説明

脆性物の破砕処理方法と破砕処理装置

【課題】
破砕処理物の高品質性・高い生産能力・作業性・経済性・汎用性などを満足させることのできる脆性物の破砕処理方法と破砕処理装置を提供する。
【解決手段】
縦型円筒状の処理容器21内に破砕形式の異なる二種以上の破砕エネルギを同期かつ上下に分布させて発生させる。しかも、処理容器21の内部を上位部と下位部とに区分した場合の上位部側の破砕エネルギとして水平回転破砕具41による大割り用水平回転破砕エネルギ・水平回転破砕具42による中割り用水平回転破砕エネルギ・水平回転破砕具43による小割り用水平回転破砕エネルギのうちの一つ以上を発生させるとともに下位部側の破砕エネルギとして固定擂潰具58と回転擂潰具52とによる擂り潰し用回転破砕エネルギを発生させる。容器入口22から処理容器21内に投入されて重力落下する脆性物が容器出口23に至るまでの間、上記二種以上の破砕エネルギを脆性物に与えて当該脆性物を破砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脆性物を破砕処理するための技術分野に属する方法と装置に関し、さらにいえば、不要脆性物・不良脆性物・廃棄脆性物などから有効利用できるものを再生するのに適した破砕処理方法と破砕処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不要品(不用品)や廃物を再生利用するための技術開発が、資源節約や環境汚染防止の観点から積極的に進められている。破壊に至るまでの変形能力が乏しい脆性物(硬脆性物も含む)なども、ゼロエミッション・リサイクル・リユースをはかるための研究などが盛んである。
【0003】
脆性物については周知のとおり、外力(または変形)が所定値まで達したとき急激に強度が低下して脆性破壊が起こるというものである。このような脆性物は多種多様でかなりの種類がある。脆性物のうちで廃棄処分に付されるものの多くは、貝殻・甲殻類の殻・卵殻・魚骨・動物骨・乾物・不要ガラス・不要瀬戸物・不要半導体・劣化コンクリート・土塊・粘土塊・風化岩・泥質岩・不良鉱物結晶などである。かかる脆性物も、たとえば破砕処理で粉粒体に加工したりした場合は、土木・建築・機械・農業・水処理・食品・薬品・鉱物資源など各種の分野で活用できる有価物になる。これらのうちにはすでに実用に供されているものもある。
【0004】
脆性物の破砕処理手段については、回転体のエネルギを破砕エネルギとして利用するものが処理能力の点で有望である。それは回転体を連続回転させるだけで脆性物の連続破砕処理が行えるからである。さらに回転式の破砕処理手段には縦型と横型がある。縦型のものは縦型の円筒容器内において、カッタ・ハンマ・ブレード・ロータなどの水平回転体が垂直回転軸の周りに放射状かつ上下複数段に取り付けられたものである。横型のものは横型の容器内において、カッタ・ハンマ・ブレード・ロータなどの垂直回転体が水平回転軸の周りに放射状かつ左右複数列に取り付けられたものである。両タイプのうちで、自重で垂直落下する脆性物を水平回転体でヒットする縦型のものは、被処理物に対する剪断作用が大きい。これに対し、垂直落下する脆性物を垂直回転体でヒットする横型のものは、被処理物に対する剪断作用が起こりがたい。したがって特別の事情がないかぎり、剪断作用の大きい縦型の回転式破砕処理手段を用いるのがよいといえる。
【0005】
縦型の回転式破砕処理技術の一つが特許文献1に開示されている。これは縦型破砕容器の中心部に設けられた縦型回転軸に多数の打撃鎖が放射状かつ多段に取付けられたものである。特許文献1の技術によるときは、多数かつ多段の打撃鎖を回転軸の高速回転で水平浮揚回転させた後、被破砕物を破砕容器の上部から容器内に投入し、それを各打撃鎖で打撃破砕する。この放射状かつ多段の打撃鎖で被破砕物を破砕するときは高い破砕効率が期待できるかのようである。けれども特許文献1の技術で脆性物を破砕するときは、破砕エネルギが脆性物とマッチングしないために微小で均一な破砕粒子を得るのが困難になる。ちなみに打撃鎖の破砕エネルギが大きすぎるときは脆性物が大小の破片に砕かれるために均一な破砕粒子が得られない。逆に打撃鎖の破砕エネルギが小さいときは脆性物が比較的大きい少数の破片に割れるだけであるので破砕粒子が得られない。これについては微細割りの困難な打撃鎖に大きな要因がある。各段における破砕作用が単調なことも脆性物の細やかな破砕を困難にしているといえる。
【0006】
一方で特許文献2に開示された破砕処理技術は、ケーシングの内部において、上部の供給口から下部の排出口にわたって破砕部が設けられた設けられたものである。しかもこの場合の破砕部は、供給口に近い粗引き回転刃とその下位に配列された放射状かつ多段のハンマーとを主体にして構成されている。したがってハンマーや刃物など異なる破砕器具を備えた当該文献技術では、その分だけ細やかな破砕が行える。しかしながら流動物質・塊状物質・繊維質などが混じり合った雑芥を破砕対象物にしている特許文献2の技術も、貝殻のような脆性物を粉粒体レベルまで破砕するときの技術的配慮に欠けるから、脆性物を効率よく均質に粉粒化するのが困難である。
【特許文献1】特開平06−246178号公報
【特許文献2】特開2003−275607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような技術課題に鑑み、破砕処理物の高品質性・高い生産能力・作業性・経済性・汎用性などを満足させることのできる脆性物の破砕処理方法と破砕処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る脆性物の破砕処理方法および本発明に係る脆性物の破砕処理装置は所期の目的を達成するために下記(01)〜(05)の課題解決手段を特徴とする。
(01) 上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器内を上位部と下位部とに区分した場合に、処理容器内の上位部には、水平回転破砕具による大割り用水平回転打撃破砕エネルギ・水平回転破砕具による中割り用水平回転打撃破砕エネルギ・水平回転破砕具による小割り用水平回転打撃破砕エネルギのうちから選ばれた一つ以上を発生させるとともに、これと同期して処理容器内の下位部には、固定擂潰具と回転擂潰具とによる擂り潰し用の回転擂潰破砕エネルギを発生させること、および、
