説明

脱水システム

【課題】 脱水後の沈殿物の水分含量を変動させることなくほぼ一定に保持することができ、しかも汚泥脱水機の調整により高い脱水率が得られるようにした脱水システムを提供する。
【解決手段】 脱水システム1は、固形分を含む廃液から固形分を凝集して沈殿物を生成し、これに脱水補助剤を添加して沈殿物の濃縮を行って得られたものに対し、汚泥脱水機18(19)により脱水を行って脱水ケーキを生成する。汚泥脱水機18は、同軸状に配設されたスクリュー28及び脱水ドラム23のほか、スクリュー28の後端(脱水ケーキの出側端)に摺動可能に外嵌されると共に油圧シリンダ32のシャフト321に結合された押し板30等を備える。所望の汚泥脱水率が得られるように、押し板30は、脱水ドラム23との間の隙間39が油圧ポンプユニット34及び油圧シリンダ32によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥を脱水する脱水システム、特に、スクリュープレスを用いて脱水を行う脱水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃水、家庭廃水等は、一般的に85%以上の水分と固形分を含むため、固形分を脱水ケーキとして再利用し或いは産業廃棄物として処分するには、水分を少なくとも80%以下となるように脱水を行う必要がある。特に、産業廃棄物として焼却処分する場合には水分を70%以下にする必要がある。
【0003】
従来、産業廃水や家庭廃水等に対する脱水は、廃水を沈殿槽に入れて固形分を沈殿させ、その後に沈殿物に対してスクリュープレスやベルトプレスによって脱水を行うのが一般的な方法であった。しかし、この方法は、システム構成及び保守が簡単になるという特長を有するものの、処理時間が長くなり、大量の廃水を短時間に処理できないという問題があった。そのため、沈殿槽に凝集剤を添加して凝集させ、更には、凝集によって得られたフロックに古紙を原料にした脱水補助剤(脱水助剤ともいう)を添加して脱水を行うことが行われている。このような方法によって、飛躍的に脱水効率を高めることが可能になったものの、脱水率を高めるためには大量に脱水補助剤を用いる必要があった。
【0004】
脱水ケーキの脱水率、言い換えれば水分含量、を下げるための脱水補助剤としては、機械的剪断によりメカノケミカル活性が付与された径10〜30μm、長さ500〜1000μmの微細パルプ繊維からなる高活性セルロースファイバーによるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−248337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、セルロースファイバーを用いた従来の脱水補助剤は、パルプ繊維を水中に分散させた状態で該パルプ繊維の全質量の少なくとも50質量%が径10〜30μm、長さ500〜1000μmのサイズに微細化されるまでプロペラ等で撹拌又は摩砕処理する必要があり、市販の脱水補助剤をそのまま利用できないという問題があった。
また、従来の脱水システムは、沈殿物を加圧することによって脱水を行っていたが、脱水後の沈殿物の水分含量を一定に保持しながら連続的に加圧脱水するための沈殿物への加圧調整が容易ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、脱水後の沈殿物の水分含量を変動させることなくほぼ一定に保持することができ、しかも特別な脱水補助剤を用いるのではなく、汚泥脱水機の調整により高い脱水率が得られるようにした脱水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の本発明は、固形分を含む廃水からスクリュープレスによって水分を脱水する脱水システムにおいて、外周面に螺旋状のスクリュー羽根が配設されたスクリュー本体の外側にスクリュー本体と同軸に設けられると共に、固形分は通過させずに水分だけを外部へ逃がす多数の微細孔が設けられた脱水ドラムを備え、脱水ドラムの一端側には固形分を含む廃液に脱水補助剤を添加し、pH調整を行い、さらに高分子凝集剤を加えてフロック化して得られた沈殿物を濃縮して得られた沈殿物をスクリュー本体の外周面と脱水ドラムの内