説明

脱髄疾患または脱髄症状の治療方法

【課題】 脱髄疾患および脱髄症状(例えば多発性硬化症、脊髄損傷、外傷性脳損傷および卒中)の治療、卒中のリハビリテーション、膀胱過敏および膀胱機能不全の治療、ならびにニューロパシー痛およびケモカイン誘発痛の治療に有用な化合物を提供する。
【解決手段】 式IのN−(ピリジニル)−1H−インドール−1−アミンを提供する。前記化合物は、カリウムおよびナトリウムの両チャネルの遮断作用を有することから、上記疾患の治療などに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多発性硬化症(MS)は変性および炎症性の神経学的疾患で、中枢神経系が冒され、ニューロンの脱髄帯の形成および脱髄(ミエリンの消失)によるニューロンの伝達障害を伴なう。同様に、脊髄外傷および卒中でも広範囲の脱髄が通常報告されている(Bunge et al., 1993; Blight & DeCrescito, 1986; Pendlebury et al., 2000)。
有髄化線維における活動電位伝播の生理学に関する基礎研究によって、脱髄線維における伝導遮断は、ミエリン消失領域にアミノピリジン感受性カリウムチャネルが出現することに部分的には起因することが示された(Bever 1996)。
【0002】
活動電位は、跳躍伝導プロセスによって正常な有髄化神経線維に沿って伝播する。跳躍伝導は、ランヴィエ絞輪で電圧感受性ナトリウムチャネルが開放されることによって発生したナトリウム電流から生じる。したがって、電気刺激の開始で、ナトリウムイオン(Na+)はニューロンに進入し、ニューロンをさらに陽性に荷電させる。ニューロンの陽性の性質が臨界レベルに達するとき、“脱分極”が発生する。脱分極はイオンの陽性コアが軸索に沿って神経末端に向かってニューロンを流れていくことを可能にする。ニューロンがそれ自身を“リセット”するために、過剰な陽性電荷は消散させる必要がある。これは、カリウムイオン(以下では“K+”)のカリウムチャネルからの流出により達成される。ミエリンが破壊されるとき、脱分極時に開放される電圧感受性カリウムチャネルが軸索鞘上に出現する。カリウム電流(ナトリウム電流に対して反対に流れる)は活動電位振幅をおよび持続時間を低下させて、遠位有効電流密度を低下させることによって伝導不全の一因となる。これらの伝導不足は、筋肉虚弱を含む身体的損傷症状を随伴する。K+のカリウムチャネルからの流出を遮断することによって、ニューロンはより長時間脱分極を維持し、より再刺激され易くなる。したがって、カリウムチャネル遮断剤は、活動電位伝達を障害する疾患および症状(例えばMS、外傷性脳損傷(以下では“TBI”)および脊髄損傷(以下では“SCI”))の治療に有用であると考えられる。
【0003】
カリウムチャネル遮断剤(例えば4−アミノピリジン(以下“4−AP”))は、活動電位持続時間および同振幅を脱髄線維で増加させ、さらにin vitroで活動電位伝播を改善し(Bostock et al., 1978; 1981; Targ & Kocsis, 1985; 1986; Shi & Blight, 1997)、神経伝達物質の放出を促進し(Bostock et al., 1981; Hirsh & Quandt, 1993; Sherratt et al., 1980)、筋肉の収縮性を強化する(Agoston et al., 1982; Savage et al., 1985)。これらの観察は、カリウムチャネル遮断剤(例えば4−AP)はMS患者の脱髄線維の伝導性を回復できることを示唆した。その後の臨床試験の結果は、アミノピリジン治療はある種のMS患者の症状を改善できる可能性をさらに支持した(Jones et al., 1983; Stefoski et al., 1987; Davis et al., 1990; van Diemen et al., 1992; Bever et
al., 1994; Schwid et al., 1997)。
【0004】
4−APはまた、SCIを含む神経学的症状、慢性痛の緩和、並びにSCI患者、アルツハイマー症、灰白髄炎後症候群、重症筋無力症、ハンチントン病、加齢性記憶障害、記憶または認識を障害する外傷後−、卒中後−または中毒後−症候群および自律神経障害における痙性の治療で有効であることが開示された(R.J. Wurtman & R. Buyukuysal, 1989; R.R. Hansebout & A. Blight, 1996; R.R. Hansebout & A. Blight, 1994)。 一般患者集団における4−APに関する安全性についての懸念が存在するにもかかわらず(多発性硬化症, コグノススタディー#51, Decisions Resources, October, 1999; pp77-8)、長期にわたる脊髄損傷患者でのファンプリジン−SR(Fampridine-SR)の使用について臨床実験が開始された(Potter et al., 1998a,b)。いくつかの実験は、4−APの単一投与は、損傷後1年またはそれ以上投与したとき、SCI患者である種の機能を回復さ
せることができることを示した(Potter et al., 1998a,b; Qiao et al., 1997; Hayes et al., 1993; 1994)。長期投与後の明白な効果もまた報告された。臨床的に顕著な機能的改善は、2年またはそれ以上のSCI病歴の患者に30mg/kgの4−APを毎日、3ヶ月間経口投与した後で16人の患者のうち16人で認められた。以前に完全損傷に等級分けされた数人の患者は、不完全損傷レベルにあらためて等級分けされた(Segal et al., 1999)。30mg/日(約0.5mg/kg)の4−APを毎日、3ヶ月間経口処置された後、全患者が、神経学的機能または肺機能の少なくともあるタイプについてある程度の改善を示した。前記よりも低い投与量は有効ではなかった。
【0005】
先で述べたように、4−APはカリウムチャネルを遮断し、効果的に活動電位を持続させる。残念ながら、カリウムチャネル遮断剤が活動電位伝達を障害する疾患および症状に随伴する症候を改善するこのメカニズムは、てんかん様活性ももたらす。実際、4−APが動物およびヒトで痙攣剤であることは認められている。したがって、4−APのMS、TBIおよびSCIの治療薬としての有用性は、その前痙攣剤的傾向および他の望ましくない副作用のために抑えられている。多動、錯乱および全身性硬直・間代発作が0.8mg/kgを越える投与量で報告された(Ball et al., 1979; Bever et al., 1994)。Van
Diemen et al(1993)は、MS患者における改善度(滑らかな追跡歩行によって示される)は、4−APの血清レベルに顕著に相関することを報告した(33〜75ng/mLが経口投与後の顕著な改善に必要である)。しかしながら、副作用(感覚異常/知覚不全、めまい/ふらつき、および均衡歩行の不安定性)が同じ投与量で観察された。別の患者での研究で、Bever et al(1994)は、104ng/mLの血清レベルでの大発作を報告している。両グループの研究者らは、さらに高い投与量および血清レベルによって、より低い投与量の4−APに反応するMS患者ではさらに大きな改善が得られるであろうと提唱した。したがって、4−APの有効度は投与量および副作用によって制限されている。
【0006】
高血清レベルの4−APに付随する副作用の懸念から持続放出製剤(ファンプリジン−SR)が開発された(J.G. Masterson & M. Myers, 1994; 1996a; 1996b)。ファンプリジン−SRはMSについて現在第二相臨床試験中である。ファンプリジン−SRの前臨床試験の患者は多様な機能で改善を示した。各個体に応じてこれらの改善には以下が含まれる:膀胱機能、腸機能および性機能の増強、自然な運動および感覚の強化、並びに筋肉痙攣、疲労および慢性痛の減少。
【0007】
4−APに付随する望ましくない副作用を排除するためのまた別のアプローチは、4−APと電圧依存ナトリウムチャネル遮断剤の同時投与を含む。ナトリウム(Na+)チャネル遮断剤はNa+イオンの流入を遮断し、ニューロンの脱分極に対する感受性を低下させる。前記はニューロンの興奮性を効果的に低下させる。実際、電圧依存ナトリウムチャネル遮断剤および4−APの同時投与はマウスの4−AP誘発痙攣を防止することが報告された(Yamaguchi & Rogawski, 1992)。4−APはナトリウムチャネル遮断特性をもたない。
【0008】
本明細書の請求項に記載の方法で用いられる化合物は、米国特許第4970218号で開示された方法により合成することができる。本明細書に引用される全ての特許および他の刊行物は参照により本明細書に加入される。
本発明の範囲内のある種の化合物は、in vitroおよびin vivoでナトリウムチャネルの電圧依存遮断を誘発することができることは知られている(Tang et al., 1995; 1998; Tang & Kongsamut, 1996)。電圧依存ナトリウムチャネル遮断剤は、細胞の脱分極状態の間にいっそう効果的に機能する。これらの化合物は正常なニューロンのシグナリングにはほとんどまたは全く作用しないが、痙攣、頭部外傷または虚血時のナトリウムチャネルの遮断を可能にする。これら薬剤の多くが、前記症状の動物モデルで大脳保護作用を有する(Madge et al., 1998)。
【0009】
理論に拘束されないが、カリウムチャネル遮断剤はまた、ニューロパシー痛およびサイトカイン関連痛(関節炎痛を含む)の治療に発展性のある薬剤である。Sweitzer et al(1999)は、ミクログリアの活性化およびサイトカインの放出は、末梢の炎症または末梢神経損傷のいずれかに続く痛覚過敏で役割を果たす可能性を提唱した。カリウムチャネル遮断剤(例えば4−AP)は、ラット、マウスおよびヒトのミクログリアの活性化を遮断することを報告した(Eder, 1998)。Pyo et al(1997)は、4−APは、活性化ミクログリアのナイトライト放出を減少させることができることを報告した。このことは痛みの態様はこのメカニズムによって調節できることを示唆している。さらに、4−APは、ネズミのマクロファージのリポ多糖類(LPS)誘発NO産生を減少させることが報告された(Lowry et al., 1998)。LPSのマウスへの投与はまた、異なる作用メカニズムを有するいくつかの異なる薬剤による抗関節炎効果を特定するモデル系としても用いられた(Mcllay et al., 2001)。坐骨神経またはL5もしくはL6脊髄神経の収縮を含むいくつかの実験モデルが開発され、ニューロパシー痛について究明された(Bennett & Xie, 1988;
Seltzer et al., 1990; Kim & Chung, 1992)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今や、式Iの化合物がカリウムチャネル遮断特性を有することが見出された。カリウムおよびナトリウムチャネルの両方に対する固有の遮断特性の組合せは、これら化合物が脱髄疾患または症状の治療に治療薬として有用であることを意味する。例えば、前記化合物はMS、SCI、TBI(外傷性脳損傷)および卒中で有用である。これらの化合物は4−APよりも安全な治療薬を提供する。なぜならば、4−APはカリウムチャネルのみを遮断するだけであり、これは多動、錯乱および痙攣の望ましくない副作用をもたらすからである。式Iの化合物はまた、卒中のリハビリテーション、膀胱過敏および膀胱機能不全の治療、内臓のケモカイン誘発痛(関節痛を含む)の治療並びにニューロパシー痛の治療にも有用である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
下記式Iの化合物はカリウムおよびナトリウムチャネルの両チャネルに対する遮断特性の特異な組合せを提供する:
【0012】
【化12】