容器入口から処理容器内の上位部に投入されて重力落下する脆性物が処理容器内の下位部に至るまでの間に、大割り用・中割り用・小割り用のうちの一つ以上の水平回転打撃破砕エネルギを脆性物に与えて当該脆性物を打撃破砕すること、および、
処理容器内の上位部で破砕された後の脆性物が処理容器内の下位部に落下してそこから容器出口に至るまでの間に、その脆性物を遠心方向へ下降傾斜する傾斜面沿いに落下させつつ、これに固定擂潰具と回転擂潰具とによる擂潰破砕エネルギを与えて当該脆性物を擂潰破砕すること
を特徴とする脆性物の破砕処理方法。
(02) 上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器内を上位部と下位部とに区分した場合に、処理容器内の上位部には、水平回転破砕具による大割り用水平回転打撃破砕エネルギ・水平回転破砕具による中割り用水平回転打撃破砕エネルギ・水平回転破砕具による小割り用水平回転打撃破砕エネルギのうちから選ばれた一つ以上を発生させるとともに、これと同期して処理容器内の下位部には、固定擂潰具と回転擂潰具とによる擂り潰し用の回転擂潰破砕エネルギを発生させること、および、
容器入口から処理容器内の上位部に投入されて重力落下する脆性物が処理容器内の下位部に至るまでの間に、大割り用・中割り用・小割り用のうちの一つ以上の水平回転打撃破砕エネルギを脆性物に与えて当該脆性物を打撃破砕すること、および、
処理容器内の上位部で破砕された後の脆性物が処理容器内の下位部に落下してそこから容器出口に至るまでの間に、その脆性物を水平面に沿う遠心方向へ拡散させつつ、これに固定擂潰具と回転擂潰具とによる擂潰破砕エネルギを与えて当該脆性物を擂潰破砕すること
を特徴とする脆性物の破砕処理方法。
(03) 上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器と、処理容器内の中心領域に配置された垂直な回転軸と、回転軸の周囲に二段以上の放射状に取り付けられた水平方向に長い打撃式の水平回転破砕具と、水平回転破砕具の段よりも下位のところに装備された擂り潰し機構と、回転軸に連結された回転駆動系の機械とで構成されていること、および、
打撃式水平回転破砕具の各段が脆性物大割り用水平回転破砕具と脆性物中割り用水平回転破砕具と脆性物小割り用水平回転破砕具とのうちから選択された二つ以上ものからなるとともに、被破砕物に対してより大きな割れを発生させる破砕具の段ほど処理容器内の上位側にあること、および、
擂り潰し機構が固定擂潰具と回転擂潰具との組み合わせからなるとともに、固定擂潰具の擂り潰し部と回転擂潰具の擂り潰し部とが互いに向き合って対応しており、かつ、互いに向き合う当該擂り潰し部が遠心方向に向けて下降していること
を特徴とする脆性物の破砕処理装置。
(04) 上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器と、処理容器内の中心領域に配置された垂直な回転軸と、回転軸の周囲に二段以上の放射状に取り付けられた水平方向に長い打撃式の水平回転破砕具と、水平回転破砕具の段よりも下位のところに装備された擂り潰し機構と、回転軸に連結された回転駆動系の機械とで構成されていること、および、
打撃式水平回転破砕具の各段が脆性物大割り用水平回転破砕具と脆性物中割り用水平回転破砕具と脆性物小割り用水平回転破砕具とのうちから選択された二つ以上ものからなるとともに、被破砕物に対してより大きな割れを発生させる破砕具の段ほど処理容器内の上位側にあること、および、
擂り潰し機構が固定擂潰具と回転擂潰具との組み合わせからなるとともに、固定擂潰具の擂り潰し部と回転擂潰具の擂り潰し部とが互いに向き合って対応しており、かつ、互いに向き合う当該擂り潰し部が水平であること
を特徴とする脆性物の破砕処理装置。
(05) 上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器と、処理容器内の中心領域に配置された垂直な回転軸と、回転軸の周囲に二段以上の放射状に取り付けられた水平方向に長い打撃式の水平回転破砕具と、水平回転破砕具の段よりも下位のところに装備された擂り潰し機構と、回転軸に連結された回転駆動系の機械とで構成されていること、および、
打撃式水平回転破砕具の各段が脆性物大割り用水平回転破砕具と脆性物中割り用水平回転破砕具と脆性物小割り用水平回転破砕具とのうちから選択された二つ以上ものからなるとともに、被破砕物に対してより大きな割れを発生させる破砕具の段ほど処理容器内の上位側にあること、および、
擂り潰し機構が固定擂潰具と回転擂潰具との組み合わせからなるとともに、固定擂潰具の擂り潰し部と回転擂潰具の擂り潰し部とが互いに向き合って対応しており、かつ、互いに向き合う当該擂り潰し部が垂直であること、および、
回転軸に取り付けられた平面円形の回転部材と該回転部材の外周部に分布する多数の擂潰突起とで回転擂潰具が構成されているとともに処理容器内の下部に設けられた平面円形の筒状壁と該筒状壁の内面に分布する多数の擂潰突起とで固定擂潰具が構成されており、回転擂潰具側の擂潰突起と固定擂潰具側の擂潰突起とが互いに向き合って食い違い自在に対応していること
を特徴とする脆性物の破砕処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る脆性物の破砕処理方法と破砕処理装置は、処理容器内を重力落下する脆性物についてこれを二種以上の破砕エネルギで破砕するものであるから、つぎのような効果が得られる。
(11) 各破砕エネルギは、水平回転破砕具による「大割り用水平回転破砕エネルギ」、水平回転破砕具による「中割り用水平回転破砕エネルギ」、水平回転破砕具による「小割り用水平回転破砕エネルギ」、固定擂潰具と回転擂潰具とによる「擂り潰し用回転破砕エネルギ」などから選択される二種以上のものである。かかる複数種の破砕エネルギを利用するときは脆性物をより細やかで粒の揃ったものに破砕することができる。したがって高品質の破砕処理物が歩留まりよく得られる。
(12) 各破砕エネルギによる破砕は、それぞれの破砕形式が異なるとはいえすべて回転力利用のものであるから、回転系部品を同期して連続回転させることにより脆性物の連続破砕が行える。したがって脆性物を破砕処理するときの生産能力が高い。
(13) 主たる作業は、回転系部品の回転で処理容器内に破砕エネルギを発生させたり、その処理容器内に脆性物を投入して重力落下させたりするだけである。したがって作業性がよく自動化も簡単に確立する。
