹拌した。次いで、混合物を10分間ホモジナイズした。
【0105】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
一旦混合物を調製したら、これらを視覚的に調べて、脂質及び界面活性物質が活性薬剤を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0106】
(界面活性物質)
F127及びS LPCは、比較実施例1において上に記述した通りであった。
SDSは、比較実施例1において上に記述した通りであった。
(脂質)
90Hは、比較実施例1において上に記述した通りであった。
(活性薬剤)
例示的な活性薬剤のTECAは、比較実施例2において記述した通りであった。
【0107】
(結果)
下記の表5は、実験の結果を要約する。
【表5】

【0108】
表5の結果は、脂質及び少量の界面活性物質単独では、例示的な活性薬剤の透明かつ無色の水溶液を形成するための十分な可溶化能力を有しないことを示す。
SDSは、強力な界面活性物質であり、これが、高濃度にてTECA及び脂質を可溶化できることは驚くべきことでない。しかし、2.5% w/wの濃度にて、SDSは、活性薬剤及び脂質の透明かつ無色の溶液を形成することができない。
【0109】
(比較実施例6-ブロック状スチレン/マレイン酸共重合体及び界面活性物質が活性薬剤を可溶化する能力)
例示的なブロック状スチレン/マレイン酸共重合体(すなわち、加水分解したスチレン/無水マレイン酸共重合体)及び界面活性物質の混合物が乏しい水溶性を有する例示的な活性薬剤を可溶化する能力を、本発明の可溶化組成物と比較する目的で試験した。
【0110】
(方法)
ブロック状スチレン/マレイン酸重合体の2倍強度の水性保存液を調製した。これに等量の2倍強度の界面活性物質及びTECAの水性エマルションを添加して、所望の濃度のそれぞれの成分を含む最終混合物を提供した。この混合物を暖めて、更に20分間撹拌した。
【0111】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
一旦混合物を調製したら、これらを視覚的に調べて、重合体及び界面活性物質が活性薬剤を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0112】
(重合体)
SMA3000 HNaは、比較実施例4において記述した通りであった。
(界面活性物質)
F127及びS LPCは、比較実施例1において記述した通りであった。
(活性薬剤)
例示的な活性薬剤、TECAは、比較実施例2において記述した通りであった。
【0113】
(結果)
下記の表6は、実験の結果を要約する。
【表6】

3:1の比のスチレン対マレイン酸単量体単位を含むブロック状スチレン/マレイン酸共重合体であるSMA3000 HNa及び少量の界面活性物質は、試験した濃度にて例示的活性薬剤を可溶化することができず、透明かつ無色の水溶液を生成しなかった。
【0114】
(比較実施例7-交互のスチレン/マレイン酸共重合体及び脂質混合物の生理学的pHにおける安定性)
従来技術の交互スチレン/マレイン酸共重合体及び脂質が生理学的pHにおいて安定な巨大分子複合体を形成する能力を調査した。
【0115】
(方法)
脂質の保存エマルションを所望の終濃度の2倍に調製した。脂質を適当量の水に添加し、続いて一様なエマルションが形成されるまで撹拌して50℃に加熱した。次いで、エマルションを10分間ホモジナイズした。
【0116】
それぞれの重合体の保存液は、所望の終濃度の2倍に調製した。スチレン/無水マレイン酸として供給された重合体は、過剰な水酸化ナトリウムの存在下において2時間、水中で還流することによって加水分解した後に、反応が完了したことを保証するために4℃で48時間放置した。保存液は、加水分解された重合体を適当量の水と混合することによって調製した。
【0117】
次いで、脂質エマルションを撹拌して、およそ50℃に加熱しながら等量の重合体溶液に滴状添加することによって重合体/脂質混合物を調製した。
生じる混合物のpHを、混合物が透明かつ無色の溶液を形成するまで塩酸を使用して低下させた(次いで、このpH値を記録した)。その後、pHを、水酸化ナトリウム溶液を使用して慎重におよそpH 7.0に上げた。次いで、溶液を解析前に4℃にて1時間貯蔵した。
【0118】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
混合物を視覚的に調べて、重合体成分が脂質成分を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0119】
(重合体)
AIdと呼ばれる重合体は、Aldrich Chemical Company(USA)、カタロ番号43,529-5から入手可能である。この重合体は、スチレン及びマレイン酸の1:1の交互共重合体であり、水性濃縮物として供給される。
【0120】
SMAI000Pは、Sartomer Inc.から得られ、1:1の比のスチレン対無水マレイン酸物単量体単位を含む。重合体は、非加水分解無水物として粉末形態で供給される。
(脂質)
Pro Hは、比較実施例1において記述した通りであった。
【0121】
(結果)
下記の表7は、実験の結果を要約する。
【表7】

【0122】
これらの交互スチレン/マレイン酸重合体は、pH 3.3〜3.5の範囲において脂質混合物Pro Hを可溶化したが、生理学的pHにて貯蔵したときは、いずれの試料も安定ではなく、pH 7.0に調節して1時間以内に溶液から沈殿する。これらの知見は、従来技術の重合体/脂質巨大分子複合体に存在する安定性の問題を強調する。
【0123】
(本発明の実施例)
(実施例1-重合体/脂質巨大分子複合体の形成におけるブロック状スチレン/マレイン酸共重合体の使用)
例示的なブロック状のチレン/マレイン酸共重合体(すなわち、加水分解されたブロック状スチレン/無水マレイン酸共重合体)を、これらが巨大分子重合体/脂質複合体の形成を示す純粋な脂質を可溶化する能力について試験し、交互スチレン/マレイン酸共重合体の例と比較した。
【0124】
(方法)
膜形成脂質の保存エマルションは、所望の終濃度の2倍に調製した。脂質を適当量の水に添加し、続いて一様なエマルションが形成されるまで撹拌しておよそ50℃に加熱した。次いで、エマルションを10分間ホモジナイズした。
【0125】
それぞれの重合体の保存液は、所望の終濃度の2倍に調製した。スチレン/無水マレイン酸として供給された重合体は、過剰な水酸化ナトリウムの存在下において2時間、水中で還流することによって加水分解した後に、反応が完了したことを保証するために4℃で48時間放置した。保存液は、加水分解された重合体を適当量の水と混合することによって調製した。
次いで、重合体/脂質混合物を撹拌して、およそ50℃に加熱しながら等量の重合体溶液に滴状添加することによって重合体/脂質混合物を調製した。
【0126】
生じた混合物のpHをおよそpH 7まで下げるか、若しくは現時点で透明かつ無色の溶液を生成しなかったこれらの混合物について、溶液が透明になるまで更に下げた。7以下へのpHの低下の後に最後に透明かつ無色の溶液を産生成したこれらの混合物を、その後にpHを上昇させ、これらが生理学的pHレベルに戻され、かつ4℃にて一晩放置されたときに透明のままであるかどうかを観察した。第1に透明かつ無色の溶液を調製することができたかどうか、第2に安定な透明かつ無色の溶液を生理学的pH(すなわち、およそpH 7)にて調製することができたどうかの2項目の情報に注目した。
【0127】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
混合物を視覚的に調べて、重合体成分が脂質成分を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0128】
(重合体)
AIdは、比較実施例7において記述した通りであった。
SMAI000Pは、比較実施例7において記述した通りであった。
SMA3000Pは、Sartomer Inc.から得られ、3:1の比のスチレン対無水マレイン酸単量体単位(すなわち、ブロック状共重合体)を含む。重合体は、非加水分解性の無水物として、粉末形態で供給される。
【0129】
(脂質)
DLPC(ジラウリルホスファチジルコリン)(CAS Ref 18194-25-7)は、Sigma-Aldrichから99%の純度にて得られた。
DPPC(ジパルミチルホスファチジルコリン)(CAS Ref 63-89-8)は、Sigma-Aldrichから99%の純度にて得られた。
DPPG(ジパルミチルホスファチジルグリセロール)(CAS Ref 67232-81-9)は、Sigma-Aldrichから99%の純度にてナトリウム塩として得られた。
【0130】
(結果)
下記の表8は、実験の結果を要約する。
【表8】

