説明

腫瘍壊死因子αを標的とする単一ドメイン抗体およびその使用

【課題】TNF‐αに結合する1種または複数の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド、前記ポリペプチドの相同物、前記ポリペプチドの相同物の機能部分の提供。
【解決手段】腫瘍壊死因子αを標的とする単一ドメイン重鎖抗体に由来するポリペプチド、ラクダ科VHHである単一ドメイン抗体、前記ポリペプチドの投与方法、TNF‐α受容体を調節する作用薬のスクリーニング用プロトコル、および前記スクリーニングの結果として生じた作用薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍壊死因子α(TNF‐α)を対象とする1種または複数の単一ドメイン抗体を含むポリペプチドを提供する。さらに、本発明は、診断および治療でのその使用に関する。そのような抗体は、ヒトフレームワーク配列に高い相同性を有するフレームワーク配列を含み得る。腫瘍壊死因子α(TNF‐α)に対する抗体を、単独でまたは他の薬物と組み合わせて含む組成物について説明する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子α(TNF‐α)は、様々な疾患、たとえば、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症などの炎症性疾患で重要な役割を果たすと考えられている。TNF‐αおよびその受容体(CD120a、CD120b)は、かなり詳細に研究されてきた。生理活性形態のTNF‐αは、三量体であり、近傍サブユニットによって形成された溝は、サイトカイン受容体の相互作用に重要である。このサイトカインの作用を相殺するためのいくつかの戦略が開発されており、現在、様々な病態の治療に使用されている。
【0003】
TNF‐αに対して満足のいく特異性および選択性を有するTNF‐α阻害剤は、TNF‐αが原因物質として関わってきた疾患を予防し、または治療するための効果的な予防剤または治療剤化合物であり得る。TNF‐αの抗体による、毒素ショック(EP486526号(特許文献1))、腫瘍退縮、細胞毒性の阻害(US6448380号(特許文献2)、US6451983号(特許文献3)、US6498237号(特許文献4))、RAやクローン病(EP663836号(特許文献5)、US5672347号(特許文献6)、US5656272号(特許文献7))などの自己免疫疾患、移植片対宿主反応(US5672347号(特許文献8))、細菌性髄膜炎(EP585705号(特許文献9))の治療法が記載されてきた。
【0004】
現在利用可能な薬物のどれも自己免疫疾患の治療には完全に有効ではなく、ほとんどは深刻な毒性によって制限されている。さらに、そのような標的配列に対して十分な作用強度および選択性を備えた新規化学物質(NCE)を開発することは、極めて困難であり手順も冗長である。他方で、抗体を基にした薬物は、薬物として顕著な可能性を有している。というのは、こうした薬物は、その標的に対する特異性が極めて優れており、固有の毒性も低いからである。さらに、新規化学物質(NCE's)の開発と比較して、開発時間をかなり縮小させることができる。しかし、TNF‐αでの事例のように、リガンドの受容体結合ドメインが溝の中に包埋されている多量体蛋白質に対して、従来の抗体を生じさせることは困難である。本発明に記載したラクダ科に由来する重鎖抗体は、陥凹部に結合する傾向があることが知られている(WO97/49805号(特許文献10)、Lauwereysら、EMBO J.17、5312、1998(非特許文献1))。したがって、本来、そのような重鎖抗体が、TNFなどのリガンド受容体結合ドメインへの結合には適している。さらに、そのような抗体は、長期間に渡って安定していることが知られており、したがってその貯蔵寿命は増大する(Perezら、Biochemistry、40、74、2001(非特許文献2))。さらに、そのような重鎖抗体断片は、酵母や他の微生物などの哺乳動物細胞培養発酵と比較して、安価な発現系を使用し、発酵槽で一括して生成することができる(EP0698097号(特許文献11))。
【0005】
炎症の調節が必要な状態の治療として、マウス、ヒツジ、ヤギ、ウサギなどの供給源に由来する抗体、およびそのヒト化誘導体を使用することは、いくつかの理由で問題である。従来の抗体は、室温で安定しておらず、調製、保存には冷凍しなければならず、冷凍研究装置、冷凍庫、および冷凍輸送が不可欠であり、これらは時間も費用もかかる。冷凍は、開発途上国では実施不可能な場合もある。さらに、前記抗体の製造または小規模生成は経費がかかる。というのは、無傷で活性な抗体の発現に必要な哺乳動物細胞系は、時間および装置の点から高度な支援が必要であるが、収量は極めて少ないからである。さらに大きい寸法の従来の抗体は、たとえば、炎症組織部位で組織透過性が制限されているはずである。さらに、従来の抗体の結合活性はpH依存性があり、したがって、たとえば、胃出血の治療や胃手術など、通常の生理pH範囲外の環境における使用は不適当である。さらに、従来の抗体は、低pHまたは高pHで不安定であり、したがって経口投与には適当でない。しかし、ラクダ科抗体は、極端なpH、変性試薬、高温などの過酷な条件に耐えることが実証されている(Dumoulinら、Protein Science 11、500、2002(非特許文献3))ので、それらの抗体が経口投与による送達に相応しいものにしている。さらに、従来の抗体の結合活性は、温度依存的であり、したがって生体活性温度範囲外(たとえば、37±20℃)の温度で実施するアッセイやキットで使用するのには不適当である。
【0006】
ポリペプチド薬物、特に抗体を基にした薬物は、薬物として顕著な可能性を有している。というのは、こうした薬物は、その標的に対する特異性が極めて優れており、固有の毒性も低いからである。しかし、治療上有用な標的に対して得られている抗体は、それをヒト治療に向けて調製するためには、ヒト個体で投与後、それに対する望ましくない免疫反応を回避するように、さらに改変する必要があることは当業者によって知られている。この改変工程は、一般に「ヒト化」と称される。ヒト以外の種の中で生じた抗体は、その抗体をヒトで治療上使用可能にするためにはヒト化する必要があることは当業者によって知られている((1)CDR grafting:Protein Design Labs:US6180370号(特許文献12)、US5693761号(特許文献13)、Genentech:US6054297号(特許文献14)、Celltech:460167号(特許文献15)、EP626390号(特許文献16)、US5859205号(特許文献17)、(2)Veneering:Xoma:US5869619号(特許文献18)、US5766886号(特許文献19)、US5821123号(特許文献20))。実質的にヒト化要件を回避し、またはヒト化の必要性を完全に不要にする抗体の産生方法が必要とされている。所定のフレームワーク領域またはアミノ酸残基を有し、実質的にヒト化要件またはヒト化の必要性が一切なくヒト対象に投与できる新規なクラスの抗体が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP486526号
【特許文献2】US6448380号
【特許文献3】US6451983号
【特許文献4】US6498237号
【特許文献5】EP663836号
【特許文献6】US5672347号、
【特許文献7】US5656272号
【特許文献8】US5672347号
【特許文献9】EP585705号
【特許文献10】WO97/49805号
【特許文献11】EP0698097号
【特許文献12】US6180370号
【特許文献13】US5693761号
【特許文献14】US6054297号
【特許文献15】460167号
【特許文献16】EP626390号
【特許文献17】US5859205号
【特許文献18】US5869619号
【特許文献19】US5766886号
【特許文献20】US5821123号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lauwereysら、EMBO J.17、5312、1998
【非特許文献2】Perezら、Biochemistry、40、74、2001
【非特許文献3】Dumoulinら、Protein Science 11、500、2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の抗体の別の重要な欠点は、これらが複雑な大きい分子であるが故に、比較的不安定であり、プロテアーゼによる分解に敏感であるということである。これは、従来の抗体薬物が、経口、舌下、局所、経鼻、経膣、経直腸で、または吸入によって投与できないこと意味する。というのは、こうした薬物は、これらの部位の低pH、およびこれらの部位や血液中のプロテアーゼの作用には耐えられず、かつ/またはその寸法が大きいためによる。こうした問題のいくつかを克服するためには、こうした薬物を注射(静脈内、皮下など)によって投与しなければならない。注射による投与は、皮下用注射器または針を正確および安全に使用するために専門家の訓練を必要とする。これには、さらに、滅菌器具、治療用ポリペプチド液体製剤、滅菌安定形態での前記ポリペプチドのバイアル包装、および対象においては針の侵入に適当な部位が必要とされる。さらに、一般に、対象は、注射を受ける前後に身体的および心理的ストレスを経験する。したがって、注射の必要性を回避する治療用ポリペプチドの送達方法が必要とされ、この方法はコスト/時間の節約になるだけでなく、対象にとってもより好都合、より快適であるはずである。
【0010】
単一ドメイン抗体を基にした薬物は、薬物として顕著な可能性を有している。というのは、こうした薬物は、その標的に対する特異性が極めて優れており、固有の毒性も低いからである。しかし、その固有の機能的親和性をさらに改善することによって、薬物用量の削減、治療の短縮、副作用の低減など、患者に多くの利益をもたらすことができる。
【0011】
(本発明目的)
TNF‐αに結合する1種または複数の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド、前記ポリペプチドの相同物、前記ポリペプチドの相同物の機能部分を提供することが本発明の目的である。前記ポリペプチドは、結合と同時にTNF‐αの生体活性を改変する。そのようなポリペプチドは、TNF‐αの受容体結合溝に結合するかもしれず、またはその受容体結合溝に結合しないかもしれない。そのようなポリペプチドは、単一ドメイン抗体である。
【0012】
現在の技術のいずれか、または将来得られる単一ドメイン抗体のいずれであってもよい単一ドメイン抗体を提供することもさらに本発明の目的である。例には、それだけには限らないが、重鎖抗体、本質的に軽鎖を欠く抗体、従来の4鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、設計された抗体、および抗体に由来するもの以外の単一ドメイン骨格が含まれる。本発明の一態様によれば、本明細書で使用される単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体(WO9404678号)として知られる、自然に存在する単一ドメイン抗体である。明瞭にするために、軽鎖を欠く重鎖抗体に由来するこの可変ドメインをVHHまたはナノ体と称し、従来の4鎖免疫グロブリンVHと区別する。そのようなVHH分子は、ラクダ科種、たとえば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、グアナコで生じた抗体から得ることができる。
【0013】
抗TNF‐αポリペプチドを静脈内、皮下、経口、舌下、局所、経鼻、経膣、経直腸で、または吸入によって投与する方法を提供することもさらに本発明の目的である。
【0014】
一価の単一ドメイン抗体の結合親和性を強化することもさらに本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(本発明の概要)
本発明の一実施形態は、少なくとも1個の抗TNF‐α単一ドメイン抗体を含む抗TNF‐αポリペプチドである。
【0016】
本発明の別の実施形態は、単一ドメイン抗体が、配列番号1〜16および79〜84のいずれかの配列によって表される配列に相当する上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0017】
本発明の別の実施形態は、さらに、血清蛋白質を標的とする少なくとも1種の単一ドメイン抗体を含む上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0018】
本発明の別の実施形態は、前記血清蛋白質が、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、サイロキシン結合蛋白質、トランスフェリン、またはフィブリノーゲンのいずれかである上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0019】
本発明の別の実施形態は、単一ドメイン抗血清蛋白質単一ドメイン抗体が、配列番号26〜29および85〜97のいずれかの配列によって表される配列に相当する上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0020】
本発明の別の実施形態は、配列番号30〜43のいずれかの配列によって表される配列に相当する上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0021】
本発明の別の実施形態は、さらに、抗IFN‐γ単一ドメイン抗体、抗TNF‐α受容体単一ドメイン抗体、および抗IFN‐γ受容体単一ドメイン抗体からなる群から選択した少なくとも1種の単一ドメイン抗体を含む上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0022】
本発明の別の実施形態は、TNF‐αを標的とする単一ドメイン抗体数が、少なくとも2個である上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0023】
本発明の別の実施形態は、配列番号73〜76のいずれかの配列によって表される配列に相当する上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0024】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1種の単一ドメイン抗体が、ヒト化ラクダ科VHHである上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0025】
本発明の別の実施形態は、ヒト化ラクダ科VHHが、配列番号17〜19および21〜24のいずれかの配列によって表される配列に相当する上記抗TNF‐αポリペプチドである。
【0026】
本発明の別の実施形態は、上記抗TNF‐αポリペプチド、ならびに抗IFN‐γ単一ドメイン抗体、抗TNF‐α受容体単一ドメイン抗体、および抗IFN‐γ受容体単一ドメイン抗体からなる群から選択した少なくとも1種の単一ドメイン抗体を含み、対象に同時投与、分別投与、または逐次投与するための組成物である。
【0027】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の抗IFN‐γ単一ドメイン抗体が、配列番号44〜72のいずれかの配列によって表される配列に相当する、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0028】
本発明の別の実施形態は、前記単一ドメイン抗体が、完全長単一ドメイン抗体の機能部分、または相同配列機能部分と相同配列である、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0029】
本発明の別の実施形態は、抗TNF‐αポリペプチドが、完全長抗TNF‐αポリペプチドの機能部分、または相同配列機能部分と相同配列である、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0030】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1種の単一ドメイン抗体が、ラクダ科VHHである上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0031】
本発明の別の実施形態は、上記抗TNF‐αポリペプチドをコードする核酸である。
【0032】
本発明の別の実施形態は、上記抗TNF‐αポリペプチドと腫瘍壊死因子αの結合を調節する作用薬を同定する、以下のステップを含む方法である:
(a)候補調節物質の存在下および非存在下において、前記ポリペプチドと標的間の結合を可能にする条件下で、上記抗TNF‐αポリペプチドを、腫瘍壊死因子αである標的に接触させる、ならびに
(b)ポリペプチドとステップ(a)の標的との間の結合を測定し、前記候補調節物質の非存在下での結合に比べて、前記候補調節物質の存在下で結合が減少することによって、前記候補調節物質を上記抗TNF‐αポリペプチドと腫瘍壊死因子αの結合を調節する作用薬として同定する。
【0033】
本発明の別の実施形態は、上記抗TNF‐αポリペプチドと腫瘍壊死因子αの結合を通して、腫瘍壊死因子αが介在する疾患を調節する作用薬を同定する、以下を含む方法である:
(a)候補調節物質の存在下および非存在下において、前記ポリペプチドと標的間の結合を可能にする条件下で、上記抗TNF‐αポリペプチドを、腫瘍壊死因子αである標的に接触させる、ならびに
(b)ポリペプチドとステップ(a)の標的との間の結合を測定し、前記候補調節物質の非存在下での結合に比べて、前記候補調節物質の存在下で結合が減少することによって、前記候補調節物質を腫瘍壊死因子αが介在する疾患を調節する作用薬として同定する。
【0034】
本発明の別の実施形態は、上記抗TNF‐αポリペプチドと腫瘍壊死因子αの結合を通して、腫瘍壊死因子αとその受容体の結合を調節する作用薬を同定する、以下を含む方法である:
(a)候補調節物質の存在下および非存在下において、前記ポリペプチドと標的間の結合を可能にする条件下で、上記抗TNF‐αポリペプチドを、腫瘍壊死因子αである標的に接触させる、ならびに
(b)ポリペプチドとステップ(a)の標的との間の結合を測定し、前記候補調節物質の非存在下での結合に比べて、前記候補調節物質の存在下で結合が減少することによって、前記候補調節物質を腫瘍壊死因子αとその受容体の結合を調節する作用薬として同定する。
【0035】
本発明の別の実施形態は、上記抗TNF‐αポリペプチドおよび腫瘍壊死因子αを含む、腫瘍壊死因子αが介在する疾患を調節する作用薬をスクリーニングするためのキットである。
【0036】
本発明の別の実施形態は、上記の方法によって同定した、上記抗TNF‐αポリペプチドと腫瘍壊死因子αの結合を調節する未知の作用薬である。
【0037】
本発明の別の実施形態は、上記の方法によって同定した、腫瘍壊死因子αが介在する疾患を調節する未知の作用薬である。
【0038】
本発明の別の実施形態は、前記疾患が、炎症、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症の1種または複数である上記の未知の作用薬である。
【0039】
本発明の別の実施形態は、炎症過程に関連付けられる疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、上記抗TNF‐αポリペプチド、上記核酸、上記組成物、または上記作用薬である。
【0040】
本発明の別の実施形態は、炎症反応に関連付けられる疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための、上記抗TNF‐αポリペプチド、上記核酸、上記組成物、または上記作用薬の使用である。
【0041】
本発明の別の実施形態は、その物質が不活化されることなく、胃環境を通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0042】
本発明の別の実施形態は、その物質が不活化されることなく、胃環境を通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物の使用である。
【0043】
本発明の別の実施形態は、膣腔および/または直腸腔に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0044】
本発明の別の実施形態は、膣腔および/または直腸腔に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物の使用である。