式中、
mは0、1または2であり;
nは0、1または2であり;
pは0または1であり;
各Rはそれぞれ別個に水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、ニトロまたはアミノであり;
各R1はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アル
カノイル、ハロゲン、シアノ、−C(O)C1−C6アルキル、−C1−C6アルキレンCN、−C1−C6アルキレンNR’R”(ここでR’およびR”はそれぞれ別個に水素またはC1−C6アルキル)、−C1−C6アルキレンOC(O)C1−C6アルキル、または−CH(OH)R4(ここでR4は水素またはC1−C6アルキル)であり;
2は水素、場合によってハロゲン、ヒドロキシまたはベンジルオキシで置換されたC1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルキニル、−CO21−C6アルキル、または−R5−NR’R”(ここでR5はC1−C6アルキレン、C1−C6アルケニレンまたはC1−C6アルキニレンで、R’およびR”はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキルであるか、または基−NR’R”は全体として1−ピロリジニルである)であり;さらに
3は水素、ニトロ、アミノ、ハロゲン、C1−C6アルコキシ、ヒドロキシまたはC1−C6アルキルである。
これらの化合物は脱髄疾患および脱髄症状(例えば多発性硬化症、脊髄損傷、外傷性脳損傷および卒中の治療に有用である。これらの化合物はまた、卒中のリハビリテーション、膀胱過敏および膀胱機能不全の治療、内臓のケモカイン誘発痛(関節痛を含む)の治療並びにニューロパシー痛の治療にも有用である。
【0013】
定義:
1)脱髄疾患:本明細書で用いられるように、脱髄疾患とは、ミエリンが主要標的である疾患と定義される。それらは2つの主要な群、後天的疾患および遺伝性代謝疾患に分類される。多発性硬化症(MS)は後天的疾患の部類に分類される。MSは通常20代から50代の年齢に出現する。MSは中枢神経系の白質を攻撃する。その古典的症候(全症例の90%)で、MSは再発/緩解期を交互に繰り返し、緩解期が時間をかけて短くなることを特徴とする。MSの症状には、任意に組み合わされた痙攣性不全対麻痺、不安定歩行、複視および失禁が含まれる。
【0014】
遺伝性代謝疾患の部類には以下の8つの特定された白質萎縮が含まれる:異染性白質萎縮、レフスム病、副腎脳白質ジストロフィー、クラッベ病、フェニルケトン尿症、キャナヴァン病、ペリツェーウス・メルツバッヒャー病およびアレグザンダー病。最初の6疾患は貯蔵異常である。酵素の欠損または機能不全が有毒な化学物質の集積をもたらす。他方、ペリツェーウス・メルツバッヒャー病およびアレグザンダー病の病因は不明である。
遺伝性脱髄疾患(通常は幼児期または小児期初期に出現する傾向がある)の臨床経過は痛ましい。以前には正常であった小児が急速な経過で視力、聴力、会話および移動が奪われる。予後は数年以内の死亡である。
【0015】
2)脱髄症状:本明細書で定義されるとおり、脱髄症状は不完全な有髄化をもたらす症状である。前記の脱髄症状には、脊髄損傷、外傷性脳損傷および卒中が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
3)脊髄損傷(SCI):本明細書で用いられるように、SCIは、運動性または知覚のような機能の低下をもたらす脊髄に対する損傷と定義される。
4)外傷性脳損傷(TBI):本明細書で用いられるように、外傷性脳損傷は脳に障害をもたらす損傷と定義される。頭部損傷は以下の2つの態様の1つをもたらすであろう:
―閉鎖性頭部損傷は、移動中の頭部が急激に停止し(例えばフロントガラスに打ちつけた場合)または鈍器で殴打され、頭蓋内で脳が堅い骨表面に強打されたときに生じる。閉鎖性頭部損傷はまた、脳が急激に前後に移動した場合(例えばむち打ち症の場合)、頭部に明白な外部外傷がない状態で生じることもある。
―貫通性脳損傷は、高速の移動物体(例えば弾丸)が頭蓋骨を貫通したときに生じる。
【0016】
閉鎖性および貫通性頭部損傷はいずれも局在的および広範囲または分散性損傷を脳にもたらす。生じる身体障害には記憶の低下および感情障害、運動困難(麻痺を含む)および五感への障害が含まれる。さらにまた、多くの患者が前記の損傷により死亡している。
今日、治療は損傷後24時間で可能な限り多くの損傷を封じ込めることに集中される。脳に損傷を受けたとき、結果として生じる破壊は最初の外傷の範囲に留まらない。“二次損傷”の連鎖反応が引き続き生じる。脳自身の免疫細胞が腫脹と液体蓄積の引き金を引き、損傷を受けた神経細胞は、グルタメートと称される神経伝達物質を溢出させ始め、このグルタメートはまもなく周囲のニューロンに有毒なレベルにまで蓄積される。
【0017】
5)卒中のリハビリテーション:本明細書で用いられるように、卒中のリハビリテーションは、卒中によって失われた機能の回復をもたらす介入と定義される。
6)卒中:本明細書で定義されるとおり、卒中は、血液凝塊が血管または動脈を遮断し、または血管が破裂して脳領域への血流を阻害するときに発生する。卒中が発生すると、直接関係する領域の脳細胞は死滅する。医師は前記死細胞領域を梗塞と呼ぶ。前記細胞は、発作の開始後通常数分から数時間以内に死滅する。卒中では、脱髄の測定手段、例えば磁化伝達比(magnetisation transfer ratio)(MTR)は、運動欠損に相関する軸索の損傷と密接に関連する(Pendlebury et al., 2000)。
【0018】
7)アルキルまたはアルキレン:別段の記載または指示がないかぎり、“アルキル”または“アルキレン”という用語は分枝または直鎖アルキルまたはアルキレン基を指し、式に応じてアルキル内の炭素の量によって特定される。例えばC1−C6アルキルは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つもしくは6つの炭素の分枝または直鎖アルキルまたはアルキレンを意味し、その事例または任意の範囲は例えば以下のもの、ただしこれらに限定されないものでありうる:C1−2、C1−3、C1−4、C1−5、C2−3、C2−4、C2−5、C2−C6、C3−C4、C3−5、C3−6、C4−5、C4−6、C5−6など。
8)C1−C6アルコキシ:別段の記載または指示がないかぎり、C1−C6アルコキシという用語は1から6つの炭素原子を有する直鎖または分枝アルコキシ基を指す。前記の例には、メトキシ、エトキシ、n−プロキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ並びに直鎖および分枝鎖ペントキシおよびヘキソキシが含まれる。
【0019】
9)ハロゲン:別段の記載または指示がないかぎり、ハロゲンという用語はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味するであろう。
10)C1−C6アルカン酸:別段の記載または指示がないかぎり、C1−C6アルカン酸は、カルボキシル基が水素または炭素原子が1つから5つのアルキル基に結合しているカルボン酸を意味するであろう。
11)C1−C6アルカノイル:C1−C6アルカノイルという用語は、C1−C6アルカン酸のカルボキシル基からヒドロキシ基を除去することによって得られる基を意味し、したがって例えばフォルミル、アセチルなどが含まれる。アルカノイル、アルケノイルおよびアルキノイルはそれぞれアルカン酸、アルケン酸およびアルキン酸のカルボキシル基からヒドロキシ基を除去することによって得られる基を意味する。したがって、例えばリノール酸に由来するリノレイル基は、上記で定義したようにアルケノイルという用語の例である。
【0020】
12)“医薬的に許容できる塩”は、目的とする用途での患者の治療に適合する酸付加塩または塩基付加塩を意味する。
13)“医薬的に許容できる酸付加塩”は、式Iによって表される基礎化合物または前記化合物の任意の中間体の任意の無毒な有機もしくは無機酸付加塩である。適当な塩を生成する無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸、並びに酸金属塩、例えばオルトリン酸一水素ナトリウムおよび硫酸水素カリウムが含まれる。適当な塩を生成する有機酸の例には、モノ−、ジ−およびトリ−カルボン酸が含まれる。前記の酸の例は、例えば酢酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、p−トルエンスルホン酸およびスルホン酸、例えばメタンスルホン酸および2−ヒドロキシエタンスルホン酸である。一酸塩または二酸塩のいずれも生成できる。前記塩は水和物でも溶媒和物でもまたは実質的に無水形でもよい。一般に、前記化合物の酸付加塩は水および種々の親水性有機溶媒により可溶性であり、それらの遊離塩基形と較べて一般により高い融点を有する。
【0021】
14)“医薬的に許容できる塩基付加塩”は、式Iの化合物または前記化合物の中間体の無毒な有機もしくは無機塩基付加塩である。前記の例は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはバリウム;アンモニア、および脂肪族、脂環式または芳香族有機アミン、例えばメチルアミン、トリメチルアミンおよびピコリンである。適当な塩の選別基準は当業者には公知であろう。
15)“立体異性体”は、個々の分子についてそれらの原子の空間的方向のみが異なる全ての異性体に対する一般的用語である。前記には鏡像異性体(エナンチオマー)、幾何学(シス/トランス)異性体、および1つ以上のキラル中心をもつ化合物の異性体(それらは互いに鏡像ではない(ジアステレオマー))が含まれる。
【0022】
16)“患者”は温血動物、例えばラット、マウス、イヌ、ネコ、モルモットおよび霊長類(例えばヒト)を意味する。
17)“治療”または“治療する”とは、症状を緩和すること、症状の原因を一時的または永久的に排除すること、または指定された疾患もしくは症状の徴候の出現を予防または遅らせることを意味する。
18)“治療的に有効な量”は、指定された異常、疾患または症状の治療に有効な化合物量を意味する。
19)“医薬的に許容できる担体”は、無毒な溶媒、分散剤、添加剤、アジュバント、または活性成分と混合して医薬組成物(すなわち患者に投与することができる投薬形)の形成を可能にする他の物質である。前記担体の一例は、典型的に非経口投与のために用いられる医薬的に許容できる油である。
【0023】
20)“ニューロパシー痛”とは、神経系に対する損傷から生じる痛みを意味する。前記神経の損傷は特定されてあっても特定されてなくてもよい。ニューロパシー痛の例にはヘルペス後神経痛、疼痛性糖尿病性ニューロパシー、幻肢痛および中枢性発作後痛が含まれる。
21)“膀胱過敏および機能不全”は、例えば間質性膀胱炎および過活性膀胱のような症状を指す。過活性膀胱は、頻尿、尿意切迫、切迫失禁、排尿しようとする強い突然の切迫尿意の後に生じる偶発的尿失禁を含む症状を特徴とする明確な病的状態である。過活性膀胱の診断は、局所病変または代謝関連病因が存在しない場合に、排尿筋の過活動による無意識の膀胱収縮に起因する症状によって為される。間質性膀胱炎(IC)は膀胱壁の慢性の炎症性症状で、これはしばしば診断されずに経過する。
【0024】
式Iの化合物は、急性脊髄損傷および長期に及ぶ脊髄損傷の回復率および回復の程度を効果的に改善することができる。これらは、in vivoでの使用依存ナトリウムチャネル遮断および電圧依存カリウムチャネル遮断に一致する特性を有する。これらは4−APよりも安全な治療薬を提供する。特に好ましいものは、Rが水素、ハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1−C6アルキルであり;R1が水素またはC1−C6アルキルであり、R2が水素またはC1−C6アルキルであり;R3が水素、C1−C6アルキルまたはハロゲンであり;さらにpは0である化合物である。さらに好ましい化合物は、アミノ基がピリジン基の4位に結合している化合物である。
特に好ましいものは、下記式II(本明細書ではまた、HP184またはN−(3−フルオロ−4−ピリジニル)−N−プロピル−3−メチル−1H−インドール−1−アミンとしても知られている)およびIIIの化合物(本明細書ではまた“8183”としても知られている)である:
【0025】
【化13】