【0131】
多くの驚くべき結論が、表8のデータに基づいてなされるであろう。第1に、高度に定義された交互構造が両親媒性の重合体及び膜を形成する脂質の相互作用に必要であるという当業者の期待に反して、ブロック状共重合体が同様の方法で相互作用し得ることが証明された。第2に、ブロック状共重合体における正確な単量体比の選択により、重合体/脂質相互作用を生理学的pHにて安定に生じさせることができるであろう。
【0132】
(実施例1-補足)
本発明にしたがった混合物と比較した従来技術の混合物の成績の定量的比較のために、代表試料を実施例1にて説明した一般的手順に従って調製し(共界面活性物質の添加を伴う)、濁度計(Hach-Lange 製のNephla)を使用して調べた。濁度計を使用前に公知の標準物質(0及び40FNU)で較正した。
【0133】
試料調製の最後工程(すなわち、生理学的pHへの調整)の後、試料をWhatman541濾紙で濾過して、濁度測定を妨げ得る任意の粗雑物を除去した。濾過直後に、最初の濁度測定を行った。混合物を最初の測定後に4℃にて貯蔵して、後の時点にて再び測定した。
この補足実験に利用した成分の完全な記述は、実施例のいずれにおいても利用できる。
【0134】
【表8a】

実施例1の補足実験の結果は、従来技術の組成物と比較したときに、本発明による組成物が生理学的pH(すなわち、pH 7)にて改善された安定性を有するという定量的証拠を提供する。
【0135】
(実施例2-重合体/脂質巨大分子複合体の形成におけるブロック状スチレン/マレイン酸共重合体及び天然の脂質混合物の使用)
実施例1の結果及びブロック状スチレン/マレイン酸重合体が生理学的pHにて作動することができるという知識を考慮して、本発明に使用するための天然の脂質抽出物の範囲の適合性を試験した。卵或いはダイズ由来の多数の市販の脂質組成物を解析した。
【0136】
(方法)
膜形成脂質の保存エマルションは、所望の終濃度1%の2倍(すなわち、2%)に調製した。脂質を適当量の水に添加し、続いて一様なエマルションが形成されるまで撹拌しておよそ50℃に加熱した。次いで、エマルションを10分間ホモジナイズした。
【0137】
それぞれの重合体の保存液は、所望の終濃度2.5%の2倍(すなわち、5%)に調製した。スチレン/無水マレイン酸として供給された重合体は、過剰な水酸化ナトリウムの存在下において2時間、水中で還流することによって加水分解した後に、反応が完了したことを保証するために4℃で48時間放置した。保存液は、加水分解された重合体を適当量の水と混合することによって調製した。
【0138】
次いで、重合体/脂質混合物を撹拌して、およそ50℃に加熱しながら等量の重合体溶液に滴状添加することによって脂質エマルションを調製した。
即時に透明かつ無色の溶液を生成しなかったこれらの混合物について、透明かつ無色の溶液がより低いpHにて形成され得るかどうかを決定するために、混合物のpHを下げた。
【0139】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
混合物を視覚的に調べて、重合体成分が脂質成分を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0140】
(重合体)
SMA2000Pは、Sartomer Inc.から得られ、2:1の比のスチレン対無水マレイン酸単量体単位(すなわち、ブロック状共重合体)を含む。重合体は、非加水分解性の無水物として粉末形態で供給される。
SMA3000Pは、実施例1において記述した通りであった。
【0141】
(脂質)
エピクロン200(Ep200)は、少なくとも92%の純度のダイズホスファチジルコリンである。これは、医薬適用(非経口のものを含む)の乳化剤として使用され、リポソームを形成することが公知である。Ep200は、Degussa Texturant Systems UK Ltd.から入手可能である。
エピクロン145V(EpI45V)は、ホスファチジルコリンと共に少なくとも45%の純度に濃縮された脱脂されたダイズレシチンである。EpI45Vは、Degussa Texturant Systems UK Ltd.から入手可能である。
【0142】
エムルメチク970(Em970)は、少なくとも59%のホスファチジルコリンを含む部分的に脱脂された卵レシチンである。これは、共乳化剤として使用され、リポソームを形成する。Em970は、Lucas Meyer Cosmetics SAから入手可能である。
エムルメチク950(Em950)は、少なくとも94%のホスファチジルコリンを含む精製された水素付加されたダイズ抽出物である。これは、乳化剤として使用され、リポソームを形成する。Em950は、Lucas Meyer Cosmetics SAから入手可能である。
【0143】
エムルメチク930(Em930)は、比較実施例1に記述した通りであった。
エムルメチク900(Em900)は、ホスファチジルコリンと共に少なくとも45%の純度に濃縮された脱脂された精製されたダイズ抽出物である。これは、乳化剤として使用され、リポソームを形成する。Em900は、Lucas Meyer Cosmetics SAから入手可能である。
【0144】
エムルメチク300(Em300)は、少なくとも97%のリン脂質及び糖脂質を含む脱脂された精製されたダイズ抽出物である。これは、共乳化剤として使用される。Em300は、Lucas Meyer Cosmetics SAから入手可能である。
エピクロン130P(Ep130P)は、ホスファチジルコリンと共に少なくとも30%の純度に濃縮された脱脂されたダイズレシチン画分である。これは、乳化剤として使用され、医薬使用のために承認されている。Ep130Pは、Degussa Texturant Systems UK Ltd.から入手可能である。
【0145】
オボシン(Ovothin)120(OVA120)は、少なくとも22%のホスファチジルコリンを含む卵レシチンと卵油との天然の混合物である。これは、食物使用を有し、Degussa Texturant Systems UK Ltd.から入手可能である。
Pro Hは、比較実施例1に記述した通りであった。
【0146】
Pro-Lipo Duo(Pro Duo)は、プロリポソーム組成物であり、これは、およそ50%のダイズリン脂質含量を含む液体であり、残りの50%は、グリセロール及びアルコールからなる。Pro Duoは、Lucas Meyer Cosmetics SAから入手可能である。
リポソーム0041(Lip 0041)は、精製されたダイズレシチンリポソームの製剤であり、プロピレングリコール及び水と共に10%のリン脂質を含む。Lip 0041は、Lipoid GmbHから入手可能である。
【0147】
S 75は、68〜73%のホスファチジルコリンを含む精製されたダイズ抽出物である。これは、Lipoid GmbHから入手可能である。
S 100は、少なくとも94%のホスファチジルコリンを含む精製されたダイズ抽出物である。これは、Lipoid GmbHから入手可能である。
【0148】
S PCは、98%のホスファチジルコリンを含む精製されたダイズ抽出物である。これは、Lipoid GmbHから入手可能である。
SL 80は、69%のホスファチジルコリンを含む精製されたダイズ抽出物である。これは、Lipoid GmbHから入手可能である。
【0149】
SL 80-3は、54%のホスファチジルコリンを含む精製されたダイズ抽出物である。これは、Lipoid GmbHから入手可能である。
90 Hは、比較実施例1に記述した通りであった。
【0150】
ホスホリポン(登録商標)80 Hは、本明細書において略語80 Hによって称される、Phospholipid GmbH(Germany)から入手可能で、少なくとも60%のホスファチジルコリン含量の水素付加されたダイズレシチン抽出物であり、及び乳化剤として使用され及びリポソームを形成する。それは、化粧品に使用するために販売される。
【0151】
ホスホリポン(登録商標)90 NGは、本明細書では略語90NGによって称され、Phospholipid GmbH(Germany)から入手可能で、少なくとも90%のホスファチジルコリン含量のダイズレシチン抽出物である。これは、乳化剤として使用され、リポソームを形成し、医薬品及び化粧品に使用するために販売される。
Nat 8539は、ダイズ抽出物に由来する予め製剤化されたリポソーム組成物であり、これは、73〜79%のホスファチジルコリンを含み、残りがエタノールである。
【0152】
(結果)
下記の表9は、実験の結果及び乾燥重量基準(入手可能な場合)の脂質抽出物混合物の組成を要約する。
【表9】


