説明

脳血行動態パラメータの測定

被検者における脳血管の左右非対称度の指標を求める方法であって、この方法は、a)第2インピーダンス波形を測定する場合の電圧電極の位置および電流注入の分布が第1インピーダンス波形を測定する場合の鏡像となるように、各々の場合に電圧電極を頭部に非対称的に配置するか、または電流を頭部に非対称的に注入するか、または両方を行なって、各々の場合に頭部を介して少なくとも2つの電流電極の間に所与の注入電流を通すことに関連付けられる2つの電圧電極間の電位差を求めることによって、被検者の頭部の第1インピーダンス波形および第2インピーダンス波形を時間の関数として測定するステップと、b)第1および第2インピーダンス波形の特徴間の差分から左右非対称度の指標を求めるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、同日に出願された二つの他のPCT特許出願に関連し、一つは名称「Monitoring of Acute Stroke Patients」(弁理士整理番号44064)であり、もう一つは名称「Diagnosis of Acute Stroke」(弁理士整理番号44066)である。
【0002】
本願は、2008年10月7日に出願された米国仮出願61/103287からの35USC119(e)下の優先権を主張する。その出願は、2007年11月15日に出願されたPCT特許出願PCT/IL2007/001421に関連し、そのPCT出願は、2006年12月14日に出願された米国特許出願11/610553からの優先権を取得し、その米国特許出願は、二つの関連するPCT特許出願PCT/IL2005/000631及びPCT/IL2005/000632(ともに2005年6月15日出願)の一部継続出願である、2006年1月17日に出願されたPCT特許出願PCT/IB2006/050174の一部継続出願でありかつそこからの優先権を主張する。それらの二つのPCT出願はともに、2004年7月15日に出願された米国特許出願10/893570の一部継続出願であり、それは、2003年1月15日に出願されたPCT特許出願PCT/IL03/00042の一部継続出願であり、それは2002年1月15日に出願された米国仮特許出願60/348278からの35USC119(e)下の利益を主張する。
【0003】
上記の出願の全ての内容は、参照として本書に完全に記載されているように援用される。
【0004】
技術分野
本発明は、その一部の実施形態では、脳血行動態パラメータおよび脳血管系の他の臨床的に有用なデータを決定するための方法および装置に関し、さらに詳しくは、電気インピーダンス測定値を用いる方法および装置に関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0005】
多くの脳血行動態パラメータは、脳血管系の機能に影響を及ぼし得る脳卒中、外傷、および他の状態を診断するのに臨床的に有用である。これらのパラメータとして局所脳血量、脳血流、脳灌流圧、平均通過時間、ピーク到達時間、および頭蓋内圧が挙げられる。これらのパラメータを測定するために使用される多くの方法は、正確な結果を出すが、侵襲性であるため、あるいは高価かつ/または非携帯型の機器を必要とするため、連続モニタリング用または病院環境外での初期診断用には実用的でない。そのような方法として、脳脊髄液内または動脈内へのプローブの挿入、コンピュータ断層撮影(CT)、灌流コンピュータ断層撮影(PCT)、陽電子放射断層撮影(PET)、磁気共鳴撮像(MRI)、および経頭蓋ドップラ超音波法(TCD)が挙げられる。この先行技術の幾つかは、US2007/0287899およびWO2008/072223として公開された米国特許出願11/610553、ならびに上に列挙した他の関連出願に概説されている。
【0006】
脳血行動態パラメータを求めるための灌流コンピュータ断層撮影の使用、および、脳卒中患者の治療コースの評価および選択におけるこれらのパラメータの使用は、Christian Baumgartnerらの「Functional Cluster Analysis of CT Perfusion Maps: A New Tool for Diagnosis of Acute Strokes」、J. of Digital Imaging 18、219〜226(2005);Roland Bruening、Axel Kuettner、およびThomas FlohrによるProtocols for Multislice CT(Springer、2005)、特に96ページ;Ellen G.Hoeffnerらの「Cerebral Perfusion CT: Technique and Clinical Applications」、Radiology 231、632〜644(2004);ならびにHiroshi Hagiwaraらによる「Predicting the Fate of Acute Ischemic Lesions Using Perfusion Computed Tomography」、J. Comput. Assist. Tomogr. 32、645〜650(2008)に記載されている。
【0007】
A.M.Weindling、N.Murdoch、およびP.Rolfeの「Effect of Electrode size on the contributions of intracranial and extracranial blood flow to the cerebral electrical impedance plethysmogram」、Med. & Biol. Eng. & Comput. 20、545〜549(1982)は、頭の前部および後部に別々の電流および電圧電極を使用し、心周期にわたるインピーダンスのピークピーク変化を測定して血流を求める、頭部の血流の測定を記載している。測定された血流のうちのどれだけが頭皮血流によるか、かつどれだけが頭蓋内血流によるかを決定するために、頭部に止血帯を巻いて頭皮血流を一時的に停止させ、次いで解放した。心臓周波数でPPGセンサからの信号に検出可能な変動が無いときに、頭皮血流は完全に遮断されたとみなした。
【0008】
J.Gronlund、J.Jalonen、およびI.Valimaki(「Transcephalic electrical impedance provides a means for quantifying pulsatile cerebral blood volume changes following head‐up tilt」、Early Human Development 47(1997)11〜18)は、早産新生児の頭部の電気インピーダンス測定を記載している。心周期に関連付けられるインピーダンスの変化は、脳の総血液量の変化を反映していると言われており、これを実証していると言われる以前の論文を参照する。1.5から4Hzの範囲のインピーダンスの変動は、乳幼児の頭部が20度上に傾けられたときに、平均して27%減少することが明らかになった。同じグループによる関連研究を記載する従前の論文として、J.Gronlundらの「High Frequency Variability of Transcephalic Electric Impedance: A New Parameter for Monitoring of Neonatal Cerebral Circulation?」、(Proceedings of the Annual International Conference of the Engineering in Medicine and Biology Society、Paris、1992年10月29日〜11月1日、New York、IEEE、US、第6巻、Conf.14、1992年10月29日、2513〜2515頁)がある。
【0009】
レオエンセファログラフィ(REG)は、頭部の生体インピーダンス測定を用いて脳の血液循環および循環障害に関する情報を得る技術である。一般的に、特定の電極配置に対し、頭部のインピーダンスZの変化は、頭部の血液の量および分布の変化による、心周期にわたり、時には呼吸周期にわたる時間tの関数として測定される。W.Traczewskiら(「The Role of Computerized Rheoencephalography in the Assessment of Normal Pressure Hydrocephalus」、J.Neurotrauma 22,836〜843(2005))によって記載される通り、REGは通常、循環抵抗の問題および動脈の弾性の問題を測定または診断するために使用される。例えば正常圧水頭症の患者で、Traczewskiらは、脳の小動脈の弾性によって異なる2種類のZ(t)のパターンを見つけている。所定の患者に見られるZ(t)のパターンは、水頭症に対する異なる治療の起こり得る結果について予測をするために有用であると言われている。これらの患者は全員、ICPの同様の正常値を有する。
【0010】
G.BonmassarおよびS.Iwakiの「The Shape of Electric Impedance Spectrosopy(EIS) is altered in Stroke Patients」(Proceedings of the 26th Annual Conference of IEEE EMBS、San Francisco、CA、USA、2004年9月1〜5日)は、電気インピーダンスを用いて、脳卒中患者に存在するが健常者には存在しない脳髄液の分布の非対称性を測定するシステムを記載している。システムは、被検者の頭部の周りに対称的に配置された10個の電極を使用して、全ての電極の電位を測定しながら、選択された任意の電極対の間に0ないし25kHzの白色雑音電流を通す。システムは、頭の前部と後部との間に電流を通した場合に、最もよく機能することが分かったが、論文は頭の左側および右側に対称的に配置された電極間の電流の通過についても記載している。
【0011】
BridgerらのWO02/071923は、音響信号から得られた頭部のパルス波形の測定および解析を記載している。頭部外傷患者、および程度はそれより低いが脳卒中患者も、正常な被検者とは違いがあることが分かる。外傷および脳卒中の患者は、5ないし10Hzの心拍数の高調波で、正常な被検者より高い振幅を有することが分かっている。
【0012】
Yu.E.Moskalenkoらの「Slow Rhythmic Oscillations within the Human Cranium: Phenomenology, Origin, and Informational Significance」、Human Physiology 27、171〜178(2001)は、明らかに脳の血液供給および酸素消費量の調節および脳脊髄液の循環に関係する周波数0.08ないし0.2Hzの低速波の研究に、頭部の電気インピーダンス測定値およびTCD超音波測定値を使用することを記載している。この研究は健康な被検者および頭蓋内高血圧を患っている患者で行なわれた。A.Ragauskasらの「Implementation of non‐invasive brain physiological monitoring concepts」、Medical Engineering and Physics 25、667〜687(2003)は、頭部外傷患者において、そのような低速波のみならず、心臓周波数のパルス波、頭蓋内血液量をも非侵襲的に監視するために超音波を使用することを記載し、それらを使用して頭蓋内圧を決定できることを明らかにしている。
【0013】
追加的な背景技術として、NaisbergらのWO02/087410;Kidwell CSらのComparison of MRI and CT for detection of acute intracerebral hemorrhage、JAMA;2004:292:1823〜1830;Horowitz SHらのComputed tomographic‐angiographic findings within the first 5 hours of cerebral infarction、Stroke;1991:22 1245〜1253;The ATLANTIS、ECASS、and NINDS rt‐PA study group investigatorsのAssociation of outcome with early stroke treatment:Pooled analysis of ATLANTIS, ECASS, and NINDS rt‐PA stroke trials、Lancet;363:768〜774;Albers GらのAntithrombotic and thrombolytic therapy for ischemic stroke:The seventh ACCP conference on antithrombotic and thrombolytic therapy、Chest 2004;126:483〜512;Kohrmann MらのMRI versus CT‐based thrombolysis treatment within and beyond the 3 hour time window after stroke onset:a cohort study、Lancet Neurol 2006;5:661〜667;Albers GWらのMagnetic resonance profiles predict clinical response to early reperfusion:The diffusion and perfusion imaging evaluation for understanding stroke evolution(DEFUSE) study、Ann Neurol 2006;60:508〜517;Johnston SCらのNational stroke association guidelines for the management of transient ischemic attacks、Ann Neurol 2006;60:301〜313が挙げられる。
【発明の概要】
【0014】
本発明の一部の実施形態の態様は、頭部の電気インピーダンスおよび/またはフォトプレスチモグラフィ(PPG)信号、ならびに心周期中の血液量の上昇時間の尺度およびその上昇および下降中の時間の関数としての血液量の非線形性の尺度をはじめとするそれらの形態の解析から、パラメータの非対称性をはじめとする脳血行動態パラメータを決定するための装置および方法に関する。
【0015】
したがって、本発明の例示的実施形態では、脳血管の左右非対称度の指標を求める方法であって、
a)各電極が頭部を介して別の電極に電流を通すか、または別の電極に対する電位を測定するか、または両方を行なうように適応された少なくとも3個の電極1組を、頭部に略左右対称に配置するステップと、
b)電極を使用して、少なくとも1心周期の時間の関数として頭部の第1非対称インピーダンス波形を測定するステップと、
c)電極を使用して、少なくとも1心周期の時間の関数として頭部の第2非対称インピーダンス波形を測定するステップであって、第1インピーダンス測定の鏡像である第2インピーダンス測定のステップと、
d)第1および第2インピーダンス波形の特徴間の差分から左右非対称度の指標を求めるステップと、
を含む方法を提供する。
【0016】
任意選択的に、少なくとも3つの電極の組を頭部に配置するステップは、第1電極および第2電極を頭部の左側および右側に対称的に配置し、かつ第3電極を頭部の実質的に左右対称面に配置することを含む。
【0017】
任意選択的に、第1インピーダンスを測定するステップは、電流が第1および第3電極間に通されるときに、第1および第3電極間の電圧を測定することを含み、第2インピーダンスを測定するステップは、電流が第2および第3電極間に通されるときに、第2および第3電極間の電圧を測定することを含む。
