説明

脱酸素用包装体

【課題】酸素吸収能が高く、かつ異物検査用金属探知機の使用が可能で、さらに包装体の膜物性の低下および酸素吸収にともなう異臭がすることなく安全性の高い酸素吸収能を有する脱酸素用包装体を得ること。
【解決手段】本発明では、上記の課題を達成するために、少なくとも、熱可塑性樹脂(樹脂A)と、C−H結合解離エネルギーが小さい熱可塑性樹脂(樹脂B)とを材料に使用した積層体を用いて、消臭剤を収納した包装体であることを特徴とする脱酸素用包装体としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医薬品などの内容物を包装する包装材料中に封入して、包装材料内部の酸素を除去するのに使用する、脱酸素用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種内容物を包装するパッケージ事業という分野において、「パッケージ」あるいは「包装」には、
消費者に対する購買意識の付与、危険性の提示といった「表示効果」、
充填した内容物自体に包装体が侵されないための「内容物耐性」、
外部刺激に対する「内容物の保護」、
以上の3つの要素が挙げられる。
【0003】
このうち、「内容物の保護」という点で特に注目を浴びているのが、酸素からの内容物の保護である。特に、食品分野、医療・医薬品分野等の各分野において、酸素に対する内容物の保護性が重要視されるようになってきた。容器内に内容物を充填し、密封した包装内には、内容物に溶解した酸素が必ず残留する。最近ではヘッドスペース中に残存している酸素も内容物を劣化させるという点から、不活性ガス置換を行うことでヘッドスペース中の酸素を除去する試みが行なわれているが、それでも微量の酸素が残存している状況である。
【0004】
そこで包装体内部の微量な酸素を除去するために、脱酸素剤の開発が行われるようになってきた。これらの代表的なタイプとしては、以下の(1)〜(3)のものが挙げられる。
【0005】
(1)鉄粉または鉄化合物を主剤とする無機系化合物を酸素透過性のある小袋に入れたタイプ(例えば特許文献1参照)。
【0006】
(2)アスコルビン酸塩やカテコールなどの複合炭水化物を用いた有機系化合物を酸素透過性のある小袋に入れたタイプ(例えば特許文献2参照)。
【0007】
(3)ガスバリヤ層と、酸化分解あるいは酸素付加反応を用いた炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂を有するシーラント層とからなる酸素吸収能を有する包装体中に、内容物を保存するタイプ(例えば特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、(1)のタイプのものについては、安全性および酸素吸収速度の点からは優れているが、食品分野や医療分野で一般的に行われている金属探知機による異物検査を行うことが出来ないなどの問題点がある。
【0009】
また、(2)のタイプのものについては、安全性および金属探知機が可能という点では優れているが、酸素吸収速度の点から不十分である。
【0010】
また、(3)のタイプのものについては、金属探知機可能かつ酸素吸収速度の点から内容物を封入する包装体のシーラント層中に酸素吸収能を有する組成物を用いたものがあるが、樹脂の酸化分解あるいは酸素付加反応を用いているため、酸素吸収後の膜物性の低下および酸素吸収にともなう臭気において問題がある。
【0011】
尚、プラスチック多層容器を構成する中間層の樹脂組成物に、脱酸素剤と吸着性消臭剤
とを含有させ、容器内の酸素を脱酸素剤で除去すると同時に、酸素を除去する過程で発生する異味異臭成分を吸着性消臭剤に吸着させて、異味異臭成分が内容物に移行するのを防止する技術が公知である(例えば特許文献4参照)。
【特許文献1】特公昭53−14185号公報
【特許文献2】特公昭58−29069号公報
【特許文献3】特許第3064420号公報
【特許文献4】特開平7−67594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、斯かるの背景技術を考慮したものであり、酸素吸収能が高く、かつ異物検査用金属探知機の使用が可能で、さらに包装体の膜物性の低下および酸素吸収にともなう異臭がすることなく安全性の高い酸素吸収能を有する脱酸素用包装体を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、少なくとも、熱可塑性樹脂(樹脂A)と、C−H結合解離エネルギーが小さい熱可塑性樹脂(樹脂B)とを材料に使用した積層体を用いて、消臭剤を収納した包装体であることを特徴とする脱酸素用包装体としたものである。
【0014】
また請求項2の発明では、前記C−H結合解離エネルギーが小さい熱可塑性樹脂(樹脂B)としては、アリル位の炭素、ベンジル位の炭素、三級炭素またはα位の炭素を有する熱可塑性樹脂の何れかであることを特徴とした請求項1に記載の脱酸素用包装体としたものである。
【0015】
また請求項3の発明では、前記消臭剤としては、粉末または樹脂中に分散されたコンパウンド形態で収納されており、粉末形態における粒径は1μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱酸素用包装体としたものである。
【0016】