【0153】
実施例2は、2つの例示的なブロック状スチレン/マレイン酸共重合体が、天然の供与源に由来する広範な膜形成脂質混合物を可溶化できることを証明する。従来技術の重合体/脂質系では、単離の際に高度に純粋な合成脂質の使用のみを、又は一例において、2成分の混合物として例示しているので、この知見は、いくらかの有意性がある。上に示した脂質抽出物は、極めて複雑な天然産物であり、その内容は、存在するリン脂質の頭部基の性質が、及びこれらの付随したアシル鎖(鎖長及び不飽和度)が、両者にとも変動する。従って、本実験は、実質的に透明かつ無色の水性溶液を形成するために広範な膜形成脂質混合物を可溶化する際の本発明の重合体の用途の広さを証明している。
【0154】
(実施例2-補足)
種々の脂質混合物と共に調製されるときの本発明に従った混合物の透明性及び安定性の定量的証明のために、実施例2にて説明した一般的手順に従って試料を調製し、濁度計(Hach-Lange 製のNephla)を使用して調べた。濁度計を、使用前に公知の標準物質(0及び40FNU)で較正した。
【0155】
試料調製の最終工程(すなわち、生理学的pHへの調整)の後、試料をWhatman541濾紙で濾過して、濁度測定を妨げ得る任意の粗雑物を除去した。濾過直後に、最初の濁度測定を行った。混合物を最初の測定後に4℃にて貯蔵して、後の時点にて再び測定した。
これらの実験の結果を下記の表9aに示してある。
【0156】
多数の軽微な矛盾が存在するが、表9aの結果は、一般に上の表9のものと一致している。これらの矛盾は、初期の結果の主観性の結果として、及び表9において透明性を2つのカテゴリー(透明又は濁り)のみによって定義したことの結果として説明され得る。実験変動及び脂質(これは天然の抽出物であり、従って変化しやすい)のバッチ間変化も寄与し得る。
【0157】
要約すると、ある範囲の脂質成分を使用して調製される本発明の組成物は、高いレベルの透明性を達成し得るし、及び/又は従来技術の組成物に対応するものよりも安定し得る。
【表9a】

【0158】
(実施例3-重合体/脂質巨大分子複合体の形成における一連のブロック状スチレン/マレイン酸共重合体及び脂質の使用)
ブロック状スチレン/マレイン酸共重合体は、重合体/脂質巨大分子複合体の形成に使用するのに適していること、及びこれが広範な単量体比に適用するという驚くべき知見を確認するために、多数の異なる市販の重合体の例を試験した。
【0159】
(方法)
保存エマルションは、所望の終濃度1%の2倍(すなわち、2%)に調製した。脂質を適当量の水に添加し、続いて一様なエマルションが形成されるまで、撹拌しておよそ50℃に加熱した。次いで、エマルションを10分間ホモジナイズした。
【0160】
それぞれの重合体の保存液は、所望の終濃度2.5%の2倍(すなわち、5%)にて調製した。スチレン/無水マレイン酸として供給された重合体は、過剰な水酸化ナトリウムの存在下において2時間、水中で還流することによって加水分解した後に、反応が完了したことを保証するために4℃で48時間放置した。保存液は、加水分解された重合体を適当量の水と混合することによって調製した。
【0161】
次いで、重合体/脂質混合物を撹拌して、およそ50℃に加熱しながら等量の重合体溶液に滴状添加することによって脂質エマルションを調製した。
混合物のpHを調整して、巨大分子集合物が形成される臨界レベル、及び生じる透明かつ無色の溶液が生理学的pHにてそのままであるかどうかを決定した。
【0162】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
混合物を視覚的に調べて、重合体成分が脂質成分を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0163】
(重合体)
SMA2000Pは、実施例2において記述した通りであった。
SMA3000Pは、実施例1において記述した通りであった。
SMA3000HNaは、比較実施例4において記述した通りであった。
SMA4000HNaは、Sartomer Inc.から得られ、4:1の比のスチレン対無水マレイン酸単量体単位(すなわち、ブロック状共重合体)を含む。重合体は、樹脂として加水分解されたナトリウム塩の形態で供給される。
(脂質)
Em930は、比較実施例1において記述した通りであった。
【0164】
(結果)
下記の表10は、実験の結果を要約する。
【表10】

【0165】
表10のデータは、SMA2000、SMA3000(それぞれ加水分解された形態)及びSMA3000HNaが、例示的な脂質Em930と組み合わせたときに、透明かつ無色の水溶液を生成することができ、その溶液は、pH 7にて安定であることを示している。SMA4000HNaは、重合体が溶液から沈殿してしまうので、pH 7にてEm930を可溶化しないが、これは、これ以上のpHにてEm930を可溶化できる。
【0166】
(実施例3-補足)
生理学的pHでのスチレン対マレイン酸の比の範囲での、本発明に従った混合物の能力の定量的比較のために、代表試料を実施例3にて説明した一般的手順に従って調製し、濁度計(Hach-Lange製のNephla)を使用して調べた。濁度計は、使用前に2つの公知の標準物質(0及び40FNU)で較正した。
試料調製の最終工程(すなわち、生理学的pHへの調整)の後、試料をWhatman541濾紙で濾過して、濁度測定を妨げ得る任意の粗雑物を除去した。濾過直後に、最初の濁度測定を行った。混合物を最初の測定後に4℃にて貯蔵して、後の時点にて再び測定した。
【0167】
この補足実験に利用した成分の完全な記述は、実施例のいずれにおいても利用できる。
【表10a】

実施例3の補足実験の結果は、2:1又は3:1のスチレン対マレイン酸比をもつ共重合体が両方とも生理学的pH(すなわち、pH 7)にて安定な巨大分子集合物を生成できるという定量的証拠を提供する。
【0168】
(実施例4-本発明の組成物における共界面活性物質の使用)
上で証明したように、ブロック状スチレン/マレイン酸共重合体は、ある範囲の脂質と相互作用して巨大分子重合体/脂質複合体を形成することができる。示した実施例では光の通過に対する有意なレベルの妨げがなかったにも関わらず、しかしながら、溶液が光の通過を妨げることなく完全に透明であることを保証する手段として、共界面活性物質の添加を試験した。
【0169】
(方法)
共界面活性物質及び膜形成脂質の保存エマルションは、所望の終濃度の2倍に調製した。共界面活性物質を加熱(およそ50℃)及び撹拌しながら水に溶解した。次いで、脂質を添加し、続いて一様なエマルションが形成されるまで撹拌及び加熱を続けた。次いで、エマルションを10分間ホモジナイズした。
【0170】
それぞれの重合体の保存液は、所望の終濃度2.5%の2倍(すなわち、5%)に調製した。スチレン/無水マレイン酸として供給された重合体は、過剰な水酸化ナトリウムの存在下において2時間、水中で還流することによって加水分解した後に、反応が完了したことを保証するために4℃で48時間放置した。保存液は、加水分解された重合体を適当量の水と混合することによって調製した。
【0171】
次いで、重合体/脂質混合物を撹拌して、およそ50℃に加熱しながら等量の重合体溶液に滴状添加することによって脂質エマルションを調製した。
混合物のpHを調整して、巨大分子集合物が形成される臨界レベル、及び生じる透明かつ無色の溶液が生理学的pHにてそのままであるかどうかを決定した。
【0172】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
混合物を視覚的に調べて、重合体成分が脂質成分を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
【0173】
(重合体)
SMA3000HNaは、比較実施例4において記述した通りであった。
SMA4000HNaは、実施例3において記述した通りであった。
(脂質)
Em930は、比較実施例1において記述した通りであった。
(界面活性物質)
F127及びS LPCは、比較実施例1において記述した通りであった。
【0174】
(結果)
下記の表11は、実験の結果を要約する。
【表11】

少量の共界面活性物質(脂質成分のわずか1%に相当する)の使用は、組成物がpH 7にて安定な透明かつ無色の溶液を形成する能力を妨げない。これに反して、少量の共界面活性物質でさえ透明性に寄与し、「水のように」透明な溶液を提供した。
【0175】
(実施例4-補足)
共界面活性物質の存在しない混合物と共に共界面活性物質を含む本発明に従った混合物の能力の定量的な比較のために、代表試料を実施例4にて説明した一般的手順に従って調製し、濁度計(Hach-Lange製のNephla)を使用して調べた。濁度計は、使用前に2つの公知の標準物質(0及び40FNU)で較正した。
試料調製の最終工程(すなわち、生理学的pHへの調整)の後、試料をWhatman541濾紙で濾過して、濁度測定を妨げ得る任意の粗雑物を除去した。濾過直後に、最初の濁度測定を行った。混合物を最初の測定後に4℃にて貯蔵して、後の時点にて再び測定した。
【0176】
この補足実験に利用した成分の完全な記述は、実施例のいずれにおいても利用できる。
【表11a】