【0018】
代替的に、または追加的に、第1インピーダンスを測定するステップは、電流が第1および第2電極間に通されるときに、第1および第3電極間の電圧を測定することを含み、第2インピーダンスを測定するステップは、電流が第1および第2電極間に通されるときに、第2および第3電極間の電圧を測定することを含む。
【0019】
本発明の実施形態では、少なくとも3つの電極の組を頭部に配置するステップは、第1および第2電極をそれぞれ頭部の左側および右側に対称的に配置し、かつ第3および第4電極をそれぞれ、第1および第2電極の場合より離間距離を狭めて、頭部の左側および右側に対称的に配置することを含む。
【0020】
任意選択的に、第1インピーダンス波形は第1および第4電極を使用して測定され、第2インピーダンス波形は第2および第3電極を使用して測定され、該方法はまた、
a)第1および第3電極を使用して第1表面インピーダンス波形を測定するステップと、
b)第2および第4電極を使用して第2表面インピーダンス波形を測定するステップと、
c)第1および第2表面インピーダンス測定の結果を使用して、表面インピーダンスの寄与を低減するように第1および第2インピーダンス測定値を補正するステップと、
をも含む。
【0021】
さらに、本発明の例示的実施形態では、脳血管の左右非対称度の指標を求めるためのシステムであって、
a)電流源と、
b)各電極が電流源から頭部を介して別の電極に電流を通すか、または頭部の異なる位置における別の電極に対する頭部のある位置の電位を測定するか、または両方を行なうように適応され、電極が、頭部に対称的に配置された場合には、頭部の第1非対称インピーダンスと、第1非対称インピーダンスの鏡像である頭部の第2非対称インピーダンスとを測定するように適応された、少なくとも3つの電極1組と、
c)電極を使用して、第1および第2インピーダンスの波形を少なくとも1心周期の時間の関数として測定して第1および第2インピーダンス波形の特徴を求め、かつ第1および第2インピーダンス波形の特徴間の差分を使用して左右非対称度の指標を求めるコントローラと、
を備えたシステムを提供する。
【0022】
さらに、本発明の例示的実施形態では、心周期時間パラメータの関数として頭部の電気インピーダンスデータから得た信号を解析する方法であって、
a)心周期時間にわたる信号の最小値を決定するステップと、
b)心周期時間にわたる信号の実効最大値を決定するステップと、
c)信号が立上り時間基準に従って立ち上がってくる心周期時間の最小値と実効最大値との間の立上り区間を決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0023】
任意選択的に、信号は、心周期時間パラメータの関数として、頭部の電気インピーダンスデータと頭部のフォトプレチスモグラフィ(PPG)データとの組合せから得られる。
【0024】
任意選択的に、信号は、電気インピーダンス信号とPPG信号との間の差分もしくは重み付き差分を取ることによって、または電気インピーダンス信号をPPG信号で除算することによって得られる。
【0025】
さらに、本発明の例示的実施形態では、頭部の電気インピーダンス信号およびPPG信号を解析する方法であって、
a)本発明の例示的実施形態の方法に従ってインピーダンス信号を解析することによってインピーダンス信号の尺度を得るステップと、
b)同じ方法に従って、ただし電気インピーダンスデータから得た信号の代わりにPPG信号を使用して、PPG信号を解析することによってPPG信号の尺度を得るステップと、
c)PPG信号の尺度を使用してインピーダンス信号の尺度を調整するステップと、
を含む方法を提供する。
【0026】
任意選択的に、インピーダンス信号の尺度を調整するステップは、インピーダンス信号の尺度とPPG信号の尺度との間の差分または重み付き差分を取るか、またはインピーダンス信号の尺度とPPG信号の尺度との比を取ることを含む。
【0027】
任意選択的に、前記最大値は大域的最大値である。
【0028】
代替的に、前記最大値は第1局所的実効最大値であり、大域的最大値の前の第1局所的最大値であるか、または大域的最大値の前に局所的最大値が無い場合には大域的最大値の前の正の3次導関数の変曲点であるかのいずれかである。
【0029】
任意選択的に、立上り時間基準は、立上り区間が最小値の時点に始まり、かつ前記最大値の時点で終わるというものである。
【0030】
代替的に、立上り時間基準は、信号が最小値より上の全範囲の第1固定百分率である時点に立上り区間が始まり、かつ信号が前記最大値より下の全範囲の第2固定百分率である時点で立上り区間が終わるというものである。
【0031】
任意選択的に、第1固定百分率は5%から20%の間である。
【0032】
任意選択的に、第2固定百分率は10%から30%の間である。
【0033】
任意選択的に、該方法はまた、立上り区間を心周期期間に正規化するステップをも含む。
【0034】
任意選択的に、該方法はまた、患者における立上り区間の変化を監視するステップをも含む。
【0035】
本発明の実施形態では、該方法は、立上り区間の変化を使用して、脳血流、脳血量、ピーク到達時間、および平均通過時間のうちの1つ以上を監視するステップを含む。
【0036】
任意選択的に、該方法は、立上り区間が10%以上変化した場合、医療スタッフに警報を出すステップを含む。
【0037】
任意選択的に、信号の実効最大値を決定するステップは、信号の大域的最大値および第1局所的実効最大値の両方を決定することを含む。
【0038】
任意選択的に、信号が立ち上がってくる心周期の立上り区間を決定するステップは、第1ピーク立上り時間基準に従って最小値と第1局所的実効最大値との間で信号が立ち上がってくる第1ピーク立上り区間を決定すること、および総立上り時間基準に従って最小値と大域的最大値との間で信号が立ち上がってくる総立上り区間を決定することを含み、かつ(該方法は)、総立上り区間に対する第1ピーク立上り区間の比を求めるステップをも含む。
【0039】
任意選択的に、該方法はまた、最小値より上の大域的最大値の高さに対する最小値より上の第1局所的最大値の高さの比を求めるステップをも含む。
【0040】
本発明の実施形態では、該方法はまた、
a)立上り区間にわたる信号の積分を求めるステップと、
b)心周期全体にわたる信号の積分を求めるステップと、
c)心周期全体にわたる積分に対する立上り区間にわたる積分の比を求めるステップと、
をも含む
【0041】
さらに、本発明の例示的実施形態では、頭部の電気インピーダンス信号およびPPG信号を解析する方法であって、
a)本発明の実施形態の方法に従って電気インピーダンス信号の心周期全体にわたる積分に対する立上り区間にわたる積分の比を得るステップと、
b)同じ方法に従って、ただし電気インピーダンスデータから得た信号の代わりにPPG信号を使用して、PPG信号の心周期全体にわたる積分に対する立上り区間にわたる積分の比を得るステップと、
c)PPG信号の比を使用してインピーダンス信号の前記比を調整するステップと、
を含む方法を提供する。
【0042】
任意選択的に、インピーダンス信号の前記比を調整するステップは、PPG信号の比で割ることを含む。
【0043】
任意選択的に、該方法はまた、前記比を使用して患者における脳血流、脳血量、ピーク到達時間、および平均通過時間の1つ以上の変化を監視するステップをも含む。
【0044】
任意選択的に、該方法は、前記比が10%以上変化した場合、医療スタッフに警報を出すステップを含む。
【0045】
さらに、本発明の例示的実施形態では、心周期時間パラメータの関数として頭部の電気インピーダンス信号を解析する方法であって、
a)心周期の一部または全部を含む区間にわたる信号の積分を求めるステップと、
b)積分を区間の長さで割ることによって区間の信号の平均値を求めるステップと、
を含む方法を提供する。
【0046】
任意選択的に、該方法はまた、区間の信号の凸性または凹性の尺度として、区間の信号の前記平均値を区間内の信号の最大値および最小値の平均で割ることを含む。
【0047】
任意選択的に、区間は、第1ピーク立上り時間基準に従って信号が最小値と第1局所的実効最大値との間で立ち上がってくる第1ピーク立上り区間である。
【0048】
代替的に、区間は実質的に心周期全体である。
【0049】
任意選択的に、該方法はまた、信号の平均値を使用して頭蓋内圧および脳血量の一方または両方を推定するステップをも含む。
【0050】
さらに、本発明の例示的実施形態では、脳血管の左右非対称度の指標を求める方法であって、
a)頭部の左側の領域において第1センサを使用して左表面血流を測定するステップと、
b)頭部の右側の領域において第2センサを使用して右表面血流を測定するステップと、
c)左および右表面血流間の差分を使用して脳血管の左右非対称度の指標を求めるステップと、
を含む方法を提供する。
【0051】
任意選択的に、第1および第2センサはPPGセンサである。
【0052】
代替的に、第1および第2センサは表面インピーダンスセンサである。
【0053】
任意選択的に、該方法は脳血行動態パラメータの値を頭部で対称的に測定するステップを含み、左および右表面血流間の差分を使用するステップは、左表面血流を使用して脳血行動態パラメータの値を補正し、右表面血流を使用して脳血行動態パラメータの値を補正し、かつ脳血行動態パラメータの2つの補正値間の差分を使用することを含む。
【0054】
任意選択的に、第1および第2センサは実質的に同一であり、頭部の左側および右側の領域は、頭部の左右対称面を中心に互いに実質的に鏡像である。
【0055】
さらに、本発明の例示的実施形態では、脳血管の左右非対称度の指標を求めるためのシステムであって、
a)頭部の表面血流を測定するように適応された第1および第2センサと、
b)第1および第2センサを使用してそれぞれ頭部の左側および右側の領域における表面血流を測定し、かつ第1および第2測定血流間の差を使用して、脳血管の左右非対称度の指標を求めるコントローラと、
を備えたシステムをも提供する。
【0056】
任意選択的に、非対称度の指標を求めるステップは、本発明の実施形態の方法に従って、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方を解析することを含む。
【0057】
さらに、本発明の例示的実施形態では、ある時間間隔にわたって行なわれた頭部の電気インピーダンス測定を解析する方法であって、
a)0.08から0.2Hzの間の周波数のインピーダンス信号における低速波の振幅を測定するステップと、
b)低速波の振幅を時間間隔中のインピーダンスの平均値によって正規化するステップと、
を含む方法を提供する。
【0058】
任意選択的に、非対称度の指標を求めるステップは、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方のピーク・トゥ・ピーク高さを求めることを含む。
【0059】
代替的に、または追加的に、非対称度の指標を求めるステップは、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方の最大勾配を求めることを含む。
【0060】
代替的に、または追加的に、非対称度の指標を求めるステップは、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方について、最小値の時間から最大勾配の時間までの区間を求めることを含む。
【0061】
代替的に、または追加的に、非対称度の指標を求めるステップは、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方について、最小値に対する第1ピークの高さと第2ピークの高さの比を求めることを含む。
【0062】
任意選択的に、該方法はまた、第1および第2インピーダンス波形と健康な被検者のインピーダンス波形とを比較するステップと、第1および第2波形と健康な被検者の波形との間の差を使用して、頭部のどちら側に非対照性を引き起こす異常が位置しているかを決定するステップとを含む。
【0063】
任意選択的に、脳血管の左右非対称度の指標は、病理学的脳血管状態の重症度の尺度を含む。
【0064】
代替的に、または追加的に、非対称度の指標は、脳血行動態パラメータの非対称度の尺度を含む。
【0065】
任意選択的に、非対称度の指標を求めるステップは、
a)本発明の実施形態の方法に従って第1インピーダンス波形を解析して第1立上り区間を求めること、
b)同じ方法に従って第2インピーダンス波形を解析して第2立上り区間を求めること、ならびに
c)第1および第2立上り区間の変化を使用して脳血流、脳血量、ピーク到達時間、および平均通過時間の1つ以上における非対称性を監視すること、
を含む。
【0066】
任意選択的に、非対称度の指標を求めるステップは、
a)本発明の実施形態の方法に従って第1インピーダンス波形を解析して第1積分比を求めること、
b)同じ方法に従って第2インピーダンス波形を解析して第2積分比を求めること、ならびに
c)第1および第2積分比の変化を使用して、脳血流、脳血量、ピーク到達時間、および平均通過時間の1つ以上における左右非対称性を監視すること、
を含む。
【0067】
さらに、本発明の例示的実施形態では、頭部の電気インピーダンスデータを得、かつ解析するためのシステムであって、
a)電流源と、
b)電流源から頭部を介して電極の間に電流を通す少なくとも2つの電極と、
頭部における電極の位置間の電位差を測定しそれによって頭部のインピーダンスデータを提供する少なくとも2つの電極とを含む、少なくとも2つの電極1組と、
c)インピーダンスデータから心周期の位相の関数としてインピーダンス信号を求め、心周期時間にわたる信号の最小値を決定し、心周期時間にわたる信号の実効最大値を決定し、かつ信号が立上り時間基準にしたがって立ち上がってくる、最小値と実効最大値との間の心周期時間の立上り区間を決定するデータ解析装置と、
を含むシステムを提供する。
【0068】
さらに、本発明の例示的実施形態では、頭部の電気インピーダンスデータを得、かつ解析するためのシステムであって、
a)電流源と、
b)電流源から頭部を介して電極の間に電流を通す少なくとも2つの電極と、
頭部における電極の位置間の電位差を測定しそれによって頭部のインピーダンスデータを提供する少なくとも2つの電極とを含む、少なくとも2つの電極1組と、
c)インピーダンスデータから心周期の位相の関数としてインピーダンス信号を求め、心周期の一部分または全部を含む区間にわたる信号の積分を求め、かつ積分を区間の長さで割ることによって区間の信号の平均値を求めるデータ解析装置と、
を含むシステムを提供する。
【0069】
さらに、本発明の例示的実施形態では、被検者における脳血管の左右非対称度の指標を求める方法であって、
a)第2インピーダンス波形を測定する場合の電圧電極の位置および電流注入の分布が第1インピーダンス波形を測定する場合の鏡像となるように、各々の場合に電圧電極を頭部に非対称的に配置するか、または電流を頭部に非対称的に注入するか、または両方を行なって、各々の場合に頭部を介して少なくとも2つの電流電極の間に所与の注入電流を通すことに関連付けられる2つの電圧電極間の電位差を求めることによって、被検者の頭部の第1インピーダンス波形および第2インピーダンス波形を時間の関数として測定するステップと、
b)第1および第2インピーダンス波形の特徴間の差分から左右非対称度の指標を求めるステップと、
を含む方法を提供する。
【0070】
任意選択的に、第1および第2インピーダンス波形を測定するために使用される電極は少なくとも3つの電極を含み、該方法はまた、第1および第2インピーダンス波形を測定する前に、頭部に少なくとも3つの電極を左右対称構成に配置するステップをも含む。
【0071】