(14) 各破砕エネルギは回転力を利用する点で共通のものであるから、その共通性に基づいて構成を簡潔化したり動力源を単一化したりすることができる。また、複数の破砕形式で脆性物を段階的に細粒化するものであるから、単一の破砕形式で一挙に細粒化する場合と比べ、破砕系の部品に対する負荷・負担・損耗なども軽減することができる。したがってイニシャルコスト・ランニングコスト・メンテナンスコストなどを含め、高品質の破砕処理物を得るときの経済性を維持することができる。
(15) 脆性物については、貝殻のような自然物からガラスや陶器のような人工物まで破砕処理することができる。したがって適用範囲が広く汎用性がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る破砕処理手段の一実施形態を略示した縦断面図である。
【図2】図1の破砕処理手段の略示横断面図である。
【図3】図1の破砕処理手段で用いられる各種破砕処理具の正面図と側面図である。
【図4】図1の破砕処理手段で用いられる回転擂潰具の正面図と側面図である。
【図5】本発明に係る破砕処理手段の他の一実施形態を略示した縦断面図である。
【図6】図5の破砕処理手段の略示横断面図である。
【図7】本発明における擂り潰し機構について他の一実施形態を略示した縦断面図である。
【図8】図8の擂り潰し機構の略示横断面図である。
【図9】本発明における擂り潰し機構について上記以外の他の一実施形態を略示した縦断面図である。
【図10】図9の回転擂潰具の減速機構の平面図である。
【図11】本発明における擂り潰し機構について上記以外の他実施形態を略示した縦断面図である。
【図12】本発明における擂り潰し機構についてさらに上記以外の他実施形態を略示した縦断面図である。
【図13】本発明における回転擂潰具の減速機構について他の一実施形態を略示した平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る脆性物の破砕処理方法と破砕処理装置について、これらの各実施形態を添付図面に基づき説明する。
【0012】
図1〜図4の実施形態についていうと、ここに例示された破砕処理装置は支持台11・電動機15・伝動系16・処理容器21・回転軸35・水平回転破砕具41〜43・擂り潰し機構51・ターンテーブル61・その他を主体にして構成されており、これに脆性物の搬入系71や破砕処理物の搬出系72が付帯している。破砕処理装置を構成するための部品や部材の材質はとくに説明しないかぎり金属製である。また、材質が明らかな周知部品を除いて金属製である。しかもその場合の金属としては、耐衝撃性など機械的特性の優れた鋼などがよく採用される。
【0013】
図1に示された支持台11は台座12とその上の架構物13とからなる。この場合の架構物13は、支柱・梁・桁・筋交いなどを建て込んだり組み付けたり組み立てたりすることで台座12の上に構築されて、立方体形または直方体形の骨格構造をしている。このような構造の架構物13は後述の処理容器を組み付けて支持するのに適している。台座12や架構物13は主に金属からなるが、木材・合成樹脂・複合材などの周知材料が併用されることもある。
【0014】
図1〜図2に示された処理容器21は上下両面が開放された縦型円筒状のものである。本発明でいうところの「縦型円筒状」とは、径が一定した単純円筒形のほか、径の異なる部分・円錐形の部分・逆円錐形の部分のうちのいずれか一つ以上を有するものや、全体が円錐形のもの、全体が逆円錐形のものなどを含めた上位概念語である。ちなみにこの実施形態での処理容器21は径が一定の単純円筒形である。かかる処理容器21の上部には落下案内用のシュート(周知)が取り付けられ、そこが処理容器21の入口22となっている。一方で処理容器21の出口23はというと、処理容器21の開放された下面がこれに該当する。処理容器21の内面には、多数の衝突用突起24が周方向に等間隔をなして取り付けられたり、逆円錐形の内面をもつ誘導リング25が取り付けられたりする。衝突用突起24や誘導リング25は後述する破砕具に対応して設けられるものであるが、これらは不可欠要素でないから省略されることもある。衝突用突起24や誘導リング25を処理容器21に備えるというときは、図1のような二段以上が代表例になる。図1を参照して両者24・25の相対関係は、衝突用突起24が上位で誘導リング25が下位というものである。処理容器21は図1のように架構物13の上部側に組み付けられる。この処理容器21と台座12との間には空間が介在している。
【0015】
図1において、回転軸を支持するため処理容器21に設けられる上下一対の軸受31・32は周知のものである。一方の軸受31は処理容器21内の軸心部上方に配置されているとともに、当該軸受31と処理容器21の胴壁内面とにわたる放射状(例:三放射状)のステー33を介して支持されている。他方の軸受32は処理容器21内の軸心部下方に配置されているとともに、処理容器21の胴壁貫通して当該軸受32と架構物13とにわたる放射状のステー33を介して支持されている。回転軸35は充実型あるいは中空型のものである。回転軸35の外周面には、差し込みスペースを有する取付部36が複数の段をなして設けられている。回転軸35の外周面には、また、最下段にある取付部36よりも下方の部位に取付板37が設けられたり、その取付板37の下位に取付板38が設けられたりしている。回転軸35は図1のように処理容器21内の軸心部に配置されて両軸受31・32により回転自在に両端支持される。この回転軸35には破砕形式の異なる各種の水平回転破砕具41〜43とか回転擂潰具52とかターンテーブル61とかが装備されたりするが、それは図3〜図4を参照してつぎのようなものである。
【0016】
