説明

腐食センサ、シース管、シース管継ぎ手部材および腐食センサユニット

【課題】 塩分等のコンクリートへの進入を引き起こすことなく、美観を損なわず簡易かつ低コストで、鉄筋の腐食を測定することができる腐食センサ、シース管、シース管継ぎ手部材および腐食センサユニットを提供する。
【解決手段】 コンクリート構造物中に埋設される鋼材の腐食進行状況を診断するのに用いる腐食センサであって、測定対象物または測定対象物の近傍に敷設される検出用部材を有し、金属製の検出用部材の腐食を、検出用部材の電気的特性を測定することにより検出する腐食検出部と、腐食の検出結果を読取装置に対して無線送信するための無線通信部と、を備える。これにより、電気的特性の変化から検出用部材の腐食を検出することができ、鉄筋、PC鋼線、鋼製シース管等の鋼材の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物中に埋設される鉄筋、PC鋼線、鋼製シース管等の鋼材の腐食進行状況を診断する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄筋の腐食診断法としてASTM(AmericanSociety forTesting andMaterials)のC876−87でコンクリート中の無塗装鉄筋の自然電位の測定法により鉄筋の腐食度合いを測定する手法が広く用いられている(たとえば、特許文献1参照)。健全なコンクリート構造物中では強アルカリ性のため鉄筋は不働態化しており、その自然電位は凡そ−100mV〜−200mV(CSE)を示す。上記の手法は、塩化物の侵入や中性化(炭酸化)によって鉄筋の活性態となって腐食が進行し、腐食が進行するとその電位が卑方向(負方向に大きくなる)へ変化することに着目し、この自然電位の測定値をもとに腐食の確率を診断するものである。
【0003】
特許文献1では、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率または腐食度を、自然電位を測定して診断する手法が示されている。この手法は、実測した自然電位に対し、コンクリート構造物のかぶり部分のコンクリートの含水率による補正、コンクリートの塩分の有無による補正、コンクリートの炭酸化深さによる補正を行い、コンクリート構造物中の鉄筋の腐食確率または腐食度を高精度で診断する。
【0004】
また、コンクリート中に伝送ケーブルを通して鉄筋の電位を測定し、かぶり部分のコンクリートの影響を除く手法も知られている(たとえば、特許文献2参照)。その中では、検査用線材を予め埋設し線材の抵抗、電流を測定することによりPC鋼材の腐食状況を検出する手法も知られている(たとえば、特許文献3および特許文献4参照)。
【特許文献1】特許第3096240号公報
【特許文献2】特許第2511234号公報
【特許文献3】特開平8−94557号公報
【特許文献4】特許第3205291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような自然電位の測定法では、不確定の要素が大きいうえ、実際の診断結果にもバラツキがあって信頼性に欠けるという問題がある。鉄筋の自然電位は、コンクリート表面においてかぶり部分を介して測定されるので、必ずしも鉄筋腐食個所の真の電位を示すものとはならない。また、種々の要因が測定値に影響を及ぼし、電位が変動する原因ともなる。
【0006】
測定値に影響を及ぼすと考えられる主な要因のうち、大きな影響を及ぼすものは電気化学的な要因と抵抗的要因とされている。電気化学的な要因はコンクリートの化学的および物理的性状の不均一性に起因し、抵抗的要因はコンクリート自体や表面の炭酸化層などの抵抗に起因する。そして、それらの原因は含水率や塩分量に左右される。
【0007】
このように、電位はかぶり部分の性状により様々に変動するため、自然電位の測定により判定した状況と実際の腐食状況とが一致せず、上記の測定法は信頼性に欠ける。また、このような方法は、コンクリートの含水率、コンクリートの塩分量、コンクリートの炭酸化深さ測定に対して手間と時間がかかるため、効率的な診断方法とはいえない。
【0008】
一方、腐食検知においては、伝送ケーブルを通じて侵入する可能性のある塩分、酸素、水、炭酸ガス、硫酸イオン、酸性物質など腐食因子の影響の排除と美観向上を図る目的から無線技術を用いた検知手法が考えられるが、無線技術を用いた検知手法においては、腐食センサを稼動させるための電力を如何に確保するかが重要な課題となる。
【0009】
腐食センサの電源として、電池を搭載したり、あるいは、外部から腐食センサに供給される電波を整流して電源として用いる手法などがあるが、電池寿命の向上や、読取装置との腐食センサとの距離が離れることによる電波の減衰の影響を少なくするために、腐食センサの電力消費量はなるべく少なくする必要がある。従来の自然電位の測定や腐食因子の測定においては、電力消費量が多いという問題があり、無線技術を利用するための適した腐食状態の検出方法や予測する手法が望まれていた。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、無線技術の適用を可能とした低消費電力による鋼材などの腐食状態を検出することができる腐食センサ、シース管、シース管継ぎ手部材および腐食センサユニットを提供することを目的とする。なお、副次的に、伝送ケーブルを通じて塩分等のコンクリートへの進入を引き起こすことなく、美観を損なわず簡易かつ低コストで、鉄筋の腐食を測定することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る腐食センサは、コンクリート構造物中に埋設される鋼材の腐食進行状況を診断するのに用いる腐食センサであって、、測定対象物または前記測定対象物の近傍に敷設される金属製の検出用部材を有し、前記検出用部材の腐食を、前記検出用部材の電気的特性を少ない電力消費量で測定することにより検出する腐食検出部と、前記腐食の検出結果を読取装置に対して無線送信するための無線通信部と、を備えることを特徴としている。
