説明

腎疾患を処置するためのプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系インヒビターの組み合わせ

本発明は、プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤を使用することによる腎疾患を処置するための方法、並びに、プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤を含む腎疾患を処置するための薬学的組成物に関する。より詳細には、本発明は、プロスタグランジンE2レセプターEP4アンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系インヒビターの組み合わせを使用することによる腎疾患を処置するための方法、並びに、プロスタグランジンE2レセプターEP4アンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系インヒビターを含む腎疾患を処置するための薬学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎疾患を処置するためのプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系インヒビターの組み合わせに関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、プロスタグランジンE2レセプターEP4アンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系インヒビターの組み合わせを使用することによる腎疾患を処置するための方法、並びに、プロスタグランジンE2レセプターEP4アンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系インヒビターを含む腎疾患を処置するための薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
プロスタグランジンE2は、アラキドン酸カスケード中の代謝物の1つとして知られている。プロスタグランジンE2は、種々の活性(例えば、疼痛誘導活性、炎症活性、子宮収縮活性、消化管蠕動運動促進活性、覚醒活性、胃酸分泌抑制効果、降圧作用、血小板阻害活性、骨吸収活性、脈管形成活性など)を有することが知られている。
【0004】
プロスタグランジンE2レセプターは、4つのサブタイプEP1、EP2、EP3およびEP4にさらに分けられ、これらのレセプターは、種々の組織に広範に分布している。EP1およびEP3レセプターに関する効果は、刺激性のものと考えられており、これらは、ホスファチジルイノシトールターンオーバーの刺激やアデニルシクラーゼ活性の阻害によって媒介され、サイクリックAMPの細胞内レベルを減少させると考えられている。対照的に、EP2およびEP4レセプターに関する効果は、阻害性のものと考えられており、これらは、アデニルシクラーゼの刺激および細胞内サイクリックAMPのレベルの上昇に関与すると考えられている。
【0005】
EP4レセプターは、胸腺、腸、肺、脾臓、副腎、腎臓などで高度に発現されており、これは、平滑筋の弛緩、抗炎症または炎症促進活性、リンパ球分化、抗アレルギー活性、メサンギウム細胞の弛緩または増殖、胃または腸粘膜分泌などに関連していると考えれている。腎臓においては、EP4レセプターは、糸球体で優勢に発現され、そこでは、糸球体の血液動態やレニン放出の調節に寄与している。今日まで、種々のEP4アンタゴニストが、腎疾患の処置するために開発されており、いくつかのEP4アゴニストもまたこれらの疾患に対する治療効果を有することが示されている。しかし、EP4アンタゴニストまたはアゴニストが腎疾患の処置に機能しているメカニズムは、解明されていない。
【0006】
アンジオテンシンI(AI)は、レニン−アンジオテンシンカスケード中で、腎臓で生成されるレニンの酵素作用によって血漿中のアンジオテンシノゲンから生成される。次いで、アンジオテンシンIは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンII(AII)に変換される。アンジオテンシンIIは、強力な血管収縮活性を有し、従って、高血圧を引き起こし得る。従って、アンジオテンシンIIの生成を阻害するアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE−I)、およびアンジオテンシンIIの機能を阻害するアンジオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)(まとめて、レニン−アンジオテンシン系阻害剤と称する)は、高血圧の処置に使用されてきた。
【0007】
レニン−アンジオテンシン系阻害剤はまた、腎炎や腎不全の処置に使用されてきた。腎不全においては、Naが血中にプールされ、血圧を上昇させ、そしてアンジオテンシンIIが糸球体輸出細動脈を収縮し、糸球体内圧を上昇させる。この血圧および糸球体内圧の上昇は、糸球体の過剰ろ過を引き起こして維持し、腎不全の進行を病理学的に促進させる。従って、レニン−アンジオテンシン系阻害剤を使用して、糸球体内の高血圧を抑制し、腎不全の進行を病理学的に妨げ得る。レニン−アンジオテンシン系阻害剤は、特に、糸球体輸出細動脈を弛緩し、そして全身の血圧に非依存的に糸球体内の高血圧を抑制し得る。しかし、腎疾患の処置におけるレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効力は十分ではなく、該阻害剤をより高い量で投与しても増強することができない。
【特許文献1】国際公開WO00/18744号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、腎不全の処置におけるプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストまたはレニン−アンジオテンシン系阻害剤の単独での低い効力を克服するために、このようなこのような処置におけるプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤の組み合わせの使用を確立した。
【0009】
詳細には、本発明は、EP4レセプターアンタゴニストがレニン−アンジオテンシン系阻害剤とは異なる機序で腎不全の処置において機能し得、EP4レセプターアンタゴニストまたはレニン−アンジオテンシン系阻害剤単独よりむしろ、EP4レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤の組み合わせが、腎機能の低下の速度をより効果的に抑制し得るという、本発明者らの知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの局面において、本発明は、腎疾患に罹患している患者にプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤を投与する工程を包含する、腎疾患を処置するための方法、並びに、プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤を含む、腎疾患を処置するための薬学的組成物に関する。
【0011】
別の局面において、本発明は、腎疾患に罹患している患者にプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストを投与する工程を包含する、腎疾患を処置するためにレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効果を増強させるための方法、並びに、プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストを含む、腎疾患を処置するためにレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効果を増強させるための薬学的組成物に関する。
【0012】
別の局面において、本発明は、腎疾患に罹患している患者にレニン−アンジオテンシン系阻害剤を投与する工程を包含する、腎疾患を処置するためにプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの効果を増強させるための方法、並びに、レニン−アンジオテンシン系阻害剤を含む、腎疾患を処置するためにプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの効果を増強させるための薬学的組成物に関する。
【0013】
別の局面において、本発明は、腎疾患を処置するための医薬の製造のためのプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤の使用に関する。
【0014】
別の局面において、本発明は、腎疾患を処置するためにレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効果を増強させるための医薬の製造のためのプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの使用、および、腎疾患を処置するためにプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの効果を増強させるための医薬の製造のためのレニン−アンジオテンシン系阻害剤の使用に関する。
【0015】
別の局面において、本発明は、包装材料および該包装材料内に含まれるプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストを備える製品に関し、該包装材料は、腎疾患を処置するために該プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストを使用してレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効果を増強させ得ることを指示する、ラベルまたは文書を備える。
【0016】
別の局面において、本発明は、包装材料および該包装材料内に含まれるレニン−アンジオテンシン系阻害剤を備える製品に関し、該包装材料は、腎疾患を処置するために該レニン−アンジオテンシン系阻害剤を使用してプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの効果を増強させ得ることを指示する、ラベルまたは文書を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を、以下に詳細に説明する。
本発明に有用なプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストとしては、当該分野で公知の種々のプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストが挙げられる。
【0018】
好ましくは、本発明に有用なプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストは、EP4レセプターアンタゴニストである。
【0019】
好ましくは、本発明に有用なEP4レセプターアンタゴニストは、例えば、WO95/17393、WO95/24393、WO97/03973、WO98/55468およびWO00/18744に記載の公知のオキサゾール化合物、並びに、WO00/03980、WO00/15608、WO00/18405、WO00/21532、WO01/10426、WO01/49661、WO01/72302、WO01/42281、WO01/62708、WO02/16311、WO02/20462、WO02/32900、WO03/086390、WO03/087061、WO02/50031、WO02/50032、WO02/50033、WO02/64564に記載の化合物(以上の文献は、本明細書中に参考として援用される)、またはそれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。
【0020】
好ましくは、本発明に有用なEP4レセプターアンタゴニストは、以下の式
【化1】