【0045】
本発明の別の実施形態は、鼻、上気道、および/または肺に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0046】
本発明の別の実施形態は、鼻、上気道、および/または肺に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物の使用である。
【0047】
本発明の別の実施形態は、腸粘膜に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患であって、腸粘膜透過性を上昇させる前記疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0048】
本発明の別の実施形態は、腸粘膜に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患であって、腸粘膜透過性を上昇させる前記疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物の使用である。
【0049】
本発明の別の実施形態は、舌下組織を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0050】
本発明の別の実施形態は、舌下組織を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物の使用である。
【0051】
本発明の別の実施形態は、皮膚を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物である。
【0052】
本発明の別の実施形態は、皮膚を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物の使用である。
【0053】
本発明の別の実施形態は、前記疾患が、炎症、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、多発性硬化症、アジソン病、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、I型糖尿病、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、男性不妊症、多発性硬化症、重症筋無力症、天疱瘡、乾癬、リューマチ熱、リューマチ性関節炎、類肉腫症、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、および血管炎のいずれかである、上記方法、上記キット、上記核酸または作用薬、上記核酸または作用薬の使用、上記組成物、上記組成物の使用、上記抗TNF‐αポリペプチド、上記抗TNF‐αポリペプチドの使用である。
【0054】
本発明の別の実施形態は、上記核酸または作用薬、上記抗TNF‐αポリペプチドまたは上記組成物、および適当な薬剤ビヒクルを含む組成物である。
【0055】
本発明の別の実施形態は、腫瘍壊死因子αの機能障害によって特徴付けられる疾患の、以下を含む診断方法である:
(a)試料を上記抗TNF‐αポリペプチドに接触させる、
(b)前記ポリペプチドと前記試料の結合を検出する、および
(c)ステップ(b)で検出した結合と基準を比較し、前記試料に関連する結合の差から、腫瘍壊死因子αの機能障害によって特徴付けられる疾患の症状を診断する。
【0056】
本発明の別の実施形態は、上記方法を使用し、上記した疾患をスクリーニングするためのキットである。
【0057】
本発明の別の実施形態は、単離した上記抗TNF‐αポリペプチドを含む、上記した疾患をスクリーニングするためのキットである。
【0058】
本発明の別の実施形態は、前記腫瘍壊死因子αを精製するための上記抗TNF‐αポリペプチドの使用である。
【0059】
本発明の別の実施形態は、腫瘍壊死因子αと1種または複数の腫瘍壊死因子α受容体との間の相互作用を阻害するための上記抗TNF‐αポリペプチドの使用である。
【0060】
本発明の別の実施形態は、以下のステップを含む、上記抗TNF‐αポリペプチドの産生方法である:
(a)腫瘍壊死因子αを対象とするラクダ科VHHをコードする2本鎖DNAを得る、
(b)ステップ(b)で選択したDNAをクローニングし、発現させる。
【0061】
本発明の別の実施形態は、以下のステップを含む、上記抗TNF‐αポリペプチドの産生方法である:
(a)ポリペプチドの発現を可能にする条件下で、上記抗TNF‐αポリペプチドをコードすることが可能な核酸を含む宿主細胞を培養する、ならびに
(b)培養物から生成したポリペプチドを回収する。
【0062】
本発明の別の実施形態は、前記宿主細胞が、細菌または酵母である上記方法である。
【0063】
本発明の別の実施形態は、上記抗TNF‐αポリペプチドを含む、炎症、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、または多発性硬化症のいずれかをスクリーニングするためのキットである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1に記載した抗ヒトTNFのVHH類の配列。
【図2】実施例1によるELISAで試験した抗ヒトTNF‐αのVHHの希釈系列。
【図3】実施例1によるヒト細胞系KYMを使用し、細胞毒性アッセイで定量したVHHの拮抗作用。
【図4】野生型VHH#12Bと突然変異体A74S+Y76N+K83R+P84AのIn vitro受容体結合アッセイ。
【図5】野生型VHH#12Bと突然変異体1E+Q5LA74S+Y76N+K83R+P84AのIn vitro受容体結合アッセイ。
【図6】野生型VHH#3Eと突然変異VHH類のELISAでの結合。
【図7】野生型VHH#3Eと突然変異VHH類のIn vitro受容体結合アッセイ。
【図8】実施例3に記載した拮抗性抗マウスTNF類の配列。
【図9】実施例3によるマウス細胞系L929を使用し細胞毒性アッセイで定量した抗マウスTNFのVHHの拮抗作用。
【図10】二価または二重特異的VHHの生成のためのベクターpAX11(pUC119主鎖)のEcoRI-HindIII挿入物。
【図11】IMAC精製した、一価(レーン8)、二価(レーン1)、三価(レーン2、3、および5)および四価(レーン4、6、および7)の抗TNFaVHHのクーマシー染色PAGE(15%)。
【図12】一価、二価、三価、および四価のVHHのSuperdex 75HRでのゲルろ過による分析のクロマトグラム。
【図13】臨床的に使用されている製品レミケードおよびエンブレルを用いた抗ヒトTNFのVHHの一価、二価、三価、および四価形態の拮抗特性の比較。
【図14】マウスTNF‐αを標的とする一価および二価のVHH類の拮抗動作。
【図15】実施例4に記載したヒトIgG1に由来するVHH‐Fc融合のクーマシー染色PAGE。
【図16】バイオアッセイで定量した、VHH#3Eの二価形式と比較したVHH#3Eに由来するVHH‐Fc融合の拮抗効力。
【図17】pH2.2、pH3.2、およびpH4.2における、参照とペプシン処理したTNF3EのELISA(100%は、1/100希釈で測定したシグナルである)。
【図18】実験設定。
【発明を実施するための形態】
【0065】
表1 TNF‐αを標的とする本発明の態様のペプチドのアミノ酸配列表
表2 VHH#12Bの突然変異誘発に使用した突然変異誘発反応、変異原性プライマー、および鋳型の一覧
表3 VHH#3Eの突然変異誘発に使用した突然変異誘発反応、変異原性プライマー、および鋳型の一覧
表4 ヒト化型および野生型VHHの概要
表5 抗マウス血清アルブミン/抗TNF‐α
表6 ヒトIFN‐γを標的とするVHH類のアミノ酸配列表
表7 TNF‐αを標的とする、二価(BIV 3E、BIV#m3F)、三価(TRI 3E)、または四価(TETRA 3E)VHHの配列
表8 本発明の抗マウス血清アルブミンVHHのアミノ酸配列間の部分的相同性
表9 本発明の抗TNF‐αのVHH間の部分的相同性
表10 本発明の抗IFN‐γのVHH間の百分比相同性
表11 治療スケジュール
【0066】
(詳細な説明)
本発明は、TNF‐αを標的とする1種または複数の単一ドメイン抗体を含む抗腫瘍壊死因子α(TNF‐α)ポリペプチドに関する。本発明は、前記ポリペプチドをコードし得る核酸にも関する。
【0067】
単一ドメイン抗体は、その相補性決定領域が、単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である。例には、それだけには限らないが、重鎖抗体、本質的に軽鎖を欠く抗体、従来の4鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、設計された抗体、および抗体に由来するもの以外の単一ドメイン骨格が含まれる。単一ドメイン抗体は、現在の技術のいずれか、または将来得られる単一ドメイン抗体のいずれであってもよい。単一ドメイン抗体は、それだけには限らないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ウシを含むいずれの種からも得ることができる。本発明の一態様によれば、本明細書で使用される単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られている自然に存在する単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体は、たとえば、WO94/04678号に開示されている。明瞭にするために、本質的に軽鎖を欠く重鎖抗体に由来するこの可変ドメインを、本明細書ではVHHまたはナノ体として示し、従来の4鎖免疫グロブリンVHと区別する。そのようなVHH分子は、ラクダ科種、たとえば、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、グアナコから生じた抗体から得ることができる。ラクダ科に加え、他の種も本質的に軽鎖を欠く重鎖抗体を産生することができ、そのようなVHHを本発明の範囲に含める。
【0068】
本発明の、かつ当業者に知られているVHHは、WO94/04678号に記載されている通り、ラクダ科に由来するものなど、本質的に軽鎖を欠く免疫グロブリンに由来する重鎖可変ドメインである(以後、VHHドメインまたはナノ体と称する)。VHH分子は、IgG分子の約10分の1である。これらは、単一ポリペプチドであり、極端なpHおよび温度条件に耐えて非常に安定している。さらに、これらは、プロテアーゼ作用に耐性であり、このことは従来の抗体にはない事例である。さらに、in vitroで発現したVHHは、収量が高く、適切に折りたたまれた機能的なVHHである。さらに、ラクダ科類で生じた抗体は、抗体ライブラリを用いて、またはラクダ科類以外の哺乳動物の免疫化(WO9749805号)によって、in vitroで生じた抗体により認識されるエピトープ以外のエピトープを認識する。そのようにして、抗TNF‐αのVHH類は、従来の抗体よりも効率よくTNF‐αと相互作用し、それによってTNF‐α受容体との相互作用をより効果的にブロックすることができる。
【0069】
本発明の、TNF‐αはあらゆる種から得られる。本発明に関連する種の例には、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ウシ、子ウシ、ラクダ、ラマ、サル、ロバ、モルモット、ニワトリ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマが含まれ、ヒトが好ましい。
【0070】
TNF‐αは、免疫応答を引き出すことが可能なTNF‐α断片でもある。TNF‐αは、完全長TNF‐αに対して生じた単一ドメイン抗体に結合し得るTNF‐α断片でもある。
【0071】
TNF‐αを標的とする単一ドメイン抗体は、10-6Mを超える親和性でTNF‐αに結合することができる単一ドメイン抗体を意味する。
【0072】
本発明の一実施形態は、単一ドメイン抗体が、TNF‐αを標的とするラクダ科VHHを含む抗TNFポリペプチドである。
【0073】
TNF‐αを標的とする抗TNFポリペプチドの1種または複数の単一ドメイン抗体は、同じ配列であってよい。あるいは、それらの全てが、同じ配列を持たなくてもよい。全てが同じ配列を持つわけではないが、同じ標的、その1種または複数の抗原を標的とする抗TNF‐α単一ドメイン抗体を含む抗TNFポリペプチドは本発明の範囲に属する。
【0074】
本発明の別の実施形態は、単一ドメイン抗体が、表1に示す配列番号1〜16および79〜84のいずれかの配列によって表される配列に相当する抗TNF‐αポリペプチドである。前記配列は、TNF‐αを標的とするラクダ科重鎖抗体(VHH)に由来する。
【0075】
さらに、本発明は、前記単一ドメイン抗体がTNF‐αを標的とするVHHであり、VHHがヒト様配列を有するクラスに属する、抗TNF‐αポリペプチドに関する。このクラスは、VHHが、カバット(Kabat)の番号付けにしたがって、たとえばL45など、位置45にグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、またはグルタミンからなる群のアミノ酸を含み、位置103にトリプトファンを含むことなどを特徴とする。本発明に記載した、ラクダ科単一ドメイン抗体の新規なクラス(表1、実施例1)は、位置103の疎水性残基トリプトファンと合わせて、FR2に疎水性残基を含む、VHH#2B(配列番号3)およびVHH#12B(配列番号14)によって表される。
【0076】
配列VHH#1A(配列番号1)、VHH#4B(配列番号12)、VHH#8‐29(配列番号81)、VHH#8‐41(配列番号82)、VHH#8‐42(配列番号83)、およびVHH#8‐44(配列番号84)(表1、実施例1)によって表されるラクダ科単一ドメイン抗体の別のヒト様クラスは、WO03035694号に記載されており、典型的には、ヒト起源のまたは他の種に由来する従来の抗体に見出された疎水性FR2残基を含むが、親水性におけるこの損失は位置103上の帯電したアルギニン残基によって補われ、この残基は二重鎖抗体のVH中に存在する保存トリプトファン残基に取って代わる。そのようにして、この2個のクラスに属するペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域に対して高いアミノ酸配列相同性を示し、前記ペプチドは、それによる望ましくない免疫応答の懸念なしに、さらにヒト化を行う負担もなくヒトに直接投与されるであろう。本発明は、前記ポリペプチドをコードし得る核酸にも関する。
【0077】
したがって、本発明の一態様は、それを必要とする患者に、抗TNF‐αポリペプチドを直接投与することを可能にし、その場合、単一ドメイン抗体は、VHHのヒト化クラスに属し、配列番号1、3、12、14、81、82、83、および84のいずれかによって表される配列を含む。
【0078】
本発明によって使用されるVHHのいずれも、従来のクラスまたはヒト様ラクダ科抗体クラスのものでよい。前記抗体は、TNF‐α全体、その断片、またはその相同配列の断片を標的とすることができる。これらのポリペプチドには、完全長ラクダ科抗体、すなわちFcおよびVHHドメイン、ヒトFcドメイン、またはVHH類それ自体、もしくは由来する断片を備えた重鎖ラクダ科抗体のキメラ異形抗体が含まれる。
【0079】
抗血清アルブミンVHH類は、担体蛋白質であると知られている従来の抗体よりも効果的な方式で血清アルブミンと相互に作用し得る。担体蛋白質として、血清アルブミンエピトープのいくつかは、結合した蛋白質、ペプチド、および小化合物が認識し難いかもしれない。VHH類は、陥凹部などの「異例な」または従来とは異なるエピトープに結合することが知られている(WO97/49805号)ので、そのようなVHH類の循環アルブミンに対する親和性は増大し得る。
【0080】
さらに、対象の1種または複数の血清蛋白質を標的とする1種または複数の単一ドメイン抗体を含む、本明細書に記載した抗TNFポリペプチドが、前記構築体の一部でない場合は、驚くべきことに、前記対象の循環中の半減期が、抗TNF‐α単一ドメイン抗体の半減期と比較して著しく長いという知見にも本発明は関する。そのようなポリペプチドの例を配列番号30〜43によって表5に表す。さらに、前記ポリペプチドは、マウス中で無傷のままでいられる高い安定性、極端なpHに対する耐性、高温安定性、高い標的親和性などと同じく、単一ドメイン抗体の好ましい特性を示すことが判明した。
【0081】
本発明の別の実施形態は、さらに、1種または複数の血清蛋白質を標的とする1種または複数の単一ドメイン抗体を含む抗TNF‐αポリペプチドであり、前記抗TNF‐αポリペプチドは配列番号30〜43(表5)によって表されるいずれかの配列に相当する配列を含む。
【0082】
本発明の別の実施形態は、抗血清蛋白質単一ドメイン抗体が、表5に示す配列番号26〜29および85〜97のいずれかの配列によって表される配列に相当する抗TNF‐αポリペプチドである。
【0083】
血清蛋白質は、対象の血清中に見られるどんな適当な蛋白質でもよい。本発明の一態様では、血清蛋白質は、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、サイロキシン結合蛋白質、トランスフェリン、またはフィブリノーゲンである。有効な治療に必要な半減期、および/または標的抗原の区画分けなど、所期の使用に依存してVHHのパートナーは、上記の血清蛋白質の1種を対象とすることができる。
【0084】
本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドの別の態様として、本発明はさらに、抗IFN‐γポリペプチド、抗TNF‐α受容体ポリペプチド、および抗IFN‐γ受容体ポリペプチドからなる群から選択した少なくとも1種のポリペプチドを含む。
【0085】
本発明の実施形態であるIFN‐γを標的とする単一ドメイン抗体は、表6に示す配列番号44〜72のいずれかの配列によって表される配列に相当する。
【0086】
本発明の一態様によれば、単一ドメイン抗体は、TNF‐α受容体を標的とする。前記単一ドメイン抗体は、ラクダ科VHHであってよい。
【0087】
本発明の一態様によれば、単一ドメイン抗体は、IFN‐γ受容体を標的とする。前記単一ドメイン抗体は、ラクダ科VHHであってよい。
【0088】
本発明の別の態様は、患者に、抗IFN‐γポリペプチド、抗TNF‐α受容体ポリペプチド、および抗IFN‐γ受容体ポリペプチドからなる群から選択した少なくとも1種のポリペプチドをさらに含む抗TNF‐αポリペプチドの有効量を投与することを含む、自己免疫疾患または本明細書に述べた状態の治療方法であり、そのようなポリペプチドは以下に記述するように互いに接合されている。
【0089】
そのような多種特異的構築体は、炎症治療化合物として一種特異的構築体よりも作用強度が改善されているであろう。
【0090】
本発明の一態様は、本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチド、ならびに抗IFN‐γポリペプチド、抗TNF‐α受容体ポリペプチド、および抗IFN‐γ受容体ポリペプチドからなる群から選択した少なくとも1種のポリペプチドを含み、対象に同時投与、分別投与、または逐次投与するための組成物である。
【0091】
本発明の一態様は、有効量の抗TNF‐αポリペプチド、ならびに抗IFN‐γポリペプチド、抗TNF‐α受容体ポリペプチド、および抗IFN‐γ受容体ポリペプチドからなる群から選択した少なくとも1種のポリペプチドを個体に同時投与、分別投与、または逐次投与することを含む、自己免疫疾患の治療方法である。
【0092】
本発明の別の態様は、抗TNF‐αポリペプチド、ならびに抗IFN‐γポリペプチド、抗TNF‐α受容体ポリペプチド、および抗IFN‐γ受容体ポリペプチドからなる群から選択した少なくとも1種のポリペプチドを含み、対象に同時投与、分別投与、または逐次投与するためのキットである。本発明にしたがってキットを使用できることは本発明の態様である。本明細書で述べた疾患の治療にキットを使用することができることは本発明の態様である。
【0093】
同時投与は、たとえば、ポリペプチド類、または前記ポリペプチド類を含む組成物の混合物として、ポリペプチド類を対象に同時に投与することを意味する。例には、それだけには限らないが、静脈内投与液、錠剤、液体、局所クリームなどが含まれ、各調製物には当該ポリペプチド類が含まれる。
【0094】
分別投与は、ポリペプチド類を対象に同時にまたは実質上同時に投与することを意味する。ポリペプチド類は、分離した非混合型調製物としてキットに含まれる。たとえば、異なるポリペプチド類が、個々の錠剤としてキットに含まれていてよい。錠剤類は、両錠剤を同時に、または一方の錠剤の直後に他方の錠剤を嚥下することによって対象に投与されてよい。