【0012】
このように、本発明の腐食センサは、測定対象物または測定対象物の近傍に金属製の検出用部材を敷設し、少ない電力消費量で検出用部材の腐食を電気的特性の測定により検出する。一般的に、金属製材料の抵抗は極めて小さく、低電圧でごく僅かな電流量を金属製材料に流すことにより、金属製材料の腐食状態を検出することが可能である。このことから、電気的特性の変化から検出用部材の腐食を検出することができ、鉄筋、PC鋼線、鋼製シース管等の鋼材の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。その結果、把握した情報に基づいて、構造物の補修必要性有無の判断、工事指針策定などを的確かつ短時間に実施でき、コンクリート構造物を健全な状態に保つ維持管理が可能となる。
【0013】
なお、検出用部材は測定対象物または前記測定対象物の近傍に敷設されると記載したが、ここで言う近傍とは、鉄筋、PC鋼線、鋼製シース管それぞれの周囲およびコンクリートのかぶり部分(かぶりコンクリート部分)に該当する。
【0014】
また、検出用部材の腐食状態を把握するために検出する電気的特性としては、電気抵抗、電位差などが挙げられる。
【0015】
また、本発明の腐食センサは腐食の検出結果を読取装置に対して無線送信する。これにより、測定準備の労力を軽減し、準備期間を短縮することができる。さらに、測定時には、読取装置をかざすだけでよいため、配線の取り回しの煩雑さを解消することができる。
【0016】
また、測定対象物付近からコンクリートの表面まで伝送ケーブル等の配線を設ける必要がなくなるため、美観を損なうことがなく、配線の経路を通じて鉄筋腐食劣化因子が内部へ侵入することも無くなり、耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の腐食センサを測定対象物付近に設けることにより、測定される電気的特性からかぶりコンクリートの与える種々の要因を排除することができる。さらに、専用の高価な測定器を不要にし、低コストで鋼材の腐食状況の検出精度を高めることができる。
【0018】
(2)また、本発明の腐食センサは、前記検出用部材が、材質の種類もしくは径が異なる2つ以上の金属線からなり、前記金属線は、それぞれ抵抗素子に直列に接続されていることを特徴としている。
【0019】
このように、本発明の腐食センサは、腐食に対する耐性に応じて材質の種類の異なる金属線を用いたり、径に応じて複数種類の金属線を用いたりする。これにより、腐食の程度を段階的に把握することが可能となり、鋼材の腐食の程度を予想することが可能となる。
【0020】
(3)また、本発明の腐食センサは、前記腐食検出部が、前記検出用部材の近傍に設置され、前記検出用部材より電位の貴な金属を材料とするカソード用部材を有し、前記検出用部材と前記カソード用部材とは電気的に接続され、前記カソード用部材は前記検出用部材に対しカソードの役割を果たすものであることを特徴としている。
【0021】
このように、本発明の腐食センサは、検出用部材の近傍に、電位の貴な金属を材料とするカソード用部材が設置されているため、検出用部材の腐食が進行すると、検出用部材とカソード材との間に腐食電流が流れる。これにより、腐食電流を検出することで検出用部材の腐食を検出することができ、鋼材の腐食の程度を予想することが可能となる。たとえば、鋼材表面積から腐食電流密度を計算することにより鋼材の腐食状況を把握または今後の進行状況を予測することが可能である。
【0022】
また、鋼材などを劣化させる塩素イオンなどの劣化因子の浸透状況をより早く把握することが可能となる
(4)また、本発明のシース管は、プレストレストコンクリート構造物のグラウト施工に用いられる、上記のいずれかに記載の腐食センサが設置されたシース管であって、前記検出用部材は、シース管本体の外周面および/または内周面に沿って設けられていることを特徴としている。
【0023】
このように、本発明のシース管は、検出用部材をシース管本体の外周面または内周面に沿って設け、その電気的特性を測定することで、検出用部材の腐食を検出する。これにより、シース管またはシース管内のPC鋼線の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。
【0024】
(5)また、本発明のシース管継ぎ手部材は、プレストレストコンクリート構造物のグラウト施工に用いられるシース管どうしを接続するのに用いられる、上記のいずれかに記載の腐食センサが設置されたシース管継ぎ手部材であって、前記検出用部材は、シース管継ぎ手部材本体の外周面および/または内周面に沿って設けられていることを特徴としている。
【0025】
このように、本発明のシース管継ぎ手部材は、検出用部材を継ぎ手部材本体の外周面または内周面に沿って設け、その電気的特性を測定することで、検出用部材の腐食を検出する。これにより、シース管またはシース管内のPC鋼線の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。特に、継ぎ手部材のジョイント部分からシース管内に腐食因子が進入する可能性が高いため、継ぎ手部材にこのような機能を持たせることは有効である。