【0026】
HP184については、ラットで30mg/kgのHP184を腹腔内投与した後1時間の間示される脳内マイクロモル濃度に対して非常に良好な許容性が示されている(Smith et al., 1996)。
【0027】
使用依存ナトリウムチャネル遮断および電圧依存カリウムチャネル遮断の特異の組合せによって、本発明の化合物はまた“純粋な”ナトリウムチャネル遮断剤(例えばカルバマゼピンおよびフェニトイン)と区別される。前記化合物は、MSの“実際に見える(positive)”症状(痛みを伴なう強直性痙攣および知覚異常)の軽減に使用され成功している。しかしながら、それらは消極的(negative)症状(麻痺および知覚減退)は悪化させる(Sakurai & Kanazawa, 1999)。本発明の化合物は、カリウムチャネルを遮断するという事実によりニューロンの機能を強化する。このことは機能的回復を促進させる。現在のところ、ナトリウムチャネル遮断剤は、痛みを伴なう症状の治療におよび/または神経保護剤として有用であると考えられている。しかしながら、それらがリハビリテーションの努力を強化することは期待できないであろう。
【0028】
上記に述べた症状または疾患に冒されている患者の治療で、式Iの化合物は、治療的に有効な量で前記化合物の生体利用を可能にする任意の形態または態様で、例えば、経口的、舌下、頬側、皮下、筋肉内、静脈内、経皮的、鼻腔内、直腸、局所的等の方法で投与することができる。製薬分野の業者は、治療されるべき症状または疾患、病期、患者の状態および他の関連する環境に合わせて選択した化合物の具体的な特性に応じて適当な投与形態および態様を決定することができる。例えば以下の成書を参照されたい:Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Mack Publishing Co. (1990)(この文献は参照により本明細書に加入される)。
式Iの化合物は単独で、または医薬的に許容できる担体と混合した医薬組成物の形態で投与することができる。前記担体の割合および性質は、選択された化合物の可溶性および化学的特性、選択された投与経路、標準的製薬技術および他の関連する基準によって決定される。
【0029】
本発明の化合物は経口的に、例えば錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、分散液、溶液、シロップ、ウェファース、チューインガムなどの形態で投与することができる。さらに本発明の化合物は1つまたは2つ以上の以下のアジュバントを含むことができる:結合剤、例えば微晶質セルロース、アラビアゴムまたはゼラチン;添加剤、例えば澱粉またはラクトース;崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル(Primogel)、トウモロコシ澱粉など;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステロテックス(Sterotex);研磨剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素。さらに甘味剤(例えばスクロースまたはサッカリン)または香料(例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香料)を加えてもよい。単位投薬形がカプセルの場合、上記タイプの物質の他に、液体担体(例えばポリエチレングリコールまたは脂肪油)を含んでいてもよい。他の単位投薬形では、前記単位投薬の物理的形態を改変する物質、例えばコーティングとして他の種々の物質を含むことができる。したがって、錠剤またはピルは砂糖、セラックまたは他の腸溶皮で被覆することができる。シロップは、本化合物の他に、甘味剤としてスクロースおよびある種の保存料、染料および着色剤、並びに香料を含むことができる。
【0030】
本発明の式Iの化合物はまた局所的に投与することができる。前記のように投与する場合は、前記担体は、溶液、軟膏またはゲル基剤を適当に含むことができる。例えば、前記基剤は1つまたは2つ以上のワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱物油、希釈剤(例えば水およびアルコール)並びに乳化剤および安定剤を含むことができる。
前記溶液または分散液はまた、1つまたは2つ以上の以下のアジュバントを含むことができる:滅菌希釈剤、例えば注射用の水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;および張度調節剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。非経口用調製物はアンプル、使い捨て注射筒またはマルチドースバイアルに封入することができる。
【0031】
本発明の高度に親油性のエステル、アミドおよびカルバメートは、デポット調製物として製剤化し投与するとき、例えば適切に選択した医薬的に許容できる油として注射したときは、数日からまたは約1週間から4週間にわたって哺乳類の体内で持続的に放出させることができる。好ましい油は植物由来のもの、例えばゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、ココナッツ油、ダイズ油、オリーブ油などであるか、または前記は脂肪酸と多官能性アルコールとの合成エステル、例えばグリセロールもしくはプロピレングリコールである。
本発明のデポット組成物は、高度に親油性の本発明のエステル、アミドまたはカルバメートを医薬的に許容できる油に滅菌状態下で溶解させて調製される。前記油は、所望の期間にわたって活性成分を放出させることができるように選択される。適当な油は、従来技術を参照するか、または簡単な実験を実施することによって当業者は容易に決定することができる。
【0032】
式Iの化合物が治療的に機能する能力を示す用量範囲は、治療される具体的な疾患または症状およびその重篤度、患者、製剤、患者が罹患している他の潜在的な病気、および同時に患者に投与される他の医薬にしたがって変動するであろう。一般に、式Iの化合物では、その治療活性は約0.001mg/kg患者体重/日から約100mg/kg患者体
重/日の間の用量で示されるであろう。
以下の実施例は例証を目的としており、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0033】
実施例1:電圧依存ナトリウムチャネル遮断と一致するin vivoの証拠
方法:実験方法はBachauss et al.(1992)の方法を基準にした。雄のCD−1マウス(体重35〜40g)を抱水クロラール(400mg/kg)で麻酔した。手術用顕微鏡下で、右眼球2mm後方で皮膚を3mmの深さに切開した。側頭筋をずらし、頭蓋を小さく切除して硬膜を露出させた。前記硬膜に切り目をいれてずらし、右頚動脈の遠位部分を露出させた。前記動脈を微細鉗子を用いて二極性エレクトロアギュレーション(bipolar electroagulation)によって主要分岐部に向けて上流で閉塞させた。梗塞容積は24時間後に2%塩化トリフェニルテトラゾリウム溶液を用いて測定した。この実験例では、HP184は非絶食マウスに閉塞1時間前に経口投与した(10匹/群)。梗塞容積の減少は、1%酢酸(賦形剤)処理マウスとの比較を基準にした。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