周面との間に供給する供給口が設けられ、開放されて形成された脱水ドラムの他端側には制御装置によって動作制御が可能とされた油圧シリンダによって押圧可能に閉塞する押し板が設けられ、スクリュー本体の回転によってスクリュー羽根が汚泥を押し板側に押圧する圧力と油圧シリンダによる押し板の押圧力とのバランスを調整することによって汚泥から水分を脱水して脱水ケーキを生成しつつ脱水ドラムの開放された他端側と押し板との間に隙間を形成することにより脱水ケーキを外部に排出する汚泥脱水機を備えてなることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の脱水システムにおいて、制御装置は、油圧シリンダの押し板に対する押圧力を検出する圧力検出器と、脱水ドラムの開放された他端側と押し板との開度を検知する開度検出器とを備え、脱水ケーキの生成中、開度検出器の検出値が予め定めた設定値を維持するように油圧シリンダの押圧力を制御することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の脱水システムにおいて、圧力検出器は、押し板に設けられたロードセルであり、開度検出器は、脱水ドラムの開放された他端側と押し板との間の距離を測定するセンサであることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の脱水システムにおいて、制御装置は、押し板の開度が設定値から外れたときに設定値に戻るように油圧シリンダを駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の脱水システムによれば、脱水後の沈殿物の水分含量を変動させることなくほぼ一定に保持することができ、しかも特別な脱水補助剤を用いることなく、汚泥脱水機の調整(制御)により一定の水分含量を維持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る脱水システムの実施の形態におけるブロック図である。
【図2】図1に示す汚泥脱水機の構成を示す正面一部断面図である。
【図3】図2に示す押し板の周辺構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示した表示装置の表示画面の一例を示す画面図である。
【図5】本発明に係る脱水システムの動作を示すフローチャートである。
【図6】油圧シリンダの制御の具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[脱水システムの構成]
図1は、本発明に係る脱水システムの実施の形態を示すブロック図である。この脱水システム1は、概略として、固形分を含む廃水を貯留する汚泥槽10と、脱水補助剤を貯留する脱水補助剤貯留槽14と、脱水補助剤貯留槽14に貯留された脱水補助剤を溶解する脱水補助剤溶解装置15と、汚泥槽10から送られてくる廃水に脱水補助剤溶解装置15から送られてくる脱水補助剤を添加混合すると共にpH調整剤を添加してpHの調整を行う第1,第2の混和凝集槽11,12と、第1,第2の混和凝集槽11,12へさらに凝集剤を供給する凝集剤供給装置13と、凝集剤によってフロック化した沈殿物を濃縮する第1,第2の濃縮機16,17と、第1の濃縮機16によって濃縮された沈殿物をさらに脱水する第1の汚泥脱水機18と、第2の濃縮機17によって濃縮された汚泥をさらに脱水する第2の汚泥脱水機19と、第1,第2の汚泥脱水機18,19を制御する制御装置20と、第1,第2の汚泥脱水機18,19の後述する押し板への押圧力を検出する圧力検出器40と、第1,第2の汚泥脱水機18,19のスクリュー本体28の後端に対する押し板30の距離である開度(図3における隙間39)を検出する測長センサである開度検出器41と、制御装置20に接続されて、設定内容、制御内容、動作状態等の各種の情報を表示する表示装置42とを備えている。
【0015】