【0026】
(6)また、本発明の腐食センサユニットは、上記のいずれかに記載の腐食センサと、前記腐食センサの設置対象への着脱を可能とする取付部とを有する腐食センサユニットであって、前記検出用部材は、前記取付部の部材表面に設けられていることを特徴としている。
【0027】
このように、本発明の腐食センサユニットは、上記の腐食センサを設置対象への着脱可能にする取付部を有するため、腐食センサの設置や設置位置の修正等が容易となる。これにより、コンクリート打設前の測定準備の労力を軽減し、準備期間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る腐食センサによれば、測定対象物または測定対象物の近傍に金属製の検出用部材を敷設し、検出用部材の腐食を電気的特性の測定により検出する。これにより、電気的特性の変化から検出用部材の腐食を検出することができ、鉄筋、PC鋼線、鋼製シース管等の鋼材の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。その結果、把握した情報に基づいて、構造物の補修必要性有無の判断、工事指針策定などを的確かつ短時間に実施でき、コンクリート構造物を健全な状態に保つ維持管理が可能となる。
【0029】
また、本発明の腐食センサは腐食の検出結果を読取装置に対して無線送信する。これにより、測定準備の労力を軽減し、準備期間を短縮することができる。さらに、測定時には、読取装置をかざすだけでよいため、配線の取り回しの煩雑さ解消することができる。
【0030】
また、測定対象物付近からコンクリートの表面まで伝送ケーブル等の配線を設ける必要がなくなるため、美観を損なうことがなく、配線の経路を通じて鉄筋腐食劣化因子が内部へ侵入することも無くなり、耐久性を向上させることができる。
【0031】
また、本発明の腐食センサを測定対象物付近に設けることにより、測定される電気的特性からかぶりコンクリートの与える種々の要因を排除することができる。さらに、専用の高価な測定器を不要にし、低コストで鋼材の腐食状況の検出精度を高めることができる。
【0032】
また、本発明に係るシース管によれば、検出用部材をシース管本体の外周面または内周面に沿って設け、その電気的特性を測定することで、検出用部材の腐食を検出する。これにより、シース管またはシース管内のPC鋼線の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。
【0033】
また、本発明に係るシース管継ぎ手部材によれば、検出用部材を継ぎ手部材本体の外周面または内周面に沿って設け、その電気的特性を測定することで、検出用部材の腐食を検出する。これにより、シース管またはシース管内のPC鋼線の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。特に、継ぎ手部材のジョイント部分からシース管内に腐食因子が進入する可能性が高いため、継ぎ手部材にこのような機能を持たせることは有効である。
【0034】
また、本発明に係る腐食センサユニットによれば、上記の腐食センサを設置対象への着脱可能にする取付部を有するため、腐食センサの設置や設置位置の修正等が容易となる。これにより、コンクリート打設前の測定準備の労力を軽減し、準備期間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0036】
(実施形態1)
図1は、腐食センサ1の電気的構成を示すブロック図である。腐食センサ1は、読み取り装置に対して電磁波を介して通信することで、検知された腐食に関する情報をコンクリート外部に伝達するものである。腐食センサ1は、腐食検出部2および無線通信部3から構成されている。腐食検出部2は、センサ回路10および特性検出部5から構成され、特性検出部5は、センサインターフェース回路20およびRFIDIC30の検出回路30aから構成されている。センサ回路10は、金属線A〜A(検出用部材)および抵抗素子R〜Rから構成されている。
【0037】
腐食センサ1は、測定対象物または測定対象物の近傍に金属製の検出用部材を敷設し、少ない電力消費量で検出用部材の腐食を電気的特性の測定により検出する。一般的に、金属製材料の抵抗は極めて小さく、低電圧でごく僅かな電流量を金属製材料に流すことにより、金属製材料の腐食状態を検出することが可能である。
【0038】
なお、抵抗素子は、金属線A〜A(検出用部材)の腐食有無、腐食状態変化または腐食箇所の特定など検出精度を高める目的に使用される。
【0039】
センサインターフェース回路20は、センサ回路10とRFIDIC30とを接続する回路である。RFIDIC30は、検出回路30aおよび無線通信回路30bを有している。検出回路30aは、センサ回路10に対して電圧を印加し、端子10a、10b間の電気的特性を検出する。電気的特性としては、端子10a、10b間の電圧(電位差)、電気抵抗、インピーダンス、静電容量などがあり、これらを検出することが可能である。本実施形態では、端子10a、10b間の電圧を検出することとする。無線通信回路30bは、検出回路30aの検出結果を、アンテナ40を介して、外部の読取装置に対して無線送信する。ここで、センサインターフェース回路20およびRFIDIC30の検出回路30aは、特性検出部5を構成し、RFIDIC30の無線通信回路30bおよびアンテナ40は、無線通信部3を構成する。
【0040】