によって表されるオキサゾール化合物、あるいはそれらのプロドラック、または薬学的に受容可能な塩であって、
ここで、
1はハロゲンで置換されていても良いアリールであり、
2はハロゲンで置換されていても良いアリールであり
Xは単結合、
【化2】

またはSO2であり、
3およびR4は独立して水素または適当な置換基(式中、Xが
【化3】

である場合、R3およびR4のいずれもが水素でない)
3及びR4は結合して
【化4】

を形成しても良く、
【化5】

は、1個以上の適当な置換基を有していても良いN含有複素環基であり、
5は水素、ヒドロキシ、カルボキシまたは保護されたカルボキシであり、
1は低級アルキレンまたは単結合であり、
【化6】

はシクロ(C3−C9)アルカンまたはシクロ(C5−C9)アルケンである。
【0021】
上記の一般式(I)ならびにその特定かつ好ましい例において使用される定義を、以下に詳細に説明する。
【0022】
好適な「アリール」、並びに「アル(低級)アルキル」、「アリールオキシ」、「アル(低級)アルケニル」、「アリールスルホニル」、「アル(低級)アリールスルホニル」、「アル(低級)アルキルスルホニル」、および「アリールオキシスルホニル」の用語における好適なアリール部分としては、フェニル、低級アルキルフェニル(例えば、トリル、エチルフェニル、プロピルフェニル等)、ナフチル等が挙げられる。
【0023】
好適な「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられる。
【0024】
「低級」の用語は、特に指示がない限り、炭素原子数1〜6個を意味する。
【0025】
好適な「低級アルキル」、並びに「低級アルキルアミノ」、「アル(低級)アルキル」、「カルボキシ(低級)アルキル」、「ヒドロキシ(低級)アルキル」、「アル(低級)アルキルスルホニル」、および「低級アルキルスルホニル」の用語における好適な低級アルキル部分としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、t−ペンチル、ヘキシル等の炭素原子数1〜6個の直鎖または分岐鎖のものが挙げられる。好ましくは炭素原子数1〜4個のものである。
【0026】
好適な「低級アルキルアミノ」としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ等のモノ−またはジ−(低級)アルキルアミノが挙げられる。
【0027】
好適な「低級アルコキシ」、および「ヒドロキシ(低級)アルコキシ」の用語における好適な低級アルコキシ部分としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、t−ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられ、好ましくはメトキシである。
【0028】
好適な「複素環基」としては、少なくとも1個の窒素原子を含む飽和または不飽和の単環式複素環基あるいは多環式複素環基が挙げられる。このうち特に好適な窒素含有複素環としては、以下:
1〜4個の窒素原子を含有する3〜8員の不飽和複素単環基、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジルおよびそのN−オキシド、ピリミジニル、ピラジニル、ジヒドロピリダジニル、テトラヒドロピリダジニル、トリアゾリル(例えば、1H−1,2,4−トリアゾリル、1H−1,2,3−トリアゾリル、2H−1,2,3−トリアゾリル等)、テトラゾリル(例えば、1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリル等)、ジヒドロトリアジニル(例えば、4,5−ジヒドロ−1,2,4−トリアジニル、2,5−ジヒドロ−1,2,4−トリアジニル等)等;
1〜4個の窒素原子を含有する3〜8員の飽和複素単環基、例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アザシクロヘプチル、アザシクロオクチル等、ペルヒドロアゼピニル等;
1〜5個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基、例えば、インドリル、2,3−ジヒドロインドリル、イソインドリル、インドリニル、インダゾリル、イソインドリニル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリジル、テトラゾロピリダジニル(例えば、テトラゾロ[1,5−b]ピリダジニル等)、ジヒドロトリアゾロピリダジニル等;
1〜2個の酸素原子と1〜3個の窒素原子を含有する3〜8員の不飽和複素単環基、例えば、オキサゾリル、イソキサゾリル、ジヒドロイソキサゾリル、オキサジアゾリル(例えば、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、2,5−オキサジアゾリル等)等;
1〜2個の酸素原子と1〜3個の窒素原子を含有する3〜8員の飽和複素単環基、例えば、モルホリノ等;
1〜2個の酸素原子と1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環基、例えば、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル等;
1〜2個の硫黄原子を含有する3〜8員の不飽和複素単環基、例えば、チエニル、チエピニル等;
1〜2個の硫黄原子と1〜3個の窒素原子を含有する3〜8員の不飽和複素単環基、例えば、チアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリニル、チアジアゾリル(例えば、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル)等;