汚泥槽10は、産業廃水、家庭廃水等の固形分を含む廃水を貯留する槽であり、貯留される廃水は、例えば、0.6〜1.0%の汚泥等の固形分を含んでいる。脱水補助剤貯留槽14には、例えば、50メッシュの杉粉、古紙、サトウキビ粕、竹粉等の粉末セルロースが脱水補助剤として貯留されている。脱水補助剤溶解装置15は、スクリュー等の撹拌手段を備えており、脱水補助剤貯留槽14から切り出されてくる脱水補助剤を撹拌して水に分散又は溶解させる装置である。第1,第2の混和凝集槽11,12では、汚泥槽10から送られてきた廃水に脱水補助剤溶解装置15から送られてきた脱水補助剤が添加される。尚、脱水補助剤は廃水の固形分に対して10〜20重量%が添加される。さらに、第1,第2の混和凝集槽11,12では廃水に、例えば、ポリ硫酸第二鉄溶液等のpH調整剤を添加することによって、廃水のpHをpH6.0〜7.0をpH3.5〜4.0に調整する。そして、pH調整された廃水に凝集剤供給装置13から送られてくる、例えば、高分子ポリマー等の高分子凝集剤を添加することによりフロックが形成され、沈殿物(以下、汚泥という)が生成される。この汚泥は、図2に示すような第1,第2の汚泥脱水機18,19の供給口210へ供給される。以下においては、第1の汚泥脱水機18の動作について説明する。
【0016】
[汚泥脱水機の構成]
図2は汚泥脱水機18の構成を示す正面一部断面図である。すなわち、図中の一部を断面図で示すものである。第1の汚泥脱水機18と第2の汚泥脱水機19とは構成が同じであるので、ここでは第1の汚泥脱水機18の構成について説明する。
【0017】
図示された第1の汚泥脱水機18は、概略として、例えば蒲鉾形の外形形状を有するケーシング21と、ケーシング21内に複数のスタンド22を介して設置されると共に汚泥(脱水補助剤を含む)が供給される供給口210を有した脱水ドラム23と、脱水ドラム23の中心に横設されたスクリュー軸24と、スクリュー軸24の長手方向両端側に配置され、スクリュー軸24を軸支する軸受25,26と、軸受25を保持するスタンド27と、外周面に螺旋状に形成されたスクリュー羽根29を備えスクリュー軸24の回転に伴って回転する円筒形状のスクリュー本体28と、スクリュー本体28の後端(脱水ケーキ出口端)と脱水ドラム23の後端との間に介在するようにしてスクリュー本体28の後端に取り付けられた円環形状の押し板30と、ケーシング21の後端側端部の蓋及び軸受として機能する蓋部材31と、シャフト321の先端面を押し板30に接触可能にして蓋部材31に設けられた油圧シリンダ32と、スクリュー軸24の端部(左側端)に設けられたスプロケット33と、油圧シリンダ32を駆動する油圧ポンプユニット34と、スクリュー軸24を回転させるスクリュー軸駆動機35と、スクリュー軸駆動機35の回転軸350に設けられたスプロケット36と、スプロケット33とスプロケット36との間に架け渡される2つのチェーン37と、例えばロードセルからなる上記した圧力検出器40と、測長センサからなる上記した開度検出器41と、を備えている。測長センサには種々の構成のものがあるが、例えば、投光器から投光された平行な光を受光器で検知する際に受光量の変化から遮光物体の大きさを検知する。
【0018】
ケーシング21は、底面に汚泥から脱水された水分(液体)を集めてドレイン212から排出する断面V字形状をした排水パン211が設けられていると共に、螺旋状のスクリュー羽根29の回転によってスクリュー本体28の後端側へ搬送された汚泥から水分が脱水された状態の脱水ケーキが排出される排出スペース38が設けられている。排出スペース38からケーシング21の外に排出された脱水ケーキは、図示しないベルトコンベアによって移送されるようになっている。
【0019】
脱水ドラム23は、略円筒形状を成し、その周面には円環状の多数の仕切部材231が所定間隔に設けられており、その内部を貫通する如くに配設されたスクリュー本体28の外周面と脱水ドラム23の内周面との間に供給口210から供給された汚泥が収容されるようになっている。また、脱水ドラム23の周面には、汚泥から脱水された水分を外部へ排出するための微細孔(図示せず)が多数設けられている。これにより、汚泥はスクリュー羽根29の回転によってスクリュー本体28の終端側へ向かって搬送されると共に次々と搬送されてくる汚泥によって圧縮され、その圧力によって汚泥から絞り出された水分は脱水ドラム23の周面に穿設された図示しない微細孔から脱水ドラム23の外へ排出される。
【0020】