【0095】
逐次投与は、ポリペプチド類を対象に逐次投与することを意味する。ポリペプチド類は、分離した非混合型調製物としてキットに含まれる。投与間相互に時差がある。たとえば、一方の成分を投与してから、最長336、312、288、264、240、216、192、168、144、120、96、72、48、24、20、16、12、8、4、2、1、または0.5時間後に他方のポリペプチドが投与されるであろう。
【0096】
逐次投与では、1種のポリペプチドは、別のポリペプチドの投与前かつ/または後に1回で、または様々な用量で任意の回数で投与することができる。逐次投与は、同時投与または逐次投与と組み合わせることができる。
【0097】
以下に記載した抗TNF‐αポリペプチドの医療用途は、本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチド、ならびに抗IFN‐γポリペプチド、抗TNF‐α受容体ポリペプチド、および抗IFN‐γ受容体ポリペプチドからなる群から選択した少なくとも1種のポリペプチドを含み、対象に同時投与、分別投与、または逐次投与するための組成物にも適応され、この組成物は先に本明細書に開示されている。
【0098】
本発明の一態様によれば、抗IFN‐γポリペプチド、抗TNF‐α、IFN‐γを標的とする単一ドメイン抗体が挙げられる。前記単一ドメイン抗体は、ラクダ科VHHであってよい。
【0099】
IFN‐γを標的とする単一ドメイン抗体が、表6に示す配列番号44〜72のいずれかの配列によって表される配列に相当することは本発明の実施形態である。
【0100】
本発明の一態様によれば、抗TNF‐α、TNF‐α受容体を標的とする単一ドメイン抗体が挙げられる。前記単一ドメイン抗体は、ラクダ科VHHであってよい。
【0101】
本発明の一態様によれば、抗IFN‐γ受容体ポリペプチド、抗TNF‐α、IFN‐γ受容体を標的とする単一ドメイン抗体が挙げられる。前記単一ドメイン抗体は、ラクダ科VHHであってよい。
【0102】
本発明の別の実施形態は、TNF‐αを標的とする単一ドメイン抗体数が2個以上である、本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドである。そのような多価抗TNF‐αポリペプチドは、その一価の対照物と比較して予想よりもはるかに高い阻害特性を示しつつも、標的に対する機能的親和性が異例に高いという利点を持つ。
【0103】
多価抗TNF‐αポリペプチドの機能的親和性は、一価の親抗TNF‐αポリペプチドよりも桁違いに高い。本発明者らは、これらの多価ポリペプチドの機能的親和性が、二価抗体および多価抗体に関して従来技術で報告されている機能的親和性よりもはるかに高いことを見出している。驚くべきことに、互いに直接結合し(配列番号77および78)、または短いリンカー配列を介して結合する本発明の抗TNF‐αポリペプチド類は、従来の多価4鎖抗体で理論上予想される高さの機能的親和性を示す。
【0104】
本発明者らは、そのように大きく増大した機能活性が、直接結合アッセイまたは機能アッセイ、たとえば、細胞毒性アッセイにおいて、多ドメインおよび多量体蛋白質から構成した抗原を用いて好ましく検出できることを見出している。
【0105】
本発明の別の実施形態は、TNF‐αを標的とする単一ドメイン抗体数が2個以上であり、前記抗TNF‐αポリペプチドが配列番号73〜76によって表されるいずれかに相当する配列も含む、本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドである。
【0106】
本明細書で開示する単一ドメイン抗体は、当技術分野で公知の方法、または将来のいかなる方法を用いて、1以上の単一ドメイン抗体を結合させることにより形成することができる。たとえば、Blattlerら、Biochemistry 24、1517‐1524、EP294703号に記載されたものなど、有機誘導体化剤を用いてアミノ酸残基類を反応させることにより、単一ドメイン抗体を化学架橋的に融合することができる。あるいは、単一ドメイン抗体は、DNAレベルで遺伝子的に融合させることができ、すなわち、1種または複数の抗標的単一ドメイン抗体、ならびに1種または複数の抗血清蛋白質単一ドメイン抗体を含む完全ポリペプチド構築体をコードするポリヌクレオチド構築体が形成される。二価または多価VHHポリペプチド構築体を産生する方法は、PCT特許出願WO96/34103号に開示されている。多数の単一ドメイン抗体類を接合する一方式は、単一のドメイン抗体コード配列を直接またはペプチドリンカーを介して結合することによる遺伝子的手順である。たとえば、第1の単一ドメイン抗体のC末端を次の単一ドメイン抗体N末端と結合することができる。この結合方式は、トリ、テトラなどの機能構築体の構築・産生に向けて追加の単一ドメイン抗体を結合するために伸展することができる。
【0107】
本発明の一態様によれば、単一ドメイン抗体類は、リンカーを使用せずに互いに直接結合される。2個のサブユニットの結合活性を保持するためにリンカー配列が必要とされる嵩高な従来の抗体類の接合に反して、本発明のポリペプチド類は、直接結合(配列番号77および78)し、それによってヒト対象に投与したとき、リンカー配列が不安定なことによってサブユニットが解離される抗原性など、リンカー配列の潜在的な問題を回避することができる。
【0108】
本発明の別の態様によれば、単一ドメイン抗体類は、ペプチドリンカー配列を介して互いに結合される。そのようなリンカー配列は、自然に存在する配列でも、自然に存在しない配列でもよい。リンカー配列は、抗TNF‐αポリペプチドを投与する対象で免疫原性ではないと予想される。リンカー配列は、多価抗TNF‐αポリペプチドに十分な融通性を提供すると同時に、蛋白質分解には耐性であり得る。リンカー配列の非限定的な例は、WO96/34103号に記載されるVHHヒンジ領域から得ることができるものである。
【0109】
本発明の別の態様によれば、2種を超える単一ドメイン抗体を含む多価単一ドメイン抗体類を互いに直接またはリンカー配列を介して結合することができる。そのような構築体は、従来の抗体では産生が困難であり、かつ大きいサブユニットに立体的に妨害されるために一価の構築体と比較して本発明のVHH類で見られるように機能性が著しく増大するのではなく、消失しまたは著しく低減される(そのような多価VHH構築体のゲルろ過分析を示す図12を参照)。
【0110】
本明細書で開示したポリペプチド構築体は、当業者が当技術分野で公知の方法、または将来のいかなる方法にしたがって製造することができる。たとえば、ラクダを免疫化し、それからハイブリドーマを得ることによって、または当技術分野で公知の分子生物技術を使用し単一ドメイン抗体ライブラリをクローニングし、続いてファージ提示法を使用して選択することによるなど、当技術分野で公知の方法を使用してVHHを得ることができる。
【0111】
本発明の態様によれば、抗TNF‐αポリペプチドは、完全長抗TNF‐αポリペプチドの相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、抗TNF‐αポリペプチドは、完全長抗TNF‐αポリペプチドの機能部分でよい。本発明の別の態様によれば、抗TNF‐αポリペプチドは、完全長抗TNF‐αポリペプチドの相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、抗TNF‐αポリペプチドは、完全長抗TNF‐αポリペプチドの相同配列機能部分でよい。本発明の態様によれば、抗TNF‐αポリペプチドには、抗TNF‐αポリペプチド配列を含めてよい。
【0112】
本発明の態様によれば、抗TNF‐αポリペプチドを形成するために使用する単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体(たとえばVHH)またはその相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用する単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の機能部分でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用する単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用する単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の相同配列機能部分でよい。
【0113】
本明細書では、本発明の相同配列には、1種または複数のアミノ酸の添加、欠失、または置換を含めてよく、それは本発明のポリペプチドの機能特性を実質上変更しない。アミノ酸の欠失または置換数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、または70アミノ酸までであることが好ましい。
【0114】
本発明による相同配列は、アミノ酸の付加、欠失、または置換によって変更されたポリペプチドでよく、未変更ポリペプチドと比較して前記変更によって機能特性は実質上変化しない。
【0115】
本発明による相同配列は、アミノ酸の付加、欠失、または置換によって変更されたポリペプチドでよく、未変更ポリペプチドと比較して前記変更によって機能特性は実質上変化しない。
【0116】
本発明による相同配列は、他のラクダ科種、たとえば、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、グアナコなどに存在する配列でよい。
【0117】
相同配列が、配列相同性を示す場合、それは、親配列と高い配列相同性(70%を超え、75%、80%、85%、90%、95%、または98%の配列相同性)を示す配列を意味し、親配列に類似する特性、すなわち親和性を特徴とすることが好ましく、前記相同性は公知の方法を使用して算出する。
【0118】
あるいは、相同配列は、下式:
SerをSer、Thr、Gly、およびAsnによって置換、
ArgをArg、His、Gln、Lys、およびGluの1個によって置換、
LeuをLeu、Ile、Phe、Tyr、Met、およびValの1個によって置換、
ProをPro、Gly、Ala、およびThrの1個によって置換、
ThrをThr、Pro、Ser、Ala、Gly、His、およびGlnの1個によって置換、
AlaをAla、Gly、Thr、およびProの1個によって置換、
ValをVal、Met、Tyr、Phe、Ile、およびLeuの1個によって置換、
GlyをGly、Ala、Thr、Pro、およびSerの1個によって置換、
IleをIle、Met、Tyr、Phe、Val、およびLeuの1個によって置換、
PheをPhe、Trp、Met、Tyr、Ile、Val、およびLeuの1個によって置換、
TyrをTyr、Trp、Met、Phe、Ile、Val、およびLeuの1個によって置換、
HisをHis、Glu、Lys、Gln、Thr、およびArgの1個によって置換、
GlnをGln、Glu、Lys、Asn、His、Thr、およびArgの1個によって置換、
AsnをAsn、Glu、Asp、Gln、およびSerの1個によって置換、
LysをLys、Glu、Gln、His、およびArgの1個によって置換、
AspをAsp、Glu、およびAsnの1個によって置換、
GluをGlu、Asp、Lys、Asn、Gln、His、およびArgの1個によって置換、
MetをMet、Phe、Ile、Val、Leu、およびTyrの1個によって置換
にしたがって親配列の多数の位置での置換が可能になったことから生じたどんなアミノ酸配列であってもよい。
【0119】
本発明による相同ヌクレオチド配列は、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下で(Sambrookら、Molecular Cloning、実験マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory press、米国ニューヨーク州によって記載される条件など)、特許配列(patent sequence)をコードすることができるヌクレオチド配列の逆相補鎖とハイブリッド形成することが可能な、50を超え、100、200、300、400、500、600、800、または1000ヌクレオチドのヌクレオチド配列をさしていてよい。
【0120】
本明細書では、機能部分は、当該物との相互作用を1×10-6M以上の親和性で維持するのに十分な径の単一ドメイン抗体の配列をさす。
【0121】
あるいは、機能部分は、完全なアミノ酸配列に部分的な欠失を含むが、依然として標的との結合および相互作用に必要な1個または複数の結合部位、および1個または複数の蛋白質ドメインを保持する。
【0122】
本明細書では、機能部分は、完全配列の100%未満(たとえば、99%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%など)をさすが、5個以上のアミノ酸または15個以上のヌクレオチドを含む。
【0123】
TNF‐α、TNF‐α受容体、血清蛋白質(たとえば、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、サイロキシン結合蛋白質、トランスフェリン、フィブリノーゲン)およびIFN‐γ、IFN‐γ受容体などの本明細書に記載した標的は前記標的断片であってよい。したがって、標的は、免疫応答を引き出すことができる前記標的の断片であってもよい。標的は、完全長標的に対して生じた単一ドメイン抗体に結合できる前記標的断片であってもよい。
【0124】
本明細書で使用される断片は、100%未満の配列(たとえば、99%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%など)をさすが、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個、またはそれ以上のアミノ酸を含む。断片は、当該物との相互作用を1×10-6M以上の親和性で維持するのに十分な長さである。
【0125】
本明細書で使用される断片は、野生型標的に対して生じた単一ドメイン抗体に結合するための標的の能力を実質上変更しない1個または複数のアミノ酸の任意選択による挿入、欠失、および置換もさす。アミノ酸の挿入、欠失、または置換数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、または70個までのアミノ酸であることが好ましい。
【0126】
本発明の相同配列には、ヒト化されている抗TNF‐αポリペプチドを含めてよい。VHHの新規なクラスの抗体をヒト化することは、投与に際してヒト個体における望ましくない免疫反応の可能性をさらに低減するはずである。
【0127】
本発明の一実施形態は、抗体可変ドメイン(VHH)のアミノ酸残基を定量することによって、ラマ抗体を基礎とする改変ポリペプチドを調製する方法であって、抗原に対するドメインの本来の親和性を低減させることなく、他方で非相同種に関するその免疫原性を低減して改変できる方法、同定した残基に変更を加えた、非相同種への投与に有用であるVHHの使用、およびそのように改変したVHHに関する。
【0128】
より詳しくは、本発明は、ヒトに投与するために改変した改変VHHの調製、得られたVHH自体、およびヒト疾患の治療におけるそのような「ヒト化」VHHの使用に関する。ヒト化は、ヒト患者での投与に際して免疫原性が軽微または存在しないような変異を意味する。本発明にしたがってポリペプチドをヒト化することは、1個または複数のラクダ科アミノ酸を、ヒトコンセンサス配列中に見られるそのヒト対照物によって置換するステップを含むが、ポリペプチドがその通常の特性を失うことなしに、すなわち、ヒト化が得られたポリペプチドの抗原結合能力が重大な影響を受けることはない。そのような方法は、当業者によって知られている。
【0129】
ラクダ科単一ドメイン抗体のヒト化には、単一ポリペプチド鎖中に一定量のアミノ酸の導入と突然変異誘発が必要である。これはscFv、Fab、(Fab)2、およびIgGのヒト化とは対照的であり、それには2本の鎖の軽鎖および重鎖にアミノ酸変化を導入し、両鎖の組立て体を保存する必要がある。
【0130】
非制限的な実施例として、FR2にヒト様残基を含むVHH#12Bポリペプチドをヒト化した。ヒト化には、FR1内の位置1および5で残基の突然変異誘発が必要であり、その突然変異はレパートリークローニングに使用されラマ配列では自然には生じないプライマーによって導入された。そうした残基の突然変異誘発によって結合活性および/または阻害活性の喪失がもたらされることはなかった。ヒト化には、FR3内の位置74、76、83、84、93の残基の突然変異誘発も必要であった。そうした残基の突然変異誘発が、結合活性および/または阻害活性の劇的な喪失をもたらすことはなかった(図4参照)。したがって、FR1およびFR3の突然変異の組合せによって結合活性および/または阻害活性に影響が及ぼされることはなかった(図5)。
【0131】
ヒト化には、FR4内の位置108の残基の突然変異誘発も必要であった。Q108Lの突然変異誘発は、大腸菌での産生レベルを低下させた。位置108は、ラクダ類VHH中で溶媒に曝露されているが、ヒト抗体ではこの位置はVH‐VL界面で覆い隠されている(Spinelli、1996、Nieba、1997)。単離したVHでは、位置108は溶媒に曝露されている。極性非帯電Glnに代えて非極性疎水性Leuを導入することは、分子本来の折りたたみ/安定性に対して劇的な影響を及ぼしかねない。
【0132】
非制限的な実施例として、位置37、44、45、および47に親水特性を備えた正真正銘のラクダ類残基を含むVHH#3Eを代表するポリペプチドをヒト化した。位置44および45(E44GおよびR45L)でヒト疎水性残基によって親水性残基を交換しても、結合および/または阻害が影響を受けることはなかった。しかし、F37VおよびF47Wを導入した場合、結合活性および/または阻害活性の喪失が観察された。モデルデータによってCDR3ループ高次構造の統合性を保存するための必須残基37を確認し、それによって活性を確認した(図6参照)(番号付けは全てKabatによる)。
【0133】
配列番号3および14は、ヒトVHフレームワーク領域に対して90%を超えるアミノ酸配列相同性を示し、したがって前記VHHは、そこからの免疫応答を懸念することなく、追加のヒト化の負担もなく患者に直接投与されるであろう。したがって、本発明の一態様によって、それを必要とする患者に配列番号3および14、その相同配列、またはその相同配列の機能部分を含むポリペプチドを直接投与することが可能になる。
【0134】
本発明の一実施形態は、以下の残基:
FR1の位置1、5、28、および30、
FR2内の位置44および45にある正真正銘のアミノ酸、
FR3の残基74、75、76、83、84、93、および94、および
FR4内の位置103、104、108および111
のどれかを単独でまたは組み合わせて置換するステップを含むVHHのヒト化の方法であり、番号付けはカバットの番号付けによる。
【0135】
本発明の一実施形態は、炎症過程に関連付けられる疾患の症状の治療、予防、および/または緩和に使用される抗TNF‐αポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードし得る核酸である。TNF‐αは、炎症過程に関与し、TNF‐α作用をブロックすることによって抗炎症作用を得ることができ、これはある種の病態、たとえば、クローン病などにおいて非常に望ましい。本発明者らの実施例によって、TNF‐αに結合し、さらにそのTNF‐α受容体への結合をブロックする本発明によるVHHを実証する。
【0136】
本発明の抗TNF‐αポリペプチドは、アジソン病(副腎)、耳自己免疫疾患(耳)、眼自己免疫疾患(眼)、自己免疫性肝炎(肝臓)、自己免疫性耳下腺炎(耳下腺)、クローン病(腸)、I型糖尿病(膵臓)、精巣上体炎(精巣上体)、糸球体腎炎(腎臓)、グレーブス病(甲状腺)、ギランバレー症候群(神経細胞)、橋本病(甲状腺)、溶血性貧血(赤血球)、全身性エリテマトーデス(多数組織)、男性不妊症(精子)、多発性硬化症(神経細胞)、重症筋無力症(神経筋接合部)、天疱瘡(主として皮膚)、乾癬(皮膚)、リューマチ熱(心臓および関節)、リューマチ性関節炎(関節ライニング)、類肉腫症(多数組織および臓器)、強皮症(皮膚および結合組織)、シェーグレン症候群(外分泌腺、および他の組織)、脊椎関節症(軸骨格および他の組織)、甲状腺炎(甲状腺)、血管炎(血管)などの自己免疫疾患に適用できる。括弧内は、その疾患によって作用を受ける組織である。自己免疫疾患のこの一覧は、包括ではなく例示を目的とする。
【0137】