また請求項4の発明では、前記熱可塑性樹脂(樹脂A)としては、酸素透過度が100cm3・25μm/m2・day・Pa以上で、ポリエチレン、エチレン-α−オレフィン共重合体、少なくとも1種のα−オレフィンからなるα−ポリオレフィン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン-環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン-α,β不飽和カルボン酸あるいはそのエステル化物、あるいはそのイオン架橋物、エチレン-酢酸ビニル共重合体あるいはその部分けん化物あるいは完全けん化物に代表されるエチレン系共重合体、あるいは酸無水物などのグラフト変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルなどの単体あるいはこれら1種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の脱酸素用包装体としたものである。
【0017】
また請求項5の発明では、前記積層体の厚みが30μm以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の脱酸素剤包装体としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、酸素吸収剤に鉄および鉄化合物を用いない為、異物検査用金属探知機の使用が可能で、さらに内容物を封入する包装体に酸素吸収能を有する形態でない為、酸素吸収
にともなう膜物性低下の影響を受けにくく、酸素吸収にともなう臭気についても脱酸素剤用包装体中に収納されている消臭剤に取り除かれる為、安全性の高い酸素吸収能を有する脱酸素剤用包装体を得ることが出来るという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の最良の一実施形態を説明する。
【0020】
本発明の脱酸素用包装体は、少なくとも、熱可塑性樹脂(樹脂A)と、C−H結合解離エネルギーが小さい熱可塑性樹脂(樹脂B)とを材料に使用した積層体を用いて、消臭剤を収納した包装体である。
【0021】
本発明の脱酸素用包装体は、食品や医薬品などの内容物を包装する包装材料中に封入して、包装材料内部の酸素を吸収すると同時に、酸素吸収にともなって発生する臭気成分を取り除く臭気抑制に使用される。
【0022】
本発明の脱酸素用包装体の酸素吸収および臭気抑制は、以下の(1)〜(3)示すメカニズムによりなされる。
【0023】
(1)内容物から溶出した酸素に対して、C−H解離エネルギーの小さな熱可塑樹脂(樹脂B)が、酸素付加反応を起こす。この反応により、内容物中の酸素が吸収されて取り除かれる。
【0024】
(2)内容物中の酸素除去が進行して行くと、酸素付加反応以外に、樹脂の分解反応が発生し、各種アルデヒドや酢酸などの臭気成分が発現する。
【0025】
(3)この発現した臭気成分は、脱酸素用包装体中に収納されている消臭剤に、物理的吸着または化学的反応により取り除かれ臭気抑制が行われる。
【0026】
C−H結合解離エネルギーが小さい熱可塑性樹脂(樹脂B)としては、アリル位の炭素、ベンジル位の炭素、三級炭素またはα位の炭素を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0027】
アリル位については共役系、非共役系を含めると、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、シクロヘキセンなどの脂環式不飽和炭化水素あるいはこれらの、環化ゴム系、誘導体など種々選択できる。
【0028】
ベンジル位の炭素を有する化合物としては、キシリレンジアミンの重合物であるMXD6ポリアミドやキシリレンジアミンのイソシアネート誘導体から合成されたポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0029】
三級炭素を有する化合物としては、プロピレンなどのαオレフィンの重合体あるいは他のモノマーとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはその部分(完全)けん化物、ポリスチレン、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体あるいはそのエステル化物あるいはイオン化共物、ポリアクリロニトリルなど挙げられる。
【0030】
さらにはα位の炭素としては、脂肪族ポリエステルあるいは脂肪族ポリアミドあるいはこれらの誘導体のような、カルボニル結合に隣接するような炭素原子を有する熱可塑生樹脂などが挙げられ、酸化反応を起こしやすい熱可塑性樹脂ならば、その骨格的なタイプは問わない。より好ましくは、結晶化度が低い、ガラス転移点温度が低いなどの熱可塑性樹脂を選定した方が良い。
【0031】
これらの樹脂は、樹脂Bとして、単独でも、混合して用いても良い。
【0032】