任意選択的に、第1インピーダンス波形を測定するステップは、被検者のこめかみに配置された第1電圧電極と、頭部の第1電圧電極と同じ側の頭部の耳の後ろに配置された第2電圧電極との間の電位差を求めることを含む。
【0072】
任意選択的に、第1インピーダンス波形を測定するステップは、第1電流電極を第1電圧電極と同一の構造に構成するかまたは第1電圧電極に隣接して配置し、かつ第2電流電極を第2電圧電極と同一の構造に構成するかまたは第2電圧電極に隣接して配置して、頭部を介して第1および第2電流電極間に電流を通しながら、第1および第2電圧電極間の電位差を求めることを含む。
【0073】
さらに、本発明の例示的実施形態では、脳血管の左右非対称度の指標を求めるためのシステムであって、
a)電流源と、
b)2つの電極間の電位差を測定する電圧計と、
c)少なくとも3つが電流源から頭部に電流を通すように適応され、かつ少なくとも3つが頭部の異なる位置間の電位差を測定するために電圧計によって使用されるように適応された、少なくとも3つの電極1組と、
d)電極が頭部に適切に配置されたときに、第1の非対称に配置された部分組の電極を使用して、頭部を通過する所与の電流に関連付けられる電圧を測定することによって、第1インピーダンス測定を行ない、第2の部分組の電極を使用して、第1インピーダンス測定の鏡像である第2インピーダンス測定を行ない、かつ第1および第2インピーダンス測定の波形の特徴間の差分を使用して左右対称度の指標を求めるコントローラと、
を備えたシステムを提供する。
【0074】
さらに、本発明の例示的実施形態では、被検者の脳血管の左右非対称度の指標を求める方法であって、
a)頭部の左側の領域で少なくとも第1センサを使用して、被検者の頭部の左側の表面血流の特徴を測定するステップと、
b)頭部の右側の領域で少なくとも第2センサを使用して、被検者の頭部の右側の表面血流の特徴を測定するステップと、
c)頭部の左側および右側の表面血流の特徴間の差分を使用して、脳血管の左右非対称度の指標を求めるステップと、
を含む方法を提供する。
【0075】
任意選択的に、頭部の各側の表面血流の特徴は、頭部のその側の表面血流と被検者の頚部の同じ側の主要動脈の血流との間のパルス波形の位相差を含み、前記特徴を測定するステップは、頭部のその側の領域のセンサを使用して表面血流のパルス波形を測定すること、および頚部のその側の主要動脈に隣接する動脈血流センサを使用して、頚部のその側の主要動脈の血流のパルス波形を測定することを含む。
【0076】
任意選択的に、頚部の左側および右側の動脈血流センサは各々、PPGセンサを備える。
【0077】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0078】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の装置、方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0079】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令、処理信号および/または生データを格納するための揮発性メモリ、および任意選択的に、命令、処理信号および/または生データを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0081】
【図1】図1は、本発明の例示的実施形態に従ってインピーダンスの測定のために電極およびPPGセンサが頭部に配置された被検者の略図である。
【0082】
【図2A】図2Aは、本発明の別の例示的実施形態に従ってインピーダンスの測定のために電極が頭部に配置された被検者の略図である。
【図2B】図2Bは、本発明のさらに別の例示的実施形態に従ってインピーダンスの測定のために電極が頭部に配置された被検者の略図である。
【0083】
【図2C】図2Cは、本発明の別の実施形態に従って血液循環の測定のためにPPGセンサが頭部および頚部に配置された被検者の略図である。
【0084】
【図3】図3は、本発明の例示的実施形態に従って様々な仕方で画定される立上り区間を示す、頭部に配置された電極によって測定された心周期の時間の関数としてのインピーダンスZの略グラフである。
【0085】
【図4】図4は、本発明の例示的実施形態に従って変曲点によって画定される第1局所的実効最大値を示す、心周期の時間の関数としてのインピーダンスZの略グラフである。
【0086】
【図5A−5C】図5Aは、本発明の例示的実施形態に従って直線状の立上りおよび立下り区間を示す、心周期の時間の関数としてのインピーダンスZの略グラフである。図5Bは、本発明の例示的実施形態に従って凹状の立上りおよび立下り区間を示す、心周期の時間の関数としてのインピーダンスZの略グラフである。図5Cは、本発明の例示的実施形態に従って、凸状の立上りおよび立下り区間を示す、心周期の時間の関数としてのインピーダンスZの略グラフである。
【0087】
【図6】図6は、本発明の例示的実施形態に従って、虚血性脳卒中患者における正規化低速波振幅と脳卒中病変の体積との間の相関を示す略グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明は、その一部の実施形態では、脳血行動態パラメータを決定するための方法および装置に関し、さらに詳しくは、電気インピーダンス測定値を用いる方法および装置に関するが、それに限定されない。
【0089】
本発明の一部の実施形態の態様は、脳血管の左右非対称度の指標を決定するための方法および装置に関する。非対称度の指標は、脳卒中および他の病状を診断および監視するために重要になり得る、局所脳血流のような脳血行動態パラメータの非対称性の尺度とすることができる。追加的に、または代替的に、非対称度の指標はそれ自体、頭部の片側の脳卒中病変部の体積のような病状の尺度になるかもしれない。
【0090】
本発明の例示的実施形態では、電極は頭部に適用され、頭部の左側および右側で時間の関数として電気インピーダンス信号の2つの鏡像測定を行なうために使用される。本書で使用する場合、「電気インピーダンスの2つの鏡像測定」とは、電位差を測定するための電極の位置および注入電流の分布の両方が頭部の左右対称面に対して鏡像となるようにして、頭部に注入される電流の所与の分布に関連付けられる電位差の2つの測定を意味する。電位差を測定するために使用される電極はまた、電流を注入するためにも使用することができ、あるいは別の電極を使用することができる。2つの鏡像測定が異なる場合、電位差を測定するための電極の配置、または注入電流の分布のいずれか、または両方が、各測定で頭部の左右対称(面)に対して非対称である。任意選択的に、両方の測定に必要な電極が全て、測定が行なわれる前に所定の位置に置かれ、電極の完全な組が頭部の左右対称(面)に対して対称的に配置され、かつ互いに鏡像である2つの独立した測定を行なうために少なくとも3つの電極が頭部に配置された状態で、電極は測定の間で動かされない。任意選択的に、各測定で、電位差は、頭部の同じ側のこめかみおよび耳の後ろに配置された電極の間で測定され、任意選択的に、電流も、頭部のその側のこめかみおよび耳の後ろに配置された電極の間に注入される。
【0091】
インピーダンス測定は任意選択的に、1つ以上の心周期の区間にわたって行なわれる。時間の関数としてのインピーダンス波形は典型的には、各心周期でおおまかに繰り返す心周期の位相に対する特徴的な依存性を有する。少なくとも1心周期にわたりインピーダンスを測定することにより、心周期波形全体を得ることが可能になり、2つ以上の心周期にわたりインピーダンスを測定することにより、2つ以上の心周期にわたり平均化された心周期位相の関数として波形を得ることによって、ノイズを低減することが可能になる。加えて、インピーダンスは心周期の周波数より低い周波数の低速波を示すことがあり、それはインピーダンスが少なくとも特徴的低速波期間に測定された場合に観測することができる。特に測定が心周期に対してゲーティングされる場合、例えば心周期の特定部分中、例えば立上り時間中のインピーダンスを解析することを希望するだけの場合、または低速波だけを測定し、かつ心周期に対してゲーティングすることによって信号から心周期波形を除去することを希望する場合、心周期より短い1つ以上の時間間隔にわたって行なわれるインピーダンス測定も有用になることがあり得る。
【0092】
2つのインピーダンス信号の波形の特徴、例えば心周期の立上り時間または低速波振幅の間の差分は、脳血管の左右非対称度の指標を決定するために使用される。任意選択的に、非対称性が見つかった場合、頭部のどちら側に異常状態が位置しているかを決定するために、2つの波形は各々健康な被検者からの波形と比較される。任意選択的に、頭部の左側および右側に例えば対称的に配置されたフォトプレチスモグラフィ(PPG)センサはPPG信号を生成し、それは2つのインピーダンス信号と結合されて調整インピーダンス信号を生じ、脳血行動態パラメータの非対称度を決定する。任意選択的に、PPG信号は、調整インピーダンス信号に対する表面血流の寄与を低減するために使用される。
【0093】
本書で使用する場合、頭部における注入電流の分布を非対称と記載するのは、注入電流の分布が頭部の左右対称面に対して対称的でも反対称的でもないことを意味する。例えば、前額部の中心に配置された電極から後頭部の中心に配置された電極に流れる電流は、注入電流の対称的分布を有するが、左こめかみに配置された電極から右こめかみに対称的に配置された電極に流れる電流は、注入電流の反対称的分布を有する。注入電流のこれらの分布はどちらも、180度の位相ずれは別として、それ自体の鏡像であり、本書で注入電流の非対称分布とは呼ばない。
【0094】
2つのインピーダンス測定が互いの鏡像であると言う場合、または鏡像測定に使用される2つの電極が頭部または頚部に対称的に配置されると言う場合、注入電流の分布および電極の配置が2つの測定に対して厳密な鏡像である必要はないことを理解されたい。しかし、電流の注入に使用される電流電極、および電位差を測定するために使用される電圧電極は、健康な被検者の2つの鏡像インピーダンス測定の差分が、頭部の血液循環に臨床的に顕著な非対称性のある被検者に見られる差分と比較して小さく、例えば少なくとも2分の1、または5分の1、または10分の1、または20分の1になるように、頭部の左右対称面に対する対称に充分に近い状態に配置される。電極の配置の要求精度は、電極の誤配置の結果、下の実施例に記載するIPGおよびPPG信号に基づく様々な尺度にどのような変化が生じるかを調べるために試験を行ない、かつこれらの変化を、虚血性脳卒中患者の無作為のサンプルでこれらの尺度が示す典型的には約2倍の範囲と比較することによって求めることができる。例えば、対応する電極は、互いの鏡像位置から2cm、または1cm、または5mm、または2mm、または1mm以内に配置され、頭部の左右対称面に配置されると言われる電極は、左右対称面からこれらの距離内にその中心を有する。言うまでも無く、全ての人々は頭部の外部骨格に多少の非対称性を有するので、電極を対称に配置するということが意味を成す精度に限度が存在することを理解されたい。稀なケースでは、人々が、過去の外傷または外科手術のため、ひどく非対称な脳または頭皮を有することがあり、これらの人々にとって電極の対称的な配置および鏡像測定について話すことは全く意味を成さないかもしれない。これらの見解は、鏡像PPG測定を達成するために頭部または頚部に対称的に配置されると言われるPPGセンサの配置にも当てはまる。
【0095】
上述の通り、2つの鏡像測定について記載する場合はいつでも、両方の測定のための電極またはセンサは、いずれかの測定が行なわれる前に、被検者に配置することができ、両方の測定のための電極またはセンサの完全な組が対称的に配置される。代替的に、第1測定用の電極またはセンサを被検者に配置することができ、第1測定が行なわれた後、これらの電極またはセンサの一部または全部を取り外すことができ、次いで、第2測定が行なわれる前に、おそらく再び同じ電極またはセンサの一部または全部を使用して、第2測定用の電極またはセンサを被検者に配置することができる。しかし、例えば両方の測定をある期間にわたって繰り返し行なうために、いずれかの組の測定が行なわれる前に、全ての電極およびセンサを被検者に配置することが潜在的に有利であり、脳血管の左右非対称度を測定するための異なるシステムを示す図では、電極およびセンサが全て同時に所定の位置に着いている状態で示される。
【0096】
インピーダンスの測定では、電流が固定維持されて電位差が測定されるか、または電位差が固定維持されて電流が測定されることを理解されたい。一般的に、電流または電位差またはそれらの任意の組合せが固定維持される間に、電流または電位差またはそれらの任意の組合せ(ただし固定維持されるのと同じ量ではない)を測定することができる。これらの手順の全てが、所与の電流に対して電位差がどれだけであるかを明らかにするので、本書で使用する場合、「所与の電流に対し電位差を測定する」および類似の表現は、これらの手順全部を含む。実際には、安全上の理由から、電流を安全なレベルに、少なくとも3kHz、5kHz、10kHz、20kHz、30kHz、または50kHzの周波数で例えば2.5mA以下、または1mA以下、または0.5mA以下、または0.2mA以下、または0.1mA以下に固定維持しながら、電位差を測定することが通常である。
【0097】
本発明の一部の実施形態の態様は、例えばフォトプレチスモグラフィ(PPG)または表面電気インピーダンスプレチスモグラフィ(表面IPG)を使用して、頭部の表面血流の非対称性を測定することによって、脳血管の左右非対称度の指標を決定することに関する。例えば脳血栓症による脳の片側の血流の低下はしばしば、頭部のその側の表面血流の増加を伴うので、頭部の左側および右側の表面血流を比較することにより、脳血流および他の脳血行動態パラメータの非対称性を明らかにすることができる。任意選択的に、脳血流および/または脳血量に敏感な頭部のインピーダンス測定は、非対称性の決定に役立てるためにも使用される。任意選択的に、例えば頚動脈と頭部の表面動脈との間のパルス周期の位相遅延を測定するために、血流は、例えば頚部の各頚動脈上に配置されたPPGセンサにより、頭部の左側および右側の頚動脈でも測定され、頭部の左側および右側の表面血流の測定と比較される。
【0098】
本発明の一部の実施形態の態様は、立上り区間を測定し、頭部のインピーダンス信号を解析する方法に関する。立上り区間は、インピーダンス信号(従来、負のインピーダンス)が心周期中に立ち上がってくる間の時間間隔である。立上り区間は、拡張期の信号の最小値から収縮期の信号の大域的最大値までの全立上り時間を表わすことができる。代替的に、立上り区間は、信号の最小値から大域的最大値より前の第1局所的最大値までの、または大域的最大値の前に局所的最大値が無い場合には3次導関数が正である変曲点における第1局所実効最大値までの第1ピーク立上り時間を表わすことができる。任意選択的に、立上り区間は、信号の実際の最小値から信号の最大値まで、それが大域的最大値であるかそれとも第1局所的実効最大値であるかにかかわらず、測定される。代替的に、立上り区間により頑健な値をもたらすために、区間は、信号が最小値より充分に例えば信号の全範囲の10%だけ高く、かつ最大値より充分に例えば総時間の20%だけ低い、中間部分だけで測定される。任意選択的に、立上り区間は心周期の期間によって正規化される。任意選択的に、総立上り時間と第1ピーク立上り時間との比が求められる。任意選択的に、立上り区間にわたる信号の積分が求められる。任意選択的に、立上り区間にわたる信号の積分は、心周期にわたる信号の積分に対して正規化される。
【0099】