実施例4の補足実験の結果は、少量の共界面活性物質が本発明の組成物の透明性を促進し得ることの定量的証拠を提供している。
【0177】
(実施例5-例示的活性薬剤を可溶化するための本発明の組成物の使用)
上で証明したように、ブロック状スチレン/マレイン酸共重合体は、ある範囲の脂質と相互作用して巨大分子重合体/脂質複合体を形成することができる。このような重合体/脂質複合体は、乏しい水溶解度を有する活性薬剤の可溶化に有用であると期待されてもよい。従って、本発明に従った組成物を、乏しい水溶解度を有する例示的活性薬剤のある範囲で試験して、化粧品及び医薬品の分野における組成物の潜在的用途を例証した。
【0178】
(方法)
共界面活性物質及び膜形成脂質の保存エマルションは、所望の終濃度の2倍に調製した。共界面活性物質を加熱(およそ50℃)及び撹拌しながら水に溶解した。次いで、脂質を添加し、続いて一様なエマルションが形成されるまで撹拌及び加熱を続けた。次いで、エマルションを10分間ホモジナイズした。およそ50℃に再加熱した後、活性成分を、一様なエマルションが形成されるまで、撹拌しながらゆっくり添加した。次いで、最終的なエマルションを更にホ10分間ホモジナイズした。
【0179】
それぞれの重合体の保存液は、所望の終濃度2.5%の2倍(すなわち、5%)に調製した。スチレン/無水マレイン酸として供給された重合体は、過剰な水酸化ナトリウムの存在下において2時間、水中で還流することによって加水分解した後に、反応が完了したことを保証するために4℃で48時間放置した。保存液は、加水分解された重合体を適当量の水と混合することによって調製した。
【0180】
次いで、重合体/脂質混合物を撹拌して、およそ50℃に加熱しながら等量の重合体溶液に滴状添加することによって脂質エマルションを調製した。
混合物のpHを調整して、巨大分子集合物が形成される臨界レベル、及び生じる透明かつ無色の溶液が生理学的pHにてそのままであるかどうかを決定した。
【0181】
この実験において特定される割合値は、組成物の総重量の比率としての問われる成分の重量をいう。
混合物を視覚的に調べて、重合体成分及び界面活性物質成分が脂質成分を水性媒体に可溶化したかどうかを決定した。裸眼に有意な目に見える混濁がない場合、混合物の透明性は、透明であると分類したが、一方で、光の通過に有意な目に見える妨げがある場合、混合物は、濁っていると分類した。
更に、一定の実施例では、凍結乾燥し、次いで水中に再構成し(撹拌及び暖めながら)、巨大分子集合物がこれらの取扱い条件下で安定なままであるかどうかを決定した。再構成後、溶液を再び透明性について試験した。
【0182】
(重合体)
SMA3000HNaは、比較実施例4において記述した通りであった。
SMA2000Pは、実施例3において記述した通りであった。
SMA3000Pは、実施例1において記述した通りであった。
【0183】
(脂質)
脂質90H、Pro H及びEm930は、比較実施例1において記述した通りであった。
(界面活性物質)
F127及びS LPCは、比較実施例1において記述した通りであった。
【0184】
(活性薬剤)
TECAは、比較実施例2において記述した通りであった。
アセチルヘキサペプチド3としても知られるアルギレリン(登録商標)(Argir)は、Lipotec SA(Spain)から入手可能である。
L-アスコルビルパルミタート(Asc-P)は、ビタミンモノパルミタート誘導体(CAS Ref 137-66-6)である。これは、DSM(Switzerland)から入手可能である。
【0185】
ニッコール(Nikkol)CP(CP)は、ビタミンCジパルミタート誘導体(CAS Ref 28474-90-0)である。CPは、Nikko Chemicals Co Ltd(Japan)から入手可能である。
Nikkol VC-IP(VC-IP)は、ビタミンCテトラパルミタート誘導体(CAS Ref 183476-82-6)である。VC-IPは、Nikko Chemicals Co Ltd(Japan)から入手可能である。
【0186】
アジチコシド(Asi)は、アジア酸のグリコシドの誘導体である。これは、95%の純度にて利用され、Roche Nicholas Laboratory SA-Serdex Division(France)、現在ではBayer Sante Familialeから入手可能である。
β-カロテン(β-Car)は、プロビタミンAであり、DSM Nutritional Products Ltd.により、30% FS等級(油として)として供給される。CAS Ref 7235-40-7。
【0187】
セラミドIIIA(Cera)は、Degussa/GoldschmidtAG(Germany)によって供給された。
コレステロール(Chol)、CAS Ref 57-88-5は、>95%のBP/Ph Eur等級にて使用した。Cholは、Merck KGaAから入手可能である。
【0188】
マトリキシル(商標)(Mat)は、パルミチル-KTTKSである。これは、ゲルとして利用され、120ppmのペプチドを含み、Sederma SAS(France)から入手可能である。
パルミチン酸レチノール(Ret-P)は、ビタミンAパルミタート、CAS Ref 79-81-2である。Ret-Pは、1グラムあたり1,700,000IUにて、DSM(Switzerland)によって供給された。
【0189】
(結果)
下記の表12は、実験の結果を要約する。
【表12】