マウスの永久的中頚動脈閉塞モデル(pMCAO)で観察された神経保護作用は、前記用量および時間でのin vivo電圧依存ナトリウムチャネル遮断と一致する。
【0035】
実施例2:ラットの光形成血栓による脳損傷後の浮腫に対するHP184の作用
論理的根拠/目的:血栓塞栓性卒中は西欧世界では三番目の死因である。前記卒中は、脳循環内で生じたか、または心臓もしくは大血管内で形成され脳循環内に運び込まれた血液凝塊または崩壊血栓によって引き起こされる。その後血流は妨害され、浮腫、壊死および組織のアポトーシスを伴なう虚血性病巣が発達する。浮腫は、脳を圧迫して虚血の他に細胞溶解および機械的損傷を加速させるので有害である。HP184(Na+/K+合同チャネル遮断剤)による処置の前記脳浮腫に対する影響について調べた。
【0036】
方法:雄のスプラーグドーリーラット(体重180〜200g)を抱水クロラール(400mg/kg,ip)で麻酔し、定位手術装置に置いた。皮膚を切開して頭蓋を露出させ、冷発光体(Bioblock 150W)をラムダの前方頭蓋の右側に接触させて静置した。ベンガルローズ染料(食塩水中に10mg/kg,iv)を静脈内投与し、直ちに頭蓋の照明を開始し、5分間継続した。続いて頭蓋を覆って皮膚を縫合し、前記動物をケージに戻した。光形成血栓による損傷後24時間して、HP184を静脈内ルートにより動物に5mL/kgの容積で0、10または20mg/kg体重で投与した(HP184は水に1%のトウィーン中で作製した)。1時間後に、断頭により動物を殺し、その脳を取り出した(プロトコルに関する付録を参照されたい)。コアサンプルは、前記損傷部位および前記損傷の反対側の側面部で直径6mmのコークボーラーを用いて採取した。水分含有量を組織の湿潤重量/組織の乾燥重量によって求め、浮腫は、各ラットについて反対側の半球から得たサンプルと比較した損傷サンプルの%過剰水分として表した。
【0037】
結果:表2に示されている。
【表2】

