説明

脱穀装置

【課題】 主唐箕とは別に第2唐箕を設置することによって揺動選別棚上での風選能力を高め、特に2番処理物の集中選別を可能とし、選別性能の向上を図る。
【解決手段】 扱室(3)からの脱穀処理物を受け入れて後方に揺動移送しながら篩い選別する揺動選別棚(8)の下方前部側に第1唐箕(14)を設け、揺動選別棚(8)の左右一側から該揺動選別棚(8)上へ2番処理物を還元する2番処理装置(18)を装備し、揺動選別棚(8)の前方から該揺動選別棚(8)の上面に沿って送風する第2唐箕(25)を設け、この第2唐箕(25)は選別風が2番処理装置(18)側に沿って通過するように偏倚させて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、刈取穀稈を脱穀して選別処理する脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、唐箕ファンからチャフシーブに供給する選別風の風路構造が開示されている。つまり、グレンシーブと1番コンベアとに唐箕ファンからの選別風を供給する主選別風路と、チャフシーブの上面に沿って同唐箕ファンからの選別風を供給する第1プレ風路と、チャフシーブの下面に沿って同唐箕ファンからの選別風を供給する第2プレ風路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−24460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例のものでは、チャフシーブの上面に沿って送風する第2プレ風路は、同一唐箕ファンからの小分けであるため、充分な風選精度が得られず、特に、2番処理物を揺動選別棚の終端側に還元するものにあっては、これら多量の処理物の選別には処理能力に問題がある。
【0005】
本発明の課題は、主唐箕とは別に第2唐箕を設置することによって揺動選別棚上での風選能力を高め、特に2番処理物の集中選別を可能とし、選別性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱室(3)からの脱穀処理物を受け入れて後方に揺動移送しながら篩い選別する揺動選別棚(8)の下方前部側に第1唐箕(14)を設け、揺動選別棚(8)の左右一側から該揺動選別棚(8)上へ2番処理物を還元する2番処理装置(18)を装備し、揺動選別棚(8)の前方から該揺動選別棚(8)の上面に沿って送風する第2唐箕(25)を設け、該第2唐箕(25)からの選別風が揺動選別棚(8)上における前記2番処理装置(18)側に偏倚した部位を通過する構成としたことを特徴とする脱穀装置とする。
【0007】
扱室(3)からの脱穀処理物は、揺動選別棚(8)上に受けられて後方に揺動移送されながら篩い選別される。
扱室(3)内で発生する2番処理物は、2番処理装置(18)に送られて再処理されるとともに揺動選別棚(8)上に排出落下されるが、この時、揺動選別棚(8)の上面に沿って通過する第2唐箕(25)からの選別風によって風選される。
【0008】
従って、2番処理装置(18)から落下する処理物が予め風選別された状態で揺動選別棚(8)に落下するので、揺動選別棚(8)による選別負荷が低減し、揺動選別性能が向上する。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記揺動選別棚(8)の終端側上方に該揺動選別棚(8)と略同じ左右幅を有する吸塵ファン(17)を設け、該吸塵ファン(17)と前記第2唐箕(25)を左右方向にオーバーラップさせて配置したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とする。
【0010】
上記構成によると、揺動選別棚(8)上では棚幅全域にわたり第2唐箕(25)と吸塵ファン(17)のいずれか一方の選別風が作用することになり、選別能力がアップし、選別性能を高めることができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記2番処理装置(18)は、揺動選別棚(8)の下方から上方に向けて2番物を揚上搬送する2番揚穀コンベア(19)と、該2番揚穀コンベア(19)の終端部に設けられた上下方向の軸(20)芯回りに回転する縦型の2番処理胴(21)とから構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置とする。
【0012】