本発明の抗TNF‐αポリペプチドが適用可能な自己免疫状態には、たとえば、エイズ、アトピー性アレルギー、気管支喘息、湿疹、ハンセン病、統合失調症、遺伝性機能低下、組織および臓器移植、慢性疲労症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、心筋梗塞、脳梗塞、自閉症、てんかん、アルサス症候群、アナフィラキシ、アルコールおよび薬物中毒が含まれる。上記の確認した自己免疫状態では、罹患組織は主要標的であり、別の場合には、これは二次的標的である。これらの状態は、部分的に、またはほとんど自己免疫症候群である。したがって、それらの治療には、本明細書に開示したのと同じ方法または同方法の態様を、ときには他の方法と組み合わせてを使用することができる。
【0138】
本発明の別の実施形態は、炎症過程に関連付けられる疾患治療用薬剤を調製するための本発明による抗TNF‐αポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードし得る核酸の使用である。疾患の例には、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症が含まれる。
【0139】
本発明によるポリペプチドおよび核酸は、静脈内など、従来の経路によって対象に投与することができる。しかし、本発明の抗TNF‐αポリペプチドの特殊な特性は、これらが組織膜および/または腫瘍などの障壁を通り抜けること、そこで局所的に作用すること、およびこれらが胃内などの極端な環境に耐えるのに十分安定していることである。したがって、本発明の別の態様は、抗TNF‐αポリペプチドの送達に関する。
【0140】
本発明による対象は、治療用ポリペプチドによって治療することができるいかなる哺乳動物でもよい。
【0141】
本発明の抗TNF‐αポリペプチドの経口送達によって、そのような分子が活性形で疾患に罹患している大腸の局所部位に提供される。これらの部位は、重度の炎症状態であり、TNF‐α産生細胞が含まれ得る。TNF‐αに結合する本発明の抗TNF‐αポリペプチドは、TNF‐αを局所的に無力化することができ、身体全体にわたって分配されるのを回避し、それによって負の副作用を制限する。遺伝的に改変した、ミクロコックスラクチス(Micrococcus lactis)などの微生物が、抗体またはその機能部分を分泌することができる。抗体またはその機能部分を腸において局所的に産生し、送達するためのビヒクルとしてそのような改変した微生物を使用することができる。抗TNF‐αポリペプチドを産生する株を使用することによって、炎症性腸症候群を治療することができるはずである。
【0142】
本発明の別の態様は、WO00/23471号に記載されているものなどのベクターを使用し、ラクトコックス類のようなグラム陽性宿主生物など、非侵襲性細菌上での表面発現またはこの細菌から分泌を利用することによって抗TNFポリペプチドを送達することを含む。
【0143】
本発明の一実施形態は、不活化されることなく、胃環境を通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する際に使用するための本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドである。
【0144】
疾患の例は、それだけには限らないが、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症を含む炎症を引き起こすもの全てである。当業者によって知られているように、ひとたび前記ポリペプチド構築体を所有したならば、製剤技術を正しい部位で最高量のポリペプチドを放出するために適用することができる(胃、大腸など)。この送達方法は、その標的が消化器系内に位置する疾患症状の治療、予防、および/または緩和に重要である。
【0145】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを経口投与することによって、不活化されることなく、胃環境を通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0146】
本発明の別の実施形態は、不活化されることなく、胃環境を通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドの使用である。
【0147】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを経口投与することによって、前記物質が不活化されることなく、消化器系にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0148】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを経口投与することによって、その物質が不活化されることなく、対象の血流にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0149】
本発明の別の実施形態は、膣腔および/または直腸腔に送達したTNF‐α調節物質によって調節が可能な症状または疾患を治療し、予防し、かつ/または緩和する際に使用するための本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドである。
【0150】
疾患の例は、それだけには限らないが、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症を含む炎症を引き起こすもの全てである。非制限的な例では、本発明による製剤は、本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドをゲル、クリーム、座薬、フィルムの形で、またはスポンジの形で、または時間の経過につれて活性成分を静かに放出する膣リングとして含む(そのような製剤は、EP707473号、EP684814号、US5629001号に記載されている)。
【0151】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを経膣および/または経直腸投与することによって、膣腔および/または直腸腔に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0152】
本発明の別の実施形態は、膣腔および/または直腸腔に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドの使用である。
【0153】
本発明の態様は、対象の膣腔および/または直腸腔に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを投与することによって、前記物質が不活化されることなく、膣腔および/または直腸腔にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0154】
本発明の態様は、対象の膣腔および/または直腸腔に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを投与することによって、前記物質が不活化されることなく、対象の血流にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0155】
本発明の別の実施形態は、鼻、上気道、および/または肺に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するために使用される本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドである。
【0156】
疾患の例は、それだけには限らないが、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症を含む炎症を引き起こすもの全てである。非制限的な例では、本発明による製剤は、鼻内スプレー(たとえばエアロゾル)または吸入剤の形をした本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを含む。ポリペプチド構築体は小さいので、治療用IgG分子よりもはるかに効果的にその標的に到達することができる。
【0157】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを口または鼻を通して吸入投与することよって、上気道および肺に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0158】
本発明の別の実施形態は、鼻、上気道、および/または肺に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための、本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドの使用であり、前記ポリペプチドは不活化されることがない。
【0159】
本発明の態様は、対象の鼻、上気道、および/または肺に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを投与することによって不活性化されることなく、鼻、上気道、および肺にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0160】
本発明の態様は、対象の鼻、上気道、および/または肺に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを投与することによって不活性化されることなく、対象の血流にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0161】
本発明の一実施形態は、腸粘膜に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患であって、腸粘膜透過性を上昇させる前記疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するために使用される本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドである。その小さい径のために、本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドは、腸粘膜透過性の上昇を引き起こす疾患、たとえば、クローン病を患う対象で腸粘膜を通過し、より効果的に血流に到達することができる。
【0162】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを経口投与することによって、腸粘膜に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患であって、腸粘膜透過性を上昇させる前記疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0163】
この工程は、本発明の追加の態様‐能動輸送担体の使用によってよりさらに強化することができる。本発明のこの態様では、腸壁を通って血流への輸送を強化する担体にVHHを融合する。非制限的な例では、この「担体」は、治療VHHに融合される第2VHHである。そのような融合構築体を当技術分野で公知の方法を使用して作製する。「担体」VHHは、壁を通る能動輸送を誘発する腸壁上の受容体に特異的に結合する。
【0164】
本発明の別の実施形態は、腸粘膜に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患であって、腸粘膜透過性を上昇させる前記疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドの使用である。
【0165】
本発明の態様は、対象に本発明の抗TNF‐αポリペプチドを経口投与することによって、不活化されることなく、腸粘膜にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0166】
本発明の態様は、対象に本発明の抗TNF‐αポリペプチドを経口投与することによって、不活化されることなく、対象の血流にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0167】
この工程は、本発明の追加の態様‐能動輸送担体の使用によって、よりさらに強化することができる。本発明のこの態様では、本明細書に記載した抗TNF‐αポリペプチドを、腸壁を通って血流への輸送を強化する担体に融合する。非制限的な例では、この「担体」は前記ポリペプチドに融合されるVHHである。そのような融合構築体を当技術分野で公知の方法を使用して作製する。「担体」VHHは、壁を通る能動輸送を誘発する腸壁上の受容体に特異的に結合する。
【0168】
本発明の一実施形態は、舌下組織を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するために使用される本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドである。
【0169】
疾患の例は、それだけには限らないが、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症を含む炎症を引き起こすもの全てである。本明細書で開示した前記ポリペプチド構築体製剤、たとえば、錠剤、スプレー、滴剤は舌下に置かれ、粘膜を通って舌下の毛細管網に吸収される。
【0170】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを舌下投与することによって、舌下組織を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0171】
本発明の別の実施形態は、舌下組織を通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための、本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドの使用である。
【0172】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを舌下投与することによって、不活化されることなく、舌下組織にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0173】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを経口投与することによって、不活化されることなく、対象の血流にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0174】
本発明の一実施形態は、皮膚を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するために使用される本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドである。
【0175】
疾患の例は、それだけには限らないが、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症を含む炎症を引き起こすもの全てである。前記ポリペプチド構築体製剤、たとえば、クリーム、フィルム、スプレー、滴剤、パッチは、皮膚上に置かれ、浸透する。
【0176】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを局所投与することによって、皮膚を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0177】
本発明の別の実施形態は、皮膚を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤を調製するための本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドの使用である。
【0178】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを局所投与することによって、不活化されることなく、皮膚にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0179】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを局所投与することによって、対象の血流にTNF‐α調節物質を送達する方法である。
【0180】
本発明の別の実施形態では、抗TNF‐αポリペプチドは、さらに前記抗TNF‐αポリペプチドを肺胞腔から血液に輸送するための能動輸送担体として作用する担体単一ドメイン抗体(たとえばVHH)を含む。
【0181】
さらに担体を含む抗TNF‐αポリペプチドは、粘膜表面(気管支上皮細胞)に存在する受容体に特異的に結合し、肺胞腔から血液にポリペプチドを能動輸送する。担体単一ドメイン抗体は、ポリペプチド構築体に融合させることができる。そのような融合構築体は、当技術分野で公知の方法を使用して製造することができ、本明細書に記載されている。「担体」単一ドメイン抗体は、表面を通り抜ける能動輸送を誘発する粘膜表面上の受容体に特異的に結合する。
【0182】
本発明の別の態様は、どの単一ドメイン抗体(たとえばVHH)が経鼻投与直後に血流中に能動輸送されるかを判定する方法である。同様に、未処置のまたは免疫VHHファージライブラリを経鼻投与することができ、投与後の様々な時点後に、血液または臓器を単離して血流に能動輸送されているファージをレスキューすることができる。肺胞腔から血流に能動輸送するための受容体の非限定的な例は、Fc受容体N(FcRn)である。本発明の一態様には、本方法によって同定されたVHH分子が含まれる。次いで、経鼻投与直後に、血流中の対応する標的に治療VHHを送達するための担体VHHとして、そのようなVHHを使用することができる。
【0183】
本発明の一態様では、ポリペプチドとTNF‐αの結合を調節する作用薬をスクリーニングするために、本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドを使用することができる。結合または前記ポリペプチドの置換のみを測定するアッセイで作用薬を同定した場合、作用薬を機能試験にかけて、それらがin vivoで抗原の作用を調節したかどうかを判定しなければならない。主として配列番号3に関するスクリーニングアッセイの例を以下に示すが、本明細書で開示したどんな抗TNF‐αポリペプチドも適切であろう。
【0184】
置換実験の一例では、増加性濃度の候補調節物質の存在または非存在下において、たとえば、標識されている配列番号3によって表されるポリペプチドを含む結合緩衝液中で、TNF‐αまたはその断片を発現しているファージまたは細胞を培養する。アッセイを確証し、較正するために、増加性濃度の未標識の前記ポリペプチドを使用して対照競合反応を実施することができる。培養後、細胞を十分に洗浄し、所与の標識に適切なように結合した標識ポリペプチドを測定する(たとえば、シンチレーションカウンティング、蛍光など)。候補調節物質の存在下で結合した標識ポリペプチドの量が少なくとも10%減少することは、候補調節物質による結合の置換を示す。1μM以下の濃度(未飽和ポリペプチド用量)で候補調節物質が標識ポリペプチドの50%を置換した場合は、このアッセイまたは本明細書に記載の他のアッセイで候補調節物質は特異的に結合すると見なされる。
【0185】
あるいは、結合または結合の置換は、表面プラスモン共鳴(SPR)によってモニタすることができる。表面プラスモン共鳴アッセイは、固定センサ付近の質量の変化によって2個の分子間結合を測定するための定量法として使用することができ、この変化は、たとえば、水相からセンサ上の膜に固定されたTNF‐αへの配列番号3によって表されるポリペプチドの結合または結合の喪失によって生じる。この質量の変化は、前記ポリペプチドまたは候補調節物質の注射後または除去後に共鳴単位対時間として測定し、Biacore Biosensor(Biacore AB)を使用し測定する。TNF‐αは、たとえば、Salamonらが記載した方法にしたがって、薄層脂質膜中のセンサチップ(たとえば、研究等級CM5チップ、Biacore AB)上に固定することができる(Salamonら、1996、Biophys J.71:283‐294、Salamonら、2001、Biophys.J.80:1557‐1567、Salamonら、1999、Trends Biochem.Sci.24:213‐219、その各々の全体を参照により本明細書に組み込む)。Sarrioらは、チップ上の脂質層に固定したGPCRA(1)アデノシン受容体に結合するリガンドを検出するためにSPRが使用できることを実証した(Sarrioら、2000、Mol.Cell.Biol.20:5164‐5174、参照により本明細書に組み込む)。SPRアッセイでの配列番号3のTNF‐αへの結合条件は、Sarrioらが報告した条件を出発点として使用し、当業者が微調整することができる。