本発明の一部の実施形態の態様は、区間にわたる信号の平均値を求めて、頭部のインピーダンス信号を心周期中の時間の関数として解析する方法に関する。任意選択的に、区間は心周期全体である。代替的に、区間は立上り区間、例えば全立上り時間または第1ピーク立上り時間である。任意選択的に、信号の平均は、区間内の信号の最大値および最小値の平均と比較され、その立上りおよび/または立下り中の信号の非線形性(それが直線状、凹状、または凸状のいずれであるかにかかわらず)の指標をもたらす。
【0100】
本発明の一部の実施形態の態様は、例えば0.08ないし0.2Hzの周波数のインピーダンスの低速波の振幅を測定中のインピーダンスの平均値に対して正規化して、頭部のインピーダンス信号を解析する方法に関する。
【0101】
任意選択的に、インピーダンスデータから得た信号を解析するための上記の方法はいずれも、PPG信号を解析するために、またはインピーダンス信号とPPG信号との組合せである信号、例えば適切に正規化されたインピーダンス信号とPPG信号との間の差分、または一方の他方に対する比を解析するために、追加的に、または代替的に使用される。本書で使用する場合、「インピーダンスデータから得た信号」は、PPGデータを組み込んでいない純粋なインピーダンス信号のみならず、そのような組合せ信号をも含むことができる。
【0102】
任意選択的に、信号を解析する方法のいずれも、解析結果は、それに相関する臨床的に関心のある脳血行動態パラメータを推定するために使用される。例えば、心周期期間に対して正規化された上記の頑健な立上り区間は、灌流CTスキャンによって測定された脳血流および平均通過時間(MTT)と相関することが発明者らによって発見された。心周期にわたる積分に対して正規化された立上り区間中のインピーダンス信号の積分は、CTスキャンによって測定される脳卒中病変の大きさと相関することが発見された。インピーダンス信号のこの正規化積分をPPG信号の同じ正規化積分で割ったときに、ずっとよい相関が発見された。別の例として、インピーダンスの平均値に対して正規化された低速波振幅は、脳卒中患者の脳卒中病変部の体積と逆の相関関係があることが発明者らによって発見された。
【0103】
任意選択的に、解析の結果得られたこれらまたはいずれかの他の尺度は、病院、または家庭環境で、急性脳卒中患者で監視され、尺度が10%、20%、または30%変化した場合、特に患者の状態の悪化を示す方向に変化した場合、医療スタッフに警報が出される。追加的に、または代替的に、尺度が予め定められた閾値を超えた場合に、医療スタッフに警報が出される。警報は、例えば病院の患者のベッドおよび/またはナースステーションで警報音を鳴らすか、またはランプを点滅させることによって、または患者が自宅にいる場合には救急車を呼ぶことによって出される。
【0104】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される構成要素および/または方法の構成および配置の細部、または、図面および/または実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。
【0105】
電極およびPPGセンサの構成
図面を参照すると、図1は、被検者の頭部102に取り付けられた、脳血行動態パラメータを求めるためのシステム100を示す。システムは、被検者の頭部に左右対称面に対して対称的に取り付けられる電極を含む。電極104および106はそれぞれ被検者の左右のこめかみに取り付けられる一方、電極108および110は、被検者の前額部の左側および右側に、離間距離を電極104および106より狭めて取り付けられる。任意選択的に、被検者の頭部の左側および右側に取り付けられるPPGセンサ112および114も存在する。コネクタ116および118は、システム100をコントローラ122に接続するケーブル120または単一ケーブルに接続される。コントローラ122はシステムの動作を制御し、電極およびPPGセンサ用の電力を提供する電源を含み、電極およびPPGセンサからのデータを記録し、かつ解析する。本発明の一部の実施形態では、全てをコントローラ122に配置するのではなく、制御機能、電源およびデータ解析装置の1つ以上を別個のユニットに配置してもよい。任意選択的に、システム100は、インピーダンスデータを取得しながら被検者からECG信号を取得する心電図(ECG)124をも含む。ECG信号は任意選択的に、異なる心周期からのインピーダンスまたはPPG信号を位置合わせする際に、かつ図3についての説明で下述するように他の仕方で、データ解析装置によって使用される。
【0106】
図1に示す電極または本発明の他の実施形態に見られる電極のいずれについても、各電極構造は任意選択的に、それぞれ頭部に電流を注入するためおよび頭部の表面の電位を測定するために、別々の電流および電圧電極を含むことに留意されたい。関連出願として前掲した米国特許出願10/893570およびPCT特許出願PCT/IL2005/000631に記載された例えば環状電極およびインタリーブされた渦巻状電極のみならず、当業界で公知の他の構成をも含めて、別々の電流および電圧電極の任意の構成を使用することができる。そのような複合電極構造を本書ではときどき単に電極と呼ぶことを理解されたい。別々の電圧および電流電極を使用することは、測定されたインピーダンスが表皮の高いインピーダンスにあまり依存せず、かつ頭部の内側のインピーダンスにより敏感になるという潜在的な利点を有する。代替的に、電極構造の1つ以上が、電位の測定および電流の注入の両方に使用される単一電極のみで構成される。電極構造はまた、電圧電極のみ、または電流電極のみで構成することもでき、そのような電圧および電流電極は頭部の別々の位置に配置される。
【0107】
システム100の例示的動作モードでは、電流が電極104および106の間に通され、インピーダンスが測定される。本願に記載するインピーダンス測定の多くの場合に、関心の的は、主として1以上の心周期にわたる心周期の位相によるインピーダンスの変化である。しかし、場合によっては、特に低速波振幅の測定、心周期より長い期間にわたる経時的インピーダンスの変化が関心の的である。電極104および106の間に通される電流の実質的な部分は、特にこれらの電極が頭蓋の比較的薄い場所である、こめかみに配置されるため、頭蓋の内部を通過する。しかし、頭蓋のインピーダンスは比較的高いため、電流のかなりの部分は頭皮に沿っても流れる。インピーダンス測定を使用して脳血行動態パラメータを決定するために、一般的に測定は、脳内の血液および脳脊髄液の量に大きく依存する頭蓋の内部のインピーダンスを、頭皮内の血液の量に大きく依存する頭皮のインピーダンスから区別することが可能であることが望ましい。この動作モードでは、測定されたインピーダンスの頭皮のインピーダンスに対する感度を低減するために、電極108および110の間に電流を通して、「表面インピーダンス」と呼ばれる第2インピーダンス測定が任意選択的に行なわれる。電極108および110は互いに比較的近接しているため、かつ頭蓋の比較的厚い前額部に配置されるため、この電流は、電極104および106の間の電流とは異なり、ほとんど全部が頭皮を通過する。電極108および110の間で測定されたこの表面インピーダンスは、電極104および106の間で測定されたインピーダンスを頭皮寄与分について補正するために使用することができ、その結果、脳のインピーダンスの値は頭皮のインピーダンスに対して比較的鈍感になる。これは例えば、関連PCT出願PCT/IL2005/000632およびPCT/IB2006/050174に記載された、PPG信号を使用して頭皮の血流を補正するための方法と同様に、電極104および106の間で測定されたインピーダンスから表面インピーダンスを減算することによって、または電極104および106の間で測定されたインピーダンスの表面インピーダンスに対する比を取ることによって行なうことができる。代替的に、例えば下述するように、電極104および106の間で測定されたインピーダンス信号を解析して、時間の関数としての波形の形態を特徴付ける1つ以上の尺度を求め、かつ同様の尺度を表面インピーダンスまたはPPG信号から求め、それは次いで、表面血流に対する感度が低下しかつ脳血行動態パラメータに対する依存性が高くなるように、電極104および106の間で測定されたインピーダンス信号から求められた尺度を補正するために使用される。
【0108】
任意選択的に、2つのインピーダンス測定は連続的に行なわれる。代替的にそれらは、2つの測定が互いに干渉しないように任意選択的に異なるAC周波数を使用して、同時に行なわれる。安全上の理由から、インピーダンスの医用測定は一般的に、約10kHzから数十kHzの間の周波数のAC電流により行なわれることに留意されたい。測定を同時に行なうことは、2つのインピーダンス測定を単一または複数の同一心周期に対して比較することができるという潜在的利点を有する。2つのインピーダンス測定が異なる周波数で行なわれる場合には、インピーダンスの差が主として周波数の違いによらず、電極の位置の違いによるように、2つの周波数を充分に近接させることが潜在的に有利である。例えばより高い周波数では、コンデンサとして作用する細胞膜の低いインピーダンスのため、より多くの電流が細胞の内部に流れることができる一方、より低い周波数では、より多くの電流が血管の内部のような細胞外流体中に流れるため、インピーダンスは周波数に依存することがある。細胞の内部の電流路は、約100kHzを超えると優勢になり始める。
【0109】
任意選択的に図1に示すのと同じ位置で同じく4つの電極を使用するシステム100の別の動作モードは、脳血管の左右非対称度の指標、例えば脳卒中または他の脳血管病変を示すかもしれない1つ以上の脳血行動態パラメータの非対称性を検出するために使用される。この動作モードでは、第1インピーダンスは、頭部に互いに対して対称的に配置されていない少なくとも2つの電極を使用して測定され、第2インピーダンスは、第1インピーダンスに使用される電極の鏡像である電極を使用して測定される。心周期にわたる時間の関数としての第1および第2インピーダンスの信号を解析することができ、各インピーダンス信号に対して信号形態の1つ以上の尺度を求めることができる。健康な被検者では、脳における血流および血液量のパターンは一般的に左右対称的であるので、2つのインピーダンス信号およびそれらに対応する信号形態の尺度は略同一となる。2つのインピーダンス測定間、またはそれらの信号形態の尺度間の差分は、脳血管の異常を診断するために使用することができる。
【0110】
例えば、第1インピーダンスは電極104および110の間で測定されて、頭部の左側のインピーダンスにより大きく依存するインピーダンス測定をもたらし、かつ第2インピーダンスは電極106および108の間で測定されて、第1測定の鏡像であり、かつ頭部の右側のインピーダンスにより大きく依存する測定をもたらす。代替的に、第1インピーダンスは電極104および108の間で測定され、第2インピーダンスは電極106および110の間で測定される。電極104および110の間ならびに電極106および108の間のインピーダンスの測定は、インピーダンスが電極104および108の間ならびに電極106および110の間で測定される場合より多くの電流が頭蓋内部を流れ、かつより少ない電流が頭皮を流れるという潜在的利点を有する。本発明の一部の実施形態では、電極104および108の間のインピーダンス測定は、電極104および110の間のインピーダンス測定を頭皮寄与分について補正するために使用され、かつ電極106および110の間のインピーダンス測定は、電極106および108の間のインピーダンス測定を頭皮寄与分について補正するために使用される。代替的に、頭部の左側の頭皮寄与分の補正は、PPGセンサ112からのデータを使用して行なわれ、かつ頭部の右側の頭皮寄与分の補正はPPGセンサ114からのデータを使用して行なわれる。
【0111】
他の動作モードでは、一部または全部のインピーダンス測定で、電圧差を測定するために使用されるものとは異なる電極対が電流を通すために使用される。本書で使用する場合、「電圧」または「電圧差」は「電位差」と同義で、「電流を通す」とは「電流を注入する」ことと同義である。構成が非対称的であり、かつ第1インピーダンス測定の構成の鏡像が第2インピーダンス測定に使用される限り、電流を通すためかつ電圧を測定するために、電極の任意の組合せを使用することができる。例えば、両方のインピーダンス測定に対して電流は電極104および106の間に通されるが、第1インピーダンス測定の場合、電圧は電極104および110の間で測定され、第2インピーダンス測定の場合、電圧は電極106および108の間で測定される。電流を通しかつ電圧を測定するための電極の他の可能な組合せは明白になるであろう。
【0112】
別のシナリオでは、第1インピーダンス測定は電極104と電極106および110の一方または両方との間に電流を通し、かつ/またはそれらの間の電圧を測定し、第1インピーダンス測定の鏡像である第2インピーダンス測定は、電極106と電極104および108の一方または両方との間に電流を通し、かつ/またはそれらの間の電圧を測定する。加えて、このシナリオでは、少なくとも電極104および108を利用して第1表面インピーダンス測定が行なわれ、かつ少なくとも電極106および110を利用して第2表面インピーダンス測定が行なわれる。第1表面インピーダンス測定は、第1インピーダンス測定に対する表面インピーダンスの寄与を低減するのに役立ち、第2表面インピーダンス測定は、第2インピーダンス測定に対する表面インピーダンスの寄与を低減するのに役立つ。
【0113】
本書で使用する場合、表面インピーダンスを測定するために使用される1対の比較的近傍の電極、例えば上述した実施例における電極104および108または電極106および110は、これらの電極のいずれも、より遠く離れた異なる電極と組み合わせて使用される場合、個別に脳のインピーダンスを測定するために機能することもできるという事実にもかかわらず、かつ脳のインピーダンスが一般的に、頭部の1対の比較的近傍の電極によってさえも測定されるインピーダンスに対し多少の寄与をするという事実にもかかわらず、「表面インピーダンスセンサ」と呼ばれる。
【0114】
別の動作モードでは、頭部の左側および右側の間の脳血管の非対称度の指標は、頭部の左側および右側の表面血流を測定するPPGセンサ112および114からの信号を直接比較することによって検出される。頭部の各側の頚動脈は内頚動脈および外頚動脈に分かれるので、頭部の片側の表面血流は、頭部の同じ側の頭蓋内血流と逆相関させることができる。例えば、右内頚動脈の閉塞は、右頚動脈からの血液のより多くを、頭皮および皮膚を介して右外頚動脈に流動させることができ、閉塞が存在しない頭部の左側より頭部の右側に、より多くの表面血流およびより強力なPPG信号を生じる。こうして、頭部の左側および右側に対称的に配置されたPPGセンサからの信号間の差は、それ自体、脳卒中または別の脳血管の問題を示すことができる。任意選択的に、PPG信号間の差分は、脳血管の問題を診断するために頭部の左側および右側のインピーダンス測定の差分と共に、または例えば電極104および106の間のインピーダンスの1つ以上の対称的な測定と共に使用される。例えば、左側の脳血行動態パラメータに関する情報を得るために、頭部の左側からのPPG信号は対称的なIPG信号から減算されるか、または後者によって除算され、かつ右側の脳血行動態パラメータに関する情報を得るために、頭部の右側からのPPG信号は同じ対称的なIPG信号から減算されるか、または後者によって除算される。代替的に、インピーダンス測定を全く使用しないシステムでさえも、左側および右側のPPG信号だけの差分がこの目的に使用される。
【0115】
上述したシステム100の動作モードのいずれも、別々に、またはいずれかの他の動作モードと組み合わせて、連続的にまたは同時に使用することができる。2つの異なる動作モードを同時に使用する場合、2つの測定が互いに干渉しないように、任意選択的に異なる周波数が使用される。
【0116】