【0190】
重合体又は脂質組成の範囲に基づいた本発明の組成物は、乏しい水溶性を有する活性薬剤を可溶化し、生理学的pHにて安定な透明かつ無色の水溶液を形成する強力な能力を示す。例えば、例示的な活性薬剤TECAは、総乾燥重量のおよそ18.5%(脂質重量の80%)に相当する0.8%にて可溶化した。比較実施例2では、4つの共通の界面活性物質であるSDS、Mackanate、F 127、LPCのいずれも、これらの界面活性物質が有し得るその他のいずれの潜在的問題とも無関係に、総乾燥重量の9.1%にてTECAを可溶化できなかったことを示した。
【0191】
この時に、上に一覧を示したものよりも高い活性物質の濃度は試験しなかった。従って、活性薬剤のいくつかは、示されたものよりも高いレベルにて本発明の組成物によって可溶化されるかもしれないという可能性が存在する。
凍結乾燥されたこれらの試料のうち、全てが凍結乾燥前と同じ濃度にて水に容易に再構成した。加工の際のこの安定性は、市販への応用において価値があり、凍結乾燥させた製剤の移動により、輸送及び取扱いコストが有意に減少するであろう。
【0192】
凍結乾燥させた組成物を含むSMA3000P(加水分解された形態)、90H、F127及びTECAの再構成(表12において†で示す)は、30%の総重量の濃度(すなわち、最終的な水溶液において、全体的に5.5%濃度の活性物質)にて良好であった。この知見は、様々な濃度の製剤が単一の凍結乾燥された保存品から調製され得ることを示す。
【0193】
(実施例5-補足)
乏しい水溶解度を有する例示的な活性薬剤の範囲に対する可溶化剤としての本発明の組成物の能力の定量的証明のために、代表試料を実施例5にて説明した一般的手順に従って調製し、濁度計(Hach-Lange製のNephla)を使用して調べた。濁度計は、使用前に2つの公知の標準物質(0及び40FNU)で較正した。
試料調製の最終工程(すなわち、生理学的pHへの調整)の後、試料をWhatman541濾紙で濾過して、濁度測定を妨げ得る任意の粗雑物を除去した。濾過直後に、最初の濁度測定を行った。混合物を最初の測定後に4℃にて貯蔵して、後の時点にて再び測定した。
【0194】
この補足実験に利用した成分の完全な記述は、実施例のいずれにおいても利用できる。その他の活性薬剤には、以下を含む:
Sanofi Aventis Pharma SA(France)によって供給されるヒドロコルチゾン(HC)Ph.Eur./USP/JP等級。CAS 50-23-7。
【0195】
Farmabios S.p.A(Italy)によって供給されるプロピオン酸クロベタゾール微粒子型(Clo. P)bp/USP等級。CAS 25122-46-7。
Sanofi Aventis Pharma SA(France)によって供給されるデキサメサゾン(DEX)Ph.Eur./USP/JP。CAS 50-02-2。
【0196】
Sigma-Aldrich(UK)によって供給される酪酸クロベタゾン(clo. But.)。CAS 25122-57-0。
Sigma-Aldrich(UK)によって供給される酪酸ヒドロコルチゾン(HC But.)ヒドロコルチゾン17-ブチラート。CAS 13609-67-1。
【0197】
Sanofi Aventis Pharma SA(France)によって供給される酢酸デキサメタゾン無水物(DEX A.A.)Ph.Eur./USP等級。
Sanofi Aventis Pharma SA(France)によって供給される酢酸コルチゾン微粒子型(Cort.A.)Ph.Eur./USP/JP等級。
【0198】
Sanofi Aventis Pharma SA(France)によって供給される酢酸ヒドロコルチゾン微粒子型(HC A)Ph.Eur./USP/JP等級。
Rona, Merck KGaA.(Germany)によって供給されるユウソレクス(Eusolex)2292(オクチルメトキシシニマート)。CAS 5466-77-3。
【0199】
Merck KGaA(Germany)によって供給されるユウソレクス4360(ベンゾフェノン-3)。CAS 131-57-7。
Sabinsa Corp.(U.S.A)によって供給されるダイズ(Glycine Soja)のダイズイソフラボン50% CG(Soy Iso.)抽出物。
【0200】
Sabinsa Corp.(U.S.A)によって供給されるメリッサ・オフィイナリス(Melissa officinalis)の90% ロスマリン酸(Ros. Acid)抽出物。CAS 84604-14-8。
Sabinsa Corp.(U.S.A)によって供給されるリコライス CG、カンゾウ(Glycyrrhiza glabra)の抽出物。CAS 84775-66-6。
【0201】
Sabinsa Corp.(U.S.A)によって供給される茶(Camellia sinensis)(エピガロカテキン)の緑茶CG抽出物。CAS 84650-60-2。
Flamma S.p.A(Italy)によって供給されるMinoxidil。CAS 38304-91-5。
SM Biomed Sdn Bhd.(Malaysia)によって供給される硫酸エリスロマイシン(Erythro.)。CAS 114-07-8。
【0202】
Leshan Sanjiu-LongMarch Pharmarceuticals Co.,Ltd.(China)によって供給される硫酸ネオマイシン(Neo. Sulphate)。CAS 1405-10-3。
Nicholas Piramal India Limited(India)によって供給されるケタコナゾール(Ketaconazole)(Keta.)Ph. Eur等級。CAS 65277-42-1。
【0203】
Merck KGaA(Germany)によって供給されるPABA(特別に純粋な4-アミノ安息香酸)USP。CAS 150-13-0。
Sabinsa Corp.(U.S.A)によって供給されるボスウェリア・サッラータ(Boswellia serrata)のボスウェリン(Boswellin)(登録商標)CG抽出物。CAS 97952-72-2。
MMP Inc.(U.S.A)によって供給されるコレステロール硫酸カリウム(Chol. Sulphate)。CAS 6614-96-6。
【0204】
MMP Inc.(U.S.A)によって供給される7-デヒドロコレステロール(7-DHC)、プロビタミンD3。CAS 000434-16-2。
SNP Natural products Pty Ltd.(Australia)によって供給されるメラロイコール(Melal.) テルピネン-4-オール。CAS 562-74-3。
【0205】
Sabinsa Corp.(U.S.A)によって供給されるケンフェリア・ガランガ(Kaempferia galanga)のガランガ(Galanga)(98%のエチル-p-メトキシシアナート)抽出物。CAS 99880-64-5。
Sabinsa Corp.(U. S.A)によって供給されるピペル・ニグラム(Piper nigrum)のコスモペリン(登録商標)(Cosm.)(テトラヒドロピペリン)抽出物。
【0206】
Maruzen Pharmaceuticals Co. Ltd.(Japan)によって供給されるグリシルリザ・インフラタ(Glycyrrhiza inflata)のP-U.(ポリオール可溶性カンゾウ抽出物)抽出物。
Maruzen Pharmaceuticals Co. Ltd.(Japan)によって供給されるグリシルリザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)のPT-40(ポリオール可溶性カンゾウ抽出物P-T(40))抽出物。CAS 84775-66-6。
【0207】
Degussa Care Specialities. Cosmoferm B.V.(Netherlands)によって供給されるセラミドIIIB(Cera. IIIB)。
Antibiotice S.A.(Romania)によって供給されるニスタチンBP/Eur.Ph.等級。CAS 1400-61-9。
Induchem(Switzerland)によって供給されるユニソール(Unisol)S-22(樟脳3-ベンジリデン)。CAS 15087-24-8。
【0208】
Unifect(UK)によって供給されるアボベンゼン(Avobenzene)。CAS 70356-09-1。
Farchemia S.R.L.(Italy)によって供給されるクロトリマゾール(Clot.)USP/Ph.Eur.等級。CAS 23593-75-1。
Sederma S.A.S(France)によって供給されるセラミドH03(Cera. H03)。CAS 131276-37-4。
【0209】
Quest International(UK)によって供給されるクエスティス(Questice)CQ U/A(メンチルPCA)。CAS 68127-22-0。
Arriva Fragrances(UK)によって供給されるユニセックスブーケ(AFL-3607/A)。
Arriva Fragrances(UK)によって供給されるアプリコサル(AFL-3607/E)。
【0210】
Arriva Fragrances(UK)によって供給されるフージェール(Fougere)(AFL-3607/D)。
Arriva Fragrances(UK)によって供給されるペパーミントオイル(Pep-mint Oil)(AFL-3607/C)。
Whyte Chemicals Ltd.(UK)によって供給されるNDGA(ノルジヒドログアヤレト酸)。CAS 500-38-9。
Merck KGaA(Germany)によって供給されるビタミンD3(コレカルシフェロール)Ph.Eur/BP/USP等級。CAS 67-97-0。
【0211】
Breckland Scientific Supplies(UK)によって供給されるカフェイン研究室試薬等級。CAS 58-08-2。
Cognis Iberia s.l(Spain)によって供給されるウルティカ・ディオイカ(Urtica dioica)のヘルバリア・ネットル(Herbalia Nettle)抽出物。
Cognis Iberia s.l(Spain)によって供給されるトチノキ(Aesculus hippocastanum)のセイヨウトチノキ(Horse Chestnut)抽出物。
【0212】
Cognis Iberia s. l(Spain)によって供給されるイチョウ(Ginkgo biloba)のイチョウ(Ginkgo)(Herbalia Ginkgo CG)抽出物。
Linnea SA(Switzerland)によって供給されるイチョウ(Ginkgo biloba)のGSF(Ginkgo Biloba Extract G320)抽出物。
【0213】
Linnea SA(Switzerland)によって供給されるイチョウ(Ginkgo biloba)のG38(Ginkgo Biloba Extract G328)抽出物。
Clariant UK Ltd.(UK)によって供給されるオクトピロクス(Octopirox)(ピロクトンオラミン(Piroctone olamine))。CAS 68890-66-4。
【0214】
(結果)
下記の表12aは、実験の結果を要約する。
【表12a】