金属線A〜Aは、測定対象物または測定対象物の近傍に敷設される。測定対象物とは、たとえば鉄筋、PC鋼線、鋼製シース管等である。たとえば、樹脂製の膜等の絶縁物を挟んで絶縁物鋼製シース管の表面に敷設してもよいし、PC鋼線の挿通された樹脂製シース管の外周に取り付けることとしてもよい。これにより、測定される電気的特性からかぶりコンクリートの与える種々の要因を排除することができる。さらに、専用の高価な測定器を不要にし、低コストで鋼材の腐食状況の検出精度を高めることができる。なお、図1において金属線A〜Aは複数あるものとして示しているが、1本だけであってもよい。
【0041】
本発明のグラウト施工のシース管に適用した場合の金属線A〜Aは、グラウト施工に用いるシース管本体の少なくとも外周面または内周面のいずれか一方に沿って設けられる。図2は、樹脂製のシース管本体51の外周に金属線A〜Aを敷設したシース管50の正面図である。金属線A〜Aが、直接シース管本体51の外周に巻きつけられている。金属線A〜Aの両端には、リード線L〜Lの一端が接続され、リード線L〜Lの他端は、図示しないセンサインターフェース回路20に接続されている。このように、シース管51は、金属線A〜Aをシース管本体51の外周面または内周面に沿って設け、その電気的特性を測定することで、金属線A〜Aの腐食を検出する。これにより、金属線A〜Aの腐食の進行を検出できるので、シース管またはシース管内のPC鋼線の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。
【0042】
図3は、シース管を継ぎ合わせる継ぎ手部材本体53の外周に金属線A〜Aを敷設したシース管継ぎ手部材52の正面図である。金属線A〜Aが、継ぎ手部材本体53の外周に、並列に配置され巻きつけられている。金属線A〜Aの両端には、リード線L〜Lの一端が接続され、リード線L〜Lの他端は、図示しないセンサインターフェース回路20に接続されている。このように、シース管継ぎ手部材52は、金属線A〜Aを継ぎ手部材本体53の外周面または内周面に沿って設け、その電気的特性を測定することで、金属線A〜Aの腐食を検出する。これにより、金属線A〜Aの腐食の進行を検出できるので、シース管またはシース管内のPC鋼線の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。特に、継ぎ手部材52のジョイント部分からシース管内に腐食因子が進入する可能性が高いため、継ぎ手部材52にこのような機能を持たせることは有効である。
【0043】
なお、あらかじめ腐食センサ1を取り付けたシース管または継ぎ手部材を作製し、コンクリートの施工場所まで運ぶことにより、施工の現地で腐食センサ1を取り付けるのに比べて、作業効率を向上させることができる。
【0044】
金属線A〜Aは、測定対象となるコンクリート構造物中の鋼材と同種金属からなり、コンクリート構造物が普通の鉄筋コンクリート構造物の場合は鉄線(JISG3532)又は軟鋼線(JIS G 3505)を使用することが好ましく、プレストレスコンクリート構造物の場合はPC鋼線(JISG 3536)又はピアノ線(JISG 3502)を使用することが好ましい。ただし、金属線A〜Aの材料は、これらに限定されるものではなく、既知の種々の線材であってもよい。
【0045】
金属線A〜Aの径は、0.01〜1.0mmの範囲のものであれば何でも良い。ただし、必ずしも検出用部材の形状は、線でなくても構わない。検出用部材には、金属線に限定されず、鋼材などよりも薄く腐食しやすい金属製の薄板なども利用することが可能である。
【0046】
また、検出用部材の材質としては、何でも良いが、鉄筋、PC鋼材、鋼製シース管の材質よりも腐食しやすい材質、言い換えれば鉄筋、PC鋼材、鋼製シース管に対して電位が卑となるものが好ましい。
【0047】
なお、金属線A〜Aは断面が円形のものに限られず、楕円形や帯状など種々の形状のものを使用することも可能である。金属線の腐食状態を把握するために検出する電気的特性としては、電気抵抗を含めたインピーダンス、電位差が挙げられる。なお、金属線は長い方が、広い範囲をカバーすることができるため、検出の精度が高くなる。また、一本の金属線において、位置により径の大きさを変えることで、コンクリートの付着性をよくすることができる。その場合には、細い部分により腐食が検出されるため、繰り返し細い部分を設けることで感度を高くすることも可能である。
【0048】
これにより、電気的特性の変化から金属線A〜Aの腐食を検出することができ、鉄筋、PC鋼線、鋼製シース管等の鋼材の腐食が生じているかどうかを予想することが可能となる。その結果、把握した情報に基づいて、構造物の補修必要性有無の判断、工事指針策定などを的確かつ短時間に実施でき、コンクリート構造物を健全な状態に保つ維持管理が可能となる。
【0049】
抵抗素子R〜Rは、金属線A〜Aに直列に接続されている。これにより、金属線が腐食したときには、抵抗値が上がるため金属線の腐食を検出することができる。たとえば、抵抗素子R〜Rの抵抗値r〜rであるとして、腐食のないときのセンサ回路10の抵抗値はr・・・r/(r+r+・・・+r)であるが、抵抗素子Rに直列接続している金属線Aが断線したときには、センサ回路10の抵抗値は、r・・・rn-1/(r+r+・・・+rn-1)となり、抵抗が大きくなる。したがって、抵抗値を検出することで腐食を検出できる。なお、抵抗素子R〜Rを金属線A〜Aに接続することなく、金属線そのものの抵抗を用いて腐食を検出してもよい。また、図1に示す構成では、センサ回路10は複数の金属線A〜Aを備えているが、一本の金属線を備えるものであってもよい。