上記構成によると、2番処理胴(21)は、上下方向の縦軸芯回りに回転する構成であるため、排出落下される処理物は揺動選別棚(8)上に広く拡散されることになり、風選並びに篩い選別効果が高められる。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記揺動選別棚(8)の終端側にあって2番回収部(16)の上方に対応する部位に、揺動開閉可能な可動シーブ(11)を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置とする。
【0014】
上記構成によると、処理物量が多くなると可動シーブ(11)の開度を大きくし、処理物量が少なくなると可動シーブ(11)の開度が小さくなるように制御することができ、2番処理物の還元量の多少に応じて可動シーブ(11)の開度を自動調整しながら篩い選別することができて、選別性能をより高めることができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記揺動選別棚(8)の下方に配備された1番回収部(15)と2番回収部(16)との間には、前記可動シーブ(11)側に向けて送風する第3唐箕(26)を設け、揺動選別棚(8)上の処理物量に応じて前記第3唐箕(26)から可動シーブ(11)側への送風方向を変更する風向変更手段(27)を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱穀装置とする。
【0016】
上記構成によると、処理物量が少なくなると、第3唐箕(26)からの選別風を風向板(27)により可動シーブ(11)の始端側に向けて送風するように風向きを変更し、処理物量が多くなると、第3唐箕(26)からの選別風を可動シーブ(11)の終端側に向けて送風するように風向きを変更することで、特に処理物量が多い時には、藁屑を速やかに機外に排出することができるので、揺動選別の負担を軽くでき、処理物量の多少に応じた風選別が効果的に行える。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、2番処理装置(18)からの2番処理物は、揺動選別棚(8)上に落下するまでにここを通過する強力な選別風によって選別されるため、揺動選別棚(8)による選別負荷が低減し、篩い選別を効果的に行うことができ、揺動選別性能を高めることができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果を奏するものでありながら、第2唐箕(25)と吸塵ファン(17)とが左右にオーバーラップしているので、揺動選別棚(8)上では棚幅全域にわたり第2唐箕(25)と吸塵ファン(17)のいずれか一方の選別風が作用することになり、選別能力がアップし、選別性能をより高めることができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の効果を奏するものでありながら、2番処理胴(21)は、上下方向の縦軸芯回りに回転する構成であるため、排出落下される処理物は揺動選別棚(8)上に広く拡散されることになり、風選並びに篩い選別効果をより高めることができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の効果に加えて、揺動選別棚(8)の終端側を揺動開閉可能な可動シーブ(11)で構成しているため、2番処理物の還元量の多少に応じて可動シーブ(11)の開度を自動調整しながら篩い選別することができて、選別性能をより高めることができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の効果に加えて、処理物量の多少に応じて第3唐箕(26)からの選別風の風向きを変更することで、特に処理物量が多い時には、藁屑を速やかに機外に排出処理することができ、揺動選別の負担を軽くでき、処理物量の多少に応じた風選別を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】脱穀装置の要部の側断面図
【図2】同上要部の平面図
【図3】選別制御ブロック図
【図4】脱穀装置の要部の側断面図
【図5】同上要部の平面図
【図6】脱穀装置の要部の側断面図
【図7】同上要部の平面図
【図8】同上要部の一部破断せる背面図
【図9】排塵処理胴装置の切断背面図
【図10】同上要部の左側面図
【図11】同上要部の右側面図
【図12】脱穀装置の要部の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は脱穀装置の要部の側断面図、図2は脱穀装置の要部の平面図を示すものであり、次のような構成になっている。
【0024】
すなわち、脱穀装置1は、脱穀フィードチェン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱胴4により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網5が張設され、扱胴4の上部には開閉自在な扱胴カバー6が設けられ、扱室3の終端には藁屑や穂切れなどの排塵処理物を排出する排塵口7が設けられている。