図3は、押し板30の周辺構成を示す斜視図である。尚、図3においては、ケーシング21、仕切部材231等の図示を省略している。押し板30は、脱水ドラム23の後端の開口を密閉可能に配置された円環形状の金属板であり、スクリュー本体28の終端側(脱水ケーキの出口端)に配置され、スクリュー本体28の外周面に沿って軸方向へ摺動可能とされると共に、油圧シリンダ32のシャフト321の先端面と連結された状態でスクリュー本体28の後端に外嵌されている。この押し板30と脱水ドラム23との間の間隙39が脱水ケーキの出口となる。そして、油圧シリンダ32の押圧力を適宜調整しつつ駆動することによって図2及び図3の左右方向に押し板30を移動させ、それによって押し板30と脱水ドラム23の後端との間の間隙39の開き具合を変化させ、汚泥を脱水した後の脱水ケーキの水分含量を調整するようになっている。
【0021】
尚、上記構成では、押し板30はスクリュー本体28の外周面を液密状態で摺動可能とされているが、押し板30をスクリュー本体28の外周面に固定すると共に、スクリュー本体28を軸方向へ可動可能に構成することによっても押し板30と脱水ドラム23との間の隙間の開き具合を調整することができる。
【0022】
油圧シリンダ32は、図示しない配管を介して油圧ポンプユニット34に接続されている。油圧ポンプユニット34からの油圧が調整されることにより、押し板30に対する油圧シリンダ32のシャフト321の押圧力が変化する。油圧シリンダ32の油圧を高くすれば、押し板30はスクリュー羽根29の回転によって搬送されてくる汚泥は高い圧力で押圧されることになり、脱水ケーキの水分含量は少なくなる。反対に、油圧シリンダ32の油圧を低くすれば、押し板30はスクリュー羽根29の回転によって搬送されてくる汚泥は低い圧力で押圧されることになるので脱水ケーキの水分含量は多くなる。
【0023】
スクリュー軸駆動機35は、動力源であるモーターの回転をスプロケット36に伝達し、これよりも大きい直径を有するスプロケット33にチェーン37を介して回転力を伝達することにより、スクリュー軸24は減速して回転する。
【0024】
図4は、図1に示した表示装置の表示画面の一例を示す画面図である。表示装置42の表示画面43は表示装置42の主体を成す液晶表示器等に表示され、各種の情報を表示する主表示部44と、この主表示部44の下部に一覧形式で表示される画面選択部45とにより形成されている。
【0025】
主表示部44には、油圧シリンダ32の出口コーンの初期位置、出口最小開度、閉時間、油圧ユニット圧力等の値が設定値及び単位と共に表示されている。そして、画面選択部45は、モニタ画面設定部451、自動運転選択画面部452、手動運転画面部453、汚泥脱水機自動運転設定画面部454、アラーム履歴画面部455、メンテナンスタイマ設定画面部456、メニュー画面部457からなる。画面選択部45は、オベレータによって脱水処理の開始前にモニタ画面設定部451及び画面部452〜457が適宜選択され、その表示内容に応じた設定値がキーボード、マウス等が操作されることにより入力される。図4の場合、汚泥脱水機自動運転設定画面部454を選択して設定値を入力した場合の表示内容を示している。
【0026】
[脱水システムの動作]
次に、上述した脱水システム1の動作について説明する。脱水補助剤貯留槽14に貯留されている脱水補助剤を脱水補助剤溶解装置15において水に分散させ又は溶解させる。また、凝集剤供給装置13には高分子凝集剤を収容する。そして、汚泥槽10から約0.6〜1.0%の固形分を含む廃水を第1,第2の混和凝集槽11,12へそれぞれ供給すると共に、脱水補助剤溶解装置15から脱水補助剤の水溶液を廃水の固形分に対して10〜20重量%添加する。また、廃水に対して水酸化ナトリウム溶液又はポリ塩化硫酸第二鉄溶液等のpH調整剤を添加する。これにより、第1,第2の混和凝集槽11,12において汚泥槽10から送られてきた廃水のpH6.0〜7.0がpH3.5〜4.0に調整される。さらに、凝集剤供給装置13から凝集剤(高分子凝集剤、例えば、ポリマー等)を添加することによりフロックを生成する。
【0027】
次に、フロックが生成された廃水を第1,第2の濃縮機16,17に送り、濃縮して汚泥を生成する。そして、この汚泥を、第1,第2の汚泥脱水機18,19の供給口210から内部へ供給する。以下においては、第1の汚泥脱水機18の動作について説明する。