HP184は、20mg/kgでiv投与後1時間および光形成血栓損傷後25時間で、右側脳皮質の浮腫を顕著に(22%)減少させることを示した。
【0038】
実施例3:ラットの一過性巣状脳虚血後の病巣サイズおよび神経学的機能に対するHP184の影響
論理的根拠/目的:本実験では、HP184はラットの一過性巣状脳虚血モデルで虚血開始後1時間で投与した。測定したパラメーターは病巣サイズおよび神経学的機能であった。
方法:雄のスプラーグドーリーラット(Iffa Credo, France)(体重約220〜240g)を亜酸化窒素−酸素混合物(70:30)中のハロタン(1.4%)で麻酔した。両方の総頚動脈(CCA)を単離した。側頭頭蓋除去により露出させた左の中大脳動脈(MCA)をマイクロクリップで閉塞させ、同時に前記CCAを1時間閉塞させた。体温および脳の温度を正常温度に維持した。術後、動物を24〜26℃の部屋に置いたホームケージに戻した。
【0039】
20mg/kgのHP184(注射用滅菌水中の1%トゥイーンに溶解)を虚血開始後1時間して静注により投与し、コントロールラットには同じプロトコルにしたがい賦形剤を与えた。虚血後24時間で、神経学的機能検査を下記の9ポイントの等級基準を用いてブラインドで実施した。
【0040】
【表3】

【0041】
その後ラットを殺し脳を取り出した。脳マトリックスを用いて新鮮な切片を切り出し、2%の塩化トリフェニルテトラゾリウムで37℃で5分染色した。続いてこの切片を10%ホルマリン中で24時間4℃で保存した。梗塞領域を画像分析装置(Leica Q500)で測定した。
結果:虚血は皮質および線条の両方で脳病巣の発達を誘発した(図1参照、この図は、MCA閉塞1時間後のHP184の10mg/kgおよび20mg/kgのボラス静注投与の影響を示す)。10mg/kgでのHP184の静注は、脳病巣を顕著に減少させた(41%、p<0.05)。この減少は皮質で顕著であった(−45%、p<0.05)。
【0042】
実施例4:カリウムチャネル遮断の測定
方法:PC12細胞(ATCC, Rockville, MD)を10%ウシ胎児血清(GIBCO BRL, Grand
Island, NY)を補充したダルベッコー改変イーグル培養液で増殖させた。カリウムチャネル電流は、以前に詳細に記載された標準的なパッチクランプ電気生理学プロトコルを用いて測定した(Rampe et al., 1998)。
結果および考察:カリウムチャネル電流は、−80mVの保持電位から+40mVへの200msecのクランプパルスによって誘発された。このプロトコルによって外向きの持続直流が生じた。HP184(10μM)の適用によって前記電流の振幅が減少し、電流消失速度が増加した。電流をパルスの終了時点で測定したとき、HP184は電流振幅を75±4%(n=4)減少させた。これらの結果は、HP184は、活性化状態を遮断することによって電圧依存K+チャネルの作動薬として機能するという見解と一致する。
【0043】
実施例5:筋肉機能強化のin vivoでの証拠
目的:無機染料ルテニウムレッド(RuR)は電圧依存Ca2+電流を種々の細胞タイプ(マウスの感覚ニューロン(Duchen, 1992)、シナプトソームおよび神経筋調製物(Hamilton
& Lundy, 1995; Tapi & Velasco, 1997)を含む)で遮断することが報告された。さらにまた、RuRは脳シナプトソームで(Meza-Ruiz & Tapia, 1978; Tapia & Meza-Ruiz, 1977)、さらに神経筋接合部で(Alnaes & Rahamimoff, 1975; Person & Kuhn, 1979)神経伝達物質の放出を遮断する。In vivoではRuRの腹腔内(ip)投与はマウスに弛緩性麻痺を引き起こし(Tapia et al., 1976)、さらに電圧依存K+チャネル遮断剤である4−アミノピリジン(4−AP)は前記の作用で拮抗する(Tapia, 1982)。Tapia & Velasco(1997)は、in vivoおよびin vitroの両方におけるRuRの作用を概論し、RuRは神経終末の膜に存在するCa2+部位と相互作用すると提唱した。結合実験によって、RuRは選択的にN型Ca2+チャネルを遮断し、これらのチャネルは神経伝達物質の放出に必要なCa2+の流入を調節することが示された。前記の著者らはまた、RuRの腹腔内投与は、イートン・ランバートの重症筋無力症(N型Ca2+チャネルと結合する抗体によるCa2+進入およびACh放出の遮断を特徴とする自己免疫疾患)の実験モデルとなる可能性を示唆した。前記の可能性と一致して、4−APは筋肉の脆弱を改善し、患者の神経筋伝導を回復させると報告された(Lundh et al., 1977a; 1977b; 1979; McEvoy et al., 1989; Aisen et al., 1995)。4−アミノピリジン(4−AP)およびグアニジンのRuR誘発弛緩性麻痺に対する拮抗能力は、おそらく神経伝達物質の放出を促進するそれらの能力によるものである(Lundh, 1978; Lundh & Thesleff, 1977; Tapia & Stiges, 1982)。いずれの場合にも、Tapiaと共同研究者らは、RuRはシナプトソームで4−APによって誘発される放出を遮断すると報告した(Tapia & Stiges, 1982)。
【0044】
in vitroでは、HP184は、4−APよりも種々のメカニズムによって神経伝達物質の放出を強化する。高い濃度では、4−APは電気的に刺激による放出および自発的放出の両方を強化するが、これらの作用はカルシウム依存性である。対照的に、HP184はカルシウム非依存性自発的放出のみを強化する(Smith et al., 1993)。自発的な放出はin vivoで機能的役割を有するという仮説もまた提示された(Smith et al., 1996)。
以下の実験の目的は、HP184および4−APは、同時注射した後、RuRの麻痺作用に拮抗することができるか否かを決定することであった。
【0045】
方法および結果:1群4〜5匹のマウス群(25〜35グラム)(CD−1;Charles River)にルテニウムレッドおよび賦形剤(1%氷酢酸)、ルテニウムレッドおよび4−AP、またはルテニウムレッドおよびHP184をそれぞれ別個に、しかし同時に腹腔内注射した。“8183”として知られている化合物もまたこの実験系でテストした。注射後15分で開始し、マウスを“旗ざお”装置の近くに置き、マウス自身の体重を支える能力(すなわち、旗ざおにつかまり落下しない)を記録した。結果は、検査したマウスの総数に対して自身の体重を支えることができたマウスの数として記録した。これらの結果は表3に示されている。全実験は2PMから4:30PMの間に実施した。
【0046】
【表4】