消臭剤としては物理吸着タイプまたは化学反応タイプのどちらを使用しても構わない。物理吸着タイプとしては、各種活性炭、珪藻土、各種アルミノ珪酸塩などが使用される。活性炭は通常のものでも、酸またはアルカリ添着などの処理を行ったものでも良い。アルミノ珪酸塩としては各種の天然あるいは合成のゼオライトなどのテクト珪酸塩や天然あるいは合成のフィロ珪酸塩が使用される。化学反応タイプとしてはシリカやアルミナなどにアミン系化合物を導入し反応させるものや水酸基とイオン結合させるものまたは金属イオンに配位させるものなどがある。これらは粉末形態またはポリエチレン樹脂などの樹脂中に分散したコンパウンド形態で使用することが可能である。粉末形態における粒径は1μm以上であることが好ましい。樹脂に対する添加量は決まっていないが樹脂100重量部に対して、50重量部以下で配合されていることが好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂(樹脂A)としては、酸素透過度が100cm3・25μm/m2・day・Pa以上で、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、少なくとも1種のα−オレフィンからなるα−ポリオレフィン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン−α,β不飽和カルボン酸あるいはそのエステル化物、あるいはそのイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体あるいはその部分けん化物あるいは完全けん化物に代表されるエチレン系共重合体、あるいは酸無水物などのグラフト変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルなどの単体あるいはこれら1種以上の混合物である。
【0034】
積層体の厚みは30μm以上であることが好ましく、これ以下であると酸素吸収能力が不十分もしくは膜物性として問題がある。
【0035】
また、酸素吸収能を促進させるものとして、不飽和脂肪酸としてはオレイン酸および/またはリノール酸および/またはリシノール酸や各種油に代表されるグリセロールの不飽和脂肪酸エステル、カロテノイドを添加しても良い。
【0036】
さらに、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、銅、ロジウム、バナジウム、クロム、セリウムから1種以上選択される芳香族カルボン酸塩、飽和あるいは不飽和カルボン酸塩などの遷移金属化合物塩、あるいはアセチルアセトナト、エチレンジアミン四酢酸、サレン、ポルフィリン、フタロシアニンなどの各種遷移金属錯体から選ばれる1種以上の化合物を添加しても良い。
【0037】
また、包装体という点では必要に応じては上記以外の各種添加剤、例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、UV吸収剤など各種添加剤を各層に配合してもかまわない。
【0038】
積層体の材料は、最終製品の成形方法および必要とされる酸素吸収能により設定した各種所定配合量の材料を、リボンミキサー、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサーなどを用いてドライブレンドしたもの、あるいはあらかじめ混練機に搭載されている各フィーダーを用いて所定量配合したものを、単軸押出機、二軸押出機などの押出機、バンバリーミキサーなどの混練機を用いて、ベースとなる熱可塑性樹脂の融点以上260℃以下、好ましくは240℃以下、さらに好ましくは220℃以下で混練することで得られる。
【0039】
そして、押出ラミネーション成形、押出キャスト成形、インフレーション成形などの成形法を用いて、積層体を作ることが可能である。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明の実施例1〜3と、比較例1〜4を具体的に説明するが、これら実施例1〜4に限定されるものではない。
【0041】
実施例1〜3では、以下の材料を用いた。
<樹脂A>
・低密度ポリエチレン(MFR=5)。
<樹脂B>
・ポリブタジエン。
<消臭剤>
・ケスモンNS−103(アミン化合物を導入したシリカ,東亜合成製)。
<酸化触媒>
・ステアリン酸マンガン。
<共酸化剤>
・オレイン酸。
【0042】
(実施例1〜3に用いる、酸素吸収能を有する積層体の作製方法)
3種3層共押出ラミネート機を用いて、中間層に酸素吸収能を有する樹脂組成物層を設けた2種3層の共押出多層フィルムを製膜した。層構成は外側より、15μm/40μm/15μmである。中間層に用いる材料はドライブブレンドしたものを使用した。2つの外層には低密度ポリエチレン(PE)を用いた。
【0043】
[実施例1]
「低密度ポリエチレン100重量部(1)/(ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン70重量部)(2)/低密度ポリエチレン100重量部(3)」構成の積層体を用いて、100mm×50mmの大きさの四角形状の三方シール袋を作製し、開口部から粉末形態の消臭剤0.1gを封入し、その開口部を熱融着して密封し、実施例1の脱酸素用包装体を作製した(図1参照)。図1において、支持層(1)、酸素吸収層(2)、支持層(3)は、それぞれ、低密度ポリエチレン100重量部(1)、(ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン70重量部)(2)、低密度ポリエチレン100重量部(3)に対応する。実施例1の脱酸素用包装体を200mm×140mmのアルミパウチに封入し、空気(O2 21%/N2 79%)200mlを注入、密閉シールを行ない、60℃にて保管した。このパウチ中の1、3、7、14日後の酸素残存量を酸素濃度計を用いて評価を行なった。その結果を表1に示す。その時の臭気および膜物性について官能評価を行った結果を表2に示す。また、金属探知機試験結果についても表2に示す。
【0044】
[実施例2]