【0186】
SPRは、少なくとも2つの方式で結合調節物質をアッセイすることができる。最初に、たとえば、固定TNF‐αに配列番号3によって表されるポリペプチドを予備結合させ、続いて候補調節物質を0.1nM〜1μMの範囲濃度で注射する。置換された結合ポリペプチドを定量でき、調節物質の結合を検出できるようになる。あるいは、膜結合型TNF‐αを候補調節物質で予備培養し、たとえば、配列番号3によって表されるポリペプチドで検証することができる。調節物質非存在下での前記ポリペプチドとTNF‐αの間の結合親和性と比較した、前記ポリペプチドと調節物質で予備培養したTNF‐αの間の結合親和性の差によって、調節物質の存在下での前記ポリペプチドの結合または置換を実証する。どちらのアッセイでも、候補調節物質の非存在下で結合している前記ポリペプチドの量に比べて、候補調節物質の存在下で結合している前記ポリペプチドの量が10%以上減少することは、候補調節物質がTNF‐αと前記ポリペプチドの相互作用を阻害することを示す。
【0187】
たとえば、配列番号3によって表されるポリペプチドとTNF‐αの結合の阻害を検出する別の方法は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を使用する。蛍光ドナー(D)の放出スペクトルが蛍光アクセプター(A)の励起スペクトルと重複する場合は、FRETは互いに近接(通常<100Aの間隔)する蛍光ドナー(D)と蛍光アクセプター(A)の間で生じる量子力学現象である。試験対象となる分子、たとえば、配列番号3によって表されるポリペプチドとTNF‐αは、ドナーおよびアクセプター蛍光体の相補対で標識する。ドナー蛍光体の励起と同時に発せられる蛍光は、TNF‐α:ポリペプチド相互作用によって密接に関連しているが、前記ポリペプチドとTNF‐αが結合していないときの励起波長に呼応して発せられる蛍光とは波長が異なり、各波長での発光強度を測定することによって結合分子対非結合分子を定量する。TNF‐αを標識するためのドナー蛍光体は当技術分野で周知である。特に重要なものは、青色FP(CFP、ドナー(D))および黄色FP(YFP、アクセプター(A))として知られているA.ビクトリアGFPの変異体である。一例として、YFP変異体は、TNF‐αとの融合蛋白質として製造することができる。融合体としてGFP変異体発現用ベクター(Clontech)および蛍光体標識試薬(Molecular Probes)が、当技術分野で公知である。蛍光標識ポリペプチドおよびYFP‐TNF‐αの混合物へ候補調節物質を添加することによってエネルギー転移が阻害される。この阻害は、たとえば、候補調節物質を含まない試料に比べてYFP蛍光が減少することにより実証されている。FRETを使用する、TNF‐α:ポリペプチド相互作用を検出するためのアッセイでは、候補調節物質を含む試料中で、アクセプターの波長で、候補調節物質を含まない試料に比べて蛍光発光強度が10%以上減少することは、候補調節物質がTNF‐α:ポリペプチド相互作用を阻害することを示す。
【0188】
本明細書で使用する試料は、臨床用、農業用、法医学用、研究用、または他の可能な試料に由来する臨床試料(たとえば、細胞部分、全血、血漿、血清、組織、細胞など)など、TNF‐αを含むどんな生体試料でもよい。臨床試料は、ヒト起源または動物起源でよい。分析した試料は、事実上固体でも液体でもよい。固体物質を使用する場合、まずこれらを適当な溶液に溶解することは明らかである。
【0189】
FRETの変異形態は、分子の相互作用をモニタするために蛍光消光法を使用する。相互作用対の1分子を蛍光体で標識し、その分子にぴったり寄せる場合は、他方の分子を蛍光体の蛍光を消光する分子で標識してよい。励起と直後の蛍光の変化は、蛍光体:クエンチャ対のタグ分子の会合の変化を示す。一般に、標識TNF‐αの蛍光の増加は、クエンチャを有する抗TNF‐αポリペプチドが転置されていることを示す。消光アッセイでは、候補調節物質を含まない試料に比べて、候補調節物質を含む試料での蛍光発光強度が10%以上上昇することは、候補調節物質がTNF‐α:抗TNF‐αポリペプチド相互作用を阻害することを示している。
【0190】
結合の定量には、表面プラスモン共鳴法およびFRET法の他に蛍光偏光測定法が有用である。蛍光タグ分子の蛍光偏光測定値は、回転相関時間または反転割合に依存する。TNF‐αが蛍光標識抗TNF‐αポリペプチドと会合することによって形成されたものなどの複合体は、未複合の標識ポリペプチドよりも偏光値が高い。候補阻害剤が、TNF‐αと前記ポリペプチドの相互作用を撹乱し、または阻害する場合、TNF‐α:抗TNF‐αポリペプチド相互作用候補阻害剤を包含させることによって、候補阻害剤を含まない混合物に比べて蛍光偏光が減少する。蛍光偏光法は、TNF‐α:抗TNF‐αポリペプチド複合体の形成を撹乱する小分子の同定に大変適している。候補調節物質を欠く試料での蛍光偏光に比べて、候補調節物質を含む試料で蛍光偏光が10%以上減少することは、候補調節物質がTNF‐α:抗TNF‐αポリペプチド相互作用を阻害することを示す。
【0191】
TNF‐α:抗TNF‐αポリペプチド相互作用をモニタリングするための別の代替法は、バイオセンサアッセイを使用する。当技術分野ではICSバイオセンサが記載されている(Australian Membrane Biotechnology Research Institute、Cornell B、Braach‐Maksvytis V、King L、Osman P、Raguse B、Wieczorek L、およびPace R.「イオンチャンネルスイッチを使用するバイオセンサ(A biosensor that uses ion‐channel switches)」Nature 1997、387、580)。この技術では、TNF‐αと抗TNF‐αポリペプチドの会合は、懸濁させた二分子膜中のグラマシジン(gramacidin)促進イオンチャンネルの閉鎖と関連し、それによってバイオセンサのアドミタンス(インピーダンスに類似)の測定可能な変化に関連する。この手法は、6桁のアドミタンス変化に対して直線的であり、小分子コンビナトリアルライブラリの大規模、高処理スクリーニング法に理想的に適合する。候補調節物質を欠く試料のアドミタンスに比べて、候補調節物質を含む試料中でのアドミタンスが10%以上変化(上昇または減少)することは、候補調節物質がTNF‐αと前記ポリペプチドの相互作用を阻害することを示す。TNF‐αと抗TNF‐αポリペプチドの相互作用を試験するアッセイでは、相互作用調節物質は、前記ポリペプチドと物理的に相互作用する蛋白質ドメインと、必ずしも直接相互作用しなくてもよい可能性があるということに留意することも重要である。調節物質は、相互作用部位から除去された部位で相互作用し、たとえば、TNF‐αで高次構造の変化を引き起こす可能性もある。それにもかかわらず、この方式で作用する調節物質(阻害物質または作用物質)は、TNF‐αとその受容体の結合を調節する作用薬として重要である。
【0192】
試料、たとえば、組織試料中の作用薬の存在を定量するために、記載した結合アッセイのどれかを使用することができ、その作用薬はTNF‐αに結合し、または、たとえば配列番号3によって表されるポリペプチドとTNF‐αの結合に作用する。そのようにするためには、試料の存在または非存在下でTNF‐αを前記ポリペプチドと反応させ、使用する結合アッセイに適切にポリペプチド結合を測定する。前記ポリペプチドの結合が10%以上減少することは、試料が前記ポリペプチドとTNF‐αの結合を調節する作用薬を含むことを示す。もちろん、上記の一般化した方法は、どんな本発明の抗TNF‐αポリペプチド、その相同配列、その機能部分、またはその相同配列機能部分と、TNF‐αまたはその断片との間の結合を変更する候補調節物質をスクリーニングするために容易に適用することができる。
【0193】
本発明の一実施形態は、本明細書で開示した方法によって同定した未知の作用薬である。
【0194】
本発明の一実施形態は、炎症過程に関連付けられる疾患の症状の治療、予防、および/または緩和に使用される、本明細書で開示した方法によって同定した未知の作用薬である。
【0195】
本発明の別の実施形態は、炎症過程に関連付けられる疾患の症状の治療、予防、および/または緩和に使用される、本明細書で開示した方法によって同定した未知の作用薬の使用である。
【0196】
疾患の例には、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症が含まれる。
【0197】
本発明にしたがって有用な細胞は、細菌細胞たとえば大腸菌など、酵母細胞たとえばS.セレビシエやP.パストリスなど、昆虫細胞、または哺乳動物細胞からなる群から選択されることが好ましい。
【0198】
本発明による有用な細胞は、その中に本発明の抗TNF‐α、その相同配列、その機能部分、または本発明によるその相同配列機能部分を含むポリペプチドをコードする核酸配列を導入することができ、その結果ポリペプチドが本明細書で定義した自然レベルまたは自然レベルを超えて発現するようなどんな細胞でもよい。細胞中で発現する本発明のポリペプチドは、本明細書で定義した正常なまたはほぼ正常な薬理を示すことが好ましい。細胞中で発現する本発明のポリペプチドは、表1に示したアミノ酸配列のどれか1つをコードできるヌクレオチド配列、または表1に示したアミノ酸配列に少なくとも70%相同するアミノ酸配列をコードできるヌクレオチド配列を含むことが最も好ましい。
【0199】
本発明の好ましい実施形態によれば、細胞は、COS7‐細胞、CHO細胞、LM(TK‐)細胞、NIH‐3T3細胞、HEK‐293細胞、K‐562細胞または1321N1星状細胞腫細胞からなる群から選択され、他の形質移入可能細胞系でもよい。
【0200】
一般に、「治療有効量」、「治療上有効用量」および「有効量」は、所望の結果、または結果を実現するのに必要な量を意味する(TNF‐α結合の調節、炎症の治療または予防)。当業者であれば、作用強度、したがって「有効量」は、本発明で使用されるTNF‐α結合を調節する様々な化合物に対して変化してよいことを理解するであろう。当業者ならば、容易に化合物の作用強度を評価できよう。
【0201】
本明細書では、用語「化合物」は、本発明の抗TNF‐αポリペプチド、組成物、前記ポリペプチドをコードし得る核酸、本明細書に記載のスクリーニング法によって同定した作用薬、または1種もしくは複数の誘導体化アミノ酸を含む前記ポリペプチドをさす。
【0202】
「薬剤として許容される」は、生物学的にせよ、そうでないにせよ、望ましくないことはない物質を意味し、すなわち、化合物に加えて、その物質を個体に投与することができ、どんな望ましくない生物学的作用を引き起こすことも、またはそれが含まれている薬剤組成物の他の成分のいずれかと有害な方式で相互作用することもないことを意味する。
【0203】
本明細書で開示した抗TNF‐αポリペプチドは、対象の状態の治療または予防に有用であり、薬剤有効量の化合物または組成物を投与することを含む。
【0204】
本発明の抗TNFポリペプチドは、対象でのリューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症に関連付けられる状態の治療または予防に有用であり、TNF‐αに結合する化合物または組成物の薬剤有効量を投与することを含む。
【0205】
本明細書に開示した抗TNF‐αポリペプチドは、対象の状態の治療または予防に有用であり、別のたとえばアスピリンなどとの配合化合物の薬剤有効量を投与することを含む。
【0206】
本明細書に開示した抗TNF‐αポリペプチドは、対象でのリューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症に関連付けられる状態の治療または予防に有用であり、別のたとえばアスピリンなどとの配合化合物の薬剤有効量を投与することを含む。
【0207】
本発明は、本発明の単一化合物を含む製剤の投与だけには限らない。1種を超える本発明の化合物を含む製剤をそれを必要とする患者に投与する併用治療を提供することは本発明の範囲に属する。
【0208】
TNF‐αが介在する状態には、それだけには限らないが、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、および多発性硬化症が含まれる。
【0209】
本発明で有用な化合物は、薬剤組成物として製剤し、選択した投与経路、すなわち、経口もしくは非経口、吸入による鼻腔内、静脈内、筋肉内、局所、または皮下経路に適合する様々な形態でヒト患者や家畜などの哺乳動物宿主に投与することができる。
【0210】
本発明の化合物は、遺伝子治療送達法を使用し投与することもできる。たとえば、米国特許第5,399,346号を参照されたい。その全体を参照により本明細書に組み込む。遺伝子治療送達法を使用し、本発明の化合物のための遺伝子を形質移入した主要な細胞に、さらに特定の臓器、組織、移植片、腫瘍、または細胞を標的とする組織特異的プロモータを形質移入することができる。
【0211】
したがって、本発明の化合物は、全身的に、たとえば、不活性希釈剤や吸収性食用可能な担体などの薬剤として許容されるビヒクルと組み合わせて経口的に投与することができる。これらの化合物は、ハードシェルまたはソフトシェルゼラチンカプセルに封入し、打錠し、または患者食の食物に直接組み込むことができる。経口治療投与には、活性化合物を1種または複数の賦形剤と組み合わせ、摂取可能な錠剤、頬腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェーハなどの形で使用することができる。そのような組成物や調製物には、活性化合物を少なくとも0.1%含めるべきである。もちろん、組成物および調製物の割合は、変化してよく、好都合に所与の単位投与形重量の約2〜約60%にすることができる。そのような治療上使用可能な組成物の活性化合物量は、有効な用量レベルが得られるような量である。
【0212】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル剤などには以下:トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびショ糖、果糖、乳糖、またはアスパルテームなどの甘味剤;ペパーミント、冬緑樹油、サクランボ香味料などの矯味剤を加えることができる。単位投与形をカプセル剤にする場合は、上の種類の物質の他に、これに植物油やポリエチレングリコールなどの液体担体を含めてもよい。コーティングとして、またそうでない場合は、固体単位投与形の物理的形状を改変するために様々な他の物質を含めてよい。たとえば、錠剤、丸剤、カプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラック、糖などによってコートすることができる。シロップまたはエリキシルには、活性化合物、甘味剤としてショ糖や果糖、保存料としてメチルやプロピルパラベン、着色料、およびサクランボ味やオレンジ味などの香味料を含めてもよい。もちろん、どんな単位投与形の調製に使用されるどんな物質も薬剤として許容され、使用量において実質上無毒であるべきである。さらに、活性化合物は、持続放出調製物やデバイスに組み込むこともできる。
【0213】
活性化合物は、注入または注射によって静脈内または腹腔内に投与することもできる。活性化合物またはその塩の溶液は、水で、場合によっては無害の界面活性剤と混合した水で調製することができる。分散剤もグリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、それらの混合物、および油類で調製することができる。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物には、微生物の繁殖を防止するための保存料が含まれる。
【0214】
注射または注入に適当な薬剤投与形には、滅菌注射溶液、もしくは注入溶液、または分散剤の適宜の調合に適合している活性成分を含む滅菌水溶液、分散剤、あるいは滅菌粉を含めてもよい。場合によってはリポソームに封入された活性成分を含む分散剤を含めてよい。すべての場合に、最良の剤形は、滅菌液体であり、製造および保存条件下で安定していなければならない。
【0215】
液体担体またはビヒクルは、たとえば、水、エタノール、ポリオール(polyol)(たとえば、グリセロール(glycerol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、液体ポリエチレングリコール(polyethylene glycols)など)、植物油、無毒グリセリルエステル(glyceryl esters)、それらの適当な混合物を含む溶媒または液体分散媒体であってよい。適切な流動性は、たとえば、リポソームの形成よって、分散剤の場合には必要な粒径を維持することによって、または界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン(parabens)、クロロブタノール(chlorobutanol)、フェノール(phenol)、ソルビン酸(sorbic acid)、チメロサール(thimerosal)などによって防止することができる。多くの場合、等張化剤、たとえば、糖類、緩衝液、または塩化ナトリウムを含めるのが好ましい。組成物に吸収遅延剤、たとえば、モノステアリン酸アルミニウム(aluminum monostearate)やゼラチンを使用することによって注射組成物を長時間にわたって吸収させることができる。
【0216】
滅菌注射溶液は、必要とされる先に列挙した他の成分のいくつかを含む適切な溶媒に必要量の活性化合物を組み込み、続いてろ過滅菌することによって調製する。滅菌注射溶液調製用の滅菌粉の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、これらの技術によって活性成分に予め滅菌ろ過した溶液中に存在する任意の追加の所望成分を加えた粉がもたらされる。
【0217】
局所投与には、すなわち、化合物が液体のときは、本化合物を純粋形で適用することができる。しかし、一般に、化合物は、皮膚に許容される担体と組み合わせて、皮膚に組成物または製剤として投与されることが望ましく、この化合物は固体または液体であってよい。
【0218】
使用可能な固体担体には、タルク、クレイ、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉化固体が含まれる。使用可能な液体担体には、水、ヒドロキシアルキル、グリコール、または水‐アルコール/グリコールブレンドが含まれ、その場合、本化合物は有効濃度で、場合によっては無毒の界面活性剤を用いて、溶解し、または分散させることができる。香料や追加の抗菌剤などのアジュバントを加えて、所与の使用に向けた特性を最適化することができる。得られた液体組成物は、吸着パッドから塗布し、絆創膏および他の包帯剤に含浸するために使用し、またはポンプ型もしくはエアロゾルスプレーを使用し患部上に噴霧することができる。
【0219】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪族アルコール、改変セルロース、改変ミネラル物質など、増粘剤を液体担体と共に使用して、使用者の皮膚に直接塗布するための塗布用ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成することもできる。
【0220】
皮膚に化合物を送達するために使用できる使用可能な外用組成物の例は、当技術分野で公知であり、たとえば、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)、およびWortzman(米国特許第4,820,508号)を参照されたい。
【0221】
使用可能な化合物の用量は、そのin vitro活性と動物モデルでのin vivo活性を比較することによって定量することができる。マウス、およびヒトまでの他の動物の有効な用量の推定方法は当技術分野で公知であり、たとえば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0222】
一般に、ローションなどの液体組成物中の化合物の濃度は、約0.1〜25wt%であり、約0.5〜10wt%が好ましい。ゲルなどの半固体もしくは固体組成物または粉での濃度は約0.1〜5wt%であり、約0.5〜2.5wt%が好ましい。
【0223】
治療での使用に必要な本化合物、活性塩、またはその誘導体の量は、選択した特定の塩のみならず、投与経路、治療対象の状態の性質、年齢、および患者の状態によっても変化し、最終的に担当する内科医または臨床医の裁量に任せられる。化合物の用量も標的とする細胞、腫瘍、組織、移植片、または臓器に応じて変わる。