図2Aは、本発明の別の実施形態に係る、被検者202の脳血管の左右非対称度の指標を測定するためのシステム200を示す。システム200は、被検者の頭部の左側に、例えばこめかみに取り付けられた電極204と、左側の電極204の位置と実質的に鏡像である頭部の右側の位置に取り付けられた電極206と、被検者の頭部の左右対称面に、例えば後頭部の大後頭孔付近に実質的に取り付けられた電極208とを備える。これらの電極に頭部の他の位置を使用することができるが、これらの位置は、それらが全て頭蓋の薄い部分であるかまたは頭蓋の開口部に近く、その結果、電極が頭蓋のより厚い部分に近くかつ頭蓋の開口部から離れた位置にある場合より比較的多くの電流が頭蓋の内部を通過し、より少ない電流が頭皮を通過するという潜在的な利点を有する。
【0117】
システム200はシステム100と同様に、任意選択的にコントローラ、電源、およびデータ解析装置、ならびにそれらを電極に接続するケーブルを有するが、明確を期すためにこれらは図2Aには示されていない。任意選択的に、システム200はまた、PPGセンサ、ECG、およびシステム100の他の特徴をも含む。
【0118】
システム200の例示的動作モードで、電流は電極204および206の間に通され、電圧は電極204および208の間、および電極206および208の間で測定される。健康な被検者で通常そうであるように被検者の頭部のインピーダンスが左右対称である場合には、電極204および208の間で測定された電圧の波形は、電極206および208の間で測定された電圧の波形と略同一となる。これらの2つの波形間の差分は、頭部のインピーダンスの対称性の指標となり、血流のような脳血行動態パラメータの異常な非対称性の指標となる見込みがあり、かつ頭部の片側の脳卒中病変の体積のような臨床状態の重症度の指標となる見込みがある。
【0119】
図2Bは、システム100およびシステム200とは異なる電極の構成を持つ、本発明の別の実施形態に係る、被検者211の脳血管の左右非対称度の指標を測定するためのシステム210を示す。発明者らによる幾つかの試験は、これが脳血管の左右非対称に対し良好な感度を持ち、使用するのに有利な構成であることを示唆している。例えば図面に示す位置では、電極212は被検者の右こめかみに配置され、電極214は被検者の右耳の後ろに配置される。電極216は被検者の左こめかみに配置され、電極218は被検者の左耳の後ろに配置され、それは鏡220の中に見える。電極は頭部の両側に対照的に配置される。ケーブル120は電極の各々をコントローラ122に接続する。図2Bは、電極がそれに沿ってディジーチェーン接続された単一多線ケーブル120を示すが、それに代わって2本以上の別々のケーブルを使用して電極をコントローラ122に接続することもできる。コントローラ122に帰属する様々な機能は任意選択的に別々のハードウェア部品に分割され、これは本発明の他の実施形態におけるコントローラにも同様に当てはまる。
【0120】
脳血管の左右非対称度の指標を測定するために、コントローラ122は、電極212および214の間を流れる所与の電流に関連して、電極212および214の間の電圧を測定することによって、第1インピーダンス測定を行なう。コントローラ122はまた、電極216および218の間を流れる所与の電流に関連して、電極216および218の間の電圧を測定することによって、第1インピーダンス測定の鏡像である第2インピーダンス測定をも行なう。2つの測定は連続的にまたは同時に行なわれ、それらが同時に行なわれる場合、2つの測定に対し任意選択的に異なる周波数が使用される。代替的に、両側で同じ周波数が使用され、頭部の片側に印加される電流は、頭部の反対側で測定される電圧に対する影響が比較的小さくなることが予想される。
【0121】
頭部の両側で行なわれたインピーダンス測定を比較することによって、特に、下述する通り、任意選択的に1つ以上の心周期にわたって時間の関数として測定されたインピーダンス波形の特徴を比較することによって、コントローラ122は、例えば脳卒中を診断するのに臨床的に有用である脳血液循環の非対称度を推定する。電極212および214は互いにかなり接近しているので、電極212および214の間の電流のかなりの部分が、頭蓋内部ではなく頭皮に流れることが予想されることに注目されたい。それにもかかわらず、図2Bに示す電極構成は脳血液循環の非対称度を測定するのに有用であることを、発明者らは発見した。
【0122】
図2Bに示す電極212、214、216、および218は各々、電位を測定するため、および頭部に電流を注入するための両方に使用される。どこか別のところで説明する通り、各電極が電位を測定するためおよび電流を注入するために、互いに絶縁された別々の電圧および電流素子を含む場合、潜在的に有利である。代替的に、電極212、214、216および218の1つ以上を、単一構造に結合されないが、任意選択的に被検者の頭部の図示する位置に互いに隣接して配置される、別々の電流および電圧電極に置換することができる。例えば電流および電圧電極は、別々の電圧および電流電極が使用される各位置で、互いに5cm以内、または互いに2cm以内、または互いに1cm以内に配置される。
【0123】
図2Bに示す電極構成は、両方の測定中に同一の対称な分布の電流を頭部に注入して、頭部の各側の電圧を測定するためにも使用される。例えば電流は、頭部の左右対称面に配置された図2Bに示されない2つの電極間に、例えば前額部の中心に配置された電極と、図2Aの電極208と同様に後頭部に配置された電極との間に通すことができる一方、電極212、214、216、および218は電圧を測定するためにだけ使用される。
【0124】
本発明の一部の実施形態では、電極212および214の間で所与の電流に対する電圧を測定することによって、頭部の右側で第1局所的インピーダンス測定が行なわれ、電極216および218の間で所与の電流に対する電圧を測定することによって、頭部の左側で第2局所的インピーダンス測定が行なわれる一方、頭部の右側に1つ、左側に1つの追加の電極対、例えば図1の電極104および106の位置における電極、または図2Aの電極204および206の位置における電極の間に電流を通しながら電圧を測定することによって、第3の大域的インピーダンス測定が行なわれる。任意選択的に、異なる測定が互いに干渉するのを回避するために、例えば3つの異なる周波数を使用して、3つのインピーダンス測定が同時に行なわれる。代替的に、3つの測定は異なる時間に、例えば異なる心周期中に、または心周期中のインピーダンスが変化する最小時間スケールより各々がずっと短い期間の異なるタイムスロット中に行なわれる。任意選択的に、電極とは別個に、または電極に内蔵して、例えばこめかみまたは頭部の側部に取り付けられる1つ以上のPPGセンサも存在する。3つのインピーダンス信号は、脳血流または脳血量のような大域的左脳半球および右脳半球の脳血行動態パラメータの推定値を独立して得るのに有用であろう。
【0125】
図2Cは、本発明の別の実施形態に係る、被検者232の脳血管の左右非対称度の指標を測定するためのシステム230を示す。PPGセンサ234は被検者の右こめかみに配置され、PPGセンサ236は被検者の頚部に、頚部の右側の主要動脈、例えば右頚動脈237に隣接して配置される。鏡220に反射して見える通り、PPGセンサ238は被検者の左こめかみに配置され、PPGセンサ240は被検者の頚部に、頚部の左側の主要動脈、例えば左頚動脈241に隣接して配置される。ケーブル242はPPGセンサをコントローラ244に接続する。システム230は、システム100、200、および210とは異なり、インピーダンス測定を全く使用せず、PPGセンサだけを使用する。
【0126】
コントローラ244は、1以上の心周期にわたって4つのセンサ全部からPPG波形を時間の関数として記録する。一般的に、拡張期後の頚動脈の血圧の上昇と、頚動脈から流れ込む頭部のより小さい表面動脈の血圧の上昇との間に位相遅延が存在することが予想される。この位相遅延は、頚動脈に隣接するPPGセンサからのPPG信号の立上りと、こめかみにおけるPPGセンサからのPPG信号の立上りとの間の位相遅延を測定することによって、頭部の各側で測定することができる。脳の両側の脳血液循環の非対称性は、頭部の両側からのPPG信号の位相遅延に影響することがある。例えば、頭部の片側の脳内部の閉塞動脈は、結果的に頭部のその側の表面血流を反対側より増大させ、かつ頭部のその側の位相遅延を反対側より短縮させるかもしれない。他のメカニズムもPPG信号の位相遅延に影響を及ぼすかもしれない。
【0127】
コントローラ244は、4つのPPGセンサ全部からのPPG波形を解析して、頭部の各側で頚動脈における信号の立上りとこめかみにおける信号の立上りとの間の位相遅延を求める。コントローラ244は次いで、頭部の両側の位相遅延の差を使用して、脳の血液循環の左右非対称度を推定する。
【0128】
上述の通り、システム100、200、210、または230を使用して脳血管の非対称性を検出かつ測定する場合、関心の的は主として、時間の関数として、または心周期の位相の関数としての1以上の心周期中のインピーダンス(またはPPG)信号である。任意選択的に、複数の心周期にわたって波形を平均するような下述の方法のいずれかを使用して、または当業界で公知のいずれかの方法を使用して、2つの波形が、1以上の心周期にわたって、2つの鏡像インピーダンス信号および/または2つの鏡像PPG信号から導出される。2つの波形の特徴の差分は、非対称性を決定するために使用される。本発明の一部の実施形態では、頭部の両側から生成された波形は、下述する方法または前掲の関連特許出願のいずれかに記載された方法のいずれかを使用して、または当業界で公知のいずれかの方法を使用して、最初に別々に解析され、それにより2つの波形の特徴を反映する1つ以上の尺度を生成する。2つの波形の尺度は次いで比較され、脳血管の左右非対称度の指標を提供する。代替的に、または追加的に、2つの波形の組合せから、例えばそれらの間の差分から、またはそれらの比から、第3波形が生成される。第3波形は次いで解析され、下述するかまたは当業界で公知のいずれかの方法を使用して、非対称性の尺度を生成する。
【0129】
本発明の一部の実施形態では、脳血管の非対称性が検出かつ測定されるだけでなく、非対称性が見つかった場合、頭部のどちら側に非対照性を引き起こす脳卒中または他の病理が位置する可能性が高いかが決定される。これは例えば、頭部の各側についてインピーダンスおよび/またはPPGデータからの波形を、健康な被検者から同様の方法で得られる予測または測定波形と比較することによって、行なわれる。健康な被検者からの波形と最も大きく異なる波形は、異常な波形である可能性が高く、頭部の対応する側に病理が見つかる可能性が高い。任意選択的に、異常波形と健康な被検者からの波形との間の差異の程度は、脳卒中または他の病理の重症度を決定するために使用される。
【0130】
任意選択的に、波形は脳卒中または他の病理の重症度を定量的に推定するために使用される。これは、例えば波形の尺度と病理の重症度の尺度との間の相関を示す研究の結果を使用することによって行なわれる。例として、正規化された低速波振幅と下で図6に示す脳卒中病変の体積との間の相関がある。
【0131】
本発明の一部の実施形態では、記載する方法のいずれかによって求められた非対称度は、家庭または病院環境において急性脳卒中患者で監視され、非対称度が患者を最後に検査したときの値から10%、もしくは20%、もしくは30%増加した場合、または非対称度が予め定められた閾値を超えた場合、医療スタッフに警報が出される。
【0132】
信号の解析手順
図3は、時間または時間パラメータの関数としての1心周期の脳インピーダンス信号またはPPG信号のグラフ300を示し、本発明の例示的実施形態に従ってこの信号を解析する種々の方法を示す。任意選択的に、インピーダンス信号は、図1、2A、もしくは2B、または前掲の関連特許出願のいずれかに記載する電極構成のいずれかを使用して、または脳インピーダンス測定の先行技術から公知のいずれかの電極構成により得られ、かつ任意選択的に信号は、異なる対の電極からの信号を組み合わせること、またはPPGセンサからの信号をインピーダンス信号と組み合わせること、例えばそれらの差分もしくはそれらの比を取ることを含め、上述したいずれかの手順または関連出願もしくは背景節に引用した先行技術もしくは他の先行技術に記載されたいずれかの手順を使用して、前処理される。本発明の一部の実施形態では、インピーダンス測定無しで、PPG信号だけが使用され、本書でインピーダンス信号が言及されている箇所はいずれも、それに代わってPPG信号を使用することができることを理解されたい。
【0133】
図3のグラフは、頭部の血液量が高くなるので頭部の実際のインピーダンスが低くなる収縮点をy軸302上により高く示す一方、拡張点は、脳インピーダンスをプロットするときに従来通り、y軸302上により低く示されることに注目されたい。これは、グラフがPPG信号を表わす場合にも当てはまる。特許請求の範囲を含めて本書で使用する場合、「より高い」、「より低い」、「立上り」、「立下り」、正または負の勾配、正または負の2次または3次導関数等のような表現は、実際の測定インピーダンスではなく、従来通りプロットされたインピーダンス信号(またはPPG信号)に言及するものである。
【0134】
任意選択的に、図3にプロットされかつ解析された信号は単一心周期からのデータを表わし、x軸304はデータが取られた実際の時間である。代替的に、複数の心周期からのデータは結合され、例えば整列され、かつ平均化され、図3の信号はそのような平均を表わし、x軸304は、実際の時間ではなく、時間の次元を持つ心周期の位相を表わす。本書で使用する用語「時間パラメータ」は両方の場合を含み、本書では時々大まかに単に「時間」と言う一方、混乱を招かない場合には、時間パラメータの間隔を時間の間隔または時間間隔と言う。グラフ300に示すような信号は、それが単一心周期を表わすか、それとも複数の周期にわたる平均を表わすかに関係無く、本書では「コンプレックス」と呼ぶ。
【0135】
任意選択的に、異なる心周期からのデータが位置合わせされ、かつ平均化される前に、拡張期に対応する各周期の始めと終わりの最小値が常に一定値、例えば零となるように、データはデトレンドされる。任意選択的に、データをデトレンドする前に、任意選択的に、下述する通り低速波の測定を含め、データ解析で使用される尺度の1つとして、各心周期からのデータの平均値、または各心周期からの最小値を求め、かつ記録する。任意選択的に、データをデトレンドした後、インピーダンス測定が行なわれるときに、被検者から記録されたECG信号を位置合わせすることによって、異なる心周期からの拡張点が位置合せされる。代替的に、異なる心周期は、拡張点を表わすと想定される心周期の最小点を位置合せすることによって、位置合せされる。任意選択的に、各心周期の長さは、平均化される前に、周期が常に同じ長さになるように調整されるので、最終拡張点も全て位置合せされる。
【0136】
任意選択的に、異なる周期を位置合わせし、かつ平均化する前および/または後で、信号の高周波雑音はフィルタリングで除去される。任意選択的に、個々の心周期は、隣接周期、または以前の周期、または以前の周期の移動平均、または理論的に予測される周期との類似性が検査され、異なりすぎる周期は平均化する前に除去される。異質の周期を除去し、データを平均化する幾つかの方法は、例えば関連PCT特許出願PCT/IB2006/050174に記載されている。
【0137】