図3の(A1)(B1)に明示された水平回転破砕具41は、第1破砕板41a・第2破砕板41b・スペーサ41cなどを主要部品とするものである。第1破砕板41aや第2破砕板41bはいずれも断面四角形で長手のものであるが、長さや厚さに関しては第1破砕板41aのそれが第2破砕板41bのそれを上回る。これらについては、第1破砕板41aの上下両面にスペーサ41cを介在して第2破砕板41bを取り付けることで、先端や幅の揃った水平回転破砕具41が図示のように構成される。このときの部品結合手段としては主に金属溶接が採用されたりする。このほか第1破砕板41aの基端部には上下一対の連結片41dがピン41eで回転自在に取り付けられる。図3の(A2)(B2)に明示された水平回転破砕具42は、長短二種の第1破砕板42a・第2破砕板42bと長短二種のスペーサ42c・42dとを主要部品とするものである。第1破砕板42aや第2破砕板42bも断面四角形で長手のものである。これらについては、はじめ第1破砕板42aの上下両面にスペーサ42c・42dを介して一層目の第2破砕板42bが取り付けられる。つぎに表裏一層目の各第2破砕板に対しスペーサ42cを介して二層目の第2破砕板42bが取り付けられる。かくて先端や幅が整然と揃った図示の水平回転破砕具42が構成される。このときの部品結合手段も前記と同じである。このほか、第1破砕板42aとスペーサ42dとで構成される水平回転破砕具42の基端部にも、ピン42fを介して上下一対の連結片42eが回転自在に取り付けられる。図3の(A3)(B3)に明示された水平回転破砕具43の場合は、基端部側の外周にストッパ43bを有していたり先端部側の外周に雄ネジ(図示せず)を有していたりするコアロッド43aと、三角形以上の任意多角形からなる破砕板43cと、コアロッド43aの雄ネジに対応する雌ネジ43dとが主要部品である。そのうちの一部についていうと、コアロッド43aの基端部は扁平に形成されてそこにピン孔が設けられる。破砕板43cの代表例は中心孔を有する四角形の座金からなる。これらの部品を組み合わせるときは、10〜20゜ほど周方向の位相ずれが順次生じるように多数枚の破砕板43cがコアロッド43aの外周部に嵌め込まれ、この嵌め込み状態を保持するためにコアロッド43aの先端部に雌ネジ43dが締め付けられる。かくて水平回転破砕具43が構成される。各破砕板43cの回り止めを確実にするため、破砕板43c相互をあらかじめ溶接しておいてもよい。また、これらの組み付け後、コアロッド43aと各破砕板43cやストッパ43bと破砕板43cとを溶接しても構わない。このほかコアロッド43aの基端部にも、ピン43fを介して上下一対の連結片43eが回転自在に取り付けられる。
【0017】
図4の(A)(B)に明示された回転擂潰具52は水平な支持アーム53と縦型の擂潰ローラ54とを主体して構成されるものである。このうちで擂潰ローラ54は、垂直部の外表面に上下一対の連結片54bを有するコ字形(逆コ字形)の集結具54aと、ボルト製のコアロッド54cと、コアロッド54cの雄ネジに対応するナット54dと、前記破砕板43cと同様の擂潰板(四角形座金)54eとを主な構成部品にしている。したがって擂潰ローラ54の場合は、多数枚の擂潰板54eを重ね合わせてこれを集結具54a内に介在させ、この集結具54aと各擂潰板54eとをコアロッド54cで上下に貫通し、かつ、コアロッド54cの端部にナット54dを締め付けることで構成される。この場合も、上下両上端にわたる各擂潰板54eにはそれぞれ10〜20゜ほど周方向の位相ずれが付与される。さらに各擂潰板54eの回り止めをより確実にするために擂潰板54e相互が溶接されたりする。代表例でいうと、各擂潰板54eの集合体はコアロッド54cを軸にして自由に回転するものであるが、それが非回転型に固定されていても構わない。支持アーム53と擂潰ローラ54は、擂潰ローラ54の両連結片54b間に支持アーム53の先端部を挿入し、これらをピン55で差し止めすることで相対屈伸自在(回転自在)に連結される。このほか、支持アーム53の基端部にはピン56を介して上下一対の連結片57が回転自在に取り付けられる。
【0018】
図1に例示されたターンテーブル61は大部分が平坦面であるが、これの外周部については下向きに傾斜している。
【0019】
図1に例示された水平回転破砕具41〜43・回転擂潰具52・ターンテーブル61などは上記のようなものであるから、つぎのようにして回転軸35に取り付けられる。図1を参照して、最上段の取付部36・上から二段目の取付部36・最下段の取付部36にはそれぞれ複数の連結部材39がピンを介して放射状に取り付けられている。したがって水平回転破砕具41については、複数のものがそれぞれピンを介して各連結部材39に連結される。具体的には水平回転破砕具41の両連結片41d間に連結部材39の先端部を介在させてこれらをピン止めすることにより、当該水平回転破砕具41が最上段の連結部材39に回転自在に連結される。こうして回転軸35の外周部に取り付けられる複数の水平回転破砕具41は二放射以上望ましくは三放射以上の放射状であり、その一例として図2には六放射状の水平回転破砕具41が示されている。水平回転破砕具41も上記と同様にして複数のものが上から二段目の取付部36に取り付けられる。すなわち水平回転破砕具42の両連結片42e間に連結部材39の先端部を介在させてこれらをピン止めすることにより、当該水平回転破砕具42が上二段目の連結部材39に回転自在に連結される。この取付状態の一例も図2のとおりである。水平回転破砕具42についても二放射以上(望ましくは三放射以上)の放射状であればよい。水平回転破砕具43も上記と同様にして複数のものが最下段の取付部36に取り付けられる。すなわち、水平回転破砕具43の両連結片43e間に連結部材39の先端部を介在させてこれらをピン止めすることにより、当該水平回転破砕具43が上二段目の連結部材39に回転自在に連結される。この取付状態の一例も図2のとおりであるが、水平回転破砕具43についても二放射以上(望ましくは三放射以上)の放射状であればよい。一方でターンテーブル61は、これの中心部を回転軸35が貫通する状態で取付板37にあてがわれた後、これらターンテーブル61・取付板37にわたって締め付けられたボルト・ナットにより回転軸35の外周部に取り付けられる。さらに回転擂潰具52も上記水平回転破砕具に準じた態様で取付板38に取り付けられる。すなわち回転擂潰具52の両連結片57間に取付板38を介在させてこれらをピン止めすることにより、当該回転擂潰具52が取付板38に回転自在に連結される。この取付状態の一例も図2のとおりである。回転擂潰具52についても二放射以上(望ましくは三放射以上)の放射状であればよい。
【0020】
図1の実施形態においては、回転擂潰具52が上記のように処理容器21内に装備されることで擂り潰し機構51が構成される。すなわち回転擂潰具52と固定擂潰具58との組み合わせからなる擂り潰し機構51が構成される。ちなみにこの際の固定擂潰具58は処理容器21の下部壁(回転擂潰具52の擂潰ローラ54と対面する部分)からなる。したがってこの実施形態のときは、処理容器21の下部壁が固定擂潰具58を兼ねる。それで回転擂潰具52の擂り潰し部(擂潰ローラ54)と固定擂潰具58の擂り潰し部(処理容器21の下部壁)とが互いに向き合って対応している。
【0021】