【0028】
図2に示す第1の汚泥脱水機18では、スクリュー軸駆動機35の駆動によってスクリュー軸24に回転が伝達されることにより、スクリュー本体28が回転している。供給口210に供給された汚泥は、スクリュー本体28の回転に伴ってスクリュー羽根29により形成された螺旋溝291内に押し込まれる(図2参照)。そして、汚泥はスクリュー28の回転によって螺旋溝291内をスクリュー本体28の後端側(図2の左端側)に向かって搬送され、その過程でスクリュー羽根29によって圧縮される。このとき、押し板30は油圧シリンダ32によって図2における右側へ所定の圧力で押圧されているので汚泥はスクリュー羽根29の回転による圧縮によって汚泥内の水分は脱水される。汚泥から脱水された液体は脱水ドラム23に設けられている多数の微細孔を通して脱水ドラム23の外に排出され、更に、仕切部材231を伝って排液パン211へ落下して排液パン211の下部のドレイン212に集まり、このドレイン212から図示しない廃水槽等へ排出される。
【0029】
このように、汚泥がスクリュー本体28の螺旋溝291に進入し、螺旋溝291内に次第に詰め込まれることにより、その押圧力によって汚泥内の水分が脱水ドラム23側へ押し出され、徐々に脱水が進行し、スクリュー本体28の左側端に到達する頃には汚泥は脱水ケーキとなり、その脱水率は70%以下になっている。
【0030】
[押し板の制御]
次に、隙間39を調整する制御について説明する。図5は、脱水システム1の動作を示すフローチャートである。この制御は、押し板3に対する脱水中の脱水ケーキによる図2の左方向への押圧力に対して図2の右方向への押し板30に対する押圧力に抗して、図2の右方向への押圧力を押し板30に付与し、脱水ケーキが70%以下の水分含有率になるように調整を行うものである。まず、油圧シリンダ32の油圧値(初期値)を設定する(S101)。この油圧値は、脱水ケーキの脱水率を70%以下にし得る値に設定する。なお、油圧値を高くするほど脱水率が上がるが、高くしすぎると脱水ケーキの生産性が低下する。ついで、油圧ポンプユニット34を稼働させ、制御装置20によって一定時間毎に開度検出器41から検出値の取り込みを行う(S102)。
【0031】
制御装置20は、開度検出器41による隙間39の開度が予め定めた設定値(70%の脱水率が得られる開度)に到達したか否かを判定する(S103)。設定値への到達が判定された場合(S103:Yes)、押し板30が開いた状態になっており、汚泥ケーキは押し板30による隙間39を通して排出スペース38内へ連続的に排出される(S104)。更に、脱水ケーキは図示しないベルトコンベアによって所定の場所へ搬送される。
【0032】
脱水ケーキの生成が進む過程で、螺旋溝291に詰め込まれる汚泥のねじ込み圧力によって押し板30が図2の左方向へ付勢される。この付勢力は、汚泥の固形分の種類や含水率等によって変動し、この変動によって押し板30の開度が変化する。そこで、一定時間ごとに開度検出器41の検出値を取り込み(S105)、その都度、押し板30の開度の状態が判定される(S106)。押し板30の開度が設定値を越えていた場合(S106:Yes)、即ち、押し板30の開度が大きくなっている場合においては脱水ケーキの脱水率が落ちる傾向になる。そこで、制御装置20は油圧ポンプユニット34を稼働させ、押し板30の押圧力を高くする(S107)。この過程で制御装置20は押し板30の開度をチェックし(S108)、開度が設定値になれば(S108:Yes)油圧シリンダ32の駆動を停止する(S109)。次に、制御装置20は、脱水システム1が、例えば、昼食時間、終業時間等になってシステムの停止モード(脱水終了)になったか否かを判定する(S110)。この判定の条件はプログラムに組み込んで自動処理し、或いは手動によって制御装置20に指示を与えるものとする。脱水終了であれば(S110:Yes)、システムを停止する(S111)。
【0033】