グラフ300に示すようなコンプレックスは、数多くの方法で解析して種々の尺度を生成することができ、そのうちの幾つかは、臨床的に関心のある種々の脳血行動態パラメータと実質的に相関することが明らかになった。尺度の1つ、デトレンド前の各心周期にわたるデータの平均またはデータの最小値を上に示した。デトレンド前のデータは、絶対DCインピーダンスを決定するだけでなく、典型的には0.08ないし0.2Hzの周波数の低速波の振幅および他の特徴を決定するためにも使用することができる。平均インピーダンスまたは1心周期にわたるピーク・トゥ・ピーク・インピーダンスによって正規化された低速波の振幅は、CTによって決定される虚血性脳卒中病変の体積とよく相関することが、発明者らによって明らかになった。そのような相関を示すデータの1例を、下述する図6に示す。本発明の一部の実施形態では、任意選択的に正規化された低速波の振幅が急性脳卒中患者で監視され、振幅が10%、または20%、または30%変化した場合、特に患者の状態の悪化を示す振幅の低下が生じた場合、または振幅が予め定められた閾値未満に降下した場合、医療スタッフに警報が出される。下述する他の尺度は任意選択的に、デトレンド後の信号だけから求められる。その段階で信号は一般的にグラフ300に類似する。
【0138】
グラフ300の信号の最小値306は、心周期の始めの拡張開始期を示し、最小値308は周期の終わりの拡張末期を示す。拡張期が開始する時間312から拡張期が終了する時間314までの時間間隔310は1心周期を表わし、信号の他の時間間隔を正規化するために時々使用される。
【0139】
立上り時間の尺度
時間318における信号の最大値316は収縮期を示す。収縮期の時間318と拡張期開始の時間312との間の時間間隔320は、総立上り時間と呼ばれ、時間間隔310で割って正規化された総立上り時間を得ることができる。
【0140】
信号の雑音は最小値および最大値の時間に、かつ、したがって総立上り時間320に、誤差を生じることがある。立上り時間のより頑健な尺度は、代わりに、信号が最小値から固定百分率だけ高い、例えば最小値から最大値までの道のりの例えば約5%、約10%、もしくは約20%、またはそれ以上もしくはそれ以下、または中間の百分率だけ高い点322で始まり、かつ信号が最大値から固定百分率だけ低い、例えば最大値から約10%、約20%、もしくは約30%、またはそれ以上もしくはそれ以下、または中間の百分率だけ低い点324で終わる時間間隔を取ることによって、得ることができる。これらの点は図3の時間326および328に発生し、固定百分率レベルは最小値から10%高く、かつ最大値から20%低く、それらの間の差分は頑健な立上り時間330を表わす。区間330の開始時間および終了時間は通常信号の極値付近では発生しないので、区間330の長さは区間320の長さより雑音に対する感度が低い。
【0141】
図3に示す信号では、データは最大値より20%低いレベルと最初に点324で交差し、次いで局所的最大値に達した後このレベルより低くなり、時間334に点332で再びこのレベルと交差することに注目されたい。頑健な立上り時間は様々な方法で定義することができ、区間の終点は、信号が固定値(図3に示す例では最大値より20%低い)と交差する最初の時間、または信号が最大値316に達する前に固定値と交差する最後の時間のいずれかである。第1の定義は頑健な立上り時間330をもたらす。第2の定義はより長い頑健な立上り時間336をもたらす。第1局所的最大値338が固定レベルより低いレベルである場合、または局所的最大値338の後に続く局所的最小値344が固定レベルより高い場合、または最大値316の前に局所的最大値338が存在しない場合には、信号は固定値と1度交差するだけであり、これらの定義は全て同じ頑健な立上り時間をもたらす。頑健な立上り時間の終点を定義するのに使用される固定レベルの選択は、解析される信号について、第1局所的最大値および第1局所的最大値の後の一時的下落が典型的にどのレベルで生じるかに依存し、また頑健な立上り時間を総立上り時間に近似させるように意図するか、それとも第1局所的最大値338までの初期立上り時間より一般的にずっと短くなるように意図するかにも依存する。発明者らによって解析され、下述するように臨床パラメータと相関することが明らかになった信号の場合、最大値より20%低い点324のような第1点で区間が終了するように、頑健な立上り時間が定義され、一般的にこの点は第1局所最大値の前に発生する。
【0142】
最小値306の時間312から第1局所的最大値338の時間340までの区間342も定義することができ、本書では第1局所的最大値までの立上り時間と呼ぶ。任意選択的に、第1局所的最大値は、最小値付近の雑音のため、最小値に非常に近接した局所的最大値を除外するように定義される。例えば、信号点は、それが最大値316に充分に近い場合にだけ、例えば最小値306から最大値316までの道のりの少なくとも50%、または道のりの少なくとも70%である場合にだけ、第1局所的最大値の候補とみなされる。任意選択的に、信号点を第1局所的最大値の候補とみなすために、信号点の周りに充分に長い時間間隔、例えば少なくとも10ミリ秒または少なくとも20ミリ秒が存在し、全ての信号点が最大値316に充分に近い時間間隔内にあることも要求される。
【0143】
場合によっては、コンプレックスは最大値316の前に局所的最大値を示さないかもしれないが、信号の解析において第1局所的最大値と同様の役割を果たす変曲点が最大値316の前に存在するかもしれない。例えば図4は、同様に定義された軸302および軸304、ならびに時間312の最小値306、時間314の最小値308、および時間318の最大値316を持つ、図3のグラフ300と同様のコンプレックスのグラフ400を示す。しかし図4では、第1局所的最大値338が存在しないが、図3の第1局所的最大値338と同様のレベルに正の3次導関数を持つ変曲点402が時間404に存在する。点402は局所的実効最大値と呼ばれ、本書で使用する場合、図3の局所的最大値338のような実際の局所的最大値をも含む用語である。時間312と時間404との間の区間406を、本書では第1局所的実効最大値までの立上り時間と呼ぶ。任意選択的に、第1局所的実効最大値は、第1局所的最大値と同様に、雑音のみによる正の3次導関数を持つ変曲点である、最小値に非常に近い点を除外するように定義される。例えば、信号点は、それが最大値316に充分に近い場合、例えば最小値306から最大値316までの道のりの少なくとも50%または少なくとも70%である場合にだけ、かつ任意選択的に、点が例えば少なくとも10ミリ秒または少なくとも20ミリ秒の充分に長い区間によって囲まれ、それも最大値316に充分に近い場合にだけ、候補となる。任意選択的に、点は、充分に小さい勾配を持つ場合にだけ、例えば勾配が最大である点344の勾配の2分の1未満、または最小値306とその点との間の平均勾配の2分の1未満である場合にだけ、候補とみなされる
【0144】
本書で使用する場合、「第1ピーク立上り区間」とは、第1局所的最大値までの立上り時間、および第1局所的実効最大値までの立上り時間の両方を含む総称である。本書で使用する場合、「立上り区間」は、第1ピーク立上り区間、総立上り時間、および頑健な立上り時間を含む一般用語である。任意選択的に、立上り区間は当然、それを心周期時間間隔310で除算することによって正規化される。
【0145】
発明者らは、心周期の長さによって正規化された総立上り時間または頑健な立上り時間と、CTまたは灌流CTによって独立して測定することができ、かつ虚血性脳卒中病変の体積の尺度を提供する局所脳血量および局所脳血流を含む脳血行動態パラメータとの間に、例えば約0.5から0.75のRを有する比較的高い線形相関関係があり、低い局所血液量および血流がより重篤な脳卒中を示すことを見出した。より短い正規化された総立上り時間または頑健な立上り時間は、より大きい局所脳血流、およびより大きい局所脳血量に相関する。任意選択的に、インピーダンス信号の正規化された立上り時間は、頭部の片側からのPPG信号の正規化された立上り時間によって除算され、それは頭部のその側の局所脳血流および局所脳血量に対するずっと強い相関を提示する。
【0146】
さらに、正規化された頑健な立上り時間は、2つの小さい患者サンプルにおいて、中等ないし重篤な皮質脳卒中の次の24から48時間の臨床症状を予測するために高い感度(89%ないし100%)および高い特異度(60%ないし75%)を有することが明らかになった。本発明の一部の実施形態では臨床環境で、正規化された総立上り時間または正規化された頑健な立上り時間を使用して、局所脳血流および/または局所脳血量を推定し、または脳卒中の重症度の可能性を診断する。本発明の一部の実施形態では、病院または家庭環境で、急性脳卒中患者における正規化された総立上り時間または正規化された頑健な立上り時間を監視し、10%超、または20%超、または30%超の変化が生じた場合、特に患者の状態の悪化を示す増加が生じた場合、医療スタッフに警報が出される。任意選択的に、正規化された総立上り時間または正規化された頑健な立上り時間が予め定められた閾値を越えた場合、医療スタッフに警報が出される。任意選択的に、監視されている正規化された総立上り時間または正規化された頑健な立上り時間は、上述の通り、PPG信号を用いて調整される。
【0147】
心位相の関数としての信号の他の尺度
心位相の関数として信号を解析するために任意選択的に使用される幾つかの他の尺度として、図3の時間346における点345の最大勾配、最小値306に対して測定された最大値316の高さ、最大値316の高さに対して正規化された最大勾配、最小値の時間312から最大勾配の時間346までの区間348の長さ、総立上り時間に対する第1ピーク立上り区間の比、特に頑健な立上り時間が第1ピーク立上り区間に類似するように定義された場合、総立上り時間に対する頑健な立上り時間の比、および最大値316の高さに対する第1局所実効最大値(図3の点338または図4の点402)の高さの比(どちらの高さも最小値306に対して測定される)が挙げられる。
【0148】
時々、絶対最大値316の前に第2局所的最大値が存在する。本発明の一部の実施形態では、第2最大値の高さは、それがコンプレックスの絶対最大値でもあるか否かにかかわらず、上述した尺度で使用される。例えば、第1局所実効最大値の高さは任意選択的に、それも絶対最大値316であるか否かに関係なく、第2最大値の高さに対して正規化される。
【0149】
信号の絶対高さ、例えば最大値316の高さ、または2つの高さの無次元比ではなく、非正規化最大勾配に依存する尺度は、電極の正確な位置、および1組の測定から別の組の測定まで一定に維持することが難しい他の変数に対して敏感であるかもしれず、かつ所与の被検者を連続的に監視する場合、経時的な変化を追跡するために使用される場合に最も有意義であるかもしれないことに注目されたい。
【0150】
信号の積分を含む尺度
コンプレックスを解析するために使用される他の尺度は、心周期区間310にわたって、またはその一部分にわたって、例えば総立上り時間320にわたって信号を積分することを含む。図3および4に示す信号のような、コンプレックスにおける時間パラメータの関数としての信号は、典型的に略三角形であり、拡張開始期から収縮期まで略直線状に上昇し、かつ収縮期から拡張末期まで略直線状に下降する。最小値を零に設定した心周期にわたるこの信号の積分は、最大値の高さ×心周期の長さの約1/2となる。同様に、総立上り区間にわたる積分は、最大値の高さ×総立上り区間の長さの約1/2となる。積分を第1の事例では心周期の長さで、または第2の事例では総立上り時間の長さで割ることにより、心周期中または総立上り区間中の信号の平均値が得られ、それはどちらの場合も最大値の約1/2となる。したがってこれらの尺度のいずれも2を掛けることにより、最大値の実際の高さより雑音に影響されず、より頑健である、最大値の高さの近似代用がもたらされる。信号のこの平均値は、最大値の高さと相関することが明らかになった脳血行動態パラメータを推定するために、最大値の高さのより頑健な代用として使用することができる。そのようなパラメータの例として頭蓋内圧および脳血量が挙げられる。
【0151】
同様に、第1局所的最大値(または第1局所的実効最大値)までの立上り時間342にわたって積分を行ない、それを第1局所的最大値までの立上り時間342で割ると、第1局所的最大値までの立上りが略直線状であるならば、結果的に得られる第1局所的最大値までの立上り中の信号の平均値は、第1局所的最大値の高さの約1/2となる。この尺度は、第1局所的最大値の高さのより頑健な代用として使用することができる。
【0152】
本発明の一部の実施形態では、コンプレックスは、心周期の長さにわたる積分に対する総立上り時間にわたる積分、または頑健な立上り時間にわたる積分、または第1局所的最大値までの立上り時間にわたる積分の比を取ることによって解析される。これらの比は、上述した心周期の長さに対する総立上り時間、または頑健な立上り時間、または第1局所的最大値までの立上り時間の比と同様であるかもしれず、局所脳血流および局所脳血量と相関することも明らかになった。インピーダンス信号の積分の比をPPG信号の積分の比で割った場合に、局所脳血量に対する特に強い相関が明らかになった。これらの数量はいずれも、急性脳卒中患者で監視することができ、それらが変化した場合、特に10%、もしくは20%、もしくは30%上昇した場合、またはそれらが予め定められた閾値より高くなった場合、医療スタッフに警報を出すことができる。
【0153】
心周期の長さにわたる積分に対する頑健な立上り時間にわたる信号の積分の比は、特に頑健な立上り時間を信号が最小値より10%高いときに始まり、かつ最大値より20%低いときに終わると定義すると、一部のインピーダンス信号およびPPG信号を解析するのに特に有用な数量となることが、発明者らによって明らかになった。「臨床パラメータに対して観察される相関」の節で下述する通り、この数量と虚血性脳卒中患者の臨床的に有用なパラメータとの間の相関は、一部の信号では、0.5から0.75の間であることが臨床研究で明らかになった。
【0154】
本発明の一部の実施形態では、コンプレックスは、積分を時間間隔で割ることから推定される最大値の高さと最大値の実際の高さとの比を取ることによって解析される。すなわち信号の積分は全心周期にわって、または総立上り区間だけで行なわれ、かつ積分時間および最大値の高さで除算される。この比は、信号が立ち上がりかつ立ち下がるときの信号の凹性または凸性の尺度である。心周期全体にわたり、または総立上り区間にわたり積分される場合、この比は、超音波TCD波形で測定される拍動指数(Pulsatility Index)の逆数と同様である。図5A〜5Cは、この比が異なる値を有するコンプレックスを概略的に示す。図5Aにおいて、コンプレックスは三角形に非常に近く、信号はその最大値まで直線状に立ち上がり、かつ最小値まで直線状に立ち下がる。図5Aの場合、比は0.5に近くなる。図5Bにおいて、信号は凹状であり、最初にゆっくり立ち上がり、次いでより急速にその最大値まで立ち上がり、最初に急速に立ち下がり、次いで最小値までよりゆっくり立ち下がる。図5Bの場合、比は0.5未満になる。図5Cでは、信号は凸状であり、最初に急速に、次いでゆっくりとその最大値まで立ち上がり、かつ最初にゆっくりと、次いでより急速にその最小値まで立ち下がる。図5Cの場合、比は0.5より大きいが、1未満になる。比は、積分が心周期全体にわたるか、それとも立上りまたは立下り部分だけで行なわれたかどうかに応じて、心周期全体における、または立上りもしくは立下り部分だけの平均凹性または凸性を特徴付ける。積分はまた、最小値から第1局所的最大値まで行なうこともでき、比は第1局所的最大値までの立上り時間にわたる平均凹性または凸性を特徴付ける。
【0155】
任意選択的に、尺度はいずれも、単一心周期に対して求められた場合、一部の心周期に対して雑音の多い結果を生じることのあるアーチファクトを除去するために、時間全体で平滑化される。上述の通り、例えば複数の心周期からの位置合わせされたデータの平均から求められた尺度であっても、尺度の各計算値で異なる組の心周期を表わし、時間全体で平滑化することができる。
【0156】