1〜2個の硫黄原子と1〜3個の窒素原子を含有する3〜8員の飽和複素単環基、例えば、チアゾリジニル等;
1〜2個の硫黄原子と1〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素単環基、例えば、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル等;等が挙げられる。
【0029】
好適なアシル、並びに「アシルアミノ」及び「アシルオキシ」の用語における好適なアシル部分としては、脂肪族アシル基および芳香族環または複素環を含むアシル基が挙げられる。
【0030】
このうち上記アシルの好適な例としては、低級アルカノイル(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、オキサリル、スクシニル、ピバロイル等);低級アルケノイル(例えば、プロピオニル、2−メチルプロピオニル、ブテノイル等、好ましくは炭素原子数が3〜4個のもの);アロイル(ベンゾイル、ナフトイル等);低級アルコキシアロイル(メトキシフェニルカルボニル、エトキシフェニルカルボニル、プロポキシフェニルカルボニル、イソプロポキシフェニルカルボニル、メトキシナフチルカルボニル、エトキシナフチルカルボニル、プロポキシナフチルカルボニル、イソプロポキシナフチルカルボニル等);複素環式カルボニル(「複素環式カルボニル」における「複素環式部分」については上記を参照のこと);架橋された環式(低級)アルカンカルボニル(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−カルボニル、ビシクロ[3.2.1]オクト−2−イル−カルボニル、ビシクロ[3.2.2]ノン−2−イル−カルボニル、ビシクロ[3.2.2]ノン−3−イル−カルボニル、ビシクロ[4.3.2]ウンデク−2−イル−カルボニル、ビシクロ[4.3.2]ウンデク−3−イル−カルボニル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−2−イル−カルボニル、ビシクロ[3.2.2]ノン−3−エン−3−イル−カルボニル、トリシクロ[5.3.1.1]ドデク−2−イル−カルボニル、トリシクロ[5.3.1.1]ドデク−3−イル−カルボニル、アダマンチルカルボニル等);シクロ(低級)アルカンカルボニル(シクロプロパンカルボニル、シクロブタンカルボニル、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル等)、モノ−あるいはジ−(低級)アルキルで置換されていても良いカルバモイル(例えば、ジメチルカルバモイル等)等が挙げられる。
【0031】
好適な「シクロ(低級)アルキル」としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロブチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0032】
好適な「シクロ(低級)アルケニル」としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロノネニル等が挙げられる。
【0033】
好適な「保護されたカルボキシ」としては、カルボン酸塩、エステル化されたカルボキシ等が挙げられる。
【0034】
上記エステル化されたカルボキシの好適なエステル部分としては、例えば、低級アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等)のエステルが挙げられ、これらは1個以上の適当な置換基を有していても良い。そのような例としては、低級アルカノイルオキシ(低級)アルキル(例えば、アセトキシメチル、ブチリルオキシメチル、バレリルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル等)、ハロ(低級)アルキル(例えば、2−ヨードエチル、2,2,2−トリクロロエチル等);低級アルケニル(例えば、ビニル、アリル等);低級アルキニル(例えば、エチニル、プロピニル等);1個以上の適当な置換基を有していても良いアル(低級)アルキル(例えば、ベンジル、4−メトキシベンジル、4−ニトロベンジル、フェネチル、トリチル等);1個以上の適当な置換基を有していても良いアリール(例えば、フェニル、トリル、4−クロロフェニル、t−ブチルフェニル、キシリル、メシチル、クメニル等);フタリジル等が挙げられる。
【0035】
好適な「低級アルキレン」としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等の1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のものが挙げられ、好ましくは1〜3個の炭素原子を有するものが挙げられる。最も好ましいのはメチレンである。
【0036】
好適な「シクロ(C3−C9)アルカン」としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等が挙げられ、好ましくは5〜7個の炭素原子を有するものである。
【0037】
好適な「シクロ(C5−C9)アルケン」としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン等が挙げられ、好ましくは5〜7個の炭素原子を有するものである。
【0038】
本発明に有用なEP4レセプターアンタゴニストとしての上記オキサゾール化合物(I)の好ましい態様は以下の通りである:
式中、
1はハロゲンで置換されていても良いアリール、
2はハロゲンで置換されていても良いアリール、
Xは単結合、
【化7】