上記ステップS106において設定値を越えていない場合(S106:No)、押し板30の開度が設定値以下であるか否かを判定する(S112)。設定値以下でない場合(S112:No)、即ち開度が適正値である場合、処理を上記ステップS109へ戻して以降の処理を実行する。また、上記ステップS112において設定値以下であることが判定された場合(S112:Yes)、即ち、押し板30の開度が狭くなり、脱水ケーキの脱水率が高くなり過ぎた場合、制御装置20は、油圧ポンプユニット34を制御し、押し板30の押圧力を低くする(S113)。押し板30の開度が設定値になれば(S114:Yes)、制御装置20は処理を上記ステップS109へ移行させ、以降の処理を繰り返し実行する。
【0034】
ここで、油圧シリンダ32の出口コーン制御について設定値を示して説明する。図6は、油圧シリンダの出口コーン制御の具体例を示すフローチャートである。また、この各制御における設定値の具体例を示したのが表1である。この出口コーン制御は、初期運転以後、押し板30の開度80mmを基準にして設定時間内における開度を監視し、最小開度以上になるように油圧シリンダ32を制御装置20によって制御するものである。
【0035】
【表1】

【0036】
まず、制御装置20は、表1の設定項目No.1及びNo.3に示す設定値、出口初期位置(押し板30の初期開度)100mm及び油圧ユニット34の初期圧力1.0MPaを初期値として運転を開始し(S201)、この初期値による運転を設定項目No.4で設定した30分間、油圧シリンダ32のシャフト321を図3に示す右方向へ押す駆動をする(S202)。この駆動開始から30分経過後、設定項目No.2で設定した押し板30の最小開度(85mm:但し、油圧ユニット34の現在の圧力が1.2MPa以下)以上か以下かを判定する(S203)。最小開度以上であることが判定された場合、処理はステップS204へ移行し、設定項目No.4で設定した閉時間(30分)が経過すると、油圧ユニット34の圧力を設定項目No.5で設定した0.2MPaだけ上昇させる。また、上記ステップS203で最小開度(85mm)以下が判定された場合、処理はステップS205へ移行し、開度を85mmから90mmにした後、その状態を設定項目No.9で設定した15分を維持し、この15分が経過後、油圧シリンダ32によって押し板30を押圧する。
【0037】
次に、上記ステップS204において油圧ユニット34の圧力の値が1.2MPaになると、制御装置20は、設定項目No.2で設定した最小開度(85mm:但し、油圧ユニット34の現在の圧力が1.2MPa以下)以上か以下かを再度判定する(S206)。最小開度が85mm以上であった場合、処理はステップS207へ移行する(S207)。この処理では、油圧ユニット34の圧力値が1.2MPaになった後、この状態を設定項目No.7で設定した閉時間(60分)を維持し、この60分が経過後、油圧ユニット34の圧力値を0.2MPa上昇させ、1.4MPaにする(S207)。その後、処理はステップS208へ移行し、設定項目No.6で設定した最小開度(80mm:但し、油圧ユニット34の現在の圧力が1.2MPa以上)以上か以下かの判定が行われる。
【0038】
上記ステップS206において、最小開度が85mm以下であった場合、処理はステップS212へ移行する。初期圧力以上の時に最小(85mm)になった場合、設定項目No.5の圧力上昇値(0.2MPa)分だけ下がり、油圧ユニット34の圧力値が1.2MPaから1.0MPaになる。ここで、開度が85mm以下から設定項目No.8で設定した90mmに変更され、この状態を設定項目No.9で設定した15分間維持し、この15分が経過後、油圧シリンダ32によって押し板30を押し、油圧ユニット34の圧力値を1.0MPaから上昇させる(S212)。
【0039】
次に、処理はステップS213へ移行する。この処理は、上記ステップS212の処理が設定項目No.4で設定した30分の間に最小開度(80mm)にならなかった場合、油圧ユニット34の圧力を上昇させるものである。この制御によって設定項目No.2で設定した最小開度以下になった場合(S214:Yes)、処理はテップS205へ移行し、以降の処理が繰り返し実行される。また、設定項目No.2で設定した最小開度にならなかった場合(S214:No)、処理は上記ステップS206へ移行する。
【0040】