【0050】
このように金属線A〜Aに抵抗素子R〜Rを接続することにより、金属線A〜Aに流れる電流が僅かでも金属線A〜Aの僅かな腐食状態を精度良く検出することが可能である。さらには、金属線A〜Aに抵抗素子R〜Rを接続することにより、金属線A〜Aおよび抵抗素子R〜Rで消費される電力は少なく、検出用部材で消費される消費電力を少なくできる。
【0051】
なお、消費電力を少なくするためには、検出用部材全体の抵抗値が大きくなるように抵抗素子R〜Rを組み合わせるのが良い。検出用部材全体の抵抗値としては、例えば、10kΩ〜1MΩの範囲であることが好ましい。10kΩよりも小さい場合には、検出用部材に流れる電流量が大きくなり、検出用部材で消費される消費電力は多くなる。一方、1MΩよりも大きい場合には、検出用部材に流れる電流量は少なくなるが、検出用部材全体の係る電圧が大きくなり消費電力は多くなる。
【0052】
金属線の配置形状としては、並列に配置するだけでなく、深さ方向に対して階段状、円周状に配置することもできる。腐食因子の到来方向に沿って階段状に、金属線A〜Aを配置することにより、コンクリート構造物の外部に近い金属線から腐食されるため、コンクリート構造物中の鋼材の腐食劣化時期をより正確に予測することが可能となる。なお、測定対象の管または鉄筋の径方向に沿って半径の異なる円周状の金属線A〜Aを段階的に配置してもよい。
【0053】
図4は、径の異なる金属線B〜Bを用いた腐食センサ55の電気的構成を示すブロック図である。このように、金属線には、材質、太さおよび長さの異なる金属線を複数本利用することにより、鋼材などの腐食状況を精度良く予測することが可能となる。これにより、腐食の程度を段階的に把握することが可能となり、鋼材の腐食の程度を予想することが可能となる。この場合には、あらかじめ各抵抗素子R〜Rの抵抗値を把握しておくことで、センサ回路10の抵抗値からどの金属線が腐食したかを検知することができる。
【0054】
図5は、腐食検出部2のセンサ回路10を、R−2R回路として構成した腐食センサ57の電気的構成を示すブロック図である。センサ回路10では、各金属線A〜Aおよびセンサインターフェース回路20が抵抗素子P〜PおよびQにより接続されている。腐食センサ57は、抵抗素子R〜Rを直列接続した金属線A〜Aを複数並列に配置し、センサ回路10の電気抵抗あるいは電位差を測定することにより金属線A〜Aが腐食あるいは腐食したかを確認する。なお、この場合、R−2R回路を利用することにより、腐食した金属線A〜Aの場所を特定することができる。
【0055】
RFIDIC30の検出回路30aは、センサ回路10の抵抗値または電位等の電気的特性を測定する。検出回路30aは、電気的特性を測定するために必要な各種回路、例えば、高出力電流回路、反転増幅回路、同相増幅回路、ボルテージフォロー回路、積分増幅回路、比較演算回路、ヒステリシス特性の比較演算回路、マルチバイブレーター回路、電流-電圧変換回路などを構成するように各種抵抗素子やコンデンサ、コイルなどが組み込まれている。電位差を測定する場合、オペアンプを利用することにより小さな電位差を増幅でき、より正確に電位差を検出することができる。
【0056】
検出回路30aのメモリは、全体の制御を行うオペレーティングシステムが格納されているROM、データの書き換えや構造物の状態を検知するプログラムが格納されているEEPROMまたはFRAM、検知した情報を記録するRAMなどで構成されている。メモリにはセンサ部のID番号を搭載してもよく、また、読み取り装置から構造物の埋め込み位置に関する情報をRAMに書き込み、これら情報をセンサで検知した情報と共に読み取り装置で読み取ってもよい。
【0057】
無線通信部3は、RFIDIC30の無線通信回路30bおよびアンテナ40から構成されている。無線通信回路30bは、一方で、検出回路30aから送出される情報を無線送信可能に加工し、他方では、アンテナ40を介して受信した読取装置からの指示を検出回路30aに伝える。
【0058】
RFIDIC30の無線通信回路30bは、変調回路、充電/電源部、メモリなどから構成される。この電源部では、バッテリを搭載するタイプのものであっても良いし、いわゆるバッテリーレス、すなわち、蓄電機能を有し、外部から供給される電磁波による誘導電圧を一時的に蓄えるものであっても良い。無線通信回路30bに含まれるメモリは、全体の制御を行うオペレーティングシステムが格納されているROM、データの書き換えや構造物の状態を検知するプログラムが格納されているEEPROM、検知した情報を記録するRAMなどで構成される。メモリにはセンサのID番号を搭載してもよく、また、読取装置から構造物の埋め込み位置に関する情報をRAMに書き込み、これら情報をセンサで検知した情報と共に読み取り装置で読み取ってもよい。
【0059】
このように、腐食センサ1は腐食の検出結果をRFIDIC30等の機能により読取装置に対して無線送信する。これにより、測定準備の労力を軽減し、準備期間を短縮することができる。さらに、測定時には、読取装置をかざすだけでよいため、配線の取り回しの煩雑さ解消することができる。
【0060】
また、測定対象物付近からコンクリートの表面まで伝送ケーブル等の配線を設ける必要がなくなるため、美観を損なうことがなく、配線の経路を通じて鉄筋腐食劣化因子が内部へ侵入することも無くなり、耐久性を向上させることができる。
【0061】