【0215】
(実施例6-コラーゲン刺激薬を含む製剤)
化粧品製剤における本発明の重合体/脂質巨大分子集合物の使用を例示するために、本発明の組成物を、コラーゲン刺激薬TECAを可溶化するために使用し、保存剤及び粘度調整剤と混合した。
(方法)
共界面活性物質、膜形成脂質及び活性薬剤の保存エマルションは、所望の終濃度の2倍にて調製した。共界面活性物質は、加熱(およそ50℃)及び撹拌しながら水に溶解した。次いで、脂質を添加し、続いて一様なエマルションが形成されるまで撹拌及び加熱を続けた。エマルションは、次いで、エマルションを10分間ホモジナイズした。およそ50℃に再加熱した後、活性成分を、一様なエマルションが形成されるまで撹拌しながらゆっくりと添加した。次いで、最終エマルションを更に10分間ホモジナイズした。
【0216】
それぞれの重合体の保存液は、所望の終濃度2.5%の2倍(すなわち、5%)に調製した。スチレン/無水マレイン酸として供給された重合体は、過剰な水酸化ナトリウムの存在下において2時間、水中で還流することによって加水分解した後に、反応が完了したことを保証するために4℃で48時間放置した。保存液は、加水分解された重合体を適当量の水と混合することによって調製した。
次いで、重合体/脂質混合物を撹拌して、およそ50℃に加熱しながら等量の重合体溶液に滴状添加することによって脂質エマルションを調製した。
【0217】
次いで、保存液を溶液に添加し、pHを調製した。生じる溶液を溶液Aと呼び、その組成を表13に要約した。
【表13】

【0218】
キサンガム及びカルボポールを水と混合し、一様なゲルが形成されるまで撹拌した。pHを7に調製した。生じる溶液を、溶液Bと呼び、その組成を表14に要約した。
【表14】

【0219】
次いで、溶液A及び溶液Bを等量で混合して最終製剤を生成した。
(重合体)
SMA3000Pは、実施例1において記述した通りであった。
(脂質)
90Hは、比較実施例1において記述した通りであった。
(界面活性物質)
S LPCは、比較実施例1において記述した通りであった。
【0220】
(活性薬剤)
TECAは、比較実施例2において記述した通りであった。
(保存剤)
フェノニプ(Phenonip)は、Clariant UK Ltdから入手可能であり、2-フェノキシエタノール及びその他の薬剤(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン及びイソブチルパラベン)の混合物である。それを、純度60〜80%の液体として利用した。
【0221】
(粘度調整剤)
ケルデント(Keldent)(登録商標)は、キサンガムであり、CP Kelco(UK)から粉末形態で入手可能である。CAS ref 11138-66-2。
カルボポール(登録商標)980NFは、アリルスクロースで架橋されたアクリル酸の重合体であり、粉末形態でNoveon Inc/Surfachem Group Ltd(UK)から入手可能である。
【0222】
(結果)
乏しい水溶性を有する活性薬剤TECAの化粧品製剤は、pH 7にて透明かつ無色の水性ゲル中で良好に調製された。
【0223】
(実施例7-抗酸化剤の化粧品製剤)
化粧品製剤における本発明の重合体/脂質巨大分子集合物の使用を例証するために、本発明の組成物を、抗酸化剤ビタミンC誘導体Asc-Pを可溶化するために使用し、保存剤及び粘度調整剤と混合した。
(方法)
共界面活性物質、膜形成脂質及び活性薬剤の保存エマルションは、所望の終濃度の2倍にて調製した。共界面活性物質は、加熱(およそ50℃)及び撹拌しながら水に溶解した。次いで、脂質を添加し、続いて一様なエマルションが形成されるまで撹拌及び加熱を続けた。エマルションは、次いで、エマルションを10分間ホモジナイズした。およそ50℃に再加熱した後、活性成分を、一様なエマルションが形成されるまで撹拌しながらゆっくりと添加した。次いで、最終エマルションを更に10分間ホモジナイズした。
【0224】
それぞれの重合体の保存液は、所望の終濃度2.5%の2倍(すなわち、5%)に調製した。スチレン/無水マレイン酸として供給された重合体は、過剰な水酸化ナトリウムの存在下において2時間、水中で還流することによって加水分解した後に、反応が完了したことを保証するために4℃で48時間放置した。保存液は、加水分解された重合体を適当量の水と混合することによって調製した。
次いで、重合体/脂質混合物を撹拌して、およそ50℃に加熱しながら等量の重合体溶液に滴状添加することによって脂質エマルションを調製した。
【0225】
次いで、保存液を溶液に添加し、pHを調製した。生じる溶液を溶液Aと呼び、その組成を表15に要約した。
【表15】

【0226】
キサンガム及びカルボポールを水と混合し、一様なゲルが形成されるまで撹拌した。pHを7に調製した。生じる溶液を、溶液Bと呼び、その組成を表16に要約した。
【表16】