任意選択的に、上述したインピーダンス信号を解析する方法はいずれも、上述の通り頭部に対照的に配置された3つ以上の電極を使用して得られた2つの鏡像非対称インピーダンス信号を解析するために使用される。例えば、1つ以上の脳血行動態パラメータの値は、上述した方法のいずれかを非対称インピーダンス信号の各々に使用して推定される。これらの値を比較し、かつ/または経時的な値の変化を比較することにより、脳卒中および他の脳血管の状態を診断および/または監視するために有用である、脳血行動態パラメータの非対称性に関する情報がもたらされる。代替的に、2つのインピーダンス信号が、何らかの方法で、例えばそれらの間の差分または比を取って結合される。結合された信号は次いで、頭部の左側と右側との間の違いを特徴的に示す尺度を求めるために、上述した方法のいずれかに従って解析される。特徴的なこれらの尺度は、脳卒中および他の脳血管状態を診断および/または監視するのに有用である。
【0157】
臨床パラメータに対して観察される相関
図6は、25名の虚血性脳卒中患者のグループでCTによって測定された脳卒中病変の体積を横軸に、正規化された低速波振幅を縦軸にしたグラフ600を示す。縦および横の尺度は両方とも対数である。低速波振幅は、図2の電極204および206と同様の位置の電極により頭部の両側で得たインピーダンス信号に由来し、インピーダンス信号の平均に対して正規化されている。相関の2乗R=0.61である。相関は負であり、低い低速波振幅は大きい脳卒中病変体積に対応する。低速波振幅を心周期の平均ピーク・トゥ・ピーク・インピーダンスに対して正規化した場合、ほぼ同様の高い相関が得られた。30名の患者の当初のグループから、患者のうちの2名は臨床的に研究に適合せず、患者のうちの2名は低い信号品質のため異常値であり、1名の患者は脳卒中体積が零であって対数尺度に適合できなかったので、5名の患者のデータは解析から削除された。
【0158】
脳卒中患者を使用して臨床研究を実施し、そこで特定の標準脳血行動態パラメータを灌流CTによって測定し、かつ心周期位相の関数としてIPGおよびPPG信号に基づく種々の無次元尺度を使用して推定した。IPG電極を額の左および右隅に配置し、PPGセンサを各こめかみ上に配置した。約25kHzで1mAまでの電流を使用してIPG信号を求めた。信号をトレンド除去し、各心周期の最小値を同一レベルに設定し、かつ全部ではなく一部の事例では、心周期位相の関数としての信号の形状を維持しながら、雑音を低減するために、幾つかの連続心周期を同相で平均した。IPGおよびPPG信号および灌流CTによって測定されたパラメータの値に基づいて、無次元尺度の最良線形適合および相関を計算した。相関は約0.5から0.7の範囲であることが明らかになり、パラメータの値はサンプル内の異なる患者の間で、一般的に約2倍または3倍、時にはそれ以上の範囲に及んだ。本書に列挙する最良線形適合は、IPGおよびPPGデータからこれらの脳血行動態パラメータの推定値を提供するための出発点として使用することができた。パラメータに対し標準単位を使用した。すなわち、CBVの場合、組織100グラム当たりミリリットル単位、CBFの場合、毎分組織100グラム当たりミリリットル単位、TTPの場合、秒単位である。
【0159】
1)この尺度は、脳卒中の反対側の頭部のPPG信号に基づく尺度に対する、頭部を横切るIPG信号に基づく尺度の比であった。これらの信号の各々について、尺度は、拡張点から始まり最大勾配点で終了する立上り時間間隔であった。この尺度を使用して、脳卒中側の脳半球CBVパラメータを推定した。相関はR=0.54であり、最良線形適合は、
尺度=パラメータ/4.8+0.06
であった。
【0160】
2)この尺度は、脳卒中と同じ側の頭部のPPG信号に基づく尺度に対する、頭部を横切るIPG信号に基づく尺度の比であった。これらの信号の各々について、尺度は、心周期全体にわたる信号の積分に正規化された、頑健な立上り時間間隔にわたる信号の積分であった。この尺度を使用して全脳CBVパラメータを推定した。相関はR=0.72であり、最良線形適合は、
尺度=−パラメータ/6.9+1.49
であった。
【0161】
3)この尺度は、脳卒中とは反対側の頭部のPPG信号に基づく尺度に対する、頭部を横切るIPG信号に基づく尺度の比であった。これらの信号の各々について、尺度は、上に定義した、頑健な立上り時間間隔にわたる信号の正規化された積分であった。この尺度を使用して、全脳CBVパラメータを推定した。相関はR=0.59であり、最良線形適合は、
尺度=−パラメータ/8.3+1.4
であった。
【0162】
4)この尺度は、脳卒中と同じ側の頭部のPPG信号について、上に定義した、頑健な立上り時間間隔にわたる信号の正規化された積分であった。この尺度を使用して、脳卒中と同じ側の頭部の脳半球CBFを推定した。相関はR=0.56であり、最良線形適合は、
尺度=パラメータ/650+0.12
であった。
【0163】
5)この尺度は、脳卒中と同じ側の頭部のPPG信号について、上に定義した、頑健な立上り時間間隔にわたる信号の正規化された積分であった。この尺度を使用して、脳卒中と同じ側の頭部の脳半球TTPを推定した。相関はR=0.56であり、最良線形適合は、
尺度=パラメータ/420+0.08
であった。
【0164】
6)この尺度は、頭部を横切るIPG信号について、上に定義した、頑健な立上り時間間隔にわたる信号の正規化された積分であった。この尺度を使用して全脳TTPを推定した。相関はR=0.46であり、最良線形適合は、
尺度=パラメータ/280+0.04
であった。
【0165】
7)この尺度は、脳卒中と同じ頭の側のPPG信号について、信号の正規化された立上り時間曲率であった。この正規化された立上り時間曲率は、まず頑健な立上り時間中の信号を適合し、次いで頑健な立上り時間中の信号を放物線に適合し、心周期の差分、または2つの適合が信号の最大値と最小値の間の中間で交差する時間をとることによって定義される。この差分は次いで頑健な立上り時間に正規化される。この尺度を使用して、サンプル内の患者全体にわたって約8倍の範囲を持つ数量である全脳CBFに対する、脳卒中と同じ側の頭部の局所CBFの比を推定した。相関はR=0.53であり、最良線形適合は、
尺度=パラメータ/21.6+0.017
であった。
【0166】
インピーダンス測定の臨床用途
局所脳血量および局所脳血流との強い相関を示す尺度、例えば正規化された頑健な立上り時間および関連尺度は、臨床環境において多くの方法で使用することができる。例えばインピーダンス測定は、虚血性脳卒中を出血性脳卒中から区別するだけでなく、腫瘍のような神経症状の他の原因からも区別し、かつ虚血性脳卒中の範囲を評価するために、急性脳卒中の犠牲者に対し救急医療スタッフが実行することができる。この情報は、一般的にそれを施与する狭い機会の窓を有する血栓溶解療法の恩恵をどの患者が受ける可能性が高いかを決定するのを助けるために使用することができる。患者は一般的に、特定レベルの重症度に該当する虚血性脳卒中を有する場合にだけ、血栓溶解療法の恩恵を受ける可能性が高いとみなされる。臨床症状が小さいか、または脳卒中病変が大きい患者の場合、血栓溶解療法の恩恵の可能性より脳出血のリスクの増大の方が上回るかもしれない。
【0167】
局所脳血量および血流に相関する尺度は、ベンチレーション、血栓溶解療法、および血圧を下げる治療のような脳の循環に影響する治療中および治療後の患者を監視するためにも使用することができる。そのような治療の施与中に患者を実時間で監視することによって、治療薬の総投与量または治療が施与される速度を、患者の応答に応じて調整することができる。治療が施与された後、即座の介入を必要とする状態が生じないか、患者を監視することができる。例えば、脳血流が突然低下した場合、それは新しい血餅を示している可能性があり、脳血管造影により位置を突き止め、機械的にそれを除去することができる。脳卒中患者の脳血流の上昇が大きすぎる場合、血圧の危険な上昇を示しているかもしれず、それは適切な薬物療法により対処することができる。最後に、インピーダンス測定は、局所脳血流が正常に戻りかつ/または安定化し、患者が帰宅することができるときに、それを示すことができる。インピーダンス監視は連続的に行なうことができるので、より正確であるかもしれないが連続的に行なうことのできないCTまたはMRIのような方法より、経時的な局所脳血流の安定性の優れた指標を提供することができる。
【0168】
低速波振幅の尺度は、虚血性脳卒中患者における脳卒中体積に相関するので、そのような患者の脳卒中の重症度を評価し、かつどの患者が血栓溶解療法の恩恵を受ける可能性が高いかを決定するために、救急医療スタッフによって使用することもできる。
【0169】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0170】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0171】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0172】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0173】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0174】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0175】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0176】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0177】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0178】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0179】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者における脳血管の左右非対称度の指標を求める方法であって、
a)第2インピーダンス波形を測定する場合の電圧電極の位置および電流注入の分布が第1インピーダンス波形を測定する場合の鏡像となるように、各々の場合に電圧電極を頭部に非対称的に配置するか、または電流を頭部に非対称的に注入するか、または両方を行なって、各々の場合に頭部を介して少なくとも2つの電流電極の間に所与の注入電流を通すことに関連付けられる2つの電圧電極間の電位差を求めることによって、被検者の頭部の第1インピーダンス波形および第2インピーダンス波形を時間の関数として測定するステップと、
b)第1および第2インピーダンス波形の特徴間の差分から左右非対称度の指標を求めるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
第1および第2インピーダンス波形を測定するために使用される電極は少なくとも3つの電極を含み、方法はまた、第1および第2インピーダンス波形を測定する前に、頭部に少なくとも3つの電極を左右対称構成に配置するステップをも含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも3つの電極を頭部に配置するステップは、第1電極および第2電極を頭部の左側および右側に対称的に配置し、かつ第3電極を頭部の実質的に左右対称面に配置することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1インピーダンス波形を測定するステップは、電流が第1および第3電極間に通されるときに、第1および第3電極間の電位差を測定することを含み、第2インピーダンス波形を測定するステップは、電流が第2および第3電極間に通されるときに、第2および第3電極間の電位差を測定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1インピーダンス波形を測定するステップは、電流が第1および第2電極間に通されるときに、第1および第3電極間の電位差を測定することを含み、第2インピーダンス波形を測定するステップは、電流が第1および第2電極間に通されるときに、第2および第3電極間の電位差を測定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも3つの電極は少なくとも第1、第2、第3および第4電極を含み、電極を頭部に配置するステップは、第1および第2電極をそれぞれ頭部の左側および右側に対称的に配置し、かつ第3および第4電極をそれぞれ、第1および第2電極の場合より離間距離を狭めて、頭部の左側および右側に対称的に配置することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
第1インピーダンス波形は第1および第4電極を使用して測定され、第2インピーダンス波形は第2および第3電極を使用して測定され、方法はまた、
a)第1および第3電極を使用して第1表面インピーダンス波形を測定するステップと、
b)第2および第4電極を使用して第2表面インピーダンス波形を測定するステップと、
c)第1および第2表面インピーダンス測定の結果を使用して、表面インピーダンスの寄与を低減するように第1および第2インピーダンス測定値を補正するステップと、
をも含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1インピーダンス波形を測定するステップは、被検者のこめかみに配置された第1電圧電極と、頭部の第1電圧電極と同じ側の頭部の耳の後ろに配置された第2電圧電極との間の電位差を求めることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
第1インピーダンス波形を測定するステップは、第1電流電極を第1電圧電極と同一の構造に構成するかまたは第1電圧電極に隣接して配置し、かつ第2電流電極を第2電圧電極と同一の構造に構成するかまたは第2電圧電極に隣接して配置して、頭部を介して第1および第2電流電極間に電流を通しながら、第1および第2電圧電極間の電位差を求めることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
脳血管の左右非対称度の指標を求めるためのシステムであって、
a)電流源と、
b)2つの電極間の電位差を測定する電圧計と、
c)少なくとも3つが電流源から頭部に電流を通すように適応され、かつ少なくとも3つが頭部の異なる位置間の電位差を測定するために電圧計によって使用されるように適応された、少なくとも3つの電極1組と、
d)電極が頭部に適切に配置されたときに、第1の非対称に配置された部分組の電極を使用して、頭部を通過する所与の電流に関連付けられる電圧を測定することによって、第1インピーダンス測定を行ない、第2の部分組の電極を使用して、第1インピーダンス測定の鏡像である第2インピーダンス測定を行ない、かつ第1および第2インピーダンス測定の波形の特徴間の差分を使用して左右対称度の指標を求めるコントローラと、
を備えたシステム。
【請求項11】
心周期時間パラメータの関数として頭部の電気インピーダンスデータから得た信号を解析する方法であって、
a)心周期時間にわたる信号の最小値を決定するステップと、
b)心周期時間にわたる信号の実効最大値を決定するステップと、
c)信号が立上り時間基準に従って立ち上がってくる心周期時間の最小値と実効最大値との間の立上り区間を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
信号は、心周期時間パラメータの関数として、頭部の電気インピーダンスデータと頭部のフォトプレチスモグラフィ(PPG)データとの組合せから得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