【0224】
所望用量は、単一用量で、あるいは適切な間隔、たとえば、1日当たり2回、3回、4回以上の副用量で投与する分割用量として好都合に提供することができる。副用量自体、たとえば、散布器からの多数の吸入または複数の点眼の適用など、さらに大まかに間隔を空けて分けた数回の投与に分割することができる。
【0225】
治療計画には、長期の毎日治療を含めてもよい。「長期」は、少なくとも2週間、好ましくは数週間、数ヵ月、または数年の持続時間を意味する。この用量範囲で必要な変更は、本明細書に教示した定型の実験のみを使用して当業者が決定することができる。Remington's Pharmaceutical Sciences(Martin,E.W.編第4版)、Mack Publishing Co.、米国ペンシルバニア州Eastonを参照されたい。どんな合併症の場合にも、内科医個人も用量を調整することができる。
【0226】
本発明は、TNF‐α/TNF‐α受容体相互作用調節物質である作用薬を提供する。
【0227】
候補作用薬は、合成作用薬または作用薬混合物でよく、あるいは天然産物(たとえば植物抽出物や培養上清)でよい。本発明による候補作用薬には合成可能な小分子、天然抽出物、ペプチド、蛋白質、炭水化物、脂質などが含まれる。
【0228】
合成作用薬または天然作用薬の大きいライブラリから得た候補調節薬はスクリーニングすることができる。現在、糖類、ペプチド、および核酸ベース作用薬の、無作為ならびに目標を定めた合成に向けて多数の手段が使用されている。合成作用薬ライブラリは、Maybridge Chemical Co.(英国コーンウォール州Trevillet)、Comgenex(米国ニュージャージー州プリンストン)、Brandon Associates(米国ニューハンプシャー州Merrimack)、Microsource(米国コネティカット州New Milford)を含め、いくつかの企業から市販されている。希少な化学ライブラリは、Aldrich(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)から得ることができる。コンビナトリアルライブラリを利用、調製することもできる。あるいは、細菌、真菌、植物、および動物抽出物の形をした天然作用薬のライブラリを、たとえば、Pan Laboratories(米国ワシントン州Bothell)やMycoSearch(米国ノースカロライナ州)から得ることができ、または当技術分野で周知の方法によって容易に作製することができる。加えて、天然および合成のライブラリおよび作用薬は、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に改変される。
【0229】
有用な作用薬は、多数の化学クラス内に見出すことができる。有用な作用薬は、有機作用薬または小型有機作用薬であり得る。小型有機作用薬の分子量は、50を超え約2,500ダルトン未満までであり、約750未満が好ましく、約350ダルトン未満がより好ましい。クラスの例には、複素環、ペプチド、糖類、ステロイドなどが含まれる。作用薬は、効力、安定性、薬剤適合性などを強化するために改変することができる。作用薬の構造の同定を利用して、追加の作用薬を同定し、生成し、またはスクリーニングすることができる。たとえば、ペプチド作用薬を同定した場合、それらを様々な方式で改変して、その安定性を強化することができる。たとえば、D‐アミノ酸、詳細にはD‐アラニンなどの非天然アミノ酸を使用して、アミノ末端またはカルボキシル末端に機能付与、たとえば、アミノ基、アシル化、またはアルキル化、ならびにカルボキシル基、エステル化、またはアミド化などによって改変する。
【0230】
1次スクリーニングには、本発明による候補作用薬の使用可能な濃度は、約10mM〜約100μM以上(すなわち、1mM、10mM、100mM、1Mなど)である。1次スクリーニング濃度を上限として9種の濃度を追加して使用し、その場合、2次スクリーニング用にまたは濃度曲線を作成するために、1次スクリーニング濃度を半対数間隔(たとえば、さらに9つの濃度)で減少させることによって追加の濃度を決定する。
【0231】
(高処理スクリーニングキット)
本発明による高処理スクリーニングキットは、作用薬の検出を実施するための全ての必要な手段および培地を含み、この作用薬は好ましくは1μM〜1mMの濃度範囲のポリペプチドの存在下でTNF‐αとの相互作用によって、TNF‐α/TNF‐α受容体相互作用を調節する。
【0232】
キットには、以下のものが含まれる。TNF‐αをコードするヌクレオチド配列を含み、発現する本発明の組換え細胞。当業者に周知の方法、特にWO00/02045号に記載されている方法によって、この細胞はキットにしたがってマイクロタイタープレート、より好ましくは96穴マイクロタイタープレートなどの固体支持体上で増殖する。あるいは、たとえば、当業者によって96穴マイクロタイタープレートに固定するためのTNF‐αが精製形で提供される。あるいは、キットには、たとえば、96穴マイクロタイタープレートに事前固定したTNF‐αが提供される。TNF‐αは、TNF‐α全体またはその断片でよい。
【0233】
約1μM〜1mM以上の濃度の本発明による調節薬を、適切な濃度の抗TNF‐αポリペプチド、その相同配列、その機能部分、またはその相同配列機能部分が存在する所定のウェルに加える。前記ポリペプチドの前記濃度は、1μM〜1mMの範囲が好ましい。キットには、1種または複数の抗TNF‐αポリペプチド(たとえば、配列番号1〜15のいずれかによって表される1種または複数のポリペプチド、あるいは他の抗TNF‐αポリペプチド、その相同配列、その機能部分またはその相同配列機能部分)を含めてもよい。
【0234】
既に本明細書で開示した方法にしたがって結合アッセイを実施し、添加した調節薬の非存在下での、たとえば、抗TNF‐αポリペプチド、その相同配列、その機能部分、またはその相同配列機能部分に結合するTNF‐αの基準レベルとその結果を比較する。調節物質が存在しない活性レベルと比較して少なくとも2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍、最も好ましくは100倍以上のTNF‐α‐ポリペプチド結合(たとえば)の上昇または減少を示すウェルをさらに分析するために選択する。
【0235】
(本発明にしたがう有用な他のキット)
本発明は、TNF‐α/TNF‐α受容体の結合の調節物質のスクリーニングに有用なキット、およびTNF‐αの機能障害を特徴とする疾患の診断に有用なキットを提供する。本発明は、疾患調節物質のスクリーニングに有用なキットおよびそれらの診断キットも提供し、前記疾患は1種または複数のTNF‐αが関与する過程を特徴とする。本発明にしたがって有用なキットには、単離したTNF‐αを含めてもよい。あるいは、またはさらにキットにはTNF‐αを発現させるために形質転換した細胞を含めてもよい。別の実施形態では、本発明によるキットには、TNF‐αをコードするポリヌクレオチドを含めてよい。さらに別の実施形態では、本発明によるキットには、TNF‐αの増幅に有用な特異的プライマーを含めてよい。本発明にしたがって有用なキットには、単離したTNF‐αポリペプチド、その相同物、またはその機能性部分を含めてよい。本発明によるキットには、前記ポリペプチドを発現するための形質転換細胞を含めてよい。キットには、1種を超えるポリペプチドを含めてもよい。別の実施形態では、本発明によるキットには、TNF‐αをコードするポリヌクレオチドを含めてよい。さらに別の実施形態では、本発明によるキットには、巨大分子、たとえば、TNF‐αなどの増幅に有用な特異的プライマーを含めてよい。本発明によるキットには全て、記載した項目または項目の組合せ、ならびにそれらのためのパッケージング材が含まれる。キットには、使用説明書も含まれる。
【0236】
(実施例)
本発明を以下の非制限的な実施例によって説明する。
【実施例1】
【0237】
ヒト腫瘍壊死因子αに対するラクダ科抗体の実施例
【0238】
1)免疫化およびライブラリの構築
ラマグラマ(Llama glama)をヒトTNF‐αで免疫化した。免疫化には、適切であり動物に好都合なアジュバント(Specoll、CEDI Diagnostics B.V.)によって乳濁液としてこのサイトカインを処方した。抗原カクテルは、首に2点筋肉内注射することによって投与した。動物には、TNF‐α100μgを含む乳濁液の注射を1週間毎に6回施した。免疫化中の異なる時点で、動物から血液試料10mlを採取し、血清を調製した。抗原特異的体液性免疫応答の誘導をTNFを用いたELISA実験で血清試料を使用し、確認した(データを図示せず)。最後の免疫化から5日後、血液試料150mlを採取した。この試料から、従来の抗体および重鎖抗体(HcAb)を分画し(Lauwereysら1998)、ELISAで使用した。このELISAによって抗原特異的体液性免疫応答の原因がHcAbであることが判明した(データを図示せず)。150mlの血液試料からFicoll‐Paque勾配(Amersham Biosciences)を使用し、ラマ重鎖免疫グロブリン(HcAb)の遺伝子源として末梢血リンパ球(PBLs)を単離し、5×10個のPBLがもたらされた。抗体の最大の多様性は、試料採取したBリンパ球数に等しいと推定され、それはPBL数の約10%(5×10)である。ラマの重鎖抗体の画分は、Bリンパ球数の20%までである。したがって、150mlの血液試料中のHcAbの最大の多様性は、10個の異なる分子として算出される。これらの細胞から全RNA(およそ400μg)を酸グアニジニウムチオシアナート(acid guanidinium thiocyanate)抽出(ChomczynskiおよびSacchi、1987)により単離した。
【0239】
先に記載した通り、M‐MLV逆転写酵素(Gibco BRL)およびオリゴ‐dT‐プライマーもしくはヘキサヌクレオチドランダムプライマー(Amersham Biosciences)を用いて100μgの全RNAでcDNAを調製した(de Haardら、1999)。エタノール沈殿と組合わせたフェノール/クロロホルム抽出によりcDNAを精製し、続いて鋳型として使用してVHHレパートリーを特異的に増幅した。
【0240】
単一変性フレームワーク1(FR1)プライマーABL013(5'‐GAGGTBCARCTGCAGGASTCYGG‐3')(配列番号:98)を含むオリゴ‐dTプライマー付きcDNAを鋳型として使用し、VHHレパートリーを増幅し、オリゴ‐dTプライマーと組み合わせてPstI制限部位(太字)に導入した。これはEP01205100.9号の記載に準ずる。この増幅によって、2個の断片、1650bpおよび1300bpがもたらされ、後者はCH1欠失HcAb遺伝子に由来する産生物である。小型のPCR産生物をゲルで精製し、続いてPstIおよびBstEIIで消化した。しばしば、BstEII部位は、DNA断片をコードするVHH由来の重鎖のFR4内に生じる。
【0241】
あるいは、VHHレパートリーは、ヒンジに依存する手法で2個のIgG特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用し増幅した。単一のPCR反応で、HcAbsに特異的であることが知られている短い(5'‐AACAGTTAAGCTTCCGCTTGCGGCCGCGGAGCTGGGGTCTTCGCTGTGGTGCG‐3')(配列番号:99)または長い(5'‐AACAGTTAAGCTTCCGCTTGCGGCCGCTGGTTGTGGTTTTGGTGTCTTGGGTT‐3')(配列番号:100)ヒンジプライマーをFR1‐プライマーABL013と組み合わせた(上記参照)。FR1およびヒンジプライマーそれぞれの中にPstIおよびNotI(太字下線)制限部位を導入し、クローニングを可能にした。続いて、PstI‐BstEIIまたはPstI‐NotIで消化したファージミドベクターpAX004中にDNA断片を連結した。このベクターは、pHEN1(Hoogenboomら、1991)と同一であるが、それぞれ、精製および検出のためのカルボキシ末端(His)‐およびc‐myc‐tagをコードする。Microconフィルタ(YM‐50、Millipore)で連結混合物を脱塩し、大腸菌TG1細胞中に電気穿孔して1.8×10個のクローンを含むライブラリを得た。形質転換細胞を単一の20×20cmプレート上でアンピシリン100μg/mlおよび2%のブドウ糖を含むLB培地にて37℃で終夜増殖させた。2×TY培地を使用し、コロニーをプレートから掻き取り、20%グリセロール中−80℃で貯蔵した。
【0242】
品質管理として、クローンを含む挿入物の割合を、ベクターを基にしたプライマーと組み合わせて使用するPCRによってライブラリごとに24個のクローンで確認した。この分析によって、クローンの95%がVHHをコードする挿入物を含むことが判明した。これらの24個のクローンの増幅したVHH断片をHinfIフィンガープリント分析することによって変異性を検査し、それによってクローンは全て、実際に異なることが示された(データを図示せず)。
【0243】
2)拮抗性抗TNFのVHH類の選択
両ライブラリからファージを調製した。ポリクローナルファージレパートリーを採取するために、ライブラリをアンピシリン100μg/mlおよび2%ブドウ糖を含む2×TY培地中37℃で対数期(OD600=0.5)まで増殖させ、続いてM13K07ヘルパーファージに37℃で30分間重感染させた。感染細胞を4000rpmで5分間ペレット化し、アンピシリン100μg/mlおよびカナマイシン25μg/mlを含む2×TY培地に再懸濁した。バクテリオファージは、37℃でおよび250rpmで終夜増殖することによって繁殖させた。一晩経った培地を4500rpmで15分間遠心分離し、ファージを5分の1容量の[20%ポリエチレングリコール6000、1.5MのNaCl]溶液で30分間の氷冷培養によって沈殿させた。ファージを4℃、4000×gで15分間遠心分離することによってペレット化した。ファージをPBS中に再懸濁後、細胞残屑をマイクロ遠心チューブに入れ最大速度(15000×g)で1分間遠心分離することによってペレット化した。ファージ粒子を含む上清を新しいチューブに移し、再度上記したようにファージを沈澱させた。ファージをPBSに溶解し、上記したように残留する細胞残屑から分離した。ファージの力価を対数的TG1細胞の感染によって定量し、続いて選択培地にプレーティングした。
【0244】
in vitroビオチン化TNF‐αを使用しライブラリを選択した。Magniら(Anal Biochem 2001、298、181‐188)によって記載されたようにビオチン標識を実施した。ビオチンのTNFへの組込みは、SDS‐PAGE分析によって評価し、エクストラアビジン‐アルカリフォスファターゼ(Extravidin−alkaline phosphatase)共役体(Sigma)によって検出した。改変蛋白質の機能性を、固相にコートした組換えp75受容体へのその結合能力に関して評価した。
【0245】
ストレプトアビジン被膜マイクロタイタープレート(+4℃で16時間、100μlのストレプトアビジン10μg/mlでコートした)上でビオチン化TNF‐α(室温で2時間10〜400ng/ウェル)を捕獲することによってVHHを選択した。細胞外リガンド結合ドメインまたは受容体を発現している細胞を含む過剰な受容体で溶離することによって拮抗性VHHを得た。捕獲したサイトカインを有するファージを2時間培養した後、非特異的ファージを洗い流す一方で、拮抗性VHHを提示する特異的ファージを受容体(CD120bまたはp75の細胞外ドメイン;10μM)で、または受容体を提示する細胞(>10KYM細胞/ウェル)で30分間溶離した。高濃縮、すなわち、受容体で溶離されたファージ数と、血清アルブミン(50μgウェル当たり)によって溶離されたファージ数の割合が20倍を超える場合は、TNF‐α特異的クローンが首尾よく選択されたことを示唆する。あるいは、受容体での溶離に代えて、低pHによってVHHおよび/または抗原が変性する標準的な手順を適用した(0.1Mグリシン緩衝液、pH2.5)。対数期増殖の大腸菌細胞に、溶離し中和したファージを感染させ、選択培地にプレートした。
【0246】
個々のクローンを採取し、培養上清中でVHHを産生させるためにマイクロタイタープレート中で増殖した。エクストラアビジン被膜プレート上にTNF‐αを捕獲するELISAスクリーニングによってクローンの約50%が陽性であることが判明した。HinfI‐フィンガープリント分析によって13個の異なるクローンの選択が示され、これらのクローンを増殖し50mlスケールで誘発した。前記クローンの配列を表1に示す。
【0247】
異なる配列を有する5個のクローン、VHH#1A、#2B、#3E、#3G、#7B、および#12B(図1)をさらに詳細に特徴付けた。VHH#3E、#3G、および#7Bは、FR2の位置45(アルギニン)に通常の親水性残基を有し、位置47のフェニルアラニンをトリプトファン置換した単一ドメイン抗体断片であり、それによって溶解性の点で有利な特徴がもたらされている。VHH#1Aは、ヒト起源または他の種から得た二重鎖抗体中に通常存在する疎水性FR2残基を含むが、親水性におけるこの喪失を位置103の帯電したアルギニン残基によって補っており、このアルギニン残基は二重鎖抗体から得たVH中に存在する保存性トリプトファン残基の置換物である(PCT/EP02/07804号)。本発明に記載したヒト化ラクダ科単一ドメイン抗体の新規なクラスは、VHH#2BおよびVHH#12Bによって表され、このクラスは位置103の疎水性残基トリプトファンと組み合わせてFR2に疎水性残基を含む。50mlスケールでの培養によって大量の抗体断片が発現され、TALON樹脂(Clontech)を使用するIMACによって精製した。溶離剤イミダゾールを除去するためにPBSに対して透析した後、VHH量をOD280によって定量した。各クローンから約300μgのVHHが得られた。
【0248】
この物質をELISAで(ビオチン化)TNFの検出感受性を定量するために使用した。この目的のために、ビオチン化TNF(1μg/ml)の捕獲にストレプトアビジン(10μg/ml)被膜マイクロタイタープレートを使用し、VHHを0.2%カゼイン/PBSで希釈し、室温で2時間培養した。抗MYC mAB 9E10(0.5μg/ml)および抗マウスAP共役体(1000倍希釈、Sigma)で結合したVHHを検出した。結果を図2に示す。
【0249】
3)KYM細胞系による細胞毒性アッセイでの拮抗作用の定量
Vandenabeeleおよび同僚(Vandenabeele、P.、Declercq、W.、Vercammen、D.、VandeCraen、M.、Grooten、J.、Loetscher、H.、Brockhaus、M.、Lesslauer、W.、Fiers、W.(1992)形質移入ラット/マウスT細胞ハイブリドーマにおけるヒト腫瘍壊死因子受容体p75の機能特徴付け(Functional characterization of the human tumor necrosis factor receptor p75 in a transfected rat/mouse T cell hybridoma).J.Exp.Med.176、1015‐1024.)に記載されている比色MTTアッセイによってTNF‐αが誘発する細胞分裂停止/細胞毒性を定量した。MTT(3‐(4,5‐シメチルチアゾール‐2‐イル)‐2,5‐ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(3‐(4,5‐cimethylthiazol‐2‐yl)‐2,5‐diphenyl tetrazolium bromide)は、生細胞によって切断されて紺色のホルマザン生成物をもたらす淡黄色基質である。この工程には、活性ミトコンドリアが必要とされ、死亡直後の細胞でさえ顕著な量のMTTを切断することはない。KYM細胞[Sekiguchi M、Shiroko Y、Suzuki T、Imada M、Miyahara M、Fujii G.(1985)組織培養でのヒト横紋筋肉腫細胞株特徴付け(Characterization of a human rhabdomyosarcoma cell strain in tissue culture).Biomed.Pharmacother.39、372‐380.]を96穴マイクロタイタープレートに播種し、TNF‐α(三量体を0.216ng/mlすなわち約5pM)の存在または非存在下で培養した。TNFの他に、培養中に様々な量の抗体(VHHまたはレミケード(薬剤名))を含めた。アッセイには、MTTを最終濃度500μg/mlで培地に加え、プレートを37℃で培養してミトコンドリア酵素によるMTTの切断を実現した。ウェルの底に黒色の不鮮明な結晶として現れる、形成されたホルマゾン(formazon)生成物を酸イソプロパノール(イソプロパノール中40nMのHCl)またはDMSOを加えることによって溶解した。吸光度を570nmで測定する。