【0227】
次いで、溶液A及び溶液Bを等量で混合して最終製剤を生成した。
(重合体)
SMA3000Pは、実施例1において記述した通りであった。
(脂質)
90Hは、比較実施例1において記述した通りであった。
【0228】
(界面活性物質)
S LPCは、比較実施例1において記述した通りであった。
(活性薬剤)
Asc-Pは、実施例5において記述した通りであった。
【0229】
(保存剤)
フェノニプは、実施例6において記述した通りであった。
(粘度調整剤)
ケルデント(登録商標)及びカルボポール980NFは、実施例6において記述した通りであった。
【0230】
(結果)
乏しい水溶性を有する活性薬剤Asc-Pの化粧品製剤は、pH 7にて透明かつ無色の水性ゲル中で良好に調製された。
【0231】
(実施例8-構造解析のための本発明の組成物へのPagPの組み込み)
沈殿したPagP(Hwang P.M. et al. Proc. Nat Acad. Sci. USA 2002 99(21):13560-1 3565による以前に公開されたプロトコルに従って発現し、沈殿として調製した)を0.5 mMの終濃度を与えるように5%のSDSに溶解し、SDSを除去するために50mMリン酸ナトリウム(pH 6)に対して5日間、透析した(3500Daの分子量カットオフ)。β-オクチルグルコピラノシド(β-OG)をゆっくりと添加して、100mMの終濃度を与え、次いでエタノールを1%に添加した。試料(およそ0.5 mM PagPにて約3ml)を50 mM Tris.HCI(pH 8)、200 mM NaCl及び100 mMβ-OG中の2% DMPC(w/w)の10mlの溶液に添加した。β-OGを、Biobeads(Bio-Rad)を使用して2時間にわたって除去し、不透明な溶液を得た。その後、10mlの重合体溶液(実施例1に記述されているように、加水分解したSMA3000P)を重量の5%の濃度にて1:1の比(v/v)で添加し、室温で5分間放置して、巨大分子集合物を形成させた。溶液を濾過し(0.22μm)、次いで標準的なニッケルアフィニティークロマトグラフィー法を使用して精製した。カラム画分を、SDS/PAGEを使用することによって純度について評価した。最も純粋な画分をプールして、次いでサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製した。
タンパク質高次構造の解析は、遠紫外線円二色性(FarUV CD)及びフーリエ変換赤外分光法(FTI R)を使用して行った。
【0232】
(実施例9-構造解析のための、本発明の組成物へのバクテリオロドプシンの組み込み)
好塩菌(Halobacterium halobium)由来の凍結乾燥バクテリオロドプシン紫膜(8 mg、Sigma Ltd.)を1mlの50 mM Tris.HCI(pH 8.0)、200mM NaCl及び2% DMPC(w/w)に懸濁し、次いでプローブ超音波処理によって膜に組み込んだ。重合体(実施例1に記述されているように、加水分解したSMA3000P)を重量の5%の濃度にて1:1の比(v/v)で添加し、室温で5分間放置して、巨大分子集合物を形成させた。溶液を濾過し(0.22μm)、次いでサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製した。
高次構造の解析は、FarUV CD、可視CD及びFTIRを使用して行った。
【0233】
(実施例10-構造解析のための本発明の組成物へのグラミシジンの組み込み)
ブレビス菌(Bacilus Brevis)由来の凍結乾燥グラミシジンA(Sigma Ltd.)を20 mg/mlの終濃度に100%のエタノールに可溶化した。次いで、溶液(80μl)を50 mM Tris.HCI(pH 8)及び200 mM NaCl中の重量の3.5%のDMPC/重合体巨大分子集合物溶液(1:2.5 脂質:加水分解したSMA3000Pの比)(920μl)にゆっくりと添加した。試料を65℃にて10分間加熱し、次いで遠心分離(16000×g)して組み込まれなかった材料を除去して、最後にサイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製した。
高次構造の解析は、FarUV CDによって行った。
【0234】
(実施例11-巨大分子集合物の皮膚への経皮吸収を決定するための提唱される方法)
(a)マーカー薬剤を使用する
マーカー薬剤をも組み込む本発明の巨大分子集合物は、すでに述べた組成物と同様に調製されるであろう。マーカー薬剤には、通常光の下で目に見える色素(例えば、D & C Red No.27、2',4',5',7'-テトラブロモ-4,5,6,7-テトラクロロフルオレッセインとしても公知)又は紫外線下で目に見える蛍光マーカーがあり得る。これらのいずれも、本発明の巨大分子集合物の非存在下において水性溶媒に対して乏しい溶解性を有するであろう。放射性標識薬剤などのその他のマーカーも可能であるが、あまり望ましくない。
【0235】
マーカーを含む巨大分子集合物の水性製剤を、吸収を生じさせる皮膚試料に対して、吸収を生じさせる期間適用させる。次いで、吸収量の解析の前に、過剰な水性製剤を皮膚表面から除去する。次いで、吸収量を問題のマーカーに適した手段を使用して測定する。例えば、通常光の下で目に見えるマーカーにより、マーカーに特徴的な波長用の市販の検出器を使用するか、又は吸収領域を撮影して、従来の画像解析手段を使用して写真を解析することによって定量化してもよい。
吸収深度は、皮膚層を除去する皮膚ストリッピング技術を使用することにより、及びそれぞれの層における吸収の程度を解析することにより調査することができる。
【0236】
(b)局所的又は全身的生理反応の測定による
乏しい水溶性を有する活性薬剤をも組み込む本発明の巨大分子集合物は、すでに述べた組成物と同様に調製される。薬剤は、検出可能かつ定量化可能な生理反応を引き起こすであろう(例えば、血管拡張薬は、局所的に皮膚発赤を増大させる傾向があり、及び血圧に全身的影響を及ぼすことができ、ステロイドは、ブランチングを引き起こす局部的血管収縮を生じさせることができる)。
【0237】
活性薬剤を含む巨大分子集合物の水性製剤を、吸収を生じさせる皮膚試料に対して、吸収を生じさせる期間適用させる。次いで、過剰な水性調製を吸収の効果の解析の前に、皮膚表面から除去する。次いで、吸収の効果を問題の薬剤に適した手段を使用して測定する。例えば、皮膚の赤化/ブランチングは、市販の検出器を使用するか、又は吸収領域を撮影して、従来の画像解析手段を使用して写真を解析することによって定量化することができ、血圧の変化或いは血液中の活性薬剤の濃度変化などの全身的効果は、当業者に公知の従来の手段によって測定することができる。
【0238】
特許及び特許出願を含む本出願において言及した全ての参照文献は、参照により可能な範囲で最も完全に本明細書に援用される。
明細書及び添付の特許請求の範囲の全体にわたって、状況により他に要求されない限り、「含む」及び「含む」及び「含むこと」などの変形は、言及した整数、工程、整数群又は工程群を意味することだけでなく、その他の整数、工程、整数群又は工程群を除外しないことが理解されるであろう。
本出願の特許請求の範囲は、本明細書に記述されたいかなる特色又は特色の組み合わせに向けられてよい。これらは、製品、組成物、方法又は使用の請求項の形態であってもよく、例証として、及び限定することなく、添付の特許請求の範囲を含み得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質とスチレン及びマレイン酸の共重合体とを含む組成物であって、前記スチレン及びマレイン酸の共重合体は、交互ではなく、かつ前記重合体及び脂質は、巨大分子集合体の形態である、前記組成物。
【請求項2】
脂質とスチレン及びマレイン酸の共重合体とを含む組成物であって、スチレン対マレイン酸単量体単位の比は、1:1よりも大きく、前記重合体及び脂質は、巨大分子集合体の形態である、前記組成物。
【請求項3】
前記スチレン対マレイン酸単量体単位の比が1.2:1よりも大きい、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記スチレン対マレイン酸単量体単位の比が1.5:1よりも大きい、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記スチレン対マレイン酸単量体単位の比が2.5:1よりも大きい、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記スチレン対マレイン酸単量体単位の比が4.5:1よりも少ない、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記スチレン対マレイン酸単量体単位の比が3.5:1よりも少ない、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記スチレン対マレイン酸単量体単位の比が約4:1である、請求項4記載の組成物。
【請求項9】
前記スチレン対マレイン酸単量体単位の比が約3:1である、請求項4記載の組成物。
【請求項10】
前記スチレン対マレイン酸単量体単位の比が約2:1である、請求項4記載の組成物。
【請求項11】
前記スチレン及びマレイン酸の共重合体が500,000のダルトン未満の平均分子量を有する、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
前記スチレン及びマレイン酸の共重合体が150,000ダルトン未満の平均分子量を有する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記スチレン及びマレイン酸の共重合体が50,000ダルトン未満の平均分子量を有する、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記スチレン及びマレイン酸の共重合体が20,000ダルトン未満の平均分子量を有する、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記スチレン及びマレイン酸の共重合体が4,500〜12,000の範囲の平均分子量及び約2:1、3:1又は4:1のスチレン対マレイン酸の比を有する、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項16】
前記重合体及び脂質巨大分子集合体が5.0〜7.5の間のpHにて水溶液中で安定である、請求項1〜15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
前記重合体及び脂質巨大分子集合体が5.5〜7.5の間のpHにて水溶液中で安定である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記重合体及び脂質巨大分子集合体が6.5〜7.5の間のpHにて水溶液中で安定である、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記重合体及び脂質巨大分子集合体が7.1〜7.8の間のpHにて水溶液中で安定である、請求項I又は2記載の組成物。
【請求項20】
前記重合体及び脂質巨大分子集合体が7.3〜7.6の間のpHにて水溶液中で安定である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記脂質が単一の純粋成分である、請求項1〜20のいずれか1項記載の組成物。
【請求項22】
前記単一の純粋成分がホスファチジルコリンである、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
前記ホスファチジルコリンがDLPC、DMPC、DPPC又はDSPCである、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