またはSO2
3およびR4は独立して、
(1)水素;
(2)ヒドロキシ;
(3)下記群より選択される1個以上の置換基で置換されていても良い低級アルキル:
(a)ヒドロキシ、
(b)シアノ、
(c)低級アルコキシ、
(d)ヒドロキシ(低級)アルコキシ、
(e)シクロ(低級)アルキル、
(f)シクロ(低級)アルケニル、
(g)アミノ、
(h)低級アルキルアミノ、
(i)カルバモイル、
(j)カルボキシ、
(k)保護されたカルボキシ、
(l)アル(低級)アルキルまたはオキソで置換されていても良い複素環基、及び
(m)ヒドロキシ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボキシ(低級)アルキルまたはカルボキシ若しくは保護されたカルボキシで置換されていても良い低級アルコキシで任意に置換されてもよい、アリール、
(4)アリールで置換されていても良い低級アルコキシ;
(5)下記群より選択される1個以上の置換基で置換されていても良いアリール:
(a)アリールオキシ、
(b)アシルアミノ、及び
(c)カルバモイル;
(6)ヒドロキシで置換されていても良いシクロ(低級)アルキル;
(7)アリールスルホニル;
(8)アル(低級)アルキルスルホニル;
(9)低級アルキルスルホニル;
(10)アリールオキシスルホニル;
(11)下記群より選択される1個以上の置換基で置換されていても良い複素環基:
(a)アル(低級)アルキル、
(b)アリール、
(c)保護されたカルボキシ、
(d)低級アルキル、及び
(e)オキソ;
(12)アリールで置換されていても良いアシル;または
(13)アシル、アル(低級)アルキルまたはアリールスルホニルで置換されていても良いカルバモイル、
(式中、Xが
【化8】