信号は、電気インピーダンス信号とPPG信号との間の差分もしくは重み付き差分を取ることによって、または電気インピーダンス信号をPPG信号で除算することによって得られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
頭部の電気インピーダンス信号およびPPG信号を解析する方法であって、
a)請求項11の方法に従ってインピーダンス信号を解析することによってインピーダンス信号の尺度を得るステップと、
b)請求項11の方法に従って、ただし電気インピーダンスデータから得た信号の代わりにPPG信号を使用して、PPG信号を解析することによってPPG信号の尺度を得るステップと、
c)PPG信号の尺度を使用してインピーダンス信号の尺度を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
インピーダンス信号の尺度を調整するステップは、インピーダンス信号の尺度とPPG信号の尺度との間の差分または重み付き差分を取るか、またはインピーダンス信号の尺度とPPG信号の尺度との比を取ることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記最大値は大域的最大値である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記最大値は第1局所的実効最大値であり、大域的最大値の前の第1局所的最大値であるか、または大域的最大値の前に局所的最大値が無い場合には大域的最大値の前の正の3次導関数の変曲点であるかのいずれかである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
立上り時間基準は、立上り区間が最小値の時点に始まり、かつ前記最大値の時点で終わるというものである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
立上り時間基準は、信号が最小値より上の全範囲の第1固定百分率である時点に立上り区間が始まり、かつ信号が前記最大値より下の全範囲の第2固定百分率である時点で立上り区間が終わるというものである、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
第1固定百分率は5%から20%の間である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第2固定百分率は10%から30%の間である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
立上り区間を心周期期間に正規化するステップをも含む、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
患者における立上り区間の変化を監視するステップをも含む、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
立上り区間の変化を使用して、脳血流、脳血量、ピーク到達時間、および平均通過時間のうちの1つ以上を監視するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
立上り区間が10%以上変化した場合、医療スタッフに警報を出すステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
信号の実効最大値を決定するステップは、信号の大域的最大値および第1局所的実効最大値の両方を決定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
信号が立ち上がってくる心周期の立上り区間を決定するステップは、第1ピーク立上り時間基準に従って最小値と第1局所的実効最大値との間で信号が立ち上がってくる第1ピーク立上り区間を決定すること、および総立上り時間基準に従って最小値と大域的最大値との間で信号が立ち上がってくる総立上り区間を決定することを含み、かつ方法は、総立上り区間に対する第1ピーク立上り区間の比を求めるステップをも含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
最小値より上の大域的最大値の高さに対する最小値より上の第1局所的最大値の高さの比を求めるステップをも含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
a)立上り区間にわたる信号の積分を求めるステップと、
b)心周期全体にわたる信号の積分を求めるステップと、
c)心周期全体にわたる積分に対する立上り区間にわたる積分の比を求めるステップと、
をも含む、請求項11に記載の方法。
【請求項30】
頭部の電気インピーダンス信号およびPPG信号を解析する方法であって、
a)請求項29の方法に従って電気インピーダンス信号の心周期全体にわたる積分に対する立上り区間にわたる積分の比を得るステップと、
b)請求項29の方法に従って、ただし電気インピーダンスデータから得た信号の代わりにPPG信号を使用して、PPG信号の心周期全体にわたる積分に対する立上り区間にわたる積分の比を得るステップと、
c)PPG信号の比を使用してインピーダンス信号の前記比を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項31】
インピーダンス信号の前記比を調整するステップは、PPG信号の比で割ることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記比を使用して患者における脳血流、脳血量、ピーク到達時間、および平均通過時間の1つ以上の変化を監視するステップをも含む、請求項29〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記比が10%以上変化した場合、医療スタッフに警報を出すステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
心周期時間パラメータの関数として頭部の電気インピーダンス信号を解析する方法であって、
a)心周期の一部または全部を含む区間にわたる信号の積分を求めるステップと、
b)積分を区間の長さで割ることによって区間の信号の平均値を求めるステップと、
を含む方法。
【請求項35】
区間の信号の凸性または凹性の尺度として、区間の信号の前記平均値を区間内の信号の最大値および最小値の平均で割ることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
区間は、第1ピーク立上り時間基準に従って信号が最小値と第1局所的実効最大値との間で立ち上がってくる第1ピーク立上り区間である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
区間は実質的に心周期全体である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
信号の平均値を使用して頭蓋内圧および脳血量の一方または両方を推定するステップをも含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
被検者の脳血管の左右非対称度の指標を求める方法であって、
a)被検者の頭部の左側の領域で少なくとも第1センサを使用して、頭部の左側の表面血流の特徴を測定するステップと、
b)被検者の頭部の右側の領域で少なくとも第2センサを使用して、頭部の右側の表面血流の特徴を測定するステップと、
c)頭部の左側および右側の表面血流の特徴間の差分を使用して、脳血管の左右非対称度の指標を求めるステップと、
を含む方法。
【請求項40】
第1および第2センサはPPGセンサである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第1および第2センサは表面インピーダンスセンサである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
頭部の各側の表面血流の特徴は、頭部のその側の表面血流と被検者の頚部の同じ側の主要動脈の血流との間のパルス波形の位相差を含み、前記特徴を測定するステップは、頭部のその側の領域のセンサを使用して表面血流のパルス波形を測定すること、および頚部のその側の主要動脈に隣接する動脈血流センサを使用して、頚部のその側の主要動脈の血流のパルス波形を測定することを含む、請求項39〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
頚部の左側および右側の動脈血流センサは各々、PPGセンサを備える、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
脳血行動態パラメータの値を頭部で対称的に測定するステップを含み、頭部の左側および右側の表面血流の特徴間の差分を使用するステップは、左側の表面血流を使用して脳血行動態パラメータの値を補正し、右側の表面血流を使用して脳血行動態パラメータの値を補正し、かつ脳血行動態パラメータの2つの補正値間の差分を使用することを含む、請求項39〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
第1および第2センサは実質的に同一であり、頭部の左側および右側の領域は、頭部の左右対称面を中心に互いに実質的に鏡像である、請求項39〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
脳血管の左右非対称度の指標を求めるためのシステムであって、
a)頭部の表面血流を測定するように適応された第1および第2センサと、
b)第1および第2センサを使用してそれぞれ頭部の左側および右側の領域における表面血流の特徴を測定し、かつ頭部の左側および右側の測定された血流の特徴間の差分を使用して、脳血管の左右非対称度の指標を求めるコントローラと、
を備えたシステム。
【請求項47】
非対称度の指標を求めるステップは、請求項11〜38のいずれかの方法に従って、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方を解析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
ある時間間隔にわたって行なわれた頭部の電気インピーダンス測定を解析する方法であって、
a)0.08から0.2Hzの間の周波数のインピーダンス信号における低速波の振幅を測定するステップと、
b)低速波の振幅を時間間隔中のインピーダンスの平均値によって正規化するステップと、
を含む方法。
【請求項49】
非対称度の指標を求めるステップは、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方のピーク・トゥ・ピーク高さを求めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
非対称度の指標を求めるステップは、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方の最大勾配を求めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
非対称度の指標を求めるステップは、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方について、最小値の時間から最大勾配の時間までの区間を求めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
非対称度の指標を求めるステップは、第1および第2インピーダンス波形、または第1および第2インピーダンス波形から導出された波形、または両方について、最小値に対する第1ピークの高さと第2ピークの高さの比を求めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
第1および第2インピーダンス波形と健康な被検者のインピーダンス波形とを比較するステップと、第1および第2波形と健康な被検者の波形との間の差を使用して、頭部のどちら側に非対照性を引き起こす異常が位置しているかを決定するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
脳血管の左右非対称度の指標は、病理学的脳血管状態の重症度の尺度を含む、請求項1又は39に記載の方法。
【請求項55】
非対称度の指標は、脳血行動態パラメータの非対称度の尺度を含む、請求項1又は39に記載の方法。
【請求項56】
非対称度の指標を求めるステップは、
a)請求項8の方法に従って第1インピーダンス波形を解析して第1立上り区間を求めること、
b)請求項8の方法に従って第2インピーダンス波形を解析して第2立上り区間を求めること、ならびに
c)第1および第2立上り区間の変化を使用して脳血流、脳血量、ピーク到達時間、および平均通過時間の1つ以上における非対称性を監視すること、
を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項57】
非対称度の指標を求めるステップは、
a)請求項26の方法に従って第1インピーダンス波形を解析して第1積分比を求めること、
b)請求項26の方法に従って第2インピーダンス波形を解析して第2積分比を求めること、ならびに
c)第1および第2積分比の変化を使用して、脳血流、脳血量、ピーク到達時間、および平均通過時間の1つ以上における左右非対称性を監視すること、
を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
頭部の電気インピーダンスデータを得、かつ解析するためのシステムであって、
a)電流源と、
b)電流源から頭部を介して電極の間に電流を通す少なくとも2つの電極と、
頭部における電極の位置間の電位差を測定しそれによって頭部のインピーダンスデータを提供する少なくとも2つの電極とを含む、少なくとも2つの電極1組と、
c)インピーダンスデータから心周期の位相の関数としてインピーダンス信号を求め、心周期時間にわたる信号の最小値を決定し、心周期時間にわたる信号の実効最大値を決定し、かつ信号が立上り時間基準にしたがって立ち上がってくる、最小値と実効最大値との間の心周期時間の立上り区間を決定するデータ解析装置と、
を含むシステム。
【請求項59】
頭部の電気インピーダンスデータを得、かつ解析するためのシステムであって、
a)電流源と、
b)電流源から頭部を介して電極の間に電流を通す少なくとも2つの電極と、
頭部における電極の位置間の電位差を測定しそれによって頭部のインピーダンスデータを提供する少なくとも2つの電極とを含む、少なくとも2つの電極1組と、
c)インピーダンスデータから心周期の位相の関数としてインピーダンス信号を求め、心周期の一部分または全部を含む区間にわたる信号の積分を求め、かつ積分を区間の長さで割ることによって区間の信号の平均値を求めるデータ解析装置と、
を含むシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5A−5C】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−505010(P2012−505010A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530614(P2011−530614)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054388
【国際公開番号】WO2010/041204
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511088287)オルサン メディカル テクノロジーズ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】