図1を参照して、処理容器21の胴部外面には受台14が組み付けられて装備されている。この受台14には周知の電動機(モータ)15が搭載されている。電動機15と回転軸35とにわたる伝動系16は、周知の原動プーリ17・周知の従動プーリ18・周知のエンドレスのベルト19などである。したがって伝動系16については、原動プーリ17が電動機15の出力軸に取り付けられたり従動プーリ18が回転軸35の上端部外周に取り付けられたりするとともにベルト19が両プーリ17・18にわたって掛け回されたりする。この場合、電動機15や伝動系16は回転軸35に対する回転駆動系の機械に該当する。
【0022】
そのほか、図1の実施形態においては、処理容器21の入口22に対応して脆性物の搬入系71が配置されているとともに、処理容器21の出口23に対応して破砕処理物の搬出系72が配置されている。これらの搬入系71や搬出系72は一例として周知のベルトコンベアからなるものである。
【0023】
本発明の実施形態で図1〜図4に例示されたものは以下に述べる脆性物を以下のようにして破砕処理する。
【0024】
はじめに脆性物についていうと、これは既述のとおり、外力(または変形)が所定値まで達したとき急激に強度が低下して脆性破壊が起こるというものである。その具体的なものとして、貝殻・甲殻類の殻・魚骨などの魚介系脆性物や、不要ガラス・不要瀬戸物などのや無機系脆性物をあげることができる。このほか卵殻・動物骨・乾物・不要半導体・劣化コンクリート・土塊・粘土塊・風化岩・泥質岩・不良鉱物結晶なども破砕処理対象の脆性物としてあげることができる。
【0025】
図1〜図4の実施形態における具体的な破砕手段は、水平回転破砕具41〜43や擂り潰し機構51である。この場合において、水平回転破砕具41は大割り用水平回転破砕エネルギを発生させるためのもの、水平回転破砕具42は中割り用水平回転破砕エネルギを発生させるためのもの、水平回転破砕具43は小割り用水平回転破砕エネルギを発生させるためのもの、さらに擂り潰し機構51は擂り潰し用回転破砕エネルギを発生させるためのものである。ゆえにこれらの破砕形式が互いに異なるが、それぞれの破砕機能はつぎのとおりである。はじめ大割り用水平回転破砕具41について図3の(A1)(B1)を参照していうと、第1破砕板41aや第2破砕板41bは破砕板のうちで最も分厚いからこれらの垂直打撃面(回転時の打撃面積)が大きい。けれども両破砕板41a・41bの絶対数は他の水平回転破砕具42〜43に比べて少ない。それに図3(A1)における両破砕板41a・41bの水平エッジ数も合計「6」と最も少ない。重力落下中の脆性物をこの大割り用水平回転破砕具41で水平方向に打撃するというとき、破砕具の垂直打撃面に当たる確率は高いが、水平エッジに当たる確率は低い。それゆえ大割り用水平回転破砕具41で水平方向に打撃されたときの脆性物は比較的大きく割れる。つぎに中割り用水平回転破砕具42について図3の(A2)(B2)を参照していうと、第1破砕板42aや第2破砕板42bは前記破砕板41a・41bよりも薄いものであるため、これらの垂直打撃面が相対的に小さい。けれども両破砕板42a・42bの絶対数は前記破砕板41a・41bよりも多い。その上、図3(A2)における両破砕板42a・42bの水平エッジ数も合計「10」と多い。重力落下中の脆性物をこのような中割り用水平回転破砕具42で水平方向に打撃するというとき、破砕具の垂直打撃面に当たる確率は前記破砕具41の場合よりも低く、逆に水平エッジに当たる確率は前記破砕具41の場合よりも高い。それゆえ中割り用水平回転破砕具42で水平方向に打撃される脆性物は、尖鋭な水平エッジに当たる確率が前記よりも高くなり、前記よりも細かく割れる。さらに小割り用水平回転破砕具43について図3の(A3)(B3)を参照していうと、これは多角形の薄い破砕板43cが多数集結されたものであるから、その表面(周面)全域に多数の尖鋭な突起が分布している。重力落下中の脆性物をこの小割り用水平回転破砕具43で水平方向に打撃するというとき、脆性物のほとんどが集合破砕板43cの尖鋭突起に衝突して前記よりもさらに細かく割れる。一方で図1や図4(A)(B)で示されるところの擂り潰し機構51は、回転擂潰具52の擂潰ローラ54と固定擂潰具(処理容器21の下部壁)58とが近接しており、これらが水平方向に相対回転するものである。したがって脆性物が擂潰ローラ54と固定擂潰具58との間を通過するとき、それが両者54・58に擂り潰し作用や圧壊作用によって粒状ないし粉状に破砕される。
【0026】
図1〜図4の実施形態における処理容器21内の水平回転破砕具41〜43や擂り潰し機構51は以上のような破砕形式に基づく破砕機能を奏するものである。したがって図1の搬入系71・破砕処理装置(電動機15)・搬出系72を運転状態にして既述の脆性物を破砕するときは、以下のようになる。搬入系71は脆性物を搬送しながらこれを処理容器21の入口22から処理容器21内に投入する。処理容器21内では電動機15からの動力伝達を受けて回転軸35とこれに装備された水平回転破砕具41〜43・ターンテーブル61・回転擂潰具52が高速回転している。具体的な回転速度についていうと、水平回転破砕具41〜43・ターンテーブル61・回転擂潰具52などは、それぞれの外周部の周速を基準にして50〜1000km/時で回転している。処理容器21内に投入された脆性物は、はじめ大割り用の水平回転破砕具41で比較的大きな破片に一次破砕され、ついでその破片が中割り用の水平回転破砕具42で二次破砕され、この二次破砕で前記よりも小さくなった各破片が小割り用の水平回転破砕具43によってさらに細かく三次破砕される。三次破砕された脆性物はかなり細かい破片となってターンテーブル61上に落下する。ここに落下した三次破砕物はターンテーブル61が高速回転しているため遠心方向に飛ばされ、ターンテーブル61の傾斜部(外周部)を滑落して擂り潰し機構51内に落ち込む。すなわち回転擂潰具52と固定擂潰具58との間を落下していく。ここを通過するときの三次破砕物は、回転擂潰具52と固定擂潰具58とによる擂り潰し作用や圧壊作用によって粒状ないし粉状に四次破砕される。かくて処理容器21内での各種破砕処理を終えて細粒化ないし粉体化された脆性物すなわち破砕処理物は、搬出系72上に落下して所定の場所に搬出される。この破砕処理物は、数次にわたる高速回転破砕を受けているので高度に細粒化している。したがって脆性物の種類いかんでは、破砕処理物に尖鋭部分が少なかったりほとんどなかったりする。尖鋭部分のない破砕処理物であれば、これをグランドや砂場などに敷いたり混ぜたりして用いるときに、擦傷や刺傷などを負いがたいから安全である。