である場合、R3およびR4のいずれもが水素でない)
3およびR4は結合して
【化9】

を形成しても良く、
【化10】

は、下記群より選択される1個以上の置換基で置換されていても良いN含有複素環基:
(1)低級アルキル
(2)アリール、
(3)保護されたカルボキシ、
(4)ヒドロキシ(低級)アルキル、
(5)アル(低級)アルキル、
(6)ヒドロキシ、
(7)オキソ、及び
(8)低級アルキルアミノ、
5
(1)水素、
(2)ヒドロキシ、
(3)カルボキシ、または
(4)保護されたカルボキシ、
1は低級アルキレンまたは単結合、
【化11】

はシクロ(C3−C9)アルカンまたはシクロ(C5−C9)アルケン
の化合物、あるいはそのプロドラッグ、または薬学的に受容可能なその塩。
【0039】
本発明に有用なEP4レセプターアンタゴニストとしての上記オキサゾール化合物(I)の更に好ましい態様は以下の通りである:
式中、
1はアリール、
2はアリール、
Xは単結合、
【化12】

またはSO2
3およびR4は独立して、
(1)水素;
(2)ヒドロキシ;
(3)下記群より選択される1個以上の置換基で置換されていても良い低級アルキル:
(a)ヒドロキシ、
(b)シアノ、
(c)低級アルコキシ、
(d)ヒドロキシ(低級)アルコキシ、
(e)シクロ(低級)アルキル、
(f)シクロ(低級)アルケニル、
(g)アミノ、
(h)低級アルキルアミノ、
(i)カルバモイル、
(j)カルボキシ、
(k)保護されたカルボキシ、
(l)アル(低級)アルキルまたはオキソで置換されていても良い複素環基、及び
(m)ヒドロキシ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、カルボキシ(低級)アルキルまたはカルボキシ若しくは保護されたカルボキシで置換されていても良い低級アルコキシで任意に置換されていても良い、アリール;
(4)アリールで置換されていても良い低級アルコキシ;
(5)下記群より選択される1個以上の置換基で置換されていても良いアリール:
(a)アリールオキシ、
(b)アシルアミノ、及び
(c)カルバモイル;
(6)ヒドロキシで置換されていても良いシクロ(低級)アルキル;
(7)アリールスルホニル;
(8)アル(低級)アルキルスルホニル;
(9)低級アルキルスルホニル;
(10)アリールオキシスルホニル;
(11)下記群より選択される1個以上の置換基で置換されていても良い複素環基:
(a)アル(低級)アルキル、
(b)アリール、
(c)保護されたカルボキシ、
(d)低級アルキル、及び
(e)オキソ;
(12)アリールで置換されていても良いアシル;または
(13)アシル、アル(低級)アルキルまたはアリールスルホニルで置換されていても良いカルバモイル、
(式中、Xが
【化13】

である場合、R3およびR4のいずれもが水素でない)
3およびR4は結合して
【化14】

を形成しても良く、
【化15】

は、下記群より選択される1個以上の置換基で置換されていても良いN含有複素環基、
(1)低級アルキル、
(2)アリール、
(3)保護されたカルボキシ、
(4)ヒドロキシ(低級)アルキル、
(5)アル(低級)アルキル、
(6)ヒドロキシ、
(7)オキソ、及び
(8)低級アルキルアミノ、
5は水素、
1は低級アルキレン、
【化16】


(1)シクロヘキサン、
(2)シクロヘキセン、
(3)シクロペンタン、または
(4)シクロペンテン、
の化合物、あるいはそのプロドラッグ、またはその薬学的に受容可能な塩。
【0040】
上記オキサゾール化合物(I)の更に一層好ましい態様は以下の通りである:
式中、
1はフェニル、
2はフェニル、
Xは
【化17】

またはSO2
3およびR4は独立して、
(1)水素;
(2)下記群より選択される1個以上の置換基で置換されていても良い低級アルキル:
(a)ヒドロキシ、
(b)複素環基、および
(c)フェニル;
(3)フェニルで置換されていても良い低級アルコキシ;または
(4)フェニルオキシで置換されていても良いフェニル;
(式中、Xが
【化18】