「低密度ポリエチレン100重量部(1)/(ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン70重量部)(2)/低密度ポリエチレン100重量部(3)」構成の積層体を用いて、100mm×50mmの大きさの四角形状の三方シール袋を作製し、開口部から消臭剤濃度10%樹脂バッチの1.5gを封入し、その開口部を熱融着して密封し、実施例2の脱酸素用包装体を作製した(図1参照)。図1において、支持層(1)、酸素吸収層(2)、支持層(3)は、それぞれ、低密度ポリエチレン100重量部(1)、(ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン70重量部)(2)、低密度ポリエチレン100重量部(3)に対応する。実施例2の脱酸素用包装体を200mm×140mmのアルミパウチに封入し、空気(O2 21%/N2 79%)200mlを注入、密閉シールを行ない、60℃にて保管した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1、2に示す。
【0045】
[実施例3]
「低密度ポリエチレン100重量部(1)/(ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン69.02重量部+酸化触媒0.09重量部+共酸化剤0.09重量部)(2)/低密度ポリエチレン100重量部(3)」構成の積層体を用いて、100mm×50mmの大きさの四角形状の三方シール袋を作製し、開口部から消臭剤濃度10%樹脂バッチの1.5gを封入し、その開口部を熱融着して密封し、実施例3の脱酸素用包装体を作製した(図1参照)。図1において、支持層(1)、酸素吸収層(2)、支持層(3)は、それぞれ、低密度ポリエチレン100重量部(1)、(ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン69.02重量部+酸化触媒0.09重量部+共酸化剤0.09重量部)(2)、低密度ポリエチレン100重量部(3)に対応する。実施例3の脱酸素用包装体を200mm×140mmのアルミパウチに封入し、空気(O2 21%/N2 79%)200mlを注入、密閉シールを行ない、60℃にて保管した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1、2に示す。
【0046】
[比較例1]
「不織布層(4)/有孔ポリエチレン層(5)」構成の積層体を用いて、100mm×50mmの大きさの四角形状の三方シール袋を作製し、開口部から酸素吸収剤として鉄0.1gを封入し、その開口部を熱融着して密封し、比較例1の脱酸素用包装体を作製した(図2参照)。これを200mm×140mmのアルミパウチに封入し、空気(O2 21%/N2 79%)200mlを注入、密閉シールを行ない、60℃にて保管した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1、2に示す。
【0047】
[比較例2]
「不織布層(4)/有孔ポリエチレン層(5)」構成の積層体を用いて、100mm×50mmの大きさの四角形状の三方シール袋を作製し、開口部から酸素吸収剤としてアスコルビン酸0.1gを封入し、その開口部を熱融着して密封し、比較例2の脱酸素用包装体を作製した(図2参照)。これを200mm×140mmのアルミパウチに封入し、空気(O2 21%/N2 79%)200mlを注入、密閉シールを行ない、60℃にて保管した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1、2に示す。
【0048】
[比較例3]
「バリア基材にアルミナ蒸着ポリエステルフィルムを使用し、外層よりバリア基材(6)/接着層(7)/低密度ポリエチレン100重量部(8)/(ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン69.02重量部+酸化触媒0.09重量部+共酸化剤0.09重量部)(9)/低密度ポリエチレン100重量部(10)」構成の積層体をドライラミネート機を用いて得た。接着層(7)には主剤にテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸と1,4−ブタンジオールからなるポリエステルポリオールを用い、硬化剤にはトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加体を用いた。その積層体で220mm×220mmの大きさの四角形状の三方シール袋を作製し、比較例3の脱酸素用包装体を作製した(図3参照)。図3において、支持層(8)、酸素吸収層(9)、支持層(10)は、それぞれ、低密度ポリエチレン100重量部(8)、ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン69.02重量部+酸化触媒0.09重量部+共酸化剤0.09重量部)(9)、低密度ポリエチレン100重量部に対応する。比較例3の脱酸素用包装体を200mm×140mmのアルミパウチに封入し、空気(O2 21%/N2 79%)200mlを注入、密閉シールを行ない、60℃にて保管した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1、2に示す。
【0049】
[比較例4]