RFIDIC30は、電源整流回路、変調復調装置、充電/電源部、メモリおよびCPUなどの制御部を備えている。メモリは、予め登録された固有の識別番号、外部からの情報、コンクリート構造物内の状態変化の記録、その他必要な情報を記憶している。電源部は蓄電機能を備え外部から供給される電磁波からの誘電電圧を一時的に蓄えるものであってもよい。CPU、制御部は、腐食検出部2の制御を行なうものである。たとえば、CPUは送受信の信号のデータ処理、センサ部のアナログ情報のデジタル変換、電源のコントロール、その他データ処理を行う。
【0062】
アンテナ40は、読取装置との間で無線により情報を送受信する。アンテナ40は、金属類、カーボンファイバーやフェライトなどより構成される。アンテナ40には、中空の巻き線、あるいは磁性体巻き線、あるいは基板上にプリント技術を利用して成形したものを用いることが望ましく、PETなどのフィルム間に上記の材料を挟み込んで使用してもよい。アンテナ40としては、リング状、棒状、円盤状など適当な形に成型されたものを用いてもよい。
【0063】
読み取り装置は、アンテナ、変調復調装置、メモリ、CPUと電源を供給するための電源部とからなり、必要に応じて腐食検出部からの情報を直接、あるいはデータ処理を行って他の装置に出力させる。その場合、外部出力端子を介して行なうこととしてもよい。
【0064】
次に、以上のように構成された腐食センサ1の設置方法および操作方法について説明する。
【0065】
まず、シース管に長さ方向に間隔をおいて複数の金属線A〜Aを取り付ける。次に、金属線A〜Aを取り付けたシース管を構造物の設計または現場の状況に応じ、所定の位置に配置する。配置したシース管を埋めるようにコンクリートを打設し、養生する。そして、シース管内にPC鋼材を挿入し、ジャッキ等を用いて緊張する。次に、シース管にグラウト材を注入する。このようにして、腐食センサ1はコンクリート内部に設置される。
【0066】
コンクリートが固まった後に、又はある期間に、アンテナの埋設されている位置に読取装置をかざし、腐食センサ1を動作させる。読取装置から信号を受信した腐食センサ1は、RFIDIC30の働きにより生じた所定の電圧をセンサ回路10にかける。センサインターフェース回路20は、センサ回路10の電位差または抵抗値を検出し信号の増幅等を行なう。RFIDIC30は、送信すべき信号を変調し、アンテナ40を介して読取装置へ腐食の情報を送信する。このようにして、腐食センサ1の操作が行なわれる。
【0067】
(実施形態2)
上記の実施形態では、金属線A〜Aをシース管本体51の外周に直接敷設しているが、シース管等に金属線A〜Aを着脱可能に取り付ける取付部を腐食センサに設け、腐食センサユニットとしてもよい。着脱可能にするとは、嵌合可能または挿し込むことが可能に形成されていることをいう。
【0068】
図6は、腐食センサユニット60の取付部61を示す正面図、図7は、腐食センサユニット60の取付部61を示す斜視図である。取付部61には、金属線D〜Dが敷設され、金属線D〜Dは、それぞれリード線L〜Lに接続されている。
【0069】
取付部61は、シース管の外形に嵌合するようにシース管の外形に相似する形状を有している。金属線D〜Dは、取付部61の外周に並列で敷設されており、金属線D〜Dの腐食があったときには、リード線L〜Lによりセンサインターフェース回路20に電気的特性の情報が伝達される。
【0070】
このように、腐食センサの設置対象物への着脱が可能となるように専用の取付部61を設け、取付部61の表面に金属線D〜Dを設置することにより、シース管、鋼材、または鉄筋のあらゆる場所に腐食センサの取付が可能となる。その結果、測定したい箇所の腐食状況を低コストかつ効率的に把握することが可能となる。また、腐食センサの設置や設置位置の修正等が容易となる。これにより、コンクリート打設前の測定準備の労力を軽減し、準備期間を短縮することができる。
【0071】
なお、取付部は、図7に示す形状に限られず、平板上の取付部であってもよい。図8は、腐食センサユニット70の平板上の取付部71を示す斜視図である。取付部71には、金属線E〜Eが敷設され、金属線E〜Eは、それぞれリード線L〜Lに接続されている。
【0072】
また、このような取付部以外にも、鉄筋を挿通して用いられる円板状のスペーサーの表面に金属線を敷設したものを腐食センサユニットとしてもよい。その場合には、円板形状の外周面に溝を設けて円周状に金属線を敷設する。なお、円板形状のいずれかの底面に段階的に溝を設けて円周状に金属線を敷設してもよい。
【0073】
(実施形態3)
上記の実施形態では、センサ回路10で検出する電気的特性は抵抗素子の抵抗値またはそれによる電位差であるが、金属線の近傍にカソード用部材を設けて腐食電流を検出することとしてもよい。また、カソード用部材により、腐食の進行を早めて腐食検出の感度を高めてもよい。
【0074】
図9は、腐食電流を検出する腐食センサ80の電気的構成を示すブロック図である。腐食センサ80は、金属線近傍に金属線よりも電位の貴な金属線81(カソード用部材)を配置することにより、金属線81がカソードの役割を果たし、金属線の腐食が進行することを利用するものである。これにより、鋼材などを劣化させる塩素イオンなどの劣化因子の浸透状況をより早く把握することが可能となる。
【0075】