である場合、R3およびR4のいずれもが水素でない)、
3およびR4は結合して
【化19】

を形成しても良く、
【化20】

は、N含有複素環基;
5は水素、
1はメチレン、
【化21】


(1)シクロヘキサン、
(2)シクロヘキセン、
(3)シクロペンタン、または
(4)シクロペンテン、
の化合物、あるいはそのプロドラッグ、またはその薬学的に受容可能な塩。
【0041】
本発明に有用な特に好ましいEP4レセプターアンタゴニストは、N−[(2−ヒドロキシ−2−フェニル)エチル]−3−{[(1S,2R)−2−(4,5−ジフェニルオキサゾール−2−イル)−1−シクロペンチル]メチル}ベンズアミド、N−(2,2−ジフェニルエチル)−3−{[(1S,2R)−2−(4,5−ジフェニル−オキサゾール−2−イル)−1−シクロペンチル]メチル}ベンズアミド、N−ベンジルオキシ−3−{[(1S)−2−(4,5−ジフェニルオキサゾール−2−イル)−2−シクロヘキセン−1−イル]メチル}ベンズアミドまたはN−ベンジルスルホニル−3−{[(1S)−2−(4,5−ジフェニルオキサゾール−2−イル)−2−シクロヘキセン−1−イル]メチル}ベンズアミドであり、本発明に有用な最も好ましいEP4レセプターアンタゴニストは、以下の式に示されるような、N−ベンジルスルホニル−3−{[(1S)−2−(4,5−ジフェニルオキサゾール−2−イル)−2−シクロヘキセン−1−イル]メチル}ベンズアミド(FR233074)またはその薬学的に受容可能な塩である:
【化22】