次に、ステップS208以降の処理について説明する。上記ステップS207の処理の後、制御装置20は、設定項目No.6で設定した最小開度(80mm:但し、油圧ユニット34の現在の圧力が1.2MPa以上)以上か以下かを判定する(S208)。最小開度が80mm以上であった場合、設定項目No.7で設定した閉時間(60分)が経過すると設定項目No.5で設定した0.2MPaだけ圧力値を上昇させ、1.6MPaにする。この圧力値は設定項目No.11で設定した最大圧力値であるので、以後、開度が最小開度(80mm)になるか、設定項目No.12で設定した脱水機電流値上限(13A)にならない限り脱水終了まで制御は変更しない(S209)。
【0041】
その後、設定項目No.6で設定した最小開度(80mm)以下、例えば、初期圧力以上の時に最小開度になると、油圧ユニット34の圧力値が0.2MPa下がる結果、圧力値は1.6MPaから1.4MPaになる。そこで、制御装置20は開度を80mmから90mmにし、設定項目No.9で設定した15分経過後、油圧シリンダ32によって押し板30を押す制御を実行する。以後、設定項目No.7で設定した60分が経過しても最小開度80mmならなかった場合、制御装置20は圧力値を上昇させる。また、設定項目No.6で設定した最小開度(80mm)以下になった場合(S211:Yes)、処理は上記ステップS215へ移行し、以降の処理を繰り返し実行する。また、上記ステップS211において最小開度(80mm)を超えていた場合(S211:No)、処理は上記ステップS208へ移行し、以降の処理を繰り返し実行する。
【0042】
次に、上記ステップS208において、最小開度(80mm)以下であった場合、処理はステップS212へ移行する。初期圧力以上の時に最小開度になると、油圧ユニット34の圧力値は0.2MPa下がり、1.4MPaから1.2MPaになる。そこで、開度を80mmから設定項目No.8で設定した90mmにし、この状態を設定項目No.9で設定した時間(15分)維持し、その後に油圧シリンダ32によって押し板30を押す制御を実行する(S215)。その後、設定項目No.7で設定した60分が経過しても最小開度80mmならなかった場合、制御装置20は圧力値を上昇させる(S216)。また、設定項目No.6で設定した最小開度(80mm)以下になった場合(S217:Yes)、処理は上記ステップS212へ移行し、以降の処理を繰り返し実行する。また、上記ステップS217において最小開度(80mm)を超えていた場合(S211:No)、処理は上記ステップS208へ移行し、以降の処理を繰り返し実行する。
【0043】
なお、上記ステップS204,209,213,216において、最小開度(80mm)は常に設定項目No.4,7の設定時間(15分、60分)が経過しなくても、最小開度(80mm)になった時点で設定項目No.8に設定されている開度90mmになり、圧力も下がることになる。また、最小開度の設定が設定項目No.2,6の2つを設けている理由は、圧力の上昇に対応するためであるが、状況等に応じて設定を1つにし、或いは、No.2,6を同じ値にすることも可能である。
【0044】
[実施形態における効果]
上記の実施形態によれば、第1,第2の汚泥脱水機18,19の脱水率が所望の値になるように押し板30の隙間39を可変することにより押し板30と脱水ドラム23の後端との間の隙間39である脱水ケーキの出口の開度を調整し、それによって脱水ケーキの水分含量を調整可能としたので、脱水ケーキの水分含有率を一定に保持することかできる。
また、特別な脱水補助剤を用いることなく汚泥脱水機の押し板とスクリュー本体の後端との隙間39である脱水ケーキの出口の開度を調整することにより高い脱水率が得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、汚泥を含む廃水に代えて、多量の水分と固形分からなる液体を脱水して固形分をケーキ化する場合にも適用可能である。
[他の実施の形態]
【0046】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、混和凝集槽、濃縮機及び汚泥脱水機からなる2系統の構成にしたが、1系統でもよいし、3系統以上でもよい。
【0047】