【0027】
図1〜図4で説明した破砕処理手段の他の実施形態として、水平回転破砕具41〜43のうちの任意二種を省略し、残る一種の水平回転破砕具と擂り潰し機構51とを主体にして脆性物を破砕処理することがある。また、水平回転破砕具41〜43のうちの任意一種と擂り潰し機構51とを省略し、残る二種の水平回転破砕具を主体にして脆性物を破砕処理することもある。図1の衝突用突起24は脆性物が水平回転するのを阻止する邪魔物である。これがあると、水平回転破砕具41・42による水平回転破砕が効率よく行える。けれどもこれは不可欠部品でないから省略されることがある。図1において水平回転破砕具41下の誘導リング25は、水平回転破砕具41で破砕した脆性物を処理容器21の内周面沿いに落下させることなく、その下段の水平回転破砕具42へと誘導し、同じく水平回転破砕具42下の誘導リング25は、水平回転破砕具42で破砕した脆性物を処理容器21の内周面沿いに落下させることなく、その下段の水平回転破砕具43へと誘導するから望ましいものである。とはいえこれも不可欠部品でないから省略されることがある。
【0028】
図5〜図6の実施形態についていうと、ここに例示された破砕処理装置も基本的には前記実施形態のものと同じであるが、擂り潰し機構51に関する構成が主に異なる。
【0029】
図5〜図6の擂り潰し機構51において、回転擂潰具52は内筒52aと外筒52bと擂潰突起52cとを主体にして構成されるものである。これらのうちで、長くて径の小さい内筒52aと短くて径の大きい外筒52bは内外二重筒をなすように結合される。擂潰突起52cは、多数のものが上下等間隔で周方向に分布するように外筒52bの外周面に取り付けられる。擂潰突起52cは一例として周知のボルトからなり、それを外筒52bにねじ込み、ナットを締め付けることで所定部に取り付けられる。これは後述するものと同じである。図6を参照して、既述の回転軸35にはその取付部36に固定棒71が取り付けられる。したがって回転擂潰具52は、図5のように内筒52aが回転軸35の下部外周に被された状態において、図6の固定棒71と内筒52aとにわたるU字ボルト72や、これにねじ込まれたナット73を介して回転軸35に取りつけられる。この回転擂潰具52と対をなす固定擂潰具58は、逆円錐筒部58bとその下位の円筒部58cとを有する筒組成体58aや擂潰突起58dを主体にして構成される。筒組成体58aと擂潰突起58dとの関係で擂潰突起58dは、多数のものが上下等間隔で周方向に分布するように円筒部58cの内周面に取り付けられる。この擂潰突起58dも擂潰突起52cと同様のものである。図5を参照して固定擂潰具58は、処理容器21の下部に内装されてそこに取り付けられる。かくて回転擂潰具52と固定擂潰具58が所定の部位に装備されたとき、回転擂潰具52側の擂潰突起52cと固定擂潰具58の擂潰突起58dとが互いに向き合って食い違い自在に対応する。すなわち、回転側にある各擂潰突起52cの上下隣接部間に固定側の各擂潰突起58dが介在したり、固定側にある各擂潰突起58dの上下隣接部間に回転側の各擂潰突起52cが介在したりする。図5〜図6の実施形態では、固定擂潰具58の逆円錐筒部58bや円筒部58cが処理容器21の実質的な壁面の一部を構成している。図5〜図6の実施形態において説明を省略した事項は、図1〜図4の実施形態と実質的に同じかそれに準ずる。その一つとして、図5〜図6の処理容器21の内面に衝突用突起24や誘導リング25が設けられたりする。
【0030】
図5〜図6の実施形態で既述の脆性物を破砕するときも前記と同様、各部を運転状態にしてから処理容器21内に脆性物を投入する。処理容器21内に投入された脆性物が各種の水平回転破砕具41〜43で一次・二次・三次のように順次破砕される点は前記とほぼ同じである。ここまでの破砕を終えたものが図5の擂り潰し機構51内に落ち込む。すなわち回転擂潰具52と固定擂潰具58との間を落下していく。ここを通過するときの三次破砕物は、回転擂潰具52の擂潰突起52cと固定擂潰具58の擂潰突起58dとによる擂り潰し作用や圧壊作用によって粒状ないし粉状に四次破砕される。かくて処理容器21内での各種破砕処理を終えて細粒化ないし粉体化された脆性物(破砕処理物)も、前記と同様、搬出系72上に落下して所定の場所に搬出される。この破砕処理物も安全で高品質のものである。
【0031】
図5〜図6の実施形態でも、水平回転破砕具41〜43や擂り潰し機構51のうちの任意の二種以上を選択して破砕処理する点は前記と変わらない。
【0032】
擂り潰し機構51に関するその他の実施形態について、図7〜図15を参照して説明する。図7〜図15を参照して以下に説明する擂り潰し機構51は、もちろんこれを図1の処理容器21内や図5の処理容器21内に装備することができるものである。
【0033】
図7〜図8に例示された擂り潰し機構51は、外筒52の上部側が円錐形をしている点を除き、図5〜図6のものと実質的に同じである。この場合において、回転擂潰具52の擂潰突起52cや固定擂潰具58の擂潰突起58dは市販のボルトからなり、それを外筒52bや円筒部58cにそれぞれねじ込んだり、ナット締めしたりすることで所定部に取り付けられる。このボルト製の擂潰突起52c・58dは安価であるほか、摩耗したときの突出量の調整や交換が簡単に行える点で望ましいものである。
【0034】
図9〜図10に例示された擂り潰し機構51において、回転擂潰具52はターンテーブル52dと擂潰突起52cとからなり、ターンテーブル52dの下向きに傾斜した外周部に多数の擂潰突起52cが取り付けられる。この回転擂潰具52は周知のベアリングなどを介して回転軸35の下部外周に装着されるものであるが、その際、回転軸35と回転擂潰具52との間には、回転軸35とは逆回転で回転擂潰具52を減速するための減速機構81が介在される。減速機構81の一部は筒状部材52eを介してターンテーブル52dの下面に取り付けられたリング型の内歯ギア81aで、減速機構81の他の一部は回転軸35の下部外周に装着された原動ピニオン81bである。減速機構81の残る一部は、下部軸受32のハウジングに回転自在に取り付けられた複数の遊動ピニオン81cである。かかる逆回転式の減速機構81では、複数の遊動ピニオン81cが内歯ギア81aと原動ピニオン81bとの間にあってその両方に噛み合っている。したがって回転軸35の回転は、減速機構81により減速されて回転擂潰具52に逆回転で伝わる。一方、この回転擂潰具52と対応する固定擂潰具58は、既述の筒組成体58aが逆円錐筒部58bとその下位の円錐部58eとからなり、その円錐部58eの下面に多数の擂潰突起58dが取り付けられる。固定擂潰具58は前記と同様、処理容器21の下部に内装されてそこに取り付けられる。こうして回転擂潰具52と固定擂潰具58が所定の部位に装備されたときも前記と同様、回転擂潰具52側の擂潰突起52cと固定擂潰具58の擂潰突起58dとが互いに向き合って食い違い自在に対応する。この図示例の擂り潰し機構51については、また、回転擂潰具52のターンテーブル52d全体を平坦面のない円錐形にするというバリエーションもある。