【0042】
本発明に有用なレニン−アンジオテンシン系阻害剤としては、当該分野で公知の種々のアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE−I)およびアンジオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)が挙げられる。
【0043】
本発明に有用なアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE−I)としては、例えば、カプトプリル、リシノプリル、テモカプリル、エナラプリル、イミダプリル、キナプリル、シラザプリル、デラプリル、トランドラプリル、ラミプリル、フォシノプリル、ペリンドプリル、ベナゼプリルおよびアラセプリル、またはそれらの薬学的に受容可能な塩(例えば、米国特許第4,046,889号、米国特許第4,555,502号、米国特許第4,699,905号、米国特許第4,374,829号、米国特許第4,508,727号、米国特許第4,761,479号、米国特許第4,512,924号、米国特許第4,385,051号、米国特許第5,256,687号、米国特許第4,587,258号、米国特許第4,337,201号、米国特許第4,508,729号、米国特許第4,410,520号および米国特許第4,248,883号(これらは、本明細書中に参考として援用される)を参照)が挙げられる。本発明に特に好ましい特に好ましいACE−Iは、カプトプリルである。
【0044】
本発明に有用なアンジオテンシンIIレセプターブロッカー(ARB)としては、例えば、ロサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン、エプロサルタン、イルベサルタンおよびバルサルタン、またはそれらの薬学的に受容可能な塩(例えば、米国特許第5,138,069号、米国特許第5,354,766号、米国特許第5,591,762号、米国特許第5,616,599号、米国特許第5,185,351号、WO9114679、および欧州特許公開433983号(これらは、本明細書中に参考として援用される)を参照)が挙げられる。本発明に特に好ましいARBは、ロサルタンである。
【0045】
本発明の組み合わせによって処置される腎疾患としては、腎不全(慢性および急性)、腎炎、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎症、腎硬化症、腎繊維症、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群などが挙げられるが、これらに限定されない。より詳細には、本発明の組み合わせによって処置される腎疾患は、慢性腎不全および腎炎である。
【0046】
用語「効果が増強する」とは、EP4レセプターアンタゴニストとレニン−アンジオテンシン系阻害剤との組み合わせが、EP4レセプターアンタゴニストまたはレニン−アンジオテンシン系阻害剤のいずれか単独よりも、患者の腎疾患を効果的に改善し得ることを意味する。
【0047】
本発明で使用されるプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤は、生理学的に受容可能なキャリアとの組み合わせで、経口的または非経口的に、同時に、別々にまたは連続的に投与され得る。
【0048】
本発明に使用されるプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤は、医薬製剤の形態、例えば、固形状、半固形状または液状の形態(例えば、錠剤、ペレット、トローチ、カプセル、坐剤、クリーム、軟膏、エアロゾル、粉末、溶液、エマルジョン、懸濁液等)で用いられ、これらは、目的の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を活性成分として、直腸、肺(点鼻または舌下式吸入)、鼻腔、眼内、外用(局所)、経口または非経口(皮下、静脈内および筋肉内を含む)投与または吸入投与に適した形態で含む。
【0049】
本発明に使用されるプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤の調製物は、以下のような医薬用に慣用的に使用される、種々の有機キャリアまたは無機キャリアを含み得る:賦形剤(例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、ラクトース、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等)、結合剤(セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのカルシウム塩、ヒドロキシプロピルデンプン、ナトリウムグリコールデンプン、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等)、芳香剤(例えば、クエン酸、メントール、グリシン、オレンジ粉末等)、防腐剤(例えば、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等)、安定剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等)、懸濁剤(例えば、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等)、分散剤、水性希釈剤(例えば、水)、ベースワックス(例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白色ワセリン等)。
【0050】
上記有効成分は、通常、1回当たりの投与量で0.01mg/kgから100mg/kgの範囲内で1日当たり1〜4回投与され得る。成分の治療有効量は、患者の年齢や体重、患者の症状、または投与方法を考慮して当業者に適宜決定され得る。
【0051】
以下の実施例は、プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤の組み合わせを使用する腎疾患の処置を例示するが、これらは、添付の特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものとはみなされるものではない。
【実施例】
【0052】
(ラット片腎摘出抗Thy−1腎炎モデルに対するカプトプリル(ACE−I)とFR233074(EP4アンタゴニスト)の併用効果)
(方法)(図1)
雄性Wistar系ラット(6週齢)を本実施例に使用した。これらのWister系ラットをペントバルビタールで麻酔し、片腎を摘出した。2週間後、これらのラットに抗Thy−1抗体(新潟大学大学院医歯学総合研究科付属腎研究施設分子病態学分野より寄贈)を尾静脈より投与し、抗Thy−1抗体腎炎を誘導させた。Normal群は、片腎摘出を行わず、開腹のみの処置とし、抗Thy−1抗体の代わりに生理食塩水を注射した。
抗体投与の1週間後に、ラットの体重測定、採血(鎖骨下静脈より0.55ml)および24時間採尿を行い、体重、腎機能パラメーター(BUN(血中尿窒素)および血清クレアチニン)および尿タンパク排出量により、これらのラットを群分けした。
群分け当日より薬剤の投与を開始し、23週間の投与を行った。抗体投与後2週、4週、6週、8週、12週、16週、20週および24週(抗体投与後24週目で薬剤投与終了)に、ラットの体重測定、採血および24時間採尿を行い、体重、腎機能パラメーターおよび尿タンパク排出量を測定した。また、各ラットの全身血圧の測定を、抗体投与後10週目に行った。
【0053】
(結果)
1.体重に対する作用
体重増加に対しては、薬剤投与の影響は認められなかった(図2)。
【0054】
2.尿タンパク排泄に対する作用
抗Thy−1抗体投与(病態惹起)後1週において、コントロール群では尿中タンパク排泄が、Normal群の9倍に増加しており、この増加は24週目まで持続した(図3)。
一方、カプトプリル(30mg/kg/日)投与群およびFR233074(20mg/kg/日)投与群では、尿タンパク排泄の増加は抑制された。さらに、カプトプリルおよびFR233074の併用投与群では、尿タンパク排泄の増加はより強力に抑制され、これは、併用による相加効果を示す(図3)。
【0055】
3.腎機能パラメーターに対する作用
腎機能パラメーター(BUNおよび血清クレアチニン)においては、各薬剤投与群で改善傾向が認められた(図4および5)。
【0056】
4.エンドポイントに至ったラットの割合
コントロール群において、エンドポイント(血清クレアチニンの倍加または死亡)に至ったラットは、病態惹起後8週目から現れて、その後、そのようなラットの数は増加していった(図6)。
これに対して、薬剤投与群の各々においては、エンドポイントに至ったラットの増加は抑制されたが、カプトプリルまたはFR233074の単独投与群と併用群との間に有意な差は認められなかった(図6)。