【0047】
結論:4−AP(ip)およびHP184(ip)はともにRuRの投与によって誘発される弛緩性麻痺に拮抗することができた。このことは、HP184は、おそらくK+チャネルの遮断によりin vivoでニューロンの伝導を強化できることを示唆している。さらに4−APの場合と同様に、in vitroの脳の薄片実験が脳の神経伝達物質の放出増加を支持している(Smith et al., 1993; 1996)ことから、HP184もまたニューロンの伝導を強化することができる。
この実験系で調べたナトリウムチャネル遮断剤であるジフェニルヒダントイン(DPH)およびリルゾール(RIL)の用量は、以前に巣状虚血モデルで神経保護的であることが示された(Rataud et al., 1994; O'Neill et al., 1997)。本モデルで前記が能力を欠くということによって、RuR誘発弛緩性麻痺に拮抗するHP184の能力はおそらくin vivoのナトリウムチャネル遮断によるものではないという説明にさらに支持が加えられるであろう。このことは臨床的にも同様に示唆されている。MSの負の症候(運動の消失)はしばしばナトリウムチャネル遮断剤によって悪化する(Sakurai & Kanazawa, 1999)。
【0048】
実施例6:脊髄挫傷疾患モデル
論理的根拠および目的:Gruner & Yee(1999)は、脊髄損傷25日後に4−APはラットでmMEPの脊髄損傷等級を改善することを示した。同一の方法を用いて、機能態様を測定した。これらの態様は最小mMEPと相関することが示された。本実験の目的は以下の2点であった:
1)HP184は、もし急性期に投与されたなら中等度の脊髄挫傷誘発運動障害を軽減させることができるか否かを決定すること、および前記の有効性をコハク酸メチルプレドニソロン(MPSS)と比較すること、さらに
2)HP184は、長期間持続した(25日)軽度の脊髄損傷を有するラットの運動機能を改善することができるか否かを決定し、その効果を4−アミノピリジン(4−AP)と比較すること。
【0049】
急性期治療−ip投与:雌ラットの脊髄に椎弓切除(擬似手術、n=12)を施すか、または脊髄を直径1.4mmに押しつぶした(5群、各々n=12)。正常な脊髄の直径は約2.5mmである。前記圧迫は、下記の開放野歩行基準(Open Field Walking Scale)で1.5〜2.5の初期開放野歩行スコアを特徴とする中等度の損傷である。前記開放野歩行基準(OFT)の定義は以下のとおりである:
0.0 自発運動無し
0.7 わずかな自発運動
1.0 臀部および/または膝(くるぶしではなく)による運動
1.3 臀部および膝(くるぶしではなく)の支えで能動的な運動
1.7 くるぶしの支えで不審な運動
2.0 3つの主要関節全てによる四肢の運動
2.3 身体を支えようと試みる
2.7 立位でのみ身体を支えることが可能
3.0 能動的に身体を支えることが可能、非協調歩行
3.3 断続的な協調歩行
3.7 くるぶしまたは足(脚末端)の制御欠如、中手指節関節または足の中央表面を支えにした歩行、
4.0 歩行における前肢と後肢の協調性、
4.3 後肢による姿勢保持の改善、腹部は地面につかない
4.7 1肢または2肢のつま先をひきずる、全速力で回転したときにわずかに不安定
5.0 正常歩行および基本姿勢(base of support)、迅速な回転によってバランスを失うことはない、つま先を引きずらない。
【0050】
薬剤処置:挫傷(1日目)の15分以内に、HP184群と呼ばれるラットに1%氷酢酸賦形剤中の20、10、5または0mg/kgを腹腔注射した。この投与を2日目および3日目に繰り返した。他方、挫傷第一日目の15分、2時間、4時間および6時間後にMPSSを30mg/kgで腹腔投与した。このMPSS投薬スケジュールは文献で最適なものと記載されてあり、ヒトで実施された投薬を忠実に実行した、MPSSは、現在のところヒトの脊髄損傷で承認された唯一の薬剤療法である。図2は、種々の治療群の経時的な行動スコア(OFT)を示す。正常な術前スコアは5である。改善速度および改善の程度は、賦形剤処置ラットと20および5mg/kg用量群とでは有意に相違した。各点は、8〜12匹のラットの平均+semを示している。
【0051】
急性期処置−po投与:雌のラットの脊髄に椎弓切除を施すか、または脊髄を直径1.4mmに押しつぶした。HP184群では、前記をラットに挫傷の5〜10分前に経口投与し、続いて2日目および3日目に1日1回経口投与した。MPSSは前記のように投与した。行動スコア(OFT)は図3に示されている。正常な術前スコアは5である。
改善速度および改善の程度は、賦形剤処置群と比較したとき全ての用量(10mg/kg群を含む)で改善された。各点は、12匹のラットの平均+semを示している。
【0052】
慢性挫傷実験
雌のラットの脊髄に椎弓切除を施すか、または脊髄を直径1.6mmに押しつぶした。これは軽損傷を表し、処置しない場合の25日後のOFTスコアが4.0となるようにデザインした。この実験は、Gruner & Yee(1999)が記載した運動障害と同じ程度のものを再現するために選択した(前記の著者らは、後肢小規模終板の電位記録が4−APによって改善されることを示した)。前記の方法および未処置のままの損傷期間はまた脱髄をもたらすことが示された。行動スコア(OFT)は図4に示されている。図4は、上記に記載した開放野歩行基準の定義を用いて各群の平均および標準誤差を示している。
【0053】
この実験では、OFTスコアはわずかに高く(4.3〜4.5)、改善の余地はわずかであった。1日1回HP184を26、27および28日目に経口投与した後、それ自身をコントロールとして用い定常的な改善が観察された。4−AP0.6mg/kgを1日1
回腹腔に投与した後も定常的改善が同様に観察された。統計的差異は、マン・ウィットニーU検定を用い各ラットの変化を基準にした(各ラットはそれ自身がコントロールであった)。1日目、2日目および3日目の行動テストは全て、胃管給餌後3時間して実施した。3日目には薬剤は投与されなかった(薬剤投与が開始された最初の日は0日目であった)。統計分析は以下のとおりである:
20mg/kg−賦形剤コントロールと比較して3時間から3日目で顕著な改善(p=0.002)
10mg/kg−賦形剤コントロールと比較して30分および3時間から12時間で顕著な改善(p=0.014)
3mg/kg−賦形剤コントロールと比較して30分から6時間から1日目で顕著な改善(p=0.0027)
4−AP−賦形剤コントロールと比較して0分から6時間および12時間から2日目で顕著な改善(p=0.0027)
【0054】
表4は、投与前から3回毎日連続投与後3時間の各群のスコアにおける変化を示している。
【表5】

【0055】
図5は、各ラットで標準化したスコアの変化を示している。グラフは、0.6mg/kgの4−AP(ip)、20または10または3mg/kgのHP184(ip)による3日連続投与の後(投与前から3回目の連続投与後3時間)で観察された変化を示している。椎弓切除は擬似手術群を示す。各群(n=12)の平均±semが図5に示されている。
【0056】
長期持続脊髄損傷における有効性
中等度の脊髄損傷から35日経過した後で、3mg/kgのHP184(po)の経口投与は単回投与後に運動回復を改善し、さらに4日間毎日投与することによって上記に記載した開放野歩行試験の定義を基準にしたとき持続的な改善が得られた。4−AP(0.6mg/kg,ip)も同様に有効であった。両慢性脊髄損傷実験(軽度の脊髄挫傷後25日および中等度の脊髄挫傷後35日で最初の薬剤投与が実施された)の結果の統計処理は表5に示されている。
【0057】
【表6】