「バリア基材にアルミナ蒸着ポリエステルフィルムを使用し、外層よりバリア基材(6)/接着層(7)/低密度ポリエチレン90重量部+消臭剤10重量部(8)/(ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン69.02重量部+酸化触媒0.09重量部+
共酸化剤0.09重量部)(9)/(低密度ポリエチレン90重量部+消臭剤10重量部)(10)」構成の積層体をドライラミネート機を用いて得た。接着層(7)には主剤にテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸と1,4−ブタンジオールからなるポリエステルポリオールを用い、硬化剤にはトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加体を用いた。その積層体で220mm×220mmの大きさの四角形状の三方シール袋を作製し、比較例4の脱酸素用包装体を作製した(図3)。図3において、支持層(8)、酸素吸収層(9)、支持層(10)は、それぞれ、低密度ポリエチレン90重量部+消臭剤10重量部(8)、(ポリブタジエン30重量部+低密度ポリエチレン69.02重量部+酸化触媒0.09重量部+共酸化剤0.09重量部)(9)、(低密度ポリエチレン90重量部+消臭剤10重量部)(10)に対応する。比較例4の脱酸素用包装体を200mm×140mmのアルミパウチに封入し、空気(O2 21%/N2 79%)200mlを注入、密閉シールを行ない、60℃にて保管した。実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1、2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

表1及び表2から分かるように、実施例1〜3は、7日後には酸素残存量が0.0となり、酸素吸収速度の点から十分であり、しかも、臭気が感ぜられず、金属探知器に探知されず、膜物性の低下が感じられない。これに対して、比較例1は、実施例1〜3よりも、酸素吸収速度の点から優れているが、金属探知器に探知されるという問題がある。また、比較例2は、実施例1〜3より酸素吸収速度の点で劣るだけでなく、臭気が発生するという問題がある。また、比較例3は、実施例1〜3と酸素吸収速度は同程度であるが、膜物性の低下があるという問題がある。また、比較例4は、実施例1〜3よりも、酸素吸収速度の点から優れているが、膜物性の低下があるという問題がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1〜3の脱酸素用包装体の断面図。
【図2】比較例1〜2の脱酸素用包装体の断面図。
【図3】比較例3〜4の脱酸素用包装体の断面図。
【符号の説明】
【0053】
(1)…支持層
(2)…酸素吸収層
(3)…支持層
(4)…不織布層
(5)…有孔ポリエチレン層
(6)…バリア基材
(7)…接着剤層
(8)…支持層
(9)…酸素吸収層
(10)…支持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、熱可塑性樹脂(樹脂A)と、C−H結合解離エネルギーが小さい熱可塑性樹脂(樹脂B)とを材料に使用した積層体を用いて、消臭剤を収納した包装体であることを特徴とする脱酸素用包装体。
【請求項2】
前記C−H結合解離エネルギーが小さい熱可塑性樹脂(樹脂B)としては、アリル位の炭素、ベンジル位の炭素、三級炭素またはα位の炭素を有する熱可塑性樹脂の何れかであることを特徴とした請求項1に記載の脱酸素用包装体。
【請求項3】
前記消臭剤としては、粉末または樹脂中に分散されたコンパウンド形態で収納されており、粉末形態における粒径は1μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱酸素用包装体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(樹脂A)としては、酸素透過度が100cm3・25μm/m2・day・Pa以上で、ポリエチレン、エチレン-α−オレフィン共重合体、少なくとも1種のα−オレフィンからなるα−ポリオレフィン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン-環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂、エチレン-α,β不飽和カルボン酸あるいはそのエステル化物、あるいはそのイオン架橋物、エチレン-酢酸ビニル共重合体あるいはその部分けん化物あるいは完全けん化物に代表されるエチレン系共重合体、あるいは酸無水物などのグラフト変性ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルなどの単体あるいはこれら1種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の脱酸素用包装体。
【請求項5】
前記積層体の厚みが30μm以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の脱酸素剤包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−175896(P2007−175896A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374224(P2005−374224)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】