また、第1,第2の汚泥脱水機18,19は、横形の構成を示したが、縦形であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 脱水システム
10 汚泥槽
11 第1の混和凝集槽
12 第2の混和凝集槽
13 凝集剤供給装置
14 脱水補助剤貯留槽
15 脱水補助剤溶解装置
16 第1の濃縮機
17 第2の濃縮機
18 第1の汚泥脱水機
19 第2の汚泥脱水機
20 制御装置
21 ケーシング
22 スタンド
23 脱水ドラム
24 スクリュー軸
25 軸受
26 軸受
27 スタンド
28 スクリュー本体
29 スクリュー羽根
30 押し板
31 蓋部材
32 油圧シリンダ
33 スプロケット
34 油圧ポンプユニット
35 スクリュー軸駆動機
36 スプロケット
37 チェーン
38 排出スペース
39 隙間
40 圧力検出器
41 開度検出器
42 表示装置
43 表示画面
44 主表示部
45 画面選択部
210 供給口
211 排液パン
212 ドレイン
231 仕切部材
291 螺旋溝
321 シャフト
350 回転軸
451 モニタ画面設定部
452 自動運転選択画面
453 手動運転画面部
454 汚泥脱水機自動運転設定画面部
455 アラーム履歴画面部
456 メンテナンスタイマ設定画面部
457 メニュー画面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分を含む廃水からスクリュープレスによって水分を脱水する脱水システムにおいて、
外周面に螺旋状のスクリュー羽根が配設されたスクリュー本体の外側に当該スクリュー本体と同軸に設けられると共に、前記固形分は通過させずに水分だけを外部へ逃がす多数の微細孔が設けられた脱水ドラムを備え、前記脱水ドラムの一端側には固形分を含む廃液に脱水補助剤を添加し、pH調整を行い、さらに高分子凝集剤を加えてフロック化して得られた沈殿物を濃縮して得られた沈殿物を前記スクリュー本体の外周面と前記脱水ドラムの内周面との間に供給する供給口が設けられ、開放されて形成された前記脱水ドラムの他端側には制御装置によって動作制御が可能とされた油圧シリンダによって押圧可能に閉塞する押し板が設けられ、前記スクリュー本体の回転によって前記スクリュー羽根が汚泥を前記押し板側に押圧する圧力と前記油圧シリンダによる押し板の押圧力とのバランスを調整することによって汚泥から水分を脱水して脱水ケーキを生成しつつ前記脱水ドラムの開放された前記他端側と前記押し板との間に隙間を形成することにより前記脱水ケーキを外部に排出する汚泥脱水機を備えてなることを特徴とする脱水システム。
【請求項2】
請求項1に記載の脱水システムにおいて、
前記制御装置は、前記油圧シリンダの前記押し板に対する押圧力を検出する圧力検出器と、
前記脱水ドラムの開放された前記他端側と前記押し板との開度を検知する開度検出器とを備え、
前記脱水ケーキの生成中、前記開度検出器の検出値が予め定めた設定値を維持するように前記油圧シリンダの押圧力を制御することを特徴とする脱水システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脱水システムにおいて、
前記圧力検出器は、前記押し板に設けられたロードセルであり、
前記開度検出器は、前記脱水ドラムの開放された前記他端側と前記押し板との間の距離を測定するセンサである
ことを特徴とする脱水システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の脱水システムにおいて、
前記制御装置は、前記押し板の開度が前記設定値から外れたときに該設定値に戻るように前記油圧シリンダを駆動することを特徴とする脱水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156494(P2011−156494A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21193(P2010−21193)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(595146633)信和エンジニアリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】