【0058】
上記に示したように、中等度の挫傷損傷後35日から41日の経口胃管給餌による3mg/kg/日のHP184治療は有意な改善をもたらした。この実験では、HP184を投与されたラットの損傷脊髄の損傷部位にはより多くのミエリンが存在することが観察された。本データは、HP184は再ミエリン化(有髄化)を強化するか、または脱髄プロセスの進行を遅らせるという主張と一致する。
さらに別の実験を実施し、二重盲検プラセボおよび陽性コントロールを含むようにデザインした、中等度の慢性(損傷後35日)挫傷実験例でHP184の最小有効量を決定した。3mg/kg(po)で以前に観察されたHP184の効果は、陽性コントロールとして4−AP(0.6mg/kg,ip)を用いて確認された。さらにまた、ミエリン染色に対する全処置の影響を組織学的に調べた。
【0059】
(1)行動評価
150匹の雌の成獣ウィスターラット(250〜300g)(Charles Riverより入手)を右の施設に少なくとも1週間収容した:McMaster University Health Sciences Center (HSC) Central Animal Facilities(CAF)。この期間中に、前記動物で下記に記載するパフォーマンス試験を実施し、それらの試験に馴れさせた。ラットは手術前の2週間毎日手で触れた。
前記の中央動物施設CAFの適切な装備を有する手術室でラットをイソフルラン(3〜5%):O2(1L/分)により麻酔した。テムジェシック(Temgesic)(0.03mg/kg体重、皮下(SQ))を痛みの緩和のために手術前に投与した。脊髄を3.5mm幅の改変カバースリップ鉗子(Blight(1991);Rathbone研究室で改変された)で挫傷させた(圧迫した)。前記鉗子を1.4mmで15秒間閉じた。前記の操作により、グルーナー(Gruner)スケール(1996)の中等度レベルの結果に匹敵する損傷レベルが得られた。前記圧迫損傷はまた別の場合にはBlight(1991)が記載した方法にしたがって実施した。
【0060】
動物を疼痛行動、尿道感染または尿保持について観察した。痛みはチネノール(Tynenol)(0.8mg/10g体重、経口投与)で処置した。
尿道感染を予防するために、セプトラ(トリメトプリン−スルファメトキサゾール)を術前1日および術後5日間経口投与し(300mLの水に4.5mL)、さらに手で膀胱を圧迫して尿を排出させた。感染事例では(すなわち白濁尿または血尿によって示される一切の尿道感染)、ベイトリル(エンロフロキサシン、7mg/kg体重)を1日2回皮下(SQ)注射した。
移動行動および分断反射(segmental reflex)における変化を損傷後5週間まで調べた。動物は開放野歩行課題、後肢の配置および足(脚末端)の向きについてテストした。動物を損傷後2、7、14、21、28および35日目に調べた。術後35日までに、新たな自然回復はほとんど生じなかった。したがって治療は35日目に開始した。
【0061】
HP184は、氷酢酸で酸性化した(0.1mLの酸/10mLの水)滅菌(オートクレーブ)脱イオン逆浸透圧水に溶解させた。4−AP(分子量94.12)(Sigma; E. Jankowska et al., 1982; Gruner et al., 1999)は、生理的食塩水に溶解し(0.6mg/kg体重)、腹腔内注射した。ラットの1つの群(賦形剤コントロール−1)には経口胃管給餌によって賦形剤を投与した。行動試験は、胃管給餌投与の直前および3時間後に実施した。続いて、前記ラットの皮膚を35日目に乱切した。他の全てのラットには、経口胃管給餌によりHP184(群に応じて0.3、1または3mg/kg体重)または4−AP(0.6mg/kg,ip)または賦形剤(賦形剤コントロール−2)を1日1回術後35日から43日まで投与した。前記の期間中に行動試験を胃管給餌投与の直前並びにその後3時間および24時間経過してから実施した。続いて、前記ラットに43日目に最後の行動試験の後灌流を実施した。
【0062】
術後35日から43日までHi−8を用いて行動試験をビデオ記録した。
統計分析は、GB−Stat ppc 6.5.2を用いて、マッキントッシュコンピュータで実施した。行動スコアは、クルスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)のノンパラメトリック分散分析法(ANOVA)によって分析した。ポストhoc比較はマン・ウィットニーU検定を用いて実施した。
開放野移動能力の概括的回復は、各群の平均OFTスコアによって評価し、それらは図6および7に示されている。これらの結果は、HP184または4−APで処置された動物のパフォーマンスは、賦形剤を投与されたコントロール動物のそれとは有意に異なることを示している。反復測定のためのANOVAは35〜42日での治療効果を示した。
【0063】
結果は、4−APおよびHP184はともに有益な作用を有し、中等度の慢性脊髄圧迫後の行動試験を改善することを示した。HP184の3種類の濃度は全て有益な効果を有するが、3mg/kgのHP184はもっとも良好な移動機能の回復をもたらし、この用量で以前に観察されたHP184の作用が確認された。これらの結果はまた、HP184の最小の濃度(0.3mg/kg)は本範例での最小有効用量ではない可能性も示している。
【0064】
脊髄の組織学的検査
本実験では、HP184による治療は脊髄損傷してから長期間後に投与したとき中等度の長期脊髄損傷を有するラットのミエリン量に影響を与えるか否かを調べた。
上記で述べた検定でラットの脊髄を本実験に用いた。
術後21日目に、実験動物をペントバルビタールナトリウム(50〜60mg/kg体重、ip)で深麻酔し、さらに、最初に0.1%ヘパリンを含む0.05Mのリン酸緩衝食塩水(PBS)100mL、続いて4%のパラホルムアルデヒド(PFA)300〜500mLを心臓を経由して灌流させた。脊髄の分節T9からL1を取り出し、続いて30%のスクロース溶液で凍結保護し、10.24%のポリビニルアルコールおよび4.26%のポリエチレングリコール中で−70℃で凍結した。
【0065】
病巣部分および病変部位に対して吻側および尾側の10mmを含む各脊髄の一分節をティッシュテックメディウム(Tissue Tek medium)に包埋した。クリオスタットで連続切片を20μmの間隔で縦軸方向に切り出した。3切片毎にルクソールファストブルーでミ
エリンを染色した。検定は処理について知らされていない観察者によってコードを付されたスライドで実施された。切片を光学顕微鏡下で脱髄の程度について調べた。
脊髄の最大脱髄面積の測定のために、ツァイスの顕微鏡を用いた写真をデジタル化した。脱髄度は、コンピュータ処理バイオクォント(Bioqiant)BQ−TCW98画像分析プログラムを用い、処置群について知らされていない研究者により病巣中心部で測定した。
【0066】
統計分析は、GB−Stat ppc 6.5.2を用いて、マッキントッシュコンピュータで実施した。組織学的結果は、クルスカル・ウォリスのノンパラメトリック分散分析法によって分析した。ポストhoc比較はマン・ウィットニーU検定を用いて実施した。
6つの実験群(群に応じて0.3、1もしくは3mg/kg体重、または4−AP0.6mg/kg、または賦形剤コントロール1および2)の脱髄度は図8に示されている。棒線は損傷中心の脱髄領域のピクセルの数を表す(**P<0.001、*P<0.05、クルスカル=ウォリスのノンパラメトリック分散分析法(ANOVA))。定量結果は、HP184または4−AP処置動物の脊髄は食塩水コントロールの脊髄よりも有意に多い有髄化領域を有することを示している。すなわち、賦形剤を注射された動物の脊髄は、HP184または4−AP処置動物の脊髄よりも有意に多い脱髄領域を有していた。
【0067】
組織学的分析は、HP184(3種の濃度全てで)および4−APはともに有髄化に対して有益な影響を有することを示し、これは行動試験の結果と一致する。これらの群のうち、3mg/kgのHP184で処置された動物はもっとも少ない脱髄を示した。したがって、4−APまたはHP184は、脊髄を損傷してから長期経過後の病期で再有髄化を強化することができるように思われる。これらのデータは単にミエリン減少速度の低下を表しているとは思われない。なぜならば、2つのコントロール群(コントロール1およびコントロール2)で、実験開始および終了時に評価された脱髄度に差異はないからである。
【0068】
実施例7:ラットの膀胱過敏に対する静脈内HP−184の影響
本実験では、Fraser et al.(2001)が概略したKClモデルにおける静脈内HP184の影響を示す。Fraser et al.は、硫酸プロタミン治療(尿路上皮の保護細胞障壁機能を破壊すると考えられる)およびKClの生理学的尿濃度(500mM)を両立させた。静脈内HP184の効果を、ウレタン麻酔を施した急性膀胱過敏のラットの累積用量反応実験で賦形剤単独(n=4/群)と比較した。持続的な開放型膀胱圧尿量測定法(前記は持続的輸液時に膀胱の膨満および枯渇を測定する)を利用し、膀胱過敏に対する薬剤の影響を測定した。膀胱が過敏であるとき、膀胱は、C−線維輸入神経の過敏のために同じ膨満速度のときにより頻繁に収縮する。図9は、賦形剤単独効果と比較した場合に投与前過敏値から用量依存態様で膀胱収縮頻度が減少することを示している。反復測定のための分散分析によって、賦形剤単独では効果がないが、一方、HP184は有意に膀胱収縮頻度を用量依存態様で低下させることが示された(P=0.0019)。
【0069】
実施例8:マウスにおけるNO産生に対するHP184の影響
マウスにLPS(3mg/kg,ip)を投与する30分前に30mg/kgのHP184(ip)を注射した。LPS注射の5時間後にマウスを殺し、血漿を採取した。硝酸塩レベルをグリース(Griess)アッセイで測定した。各群は9〜10匹のマウスで構成されていた。図10のグラフに示したように、HP184はNO産生を抑制する。一方向ANOVAの後でLPS処置のみが賦形剤処置と有意に相違することが見出された(p<0.01)。
【0070】
実施例9:ニューロパシー痛モデルにおけるHP184
スプラーグ・ドーリーラットの成獣の雄のL6神経に一方向狭窄を与え、慢性の神経損傷を作出した。手術から回復した後(術後3〜7日)、損傷した足に機械的刺激を適用して足の引っ込め閾値について動物を検査した。これは、各後肢の足低表面に目盛り付きフォン・フレー(von Frey)モノフィラメントを適用して測定した。結さつした足の引っ込め閾値が50%減少した動物のみを実験に用い、任意の6つの群の1つにふりわけた。3つの群にはHP184の3種の用量(0.3、3および20mg/kg,po)のいずれかを投与し、4番目の群にはMDL(10mg/kg,ip)と称する別の化合物を投与し、5番目の群にはガバペンチン(90mg/kg,sc)を投与し、6番目の群には賦形剤のみを投与した。行動試験は、ガバペンチン(90mg/kg,sc)投与後45分、HP184、MDLおよび賦形剤投与後3時間して実施した。結さつした足および結さつしていない足の引っ込め閾値の間のスコアの差異を各動物について計算し、これらの差異を主要因子として各群をANOVAによる分析に付した。結果は図11に示されている。グラフは、最初の薬剤投与の前後(急性期実験)における左足(結さつ)の閾値−右足(正常)の閾値の平均(±SEM)差を示している。統計分析によって、HP184(20mg/kg)によるL5結さつの機械的痛覚過敏の用量応答性減弱、およびガバペンチン(90mg/kg)による痛覚過敏の明瞭な復帰が示された。分析は反復ANOVAの間および/または範囲内に収まった。この後続いてポストhoc比較(LSD)を群×時間の相互関係について実施し、薬剤投与前後の引っ込め閾値を精査した。
群:F(5,43)=8.18,p<0.001
時間:F(1,43)=47.34,p<0.001
群×時間:F(5,43)=9.25,p<0.001
賦形剤処置動物では、2つの足の間の機械的引っ込め閾値に大きな差が存在する。
【0071】
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Wurtman RJ and Buyukysal R; WO 89/09600 entitled “Method and composition for treating neurological disorders".
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】中大脳動脈(MCA)閉塞による虚血により誘発される脳病巣に対するHP184投与の効果を示す。
【図2】挫傷(1日目)の15分以内にHP184群と呼ばれるラットに20、10、5または0mgを腹腔に注射し、これを2日目および3日目に繰り返したものと、MPSS30mg/kgを腹腔に注射したものの、経時的行動スコア(OFT)を示す。
【図3】雌のラットの脊髄に挫傷を施したものに、HP184を経口投与するか、MPSSを経口投与したものの経時的行動スコア(OFT)を示す。
【図4】雌のラットの脊髄に軽損傷を施したものに、HP184を投与したものの開放野試験における行動スコア(OFT)を示す。
【図5】処置前後の種々のOFTスコアを示す。
【図6】中等度の脊髄損傷ラットの開放野試験におけるHP184および4−AP対賦形剤(対照)の比較を示す。
【図7】各ラットについて標準化したOFTスコアの変化を示す。
【図8】賦形剤単独投与と比較した場合のHP184および4−AP投与による膀胱過敏に対する影響を示す。
【図9】膀胱過敏に続く膀胱収縮頻度に対する静脈内HP184の影響を示す。
【図10】マウスのLPS誘発NO産生に対するHP184の影響を示す。
【図11】薬剤投与の前後における機械的足引っこめの閾値を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物または医薬的に許容できるその塩の治療的に有効な量をそれを必要とする患者に投与することを含む脱髄疾患を治療する方法。
【化1】