【0250】
MTTアッセイ(図3)は、FR2にヒト様疎水性残基と組み合わせて、位置103にアルギニンを有するVHH#1Aが穏やかな拮抗作用(IC50,〜100nM)を有することを示す。FR2に特有の親水性残基を有するVHH#7Bは、ELISAで敏感にサイトカインが検出されるにもかかわらず、TNF‐αとそのリガンドの結合を阻止しない(曲線図示せず)。それに反して、親水性の正真正銘FR2残基を有するVHH#3Eおよび#3Gは、非常に強力な拮抗性VHH類(IC50,20nM)である。VHH#3Eおよび#3Gは、高度に相同しクローン的関係(Harmsenら、Mol.Immunol.37、579‐590)にあるが、VHH#3Eはさらに強力であり、それはおそらくVHH#3EがVHH#3Gよりも高い親和性を有するためである(図2)。(キメラ)モノクローナル抗体であるレミケードは、非常に強力(IC50,80pM)であるが、それに由来するFab断片はこの効力の大部分を消失している(IC50は3nM、無傷mABの30分の1)。これは、抗体とサイトカイン間の相互作用の結合力の作用:2個の結合部位を有するmABは、協力的結合によって三量体TNF分子とより効率よく相互作用することを明瞭に示している。VHH断片は、あくまでも一価であり、したがって、VHH遺伝子の遺伝子融合によって結合力を増大させることが、それらの拮抗効力を増大し得ると推測された(実施例4を参照)。
【0251】
これらの実験は、ヒト様VHHの新規なクラスが正規の結合および機能特性を有し、したがってそれらを治療目的に適用できることを示している。
【実施例2】
【0252】
部位標的突然変異誘発によるVHH#12BおよびVHH#3Eのヒト化
【0253】
1)VHH#3E/VHH#12B間の相同性およびヒト生殖細胞重鎖V領域DP‐47
VHH#12BおよびヒトVH3生殖細胞配列(DP‐47)の配列比較によって以下の高度の相同性が判明した。
FR1の位置1、5、28、および30で4個のAAの変化
FR3の位置74、76、83、84、および93で5個のAAの変化
FR4の位置108で1個のAAの変化
これらは、以下の配列比較に示される。

【0254】
したがって、ヒト生殖細胞遺伝子DP‐47に相同性が高く、TNF‐αサイトカインに特異的な阻害物質は、さらにヒト化して、突然変異誘発が阻害能力に与える作用をELISAで評価するための理想的な候補であった。
【0255】
VHH#3EおよびヒトVH3生殖細胞(DP‐47)の配列比較により、DP‐47中の疎水性残基と比較して、VHH#3EのFR2中の親水性アミノ酸残基の存在が判明した。

【0256】
親水基をヒトVH中に存在する疎水性残基に置換する効果を評価することは重要である。ラクダ類VHH配列の大部分は親水性残基を含むからである。
【0257】
2)VHH#12Bの突然変異誘発
ChenおよびRuffnerによって記載され、Stratageneによって商品化(Quickchange部位特異的変異導入法)された、非PCRベース部位特異的変異導入法を使用することによってVHH#12Bを変異させた。所望の突然変異を導入している2個の変異原性プライマーと組み合わせてプラスミドDNAを鋳型として使用した。2個のプライマーは、鋳型プラスミドDNAの対向する鎖に互いに相補的である。PfuDNAポリメラーゼを使用するポリメラーゼ反応では、限られた数のサイクルを使用するサイクリングプログラム中に各鎖はプライマー配列から伸展する。これにより野生型鎖と変異鎖の混合物がもたらされる。DpnIによる消化によって変異したin vitro合成DNA鎖を選択する。消化に対して鋳型鎖のみが感受性を有するからである。DNAを沈澱させ、大腸菌に形質転換し、配列分析によって必要な突然変異を分析した。産生した突然変異VHH類および変異原性プライマーを表2に示す。
【0258】
プラスミドを突然変異クローンから調製し、WK6電気コンピテト細胞に形質転換した。単一コロニーを使用し、2%のブドウ糖およびアンピシリン100μg/mlを含むLB培地で終夜培養を開始した。この終夜培養物をアンピシリン100μg/mlを含む300mlのTB培地で100倍希釈し、37℃でOD600nm=2になるまで培養し、その時に1mMのIPTGおよび5mMのMgSO(最終濃度)を加え、培養物をさらに3時間37℃で培養した。
【0259】
培養物を4℃、4,500rpmで20分間遠心分離した。ペレットは、終夜、または−20℃で1時間凍結した。次いで、ペレットを室温で40分間解凍し、20mlのPBS/1mMのEDTA/1MのNaClに再懸濁させ、1時間氷冷して振盪した。4℃、4,500rpmで20分間遠心分離することによって原形質画分を単離した。VHHを含む上清をTALON(ClonTech)に供給し精製して均質にした。算出した吸光係数を使用しVHH収量を決定した。
【0260】
突然変異VHH類は全て、野生型に匹敵して発現した。In vitro受容体結合アッセイにおいて突然変異体のその阻害能力を分析した。
【0261】
マイクロタイタープレートをPBS中2μg/mlのエンブレル(Wyeth、薬剤名)により終夜4℃でコートした。プレートをPBS‐Tweenにより5回洗浄し、1%カゼインを含むPBSにより室温で1時間ブロックした。プレートをPBS‐Tweenにより5回洗浄した。ビオチン化ヒトTNF‐α(80μg/ml)を突然変異体または野生型VHH#12Bの希釈系列により室温で1時間予備培養し、混合物をマイクロタイタープレートのウェルにて室温で1時間培養した。プレートをPBS‐Tweenにより5回洗浄した。結合したヒトTNF‐αをエクストラアビジン‐AP(1/1,000希釈)およびパラニトロフェニルリン酸(paranitrophenylphosphate)(pNPP)を使用し検出した。30分後に405nmでシグナルを測定した。結果を図4および5に示す。IC50は、66nM(野生型)から200nM(突然変異体Q1E+Q5L+A74S+Y76N+K83R+P84A)へ3倍増加した。位置T93Aの突然変異によって阻害が失われた(データを図示せず)。依然としてヒト化が必要とされる位置はE28、E30、およびQ108である。しかし、E28およびE30は、H1標準構造の一部であり、したがってChothiaの番号付け方式によるCDR1の一部である。
【0262】
突然変異VHHのアミノ酸配列を表4配列番号17〜19に示す。
【0263】
3)VHH#3Eの突然変異誘発
上記の非PCRベース部位特異的変異導入法を使用することによってVHH#3Eを変異させた。得られた突然変異VHH類および変異原性プライマーを表3に示す。
【0264】
突然変異VHH類は全て、野生型に匹敵して発現した。精製した突然変異VHH類は、ELISAで結合を、および上記の方法と同一の受容体結合アッセイで阻害能力を分析した。
【0265】
ELISAの結果を図6に示し、受容体結合アッセイの結果を図7に示す。
【0266】
突然変異VHHのアミノ酸配列を表4配列番号21〜24示す。
【実施例3】
【0267】
マウスTNF‐αに対する拮抗性VHHの単離
【0268】
1)抗マウスTNF‐αのVHHの選択
マウスモデルにおいてIBDまたはクローン病に対する効力の研究を実施するために、マウスTNF特異的VHHを選択した。したがって、実施例1に記載したようにラマをマウスTNF‐αで免疫化した。最後の免疫化から4日後および10日後に試料採取したPBL類から、かつ4日後のリンパ節から採取した生検からRNAを抽出した。Ig由来プライマー、またはオリゴ‐dTプライマーと単一Igプライマーの組合せを使用し、VHHコード遺伝子セグメントを増幅するために、ランダムプライマー付きcDNAまたはオリゴ‐dTプライマー付きcDNAで全RNAを転換し、鋳型として使用した(実施例1を参照)。Igプライマーによって、第1のPBL類から8.5×10個のクローンを含むライブラリ、第2PBL試料から7×10個のクローンを含むライブラリ、およびリンパ節から5.8×10個のクローンを含むライブラリが生じた。オリゴ‐dTプライマーとIgプライマーの組合せを使用し、第1のPBL試料から得た1.2×10個のクローンを含むライブラリ、PBL類の第2試料から5.7×10個のクローンのライブラリを製造し、リンパ節由来のライブラリには2×10個のクローンが含まれていた。先に記載したように、使用したプライマーの組合せに依存するライブラリをプールし、その結果2個のライブラリがファージに伝達し、増殖した。被膜ストレプトアビジンに捕獲したビオチン化マウスTNF‐αで選択を実施し、結合したファージをヒト受容体p75と競合させることによって溶離させた。この受容体は、マウスTNF‐αと交差反応することが知られている。Ig由来プライマーを用いた増幅によって得られたライブラリから、2個の異なるマウスTNF‐α特異的VHH(VHH#m3FおよびVHH#m9E)を選択する一方で、オリゴ‐dTプライマーおよびIg‐プライマーを用いてPCRによって構築したライブラリから2個の密接に関連するVHH類を回収した(図8)。
【0269】
2)L929細胞系による細胞毒性アッセイでの拮抗効力の定量(図9)
実施例1に記載したものと同じ種類のアッセイを適用したが、マウス細胞系L929で行った。VHH#m3FおよびVHH#m4B(図9)は、他の2個のVHH類よりも10倍強力であることが判明した。
【実施例4】
【0270】
多価ラクダ科抗体を使用しての結合力の増大による拮抗効力の強化
【0271】
1)ヒトおよびマウスTNF‐αに対する二価、三価、および四価VHHの拮抗効力
二価または二重特異性VHHの2段階クローニングを可能にする大腸菌産生ベクターpAX11(図10)を設計した。最初に、PstIおよびBstEIIによりカルボキシ末端VHHをクローン化しつつ、第2段階で他方のVHHをSfiIおよびNotIによって挿入するが、挿入によって第1の遺伝子断片内で切断されない。この手順によって増幅による新規な部位の実施が回避され、したがってPCRによる間違いが導入される危険性が回避される。
【0272】
このベクターによって、拮抗性抗ヒトTNF‐αのVHH#3Eの二価誘導体を産生した。二価VHHをコードするプラスミドベクターを使用して三量体および四量体誘導体を産生したが、これはBstEIIによるプラスミドの部分消化によって実現した。この部分消化は、両VHH遺伝子セグメントで生じる。直線化したベクターをゲルから精製し、続いて脱リン酸化し、アクセプターとして使用して、同じプラスミドの完全消化によって得られた約350bpのBstEII断片をクローニングした。ベクターを付加する前にBstEII断片のみを連結することによって、遺伝子セグメントをコードする多量体VHHの挿入が強化される。大腸菌での形質転換後、得られたクローンTG1をM13RevおよびM13Fwdプライマーを用いてPCRによってスクリーニングした。BstEIIは、対称性カッター(5ntオーバーハング)なので、正確に方向付けられた挿入物のみが得られたが、これはPstI単独(350bp)でプラスミドを消化し、あるいはEcoRIおよびHindIIIで二重消化することによって裏付けられた通りであった[二価用に1000bp(BIV 3E、配列番号73)、三価用に1350bp(TRI 3E、配列番号74)、および四価用に1700bp(TETRA 3E、配列番号75)、データを図示せず]。配列を表7に示す。
【0273】
クローンを増殖し、50mlスケールで誘発し、原形質画分を調製し、TALON樹脂でのIMAC精製に使用した。クーマシー染色PAGEで精製した産生物の分析によって、良好な無傷多価VHHの産生レベル(細胞培養物1リットル当たり2〜10mg)であることが判明した(図11を参照)。IMACで精製したVHHの分子外観は、Superdex75HRカラムでのゲルろ過によって決定し、予想通りより結合力が高い分子ほどカラムから早く出てきた(図12を参照)。
【0274】
拮抗効力を、KYM細胞を使用して細胞を基にしたアッセイで分析した。マイクロタイタープレートに細胞を播種し、TNF‐αの存在または非存在下で培養した(三量体1.29ng/ml、すなわち約25pM)。アッセイ(図13)によって、この研究に使用した一価の分子が最低の拮抗特性を有することが判明し、そのIC50値は以下を反映する:キメラ抗体レミケードに由来するFabはIC50が2nMであり、VHH#3EではIC50は12nMである(同様に図3を参照)。使用した分子の結合力は、拮抗効力において二価IgG分子レミケードで観察したのと同じく、劇的な作用を有することが判明した。その結合活性は、Fabよりも40倍有効(IC50,50pM)である。TNF‐αは、三量体分子であり、この分子は二量体受容体に相互作用し、したがって以前に記載(Santoraら、Anal.Biochem.299、119‐129)されているように、IgGの結合力によってサイトカイン上の2個のエピトープに相互に結合し、大きい複合体の形成に役立つようになると推定することができる。二量体のIC50(30pM)が一量体の400分の1なので、驚くべきことに、一量体から二量体へVHHの結合力の増大は、レミケードで観察されたことよりも極めて驚くべき効果がある。結合力の増大は、すでに良好な拮抗動作にさらに多くをもたらす:三量体VHHのIC50は20pMであり、四価形式のものは6pMである。VHHの高次結合力形式全てがレミケードより有効でありながら、エンブレルよりも四価形式はさらに良好である。このエンブレルは、細胞外ドメイン受容体p75からなり、IgGのFcに融合するために二価結合方式を有する。
【0275】
結合力が拮抗動作に及ぼす同様の予想外の効果が、マウスTNFに対して生じたVHHで観察された(図14)。基質としてMTTおよびマウスTNF‐α(65pg/mlすなわち1.3pM)を使用し、同じ型の細胞毒性アッセイを実施したが、マウス特異的受容体を発現するマウス細胞系L929を使用した。異なる3個の拮抗性(一価)VHHを同定し、9Eおよび3Fとコード化した。そのうち最初の2個のIC50は25nMであり、最後のIC50は2nMである(同様に実施例3を参照)。3Fの二価形式(BIV#m3F、配列番号76)への変換によって、IC50は1000倍(2pM)に増大し、それによって抗体の結合力の増大が予想外の拮抗特性の改善をもたらすことが再び証明された。
【0276】
2)VHH‐Fc融合体との比較
適合されたpCDNA3由来ベクター中に、ヒトTNFを標的とするVHH#3EをPstIおよびBstEIIによってクローン化し、それをヒトIgG1のCH1欠失Fc部分に遺伝子融合させた。配列決定によって確認した後、ミエローマ細胞系NS0にプラスミド構築体を形質移入した。得られた細胞系を増殖し、VHH‐Fc融合体が培養上清中に分泌された。産生物を抗ヒトFcVHH樹脂で精製し、クーマシー染色ゲルで分析した(図15)。DTTの存在下では、融合体は45kDaの蛋白質として視認することができ、DTTの非存在下では、分子量90kDaの二量体分子を観察することができた。この二量体産生物は、2個のジスルフィド架橋による2本の鎖の連結から生じ、このジスルフィド架橋はヒンジ領域中に位置するシステイン残基に由来する。
【0277】
ヒト細胞系KYMによりVHH融合体をバイオアッセイで試験し、両分子は同じ結合力を有し、どちらもVHH#3Eに由来するにもかかわらず、有効性は二価VHHの5分の1であることが判明した(図16)。おそらく嵩高なFcテールによる立体障害がこの相違を引き起こしているのであろう。
【実施例5】
【0278】
本発明の抗標的単一ドメイン抗体間の相同性の計算
【0279】
本発明の抗標的単一ドメイン抗体間のアミノ酸配列相同性の程度は、Bioedit Sequence Alignment Editorを使用し、算出した。ClustalWにより整列化された通り、計算によって配列全ての相互間の同一残基の比率が示される[Thompson、J.D.、Higgins、D.G.およびGibson、T.J.(1994)CLUSTAL W:配列重み付け、位置特異的空隙ペナルティ、および重量マトリックスの選択による、進化性多重配列整列の感受性の改善(improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position specific gap penalties and weight matrix choice).Nucleic Acids Research、1994年6月提出]。表8は、本発明の抗血清アルブミンVHH間相互の部分相同性を示す。表9は、本発明の抗TNF‐αのVHH間相互の部分相同性を示す。表10は、本発明の抗IFN‐γのVHH間相互の百分比相同性を示す。
【実施例6】
【0280】
VHH#3EのVHH‐CDR3断片の発現
【0281】
フレームワーク4領域中に位置するセンスプライマー(前進:CCCCTGGCCCCAGTAGTTATACG)(配列番号:103)、およびフレームワーク3領域中に位置するアンチセンスプライマー(逆進:TGTGCAGCAAGAGACGG)(配列番号:104)を使用することによって、VHH#3EのCDR3領域を増幅した。
【0282】
pAX10でCDR‐3断片をクローニングするために、必要な制限部位を導入している以下のプライマーによって2巡目のPCR増幅を実施した。
逆進プライマーSfi1:
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCTGTGCAGCAAGAGACGG(配列番号:105)
前進プライマーNot1:
GTCCTCGCAACTGCGCGGCCGCCCCCTGGCCCCAGTAGTTATACG(配列番号:106)
【0283】
50mlの反応容量で各プライマー50pmolを使用しPCR反応を実施した。1次PCRの反応条件は94℃で11分、続いて94/55/72℃で30/60/120秒を30サイクル、さらに72℃で5分であった。2.5mMのMgCl2、200mMのdNTP、および1.25UのAmpliTaq God DNAポリメラーゼ(Roche Diagnostics、ベルギー国ブリュッセル)によって全ての反応を実施した。
【0284】
Sfi1およびNot1で切断した後、PCR産生物をpAX10中でクローニングした。
【実施例7】
【0285】
ヒトTNFαに特異的な抗体断片の安定性試験
【0286】
経口投与した蛋白質は、胃の酸性pHで変性され、ペプシンによって分解される。本発明者らは、VHH#3Eのペプシンに対する耐性を研究するための条件を選択しており、この条件は胃環境に類似すると推定される。ヒトTNFαに特異的なVHHであるVHH#3Eを大腸菌中で組換え蛋白質として産生し、IMACおよびゲルろ過クロマトグラフィーによって精製して均質化した。算出した280nmでのモル吸光係数の使用によって精製後の蛋白質濃度を分光光度計で定量した。それぞれ、pH2、pH3、およびpH4のMcIlvaine緩衝液(J.Biol.Chem.49、1921、183)で100μg/ml希釈液を調製した。続いて、これらの溶液を37℃で15分間培養した後、ブタ胃粘膜ペプシンを1/30w/wの割合で添加した。プロテアーゼの添加から60分後、試料を採取し、ペプシンを不活化させるために0.1%カゼインを含むpH7.4のPBSで直ちに100倍に希釈した。機能性抗体断片の存在をELISAによってを評価するために、この試料から7個の追加の3倍希釈液を調製した。プロテアーゼの添加前に採取したアリコットから調製した同一の希釈液を参照として利用した。ELISAアッセイでは、NeutrAvidin(商標)でコートしたマイクロタイタープレートのウェルにビオチン化TNFαを捕獲した。ペプシン処理および対照の両試料に、試料の同じ段階希釈液を調製し、これらの希釈液の100μlをウェルに加えた。培養1時間後に、プレートを洗浄した。捕獲されたTNFαに結合したVHHの検出には、ポリクローナルウサギ抗VHH抗血清(R42)および抗ウサギIgGアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase)共役体を使用した。洗浄後、プレートをパラニトロフェニルリン酸(paranitrophenyl phosphate)で発色させた。消化条件に曝露した試料および対照試料のすべてに関して、図17にプロットしたデータは同様の曲線を示す。これは、選択した条件のすべてにおいてVHH#3Eが本質的にその機能上の活性を保持していることを示している。
【実施例8】
【0287】
マウスでの抗ヒトTNFα特異的VHHの経口投与
【0288】