なお、金属の陽極部と陰極部が明確に区別できるような電池が形成されたものをマクロセルといい、両極間を流れる電流を腐食電流(マクロセル電流)という。健全なコンクリートは、強アルカリ性(pH=12〜13)を示し、内部の鋼材表面には厚さ2〜6mmの緻密な不動態被膜が形成され、鋼材は腐食から保護されている。しかし、この不動態被膜がコンクリートに浸透してきた塩化物イオン(Cl)により破壊されると、鋼材がイオン化する反応(酸化反応:アノード反応)が進行し、健全な鋼材表面では酸素が還元される反応(還元反応:カソード反応)が進行する。これら反応は同時に進行し、アノード部は卑な電位、カソード部は貴な電位となる電位差が生じ、同時にアノード部からカソード部へとコンクリート中を電流(腐食電流)が流れ鋼材の腐食が進行する。
【0076】
このような原理を利用し、金属線近傍に金属線A〜Aよりも電位の貴な金属線81(カソード用部材)を配置することにより、金属線A〜Aの腐食を進行させることができ、鋼材などを劣化させる塩素イオンなどの劣化因子の浸透状況をより早く把握することが可能である。
【0077】
また、金属線A〜Aの近傍に金属線A〜Aよりも電位の貴な金属線81(カソード用部材)を配置することにより、金属線A〜Aと貴な金属との間に腐食電流が流れる。この腐食電流は、コンクリートにより形成される抵抗が大きく影響を与える。コンクリートが塩分や水分などを多く含んでいる場合、コンクリートの抵抗は小さくなり腐食電流は大きくなるが、コンクリートが塩分や水分などを多く含んでいない場合には、コンクリートの抵抗は大きくなり腐食電流は小さくなる。この腐食電流を測定し、鋼材表面積から腐食電流密度を計算することにより鋼材の腐食状況を把握または今後の進行状況を予測することが可能である。
【0078】
なお、金属線A〜Aが鉄の場合、貴な金属線(カソード用部材)としては、ニッケル、スズ、鉛、銅、白金、金、ステンレスなど各種金属の合金などが利用できる。また、センサ回路が測定する電気的特性には、鉄筋と金属線との電位差も含まれる。
【実施例1】
【0079】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0080】
桁長32mで、鋼材として12S12.7BのPC鋼材(緊張材)を桁内に4本配置するポストテンション方式T型のプレストレストコンクリート(以下、PCコンクリートという)を想定して実験を行なった。想定するPCコンクリートには、鋼製で外径68mmのシース管が埋設されており、そのシース管腐食を検出するための実験を行なった。
【0081】
道路橋示方書に従って設計したPCコンクリートにおいて、桁の配筋を行い、続いてシース管を配置した。腐食センサ1には、図2に示すようなシース管本体51の外周に金属線を巻いたものを利用し、使用した金属線は太さ0.1mmと0.3mmの軟鋼線を各1本、合計2本用いた。
【0082】
腐食センサ1は桁内に配置された4本のシース管の一つに取り付けた。取り付けた腐食センサ1は、他種のセンサ、変調/復調回路、CPU、メモリおよびセンサ制御部などを備えたRFIDチップ、アンテナ、ならびに蓄電部を備えるものであった。腐食センサ1と読み取り装置との通信には13.56MHzの周波数を用いた。
【0083】
腐食センサ1を取り付けた後、コンクリートを打設して蒸気養生を行い脱型した。その後、2週間養生してPC鋼材を挿入し、緊張した。充填に用いたグラウトは水セメント比を45%として市販のグラウト用混和材料を用いて製造した。グラウト注入から1ヶ月後、コンクリート供試体に塩水を間欠的に散布しながら、読取装置を用いて金属線の電位差を測定した。
【0084】
その結果、試験開始から355日目までセンサの電位差は2Vであったが、356日目に1Vの電位差を示した。コンクリート供試体を割裂して細線を調査したところ、太さ0.1mmの金属線全体には錆が認められた。このことから金属線は腐食していることが確認された。
【実施例2】
【0085】
海岸付近に建設されるストックヤードのコンクリート柱(断面が600mm×600mm)内部の腐食について、以下のように実験を行なった。
【0086】
まず、鉄筋を組み立てた後、図10に示すように、腐食センサ90を鉄筋94に取り付け、型枠を設置してコンクリートを打設した。腐食センサ90は、RFIDタグ91の表面に腐食検知用の金属線として4本の鉄線F〜Fを設けて形成されている。鉄線F〜Fの線の直径はそれぞれ0.1mm、0.5mm、1.0mm、および2.0mmである。鉄線F〜Fにはそれぞれ2KΩ、3KΩ、5KΩ、および7KΩの抵抗値を有する抵抗素子を接続し、お互いに重なりあわない抵抗値を用いることで、腐食した場合に、どの太さの線が腐食したかが判るようにした。お互いに重なりあわない抵抗値とは、たとえば素数である。RFIDタグ91は電池を搭載せず、図10に示すように、スペーサー95および嵌合用金具96により鉄筋94と一体化している。RFIDタグ91とスペーサー95とは、エポキシ樹脂等の接着剤により接着されている。図11に示すように、鉄筋のかぶり50mmに対して、コンクリート表面97とRFIDタグ91の表面との距離が20mmとなるように、RFIDタグ91を設置した。
【0087】
建設から5年経過後および10年経過後にコンクリート表面97から読取装置をかざし、鉄線F〜Fに印加された電流を測定し、鉄線F〜Fの切断の有無を確認した。5年後には0.1mmの鉄線Fが腐食し、10年後には0.1mmの鉄線F、0.5mmの鉄線Fおよび1.0mmの鉄線Fの3本が腐食していることが確認された。浸透する塩分によって鉄線が腐食し、かつ、塩分の浸透は拡散に従うと考えられるため、塩分の浸透深さは時間の平方根に比例すると推測できる。5年で20mmの位置まで塩分が浸透したこととなるので、50mm深さまで塩分が浸透し鉄筋の腐食を開始する時(年)は、(2.236×50/20)で計算でき、およそ建設から31年後と推測できる。一方で、腐食速度は、5年から10年の5年間で直径1.0mmの鉄線を腐食させたことから、0.5×0.5×3.14/5で0.157mm/年以上であると推測できる。