前記ホスファチジルコリンがDPPCである、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
前記ホスファチジルコリンがDMPCである、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
前記ホスファチジルコリンがDLPCである、請求項23記載の組成物。
【請求項27】
前記単一の純粋成分がホスファチジルグリセロールである、請求項21記載の組成物。
【請求項28】
前記ホスファチジルグリセロールがDPPGである、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
前記脂質が成分の混合物である、請求項1〜20のいずれか1項記載の組成物。
【請求項30】
前記脂質が保存されたアシル鎖長を有する脂質混合物である、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
前記保存されたアシル鎖長が12、14、16、又は18炭素原子の長さである、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
前記保存されたアシル鎖長が12〜16炭素原子の長さである、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
前記脂質が重量において少なくとも50%の単一頭部基型所有リン脂質を含む脂質混合物である、請求項29記載の組成物。
【請求項34】
前記脂質が重量において少なくとも75%の単一頭部基型所有リン脂質を含む脂質混合物である、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
前記脂質が重量において少なくとも90%の単一頭部基型所有リン脂質を含む脂質混合物である、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
前記単一頭部基型がホスファチジルコリンである、請求項33〜35のいずれか1項記載の組成物。
【請求項37】
前記脂質が天然起源の脂質抽出物である、請求項29〜36のいずれか1項記載の組成物。
【請求項38】
前記脂質抽出物が卵に由来する、請求項37記載の組成物。
【請求項39】
前記脂質抽出物がダイズに由来する、請求項37記載の組成物。
【請求項40】
前記脂質抽出物が、重量において、少なくとも92%のホスファチジルコリン、最大3%のリゾホスファチジルコリン及び最大2 %の油を含み;そのうちのアシル鎖の14〜20%がパルミチル、3〜5%がステアリル、8〜12%がオレイン酸、62〜66%がリノール酸、及び6〜8%がリノレン酸である、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
前記脂質抽出物が:重量において、少なくとも90%の水素付加されたホスファチジルコリン、最大4%の水素付加されたリゾホスファチジルコリン及び最大2%の油及びトリグリセリドを含み;そのうちのアシル鎖の少なくとも80%がステアリルであり、かつ少なくとも10%がパルミチルである、請求項39記載の組成物。
【請求項42】
前記脂質に対する共重合体の比が重量基準で1:2よりも大きい、請求項1〜41のいずれか1項記載の組成物。
【請求項43】
前記脂質に対する共重合体の比が重量基準で1:1よりも大きい、請求項42記載の組成物。
【請求項44】
前記脂質に対する共重合体の比が重量基準で約1.5:1である、請求項43記載の組成物。
【請求項45】
前記脂質に対する共重合体の比が重量基準で約2.5:1である、請求項43記載の組成物。
【請求項46】
共界面活性物質を更に含む、請求項1〜45のいずれか1項記載の組成物。
【請求項47】
共界面活性物質が組成物の脂質の重量の0.1〜5%に相当する量で添加される、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
共界面活性物質が組成物の脂質の重量の0.5〜2.5%に相当する量で添加される、請求項47記載の組成物。
【請求項49】
共界面活性物質が組成物の脂質の重量の0.75〜1.5%に相当する量で添加される、請求項48記載の組成物。
【請求項50】
共界面活性物質が組成物の脂質の重量の約1%に相当する量で添加される、請求項49記載の組成物。
【請求項51】
前記共界面活性物質がプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドのブロック共重合体である、請求項46〜50のいずれか1項記載の組成物。
【請求項52】
前記共界面活性物質がリゾホスファチジルコリンである、請求項46〜50のいずれか1項記載の組成物。
【請求項53】
前記巨大分子集合体が直径100nm未満である、請求項1〜52のいずれか1項記載の組成。
【請求項54】
前記巨大分子集合体が直径50nm未満である、請求項53記載の組成物。
【請求項55】
前記巨大分子集合体が直径25nm未満である、請求項54記載の組成物。
【請求項56】
凍結乾燥された形態である、請求項1〜55のいずれか1項記載の組成物。
【請求項57】
請求項1〜55のいずれか1項記載の組成物を含む水溶液。
【請求項58】
重量において0.001〜10%の請求項1〜55のいずれか1項記載の組成物を含む、請求項57記載の水溶液。
【請求項59】
重量において10〜20%の請求項1〜55のいずれか1項記載の組成物を含む、請求項57記載の水溶液。
【請求項60】
重量において、20%を超える請求項1〜55のいずれか1項記載の組成物を含む、求項57記載の水溶液。
【請求項61】
透明、かつ安定であり、及び5.0〜7.5の間のpHを有する、請求項57〜60のいずれか1項記載の水溶液。
【請求項62】
透明、かつ安定であり、及び5.5〜7.5の間のpHを有する、請求項61記載の水溶液。
【請求項63】
透明、かつ安定であり、及び6.5〜7.5の間のpHを有する、請求項62記載の水溶液。
【請求項64】
透明、かつ安定であり、及び7.1〜7.8の間のpHを有する、請求項57〜60のいずれか1項記載の水溶液。
【請求項65】
透明、かつ安定であり、及び7.3〜7.6の間のpHを有する、請求項64記載の水溶液。
【請求項66】
透明、かつ無色である、請求項57〜65のいずれか1項記載の水溶液。
【請求項67】
活性薬剤を更に含む、請求項1〜55のいずれか1項記載の組成物又は請求項57〜66のいずれか1項記載の水溶液を含む製剤。
【請求項68】
前記活性薬剤が脂溶性ビタミン又は脂溶性ビタミン誘導体である、請求項67記載の製剤。
【請求項69】
前記脂溶性ビタミン又は脂溶性ビタミン誘導体がアスコルビルパルミテート、アスコルビルテトライソパルミタート又はアスコルビルジパルミタートである、請求項68記載の製剤。
【請求項70】
前記活性薬剤がトリテルペノイド又はステロイド核を有する、請求項67記載の製剤。
【請求項71】
前記トリテルペノイドがセンテラ・アシアチカ(Centella asiatica)由来である、請求項70記載の製剤。
【請求項72】
前記活性薬剤が脂溶性ペプチドである、請求項67記載の製剤。
【請求項73】
前記脂溶性ペプチドがパルミチル-KTTKS又はアセチルヘキサペプチド-3である、請求項72記載の製剤。
【請求項74】
膜ペプチド又はタンパク質を更に含む、請求項1〜55のいずれか1項記載の組成物又は請求項57〜66のいずれか1項記載の水溶液を含む製剤。
【請求項75】
治療に使用するための、請求項1〜55のいずれか1項記載の組成物又は請求項67〜74のいずれか1項記載の製剤。
【請求項76】
化粧品として許容し得る担体又は賦形剤を更に含む、請求項67〜74のいずれか1項記載の製剤を含む化粧品製剤。
【請求項77】
保存剤を含む、請求項76記載の化粧品製剤。
【請求項78】
粘度調整剤を含む、請求項76又は77記載の化粧品製剤。
【請求項79】
医薬として許容し得る担体又は賦形剤を更に含む、請求項67〜74のいずれか1項記載の製剤を含む医薬品製剤。
【請求項80】
可溶性薬剤としての、請求項1〜55のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項81】
活性薬剤の可溶化のための、請求項80記載の使用。
【請求項82】
前記活性薬剤が脂溶性ビタミン又は脂溶性ビタミン誘導体である、請求項81記載の使用。
【請求項83】
前記活性薬剤がトリテルペノイド又はステロイド核を有する、請求項81記載の使用。
【請求項84】
前記活性薬剤が脂溶性ペプチドである、請求項81記載の使用。
【請求項85】
膜ペプチド又はタンパク質を可溶化する、請求項80記載の使用。
【請求項86】
化粧品製剤の製造における、スチレン対マレイン酸単量体単位の比が1:1より大きいスチレン及びマレイン酸の共重合体の使用。
【請求項87】
医薬品製剤の製造における、スチレン対マレイン酸単量体単位の比が1:1より大きいスチレン及びマレイン酸の共重合体の使用。
【請求項88】
以下の工程を含む請求項1〜56のいずれか1項記載の組成物の製造方法:
(i)スチレン及びマレイン酸の共重合体の水溶液を調製する工程であって、スチレン対マレイン酸単量体単位の比が1:1よりも大きい工程;
(ii)水性脂質エマルションを調製する工程;
(iii)共重合体の脂質エマルション及び水溶液を混合する工程;
(iv)必要に応じて、重合体/脂質巨大分子集合体を形成するように、混合物のpHを調整する工程;
(v)任意に水を除去する工程。
【請求項89】
以下の工程を含む請求項67〜74のいずれか1項記載の製剤の製造方法:
(i)スチレン及びマレイン酸の共重合体の水溶液を調製する工程であって、スチレン対マレイン酸単量体単位の比が1:1よりも大きい工程;
(ii)脂質及び活性薬剤の水性エマルションを調製する工程;
(iii)水性エマルション及び共重合体の水溶液を混合する工程;
(iv)必要に応じて、重合体/脂質巨大分子集合体を形成するように、混合物のpHを調整する工程;
(v)任意に水を除去する工程。
【請求項90】
脂質とスチレン及びマレイン酸の共重合体との巨大分子集合体の形成を含む、水溶液中で脂質を可溶化する方法であって、スチレン対マレイン酸単量体単位の比が1:1よりも大きい、前記方法。
【請求項91】
脂質と活性薬剤とスチレン及びマレイン酸の共重合体との巨大分子集合体の形成を含む、水溶液中で乏しい水溶解度を有する活性薬剤を可溶化する方法であって、スチレン対マレイン酸単量体単位の比が1:1よりも大きい、前記方法。
【請求項92】
請求項65〜74のいずれか1項記載の製剤の使用を含む美容治療方法。
【請求項93】
以下の工程を含む、候補薬剤を膜タンパク質又はペプチドとの相互作用についてのスクリーニング方法:
(i)膜タンパク質又はペプチドを脂質とスチレン及びマレイン酸の共重合体とを含む組成物に可溶化する工程であって、前記スチレン対マレイン酸単量体単位の比が1:1よりも大きく、前記重合体及び脂質が巨大分子集合体の形態である工程;
(ii)候補薬剤を、前記可溶化された膜タンパク質又はペプチドと相互作用するかどうかを決定するために試験する工程。

【公表番号】特表2008−542351(P2008−542351A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514207(P2008−514207)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050134
【国際公開番号】WO2006/129127
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507393311)マルベルン コスメセウチクス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】