【0025】
扱室下方の揺動選別装置(揺動選別棚)8は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚(グレンパン)9、チャフシ−ブ10、従来のストロ−ラックに代わる揺動開閉可能な可動シーブ11の順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ10の下方にグレンシ−ブ12等を配置して設けた構成としている。
【0026】
また、揺動選別棚8の下方には選別方向の上手側から順に、第1唐箕14、1番回収部(1番回収ラセン)15、2番回収部(2番回収ラセン)16、その上方に前記揺動選別棚8と略同じ左右幅をもつ吸塵フアン(横断流ファン)17を設けて排塵選別室を構成している。
【0027】
揺動選別棚8の一側には、2番回収部16からの2番物を揚上搬送して再処理した後、揺動選別棚上に還元する2番処理装置18を装備している。この2番処理装置18は、揺動選別棚8下方の2番回収部16からの2番物を上方に向けて揚上搬送する2番揚穀コンベア19と、2番揚穀コンベアの終端部に設けられた上下方向の軸20回りに回転する縦型の2番処理胴21とからなる構成である。2番処理胴21は網体で構成された処理室22内に軸架されてあり、ここで処理された処理物は処理胴21の下端側から排出羽根23によって下方の揺動選別棚8上へ広く拡散放出されるようになっている。
【0028】
揺動選別棚8の前方上部には、該揺動選別棚8の上面に沿って送風する第2唐箕25を設けてあり、この第2唐箕25は選別風が前記2番処理装置18側に沿って通過するように偏倚させた構成としている。
【0029】
そして、前記第2唐箕25と吸塵ファン17とは、前後方向視での左右方向において、所定幅(W)の範囲オーバーラップさせた構成としている。
前記可動シーブ11は、横軸芯回りで揺動開閉自在な複数のシーブ板11aを並列配備してなり、各シーブ板11aはワイヤを介して駆動モータM1により一斉に揺動作動して、処理物の漏下開度を変更調節できるように構成している。
【0030】
また、1番回収部15と2番回収部16との間には、揺動選別棚8終端部の可動シーブ11側に向けて送風する第3唐箕26が設置されている。第3唐箕26からの選別風の経路中には、選別風を可動シーブ11の始端側(イ)方向に送風したり、終端側(ロ)方向に送風することができるように前後に揺動自在な風向板27を設けてある。風向板27はワイヤを介して風向変更モータM2により揺動作動して風の向きを任意変更できるように構成している。つまり、処理物の量が少なくなるに伴って、風向板27を立ち上がらせて選別風の送風方向を可動シーブ11の始端側(イ)方向に変更し、処理物の量が多くなるに伴って、風向板27を後方側に寝かせて選別風の送風方向を可動シーブ11の終端側(ロ)方向に変更する構成になっている。
【0031】
制御装置28は、可動シーブの開度を調節する駆動モータM1と、可動シーブへの送風方向を変更調節する風向板27の変更モータM2を処理量検出センサSの検出結果に基づいて制御するように構成している。
【0032】
図4及び図5に示す2番処理装置は、扱胴4の右側に2番処理胴21を平行に並設した構成であり、2番処理物は揺動選別棚8の始端側に還元されるようになっている。2番処理胴21の後方には、これと同一軸芯上において扱室3終端からの排塵処理物を受け入れて処理する排塵処理胴30が軸架されている。
【0033】
そして、前方の第2唐箕25と後方の吸塵ファン17の両者により、2番処理胴21、排塵処理胴30から揺動選別棚8上に落下する処理物を風選別するように構成している。
次に、図6〜図11に示す別実施例について説明する。
【0034】
図例の排塵処理胴30は、外周に処理歯32を植設したラセン体33によって構成している。排塵処理室31を構成するケーシング部34に送塵作用を抑制する仕切体35を設け、仕切体35の送塵下手側には切刃36を設置している。ラセン扱歯による場合は送塵効率が良く、ソリッドツースに対してコスト安であるが、反面、処理物のこなし効果は低い。本例によると、上記仕切体により送塵作用にある程度抵抗を加え、下手側の切刃に導くことで、処理物がこなれ、藁屑や枝梗カギ又の細分化が可能となる。また、ケーシング部34の左側面側は受け網を目抜き鉄板37で構成することで、揺動棚上手側では粗大な処理物が棚に落下せず処理室内での処理が良好となり、後部側では目合を大とすることで回収効率を高めるようにしている。また、目抜き鉄板とすることで、目合の自由度が増し湿材の目詰まりも少ない。