【0088】
このように、鉄筋かぶりに対して、一定の深さに金属線を配置するように腐食センサを用いることで、鉄筋の腐食時期を推定することが可能で、また線径を変えることで腐食速度が推定可能である。さらに、腐食速度から腐食膨張によるコンクリートのはく離時期を推定することも可能となり、補修時期や将来の維持管理計画の策定に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る腐食センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図2】シース管本体の外周に金属線(検出用部材)を敷設したシース管の正面図である。
【図3】継ぎ手部材本体の外周に金属線(検出用部材)を敷設したシース管継ぎ手部材の正面図である。
【図4】本発明に係る腐食センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】センサ回路をR−2R回路として構成した腐食センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る腐食センサユニットの取付部を示す正面図である。
【図7】本発明に係る腐食センサユニットの取付部を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る腐食センサユニットの取付部を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る腐食センサの電気的構成を示すブロック図である。
【図10】本発明に係る腐食センサを示す斜視図である。
【図11】コンクリートに埋設した腐食センサを示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 腐食センサ
2 腐食検出部
3 無線通信部
5 特性検出部
10 センサ回路
10a、10b 端子
20 センサインターフェース回路
30 RFIDIC
30a 検出回路
30b 無線通信回路
40 アンテナ
50 シース管
51 シース管本体
52 シース管継ぎ手部材
53 継ぎ手部材本体
55 腐食センサ
57 腐食センサ
60 腐食センサユニット
61 取付部
70 腐食センサユニット
71 取付部
80 腐食センサ
81 金属線(カソード用部材)
90 腐食センサ
91 RFIDタグ
94 鉄筋
95 スペーサー
96 嵌合用金具
97 コンクリート表面
-A、B-B、D-D、E-E 金属線(検出用部材)
-R、P-P、Q 抵抗素子
-L リード線
-F 鉄線(検出用部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物中に埋設される鋼材の腐食進行状況を診断するのに用いる腐食センサであって、
測定対象物または前記測定対象物の近傍に敷設される金属製の検出用部材を有し、前記検出用部材の腐食を、前記検出用部材の電気的特性を測定することにより検出する腐食検出部と、
前記腐食の検出結果を読取装置に対して無線送信するための無線通信部と、を備えることを特徴とする腐食センサ。
【請求項2】
前記検出用部材は、材質の種類または径が異なる2本以上の金属線からなり、
前記金属線は、それぞれ抵抗素子に直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の腐食センサ。
【請求項3】
前記腐食検出部は、前記検出用部材より電位の貴な金属を材料とするカソード用部材を有し、カソード用部材は前記検出用部材の近傍に設置され、
前記検出用部材と前記カソード用部材とは電気的に接続され、前記カソード用部材は前記検出用部材に対しカソードの役割を果たすものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の腐食センサ。
【請求項4】
プレストレストコンクリート構造物のグラウト施工に用いられる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の腐食センサが設置されたシース管であって、
前記検出用部材は、シース管本体の外周面および/または内周面に沿って設けられていることを特徴とするシース管。
【請求項5】
プレストレストコンクリート構造物のグラウト施工に用いられるシース管どうしを接続するのに用いられる、請求項1から請求項3のいずれかに記載の腐食センサが設置されたシース管継ぎ手部材であって、
前記検出用部材は、シース管継ぎ手部材本体の外周面および/または内周面に沿って設けられていることを特徴とするシース管継ぎ手部材。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の腐食センサと、前記腐食センサの設置対象への着脱を可能とする取り付け部とを有する腐食センサユニットであって、
前記検出用部材は、前記取り付け部の部材表面に設けられていることを特徴とする腐食センサユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−337169(P2006−337169A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162060(P2005−162060)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】