抗ヒトTNFα特異的VHH#3Eを含む抗体溶液(100倍希釈PBS1ml当たり100μg)を調製した。3匹のマウスを最初に12時間絶飲した後、続いて2時間自由に抗体溶液を飲めるようにした。その後、マウスを屠殺し、その胃を精査した。直ちに1%BSAを含むPBS500μlで胃を洗い流すことによって胃内容物を回収した。続いて、この洗浄物質を使用して未希釈物質の1/5希釈から出発して段階的3倍希釈液を調製した。これらの試料の100μlをヒトTNFαでコートしたマイクロタイタープレートの個々のウェルに移した。1時間の培養と、続く十分な洗浄後、免疫反応物質の存在をポリクローナルウサギ抗VHH抗血清(R42)で評価し、続いて抗ウサギアルカリフォスファターゼ共役体で培養した。ELISAをパラニトロフェニル酢酸(paranitrophenyl acetate)で発色させた。10分後に得られたELISAのシグナルは、これらのマウスの胃洗浄物中に機能性VHH#3Eが存在していることを明瞭に実証した。検量線と比較することによって、本発明者らは、試験した3匹のマウスに関して胃洗浄液中の機能性抗体断片の濃度が1.5、12.6、および8.6μg/mlであると決定した。
【実施例9】
【0289】
IBDに関して動物モデルでの効力
【0290】
1)慢性大腸炎の動物モデル
様々な投与経路によって適用した二価VHH構築体の効力を、BALB/cマウスにおいてDSS(デキストラン硫酸ナトリウム)で誘発した慢性大腸炎モデルで評価した。このモデルは、当初Okayasuらによって記載[OkayasuらGastroenterology1990、98:694‐702]され、Kojouharoffらによって改変[G.Kojouharoffら、Clin.Exp.Immunol.1997、107:353‐8]されている。Charles River Laboratories、ドイツ国から11週齢の動物を入手し、体重が21〜22gに達するまで動物施設で飼育した。この動物で4巡のDSS処理サイクルによって慢性大腸炎を誘発した。各サイクルは、DSSを濃度5%(w/v)で飲料水と共に与えたDSS処理期間(7日)、および飲料水にDSSを含めない回復期間(12日)から構成された。最後の回復期間は、処理時の急性炎症ではなく慢性を示す炎症状態を提供するために、12〜21日に延長された。最後の回復期間に続いて、8匹のマウス群に無作為にマウスを割り当て、VHH構築体での治療を開始した。治療期間は2週間であった。治療期間の最後から1週間目に、動物を屠殺し、腸を解剖し組織学的に検査した。実験設定を図18に概略的に示す。
【0291】
2)VHH治療スケジュール
VHH治療期間中、マウス(1群につき各8匹)は、100μgの二価VHH3Fを胃内または静脈内適用することによって、二価VHH#3F(VHH#m3F‐VHH#m3F、配列番号76)により毎日連続14日間治療した。別の群の動物を1日おきに14日間二価VHH#3Fで経直腸的に治療した。投与群全てにおいて、100μg用量の二価VHH#3Fを緩衝化溶液1mlにつき1mgの濃度で適用した。負の対照群には、他の条件を同一条件にして100μlのPBSを施した。治療スケジュール表11に示す。
【0292】
3)結果
マウスを屠殺後、体重を測定し、大腸を精査した。精査した大腸の長さを測定し、大腸の組織像をヘマトキシリン‐エオシン(HE)染色によって評価した(標準条件)。負の対照(PBS治療)と比較して、二価ナノ体3Fで処理した群では、大腸の長さの伸長と組織学的評価(histological score)の改善が示され[G.Kojouharoffら、Clin.Exp.Immunol.1997、107:353‐8]、それによって治療効力が証明された。
【0293】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】


【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1〜16および79〜84のいずれかの配列を含む抗TNF‐α単一ドメイン抗体;
(b)1×10-6M以上の親和性でTNF‐αと結合することができ、配列番号1〜16および79〜84のいずれかの配列と70%以上の配列相同性を示す配列を含む、抗TNF‐α単一ドメイン抗体;
(c)1×10-6M以上の親和性でTNF‐αと結合することができる(a)または(b)の機能的部分を含む抗TNF‐α単一ドメイン抗体
から選択される、少なくとも1個の抗TNF‐α単一ドメイン抗体を含む抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項2】
(a)配列番号1〜5および14のいずれかの配列によって表される配列;
(b)配列番号1〜5および14のいずれかの配列と70%以上の配列相同性を示す相同配列;
(c)1×10-6M以上の親和性でTNF‐αと結合することができる(a)または(b)の機能的部分
を含む少なくとも1個の抗TNF‐α単一ドメイン抗体を含むポリペプチドである、請求項1に記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項3】
さらに、血清蛋白質を標的とする少なくとも1種の単一ドメイン抗体を含む、請求項1または2に記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項4】
前記血清蛋白質が、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、サイロキシン結合蛋白質、トランスフェリン、またはフィブリノーゲンのいずれかである、請求項3に記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項5】
配列番号26〜29および85〜97のいずれかの配列を含む血清蛋白質を標的とする少なくとも1種の単一ドメイン抗体である、請求項3または4に記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項6】
配列番号30〜43のいずれかの配列を含む、請求項3〜5のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項7】
さらに、抗IFN‐γ単一ドメイン抗体、抗TNF‐α受容体単一ドメイン抗体、および抗IFN‐γ受容体単一ドメイン抗体からなる群から選択した少なくとも1種の単一ドメイン抗体を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項8】
TNF‐αを標的とする単一ドメイン抗体数が、少なくとも2個である、請求項1または7に記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項9】
配列番号73〜76のいずれかの配列によって表される配列に相当する、請求項8に記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項10】
少なくとも1種の単一ドメイン抗体が、ヒト化ラクダ科VHHである、請求項1〜9のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項11】
配列番号17〜19および21〜24のいずれかの配列を含む少なくとも1種のヒト化ラクダ科VHHである、請求項10に記載の抗TNF‐αポリペプチド。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、ならびに抗IFN‐γ単一ドメイン抗体、抗TNF‐α受容体単一ドメイン抗体、抗IFN‐γ受容体単一ドメイン抗体、および薬剤として許容される担体からなる群から選択した少なくとも1種の単一ドメイン抗体を含み、対象に同時投与、分別投与、または逐次投与するための組成物。
【請求項13】
配列番号44〜72のいずれかの配列を含む少なくとも1個の抗IFN‐γ単一ドメイン抗体である、請求項7〜11のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、または請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の単一ドメイン抗体が、ラクダ科VHHである、請求項1〜11、および13のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、または請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドをコードする核酸。
【請求項16】
請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドと、腫瘍壊死因子αの結合を調節する作用薬を同定する、以下のステップを含む方法:
(a)候補調節物質の存在下および非存在下において、前記ポリペプチドと標的間の結合を可能にする条件下で、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドを、腫瘍壊死因子αである標的に接触させる、ならびに
(b)前記ポリペプチドとステップ(a)の標的との間の結合を測定し、前記候補調節物質の非存在下での結合に比べて、前記候補調節物質の存在下で結合が減少することによって、前記候補調節物質を、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドと、腫瘍壊死因子αの結合を調節する作用薬として同定する。
【請求項17】
請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドと、腫瘍壊死因子αの結合を通して、腫瘍壊死因子αが介在する疾患を調節する作用薬を同定する、以下を含む方法:
(a)候補調節物質の存在下および非存在下において、前記ポリペプチドと標的間の結合を可能にする条件下で、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドを、腫瘍壊死因子αである標的に接触させる、ならびに
(b)前記ポリペプチドとステップ(a)の標的との間の結合を測定し、前記候補調節物質の非存在下での結合に比べて、前記候補調節物質の存在下で結合が減少することによって、前記候補調節物質を腫瘍壊死因子αが介在する疾患を調節する作用薬として同定する。
【請求項18】
請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドと、腫瘍壊死因子αの結合を通して、腫瘍壊死因子αと該受容体の結合を調節する作用薬を同定する、以下を含む方法:
(a)候補調節物質の存在下および非存在下において、前記ポリペプチドと標的間の結合を可能にする条件下で、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドを、腫瘍壊死因子αである標的に接触させる、ならびに
(b)前記ポリペプチドとステップ(a)の標的との間の結合を測定し、前記候補調節物質の非存在下での結合に比べて、前記候補調節物質の存在下で結合が減少することによって、前記候補調節物質を腫瘍壊死因子αとその受容体の結合を調節する作用薬として同定する。
【請求項19】
請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、ならびに腫瘍壊死因子α、それらのためのパッケージング材、および使用説明書を含む、腫瘍壊死因子αが介在する疾患を調節する作用薬をスクリーニングするためのキット。
【請求項20】
炎症過程に関連付けられる疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、請求項15に記載の核酸、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項21】
不活化されることなく、胃環境を通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、あるいは請求項12に記載の組成物。
【請求項22】
膣腔および/または直腸腔に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、あるいは請求項12に記載の組成物。
【請求項23】
鼻、上気道、および/または肺に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、あるいは請求項12に記載の組成物。
【請求項24】
腸粘膜に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患であって、腸粘膜透過性を上昇させる前記疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、あるいは請求項12に記載の組成物。
【請求項25】
舌下組織を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、あるいは請求項12に記載の組成物。
【請求項26】
皮膚を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患を治療し、かつ/または予防し、かつ/または緩和するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、あるいは請求項12に記載の組成物。
【請求項27】
前記疾患が、炎症、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、多発性硬化症、アジソン病、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、I型糖尿病、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、男性不妊症、多発性硬化症、重症筋無力症、天疱瘡、乾癬、リューマチ熱、リューマチ性関節炎、類肉腫症、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、および血管炎のいずれかである、請求項17に記載の方法、請求項19に記載のキット、請求項20〜26に記載の抗TNF‐αポリペプチド、核酸または組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の疾患が潰瘍性大腸炎であることを特徴とする、請求項17に記載の方法、請求項19に記載のキット、請求項20〜26に記載の抗TNF‐αポリペプチド、核酸または組成物。
【請求項29】
請求項15に記載の核酸を含む組成物、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、あるいは請求項12に記載の組成物、ならびに適当な薬剤ビヒクルを含む組成物。
【請求項30】
以下を含む腫瘍壊死因子αの機能障害によって特徴付けられる疾患の検査方法:
(a)試料を請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドに接触させる、
(b)前記ポリペプチドと前記試料の結合を検出する、ならびに
(c)ステップ(b)で検出した結合と基準を比較し、前記試料に関連する結合の差から、腫瘍壊死因子αの機能障害によって特徴付けられる疾患であると検査される。
【請求項31】
前記疾患が、炎症、リューマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸症候群、多発性硬化症、アジソン病、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、I型糖尿病、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、男性不妊症、多発性硬化症、重症筋無力症、天疱瘡、乾癬、リューマチ熱、リューマチ性関節炎、類肉腫症、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、および血管炎のいずれかである、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の単離された抗TNF‐αポリペプチド、それらのためのパッケージング材、および使用説明書を含む、疾患のスクリーニングに使用するためのキット。
【請求項32】
請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドの、以下を含む産生方法:
(a)腫瘍壊死因子αを対象とするラクダ科VHHをコードするDNAを得る工程、および
(b)ステップ(a)で選択したDNAをクローニングし、発現させる工程。
【請求項33】
請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドの、以下を含む産生方法:
(a)前記ポリペプチドの発現を可能にする条件下で、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチドをコードすることが可能な核酸を含む宿主細胞を培養する工程、ならびに
(b)前記培養物から生成したポリペプチドを回収する工程。
【請求項34】
前記宿主細胞が、細菌または酵母である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
炎症反応に関連付けられる疾患を治療し、および/または予防し、および/または緩和するための薬剤を調製するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、請求項15に記載の核酸、請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項36】
不活化されることなく、胃環境を通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、および/または緩和するための薬剤を調製するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、または請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項37】
膣腔および/または直腸腔に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、および/または緩和するための薬剤を調製するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、または請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項38】
鼻、上気道、および/または肺に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、および/または緩和するための薬剤を調製するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、または請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項39】
腸粘膜に送達したTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患であって、腸粘膜透過性を上昇させる前記疾患の症状を治療し、予防し、および/または緩和するための薬剤を調製するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、または請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項40】
舌下組織を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、および/または緩和するための薬剤を調製するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、または請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項41】
皮膚を効果的に通過することができるTNF‐α調節物質により調節が可能な疾患の症状を治療し、予防し、および/または緩和するための薬剤を調製するための、請求項1〜11、13または14のいずれかに記載の抗TNF‐αポリペプチド、または請求項12に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−24581(P2011−24581A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175199(P2010−175199)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【分割の表示】特願2005−502085(P2005−502085)の分割
【原出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【出願人】(505166225)アブリンクス エン.ヴェー. (28)
【Fターム(参考)】