【0035】
図9〜図10の擂り潰し機構51では、回転擂潰具52が前記よりも低速で逆回転するものである。したがってこれによるときは、数次にわたる破砕を終えた脆性物を逆方向へ戻したり解したりしてからこれを擂り潰し機構51内に進入させるものとなる。また、当該擂り潰し機構51内で脆性物を擂り潰したり圧壊したりするとき、低速でこれを行うことになるから回転擂潰具52や固定擂潰具58には過度の負荷が掛からない。
【0036】
図11の逆回転減速式の擂り潰し機構51においては、回転擂潰具52のターンテーブル52dが単純な円盤からなり、固定擂潰具58の下面にある部材(逆円錐筒部58bの下部に取り付けられた部材)がリング板58fからなるので、この点が前例と異なる。それで図11の場合は、回転擂潰具52側の擂潰突起52cがターンテーブル52dの上面外周に取り付けられたり、固定擂潰具58の擂潰突起58dがリング板58fの下面に取り付けられたりしている。したがって図11の場合も、双方の各擂潰突起52c・58dが互いに向き合って食い違い自在に対応している。
【0037】
図12の擂り潰し機構51は、回転擂潰具52や固定擂潰具58の各構成がこれまでのものと少し異なる。回転擂潰具52の場合は、全体が円錐形または外周部が下向きに傾斜したターンテーブル52dにおいて、ターンテーブル52dの外周部に短い円筒52fが取り付けられ、その円筒52fの外周面に既述の擂潰突起52cが多数取り付けられたものである。固定擂潰具58は、図1の場合と同様、処理容器21の下部壁がこれを兼ねるものである。処理容器下部壁からなる固定擂潰具58の内周面には既述の擂潰突起58dが多数取り付けられている。この図12の場合も、双方の各擂潰突起52c・58dが互いに向き合って食い違い自在に対応している。図12の実施形態の擂り潰し機構51も通常は逆回転減速式が採用される。そのような場合は、前述した逆回転式の減速機構81が回転軸35と回転擂潰具52との間に介在される。
【0038】
図13は逆回転減速式の擂り潰し機構51を正回転減速式のものに変更する場合の減速機構82に関する。図13を参照してこの減速機構82は、前記減速機構81と同じく、ターンテーブル52d側に取り付けられるリング型の内歯ギア82aと、回転軸35側に装着される原動ピニオン82bと、これらの間に介在される複数の遊動ピニオン82cとを有するほか、伝動ピニオン82dも有するものである。これらのギア・ピニオンは、複数の遊動ピニオン82cが内歯ギア82aのみに噛み合うという態様において、伝動ピニオン82dが任意一つの遊動ピニオン82cと原動ピニオン82bとの両方に噛み合っている。したがって回転軸35の回転は、減速機構81により減速されて回転擂潰具52に正回転で伝わる。
【0039】
図9〜図12の実施形態で示した擂り潰し機構51を正回転減速式のものに変更するときは、図13の正回転減速機構82が採用される。図9〜図12の実施形態で示した擂り潰し機構51は、また、減速機構81を省略するというときに、図1のような取付板37を介してターンテーブル52dが回転軸35に取り付けられる。
【0040】
本発明の破砕手段(破砕処理方法・破砕処理装置)は、使用上の制限がとくにないから各種の分野で利用することができる。下記にその適用例のいくつかをあげる。
(21) 土木・建築の分野で一種以上の貝殻を原料として地盤改良材・埋め立て材・敷き均し材・スリップ防止材などを得るとき、本発明の破砕手段で貝殻を破砕処理してそれらをつくる。
(22) 水質浄化処理の分野で一種以上の貝殻を原料として水質濾過器の媒材を得るとき、本発明の破砕手段で貝殻を破砕処理してそれをつくる。
(23) 陶磁器の表面にかける釉薬の分野で、ホタテ釉をつくる場合の原料の一部になる貝殻粉を得るとき、本発明の破砕手段でホタテ貝殻を破砕処理してそれをつくる。
(24) 化学品の合成分野でホタテ貝殻を原料としてリン酸カルシウムを合成するとき、原料の前処理として本発明の破砕手段でホタテ貝殻を破砕処理することにより、当該原料を粉状または粒状にする。
(25) 植物生育促進剤の合成分野で甲殻類の殻に含まれるキチン質を抽出するとき、しかもその前処理として甲殻類の殻を粉状または粒状にするとき、本発明の破砕手段でホタテ貝殻を破砕処理してそれをつくる。
(26) 医薬品の分野で骨粗鬆症の予防や成人病の予防に有効なCaや不飽和脂肪酸・DHAなどを魚骨から抽出する場合であって、その前処理として魚骨を粉状または粒状にするとき、本発明の破砕手段で魚骨を破砕処理してそれをつくる。
【0041】
このほか卵殻・動物骨・乾物・不要ガラス・不要瀬戸物・不要半導体・劣化コンクリート・土塊・粘土塊・風化岩・泥質岩・不良鉱物結晶なども、上記と同様に破砕処理してそれぞれの分野で有効利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る脆性物の破砕処理方法ならびに破砕処理装置は、重力落下中の脆性物を二種以上の破砕エネルギで破砕し、それによって、破砕処理物の高品質性・高い生産能力・作業性・経済性・汎用性などを満足させるものである。したがって土木・建築・機械・農業・水処理・食品・薬品・鉱物資源など各種の分野でゼロエミッション・リサイクル・リユースをはかるというときに当該方法や当該装置が有効かつ有用なものとなり、破砕処理物としても利用度が高く、有価物としての価値の高いものが得られる。
【符号の説明】
【0043】
21 処理容器
22 入口
23 出口
35 回転軸
41 大割り用の水平回転破砕具
42 中割り用の水平回転破砕具
43 小割り用の水平回転破砕具
51 擂り潰し機構
52 回転擂潰具
52c 擂潰突起
53 支持アーム
54 擂潰ローラ
54e 擂潰板
58 固定擂潰具
58d 擂潰突起