式中、
mは0、1または2であり;
nは0、1または2であり;
pは0または1であり;
各Rはそれぞれ別個に水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、ニトロまたはアミノであり;
各R1はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルカノイル、ハロゲン、シアノ、−C(O)C1−C6アルキル、−C1−C6アルキレンCN、−C1−C6アルキレンNR’R”(ここでR’およびR”はそれぞれ別個に水素またはC1−C6アルキルである)、−C1−C6アルキレンOC(O)C1−C6アルキル、または−CH(OH)R4(ここでR4は水素またはC1−C6アルキルである)であり;
2は水素、場合によってハロゲン、ヒドロキシもしくはベンジルオキシで置換されたC1−C6アルキル、C1−C6アルケニル、C1−C6アルキニル、−CO21−C6アルキル、または−R5−NR’R”(ここでR5はC1−C6アルキレン、C1−C6アルケニレンまたはC1−C6アルキニレンであり、そしてR’およびR”はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキルであるか、または基−NR’R”は全体として1−ピロリジニルである)であり;さらに
3は水素、ニトロ、アミノ、ハロゲン、C1−C6アルコキシ、ヒドロキシまたはC1−C6アルキルである。
【請求項2】
Rが水素、ハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1−C6アルキルであり、R1が水素またはC1−C6アルキルであり、R2が水素またはC1−C6アルキルであり、R3が水素、C1−C6アルキルまたはハロゲンであり、そしてpが0である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱髄疾患が多発性硬化症である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
化合物が下記式
【化2】

を有する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
脱髄疾患が多発性硬化症である請求項4の方法。
【請求項6】
治療的に有効な量の請求項1の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む脱髄症状の治療方法。
【請求項7】
Rが水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、またはC1−C6アルキルであり、R1が水素またはC1−C6アルキルであり、R2が水素またはC1−C6アルキルであり、R3が水素、C1−C6アルキルまたはハロゲンであり、さらにpが0である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
脱髄症状が脊髄損傷である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
脱髄症状が外傷性脳損傷である請求項6に記載の方法。
【請求項10】
脱髄症状が卒中である請求項6に記載の方法。
【請求項11】
化合物が以下の式
【化3】

を有する請求項7に記載の方法。
【請求項12】
脱髄症状が脊髄損傷である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
脱髄症状が外傷性脳損傷である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
脱髄症状が卒中である請求項11に記載の方法。
【請求項15】
治療的に有効な量の請求項1の化合物をその必要がある患者に投与することを含む卒中のリハビリテーションの方法。
【請求項16】
Rが水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、またはC1−C6アルキルであり、R1が水素またはC1−C6アルキルであり、R2が水素またはC1−C6アルキルであり、R3が水素、C1−C6アルキルまたはハロゲンであり、そしてpが0である請求項14に記載の方法。
【請求項17】
化合物が下記式
【化4】

を有する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
治療的に有効な量の請求項1の化合物をそれを必要とする患者に投与することによって、該患者においてカリウムチャネルを遮断する方法。
【請求項19】
Rが水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、またはC1−C6アルキルであり、R1が水素またはC1−C6アルキルであり、R2が水素またはC1−C6アルキルであり、R3が水素、C1−C6アルキルまたはハロゲンであり、そしてpが0である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
化合物が下記式
【化5】

を有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
化合物が下記式
【化6】

を有する請求項2に記載の方法。
【請求項22】
化合物が下記式
【化7】

を有する請求項7に記載の方法。
【請求項23】
脱髄症状が脊髄損傷である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
脱髄症状が外傷性脳損傷である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
脱髄症状が卒中である請求項22に記載の方法。
【請求項26】
治療的に有効な量の請求項1の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含むニューロパシー痛を治療する方法。
【請求項27】
化合物が下記式
【化8】

を有する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
治療的に有効な量の請求項1の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む膀胱過敏を治療する方法。
【請求項29】
化合物が下記式
【化9】

を有する請求項28に記載の方法。
【請求項30】
治療的に有効な量の請求項1の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む過活動性膀胱を治療する方法。
【請求項31】
化合物が下記式
【化10】

を有する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
治療的に有効な量の請求項1の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含むケモカイン誘発痛を治療する方法。
【請求項33】
化合物が下記式
【化11】

を有する請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−120958(P2010−120958A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30929(P2010−30929)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【分割の表示】特願2002−563920(P2002−563920)の分割
【原出願日】平成14年2月14日(2002.2.14)
【出願人】(500137976)アベンティス・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテツド (76)
【Fターム(参考)】