【0035】
排塵処理胴30終端の対向側一側には片側吸引式排塵ファン38を設けてあり、揺動選別棚8の終端部の濾過部は、横方向のシーブ板11aによって構成している。又、前記仕切体35は、排塵処理室31への連通口39、ささり粒回収室40より後方位置に設定している。また、切刃は36はケーシング部34の角部に設置し、ケーシング内部に突出させた構成としている。
【0036】
図12に示す実施例について説明すると、吸塵用横断流ファン(吸塵ファン)17の吸入口42の開口面積を変化できるようにガイド板43のスライドによって吸入量調整可能に構成している。1番回収部15と2番回収部16間に設置された唐箕26からの選別風の送風方向を風向板27によって上方の横断流ファン17の吸入口42側と後方のストローラック44側とに変更できるように構成している。そして、その送風方向をファン17側に変更すると、ガイド板43が吸入口42「開」方向に作動し、送風方向をストローラック44がわに変更すると、ガイド板が吸入口「閉」方向に作動するようになっている。
【0037】
風向板27によって送風方向をファン17側に変更したときは、ファン17の前側に配設した直交処理胴45の藁屑排出側を選別風が通過し、横断流ファン内に吸い込まれるようになっている。なお、上記直交処理胴45は、扱室からの排塵処理物を処理する排塵ラック板46の上部に位置して左右横方向の軸芯周りに回転駆動可能に軸架され、藁屑を分離処理するようになっている。
【0038】
揺動選別棚8上に設けられた処理量検出センサSの処理量検出値に応じて選別風向(風向板27)と吸引ガイド(ガイド板43)を自動調整できるように構成する。
要するに、上記構成によると、選別風を縦方向(横断流ファン側)の向きに変更調整することで、直交処理胴から排出される藁屑を直接、横断流ファンに吸わせ機外に排出することができるので、揺動棚上に多量の藁屑が落下せず、選別性能を高めることができる。
【符号の説明】
【0039】
3 扱室
8 揺動選別棚
11 可動シーブ
14 第1唐箕
15 1番回収部
16 2番回収部
17 吸塵ファン
18 2番処理装置
19 2番揚穀コンベア
20 処理胴軸
21 2番処理胴
25 第2唐箕
26 第3唐箕
27 風向板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(3)からの脱穀処理物を受け入れて後方に揺動移送しながら篩い選別する揺動選別棚(8)の下方前部側に第1唐箕(14)を設け、揺動選別棚(8)の左右一側から該揺動選別棚(8)上へ2番処理物を還元する2番処理装置(18)を装備し、揺動選別棚(8)の前方から該揺動選別棚(8)の上面に沿って送風する第2唐箕(25)を設け、該第2唐箕(25)からの選別風が揺動選別棚(8)上における前記2番処理装置(18)側に偏倚した部位を通過する構成としたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記揺動選別棚(8)の終端側上方に該揺動選別棚(8)と略同じ左右幅を有する吸塵ファン(17)を設け、該吸塵ファン(17)と前記第2唐箕(25)を左右方向にオーバーラップさせて配置したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記2番処理装置(18)は、揺動選別棚(8)の下方から上方に向けて2番物を揚上搬送する2番揚穀コンベア(19)と、該2番揚穀コンベア(19)の終端部に設けられた上下方向の軸(20)芯回りに回転する縦型の2番処理胴(21)とから構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記揺動選別棚(8)の終端側にあって2番回収部(16)の上方に対応する部位に、揺動開閉可能な可動シーブ(11)を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記揺動選別棚(8)の下方に配備された1番回収部(15)と2番回収部(16)との間には、前記可動シーブ(11)側に向けて送風する第3唐箕(26)を設け、揺動選別棚(8)上の処理物量に応じて前記第3唐箕(26)から可動シーブ(11)側への送風方向を変更する風向変更手段(27)を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−249536(P2012−249536A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122319(P2011−122319)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】