61 ターンテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器内を上位部と下位部とに区分した場合に、処理容器内の上位部には、水平回転破砕具による大割り用水平回転打撃破砕エネルギ・水平回転破砕具による中割り用水平回転打撃破砕エネルギ・水平回転破砕具による小割り用水平回転打撃破砕エネルギのうちから選ばれた一つ以上を発生させるとともに、これと同期して処理容器内の下位部には、固定擂潰具と回転擂潰具とによる擂り潰し用の回転擂潰破砕エネルギを発生させること、および、
容器入口から処理容器内の上位部に投入されて重力落下する脆性物が処理容器内の下位部に至るまでの間に、大割り用・中割り用・小割り用のうちの一つ以上の水平回転打撃破砕エネルギを脆性物に与えて当該脆性物を打撃破砕すること、および、
処理容器内の上位部で破砕された後の脆性物が処理容器内の下位部に落下してそこから容器出口に至るまでの間に、その脆性物を遠心方向へ下降傾斜する傾斜面沿いに落下させつつ、これに固定擂潰具と回転擂潰具とによる擂潰破砕エネルギを与えて当該脆性物を擂潰破砕すること
を特徴とする脆性物の破砕処理方法。
【請求項2】
上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器内を上位部と下位部とに区分した場合に、処理容器内の上位部には、水平回転破砕具による大割り用水平回転打撃破砕エネルギ・水平回転破砕具による中割り用水平回転打撃破砕エネルギ・水平回転破砕具による小割り用水平回転打撃破砕エネルギのうちから選ばれた一つ以上を発生させるとともに、これと同期して処理容器内の下位部には、固定擂潰具と回転擂潰具とによる擂り潰し用の回転擂潰破砕エネルギを発生させること、および、
容器入口から処理容器内の上位部に投入されて重力落下する脆性物が処理容器内の下位部に至るまでの間に、大割り用・中割り用・小割り用のうちの一つ以上の水平回転打撃破砕エネルギを脆性物に与えて当該脆性物を打撃破砕すること、および、
処理容器内の上位部で破砕された後の脆性物が処理容器内の下位部に落下してそこから容器出口に至るまでの間に、その脆性物を水平面に沿う遠心方向へ拡散させつつ、これに固定擂潰具と回転擂潰具とによる擂潰破砕エネルギを与えて当該脆性物を擂潰破砕すること
を特徴とする脆性物の破砕処理方法。
【請求項3】
上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器と、処理容器内の中心領域に配置された垂直な回転軸と、回転軸の周囲に二段以上の放射状に取り付けられた水平方向に長い打撃式の水平回転破砕具と、水平回転破砕具の段よりも下位のところに装備された擂り潰し機構と、回転軸に連結された回転駆動系の機械とで構成されていること、および、
打撃式水平回転破砕具の各段が脆性物大割り用水平回転破砕具と脆性物中割り用水平回転破砕具と脆性物小割り用水平回転破砕具とのうちから選択された二つ以上ものからなるとともに、被破砕物に対してより大きな割れを発生させる破砕具の段ほど処理容器内の上位側にあること、および、
擂り潰し機構が固定擂潰具と回転擂潰具との組み合わせからなるとともに、固定擂潰具の擂り潰し部と回転擂潰具の擂り潰し部とが互いに向き合って対応しており、かつ、互いに向き合う当該擂り潰し部が遠心方向に向けて下降していること
を特徴とする脆性物の破砕処理装置。
【請求項4】
上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器と、処理容器内の中心領域に配置された垂直な回転軸と、回転軸の周囲に二段以上の放射状に取り付けられた水平方向に長い打撃式の水平回転破砕具と、水平回転破砕具の段よりも下位のところに装備された擂り潰し機構と、回転軸に連結された回転駆動系の機械とで構成されていること、および、
打撃式水平回転破砕具の各段が脆性物大割り用水平回転破砕具と脆性物中割り用水平回転破砕具と脆性物小割り用水平回転破砕具とのうちから選択された二つ以上ものからなるとともに、被破砕物に対してより大きな割れを発生させる破砕具の段ほど処理容器内の上位側にあること、および、
擂り潰し機構が固定擂潰具と回転擂潰具との組み合わせからなるとともに、固定擂潰具の擂り潰し部と回転擂潰具の擂り潰し部とが互いに向き合って対応しており、かつ、互いに向き合う当該擂り潰し部が水平であること
を特徴とする脆性物の破砕処理装置。
【請求項5】
上部に入口があって下部に出口を有する縦型円筒状の処理容器と、処理容器内の中心領域に配置された垂直な回転軸と、回転軸の周囲に二段以上の放射状に取り付けられた水平方向に長い打撃式の水平回転破砕具と、水平回転破砕具の段よりも下位のところに装備された擂り潰し機構と、回転軸に連結された回転駆動系の機械とで構成されていること、および、
打撃式水平回転破砕具の各段が脆性物大割り用水平回転破砕具と脆性物中割り用水平回転破砕具と脆性物小割り用水平回転破砕具とのうちから選択された二つ以上ものからなるとともに、被破砕物に対してより大きな割れを発生させる破砕具の段ほど処理容器内の上位側にあること、および、
擂り潰し機構が固定擂潰具と回転擂潰具との組み合わせからなるとともに、固定擂潰具の擂り潰し部と回転擂潰具の擂り潰し部とが互いに向き合って対応しており、かつ、互いに向き合う当該擂り潰し部が垂直であること、および、
回転軸に取り付けられた平面円形の回転部材と該回転部材の外周部に分布する多数の擂潰突起とで回転擂潰具が構成されているとともに処理容器内の下部に設けられた平面円形の筒状壁と該筒状壁の内面に分布する多数の擂潰突起とで固定擂潰具が構成されており、回転擂潰具側の擂潰突起と固定擂潰具側の擂潰突起とが互いに向き合って食い違い自在に対応していること
を特徴とする脆性物の破砕処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−253479(P2010−253479A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191278(P2010−191278)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【分割の表示】特願2004−102290(P2004−102290)の分割
【原出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(000231198)日本国土開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】