【0057】
5.腎機能低下速度に対する作用
コントロール群と比較してカプトプリルまたはFR233074の単独投与群において、腎機能低下の速度(1/Cr傾)が減少した。さらに、腎機能低下の速度は、各薬剤の単独投与群よりも、併用投与群において更に効果的に減少した(図7)。
【0058】
6.腎機能廃絶時期の予測
各群の1/Cr傾の平均値に基づき、病態惹起後1週目での各群の1/Crの平均値をプロットし、直線を引いた。1/Cr=0.1の時点を計算し、腎機能廃絶の到達時間として規定した(臨床において1/Cr=0.1の時点が透析療法導入の目安とされている)。
病態惹起から腎機能廃絶までの時間は、コントロール群と比較してカプトプリルまたはFR233074の単独投与群において延長された。さらに、この時間は、各薬剤の単独投与群と比較して併用投与群において延長された(図8)。
【0059】
7.全身血圧に対する作用
コントロール群で最大血圧の上昇が認められた。カプトプリル単独投与群または併用投与群では、コントロール群と比較して、最大血圧の上昇が抑制された。しかし、FR233074単独投与群では、最大血圧の上昇に対する有意な作用は認められなかった(図9)。
【0060】
8.腎重量に対する作用
コントロール群では腎重量の増加が認められた。一方、併用投与群では腎重量増加が抑制された(図10)。
【0061】
9.赤血球数に対する作用
コントロール群では腎性貧血に起因する赤血球数の減少が認められた。一方、併用投与群では赤血球の減少は抑制された(図11)。
【0062】
10.組織学的検索
コントロール群では、重度の糸球体および尿細管間質の障害が観察された。しかし、損傷の程度は、カプトプリルまたはFR233074の単独投与群では軽減され、そしてさらに、併用投与群において更なる軽減が認められた(図12〜13)。
【0063】
結論
以上の結果より、レニン−アンジオテンシン系阻害剤またはEP4レセプターアンタゴニストは、尿タンパク排泄(腎機能パラメーター)および腎機能低下速度(腎臓障害の重篤化の指標)が抑制され、これら両方の薬剤の組み合わせは、これらの抑制に対する相加効果を有した。さらに、全身血圧に対する薬剤の作用の違いから、各薬剤は異なるメカニズムで腎臓障害の進行を抑制することが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、雄性Wistarラットを使用する実施例の実験におけるタイムスケジュールを示す。
【図2】図2は、体重増加に対する本発明の組み合わせの効果の影響を示す。
【図3】図3は、尿タンパク排泄に対する本発明の組み合わせの効果を示す。
【図4】図4は、血中尿窒素(BUN)に対する本発明の組み合わせの効果を示す。
【図5】図5は、血清クレアチニン濃度に対する本発明の組み合わせの効果を示す。
【図6】図6は、エンドポイントに達したラットのパーセンテージに対する本発明の組み合わせの効果を示す。
【図7】図7は、腎機能の低下速度に対する本発明の組み合わせの効果を示す。
【図8】図8は、腎機能廃絶に達する時間の予測を示す。
【図9】図9は、最大血圧に対する本発明の組み合わせの効果を示す。
【図10】図10は、腎重量に対する本発明の組み合わせの効果を示す。
【図11】図11は、赤血球数に対する本発明の組み合わせの効果を示す。
【図12】図12は、組織学的所見を示す。
【図13】図13は、糸球体損傷に対する本発明の組み合わせの効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎疾患を処置するため方法であって、該方法は、腎疾患に罹患している患者にプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤が、同時に、別々にまたは連続的に患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腎疾患を処置するためにレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効果を増強させるための方法であって、該方法は、腎疾患に罹患している患者にプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストを投与する工程を包含する、方法。
【請求項4】
腎疾患を処置するためにプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの効果を増強させるための方法であって、該方法は、腎疾患に罹患している患者にレニン−アンジオテンシン系阻害剤を投与する工程を包含する、方法。
【請求項5】
前記プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストが、プロスタグランジンE2レセプターEP4アンタゴニストである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤を含む、腎疾患を処置するための薬学的組成物。
【請求項7】
プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストを含む、腎疾患を処置するためにレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効果を増強させるための薬学的組成物。
【請求項8】
レニン−アンジオテンシン系阻害剤を含む、腎疾患を処置するためにプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの効果を増強させるための薬学的組成物。
【請求項9】
前記プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストが、プロスタグランジンE2レセプターEP4アンタゴニストである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
腎疾患を処置するための医薬の製造におけるプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストおよびレニン−アンジオテンシン系阻害剤の使用。
【請求項11】
腎疾患を処置するためにレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効果を増強させるための医薬の製造におけるプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの使用。
【請求項12】
腎疾患を処置するためにプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの効果を増強させるための医薬の製造におけるレニン−アンジオテンシン系阻害剤の使用。
【請求項13】
前記プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストが、プロスタグランジンE2レセプターEP4アンタゴニストである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
包装材料および該包装材料内に含まれるプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストを備える製品であって、該包装材料は、腎疾患を処置するために該プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストを使用してレニン−アンジオテンシン系阻害剤の効果を増強させ得ることを指示する、ラベルまたは文書を備える、製品。
【請求項15】
包装材料および該包装材料内に含まれるレニン−アンジオテンシン系阻害剤を備える製品であって、該包装材料は、腎疾患を処置するために該レニン−アンジオテンシン系阻害剤を使用してプロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストの効果を増強させ得ることを指示する、ラベルまたは文書を備える、製品。
【請求項16】
前記プロスタグランジンE2レセプターアンタゴニストが、プロスタグランジンE2レセプターEP4アンタゴニストである、請求項14〜15のいずれか1項に記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−536208(P2007−536208A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536981(P2006−536981)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【国際出願番号】PCT/JP2005/006536
【国際公開番号】WO2005/105147
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】